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7746231コイル状金属帯エッジ異常検出装置、該方法および該プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-19
(45)【発行日】2025-09-30
(54)【発明の名称】コイル状金属帯エッジ異常検出装置、該方法および該プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/892 20060101AFI20250922BHJP
【FI】
G01N21/892 B
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022115367
(22)【出願日】2022-07-20
(65)【公開番号】P2023033132
(43)【公開日】2023-03-09
【審査請求日】2024-09-02
(31)【優先権主張番号】P 2021138910
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100111453
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 智
(72)【発明者】
【氏名】亀山 修吾
(72)【発明者】
【氏名】乾 昌広
(72)【発明者】
【氏名】福島 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】平安山 涼
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-210388(JP,A)
【文献】特開2004-037399(JP,A)
【文献】特開2008-209134(JP,A)
【文献】特開2019-090643(JP,A)
【文献】特開平08-086633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
G01B 11/00 - G01B 11/30
G06T 1/00 - G06T 19/20
G06V 10/00 - G06V 40/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル状に巻かれた金属帯のエッジ部を軸方向から撮像した画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部で取得した画像を平滑化処理することによって平滑化画像を生成する平滑化処理部と、
前記平滑化処理部で生成した平滑化画像に基づいてエッジ部における異常の有無を判定する異常判定部とを備え、
前記平滑化処理部は、前記画像取得部で取得した画像における少なくとも前記金属帯を写し込んだ金属帯領域画像をコイルの周方向に沿って平滑化処理することによって前記平滑化画像として周方向平滑化画像を生成し
前記異常判定部は、前記金属帯領域画像と、前記平滑化処理部で生成した周方向平滑化画像との輝度の差分画像を生成する差分画像生成部と、前記差分画像生成部で生成した差分画像に基づいてエッジ部における異常の有無を判定する判定部とを備える、
コイル状金属帯エッジ異常検出装置。
【請求項2】
コイル状に巻かれた金属帯のエッジ部を軸方向から撮像した画像を取得する画像取得部と
前記画像取得部で取得した画像を平滑化処理することによって平滑化画像を生成する平滑化処理部と
前記平滑化処理部で生成した平滑化画像に基づいてエッジ部における異常の有無を判定する異常判定部とを備え
前記平滑化処理部は、前記画像取得部で取得した画像における少なくとも前記金属帯を写し込んだ金属帯領域画像をコイルの径方向に沿って平滑化処理することによって前記平滑化画像の1つとして径方向平滑化画像を生成し、前記生成した径方向平滑化画像をコイルの周方向に沿って平滑化処理することによって前記平滑化画像の1つとして周方向平滑化画像を生成し、
前記異常判定部は、前記平滑化処理部で生成した径方向平滑化画像と、前記平滑化処理部で生成した周方向平滑化画像との輝度の差分画像を生成する差分画像生成部と、前記差分画像生成部で生成した差分画像に基づいてエッジ部における異常の有無を判定する判定部とを備える、
コイル状金属帯エッジ異常検出装置。
【請求項3】
コイル状に巻かれた金属帯のエッジ部を軸方向から撮像した画像を取得する画像取得部と
前記画像取得部で取得した画像を平滑化処理することによって平滑化画像を生成する平滑化処理部と
前記平滑化処理部で生成した平滑化画像に基づいてエッジ部における異常の有無を判定する異常判定部とを備え
前記平滑化処理部は、前記画像取得部で取得した画像における少なくとも前記金属帯を写し込んだ金属帯領域画像を所定の第1角度範囲でコイルの周方向に沿って平滑化処理することによって前記平滑化画像の1つとして第1角度範囲平滑化画像を生成し、前記金属帯領域画像を前記第1角度範囲とは異なる所定の第2角度範囲でコイルの周方向に沿って平滑化処理することによって前記平滑化画像の他の1つとして第2角度範囲平滑化画像を生成し、
前記異常判定部は、前記平滑化処理部で生成した第1角度平滑化画像と、前記平滑化処理部で生成した第2角度平滑化画像との輝度の差分画像を生成する差分画像生成部と、前記差分画像生成部で生成した差分画像に基づいてエッジ部における異常の有無を判定する判定部とを備える、
イル状金属帯エッジ異常検出装置。
【請求項4】
コイル状に巻かれた金属帯のエッジ部を軸方向から撮像した画像を取得する画像取得部と
前記画像取得部で取得した画像を平滑化処理することによって平滑化画像を生成する平滑化処理部と
前記平滑化処理部で生成した平滑化画像に基づいてエッジ部における異常の有無を判定する異常判定部とを備え
前記平滑化処理部は、前記画像取得部で取得した画像における少なくとも前記金属帯を写し込んだ金属帯領域画像をコイルの周方向に沿って所定の第1回数で繰り返して平滑化処理することによって前記平滑化画像の1つとして第1回数平滑化画像を生成し、前記金属帯領域画像をコイルの周方向に沿って前記第1回数とは異なる所定の第2回数で繰り返して平滑化処理することによって前記平滑化画像の他の1つとして第2回数平滑化画像を生成し、
前記異常判定部は、前記平滑化処理部で生成した第1回数平滑化画像と、前記平滑化処理部で生成した第2回数平滑化画像との輝度の差分画像を生成する差分画像生成部と、前記差分画像生成部で生成した差分画像に基づいてエッジ部における異常の有無を判定する判定部とを備える、
イル状金属帯エッジ異常検出装置。
【請求項5】
前記平滑化処理部は、前記画像取得部で取得した画像を極座標変換してから平滑化処理する、
請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載のコイル状金属帯エッジ異常検出装置。
【請求項6】
コイル状に巻かれた金属帯のエッジ部を軸方向から撮像した画像を取得する画像取得工程と、
前記画像取得工程で取得した画像を平滑化処理することによって平滑化画像を生成する平滑化処理工程と、
前記平滑化処理工程で生成した平滑化画像に基づいてエッジ部における異常の有無を判定する異常判定工程とを備え、
前記平滑化処理工程は、前記画像取得工程で取得した画像における少なくとも前記金属帯を写し込んだ金属帯領域画像をコイルの周方向に沿って平滑化処理することによって前記平滑化画像として周方向平滑化画像を生成し
前記異常判定工程は、前記金属帯領域画像と、前記平滑化処理工程で生成した周方向平滑化画像との輝度の差分画像を生成する差分画像生成工程と、前記差分画像生成工程で生成した差分画像に基づいてエッジ部における異常の有無を判定する判定工程とを備える、
コイル状金属帯エッジ異常検出方法。
【請求項7】
コイル状に巻かれた金属帯のエッジ部を軸方向から撮像した画像を取得する画像取得工程と
前記画像取得工程で取得した画像を平滑化処理することによって平滑化画像を生成する平滑化処理工程と
前記平滑化処理工程で生成した平滑化画像に基づいてエッジ部における異常の有無を判定する異常判定工程とを備え
前記平滑化処理工程は、前記画像取得工程で取得した画像における少なくとも前記金属帯を写し込んだ金属帯領域画像をコイルの径方向に沿って平滑化処理することによって前記平滑化画像の1つとして径方向平滑化画像を生成し、前記生成した径方向平滑化画像をコイルの周方向に沿って平滑化処理することによって前記平滑化画像の1つとして周方向平滑化画像を生成し
