(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-19
(45)【発行日】2025-09-30
(54)【発明の名称】過渡電圧保護部品及び過渡電圧保護部品の実装構造
(51)【国際特許分類】
H01C 7/12 20060101AFI20250922BHJP
H01F 27/00 20060101ALI20250922BHJP
H01F 37/00 20060101ALI20250922BHJP
H02H 9/04 20060101ALI20250922BHJP
【FI】
H01C7/12
H01F27/00 S
H01F37/00 L
H02H9/04 A
(21)【出願番号】P 2021209195
(22)【出願日】2021-12-23
【審査請求日】2024-07-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】今井 悠介
(72)【発明者】
【氏名】簗田 壮司
(72)【発明者】
【氏名】梅田 和彦
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-028695(JP,A)
【文献】国際公開第2020/262086(WO,A1)
【文献】実開昭59-107134(JP,U)
【文献】実開昭55-084889(JP,U)
【文献】実開昭49-133740(JP,U)
【文献】特開2001-060838(JP,A)
【文献】特開平08-250309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 7/12
H01F 27/00
H01F 37/00
H02H 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル部と、
第一過渡電圧保護部と、
第二過渡電圧保護部と、
第一電極及び第二電極と、を備え、
前記コイル部及び前記第一過渡電圧保護部は、前記第一電極及び前記第二電極との間に並列に接続されており、
前記第一過渡電圧保護部と前記コイル部及び前記第二過渡電圧保護部とは、前記第一電極及び前記第二電極との間に並列に接続されており、
前記コイル部及び前記第二過渡電圧保護部は、前記第一電極側から前記第二過渡電圧保護部及び前記コイル部の順に直列に接続されており、
前記コイル部は、所定電圧よりも高い電圧が印加されたときに磁気飽和するように構成されて
おり、
前記コイル部が磁気飽和する磁気飽和電圧は、前記第一過渡電圧保護部が動作する動作電圧よりも小さい、過渡電圧保護部品。
【請求項2】
前記所定電圧は、前記第一過渡電圧保護部が動作する動作電圧以下である、請求項1に記載の過渡電圧保護部品。
【請求項3】
前記コイル部及び前記第一過渡電圧保護部のそれぞれは、チップ部品であり、
前記第一電極及び前記第二電極が配置されている基部と、
前記基部に配置されていると共に、前記第一電極に接続されている第一ランド電極と、
前記基部に配置されていると共に、前記第二電極に接続されている第二ランド電極と、
前記コイル部及び前記第一過渡電圧保護部を封止する封止部と、を備え、
前記コイル部及び前記第一過渡電圧保護部のそれぞれは、前記第一ランド電極及び前記第二ランド電極のそれぞれに接続されている、請求項1又は2に記載の過渡電圧保護部品。
【請求項4】
前記コイル部及び前記過渡電圧保護部との間の距離は、前記第一ランド電極と前記第二ランド電極との間の距離よりも小さい、請求項3に記載の過渡電圧保護部品。
【請求項5】
前記コイル部及び前記第一過渡電圧保護部のそれぞれは、チップ部品であり、
前記コイル部と前記第一過渡電圧保護部とは、樹脂からなる接合部によって接合されている、請求項1又は2に記載の過渡電圧保護部品。
【請求項6】
前記第一電極及び前記第二電極のそれぞれが配置されていると素体を備え、
前記コイル部及び前記第一過渡電圧保護部は、前記素体内に配置されている、請求項1又は2に記載の過渡電圧保護部品。
【請求項7】
電流電圧特性において、第一閾値電圧において特性が切り替わると共に、前記第一閾値電圧よりも小さい第二閾値電圧において特性が切り替わる、請求項1~6のいずれか一項に記載の過渡電圧保護部品。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか一項に記載の過渡電圧保護部品の実装構造であって、
前記第一電極を信号ラインに接続すると共に、前記第二電極をグランドに接続する、過渡電圧保護部品の実装構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過渡電圧保護部品に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体等を含む電子回路において、素子を静電気放電(ESD:Electrostatic Discharge)等の各種サ-ジ(過渡電圧)から保護する目的で、バリスタが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一側面は、過渡電圧保護特性の向上が図れる過渡電圧保護部品及び過渡電圧保護部品の実装構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面に係る過渡電圧保護部品は、コイル部と、第一過渡電圧保護部と、第一電極及び第二電極と、を備え、コイル部及び第一過渡電圧保護部は、第一電極及び第二電極との間に並列に接続されており、コイル部は、所定電圧よりも高い電圧が印加されたときに磁気飽和するように構成されている。
【0006】
本発明の一側面に係る過渡電圧保護部品は、所定電圧よりも高い電圧が印加されたときに磁気飽和するように構成されているコイル部を備えている。コイル部は、高い周波数成分を有する信号に対しては高抵抗(インピーダンス)であるが、ESDのような大電圧(負荷)に対しては磁気飽和を生じる。このように、コイル部では、磁気飽和が生じると、低抵抗となるため、電流を流す。そのため、過渡電圧保護回路では、ESD等の大電圧をグランドに逃がすことができる。これにより、過渡電圧保護部品では、クランプ電圧の低減が図れる。また、過渡電圧保護回路では、コイル部と第一過渡電圧保護部とを備えているため、ESD等によるエネルギーをコイル部と第一過渡電圧保護部とに配分することができる。そのため、過渡電圧保護回路では、過渡電圧に対する耐性の向上を図れる。以上により、過渡電圧保護回路では、過渡電圧保護特性の向上が図れる。
【0007】
一実施形態においては、所定電圧は、第一過渡電圧保護部が動作する動作電圧以下であってもよい。この構成では、第一過渡電圧保護素部が動作する前に、コイル部において磁気飽和を生じさせることができる。
【0008】
一実施形態においては、コイル部及び第一過渡電圧保護部のそれぞれは、チップ部品であり、第一電極及び第二電極が配置されている基部と、基部に配置されていると共に、第一電極に接続されている第一ランド電極と、基部に配置されていると共に、第二電極に接続されている第二ランド電極と、コイル部及び第一過渡電圧保護部を封止する封止部と、を備え、コイル部及び第一過渡電圧保護部のそれぞれは、第一ランド電極及び第二ランド電極のそれぞれに接続されていてもよい。この構成では、過渡電圧保護部品を一つの部品として構成することができる。
【0009】
一実施形態においては、コイル部及び過渡電圧保護部との間の距離は、第一ランド電極と第二ランド電極との間の距離よりも小さくてもよい。この構成では、コイル部と過渡電圧保護部との間に発生する寄生インダクタンスを減少させることができるため、特性(Sパラメータ)を良好にすることができる。
