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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-19
(45)【発行日】2025-09-30
(54)【発明の名称】めっき装置およびめっき方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 21/10 20060101AFI20250922BHJP
   C25D 21/12 20060101ALI20250922BHJP
   C25D 17/00 20060101ALI20250922BHJP
【FI】
C25D21/10 301
C25D21/12 D
C25D17/00 H
C25D17/00 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023158953
(22)【出願日】2023-09-22
(65)【公開番号】P2025050260
(43)【公開日】2025-04-04
【審査請求日】2024-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】橘 巧也
(72)【発明者】
【氏名】陸井 秀晃
(72)【発明者】
【氏名】錦内 栄史
(72)【発明者】
【氏名】絹野 敦士
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-506483(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0034165(KR,A)
【文献】特開2004-244695(JP,A)
【文献】特開2003-213487(JP,A)
【文献】国際公開第03/060200(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/141496(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0208288(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 13/00-21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の少なくとも一方主面をめっきするめっき装置であって、
めっき液を貯留する処理槽と、
前記処理槽内で、前記一方主面を上向きにした水平姿勢で前記基板を保持する保持部と、
前記保持部に保持される前記基板の前記一方主面のうち周縁部に接触するカソード電極と、
前記保持部に保持される前記基板の上方に配置され、下面が前記一方主面に対向配置されるアノード電極と、
前記アノード電極と前記一方主面とで挟まれるギャップ空間に向けて開口する吐出口が設けられ、前記ギャップ空間を満たす前記めっき液に向けて前記吐出口から液体を供給する液体供給部
を備え、
前記液体供給部は、それぞれに前記液体が通送されて互いに接続されない複数の配管と、複数の前記配管への前記液体の供給量を個別に設定する供給制御部とを有し、
複数の前記配管は、前記ギャップ空間に前記アノード電極の下面に沿って各々配設され、かつ、前記アノード電極の下面のうち中央部に沿って配設された前記配管と、それを取り囲むように配設された前記配管とを含み、
複数の前記配管それぞれの下面に前記吐出口が設けられる、めっき装置。
【請求項2】
前記中央部に沿って配設された前記配管を取り囲む前記配管と、さらにその外側を取り囲む前記配管とが設けられる、請求項1に記載のめっき装置。
【請求項3】
基板の少なくとも一方主面をめっきするめっき装置であって、
めっき液を貯留する処理槽と、
前記処理槽内で、前記一方主面を上向きにした水平姿勢で前記基板を保持する保持部と、
前記保持部に保持される前記基板の前記一方主面のうち周縁部に接触するカソード電極と、
前記保持部に保持される前記基板の上方に配置され、下面が前記一方主面に対向配置されるアノード電極と、
前記アノード電極と前記一方主面とで挟まれるギャップ空間に向けて開口する吐出口が設けられ、前記ギャップ空間を満たす前記めっき液に向けて前記吐出口から液体を供給する液体供給部と
を備え
前記液体供給部は、平面視において前記基板よりも外側で前記ギャップ空間の側方に、前記ギャップ空間を挟んで両側にそれぞれ複数のノズルが配設され、前記ノズルの各々は、前記ギャップ空間に臨む側面に前記吐出口が設けられて前記液体を吐出する、めっき装置。
【請求項4】
前記アノード電極と前記一方主面との間に電解隔膜が設けられており、前記ギャップ空間は、前記電解隔膜と前記一方主面とで挟まれる空間である、請求項1または3に記載のめっき装置。
【請求項5】
前記液体は、前記めっき液と同一または実質的に同一の組成を有する、請求項1または3に記載のめっき装置。
【請求項6】
前記液体は、形成すべきめっき皮膜を構成する金属と同種の金属イオンを含む、請求項1または3に記載のめっき装置。
【請求項7】
基板の少なくとも一方主面をめっきするめっき方法であって、
めっき液を貯留する処理槽内で、前記一方主面を上向きにした水平姿勢で前記基板を保持部により保持する工程と、
前記保持部に保持される前記基板の前記一方主面の一部にカソード電極を接触させる一方、前記基板の上方に前記一方主面に対向してアノード電極を配置する工程と、
前記アノード電極と前記カソード電極との間に電圧を印加する工程と
を備え、
前記アノード電極と前記一方主面とで挟まれるギャップ空間に、前記アノード電極の下面に沿って複数の配管を設け、該複数の配管は、前記アノード電極の下面のうち中央部に沿って配設された前記配管と、それを取り囲むように配設された前記配管とを含み、複数の前記配管それぞれの下面に吐出口が設けられ、
前記アノード電極と前記カソード電極との間に前記電圧を印加している期間の少なくとも一部において、前記配管各々の前記吐出口から、前記ギャップ空間を満たす前記めっき液に向けて液体を供給し、しかも、複数の前記配管への前記液体の供給量を個別に設定する、めっき方法。
【請求項8】
基板の少なくとも一方主面をめっきするめっき方法であって、
めっき液を貯留する処理槽内で、前記一方主面を上向きにした水平姿勢で前記基板を保持部により保持する工程と、
前記保持部に保持される前記基板の前記一方主面の一部にカソード電極を接触させる一方、前記基板の上方に前記一方主面に対向してアノード電極を配置する工程と、
前記アノード電極と前記カソード電極との間に電圧を印加する工程と
を備え、
平面視において前記基板よりも外側で前記アノード電極と前記一方主面とで挟まれるギャップ空間の側方に、前記ギャップ空間を挟んで両側にそれぞれ複数のノズルを設け、前記ノズルの各々は、前記ギャップ空間に臨む側面に吐出口が設けられて前記液体を吐出し、
前記アノード電極と前記カソード電極との間に前記電圧を印加している期間の少なくとも一部において、前記配管各々の前記吐出口から、前記ギャップ空間を満たす前記めっき液に向けて液体を供給する、めっき方法。
【請求項9】
前記液体は、前記めっき液と同一または実質的に同一の組成を有する、請求項7または8に記載のめっき方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばプリント配線基板やガラス基板等の基板の少なくとも一方主面をめっきするめっき装置およびめっき方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体基板、プリント配線基板、ガラス基板等の各種基板の表面に対し、めっきにより金属薄膜を形成する技術が広く用いられている。例えば特許文献1には、半導体基板に金属薄膜を形成するためのディップ式のめっき装置において、処理槽内に格子状に配置した配管からめっき液を吐出させることにより、処理槽内でのめっき液の均一化が図られている。これにより、めっき液組成の不均一さに起因してめっき皮膜の膜厚が不均一になることが抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-026708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では基板の大型化が進んでおり、例えば1辺が1メートルを超えるような大型基板も製造されている。このような大型基板では、特許文献1に記載のように基板を縦向きに保持して搬送することが困難であり、搬送形態は、被めっき面が上向きの水平姿勢でコンベア等を用いた平流し搬送にならざるを得ない。また、電流密度分布の偏りに起因する膜厚の不均一さを抑制するために、基板の上面全体に対向するようにアノード電極を配置する必要がある。
【0005】
このような構成では、基板とアノード電極との間のギャップ空間において、めっき反応の進行に伴ってめっき液の組成が次第に変化し、このことがめっき皮膜の均質性を損なわせる。特に基板の中央部分では、外部からのフレッシュなめっき液の供給が期待できないため、膜厚が不足したり、膜質が不均質になったりするなどの問題が生じる。しかしながら、この問題に対応することのできる技術はこれまで提案されるに至っていない。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、大型の基板とそれに対応するアノード電極とを対向させてめっき処理を行う構成においても、膜厚および膜質の均一なめっき皮膜を得ることのできるめっき装置およびめっき方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の一の態様は、基板の少なくとも一方主面をめっきするめっき装置であって、めっき液を貯留する処理槽と、前記処理槽内で、前記一方主面を上向きにした水平姿勢で前記基板を保持する保持部と、前記保持部に保持される前記基板の前記一方主面のうち周縁部に接触するカソード電極と、前記保持部に保持される前記基板の上方に配置され、下面が前記一方主面に対向配置されるアノード電極と、前記アノード電極と前記一方主面とで挟まれるギャップ空間に向けて開口する吐出口が設けられ、前記ギャップ空間を満たす前記めっき液に向けて前記吐出口から液体を供給する液体供給部とを備えている。
ここで、一例において前記液体供給部は、それぞれに前記液体が通送されて互いに接続されない複数の配管と、複数の前記配管への前記液体の供給量を個別に設定する供給制御部とを有し、複数の前記配管は、前記ギャップ空間に前記アノード電極の下面に沿って各々配設され、かつ、前記アノード電極の下面のうち中央部に沿って配設された前記配管と、それを取り囲むように配設された前記配管とを含み、複数の前記配管それぞれの下面に前記吐出口が設けられる。
また他の一例において前記液体供給部は、平面視において前記基板よりも外側で前記ギャップ空間の側方に、前記ギャップ空間を挟んで両側にそれぞれ複数のノズルが配設され、前記ノズルの各々は、前記ギャップ空間に臨む側面に前記吐出口が設けられて前記液体を吐出する。
【0008】
また、この発明の一の態様は、基板の少なくとも一方主面をめっきするめっき方法であって、めっき液を貯留する処理槽内で、前記一方主面を上向きにした水平姿勢で前記基板を保持部により保持する工程と、前記保持部に保持される前記基板の前記一方主面の一部にカソード電極を接触させる一方、前記基板の上方に前記一方主面に対向してアノード電極を配置する工程と、前記アノード電極と前記カソード電極との間に電圧を印加する工程とを備えている。
ここで、一例においては、前記アノード電極と前記一方主面とで挟まれるギャップ空間に、前記アノード電極の下面に沿って複数の配管を設け、該複数の配管は、前記アノード電極の下面のうち中央部に沿って配設された前記配管と、それを取り囲むように配設された前記配管とを含み、複数の前記配管それぞれの下面に吐出口が設けられる。そして、前記アノード電極と前記カソード電極との間に前記電圧を印加している期間の少なくとも一部において、前記配管各々の前記吐出口から、前記ギャップ空間を満たす前記めっき液に向けて液体を供給し、しかも、複数の前記配管への前記液体の供給量を個別に設定する。
また他の一例においては、平面視において前記基板よりも外側で前記アノード電極と前記一方主面とで挟まれるギャップ空間の側方に、前記ギャップ空間を挟んで両側にそれぞれ複数のノズルを設け、前記ノズルの各々は、前記ギャップ空間に臨む側面に吐出口が設けられて前記液体を吐出し、前記アノード電極と前記カソード電極との間に前記電圧を印加している期間の少なくとも一部において、前記配管各々の前記吐出口から、前記ギャップ空間を満たす前記めっき液に向けて液体を供給する。
【0009】