前記異常判定工程は、前記平滑化処理工程で生成した径方向平滑化画像と、前記平滑化処理工程で生成した周方向平滑化画像との輝度の差分画像を生成する差分画像生成工程と、前記差分画像生成工程で生成した差分画像に基づいてエッジ部における異常の有無を判定する判定工程とを備える、
コイル状金属帯エッジ異常検出方法。
【請求項8】
コンピュータに、
コイル状に巻かれた金属帯のエッジ部を軸方向から撮像した画像を取得する画像取得工程と、
前記画像取得工程で取得した画像を平滑化処理することによって平滑化画像を生成する平滑化処理工程と、
前記平滑化処理工程で生成した平滑化画像に基づいてエッジ部における異常の有無を判定する異常判定工程とを実行させるコイル状金属帯エッジ異常検出プログラムであって
前記平滑化処理工程は、前記画像取得工程で取得した画像における少なくとも前記金属帯を写し込んだ金属帯領域画像をコイルの周方向に沿って平滑化処理することによって前記平滑化画像として周方向平滑化画像を生成し
前記異常判定工程は、前記金属帯領域画像と、前記平滑化処理工程で生成した周方向平滑化画像との輝度の差分画像を生成する差分画像生成工程と、前記差分画像生成工程で生成した差分画像に基づいてエッジ部における異常の有無を判定する判定工程とを備える
コイル状金属帯エッジ異常検出プログラム。
【請求項9】
前記平滑化処理部は、前記画像取得部で取得した画像における少なくとも前記金属帯を写し込んだ金属帯領域画像を所定の第3角度範囲でコイルの周方向に沿って平滑化処理することによって前記平滑化画像の1つとして第3角度範囲平滑化画像を生成し、前記金属帯領域画像を前記第3角度範囲とは異なる所定の第4角度範囲でコイルの周方向に沿って平滑化処理することによって前記平滑化画像の他の1つとして第4角度範囲平滑化画像を生成し、
前記平滑化処理部で生成した第3および第4角度範囲平滑化画像に基づいて、エッジ部における異常のサイズを求める異常サイズ処理部をさらに備える、
請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載のコイル状金属帯エッジ異常検出装置。
【請求項10】
互いに異なる複数の前記第3角度範囲と前記第4角度範囲との組み合わせがあり、
前記平滑化処理部は、前記複数の組み合わせそれぞれについて、前記第3および第4角度範囲平滑化画像それぞれを生成し、
前記異常サイズ処理部は、前記複数の組み合わせそれぞれについて、前記異常のサイズを求める、
請求項9に記載のコイル状金属帯エッジ異常検出装置。
【請求項11】
前記平滑化処理部は、前記画像取得部で取得した画像における少なくとも前記金属帯を写し込んだ金属帯領域画像をコイルの周方向に沿って所定の第3回数で繰り返して平滑化処理することによって前記平滑化画像の1つとして第3回数平滑化画像を生成し、前記金属帯領域画像をコイルの周方向に沿って前記第3回数とは異なる所定の第4回数で繰り返して平滑化処理することによって前記平滑化画像の他の1つとして第4回数平滑化画像を生成し、
前記平滑化処理部で生成した第3および第4回数平滑化画像に基づいて、エッジ部における異常のサイズを求める異常サイズ処理部をさらに備える、
請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載のコイル状金属帯エッジ異常検出装置。
【請求項12】
互いに異なる複数の前記第3回数と前記第4回数との組み合わせがあり、
前記平滑化処理部は、前記複数の組み合わせそれぞれについて、前記第3および第4回数平滑化画像それぞれを生成し、
前記異常サイズ処理部は、前記複数の組み合わせそれぞれについて、前記異常のサイズを求める、
請求項11に記載のコイル状金属帯エッジ異常検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル状に巻かれた金属帯のエッジ部における異常の有無を検出するコイル状金属帯エッジ異常検出装置、コイル状金属帯エッジ異常検出方法およびコイル状金属帯エッジ異常検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば鋼帯等の金属帯は、一般に、表面等の品質検査を実施した後に、コイル状に巻かれた状態で出荷される。この品質検査に関する技術は、例えば特許文献1および特許文献2に開示されている。
【0003】
この特許文献1に開示された金属帯エッジ部撮像装置は、金属帯のエッジ部の切断面を撮像する撮像手段を備え、該撮像手段により撮像された撮像画像に基づいてエッジ部の品質管理を行う装置である。
【0004】
前記特許文献2に開示されたコイル状鋼板の側面撮像方法は、コイル状に巻かれた鋼帯の側面に照明装置から光を照射し、照射された前記鋼帯の側面を撮像装置により撮像し、撮像した画像を表示装置に表示し、表示された画像に基づいて前記鋼帯の幅端部に発生する欠陥および/または形状不良の検査を行うための方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-219181号公報
【文献】特開2010-210388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記特許文献1に開示された金属帯エッジ部撮像装置は、板厚方向の変動を抑制するサポートロールや金属帯の幅方向の位置データを取得する計測手段やそのデータに基づいて撮像手段として位置を変動させる手段が必要なため、大がかりな装置となり、設置場所に空間的な余裕がなければ、設置ができない。また金属帯の搬送速度が速いと金属帯の蛇行時などでの位置変動への追随が難しい課題がある。
【0007】
前記特許文献2では、欠陥の有無、異常は、表示装置に表示された画像をオペレータが観察することによって前記オペレータにより実施されている。前記特許文献2では、コイル状鋼板の側面を良好に撮像できることが目的とされている。これらのため、前記特許文献2には、コイル状の金属帯におけるエッジ部の検出方法は、記載も示唆もされていない。
【0008】
また、一般的に知られる画像の明暗による金属帯の欠陥を自動検出する手法では、コイル状の金属帯のいわゆる巻き乱れによって軸方向に生じた凹凸や金属帯間に生じている隙間が有るおそれがあり、これら凹凸や隙間と、エッジ部に生じた割れ等の異常とを区別することが難しい。
【0009】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、コイル状の金属帯におけるエッジ部を検査する際に、誤検出を低減できるコイル状金属帯エッジ異常検出装置、コイル状金属帯エッジ異常検出方法およびコイル状金属帯エッジ異常検出プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。すなわち、本発明の一態様にかかるコイル状金属帯エッジ異常検出装置は、コイル状に巻かれた金属帯のエッジ部を軸方向から撮像した画像を取得する画像取得部と、前記画像取得部で取得した画像を平滑化処理することによって平滑化画像を生成する平滑化処理部と、前記平滑化処理部で生成した平滑化画像に基づいてエッジ部における異常の有無を判定する異常判定部とを備える。
【0011】
このようなコイル状金属帯エッジ異常検出装置は、平滑化画像を生成するので、前記画像取得部で取得した画像に応じた基準を生成できるため、コイル状の金属帯におけるエッジ部を検査する際に、誤検出を低減できる。
【0012】
他の一態様では、上述のコイル状金属帯エッジ異常検出装置において、前記平滑化処理部は、前記画像取得部で取得した画像における少なくとも前記金属帯を写し込んだ金属帯領域画像をコイルの周方向に沿って平滑化処理することによって前記平滑化画像として周方向平滑化画像を生成し、前記異常判定部は、前記金属帯領域画像と、前記平滑化処理部で生成した周方向平滑化画像との輝度の差分画像を生成する差分画像生成部と、前記差分画像生成部で生成した差分画像に基づいてエッジ部における異常の有無を判定する判定部とを備える。
【0013】
このようなコイル状金属帯エッジ異常検出装置は、周方向に沿って平滑化処理することによって周方向平滑化画像を生成するので、いわゆる巻き乱れによって軸方向に生じた凹凸によって生じる部分的な輝度値の変動を含んだ基準を生成できる。上記コイル状金属帯エッジ異常検出装置は、前記金属帯領域画像と前記周方向平滑化画像との輝度の差分画像を生成するので、適切な基準で例えば割れ等の異常部分のみを強調でき、コイル状の金属帯におけるエッジ部を検査する際に、誤検出を低減できる。
【0014】
