(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-19
(45)【発行日】2025-09-30
(54)【発明の名称】抗CD8抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20250922BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20250922BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20250922BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20250922BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20250922BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20250922BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20250922BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20250922BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
C07K16/28
(21)【出願番号】P 2023104924
(22)【出願日】2023-06-27
(62)【分割の表示】P 2020503721の分割
【原出願日】2018-07-23
【審査請求日】2023-07-26
(32)【優先日】2017-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン ティー. ジュルレオ
(72)【発明者】
【氏名】ダンシェ マ
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム オルソン
(72)【発明者】
【氏名】リチャード タヴァレ
(72)【発明者】
【氏名】ギャビン サーストン
【審査官】小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0191543(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/00 - 16/46
C12N 15/00 - 15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗CD8抗体またはその抗原結合フラグメントの重鎖可変領域(HCVR)をコードするポリヌクレオチド配列と軽鎖可変領域(LCVR)をコードするポリヌクレオチド配列とを含む単離されたポリヌクレオチド分子であって、前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、
配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域(HCDR)1、
配列番号6のアミノ酸配列を含むHCDR2
、および
配列番号8のアミノ酸配列を含むHCDR3と;
配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、
配列番号14のアミノ酸配列を含むLCDR2
、および
配列番号16のアミノ酸配列を含むLCDR3と
を含
む、単離されたポリヌクレオチド分子。
【請求項2】
抗CD8抗体またはその抗原結合フラグメントのHCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド分子であって、前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、
配列番号4のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号6のアミノ酸配列を含むHCDR2、および配列番号8のアミノ酸配列を含むHCDR3と;
配列番号12のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号14のアミノ酸配列を含むLCDR2、および配列番号16のアミノ酸配列を含むLCDR3と
を含む、単離されたポリヌクレオチド分子。
【請求項3】
抗CD8抗体またはその抗原結合フラグメントのLCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド分子であって、前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、
配列番号4のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号6のアミノ酸配列を含むHCDR2、および配列番号8のアミノ酸配列を含むHCDR3と;
配列番号12のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号14のアミノ酸配列を含むLCDR2、および配列番号16のアミノ酸配列を含むLCDR3と
を含む、単離されたポリヌクレオチド分子。
【請求項4】
配列番号2の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むHCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含む、請求項1に記載の単離されたポリヌクレオチド分子。
【請求項5】
前記HCVRが、配列番号3のヌクレオチド配列によりコードされるHCDR1、配列番号5のヌクレオチド配列によりコードされるHCDR2、および配列番号7のヌクレオチド配列によりコードされるHCDR3を含む、請求項1または請求項2に記載の単離されたポリヌクレオチド分子。
【請求項6】
前記ポリヌクレオチド分子が、配列番号1のヌクレオチド配列、またはこれに対して少なくとも95%の相同性を有す
る配列を含む、請求項
4に記載の単離されたポリヌクレオチド分子。
【請求項7】
前記ポリヌクレオチド分子が、配列番号1のヌクレオチド配列を含む、請求項
4または請求項2に記載の単離されたポリヌクレオチド分子。
【請求項8】
配列番号10の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むLCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含む、請求項1に記載の単離されたポリヌクレオチド分子。
【請求項9】
前記LCVRが、配列番号11のヌクレオチド配列によりコードされるLCDR1、配列番号13のヌクレオチド配列によりコードされるLCDR2、および配列番号15のヌクレオチド配列によりコードされるLCDR3を含む、請求項
8に記載の単離されたポリヌクレオチド分子。
【請求項10】
前記ポリヌクレオチド分子が、配列番号9のヌクレオチド配列、またはこれに対して少なくとも95%の相同性を有す
る配列を含む、請求項
8に記載の単離されたポリヌクレオチド分子。
【請求項11】
前記ポリヌクレオチド分子が、配列番号9のヌクレオチド配列を含む、請求項
8または請求項3に記載の単離されたポリヌクレオチド分子。
【請求項12】
請求項1に記載のポリヌクレオチド分子を含む、発現ベクター。
【請求項13】
請求項1
2に記載のベクターを発現する、単離された宿主細胞。
【請求項14】
請求項
4に記載のポリヌクレオチド分子を含む、発現ベクター。
【請求項15】
請求項1
4に記載のベクターを発現する、単離された宿主細胞。
【請求項16】
請求項
8に記載のポリヌクレオチド分子を含む、発現ベクター。
【請求項17】
請求項1
6に記載のベクターを発現する、単離された宿主細胞。
【請求項18】
抗体またはその抗原結合フラグメントのHCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含む第1の発現ベクターと、抗体またはその抗原結合フラグメントのLCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含む第2の発現ベクターとを含む発現ベクターのセットであって、前記HCVRが、配列番号2のアミノ酸配列を有し、前記LCVRが配列番号10のアミノ酸配列を有する、発現ベクターのセット。
【請求項19】
請求項
18に記載の発現ベクターのセットを発現する、単離された宿主細胞。
【請求項20】
抗体またはその抗原結合フラグメントのHCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含む第1の発現ベクターと、抗体またはその抗原結合フラグメントのLCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含む第2の発現ベクターとを含む組成物であって、前記HCVRが、配列番号2のアミノ酸配列を有し、前記LCVRが配列番号10のアミノ酸配列を有する、組成物。
【請求項21】
請求項2
0に記載の
前記第1の発現ベクター
および前記第2の発現ベクターを発現する、単離された宿主細胞。
【請求項22】
抗CD8抗体またはその抗原結合フラグメントを産生する方法であって、
(a)前記抗体またはその抗原結合フラグメントの産生を可能にする条件下で宿主細胞を増殖させることであって、前記宿主細胞が、(i)HCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子であって、前記HCVRが、配列番号4のHCDR1アミノ酸配列;配列番号6のHCDR2アミノ酸配列;および配列番号8のHCDR3アミノ酸配列を含む、ポリヌクレオチド分子と、(ii)LCVRをコードするポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子であって、前記LCVRが、配列番号12のLCDR1アミノ酸配列;配列番号14のLCDR2アミノ酸配列;および配列番号16のLCDR3アミノ酸配列を含む、ポリヌクレオチド分子、の両方を含む、増殖させることと;
(b)そのように産生された前記抗体
またはその抗原結合フラグメントを単離することと
を含む、方法。
【請求項23】
前記HCVRが、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む、請求項2
2に記載の方法。
【請求項24】
前記LCVRが、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含む、請求項2
2に記載の方法。
【請求項25】
放射性標識された抗CD8抗体コンジュゲートを調製する方法であって、
(1)請求項2
2に従って産生された抗CD8抗体またはその抗原結合フラグメントを、陽電子放出体キレート剤と、前記抗CD8抗体またはその抗原結合フラグメントのコンジュゲーション部位に対して反応性の部分とを含む分子と反応させることと;
(2)陽電子放出体を装填させることと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本開示は、糖タンパク質CD8に特異的に結合する抗体および抗体の抗原結合フラグメント、これらの抗体、放射性標識された抗CD8抗体、蛍光標識された抗CD8抗体を使用する治療および診断方法、ならびにそれらの撮像における使用に関する。
【0002】
配列表
配列表の正式なコピーは、ファイル名10357WO01_SEQ_LIST_ST25.txt、作成日2018年7月23日、および約12キロバイトのサイズのASCII形式配列表として、EFS-Webを介して本明細書と同時に電子提出される。このASCII形式文書に含まれる配列表は、本明細書の一部であり、またこの文書の全体が参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
背景
T細胞の共刺激分子および共抑制分子(併せて、共シグナル伝達分子と名付けられている)は、T細胞の活性化、サブセット分化、エフェクター機能および生存の制御に重要な役割を果たしている(Chen et al 2013,Nature Rev.Immunol.13:227-242)。抗原提示細胞上の同系ペプチド-MHC複合体がT細胞受容体(TCR)に認識された後、共シグナル伝達受容体は、免疫シナプスでT細胞受容体と共局在化し、そこで、それらはTCRシグナル伝達と相乗作用して、T細胞の活性化および機能を促進または阻害する(Flies et al 2011,Yale J.Biol.Med.84:409-421)。基本的な免疫応答は、共刺激性シグナルと共阻害性シグナルとの間のバランスにより制御されている(「免疫チェックポイント」)(Pardoll 2012,Nature Reviews Cancer 12:252-264)。CD8、細胞表面糖タンパク質は、T細胞受容体-MHC-I相互作用を安定化し、活性化のために、CD3関連免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)のリンパ球特異的タンパク質チロシンキナーゼ(Lck)のリン酸化によって細胞内シグナル伝達を開始する。
【0004】
ヒトでは、CD8は主に細胞傷害性Tリンパ球上で発現されるが、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞、ナチュラルキラーT細胞、およびγδT細胞のサブセットでも発現される。この糖タンパク質は、異なる遺伝子によってコードされ、ααホモ二量体またはαβヘテロ二量体として発現される、2つのアイソフォーム、αおよびβから構成される。αβヘテロ二量体は、より優勢である。
【0005】
免疫陽電子放出断層撮影(PET)は、陽電子放出体で標識されたモノクローナル抗体を利用する画像診断ツールであり、抗体の標的特性を陽電子放出断層撮影カメラの感度と組み合わせたものである。例えば、The Oncologist、12:1379(2007);Journal of Nuclear Medicine、52(8):1171(2011)を参照されたい。免疫PETにより、インビボでの抗原および抗体の蓄積の可視化および定量が可能になり、そのため、診断および補完療法のための重要なツールとして機能し得る。例えば、免疫PETは、特定の療法に対する有力な対象候補の選択、ならびに処置のモニタリングで助けとなり得る。
特定の抗腫瘍療法の対象の適合性または対応性を予測および監視するための診断ツールに対するニーズがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Chen et al 2013,Nature Rev.Immunol.13:227-242
【文献】Flies et al 2011,Yale J.Biol.Med.84:409-421
【文献】Pardoll 2012,Nature Reviews Cancer 12:252-264
【文献】The Oncologist、12:1379(2007)
【文献】Journal of Nuclear Medicine、52(8):1171(2011)
【発明の概要】
【0007】
簡単な要旨
CD8に結合するモノクローナル抗体およびその抗原結合フラグメントが、本明細書に提供される。抗体は、とりわけ、CD8を発現する免疫細胞を標的化するために、およびCD8陽性T細胞活性を調節するために有用であり得る。ある特定の実施形態では、抗体は、CD8陽性T細胞活性を阻害または中和するために有用であり、例えば、CD8陽性T細胞におけるIFNγ産生の阻害および/または活性化T細胞における転写因子アクチベータータンパク質(AP-1)の阻害に有用である。いくつかの実施形態では、抗体および抗原結合フラグメントは、インビボでのCD8結合に有用である。抗体は、CD8陽性T細胞活性化に関連する疾患または状態の処置に有用である。
【0008】
本明細書で提供する抗体は、完全長(例えば、IgG1抗体もしくはIgG4抗体)であってもよいか、または抗原結合部分(例えば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、もしくはscFvフラグメント)のみを含んでいてもよく、かつ、例えば、残存するエフェクター機能を排除するように機能性に影響するように修飾されていてもよい(Reddy et al.,2000,J.Immunol.164:1925-1933)。
【0009】
第1の態様において、本明細書では、CD8に特異的に結合する、単離された組換えモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。ある特定の実施形態では、抗体は完全にヒトであってもよい。
【0010】
例示的な抗CD8抗体は、表1に列挙されており、これは重鎖および軽鎖相補性決定領域配列ならびに重鎖および軽鎖可変領域配列のアミノ酸配列識別子と核酸配列識別子とを提供する。
【0011】
配列番号2のアミノ酸配列、または配列番号2に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、配列番号2と実質的に類似した配列を含むHCVRを含む、抗体またはその抗原結合フラグメントも提供する。
【0012】
配列番号10のアミノ酸配列、または配列番号10に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、配列番号10と実質的に類似した配列を含むLCVRを含む、抗体またはその抗原結合フラグメントも提供する。
【0013】
配列番号4のアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、配列番号4と実質的に類似した配列を含む重鎖CDR1(HCDR1)を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントも提供する。
【0014】
配列番号6のアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、配列番号6と実質的に類似した配列のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2(HCDR2)を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントも提供する。
【0015】
配列番号8のアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、配列番号8と実質的に類似した配列のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3(HCDR3)を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントも提供する。
【0016】
配列番号12のアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、配列番号12と実質的に類似した配列を含む軽鎖CDR1(LCDR1)を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントも提供する。
【0017】
配列番号14のアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、配列番号14と実質的に類似した配列のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2(LCDR2)を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントも提供する。
【0018】
配列番号16のアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、配列番号16と実質的に類似した配列のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3(LCDR3)を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントも提供する。
【0019】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号8/16を含むHCDR3/LCDR3アミノ酸配列ペアを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号2/10のHCVR/LCVRのアミノ酸配列ペアを含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号2/10のHCVR/LCVRのアミノ酸配列ペア内にCDRのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号4/6/8/12/14/16の6個のCDRアミノ酸配列組み合わせ(HCDR1/HCDR2/HCDR3/LCDR1/LCDR2/LCDR3)を含む。
【0020】
HCVRアミノ酸配列およびLCVRアミノ酸配列の内部にあるCDRを識別するための方法および技術は、当該技術分野において周知であり、本明細書に開示される特定のHCVRアミノ酸配列および/またはLCVRアミノ酸配列の内部にあるCDRを識別するために使用することができる。CDRの境界を識別するのに使用することができる例示的規定としては、例えば、Kabat定義、Chothia定義、およびAbM定義が挙げられる。概括的にいうと、Kabat定義は、配列変化に基づき、Chothia定義は、構造的ループ領域の位置に基づき、AbM定義は、KabatのアプローチとChothiaのアプローチとの間の折衷物である。例えば、Kabat,“Sequences
of Proteins of Immunological Interest,”National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991);Al-Lazikani et al.,J.Mol.Biol.273:927-948(1997);およびMartin et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:9268-9272(1989)を参照されたい。抗体内のCDR配列を識別するために、公開データベースも利用可能である。
【0021】
修飾されたグリコシル化パターンを有する抗CD8抗体が、本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、例えば、抗体依存性細胞毒性(ADCC)機能を増大させるために、望ましくないグリコシル化部位を除去する修飾、または抗体がオリゴ糖鎖上に存在するフコース部分を欠損していることが有用であり得る(Shield et al.(2002)JBC 277:26733を参照されたい)。他の応用において、ガラクトシル化の修飾は、補体依存性細胞傷害(CDC)を修飾するために行うことができる。
【0022】
ヒトまたは他の種からのCD8に特異的に結合する抗体およびその抗原結合フラグメントが、本明細書に提供される。ある特定の実施形態では、抗体はヒトCD8および/またはサルCD8に結合してもよい。ある特定の実施形態では、抗体はヒトCD8αに結合する。
【0023】
第2の態様では、抗CD8抗体またはその一部をコードする核酸分子が、本明細書に提供される。例えば、配列番号2のHCVRのアミノ酸配列をコードする核酸分子を本明細書に提供し、ある特定の実施形態では、この核酸分子は、配列番号1のポリヌクレオチド配列、または配列番号1に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する、配列番号1に実質的に類似した配列を含む。配列番号10のLCVRのアミノ酸配列をコードする核酸分子を本明細書に提供し、ある特定の実施形態では、この核酸分子は、配列番号9のポリヌクレオチド配列、または配列番号9に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する、配列番号9に実質的に類似した配列を含む。表1に列挙されたCDRのアミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子を本明細書に提供し、ある特定の実施形態では、この核酸分子は、表1に列挙されたCDR核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それと実質的に類似した配列を含む。
【0024】
関連する態様では、本発明は、抗CD8抗体の重鎖可変領域または軽鎖可変領域を含むポリペプチドを発現することのできる組換え発現ベクターを本明細書に提供する。例えば、上述の核酸分子、すなわち表1に記載されるHCVR配列、LCVR配列、および/またはCDR配列のいずれかをコードする核酸分子のいずれかを含む組換え発現ベクターを本明細書に提供する。また、抗CD8抗体の重鎖もしくは軽鎖可変領域を含むポリペプチドを発現することのできる組換え発現ベクターも提供される。例えば、上述の核酸分子、すなわち、表1に記載される重鎖または軽鎖配列のいずれかをコードする核酸分子のいずれかを含む組換え発現ベクターが、本明細書に企図される。このようなベクターが導入された宿主細胞、ならびに抗体または抗体フラグメントの産生を可能にする条件下で宿主細胞を培養することにより抗体またはその部分を産生する方法、およびそのように産生された抗体および抗体フラグメントを回収する方法も、本開示の範囲内に含まれる。
【0025】
第3の態様では、CD8に特異的に結合する組換えヒト抗体またはそのフラグメントと、薬学的に許容される担体と、を含む薬学的組成物が、本明細書に提供される。別の関連する態様では、本組成物は、抗CD8抗体と第2の治療剤との組み合わせである。一実施形態では、第2の治療剤は、抗CD8抗体と有利に組み合わされた任意の薬剤である。抗CD8抗体と有利に組み合わせることができる例示的な薬剤としては、活性T細胞信号伝達に結合し、かつ/もしくは活性T細胞信号伝達を調節する他の薬剤(他の抗体もしくはそれらの抗原結合フラグメントなど)、および/または、CD8には直接結合しないにもかかわらず、免疫細胞の活性を調節する薬剤が挙げられるが、これらに限定しない。本明細書に提供される抗CD8抗体が関与する追加的な併用療法および合剤は、本明細書の他の場所で開示されている。
【0026】
第4の態様では、対象における免疫応答を調節するための方法が提供され、本方法は、治療有効量の抗CD8抗体またはその抗原結合フラグメントの投与を、それを必要とする対象に施すことを含む。ある特定の実施形態では、本方法は、対象における免疫応答を減少させる、例えば、活性化されたCD8陽性T細胞におけるIFNγの産生を減少させる、および/または活性化されたT細胞における転写因子アクチベータータンパク質(AP-1)を阻害する。本方法は、有効量のCD8に結合する抗体またはそのフラグメントを対象に投与することを含む。一実施形態では、治療有効量の抗CD8抗体またはその抗原結合フラグメントの投与を、それを必要とする対象に施すことを含む、対象におけるT細胞活性化を軽減する方法が、本明細書に提供される。ある特定の実施形態では、それを必要とする対象は、感染または自己免疫疾患などの疾患もしくは障害を患う場合がある。
【0027】
第5の態様では、本明細書に提供される抗CD8抗体または抗体の抗原結合部分を使用して、対象の感染または自己免疫疾患などの疾患もしくは障害を処置する治療方法が、本明細書に提供され、この治療方法は、治療有効量の、本明細書に提供される抗体または抗体のフラグメントを含む薬学的組成物の投与を、それを必要とする対象に施すことを含む。処置される障害は、CD8陽性T細胞の活性または信号伝達の阻害によって、改善、寛解、抑制、または予防される任意の疾患または容態である。ある特定の実施形態では、本抗体またはその抗原結合フラグメントは、それを必要とする対象へ、第2の治療剤との組み合わせで投与される。第2の治療剤は、別のT細胞共阻害剤、腫瘍細胞抗原への抗体、T細胞受容体への抗体、ウイルス感染細胞上のエピトープに対する抗体、細胞傷害性剤、抗癌薬、抗ウイルス薬、抗炎症薬(例えば、コルチコステロイド)、化学療法剤、放射線療法、免疫抑制剤、および当該技術分野において既知の任意の他の薬物または療法から選択され得る。ある特定の実施形態では、第2の治療剤は、本明細書に提供する抗体またはその抗原結合フラグメントに関連する任意の起こり得る副作用(単数または複数)が生じるであろう場合、この副作用に対処するか、またはこれを軽減するのを助ける薬剤であり得る。
【0028】
本抗体またはそのフラグメントは、皮下に、静脈内に、皮内に、腹腔内に、経口で、筋肉内に、または頭蓋内に投与することができる。抗体またはそのフラグメントは、対象の体重1kgあたり約0.1mg~約100mgの用量で投与され得る。
【0029】
また、本明細書において、CD8結合および/またはシグナル伝達の遮断から利益を得るか、またはCD8陽性T細胞活性化の軽減から利益を得る疾患もしくは障害の処置のための薬剤の製造における抗CD8抗体またはその抗原結合フラグメントの使用が提供される。
【0030】
別の態様では、本明細書において、免疫PET撮像で使用するための放射性標識された抗CD8抗体コンジュゲートが提供される。コンジュゲートは、抗CD8抗体またはその抗原結合フラグメントと、キレート部分と、陽電子放出体と、を含む。
【0031】
本明細書において、該コンジュゲートおよびそのために有用な合成中間体を合成するためのプロセスが提供される。
【0032】
本明細書において、CD8を発現する組織を撮像する方法が提供され、本方法は、本明細書に記載の放射性標識された抗CD8抗体コンジュゲートを組織に投与することと、陽電子放出断層撮影(PET)撮像によって、CD8発現を可視化することと、を含む。
【0033】
本明細書において、CD8発現細胞、例えば、CD8発現腫瘍内リンパ球、またはCD8陽性T細胞を含む組織を撮像する方法が提供され、本方法は、本明細書に記載の放射性標識された抗CD8抗体コンジュゲートを組織に投与することと、PET撮像によって、CD8発現を可視化することと、を含む。
【0034】
本明細書において、組織内のCD8を検出する方法が提供され、本方法は、本明細書に記載の放射性標識された抗CD8抗体コンジュゲートを組織に投与することと、PET撮像によって、CD8発現を可視化することと、を含む。一実施形態では、組織は、ヒト対象に存在する。ある特定の実施形態では、対象は、非ヒト哺乳動物である。ある特定の実施形態では、対象は、癌、炎症性疾患、または感染などの疾患もしくは障害を有する。
【0035】
本明細書において、組織内のCD8を検出する方法が提供され、本方法は、組織を本明細書に記載の蛍光分子にコンジュゲートされた抗CD8抗体コンジュゲートと接触させることと、蛍光撮像によって、CD8発現を可視化することと、を含む。
【0036】
本明細書において、対象が抗腫瘍療法に適していることを確認するための方法が提供され、本方法は、固形腫瘍を有する対象を選択することと、本明細書に記載の放射性標識された抗CD8抗体を投与することと、PET撮像によって、腫瘍内に投与された放射性標識された抗体コンジュゲートを可視化することと、を含み、腫瘍における放射性標識された抗体コンジュゲートの存在が、対象が抗腫瘍療法に適したものとして確認する。
【0037】