このように構成された発明では、アノード電極と基板とが対向することで両者の間に形成され、めっき液で満たされているギャップ空間に向けて液体が供給される。この液体はギャップ空間を満たすめっき液を撹拌する作用を有し、これによりめっき液の不均一さを低減することができる。液体としては、めっき反応に寄与する成分を含むことがより好ましい。
【0010】
特に、液体がめっき液と同一または実質的に同一の組成である場合には、ギャップ空間における液の置換が促進される。ここで、液体の組成が「実質的に同一」とは、主要な成分が共通で基本的な化学的特性が概ね同じであることを指し、各成分の含有量に多少の差異がある場合や、添加剤の有無、種類、含有量等のみが異なる場合を含む。
【0011】
また、液体がアノード電極を構成する金属と同種の金属イオンを含むものである場合には、皮膜形成に消費されることにより減少する金属イオンを補給して、めっき反応を継続的かつ安定的に行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
上記のように、本発明によれば、アノード電極と基板との間のギャップ空間に向けて液体が供給されることで、ギャップ空間を満たすめっき液の不均一性の解消が図られている。このため、大型基板とそれに対応するアノード電極とを対向させてめっき処理を行う構成においても、膜厚および膜質の均一なめっき皮膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係るめっき装置の一実施形態の概略構成を示す図である。
図2】めっき処理部の概略構成を示す図である。
図3】めっき処理部の概略構成を示す図である。
図4】チャック機構の概略構成を示す図である。
図5】アノード電極ユニットの主要部の構成を模式的に示す図である。
図6】隔離槽がめっき槽に浸漬された状態を模式的に示す図である。
図7】アノード電極ユニットにおける隔離槽の支持機構を示す外観斜視図である。
図8】隔離槽へのめっき液の給排の様子を模式的に示す図である。
図9】液体供給機構の2つの態様を模式的に示す図である。
図10】液体供給機構の第1の態様を示す図である。
図11】液体供給機構の第1の態様における配管系統を示す図である。
図12】液体供給による効果を模式的に示す図である。
図13】液体供給機構の第2の態様を示す図である。
図14】このめっき装置の電気的構成を示すブロック図である。
図15】めっき処理を示すフローチャートである。
図16】各部の動作を模式的に示す図である。
図17】アノード電極の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るめっき装置の具体的態様について、具体的な実施形態を示して説明する。
【0015】
図1は本発明に係るめっき装置の一実施形態の概略構成を示す図である。このめっき装置1は、半導体基板、プリント配線基板、ガラス基板等の各種基板S(以下、単に「基板」という)の少なくとも一方主面に、金属(例えば金)の皮膜を電解めっきにより形成する装置である。以下の説明のために、XYZ直交座標系を図1に示すように定義する。図1はめっき装置1の側面視を示す図であり、水平かつ図1紙面に垂直な方向をX方向、これと直交する水平かつ図1紙面に沿った方向をY方向とする。また、鉛直方向をZ方向とする。また、各図において、点線矢印は各部材の移動方向を表すものとする。
【0016】
めっき装置1は、複数のフレーム部材を組み合わせて構成された筐体10に、後述する各部が組み付けられた構成を有している。なお、図1および以下の各図においては、図面が煩雑になるのを避けるために、一部構成の記載を適宜省略することがある。具体的には、部品を保持するための保持機構、部品を覆うカバー、それらを筐体10に取り付けるための機構など、発明の成立に対する寄与度が比較的低く、またその構造について適宜の公知技術を適用可能であり特段の説明を要しないと考えられる構成については、図示を省略することがある。
【0017】
図1はめっき装置1の正面図である。めっき装置1には、基板SをY方向に沿って搬送する搬送部2が設けられている。搬送部2は、Y方向に沿って並べられた複数の搬送ローラー21を備えている。搬送ローラー21は、図示しない支持機構により各々がX方向を軸方向として回転自在に支持されている。図示しない駆動機構により搬送ローラー21を回転させることで、搬送部2は、基板Sを水平姿勢でY方向に搬送する。矩形の基板Sは、周囲の4辺のうち1辺を先頭にして搬送される。以下では、基板Sの搬送経路を符号P、搬送方向を符号Dtにより表す。
【0018】
めっき装置1はさらに、搬入部3、めっき処理部4、リンス処理部5、搬出部6、電源部7および制御部9を備えている。搬入部3、めっき処理部4、リンス処理部5および搬出部6は搬送部2による基板の搬送方向Dt(Y方向)に沿って、この順番で並べられている。すなわち、このめっき装置1では、基板Sは、搬送部2によりY方向に搬送されながら、上記各処理部において必要な処理を施される。
【0019】
搬入部3は、外部から搬送されてくる未処理の基板Sを受け取って一時的に保持し、必要なタイミングで該基板Sをめっき処理部4へ供給する。めっき処理部4は、本発明に係るめっき方法を実行する処理主体となるものであり、基板Sをめっき液に浸漬してめっき処理を行う。その構成および動作については後に詳しく説明する。
【0020】
リンス処理部5は、リンス槽51と、バット52と、リンス液給排部59とを備えている。リンス槽51は、基板Sを収容するのに十分なサイズを有する内部空間にリンス液を貯留可能となっている。リンス槽51のY方向側側面のうち搬送経路Pと重なる部分には開口部が設けられ、該開口部に対してシャッター51a,51bが開閉自在に設けられている。
【0021】
バット52は、リンス槽51の下方に配置され、リンス槽51からこぼれたリンス液を受ける。リンス液給排部59は、必要に応じてリンス槽51にリンス液を供給しまたリンス槽51からリンス液を排出する。リンス処理部5は、めっき処理部4でめっき液に浸漬された基板Sに対しリンス処理を施す。リンス液としては例えば水が用いられる。搬出部6は、リンス処理後の基板Sが外部の搬送装置により後処理工程へ払い出されるまでの間、基板Sを一時的に留置する。
【0022】
電源部7は、装置各部に必要な電力を供給する。制御部9は、上記のように構成された装置各部を制御し、めっき装置1に所定の処理を行わせる。制御部9のハードウェア構成としては、例えば一般的なコンピューター装置と同様のものを用いることができる。すなわち、制御部9に設けられたCPU(図9)が予め準備された制御プログラムを実行することで、後述する各種の処理を実現することができる。以下では特に説明しないが、装置各部は制御部9からの制御指令に基づいて動作する。
【0023】
めっき処理部4は、めっき槽41と、バット42,44と、チャック部40と、移動機構43と、アノード電極ユニット45と、洗浄機構48と、めっき液給排部49とを備えている。めっき槽41は、基板Sを収容するのに十分なサイズを有する内部空間にめっき液を貯留可能となっている。バット42は、めっき槽41の下方に配置され、こぼれためっき液を受ける。チャック部40は、めっき槽41の上方に配置され、めっき処理を受ける基板Sを保持する。バット44は、めっき槽41の下方のバット42に対し(-Y)側に隣接して配置されている。洗浄機構48は、適宜の洗浄液(例えば水)によりチャック部40を洗浄する。この目的のために、洗浄機構48は、バット44内に設けられた洗浄ノズル481(図2)と、洗浄ノズル481に洗浄液を供給する洗浄液給排部482とを備えている。めっき液給排部49は、必要に応じてめっき槽41にめっき液を供給しまためっき槽41からめっき液を排出する。
【0024】
図2および図3はめっき処理部の概略構成を示す図である。より具体的には、図2はめっき処理部4の主要部を(-X)方向に見た正面図に相当する図であり、図3(a)および図3(b)はめっき処理部4を(+Y)方向に見た側面図に相当する。なお、図が煩雑となるのを回避するため、図2および図3(a)においてはアノード電極ユニット45の図示を省略している。
【0025】
図1および図2に示すように、めっき槽41の(-Y)側側面および(+Y)側側面のうち搬送経路Pと重なる部分には開口部が設けられ、該開口部には開閉自在のシャッター41a,41bがそれぞれ設けられている。シャッター41a,41bの開状態では、めっき槽41の側面に設けられた開口部を介して、搬送部2により搬送経路Pを搬送される基板Sを通過させることができる。これにより、めっき槽41への未処理の基板Sの搬入およびめっき槽41からの処理済みの基板Sの搬出が可能となる。
【0026】
一方、閉状態ではめっき槽41の側面に設けられた開口部が閉塞される。このとき基板Sの搬送経路Pは遮断されるが、めっき槽41の内部には、開口部の高さを超えてめっき液を貯留することが可能となる。(-Y)側のシャッター41aの開状態でめっき槽41に基板Sが収容された後、シャッター41aが閉じられ、めっき槽41の内部空間がめっき液Lで満たされることにより、基板Sがめっき液Lに浸漬されめっき処理される。その後、めっき液が排出され(+Y)側のシャッター41bが開かれると、めっき液Lの液面は開口部の下端以下まで低下し、めっき処理後の基板Sがリンス部5へ搬出される。シャッター41a,41bの動作については、互いに独立して開閉してもよく、また一体的に開閉してもよい。
【0027】
図3(a)に示すように、搬送ローラー21の回転軸22には回転モーター23が結合されている。制御部9からの制御指令に応じ回転モーター23が回転することで搬送ローラー21が回転し、これにより基板SがY方向に搬送される。なお、一部のローラーについては駆動源が接続されない従動ローラーであってもよい。
【0028】
また図3(a)に示すように、めっき槽41に収容される基板SのX方向両端部のそれぞれに対応して、2組のチャック部40が配置されている。図1および図2では、それらのうち(+X)側の1組のみが図示されている。2組のチャック部40はYZ平面に対して対称に配置されているが、基本的な構造は同一である。すなわち、各チャック部40は、少なくとも1つのチャック機構400と、チャック機構400を支持する支持フレーム430と、支持フレーム430をY方向に移動させる移動機構43とを備えている。
【0029】
支持フレーム430は、筐体10を構成するフレーム部材のうち上部フレーム11に取り付けられた移動機構43によりY方向に移動自在に支持される。より具体的には、移動機構43は、めっき処理部4の上方で上部フレーム11に固定されY方向に延設されたガイドレール431と、ガイドレール431に係合されたスライダー432と、ガイドレール431に沿ってスライダー432をY方向に移動させる、図示しない駆動源とを備えている。これらの構成としては、適宜の直動機構、例えばリニアモーター、直動ガイド機構、チェーン駆動機構、またはベルト駆動機構等を適用可能である。例えば、このような駆動機構が予め一体化された単軸ロボットを好適に適用することができる。
【0030】
スライダー432の下端に支持フレーム430が結合され、支持フレーム430にチャック機構400が固定されている。したがって、スライダー432がガイドレール431に沿ってY方向に移動するとき、支持フレーム430およびこれに取り付けられたチャック機構400が一体的にY方向に移動する。つまり、制御部9からの制御指令に応じて移動機構43が作動しスライダー432を走行させることにより、チャック機構400はY方向に移動する。
【0031】
この実施形態では、1つの支持フレーム430に対して3組のチャック機構400がY方向に並べて取り付けられており、これらは支持フレーム430の移動に伴い、一体的にY方向に移動する。これにより、各チャック機構400は、めっき槽41の上方に位置する「めっき位置」P1と、バット44の上方に位置する「洗浄位置」P2との間をY方向に往復移動可能となっている。図2では、めっき位置P1にあるときのチャック機構400を実線により、また洗浄位置P2にあるときのチャック機構400を点線により、それぞれ示している。一方、図1では、洗浄位置P2にあるチャック機構400が実線により示されている。
【0032】
チャック機構400は基板Sを把持してめっき槽41内での基板Sの姿勢を安定的に維持するとともに、内蔵されたカソード電極を基板Sの一方主面に電気的に接触させる。そして、後述するアノード電極とカソード電極との間に直流電圧が印加されることで、当該一方主面に電解めっきによる皮膜を形成させる。ここでは基板Sの上面に皮膜が形成されるものとする。
【0033】