他の一態様では、上述のコイル状金属帯エッジ異常検出装置において、前記平滑化処理部は、前記画像取得部で取得した画像における少なくとも前記金属帯を写し込んだ金属帯領域画像をコイルの径方向に沿って平滑化処理することによって前記平滑化画像の1つとして径方向平滑化画像を生成し、前記生成した径方向平滑化画像をコイルの周方向に沿って平滑化処理することによって前記平滑化画像の他の1つとして周方向平滑化画像を生成し、前記異常判定部は、前記平滑化処理部で生成した径方向平滑化画像と、前記平滑化処理部で生成した周方向平滑化画像との輝度の差分画像を生成する差分画像生成部と、前記差分画像生成部で生成した差分画像に基づいてエッジ部における異常の有無を判定する判定部とを備える。
【0015】
このようなコイル状金属帯エッジ異常検出装置は、径方向に沿って平滑化処理することによって径方向平滑化画像を生成するので、エッジ部に生じた、金属帯の幅方向に凹むまたは突き出るとともにその厚さより小さい凹部または凸部(ボイド)により生じる輝度値の変動を小さくすることができ、誤検出を低減して検出できる。
【0016】
他の一態様では、上述のコイル状金属帯エッジ異常検出装置において、前記平滑化処理部は、前記画像取得部で取得した画像における少なくとも前記金属帯を写し込んだ金属帯領域画像を所定の第1角度範囲でコイルの周方向に沿って平滑化処理することによって前記平滑化画像の1つとして第1角度範囲平滑化画像を生成し、前記金属帯領域画像を前記第1角度範囲とは異なる所定の第2角度範囲でコイルの周方向に沿って平滑化処理することによって前記平滑化画像の他の1つとして第2角度範囲平滑化画像を生成し、前記異常判定部は、前記平滑化処理部で生成した第1角度平滑化画像と、前記平滑化処理部で生成した第2角度平滑化画像との輝度の差分画像を生成する差分画像生成部と、前記差分画像生成部で生成した差分画像に基づいてエッジ部における異常の有無を判定する判定部とを備える。
【0017】
このようなコイル状金属帯エッジ異常検出装置は、第1角度範囲の第1角度平滑化画像および第2角度範囲の第2角度平滑化画像を生成するので、周方向において、異常の有無を検出したいエッジ異常のサイズを選択できる。
【0018】
他の一態様では、上述のコイル状金属帯エッジ異常検出装置において、前記平滑化処理部は、前記画像取得部で取得した画像における少なくとも前記金属帯を写し込んだ金属帯領域画像をコイルの周方向に沿って所定の第1回数で繰り返して平滑化処理することによって前記平滑化画像の1つとして第1回数平滑化画像を生成し、前記金属帯領域画像をコイルの周方向に沿って前記第1回数とは異なる所定の第2回数で繰り返して平滑化処理することによって前記平滑化画像の他の1つとして第2回数平滑化画像を生成し、前記異常判定部は、前記平滑化処理部で生成した第1回数平滑化画像と、前記平滑化処理部で生成した第2回数平滑化画像との輝度の差分画像を生成する差分画像生成部と、前記差分画像生成部で生成した差分画像に基づいてエッジ部における異常の有無を判定する判定部とを備える。
【0019】
このようなコイル状金属帯エッジ異常検出装置は、第1回数の第1回数平滑化画像および第2回数の第2回数平滑化画像を生成するので、前記画像取得部で取得した画像の1画素あたりのサイズに応じた周方向において、異常の有無を検出したいエッジ異常のサイズを選択できる。
【0020】
他の一態様では、これら上述のコイル状金属帯エッジ異常検出装置において、前記平滑化処理部は、前記画像取得部で取得した画像を極座標変換してから平滑化処理する。
【0021】
このようなコイル状金属帯エッジ異常検出装置は、極座標変換してから平滑化処理するので、平滑化処理を簡易化できる。
【0022】
本発明の他の一態様にかかるコイル状金属帯エッジ異常検出方法は、コイル状に巻かれた金属帯のエッジ部を軸方向から撮像した画像を取得する画像取得工程と、前記画像取得工程で取得した画像を平滑化処理することによって平滑化画像を生成する平滑化処理工程と、前記平滑化処理工程で生成した平滑化画像に基づいてエッジ部における異常の有無を判定する異常判定工程とを備える。
【0023】
本発明の他の一態様にかかるコイル状金属帯エッジ異常検出プログラムは、コンピュータに、コイル状に巻かれた金属帯のエッジ部を軸方向から撮像した画像を取得する画像取得工程と、前記画像取得工程で取得した画像を平滑化処理することによって平滑化画像を生成する平滑化処理工程と、前記平滑化処理工程で生成した平滑化画像に基づいてエッジ部における異常の有無を判定する異常判定工程とを実行させる。
【0024】
このようなコイル状金属帯エッジ異常検出方法およびコイル状金属帯エッジ異常検出プログラムは、コイル状の金属帯におけるエッジ部を検査する際に、誤検出を低減できる。
【0025】
他の一態様では、これら上述のコイル状金属帯エッジ異常検出装置において、前記平滑化処理部は、前記画像取得部で取得した画像における少なくとも前記金属帯を写し込んだ金属帯領域画像を所定の第3角度範囲でコイルの周方向に沿って平滑化処理することによって前記平滑化画像の1つとして第3角度範囲平滑化画像を生成し、前記金属帯領域画像を前記第3角度範囲とは異なる所定の第4角度範囲でコイルの周方向に沿って平滑化処理することによって前記平滑化画像の他の1つとして第4角度範囲平滑化画像を生成し、前記平滑化処理部で生成した第3および第4角度範囲平滑化画像に基づいて、エッジ部における異常のサイズを求める異常サイズ処理部をさらに備える。
【0026】
このようなコイル状金属帯エッジ異常検出装置は、エッジ部における異常のサイズ(異常の大きさ)を求めることができる。
【0027】
他の一態様では、上述のコイル状金属帯エッジ異常検出装置において、互いに異なる複数の前記第3角度範囲と前記第4角度範囲との組み合わせがあり、前記平滑化処理部は、前記複数の組み合わせそれぞれについて、前記第3および第4角度範囲平滑化画像それぞれを生成し、前記異常サイズ処理部は、前記複数の組み合わせそれぞれについて、前記異常のサイズを求める。
【0028】
第3角度範囲と第4角度範囲との組み合わせを異ならせることで、検出したいサイズのターゲットが変更できる。上記コイル状金属帯エッジ異常検出装置は、互いに異なる複数の第3角度範囲と第4角度範囲との組み合わせがあるので、複数の、検出したいサイズのターゲットで異常のサイズを求めることができる。
【0029】
他の一態様では、これら上述のコイル状金属帯エッジ異常検出装置において、前記平滑化処理部は、前記画像取得部で取得した画像における少なくとも前記金属帯を写し込んだ金属帯領域画像をコイルの周方向に沿って所定の第3回数で繰り返して平滑化処理することによって前記平滑化画像の1つとして第3回数平滑化画像を生成し、前記金属帯領域画像をコイルの周方向に沿って前記第3回数とは異なる所定の第4回数で繰り返して平滑化処理することによって前記平滑化画像の他の1つとして第4回数平滑化画像を生成し、前記平滑化処理部で生成した第3および第4回数平滑化画像に基づいて、エッジ部における異常のサイズを求める異常サイズ処理部をさらに備える。
【0030】
このようなコイル状金属帯エッジ異常検出装置は、エッジ部における異常のサイズ(異常の大きさ)を求めることができる。
【0031】
他の一態様では、上述のコイル状金属帯エッジ異常検出装置において、互いに異なる複数の前記第3回数と前記第4回数との組み合わせがあり、前記平滑化処理部は、前記複数の組み合わせそれぞれについて、前記第3および第4回数平滑化画像それぞれを生成し、前記異常サイズ処理部は、前記複数の組み合わせそれぞれについて、前記異常のサイズを求める。
【0032】
第3回数と第4回数との組み合わせを異ならせることで、検出したいサイズのターゲットが変更できる。上記コイル状金属帯エッジ異常検出装置は、互いに異なる複数の第3回数と第4回数との組み合わせがあるので、複数の、検出したいサイズのターゲットで異常のサイズを求めることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明かかるコイル状金属帯エッジ異常検出装置、コイル状金属帯エッジ異常検出方法およびコイル状金属帯エッジ異常検出プログラムは、コイル状の金属帯におけるエッジ部を検査する際に、誤検出を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】実施形態におけるコイル状金属帯エッジ異常検出装置の構成を示すブロック図である。
図2】コイル状に巻かれた金属帯のエッジ部を軸方向から撮像して検出対象の画像を生成する様子を説明するための図である。
図3】一例として、検出対象の画像を説明するための図である。
図4】一例として、図3Aに模式的に示す検出対象の画像を極座標変換した検出対象の画像を模式的に示す図である。
