(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-22
(45)【発行日】2025-10-01
(54)【発明の名称】運転評価制御装置、および運転評価制御方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20250924BHJP
A61B 5/16 20060101ALI20250924BHJP
A61B 5/18 20060101ALI20250924BHJP
【FI】
G08G1/16 F
A61B5/16 120
A61B5/18
(21)【出願番号】P 2021105835
(22)【出願日】2021-06-25
【審査請求日】2024-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田代 祐一
(72)【発明者】
【氏名】大木 純
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】児玉 健太朗
(72)【発明者】
【氏名】山本 俊輔
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-062852(JP,A)
【文献】特開2021-049893(JP,A)
【文献】特開2019-098780(JP,A)
【文献】特開2018-075208(JP,A)
【文献】特開2018-180983(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112277955(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
A61B 5/16
A61B 5/18
B60W 30/00-40/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転者の映像である映像データを取得する映像データ取得部と、
前記映像データに基づいて、前記運転者の感情レベルを推測し、推測した前記感情レベルが閾値レベル以上であるか否かを判定する感情判定部と、
前記車両の挙動を示す車両情報を取得する車両情報取得部と、
前記車両の速度が第1の閾値を超えた場合、前記車両の加速度が第2の閾値を超えた場合、前記車両のハンドル操作量が第3の閾値を超えた場合、前記車両のアクセル操作量が第4の閾値を超えた場合、および周囲を走行する他車両との車間距離が第5の閾値を超えた場合のうち、少なくともいずれかである場合に、前記車両が異常走行を行っている
と判定する異常走行判定部と、
前記感情レベルが前記閾値レベル以上と判定され、かつ前記車両が前記異常走行を行っていると判定された場合に、前記感情レベルが前記閾値レベル以上と判定されたタイミングと、前記車両が前記異常走行を行っていると判定されたタイミングとに基づいて、前記運転者が危険運転を行う予兆を判定する危険運転判定部と、
を備
え、
前記異常走行判定部は、前記感情レベルが前記閾値レベル以上と判定された継続時間が長いほど、前記車両が異常走行を行っていると判定されやすくなる方向に、前記第1の閾値、前記第2の閾値、前記第3の閾値、前記第4の閾値、および前記第5の閾値のうち少なくともいずれかを変更する、
運転評価制御装置。
【請求項2】
前記異常走行判定部は、前記感情レベルが前記閾値レベル以上と判定された継続時間に応じて、前記第1の閾値、前記第2の閾値、前記第3の閾値、前記第4の閾値、および前記第5の閾値のうち少なくともいずれかを複数段階で変更する、
請求項1に記載の運転評価制御装置。
【請求項3】
車両の運転者の映像である映像データを取得するステップと、
前記映像データに基づいて、前記運転者の感情レベルを推測し、推測した前記感情レベルが閾値レベル以上であるか否かを判定するステップと、
前記車両の挙動を示す車両情報を取得するステップと、
前記車両の速度が第1の閾値を超えた場合、前記車両の加速度が第2の閾値を超えた場合、前記車両のハンドル操作量が第3の閾値を超えた場合、前記車両のアクセル操作量が第4の閾値を超えた場合、および周囲を走行する他車両との車間距離が第5の閾値を超えた場合のうち、少なくともいずれかである場合に、前記車両が異常走行を行っている
と判定するステップと、
前記感情レベルが前記閾値レベル以上と判定され、かつ前記車両が前記異常走行を行っていると判定された場合に、前記感情レベルが前記閾値レベル以上と判定されたタイミングと、前記車両が前記異常走行を行っていると判定されたタイミングとに基づいて、前記運転者が危険運転を行う予兆を判定するステップと、