【0010】
一実施形態においては、コイル部及び第一過渡電圧保護部のそれぞれは、チップ部品であり、コイル部と第一過渡電圧保護部とは、樹脂からなる接合部によって接合されていてもよい。この構成では、コイル部及びバリスタ部品22の線膨張を接合部によって吸収し得る。そのため、熱特性の向上を図ることができる。
【0011】
一実施形態においては、第一電極及び第二電極のそれぞれが配置されていると素体を備え、コイル部及び第一過渡電圧保護部は、素体内に配置されていてもよい。この構成では、過渡電圧保護部品を一つの部品として構成することができる。
【0012】
一実施形態においては、電流電圧特性において、第一閾値電圧において特性が切り替わると共に、第一閾値電圧よりも小さい第二閾値電圧において特性が切り替わってもよい。
【0013】
一実施形態においては、第二過渡電圧保護部を備え、第一過渡電圧保護部とコイル部及び第二過渡電圧保護部とは、第一電極及び第二電極との間に並列に接続されており、コイル部及び第二過渡電圧保護部は、第一電極側から第二過渡電圧保護部及びコイル部の順に直列に接続されていてもよい。この構成では、過渡電圧に対する耐性の向上をより一層図れる。
【0014】
一実施形態においては、コイル部が磁気飽和する磁気飽和電圧は、第一過渡電圧保護部が動作する動作電圧よりも小さくてもよい。この構成では、第一過渡電圧保護素部が動作する前に、コイル部において磁気飽和を生じさせることができる。
【0015】
本発明の一側面に係る過渡電圧保護部品の実装構造は、上記の過渡電圧保護回路の実装構造であって、第一電極を信号ラインに接続すると共に、第二電極をグランドに接続する。
【0016】
本発明の一側面に係る過渡電圧保護部品の実装構造では、過渡電圧保護部品においてコイル部を備えている。コイル部は、高い周波数成分を有する信号に対しては高抵抗(インピーダンス)であるが、ESDのような大電圧(負荷)に対しては磁気飽和を生じる。このように、コイル部では、磁気飽和が生じると、低抵抗となるため、電流を流す。そのため、過渡電圧保護部品の実装構造では、信号ラインに入力されたESD等の大電圧をグランドに逃がすことができる。これにより、過渡電圧保護部品の実装構造では、クランプ電圧の低減が図れる。また、過渡電圧保護部品では、コイル部と第一過渡電圧保護部とを備えているため、ESD等によるエネルギーをコイル部と第一過渡電圧保護部とに配分することができる。そのため、過渡電圧保護部品の実装構造では、過渡電圧に対する耐性の向上を図れる。以上により、過渡電圧保護部品の実装構造では、過渡電圧保護特性の向上が図れる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一側面によれば、過渡電圧保護特性の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、第一実施形態に係る過渡電圧保護部品の斜視図である。
【
図2】
図2(a)は、
図1においてa-a線に沿った断面図であり、
図2(b)は、
図2においてb-b線に沿った断面図である。
【
図4】
図4は、コイル及びバリスタのそれぞれの電流-電圧特性の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、
図1に示す過渡電圧保護回路の電流-電圧特性を示す図である。
【
図7】
図7は、第二実施形態に係る過渡電圧保護部品の斜視図である。
【
図10】
図10は、第三実施形態に係る過渡電圧保護部品の断面図である。
【
図13】
図13は、第四実施形態に係る過渡電圧保護部品の斜視図である。
【
図16】
図16は、第五実施形態に係る過渡電圧保護部品の斜視図である。
【
図21】
図21は、変形例に係る過渡電圧保護回路の電流-電圧特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0020】
[第一実施形態]
図1は、第一実施形態に係る過渡電圧保護部品1を示す図である。
図1に示されるように、過渡電圧保護部品1は、基部2と、第一端子電極(第一電極)3と、第二端子電極(第二電極)4と、第一ランド電極5と、第二ランド電極6と、第三ランド電極(第一ランド電極)7と、第四ランド電極(第二ランド電極)8と、コイル部品(コイル部)9と、バリスタ部品(第一過渡電圧保護部)10と、封止部11と、を備えている。説明の便宜のため、
図1において、X方向及びY方向をそれぞれ設定した。
【0021】
基部2は、略直方体形状を呈している。基部2は、たとえば、PCB(Printed Circuit Board)である。基部2は、第一主面2aと、第一主面2aと対向している第二主面2bと、第一主面2aと第二主面2bとを接続している側面2cと、を有している。
【0022】
第一端子電極3は、基部2の第二主面2bとX方向での一方の側面2cとにわたって配置されている。
図2(a)及び
図2(b)に示されるように、第一端子電極3は、L字形状を呈している。第一端子電極3は、導電性材料(たとえば、Ni又はCu等)からなる。第一端子電極3は、基部2の第二主面2bのみに配置されていてもよい。
【0023】
第二端子電極4は、基部2の第二主面2bとX方向での他方の側面2cとにわたって配置されている。第二端子電極4は、X方向において第一端子電極3と離間して配置されている。第二端子電極4は、L字形状を呈している。導電性材料(たとえば、Ni又はCu等)からなる。第二端子電極4は、基部2の第二主面2bのみに配置されていてもよい。
【0024】
第一ランド電極5は、基部2の第一主面2a上に配置されている。第一ランド電極5は、第一端子電極3と接続導体12によって電気的に接続されている。第二ランド電極6は、基部2の第一主面2a上に配置されている。第二ランド電極6は、第二端子電極4と接続導体13によって電気的に接続されている。第一ランド電極5と第二ランド電極6とは、X方向において所定の間隔をあけて配置されている。
【0025】
第三ランド電極7は、基部2の第一主面2a上に配置されている。第三ランド電極7は、第一端子電極3と接続導体14によって電気的に接続されている。第四ランド電極8は、基部2の第一主面2a上に配置されている。第四ランド電極8は、第二端子電極4と接続導体15によって電気的に接続されている。第三ランド電極7と第四ランド電極8とは、X方向において所定の間隔をあけて配置されている。第一ランド電極5と第三ランド電極7とは、Y方向において所定の間隔をあけて配置されている。第二ランド電極6と第四ランド電極8とは、Y方向において所定の間隔をあけて配置されている。
【0026】
図2(b)は、
図1においてb-b線に沿った断面図である。
図2(b)に示されるように、コイル部品9は、素体9aと、第一外部電極9bと、第二外部電極9cと、コイル9dと、を備えている。コイル部品9は、チップ部品である。
【0027】
素体9aは、直方体形状を呈している。素体9aは、複数の誘電体層が積層されて構成されている。各誘電体層は、たとえば磁性材料により構成されている。磁性材料は、たとえば、Ni-Cu-Zn系フェライト材料、Ni-Cu-Zn-Mg系フェライト材料、及び、Ni-Cu系フェライト材料から選択された少なくとも一つを含んでいる。素体9aを構成する磁性材料には、Fe合金等が含まれていてもよい。素体9aは、非磁性材料から構成されていてもよい。非磁性材料は、たとえば、ガラスセラミック材料、及び、誘電体材料から選択された少なくとも一つを含んでいる。
【0028】