図5】一例として、図4に模式的に示す検出対象の画像における、周方向に対する輝度値を示す図である。
図6】一例として、図4に模式的に示す検出対象の画像に基づく周方向平滑化画像における、周方向に対する輝度値を示す図である。
図7】一例として、図4に模式的に示す検出対象の画像に基づく差分画像における、周方向に対する輝度値を示す図である。
図8】前記コイル状金属帯エッジ異常検出装置の動作を示すフローチャートである。
図9】一例として、n=1およびn=7の組み合わせで検出した割れの箇所およびそのサイズを示す図である。
図10】一例として、n=7およびn=21の組み合わせ、ならびに、n=21およびn=37の組み合わせそれぞれで検出した割れの箇所およびそのサイズを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照して、本発明の1または複数の実施形態が説明される。しかしながら、発明の範囲は、開示された実施形態に限定されない。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
【0036】
実施形態におけるコイル状金属帯エッジ異常検出装置は、コイル状に巻かれた金属帯のエッジ部における異常の有無を検出する装置である。このコイル状金属帯エッジ異常検出装置は、コイル状に巻かれた金属帯のエッジ部を軸方向から撮像した画像を取得する画像取得部と、前記画像取得部で取得した画像を平滑化処理することによって平滑化画像を生成する平滑化処理部と、前記平滑化処理部で生成した平滑化画像に基づいてエッジ部における異常の有無を判定する異常判定部とを備える。以下、このようなコイル状金属帯エッジ異常検出装置について、より具体的に説明する。
【0037】
図1は、実施形態におけるコイル状金属帯エッジ異常検出装置の構成を示すブロック図である。図2は、コイル状に巻かれた金属帯のエッジ部を軸方向から撮像して検出対象の画像を生成する様子を説明するための図である。図3は、一例として、検出対象の画像を説明するための図である。図3Aは、検出対象の画像を模式的に示し、図3Bは、図3Aに示す切断線I-Iでの、コイル状の金属帯におけるエッジ部の断面図である。図4は、一例として、図3Aに模式的に示す検出対象の画像を極座標変換した検出対象の画像を模式的に示す図である。図4の横軸は、コイル状の金属帯(コイル)の円周方向であり、その縦軸は、前記コイルの径方向である。図5は、一例として、図4に模式的に示す検出対象の画像における、周方向に対する輝度値を示す図である。図6は、一例として、図4に模式的に示す検出対象の画像に基づく周方向平滑化画像における、周方向に対する輝度値を示す図である。図5および図6の各横軸は、コイルの円周方向であり、その各縦軸は、輝度である。図7は、一例として、図4に模式的に示す検出対象の画像に基づく差分画像における、周方向に対する輝度値を示す図である。図7の横軸は、コイルの円周方向であり、その縦軸は、差分画像の輝度(輝度の差分)である。
【0038】
実施形態におけるコイル状金属帯エッジ異常検出装置(以下、適宜、「エッジ異常検出装置」と略記する。)Sは、例えば、図1に示すように、画像取得部1と、制御処理部2と、入力部3と、出力部4と、インターフェース部(IF)5と、記憶部6と、照明部7とを備える。
【0039】
画像取得部1は、制御処理部2に接続され、制御処理部2の制御に従って、コイル状に巻かれた金属帯(コイル状の金属帯、コイル)における検出対象のエッジ部を軸方向から撮像した画像(検出対象の画像、エッジ画像)を取得する装置である。前記金属帯は、例えば、一方向に長尺な板状(シート状)に形成された鋼板等の金属(合金を含む)である。画像取得部1は、例えば、前記コイルにおける検出対象のエッジ部を軸方向から撮像して前記エッジ画像を生成する撮像装置である。前記撮像装置は、例えば、カラーデジタルカメラやモノクロデジタルカメラ等である。あるいは、画像取得部1は、例えば、外部の機器との間でデータを入出力するインターフェース回路である。前記外部の機器は、前記エッジ画像を記憶した、例えばUSB(Universal Serial Bus)メモリおよびSDカード(登録商標)等の記憶媒体である。あるいは、前記外部の機器は、前記エッジ画像を記録した、例えばCD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、CD-R(Compact Disc Recordable)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)およびDVD-R(Digital Versatile Disc Recordable)等の記録媒体からデータを読み込むドライブ装置である。この画像取得部1としてのインターフェース回路は、有線または無線によって前記外部の機器に接続されてよい。あるいは、画像取得部1は、例えば、外部の機器と通信信号を送受信する通信インターフェース回路であって、前記外部の機器は、ネットワーク(WAN(Wide Area Network、公衆通信網を含む))あるいはLAN(Local Area Network)を介して前記通信インターフェース回路に接続され、前記エッジ画像を管理するサーバ装置である。なお、画像取得部1がインターフェース回路や通信インターフェース回路である場合では、画像取得部1は、IF部5と兼用されてもよい(すなわち、IF部5が画像取得部1として用いられてもよい)。
【0040】
本実施形態では、画像取得部1は、例えば、図2に示すように、照明部7で照明されたコイルCOのエッジ部を、軸AXの軸方向から撮像するデジタルカメラ(以下、「カメラ」と略記する)1である。このようにコイルCOをカメラ1で撮像すると、例えば、図3Aに示すエッジ画像PCaが生成される。図3に示すコイルCOは、金属帯を5回巻き回すことによって形成され、内側から4番目および3番目の各金属帯には、いわゆる割れ(亀裂)DE1、DE2が生じており、図3Aに示すように、エッジ画像PCaには、これら割れDE1、DE2が写り込んでいる。図3に示すコイルCOは、いわゆる巻き乱れによって、内側から3番目の金属帯は、軸AXの軸方向にずれ、1番目、2番目、4番目および5番目の各金属帯のエッジで形成されるエッジ面より凹んでおり、エッジ画像PCaでは、内側から3番目の金属帯を写し込んだ画像部分の輝度は、1番目、2番目、4番目および5番目の各金属帯を写し込んだ各画像部分の各輝度と異なっている。例えば、内側から3番目の金属帯を写し込んだ画像部分の輝度は、1番目、2番目、4番目および5番目の各金属帯を写し込んだ各画像部分の各輝度より暗くなっている。
【0041】
入力部3は、制御処理部2に接続され、例えばエッジ異常検出装置Sによって検出開始を指示するコマンド等の各種コマンド、および、例えば検出の年月日等の、エッジ異常検出装置Sの稼働を行う上で必要な各種データをエッジ異常検出装置Sに入力する装置であり、例えば、所定の機能を割り付けられた複数の入力スイッチ、キーボードおよびマウス等である。出力部4は、制御処理部2に接続され、制御処理部2の制御に従って、入力部3から入力されたコマンドやデータ、および、エッジ異常検出装置Sによって検出された異常等を出力する装置であり、例えばCRTディスプレイ、LCD(液晶表示装置)および有機ELディスプレイ等の表示装置やプリンタ等の印刷装置等である。
【0042】
なお、入力部3および出力部4は、タッチパネルより構成されてもよい。このタッチパネルを構成する場合において、入力部3は、例えば抵抗膜方式や静電容量方式等の操作位置を検出して入力する位置入力装置であり、出力部4は、表示装置である。このタッチパネルでは、表示装置の表示面上に位置入力装置が設けられ、表示装置に入力可能な1または複数の入力内容の候補が表示され、ユーザが、入力したい入力内容を表示した表示位置に触れると、位置入力装置によってその位置が検出され、検出された位置に表示された表示内容がユーザの操作入力内容としてエッジ異常検出装置Sに入力される。このようなタッチパネルでは、ユーザは、入力操作を直感的に理解し易いので、ユーザにとって取り扱い易いエッジ異常検出装置Sが提供される。
【0043】
IF部5は、制御処理部2に接続され、制御処理部2の制御に従って、例えば、外部の機器との間でデータを入出力する回路であり、例えば、シリアル通信方式であるRS-232Cのインターフェース回路、Bluetooth(登録商標)規格を用いたインターフェース回路、および、USB規格を用いたインターフェース回路等である。また、IF部5は、例えば、データ通信カードや、IEEE802.11規格等に従った通信インターフェース回路等の、外部の機器と通信信号を送受信する通信インターフェース回路であっても良い。