含
み、
前記車両が異常走行を行っていると判定するステップでは、前記感情レベルが前記閾値レベル以上と判定された継続時間が長いほど、前記車両が異常走行を行っていると判定されやすくなる方向に、前記第1の閾値、前記第2の閾値、前記第3の閾値、前記第4の閾値、および前記第5の閾値のうち少なくともいずれかを変更する、
運転評価制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転評価制御装置、および運転評価制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の挙動を観測して、危険運転を行う可能性を判定する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
運転者がイライラするなど感情が変化すると、煽り運転または意図的な割り込みなどのいわゆる危険運転をするおそれがある。危険運転は、自車両または他車両の事故を誘発するおそれがある。そこで、危険運転を行う予兆を適切に評価することが望まれる。
【0005】
本発明は、危険運転を行う予兆を適切に評価することのできる運転評価制御装置、および運転評価制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る運転評価制御装置は、車両の運転者の映像である映像データを取得する映像データ取得部と、前記映像データに基づいて、前記運転者の感情レベルを推測し、推測した前記感情レベルが閾値レベル以上であるか否かを判定する感情判定部と、前記車両の挙動を示す車両情報を取得する車両情報取得部と、前記車両情報に基づいて、前記車両が異常走行を行っているか否かを判定する異常走行判定部と、前記感情レベルが前記閾値レベル以上と判定され、かつ前記車両が前記異常走行を行っていると判定された場合に、前記感情レベルが前記閾値レベル以上と判定されたタイミングと、前記車両が前記異常走行を行っていると判定されたタイミングとに基づいて、前記運転者が危険運転を行う予兆を判定する危険運転判定部と、を備える。
【0007】
本発明に係る運転評価制御方法は、車両の運転者の映像である映像データを取得するステップと、前記映像データに基づいて、前記運転者の感情レベルを推測し、推測した前記感情レベルが閾値レベル以上であるか否かを判定するステップと、前記車両の挙動を示す車両情報を取得するステップと、前記車両情報に基づいて、前記車両が異常走行を行っているか否かを判定するステップと、前記感情レベルが前記閾値レベル以上と判定され、かつ前記車両が前記異常走行を行っていると判定された場合に、前記感情レベルが前記閾値レベル以上と判定されたタイミングと、前記車両が前記異常走行を行っていると判定されたタイミングとに基づいて、前記運転者が危険運転を行う予兆を判定するステップと、含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、危険運転を行う予兆を適切に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る運転評価装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る運転評価装置の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、第2実施形態に係る運転評価装置の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、第3実施形態に係る運転評価装置の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、第4実施形態に係る運転評価装置の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、以下の実施形態において、同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0011】
[第1実施形態]
(運転評価装置)
図1を用いて、第1実施形態に係る運転評価装置の構成例について説明する。
図1は、第1実施形態に係る運転評価装置の構成例を示すブロック図である。
【0012】
