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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-19
(45)【発行日】2025-09-30
(54)【発明の名称】過渡電圧保護回路
(51)【国際特許分類】
   H02H 9/04 20060101AFI20250922BHJP
   H01F 37/00 20060101ALI20250922BHJP
【FI】
H02H9/04 A
H01F37/00 L
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021209194
(22)【出願日】2021-12-23
(65)【公開番号】P2023094004
(43)【公開日】2023-07-05
【審査請求日】2024-07-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】今井 悠介
(72)【発明者】
【氏名】簗田 壮司
(72)【発明者】
【氏名】梅田 和彦
【審査官】三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/063627(WO,A1)
【文献】特開2006-324455(JP,A)
【文献】特開2001-060838(JP,A)
【文献】特公昭50-011583(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0080881(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 9/00-9/08
H01F 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号ラインとグランドとの間に接続される過渡電圧保護回路であって、
前記信号ラインと前記グランドの間に接続されているコイル部と、
第一過渡電圧保護部と、
第二過渡電圧保護部と、を備え、
前記第一過渡電圧保護部と前記コイル部及び前記第二過渡電圧保護部とは、前記信号ラインと前記グランドとの間に並列に接続されており、
前記コイル部及び前記第二過渡電圧保護部は、前記信号ライン側から前記第二過渡電圧保護部及び前記コイル部の順に直列に接続されており、
前記コイル部は、前記信号ラインを流れる信号電圧よりも高い電圧が印加されたときに磁気飽和するように構成されている、過渡電圧保護回路。
【請求項2】
前記コイル部が磁気飽和する磁気飽和電圧は、前記第一過渡電圧保護部が動作する動作電圧よりも小さい、請求項1に記載の過渡電圧保護回路。
【請求項3】
電流電圧特性において、第一閾値電圧において特性が切り替わると共に、前記第一閾値電圧よりも小さい第二閾値電圧において特性が切り替わる、請求項1又は2に記載の過渡電圧保護回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過渡電圧保護回路に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体等を含む電子回路において、素子を静電気放電(ESD:Electrostatic Discharge)等の各種サ-ジ(過渡電圧)から保護する目的で、バリスタが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-267713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一側面は、過渡電圧保護特性の向上が図れる過渡電圧保護回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面に係る過渡電圧保護回路は、信号ラインとグランドとの間に接続される過渡電圧保護回路であって、信号ラインとグランドの間に接続されているコイル部を備え、コイル部は、信号ラインを流れる信号電圧よりも高い電圧が印加されたときに磁気飽和するように構成されている。
【0006】