本明細書において、腫瘍を処置する方法が提供され、本方法は、固形腫瘍を有する対象を選択することと、固形腫瘍がCD8陽性であると決定することと、抗腫瘍療法を、それを必要とする対象に施すことと、を含む。特定の実施形態では、抗腫瘍療法はPD-1/PD-L1シグナル伝達軸の阻害剤(例えば、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体)を含み、一例として、チェックポイント阻害剤療法である。ある特定の実施形態では、対象には本明細書に記載される放射性標識された抗CD8抗体コンジュゲートが投与され、放射性標識された抗体コンジュゲートの局在化を、陽電子放出断層撮影(PET)撮像によって撮像し、腫瘍がCD8陽性であるかどうかを決定する。ある特定の実施形態では、対象には本明細書に記載される放射性標識された抗PD-1抗体コンジュゲートがさらに投与され、放射性標識された抗体コンジュゲートの局在化を、陽電子放出断層撮影(PET)撮像によって撮像し、腫瘍がPD-1陽性であるかどうかを決定する。
【0038】
本明細書において、対象の抗腫瘍療法の有効性を監視するための方法が提供され、本方法は、固形腫瘍を有する対象を選択することであって、対象が抗腫瘍療法で処置されている、選択することと、本明細書に記載される放射性標識された抗CD8コンジュゲートを対象に投与することと、PET撮像によって、腫瘍における投与された放射性標識されたコンジュゲートの局在化を撮像することと、腫瘍成長を決定することと、を含み、コンジュゲートまたは放射性標識されたシグナルの取り込みのベースラインからの減少が、抗腫瘍療法有効性を示す。ある特定の実施形態では、抗腫瘍療法は、PD-1阻害剤(例えば、REGN2810、BGB-A317、ニボルマブ、ピジリズマブ、およびペンブロリズマブ)、PD-L1阻害剤(例えば、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、MDX-1105、およびREGN3504、ならびに特許出願公開第US2015-0203580号に開示されるもの)、CTLA-4阻害剤(例えば、イピリムマブ)、TIM3阻害剤、BTLA阻害剤、TIGIT阻害剤、CD47阻害剤、GITR阻害剤、別のT細胞共阻害剤もしくはリガンドの拮抗薬(例えば、LAG3、CD-28、2B4、LY108、LAIR1、ICOS、CD160またはVISTAへの抗体)、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤、血管内皮成長因子(VEGF)拮抗薬[例えば、アフリベルセプトもしくは米国特許第7,087,411号に記載されるVEGF阻害融合タンパク質などの「VEGF-トラップ」、または抗VEGF抗体もしくはその抗原結合フラグメント(例えば、ベバシズマブ、またはラニビズマブ)またはVEGF受容体の小分子キナーゼ阻害剤(例えば、スニチニブ、ソラフェニブ、またはパゾパニブ)]、Ang2阻害剤(例えば、ネスアクマブ)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)阻害剤、表皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤(例えば、エルロチニブ、セツキシマブ)、CD20阻害剤(例えば、リツキシマブなどの抗CD20抗体)、腫瘍特異抗原に対する抗体[例えば、CA9、CA125、黒色腫関連抗原3(MAGE3)、癌胎児性抗原(CEA)、ビメンチン、腫瘍-M2-PK、前立腺特異抗原(PSA)、ムチン-1、MART-1、およびCA19-9]、ワクチン(例えば、カルメット・ゲラン桿菌(Bacillus Calmette-Guerin)、癌ワクチン)、抗原提示を増加させるアジュバント(例えば、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子)、二特異性抗体(例えば、CD3×CD20二重特異性抗体、またはPSMA×CD3二重特異性抗体)、細胞毒素、化学療法剤(例えば、ダカルバジン、テモゾロミド、シクロホスファミド、ドセタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、シスプラチン、カルボプラチン、ゲムシタビン、メトトレキサート、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、およびビンクリスチン)、シクロホスファミド、放射線療法、IL-6R阻害剤(例えば、サリルマブ)、IL-4R阻害剤(例えば、デュピルマブ)、IL-10阻害剤、IL-2、IL-7、IL-21、およびIL-15などのサイトカイン、および抗体薬物コンジュゲート(ADC)(例えば、抗CD19-DM4 ADC、および抗DS6-DM4 ADC)を含む。
【0039】
本明細書において、抗腫瘍療法に対する対象の応答を予測するための方法が提供され、本方法は、固形腫瘍を有する対象を選択することと、腫瘍がCD8陽性であるかどうかを決定することを含み、腫瘍がCD8陽性である場合、対象の抗腫瘍療法の陽性応答を予測する。ある特定の実施形態では、本開示の放射性標識された抗CD8抗体コンジュゲートを投与し、PET撮像によって、放射性標識された抗体コンジュゲートを腫瘍内に局在化させる(腫瘍における放射性標識された抗体コンジュゲートの存在は、腫瘍がCD8陽性であることを示す)ことによって、腫瘍は陽性であると決定される。いくつかの実施形態では、抗腫瘍療法は、PD-1阻害剤(例えば、REGN2810、BGB-A317、ニボルマブ、ピジリズマブ、およびペンブロリズマブ)、PD-L1阻害剤(例えば、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、MDX-1105、およびREGN3504)、CTLA-4阻害剤(例えば、イピリムマブ)、TIM3阻害剤、BTLA阻害剤、TIGIT阻害剤、CD47阻害剤、GITR阻害剤、LAG3阻害剤、別のT細胞共阻害剤もしくはリガンドの拮抗薬(例えば、CD-28、2B4、LY108、LAIR1、ICOS、CD160またはVISTAへの抗体)、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤、血管内皮成長因子(VEGF)拮抗薬[例えば、アフリベルセプトもしくは米国特許第7,087,411号に記載されるVEGF阻害融合タンパク質などの「VEGF-トラップ」、または抗VEGF抗体もしくはその抗原結合フラグメント(例えば、ベバシズマブ、またはラニビズマブ)またはVEGF受容体の小分子キナーゼ阻害剤(例えば、スニチニブ、ソラフェニブ、またはパゾパニブ)]、Ang2阻害剤(例えば、ネスアクマブ)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)阻害剤、表皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤(例えば、エルロチニブ、セツキシマブ)、CD20阻害剤(例えば、リツキシマブなどの抗CD20抗体)、腫瘍特異抗原に対する抗体[例えば、CA9、CA125、メラノーマ関連抗原3(MAGE3)、癌胎児性抗原(CEA)、ビメンチン、腫瘍-M2-PK、前立腺特異抗原(PSA)、ムチン-1、MART-1、およびCA19-9]、ワクチン(例えば、カルメット・ゲラン桿菌(Bacillus Calmette-Guerin)、癌ワクチン)、抗原提示を増加させるアジュバント(例えば、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子)、二特異性抗体(例えば、CD3×CD20二重特異性抗体、またはPSMA×CD3二重特異性抗体)、細胞毒素、化学療法剤(例えば、ダカルバジン、テモゾロミド、シクロホスファミド、ドセタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、シスプラチン、カルボプラチン、ゲムシタビン、メトトレキサート、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、およびビンクリスチン)、シクロホスファミド、放射線療法、IL-6R阻害剤(例えば、サリルマブ)、IL-4R阻害剤(例えば、デュピルマブ)、IL-10阻害剤、IL-2、IL-7、IL-21、およびIL-15などのサイトカイン、および抗体薬物コンジュゲート(ADC)(例えば、抗CD19-DM4 ADC、および抗DS6-DM4 ADC)から選択される。
【0040】
本明細書において、固形腫瘍を有する対象における抗腫瘍療法に対する陽性応答を予測する方法が提供される。本方法は、放射性標識された抗CD8抗体を対象に投与して、固形腫瘍におけるCD8陽性細胞の存在を決定することを含み、CD8陽性細胞の存在は、抗腫瘍療法に対する陽性応答を予測する。
【0041】
本明細書において、固形腫瘍を有する対象における抗腫瘍療法に対する陽性応答を監視する方法が提供される。本方法は、(a)対象に抗腫瘍療法の1回以上の用量を投与することと、(b)抗腫瘍療法を施した1~20週後に、対象に放射性標識された抗CD8抗体コンジュゲートを投与して、固形腫瘍におけるCD8陽性細胞の存在を決定することと、を含む。CD8陽性細胞の存在は、抗腫瘍療法に対する陽性応答を示す。
【0042】
本明細書において、固形腫瘍を有する対象における抗腫瘍療法の成功もしくは有効性を予測または監視するための方法が提供されており、本方法は、(a)腫瘍におけるCD8陽性細胞のレベルを決定することと、(b)CD8陽性細胞のレベルを成功した抗腫瘍療法に相関させることと、を含む。ある特定の閾値を超えるCD8の高レベルが、成功した抗腫瘍療法の予測または指標である。
【0043】
本明細書において、腫瘍におけるT細胞の存在またはT細胞の浸潤を監視するための方法が提供され、本方法は、(a)腫瘍を有する対象に、第1の時点で放射性標識された抗CD8抗体コンジュゲートを投与し、腫瘍におけるCD8陽性T細胞の存在を決定することと、(b)抗腫瘍療法の1回以上の用量を対象に投与することと、(c)腫瘍療法を施した1~20週後に、第2の時点で放射性標識された抗CD8抗体を対象に投与し、腫瘍におけるCD8陽性T細胞の存在を決定することと、を含む。腫瘍におけるT細胞の存在は、抗腫瘍療法に対する陽性応答を示す。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
CD8に結合する単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントであって、前記抗体またはそのフラグメントが、以下の特性:
(a)完全ヒトモノクローナル抗体であること、
(b)表面プラズモン共鳴によって測定されるとき、3.5×10
-8M以下のK
DでCD8に結合すること、
(c)ヒトCD8αに結合すること、
(d)活性化CD8T細胞においてIFNγ産生を阻害すること、
(e)活性化T細胞において転写因子アクチベータータンパク質(AP-1)を阻害すること、ならびに
(f)ヒトおよびサルCD8と交差反応することのうちの1つ以上を示す、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
(項目2)
CD8に結合する単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントであって、前記抗体またはそのフラグメントが、配列番号2の重鎖可変領域(HCVR)のアミノ酸配列内に含有されている3つの重鎖CDR(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)と、配列番号10の軽鎖可変領域(LCVR)のアミノ酸配列内に含有されている3つの軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)とを含む、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
(項目3)
配列番号2のHCVRのアミノ酸配列を含む、項目1または2に記載の単離された抗体。
(項目4)
配列番号10のLCVRのアミノ酸配列を含む、項目1または2に記載の単離された抗体。
(項目5)
配列番号2/10のHCVR/LCVRのアミノ酸配列ペアを含む、項目1または2に記載の単離された抗体。
(項目6)
項目1~5のいずれか一項に記載の、治療有効量の1つ以上の単離されたヒトモノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメントと共に、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物。
(項目7)
項目1~5のいずれか一項に記載の、CD8に結合するヒトモノクローナル抗体またはそのフラグメントをコードする、核酸分子。
(項目8)
項目7に記載の、CD8に結合するヒトモノクローナル抗体またはそのフラグメントをコードする核酸分子を含む、発現ベクター。
(項目9)
項目8に記載の発現ベクターを含有する、宿主細胞。
(項目10)
CD8に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントと、陽電子放出体と、を含む、放射性標識された抗体コンジュゲート。
(項目11)
CD8に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントと、キレート部分と、陽電子放出体と、を含む、放射性標識された抗体コンジュゲート。
(項目12)
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、式(A):
【化9】
のキレート部分Lに共有結合しており、
式中、Mが、陽電子放出体であり、zが、各出現において独立して、0または1であり、zのうちの少なくとも1つが1である、項目11に記載のコンジュゲート。
(項目13)
前記キレート部分が、デスフェリオキサミンを含む、項目11または12に記載のコンジュゲート。
(項目14)
前記陽電子放出体が、
89Zrである、項目10~12のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
(項目15)
-L-Mが、
【化10】
である、項目12~14のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
(項目16)
抗体またはその抗原結合フラグメントが、式(A)の1つ、2つ、または3つの部分に共有結合している、項目10~15のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
(項目17)
前記抗体が、配列番号2のHCVRのアミノ酸配列内に含有されている3つの重鎖CDR(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)と、配列番号10のLCVRのアミノ酸配列内に含有されている3つの軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)とを含む、項目10~16のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
(項目18)
前記抗体が、
(a)表面プラズモン共鳴によって測定されるとき、約3.5×10
-8M未満の結合解離平衡定数(K
D)でヒトCD8に結合すること、
(b)ヒトCD8αに結合すること、
(c)活性化CD8T細胞でのIFNγ産生を阻害すること、
(d)活性化T細胞における転写因子アクチベータータンパク質(AP-1)を阻害すること、ならびに
(e)ヒトおよびサルCD8と交差反応することからなる群から選択される1つ以上の特性を有する、項目10~17のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
(項目19)
前記抗体が、配列番号2/10のHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアを含む、項目10~18のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
(項目20)
CD8を発現する組織の撮像方法であって、項目10~19のいずれか一項に記載の放射性標識された抗体コンジュゲートを前記組織に投与することと、陽電子放出断層撮影(PET)撮像によりCD8発現を可視化することと、を含む、組織の撮像方法。
(項目21)
固形腫瘍を有する対象をチェックポイント阻害剤療法で処置するための方法であって、
(a)前記固形腫瘍がCD8陽性T細胞を含むかどうかを決定することと、
(b)前記腫瘍がCD8陽性T細胞を含む場合、前記チェックポイント阻害剤療法の1回以上の用量を前記対象に投与することと、を含み、
前記腫瘍中のCD8陽性T細胞の存在が、前記チェックポイント阻害剤療法での処置に対する前記腫瘍の応答を示す、方法。
(項目22)
工程(a)が、
(i)項目10~19のいずれか一項に記載の放射性標識された抗体コンジュゲートを前記対象に投与することと、
(ii)陽電子放出断層撮影(PET)撮像によって、前記腫瘍における前記放射性標識された抗体コンジュゲートの局在化の撮像を行うことと、を含み、前記腫瘍における前記放射性標識された抗体コンジュゲートの存在が、前記腫瘍がCD8陽性細胞を含むことを示す、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記対象が、0.1~10mg/kgの前記放射性標識された抗体コンジュゲートを投与される、項目22に記載の方法。
(項目24)
T細胞機能が、前記放射性標識された抗体コンジュゲートの投与によって損なわれない、項目22に記載の方法。
(項目25)
前記放射性標識された抗体コンジュゲートが、前記対象に対して皮下または静脈内に投与される、項目22または24に記載の方法。
(項目26)
PET撮像が、前記放射性標識された抗体コンジュゲートの投与の2~7日後に実施される、項目22~25のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
工程(a)が工程(b)の前に実行される、項目21~25のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
(c)前記対象を抗腫瘍療法の少なくとも1回の用量で処置した後に、工程(a)を繰り返すことをさらに含み、前記腫瘍における前記放射性標識された抗体コンジュゲートの局在化の面積のベースラインからの増加が、前記抗腫瘍療法の有効性を示す、項目21~27のいずれか一項に記載の方法。
(項目29)
前記対象に、前記抗腫瘍療法を施した1~20週後に前記放射性標識された抗体コンジュゲートを投与される、項目22に記載の方法。
(項目30)
前記固形腫瘍がPD-1陽性であることを、放射性標識された抗PD-1コンジュゲートの投与を、それを必要とする前記対象に施すことにより決定する工程と、PET撮像によって、前記腫瘍における前記放射性標識された抗PD-1コンジュゲートの局在化を撮像する工程とを、さらに含み、前記腫瘍における前記放射性標識された抗PD-1コンジュゲートの存在が、前記腫瘍がPD-1陽性であることを示す、項目21に記載の方法。
(項目31)
前記抗腫瘍療法が、前記PD-1/PD-L1シグナル伝達軸の阻害剤、CTLA-4阻害剤、TIM3阻害剤、BTLA阻害剤、TIGIT阻害剤、CD47阻害剤、GITR阻害剤、別のT細胞共阻害剤もしくはリガンドの拮抗薬、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤、血管内皮増殖因子(VEGF)拮抗薬、Ang2阻害剤、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)阻害剤、表皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤、CD20阻害剤、腫瘍特異抗原に対する抗体、癌ワクチン、二重特異性抗体、細胞毒素、化学療法薬、シクロホスファミド、放射線療法、IL-6R阻害剤、IL-4R阻害剤、IL-10阻害剤、IL-2、IL-7、IL-21、IL-15、および抗体薬物コンジュゲート(ADC)からなる群から選択される、項目21~30のいずれか一項に記載の方法。
(項目32)
前記抗腫瘍療法が、REGN2810、BGB-A317、ニボルマブ、ピジリズマブ、ペンブロリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、MDX-1105、REGN3504、イピリムマブ、抗CD-28抗体、抗2B4抗体、抗LY108抗体、抗LAIR1抗体、抗ICOS抗体、抗CD160抗体、抗VISTA抗体、アフリベルセプト、ベバシズマブ、ラニビズマブ、スニチニブ、ソラフェニブ、パゾパニブ、ネスバクマブ、エルロチニブ、セツキシマブ、リツキシマブ、抗CA9抗体、抗CA125抗体、抗黒色腫関連抗原3(MAGE3)抗体、抗癌胎児性抗原(CEA)抗体、抗ビメンチン抗体、抗腫瘍M2-PK抗体、抗前立腺特異抗原(PSA)抗体、抗ムチン-1抗体、抗MART-1抗体、抗CA19-9抗体、カルメット・ゲラン桿菌(Bacillus Calmette-Guerin)、CD3×CD20二重特異性抗体、PSMA×CD3二重特異性抗体、ダカルバジン、テモゾロミド、シクロホスファミド、ドセタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、シスプラチン、カルボプラチン、ゲムシタビン、メトトレキサート、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ビンクリスチン、シクロホスファミド、放射線療法、サリルマブ、デュピルマブ、抗CD19-DM4 ADC、および抗DS6-DM4 ADCからなる群から選択される、項目21~30のいずれか一項に記載の方法。
(項目33)
前記抗腫瘍療法が、抗PD-1抗体および抗PD-L1抗体からなる群から選択される、項目21~32のいずれか一項に記載の方法。
(項目34)
前記PD-1/PD-L1シグナル伝達軸の前記阻害剤が、抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントである、項目31に記載の方法。
(項目35)
前記抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントが、REGN2810、ノボルマブ、またはペンブロリズマブである、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記抗PD-1抗体またはその抗原結合フラグメントが、REGN2810である、項目34に記載の方法。
(項目37)
前記PD-1/PD-L1シグナル伝達軸の前記阻害剤が、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントである、項目31に記載の方法。
(項目38)
前記抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントが、アテゾリズマブ、アベルマブ、またはデュルバルマブである、項目37に記載の方法。
(項目39)
前記腫瘍が、血液癌、脳癌、腎細胞癌、卵巣癌、膀胱癌、前立腺癌、乳癌、肝細胞癌、骨癌、結腸癌、非小細胞肺癌、頭頸部の扁平上皮細胞癌、大腸直腸癌、中皮腫、B細胞リンパ腫、および黒色腫からなる群から選択される、項目21~38のいずれか一項に記載の方法。
(項目40)
固形腫瘍を有する対象における抗腫瘍療法に対する陽性応答を予測する方法であって、前記方法が、
前記対象に放射性標識された抗CD8抗体コンジュゲートを投与して、前記固形腫瘍におけるCD8陽性細胞の存在を決定することを含み
前記CD8陽性細胞の存在が、抗腫瘍療法に対する陽性応答を予測する、方法。
(項目41)
抗腫瘍療法に対する対象における腫瘍の応答を監視する方法であって、
(a)前記対象に対して抗腫瘍療法の1回以上の用量を投与することと、
(b)前記抗腫瘍療法を施した1~20週後に、前記対象に対して放射性標識された抗CD8抗体コンジュゲートの少なくとも1回の用量を投与して、前記固体腫瘍におけるCD8陽性細胞の存在を決定することと、を含み、
前記CD8陽性細胞の存在が、前記抗腫瘍療法に対する陽性応答を示す、方法。
(項目42)
腫瘍を有する対象における抗腫瘍療法の有効性を予測または監視する方法であって、前記方法が、
(a)前記腫瘍におけるCD8陽性T細胞のレベルを決定することと、
(b)前記CD8陽性T細胞のレベルを、成功した抗腫瘍療法と相関させることと、を含み
ある特定の閾値を超える高レベルが、成功した抗腫瘍療法の予測または指標である、方法。
(項目43)
経時的な腫瘍におけるT細胞の存在を監視する方法であって、前記方法が、
(a)放射性標識された抗CD8抗体コンジュゲートを、前記腫瘍を有する対象に第1の時点で投与して、前記腫瘍におけるCD8陽性T細胞の存在を決定することと、
(b)前記対象に対して抗腫瘍療法の1回以上の用量を投与することと、
(c)前記抗腫瘍療法を施した1~20週後に、前記対象に第2の時点で放射性標識された抗CD8抗体コンジュゲートを投与して、前記腫瘍におけるCD8陽性T細胞の存在を決定することと、を含み、
前記腫瘍におけるT細胞の存在が、前記抗腫瘍療法に対する陽性応答を示す、方法。
(項目44)
工程(c)が、前記抗腫瘍療法による処置過程にわたって繰り返される、項目43に記載の方法。
(項目45)
前記第1の時点が、(b)の前に起こる、項目43に記載の方法。
(項目46)
(a)による前記CD8陽性T細胞が、(c)による前記CD8陽性T細胞に対して比較され、CD8陽性T細胞の経時的な増加が、前記抗腫瘍療法に対する陽性応答を示す、項目43に記載の方法。
(項目47)
式(III)の化合物であって、
【化11】
式中、Aが、CD8に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントであり、kが、1~30の整数である、化合物。
(項目48)
kが、1または2である、項目47に記載の化合物。
(項目49)
(i)CD8に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントと、(ii)1つ以上のキレート部分と、を含む、抗体コンジュゲート。
(項目50)
前記キレート部分が、
【化12】
であり、
式中
【化13】
が、前記抗体またはその抗原結合フラグメントへの共有結合である、項目49に記載の抗体コンジュゲート。
(項目51)
前記コンジュゲートが、1.0~2.0の薬物対抗体比(DAR)を有する、項目49に記載の抗体コンジュゲート。
(項目52)
前記キレート部分対抗体比が、約1.7である、項目49に記載の抗体コンジュゲート。
(項目53)
(i)CD8に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントと、(ii)蛍光染料と、を含む、抗体コンジュゲート。
(項目54)
前記蛍光染料が、近赤外染料である、項目53に記載の抗体コンジュゲート。
(項目55)
前記染料が、IRDye800CWまたはVivoTag680XLである、項目54に記載の抗体コンジュゲート。
(項目56)
前記抗体コンジュゲートが、以下の構造:
Ab-[D]
nを有し、
式中、Abが、抗CD8抗体またはその抗原結合フラグメントであり、Dが、蛍光染料であり、nが、1~4の整数である、項目53に記載の抗体コンジュゲート。
(項目57)
Dが、
【化14】
であるか、またはその薬学的に許容される塩である、項目56に記載の抗体コンジュゲート。
(項目58)
CD8を発現する組織の撮像方法であって、前記方法が、(a)(i)CD8に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントと、(ii)蛍光染料とを含む抗体コンジュゲートを前記組織に接触させることと、(b)蛍光撮像を使用して前記組織を撮像することによってCD8発現を可視化することと、を含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】ヒトCD8+およびカニクイアルT細胞に結合するmAb1を示す。
【
図2】mAb1によるIFNγ産生の阻害を通したヒトCD8 T細胞活性の調節を示す。
【
図3】CD8転写活性のmAb1阻害を立証するCD8 T細胞/APCルシフェラーゼアッセイからのデータを示す。
【
図4】DFO-mAb1コンジュゲートのUV/VISスペクトルを示す。
【
図5】UV280nmの吸光度検出を用いた、Superdex 200 Increaseカラム上の25ugのHPLC-SECを示す。単量体(97.5%)および高分子量(HMW)種(2.5%)が示されている。
【
図6】DFO-mAb1コンジュゲートの電気泳動図を示す。
図6A)非還元型コンジュゲートを表し、
図6B)還元型コンジュゲートを表す。
【
図7】ガンマ放射検出を用いた、Superdex 200 Increaseカラム上のmAb1-L2-111016放射性免疫コンジュゲートのSEC-HPLCクロマトグラムを示す。非標識
89Zrは、全組み入れ活性の0.1%未満を占める。
【
図8】ガンマ放射検出を用いた、Superdex 200 Increaseカラム上のmAb1-L2-111516放射性免疫コンジュゲートのSEC-HPLCクロマトグラムを示す。非標識
89Zrは、全組み入れ活性の0.1%未満を占める。
【
図9】UV280nmの吸光度検出を用いた、Superdex 200 Increaseカラム上のmAb1-L2-111016放射性免疫コンジュゲートのSEC-HPLCクロマトグラムを示す。単量体(98.5%)および高分子量(HMW)種(1.5%)が示されている。
【
図10】UV280nmの吸光度検出を用いた、Superdex 200 Increaseカラム上のmAb1-L2-111516放射性免疫コンジュゲートのSEC-HPLCクロマトグラムを示す。単量体(98.6%)および高分子量(HMW)種(14%)が示されている。
【
図11】hCD8を発現するマウスにおいて0.5または1.5mg/kgのタンパク質用量で注入された
89Zr-DFO-mAb1の代表的なPET画像を提供する。
89Zr-DFO-mAb1の特異的な取り込みは、両方の用量でhCD8を発現するマウスの脾臓およびリンパ節で検出される。取り込みの減少は、脾臓およびリンパ節で1.5mg/kgのより高いタンパク質用量で検出され、リンパ器官に対する標的化特異性を示す。略語:Cerv LN-頚部リンパ節;Axil LN-腋窩リンパ節;Brach LN-上腕リンパ節;Mes LN-腸間膜リンパ節、Ing LN-鼠経リンパ節。
【
図12】RajiおよびRaji/hPBMC腫瘍担持マウスにおいて0.1mg/kgのタンパク質用量で注入された
89Zr-DFO-mAb1の代表的なPET画像を示す。89Zr-DFO-mAb1の特異的取り込みは、Raji/hPBMC腫瘍担持マウスの脾臓および腫瘍内で検出される。
【
図13】LCMVに感染したマウスの抗体処置を比較し、mAb1で処置したマウスが、強力なCD8遮断抗体で処置されたマウスに対してLCMVをクリアする能力を保持していることを立証している。
【発明を実施するための形態】
【0045】
I.定義
本明細書に別途定義されていない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。
【0046】
「CD8」(表面抗原分類8(Cluster of Differentiation 8))は、主に細胞傷害性Tリンパ球上で発現されるが、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞、ナチュラルキラーT細胞、およびγδT細胞のサブセットでも発現される、細胞表面糖タンパク質を指す。この糖タンパク質は、異なる遺伝子によってコードされ、ααホモ二量体またはαβヘテロ二量体として発現される、2つのアイソフォーム、αおよびβから構成され、αβヘテロ二量体は優勢である。CD8共受容体は、T細胞受容体MHC-1の相互作用を安定化し、活性化のために、CD3関連免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)のリンパ球特異的タンパク質チロシンキナーゼ(Lck)のリン酸化によって細胞内シグナル伝達を開始する。