図1に示すように、運転評価装置10は、撮像部20と、生体センサ22と、入力部24と、表示部26と、音声出力部28と、記憶部30と、CAN(Controller Area Network)インターフェース部32と、通信部34と、制御部(運転評価制御装置)36と、を備える。運転評価装置10は、車両に搭載されている。運転評価装置10は、車両に載置されている装置であってもよいし、可搬型で車両において利用可能な装置であってもよい。運転評価装置10は、車両の運転者の感情レベルが変化したタイミングと、車両が異常走行をしたタイミングとに基づいて、運転者が危険運転を行う予兆を評価する。
【0013】
撮像部20は、車両の車室内の方向を向くように配置され、車室内を撮影するカメラである。撮像部20は、例えば、少なくとも車両の運転者の表情を撮影する。撮像部20は、例えば、180°程度の範囲を撮影可能な広角カメラで構成されている。撮像部20は、例えば、複数のカメラ群で構成されてもよい。撮像部20は、例えば、赤外線カメラで構成されてもよいし、可視光カメラで構成されてもよい。撮像部20は、例えば、車室内の音声を収音するマイクロフォンを有してもよい。
【0014】
生体センサ22は、車両の運転者の生体情報を検出するセンサである。生体センサ22は、例えば、ステアリングホイールや運転者の座席に配置され得るが、これに限定されない。生体センサ22は、例えば、所定間隔ごとに車両の運転者の生体情報を検出して、検出結果を記憶する。生体センサ22は、例えば、脈拍センサ、血圧センサ、体温センサ、発汗センサ、脳波センサ、脳血流センサ、および呼吸センサなどで構成されるが、その他の生体情報を検出するセンサで構成されていてもよい。
【0015】
入力部24は、運転評価装置10に対する各種の操作を受け付ける。入力部24は、例えば、ボタン、スイッチ、タッチパネルなどの各種の入力装置で構成されている。
【0016】
表示部26は、各種の映像を表示する。表示部26は、例えば、運転者が危険運転を行う予兆があると判定された場合、運転者に注意を促す映像を表示する報知部として機能し得る。表示部26は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro-Luminescence)、またはヘッドアップディスプレイなどを含むディスプレイである。
【0017】
音声出力部28は、各種の音声を出力する。音声出力部28は、例えば、運運転者が危険運転を行う予兆があると判定された場合、運転者に注意を促す音声を出力する報知部として機能し得る。音声出力部28は、例えば、車両に搭載されたスピーカで構成されている。
【0018】
記憶部30は、各種の情報を記憶するメモリである。記憶部30は、例えば、制御部36の演算内容、およびプログラム等の情報を記憶する。記憶部30は、例えば、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)のような主記憶装置、HDD(Hard Disk Drive)等の外部記憶装置とのうち、少なくとも1つ含む。
【0019】
CANインターフェース部32は、CANを介して各種車両情報を取得するためのインターフェースである。車両情報には、例えば、エンジンの動作状況や、車両の走行状況、図示しない測距センサなどで検出された先行車両との距離などに関する情報が含まれている。
【0020】
通信部34は、外部装置との間でデータの送受信を行う。通信部34は、例えば、車両の周囲にいる人物のスマートフォンなどの端末装置との間でデータの送受信を行う。通信部34は、例えば、Wi-Fi(登録商標)、およびBluetooth(登録商標)などの方法で通信を行うように構成されている。
【0021】
制御部36は、運転評価装置10の各部の動作を制御する。制御部36は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等によって、記憶部30等に記憶されたプログラムがRAM等を作業領域として実行されることにより実現される。制御部36は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現されてもよい。制御部36は、ハードウェアと、ソフトウェアとの組み合わせで実現されてもよい。
【0022】
制御部36は、映像データ取得部40と、生体情報取得部42と、車両情報取得部44と、感情判定部46と、異常走行判定部48と、危険運転判定部50と、報知制御部52と、を備える。
【0023】