本発明の一側面に係る過渡電圧保護回路は、コイル部を備えている。コイル部は、高い周波数成分を有する信号に対しては高抵抗(インピーダンス)であるが、ESDのような大電圧(負荷)に対しては磁気飽和を生じる。このように、コイル部では、磁気飽和が生じると、低抵抗となるため、電流を流す。そのため、過渡電圧保護回路では、信号ラインに入力されたESD等の大電圧をグランドに逃がすことができる。これにより、過渡電圧保護回路では、クランプ電圧の低減が図れる。したがって、過渡電圧保護回路では、過渡電圧保護特性の向上が図れる。
【0007】
一実施形態においては、第一過渡電圧保護部を備え、コイル部及び第一過渡電圧保護部は、信号ラインとグランドとの間に並列に接続されていてもよい。この構成では、ESD等によるエネルギーをコイル部と第一過渡電圧保護部とに配分することができる。そのため、過渡電圧保護回路では、過渡電圧に対する耐性の向上を図れる。したがって、過渡電圧保護回路では、過渡電圧保護特性の向上をより一層図れる。
【0008】
一実施形態においては、第二過渡電圧保護部を備え、第一過渡電圧保護部とコイル部及び第二過渡電圧保護部とは、信号ラインとグランドとの間に並列に接続されており、コイル部及び第二過渡電圧保護部は、信号ライン側から第二過渡電圧保護部及びコイル部の順に直列に接続されていてもよい。この構成では、ESD等によるエネルギーをコイル部、第一過渡電圧保護部及び第二過度電圧保護部に配分することができる。そのため、過渡電圧保護回路では、過渡電圧に対する耐性の向上をより一層図れる。
【0009】
一実施形態においては、コイル部が磁気飽和する磁気飽和電圧は、第一過渡電圧保護部が動作する動作電圧よりも小さくてもよい。この構成では、第一過渡電圧保護素部及び第二過渡電圧保護部が動作する前に、コイル部において磁気飽和を生じさせることができる。
【0010】
一実施形態においては、電流電圧特性において、第一閾値電圧において特性が切り替わると共に、第一閾値電圧よりも小さい第二閾値電圧において特性が切り替わってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一側面によれば、過渡電圧保護特性の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第一実施形態に係る過渡電圧保護回路を示す図である。
図2図2は、コイル及びバリスタのそれぞれの電流-電圧特性の一例を示す図である。
図3図3は、図1に示す過渡電圧保護回路の電流-電圧特性を示す図である。
図4図4は、クランプ波形を示す図である。
図5図5は、第二実施形態に係る過渡電圧保護回路を示す図である。
図6図6は、図5に示す過渡電圧保護回路の電流-電圧特性を示す図である。
図7図7は、変形例に係る過渡電圧保護回路の電流-電圧特性を示す図である。
図8図8は、変形例に係る過渡電圧保護回路の電流-電圧特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
図1は、第一実施形態に係る過渡電圧保護回路1を示す図である。図1に示されるように、過渡電圧保護回路1は、信号ラインL1とグランドラインL2との間に接続される。過渡電圧保護回路1は、ESD等に起因して大電圧(サージ電圧)が信号ラインL1に流入した場合に、保護対象となる機器(たとえば、IC(Integrated Circuit))を保護するための回路である。信号ラインL1は、保護対象となる機器に接続されている。グランドラインL2は、グランドGに接続されている。過渡電圧保護回路1は、コイル(コイル部)3と、バリスタ(第一過渡電圧保護部)5と、を備えている。
【0015】
過渡電圧保護回路1において、コイル3とバリスタ5とは、信号ラインL1とグランドラインL2との間において、電気的に並列に接続されている。
【0016】
コイル3は、たとえば、チップビーズである。コイル3は、たとえば、素体と、外部電極と、素体内に配置されているコイルと、により構成されている。コイル3は、所定電圧以上が印加された場合に磁気飽和が生じるように構成されている。所定電圧は、磁気飽和電圧であり、信号ラインL1を流れる信号電圧の最大値よりも高い電圧である。信号電圧は、信号ラインL1を流れる制御信号等の電圧である。
【0017】
バリスタ5は、たとえば、チップバリスタである。バリスタ5は、たとえば、素体と、外部電極と、素体内に配置されている内部電極と、により構成されている。バリスタ5は、所定電圧以上が印加された場合に動作するように構成されている。所定電圧は、バリスタ電圧(動作電圧)である。バリスタ電圧は、ブレイクダウン電圧であるともいえる。