【0047】
完全長CD8αのアミノ酸配列は、受託番号P01732としてUniProtに提供され、本明細書では配列番号18とも称される。完全長CD8βのアミノ酸配列は、受託番号10966としてUniProtに提供され、本明細書では配列番号20とも称される。「CD8」という用語は、完全長CD8αまたはCD8β、組換えCD8、そのフラグメント、およびその融合体を含む。この用語はまた、例えば、ヒスチジンタグ、マウスもしくはヒトFc、またはROR1のシグナル配列などのシグナル配列に結合されたCD8αまたはCD8β、もしくはそのフラグメントを包含する。例えば、この用語は、CD8αまたはCD8βのフラグメントに結合されたC末端にマウスFc(mlgG2a)を含む、配列番号18または20によって例示される配列を含む。他のタンパク質バリアントは、CD8またはそのフラグメントに結合されたC末端にヒスチジンタグを含む。非ヒト種からのものとして指定されない限り、「CD8」という用語はヒトCD8を意味する。
【0048】
CD8は、シンクスタークによって膜に接続された免疫グロブリン可変(IgV)様細胞外ドメインと、細胞内テールとを有する免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーのメンバーである。
【0049】
本明細書で使用される場合、「T細胞共阻害剤」という用語は、T細胞活性化または抑制を介して免疫応答を調節するリガンドおよび/または受容体を指す。「T細胞共阻害剤」という用語は、T細胞共シグナル伝達分子としても知られており、これらには、リンパ球活性化遺伝子3タンパク質(LAG-3、CD223としても知られる)、プログラム細胞死-1(PD-1)、細胞傷害性T-リンパ球抗原-4(CTLA-4)、BおよびTリンパ球アテニュエーター(BTLA)、CD-28、2B4、LY108、T細胞免疫グロブリンおよびムチン-3(TIM3)、T細胞免疫グロブリンおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT、VSIG9としても知られる)、白血球関連免疫グロブリン様受容体1(LAIR1、CD305としても知られる)、誘導性T細胞共刺激分子(ICOS、CD278としても知られる)、B7-1(CD80)、およびCD160が挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
本明細書で使用する「抗体」という用語は、ジスルフィド結合によって相互接続された4つのポリペプチド鎖、2つの重(H)鎖、および2つの軽(L)鎖からなる免疫グロブリン分子(すなわち、「完全抗体分子」)、ならびにこれらの多量体(例えば、IgM)またはこれらの抗原結合フラグメントを指すことが意図される。各重鎖は、重鎖可変領域(「HCVR」または「VH」)および重鎖定常領域(CH1ドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインからなる)からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(「LCVRまたは「VL」)および軽鎖定常領域(CL)からなる。VH領域およびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存された領域が点在する相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域へとさらに細分することができる。各VHおよびVLは、以下の順序、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4でアミノ末端からカルボキシ末端に配置された3つのCDRおよび4つのFRからなる。ある特定の実施形態では、抗体(またはその抗原結合フラグメント)のFRは、ヒト生殖系列配列と同一であってもよいか、または天然にもしくは人工的に修飾されていてもよい。アミノ酸コンセンサス配列は、2つ以上のCDRの並列分析に基づいて定義され得る。
【0051】
1つ以上のCDR残基の置換または1つ以上のCDRの省略も可能である。抗体は、1つまたは2つのCDRが結合のために省かれることができると科学文献に説明されている。Padlan et al.(1995 FASEB J.9:133-139)は、公開されている結晶構造に基づいて、抗体とこれらの抗原との間の接触領域を分析し、CDR残基の約1/5~1/3のみが実際に抗原と接触すると結論付けた。Padlanは、1つまたは2つのCDRが抗原と接触しているアミノ酸を有しない多くの抗体も発見した(Vajdos et al.2002 J Mol Biol 320:415-428も参照されたい)。
【0052】
抗原と接触していないCDR残基は、先行研究に基づいて、ChothiaのCDRの外側にあるKabatのCDRの領域から、分子モデリングによって、かつ/または演繹的に識別することができる(例えば、CDRH2中の残基H60~H65はしばしば必要ではない)。CDRまたはその残基(単数または複数)が省略される場合、このCDRまたはその残基(単数または複数)は、通常、別のヒト抗体配列またはこのような配列のコンセンサスにおける対応する位置を占有するアミノ酸と置換される。CDR内の置換のための位置および置換すべきアミノ酸も演繹的に選択することができる。演繹的な置換は、保存的置換または非保存的置換であり得る。
【0053】
本明細書に開示する完全ヒト抗CD8モノクローナル抗体は、対応する生殖系列配列と比較して、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインのフレームワークおよび/またはCDR領域に1つ以上のアミノ酸置換、挿入、および/または欠失を含み得る。そのような変異は、本明細書に開示されるアミノ酸配列を、例えば公開抗体配列データベースから入手可能な生殖系列配列と比較することによって容易に確認され得る。本開示は、本明細書に開示されるアミノ酸配列のいずれかに由来する抗体、およびこれらの抗原結合フラグメントを含み、1つ以上のフレームワークおよび/またはCDR領域内の1つ以上のアミノ酸は、抗体が由来する生殖系列配列の対応する残基(単数または複数)、または別のヒト生殖系列配列の対応する残基(単数または複数)、または対応する生殖系列残基(単数または複数)の保存的アミノ酸置換に変異する(そのような配列変化は、本明細書において集合的に「生殖細胞系変異」と称される)。当業者であれば、本明細書に開示される重鎖可変領域配列および軽鎖可変領域配列から開始して、1つ以上の個々の生殖系列変異またはそれらの組み合わせを含む、多くの抗体および抗原結合フラグメントを容易に産生することができる。ある特定の実施形態では、VHおよび/またはVLドメイン内のフレームワークおよび/またはCDR残基の全てが、抗体が由来する元の生殖系列配列に見られる残基に再び変異する。他の実施形態では、特定の残基のみ、例えば、FR1の最初の8個のアミノ酸内、もしくはFR4の最後の8個のアミノ酸内に見られる変異残基のみ、またはCDR1、CDR2、もしくはCDR3内に見られる変異残基のみが、元の生殖系列配列に変異する。他の実施形態では、フレームワークおよび/またはCDR残基(単数または複数)のうちの1つ以上は、異なる生殖系列配列(すなわち、抗体が元々由来する生殖系列配列とは異なる生殖系列配列)の対応する残基(単数または複数)に変異する。さらに、本開示の抗体は、フレームワークおよび/またはCDR領域内に2つ以上の生殖系列変異の任意の組み合わせを含有してもよく、例えば、ある特定の個々の残基が、特定の生殖系列配列の対応する残基に変異する一方で、元の生殖系列配列とは異なる、ある特定の他の残基が維持されるか、または異なる生殖系列配列の対応する残基に変異する。いったん得られれば、1つ以上の生殖系列変異を含有する抗体および抗原結合フラグメントは、結合特異性の改善、結合親和性の増大、アンタゴニストまたはアゴニストの生物学的特性の改善または亢進(場合により得る)、免疫原性の低下などの1つ以上の所望の特性について容易に試験することができる。この一般的な様式で得られた抗体および抗原結合フラグメントは、本開示に包含される。
【0054】
本開示は、1つ以上の保存的置換を有する本明細書に開示するHCVRアミノ酸配列、LCVRアミノ酸配列、および/またはCDRアミノ酸配列のいずれかのバリアントを含む完全ヒト抗CD8モノクローナル抗体も含む。例えば、本開示は、本明細書に開示されるHCVRアミノ酸配列、LCVRアミノ酸配列、および/またはCDRアミノ酸配列のいずれかに対して、例えば10個以下、8個以下、6個以下、または4個以下などの保存的アミノ酸置換を有するHCVRアミノ酸配列、LCVRアミノ酸配列、および/またはCDRアミノ酸配列を有する抗CD8抗体を含む。
【0055】
「ヒト抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、非天然のヒト抗体を含むことが意図されている。この用語は、非ヒト哺乳類において、または非ヒト哺乳類の細胞において組換え産生された抗体を含む。この用語は、ヒト対象から単離された、またはヒト対象において生成された抗体を含むよう意図されるものではない。
【0056】
「~を特異的に結合する」という用語もしくは「~へ特異的に結合する」という用語、またはこれらに類するものは、抗体またはその抗原結合フラグメントが、生理学的条件下で比較的安定である抗原と複合体を形成することを意味する。特異的結合は、少なくとも約5×10-8M以下の平衡解離定数を特徴とすることができる(例えば、より小さなKDはより緊密な結合を示す)。2つの分子が特異的に結合するかどうかを決定するための方法は、当該技術分野で周知であり、例えば、平衡透析、表面プラズモン共鳴などを含む。本明細書で記載される場合、抗体は、CD8へ特異的に結合する表面プラズモン共鳴、例えばBIACORE(商標)によって識別されている。
【0057】
本明細書で使用される場合、抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合フラグメント」などという用語は、抗原に特異的に結合して複合体を形成する、任意の天然に存在する、酵素的に得られる、合成の、または遺伝子的に操作されたポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。本明細書で使用する場合、抗体の「抗原結合フラグメント」、または「抗体フラグメント」という用語は、CD8に結合する能力を保持する抗体の1つ以上のフラグメントを指す。
【0058】
本明細書で使用する場合、「単離された抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体(Ab)を実質的に含まない抗体を指すことが意図される(例えば、CD8に特異的に結合する単離された抗体またはそのフラグメントは、CD8以外の抗原を特異的に結合するAbを実質的に含まない。
【0059】
「表面プラズモン共鳴」という用語は、本明細書で使用する場合、例えばBIACORE(商標)システム(Pharmacia Biosensor AB,スウェーデン国ウプサラ市およびニュージャージー州ピスカタウェイ郡区)を用いて、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変化の検出によってリアルタイムでの生体分子相互作用の分析を可能にする光学現象を指す。
【0060】
「KD」という用語は、本明細書で使用する場合、特定の抗体-抗原相互作用の平衡解離定数を指すよう意図される。
【0061】
「エピトープ」という用語は、パラトープとして既知の抗体分子の可変領域における特異的抗原結合部位と相互作用する抗原決定基を指す。単一の抗原は1つ以上のエピトープを有してもよい。したがって、異なる抗体は、抗原上の異なる領域へ結合し得、異なる生物学的効果を有し得る。「エピトープ」という用語は、B細胞および/またはT細胞が応答する抗原上の部位も指す。この用語は、抗体が結合する抗原の領域も指す。エピトープは、構造的または機能的と定義され得る。機能的エピトープは概して、構造エピトープのサブセットであり、相互作用の親和性に直接寄与する残基を有する。エピトープは、立体配座的でもあり得、すなわち、非線形アミノ酸から構成され得る。ある特定の実施形態では、エピトープは、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル基、またはスルホニル基などの分子の化学的に活性のある表面群である決定基を含み得、ある特定の実施形態では、特異的三次元構造特徴および/または比電荷特徴を有し得る。
【0062】
「実質的な同一性」または「実質的に同一である」という用語は、核酸またはそのフラグメントを指す場合、別の核酸(またはその相補鎖)との適切なヌクレオチド挿入または欠失と最適に整列した場合、FASTA、BLAST、またはGAPなど、配列同一性の任意の周知のアルゴリズムによって測定したときに、ヌクレオチド塩基の少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%または99%においてヌクレオチド配列同一性があることを示す。
【0063】
ポリペプチドへ適用される場合、「実質的な類似性」または「実質的に類似の」という用語は、2つのペプチド配列が、既定のギャップ重みを用いてプログラムGAPまたはBESTFITなどによって最適に整列した場合、少なくとも90%の配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも95%、98%または99%の配列同一性を共有する。好ましくは、同一ではない残基位置は、保存的アミノ酸置換だけ異なる。「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、類似の化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を備えた側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基によって置換されたものである。一般に、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能性特性を実質的に変化させない。2つ以上のアミノ酸配列が保存的置換だけ互いに異なる場合、相同性の百分率または程度は、置換の保存的性質を補正するために上向きに調整してもよい。この調整を行うための手段は、当業者に周知である。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Pearson(1994)Methods Mol.Biol.24:307-331を参照されたい。類似の化学的特性を備えた側鎖を有するアミノ酸の基の例としては、1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシン、2)脂肪族-ヒドロキシル側鎖:セリンおよびトレオニン、3)アミド含有側鎖:アスパラギンおよびグルタミン、4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン、5)塩基性側鎖:リジン、アルギニン、およびヒスチジン、6)酸性側鎖:アスパラギン酸およびグルタミン酸、ならびに7)含硫側鎖:システインおよびメチオニンが挙げられる。好ましい保存的アミノ酸置換基は、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸-アスパラギン酸およびアスパラギン-グルタミンである。あるいは、保存的置換とは、参照により本明細書に組み込まれるGonnet et al.(1992)Science 256:1443 45に開示されるPAM250対数尤度行列において正の値を有する任意の変化である。「適度に保存的な」置換とは、PAM250対数尤度行列において負以外の値を有する何らかの変化である。ポリペプチドについての配列類似性は、典型的には、配列解析ソフトウェアを用いて測定される。タンパク質解析ソフトウェアは、保存的アミノ酸置換を含む種々の置換、欠失および他の修飾へ割り当てられた類似性の測定値を用いて類似の配列と一致させる。例えば、GCGソフトウェアは、異なる種の生物由来の相同ポリペプチドのような密接に関連するポリペプチド間の、または野生型タンパク質とその変異タンパク質の間の配列相同性または配列同一性を決定するための既定パラメータとともに使用することができるGAPおよびBESTFITなどのプログラムを含有する。例えば、GCG第6.1版を参照されたい。ポリペプチド配列は、GCG第6.1版におけるプログラムである、既定パラメータまたは推奨パラメータを備えたFASTAを使用して比較することもできる。FASTA(例えば、FASTA2およびFASTA3)は、問い合わせ配列と検索配列との間の最良重複の領域の整列および配列同一性パーセントを提供する(Pearson(2000)上述)。本開示の配列を、異なる生物由来の多数の配列を含有するデータベースと比較する場合の別の好ましいアルゴリズムは、既定パラメータを用いるコンピュータプログラムBLAST、特にBLASTPまたはTBLASTNである。例えば、それぞれが、参照により本明細書に組み込まれる、Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-410および(1997)Nucleic Acids
Res.25:3389-3402を参照されたい。
【0064】
「治療有効量」という句によって意味されるのは、所望の効果のために投与されて所望の効果を生じる量である。正確な量は、処置の目的によることになっており、既知の技術を用いて当業者によって確認できることになっている(例えば、Lloyd(1999)The Art,Science and Technology of Pharmaceutical Compoundingを参照されたい)。
【0065】
本明細書で使用する場合、「対象」という用語は、慢性感染症、癌、または自己免疫疾患などの疾患または障害の寛解、予防、および/または処置を必要とする動物、好ましくは哺乳類を指す。
【0066】
II.概要
CD8は、胸腺内で生成され、T細胞受容体を発現する細胞傷害性T細胞で発現される。CD8は、二量体共受容体として発現され、典型的には、1つのCD8αタンパク質と、1つのCD8βタンパク質とを含む。CD8+T細胞は、MHC Iにより提示されるペプチドを認識し、CD8ヘテロ二量体は、抗原提示中にMHC Iα3に結合する。活性化CD8+T細胞は、感染細胞または悪性細胞の除去に関与しており、自己免疫疾患にも関与する。
【0067】
本明細書に記載される完全ヒト抗CD8抗体は、CD8αおよび/またはCD8βへの特異的結合を示す。こうした抗体は、慢性感染、癌、または自己免疫疾患を処置するために使用され得る。
【0068】
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体は、ヒトCD8αタンパク質および/またはヒトCD8βタンパク質などの一次免疫原で免疫化されたマウスから得られ、これは市販されていてもよく、または組換えによって産生されてもよい。ヒトCD8αおよびヒトCD8βの完全長アミノ酸配列は、それぞれ配列番号18および20として示されている。ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体は、ヒトCD8α DNAおよび/またはヒトCD8β DNAなどの一次免疫原で免疫化されたマウスから得られる。ヒトCD8αの完全長核酸配列は、配列番号17で見出すことができる。完全長ヒトCD8β核酸配列は、配列番号19で見出すことができる。
【0069】
免疫原は、組換え的に産生されたCD8、融合タンパク質、その活性フラグメントをコードするDNA、またはCD8αタンパク質もしくはCD8βタンパク質全体をコードするDNAの生物学的活性フラグメントおよび/または免疫原性フラグメントであってもよい。フラグメントは、ヒトCD8αおよびヒトCD8βのN末端またはC末端のいずれかから誘導されてもよく、またはヒトCD8αおよびヒトCD8βのアミノ酸配列の任意の部位から誘導されてもよい。
【0070】
ヒト抗体の調製
トランスジェニックマウスにおいてヒト抗体を生成するための方法は、当該技術分野で知られている。CD8に特異的に結合するヒト抗体を作製するために、任意のこのような既知の方法が、本開示の文脈において使用され得る。
【0071】
モノクローナル抗体を生成するためにVELOCIMMUNE(商標)技術(例えば、US6,596,541、Regeneron Pharmaceuticals、VELOCIMMUNE(登録商標)を参照されたい)または任意の他の既知の方法を使用して、ヒト可変領域およびマウス定常領域を有するCd8に対する高親和性キメラ抗体を最初に単離する。VELOCIMMUNE(登録商標)技術は、マウスが抗原刺激に応答してヒト可変領域およびマウス定常領域を含む抗体を産生するように、内在性マウス定常領域座に操作可能に連結されたヒト重鎖可変領域とヒト軽鎖可変領域とを含むゲノムを有するトランスジェニックマウスを生成することを伴う。抗体の重鎖および軽鎖の可変領域をコードするDNAを単離し、ヒト重鎖定常領域およびヒト軽鎖定常領域をコードするDNAに動作可能に連結する。次に、完全ヒト抗体を発現することができる細胞においてDNAを発現させる。
【0072】
概して、VELOCIMMUNE(登録商標)マウスに関心対象の抗原を負荷し、抗体を発現するマウスからリンパ細胞(B細胞など)を回収する。リンパ細胞を骨髄腫細胞株と融合させて不死化ハイブリドーマ細胞株を調製し得、関心対象の抗原に特異的な抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を同定するためにこのようなハイブリドーマ細胞株をスクリーニングおよび選択する。重鎖および軽鎖の可変領域をコードするDNAを単離し得、重鎖および軽鎖の望ましいアイソタイプ定常領域へ連結することができる。このような抗体タンパク質は、CHO細胞などの細胞において産生され得る。代替的に、抗原特異的キメラ抗体または軽鎖および重鎖の可変ドメインをコードするDNAを抗原特異的リンパ球から直接単離することができる。
【0073】
まず、ヒト可変領域とマウス定常領域とを有する高親和性キメラ抗体を単離する。以下の実験セクションと同様に、抗体を、親和性、選択性、エピトープなどを含む望ましい特徴について特徴付け、選択する。マウス定常領域を、所望のヒト定常領域で置換して、本明細書に提供する完全ヒト抗体、例えば、野生型のまたは修飾されたIgG1またはIgG4を生成する。選択される定常領域は特定の用途に応じて異なり得るが、高親和性抗原結合特徴および標的特異性特徴は可変領域に存在する。
【0074】
概して、本明細書に提供する抗体は、固相または液相のいずれかに固定化された抗原への結合によって測定した場合、非常に高い親和性を有し、典型的には、約10-12~約10-8MのKDを有する。マウス定常領域を所望のヒト定常領域と置換して、完全ヒト抗体を生成する。選択される定常領域は特定の用途に応じて異なり得るが、高親和性抗原結合特徴および標的特異性特徴は可変領域に存在する。
【0075】
生物学的等価物
本明細書に提供する抗CD8抗体および抗体フラグメントは、記載される抗体のアミノ酸配列とは異なるが、CD8に結合する能力を保有するアミノ酸配列を有するタンパク質を包含する。このようなバリアント抗体および抗体フラグメントは、親配列と比較してアミノ酸の1つ以上の付加、欠失、または置換を含むが、説明された抗体の生物学的活性とは本質的に等価である生物学的活性を呈する。同様に、本明細書に提供する抗体をコードするDNA配列は、開示される配列と比較してヌクレオチドの1つ以上の付加、欠失、または置換を含むが、本明細書に開示する抗体または抗体フラグメントと本質的に生物学的に等価である抗体または抗体フラグメントをコードする配列を包含する。
【0076】
2つの抗原結合タンパク質、または抗体は、例えば類似の実験条件下、同じモル用量で、単一用量または複数用量のいずれかで投与されたとき、吸収の速度および程度が著しい差異を示さない薬学的等価物または薬学的代替物である場合、生物学的等価物であるとみなされる。いくつかの抗体は、これらの吸収の程度は同等であるがこれらの吸収速度は同等ではない場合、等価物または薬学的代替物とみなされ、さらに、吸収速度のこのような差異が、意図的であり、ラベルに反映されており、例えば、慢性使用において有効身体薬物濃度の獲得に不可欠ではなく、研究した特定の薬剤製品にとって医学的に有意ではないとみなされるため、生物学的等価物であるとみなされる。
【0077】
一実施形態では、2つの抗原結合タンパク質は、これらの安全性、純度、または有効性において臨床的に有意性のある差がない場合、生物学的に等価である。
【0078】
一実施形態では、2つの抗原結合タンパク質は、参照製品と生物学的製品の間での1回以上の切り替えを行わない持続的療法と比較して、免疫原性の臨床的に有意な変化を含む有害作用のリスクの予想される上昇または有効性の減退が生じずに、対象がその様な切り替えを行うことができる場合、生物学的に等価である。
【0079】
一実施形態では、2つの抗原結合タンパク質は、これらが両方とも、1つまたは複数の使用条件について、1つのまたは複数の共通の作用機序によって、このような機序が既知である程度まで作用する場合、生物学的に等価である。
【0080】
生物学的等価性は、インビボおよび/またはインビトロの方法によって実証され得る。生物学的等価性測定法には、例えば、(a)抗体またはその代謝産物の濃度が血液、血漿、血清または他の生物学的流体中で時間の関数として測定される、ヒトまたは他の哺乳類におけるインビボでの試験、(b)ヒトのインビボでの生物学的利用能データと相関し、このデータを合理的に予測しているインビトロ試験、(c)抗体(またはその標的)の適切な急性薬理学的効果が時間の関数として測定される、ヒトまたは他の哺乳類におけるインビボ試験、および(d)抗体の安全性、効能、または生物学的利用能もしくは生物学的等価性を確立する、十分に管理された臨床試験が含まれる。
【0081】
本明細書に提供される抗体の生物学的に等価なバリアントは、例えば、残基もしくは配列の種々の置換を生じること、または生物活性に必要とされない末端もしくは内部の残基もしくは配列を欠失することによって構築され得る。例えば、生物学的活性にとって必須ではないシステイン残基は、再生の際の不必要または不正確な分子内ジスルフィド架橋の形成を防止するために、欠失または他のアミノ酸で置換することができる。他の文脈では、生物学的に等価の抗体には、抗体のグリコシル化特徴を修飾するアミノ酸変化、例えばグリコシル化を排除または除去する変異を含む、抗体バリアントが含まれ得る。
【0082】
治療用の投与および製剤
本開示の抗CD8抗体またはその抗原結合フラグメントを含む治療用組成物を、本明細書に提供する。本開示による治療用組成物の投与は、改善された移動、送達、寛容などを提供するために、製剤へと組み込まれた好適な担体、賦形剤、および他の薬剤とともに、静脈内、皮下、筋肉内、鼻孔内が挙げられるが、これらに限定されない好適な経路を介して投与される。多数の適切な製剤は、全ての薬学的化学において既知の処方集、Remington′s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Easton,PAにおいて見出され得る。これらの製剤としては、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、油、脂質、小胞を含有する脂質(カチオン性またはアニオン性)(LIPOFECTIN(商標)など)、DNA共役体、無水吸収ペースト、水中油および油中水乳剤、乳剤カルボワックス(様々な分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、ならびにカルボワックスを含有する半固体混合物が挙げられる。Powell et al.“Compendium of excipients for parenteral formulations”PDA(1998)J Pharm Sci Technol 52:238-311も参照されたい。
【0083】
抗体の用量は、投与されることになっている対象の年齢およびサイズ、標的疾患、容態、投与経路などによって変わり得る。
【0084】
様々な送達系、例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセル、変異体ウイルスを発現することができる組換え細胞内へのカプセル化、受容体媒介性エンドサイトーシスが既知であり、本明細書に提供する薬学的組成物を投与するために使用され得る(例えば、Wu et al.,1987,J.Biol.Chem.262:4429-4432を参照されたい)。導入方法には、皮内経路、経皮経路、筋肉内経路、腹腔内経路、静脈内経路、皮下経路、鼻腔内経路、硬膜外経路および経口経路が含まれるが、これらに限定されない。組成物は、任意の好都合な経路によって、例えば、注入もしくはボーラス注射によって、上皮もしくは粘膜皮膚内層(linings)(例えば、口腔粘膜、直腸粘膜および腸粘膜など)を介した吸収によって投与することができ、かつ他の生物学的に活性な薬剤と一緒に投与することができる。投与は、全身または局所であり得る。
【0085】
薬学的組成物は、ベシクル、特にリポソーム中で送達され得る(例えば、Langer,1990,Science 249:1527-1533を参照されたい)。
【0086】
ある特定の状況では、薬学的組成物は、制御放出系で送達され得る。一実施形態では、ポンプを使用することができる。別の実施形態では、ポリマー材料を使用することができる。さらに別の実施形態では、徐放系を組成物の標的の近傍に配置することができ、したがって全身用量のほんの一部しか必要としない。
【0087】
注入可能な調製物は、静脈内、皮下、皮内、および筋肉内注射、点滴などの投与形態を含み得る。これらの注射可能な調製物は、公知の方法によって調製されてもよい。例えば、注入可能な調製物は、例えば、注入に従来使用される無菌水性媒体または油性媒体に、上述される抗体またはその塩を溶解、懸濁、または乳化させることによって調製され得る。注射用水性媒体としては、例えば、生理食塩水、グルコースを含有する等張液、および他の助剤などがあり、これらは、アルコール(例えば、エタノール)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、HCO-50(水素化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50モル)付加物)]などの適切な可溶化剤と併用され得る。油性媒体としては、例えば、ゴマ油、ダイズ油などが採用され、これらは安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどの可溶化剤と併用され得る。このようにして調製した注射液は、好ましくは、適切なアンプル中に充填される。
【0088】