映像データ取得部40は、撮像部20から映像データを取得する。映像データ取得部40は、例えば、撮像部20から運転者の表情や顔色や顔部の温度、視線方向を撮像した映像データを取得する。
【0024】
生体情報取得部42は、生体センサ22から車両の運転者の生体情報を取得する。生体情報取得部42は、例えば、車両の運転者が装着している図示しないウェアラブルデバイスなどから車両の運転者の脈拍、心拍、血圧、体温、発汗、脳波、脳血流、呼吸数などの生体情報を取得してもよい。
【0025】
車両情報取得部44は、CANインターフェース部32を介して、車両の各種の状態、例えば速度、加速度、ハンドル舵角やアクセル開度などの車両の状態を示す状態情報や、ブレーキ、アクセルの操作量などの運転者の運転操作を示す運転操作情報の少なくとも一方を含む、車両の挙動を示す車両情報を取得する。車両情報取得部44は、例えば、車両の状態をセンシングする図示しない加速度センサや車両周囲の他車両や物体との距離を測定する距離センサなどの各種のセンサから車両情報を取得してもよい。
【0026】
感情判定部46は、車両の運転者の感情の度合いを示す感情レベルを判定する。感情判定部46は、例えば、映像データ取得部40が取得した映像データに基づいて、運転者の感情種別および感情レベルを推測し、推測した感情レベルが閾値レベル以上であるか否かを判定する。感情判定部46は、例えば、運転者の表情を、画像認識技術を用いて認識し、運転者が怒っていると推定する。また、感情判定部46は、例えば、表情から感情のレベルを推定し、感情レベルが所定レベル以上であることを判定してもよい。感情判定部46は、例えば、顔色が紅潮したことを画像処理技術により判断した場合に、運転者が興奮していると推定してもよい。感情判定部46は、生体情報取得部42が取得した生体情報、例えば脈拍の急上昇や脳波の変化によって、運転者の感情レベルが閾値レベル以上であるか否かを判定してもよい。本実施形態では、感情判定部46は、感情種別が主として怒りや興奮を示す場合の感情の強さを判定する。
【0027】
異常走行判定部48は、車両情報取得部44が取得した車両情報に基づいて、車両が異常走行を行っているか否かを判定する。異常走行判定部48は、例えば、車両情報が予め定めた閾値を超えた速度や加速度で走行している場合や、予め定めた閾値以上のハンドル操作量やアクセル操作量である場合、周囲を走行する他車両との車間距離が予め定めた閾値を超えた場合などに、車両が蛇行運転や急発進、煽り運転などの異常走行を行っていると判定する。
【0028】
危険運転判定部50は、車両の運転者が危険運転を行う予兆を判定する。危険運転判定部50は、例えば、運転者の感情レベルが閾値レベル以上と判定されたタイミングと、車両が異常走行を行っていると判定されたタイミングとに基づいて、車両の運転者が危険運転を行う予兆を判定する。
【0029】
報知制御部52は、報知処理を実行する。報知制御部52は、危険運転判定部50が車両の運転者が危険運転を行う予兆があると判定した場合、車両の運転手および車外の少なくとも一方に対して報知処理を実行する。
【0030】
(運転評価装置の処理)
図2を用いて、第1実施形態に係る運転評価装置の処理について説明する。
図2は、第1実施形態に係る運転評価装置の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0031】
映像データ取得部40は、映像データを取得する(ステップS10)。具体的には、映像データ取得部40は、例えば、撮像部20から運転者の表情を撮像した映像データを取得する。そして、ステップS12に進む。
【0032】
感情判定部46は、運転者の感情を判定する(ステップS12)。具体的には、感情判定部46は、例えば、映像データ取得部40が取得した運転者の表情の映像データに基づいて、喜び、怒り、哀しさ、楽しさ、興奮など、運転者の感情の種別および強さの度合いを判定する。感情判定部46は、例えば、周知の方法を用いて、運転者の感情の種別および強さの度合いを判定してよい。実施形態では、感情判定部46は、感情種別が主として怒りや興奮を示す場合の感情の強さを判定する。そして、ステップS14に進む。
【0033】