チャック機構400は、基板SのX方向両端部、つまり、搬送方向Dtに直交する幅方向の両端部において基板Sを把持する。そして、Y方向、つまり基板Sの搬送方向Dtに沿って複数設けられたチャック機構400により、基板SのX方向両端部ではその大部分が把持されている。チャック機構400は、基板Sを把持することでその姿勢を安定的に維持することに資するほか、Y方向に延びるカソード電極412を基板Sに接触させることで広い範囲に均一な電位を付与することができる。このため、このめっき装置1は、基板Sに対し均一性の良好なめっき皮膜を形成することが可能である。
【0034】
図4はチャック機構の概略構成を示す図である。より具体的には、図4(a)はチャック機構400の構造を模式的に示す斜視図であり、図4(b)はチャック機構400による基板Sの把持状態を示す図である。なお、以下においてチャック機構400の構造および作用について説明する際、主として基板Sの(-X)側端部を保持するチャック機構400を例示して説明を行うが、同じ構造をZ軸回りに反転させて考えることにより、基板Sの(+X)側端部を保持するチャック機構の構造および動作を理解することが可能である。また、図の視認性を高めるため、図4(a)ではチャック機構400の構成のうち一部の図示を省略している。
【0035】
チャック機構400は、互いに独立して昇降可能な上側チャック411と下側チャック421とで基板SのX方向端部を把持する。具体的には、上側チャック411および下側チャック421はそれぞれY方向を長手方向として細長く延びる平板状部材であり、上側チャック411の下面411bが基板Sの上面Saのうち(-X)側端部に当接し、下側チャック421の上面421aが基板Sの下面Sbのうち(-X)側端部に当接することで、基板Sを把持する。実際には、上側チャック411の下面411bにはカソード電極412が取り付けられており、カソード電極412が基板Sの上面Saに接触することとなる。
【0036】
カソード電極412は電源部7と電気的に接続される。また、カソード電極412の周囲を取り囲むように、弾性材料により環状に形成されたシール部材415が設けられている。上側チャック411が基板Sから離間した状態では、シール部材415の下端はカソード電極412の下面よりも下側まで延びている。
【0037】
このため、図4(b)に示すように、カソード電極412が基板Sの上面Saに接触するとき、シール部材415は弾性変形してカソード電極412の周囲を気密状態に取り囲む。したがって、基板Sがめっき液に浸漬される際にも、カソード電極412はめっき液に接触することなくドライ状態に維持される。このため、めっき液との接触に起因するカソード電極412の腐食や皮膜の形成を防止することができる。
【0038】
図4(b)に示すように、下側チャック421は、基板Sの下面Sbに下方から当接することで、高さ方向(Z方向)における基板Sの位置を規定する作用を有する。また下側チャック421は、上側チャック411に設けられたカソード電極412を基板Sに接触させるのに際してそのバックアップとしての作用をも有する。これにより、基板Sの高さ方向位置が安定的に維持され、またカソード電極412と基板上面Saとの電気的接触を確実にすることができる。
【0039】
上側チャック411の上面411aには、Z方向に延びるシャフト部材413が取り付けられており、シャフト部材413は昇降機構414により昇降自在に支持されている。上側チャック411は例えばねじを用いてシャフト部材413に固結され着脱自在(すなわち交換可能)となっている。昇降機構414は、ソレノイド、リニアモーターまたはボールねじ機構等の適宜の直動機構を有しており、シャフト部材413を昇降させる。これにより、シャフト部材413の下端に取り付けられた上側チャック411が昇降する。ここでは、上側チャック411、シャフト部材413、昇降機構414等を含んで一体的に構成されたユニットを「上側チャックユニット410」と称する。
【0040】
同様に、下側チャック421の上面421aには、Z方向に延びるシャフト部材423が取り付けられており、シャフト部材423は昇降機構424により昇降自在に支持されている。下側チャック421は例えばねじを用いてシャフト部材423に固結され着脱自在となっている。昇降機構424は、例えばソレノイド、リニアモーターまたはボールねじ機構等の適宜の直動機構を有しており、シャフト部材423を昇降させる。これにより、シャフト部材423の下端に取り付けられた下側チャック421が昇降する。ここでは、下側チャック421、シャフト部材423、昇降機構424等を含んで一体的に構成されたユニットを「下側チャックユニット420」と称する。
【0041】
上側チャックユニット410は、支持部材401に固定されている。したがって、上側チャック411は、支持部材401に対しては昇降移動のみが可能である。一方、下側チャックユニット420は、進退機構402を介して支持部材401に取り付けられている。具体的には、下側チャックユニット420が取り付けられた支持部材403が、X方向を可動方向とする進退機構402の可動部に結合されている。進退機構402は、例えばソレノイド、エアシリンダー、リニアモーターまたはボールねじ機構等の適宜の直動機構を有しており、その本体部が支持部材401に固定されている。
【0042】
このため、進退機構402の作動により、下側チャックユニット420は、図示しないストッパーにより規定される可動範囲内でX方向に移動可能となっている。したがって、下側チャック421は、支持部材401に対し、昇降機構424の作動による昇降移動と、進退機構402が昇降機構424を移動させることによるX方向の進退移動とが可能となっている。
【0043】
下側チャック421が可動範囲内で最も(+X)側まで進出した状態では、図4(b)に実線で示すように、下側チャック421の(+X)側先端部が基板Sの端面よりも(+X)側に位置し、下側チャック421の上面421aが基板Sの下面Sbを支持することができる。一方、図4(b)に点線で示すように、下側チャック421が可動範囲内で最も(-X)側まで後退した状態では、下側チャック421の(+X)側先端部は基板Sの端面よりも(-X)側に退避している。このため、下側チャック421が昇降する際に基板Sに接触することが回避される。
【0044】
チャック機構400では、上側チャック411と下側チャック421とが協働してめっき槽41内で基板Sを把持する。具体的には、めっき位置に位置決めされたチャック機構400から上側チャック411と下側チャック421とがめっき槽41内まで下降し、搬送ローラー21により支持される基板Sの高さと同じ高さで基板Sの端部を把持する。このため、めっき槽41内において基板Sは、上面が平坦な水平姿勢で保持されることになる。このときの上側チャック411および下側チャック421のZ方向位置を、以下では「下部位置」と称することとする。
【0045】
図1および図3(b)に示すように、めっき槽41内における搬送経路Pの上方には、アノード電極ユニット45が配置されている。アノード電極ユニット45は、複数の板状材に分割され、それぞれが電源部7と電気的に接続される複数のアノード電極451を備えている。また、アノード電極451は、上部が開放された箱型の隔離槽450に収容されている。
【0046】
図5はアノード電極ユニットの主要部の構成を模式的に示す図である。アノード電極451は水平方向に並べられた複数の電極板を有している。図5(a)に示す例では、3×3マトリクス状に配列された9枚の電極板451a~451iがアノード電極451を構成している。各電極板451a~451iのうち基板Sと対向する下面は、互いに同一の水平面内にある。
【0047】
アノード電極451は、電源部7に電気的に接続され電気エネルギーの供給を受ける。より具体的には、電源部7は、互いに独立して出力電流を設定可能な複数の出力部71a~71iを有しており、電極板451aに対して出力部71aが接続され、電極板451bに対して主力部71bが接続される、というように、複数の電極板と複数の出力部とが1対1に電気的に接続される。各出力部71a~71iは、例えば直流定電流源、または出力電流の上限を設定可能な直流もしくは脈流の電圧源により構成することができる。
【0048】
各出力部71a~71iの出力電流は、制御部9からの制御指令に応じて定められる。具体的には、電源部7には設定記憶部72が設けられており、設定記憶部72は、各出力部71a~71iが出力すべき電流値に関する情報を記憶している。各出力部71a~71iは、設定記憶部72に記憶された情報に基づき、所定の電流値を有する電流を出力する。設定記憶部72が記憶保存する各出力部71a~71iの電流値については、制御部9からの制御指令により、またユーザーの操作入力により、変更設定が可能である。
【0049】
隔離槽450は、アノード電極451の周囲を側方から取り囲む枠体452と、枠体452の下部を閉塞して隔離槽450の底部を形成する電解隔膜453とを備えている。枠体452は、平面視が概略矩形で上下方向に貫通しており、めっき液Lに対して耐腐食性を有する材料、例えば樹脂材料により形成される。また、電解隔膜453は、非イオン化物質を遮断する一方で金属イオンを通過させる材料により平板状またはシート状に形成されている。例えば多孔質樹脂材料、イオン交換樹脂材料等により、電解隔膜453を構成することができる。
【0050】
電解隔膜453が枠体452の下部を閉塞し底面を形成することにより、上部が開口する矩形箱型の隔離槽450が構成される。この隔離槽450の内部空間454に、一点鎖線矢印で示すようにアノード電極451が収容される。これを可能とするために、隔離槽450を構成する枠体452は、平面視においてその内壁がアノード電極451の外形サイズよりも少し大きい矩形形状となっている。また、電極材料の消耗に伴う交換作業の利便性を考えて、アノード電極451は隔離槽450に対し着脱自在であることが好ましい。
【0051】
次に説明するように、アノード電極451を収容した隔離槽450は、めっき槽41に貯留されためっき液Lに浸漬される。
【0052】
図6は隔離槽がめっき槽に浸漬された状態を模式的に示す図である。図6(a)に示すように、隔離槽450は、その底面部をなす電解隔膜453の少なくとも下面が、めっき槽41に貯留されためっき液Lに接液するように配置される。また、隔離槽450の内部空間454には、第2のめっき液L2が、アノード電極451が液中に浸漬される程度に注入される。第2のめっき液L2の組成については特に限定されないが、例えばめっき槽41に貯留されためっき液Lと同一のものとすることができる。なお、ここでいう「同一組成」は供給時点でのものであり、処理の進行に伴って組成に差異が生じてもよい。また、例えば主成分の種類が第1のめっき液と同一であるなどで実質的に同一であるが、その濃度が異なる、または添加剤の有無、種類、含有量の少なくとも1つが部分的に異なるものであってもよい。また目的に応じて、第1のめっき液とは組成が異なる液体を第2のめっき液として用いることも可能である。
【0053】
したがって、めっき槽41の内部においては、チャック機構400(上側チャック411、下側チャック421)により支持される基板Sとアノード電極451とが、めっき液L(+L2)および電解隔膜453を介して互いに対向配置されることになる。
【0054】
アノード電極451の下面と電解隔膜453の上面との間には、ゼロより大きい所定のギャップG1が設けられる。また、電解隔膜453の下面と基板Sの上面との間には、ゼロより大きい所定のギャップG2が設けられる。したがって、アノード電極451の下面と基板Sの上面との間のギャップGは、電解隔膜453の厚さtを用いて次式:
G=G1+G2+t
により表される。
【0055】
図5および図6(b)に示すように、各出力部71a~71iの一方出力端子は各電極板451a~451iに個別に接続される一方、他方出力端子は一括してカソード電極412に接続されている。そして、図4(b)に示すように、上側チャック411の下端にはカソード電極412が設けられて基板Sの上面に接触している。
【0056】
したがって、電源部7の各出力部71a~71iから予め定められた大きさの出力電流がそれぞれ出力されると、図6(b)に矢印で示すように、アノード電極451から電解隔膜453を通過して基板Sの上面に向かう電流が生じる。この電流の作用による電気化学反応が、基板Sの上面にめっき皮膜を生じさせる。
【0057】