【0044】
照明部7は、制御処理部2に接続され、制御処理部2の制御に従って、コイルのエッジ部を照明する照明光を照射する光源である。照明部7は、例えば、図2に示すように、コイルCOの斜め上方からエッジ部を照明光で照明する。なお、照明部7の照明方向は、これに限らず、コイルCOのエッジ部を照明できれば、任意であってよい。
【0045】
記憶部6は、制御処理部2に接続され、制御処理部2の制御に従って、各種の所定のプログラムおよび各種の所定のデータを記憶する回路である。前記各種の所定のプログラムには、例えば、エッジ異常検出装置Sの各部1、3~7を制御する制御プログラムや、画像取得部1で取得した画像を平滑化処理することによって平滑化画像を生成する平滑化処理プログラムや、平滑化処理プログラムで生成した平滑化画像に基づいてエッジ部における異常の有無を判定する異常判定プログラム等の制御処理プログラムが含まれる。前記各種の所定のデータには、異常の有無を判定するための閾値(判定閾値)Th等の、これら各プログラムを実行する上で必要なデータが含まれる。このような記憶部6は、例えば不揮発性の記憶素子であるROM(Read Only Memory)や書き換え可能な不揮発性の記憶素子であるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等を備える。そして、記憶部6は、前記所定のプログラムの実行中に生じるデータ等を記憶するいわゆる制御処理部2のワーキングメモリとなるRAM(Random Access Memory)等を含む。また、記憶部6は、比較的記憶容量の大きいハードディスク装置を備えて構成されてもよい。
【0046】
制御処理部2は、エッジ異常検出装置Sの各部1、3~7を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、コイルのエッジ部における異常の有無を判定するための回路である。制御処理部2は、例えば、CPU(Central Processing Unit)およびその周辺回路を備えて構成される。制御処理部2は、制御処理プログラムが実行されることによって、制御部21、平滑化処理部22および異常判定部23を機能的に備える。
【0047】
制御部21は、エッジ異常検出装置Sの各部1、3~7を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、エッジ異常検出装置Sの全体制御を司るものである。
【0048】
平滑化処理部22は、画像取得部1で取得した画像を平滑化処理することによって平滑化画像を生成するものである。より具体的には、平滑化処理部22は、画像取得部1で取得した画像における少なくとも前記金属帯(コイル)を写し込んだ金属帯領域画像をコイルの周方向に沿って平滑化処理することによって前記平滑化画像として周方向平滑化画像を生成する。ここで、平滑化処理部22は、画像取得部1で取得した画像を極座標変換してから平滑化処理する。極座標空間は、例えば、図4に示すように、コイルの周方向を表す横軸(角度軸)φと、この横軸φに直交し、前記コイルの径方向を表す縦軸(距離軸)rとから形成される。図3Aに示すエッジ画像PCaは、極座標変換により、図4に示す極座標での画像PCbに変換される。コイルの中心点を(a、b)とし、点(x、y)の輝度をLとし、金属帯の厚さ(コイルの板厚)をd[mm]とし、検出すべき異常のサイズをw[mm]とし、画像の1画素のサイズをp[mm/pixel]とし、極座標変換後の径方向の1画素のサイズをs[mm/pixel]とし、極座標変換後の周方向の1画素のサイズをt[deg/pixel]とした場合、極座標変換後において、平滑化処理部22は、点(φ、r)における平滑化後の輝度I(φ、r)を与える次式1を用いることによって金属帯領域画像をコイルの周方向に沿って平滑化処理し、周方向平滑化画像を生成する。なお、極座標変換後では、φは、画像の座標となるため、整数である。
【0049】
【数1】
【0050】
ここで、nは、総和記号 Σの順序数を表し、好ましくは、nは、微小角の円弧n×trs≧4wを変形した次式2を満たす奇数である。これにより、平滑化範囲を検出すべき異常のサイズより十分大きくすることができ、後述する差分画像生成部で生成された差分画像において検出すべき異常部がより強調される。
【0051】
【数2】
【0052】
なお、極座標変換しないでコイルの周方向に沿って平滑化処理する場合、y≦bでは、点(x、y)における平滑化後の輝度I(x、y)を与える次式3が用いられ、y>bでは、次式4が用いられる。
【0053】
【数3】
【0054】
【数4】
【0055】
好ましくは、nは、次式5を満たす奇数である。
【0056】
【数5】
【0057】
異常判定部23は、平滑化処理部22で生成した平滑化画像に基づいてエッジ部における異常の有無を判定するものである。エッジ部における異常は、金属帯におけるエッジ部の側面に生じた一定の大きさ以上の凹凸形状の部分であり、例えば、割れ(亀裂)である。より具体的には、異常判定部23は、機能的に形成された差分画像生成部231および判定部232を備える。差分画像生成部231は、前記金属帯領域画像と、平滑化処理部22で生成した周方向平滑化画像との輝度の差分画像を生成するものである。判定部232は、差分画像生成部231で生成した差分画像に基づいてエッジ部における異常の有無を判定するものである。より詳しくは、判定部232は、差分画像の輝度と判定閾値Thとを比較し、前記判定閾値Th以下である輝度の部分(または前記判定閾値Thより小さい(暗い)輝度の部分)を異常と判定する。
【0058】
例えば、図4に示す極座標での画像PCbにおいて、内側から4番目の金属帯を写し込んだ画像部分α-αの輝度グラフBRαは、割れDE1を除き金属帯の側面が略一様に光り、割れDE1でそれより暗くなるため、図5に示すように、割れDE1の位置を除く周方向の各位置で輝度値BR1となる一方、割れDE1の位置で前記輝度値BR1より暗い輝度値となるプロファイルを持つ。同様に、内側から3番目の金属帯を写し込んだ画像部分β-βの輝度グラフBRβは、割れDE2を除き金属帯の側面が略一様に光り、割れDE2でそれより暗くなるため、図5に示すように、割れDE2の位置を除く周方向の各位置で輝度値BR2となる一方、割れDE2の位置で前記輝度値BR2より暗い輝度値となるプロファイルを持つ。そして、上述のように、いわゆる巻き乱れにより、3番目の画像部分β-βの輝度は、4番目の画像部分α-αの輝度と異なり、例えばより暗い。このため、4番目の画像部分α-αの輝度グラフBRαにおける輝度値BR1は、3番目の画像部分β-βの輝度グラフBRβにおける輝度値BR2より大きい(明るい、高い)。したがって、これら3番目および4番目の画像部分α-α、β-βの各輝度グラフBRα、BRβに対し、1個の判定閾値Thで異常が判定されると、例えば、輝度グラフBRβ全体が判定閾値Th以下となって割れDE2が異常と判定されなくなったり、輝度グラフBRαの割れDE1の輝度値が判定閾値より大きくなって割れDE1が異常と判定されなくなったり等の、誤判定が生じてしまう。
【0059】
このため、本実施形態におけるエッジ異常検出装置Sでは、上述のように、まず、平滑化処理部22によってコイルの周方向に沿って平滑化処理される。例えば、図5に示す4番目の画像部分α-αの輝度グラフBRαは、平滑化処理によって、図6に示すように、周方向の各位置で略同じ輝度値BR3となるプロファイルを持つ輝度グラフSMαとなる。これによって割れDE1の輝度がぼかされ、4番目の画像部分α-αに対する基準が生成される。同様に、図5に示す3番目の画像部分β-βの輝度グラフBRβは、平滑化処理によって、図6に示すように、周方向の各位置で略同じ輝度値BR4となるプロファイルを持つ輝度グラフSMβとなる。これによって割れDE2の輝度がぼかされ、3番目の画像部分β-βに対する基準が生成される。
【0060】