第一外部電極9bは、素体9aの一方の端面側に配置されている。第二外部電極9cは、素体9aの他方の端面側に配置されている。第一外部電極9b及び第二外部電極9cは、導電性材料(たとえば、Ni又はCu等)からなる。
【0029】
コイル9dは、素体9a内に配置されている。コイル9dは、複数のコイル導体が接続されて構成されている。複数のコイル導体は、コイルの導体として通常用いられる導電性材料(たとえば、Ni又はCu等)からなる。
【0030】
コイル部品9は、第三ランド電極7と第四ランド電極8とに配置されている。具体的には、コイル部品9の第一外部電極9bは、第三ランド電極7に配置されており、コイル部品9の第二外部電極9cは、第四ランド電極8に配置されている。第一外部電極9bと第三ランド電極7とは、はんだHによって接合されている。これにより、第一外部電極9bは、第一端子電極3と電気的に接続されている。第二外部電極9cと第四ランド電極8とは、はんだHによって接合されてる。これにより、第二外部電極9cは、第二端子電極4と電気的に接続されている。
【0031】
図2(a)は、
図1においてa-a線に沿った断面図である。
図2(a)に示されるように、バリスタ部品10は、素体10aと、第一外部電極10bと、第二外部電極10cと、内部電極10dと、を備えている。バリスタ部品10は、チップ部品である。
【0032】
素体10aは、直方体形状を呈している。素体10aは、複数の誘電体層が積層されて構成されている。各誘電体層は、たとえば、ZnO(酸化亜鉛)を主成分として含むと共に、副成分としてCo、希土類金属元素、IIIb族元素(B、Al、Ga、In)、Si、Cr、Mo、アルカリ金属元素(K、Rb、Cs)及びアルカリ土類金属元素(Mg、Ca、Sr、Ba)等の金属単体、及び、これらの酸化物を含み得る。
【0033】
第一外部電極10bは、素体10aの一方の端面側に配置されている。第二外部電極10cは、素体10aの他方の端面側に配置されている。第一外部電極10b及び第二外部電極10cは、導電性材料(たとえば、Ni又はCu等)からなる。
【0034】
内部電極10dは、素体10a内に配置されている。内部電極10dは、二つ配置されている。一方の内部電極10dは、第一外部電極10bに接続されている。他方の内部電極10dは、第二外部電極10cに接続されている。内部電極10dは、導電性材料(たとえば、Ni又はCu等)からなる。
【0035】
バリスタ部品10は、第一ランド電極5と第二ランド電極6とに配置されている。具体的には、バリスタ部品10の第一外部電極10bは、第一ランド電極5に配置されており、バリスタ部品10の第二外部電極10cは、第二ランド電極6に配置されている。第一外部電極10bと第一ランド電極5とは、はんだHによって接合されている。これにより、第一外部電極10bは、第一端子電極3と電気的に接続されている。第二外部電極10cと第二ランド電極6とは、はんだHによって接合されてる。これにより、第二外部電極10cは、第二端子電極4と電気的に接続されている。
【0036】
なお、第一ランド電極5及び第三ランド電極7は、一つの部材であってもよい。すなわち、一つのランド電極に、コイル部品9の第一外部電極9b及びバリスタ部品10の第一外部電極10bが配置されてもよい。第二ランド電極6及び第四ランド電極8は、一つの部材であってもよい。すなわち、一つのランド電極に、コイル部品9の第二外部電極9c及びバリスタ部品10の第二外部電極10cが配置されてもよい。
【0037】
図1に示されるように、封止部11は、コイル部品9及びバリスタ部品10を覆っている。封止部11は、直方体形状を呈している。封止部11は、樹脂で形成されている。封止部11は、コイル部品9及びバリスタ部品10を保護するために設けられている。封止部11は、コイル部品9及びバリスタ部品10に外的な力が加わることを抑制する機能、コイル部品9及びバリスタ部品10と外部とを電気的に絶縁する機能、コイル部品9及びバリスタ部品10を塵や埃等から保護する機能を有している。
【0038】
過渡電圧保護部品1では、バリスタ部品10とコイル部品9とは、第一端子電極3と第二端子電極4との間において電気的に並列に接続されている。過渡電圧保護部品1では、Y方向におけるコイル部品9とバリスタ部品10との間の距離G1(
図1参照)は、X方向における第一ランド電極5(第三ランド電極7)と第二ランド電極6(第四ランド電極8)との間の距離G2(
図2(a)参照)よりも小さい。
【0039】
図3は、
図1に示す過渡電圧保護部品1の回路図である。
図3に示されるように、過渡電圧保護部品1は、信号ラインL1とグランドラインL2との間に接続される。過渡電圧保護部品1は、第一端子電極3が信号ラインL1に接続され、第二端子電極4がグランドラインL2に接続される。すなわち、過渡電圧保護部品1は、第一端子電極3が信号ラインL1に接続され、第二端子電極4がグランドラインL2に接続されるように実装される。すなわち、
図3では、過渡電圧保護部品1の実装構造を示している。過渡電圧保護部品1は、ESD等に起因して大電圧(サージ電圧)が信号ラインL1に流入した場合に、保護対象となる機器(たとえば、IC(Integrated Circuit))を保護するための回路である。信号ラインL1は、保護対象となる機器に接続されている。グランドラインL2は、グランドGに接続されている。
【0040】
過渡電圧保護部品1のコイル部品9とバリスタ部品10とは、信号ラインL1とグランドラインL2との間において、電気的に並列に接続されている。
【0041】
コイル部品9は、所定電圧以上が印加された場合に磁気飽和が生じるように構成されている。所定電圧は、磁気飽和電圧であり、信号ラインL1を流れる信号電圧の最大値よりも高い電圧である。信号電圧は、信号ラインL1を流れる制御信号等の電圧である。
【0042】
バリスタ部品10は、所定電圧以上が印加された場合に動作するように構成されている。所定電圧は、バリスタ電圧(動作電圧)である。バリスタ電圧は、ブレイクダウン電圧であるともいえる。
【0043】
過渡電圧保護部品1において、コイル部品9が磁気飽和する磁気飽和電圧は、バリスタ部品10が動作するバリスタ電圧以下(磁気飽和電圧≦バリスタ電圧)である。本実施形態では、磁気飽和電圧は、バリスタ電圧よりも小さい。この構成では、過渡電圧保護部品1において、コイル部品9の磁気飽和の方が、バリスタ部品10の動作よりも先に生じる。
【0044】
図4は、コイル部品9及びバリスタ部品10のそれぞれの電流-電圧特性の一例を示す図である。
図4では、横軸は電圧(Voltage)[V]、縦軸は、電流(Current)[A]を示している。
図4では、コイル部品9の特性を実線で示し、バリスタ部品10の特性を破線で示している。
図4に示されるように、コイル部品9では、磁気飽和電圧(スナップバック電圧)においてスナップバック動作し(スナップバック現象が発現し)、磁気飽和する。すなわち、コイル部品9は、スナップバック動作を有しているともいえる。コイル部品9では、磁気飽和が生じることで低抵抗になり、電流が流れる。バリスタ部品10では、バリスタ電圧以上になるとブレイクダウンする。バリスタ部品10では、バリスタ電圧以上になると低抵抗になり、電流が流れる。
【0045】
図5は、過渡電圧保護部品1の電流-電圧特性を示す図である。
図5では、横軸は電圧(Voltage)[V]、縦軸は、電流(Current)[A]を示している。
図5では、TLP(Transmission Line Pulse)測定によって測定した結果を示している。
【0046】