この電気化学反応においては、基板Sの上面における電流密度分布の不均一性がめっき皮膜の品質に影響を及ぼす。すなわち、組成および膜厚の均一な皮膜を得るためには、基板Sの面内において均一な電流密度分布が得られることが望ましい。しかしながら、基板Sが絶縁体であるガラス製であること、その外形形状が矩形であること、カソード電極412との電気的接触が基板Sの周縁部に限定されること等に起因して、電流密度を均一に保つことは容易でない。本実施形態のように、基板の一方主面にアノード電極を対向させ、基板の周縁部にカソード電極を接触させる電解めっき技術においては、基板の周縁部に電流集中が生じやすい。このため、周縁部における膜厚が中央部よりも大きくなってしまう傾向がある。特に、めっき処理のタクトタイム短縮を図る場合には、電源部7から供給される電流量を大きくする必要があるが、これにより電流の偏りも大きくなる。
【0058】
この問題への対応としては例えば、基板の周縁部を遮断板で覆うことで電流集中を緩和させようとする技術がある。しかしながら、例えばディスプレイ装置用のガラス基板のように大型の基板に対しては、その周囲を覆う遮断板も大型のものが必要となり、しかも基板サイズに応じて遮断板のサイズも最適化する必要があり、これらは装置コストの上昇を招く。また、矩形基板に対して有効な遮断板のサイズおよび形状についても、これまで十分な知見があるとは言えない。
【0059】
この実施形態では、アノード電極451が複数の電極板451a~451iに分割されている。そして、それぞれの電極板451a~451iに対しては、出力電流を互いに独立して設定可能な出力部71a~71iが個別に接続されている。このため、各電極板451a~451iに供給される電流量を個別に調整することで、アノード電極451から基板Sに向けて流れる電流の密度分布を変化させることが可能である。これにより、電流の偏りを是正し電流密度を均一な分布に近づけることで、めっき皮膜の均一性を向上させることが可能となる。
【0060】
前記したように、矩形基板では周縁部で電流集中が生じやすい。このことに鑑みると、各電極板451a~451iの間では、基板Sの中央部に対向する電極板451eにおいて電流量が少なく、水平方向にこれを取り囲むように配置された他の電極板において電流量がより多くなる傾向があると言える。したがって、中央に配置された電極板451eへの電流量が他の電極板よりも多くなるような設定とすることで、電流分布をより均一なものに近づけることができると期待される。
【0061】
また、基板SのX方向両端部にカソード電極412が接触するという保持態様から、X方向の端部ではY方向の端部よりも電流が大きくなる傾向があると予想される。このことから、電極板の配置においてY方向両端部に位置する電極板451b,451hについては、X方向両端部に位置する電極板451d,451fよりも大きな電流を与えることが望ましいと言える。
【0062】
このように、各電極板451a~451iに入力する電流については、基板Sの形状や電極配置に基づいて予め定めておくことが可能である。より精度よく電流密度の均一化を図るためには、予備実験によって電流分布を計測し、その結果から電流分布の偏りを補正するように、各電極板451a~451iへ供給する電流の設定値を出力部71a~71iごとに定めておけばよい。
【0063】
基板表面付近における電流密度を均一化するという目的においては、例えば次のようにして電流設定値を最適化することができる。ここで、各電極板に与える電流値を当該電極板の下面(基板Sとの対向面)の面積(以下、「電極面積」と称する)で除した値を、「電極電流密度」と定義する。そして、この電極電流密度が基板上面Saのうち当該電極板に対向する部分における電流密度を表すと考えれば、電極電流密度が基板S上の各位置における適正な電流密度となるように、各電極板451a~451iへの出力電流値を定めればよい。このようにすると、各電極板451a~451iの電極面積が等しい場合、異なっている場合のいずれにおいても、各電極板451a~451iに対する出力電流値を適切に設定することが可能である。
【0064】
例えば上記した事例のように、電流密度が基板Sの周縁部で高く中央部で低くなる傾向がある場合には、中央部に配置された電極板451eにおいて電極電流密度が大きく、その周囲に配置された他の電極板において電極電流密度が小さくなるような設定とすることで、全体としての電流密度分布の均一化を図ることができる。なお、電極板のうち、下面の一部が平面視において基板Sより外側に位置し、基板Sと対向していない部分があるものについては、基板Sと対向する部分の面積を実効的な電極面積と考えてもよい。また、電極板の周縁部が基板Sよりも相当に大きく外側に突出しているのでなければ、実際には基板Sよりも外側に当たる部分から出力される電流も基板Sに到達し、めっき反応に寄与することができる。この場合には、電極板全体を有効な電極とみなし電極面積に算入してもよい。
【0065】
定められた設定値については、電源部7の設定記憶部72にプリセット値として予め記憶させておき、これを読み出して各出力部71a~71iを動作させることができる。ユーザーおよび制御部9は、必要に応じてこの設定を変更することができる。これにより、例えば基板Sのサイズ変更等、電流分布を変化させる必要がある場合にも対応することができる。
【0066】
なお、隔離槽450については、底面だけでなく側壁面についてもイオン通過性を有する材料により構成することも考えられる。しかしながら、側壁面を介したイオンの移動は基板の周縁部への電流集中を招く原因となり、めっき皮膜の均一性を損なわせる。基板Sの上面と対向する隔離槽の底面を介したイオン移動のみを許容するようにすることで、このような電流集中を防止することができる。
【0067】
同様の理由で、隔離槽450の底部をなす電解隔膜453の直下位置にカソード電極412が配置されていると、その部分では他より短い電流経路が形成されて、電流集中が生じる。これを回避するために、平面視において、カソード電極412は、基板上面Saのうちアノード電極451と対向する領域よりも外側、より好ましくは隔離槽450の底部よりも外側で基板Sに接触していることが好ましい。
【0068】
その意味では、枠体452をイオン通過性のない材料で構成することや、平面視における隔離槽450の外形サイズ(より厳密には、底部をなす電解隔膜453の外形サイズ)を基板Sの外形サイズより小さくしておくことも有効である。これらの構成では、電解隔膜453以外の経路でイオンが移動することが防止されるので、隔離槽自体が先行技術における遮断板と同様の機能を果たしているということもできる。図6(b)に示されるように、本実施形態ではこれらの条件が充足されている。
【0069】
このようにして実行される電解めっき処理では、電解液であるめっき液Lに対し可溶性を有する金属をアノード電極451に用いて、当該金属によるめっき皮膜を基板Sの表面に形成することが可能である。例えばガラス基板である基板Sに銅めっき皮膜を形成する目的には、めっき液L(L2)として例えば硫酸銅水溶液を、アノード電極451として例えば銅板を好適に適用可能である。
【0070】
アノード電極451とカソード電極412との間に直流電圧が印加されアノード電極451に電流が供給されることで、アノード電極451から金属材料(例えば銅)がイオン化してめっき液L2中に溶け出す。イオン化した金属は電解隔膜453およびめっき液Lを通過して基板Sの上面に付着しめっき皮膜を形成する。つまり、このめっき反応におけるアノード電極451は、めっき皮膜の形成のために消費される材料を含む、いわゆる可溶性電極である。
【0071】
この過程において、アノード電極451は次第にめっき液L(L2)中に溶け出してゆき、このとき電極材料に含まれる非可溶性の不純物がアノード電極451から液中に遊離する。このようにしてめっき液中に生じる非可溶性の残渣は、「陽極スライム」または「陽極泥」と呼ばれることがある。
【0072】
本実施形態では、被めっき面を上向きにした水平姿勢で基板Sが支持され、その上方にアノード電極451が配置されるという構造が採られている。このため、アノード電極451から遊離した不純物からなる陽極スライムは、下方に配置された基板Sに向かってめっき液中を沈降することになる。被めっき面である基板Sの上面にこのような不純物が付着すると、めっき不良を生じさせる原因となり、めっき皮膜の品質が低下する。
【0073】
この問題に対応するため、本実施形態では、アノード電極451と基板Sとを隔離層450によって隔離している。具体的には、アノード電極451の下面と基板Sの上面との間に電解隔膜453が配置され、アノード電極451の側方は枠体452によって囲まれている。そして、隔離槽450はめっき槽41内のめっき液Lに浸漬されるとともに、その内部空間454はめっき液Lと同組成のめっき液L2で満たされている。
【0074】
したがって、めっき反応に与る金属イオンに対しては、めっき液L,L2および電解隔膜453を介してアノード電極451から基板Sへ向かう経路が確保されている一方で、めっき液中の液体成分および非可溶性成分に対しては、アノード電極451と基板Sとは隔離槽450によって相互に隔離されている。このため、非可溶性成分が凝集して生成される陽極スライムは電解隔膜453により遮られて基板Sに付着することがない。
【0075】
また、箱型の隔離槽450ではその上部が開口しているため、隔離槽450に収容されるアノード電極451の上方は開放された状態となっている。したがって、隔離槽450に対するアノード電極451の取り付け/取り外し作業を容易に行うことが可能である。反応の進行に伴いアノード電極451は消耗してゆくため、定期的な交換が必要である。上記構造は、このような交換作業における利便性を高めることにも資するものである。
【0076】
そして、アノード電極451は、複数の電極板451a~451iに分割されている。そのため、交換作業については電極板ごとに行うことが可能である。このことは、交換における作業性を向上させるとともに、アノード電極451のうち必要が生じた電極板だけを交換することができるので、資源を有効活用することにもつながる。
【0077】
水平方向における各電極板451a~451iの間隔については、例えば各電極板451a~451iの下面と基板Sとの距離よりも小さく、より好ましくは、当該距離の半分以下とすることができる。電極板間の間隔が大きくなると、基板上面Saのうち、いずれの電極板とも対向しない領域において十分な電流が供給されず電流密度にムラが生じるおそれがある。電極板から流れ出す電流は液中で電極板の外縁からある程度の広がりを持つことが知られている。これに関する本願発明者の知見によれば、上記のように間隔を設定することで、このような電流ムラを抑制することが可能である。
【0078】
次に、アノード電極ユニット45における隔離槽450を支持するための機構について説明する。隔離槽450の底面は基板Sと対向配置され、かつ、隔離槽450はめっき槽41に貯留されためっき液Lに浸漬されるという構成上の制約から、隔離槽450の支持機構については隔離槽450の上方に設ける必要がある。また、めっき液L2のリフレッシュおよび電解隔膜453への陽極スライムの堆積の抑制のために、隔離槽450に貯留されるめっき液L2については定期的に入れ替えられることが望ましい。以下に説明する支持機構は、このような要求に応じたものである。
【0079】
図7はアノード電極ユニットにおける隔離槽の支持機構を示す外観斜視図である。なお、図7では、支持機構の構造を明示するために、隔離槽450の内部空間454に収容されるアノード電極451の記載を省略している。アノード電極ユニット45において、隔離槽450は支持機構460を介して筐体10に取り付けられている。支持機構460は、フレーム10に固定されためっき槽41に対し、隔離槽450を昇降移動自在に支持する。
【0080】
支持機構460は、上下方向(Z方向)に配列された支持フレーム461,462,463を備えている。これらの支持フレームは、最も下側に配置された第1の支持フレーム461が隔離槽450を支持し、その上に配置された第2の支持フレーム462が第1の支持フレーム461を支持し、さらにその上に配置された第3の支持フレーム463が第2の支持フレーム462を支持し、第3の支持フレーム463が筐体10の上部フレーム11(図1図3(a))に固定される、という関係を有している。
【0081】
支持フレーム461~463の各々は、概略矩形の外形を有し、中央部が上下方向に貫通する額縁状の構造となっている。このうち最上部にある第3の支持フレーム463には、上下方向を作動方向とする昇降ガイド機構466が4組取り付けられている。具体的には、支持フレーム463の四隅に昇降ガイド機構466のリニアブッシュ466aが設けられている。リニアブッシュ466aは上下方向に貫通する中空筒状部材であり、該中空部には可動ロッド466bが挿通される。可動ロッド466bはリニアブッシュ466aから下向きに延び、その下端は下方にある第2の支持フレーム462に結合されている。