そして、差分画像生成部231によって差分画像が生成される。この差分画像での、4番目の画像部分α-αの輝度グラフSBαは、周方向の各位置において、図5に示す輝度グラフBRαから図6に示す輝度グラフSMαを減算することによって、図7に示すように、割れDE1の位置を除く周方向の各位置で略輝度値BR5となる一方、割れDE1の位置で前記輝度値BR5より暗い輝度値となるプロファイルを持つ。同様に、前記差分画像での、3番目の画像部分β-βの輝度グラフSBβは、周方向の各位置において、図5に示す輝度グラフBRβから図6に示す輝度グラフSMβを減算することによって、図7に示すように、割れDE2の位置を除く周方向の各位置で略輝度値BR5となる一方、割れDE2の位置で前記輝度値BR5より暗い輝度値となるプロファイルを持つ。これら3番目および4番目の画像部分α-α、β-βの各輝度グラフSBα、SBβは、3番目および4番目の画像部分α-α、β-βの各基準(輝度グラフSMα、輝度グラフSMβ)で減算するため、割れDE1、DE2の位置を除く周方向の各位置で略輝度値BR5で揃うから、判定部232によって、これら3番目および4番目の画像部分α-α、β-βの各輝度グラフSBα、SBβに対し、1個の判定閾値Thで異常が判定できる。前記判定閾値Thは、複数のサンプルから予め適宜に設定される。
【0061】
これら制御処理部2、入力部3、出力部4、IF部5および記憶部6は、例えば、デスクトップ型やノート型等のコンピュータによって構成可能である。これら各部2~6を構成するコンピュータは、例えば、コイルを移動するためのクレーンを操作するオペレーションルームに配置され、コンソールに組み込まれてよく(コンソールと兼用されてよく)、あるいは、コンソールと別体であってもよい。
【0062】
次に、本実施形態の動作について説明する。図8は、前記コイル状金属帯エッジ異常検出装置の動作を示すフローチャートである。
【0063】
このような構成のコイル状金属帯エッジ異常検出装置Sは、その電源が投入されると、必要な各部の初期化を実行し、その稼働を始める。制御処理部2には、その制御処理プログラムの実行によって、制御部21、平滑化処理部22および異常判定部23が機能的に構成され、異常判定部23には、差分画像生成部231および判定部232が機能的に構成される。
【0064】
図8において、まず、エッジ異常検出装置Sは、画像取得部1によって、検出対象の画像を取得し、この取得した画像を記憶部6に記憶する(S1)。
【0065】
次に、エッジ異常検出装置Sは、制御処理部2の平滑化処理部22によって、処理S1で画像取得部1によって取得した画像を平滑化処理することによって平滑化画像を生成する(S2)。本実施形態では、平滑化処理部22は、処理S1で画像取得部1によって取得した画像における少なくとも前記金属帯を写し込んだ金属帯領域画像をコイルの周方向に沿って平滑化処理することによって前記平滑化画像として周方向平滑化画像を生成する。
【0066】
次に、エッジ異常検出装置Sは、制御処理部2における異常判定部23の差分画像生成部231によって、前記金属帯領域画像と、処理S2で平滑化処理部22によって生成した周方向平滑化画像との輝度の差分画像を生成する(S3)。本実施形態では、差分画像生成部231は、同じ各位置において、前記金属帯領域画像の輝度値から、前記周方向平滑化画像の輝度値を減算することによって、前記差分画像を生成する。
【0067】
次に、エッジ異常検出装置Sは、制御処理部2における異常判定部23の判定部232によって、エッジ部における異常の有無を判定する(S4)。本実施形態では、判定部232は、処理S3で差分画像生成部231によって生成した差分画像に基づいてエッジ部における異常の有無を判定する。より具体的には、判定部232は、各位置において、差分画像の輝度値と判定閾値Thとを比較し、比較の結果、差分画像の輝度値が判定閾値Th以下である場合(または差分画像の輝度値が判定閾値Thより小さい(暗い)場合)には、当該位置に異常が有ると判定し、前記比較の結果、差分画像の輝度値が判定閾値Thを超えている場合(または差分画像の輝度値が判定閾値Th以上である場合)には、当該位置には異常が無いと判定する。
【0068】
そして、エッジ異常検出装置Sは、制御処理部2によって、出力部4に、前記処理S4で求めた判定結果を出力し(S6)、本処理を終了する。なお、必要に応じて、前記判定結果は、IF部5から外部の機器へ出力されてもよい。
【0069】
以上説明したように、実施形態におけるコイル状金属帯エッジ異常検出装置Dならびにこれに実装されたコイル状金属帯異常検出方法およびコイル状金属帯異常検出プログラムは、平滑化画像を生成するので、画像取得部1で取得した画像に応じた基準を生成できるため、コイル状の金属帯におけるエッジ部を検査する際に、誤検出を低減できる。
【0070】
上記コイル状金属帯エッジ異常検出装置D、コイル状金属帯エッジ異常検出方法およびコイル状金属帯エッジ異常検出プログラムは、周方向に沿って平滑化処理することによって周方向平滑化画像を生成するので、いわゆる巻き乱れによって軸方向に生じた凹凸によって生じる部分的な輝度値の変動を含んだ基準を生成できる。上記コイル状金属帯エッジ異常検出装置D、コイル状金属帯エッジ異常検出方法およびコイル状金属帯エッジ異常検出プログラムは、前記金属帯領域画像と前記周方向平滑化画像との輝度の差分画像を生成するので、適切な基準で例えば割れ等の異常部分のみを強調でき、コイル状の金属帯におけるエッジ部を検査する際に、誤検出を低減できる。
【0071】
上記コイル状金属帯エッジ異常検出装置D、コイル状金属帯エッジ異常検出方法およびコイル状金属帯エッジ異常検出プログラムは、極座標変換してから平滑化処理するので、平滑化処理を簡易化できる。
【0072】
なお、上述のコイル状金属帯エッジ異常検出装置Sは、周方向平滑化画像を生成して差分画像を生成し、異常の有無を判定したが、次の第1ないし第3変形形態で差分画像を生成し、異常の有無を判定してもよい。
【0073】
第1変形形態におけるコイル状金属帯エッジ異常検出装置Sでは、平滑化処理部22は、画像取得部1で取得した画像における少なくとも前記金属帯を写し込んだ金属帯領域画像をコイルの径方向に沿って平滑化処理することによって前記平滑化画像の1つとして径方向平滑化画像を生成し、前記生成した径方向平滑化画像をコイルの周方向に沿って平滑化処理することによって前記平滑化画像の他の1つとして周方向平滑化画像を生成する。
【0074】
より具体的には、極座標変換後において、平滑化処理部22は、点(φ、r)における平滑化後の輝度I(φ、r)を与える次式6を用いることによって金属帯領域画像をコイルの径方向に沿って平滑化処理し、径方向平滑化画像を生成する。
【0075】
【数6】
【0076】
好ましくは、nは、次式7を満たす最小の奇数である。これにより、板厚以下の凹凸による輝度値の変化が小さくなり、板厚以下の凹凸に起因する誤検出を低減できる。
【0077】
【数7】
【0078】
異常判定部23の差分画像生成部231は、平滑化処理部22で生成した径方向平滑化画像と、平滑化処理部22で生成した周方向平滑化画像との輝度の差分画像を生成する。差分画像生成部231は、同じ各位置において、前記径方向平滑化画像の輝度値から、前記周方向平滑化画像の輝度値を減算することによって、前記差分画像を生成する。
【0079】
異常判定部23の判定部232は、差分画像生成部231で生成した差分画像に基づいてエッジ部における異常の有無を判定する。判定部232は、各位置において、差分画像の輝度値と判定閾値Thとを比較し、比較の結果、差分画像の輝度値が判定閾値Th以下である場合(または差分画像の輝度値が判定閾値Thより小さい(暗い)場合)には、当該位置に異常が有ると判定し、前記比較の結果、差分画像の輝度値が判定閾値Thを超えている場合(または差分画像の輝度値が判定閾値Th以上である場合)には、当該位置には異常が無いと判定する。
【0080】
このような第1変形形態におけるコイル状金属帯エッジ異常検出装置Sならびにこれに実装されたコイル状金属帯異常検出方法およびコイル状金属帯異常検出プログラムは、径方向に沿って平滑化処理することによって径方向平滑化画像を生成するので、エッジ部に生じたボイドにより生じる輝度値の変動を小さくすることができ、誤検出を低減して検出できる。
【0081】
第2変形形態におけるコイル状金属帯エッジ異常検出装置Sでは、平滑化処理部22は、画像取得部1で取得した画像における少なくとも前記金属帯を写し込んだ金属帯領域画像を所定の第1角度範囲φ1≦φ≦φ2でコイルの周方向に沿って平滑化処理することによって前記平滑化画像の1つとして第1角度範囲平滑化画像を生成し、前記金属帯領域画像を前記第1角度範囲φ1≦φ≦φ2とは異なる所定の第2角度範囲φ3≦φ≦φ4でコイルの周方向に沿って平滑化処理することによって前記平滑化画像の他の1つとして第2角度範囲平滑化画像を生成する。
【0082】