感情判定部46は、運転者の感情の強さの度合いを示す感情レベルは閾値以上であるか否かを判定する(ステップS14)。具体的には、感情判定部46は、例えば、運転者の表情の映像データに基づいて、運転者の目や口の様子、または仕草などを分析し、運転者の感情レベルを「低」、「中」、「高」のように感情レベルを3段階に分類する。感情判定部46は、例えば、運転者の感情レベルが「低」、「中」、「高」のうち、「中」以上であるか否かを判定する。感情判定部46は、例えば、運転者の感情レベルを数値で算出し、算出された数値が予め定められた閾値以上であるか否かを判定してもよい。感情レベルが閾値以上であると判定された場合(ステップS14;Yes)、ステップS16に進む。感情レベルが閾値以上であると判定されない場合(ステップS14;No)、ステップS28に進む。
【0034】
ステップS14でYesと判定された場合、車両情報取得部44は、車両情報を取得する(ステップS16)。具体的には、車両情報取得部44は、例えば、CANインターフェース部32から車両情報を取得する。そして、ステップS18に進む。
【0035】
異常走行判定部48は、車両が異常走行を行っているか否かを判定する(ステップS18)。具体的には、異常走行判定部48は、車両情報が閾値以上である場合に、車両が異常走行を行っていると判定する。より具体的には、異常走行判定部48は、例えば、車両の速度や加速度が所定以上上昇した場合や、予め定めた閾値以上のハンドル操作量やアクセル操作量である場合、または周囲を走行する他車両との間の車間距離が所定距離よりも短くなる方向に変化した場合に、異常走行を行っていると判定する。異常走行を行っていると判定された場合(ステップS18;Yes)、ステップS20に進む。異常走行を行っていると判定されなかった場合(ステップS18;No)、ステップS28に進む。
【0036】
ステップS18でYesと判定された場合、危険運転判定部50は、運転者の感情レベルが閾値以上と判定されたタイミングと、車両が異常走行であると判定されたタイミングとは、所定のタイミングであるか否かを判定する(ステップS20)。具体的には、危険運転判定部50は、運転者の感情レベルが閾値以上と判定されたタイミングと、車両が異常走行であると判定されたタイミングとの間の時間が所定時間以下であるか否かを判定する。所定時間は、例えば、1秒から10秒程度であるが、これに限定されない。運転者の感情レベルが閾値以上と判定されたタイミングと、車両が異常走行であると判定されたタイミングとが、所定のタイミングであると判定された場合(ステップS20;Yes)、ステップS22に進む。運転者の感情レベルが閾値以上と判定されたタイミングと、車両が異常走行であると判定されたタイミングとが、所定のタイミングであると判定されない場合(ステップS20;No)、ステップS26に進む。
【0037】
ステップS20でYesと判定された場合、危険運転判定部50は、運転者が危険運転を行う予兆があると判定する(ステップS22)。すなわち、危険運転判定部50は、運転者の感情レベルが閾値以上と判定されたタイミングと、車両が異常走行であると判定されたタイミングとの間の時間が所定時間以下である場合に、運転者が危険運転を行う可能性があると判定する。そして、ステップS24に進む。
【0038】
報知制御部52は、報知処理を実行する(ステップS24)。具体的には、報知制御部52は、例えば、車室内および車両の周囲の少なくとも一方に対して、報知処理を実行する。具体的には、報知制御部52は、例えば、音声出力部28を制御して、「安全運転を心掛けて下さい。」といった、運転者に対して安全運転を促す音声を出力する。報知制御部52は、例えば、音声出力部28を制御して、「感情を鎮めてリラックスして下さい。」、「深呼吸をして下さい。」といった、運転者を落ち着かせるための音声を出力してもよい。報知制御部52は、例えば、車両の周囲に対しては、通信部34を介して、車両の周囲の人のスマートフォンなどの携帯端末に対して、車両が危険運転を行う可能性がある旨の通知を行う。報知制御部52は、例えば、車両の周囲に対しては、クラクション、ハザードランプ、図示しない車両の外部に向けて設置したモニタやスピーカなどを用いて、車両が危険運転を行う可能性がある旨を通知してもよい。そして、ステップS28に進む。
【0039】
ステップS20でNoと判定された場合、危険運転判定部50は、運転者が危険運転を行う予兆がないと判定する(ステップS26)。そして、ステップS28に進む。
【0040】
ステップS14でNoと判定された場合、ステップS18でNoと判定された場合、ステップS24の後、およびステップS26の後、制御部36は、処理を終了するか否かを判定する(ステップS28)。具体的には、制御部36は、処理を終了する操作を受け付けた場合や、電源をオフする操作を受け付けた場合に、処理を終了すると判定する。処理を終了すると判定された場合(ステップS28;Yes)、