本開示の薬学的組成物は、標準的な針およびシリンジで皮下または静脈内に送達され得る。加えて、皮下送達に関して、ペン型送達デバイスは、本開示の薬学的組成物の送達において、容易に用途を見出す。そのようなペン型送達デバイスは、再利用可能であるか、または使い捨てであり得る。再利用可能なペン型送達デバイスは、概して、薬学的組成物を含有する交換可能なカートリッジを利用する。カートリッジ内部の薬学的組成物の全てが投与され、カートリッジが空になると、空のカートリッジは、容易に廃棄され得、薬学的組成物を含有する新しいカートリッジと交換され得る。次に、ペン型送達デバイスは再利用することができる。使い捨てペン型送達デバイスでは、交換可能なカートリッジはない。むしろ、使い捨てペン型送達デバイスは、薬学的組成物がデバイス内部のリザーバ内に保持された事前に充填された状態で販売される。いったんリザーバの薬学的組成物が空になると、デバイス全体が廃棄される。
【0089】
多数の再利用可能なペン型および自動注入装置送達デバイスは、本開示の薬学的組成物の皮下送達において用途を見出す。例としては、ほんの数例を挙げると、AUTOPEN(商標)(Owen Mumford,Inc.,Woodstock,UK)、DISETRONIC(商標)ペン (Disetronic Medical Systems,Burghdorf,Switzerland)、HUMALOG MIX 75/25(商標)ペン、HUMALOG(商標)ペン、HUMALIN 70/30(商標)ペン(Eli Lilly and Co.,Indianapolis,IN)、NOVOPEN(商標)I、II、およびIII(Novo Nordisk,Copenhagen,Denmark)、NOVOPEN JUNIOR(商標)(Novo Nordisk,Copenhagen,Denmark)、BD(商標)ペン(Becton Dickinson,Franklin Lakes,NJ)、OPTIPEN(商標)、OPTIPEN PRO(商標)、OPTIPEN STARLET(商標)、およびOPTICLIK(商標)(sanofi-aventis,Frankfurt,Germany)が挙げられるが、決してこれらに限定されない。本開示の薬学的組成物の皮下送達において用途を見出す使い捨てペン型送達デバイスの例としては、ほんの数例を挙げると、SOLOSTAR(商標)ペン(Sanofi-Aventis)、FLEXPEN(商標)(Novo Nordisk)、およびKWIKPEN(商標)(Eli Lilly)、SURECLICK(商標)Autoinjector(Amgen,Thousand Oaks,CA)、PENLET(商標)(Haselmeier,Stuttgart,Germany)、EPIPEN(Dey,L.P.)およびHUMIRA(商標)Pen(Abbott Labs,Abbott Park,IL)が挙げられるが、決してこれらに限定されない。
【0090】
有利に、上述の経口または非経口使用のための薬学的組成物は、活性成分の用量を適合させるのに適した単位用量で剤形に調製される。単位用量におけるこのような剤形には、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル剤)、坐剤などが含まれる。
【0091】
III.免疫療法PET撮像用のCD8抗体の放射性標識された免疫コンジュゲート
本明細書において、CD8に結合する放射性標識された抗原結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、放射性標識された抗原結合タンパク質は、陽電子放出体に共有結合した抗原結合タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、放射性標識された抗原結合タンパク質は、1つ以上のキレート部分に共有結合した抗原結合タンパク質を含み、キレート部分は、陽電子放出体をキレート化することができる化学部分である。
【0092】
好適な放射性標識された抗原結合タンパク質、例えば、放射性標識された抗体には、放射性標識された抗原結合タンパク質への曝露時に、T細胞機能を損なわないか、または実質的に損なわないものが含まれる。いくつかの実施形態では、CD8に結合する放射性標識された抗原結合タンパク質は、CD8のT細胞機能の弱いブロッカーであり、すなわち、放射標識された抗体への曝露時に、T細胞機能が損なわれないか、または実質的に損なわれない。本明細書に提供される方法によるCD8媒介性T細胞機能に対する最小限の影響を有する放射性標識された抗CD8結合タンパク質の使用は、この分子で処置された対象が、そのT細胞が感染を一掃できないことによって不利益にならないことを確実にする。
【0093】
いくつかの実施形態では、CD8に結合する抗原結合タンパク質、例えば、抗体が提供され、CD8に結合する該抗原結合タンパク質は、以下の構造を有する1つ以上の部分に共有結合されており、
-L-MZ
式中、Lは、キレート部分であり、Mは、陽電子放出体であり、zは、各出現において独立して、0または1であり、zのうちの少なくとも1つは1である。
【0094】
特定の実施形態では、放射性標識された抗原結合タンパク質は、式(I)の化合物であり、
M-L-A-[L-MZ]k
(I)
Aは、CD8に結合するタンパク質であり、Lは、キレート部分であり、Mは、陽陽電子放出体であり、zは、0または1であり、kは、0~30の整数である。いくつかの実施形態では、kは、1である。いくつかの実施形態では、kは、2である。
【0095】
特定の実施形態では、放射性標識された抗原結合タンパク質は、式(II)の化合物であり、
A-[L-M]k
(II)
式中、Aは、CD8に結合するタンパク質であり、Lは、キレート部分であり、Mは、陽陽電子放出体であり、kは、1~30の整数である。
【0096】
いくつかの実施形態では、以下の構造を有するコンジュゲートを含む組成物が本明細書に提供されており、
A-Lk
式中、Aは、CD8に結合するタンパク質であり、Lは、キレート部分であり、kは、1~30の整数であり、このコンジュゲートは、臨床的なPET撮像に好適な比放射能を提供するのに十分な量の陽電子放出体でキレート化されている。
【0097】
適切な結合タンパク質、キレート部分、および陽電子放出体は、以下に提供されている。
【0098】
A.CD8結合タンパク質
適切なCD8結合タンパク質は、CD8に特異的に結合し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、WO2014/164553に記載されるものを含む。本明細書に提供される例示的抗CD8結合タンパク質は、表1に記載される核酸およびアミノ酸配列特性を含む以下のmAb1と称されるモノクローナル抗体である。
【表1】
表1には、例示的な抗CD8抗体の重鎖可変領域(HCVR)、軽鎖可変領域(LCVR)、重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)、および軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)の核酸配列識別子およびアミノ酸配列識別子が記載されている。
【0099】
いくつかの実施形態では、結合タンパク質は、配列番号2のアミノ酸配列、または配列番号2に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する、配列番号2と実質的に類似した配列を含むHCVRを含む、抗体または抗原結合フラグメントである。
【0100】
いくつかの実施形態では、結合タンパク質は、配列番号10のアミノ酸配列、または配列番号10に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する、配列番号10と実質的に類似した配列を含むLCVRを含む、抗体または抗原結合フラグメントである。
【0101】
いくつかの実施形態では、結合タンパク質は、配列番号2/10のHCVRとLCVRとのアミノ酸配列ペア(HCVR/LCVR)を含む抗体または抗原結合フラグメント、例えば、mAb1である。
【0102】
いくつかの実施形態では、結合タンパク質は、配列番号4のアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する、配列番号4と実質的に類似した配列の重鎖CDR1(HCDR1)を含む、抗体または抗原結合フラグメントである。
【0103】
いくつかの実施形態では、結合タンパク質は、配列番号6のアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する、配列番号6と実質的に類似した配列の重鎖CDR2(HCDR2)を含む、抗体または抗原結合フラグメントである。
【0104】
いくつかの実施形態では、結合タンパク質は、配列番号8のアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する、配列番号8と実質的に類似した配列の重鎖CDR3(HCDR3)を含む、抗体または抗原結合フラグメントである。
【0105】
いくつかの実施形態では、結合タンパク質は、配列番号12のアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する、配列番号12と実質的に類似した配列の軽鎖CDR1(LCDR1)を含む、抗体または抗原結合フラグメントである。
【0106】
いくつかの実施形態では、結合タンパク質は、配列番号14のアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する、配列番号14と実質的に類似した配列の軽鎖CDR2(LCDR2)を含む、抗体または抗原結合フラグメントである。
【0107】
いくつかの実施形態では、結合タンパク質は、配列番号16のアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する、配列番号16と実質的に類似した配列の軽鎖CDR3(LCDR3)を含む、抗体または抗原結合フラグメントである。
【0108】
いくつかの実施形態では、結合タンパク質は、配列番号8/16のHCDR3とLCDR3とのアミノ酸配列ペア(HCDR3/LCDR3)を含む抗体または抗原結合フラグメントである。
【0109】
いくつかの実施形態では、結合タンパク質は、表1に提供される例示的な抗CD8抗体内に含まれる6個のCDRのセット(すなわち、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3)を含む抗体または抗原結合フラグメントである。ある特定の実施形態では、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3のアミノ酸配列の組み合わせは、配列番号4-6-8-12-14-16を含む。
【0110】
いくつかの実施形態では、結合タンパク質は、配列番号2/10のHCVR/LCVRアミノ酸配列ペア内に含まれる6個のCDRのセット(すなわち、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3)を含む抗体または抗原結合フラグメントである。HCVRアミノ酸配列およびLCVRアミノ酸配列の内部にあるCDRを識別するための方法および技術は、当該技術分野において周知であり、本明細書に開示される特定のHCVRアミノ酸配列および/またはLCVRアミノ酸配列の内部にあるCDRを識別するために使用することができる。CDRの境界を識別するために使用することができる例示的な規定としては、例えば、Kabat定義、Chothia定義、およびAbM定義が挙げられる。一般的にいえば、Kabat定義は、配列の可変性に基づいており、Chothia定義は、構造ループ領域の位置に基づいており、AbM定義は、KabatのアプローチとChothiaのアプローチとの間の折衷案である。例えば、Kabat,“Sequences of Proteins of Immunological Interest,”National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991);Al-Lazikani et al.,J.Mol.Biol.273:927-948(1997);およびMartin et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:9268-9272(1989)を参照されたい。抗体内のCDR配列を識別するために、公開データベースも利用可能である。
【0111】
いくつかの実施形態では、結合タンパク質は、HCVRのCDRおよびLCVRのCDRを含む抗体またはその抗原結合フラグメントとCD8への特異的な結合に対して競合する抗体およびその抗原結合フラグメントであり、HCVRとLCVRとのアミノ酸配列ペアは、配列番号2/10を含む。
【0112】
また、CD8に結合し、かつ活性化CD8陽性T細胞においてIFNγ産生を阻害する単離された抗体およびその抗原結合フラグメントが、本明細書に提供されている。ある特定の実施形態では、活性化CD8陽性T細胞において、CD8に結合し、かつ活性化CD8陽性T細胞においてIFNγ産生を阻害する本開示の抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を有するHCVRのCDR、および配列番号10のアミノ酸配列を有するLCVRのCDRを含む。
【0113】
また、CD8に結合し、かつ活性化T細胞において転写因子アクチベータータンパク質(AP-1)を阻害する単離された抗体およびその抗原結合フラグメントが、本明細書に提供される。ある特定の実施形態では、CD8に結合し、かつ活性化T細胞においてAP-1を阻害する本開示の抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を有するHCVRのCDR、および配列番号10のアミノ酸配列を有するLCVRのCDRを含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、結合タンパク質は、ヒトまたは他の種からのCD8に特異的に結合する抗体およびその抗原結合フラグメントである。ある特定の実施形態では、抗体はヒトCD8および/またはカニクイザルCD8に結合してもよい。
【0115】
いくつかの実施形態では、結合タンパク質は、HCVRのCDRおよびLCVRのCDRを含む参照抗体またはその抗原結合フラグメントとCD8への結合に対して交差競合する抗体およびその抗原結合フラグメントであり、HCVRおよびLCVRは、それぞれ、配列番号2/10のアミノ酸配列ペアを有する。
【0116】
一実施形態では、結合タンパク質は、以下の特徴のうちの1つ以上を有する単離された抗体または抗原結合フラグメントである:(a)完全ヒトモノクローナル抗体であること、(b)表面プラズモン共鳴によって測定されるとき、3.5×10-8M以下のKDでCD8に結合すること、(c)ヒトCD8αに結合すること、(d)活性化CD8T細胞においてIFNγ産生を阻害すること、(e)活性化T細胞において転写因子アクチベータータンパク質(AP-1)を阻害すること、(f)ヒトおよびサルCD8と交差反応すること、(g)配列番号2の重鎖可変領域(HCVR)のアミノ酸配列内に含まれる3つの重鎖CDR(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)を含むこと、ならびに(h)配列番号10の軽鎖可変領域(LCVR)のアミノ酸配列内に含まれる3つの軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を含むこと。
【0117】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、アゴニスト様式でCD8に特異的に結合してもよく、すなわち、CD8の結合および/または活性を増強または刺激してもよく、他の実施形態では、抗体は、アンタゴニスト様式でCD8に特異的に結合してもよく、すなわち、CD8が天然のCD8結合パートナーに結合するのを遮断してもよい。
【0118】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、中立の様式でCD8に特異的に結合してもよく、すなわち、CD8に結合するが、CD8の結合および/または活性を遮断または増強もしくは刺激しない。
【0119】
いくつかの実施形態では、抗体およびその抗原結合フラグメントは、例えば、実施例2で定義されるようなアッセイ形式、または実質的に類似のアッセイを使用して、25℃または37℃での表面プラズモン共鳴により測定したときに、約2.0分を超える解離半減期(t1/2)で、CD8、例えば、CD8αまたはCD8βに結合する。ある特定の実施形態にでは、本抗体または抗原結合フラグメントは、25℃でまたは37℃で、例えば実施例2で定義されるアッセイ形式(例えば、mAb捕捉または抗原捕捉形式)を用いる表面プラズモン共鳴または実質的に類似のアッセイによって測定されるとき、約5分超、約10分超、約30分超、約50分超、約60分超、約70分超、約80分超、約90分超、約100分超、約200分超、約300分超、約400分超、約500分超、約600分超、約700分超、約800分超、約900分超、約1000分超、または約1100分超のt1/2でCD8に結合する。
【0120】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、実施例6で定義されるフローサイトメトリーアッセイ、または実質的に類似のアッセイによって測定されるとき、約1nM未満のEC50で、ヒトCD8発現細胞に結合する。ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、例えば、実施例6のアッセイ形式を使用するフローサイトメトリーアッセイ、または実質的に類似のアッセイによって測定されるとき、約0.9nM未満、約0.8nM未満、約0.7nM未満、約0.6nM未満、約0.5nM未満、約0.4nm未満のEC50で、hCD8発現細胞に結合する。
【0121】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、実施例6で定義されるフローサイトメトリーアッセイ、または実質的に類似のアッセイによって測定されるとき、約1nM未満のEC50で、カニクイザルのCD8発現細胞に結合する。ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、例えば、実施例6のアッセイ形式を使用するフローサイトメトリーアッセイ、または実質的に類似のアッセイによって測定されるとき、約0.9nM未満、約0.8nM未満、約0.7nM未満、約0.6nM未満、約0.5nM未満、または約0.4nm未満のEC50で、サルCD8発現細胞に結合する。
【0122】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、実施例8で定義されるT細胞/APCルシフェラーゼレポーターアッセイ、または実質的に類似のアッセイによって測定されるとき、1.2E-09M未満のEC50で、CD8陽性T細胞活性化を軽減または遮断する。ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、例えば、実施例8で定義されるアッセイ形式を使用するT細胞/APCルシフェラーゼレポーターアッセイ、または実質的に類似のアッセイによって測定されるとき、少なくとも約85%または約89%までのEC50で、CD8陽性T細胞活性化を遮断する。
【0123】
一実施形態では、抗体またはそのフラグメントは、CD8に結合する完全ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントであり、この抗体またはそのフラグメントは、以下の特性のうちの1つ以上を示す:(i)配列番号2のHCVRのアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する、配列番号2と実質的に類似の配列を含むこと、(ii)配列番号10の選択されたLCVRのアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する、配列番号10と実質的に類似の配列を含むこと、(iii)配列番号8/16のHCDR3/LCDR3のアミノ酸配列ペア、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する、配列番号8/16と実質的に類似の配列を含むこと、(iv)配列番号4/12のHCDR1/LCDR1のアミノ酸配列ペア、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する、配列番号4/12と実質的に類似の配列;配列番号6/14のHCDR2/LCDR2アミノ酸配列ペア、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する、配列番号6/14と実質的に類似の配列;配列番号8/16のHCDR3/LCDR3アミノ酸配列ペア、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する、配列番号8/16と実質的に類似の配列を含むこと、(v)表面プラズモン共鳴アッセイで測定されるとき、約3.5×10-8Mの結合解離平衡定数(KD)でヒトCD8に結合すること、(vi)活性化CD8陽性T細胞においてIFNγ産生を阻害すること、および(vii)活性化T細胞において転写因子アクチベータータンパク質(AP-1)を阻害すること。
【0124】
ある特定の実施形態では、抗体は、完全長タンパク質の任意の領域またはフラグメント(その配列が、配列番号18に示されている)に結合することにより、CD8αに関連するMHCクラスIの結合活性を遮断または阻害することによって機能し得る。ある特定の実施形態では、抗体は、完全長タンパク質の任意の領域またはフラグメント(その配列が、配列番号20に示されている)に結合することにより、CD8βに関連するMHCクラスIの結合活性を遮断または阻害することによって機能し得る。
【0125】
ある特定の実施形態では、抗CD8抗体またはその抗原結合フラグメントは、エピトープを、配列番号18に例示される天然形態の、または組換え産生させたCD8αに例示される領域のうちの1つ以上内に、またはそのフラグメントへ結合させる。いくつかの実施形態では、抗体は、CD8αのアミノ酸残基22~182からなる群から選択される1つ以上のアミノ酸を含む細胞外領域に結合する。ある特定の実施形態では、抗CD8抗体またはその抗原結合フラグメントは、エピトープを、配列番号20に例示される天然形態の、または組換え産生されたCD8βに例示される領域のうちの1つ以上内に、またはそのフラグメントへ結合させる。いくつかの実施形態では、抗体は、CD8βのアミノ酸残基22~170からなる群から選択される1つ以上のアミノ酸を含む細胞外領域に結合する。
【0126】
特定の実施形態では、抗CD8抗体およびその抗原結合フラグメントは、CD8α(配列番号18)またはCD8β(配列番号20)の細胞外領域内に見られる1つ以上のエピトープと相互作用する。エピトープ(単数または複数)は、CD8αまたはCD8βの細胞外領域内に位置する3つ以上(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはそれ以上)のアミノ酸の1つ以上の連続した配列からなっていてもよい。あるいは、エピトープは、CD8αまたはCD8βの細胞外領域内に位置する複数の非連続的アミノ酸(または、アミノ酸配列)からなっていてもよい。
【0127】
本開示は、表1に記載される特定の例示的抗体、または表1に記載される例示的抗体のCDR配列を有する抗体と同じエピトープ、またはエピトープの一部に結合する抗CD8抗体を含む。同様に、CD8またはCD8フラグメントへの結合に対して、表1に記載される特定の例示的な抗体、または表1に記載される例示的な抗体のCDR配列を有する抗体と競合する抗CD8抗体も含まれる。例えば、本開示は、本明細書に提供される1つ以上の抗体(例えば、mAb1)と、CD8への結合に対して交差競合する抗CD8抗体を含む。
【0128】
本明細書に記載される抗体および抗原結合フラグメントは、CD8に特異的に結合し、かつCD8とMHCクラスIとの相互作用を調節する。抗CD8抗体は、高い親和性または低い親和性でCD8に結合し得る。ある特定の実施形態では、抗体は、抗体がCD8に結合し、かつCD8とMHCクラスIとの相互作用を遮断する、遮断抗体である。いくつかの実施形態では、本開示の遮断抗体は、CD8のMHCクラスIへの結合を遮断し、および/またはT細胞活性化を軽減する。いくつかの実施形態では、遮断抗体は、免疫応答を阻害するため、および/または感染または自己免疫疾患もしくは障害を処置するために有用である。
【0129】
いくつかの実施形態では、抗体はCD8に結合し、かつ活性化CD8陽性T細胞におけるIFNγ産生を阻害する。ある特定の実施形態では、抗体はCD8に結合し、かつ制御性T細胞活性を阻害し、例えば、CD8陽性T細胞において転写因子AP-1を阻害する。
【0130】
ある特定の抗CD8抗体は、インビトロアッセイまたはインビボアッセイによって測定して、CD8に結合してその活性を中和することができる。CD8に結合してその活性を中和する抗体の能力は、本明細書に記載される、結合アッセイまたは活性アッセイを含む、当業者に知られている任意の標準的な方法を使用して測定され得る。
【0131】
結合活性を測定するための非限定的な、例示のインビトロアッセイは、本明細書に提供される実施例に例示されており:実施例2では、ヒトCD8に対する例示的なヒト抗CD8抗体の結合親和性および反応速度定数が、表面プラズモン共鳴によって決定され、測定はBiacore 4000またはT200機器で実施され;実施例6では、蛍光アッセイを使用して、抗CD8抗体のCD8陽性T細胞およびカニクイザルT細胞に結合する能力を決定し;実施例7では、結合アッセイを使用して、抗CD8抗体の、CD8陽性T細胞におけるIFNγ産生を減少させる能力を決定し;および実施例8では、結合アッセイを使用して、抗CD8抗体の、T細胞転写活性を変化させる能力を決定した。
【0132】
別段の具体的な記載がない限り、本明細書で使用する場合、「抗体」という用語は、2つの免疫グロブリン重鎖および2つの免疫グロブリン軽鎖を含む抗体分子(すなわち、「完全抗体分子」)ならびにその抗原結合フラグメントを包含すると理解される。本明細書で使用される場合、抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合フラグメント」などという用語は、抗原に特異的に結合して複合体を形成する、任意の天然に存在する、酵素的に得ることができる、合成の、または遺伝子的に操作されたポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。本明細書で使用する場合、抗体の「抗原結合フラグメント」または「抗体フラグメント」という用語は、本明細書で使用する場合、CD8に特異的に結合する能力を保有する抗体の1つ以上のフラグメントを指す。抗体フラグメントは、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、dAbフラグメント、CDRを含有するフラグメント、または単離されたCDRを含み得る。ある特定の実施形態では、「抗原結合フラグメント」という用語は、多重特異性抗原結合分子のポリペプチドまたはそのフラグメントを指す。このような実施形態では、「抗原結合フラグメント」という用語は、例えば、CD8に特異的に結合するMHCクラスII分子を含む。抗体の抗原結合フラグメントは、例えば、抗体可変ドメインおよび(任意に)定常ドメインをコードするDNAの操作および発現を伴うタンパク質消化技術または組換え遺伝子操作技術などの任意の適切な標準的技術を用いて、完全抗体分子から得られ得る。このようなDNAは既知であり、かつ/または例えば、市販の供給源、DNAライブラリ(例えば、ファージ抗体ライブラリを含む)から容易に入手可能であるか、もしくは合成され得る。DNAを配列決定し、化学的にまたは分子生物学技法を使用することによって操作して、例えば、1つ以上の可変ドメインおよび/もしくは定常ドメインを好適な構成に配置するか、またはコドンを導入する、システイン残基を作成する、アミノ酸を修飾、付加、もしくは欠失させるなどが可能である。
【0133】
抗体結合フラグメントの非限定例としては、(i)Fabフラグメント、(ii)F(ab’)2フラグメント、(iii)Fdフラグメント、(iv)Fvフラグメント、(v)一本鎖Fv(scFv)分子、(vi)dAbフラグメント、および(vii)抗体の超可変領域(例えば、CDR3ペプチドなどの単離された相補性決定領域(CDR))を模倣するアミノ酸残基、または拘束FR3‐CDR3‐FR4ペプチドからなる最小認識単位が挙げられる。ドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失した抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ(例えば、一価ナノボディ、二価ナノボディなど)、小モジュラー免疫薬(SMIP)、およびサメ可変IgNARドメインなどの他の操作された分子もまた、本明細書で使用される場合、「抗原結合フラグメント」という表現に包含される。
【0134】
抗体の抗原結合フラグメントは、典型的に、少なくとも1つの可変ドメインを含む。可変ドメインは、任意のサイズまたはアミノ酸組成物であり得、概して、1つ以上のフレームワーク配列に隣接しているか、または1つ以上のフレームワーク配列とともにインフレームである、少なくとも1つのCDRを含むであろう。VLドメインと結合したVHドメインを有する抗原結合フラグメントにおいて、VHドメインおよびVLドメインは、任意の好適な配置で互いに対して配置され得る。例えば、可変領域は二量体であり、VH-VH、VH-VLまたはVL-VL二量体を含有し得る。代替的に、抗体の抗原結合フラグメントは、モノマーVHまたはVLドメインを含有し得る。
【0135】
ある特定の実施形態では、抗体の抗原結合フラグメントは、少なくとも1つの定常ドメインに共有結合された少なくとも1つの可変ドメインを含有し得る。本開示の抗体の抗原結合フラグメント内に見られ得る可変ドメインおよび定常ドメインの非限定的な例示的な構成には、(i)VH-CH1、(ii)VH-CH2、(iii)VH-CH3、(iv)VH-CH1-CH2、(v)VH-CH1-CH2-CH3、(vi)VH-CH2-CH3、(vii)VH-CL、(viii)VL-CH1、(ix)VL-CH2、(x)VL-CH3、(xi)VL-CH1-CH2、(xii)VL-CH1-CH2-CH3、(xiii)VL-CH2-CH3、および(xiv)VL-CLが含まれる。上に列挙される例示的な構成のうちのいずれかを含む可変ドメインおよび定常ドメインのいずれの構成において、可変ドメインおよび定常ドメインは、互いに直接連結され得るか、または完全もしくは部分的ヒンジもしくはリンカー領域によって連結され得る。ヒンジ領域は、単一のポリペプチド分子において隣接する可変ドメインおよび/または定常ドメイン間に可撓性または半可撓性の結合をもたらす少なくとも2つの(例えば、5、10、15、20、40、60、またはそれ以上の)アミノ酸からなり得る。さらに、本開示の抗体の抗原結合フラグメントは、互いにおよび/または1つ以上のモノマーVHもしくはVLドメインとの(例えば、ジスルフィド結合(単数または複数)による)非共有会合で上に列挙される可変ドメイン構成および定常ドメイン構成のいずれかのホモ二量体またはヘテロ二量体(または他の多量体)を含み得る。
【0136】