第1角度範囲平滑化画像を生成する際に、好ましくは、nは、上記式2を満たす奇数であり、第2角度範囲平滑化画像を生成する際に、好ましくは、nは、次式8を満たす奇数である。これにより、検出すべき異常サイズ以下の凹凸による輝度変動を小さくし、検出すべき異常サイズの凹凸に起因する輝度変動を強調することができるため、過検出を低減できる。
【0083】
【数8】
【0084】
なお、上記式3および式4を用いることによって、極座標変換しないでコイルの周方向に沿って平滑化処理する場合、第1角度範囲平滑化画像を生成する際に、好ましくは、nは、上記式5を満たす奇数であり、第2角度範囲平滑化画像を生成する際に、好ましくは、nは、次式9を満たす奇数である。
【0085】
【数9】
【0086】
異常判定部23の差分画像生成部231は、平滑化処理部22で生成した第1角度平滑化画像と、平滑化処理部22で生成した第2角度平滑化画像との輝度の差分画像を生成する。差分画像生成部231は、前記第1角度平滑化画像と前記第2角度平滑化画像とを例えばコナー同士(例えば左上コーナ同士)を合わせて重ねた場合の同じ各位置において、前記第1角度平滑化画像の輝度値から、前記第2角度平滑化画の輝度値を減算することによって、前記差分画像を生成する。
【0087】
異常判定部23の判定部232は、差分画像生成部231で生成した差分画像に基づいてエッジ部における異常の有無を判定する。判定部232は、各位置において、差分画像の輝度値と判定閾値Thとを比較し、比較の結果、差分画像の輝度値が判定閾値Th以下である場合(または差分画像の輝度値が判定閾値Thより小さい(暗い)場合)には、当該位置に異常が有ると判定し、前記比較の結果、差分画像の輝度値が判定閾値Thを超えている場合(または差分画像の輝度値が判定閾値Th以上である場合)には、当該位置には異常が無いと判定する。
【0088】
このような第2変形形態におけるコイル状金属帯エッジ異常検出装置Sならびにこれに実装されたコイル状金属帯異常検出方法およびコイル状金属帯異常検出プログラムは、第1角度範囲の第1角度平滑化画像および第2角度範囲の第2角度平滑化画像を生成するので、周方向において、異常の有無を検出したいエッジ異常のサイズを選択できる。
【0089】
第3変形形態におけるコイル状金属帯エッジ異常検出装置Sでは、平滑化処理部22は、画像取得部1で取得した画像における少なくとも前記金属帯を写し込んだ金属帯領域画像をコイルの周方向に沿って所定の第1回数M1で繰り返して平滑化処理することによって前記平滑化画像の1つとして第1回数平滑化画像を生成し、前記金属帯領域画像をコイルの周方向に沿って前記第1回数M1とは異なる所定の第2回数M2で繰り返して平滑化処理することによって前記平滑化画像の他の1つとして第2回数平滑化画像を生成する。
【0090】
より具体的には、極座標変換後において、平滑化処理部22は、点(φ、r)における平滑化後の輝度I(φ、r)を与える次式10を用いることによって金属帯領域画像をコイルの径方向に沿って前記第1回数M1で繰り返して平滑化処理し、第1回数平滑化画像を生成し、次式10を用いることによって金属帯領域画像をコイルの径方向に沿って前記第2回数M2で繰り返して平滑化処理し、第2回数平滑化画像を生成する。
【0091】
【数10】
【0092】
好ましくは、nは、次式11を満たす最小の奇数である。これにより、検出すべき異常のサイズに近しい凹凸による輝度値の変動のみを強調することができるため、誤検出を低減することができる。
【0093】
【数11】
【0094】
あるいは、好ましくは、nは、次式12を満たし、前記第1回数M1が1であり、前記第2回数M2が複数回、例えば4である(M1=1、M2=4)。一実験例では、割れを検出する場合、前記割れのサイズの4倍の領域で平滑化処理すると、より精度よく前記割れが検出できた。このため、M1=1およびM2=4が好ましい。より詳しくは、第M回目の平滑化画像をPC(M)とすると、第1回数平滑化画像PC(1)は、次式12を満たすnで上記式10を用いて金属帯領域画像を平滑化処理することによって生成される。第2回数平滑化画像PC(4)は、次式12を満たすnで上記式10を用いて第1回数平滑化画像PC(1)を平滑化処理することによって第2回目の平滑化画像PC(2)を生成し、次式12を満たすnで上記式10を用いて第2回目の平滑化画像PC(2)を平滑化処理することによって第3回目の平滑化画像PC(3)を生成し、次式12を満たすnで上記式10を用いて第3回目の平滑化画像PC(3)を平滑化処理することによって、生成される(第2回数平滑化画像=第4回目の平滑化画像PC(4))。
【0095】
【数12】
【0096】
なお、上記式3および式4を用いることによって、極座標変換しないでコイルの周方向に沿って平滑化処理する場合、好ましくは、nは、次式13を満たし、前記第1回数M1が1であり、前記第2回数M2が4である(M1=1、M2=4)。
【0097】
【数13】
【0098】
このような第3変形形態におけるコイル状金属帯エッジ異常検出装置Sならびにこれに実装されたコイル状金属帯異常検出方法およびコイル状金属帯異常検出プログラムは、第1回数M1の第1回数平滑化画像および第2回数M2の第2回数平滑化画像を生成するので、画像取得部1で取得した画像前記画像取得部で取得した画像の1画素あたりのサイズに応じた周方向において、異常の有無を検出したいエッジ異常のサイズを選択できる。
【0099】
なお、上述の実施形態(第1ないし第3変形形態を含む)において、コイル状金属帯エッジ異常検出装置Sは、第4変形形態として、図1に破線で示すように、制御処理部2に、異常サイズ処理部24をさらに備えてもよく、この異常サイズ処理部24には、例えば、2個の第1および第2態様がある。
【0100】
この第1態様では、平滑化処理部22は、前記画像取得部1で取得した画像における少なくとも前記金属帯を写し込んだ金属帯領域画像を所定の第3角度範囲でコイルの周方向に沿って平滑化処理することによって前記平滑化画像の1つとして第3角度範囲平滑化画像を生成し、前記金属帯領域画像を前記第3角度範囲とは異なる所定の第4角度範囲でコイルの周方向に沿って平滑化処理することによって前記平滑化画像の他の1つとして第4角度範囲平滑化画像を生成する。この場合の平滑化処理部22には、前記第1および第2角度範囲φ1≦φ≦φ2、φ3≦φ≦φ4を前記第3および第4角度範囲として、上述の第2変形形態における平滑化処理部22が流用され、兼用されてもよい。そして、この異常サイズ処理部24は、前記平滑化処理部22で生成した第3および第4角度範囲平滑化画像に基づいて、エッジ部における異常のサイズを求めるものであり、制御処理部2に機能的に構成される。
【0101】
より具体的には、異常サイズ処理部24は、前記平滑化処理部22で生成した第3角度範囲平滑化画像(=第1角度範囲平滑化画像)と第4角度範囲平滑化画像(=第2角度範囲平滑化画像)との輝度の差分画像を求め、この差分画像を例えば0と1とで2値化し、1となった画像領域を異常としてそのサイズを求める。前記差分画像の生成では、上述の第2変形形態における異常判定部23の差分画像生成部231が流用され、兼用されてもよい。前記2値化の閾値は、例えば、予め複数のサンプルから適宜な値に設定される。あるいは、例えば、前記2値化には、いわゆる大津の2値化処理が用いられる。この大津の2値化処理は、2値化の対象となる画像(入力画像、ここでは第2平滑化画像)のヒストグラムを求め、前記ヒストグラムを2分した場合、一方の分散と両者間の分散の比を分離度と定義し、前記分離度が最大となる、2分する位置のヒストグラムの階級を、閾値として2値化する処理である。
【0102】
図9には、このような処理によって前記異常の一例として求められた3個の割れDE31、DE32、DE33がそのサイズと共に示されている。図9は、一例として、n=1およびn=7の組み合わせで検出した割れの箇所およびそのサイズを示す図である。この図9に示す場合では、第3角度範囲φ5≦φ≦φ6(=第1角度範囲φ1≦φ≦φ2)は、1であり、すなわち、上述の式10において、n=1であり、第4角度範囲φ7≦φ≦φ8(=第2角度範囲φ3≦φ≦φ4)は、7であり、すなわち、上述の式10において、n=7である。なお、上述の式2および式9から、nは角度範囲に関連し、nを変えることで角度範囲を変えることができる。割れDE31、DE32は、内側から9番目の金属帯(図9に示す下から9番目の金属帯)で検出され、割れDE33は、内側から7目の金属帯(図9に示す下から7番目の金属帯)で検出されている。なお、ここでは、式10が用いられたが式1が用いられてもよい。
【0103】