【0082】
制御部9からの制御指令に応じて後述する昇降機構47が作動すると、可動ロッド466bが所定の可動範囲内で上下動し、これにより、可動ロッド466bの下端に結合された第2の支持フレーム462が昇降する。このとき、第2の支持フレーム462に支持される第1の支持フレーム461と、第1の支持フレーム461により支持される隔離槽450とについても同様に昇降することになる。
【0083】
同様に、第2の支持フレーム462には、上下方向を作動方向とする4組の昇降ガイド機構465が取り付けられている。具体的には、支持フレーム462の四隅に昇降ガイド機構465のブッシュ465aが設けられ、リニアブッシュ465a該中には可動ロッド465bが挿通される。可動ロッド465bはリニアブッシュ465aから下向きに延び、その下端は下方にある第1の支持フレーム461に結合されている。
【0084】
制御部9からの制御指令に応じて昇降機構47が作動すると、可動ロッド465bが所定の可動範囲内で上下動し、これにより、可動ロッド465bの下端に結合された第1の支持フレーム461が昇降する。このとき、第1の支持フレーム461に支持される隔離槽450についても同様に昇降することになる。
【0085】
このように、昇降ガイド機構465,466は、昇降機構47と協働して隔離槽450を上下方向に移動させることができる。昇降ガイド機構465,466としては、上記した筒状のリニアブッシュと可動ロッドとの組み合わせ以外にも各種の機構を適用可能である。例えばガイドレールとスライダーとを組み合わせた直動ガイド機構のように、対象物の移動を一方向に規制することのできる各種の機構を用いることができる。なお、昇降ガイド機構465,466は、次に述べる昇降ガイド機構464と同様に、ダンパー機能が設けられたものであってもよい。
【0086】
一方、第1の支持フレーム461は、隔離槽450を上下動自在、かつX軸まわりに傾斜自在に支持している。具体的には、第1の支持フレーム461には4組の昇降ガイド機構464が取り付けられており、昇降ガイド機構464のリニアブッシュ464aから下向きに可動ロッド464bが延びている。後述するように、昇降ガイド機構464はダンパー機構を有しており、これにより、隔離槽450を昇降させる際に隔離槽450に伝わる衝撃の緩和が図られている。
【0087】
また、隔離槽450を構成する枠体452の上部には、X方向に延びる板材455aとY方向に延びる板材455bとを組み合わせたフレーム455が取り付けられており、フレーム455の上部の4箇所に、ヒンジ部材455cが取り付けられている。4つの昇降ガイド機構464それぞれから延びる可動ロッド464bの下端は、それぞれ直下位置にあるヒンジ部材455cに係合されて、X軸に平行な軸まわりに回動自在に取り付けられている。このように、隔離槽450は、支持機構460を介して支持フレーム461に支持されている。
【0088】
また、4つのヒンジ部材455cのうち(-Y)側に配置された2つのヒンジ部材455c,455cの間には、適宜の支持部材で回転自在に軸支されたローラー部材455fが設けられている。ローラー部材455fは駆動機構に接続されておらず、自由回転が可能である。ローラー部材455fの作用については後で説明する。
【0089】
また、隔離槽450の周囲には、隔離槽450に対しめっき液L2の給排を行うための設備が配置されている。すなわち、隔離槽450の上方には、めっき液給排部49から送出されるめっき液を隔離槽450の内部空間454に向けて吐出するためのノズル491が設けられている。ノズル491は、適宜の固定部材を介してフレーム455に取り付けられている。
【0090】
めっき液給排部49とノズル491との間は配管492によって接続されてめっき液の供給経路が形成されており、該配管492のうち隔離槽450に近い位置にフレキシブルジョイント493が設けられている。フレキシブルジョイントは、配管の少なくとも一部がゴムなどの可撓性材料で形成された配管部材であり、主に非可撓性の管材で構成された配管系の一部に挿入されることで、当該挿入箇所で配管の撓みが許容されるようになる。例えば配管同士の接続箇所における相互の位置ずれや振動を吸収する等の目的で、フレキシブルジョイントが広く利用されている。
【0091】
後述するように、めっき液を効率よく排出するために、隔離槽450はX軸まわりに回動自在に設けられている。配管492にフレキシブルジョイント493を介挿することで、このような回動を許容しつつ、めっき液給排部49とノズル491との間にめっき液の供給経路を形成することができる。
【0092】
また、隔離槽450には、内部空間454に貯留されためっき液をめっき液給排部49へ排出するための配管も設けられている。具体的には、隔離槽450を構成する枠体452のうち、(+Y)側の側面下部に貫通孔452aが設けられ、ここに排出用の配管494が接続される。めっき液供給用の配管492と同様に、排出用の配管494にもフレキシブルジョイント495が介挿される。
【0093】
さらに、アノード電極ユニット45の上方には、筐体10のフレーム11に固定された昇降機構47が設けられている。ここでは原理説明のため、昇降機構47はワイヤーの巻き上げにより対象物を昇降させるウィンチ機構であるとする。すなわち、昇降機構47からはワイヤー471が下向きに垂らされ、ワイヤー471は各支持フレーム461~463の中央部の開口を通して隔離槽450の直上位置まで達している。ワイヤー471の下端は、フレーム455に設けられた繋止部455dに取り付けられている。フレーム455に設けられる繋止部455dは、Y方向に並ぶ2つのヒンジ部材455c、455cの中間位置よりも(-Y)側に寄った位置に配設される。
【0094】
昇降機構47は制御部9からの制御指令に応じて作動し、ワイヤー471に繋止されたフレーム455と一体的に、隔離槽450を上下方向に移動させる。このような隔離槽450の上下動については、上記以外にも各種の駆動方式の機構を用いて実現可能である。例えば、公知のボールねじ機構やエアシリンダー機構、リニアモーター機構等の直動機構、またジップチェーンアクチュエータ(登録商標)として商品化されているものを好適に適用可能である。
【0095】
図8は隔離槽へのめっき液の給排の様子を模式的に示す図である。図7では簡略化されているが、図8(a)に示すように、昇降ガイド機構464は、鉛直方向(Z方向)に延びる可動ロッド464bが挿通されるリニアブッシュ(直動ベアリング、リニアベアリング等とも称される)464a、リニアブッシュ464aが取り付けられるベース部材464c、可動ロッド464bの上端に取り付けられたプレート状のブラケット464d、および、プレート部材464dとベース部材464cとの間に設けられたダンパー機構464eを備えている。ダンパー機構464eとしては、例えば公知のショックアブソーバーを適用可能である。
【0096】
可動ロッド464bはリニアブッシュ464aに対して上下動自在に挿通されている。可動ロッド464bが上下動すると、これに伴ってブラケット464dも上下動する。ブラケット464dが下降する際、ブラケット464dがダンパー機構464eに当接すると、それ以上の下方への変位が規制される。すなわち、ダンパー機構464eは、可動ロッド464bが上下動することを許容しつつ、その可動範囲を規定し、また下降停止時の衝撃を和らげる機能を有する。
【0097】
Y方向において、昇降ガイド機構464は位置を異ならせて2組設けられる。また、各昇降ガイド機構464の可動ロッド464bの下端は、隔離槽450のフレーム455に取り付けられたヒンジ部材455cに係合されている。これにより、定常状態では隔離槽450は略水平姿勢で支持される。
【0098】
このように隔離槽450が略水平姿勢で支持された状態で、図8(a)に白抜き矢印で示すように、めっき液給排部49から配管491を通じてめっき液L2が隔離槽450に供給されてくる。めっき液L2はノズル491の下面に設けられた吐出口から隔離槽450の内部空間454に向けて吐出され、こうして隔離槽450にめっき液L2が供給される。アノード電極451がめっき液L2に浸漬された状態で、めっき処理が実行される。
【0099】
めっき処理の終了後、既存のめっき液を排出し新たなめっき液を補充することで、内部空間454内のめっき液L2をリフレッシュすることができる。ただし、隔離槽450からめっき液L2を排出するのに当たり、隔離槽450の下方に排出経路を設けることができない。というのは、隔離槽450の直下位置に基板Sが配置されるからである。
【0100】
また、隔離槽450からめっき槽41へめっき液L2を流し、めっき槽41を介してめっき液L2を排出することも考えられる。しかしながら、このようにするとめっき液L2に含まれる陽極スライムがめっき槽41に混入することになるため、めっき槽41からの排出とは独立した経路でめっき液L2を排出することが好ましい。
【0101】
同じ理由で、隔離槽450へのめっき液供給、および、後述する隔離槽450を傾けて排液を促進する処理においても、めっき液L2が隔離槽450から溢れてめっき槽41へ流入することは避ける必要がある。
【0102】
これらの要求を満たしつつ排液を行うためには、隔離槽450の側壁面に排出口を設けめっき液を側方へ排出することになるが、下面に排出口を設ける場合に比べて、排出のスムーズさが損なわれることは避けられない。そこで、この実施形態では、隔離槽450の(+Y)側側面に排出口としての貫通孔452aを設けて排出用の配管494を接続するとともに、めっき液L2の排出時には、排出口とは反対側、つまり(-Y)側で隔離槽450を持ち上げて底面を傾斜させる。こうすることで、内部空間454からのめっき液L2の排出を促進させることができる。
【0103】
具体的には、昇降機構47がワイヤー471を巻き上げることで、図8(b)に破線矢印で示すように、フレーム455を引き上げて隔離槽450の(-Y)側端部を持ち上げることができる。こうして隔離槽450が、その底面が水平面に対して傾斜する傾斜姿勢となることで、図8(b)に白抜き矢印で示すように、内部空間454に貯留されるめっき液L2は排出口となる貫通孔452aに向けて流れ込む。こうしてめっき液L2の排出が促進される。配管494に流れ込んだ廃液はめっき液給排部49により回収される。
【0104】
回動自在のヒンジ部材455cを介して接続される昇降ガイド機構464による隔離槽450の支持態様は、このような隔離槽450の傾斜を許容するものとなっている。すなわち、Y方向に位置を異ならせて配置された1対の昇降ガイド機構464,464のそれぞれにおいて、可動ロッド464bが互いに独立して上下動することで、隔離槽450が傾いた状態を実現することができる。
【0105】
また、隔離槽450に接続されるめっき液供給用の配管492および排出用の配管494には、それぞれフレキシブルジョイント493,495が介挿されている。したがって、これらの配管が接続された状態のまま、隔離槽450を傾斜させることが可能となっている。
【0106】
ここまでの説明では装置の全体構成および基本的な動作を説明するために記載を省いてきたが、このめっき装置1では、アノード電極451と基板Sとの間、より正確には隔離槽450の底面をなす電解隔膜453の下面と基板Sの上面(一方主面)Saとの間のギャップ空間に向けて液体を供給するための機構が設けられている。本実施形態では、大型の基板Sの上方にアノード電極451(より正確には、アノード電極451を収容した隔離槽450)が配置されて両者の間に狭いギャップ空間が形成され、該ギャップ空間がめっき液Lで満たされる。
【0107】
このような構成においては、ギャップ空間でめっき液Lが滞留しやすいため、めっき反応の進行に伴って組成の変化が生じることがある。めっき反応で消費される物質が補給されず、また反応で生じた副生物が排出されないからである。このことはめっき皮膜の厚さや膜質にムラを生じさせる原因となるため、ギャップ空間を満たす液体については、少なくとも通電期間中は適時リフレッシュされることが望ましい。これを可能とするために本実施形態に設けられた液体供給機構につき、以下に説明する。
【0108】
図9は液体供給機構の2つの態様を模式的に示す図である。これらはいずれも、基板Sの上方に配置される隔離槽450と基板Sとの間のギャップ空間GSに向けて液体を供給することで、ギャップ空間GSを満たすめっき液のリフレッシュを図るものである。
【0109】