図5に示されるように、過渡電圧保護部品1の電流-電圧特性(電流電圧特性)では、特性(インピーダンス)が切り替わる部分(以下、「切替部分」と称する。)を二か所有している。切替部分を起点として、電流-電圧特性のグラフに主たる変化が生じる。過渡電圧保護部品1では、第一閾値電圧V1において一回目の切替部分が発生し、電流が流れる。一回目の切替部分の後、電流がそれ以前よりも流れる。一回目の切替部分までのグラフの傾きよりも、一回目の切替部分の後のグラフの傾きの方が大きい。続いて、過渡電圧保護部品1では、第二閾値電圧V2において二回目の切替部分が発生する。これにより、過渡電圧保護部品1は、低抵抗となり、電流が更に流れる。一回目の切替部分から二回目の切替部分までのグラフの傾きよりも、二回目の切替部分の後のグラフの傾きの方が大きい。一回目の切替部分(第一閾値電圧V1)と二回目の切替部分(第二閾値電圧V2)との間では、時間幅を持って徐々に低抵抗となる(徐々に電流が流れる)。第一閾値電圧V1は、第二閾値電圧V2よりも大きい。第一閾値電圧V1は、信号電圧よりも大きい。第一閾値電圧V1は、磁気飽和電圧であるともいえる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態に係る過渡電圧保護部品1は、コイル部品9を備えている。コイル部品9は、高い周波数成分を有する信号に対しては高抵抗(インピーダンス)であるが、ESDのような大電圧(負荷)に対しては磁気飽和を生じる。このように、コイル部品9では、磁気飽和が生じると、低抵抗となるため、電流を流す。そのため、過渡電圧保護部品1では、信号ラインL1に入力されたESD等の大電圧をグランドラインL2(グランドG)に逃がすことができる。これにより、過渡電圧保護部品1では、クランプ電圧の低減が図れる。
【0048】
図6は、クランプ特性を示す図である。
図6では、横軸は時間(Time)[ns]、縦軸は電圧(Voltage)[V]を示している。
図6では、コイル部品9の測定結果を一点鎖線で示し、バリスタ部品10の測定結果を破線で示し、過渡電圧保護部品1の測定結果を実線で示している。
図6では、ESDガンにより所定のESD波形を印加したときの測定結果(波形)を示している。
【0049】
図6に示されるように、コイル部品9では、電圧が印加された場合、印加直後において電圧のピーク値(たとえば、1800V程度)は高くなるが、ピークの後に直ぐ電圧は低くなる。コイル部品9では、時間に対する電圧の平均値は低くなる。バリスタ部品10では、電圧が印加された場合、印加直後における電圧のピーク値(たとえば、800V程度)はコイル部品9に比べて低くなるが、ピークの後においてもコイル部品9に比べて電圧は高い。コイル部品9では、時間に対する電圧の平均値はコイル部品9に比べて高くなる。過渡電圧保護部品1では、電圧が印加された場合、印加直後において電圧のピーク値を抑えつつ、時間に対する電圧の平均値を低くすることができる。過渡電圧保護部品1では、コイル部品9及びバリスタ部品10のクランプ特性の良い所を活かしたクランプ特性となる。
【0050】
また、過渡電圧保護部品1では、コイル部品9とバリスタ部品10とを備えているため、ESD等のエネルギーをコイル部品9とバリスタ部品10とに配分することができる。そのため、過渡電圧保護部品1では、過渡電圧に対する耐性の向上を図れる。したがって、過渡電圧保護部品1では、過渡電圧保護特性の向上が図れる。
【0051】
本実施形態に係る過渡電圧保護部品1では、コイル部品9及びバリスタ部品10のそれぞれは、チップ部品である。過渡電圧保護部品1は、第一端子電極3及び第二端子電極4が配置されている基部2と、基部2に配置されていると共に、第一端子電極3に接続されている第一ランド電極5及び第三ランド電極7と、基部2に配置されていると共に、第二端子電極4に接続されている第二ランド電極6及び第四ランド電極8と、コイル部品9及びバリスタ部品10を封止する封止部11と、を備えている。コイル部品9は、第三ランド電極7及び第四ランド電極8のそれぞれに接続されており、バリスタ部品10は、第一ランド電極5及び第二ランド電極6のそれぞれに接続されている。この構成では、過渡電圧保護部品1を一つの部品として構成することができる。そのため、過渡電圧保護部品1では、過渡電圧保護特性の向上を図りつつ、小型化を図ることができる。
【0052】
本実施形態に係る過渡電圧保護部品1では、コイル部品9は、信号ラインL1の信号電圧よりも高い電圧が印加された場合に磁気飽和する。コイル部品9が磁気飽和する磁気飽和電圧は、バリスタ部品10のバリスタ電圧よりも小さい。この構成では、バリスタ部品10が動作する前に、コイル部品9において磁気飽和を生じさせることができる。
【0053】
本実施形態に係る過渡電圧保護部品1では、コイル部品9のインダクタンスとバリスタ部品10の静電容量とのマッチングにより、Sパラメータをコントロールすることができる。そのため、過渡電圧保護部品1において、コイル部品9のインダクタンスとバリスタ部品10の静電容量とを適切にマッチングさせることによって、所望のインピーダンス特性を得ることが可能となる。これにより、過渡電圧保護部品1では、低静電容量とすることができる。
【0054】
本実施形態に係る過渡電圧保護部品1では、
図5に示されるように、電流-電圧特性において、第一閾値電圧V1において切替部分を有すると共に、第二閾値電圧V2において切替部分を有する。このとき、第一閾値電圧V1と第二閾値電圧V2との間において、徐々に低抵抗となるなるように波形が連続している。そのため、第一閾値電圧V1と第二閾値電圧V2との間において、グランドGに対して一気に電流が流れない。これにより、グランドGの基準電位にずれが生じることを抑制できる。
【0055】
本実施形態に係る過渡電圧保護部品1では、コイル部品9とバリスタ部品10との間の距離G1(
図1参照)は、第一ランド電極5(第三ランド電極7)と第二ランド電極6(第四ランド電極8)との間の距離G2(
図2(a)参照)よりも小さい。この構成では、コイル部品9とバリスタ部品10との間に発生する寄生インダクタンスを減少させることができるため、特性(Sパラメータ)を良好にすることができる。
【0056】
[第二実施形態]
続いて、第二実施形態について説明する。
図7は、第二実施形態に係る過渡電圧保護部品を示す図である。
図7に示されるように、過渡電圧保護部品20は、コイル部品(コイル部)21と、バリスタ部品(第一過渡電圧保護部)22と、第一外部電極(第一電極)23と、第二外部電極(第二電極)24と、を備えている。
【0057】
図8は、
図7に示す過渡電圧保護部品20の断面図である。
図8に示されるように、コイル部品21は、素体21aと、第一外部電極21bと、第二外部電極21cと、コイル21dと、を備えている。コイル部品21は、フェライトビーズである。
【0058】
素体21aは、直方体形状を呈している。素体21aは、複数の誘電体層が積層されて構成されている。各誘電体層は、たとえば磁性材料により構成されている。磁性材料は、たとえば、Ni-Cu-Zn系フェライト材料、Ni-Cu-Zn-Mg系フェライト材料、及び、Ni-Cu系フェライト材料から選択された少なくとも一つを含んでいる。素体21aを構成する磁性材料には、Fe合金等が含まれていてもよい。素体21aは、非磁性材料から構成されていてもよい。非磁性材料は、たとえば、ガラスセラミック材料、及び、誘電体材料から選択された少なくとも一つを含んでいる。
【0059】
第一外部電極21bは、素体21aの一方の端面側に配置されている。第二外部電極21cは、素体21aの他方の端面側に配置されている。第一外部電極21b及び第二外部電極21cは、焼付電極であり、導電性材料(たとえば、Ni又はCu等)からなる。