本開示の抗CD8抗体および抗体フラグメントは、説明された抗体のアミノ酸配列とは異なるがCD8に結合する能力を保有するアミノ酸配列を有するタンパク質を包含する。このようなバリアント抗体および抗体フラグメントは、親配列と比較してアミノ酸の1つ以上の付加、欠失、または置換を含むが、説明された抗体の生物学的活性とは本質的に等価である生物学的活性を呈する。同様に、本開示の抗体コードDNA配列は、開示される配列と比較してヌクレオチドの1つ以上の付加、欠失、または置換を含むが、本開示の抗体または抗体フラグメントと本質的に生物学的に等価である抗体または抗体フラグメントをコードする配列を包含する。
【0137】
2つの抗原結合タンパク質、または抗体は、例えば類似の実験条件下、同じモル用量で、単一用量または複数用量のいずれかで投与されたとき、吸収の速度および程度が著しい差異を示さない薬学的等価物または薬学的代替物である場合、生物学的等価物であるとみなされる。いくつかの抗体は、これらの吸収の程度は同等であるがこれらの吸収速度は同等ではない場合、等価物または薬学的代替物とみなされ、さらに、吸収速度のこのような差異が、意図的であり、ラベルに反映されており、例えば、慢性使用において有効身体薬物濃度の獲得に不可欠ではなく、研究した特定の薬剤製品にとって医学的に有意ではないとみなされるため、生物学的等価物であるとみなされる。
【0138】
一実施形態では、2つの抗原結合タンパク質は、これらの安全性、純度、または効力において臨床的に意味のある差がない場合、生物学的に等価である。
【0139】
一実施形態では、2つの抗原結合タンパク質は、参照製品と生物学的製品の間での1回以上の切り替えを行わない持続的療法と比較して、免疫原性の臨床的に有意な変化を含む有害作用のリスクの予想される上昇または有効性の減退が生じずに、対象がその様な切り替えを行うことができる場合、生物学的に等価である。
【0140】
一実施形態では、2つの抗原結合タンパク質は、これらが両方とも、1つまたは複数の使用条件について、1つのまたは複数の共通の作用機序によって、このような機序が既知である程度まで作用する場合、生物学的に等価である。
【0141】
生物学的等価性は、インビボおよび/またはインビトロの方法によって実証され得る。生物学的等価性測定法には、例えば、(a)抗体またはその代謝産物の濃度が血液、血漿、血清または他の生物学的流体中で時間の関数として測定される、ヒトまたは他の哺乳類におけるインビボでの試験、(b)ヒトのインビボでの生物学的利用能データと相関し、このデータを合理的に予測しているインビトロ試験、(c)抗体(またはその標的)の適切な急性薬理学的効果が時間の関数として測定される、ヒトまたは他の哺乳類におけるインビボ試験、および(d)抗体の安全性、効能、または生物学的利用能もしくは生物学的等価性を確立する、十分に管理された臨床試験が含まれる。
【0142】
本開示の抗体の生物学的に等価なバリアントは、例えば、残基もしくは配列の種々の置換を生じること、または生物活性に必要とされない末端もしくは内部の残基もしくは配列を欠失することによって構築され得る。例えば、生物学的活性にとって必須ではないシステイン残基は、再生の際の不必要または不正確な分子内ジスルフィド架橋の形成を防止するために、欠失または他のアミノ酸で置換することができる。他の文脈では、生物学的に等価の抗体には、抗体のグリコシル化特徴を修飾するアミノ酸変化、例えばグリコシル化を排除または除去する変異を含む、抗体バリアントが含まれ得る。
【0143】
Fcバリアントを含む抗CD8抗体
本開示のある特定の実施形態によると、抗CD8抗体は、例えば、中性pHと比較して酸性pHで、FcRn受容体への抗体結合を増強または減少させる1つ以上の変異を含むFcドメインを含む。例えば、本開示は、FcドメインのCH2またはCH3領域に変異を含む抗CD8抗体を含み、変異(単数または複数)は、酸性環境において(例えば、pHが約5.5~約6.0の範囲のエンドソームにおいて)FcRnに対するFcドメインの親和性を増加させる。そのような突然変異は、動物に投与されたときに抗体の血清半減期の増加をもたらし得る。このようなFc修飾の非限定的な例には、例えば、250位(例えば、EまたはQ)、250位および428位(例えば、LまたはF)、252位(例えば、L/Y/F/WまたはT)、254位(例えば、SまたはT)、および256位(例えば、S/R/Q/E/DまたはT)における修飾、または428位および/もしくは433位(例えば、H/L/R/S/P/QまたはK)および/もしくは434位(例えば、A、W、H、F、またはY[N434A、N434W、N434H、N434F、またはN434Y])における修飾、あるいは250位および/もしくは428位における修飾、あるいは307位もしくは308位(例えば、308F、V308F)、および434位における修飾が含まれる。一実施形態では、修飾は、428L(例えば、M428L)および434S(例えば、N434S)修飾、428L、259I(例えば、V259I)、および308F(例えば、V308F)修飾、433K(例えば、H433K)および434(例えば、434Y)修飾、252、254、および256(例えば、252Y、254T、および256E)修飾、250Qおよび428L修飾(例えば、T250QおよびM428L)、ならびに307および/または308修飾(例えば、308Fおよび/または308P)を含む。さらに別の実施形態では、修飾は、265A(例えば、D265A)および/または297A(例えば、N297A)修飾を含む。
【0144】
例えば、本開示は、以下からなる群から選択される変異の1つ以上の対または群を含むFcドメインを含む抗CD8抗体を含む:250Qおよび248L(例えば、T250QおよびM248L);252Y、254Tおよび256E(例えば、M252Y、S254TおよびT256E);428Lおよび434S(例えば、M428LおよびN434S);257Iおよび311I(例えば、P257IおよびQ311I);257Iおよび434H(例えば、P257IおよびN434H);376Vおよび434H(例えば、D376VおよびN434H);307A、380Aおよび434A(例えば、T307A、E380AおよびN434A);ならびに433Kおよび434F(例えば、H433KおよびN434F)。一実施形態では、本開示は、二量体安定化を促進するためにIgG4のヒンジ領域におけるS108P変異を含むFcドメインを含む抗CD8抗体を含む。前述のFcドメイン変異、および本明細書に開示される抗体可変ドメイン内の他の変異の全ての可能な組み合わせが、本開示の範囲内であることが企図される。
【0145】
本開示は、キメラ重鎖定常(CH)領域を含む抗CD8抗体を含み、キメラCH領域は、2つ以上の免疫グロブリンアイソタイプのCH領域に由来するセグメントを含む。例えば、本開示の抗体は、ヒトIgG1分子、ヒトIgG2分子またはヒトIgG4分子に由来するCH3ドメインの一部または全部と組み合わせて、ヒトIgG1分子、ヒトIgG2分子またはヒトIgG4分子に由来するCH2ドメインの一部または全部を含むキメラCH領域を含み得る。ある特定の実施形態によると、本開示の抗体は、キメラヒンジ領域を有するキメラCH領域を含む。例えば、キメラヒンジは、ヒトIgG1ヒンジ領域、ヒトIgG2ヒンジ領域またはヒトIgG4ヒンジ領域に由来する「下部ヒンジ」配列(EU番号付けによる位置228~236のアミノ酸残基)と組み合わされた、ヒトIgG1ヒンジ領域、ヒトIgG2ヒンジ領域またはヒトIgG4ヒンジ領域に由来する「上部ヒンジ」アミノ酸配列(EU番号付けによる位置216~227のアミノ酸残基)を含むことができる。ある特定の実施形態によると、キメラヒンジ領域は、ヒトIgG1上部ヒンジまたはヒトIgG4上部ヒンジに由来するアミノ酸残基と、ヒトIgG2下部ヒンジに由来するアミノ酸残基とを含む。本明細書に説明されるキメラCH領域を含む抗体は、ある特定の実施形態では、抗体の治療特性または薬物動態学的特性に負に影響を与えることなく修飾Fcエフェクター機能を呈し得る。(例えば、その開示が全体として参照により本明細書により組み込まれる米国特許出願公開第20140243504号を参照されたい)。
【0146】
B.陽電子放出体およびキレート部分
好適な陽電子放出体としては、キレート部分と安定した複合体を形成し、免疫PET撮像の目的に適切な物理的半減期を有するものが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な陽電子放出体には、89Zr、68Ga、64Cu、44Sc、および86Yが挙げられるが、これらに限定されない。適切な陽電子放出体にはまた、76Brならびに124I、および補欠分子族、例えば、18Fによって導入されるものが挙げられるが、これらに限定されないCD8結合タンパク質と直接結合するものも含まれる。
【0147】
本明細書に記載のキレート部分は、CD8結合タンパク質例えば、抗CD8抗体に共有結合された化学的部分であり、陽電子放出体とキレート化することができる、すなわち陽電子放出体と反応して、配位キレート錯体を形成することができる部分を含む。適切な部分には、特定の金属の効率的な負荷を可能にし、インビボ診断的用途に、例えば、免疫PET撮像に、十分に安定した金属キレート剤錯体を形成するものが含まれる。例示的キレート部分には、陽電子放出体の解離および骨ミネラル、血漿タンパク質、ならびに/または骨髄沈着における蓄積を、診断用途に適した程度に最小化するものが含まれる。
【0148】
キレート部分の例としては、陽電子放射体89Zr、68Ga、64Cu、44Sc、および86Yと安定な錯体を形成するものが挙げられるが、これらに限定されない。例示的キレート部分には、それらの全体が参照により組み込まれている、Nature Protocol、5(4):739,2010;Bioconjugate Chem.,26(12):2579(2015);Chem Commun(Camb)、51(12):2301(2015);Mol.Pharmaceutics,12:2142(2015);Mol.Imaging Biol.,18:344(2015);Eur.J.Nucl.Med.Mol.Imaging,37:250(2010);Eur.J.Nucl.Med.Mol.Imaging(2016).doi:10.1007/s00259-016-3499-x;Bioconjugate Chem.,26(12):2579(2015);WO2015/140212A1;および米国特許第5,639,879号に記載されるものが挙げられるが、これに限定されない。
【0149】
例示的キレート部分には、デスフェリオキサミン(DFO)、1,4,7,10-四酢酸(DOTA)、ジエチレンエトリアミン五酢酸(DTPA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ(メチレンホスホン)酸(DOTP)、1R,4R,7R,10R)-α’α”α’”-テトラメチル-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTMA)、1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-1,4,8,11-四酢酸(TETA)、H4オクテーパ、H6ホスパ、H2デドパ、H5デカパ、H2アザパ、HOPO、DO2A、1,4,7,10-テトラキス(カルバモイルメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン(DOTAM)、1,4,7-トリアザシクロノナン-N,N’,N”-三酢酸(NOTA)、1,4,7,10-テトラキス(カルバモイルメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン(DOTAM)、1,4,8,11-テトラアザシクロ[6.6.2]ヘキサデカン-4,11-二酢酸(CB-TE2A)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン(Cyclen)、1,4,8,11-テトラアザシクロドデカン(Cyclam)、オクタデンテートキレート剤、ヘキサデンテートキレート剤、ホスホネートベースのキレート剤、大環状キレート剤、大環状テレフタルアミド配位子を含むキレート剤、二官能性キレート剤、フサリニンCならびにフサリニンC誘導体キレート剤、トリアセチルフサリニンC(TAFC)、フェリオキサミンE(FOXE)、フェリオキサミンB(FOXB)、フェリクロームA(FCHA)なども挙げられるが、これらに限定されない。
【0150】
いくつかの実施形態では、キレート部分は、CD8結合タンパク質、例えば、抗体またはその抗原結合フラグメントに、キレート部分のキレート部を結合タンパク質に共有結合しているリンカー部分を介して、共有結合する。いくつかの実施形態では、これらのリンカー部分は、CD8結合タンパク質の反応部分、例えば、抗体のシステインまたはリジンと、例えば、p-イソチオシアナトベニル基および下記の結合方法に提供される反応部分を含む、キレート剤に結合した反応部分との間の反応から形成される。加えて、こうしたリンカー部分は、キレート部分とCD8結合タンパク質との間の極性、溶解度特性、立体相互作用、剛性、および/または長さを調節する目的で使用される化学基を任意に含む。
【0151】
C.放射性標識された抗CD8コンジュゲートの調製
放射性標識された抗CD8タンパク質コンジュゲートは、(1)CD8結合タンパク質、例えば、抗体を、陽電子放出体キレート剤と、CD8結合タンパク質の所望のコンジュゲーション部位に対して反応性の部分とを含む分子と反応させることと、(2)所望の陽電子放出体を装填させることと、によって調製することができる。
【0152】
適切なコンジュゲーション部位には、限定されないが、リシンおよびシステインが挙げられ、その両方が例えば、天然または操作されたものであり得、例えば、抗体の重鎖または軽鎖上に存在することができる。システインコンジュゲーション部位には、抗体ジスルフィド結合の変異、挿入、または還元から得られるものが含まれるが、これらに限定されない。システイン操作された抗体を作製する方法には、WO2011/056983に開示されているものが含まれるが、これらに限定されない。部位特異的結合方法はまた、抗体の特異的部位への結合反応を指示するために、所望の化学量論を達成するために、および/または所望のキレート剤対抗体比を達成するために使用することもできる。このようなコンジュゲーション方法は当業者に既知であり、グルタミンコンジュゲーション、Q295コンジュゲーション、およびトランスグルタミナーゼ媒介コンジュゲーション、ならびにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、J.Clin.Immunol.,36:100(2016)に記載されているものが挙げられるが、これらに限定されない。所望のコンジュゲーション部位に反応性の適切な部分は一般的に、CD8結合タンパク質、例えば、抗体と、陽電子放出体キレート剤との効率的かつ容易な結合を可能にする。リジンおよびシステイン部位に対して反応性の部分は、当業者に既知である求電子基を含む。ある特定の態様では、所望のコンジュゲーション部位がリジンである場合、反応性部分はイソチオシアネート、例えば、p-イソチオシアナトベニル基または反応性エステルである。ある特定の態様では、所望のコンジュゲーション部位がシステインである場合、反応性部分はマレイミドである。
【0153】
キレート剤がデスフェリオキサミン(DFO)である場合、好適な反応性部分としては、イソチオシアナトベンジル基、n-ヒドロキシスクリニイミドエステル、2,3,5,6テトラフルオロフェノールエステル、n-スクリンイミダイル-S-アセチルチオアセテート、およびその全体が参照により本明細書に組み込まれる、BioMed Research International,Vol 2014,Article ID 203601に記載されるものが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、CD8結合タンパク質は抗体であり、陽電子放出体キレート剤とコンジュゲーション部位に対して反応性の部分とを含む分子は、p-イソチオシアナトベンジル-デスフェリオキサミン(p-SCN-Bn-DFO):
【化1】
である。
【0154】
陽電子放出体の装填は、CD8結合タンパク質キレート剤コンジュゲートを、陽電子放出体と、該陽電子放出体のキレート剤への配位を可能にするのに十分な時間、インキュベートすることによって、例えば、本明細書に提供される実施例に記載された方法、または実質的に類似した方法を実施することによって、達成される。
【0155】
D.コンジュゲートの例示的実施形態
ヒトCD8に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントと、陽電子放出体と、を含む、放射性標識された抗体コンジュゲートが、本開示に含まれる。また、ヒトCD8に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントと、キレート部分と、陽電子放出体と、を含む、放射性標識された抗体コンジュゲートも本開示に含まれる。
【0156】
いくつかの実施形態では、キレート部分は、89Zrと錯体を形成することができるキレート剤を含む。ある特定の実施形態では、キレート部分は、デスフェリオキサミンを含む。ある特定の実施形態では、キレート部分は、p-イソチオシアナトベンジル-デスフェリオキサミンである。
【0157】
いくつかの実施形態では、陽電子放出体は、89Zrである。いくつかの実施形態では、抗CD8抗体の1.0%未満は、陽電子放出体とコンジュゲートされており、抗CD8抗体の0.9%未満は、陽電子放出体とコンジュゲートされており、抗CD8抗体の0.8%未満は、陽電子放出体とコンジュゲートされており、抗CD8抗体の0.7%未満は、陽電子放出体とコンジュゲートされており、抗CD8抗体の0.6%未満は、陽電子放出体とコンジュゲートされており、抗CD8抗体の0.5%未満は、陽電子放出体とコンジュゲートされており、抗CD8抗体の0.4%未満は、陽電子放出体とコンジュゲートされており、抗CD8抗体の0.3%未満は、陽電子放出体とコンジュゲートされており、抗CD8抗体の0.2%未満は、陽電子放出体とコンジュゲートされており、または抗CD8抗体の0.1%未満は、陽電子放出体とコンジュゲートされている。
【0158】
いくつかの実施形態では、コンジュゲートのキレート部分対抗体比は、1.0~2.0である。本明細書で使用される場合、「キレート部分対抗体比」は、平均キレート部分対抗体比であり、抗体あたりのキレート負荷の尺度である。この比は、「DAR」、すなわち、抗体薬物コンジュゲート(ADC)についての抗体当たりの薬物負荷を測定するために、当業者によって使用されている薬物-抗体比と類似しており、iPET撮像に関する本明細書に記載のコンジュゲートの場合、キレート部分対抗体比は、本明細書に記載される方法およびDARの決定のための当該技術分野において既知の他の方法、例えば、Wang et al.,Antibody-Drug Conjugates,The 21st Century Magic Bullets for Cancer(2015)に記載されているものを使用して確認することができる。いくつかの実施形態では、キレート部分対抗体比は、約1.7である。いくつかの実施形態では、キレート部分対抗体比は、1.0~2.0である。いくつかの実施形態では、キレート部分対抗体比は、約1.7である。
【0159】
特定の実施形態では、キレート部分は、p-イソチオシアナトベンジル-デスフェラリオキサミンであり、陽電子放出体は、89Zrである。別の特定の実施形態では、キレート部分は、p-イソチオシアナトベンジル-デスフェラリオキサミンであり、陽電子放出体は、89Zrであり、コンジュゲートのキレート部分対抗体比は、1~2である。
【0160】
いくつかの実施形態では、CD8に結合する抗原結合タンパク質が本明細書に提供され、CD8に結合する該抗原結合タンパク質は、以下の構造を有する1つ以上の部分に共有結合されており、
-L-MZ
式中、Lは、キレート部分であり、Mは、陽電子放出体であり、zは、各出現において独立して、0または1であり、zのうちの少なくとも1つは1である。特定の実施形態では、放射性標識された抗原結合タンパク質は、式(I)の化合物であり、
M-L-A-[L-MZ]k
(I)
Aは、CD8に結合するタンパク質であり、Lは、キレート部分であり、Mは、陽陽電子放出体であり、zは、0または1であり、kは、0~30の整数である。いくつかの実施形態では、kは、1である。いくつかの実施形態では、kは、2である。
【0161】
いくつかの実施形態では、Lは、
【化2】
である。
【0162】
いくつかの実施形態では、Mは、89Zrである。
【0163】
いくつかの実施形態では、kは、1~2の整数である。いくつかの実施形態では、kは、1である。いくつかの実施形態では、kは、2である。
【0164】
いくつかの実施形態では、-L-Mは、
【化3】
である。
【0165】
また、本開示では、式(III)の化合物を、
【化4】
(III)
89Zrと接触させることを含む、放射性標識された抗体コンジュゲートを合成する方法も含まれ、式中、Aは、CD8に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントである。ある特定の実施形態では、式(III)の化合物は、CD8に結合する抗体、またはその抗原結合フラグメントを、p-SCN-Bn-DFOと接触させることによって合成される。
【0166】
式(III)の化合物と89Zrとの間の反応の生成物も本明細書に提供されている。
【0167】
式(III)の化合物が本明細書に提供されており、
【化5】
式中、Aは、CD8に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントであり、kは、1~30の整数である。いくつかの実施形態では、kは、1または2である。
【0168】
(i)CD8に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントと、(ii)1つ以上のキレート部分と、を含む、抗体コンジュゲートが本明細書に提供されている。
【0169】
いくつかの実施形態では、キレート部分は、
【化6】
を含む。
【化7】
は、抗体またはその抗原結合フラグメントへの共有結合である。
【0170】
いくつかの態様では、抗体コンジュゲートは、約1.0~約2.0のキレート部分対抗体比を有する。いくつかの耐容では、抗体コンジュゲートは、約1.7のキレート部分対抗体比を有する。
【0171】
いくつかの実施形態では、以下の構造:
A-Lk
を有するコンジュゲートを含む組成物が本明細書に提供されており、
式中、Aは、CD8に結合するタンパク質であり、Lは、キレート部分であり、kは、1~30の整数であり、このコンジュゲートは、臨床的なPET撮像に好適な比放射能を提供するのに十分な量の陽電子放出体でキレート化されている。いくつかの実施形態では、キレート化陽電子放出体の量は、CD8に結合するタンパク質の1~50mgあたり約1~約50mCiの比放射能を提供するのに十分な量である。
【0172】
いくつかの実施形態では、キレート化陽電子放出体の量は、CD8に結合するタンパク質の1~50mgあたり、最大50mCi、最大45mCi、最大40mCi、最大35mCi、最大30mCi、最大25mCi、または最大10mCiの、例えば約5~約50mCi、約10~約40mCi、約15~約30mCi、約7~約25mCi、約20~約50mCi、または約5~約10mCiの範囲の比放射能を提供するのに十分な量である。
【0173】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、表面プラズモン共鳴アッセイで測定したとき、約3.5×10-8M未満の結合解離平衡定数(KD)でヒトCD8に結合する。
【0174】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、表面プラズモン共鳴アッセイにおいて、約3.5×10-8未満のKDでヒトCD8αに結合する。
【0175】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、表面プラズモン共鳴アッセイで測定されるとき、約3.3×10-8M未満のKDでヒトCD8に結合する。
【0176】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、HCVRの相補性決定領域(CDR)を含む参照抗体とヒトCD8への結合を競合し、HCVRは配列番号2のアミノ酸配列と、LCVRのCDRとを有し、LCVRは、配列番号10のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、参照抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号2/10のHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアを含む。
【0177】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、CD8のMHCクラスIへの結合を.阻害する。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、活性化CD8T細胞におけるIFNγ産生を阻害する。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、活性化T細胞における転写因子アクチベータータンパク質(AP-1)を阻害する。
【0178】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、HCVRの相補性決定領域(CDR)を含み、HCVRは配列番号2のアミノ酸配列と、LCVRのCDRとを有し、LCVRは、配列番号10のアミノ酸配列を有する。ある特定の実施形態では、単離された抗体は、配列番号2/10のHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアを含む。
【0179】
いくつかの実施形態では、抗体は、ヒトCD8に特異的に結合するヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントであり、この抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号2のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR)を含む。
【0180】
いくつかの実施形態では、抗体は、ヒトCD8に特異的に結合するヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントであり、この抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号10のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)を含む。
【0181】
いくつかの実施形態では、抗体は、ヒトCD8に特異的に結合するヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントであり、この抗体またはその抗原結合フラグメントは、(a)配列番号2のアミノ酸配列を有するHCVRと、(b)配列番号10のアミノ酸配列を有するLCVRと、を含む。
【0182】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号2の重鎖可変領域(HCVR)内に含まれる3つの重鎖相補性決定領域(CDR)(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)と、配列番号10の軽鎖可変領域(LCVR)内に含まれる3つの軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)と、を含む。
【0183】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号4/6/8/12/14/16の6つのCDRアミノ酸配列の組み合わせを含む。
【0184】
いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号2/10のHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアを含む。
【0185】
IV.放射性標識された免疫コンジュゲートを使用する方法
ある特定の態様では、本開示は、本開示の放射性標識された抗体コンジュゲートを使用する診断および治療方法を提供する。
【0186】
一態様によれば、本開示は、組織内のCD8を検出する方法を提供し、本方法は、本明細書に提供される放射性標識された抗CD8抗体コンジュゲートを組織に投与することと、陽電子放出断層撮影(PET)撮像によって、CD8発現を可視化することと、を含む。ある特定の実施形態では、組織は、細胞または細胞株を含む。ある特定の実施形態では、組織は対象の身体内に存在し、この対象は哺乳類である。ある特定の実施形態では、対象はヒトの対象である。ある特定の実施形態では、対象は、癌、感染症、自己免疫疾患、および炎症性疾患からなる群から選択される疾患または障害を有する。一実施形態では、対象は癌を有する。ある特定の実施形態では、感染症は、例えば、リケッチア細菌、桿菌、クレブシエラ、髄膜炎菌ならびにゴノコッカス、プロテウス、肺炎球菌、シュードモナス、ストレプトコッカス、スタフィロコッカス、セラチア、ボレリア、炭疽菌(Bacillus anthricis)、クラミジア、クロストリジウム、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)、レジネラ、ライ菌(Mycobacterium leprae)、マイコバクテリウム・レプロマトシス(Mycobacterium lepromatosis)、サルモネラ、コレラ菌(Vibrio cholerae)、およびビブリオコーリエ、およびペスト菌(Yersinia
pestis)によって引き起こされる細菌感染である。ある特定の実施形態では、感染症は、例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、ヘルペスウイルス(例えば、VZV、HSV-I、HAV-6、HSV-II、CMV、およびエプスタイン・バールウイルス)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、およびサル免疫不全ウイルス(SIV)によって引き起こされるウイルス感染である。ある特定の実施形態では、感染症は、例えば、エントアメーバの種(Entamoeba spp.)、蟯虫(Enterobius vermicularis)、リーシュマニアの種(Leishmania spp.)、トキソカラの種(Toxocara spp.)、マラリア原虫の種(Plasmodium spp.)、住血吸虫の種(Schistosoma spp.)、有鉤条虫(Taenia solium)、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)、およびトリパノソーマクルージ(Trypanosoma cruzi)によって引き起こされる寄生虫感染である。ある特定の実施形態では、感染症は、例えば、アスペルギルス属(フミガーツス、ニガーなど)、ブラストマイセス・デルマチチジス(Blastomyces dermatitidis)、カンジダ属(アルビカンス、クルーセイ、グラブラータ、トロピカリスなど)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ケカビ属(ムコール、アブシジア、リゾプスなど)、ヒストプラズマ・カプスアツム(Histoplasma capsulatum)、パラコクシジオイデス・ブラジリエンシス(Paracoccidioides brasiliensis)、およびスポロトリックス・シェンキィ(Sporothrix schenkii)によって引き起こされる真菌感染である。