図2の処理を終了する。処理を終了すると判定されなかった場合(ステップS28;No)、ステップS10に進む。
【0041】
上述のとおり、第1実施形態は、運転者の感情が変化したタイミングと、車両が異常走行を行っていると判定されたタイミングとに基づいて、運転者が危険運転を行う予兆を判定する。例えば、他車両の挙動などを原因として運転者の怒りの感情が悪化したタイミングと、車両が急加速や蛇行運転を開始したタイミングとがほぼ同時であった場合などに、運転者が危険運転を行う予兆を判定する。これにより、第1実施形態は、運転者が危険運転を行う予兆を適切に評価することができる。
【0042】
第1実施形態は、運転者が危険運転を行う予兆があると判定された場合、運転者に対して安全運転を促したり、感情を鎮めたりするための報知を行う。第1実施形態は、運転者が危険運転を行う予兆があると判定された場合、車外に対して車両が危険運転を行う可能性がある旨を伝えるための報知を行う。これにより、第1実施形態は、運転者が危険運転を行うと判定された場合の、安全性を向上させることができる。
【0043】
[第1実施形態の第1変形例]
第1実施形態では、感情レベルが閾値以上であるか否かを判定した後、車両が異常走行を行っているか否かを判定した。運転評価装置10は、車両が異常走行を行っているか否かを判定した後、感情レベルが閾値以上であるか否かを判定してもよい。
図2に示す例でいえば、ステップS12およびステップS14の処理と、ステップS16およびステップS18の処理とを入れ替えてもよい。例えば、他車両の割り込みに対応するために車両が急な減速やハンドル操作を行ったタイミングと、運転者の怒りの感情が悪化したタイミングと、がほぼ同時であった場合などに、運転者が危険運転を行う予兆を判定する。これにより、第1実施形態の第1変形例は、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0044】
[第1実施形態の第2変形例]
第1実施形態では、運転評価装置10は、一般車両に搭載されるものとして説明した。運転評価装置10は、例えば、バスや、タクシーなどに搭載されてもよい。
【0045】
運転評価装置10がバスやタクシーなどに搭載される場合、報知制御部52は、例えば、バス会社やタクシー会社に報知するようしてもよい。これにより、第1実施形態の変形例では、バス会社やタクシー会社は、運転者が危険運転を行う予兆があったか否かを把握することができる。これにより、第1実施形態の変形例は、バス会社やタクシー会社などにおいて、社員の教育に役立てることができる。
【0046】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0047】
(運転評価装置の処理)
図3を用いて、第2実施形態に係る運転評価装置の処理について説明する。
図3は、第2実施形態に係る運転評価装置の処理の流れの一例を示すフローチャートである。第2実施形態に係る運転評価装置の構成は、
図1に示す運転評価装置10と同じ構成なので、説明を省略する。
【0048】
ステップS40からステップS44の処理は、それぞれ、
図2に示すステップS10からステップS14の処理と同一の処理なので、説明を省略する。
【0049】
ステップS44でYesと判定された後、異常走行判定部48は、異常走行を行っていると判定する車両情報の閾値を感情レベルに応じて設定する(ステップS46)。具体的には、異常走行判定部48は、例えば、感情レベルが高いほど、異常走行を行っていると判定されやすいように閾値を設定する。異常走行判定部48は、例えば、先行車両との距離に基づいて異常走行を判定する場合には、感情レベルが「中」の場合には閾値を50mに設定し、感情レベルが「高」場合には閾値を80mに設定する。これにより、第2実施形態では、危険度が低いうちから、報知することが可能となる。そして、ステップS48に進む。
【0050】
ステップS48の処理は、
図2に示すステップS16の処理と同一の処理なので、説明を省略する。
【0051】
ステップS48の後、異常走行判定部48は、運転者の感情レベルに応じて設定された閾値に基づいて、車両が異常走行を行っているか否かを判定する(ステップS50)。第2実施形態では、感情レベルに応じて設定された閾値に基づいて異常走行であるか否かを判定するため、運転者の感情レベルが高いほど異常走行であると判定されやすくなる。車両が異常走行を行っていると判定された場合(ステップS50;Yes)、ステップS52に進む。車両が異常走行を行っていると判定されなかった場合(ステップS50;No)、ステップS60に進む。