【0060】
コイル21dは、素体21a内に配置されている。コイル21dは、複数のコイル導体が接続されて構成されている。複数のコイル導体は、コイルの導体として通常用いられる導電性材料(たとえば、Ni又はCu等)からなる。
【0061】
バリスタ部品22は、素体22aと、第一外部電極22bと、第二外部電極22cと、内部電極22dと、を備えている。
【0062】
素体22aは、直方体形状を呈している。素体22aは、複数の誘電体層が積層されて構成されている。各誘電体層は、たとえば、ZnO(酸化亜鉛)を主成分として含むと共に、副成分としてCo、希土類金属元素、IIIb族元素(B、Al、Ga、In)、Si、Cr、Mo、アルカリ金属元素(K、Rb、Cs)及びアルカリ土類金属元素(Mg、Ca、Sr、Ba)等の金属単体、及び、これらの酸化物を含み得る。
【0063】
第一外部電極22bは、素体22aの一方の端面側に配置されている。第二外部電極22cは、素体22aの他方の端面側に配置されている。第一外部電極22b及び第二外部電極22cは、焼付電極であり、導電性材料(たとえば、Ni又はCu等)からなる。
【0064】
内部電極22dは、素体22a内に配置されている。内部電極22dは、二つ配置されている。一方の内部電極22dは、第一外部電極22bに接続されている。他方の内部電極22dは、第二外部電極22cに接続されている。二つの内部電極22dは、対向して配置されている。内部電極22dは、導電性材料(たとえば、Ni又はCu等)からなる。
【0065】
第一外部電極23は、コイル部品21の第一外部電極21bとバリスタ部品22の第一外部電極22bとに接続されている。第一外部電極21bと第一外部電極22bとは接触しており、第一外部電極23は、第一外部電極21b及び第一外部電極22bを覆うように形成されている。
【0066】
第二外部電極24は、コイル部品21の第二外部電極21cとバリスタ部品22の第二外部電極22cとに接続されている。第二外部電極21cと第二外部電極22cとは接触しており、第二外部電極24は、第二外部電極21c及び第二外部電極22cを覆うように形成されている。第一外部電極23及び第二外部電極24は、たとえば電解めっき又は無電解めっきにより形成されるめっき(めっき層)であり、導電性材料(たとえば、Ni又はCu等)からなる。
【0067】
コイル部品21とバリスタ部品22とは、接合部25によって接合されている。接合部25は、コイル部品21の第一外部電極21b及びバリスタ部品22の第一外部電極22bと、コイル部品21の第二外部電極21c及びバリスタ部品22の第二外部電極22cと、コイル部品21の主面及びバリスタ部品22の主面と、によって形成されている空間に充填されている。接合部25は、コイル部品21の素体21aの主面とバリスタ部品22の素体22aの主面とを主として接合している。接合部25は、たとえば樹脂接着剤等である。
【0068】
過渡電圧保護部品20では、コイル部品21とバリスタ部品22とは、第一外部電極23と第二外部電極24との間において電気的に並列に接続されている。
【0069】
過渡電圧保護部品20を製造する場合には、コイル部品21とバリスタ部品22とを準備し、コイル部品21とバリスタ部品22とを接合部25によって接合する。その後、第一外部電極21b及び第一外部電極22bを覆うように第一外部電極23(めっき)を形成すると共に、第二外部電極21c及び第二外部電極22cを覆うように第二外部電極24(めっき)を形成する。これにより、過渡電圧保護部品20は、コイル部品21及びバリスタ部品22を含む一つの部品として製造される。
【0070】
図9は、
図7に示す過渡電圧保護部品20の回路図である。
図9に示されるように、過渡電圧保護部品20は、信号ラインL1とグランドラインL2との間に接続される。過渡電圧保護部品20は、第一外部電極23が信号ラインL1に接続され、第二外部電極24がグランドラインL2に接続される。すなわち、過渡電圧保護部品20は、第一外部電極23が信号ラインL1に接続され、第二外部電極24がグランドラインL2に接続されるように実装される。
【0071】
過渡電圧保護部品20のコイル部品21とバリスタ部品22とは、信号ラインL1とグランドラインL2との間において、電気的に並列に接続されている。
【0072】
コイル部品21は、所定電圧以上が印加された場合に磁気飽和が生じるように構成されている。所定電圧は、磁気飽和電圧であり、信号ラインL1を流れる信号電圧の最大値よりも高い電圧である。信号電圧は、信号ラインL1を流れる制御信号等の電圧である。
【0073】
バリスタ部品22は、所定電圧以上が印加された場合に動作するように構成されている。所定電圧は、バリスタ電圧(動作電圧)である。バリスタ電圧は、ブレイクダウン電圧であるともいえる。
【0074】
過渡電圧保護部品20において、コイル部品21が磁気飽和する磁気飽和電圧は、バリスタ部品22が動作するバリスタ電圧以下(磁気飽和電圧≦バリスタ電圧)である。本実施形態では、磁気飽和電圧は、バリスタ電圧よりも小さい。この構成では、過渡電圧保護部品20において、コイル部品21の磁気飽和の方が、バリスタ部品22の動作よりも先に生じる。
【0075】
以上説明したように、本実施形態に係る過渡電圧保護部品20は、コイル部品21を備えている。コイル部品21は、高い周波数成分を有する信号に対しては高抵抗(インピーダンス)であるが、ESDのような大電圧(負荷)に対しては磁気飽和を生じる。このように、コイル部品21では、磁気飽和が生じると、低抵抗となるため、電流を流す。そのため、過渡電圧保護部品20では、信号ラインL1に入力されたESD等の大電圧をグランドラインL2(グランドG)に逃がすことができる。これにより、過渡電圧保護部品20では、クランプ電圧の低減が図れる。また、過渡電圧保護部品20では、コイル部品21とバリスタ部品22とを備えているため、ESD等のエネルギーをコイル部品21とバリスタ部品22とに配分することができる。そのため、過渡電圧保護部品20では、過渡電圧に対する耐性の向上を図れる。したがって、過渡電圧保護部品20では、過渡電圧保護特性の向上が図れる。
【0076】
本実施形態に係る過渡電圧保護部品20では、コイル部品21とバリスタ部品22とが接合部25によって接合されている。接合部25は樹脂からなる。そのため、過渡電圧保護部品20では、コイル部品21及びバリスタ部品22の線膨張を接合部25によって吸収し得る。そのため、過渡電圧保護部品20では、熱特性の向上を図ることができる。
【0077】
[第三実施形態]
続いて、第三実施形態について説明する。
図10は、第三実施形態に係る過渡電圧保護部品の断面図である。
図10に示されるように、過渡電圧保護部品20Aは、コイル部品(コイル部)21と、第一バリスタ部品(第一過渡電圧保護部)22と、第二バリスタ部品(第二過渡電圧保護部)26と、第一外部電極23と、第二外部電極24と、を備えている。第一バリスタ部品22は、第二実施形態のバリスタ部品22と同じ構成である。
【0078】
第二バリスタ部品26は、素体26aと、第一外部電極26bと、第二外部電極26cと、内部電極26dと、を備えている。
【0079】
素体26aは、直方体形状を呈している。素体26aは、複数の誘電体層が積層されて構成されている。各誘電体層は、たとえば、ZnO(酸化亜鉛)を主成分として含むと共に、副成分としてCo、希土類金属元素、IIIb族元素(B、Al、Ga、In)、Si、Cr、Mo、アルカリ金属元素(K、Rb、Cs)及びアルカリ土類金属元素(Mg、Ca、Sr、Ba)等の金属単体、及び、これらの酸化物を含み得る。