図9(a)に示す第1の態様では、ギャップ空間GSに液体供給機構61が設けられる。詳しくは後述するが、液体供給機構61では、内部に液体が通送される配管611が隔離槽450の下面に沿って二次元的に配列されており、配管611の下面に液吐出ノズルとして機能する吐出口612が設けられている。すなわち、この態様では、図9(a)に白抜き矢印で示されるように、ギャップ空間GSの上部から下向きに液体が吐出される。
【0110】
一方、図9(b)に示す第2の態様では、ギャップ空間GSよりも外側、より具体的にはX方向においてギャップ空間GSを挟む両側に、液体供給機構62が設けられる。液体供給機構62では、内部に液体が通送される液吐出ノズル621がY方向に延設されている。そして、液吐出ノズル621の側面のうちギャップ空間GSに臨む側に、吐出口622が設けられている。すなわち、この態様では、図9(b)に白抜き矢印で示されるように、ギャップ空間GSの側方から横向きに液体が吐出される。
【0111】
これらの態様において液体供給機構61,62から吐出される液体は、ギャップ空間GSを満たす液体を撹拌し流動させる作用を有し、ギャップ空間GSにおけるめっき液Lの滞留を解消する効果を奏する。特に、めっき反応に寄与する物質を含む液体である場合には、より能動的な効果が期待できる。例えば吐出される液体がめっき槽41に貯留されるめっき液Lと同一組成であれば、めっき処理の実行中にはギャップ空間GSが常にフレッシュなめっき液で満たされることとなるので、めっき皮膜の厚さや膜質を均一化する上で極めて有効である。
【0112】
また、完全に同一の組成でなくても、例えば主成分の種類がめっき液Lと同一であるなどで実質的に同一と言えるが、その濃度が異なる、または添加剤の有無、種類、含有量の少なくとも1つが部分的に異なる液体が用いられてもよい。
【0113】
また例えば、めっき反応の進行とともに液中での含有量が変化する成分を含む液体を用いれば、液中で減少する当該成分を補給することが可能となる。例えば、めっき皮膜の形成によって消費される金属材料をイオンの形で液体中に含ませておけば、当該成分の減少を抑えて安定的にめっき皮膜の形成を行うことが可能になる。例えばガラス基板上に銅薄膜を形成する処理の場合には、銅イオンを少なくとも含む液体を好適に使用可能である。当然に、めっき液Lもこの要求に合致するものである。以下では、液体としてめっき液Lと同組成のものが用いられることとする。
【0114】
以下、それぞれの態様につき構造を詳しく説明するが、これらの液体供給機構61,62は、1つのめっき装置1にいずれか一方のみが設けられてもよく、また両方が設けられてもよい。2つの液体供給機構61,62が1つの装置に設けられる場合、それらは選択的に動作してもよく、また1つの処理で2つの液体供給機構61,62が動作するように構成されてもよい。
【0115】
図10は液体供給機構の第1の態様を示す図である。図10(a)は液体供給機構61を下方から見上げたときの斜視図、図10(b)はその底面図である。また、図11は液体供給機構の第1の態様における配管系統を示す図である。
【0116】
図10(a)に示すように、液体供給機構61は、隔離槽450の下面に沿って二次元的に配列された複数の配管611(611a~611j)を備えている。これらの配管611a~611jは、図示を省略する適宜の固定部材により、隔離槽450の枠体452に取り付けられている。複数の配管611a~611j同士は接続されておらず互いに独立している。このため、液体は各配管611a~611jに個別に供給される。
【0117】
具体的には、図11に示すように、各配管611a~611jはめっき液給排部49に接続され、その経路には各配管611a~611jに対応する制御バルブ613a~613jが介挿されている。制御部9からの制御指令に応じて各制御バルブ613a~613jが独立して作動することで、各配管611a~611jへの液体の供給のオンオフおよび供給量の調整を行うことができる。
【0118】
各配管611a~611jの下面には複数の吐出口612が配設されており、各配管611a~611jに供給された液体は吐出口612から下向きに吐出される。このようにして、ギャップ空間GS、中でも基板Sの上面Saに近い空間に対し液体が供給される。液体がめっき液Lと近い組成を有していれば、常にフレッシュなめっき液が供給されることになる。
【0119】
図12は液体供給による効果を模式的に示す図である。図12(a)に点線で示すように、基板Sの上方に設けられた複数の吐出口612から液体が吐出されると、矢印で示すように、基板Sの上方でめっき液の流動が生じる。これにより、ギャップ空間GSのうち特に基板Sに近い位置におけるめっき液の滞留を解消することができる。液体の組成を適宜に設定することにより、めっき反応で減少する成分の補充を行えることについては上記した通りである。
【0120】
配管611(611a~611j)はアノード電極451と基板Sとの間に配設されるため、アノード電極451から基板Sへ向かう電流の経路を遮蔽してしまうことが懸念される。この問題には以下のようにして対応することができる。このような電解めっき反応では、図12(b)に点線で示すように、アノード電極451のある1点から流れ出した電流はある程度の広がりを持って拡散しながら基板S側へ進むことがわかってきている。所定の広がり角θを適宜に設定し、基板S上の全ての位置が、アノード電極451の少なくとも1つの位置、望ましくは複数位置から見たときに上記所定の広がり角度範囲内に含まれるように、配管611の太さと、水平方向および上下方向における配置とが、設定値θに応じて定められればよい。こうすることで、配管による遮蔽の影響は回避することができる。
【0121】
また、配管611が導電体である場合、ギャップ空間GSでの電界分布に影響を及ぼすため、電流密度分布の偏りの原因となり得る。これを回避するためには、配管611は絶縁体であることが望ましい。めっき液Lに対する耐蝕性の観点からも、配管611としては耐薬品性に優れた樹脂材料が用いられることが望ましい。
【0122】
図10(b)からわかるように、配管611a~611jの配置は、中央部分に設けられた配管611i,611jの外側に、それらを取り囲むように配管611e~611hが、さらにそれらを取り囲むように配管611a~611gが最外側に、それぞれ位置するように構成されている。そして、これらの配管611a~611jへの液体の供給タイミングおよび供給量は個別に制御可能である。
【0123】
また、図10(b)に薄いグレーで示されるように、平面視において、1つの配管611に設けられた吐出口612の全てを連続的に覆うような領域を考える。ここでは、このような仮想的な領域を、当該配管から供給される液体の影響が及ぶ範囲という意味で「対応領域」と称し、配管611a~611jのそれぞれに対応する対応領域を符号Ra~Rjにより表すこととする。
【0124】
このように「対応領域」を定義するとき、1つの対応領域は、他のいずれの対応領域とも交わることなく、また他の領域によって分断されることなく定めることが可能である。逆に言えば、そのような関係となるように予め配管パターンが設定されている。このような配管パターンとすることで、次のような効果が得られる。
【0125】
すなわち、上記のように1つの配管611に複数の吐出口612が設けられた構成では、各吐出口612からの吐出量を個別に調整することはできず、吐出量の調整は配管ごとに行われる。このため、制御対象の配管からの液供給と、隣り合う別の配管からの液供給とが互いに干渉すると、ギャップ空間GS内の各位置での液体の供給量が所期のパターンにならないことがあり得る。
【0126】
上記した配管パターンでは、1つの配管、例えば配管612iにつながる吐出口612から液体が供給される領域(対応領域Ri)と、他の配管、例えば配管612eにつながる吐出口612から液体が供給される領域(対応領域Re)とが分離可能であるため、それらの間での干渉を回避することができる。これにより、各位置における液体の供給量を的確に制御することが可能になる。
【0127】
このような構成によれば、単に各配管611a~611jから一様に液体を吐出させるだけでなく、必要に応じて特定の部分への液体の供給量を増減させることが可能である。例えば基板Sの中央部分ではめっき液の滞留が最も顕著となることから、中央部分における液体の供給量を他より多くすることで、滞留を効果的に解消することが可能になる。
【0128】
またこの実施形態では、図4(b)に示したように、カソード電極412は基板Sの下面SbのうちY方向の両端部に当接している。このため、カソード電極412の近傍では電流集中が生じやすく、これによりめっき皮膜の膜厚が局所的に増大することがあり得る。この実施形態では、アノード電極451を複数に分割しそれらの電流配分を調整することでこの問題にも対応可能としている。これに代えて、またはこれに加えて、上記のようにギャップ空間GSへの液体の供給量を局所的に異ならせ、液中のイオン濃度分布を調整することによっても、同様の効果が期待できる。
【0129】
図13は液体供給機構の第2の態様を示す図である。図12(a)に示すように、この液体供給機構62では、めっき槽41内で基板SのX方向の両側に液吐出ノズル621が設けられる。この例では、X方向において基板Sを挟むように、両側それぞれに3つの液吐出ノズル621がY方向に並べられている。しかしながら、液吐出ノズル621の配設数は任意である。図9(b)に示したように、液吐出ノズル621は基板Sの上面に近い位置に配置されるから、めっき槽41に対する基板Sの出し入れの際に障害となることがあり得る。
【0130】
基板Sの搬送方向Dt(図1)はY方向であるから、基板SのX方向両端部の外側に液吐出ノズル621を設ければよい。これにより、基板Sの搬送を阻害することなく、また基板Sに近接して液吐出ノズル621を配置することが可能である。
【0131】
合計6個の液吐出ノズル621を互いに区別するため、図13(a)に示すように、それぞれ符号621a~621fを付すこととする。各液吐出ノズル621はめっき液給排部49と接続されており、その経路上には各液吐出ノズル621a~621fに対応する制御バルブ623a~623fが介挿されている。制御部9からの制御指令に応じて各制御バルブ623a~623fが独立して作動することで、各液吐出ノズル621a~621fへの液体の供給のオンオフおよび供給量の調整を行うことができる。
【0132】
ギャップ空間GSの外側からその内部に向けて液体を送り込み、特に中心部まで液体を届かせるためには、吐出される液体は比較的高速かつ大流量であることが必要となる。これを可能とするために、液吐出ノズル621は次のような構造を有している。すなわち図13(b)に示すように、液吐出ノズル621は内部にマニホールド空間624を有しており、液吐出ノズル621の側面に設けられた複数の吐出口622はそれぞれこのマニホールド空間624に連通している。
【0133】
液吐出ノズル621の側面のうち吐出口622とは反対側の面には、マニホールド空間624に連通する液体供給口625が設けられており、液体供給口625の開口面積は吐出口622の開口面積に比べて十分に大きい。また、液体供給口625は必要に応じ複数設けられる。この液体供給口625に、めっき液給排部49からの液体、具体的にはめっき液が供給される。
【0134】
比較的大開口の液体供給口625を介してマニホールド空間624に供給された液体は、より開口の小さい吐出口622から高速で水平方向に吐出されることになる。液体供給口625に十分な量の液体が供給されることで、ギャップ空間GSに向けて高速かつ大流量の液体を吐出する、という目的が達成される。
【0135】
X方向におけるギャップ空間GSの両側からギャップ空間GSに向けて液体を送り込む態様では、ギャップ空間GSの中央部分では液体の流動が起きにくいことが考えられる。複数の液吐出ノズル621a~621fそれぞれへの液体の供給タイミングおよび供給量を個別に制御することで、この問題を解消することができる。
【0136】
すなわち、各液吐出ノズル621a~621fからの液吐出タイミングや吐出量を異ならせるようにすれば、ギャップ空間GS内に複雑なめっき液の流れを生じさせることが可能である。特に、各液吐出ノズル621a~621fからの吐出量を経時的に変化させるようにすれば、より複雑な流れを生起させることができ、滞留を解消する効果が大きくなる。
【0137】