【0018】
過渡電圧保護回路1において、コイル3が磁気飽和する磁気飽和電圧は、バリスタ5が動作するバリスタ電圧よりも小さい。すなわち、過渡電圧保護回路1において、コイル3の磁気飽和の方が、バリスタ5の動作よりも先に生じる。
【0019】
図2は、コイル3及びバリスタ5のそれぞれの電流-電圧特性の一例を示す図である。図2では、横軸は電圧(Voltage)[V]、縦軸は、電流(Current)[A]を示している。図2では、コイル3の特性を実線で示し、バリスタ5の特性を破線で示している。図2に示されるように、コイル3では、磁気飽和電圧(スナップバック電圧)においてスナップバック動作し(スナップバック現象が発現し)、磁気飽和する。すなわち、コイル3は、スナップバック動作を有しているともいえる。コイル3では、磁気飽和が生じることで低抵抗になり、電流が流れる。バリスタ5では、バリスタ電圧以上になるとブレイクダウンする。バリスタ5では、バリスタ電圧以上になると低抵抗になり、電流が流れる。
【0020】
図3は、過渡電圧保護回路1の電流-電圧特性を示す図である。図3では、横軸は電圧(Voltage)[V]、縦軸は、電流(Current)[A]を示している。図3では、TLP(Transmission Line Pulse)測定によって測定した結果を示している。
【0021】
図3に示されるように、過渡電圧保護回路1の電流-電圧特性(電流電圧特性)では、特性(インピーダンス)が切り替わる部分(以下、「切替部分」と称する。)を二か所有している。切替部分を起点として、電流-電圧特性のグラフに主たる変化が生じる。過渡電圧保護回路1では、第一閾値電圧V1において一回目の切替部分が発生し、電流が流れる。一回目の切替部分の後、電流がそれ以前よりも流れる。一回目の切替部分までのグラフの傾きよりも、一回目の切替部分の後のグラフの傾きの方が大きい。続いて、過渡電圧保護回路1では、第二閾値電圧V2において二回目の切替部分が発生する。これにより、過渡電圧保護回路1は、低抵抗となり、電流が更に流れる。一回目の切替部分から二回目の切替部分までのグラフの傾きよりも、二回目の切替部分の後のグラフの傾きの方が大きい。一回目の切替部分(第一閾値電圧V1)と二回目の切替部分(第二閾値電圧V2)との間では、時間幅を持って徐々に低抵抗となる(徐々に電流が流れる)。第一閾値電圧V1は、第二閾値電圧V2よりも大きい。第一閾値電圧V1は、信号電圧よりも大きい。第一閾値電圧V1は、磁気飽和電圧であるともいえる。
【0022】
以上説明したように、本実施形態に係る過渡電圧保護回路1は、コイル3を備えている。コイル3は、高い周波数成分を有する信号に対しては高抵抗(インピーダンス)であるが、ESDのような大電圧(負荷)に対しては磁気飽和を生じる。このように、コイル3では、磁気飽和が生じると、低抵抗となるため、電流を流す。そのため、過渡電圧保護回路1では、信号ラインL1に入力されたESD等の大電圧をグランドラインL2(グランドG)に逃がすことができる。これにより、過渡電圧保護回路1では、クランプ電圧の低減が図れる。
【0023】
図4は、クランプ特性を示す図である。図4では、横軸は時間(Time)[ns]、縦軸は電圧(Voltage)[V]を示している。図3では、コイル3の測定結果を一点鎖線で示し、バリスタ5の測定結果を破線で示し、過渡電圧保護回路1の測定結果を実線で示している。図3では、ESDガンにより所定のESD波形を印加したときの測定結果(波形)を示している。
【0024】
図4に示されるように、コイル3では、電圧が印加された場合、印加直後において電圧のピーク値(たとえば、1800V程度)は高くなるが、ピークの後に直ぐ電圧は低くなる。コイル3では、時間に対する電圧の平均値は低くなる。バリスタ5では、電圧が印加された場合、印加直後における電圧のピーク値(たとえば、800V程度)はコイル3に比べて低くなるが、ピークの後においてもコイル3に比べて電圧は高い。コイル3では、時間に対する電圧の平均値はコイル3に比べて高くなる。過渡電圧保護回路1では、電圧が印加された場合、印加直後において電圧のピーク値を抑えつつ、時間に対する電圧の平均値を低くすることができる。過渡電圧保護回路1では、コイル3及びバリスタ5のクランプ特性の良い所を活かしたクランプ特性となる。
【0025】