【0187】
一態様によれば、本開示は、CD8を発現する組織を撮像する方法を提供し、本方法は、本開示の放射性標識された抗CD8抗体コンジュゲートを組織に投与することと、陽電子放出断層撮影(PET)撮像によって、CD8発現を可視化することと、を含む。一実施形態では、組織は、腫瘍内に含まれる。一実施形態では、組織は、腫瘍細胞培養または腫瘍細胞株内に含まれる。一実施形態では、組織は、対象の腫瘍病変内に含まれる。一実施形態では、組織は、組織内の腫瘍内リンパ球である。一実施形態では、組織は、CD8発現細胞を含む。
【0188】
一態様によれば、本開示は、療法に対する応答を測定する方法を提供し、療法に対する応答は、ベースラインレベルに対するCD8陽性T細胞の増加に相関する。この態様による方法は、本明細書に提供される放射性標識された抗体コンジュゲートを、それを必要とする対象に投与することと、陽電子放出断層撮影(PET)撮像によって、CD8発現を可視化することと、を含む。ある特定の実施形態では、CD8陽性T細胞は、対象の腫瘍内に存在する。ある特定の実施形態では、CD8発現の増加は、腫瘍における炎症の増加に相関する。ある特定の実施形態では、炎症は、対象の感染組織内に存在する。ある特定の実施形態では、CD8発現の減少は、感染組織の炎症の減少に相関する。
【0189】
一態様によれば、本開示は、療法に対する応答を測定する方法を提供し、療法に対する応答は、ベースラインレベルに対するCD8陽性T細胞の増加に相関する。この態様による方法は、(i)本明細書に提供される放射性標識された抗体コンジュゲートを、それを必要とする対象に投与して、陽電子放出断層撮影(PET)撮像によって、CD8発現を可視化することと、(ii)療法の開始後、工程(i)を1回以上繰り返すことと、を含む。ある特定の実施形態では、CD8陽性T細胞は、対象の組織内に存在する。ある特定の実施形態では、CD8発現の増加は、組織の炎症の増加に相関する。ある特定の実施形態では、CD8発現の減少は、組織の炎症の減少に相関する。ある特定の実施形態では、工程(i)で可視化されたCD8発現は、工程(ii)で可視化されたCD8発現と比較される。
【0190】
一態様によれば、本開示は、抗腫瘍療法に対する応答を予測する方法を提供する。本方法は、放射性標識された抗CD8抗体コンジュゲートを、それを必要とする対象に投与することと、対象の固形腫瘍がCD8陽性T細胞を含むと決定することと、を含む。対象の腫瘍がCD8陽性T細胞で浸潤されているか、または免疫学的に「熱い」場合、対象は抗腫瘍療法に対して応答する可能性が高い。CD8陽性T細胞の存在は、生存のための応答マーカーまたは予後マーカーの予測マーカーとすることができる。例えば、CD8陽性細胞によるベースライン腫瘍浸潤は、乳房、頭/頸部、および卵巣癌の生存の予後である。さらに、抗PD-1療法または抗PDL-1療法中に検出されたCD8陽性細胞の腫瘍浸潤は、処置に対する応答の予測マーカーである。
【0191】
一態様によれば、本開示は、腫瘍を有する対象が抗腫瘍療法に適しているかどうかを決定するための方法を提供し、本方法は、本開示の放射性標識された抗体コンジュゲートを投与することと、PET撮像によって、投与された放射性標識された抗体コンジュゲートを腫瘍内に局在化させることと、を含み、腫瘍内における放射性標識された抗体コンジュゲートの存在は、対象が抗腫瘍療法に適しているものと確認する。
【0192】
一態様によれば、本開示は、腫瘍を有する対象が、PD-1/PD-L1シグナル伝達軸の阻害剤を含む抗腫瘍療法に適しているかどうかを確認するための方法を提供し、本方法は、本開示の放射性標識された抗体コンジュゲートを対象に投与することと、PET撮像によって、投与された放射性標識された抗体コンジュゲートを腫瘍内に局在化させることと、を含み、腫瘍内における放射性標識された抗体コンジュゲートの存在は、対象が抗腫瘍療法に適しているものと確認する。いくつかの実施形態では、対象には、放射性標識された抗PD-1コンジュゲートがさらに投与され、PET撮像によって、投与された放射性標識された抗PD-1コンジュゲートは腫瘍内に局在化され、腫瘍における放射性標識された抗体コンジュゲートの存在は、対象がPD-1/PD-L1シグナル伝達軸の阻害剤を含む抗腫瘍療法に適していると確認する。
【0193】
本開示の別の態様は、経時的な腫瘍におけるT細胞の存在および/または浸潤を監視するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、(a)腫瘍を有する対象に、第1の時点で放射性標識された抗CD8抗体コンジュゲートを投与し、腫瘍におけるCD8陽性T細胞の存在を決定することと、(b)抗腫瘍療法の1回以上の用量を対象に投与することと、(c)腫瘍療法を施した1~20週後に、第2の時点で放射性標識された抗CD8抗体を対象に投与し、腫瘍におけるCD8陽性T細胞の存在を決定することと、を含む。腫瘍におけるT細胞の存在は、抗腫瘍療法に対する陽性応答を示す。工程(c)は、抗腫瘍療法による処置過程にわたって繰り返すことができる。第1の時点は、(b)の前に起凝り得るか、または(b)後に起こり得る。
【0194】
腫瘍におけるT細胞の存在を決定することは、当業者に既知の方法によってT細胞のレベルを定量化することを伴う。いくつかの態様では、CD8陽性T細胞のベースラインレベルは、抗腫瘍療法の過程後または過程中に測定されたCD8陽性T細胞のレベルと比較される。ベースラインに対するCD8陽性T細胞レベルの維持、または経時的なCD8陽性T細胞の増加は、抗腫瘍療法に対する陽性応答を示す。
【0195】
腫瘍におけるT細胞の存在を決定することは、腫瘍がT細胞陽性であるか、または腫瘍がT細胞陰性であるという単純な決定を伴い得る。
【0196】
抗腫瘍療法に対する対象の応答を予測するための方法も本明細書に提供されており、本方法は、腫瘍がCD8陽性であるかどうかを決定することを含み、腫瘍がCD8陽性である場合、すなわち、腫瘍がT細胞を含有する場合、対象の抗腫瘍療法の陽性応答を予測する。ある特定の実施形態では、本開示の放射性標識された抗CD8抗体コンジュゲートを投与し、PET撮像によって、放射性標識された抗体コンジュゲートを腫瘍内に局在化させる(腫瘍における放射性標識された抗体コンジュゲートの存在は、腫瘍がCD8陽性であることを示す)ことによって、腫瘍は陽性であると決定される。いくつかの実施形態では、抗腫瘍療法は、チェックポイント阻害剤療法である。いくつかの実施形態では、抗腫瘍療法は、PD-1阻害剤(例えば、REGN2810、BGB-A317、ニボルマブ、ピジリズマブ、およびペンブロリズマブ)、PD-L1阻害剤(例えば、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、MDX-1105、およびREGN3504、ならびに特許出願公開第US2015-0203580号に開示されるもの)、CTLA-4阻害剤(例えば、イピリムマブ)、TIM3阻害剤、BTLA阻害剤、TIGIT阻害剤、CD47阻害剤、GITR阻害剤、LAG3阻害剤、別のT細胞共阻害剤もしくはリガンドの拮抗薬(例えば、CD-28、2B4、LY108、LAIR1、ICOS、CD160またはVISTAへの抗体)、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤、血管内皮成長因子(VEGF)拮抗薬[例えば、アフリベルセプトもしくは米国特許第7,087,411号に記載されるVEGF阻害融合タンパク質などの「VEGF-トラップ」、または抗VEGF抗体もしくはその抗原結合フラグメント(例えば、ベバシズマブ、またはラニビズマブ)またはVEGF受容体の小分子キナーゼ阻害剤(例えば、スニチニブ、ソラフェニブ、またはパゾパニブ)]、Ang2阻害剤(例えば、ネスアクマブ)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)阻害剤、表皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤(例えば、エルロチニブ、セツキシマブ)、CD20阻害剤(例えば、リツキシマブなどの抗CD20抗体)、腫瘍特異抗原に対する抗体[例えば、CA9、CA125、黒色腫関連抗原3(MAGE3)、癌胎児性抗原(CEA)、ビメンチン、腫瘍-M2-PK、前立腺特異抗原(PSA)、ムチン-1、MART-1、およびCA19-9]、ワクチン(例えば、カルメット・ゲラン桿菌(Bacillus Calmette-Guerin)、癌ワクチン)、抗原提示を増加させるアジュバント(例えば、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子)、二特異性抗体(例えば、CD3×CD20二重特異性抗体、またはPSMA×CD3二重特異性抗体)、細胞毒素、化学療法剤(例えば、ダカルバジン、テモゾロミド、シクロホスファミド、ドセタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、シスプラチン、カルボプラチン、ゲムシタビン、メトトレキサート、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、およびビンクリスチン)、シクロホスファミド、放射線療法、IL-6R阻害剤(例えば、サリルマブ)、IL-4R阻害剤(例えば、デュピルマブ)、IL-10阻害剤、IL-2、IL-7、IL-21、およびIL-15などのサイトカイン、および抗体薬物コンジュゲート(ADC)(例えば、抗CD19-DM4 ADC、および抗DS6-DM4 ADC)から選択される。
【0197】
一態様によれば、本開示は、固形腫瘍を有する対象の抗腫瘍療法に対する応答を予測するための方法を提供し、本方法は、腫瘍がCD8陽性であるかどうかを決定することを含み、腫瘍がCD8陽性である場合に、対象の陽性応答が予測される。ある特定の実施形態では、本開示の放射性標識された抗体コンジュゲートを投与し、PET撮像によって、放射性標識された抗体コンジュゲートを腫瘍内に局在化させる(腫瘍における放射性標識された抗体コンジュゲートの存在は、腫瘍がCD8陽性であることを示す)ことによって、腫瘍は陽性であると決定される。
【0198】
一態様によれば、本開示は、対象のCD8陽性腫瘍を検出するための方法を提供する。本態様による方法は、本開示の放射性標識された抗体コンジュゲートを対象に投与することと、PET撮像により放射性標識された抗体コンジュゲートの局在化を決定することと、を含み、腫瘍における放射性標識された抗体コンジュゲートの存在は、腫瘍がCD8陽性であることを示す。
【0199】
放射性標識された抗CD8抗体コンジュゲートを対象に投与して、固形腫瘍におけるCD8陽性T細胞の存在を決定することを含む、抗腫瘍療法に対する陽性応答を予測する方法が、本明細書に提供される。CD8陽性T細胞の存在は、抗腫瘍療法に対する陽性応答を予測する。
【0200】
(a)対象に抗腫瘍療法の1回以上の用量を投与することと、(b)抗腫瘍療法を施した1~20週後に、対象に放射性標識された抗CD8抗体コンジュゲートを投与して、固形腫瘍におけるCD8陽性細胞の存在を決定することと、を含む、対象の抗腫瘍療法に対する陽性応答を監視するための方法が、本明細書に提供される。CD8陽性T細胞の存在は、抗腫瘍療法に対する陽性応答を示す。
【0201】
固形腫瘍を有する対象における抗腫瘍療法の成功もしくは有効性を予測または監視するための方法が、本明細書に提供されており、本方法は、(a)腫瘍におけるCD8陽性細胞のレベルを決定することと、(b)CD8陽性細胞のレベルを成功した抗腫瘍療法に相関させることと、を含む。ある特定の閾値を超える高レベルが、成功した抗腫瘍療法の予測または指標である。
【0202】
本明細書で使用される場合、「それを必要とする対象」という表現は、癌の1つ以上の症状または徴候を示すヒトまたは非ヒト哺乳動物、および/または固形腫瘍を含む癌と診断され、かつ癌の処置を必要とするヒトまたは非ヒト哺乳動物を意味する。多くの実施形態では、「対象」という用語は、用語「患者」と互換的に使用されてもよい。例えば、ヒト対象は、原発性腫瘍または転移性腫瘍を有し、および/もしくは、原因不明の体重減少、全身の衰弱、持続的疲労、食欲不振、発熱、ねあせ、骨痛、息切れ、腹部膨満、胸痛/胸部圧迫感、脾臓肥大、および癌関連バイオマーカー(例えば、CA125)のレベルの上昇が挙げられるが、これらに限定されない1つ以上の症状または徴候を有すると診断され得る。この表現には、原発性腫瘍または定着腫瘍を有する対象が含まれる。特定の実施形態では、この表現には、固形腫瘍、例えば、結腸癌、乳癌、肺癌、前立腺癌、皮膚癌、肝臓癌、骨癌、卵巣癌、子宮頸部癌、膵臓癌、頭頸部癌、および脳癌を有する、および/またはその処置を必要とするヒト対象が含まれる。この用語には、原発性または転移性腫瘍(進行性悪性腫瘍)を有する対象が含まれる。ある特定の実施形態では、「それを必要とする対象」という表現には、以前の療法(例えば、抗癌剤での処置)に抵抗性もしくは難治性であるか、または以前の療法によっては適切に制御されない固形腫瘍を有する対象が含まれる。例えば、この表現には、化学療法での処置(例えば、カルボプラチンまたはドセタキセル)などの、1つ以上の以前の選択療法で処置された対象が含まれる。ある特定の実施形態では、「それを必要する対象」という表現には、1つ以上の以前の選択療法で処置されたが、その後再発または転移した固形腫瘍を有する対象が含まれる。ある特定の実施形態では、この用語には、癌、関節リウマチ、アテローム性動脈硬化症、歯周炎、枯草熱、心臓疾患、冠動脈疾患、感染症、気管支炎、皮膚炎、髄膜炎、喘息、結核、潰瘍性大腸炎、クローン病、炎症性腸疾患、肝炎、副鼻腔炎、乾癬、アレルギー、線維症、ルーパス、脈管炎、強直性脊椎炎、グレーブス病、セリアック病、線維筋痛症、および移植拒絶が挙げられるが、これらに限定されない炎症性疾患または障害を有する対象が含まれる。
【0203】
ある特定の実施形態では、本開示の方法は、固形腫瘍を有する対象で使用される。「腫瘍」、「癌」および「悪性腫瘍」という用語は、本明細書では互換的に使用される。本明細書で使用される場合、「固形腫瘍」という用語は、通常は嚢胞または液体領域を含有しない異常な組織の塊を指す。固形腫瘍は良性(癌ではない)または悪性(癌)であり得る。本開示の目的のために、「固形腫瘍」という用語は、悪性固形腫瘍を意味する。この用語には、それらを形成する細胞型、すなわち、肉腫、癌腫およびリンパ腫と名付けられた異なる種類の固形腫瘍が含まれる。ある特定の実施形態では、「固形腫瘍」という用語には、大腸直腸癌、卵巣癌、前立腺癌、乳癌、脳癌、子宮頸癌、膀胱癌、肛門癌、子宮癌、結腸癌、肝臓癌、膵臓癌、肺癌、子宮内膜癌、骨癌、精巣癌、皮膚癌、腎臓癌、胃癌、食道癌、頭頸部癌、唾液腺癌、および骨髄腫が挙げられるが、これらに限定されない癌が含まれる。
【0204】
一態様によれば、本開示は、対象の固形腫瘍を処置する方法を提供する。この態様による方法は、腫瘍がCD8陽性であると決定すること、すなわち、腫瘍がCD8陽性T細胞を含むと決定することと、抗腫瘍療法の1回以上の用量を投与することと、を含む。抗腫瘍療法は、チェックポイント阻害剤療法とすることができる。ある特定の実施形態では、腫瘍は、本開示の放射性標識された抗体コンジュゲートを対象に投与し、また腫瘍においてPET撮像により放射性標識された抗体コンジュゲートを可視化することによって、CD8陽性であることが決定される腫瘍における放射性標識されたる抗体コンジュゲートの存在は、腫瘍がCD8陽性であることを示す。
【0205】
本明細書に開示される放射性標識された抗CD8抗体は、対象がチェックポイント阻害剤療法に適しているかどうかを評価するために使用され得る。いくつかの態様では、放射性標識された抗CD8抗体を使用して、例えば、腫瘍の生検を行う必要なしに監視することを含む、腫瘍におけるT細胞浸潤を監視することができる。ある特定の実施形態では、十分なT細胞浸潤は、腫瘍がチェックポイント阻害療法に応答するであろうことを示す。本明細書に開示される放射性標識された抗CD8抗体は、例えば、処置過程の前の時点および/または処置過程中に、T細胞浸潤の程度の変化を測定することによって、チェックポイント阻害剤処置の過程中に、または処置後にT細胞浸潤を監視するためにも使用され得る。
【0206】
腫瘍におけるCD8陽性T細胞の存在は、腫瘍が処置に、例えば、チェックポイント阻害剤療法による処置に、より良好に応答するであろうことを示している。加えて、抗腫瘍療法で処置後の腫瘍におけるCD8陽性T細胞の存在は、療法が効いており、T細胞がより増加するにつれて、処置がより有効になることを示している。
【0207】
さらなる態様では、処置方法は、CTLA-4阻害剤(例えば、イピリムマブ)、TIM3阻害剤、BTLA阻害剤、TIGIT阻害剤、CD47阻害剤、GITR阻害剤、別のT細胞共阻害剤もしくはリガンドの拮抗薬(例えば、CD-28、2B4、LY108、LAIR1、ICOS、CD160またはVISTAへの抗体)、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤、血管内皮成長因子(VEGF)拮抗薬[例えば、アフリベルセプトもしくは米国特許第7,087,411号に記載されるVEGF阻害融合タンパク質などの「VEGF-トラップ」、または抗VEGF抗体もしくはその抗原結合フラグメント(例えば、ベバシズマブ、またはラニビズマブ)またはVEGF受容体の小分子キナーゼ阻害剤(例えば、スニチニブ、ソラフェニブ、またはパゾパニブ)]、Ang2阻害剤(例えば、ネスアクマブ)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)阻害剤、表皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤(例えば、エルロチニブ、セツキシマブ)、CD20阻害剤(例えば、リツキシマブなどの抗CD20抗体)、腫瘍特異抗原に対する抗体[例えば、CA9、CA125、黒色腫関連抗原3(MAGE3)、癌胎児性抗原(CEA)、ビメンチン、腫瘍-M2-PK、前立腺特異抗原(PSA)、ムチン-1、MART-1、およびCA19-9]、ワクチン(例えば、カルメット・ゲラン桿菌(Bacillus Calmette-Guerin)、癌ワクチン)、抗原提示を増加させるアジュバント(例えば、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子)、二特異性抗体(例えば、CD3×CD20二重特異性抗体、またはPSMA×CD3二重特異性抗体)、細胞毒素、化学療法剤(例えば、ダカルバジン、テモゾロミド、シクロホスファミド、ドセタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、シスプラチン、カルボプラチン、ゲムシタビン、メトトレキサート、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、およびビンクリスチン)、シクロホスファミド、放射線療法、IL-6R阻害剤(例えば、サリルマブ)、IL-4R阻害剤(例えば、デュピルマブ)、IL-10阻害剤、IL-2、IL-7、IL-21、およびIL-15などのサイトカイン、抗体薬物コンジュゲート(ADC)(例えば、抗CD19-DM4 ADC、および抗DS6-DM4 ADC)、抗炎症薬(例えば、コルチコステロイド、および非ステロイド性抗炎症薬)、抗酸化剤などの栄養補助食品または癌を処置するための任意の他の療法ケアのうちの1回以上の用量を投与することをさらに含むことができる。ある特定の実施形態では、抗腫瘍療法は、抗腫瘍応答を増強するために、樹状細胞ワクチン、腫瘍溶解性ウイルス、腫瘍細胞ワクチンなどを含む癌ワクチンと組み合わせて使用されてもよい。抗腫瘍療法と組み合わせて使用できる癌ワクチンの例には、黒色腫および膀胱癌用のMAGE3ワクチン、乳癌用MUC1ワクチン、脳癌(多形神経膠芽腫を含む)用のEGFRv3(例えば、リンドペピムト)、またはALVAC-CEA(CEA+癌のための)が挙げられる。
【0208】
ある特定の実施形態では、抗腫瘍療法は、長期持続性抗腫瘍応答を生じさせる、および/または癌を有する対象の生存を高めるための方法において、放射線療法と組み合わせて使用されてもよい。いくつかの実施形態では、PD-1またはPDL-1の阻害剤、例えば、抗PD-1抗体は、癌の対象に放射線療法を施す前に、同時に、または施した後に投与されてもよい。例えば、放射線療法は、腫瘍病変に対して1回以上の線量で投与され、その後に抗PD-1抗体の1回以上の用量量の投与が行われてもよい。いくつかの実施形態では、放射線療法を腫瘍性病変に局所投与して、対象の腫瘍の局所免疫原性を増させ(アジュバント作用性放射線照射(adjuvinating radiation))、および/または腫瘍細胞を死滅させ(切除性放射線照射(ablative radiation))、その後、抗PD-1抗体を全身投与することができる。例えば、頭蓋内放射線照射を、脳癌(例えば、多形神経膠芽腫)を有する対象に、抗PD-1抗体の全身投与との組み合わせて投与することができる。ある特定の実施形態では、抗PD-1抗体は、放射線療法および化学療法剤と(例えば、テモゾロミド)またはVEGFアンタゴニスト(例えば、アフリベルセプト)と組み合わせて投与されてもよい。
【0209】
ある特定の実施形態では、例えば、LCMV、HIV、HPV、HBV、またはHCVによって引き起こされるウイルス感染を処置するために、それを必要とする対象に、抗ウイルス薬を投与することができる。抗ウイルス薬の例には、ジドブジン、ラミブジン、アバカビル、リバビリン、ロピナビル、エファビレンツ、コビシスタット、テノホビル、リルピビリン、およびコルチコステロイドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0210】
ある特定の実施形態では、例えば、リケッチア細菌、桿菌、クレブシエラ、髄膜炎菌ならびにゴノコッカス、プロテウス、肺炎球菌、シュードモナス、ストレプトコッカス、スタフィロコッカス、セラチア、ボレリア、炭疽菌(Bacillus anthricis)、クラミジア、クロストリジウム、ジフテリア菌(Corynebacterium
diphtheriae)、レジネラ、ライ菌(Mycobacterium leprae)、マイコバクテリウム・レプロマトシス(Mycobacterium lepromatosis)、サルモネラ、コレラ菌(Vibrio cholerae)、およびビブリオコーリエ、およびペスト菌(Yersinia pestis)によって引き起こされる細菌感染を処置するために、それを必要とする対象に、1つ以上の抗菌薬が投与され得る。抗菌薬の例としては、ペニシリン、テトラセイクリン、セファロスポリン、キノロン、リンコマイシン、マクロライド、ケトライド、スルホンアミド、グリコペプチド、アミノグリコシド、およびカルバペネムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0211】
ある特定の実施形態では、例えば、アスペルギルス属(フミガーツス、ニガーなど)、ブラストマイセス・デルマチチジス(Blastomyces dermatitidis)、カンジダ属(アルビカンス、クルーセイ、グラブラータ、トロピカリスなど)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ケカビ属(ムコール、アブシジア、リゾプスなど)、ヒストプラズマ・カプスアツム(Histoplasma capsulatum)、パラコクシジオイデス・ブラジリエンシス(Paracoccidioides brasiliensis)、およびスポロトリックス・シェンキィ(Sporothrix schenkii)によって引き起こされる真菌感染を処置するために、それを必要とする対象に、1つ以上の抗真菌薬が投与され得る。抗真菌薬の例としては、アンホテリシンB、フルコナゾール、ボリキソナゾナゾール、ポサコナゾール、イトラコナゾール、ボリコナゾール、アニデュラファンギン、キャスポファンギン、ミカファンギン、およびフルシトシンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0212】
ある特定の実施形態では、例えば、エントアメーバの種(Entamoeba spp.、蟯虫(エンテロビウスバーミキュラリ(Enterobius vermicularis))、リーシュマニアの種(Leishmania spp.)、トキソカラの種(Toxocara spp.)、マラリア原虫の種(マラリア原虫の種(Plasmodium spp.)、住血吸虫の種(Schistosoma spp.)、有鉤条虫(Taenia solium)、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)、およびトリパノソーマクルージ(Trypanosoma cruzi)によって引き起こされる寄生虫感染を処置するために、それを必要とする対象に、1つ以上の抗寄生虫薬が投与され得る。抗寄生虫薬の例には、プラジカンテル、オキサムニキン、メトロニダゾール、チニダゾール、ニタゾキサニド、デヒドロエメチンまたはクロロキシン、ジオキサニドフロエート、ヨードキノン、クロロキン、パロモマイシン、パモ酸ピランテル、アルベンダゾール、ニフルチモックス、およびベンズニダゾールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0213】
追加的治療活性薬剤(単数または複数)/成分を、CD8の阻害剤の投与前、同時に、または投与後に投与してもよい。本開示の目的のために、このような投与レジメンは、第2の治療上活性な成分とのCD8阻害剤「組み合わせ」の投与とみなされる。
【0214】
いくつかの態様では、処置方法は、細菌感染、ウイルス感染、真菌感染、または寄生虫感染を有する対象を選択することと、対象の影響を受ける組織がCD8陽性であるとはんていすることと、感染に適切な治療剤の1回以上の用量を投与することと、を含む。ある特定の実施形態では、本開示の放射性標識された抗CD8抗体コンジュゲートを対象に投与し、PET撮像によって、対象の放射性標識された抗体コンジュゲートを可視化する(組織内の放射性標識された抗体コンジュゲートの存在は、その組織がCD8陽性であることを示す)ことによって、影響を受けた組織はCD8陽性であると決定される。ある特定の実施形態では、投与および可視化の工程は、感染症の処置における治療剤の有効性を監視するために1回以上実施される。
【0215】
いくつあの態様では、処置方法は、固形腫瘍を有する対象を選択することと、腫瘍がCD8陽性かつPD-1陽性であると決定することと、PD-1/PD-L1シグナル伝達軸の阻害剤(例えば、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体)の1回以上の用量を投与することと、を含む。ある特定の実施形態では、本開示の放射性標識された抗CD8抗体コンジュゲートを対象に投与し、PET撮像によって、腫瘍における放射性標識された抗体コンジュゲートを可視化する(腫瘍における放射性標識された抗体コンジュゲートの存在は、腫瘍がCD8陽性であることを示す)ことによって、腫瘍はCD8陽性であると決定される。ある特定の実施形態では、本開示の放射性標識された抗PD-1コンジュゲートを対象に投与し、PET撮像によって、腫瘍における放射性標識された抗PD-1コンジュゲートを可視化する(腫瘍における放射性標識された抗PD-1コンジュゲートの存在は、腫瘍がPD-1陽性であることを示す)ことによって、腫瘍はPD-1陽性であると決定される。
【0216】
例示的な抗PD-1抗体には、REGN2810、BGB-A317、ニボルマブ、ピジリズマブ、およびペンブロリズマブが挙げられる。
【0217】
例示的抗PD-L1抗体には、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、MDX-1105、およびREGN3504、ならびに特許出願公開第2015-0203580号に開示されるものならびにそれらに開示されるものならびにそれらに開示されるものが挙げられる。
【0218】
本明細書で使用される場合、「処置する」、「処置すること」などという用語は、症状を緩和すること、症状の原因を一時的もしくは永続的のいずれかで排除すること、腫瘍の成長を遅らせるかもしくは阻害すること、腫瘍細胞量もしくは腫瘍負荷を低減させること、腫瘍退縮、壊死および/または消失を引き起こすこと、転移を抑制もしくは阻害すること、転移性腫瘍の成長を阻害すること、および/または対象の生存期間を延ばすことを意味する。
【0219】
一態様によれば、本開示は、対象の抗腫瘍療法の有効性を監視する方法を提供し、本方法は、固形腫瘍を有する対象を選択することであって、対象が抗腫瘍療法で処置されている、選択することと、本開示の放射性標識された抗CD8コンジュゲートを対象に投与することと、PET撮像によって、腫瘍における投与された放射性標識されたコンジュゲートの局在化を撮像することと、腫瘍成長を決定することと、を含み、放射性標識されたシグナルのベースラインからの減少が、抗腫瘍療法の有効性を示す。ある特定の実施形態では、抗腫瘍療法は、PD-1/PD-L1シグナル伝達軸の阻害剤(例えば、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体)を含む。
【0220】