【0080】
第一外部電極26bは、素体26aの一方の端面側に配置されている。第二外部電極26cは、素体26aの他方の端面側に配置されている。第一外部電極26b及び第二外部電極26cは、焼付電極であり、導電性材料(たとえば、Ni又はCu等)からなる。
【0081】
内部電極26dは、素体26a内に配置されている。内部電極26dは、六つ配置されている。複数(三つ)の内部電極26dは、第一外部電極26bに接続されている。複数(三つ)の内部電極26dは、第二外部電極26cに接続されている。内部電極26dは、対向して配置されている。内部電極26dは、導電性材料(たとえば、Ni又はCu等)からなる。
【0082】
第一外部電極23は、第一バリスタ部品22の第二外部電極22cと第二バリスタ部品26の第二外部電極26cとに接続されている。第二外部電極22cと第二外部電極26cとは接触しており、第一外部電極23は、第二外部電極22c及び第二外部電極26cを覆うように形成されている。
【0083】
第二外部電極24は、コイル部品21の第一外部電極21bと第一バリスタ部品22の第一外部電極22bとに接続されている。第一外部電極21bと第一外部電極22bとは接触しており、第二外部電極24は、第一外部電極22b及び第一外部電極22bを覆うように形成されている。第一外部電極23及び第二外部電極24は、たとえば電解めっき又は無電解めっきにより形成されるめっき(めっき層)であり、導電性材料(たとえば、Ni又はCu等)からなる。
【0084】
過渡電圧保護部品20Aでは、第一バリスタ部品22の素体22aの主面には、接続電極22eが配置されている。過渡電圧保護部品20Aでは、コイル部品21の第二外部電極21c及び第二バリスタ部品26の第一外部電極26bは、その端面同士が対向して配置されると共に、接続電極22eに配置されている。
【0085】
過渡電圧保護部品20Aでは、第一バリスタ部品22とコイル部品21及び第二バリスタ部品26とは、第一外部電極23と第二外部電極24との間において電気的に並列に接続されている。コイル部品21と第二バリスタ部品26とは、第一外部電極23と第二外部電極24との間において電気的に直列に接続されている。
【0086】
過渡電圧保護部品20Aを製造する場合には、コイル部品21、第一バリスタ部品22及び第二バリスタ部品26を準備し、コイル部品21と第一バリスタ部品22とを接合部25によって接合すると共に、第二バリスタ部品26と第一バリスタ部品22とを接合部25によって接合する。その後、第一外部電極21b及び第一外部電極22bを覆うように第一外部電極23を形成すると共に、第二外部電極26c及び第二外部電極22cを覆うように第二外部電極24を形成する。
【0087】
図11は、
図10に示す過渡電圧保護部品の回路図である。
図11に示されるように、過渡電圧保護部品20Aは、信号ラインL1とグランドラインL2との間に接続される。過渡電圧保護部品20Aは、第一外部電極23が信号ラインL1に接続され、第二外部電極24がグランドラインL2に接続される。すなわち、過渡電圧保護部品20Aは、第一外部電極23が信号ラインL1に接続され、第二外部電極24がグランドラインL2に接続されるように実装される。
【0088】
コイル部品21は、所定電圧以上が印加された場合に磁気飽和が生じるように構成されている。所定電圧は、第一バリスタ部品22が動作する動作電圧(バリスタ電圧)及び第二バリスタ部品26が動作する動作電圧(バリスタ電圧)よりも小さい。所定電圧は、信号電圧よりも低くてもよい。
【0089】
第一バリスタ部品22は、所定電圧以上が印加された場合に動作するように構成されている。所定電圧は、バリスタ電圧(動作電圧)である。バリスタ電圧は、ブレイクダウン電圧であるともいえる。
【0090】
第二バリスタ部品26は、所定電圧以上が印加された場合に動作するように構成されている。第二バリスタ部品26が動作するバリスタ電圧は、信号ラインL1の信号電圧よりも高い。第二バリスタ部品26のバリスタ電圧及びコイル部品21の磁気飽和電圧の合計の電圧は、第一バリスタ部品22のバリスタ電圧よりも小さい。
【0091】
過渡電圧保護部品20Aでは、第一バリスタ部品22と第二バリスタ部品26及びコイル部品21とは、信号ラインL1とグランドラインL2との間において、電気的に並列に接続されている。第二バリスタ部品26とコイル部品21とは、信号ラインL1とグランドラインL2との間において、第二バリスタ部品26及びコイル部品21の順に電気的に直列に接続されている。
【0092】
図12は、過渡電圧保護部品20Aの電流-電圧特性を示す図である。
図12では、横軸は電圧(Voltage)[V]、縦軸は、電流(Current)[A]を示している。
図12では、TLP(Transmission Line Pulse)測定によって測定した結果を示している。
図12に示されるように、過渡電圧保護部品20Aでは、電圧に対して、電流が非線形に増加する。過渡電圧保護部品20Aでは、コイル部品21及び第二バリスタ部品26が直列に接続されているため、バリスタの特性が表れている。
【0093】
以上説明したように、本実施形態に係る過渡電圧保護部品20Aは、コイル部品21を備えている。コイル部品21は、高い周波数成分を有する信号に対しては高抵抗(インピーダンス)であるが、ESDのような大電圧(負荷)に対しては磁気飽和を生じる。このように、コイル部品21では、磁気飽和が生じると、低抵抗となるため、電流を流す。そのため、過渡電圧保護部品20Aでは、信号ラインL1に入力されたESD等の大電圧をグランドラインL2(グランドG)に逃がすことができる。これにより、過渡電圧保護部品20Aでは、クランプ電圧の低減が図れる。また、過渡電圧保護部品20Aでは、コイル部品21、第一バリスタ部品22及び第二バリスタ部品26を備えているため、ESD等のエネルギーをコイル部品21、第一バリスタ部品22及び第二バリスタ部品26に配分することができる。そのため、過渡電圧保護部品20Aでは、過渡電圧に対する耐性の向上を図れる。したがって、過渡電圧保護部品20Aでは、過渡電圧保護特性の向上が図れる。
【0094】
本実施形態に係る過渡電圧保護部品20Aでは、第二バリスタ部品26とコイル部品21とは、信号ラインL1側から第二バリスタ部品26及びコイル部品21の順に直列に接続されている。この構成では、第二バリスタ部品26のバリスタ電圧及びコイル部品21の磁気飽和電圧の二つの合計の電圧よりも高い電圧が印加された場合に、低抵抗となり電流を流す。たとえば、
図12に示されるように、数十Vの電圧で動作させようとする場合において、コイル部品21のみで対応しようとすると、数十Vに対応できるコイル部品21を設ける必要がある。この場合、コイル部品21が大型化し得るため、過渡電圧保護部品20Aの小型化を図ることが難しい。過渡電圧保護部品20Aでは、第二バリスタ部品26及びコイル部品21を直列に接続しているため、コイル部品21の磁気飽和電圧が小さくてもよい。そのため、小型のコイル部品21を用いることができるので、部品の小型化を図れる。
【0095】
上記実施形態では、コイル部品21と第二バリスタ部品26とは、第一外部電極23と第二外部電極24との間において電気的に直列に接続されており、第二バリスタ部品26とコイル部品21とは、信号ラインL1とグランドラインL2との間において、第二バリスタ部品26及びコイル部品21の順に電気的に直列に接続されている形態を一例に説明した。しかし、信号ラインL1とグランドラインL2との間において、コイル部品21及び第二バリスタ部品26の順に電気的に直列に接続されていてもよい。