また、過渡電圧保護回路1では、コイル3とバリスタ5とを備えているため、ESD等のエネルギーをコイル3とバリスタ5とに配分することができる。そのため、過渡電圧保護回路1では、過渡電圧に対する耐性の向上を図れる。したがって、過渡電圧保護回路1では、過渡電圧保護特性の向上が図れる。
【0026】
本実施形態に係る過渡電圧保護回路1では、コイル3は、信号ラインL1の信号電圧よりも高い電圧が印加された場合に磁気飽和する。コイル3が磁気飽和する磁気飽和電圧は、バリスタ5のバリスタ電圧よりも小さい。この構成では、バリスタ5が動作する前に、コイル3において磁気飽和を生じさせることができる。
【0027】
本実施形態に係る過渡電圧保護回路1では、コイル3のインダクタンスとバリスタ5の静電容量とのマッチングにより、Sパラメータをコントロールすることができる。そのため、過渡電圧保護回路1において、コイル3のインダクタンスとバリスタ5の静電容量とを適切にマッチングさせることによって、所望のインピーダンス特性を得ることが可能となる。これにより、過渡電圧保護回路1では、低静電容量とすることができる。
【0028】
本実施形態に係る過渡電圧保護回路1では、図3に示されるように、電流-電圧特性において、第一閾値電圧V1において切替部分を有すると共に、第二閾値電圧V2において切替部分を有する。このとき、第一閾値電圧V1と第二閾値電圧V2との間において、徐々に低抵抗となるように波形が連続している。そのため、第一閾値電圧V1と第二閾値電圧V2との間において、グランドGに対して一気に電流が流れない。これにより、グランドGの基準電位にずれが生じることを抑制できる。
【0029】
[第二実施形態]
続いて、第二実施形態について説明する。図5は、第二実施形態に係る過渡電圧保護回路を示す図である。図5に示されるように、過渡電圧保護回路10は、コイル(コイル部)12と、第一バリスタ(第一過渡電圧保護部)14と、第二バリスタ(第二過渡電圧保護部)16と、を備えている。
【0030】
コイル12は、たとえば、チップビーズである。コイル12は、たとえば、素体と、外部電極と、素体内に配置されているコイルと、により構成されている。コイル12は、所定電圧以上が印加された場合に磁気飽和が生じるように構成されている。所定電圧は、磁気飽和電圧であり、信号ラインL1を流れる信号電圧の最大値よりも高い電圧である。信号電圧は、信号ラインL1を流れる制御信号等の電圧である。所定電圧は、第一バリスタ14が動作する動作電圧(バリスタ電圧)よりも小さい。
【0031】
第一バリスタ14は、たとえば、チップバリスタである。第一バリスタ14は、たとえば、素体と、外部電極と、素体内に配置されている内部電極と、により構成されている。第一バリスタ14は、所定電圧以上が印加された場合に動作するように構成されている。所定電圧は、バリスタ電圧(動作電圧)である。バリスタ電圧は、ブレイクダウン電圧であるともいえる。
【0032】
第二バリスタ16は、たとえば、チップバリスタである。第二バリスタ16は、たとえば、素体と、外部電極と、素体内に配置されている内部電極と、により構成されている。第二バリスタ16は、所定電圧以上が印加された場合に動作するように構成されている。第二バリスタ16が動作するバリスタ電圧は、信号ラインL1の信号電圧よりも高い。
【0033】
過渡電圧保護回路10では、第一バリスタ14と第二バリスタ16及びコイル12とは、信号ラインL1とグランドラインL2との間において、電気的に並列に接続されている。第二バリスタ16とコイル12とは、信号ラインL1とグランドラインL2との間において、第二バリスタ16及びコイル12の順に電気的に直列に接続されている。
【0034】
図6は、過渡電圧保護回路10の電流-電圧特性を示す図である。図6では、横軸は電圧(Voltage)[V]、縦軸は、電流(Current)[A]を示している。図6では、TLP(Transmission Line Pulse)測定によって測定した結果を示している。図6に示されるように、過渡電圧保護回路10では、電圧に対して、電流が非線形に増加する。過渡電圧保護回路10では、コイル12及び第二バリスタ16が直列に接続されているため、バリスタの特性が表れている。
【0035】