ある特定の実施形態では、本開示は、腫瘍の炎症状態の変化を評価するための方法を提供し、本方法は、固形腫瘍を有する対象を選択することであって、対象が抗腫瘍療法で処置されている、選択することと、本明細書に提供される放射性標識された抗CD8コンジュゲートを対象に投与することと、PET撮像によって、腫瘍における投与された放射性標識されたコンジュゲートの局在化を撮像することと、を含み、放射性標識されたシグナルのベースラインからの増加が、炎症の増加および抗腫瘍療法の有効性を示す。ある特定の実施形態では、抗腫瘍療法は、PD-1/PD-L1シグナル伝達軸の阻害剤(例えば、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体)を含む。ある特定の実施形態では、抗腫瘍療法は、PD-1阻害剤(例えば、REGN2810、BGB-A317、ニボルマブ、ピジリズマブ、およびペンブロリズマブ)、PD-L1阻害剤(例えば、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、MDX-1105、およびREGN3504)、CTLA-4阻害剤(例えば、イピリムマブ)、TIM3阻害剤、BTLA阻害剤、TIGIT阻害剤、CD47阻害剤、GITR阻害剤、別のT細胞共阻害剤もしくはリガンドの拮抗薬(例えば、CD-28、2B4、LY108、LAIR1、ICOS、CD160またはVISTAへの抗体)、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤、血管内皮成長因子(VEGF)拮抗薬[例えば、アフリベルセプトもしくは米国特許第7,087,411号に記載されるVEGF阻害融合タンパク質などの「VEGF-トラップ」、または抗VEGF抗体もしくはその抗原結合フラグメント(例えば、ベバシズマブ、またはラニビズマブ)またはVEGF受容体の小分子キナーゼ阻害剤(例えば、スニチニブ、ソラフェニブ、またはパゾパニブ)]、Ang2阻害剤(例えば、ネスアクマブ)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)阻害剤、表皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤(例えば、エルロチニブ、セツキシマブ)、CD20阻害剤(例えば、リツキシマブなどの抗CD20抗体)、腫瘍特異抗原に対する抗体[例えば、CA9、CA125、黒色腫関連抗原3(MAGE3)、癌胎児性抗原(CEA)、ビメンチン、腫瘍-M2-PK、前立腺特異抗原(PSA)、ムチン-1、MART-1、およびCA19-9]、ワクチン(例えば、カルメット・ゲラン桿菌(Bacillus Calmette-Guerin)、癌ワクチン)、抗原提示を増加させるアジュバント(例えば、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子)、二特異性抗体(例えば、CD3×CD20二重特異性抗体、またはPSMA×CD3二重特異性抗体)、細胞毒素、化学療法剤(例えば、ダカルバジン、テモゾロミド、シクロホスファミド、ドセタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、シスプラチン、カルボプラチン、ゲムシタビン、メトトレキサート、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、およびビンクリスチン)、シクロホスファミド、放射線療法、IL-6R阻害剤(例えば、サリルマブ)、IL-4R阻害剤(例えば、デュピルマブ)、IL-10阻害剤、IL-2、IL-7、IL-21、およびIL-15などのサイトカイン、および抗体薬物コンジュゲート(ADC)(例えば、抗CD19-DM4 ADC、および抗DS6-DM4 ADC)を含む。
【0221】
本明細書で使用される場合、腫瘍におけるCD8発現に関する「ベースライン」という用語は、抗腫瘍療法の用量の投与前または投与時に、対象についての放射性標識されたコンジュゲートの取り込みの数値を意味する。放射性標識されたコンジュゲートの取り込みは、当技術分野において既知の方法を使用して決定される(例えば、Oosting et al 2015,J.Nucl.Med.56:63-69を参照されたい)。ある特定の実施形態では、抗腫瘍療法は、PD-1/PD-L1シグナル伝達軸の阻害剤を含む。
【0222】
抗腫瘍療法に有効性があるかどうかを決定するために、放射性標識されたコンジュゲートの取り込みを、ベースライン時およびCD8阻害剤の投与後の1つ以上の時点で定量化する。例えば、放射性標識された抗体コンジュゲート(例えば、放射性標識された抗CD8抗体コンジュゲート)の取り込みは、PD-1/PD-L1シグナル伝達軸(例えば、抗PD-1抗体)による初回処置後、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、8日目、9日目、10日目、11日目、12日目、14日目、15日目、22日目、25日目、29日目、36日目、43日目、50日目、57日目、64日目、71日目、85日目に測定されてもよく、または1週目、2週目、3週目、4週目、5週目、6週目、7週目、8週目、9週目、10週目、11週目、12週目、13週目、14週目、15週目、16週目、17週目、18週目、19週目、20週目、21週目、22週目、23週目、24週目、またはそれ以上の週の終わりに測定されてもよい。処置開始後の特定の時点での取り込みの値とベースライン時の取り込みの値との間の差異は、抗腫瘍療法が有効であるかどうか(腫瘍退縮または進行)を確立するために使用される。
【0223】
ある特定の実施形態では、放射性標識された抗体コンジュゲートは、対象に静脈内または皮下で投与される。ある特定の実施形態では、放射性標識された抗体コンジュゲートは、腫瘍内に投与される。投与時に、放射性標識された抗体コンジュゲートは、腫瘍内で局在化される。局在化放射性標識された抗体コンジュゲートは、PET撮像により撮像され、腫瘍による放射性標識された抗体コンジュゲートの取り込みが、当技術分野において既知の方法によって測定される。ある特定の実施形態では、撮像は、放射性標識されたコンジュゲートの投与の1、2、3、4、5、6、または7日後に実施される。ある特定の実施形態では、撮像は、放射性標識された抗体コンジュゲートの投与と同日に実施される。
【0224】
ある特定の実施形態では、放射性標識された抗CD8コンジュゲートは、対象の体重の約0.1mg/kg~体重の約100mg/kg、例えば、体重の約0.1mg/kg~約50mg/kg、または約0.5mg/kg~約25mg/kg、または約0.1mg/kg~約1.0mg/kgの用量で投与することができる。
【0225】
ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、CD8に特異的に結合する。ある特定の実施形態では、抗CD8抗体は、HCVRのCDR(HCVRは、配列番号2のアミノ酸配列を有する)と、LCVRのCDR(LCVRは、配列番号10のアミノ酸を有する)とを含む。
【0226】
V.抗体の診断上の使用
本開示の抗CD8抗体は、例えば、診断目的のために、試料中のCD8またはCD8発現細胞を検出および/または測定するためにも使用され得る。例えば、抗CD8抗体、またはそのフラグメントは、CD8の異常発現(例えば、過剰発現、過小発現、発現の欠如、など)によって特徴付けられる状態または疾患を診断するために使用され得る。CD8に対する例示の診断アッセイは、例えば、対象から得られた試料を、抗CD8抗体と接触させることを含むことができ、この抗体は、検出可能な標識またはレポーター分子で標識されている。あるいは、標識されていない抗CD8抗体は、それ自体が検出可能に標識された2次抗体との組み合わせで、診断用途に使用することができる。検出可能な標識またはレポーター分子は、3H、14C、32P、35S、または125Iなどの放射性同位体、フルオレセインもしくはローダミンなどの蛍光部分もしくは化学発光部分、またはアルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、もしくはルシフェラーゼなどの酵素であり得る。試料中のCD8を検出または測定するために使用することのできる具体的な例示的アッセイには、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、イムノPET(例えば、89Zr、64Cu等)、および蛍光標識細胞分取(FACS)が含まれる。
【0227】
本開示によるCD8診断アッセイで使用できる試料には、対象から得られる任意の組織または流体試料が含まれる。概して、健常な対象(例えば、異常なCD8レベルまたは活性に関連する疾患または状態を患っていない対象)から得られた特定の試料中のCD8のレベルは、CD8のベースライン、または標準レベルを先ず確立するために測定されることになっている。次に、CD8のこのベースラインレベルは、CD8関連疾患または状態を有すると疑われる個体から得られた試料において測定されるCD8のレベルに対して比較することができる。
【0228】
いくつかの実施形態では、抗CD8抗体は、放射性同位元素、蛍光部分、化学発光部分、または酵素で標識される。放射性同位元素は、3H、14C、32P、35S、または125Iからなる群から選択され得る。蛍光部分または化学発光部分は、フルオレセインまたはローダミンからなる群から選択され得る。酵素は、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、西洋ペルオキシダーゼ、またはルシフェラーゼからなる群から選択され得る。
【0229】
いくつかの実施形態では、アッセイは、蛍光部分または化学発光部分で検出可能に標識された本明細書に記載の抗CD8抗体を含む。
【0230】
いくつかの実施形態では、抗CD8抗体は、蛍光染料でコンジュゲートされる。いくつかの実施形態ではにおいて、抗CD8抗体は、近赤外(NIR)蛍光染料にコンジュゲートされる。適切な染料には、蛍光分子断層撮影適用下で低発現標的に対して高い感度を提供するものが含まれる。いくつかの実施形態では、染料は、BODIPY-X630/650(登録商標)、VivoTag(登録商標)645、AlexaFluor(登録商標)647、VivoTag680(登録商標)、AlexaFluor680(登録商標)、AlexaFluor750(登録商標)、IRDye800CW(登録商標)、DyLight800 CF(登録商標)660C、CF(登録商標)660R、CF(登録商標)790、およびCF(登録商標)800である。いくつかの実施形態では、染料はIRDye800CWである。いくつかの実施形態では、染料はVivotag680XLである。いくつかの実施形態では、染料はIRDye800CWであり、DARは0.10~1.00である。いくつかの実施形態では、染料はVivotag680XLであり、DARは1~2である。いくつかの実施形態では、染料は、IRDye800CWまたはVivotag680XLであり、実施例13に記載の方法に基づいてSE-HPLCにより測定される単量体純度は、>90、95、96、または97%である。
【0231】
以下の式を有する化合物も本明細書に提供されており、
Ab-[D]
n、式中、Abは本明細書に記載される抗CD8抗体、またはその抗原結合フラグメントであり、Dは蛍光染料であり、nは1~4の整数である。いくつかの実施形態では、nは、1~2である。いくつかの実施形態では、nは1である。いくつかの実施形態では、Dは、
【化8】
またはその薬学的に許容される塩である。
【実施例】
【0232】
VI.実施例
本開示のある特定の実施形態は、以下の非限定的な実施例によって例証される。
【0233】
実施例1:CD8に対するヒト抗体の生成
CD8α DNAおよび/またはCD8β DNAを含む免疫原を使用して、CD8に対する抗体を生成することができる。同様に、CD8αタンパク質および/またはCD8βタンパク質を含む免疫原を使用して、CD8に対する抗体を生成することができる。ある特定の実施形態では、抗体は、完全長CD8α DNA(例えば、配列番号17)および/またはCD8β DNA(例えば、配列番号19)、完全長CD8αタンパク質(例えば、配列番号18)および/またはCD8αタンパク質(例えば、配列番号20)、またはCD8αタンパク質および/またはCD8βタンパク質のフラグメントで免疫化されたマウスから得られる。いくつかの実施形態では、抗体は、完全長CD8αおよびCD8βを含有する融合ペプチド、またはCD8αおよびCD8βの両方のフラグメントを含有する融合ペプチドで免疫化されたマウスから得られる。
【0234】
例示的抗CD8抗体は、VELOCIMMUNE(登録商標)マウス(すなわち、ヒト免疫グロブリン重鎖およびカッパ軽鎖可変領域をコードするDNAを含む遺伝子操作を受けたマウス)を、完全長CD8α DNA(配列番号17)および完全長CD8β DNA(配列番号19)で注射することによって得られた。DNA配列は、マウスにおいてCD8タンパク質の発現を引き起こし、抗体が生成されるインビボでより構造的に正確なタンパク質標的を生成し得る。抗体の免疫応答を、CD8特異的イムノアッセイによって監視した。所望の免疫応答が達成されたとき、脾細胞を収集し、マウス骨髄腫細胞と融合させて、それらの生存率を維持し、ハイブリドーマ細胞株を形成した。ハイブリドーマ細胞株をスクリーニングおよび選択して、CD8特異的抗体を産生する細胞株を識別した。この技術を用いて、抗CD8キメラ抗体(すなわち、ヒト可変ドメインとマウス定常ドメインとを有する抗体)を得た。抗体の完全ヒトバージョンは、マウス定常領域をヒト定常領域と置き換えることによって作製され得る。例示的抗体の可変領域核酸配列およびアミノ酸配列は、上記表1に提供されている。上述の方法に従って生成された例示的抗CD8抗体は、「mAb1」と表示された抗体である。
【0235】
この実施例の方法に従って生成された例示的な抗体の生物学的特性を、以下に記載した実施例において詳細に説明する。
【0236】
実施例2:表面プラズモン共鳴によって測定されるCD8への抗体結合
精製された抗CD8 mAbに結合するhCD8α.mmhの平衡解離定数(K
D値)を、リアルタイム表面プラズモン共鳴バイオセンサを用いて決定し、Sierra Sensor MASS-1を使用して、高容量アミンセンサ表面を、ポリクローナルヤギ抗マウスFc抗体(GE、#BR-1008-38)とのアミンカップリングにより誘導体化して、精製された抗CD8 mAbを捕捉した。SPR結合試験を、0.01MのHEPES(pH7.4)、0.15MのNaCl、3mMのEDTA、0.05%v/vの界面活性剤P20(HBS-ET泳動緩衝液)から構成される緩衝液中で実施した。HBS-ET泳動緩衝液中で調製されたC末端myc-myc-ポリヒスチジンタグ(hCD8α.mmh、REGN3940)を有するhCD8αの異なる濃度(300nM~3.7nM、3倍希釈物)を、50μL/分の流量で、抗CD8 mAbを捕捉した表面上に注入した。hCD8α.mmhの捕捉されたモノクローナル抗体への結合を4分間監視し、HBS-ET泳動緩衝液中のhCD8α.mmhの解離を10分間監視した。結合動力学的実験を、25℃で実施した。Scrubber 2.0c曲線適合ソフトウェアを用いてリアルタイムセンサーグラムを1:1結合モデルへフィッティングすることによって、動力学的会合(k
a)および解離(k
d)速度定数を決定した。結合解離平衡定数(K
D)および解離半減期(t1/2)を、動力学的速度定数から以下のように計算した:
【数1】
【0237】
25℃で精製された抗CD8モノクローナル抗体へのhCD8α.mmhの結合の結合動態パラメータを表2に示す。
【表2】
【0238】
実施例3:FACS分析による細胞結合
CD8抗体またはアイソタイプ対照抗体の一次ヒトCD8陽性T細胞およびカニクイザルT細胞への結合を評価するために、フローサイトメトリーを実施した。
【0239】
ヒトT細胞およびサルT細胞に結合するCD8抗体の特性評価
PBMCを、ヒト白血球パックまたはカニクイザルの全血から単離した。続いて、CD8陽性T細胞を、ヒトPBMCから、およびカニクイザルPBMCから単離し、CD4陽性およびCD8陽性のいずれかであるT細胞を単離した。
【0240】
a)ヒト白血球パックからのヒトCD8陽性T細胞の単離:
mAb1の結合を試験するために、ヒトCD8陽性T細胞を、1人の健常ドナーからの末梢血の白血球パックから単離した。ヒト白血球パックは、NY血液センターから得られた。PBMCの単離を、50mlのSepMate(商標)管を使用して、製造業者の推奨されるプロトコルに従って、密度勾配遠心分離によって達成した。簡潔に述べると、15mlのFicoll-Paque PLUSを50mlのSepMate(商標)管に層状に置き、その後、PBSで1:2で希釈した30mlの白血球を添加した。次のステップを、SepMate商標の製造業者のプロトコルに従って行った。PBMC単離後、Miltenyi BiotecからのヒトCD8マイクロビーズキットを、製造業者のプロトコルに従ってを使用して、CD8陽性T細胞を濃縮した。細胞を、ヒト一次培養培地(10%のウシ胎児血清および0.01mMのベータ-メルカプトエタノールを補充したX-Vivo15培地)中で、ヒトT-アクチベータCD3/CD28 Dynabeads(登録商標)と共にインキュベートすることによって、CD8陽性T細胞を増殖させた。組換えヒトIL-2(50IU/ml)を、CD3/CD28 Dynabeadとのインキュベーションから72時間後に、培養基に補充した。フローサイトメトリー分析に必要な細胞数まで細胞を増殖させたとき、Dynabeadを磁気分離によって除去し、細胞を、CD8抗体またはアイソタイプ対照の結合を決定するために、直ちに使用した。
【0241】
b)カニクイザルT細胞の単離
抗体結合分析用に、サルT細胞を単離するために、BioreclamationIVTからのカニクイザル全血を使用した。SepMate(商標)15管および密度勾配遠心分離を、製造業者のプロトコルに従って使用して、PBMCを単離した。その後、非ヒト霊長類用のPan T-isolationキット(Miltenyi Biotech)を、製造業者の推奨プロトコルに従って使用して、T細胞を濃縮した。次いで、サル一次培養培地(10%のウシ胎児血清および0.01mMのベータ-メルカプトエタノールを補充したX-Vivo15培地)中で、非ヒト霊長類用のT細胞活性化/増殖キット(Miltenyi Biotech)を、使用して、T細胞を活性化させ増殖させた。72時間語、組換えヒトIL-2(100IU/ml)を、一次培養培地に補充し、T細胞を1週間増殖させた。T細胞の活性化および増殖に使用された磁気ビーズを、細胞をCD8またはアイソタイプ対照抗体で染色する直前に、磁気的に除去した。
【0242】
c)ヒトCD8陽性T細胞およびカニクイザルT細胞に結合するmAb1抗体のフローサイトメトリー分析。
mAb1およびアイソタイプ対照抗体を、200nMの濃度から始まる、ヒトCD8陽性T細胞には8点滴定で、またはカニクイザルT細胞には11点滴定でのいずれかにおいて、染色緩衝液(2%のFBSを含有するPBS)中で4倍連続希釈した。一次抗体を含まない、染色緩衝液のみの試料も対照として含まれた。抗体滴定物を、V底マイクロプレートに50ulウェルで播種した。一次ヒトおよびカ二ガニカルサルT細胞を、PBS中で1:1000に希釈されたLIVE/DEAD(商標)Fixable Violet
Dead Cell染色(Invitrogen)を用いて15分間染色した。細胞を2回洗浄し、2%のFBSを含有するPBS中で再懸濁した。CD4+サルT細胞を取り除くために、カニクイザルCD4+T細胞と反応するBD BiosciencesからのCD4細胞を、サルT細胞と氷上で30分間インキュベートし、続いて染色緩衝液で1回洗浄した。染色緩衝液中のヒトCD8陽性およびサルT細胞は、約150,000個のT細胞を含有する細胞懸濁液50ulが、滴定抗体を含有する96ウェルV底マイクロプレートのウェルに添加されるように播種した。従って、抗体を2倍希釈し、それにより、最終濃度は、ヒトCD8陽性T細胞とインキュベートした抗体では100nM~24pMの範囲であって、またはサルT細胞とインキュベートした抗体では100nM~0.10pMの範囲であった。細胞を、氷上で30分間一次抗体とインキュベートし、染色緩衝液(2%のFBSで補充されたPBS)で二回洗浄し、二次アロフィコシアニン(APC)ヤギ抗マウスIgG抗体を、2μg/mLの濃度ですべてのウェルに添加し、氷上で30分間インキュベートした。次いで、試料を染色緩衝液で1回洗浄した、その後、染色緩衝液で1:1で希釈されたBD Cytofixに固定させた。固定緩衝液を除去した後、細胞を染色緩衝液中に再懸濁し、濾過し、その後、ベックマン・コールターCytoflexフローサイトメトリー測定器上で分析した。試料をFlowJo10ソフトウェアで分析し、その結果、抗体結合に対して生存可能なCD8陽性の単一細胞のみを評価した。APCの幾何学的MFIを決定し、抗体濃度に対してプロットし、GraphPad Prism(商標)において4パラメータロジスティック方程式を用いて、100nMの濃度から始まる、ヒトCD8陽性T細胞には8データ点に基づいて、またはカニクイザルT細胞には12データ点に基づいて、EC50値を決定した。
【0243】
結果
ヒトCD8陽性T細胞およびカニクイザルT細胞に結合するmAb1抗体のフローサイトメトリー分析。
mAb1のヒトおよびサルCD8に結合する能力を、フローサイトメトリーにより評価した(
図1)。これらの実験では、無関係なアイソタイプと一致した抗体を、陰性対照として使用した。mAb1の用量依存的結合を、ヒトおよびサルCD8陽性T細胞の両方で観察した。mAb1は、25nMにおいて、アイソタイプ対照抗体と比較して、MFIのおおよそ2,778倍の増加を伴いヒトCD8陽性T細胞に対して0.37nMのEC
50値を示した。mAb1は、0.33nMのEC
50値でカニクイザルT細胞と結合し、25nMにおいて、アイソタイプ対照と比較してMFIのおよそ1,475倍の増加を示した。表3を参照されたい。アイソタイプ対照は、ヒトまたはサルT細胞のいずれかに対しても用量依存的結合を示さなかった。これらの結果は、mAb1が、ヒトおよびサルのCD8と交差反応し、両方の種のCD8に類似のEC
50で結合することを示している。
【数2】
【表3】
【0244】
実施例4:mAb1の存在下での活性化T細胞によって変更されたIFNγ産生
T細胞は、T細胞受容体(TCR)が標的細胞上のMHC分子によって提示される外来抗原を特異的に認識するときに活性化される。この相互作用は、相互作用する標的細胞上の、MHCIIまたはMHCIの非可変領域にそれぞれ結合するT細胞上の共受容体(CD4およびCD8など)の存在によって強化され得る。さらに、これらの共受容体は、チロシンタンパク質キナーゼLckとのそれらの細胞質ドメインとの会合を通してT細胞活性を調節するのに直接的な役割を有する。共受容体とMHC分子との間の相互作用を妨害することは、T細胞活性に影響を与える可能性がある。CD8特異的抗体がT細胞活性を変化させるかどうかを識別するために、混合リンパ球反応(MLR)アッセイを採用した。MLRアッセイは、インビトロのT細胞を活性化する生理学的に妥当な手段である。一方向性MLRでは、1つの個体からの白血球を、別の遺伝子学的に異なる個体の増殖阻止白血球と共培養する。同種の決定因子の不適合性は、T細胞活性化につながり、これはサイトカインの産生および/または増殖によって評価され得る。サイトカインIFNγおよびIL-2、ならびに増殖は、一般に、CD4+T細胞活性のための読み出しとして使用される。しかしながら、CD8陽性エフェクターT細胞活性は、IFNγのそれらの産生によって最良に反映されるが、IL-2および増殖はバイスタンダー効果の結果であり得、活性化CD8陽性T細胞の割合に直接関連していないことが観察されている(Anthony et al.2012-Dissecting the T Cell Response:Proliferation Assays vs.Cytokine Signatures by ELISPOT-Cells,1,127-140)。
【0245】
ヒトCD8陽性T細胞のMLRアッセイ:
PBMCをヒト白血球パックから単離し、その後、陰性単離によって処理し、によって加工して、非付着のCD8陽性T細胞を得た。CD8陽性T細胞を使用して一方向性MLRアッセイを実施し、mAb1が、IFNγ産生によって示されるT細胞活性に影響を及ぼすかどうかを評価した。
【0246】
ヒト白血球パックからのPBMCおよびヒトCD8陽性T細胞の単離:
ヒトPBMCを、NY血液センターから得られた健康なドナーからの末梢血の4つの白血球パックから単離した。PBMCの単離を、50mlのSepMate(商標)管を使用して、製造業者の推奨されるプロトコルに従って、密度勾配遠心分離によって達成した。簡潔に述べると、15mlのFicoll-Paque PLUSを50mlのSepMate(商標)管に層状に置き、その後、PBSで1:2で希釈した30mlの白血球を添加した。次のステップを、SepMate(商標)の製造業者のプロトコルに従って行った。単離されたPBMCの一部(>300×10^6)を、10%のDMSOを含有するFBS中で、バイアル当たり5000万個の細胞の濃度で凍結させた。PBMC単離後、Miltenyi BiotecからのヒトCD8 T細胞単離キットを、製造業者のプロトコルに従ってを使用して、CD8陽性T細胞を濃縮した。続いて、単離されたCD8陽性T細胞を、10%のDMSOを含有するFBS中で、バイアル当たり5000万個の細胞の濃度で凍結させた。PBMCおよびCD8陽性T細胞を、ベンゾナーゼヌクレアーゼを含有する、1次培養培地(10%のウシ胎児血清および0.01mMのベータ-メルカプトエタノールを補充したX-Vivo15培地)において、500Uのベンゾナーゼヌクレアーゼを含有する一次培養培地10ml当たり5000万個の濃度で、MLRアッセイセットアップの当日に解凍した。
【0247】
MLRアッセイセットアップ
一次細胞培養培地(125ul/ウェル)を、丸底マイクロタイタープレートの各ウェルに播種した。mAb1およびアイソタイプ対照の、400nMの濃度で始まる、3点の10倍連続希釈を、一次培養培地中で行った。これから、25ul抗体を、丸底マイクロプレートのウェルに三通りで播種した。抗体は、各ウェルの全容量の8分の1であり、最終抗体濃度50nM、5nM、および0.5nMにした。抗体を含まず、一次培養培地のみのウェルも、対照として含めた。同じ3人のドナーからの陰性単離されたCD8陽性T細胞およびこれらの同じ3人のドナーからのPBMC、並びについあのドナーをMLRアッセイで使用した。PBMCを、12×10^6細胞/mlの濃度で一次刺激培地中で50ug/mLまで希釈したマイトマイシンCで処理した。37℃/5%のCO2で1時間のインキュベーション後に、PBMCを50mlの円錐形管に集めて、一次細胞培養培地で合計3回洗浄した。これらの細胞を一次培養培地中の12×10^6細胞/mlの最終濃度に再懸濁し、25ulを丸底マイクロタイタープレートのウェルに添加し、ウェル当たり300,000個のPBMCの最終濃度を得た。さらに、PBMCを含まない、培地およびT細胞のみのウェルもまた、対照して含まれ、T細胞単独でIFNγを産生することができるかどうかを決定した。T細胞を、一次培養培地中で7×10^6細胞/mlの濃度に調製し、丸底マイクロタイタープレートのウェルに播種して、これにより、各ウェルにおけるT細胞の最終濃度は、175,000であった。PBMCの単独では、IFNγ産生に寄与しないことを確認するために、T細胞を含まない、培地のみのウェルもまた、対照としての役割を果たすために含まれた。1人のドナーのみのT細胞および1人のドナーのマイトマイシンC処置されたPBMCが、各ウェルに含まれた。3人のドナーのT細胞の各々は、それ自体のまたは異なるドナーのPBMCとペアリングした。37℃/5%のCO2での72時間のインキュベーション後に、マイクロタイタープレートを遠心分離して細胞をペレット化して、20ulの培地上清を収集した。収集した上清からの5ulを、製造業者のプロトコルに従ってヒトIFNγAlphaLISAアッセイで試験した。測定値を、マルチラベルプレートリーダーEnvision(PerkinElmer)上で取得した。生のRLU値をGraphPad Prism(商標)の棒グラフにプロットし、抗体を含有するウェルにおけるIFNγ産生量を、PBMCおよびT細胞のみを含有するウェルと比較し、IFNγ産生の阻害率として計算した。
【0248】
結果
mAB1がCD8 T細胞活性に影響を与える能力を、一方向性MLRにおけるIFNγ産生により測定した(
図2)。これらの実験では、無関係なアイソタイプと一致した抗体を、対照として使用した。2つの異なるT細胞/PBMCペアについての結果および代表的画像は、mAb1が、用量依存的にIFNγ産生を減少させることができることを示している。この阻害の程度は、1人のドナー/PBMCペア(MLR反応1)が、IFNγの、10%の阻害を、5nMのmAb1処置において示し、一方別のドナー/PBMCペア(MLR反応2)が、IFNγの>50%の阻害を示すために、ドナー依存性であるように見える。両方の反応では、アイソタイプ対照は、5nMで、IFNγ産生に及ぼす最小の影響を有した。表4を参照されたい。
IFNγ阻害率の計算:
【数3】
【表4】
【0249】
実施例5:mAb1の存在下での変更されたT細胞活性
T細胞は、T細胞受容体(TCR)が、抗原提示細胞(APC)上で、主要組織適合性複合体(MHC)分子(ヒト白血球抗原(HLA)としても知られる)によって提示された外来性抗原を特異的に認識するときに活性化される。この相互作用は、相互作用するAPC上の、MHCIIまたはMHCIの非可変領域にそれぞれ結合するT細胞上の共受容体(CD4およびCD8など)の存在によって強化され得る。さらに、これらの共受容体は、チロシンタンパク質キナーゼLckとのそれらの細胞質ドメインとの会合を通してT細胞活性を調節するのに直接的な役割を有する(Goldrath et al.,Selecting and maintaining a diverse T cell
repertoire,Nature 402:255-262,1999;Denkberg et al.Critical Role for CD8 in Binding of MHC Tetramers to TCR:CD8 Antibodies Block Specific Binding of Human Tumor-Specific MHC-Peptide Tetramers to TCR,The Journal of Immunology,2001,167:270-276;Cantrell et al.,T cell Antigen Receptor Signal Transduction,Immunology,2002,105.4:369-374;およびWang et al.2009)。
【0250】
CD8分子は、免疫系の細胞のサブセット表面上のホモ二量体(CD8αα)またはヘテロ二量体(CD8αβ)として存在する。TCRαβ T細胞では、CD8αβヘテロ二量体形態が発現される。共受容体とMHC分子との間の相互作用を妨害することは、T細胞活性に影響を与える可能性がある。
【0251】
CD8特異的抗体がT細胞活性を変化させるかどうかを識別するために、T細胞/APCベースのバイオアッセイを採用した。
【0252】
レポーターT細胞の改変:
TCRシグナル伝達事象は、アクチベータ-タンパク質1(AP-1)、活性化T細胞の核因子(NFAT)または活性化B細胞の核因子カッパ軽鎖-エンハンサー(NFκB)などの様々な転写因子によって駆動されるレポーター遺伝子によって監視され得る(Shapiro et al.,Cutting Edge:Nuclear Factor of Activated T Cells and AP-1 Are Insufficient for IL-2 Promoter Activation:Requirement for CD28 Up-Regulation of RE/AP,The Journal of Immunology,1998,161(12):6455-6458)。
【0253】
ヒトT細胞クローン、JRT3.T3.5を、転写因子AP-1の制御下で、レポーター遺伝子、ホタルルシフェラーゼを発現するように改変した。抗生物質耐性細胞を、ヒトCD28、(NP_006130.1)、1G4 TCRアルファベータサブユニット(Chen et al.2000)、ならびにヒトCD8アルファおよびベータサブユニット(アルファ受託番号NP_001759.3およびベータ受託番号NP_004922.1)を用いた形質転換によって、さらに操作した。.単一のクローンを生成し(JRT3.T3/AP1-Luc/CD28/CD8AB/1G4ABクローン18)、T細胞/APCレポーターバイオアッセイ実験で使用した。確立されたT細胞のレポーター株を、100ug/mLのハイグロマイシン+500ug/mLのG418+1ug/mLのピューロマイシンを補充したRPMI+10%のFBS+ペニシリン/ストレプトマイシン/グルタミン(P/S/G)中に維持した。
【0254】
APCの改変:
マウス線維芽細胞3T3細胞株をHLA-A*02対立遺伝子(受託番号P01892-1)およびヒトβ2-ミクログロブリン(hβ2M;受託番号NP_004039.1)と共に、NY-ESO-1 157-165、癌-精巣抗原NY-ESO-1に由来するHLA-A2*02拘束性ペプチド(受託番号NP_001318.1)を安定して過剰発現するように改変した。