【0096】
[第四実施形態]
続いて、第四実施形態について説明する。
図13は、第四実施形態に係る過渡電圧保護部品の斜視図である。
図14は、
図13に示す過渡電圧保護部品の分解斜視図である。
図13又は
図14に示されるように、過渡電圧保護部品30は、素体31と、第一外部電極(第一電極)32と、第二外部電極(第二電極)33と、コイル部34と、バリスタ部(第一過渡電圧保護部)35と、を備えている。
【0097】
素体31は、複数の誘電体層36が積層されて構成されている。素体31において、コイル部34を構成する各誘電体層36は、たとえば磁性材料により構成されている。磁性材料は、たとえば、Ni-Cu-Zn系フェライト材料、Ni-Cu-Zn-Mg系フェライト材料、及び、Ni-Cu系フェライト材料から選択された少なくとも一つを含んでいる。コイル部34を構成する各誘電体層36の磁性材料には、Fe合金等が含まれていてもよい。コイル部34を構成する各誘電体層36は、非磁性材料から構成されていてもよい。非磁性材料は、たとえば、ガラスセラミック材料、及び、誘電体材料から選択された少なくとも一つを含んでいる。
【0098】
素体31において、バリスタ部35を構成する各誘電体層36は、たとえば、ZnO(酸化亜鉛)を主成分として含むと共に、副成分としてCo、希土類金属元素、IIIb族元素(B、Al、Ga、In)、Si、Cr、Mo、アルカリ金属元素(K、Rb、Cs)及びアルカリ土類金属元素(Mg、Ca、Sr、Ba)等の金属単体、及び、これらの酸化物を含み得る。
【0099】
第一外部電極32は、素体31の一方の端面側に配置されている。第二外部電極33は、素体31の他方の端面側に配置されている。第一外部電極32及び第二外部電極33は、導電性材料(たとえば、Ni又はCu等)からなる。
【0100】
コイル部34は、素体31の一方の主面側に設けられている。コイル部34は、第一コイル導体37、第二コイル導体38及び第三コイル導体39により構成されている。第一コイル導体37、第二コイル導体38及び第三コイル導体39は、素体31内に配置されており、コイルを構成している。第一コイル導体37、第二コイル導体38及び第三コイル導体39は、互いに電気的に接続されている。第一コイル導体37の一端部は、第一外部電極32に接続されている。第三コイル導体39の一端部は、第二外部電極33に接続されている。
【0101】
バリスタ部35は、素体31の他方の主面側に設けられている。バリスタ部35は、第一内部電極40及び第二内部電極41により構成されている。第一内部電極40及び第二内部電極41は、素体31内に配置されている。第一内部電極40は、第一外部電極32に接続されている。第二内部電極41は、第二外部電極33に接続されている。
【0102】
過渡電圧保護部品30では、コイル部34とバリスタ部35とは、第一外部電極32と第二外部電極33との間において電気的に並列に接続されている。
【0103】
図15は、
図13に示す過渡電圧保護部品の回路図である。
図15に示されるように、過渡電圧保護部品30は、信号ラインL1とグランドラインL2との間に接続される。過渡電圧保護部品30は、第一外部電極32が信号ラインL1に接続され、第二外部電極33がグランドラインL2に接続される。すなわち、過渡電圧保護部品30は、第一外部電極32が信号ラインL1に接続され、第二外部電極33がグランドラインL2に接続されるように実装される。
【0104】
過渡電圧保護部品30のコイル部34とバリスタ部35とは、信号ラインL1とグランドラインL2との間において、電気的に並列に接続されている。
【0105】
コイル部34は、所定電圧以上が印加された場合に磁気飽和が生じるように構成されている。所定電圧は、磁気飽和電圧であり、信号ラインL1を流れる信号電圧の最大値よりも高い電圧である。信号電圧は、信号ラインL1を流れる制御信号等の電圧である。
【0106】
バリスタ部35は、所定電圧以上が印加された場合に動作するように構成されている。所定電圧は、バリスタ電圧(動作電圧)である。バリスタ電圧は、ブレイクダウン電圧であるともいえる。
【0107】
過渡電圧保護部品30において、コイル部34が磁気飽和する磁気飽和電圧は、バリスタ部35が動作するバリスタ電圧以下(磁気飽和電圧≦バリスタ電圧)である。本実施形態では、磁気飽和電圧は、バリスタ電圧よりも小さい。この構成では、過渡電圧保護部品30において、コイル部34の磁気飽和の方が、バリスタ部35の動作よりも先に生じる。
【0108】
以上説明したように、本実施形態に係る過渡電圧保護部品30は、コイル部34を備えている。コイル部34は、高い周波数成分を有する信号に対しては高抵抗(インピーダンス)であるが、ESDのような大電圧(負荷)に対しては磁気飽和を生じる。このように、コイル部34では、磁気飽和が生じると、低抵抗となるため、電流を流す。そのため、過渡電圧保護部品30では、信号ラインL1に入力されたESD等の大電圧をグランドラインL2(グランドG)に逃がすことができる。これにより、過渡電圧保護部品30では、クランプ電圧の低減が図れる。また、過渡電圧保護部品30では、コイル部34とバリスタ部35とを備えているため、ESD等のエネルギーをコイル部34とバリスタ部35とに配分することができる。そのため、過渡電圧保護部品30では、過渡電圧に対する耐性の向上を図れる。したがって、過渡電圧保護部品30では、過渡電圧保護特性の向上が図れる。
【0109】
本実施形態に係る過渡電圧保護部品30は、第一外部電極32及び第二外部電極33のそれぞれが配置されていると素体31を備えている。コイル部34及びバリスタ部35は、素体31内に配置されている。この構成では、過渡電圧保護部品30を一つの部品として構成することができる。そのため、過渡電圧保護部品30では、過渡電圧保護特性の向上を図りつつ、小型化を図ることができる。
【0110】
[第五実施形態]
続いて、第五実施形態について説明する。
図16は、第五実施形態に係る過渡電圧保護部品の斜視図である。
図17は、
図16に示す過渡電圧保護部品の側面図である。
図18は、
図16に示す過渡電圧保護部品の上面図である。
図19は、
図16に示す過渡電圧保護部品の端面図である。
図16~
図19のいずれかに示されるように、過渡電圧保護部品50は、素体51と、第一外部電極(第一電極)52と、第二外部電極(第二電極)53と、接続電極54と、コイル部55と、第一バリスタ部(第一過渡電圧保護部)56と、第二バリスタ部(第二過渡電圧保護部)57と、を備えている。
【0111】
素体51は、複数の誘電体層が積層されて構成されている。素体51において、コイル部55を構成する各誘電体層は、たとえば磁性材料により構成されている。磁性材料は、たとえば、Ni-Cu-Zn系フェライト材料、Ni-Cu-Zn-Mg系フェライト材料、及び、Ni-Cu系フェライト材料から選択された少なくとも一つを含んでいる。コイル部55を構成する各誘電体層の磁性材料には、Fe合金等が含まれていてもよい。コイル部55を構成する各誘電体層は、非磁性材料から構成されていてもよい。非磁性材料は、たとえば、ガラスセラミック材料、及び、誘電体材料から選択された少なくとも一つを含んでいる。
【0112】
素体51において、第一バリスタ部56及び第二バリスタ部57を構成する各誘電体層は、たとえば、ZnO(酸化亜鉛)を主成分として含むと共に、副成分としてCo、希土類金属元素、IIIb族元素(B、Al、Ga、In)、Si、Cr、Mo、アルカリ金属元素(K、Rb、Cs)及びアルカリ土類金属元素(Mg、Ca、Sr、Ba)等の金属単体、及び、これらの酸化物を含み得る。