【0052】
ステップS52からステップS60の処理は、それぞれ、
図2に示すステップS20からステップS28の処理と同一の処理なので、説明を省略する。
【0053】
上述のとおり、第2実施形態は、運転者の感情レベルに応じて、異常走行と判定される車両情報の閾値を設定することで、運転者の感情レベルが高いほど危険運転を行う予兆があると判定されやすくなる。これにより、第2実施形態は、安全性をより向上させることができる。
【0054】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
【0055】
(運転評価装置の処理)
図4を用いて、第3実施形態に係る運転評価装置の処理について説明する。
図4は、第3実施形態に係る運転評価装置の処理の流れの一例を示すフローチャートである。第3実施形態に係る運転評価装置の構成は、
図1に示す運転評価装置10と同じ構成なので、説明を省略する。
【0056】
ステップS70からステップS74の処理は、それぞれ、
図2に示すステップS10からステップS14の処理と同一の処理なので、説明を省略する。
【0057】
ステップS74でYesと判定された後、感情判定部46は、運転者の感情レベルが閾値以上である継続時間は所定時間以上であるか否かを判定する(ステップS76)。感情レベルが閾値以上である継続時間が所定時間以上であると判定された場合(ステップS76;Yes)、ステップS78に進む。感情レベルが閾値以上である継続時間が所定時間以上であると判定されない場合(ステップS76;No)、ステップS80に進む。
【0058】
ステップS76でYesと判定された場合、異常走行判定部48は、異常走行を行っていると判定する車両情報の閾値を閾値以上の感情レベルが継続した継続時間に応じて設定する(ステップS78)。具体的には、異常走行判定部48は、例えば、閾値以上の感情レベルが継続した継続時間が長いほど、異常走行を行っていると判定されやすいように閾値を設定する。異常走行判定部48は、例えば、先行車両との距離に基づいて異常走行を判定する場合には、継続時間が「中」の場合には閾値を50mに設定し、継続時間が「高」の場合には閾値を80mに設定する。これにより、第3実施形態では、危険度が低いうちから、報知することが可能となる。そして、ステップS82に進む。
【0059】
ステップS76でNoと判定された場合、異常走行判定部48は、異常走行を行っていると判定する車両情報の閾値を初期値に設定する(ステップS80)。言い換えれば、異常走行判定部48は、異常走行を行っていると判定する車両情報の閾値を変更しない。そして、ステップS82に進む。
【0060】
ステップS82の処理は、
図2に示すステップS16の処理と同一の処理なので、説明を省略する。
【0061】
ステップS82の後、異常走行判定部48は、運転者の閾値以上の感情レベルが継続した継続時間に応じて設定された閾値に基づいて、車両が異常走行を行っているか否かを判定する(ステップS84)。第3実施形態では、運転者の閾値以上の感情レベルが継続した継続時間に応じて設定された閾値に基づいて異常走行であるか否かを判定するため、運転者の閾値以上の感情レベルが継続した継続時間が長いほど異常走行であると判定されやすくなる。車両が異常走行を行っていると判定された場合(ステップS84;Yes)、ステップS86に進む。車両が異常走行を行っていると判定されなかった場合(ステップS84;No)、ステップS94に進む。
【0062】
ステップS86からステップS94の処理は、それぞれ、
図2に示すステップS20からステップS28の処理と同一の処理なので、説明を省略する。
【0063】
上述のとおり、第3実施形態は、運転者の閾値以上の感情レベルが継続した継続時間に応じて、異常走行と判定される車両情報の閾値を設定することで、運転者の感情レベルが高いほど危険運転を行う予兆があると判定されやすくなる。これにより、第3実施形態は、安全性をより向上させることができる。
【0064】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
【0065】
(運転評価装置の処理)
図5を用いて、第4実施形態に係る運転評価装置の処理について説明する。