【0255】
確立されたAPC株を、100ug/mLのハイグロマイシン+500ug/mLのG418+1ug/mLのピューロマイシンを補充したDME+10%のBCS+P/S/G中に維持した。
【0256】
T細胞/APCの刺激:
開発されたバイオアッセイにおいて、改変されたAPC上のHLA-A2/NYESO1(157-165)MHCI/ペプチド複合体は、1G4 TCRに結合し、かつこれを刺激し(Robbins et al.,Single and Dual Amino Acid Substitutions in TCR CDRs Can Enhance Antigen-Specific T Cell Functions,J.Immunol.2008;180(9):6116-6131)、改変されたレポー
ターT細胞株においてAP-1の転写活性の増加をもたらす。AP-1は、次に、アッセイの読み出しとして使用される、ルシフェラーゼレポーター遺伝子の転写を活性化する。このバイオアッセイでは、CD8モノクローナル抗体を試験して、それらの遮断活性を評価した。
【0257】
ルシフェラーゼアッセイのセットアップ:
10%のFBSおよびP/S/Gで補充されたRPMI1640をアッセイ培地として用いて、細胞懸濁液および抗体希釈物を調製して、実験当日に抗CD8抗体のスクリーニングを実施した。
【0258】
実験前日、改変されたレポーターT細胞を、5×10^5細胞/mLで選択培地中で培養した。抗CD8モノクローナル抗体およびアイソタイプと一致した陰性対照の10点の1:3連続希釈物を調製した。モノクローナル抗体の希釈は、15pM~100nMの範囲であった。最後の希釈点は、抗体を含まなかった。一晩培養されたレポーターT細胞およびAPC細胞を、それぞれ2×10^6/mL、および4×10^5/mLでアッセイ培地中で再懸濁した。試薬を96ウェル白色平坦な底部プレートに、次の順序で添加した:モノクローナル抗体の連続希釈物を対応するウェルにピペッティングし、続いて1×10^4細胞/ウェルのAPC細胞を添加した。プレートを、室温で15~30分間インキュベートした。次いで、5×10^4個のレポーターT細胞をAPCの上部に添加し、試料を37℃/5%のCO2で、さらに4~6時間インキュベートし、その後100uLのONE-Glo(商標)(Promega)試薬を添加し、AP1-Luc活性を検出した。放射された光を、マルチラベルプレートリーダーEnvision(PerkinElmer)上で発光量(relative light unit(RLU))を捕捉した。すべての段階希釈物を、二通りで試験した。
【0259】
CD8モノクローナル抗体のEC50値を、GraphPadソフトウェアを使用して、10点用量反応曲線にわたる4パラメータロジスティック方程式から決定した。バイオアッセイにおけるT細胞応答の減少率を以下に示すように計算した:
減少率=100%-[100nMでの平均RLU mAb×100/0nMでの平均RLU]
【0260】
結果
表5および
図3は、mAb1および市販のクローンRPA-T8が、それぞれ、1.2nMおよび161pMのIC
50で、改変されたT細胞におけるルシフェラーゼ活性を低下させることを示している。アイソタイプ1およびアイソタイプ2は、予想される用量依存的阻害を示していない。100nMでは、mAb1は、T細胞活性を約89.7%低下させ、一方でクローンRPA-T8は、ブ97.9%遮断する。クローンRPA-T8と比べると、mAb1は、CD8/MHCIの相互作用をより弱く遮断する。両方の抗体は、BiacoreおよびELISA実験において、ヒトCD8αサブユニットに結合することが示された。
【表5】
【0261】
実施例6:Raji/PBMC異種移植片および臨床試料におけるCD8のLC-MS定量化
凍結組織試料(Raji/PBMC腫瘍、マウス脾臓、および黒色腫組織)を、プロテアーゼ阻害剤を含む1×RIPA溶解緩衝液(Thermo Fisher Scientific)中で溶解した。組織を小片に切断し、密着したダウンス型ホモジナイザー中で1mLの溶解緩衝液で均質化した。溶解物を、超音波処理を10分ごとに30秒間行いながら、氷上で30分間インキュベートし、完全なタンパク質抽出物を得た。溶解物を、14,000gで10分間遠心分離した。タンパク質濃度をBCAアッセイにより測定した。各試料を1mg/mLに希釈し、14,000gで10分間遠心分離し、アリコートで-80℃にて保存した。
【0262】
100μLのビオチニル化抗CD8α結合タンパク質(2μg/mL)をストレプトアビジンコート96ウェルプレート(Thermo Fisher Scientific)の各ウェルに添加した。次いで、プレートを室温で2時間インキュベートし、その後、PBST(pH7.4、0.05%のTween-20)で3回洗浄した。マウスの脾臓溶解物を代替マトリクスとして使用して、CD8の定量化のための標準曲線を生成した。組換えCD8α.mmhを、0.39~100ng/mgのタンパク質(1:2連続希釈物)の範囲の最終濃度で、100μgのマウス脾臓溶解物の各々にスパイクした。100μLの試験試料を各ウェルに適用し、R.T.で2時間インキュベートした。次いで、各ウェルを、200μLのPBSTで3回、200μLのddH2Oで1回洗浄した。捕捉されたCD8を、100μLの溶出緩衝液(50%のACN中3%のギ酸)で溶出し、新しい96ウェルプレートに移した後に、完全に乾燥させた。
【0263】
各試料を、10μLの8M尿素/TCEP緩衝液中で、37℃で1時間変性させた。CD8αからのシグネチャーペプチド(AAEGLDTQR)を選択的に監視し、対応する重同位体標識ペプチド(Arg-13C6
15N4/Lys-13C6
15N2を有する同じAA配列)を内部標準として各試料にスパイクした。標準および試験試料を、5μMのIAAで、R.T.にて30分間アルキル化し、Lys-C(1:100w/w)で4時間消化し、次いでトリプシン(1:20w/w)で37℃にて一晩消化した。各試料に10%のギ酸を添加することによって、消化を停止させた。
【0264】
各処理された試料(15μL)を予め平衡化されたナノC18トラップカラムに注入し、イージーナノC18分離カラムによって分離し、その後、Q Exactive plus質量分析計を使用して、並列反応モニタリング(PRM)分析を行った。各タンパク質の較正曲線を、L/Hピーク面積比をスパイクインペプチドの濃度に対してプロットすることによって確立した。各組織試料中の多数の内因性CD8αを、較正曲線に基づいて計算した。CD8α.mmh参照基準の最も低い濃度(0.96ng/mgの内因性CD8αと等価)は、アッセイのダイナミックレンジ内であって、アッセイのLLOQ(定量下限)として定義された。
【0265】
結果
CD8α発現は、RBMC/Raji注入したマウスからの5個の腫瘍および脾臓、Rajiのみを注入したマウスの2個の腫瘍および脾臓、10個の黒色腫臨床試料、ならびに5個の黒色腫の正常な隣接組織(NAT)で分析した。組織重量、タンパク質量、抽出収率、およびCD8発現を、表6に列挙した。Bmaxを、1g/mLでの腫瘍密度の見積りで、以下の方程式に基づいて計算した。
【数4】
【表6】
【0266】
実施例7:抗CD8抗体mAb1のp-SCN-Bn-DFOとのコンジュゲーション
親抗CD8抗体、mAb1(配列番号2/10のHCVR/LCVR配列ペアを有する)、およびアイソタイプ対照抗体を放射性標識を用いた免疫PET試験に好適であるように修飾するために、キレート化剤、p-SCN-bn-デフェロキサミン(DFO;Macrocylics、カタログ番号:B-705))を、これらの抗体に結合させた。
【0267】
修飾のために、10K MWCOスピンコンセントレーター(Amicon Ultra-15遠心濾過ユニット、EMD Millipore、カタログ番号:UFC901024)を用いて、mAb1を、PBS+5%のグリセロール中で約29mg/mLに濃縮した。212,400M-1cm-1のMacVector配列ベースの吸光係数、および145,654g/molの分子量を使用して、濃度を、Nanodrop 2000 UV/VIS分光計(Thermo Scientific)により決定した。濃縮抗体の5ミリグラムを、10mg/mLに、100mMのNaCO3、pH9.0(最終pHが、9.0であることを確認した)を用いて希釈した。
【0268】
別個のバイアルにおいて、DFOを、50mMのDFO濃度で、未希釈ジジメチルスルホキシド(DMSO)中で調製した。このDFO溶液を、最終溶液構成が、コンジュゲーション緩衝液、3倍のモル対モル過剰のDFOを含む2%のDMSO中で、10mg/mLのmAb1であるように、抗体溶液に1/4増分で添加した。この溶液を、さらに攪拌することなく、37℃の水浴中でインキュベートさせた。37℃で30分後、溶液を速やかにNAP-5脱塩カラム(GE Healthcare、カタログ番号17-0853-02)を通過させ、pH5.5の10mMのヒスチジンを含有する緩衝液(配合緩衝液)で予め平衡化した。最終溶液を、シリンジフィルター(Acrodisc 13mmシリンジフィルター、Pall Corporation、カタログ番号:4602)によって滅菌濾過した。
【0269】
その後、抗体濃度およびDFO対抗体比(キレート部分対抗体比)を、UV/IV分光法によって測定した。
図4を参照されたい。吸光度測定については、DFOコンジュゲート抗体を、252nm(A252)、280nm(A280)、および600nm(A600)で配合緩衝液に対して測定した。計算については、次の方程式を使用して、バックグラウンドを、各吸光度で補正した:
【数5】
【0270】
抗体濃度、コンジュゲート濃度、およびキレート部分対抗体比を、以下の方程式を用いて計算した:
抗体濃度の計算
【数6】
コンジュゲート濃度の計算
【数7】
キレート部分対抗体比の計算
【数8】
【0271】
抗体コンジュゲートを、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)を使用して、凝集について試験し、25ugの試料を、Superdex 200 Increase 10/300 GLカラム(GE Healthcare、カタログ番号28990944)上に注入し、PBS移動相(0.75mL/分)を用いて、280nmで監視した。
図5を参照されたい。抗体の完全性を、GXIIマイクロ流体電気泳動図(Caliper、チップID:P99P-0563N-03)によって評価し、製造業者の指示に従ってセットアップした。
図6を参照されたい。
【0272】
結果
UV/VIS分光法によって示されるように、mAb1はリジンを介してDFOと首尾よくコンジュゲートされた。計算されたキレート部分対抗体比は、1.0~2.0の予想される範囲内であった。SECトレースは、検出可能な低分子量種を有さない97.5%の単量体生成物を示している。この結果は、還元状態および非還元状態の両方の電気泳動図によって裏付けられる。
【表7】
【表8】
【0273】
実施例8:DFOとコンジュゲートされたモノクローナル抗体の89Zrキレート化
免疫PETインビボ試験での使用に関しては、DFOとコンジュゲートされた抗CD8抗体、mAb1-L2を、89Zrで放射性標識した。
【0274】
DFO-Ab免疫コンジュゲート溶液を、試験番号1および2の両方に対して同一の方法でキレート化する前に配合した。配合物組成を表9に列挙する。手短に言えば、DFO-Ab免疫コンジュゲート(212ug)を、先ず、1MのHEPES、pH7.2中で1.06mg/Mlにさせた。別個に、89Zr溶液を、表10に示した対応する各試験の組成を用いて調製した。在庫の89Zr-シュウ酸溶液を、3D Imagingから得た。溶液の最終放射活性を、Capintec CRC-25R線量較正器(Capintec番号502)を使用して最初に確認し、次いでDFO-Ab免疫コンジュゲート溶液と直ちに合わせて、穏やかに混合し(上下にピペッティングして)、その後、室温で45分間インキュベートした。総反応量は、1200uLであった。
【0275】
インキュベーション後、重力供給脱塩のために、pH5.4での250mMの酢酸ナトリウムで予め平衡化された脱塩カラム、PD-10(GE Healthcare、カタログ番号17-0851-01)へ混合物を移した。反応の内容物がカラム床に入った後、貫流を廃棄した。生成物を、pH5.4での250mMの酢酸ナトリウム(配合緩衝液)で溶出し、製造業者の指示に従って溶出物を収集した。ここでDFO-Ab放射免疫コンジュゲートと称される生成物の濃度をUV/VIS分光法によって測定し、方程式を使用して、適切な吸光係数および280nmでの吸収を用いて計算した:
mg/mLでの濃度=280nmでの吸収÷280nmでの吸光係数
表11を参照されたい。
【0276】
グラムで測定した最終的な質量を、表12に記録した。次いで、放射活性を、線量較正器(Capintec CRC-25R)を用いて測定し、表12に報告した。最終材料(5ug)を、Superdex 200 Increase 10/300 GLカラム(GE Healthcare、カタログ番号28990944)を、PBS移動相を0.75mL/分の流量で使用する、直列に接続されているUV280および放射性同位元素検出器(ガンマ放射)を備えたSEC-HPLC(Lablogic Radio-TLC/HPLC検出器、SCAN-RAMを備えたAgilent 1260)を用いて分析した。総タンパク質ピーク(約10~約18分)と非標識89Zrピーク(約25分)の組み込みを比較することによって、放射性トレースを、放射化学的純度(100%-非標識89Zrのパーセント)を決定するために使用した。単量体純度の割合を、高分子量(HMW)種のピーク(約10分~約15分)の単量体(約15~約18分)の組み込みを比較することによって、UV280トレースによって決定した。
【0277】
各DFO-Ab放射免疫コンジュゲートの比放射能およびタンパク質回収(%)を、以下の方程式を使用して決定した::
a.mgでのコンジュゲートの質量=mg/mLでの濃度×グラムでの溶液の質量
b.mCi/mgでの比放射能=mCiでのバイアルの活性÷mgでのコンジュゲートの質量
c.タンパク質回収=開始時のコンジュゲート質量(mg)÷mgでのコンジュゲートの質量
【0278】
最後に、概観を書き留め、表12に記録した。結果を以下の表12に統合する。
図7および
図8に示すラジオ-SEC-HPLCクロマトグラムは、少なくとも99.9%の放射化学的純度を確認している。
図9および
図10に示すUV280-HPLC SECクロマトグラムは、高い単量体生成物(>90%)を確認している。
【0279】
データは、DFO-放射免疫コンジュゲートが、両方の試験において、
89Zrで、成功裏にかつ一貫して放射性標識されたことを立証している。
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【0280】
実施例9:免疫反応性
実施例7および8に従って調製された放射性標識された抗CD8抗体の免疫反応性(IR)を、以下のように決定した。すべての緩衝溶液/すすぎ溶液を、PBSおよび10%のウシ胎児血清(Seradigm、カタログ番号1500-500)で作製した。表13は、各IRアッセイに使用される細胞数を提供する。各アッセイについて、約107個のJRT3.T3/AP1-luc/hCD28/hCD8ΑB 1G4細胞を、0.5Mlの最終容量にさせた。20ngのそれぞれのDFO-Ab放射免疫コンジュゲートを、この溶液に添加し、チューブ回転装置上で連続的に混合しながら、インキュベータ(ThermoScientific、Forma Steri-Cycle CO2)内で、37℃、5%のCO2で45分間インキュベートした。その後、細胞を1500rpmで5分間遠心分離し、「細胞ペレットA」を作製した。上清(約0.5mL)を除去し、「細胞ペレットB」と呼ばれる、未処置細胞の別のペレットに導入し、37℃、5%のCO2で、45分間、再度インキュベートさせた。細胞ペレットBをインキュベートしている間に、細胞ペレットAを、1mLの新鮮な培地で3回すすぎ、1500rpmで5分間遠心分離した。それぞれのすすぎ物を回収し、後の分析のために保存した。45分間の細胞ペレットBのインキュベーション時間後に、これを1mLの新鮮な培地で3回すすぎ、1500rpmで5分間遠心分離した。再び、分析のためにすすぎ物を回収した。
【0281】
各免疫-放射免疫コンジュゲートについての細胞ペレット、すべてのすすぎ物、および上清の放射活性を、自動ガンマカウンター(2470 Wizard2、Perkin Elmer)で計数した。IRパーセントを方程式1によって決定し、表14に記録した:
【数9】
【0282】
表14に示されるように、抗体放射免疫コンジュゲートは、コンジュゲーションおよび放射性標識後に、少なくとも55%の免疫反応性を保持していた。
【表13】
【表14】
【0283】
実施例10:hCD8を発現するマウスにおけるインビボでの放射性標識された抗CD8抗体の選択的局在化
89Zr-DFO-mAb1の投与およびPET/CT撮像
hCD8を発現する16週齢のマウスに、89Zr-DFO-mAb1を、0.5または1.5mg/kgのタンパク質用量で注射した。0.5mg/kgの用量で注射したマウスは、7μgの放射性標識されたmAb1-L2-20161115(約48μCi)および追加の8μgのDFOとコンジュゲートされていないmAb1(L1)を、最終の注入されたタンパク質用量を得るために補充として受容した。1.5mg/kgの用量で注射したマウスは、7μgの放射性標識されたmAb1-L2-20161115(約48μCi)および追加の38μgのDFOとコンジュゲートされていないmAb1(L1)を、最終の注入されたタンパク質用量を得るために補充として受容した。
【0284】
抗体局所化のPET撮像を、89Zr-DFO-mAb1の投与の6日後に評価した。Sofie Biosciences G8 PET/CTを用いて、PET/CT画像を収集した(Sofie BiosciencesおよびPerkin Elmer)。計器は、画像収集前に、89Zrの検出のために、事前較正した。エネルギー窓は、視野の中央で1.4mmの再構成された解像度で、150~650keVの範囲であった。イソフルランを使用して誘導麻酔を受けたマウスは、撮像中にイソフルランの連続的な流れ下に保持された。G8収集ソフトウェアを使用して、静的な10分の画像を収集し、その後に、事前構成された設定を使用して再構成した。画像データを、減衰およびその他のパラメータに対して補正した。CT画像をPET収集後に収集し、その後PET画像と共に位置合わせした。画像を、VivoQuant後処理ソフトウェア(inviCRO Imaging Services)を使用して作成した。
【0285】
89Zr-DFO-mAb1の生体分布:
生体分布試験のために、マウスを最終時点で(89Zr-DFO-mAb1投与から6日後)安楽死させて、心臓穿刺を介して血液を採取した。組織を切除し、計数管中に置き、秤量した。89Zrについての計数毎分(CPM)での計数データを、自動ガンマカウンター(Wizard 2470、Perkin Elmer)を使用して取得した。注入用量毎グラムのパーセント(%ID/g)を、注射材料から調製された標準を使用して、各試料について計算した。
【0286】
結果
この実験は、
89Zr-DFO-mAb1の、hCD8を発現するマウスの脾臓およびリンパ節において内因性T細胞上で発現されるヒトCD8を標的とする能力を立証した。0.5mg/kgの投与された低タンパク質用量は、1.5mg/kg(10.32±1.54%ID/g)のより高い投与タンパク質用量と比べて、放射性トレーサー注射から6日後の血液からのより速い抗原媒介クリアランス(3.57±1.50%ID/g)を立証した。低投与タンパク質用量で注射したマウスの血液からのこのより速いクリアランスは、高い投与タンパク質用量で注射されたマウスよりも二次リンパ様器官における高い取り込みに寄与し、脾臓およびリンパ節で発現されたCD8に対する抗原特異的な標的化を立証している。hCD8を発現するマウスにおける、
89Zr-DFO-mAb1の注射後6日目での生体分布からの%ID/g値を、表15に示している。hCD8を発現するマウスにおける、注射から6日後に0.5および1.5mg/kgの
89Zr-DFO-mAb1の代表的iPET画像を
図11に示す。
【表15】
【0287】
実施例11:マウスにおけるRaji/PBMC腫瘍に対する放射性標識された抗CD8抗体の選択的局在化
本実施例は、Raji細胞およびヒトPBMCで同時移植された雌NSGマウスにおけるジルコニウム-89標識されたDFO-抗CD8抗体コンジュゲートのインビボ撮像およびエクスビボ生体分布を記載している。
【0288】
腫瘍の移植および投与群の割り当て:
CD8標的化のための放射性標識された抗体の特異性を立証するために、2×106個のRaji細胞を単独で、または5×105個のヒトPBMC(ロット0160614、ReachBio Research Labs)と共に同時に、雌NSGマウス(8~10週齢、NOD.Cg-Prkdcscid II2rgtm1Wjl/SzJ;Jackson Labs)の右脇腹に移植した。腫瘍増殖を監視し、腫瘍移植から13~14日後に、マウスを、89Zr-DFO-mAb1投与に関して4つの群にランダム化した。RajiおよびRaji/hPBMC腫瘍は、89Zr-DFO-mAb1で投与されたとき、それぞれ、約335±68mm3および約371±40mm3であった。
【0289】
89Zr-DFO-mAb1の投与およびPET/CT撮像:
皮下のRajiおよびRaji/hPBMC腫瘍を担持するマウスに、0.1mg/kg用量の89Zr-DFO-mAb1(約66μCiおよび2.8μgのタンパク質)を注射した。
【0290】
抗体局所化のPET撮像を、89Zr-DFO-mAb1の投与から6日後に評価した。Sofie Biosciences G8 PET/CTを用いて、PET/CT画像を収集した(Sofie BiosciencesおよびPerkin Elmer)。計器は、画像収集前に、89Zrの検出のために、事前較正した。エネルギー窓は、視野の中央で1.4mmの再構成された解像度で、150~650keVの範囲であった。イソフルランを使用して誘導麻酔を受けたマウスは、撮像中にイソフルランの連続的な流れ下に保持された。G8収集ソフトウェアを使用して、静的な10分の画像を収集し、その後に、事前構成された設定を使用して再構成した。画像データを、減衰およびその他のパラメータに対して補正した。CT画像をPET収集後に収集し、その後PET画像と共に位置合わせした。画像を、VivoQuant後処理ソフトウェア(inviCRO Imaging Services)を使用して作成した。
【0291】
89Zr-DFO-mAb1の生体分布
生体分布試験については、89Zr-DFO-mAb1投与から6日後の最終PETスキャン後に、血液を心臓穿刺を介して採取した)。マウスを安楽死させ、次いでRajiおよびRaji/hPBMC腫瘍を他の正常組織と共に切除し、計数管に入れて計量した。89Zrについての計数毎分(CPM)での計数データを、自動ガンマカウンター(Wizard 2470、Perkin Elmer)を使用して取得した。注入用量毎グラムのパーセント(%ID/g)を、注射材料から調製された標準を使用して、各試料について計算した。
【0292】
結果
本試験は、
89Zr-DFO-mAb1のs.c.において腫瘍内ヒトリンパ球上で発現されたCD8に対する抗原特異的標的化を立証している。NSGマウスにおいて、Raji/hPBMC腫瘍(31.11±8.82の%ID/g)をRaiのみの腫瘍(6.39±0.93%ID/g)と比較した。Raji/hPBMCおよびRajiのみの腫瘍対血液比は、それぞれ3.32±0.11および0.43±0.07であった。さらに、Raji/hPBMC腫瘍と同時移植したマウスの脾臓における取り込みが増加している。
89Zr-DFO-mAb1注射から6日後のRajiおよびRaji/hPBMC腫瘍担持マウスの代表的なiPET画像(
図12)は、
89Zr-DFO-mAb1のRaji腫瘍担持マウスと比べて、Raji/hPBMC腫瘍担持マウスの腫瘍および脾臓に対するより高い標的化を立証している。
89Zr-DFO-mAb1の注射後6日目での生体分布からの%ID/g値(表16)は、iPET撮像データを確証している。
【表16】
実施例12:弱いCD8機能遮断ブロッカーMab1でのマウスの処置は、ヒト化マウスにおける急性LCMV感染のクリアランスに悪影響を及ぼさない。
【0293】
この実施例からの実験データは、以前に公開されたモデルに基づいており:リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスのアームストロング株(LCMVまたはLCMVアームのアームストロング株)によるC57BI/6マウスの感染が、急性感染を引き起こし、その治癒は、機能的CD8+CTL応答の生成に依存する(PNAS.Vol.91,pp.10854-10858;J Virol.1987 Jun;61(6):1867-74)。本実施例では、マウスを、ヒトTCR、HLA、CD4およびCD8共受容体を発現するように遺伝子操作され、これはヒト化マウスと称される。ヒト化マウスを、LCMVアームでチャレンジし(2×105ffu(フォーカス形成単位)、腹腔内注射(i.p.))、反応速度がわずかに遅延したとはいえ(対照の感染後8~10日目に対して12~21日目)、対照のC57BI/6マウスと類似した急性感染の治癒を立証した。
【0294】
この実施では、ヒト化マウスのLCMV急性感染モデルを使用して、ウイルスクリアランスに対する他とは異なる遮断活性を有する抗ヒトCD8抗体の効果を評価した。群は、A)陽性対称とみなされる、CD8 T細胞枯渇性抗体(OKT8)で、B)CD8活性の強力な遮断抗体で、C)CD8活性の弱い遮断抗体(Mab1)で、およびD)非CD8結合タンパク質の対照で処置されたマウスから構成された。BおよびCの遮断活性を、実施例5に記載された改変されたバイオアッセイを使用して評価した。
【0295】
枯渇性OKT8抗体を、100ug/用量i.p.で、感染の2日前、1日前感染から1日後に投与され、一方で他の処置条件を、0.5mg/kg i.p.の単回用量として、注射の1日前に送達させた。マウスをLCMVアーム(2×105 ffu i.p.)で感染させて、脾臓を感染から5日目、14日目、および21日目にマウスの群から採取した。標準的なプラークアッセイ法を使用して、均質化した脾臓組織からウイルス力価を評価した。
【0296】
感染後5日目に、
図13に示すように、すべての処置群はLCMVのより高い力価(>1×10
5 ffu/ml)を有しており、遺伝子改変マウスにおけるウイルス感染の適切な確立を立証している。C57Bl/6マウスのように、ヒト化マウスにおけるLCMVのクリアランスは、CD8依存性であり、なぜなら、OKT8抗ヒトCD8抗体を使用したCD8 T細胞の枯渇が、感染後の最初の月にわたるLCMV感染のクリアランスの遅延をもたらすためである。OKT8のCD8枯渇抗体で処置されたマウスは、ウイルスを除去することができず、感染後14日目および21日目の両日で高いウイルス力価(>1×10
5ffu/ml)を維持したが、一方、対照群はウイルスを検出限界(LOD 100ffu/ml)まで徐々に除去した。CD8 T細胞異能の弱いCD8遮断薬であるMab1の単回用量で処置されたマウスは、統計的差異なしに(n.s)、非結合対照と類似したウイルスのクリアランスを立証した。CD8機能を強力に遮断する抗体の単回用量によるマウスの処置は、21日目に弱い遮断薬と非結合タンパク質対照群の両方と統計的に異なった中間ウイルスクリアランス表現型を示した(p<0.05)。21日目のすべての処置群は、OKT8枯渇群とは統計的に異なっていた(p<0.01)。
図13を参照されたい。
【0297】
全体的に、このデータは、治療上関連する用量でのCD8(mAb1)に対して弱い遮断抗体が、ヒト化マウスの能力に影響を与えずにLCMV感染を除去し、したがって、T細胞機能は、陽性対照(CD8枯渇抗体)と陰性対照(非結合タンパク質対照)との両方と比較すると、損なわれていない。
【0298】
実施例13:mAb1のNIR蛍光化合物とのコンジュゲーション
抗体、mAb1のおよそ10mgを、製造業者の説明書に従って、事前調整されたNap-5カラム(GE Healthcare、カタログ番号17085302)を介して、配合緩衝液(ヒスチジンベース)から50mMの炭酸塩、pH8.4に緩衝液交換した。このプロセスを四通りで実施し、各溶出物(400μL)を収集し、合計1600μLに合わせた。合わせた溶出濃度を、UV/VIS分光法(Nanodrop 2000 UV/VIS分光計、Thermo Scientific、カタログ番号ND-2000c-US-CAN)により18.1mg/mLであると決定した。
【0299】
IRDye800CW(Li-Cor、カタログ番号929-70020)のコンジュゲーションについては、DMSO中の、10mMのIRDye800CW NHSエステルの2、4、または6倍のモル対モル過剰量のいずれかを、緩衝液交換されたmAb1の7.2mg(400μL)に導入した。ピペットによって穏やかに混合した後、暗所に放置して、反応を室温で2時間進行させた。
【0300】
シアニンベースのVivotag680XL(Perkin-Elmer、カタログ番号NEV11120)のコンジュゲーションについては、DMSO中の、10mMのVivotag680XLの2倍のモル対モル過剰量を、緩衝液交換されたmAb1の7.2mg(400μL)に導入した。ピペットによって穏やかに混合した後、暗所に放置して、反応を室温で2時間進行させた。
【0301】
各コンジュゲーション反応を、PBSプラス5%のグリセロール、pH7.4で前調節されたNap-5カラムによって緩衝液交換し、反応染料を除去した。手短に言えば、各コンジュゲーション反応について、1000μLの全溶出を分画化し、それぞれの分画をUV/VIS分光計によってタンパク質の存在についてアッセイした。高タンパク質含有量を有する分画を組み合わせた。各反応に対する最終タンパク質濃度および染料対抗体比(DAR)を、製造業者の説明書に従ってUV/VIS分光計によって決定した。結果を表17にまとめる。
【0302】
すべてのコンジュゲーション条件下で、280nmでの吸光度を監視する、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー、SE-HPLC(カラム:Superdex 200 10/300GL SECカラム、GE Lifesciences、カタログ番号28990944)でアッセイするとき、単量体純度が、95.0%以上であることを決定した。結果を表17にまとめる。抗体の完全性を、還元および非還元条件下の両方で、ドデシル硫酸ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE、Novex 4-20%のトリス-グリシンゲル、ThermoFisher Scientific、カタログ番号EC6026BOX)によってアッセイした。コンジュゲートされていない抗体と比較して、コンジュゲートの分断は観察されなかった。
【表17】
【0303】
上述の実施形態および実施例は、単に例示的および非限定的であることが意図されている。当業者は、通常の実験、特定の化合物、材料および手順の多数の同等物だけを用いることで、認識し、または確認できることになる。こうしたすべての同等物は、範囲内であるとみなされ、添付の請求項によって包含される。
【配列表】