【0113】
第一外部電極52は、素体51の一方の端面側に配置されている。第二外部電極53は、素体51の他方の端面側に配置されている。接続電極54は、素体51の側面に配置されている。第一外部電極52、第二外部電極53及び接続電極54は、導電性材料(たとえば、Ni又はCu等)からなる。
【0114】
コイル部55は、素体51の中央部に設けられている。コイル部55は、第一コイル導体55a、第二コイル導体55b及び第三コイル導体55cにより構成されている。第一コイル導体55a、第二コイル導体55b及び第三コイル導体55cは、素体51内に配置されており、コイルを構成している。第一コイル導体55a、第二コイル導体55b及び第三コイル導体55cは、互いに電気的に接続されている。第一コイル導体55aの一端部は、接続電極54に接続されている。第三コイル導体55cの一端部は、第二外部電極53に接続されている。
【0115】
第一バリスタ部56は、素体51の他方の主面側に設けられている。第一バリスタ部56は、第一内部電極56a及び第二内部電極56bにより構成されている。第一内部電極56a及び第二内部電極56bは、素体51内に配置されている。第一内部電極56aは、第一外部電極52に接続されている。第二内部電極56bは、第二外部電極53に接続されている。
【0116】
第二バリスタ部57は、素体51の一方の主面側に設けられている。第二バリスタ部57は、二つの第一内部電極57a及び二つの第二内部電極57bにより構成されている。第一内部電極57a及び第二内部電極57bは、素体51内に配置されている。第一内部電極57aは、接続電極54に接続されている。第二内部電極57bは、第一外部電極52に接続されている。
【0117】
過渡電圧保護部品50では、第一バリスタ部56とコイル部55及び第二バリスタ部57とは、第一外部電極52と第二外部電極53との間において電気的に並列に接続されている。コイル部55と第二バリスタ部57とは、第一外部電極52と第二外部電極53との間において電気的に直列に接続されている。
【0118】
図20は、
図16に示す過渡電圧保護部品の回路図である。
図20に示されるように、過渡電圧保護部品50は、信号ラインL1とグランドラインL2との間に接続される。過渡電圧保護部品50は、第一外部電極52が信号ラインL1に接続され、第二外部電極53がグランドラインL2に接続される。すなわち、過渡電圧保護部品50は、第一外部電極52が信号ラインL1に接続され、第二外部電極53がグランドラインL2に接続されるように実装される。
【0119】
コイル部55は、所定電圧以上が印加された場合に磁気飽和が生じるように構成されている。所定電圧は、第一バリスタ部56が動作する動作電圧(バリスタ電圧)及び第二バリスタ部57が動作する動作電圧(バリスタ電圧)よりも小さい。所定電圧は、信号電圧よりも低くてもよい。
【0120】
第一バリスタ部56は、所定電圧以上が印加された場合に動作するように構成されている。所定電圧は、バリスタ電圧(動作電圧)である。バリスタ電圧は、ブレイクダウン電圧であるともいえる。
【0121】
第二バリスタ部57は、所定電圧以上が印加された場合に動作するように構成されている。第二バリスタ部57が動作するバリスタ電圧は、信号ラインL1の信号電圧よりも高い。第二バリスタ部57のバリスタ電圧及びコイル部55の磁気飽和電圧の合計の電圧は、第一バリスタ部56のバリスタ電圧よりも小さい。
【0122】
過渡電圧保護部品50では、第一バリスタ部56と第二バリスタ部57及びコイル部55とは、信号ラインL1とグランドラインL2との間において、電気的に並列に接続されている。第二バリスタ部57とコイル部55とは、信号ラインL1とグランドラインL2との間において、第二バリスタ部57及びコイル部55の順に電気的に直列に接続されている。
【0123】
以上説明したように、本実施形態に係る過渡電圧保護部品50は、コイル部55を備えている。コイル部55は、高い周波数成分を有する信号に対しては高抵抗(インピーダンス)であるが、ESDのような大電圧(負荷)に対しては磁気飽和を生じる。このように、コイル部55では、磁気飽和が生じると、低抵抗となるため、電流を流す。そのため、過渡電圧保護部品50では、信号ラインL1に入力されたESD等の大電圧をグランドラインL2(グランドG)に逃がすことができる。これにより、過渡電圧保護部品50では、クランプ電圧の低減が図れる。また、過渡電圧保護部品50では、コイル部55、第一バリスタ部56及び第二バリスタ部57を備えているため、ESD等のエネルギーをコイル部55、第一バリスタ部56及び第二バリスタ部57に配分することができる。そのため、過渡電圧保護部品50では、過渡電圧に対する耐性の向上を図れる。したがって、過渡電圧保護部品50では、過渡電圧保護特性の向上が図れる。
【0124】
本実施形態に係る過渡電圧保護部品50では、第二バリスタ部57とコイル部55とは、信号ラインL1側から第二バリスタ部57及びコイル部55の順に直列に接続されている。この構成では、第二バリスタ部57のバリスタ電圧及びコイル部55の磁気飽和電圧の二つの合計の電圧よりも高い電圧が印加された場合に、低抵抗となり電流を流す。たとえば、数十Vの電圧で動作させようとする場合において、コイル部55のみで対応しようとすると、数十Vに対応できるコイル部55を設ける必要がある。この場合、コイル部55が大型化し得るため、過渡電圧保護部品50の小型化を図ることが難しい。過渡電圧保護部品50では、第二バリスタ部57及びコイル部55を直列に接続しているため、コイル部55の磁気飽和電圧が小さくてもよい。そのため、小型のコイル部55を用いることができるので、部品の小型化を図れる。
【0125】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0126】
上記実施形態では、過渡電圧保護部としてバリスタ部品10を用いる形態を一例に説明した。しかし、過渡電圧保護部は、たとえば、ダイオードであってもよい。
【0127】
上記実施形態では、
図3に示されるように、一回目の切替部分(第一閾値電圧V1)と二回目の切替部分(第二閾値電圧V2)との間では、電流が連続的に流れる形態を一例に説明した。しかし、
図21に示されるように、過渡電圧保護回路では、一回目の切替部分(第一閾値電圧V1)と二回目の切替部分(第二閾値電圧V2)との間において、波形が非連続となってもよい。この構成では、一回目の切替部分作の後、直ぐに低抵抗となり、電流を流す。そのため、クランプ特性の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0128】
1,20,20A,30,50…過渡電圧保護部品、2…基部、3…第一端子電極(第一電極)、4…第二端子電極(第二電極)、5…第一ランド電極、6…第二ランド電極、7…第三ランド電極(第一ランド電極)、8…第四ランド電極(第二ランド電極)、9,21…コイル部品(コイル部)、10,22…バリスタ部品(第一過渡電圧保護部)、11…封止部、23,32,52…第一外部電極(第一電極)、24,33,53…第二外部電極(第二電極)、25…接合部、26…第二バリスタ部品(第二過渡電圧保護部)、34,55…コイル部、35…バリスタ部(第一過渡電圧保護部)、56…第一バリスタ部(第一過渡電圧保護部)、57…第二バリスタ部(第二過渡電圧保護部)、G…グランド、V1…第一閾値電圧、V2…第二閾値電圧。