図14はこのめっき装置の電気的構成を示すブロック図である。上記のように構成されためっき装置1において、制御部9は、装置各部を制御して、めっき装置1に所定の処理を行わせる。制御部9のハードウェア構成としては、例えば一般的なコンピューター装置と同様のものを用いることができる。すなわち、制御部9としては、CPU(Central Processing Unit)91、メモリー92、ストレージ93、入力部94、表示部95、インターフェース部96等を備えたものを用いることができる。
【0138】
メモリー92は、処理の過程で生じた各種のデータを一時的に記憶する。ストレージ93は、各種データおよび制御プログラム931を長期的に記憶する。入力部94および表示部95は、ユーザーインターフェース機能を担う。インターフェース部96は、外部機器等の通信を担う。
【0139】
CPU91は、予めストレージ93に記憶されている制御プログラム931を読み出して実行し、これに基づき装置各部を制御して所定の動作を行わせることにより、後述する各種の動作を実現する。この目的のために、CPU91は、搬送部2の動作を制御する搬送制御部911、チャック部40の動作を制御するチャック制御部912、各種流体の供給源を制御してその供給および排出を司る給排制御部913、配管上のバルブを制御して流通する流体の流量を調整する流量制御部914、電源部7による電極への給電を制御する給電制御部915等の機能ブロックをソフトウェア的に実現する。これらの機能ブロックのうち少なくとも一部は、例えば専用ハードウェアとして構成されてもよい。
【0140】
なお、本願出願人が先に開示した特願2022-094449の明細書および図面には、本実施形態のめっき装置1と基本的な構成が類似するめっき装置が開示されており、装置各部の構造やその機能、装置の動作等についても詳しい記載がある。
【0141】
次に、上記のように構成されためっき装置1の動作について説明する。めっき装置1の基本的な動作の流れは概略以下の通りである。未処理の基板Sは搬入部3に搬入される。基板Sは搬入部3からめっき処理部4に搬送され、めっき処理部4は基板Sに対して電解めっき処理を実行し、その表面(上面Sa)に金属皮膜を形成する。めっき処理された基板Sはリンス処理部5でリンス処理を受け、最終的に搬出部6へ搬出される。
【0142】
図15はめっき処理を示すフローチャートである。また、図16は各部の動作を模式的に示す図である。より具体的には、図16は、時刻Tの経過に沿った各部の動作を、上から下に向かう方向を時間軸として示したものである。時刻T0において搬入部3に未処理の基板Sが与えられた後、装置各部は次のような動作を実行する。図において括弧内は各部の初期状態を表している。また、図16において、各処理部の縦線が太線で表されている部分は、基板Sが当該処理部に存在していることを意味している。
【0143】
めっき装置1の各部は、予め所定の初期状態に設定される。初期状態においては、チャック機構400はめっき槽41上方のめっき位置に位置決めされ、上側チャック411および下側チャック421はめっき槽41と干渉しない上部位置に位置決めされる。なお、搬送経路Pに沿った基板Sの搬送の障害とならない限りにおいて、上側チャック411および下側チャック421はより下方に位置決めされていてもよい。
【0144】
搬入部3では、搬入された基板Sが一時的に留置されている。めっき処理部4では、めっき槽41のシャッター41a,41bが開かれ、搬送経路Pに沿った基板Sの搬送が可能となっている。このとき、めっき槽41内には、めっき液給排部49から供給されためっき液が開口部から流出しない程度の高さまで貯留されている。また、アノード電極ユニット45では、隔離槽450が上方に退避しており、その内部空間454にめっき液は貯留されていない。リンス処理部5においても、リンス槽51のシャッター51a,51bが開かれ、搬送経路Pに沿った基板Sの搬送が可能な状態となっている。搬出部6には、この時点では基板Sは存在しない。
【0145】
時刻T1において搬送部2が基板Sの搬送を開始し、基板Sは搬送経路Pに沿って搬送方向Dt(+Y方向)に搬送され、最終的にめっき槽41まで搬送されてくる(ステップS101)。図15において破線矢印は、搬送部2による基板Sの移送を表している。
【0146】
基板Sがめっき槽41に搬入されるとシャッター41a,41bは閉じられる。めっき槽41に収容された基板Sに向けてチャック機構400の上側チャック411および下側チャック421が下降し基板Sを把持する(ステップS102)。また、アノード電極ユニット45では、隔離槽450が下降し、めっき槽41内で保持される基板Sの上面に対向配置される。なお、予め隔離槽450が下降した状態で、基板Sがめっき槽41に搬送される態様でもよい。
【0147】
この状態で、めっき液給排部49からめっき槽41にめっき液Lが供給される(ステップS103)。また、これと並行して、めっき液給排部49から隔離槽450へめっき液L2が供給される。これにより、めっき槽41中のめっき液Lに基板Sが浸漬され、隔離槽450中のめっき液L2にアノード電極451が浸漬され、かつ、隔離槽450の底面の電解隔膜453の下面がめっき槽41内のめっき液Lに接液した状態(図6(a))が実現される。
【0148】
そして、電源部7の各出力部71a等から所定の電流が出力されることで(ステップS104)、基板Sがめっき処理される。基板Sの上面SaのうちX方向の両端部に、Y方向に長く延びるカソード電極を接触させることで、基板Sの上面Saにおける電流密度のばらつきが抑えられ、均一性の良好なめっき皮膜を形成することが可能となる。
【0149】
このとき、チャック機構400と搬送ローラー21とが連動して基板Sをめっき槽41内で揺動させることで(ステップS105)、めっき皮膜の均一性をより向上させることができる。具体的には、移動機構43の作動により、チャック機構400を支持する支持フレーム430が、(+Dt)方向への移動と(-Dt)方向への移動とを交互に繰り返す。これにより、支持フレーム430に取り付けられたチャック機構400が一体的にY方向に往復移動し、チャック機構400に保持された基板Sがめっき液L内でY方向に揺動する。
【0150】
このとき、搬送ローラー21は支持フレーム430と連動する。すなわち、支持フレーム430が(+Y)方向へ移動しチャック機構400が基板Sを(+Y)方向に移動させるとき、搬送ローラー21は正転、つまり基板Sを搬送方向Dtに搬送する方向に回転する。一方、支持フレーム430が(-Y)方向へ移動しチャック機構400が基板Sを(-Y)方向に移動させるとき、搬送ローラー21は逆転、つまり基板Sを搬送方向Dtとは反対の方向(-Dt)に搬送するように回転する。
【0151】
このようにめっき液L中で基板Sを揺動させることで、めっき液Lを撹拌して液中イオン濃度の偏りを低減させ、めっき皮膜の均一性を高めることができる。めっき槽41内での基板Sの揺動は、基板Sの端部を把持するチャック機構400と、基板Sの中央部を下面側から支持する搬送ローラー21との連動によって実現される。このため、基板Sに局所的な応力が加わるのを防止し、水平姿勢を維持しつつ基板Sを揺動させることが可能となる。
【0152】
また、通電期間中の少なくとも一部、好ましくはその全体において、液体供給部61,62からの液体供給が行われる。これにより、ギャップ空間GSでのめっき液の流動がさらに促進され、また必要な成分が補給されて、めっき処理を良好に行うことができる。
【0153】
基板Sをめっき液Lに浸漬し、電極間に電流を供給しつつ基板Sを揺動させる状態を一定時間継続した後、電流供給が停止されることで(ステップS106)、めっき処理が停止される。そして、めっき槽41からはめっき液Lが、隔離槽450からはめっき液L2がそれぞれ排出される(ステップS107)。隔離槽450からの排出に際しては、支持機構460により隔離槽450が上方へ退避した状態で、昇降機構47が作動して隔離槽450の(-Y)側端部が持ち上げられる。
【0154】
そして、チャック機構400による基板Sの把持が解除され(ステップS108)、シャッター41bが開かれて、時刻T2において搬送部2は基板Sをめっき処理部4からリンス処理部5へ移送する(ステップS109)。めっき液Lの排出後に基板Sの把持を解除することで、カソード電極412がめっき液に接触するのを回避することができる。なお、アノード電極451についてはこのような制約はない。そのため、隔離槽450からの排出については、電流停止後の任意のタイミングで実行することができる。すなわち、めっき槽41からのめっき液Lの排出と同時である必要はない。
【0155】
リンス処理部5では、リンス槽51に基板Sが収容されるとシャッター51a,51bが閉じられ、リンス液給排部59からリンス液が供給されて、基板Sがリンス処理される(ステップS110)。リンス処理が所定時間行われた後、リンス液の供給が停止されシャッター51bが開かれて、時刻T3において基板Sは搬出部6に払い出される(ステップS111)。
【0156】
なお、めっき槽41からのめっき液の排出においては、槽内の液体を完全に排出することを要しない。すなわち、槽内で支持される基板Sが液体から露出し搬出可能となる程度まで液体が排出されている限りにおいて、槽内に液体が残留していることは問題ない。むしろ、液体を残留させておくことで、次の基板Sに対する処理の際に槽内を満たすのに必要な液体の量を低減させることが可能となる。このことは、液体の消費量を少なくし環境負荷を低減させることに資する。
【0157】
一方、基板Sの把持を解除した後のチャック機構400は、上側チャック411および下側チャック421に付着しためっき液を除去するための洗浄処理を受ける(ステップS112)。洗浄処理の内容は任意であるが、例えばその一例は次の通りである。すなわち、支持機構43が支持フレーム430を(-Y)方向へ移動させて、各チャック機構400を、バット44上方の洗浄位置へ位置決めする。この状態で、洗浄機構48が適宜の洗浄液供給やエア噴射により、チャック機構400、より具体的には上側チャック411および下側チャック421を洗浄する。
【0158】
めっき位置と洗浄位置との間におけるチャック機構400の移動では、図2に点線で示すように、上側チャック411および下側チャック421は、昇降機構412,422により上方に退避した状態となる。これにより、移動の際に上側チャック411および下側チャック421がめっき槽41の壁面に接触することが未然に防止されている。このときの上側チャック411および下側チャック421のZ方向位置を、以下では「上部位置」と称することとする。
【0159】
洗浄後のチャック機構400はめっき位置へ戻される(ステップS113)。こうしてチャック機構400が洗浄されることで、次の基板Sに対する処理を実行する際に、残留付着しためっき液が基板Sに付着するのを防止することができる。さらに処理すべき基板Sがある場合には、ステップS101に戻って上記処理が繰り返される。
【0160】
以上のように、この実施形態のめっき装置では、めっき処理の対象物である基板Sが、被めっき面となる一方主面Saが上向きとなる水平姿勢、いわゆるフェースアップ状態でめっき槽41内に支持される。基板Sの周縁部にカソード電極412が接触し、アノード電極451は基板Sの上面に対向配置される。
【0161】
ただし、アノード電極451と基板Sとの間は電解隔膜453により隔てられる。これにより、めっき皮膜の材料となる金属イオンについてはアノード電極451と基板Sとの間の通経路が確保される一方、非可溶性成分および液体成分についてはアノード電極451と基板Sとが隔離される。したがって、アノード電極451からの遊離物により生じる陽極スライムが基板Sに付着し、めっき皮膜の品質を低下させることが回避される。
【0162】
また、アノード電極451は複数の電極板451a~451iに分割されており、各電極板に対し、電源部7の定電流源である出力部71a~71iが個別に接続される。そして、各出力部71a~71iからの出力電流が個別に設定可能である。このため、基板Sが大型である場合でも、基板Sの面内における電流密度分布の偏りを抑制し、めっき皮膜の膜厚の均一化を図ることが可能である。
【0163】
また、隔離槽450におけるめっき液の交換に関して、隔離槽450の下面が基板Sと対向配置される都合上、隔離槽450の下方に排液のための機構を設けることが困難である。そこで、この実施形態では、隔離槽450の側壁面に排出口が設けられる。さらに、排液を効率よく進行させるために、排出口が設けられた側壁面とは反対側で、隔離槽450の端部を持ち上げ底面を傾斜させる機構が設けられる。これにより、めっき液の排出促進が図られている。
【0164】