図5は、第4実施形態に係る運転評価装置の処理の流れの一例を示すフローチャートである。第4実施形態に係る運転評価装置の構成は、
図1に示す運転評価装置10と同じ構成なので、説明を省略する。
【0066】
ステップS100からステップS108の処理は、それぞれ、
図2に示すステップS10からステップS18の処理と同一の処理なので、説明を省略する。
【0067】
ステップS108でYesと判定された後、危険運転判定部50は、車両が危険運転を行う予兆があると判定するための判定条件を変更するか否かを判定する(ステップS110)。具体的には、危険運転判定部50は、危険運転を行う予兆があると判定するための運転者の感情レベルが閾値レベル以上と判定されたタイミングと、車両が異常走行を行っていると判定されたタイミングとの間の所定時間を変更するか否かを判定する。危険運転判定部50は、例えば、運転者の感情レベルの度合いと、異常走行の度合いとの少なくとも一方に基づいて、車両が危険運転を行う予兆があると判定するための判定条件を変更するか否かを判定する。危険運転判定部50は、例えば、運転者の感情レベルを3段階で判定する場合、感情レベルが「高」の場合には、感情レベルが閾値レベル以上と判定されたタイミングと、車両が異常走行を行っていると判定されたタイミングとの間の所定時間を短くする。危険運転判定部50は、例えば、所定以上のハンドル操作を行ったと判定された場合には、感情レベルが閾値レベル以上と判定されたタイミングと、車両が異常走行を行っていると判定されたタイミングとの間の所定時間を短くする。判定条件を変更すると判定された場合(ステップS110;Yes)、ステップS112に進む。判定条件を変更すると判定されない場合(ステップS110;Yes)、ステップS114に進む。
【0068】
危険運転判定部50は、危険運転を行う可能性があると判定するためのタイミングを変更する(ステップS112)。具体的には、危険運転判定部50は、危険運転を行う可能性があると判定するための運転者の感情レベルが閾値レベル以上と判定されたタイミングと、車両が異常走行を行っていると判定されたタイミングとの間の所定時間を、ステップS110の判定結果に応じて変更する。そして、ステップS114に進む。
【0069】
ステップS114からステップS122の処理は、それぞれ、
図2に示すステップS20からステップS28の処理と同一なので、説明を省略する。
【0070】
上述のとおり、第4実施形態は、運転者の感情レベルと、異常走行の度合いとの少なくとも一方に基づいて、危険運転であるか否かを判定するタイミングを変更する。これにより、第4実施形態は、運転者の感情レベルと、異常走行の度合いに応じた適切なタイミングを設定することができるので、安全性をより向上させることができる。
【0071】
[第4実施形態の変形例]
第4実施形態では、運転者の感情レベルと、異常走行の度合いとの少なくとも一方に基づいて、危険運転であるか否かを判定するタイミングを変更した。運転評価装置10は、運転者の感情レベルの継続時間と、異常走行の度合いとの少なくとも一方に基づいて、危険運転であるか否かを判定するタイミングを変更してもよい。
図5に示す例でいえば、ステップS110の処理に代えて、運転者の感情レベルが閾値以上である継続時間は所定時間以上であるか否かを判定する。感情レベルが閾値以上である継続時間が所定時間以上であると判定された場合、危険運転であるか否かを判定するタイミングを変更する。感情レベルが閾値以上である継続時間が所定時間以上であると判定されない場合、危険運転であるか否かを判定するタイミングを維持する。これにより、第4実施形態の変形例は、第4実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0072】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これら実施形態の内容により本発明が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0073】
10 運転評価装置
20 撮像部
22 生体センサ
24 入力部
26 表示部
28 音声出力部
30 記憶部
32 CANインターフェース部
34 通信部
36 制御部(運転評価制御部)
40 映像データ取得部
42 生体情報取得部
44 車両情報取得部
46 感情判定部
48 異常走行判定部
50 危険運転判定部
52 報知制御部