以上説明したように、本実施形態に係る過渡電圧保護回路10は、コイル12を備えている。コイル12は、高い周波数成分を有する信号に対しては高抵抗(インピーダンス)であるが、ESDのような大電圧(負荷)に対しては磁気飽和を生じる。このように、コイル12では、磁気飽和が生じると、低抵抗となるため、電流を流す。そのため、過渡電圧保護回路10では、信号ラインL1に入力されたESD等の大電圧をグランドラインL2(グランドG)に逃がすことができる。これにより、過渡電圧保護回路10では、クランプ電圧の低減が図れる。
【0036】
また、過渡電圧保護回路10では、コイル12、第一バリスタ14及び第二バリスタ16を備えているため、ESD等のエネルギーをコイル12、第一バリスタ14及び第二バリスタ16に配分することができる。そのため、過渡電圧保護回路10では、過渡電圧に対する耐性の向上を図れる。したがって、過渡電圧保護回路10では、過渡電圧保護特性の向上が図れる。
【0037】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0038】
上記実施形態では、過渡電圧保護部としてバリスタ5、第一バリスタ14、第二バリスタ16を用いる形態を一例に説明した。しかし、過渡電圧保護部は、たとえば、ダイオードであってもよい。
【0039】
上記実施形態では、過渡電圧保護回路1(10)がバリスタ5(第一バリスタ14、第二バリスタ16)を備える形態を一例に説明しかし。過渡電圧保護回路は、コイル部のみを備えていてもよい。コイル部は、信号ラインを流れる信号電圧よりも高い電圧が印加されたときに磁気飽和するように構成されている。
【0040】
図7は、コイル部のみを備える過渡電圧保護回路の電流-電圧特性を示す図である。図7では、横軸は電圧(Voltage)[V]、縦軸は、電流(Current)[A]を示している。図7では、TLP(Transmission Line Pulse)測定によって測定した結果を示している。
【0041】
図7に示されるように、過渡電圧保護回路1の電流-電圧特性(電流電圧特性)では、切替部分を二か所有している。過渡電圧保護回路では、第一閾値電圧V1において一回目の切替部分が発生し、電流が流れる。一回目の切替部分の後、電流がそれ以前よりも流れる。一回目の切替部分までのグラフの傾きよりも、一回目の切替部分の後のグラフの傾きの方が大きい。続いて、過渡電圧保護回路1では、第二閾値電圧V2において二回目の切替部分が発生する。これにより、過渡電圧保護回路は、低抵抗となり、電流が更に流れる。一回目の切替部分から二回目の切替部分までのグラフの傾きよりも、二回目の切替部分の後のグラフの傾きの方が大きい。一回目の切替部分(第一閾値電圧V1)と二回目の切替部分(第二閾値電圧V2)との間では、時間幅を持って徐々に低抵抗となる(徐々に電流が流れる)。第一閾値電圧V1は、第二閾値電圧V2よりも大きい。第一閾値電圧V1は、信号電圧よりも大きい。第一閾値電圧V1は、磁気飽和電圧であるともいえる。
【0042】
この構成では、コイル部は、高い周波数成分を有する信号に対しては高抵抗(インピーダンス)であるが、ESDのような大電圧(負荷)に対しては磁気飽和を生じる。このように、コイル部では、磁気飽和が生じると、低抵抗となるため、電流を流す。そのため、過渡電圧保護回路では、信号ラインに入力されたESD等の大電圧をグランドに逃がすことができる。これにより、過渡電圧保護回路では、クランプ電圧の低減が図れる。したがって、過渡電圧保護特性の向上が図れる。
【0043】
上記実施形態では、図3に示されるように、一回目の切替部分(第一閾値電圧V1)と二回目の切替部分(第二閾値電圧V2)との間では、電流が連続的に流れる形態を一例に説明した。しかし、図8に示されるように、過渡電圧保護回路では、一回目の切替部分(第一閾値電圧V1)と二回目の切替部分(第二閾値電圧V2)との間において、波形が非連続となってもよい。この構成では、一回目の切替部分作の後、直ぐに低抵抗となり、電流を流す。そのため、クランプ特性の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0044】
1,10…過渡電圧保護回路、3…コイル(コイル部)、5…バリスタ(第一過渡電圧保護部)、12…コイル(コイル部)、14…第一バリスタ(第一過渡電圧保護部)、16…第二バリスタ(第二過渡電圧保護部)、G…グランド、L1…信号ライン、V1…第一閾値電圧、V2…第二閾値電圧。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8