すなわち、この実施形態の隔離槽450は、底面が水平となる水平姿勢と、底面が水平面に対し有意に傾斜する傾斜姿勢との間で姿勢を切り替えることが可能である。水平姿勢ではアノード電極451を基板Sに対向させてめっき処理を行うことができる一方、傾斜姿勢では隔離槽451の内部空間454に残留するめっき液を効率よく排出することができ、その後に新たなめっき液を受け入れることで、内部空間454に貯留されるめっき液をフレッシュな状態に維持することができる。
【0165】
また、この実施形態では、基板Sの上方で基板Sとアノード電極451との間のギャップ空間GSに対して液体を供給する、液体供給機構61,62が設けられている。これらからギャップ空間GSに向けて液体が供給されることで、ギャップ空間GSにおける液体の流動が促進され、めっき液の滞留が解消される。液体としてめっき反応により減少する物質を含むものを用いれば、そのような物質を補給しつつ、安定的にめっき処理を継続することができる。
【0166】
<変形例>
図17はアノード電極の変形例を示す図である。上記実施形態におけるアノード電極451は、概ね同一形状を有する9枚の電極板451a~451iを3×3のマトリクス状に配置したものである。しかしながら、アノード電極を複数に分割するパターンはこれに限定されず、種々のものが考えられる。例えば図17(a)に示すアノード電極456では、略同一形状の電極板が5×4マトリクス配置されている。このように、電極板の配設数は上記実施形態のものに限定されず任意である。
【0167】
また、図17(b)に示すアノード電極457では、比較的均一な電流密度を得やすい中央部については大面積の電極板を配置する一方、電流密度の偏りが生じやすい周縁部およびコーナー部については電極板の面積をより小さくすることで、電流密度分布の微調整を行いやすくしている。このように、各電極板の形状および大きさについても、目的に応じて適宜定めることが可能である。
【0168】
また、図17(c)に示すアノード電極458は、中央部に配置された矩形の電極板の周囲を、外形が矩形で中央が開口する額縁状の電極板で多重に取り囲んだ構造を有している。このような構造によっても、基板Sの中央部と周縁部とで互いに独立に電流密度を設定する、という目的を達成可能である。
【0169】
このように、アノード電極の分割パターンについては各種のものが考えられる。分割パターンの設定および各電極板への電流配分に際しては、例えば、予備実験によって電流密度分布を実測し、その結果に基づいて決定する方法を採ることができる。具体的には、基板表面のうち電流密度の変動が小さい領域ではこれに対向する電極板を細かく分割する必要性は低く、逆に電流密度の変動が大きい領域では、電極板を細かく分割することで、電流密度分布の調整を行いやすくすることができる。また、電流密度が高くなる領域ほど電流設定値を小さくすることで、電流密度の均一化を図ることができる。
【0170】
特に、矩形基板の4辺のうち対向する2辺をチャック保持する場合、これら2辺の近傍にカソード電極が配置されるから、保持されない2辺の近傍との間で電流分布は大きく異なると予想される。このような場合でも、アノード電極の分割パターンおよび各電極板への供給電流値を調整することで、電流密度分布の偏りを抑えて、めっき皮膜の均一性向上を図ることができる。
【0171】
なお、ここではギャップ空間GSにおける電流密度分布を調整するアノード電極の分割パターンについて説明したが、液体供給機構61における配管611の配置パターンについても同じことが言える。すなわち、先に説明したように、この実施形態の液体供給機構61において複数に分割された配管611は、液体の供給タイミングや供給量を個別に制御することで液中のイオン濃度分布を調整し、めっき皮膜の膜厚および膜質の均一化を図るものである。
【0172】
したがって、体供給機構61における配管611についても、図17(a)~(c)に示される電極パターンと同様に、必要に応じて各種の配置パターンを採用することが可能である。
【0173】
<その他>
以上説明したように、上記実施形態においては、めっき装置1が本発明の「めっき装置」に相当しており、めっき槽41、チャック機構400、カソード電極412およびアノード電極451が、それぞれ本発明の「処理槽」、「保持部」、「カソード電極」および「アノード電極」として機能している。また、液体供給部61,62がいずれも本発明の「液体供給部」として機能している。
【0174】
また、液体供給部61における配管611(611a~611i)および吐出口612が、それぞれ本発明の「配管」および「吐出口」に相当している。また、液体供給部62においては、液吐出ノズル621が本発明の「ノズル」に相当しており、吐出口622が本発明の「吐出口」に相当している。また、各配管と接続された制御バルブ613a~613iが、本発明の「供給制御部」として機能している。
【0175】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、矩形の基板Sの対向する2辺に対してチャック機構400が設けられる。しかしながら、これに代えて、4辺の全て、または4辺のうち3辺をチャック機構で把持するようにしてもよい。
【0176】
また例えば、上記実施形態は、搬送ローラー21によりめっき槽41内に搬送されてくる基板Sをチャック機構400が把持する構成となっている。しかしながら、搬送手段はローラーに限定されず任意である。一方、チャック機構により把持した状態で基板を搬送するとの態様も考えられる。この場合、搬送手段は必須の構成ではないが、大型の基板の姿勢を安定的に維持するためには、基板Sの中央部を下方から支持する何らかのバックアップ手段が設けられることが望ましい。
【0177】
なお、処理対象となる基板については、厳密な意味でいう幾何学的な矩形である必要はない。例えばいずれかの辺に若干の凹凸があるような基板であっても、包絡外形が概略矩形とみなせる形状であれば足りる。
【0178】
また例えば、上記実施形態における電源部7は、アノード電極451を構成する各電極板のそれぞれに個別に対応する定電流出力源を備えるものである。これに代えて、例えば単一の電圧源と各電極板に対応して設けられた複数の電流制限素子との組み合わせにより電源部が構成されてもよい。
【0179】
また例えば、上記実施形態の電源部7では、アノード電極451を構成する電極板の全てに対し個別の出力部が設けられている。しかしながら、電極板のうちいくつかは電気的に並列接続されて共通の出力部に接続されてもよい。例えば、図16(a)に示す分割パターンを有するアノード電極456であっても、いくつかの電極板を並列接続することで、実質的に図16(b)に示すアノード電極457と同一の分割パターンを実現することが可能である。また、必要に応じて電極板と電源との接続関係が変更される構成であってもよい。
【0180】
また例えば、上記実施形態ではアノード電極451が複数の電極板に分割されているが、隔離槽によりアノード電極と基板とを隔離することで得られる、基板への陽極スライムの付着防止効果は、アノード電極が単一の電極板で構成されためっき装置においても同様に得られるものである。
【0181】
また、ギャップ空間GSにおけるめっき液の滞留も、アノード電極の分割の有無や、それが隔離槽に収容されているか否かによらず生じ得る問題である。したがって、上記実施形態の液体供給部61,62は、アノード電極が分割されていない単一部材である場合や、アノード電極が隔離されずめっき槽内のめっき液に直接接液するような構成においても、有効に機能するものである。
【0182】
また、上記実施形態ではめっき槽41に貯留される液体と隔離槽451に貯留される液体とが同一または実質的に同一の組成のめっき液であるが、これらの液体間で組成が異なる場合でも、上記構成は有効である。すなわち、それぞれの液体を独立して供給および排出することができ、両者が混じり合うことが回避される。
【0183】
また、上記実施形態のアノード電極451はめっき皮膜の材料となる金属(例えば銅)を含み、めっき処理の進行に伴って消費される可溶性電極である。しかしながら、電極材料がめっき反応に直接寄与しない非可溶性電極であっても、電流密度分布の偏りに起因する膜厚や膜質の不均一性の問題は同様に生じ得る。このため、非可溶性電極においても、上記のように分割構造として個別に電流調整を可能とすることは、電流密度分布を最適化し膜厚の均一化を図る上で有効に機能する。
【0184】
同様に、非可溶性電極を用いためっき装置においても、上記実施形態の液体供給部61,62によるギャップ空間GSへの液体供給は、該空間におけるめっき液の滞留を解消し膜厚および膜質の均一化を図る上で有効である。
【0185】
以上、具体的な実施形態を例示して説明してきたように、本発明に係るめっき装置においては、液体供給部は、ギャップ空間にアノード電極の下面に沿って配設され液体が通送される配管を有し、配管の下面に吐出口が設けられた構成であってもよい。このような構成によれば、ギャップ空間において下向きに開口する吐出口から液体が吐出されることで、ギャップ空間におけるめっき液の流動を効果的に促進することができる。
【0186】
この場合において、液体供給部は、それぞれが吐出口を有し互いに接続されない複数の配管と、複数の配管への液体の供給量を個別に設定する供給制御部とを有していてもよい。このような構成によれば、ギャップ空間の各位置で液体の供給量を個別に調整することができる。これにより、めっき皮膜の膜厚や膜質を均一にするための最適な供給態様を実現することが可能となる。
【0187】
さらに、平面視において、一の配管に設けられた全ての吐出口を含む連続した仮想的な領域を当該配管の対応領域と定義するとき、複数の配管各々の対応領域が互いに重ならないように定義可能となるように、配管の配置が設定されることが好ましい。このような構成によれば、複数の配管から供給される液体が互いに干渉するのを抑制し、ギャップ空間における液体の流れを制御性よく調整することができる。
【0188】
また例えば、液体供給部は、平面視において基板よりも外側でギャップ空間の側方に配設され、ギャップ空間に臨む側面に吐出口が設けられて液体を吐出するノズルを有する構成であってもよい。このような構成によれば、ギャップ空間の側方からギャップ空間に向けて吐出される液体により、ギャップ空間内でのめっき液の流動を促進させることができる。
【0189】
この場合、例えばギャップ空間を挟んで1対のノズルが設けられてもよい。このような構成によれば、ギャップ空間の両側から液体を送り込むことで、ギャップ空間内でのめっき液の流動を効果的に促進し、その滞留を解消することができる。
【0190】
また例えば、アノード電極と一方主面との間に電解隔膜が設けられていてもよく、この場合のギャップ空間は、電解隔膜と一方主面とで挟まれる空間である。例えばめっき反応によってめっき液中に生じる非可溶性の不純物が基板上に落下するのを防止するために、このような不純物を通過させずイオンの通過を許容する電解隔膜が、アノード電極と基板との間に設けられることがある。このような構成においては、基板直上の空間、つまり電解隔膜と基板の一方主面とで挟まれる空間をギャップ空間とみなして、本発明を適用することが可能である。
【0191】
また、ギャップ空間に供給される液体は、めっき液と同一または実質的に同一の組成を有するものであってもよく、また、形成すべきめっき皮膜を構成する金属と同種の金属イオンを含む液体であってもよい。これらの液体は、めっき反応の進行に伴って減少する物質を補給して、めっき処理を安定的に継続させることに資するものである。なお、ここで「実質的に同一」とは、主要な成分が共通で基本的な化学的特性が概ね同じであることを指し、各成分の含有量に多少の差異がある場合や、添加剤の有無、種類、含有量等のみが異なる場合を含む。
【産業上の利用可能性】
【0192】
この発明は、基板の一方主面をめっき処理して皮膜を形成する技術に好適である。特に、大型の矩形基板を処理対象とする場合に顕著な効果を有するものである。
【符号の説明】
【0193】
1 めっき装置
2 搬送部
4 めっき処理部
7 電源部
41 めっき槽(処理槽)
40,47 チャック部(保持部)
61,62 液体供給部
400 チャック機構(保持部)
412 カソード電極
413,423 昇降機構
450 隔離槽
451 アノード電極
453 アノード電極
611(611a~611i) 配管
612,622 吐出口
613a~613i 制御バルブ(供給制御部)
GS ギャップ空間
L,L2 めっき液(めっき液)
S 基板
Sa (基板Sの)上面(一方主面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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