この前記異常の一例として求められた割れDEの位置LGmは、極座標の+φ方向と同方向に金属帯をコイル状に巻き回した場合、金属帯の先端(内周側の先端、コイル状に巻き回した巻き始め部)から、次式14によって表され、極座標の+φ方向と逆方向に金属帯をコイル状に巻き回した場合、金属帯の先端から、次式15によって表される。割れDEの位置LGmは、言い換えれば、金属帯の先端から割れDEの位置までの金属帯の長さである。
【0104】
【数14】
【0105】
【数15】
【0106】
ここで、dは、上述の金属帯の厚さ(コイルの板厚)[mm]であり、Rinは、コイルの内径であり、mは、コイルにおいて、内側から数えた、割れDEが生じている金属帯の巻き数である。例えば、割れDE31、32では、m=9であり、割れDE33では、m=7となる。
【0107】
このような第4変形形態の第1態様におけるコイル状金属帯エッジ異常検出装置Sは、エッジ部における異常のサイズ(異常の大きさ)を求めることができる。例えば、出力部4には、図9に示すような、前記異常の一例として求められた割れDEの位置およびそのサイズを示す画像が表示される。そして、前記式14または式15で表される異常の位置LGnが出力部4に表示されてもよい。
【0108】
そして、この第4変形形態の第1態様におけるコイル状金属帯エッジ異常検出装置Sにおいて、互いに異なる複数の前記第3角度範囲(=第1角度範囲)と前記第4角度範囲(=第2角度範囲)との組み合わせがあり、前記平滑化処理部2は、前記複数の組み合わせそれぞれについて、前記第3および第4回角度範囲平滑化画像それぞれを生成し、前記異常サイズ処理部24は、前記複数の組み合わせそれぞれについて、前記異常のサイズを求めてもよい。nが大きいほど角度範囲が広くなるので、より大きなサイズの異常を検出できる。このため、第3角度範囲と第4角度範囲との組み合わせを異ならせることで、検出したいサイズのターゲットが変更できる。
【0109】
図10には、その一例が示されている。図10は、一例として、n=7およびn=21の組み合わせ、ならびに、n=21およびn=37の組み合わせそれぞれで検出した割れの箇所およびそのサイズを示す図である。図10Aは、n=7およびn=21の組み合わせで検出した割れの箇所およびそのサイズを示す図であり、図10Bは、n=21およびn=37の組み合わせで検出した割れの箇所およびそのサイズを示す図である。
【0110】
この図10Aに示す場合では、第3角度範囲(=第1角度範囲)は、7であり、すなわち、上述の式10において、n=7であり、第4角度範囲(=第2角度範囲)は、21であり、すなわち、上述の式10において、n=21である。割れDE41は、内側から9番目の金属帯(図10Aに示す下から9番目の金属帯、m=9)で検出され、欠陥DE42は、内側から8目の金属帯(図10Aに示す下から8番目の金属帯、m=8)で検出されている。
【0111】
図10Bに示す場合では、第3角度範囲(=第1角度範囲)は、21であり、すなわち、上述の式10において、n=21であり、第4角度範囲(=第2角度範囲は、37であり、すなわち、上述の式10において、n=37である。割れDE51は、内側から11番目の金属帯(図10Bに示す下から11番目の金属帯、m=11)で検出されている。
【0112】
これら図9および図10に示されているように、図9に示すn=1およびn=7の組み合わせで検出される割れDEのサイズより、図10Aに示すn=7およびn=21の組み合わせで検出される割れDEのサイズの方が大きく、図10Aに示すn=7およびn=21の組み合わせで検出される割れDEのサイズより、図10Bに示すn=21およびn=37の組み合わせで検出される割れDEのサイズの方が大きい。これら図9および図10に示す例では、金属帯の厚さ(コイルの板厚)dが略一定であるので、割れDEのサイズの違いは、割れDEの長さの違いと、言い換えることができる。なお、図9に示す3個の割れDE31、DE32、DE33のサイズは、互いに略等しく、所望のターゲットのサイズで検出されており、図10Aに示す2個の割れDE41、DE42のサイズは、互いに略等しく、所望の他のターゲットのサイズで検出されている。
【0113】
このようなコイル状金属帯エッジ異常検出装置Sは、互いに異なる複数の第3角度範囲と第4角度範囲との組み合わせがあるので、複数の、検出したいサイズのターゲットで異常のサイズを求めることができる。例えば、出力部4には、図9図10Aおよび図10Bに示すような、前記異常の一例として求められた割れDEの位置およびそのサイズを示す3個の画像が表示される。互いに異なる複数の第3角度範囲と第4角度範囲との組み合わせは、例えば、予め複数のサンプルから適宜な値に設定される。なお、互いに異なる複数の第3角度範囲と第4角度範囲との組み合わせは、入力部3から入力されることで、変更できるようにしてもよい。
【0114】
一方、前記第2態様では、平滑化処理部22は、前記画像取得部1で取得した画像における少なくとも前記金属帯を写し込んだ金属帯領域画像をコイルの周方向に沿って所定の第3回数で繰り返して平滑化処理することによって前記平滑化画像の1つとして第3回数平滑化画像を生成し、前記金属帯領域画像をコイルの周方向に沿って前記第3回数とは異なる所定の第4回数で繰り返して平滑化処理することによって前記平滑化画像の他の1つとして第4回数平滑化画像を生成する。この場合の平滑化処理部22には、前記第1および第2回数M1、M2を前記第3および第4回数として、上述の第3変形形態における平滑化処理部22が流用され、兼用されてもよい。そして、この異常サイズ処理部24は、前記平滑化処理部22で生成した第3および第4回数平滑化画像に基づいて、エッジ部における異常のサイズを求めるものであり、制御処理部2に機能的に構成される。
【0115】
より具体的には、異常サイズ処理部24は、前記平滑化処理部22で生成した第3回数平滑化画像(=第1回数平滑化画像)と第4回数平滑化画像(=第2回数平滑化画像)との輝度の差分画像を求め、この差分画像を例えば0と1とで2値化し、1となった画像領域を異常としてそのサイズを求める。前記差分画像の生成では、上述の第3変形形態における異常判定部23の差分画像生成部231が流用され、兼用されてもよい。前記2値化の閾値は、例えば、予め複数のサンプルから適宜な値に設定される。あるいは、例えば、前記2値化には、いわゆる大津の2値化処理が用いられる。
【0116】
このような第4変形形態の第2態様におけるコイル状金属帯エッジ異常検出装置Sは、エッジ部における異常のサイズ(異常の大きさ)を求めることができる。例えば、出力部4には、前記異常の一例として求められた割れDEの位置およびそのサイズを示す画像が表示される。そして、前記式14または式15で表される異常の位置LGnが出力部4に表示されてもよい。
【0117】
そして、この第4変形形態の第2態様におけるコイル状金属帯エッジ異常検出装置Sにおいて、互いに異なる複数の前記第3回数(=第1回数M1)と前記第4回数(=第2回数M2)との組み合わせがあり、前記平滑化処理部2は、前記複数の組み合わせそれぞれについて、前記第3および第4回数平滑化画像それぞれを生成し、前記異常サイズ処理部24は、前記複数の組み合わせそれぞれについて、前記異常のサイズを求めてもよい。平滑化処理の回数が多いほど、ほけの度合いが大きくなるので、平滑化処理の回数が多いほど、より大きなサイズの異常を検出できる。このため、第3回数と第4回数との組み合わせを異ならせることで、検出したいサイズのターゲットが変更できる。
【0118】
このようなコイル状金属帯エッジ異常検出装置Sは、互いに異なる複数の第3回数と第4回数との組み合わせがあるので、複数の、検出したいサイズのターゲットで異常のサイズを求めることができる。例えば、出力部4には、前記異常の一例として求められた割れDEの位置およびそのサイズを示す、各組み合わせでの各画像が表示される。互いに異なる複数の第3回数と第4回数との組み合わせは、例えば、予め複数のサンプルから適宜な値に設定される。なお、互いに異なる複数の第3回数と第4回数との組み合わせは、入力部3から入力されることで、変更できるようにしてもよい。
【0119】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【符号の説明】
【0120】
S コイル状金属帯エッジ異常検出装置
1 画像取得部
2 制御処理部
6 記憶部
7 照明部
21 制御部
22 平滑化処理部
23 異常判定部
24 異常サイズ処理部
231 差分画像生成部
232 判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10