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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-22
(45)【発行日】2025-10-01
(54)【発明の名称】排尿量管理システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/20 20060101AFI20250924BHJP
   G01G 19/44 20060101ALI20250924BHJP
【FI】
A61B5/20
G01G19/44 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023531420
(86)(22)【出願日】2022-03-15
(86)【国際出願番号】 JP2022011651
(87)【国際公開番号】W WO2023276317
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2023-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2021109724
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関川 克己
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 宣弥
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/111686(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3178848(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0098709(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第111579040(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/20
G01G 19/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声指示部と、該音声指示部を制御する第1制御部と、表示部を有する被検者用端末と、
前記被検者用端末と無線通信可能に構成され、体重測定部と、該体重測定部に体重測定工程を実行させる第2制御部とを有する排尿量計測計と、
排尿前および排尿後の2回の前記体重測定工程である排尿前体重測定工程および排尿後体重測定工程のそれぞれで得られた体重測定値から排尿量を算出する演算装置と
を具備する排尿量測定システムにおいて、
前記排尿量計測計は、前記排尿前体重測定工程および前記排尿後体重測定工程に含まれる各測定段階が完了したとき、および前記排尿前体重測定工程が終了したときに、前記被検者用端末の第1制御部にトリガ信号を送信し、
前記第1制御部が、前記トリガ信号を受信すると、該トリガ信号に対応する動作を指示する内容の音声指示メッセージを前記音声指示部から出力させ、前記排尿前体重測定工程が終了したときは、前記排尿後体重測定工程を被検者に促す前記音声指示メッセージを前記音声指示部から出力させた後、前記被検者用端末をスリープ状態にし、前記被検者用端末がスリープ状態になってから所定の時間が経過することに応じて、前記排尿後体重測定工程の開始の指示を受け付ける受付部を前記表示部に表示させ、前記被検者による前記受付部に対する操作に応じて前記排尿後体重測定工程の開始の指示を受け付ける、排尿量管理システム。
【請求項2】
記第1制御部が、前記音声指示メッセージと対応する指示画面を、前記音声指示部と連動して前記表示部に表示させる、請求項1に記載の排尿量管理システム。
【請求項3】
前記指示画面は、前記音声指示メッセージの内容を示す文字列および/または画像である、請求項2に記載の排尿量管理システム。
【請求項4】
前記第1制御部が、前記排尿量計測計からの前記トリガ信号を受信してから所定の時間が経過したときに、前記音声指示メッセージを前記音声指示部から出力させる、請求項1に記載の排尿量管理システム。
【請求項5】
前記第1制御部が、前記排尿前体重測定工程が終了したときに前記排尿量計測計から送信されてくる前記トリガ信号を受信してから所定の時間が経過したときに、前記排尿後体重測定工程の実行を促す音声指示メッセージを前記音声指示部から出力させる、請求項1に記載の排尿量管理システム。
【請求項6】
前記体重測定部が、スリープ状態と、該スリープ状態よりも消費電力が高い測定可能状態との間で遷移可能に構成されており、
前記第2制御部が、前記被検者用端末からの起動要求信号を受信すると、前記体重測定部を前記スリープ状態から前記測定可能状態に遷移させ、前記体重測定部が前記測定可能状態への遷移が終了した後、前記排尿量計測計から前記被検者用端末に対して前記トリガ信号が送信される、請求項1に記載の排尿量管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排尿量管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
蓄尿機能、排尿機能に障害を有する患者の体調を管理するため、或いは治療の効果を確認するために、日常の排尿量を管理することが行われている。従来は、排尿時に採尿カップに尿を採取することで、排尿量を求めていたが、このような採尿行為は面倒であるうえに衛生的でない。また、採尿カップ内の尿量を計測した後、その値を記録用紙に記入する必要があった。
【0003】
これに対して、患者の排尿前の体重と排尿後の体重をそれぞれ体重計で測定し、体重の減少量から排尿量を求めるようにした、排尿量管理システムが提案されている(特許文献1)。このシステムは、体重計と、該体重計と無線又は有線の通信回線を通じて接続された排尿量管理用端末とを備えている。排尿量管理用端末は、通信回線を通じて体重計から送信されてくる排尿前後の体重測定値をそれぞれ受信すると、それらの体重測定値の差分を排尿量として算出する。算出された排尿量のデータは排尿量管理用端末が備える記憶部や通信回線を通じて排尿量管理用端末と接続された管理装置に保存される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-175349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の排尿量管理システムでは、患者が排尿前後に体重計に乗って体重を測定するだけで毎回の排尿量を測定し、記録することができる。しかし、通常の体重測定とは異なるプロセス(つまり、排尿前と排尿後の2回、体重を測定する必要がある)であるため、慣れない患者にとっては利用しづらいという課題がある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、排尿前後の被検者の体重を測定した結果から前記被検者の排尿量を求める排尿量管理システムにおいて、被者の利便性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために成された本発明に係る排尿量管理システムは、
音声指示部と、該音声指示部を制御する第1制御部とを有する被検者用端末と、
前記被検者用端末と無線通信可能に構成され、体重測定部と、該体重測定部に体重測定工程を実行させる第2制御部とを有する排尿量計測計と、
2回の前記体重測定工程のそれぞれで得られた体重測定値から排尿量を算出する演算装置と
を具備する排尿量測定システムにおいて、
前記排尿量計測計は、前記2回の体重測定工程に含まれる各測定段階が完了したときに、前記被者用端末の第1制御部にトリガ信号を送信し、
前記第1制御部が、前記トリガ信号を受信すると、該トリガ信号に対応する動作を指示する内容の音声指示メッセージを前記音声指示部から出力させるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の排尿量管理システムによれば、2回の体重測定工程が行われているときに被検者用端末の音声指示部から出力される音声指示メッセージを聞くことで、被検者が次に成すべき動作を容易に認知することができるため、被検者の利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る排尿情報管理システムの概略的な全体構成図。
図2】排尿情報管理システムを構成する排尿量測定装置、ユーザ端末の概略的なブロック図。
図3】排尿量測定処理の流れを説明するための、ユーザ端末の表示画面の例を示す図。
図4図3(2)の動作指示画面の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
[排尿量管理システムの全体構成]
図1は、本実施形態の排尿量管理システム1を概略的に示す図である。図2は、排尿量管理システム1の概略的なブロック図である。この排尿量管理システム1は、体重を測定する測定装置100と、被検者用端末としてのユーザ端末200と、管理者用端末300とを備えている。排尿量管理システム1は、病院等の医療機関、被検者の自宅等に設定される。排尿量管理システム1が医療機関に設置される場合、ユーザ端末200は複数台とすることができる。
【0012】
測定装置100は本発明の排尿量計測計に相当し、扁平な筐体101を備えている。ユーザ端末200は、例えばスマートフォンまたはタブレット端末などから構成されている。測定装置100、ユーザ端末200は、それぞれ近距離無線通信回路(以下、単に「通信回路」という)180、280を備えており、互いに無線通信可能に構成されている。また、管理者用端末300は、例えばデスクトップ型、ノート型、或いはタブレット型のパーソナルコンピュータであり、近距離無線通信によりユーザ端末200と接続されている。なお、排尿量管理システム1が設置された施設内のローカルネットワーク、あるいはインターネットを介して管理者用端末300とユーザ端末200とが接続されていても良い。
【0013】
[測定装置の構成]
測定装置100は筐体101内に収容されたCPU170、通信回路180、電源制御回路160、LED制御回路165、A/D変換回路130、USB/シリアル変換回路145、メモリ(ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory))171、電源用電池140、LED175、ロードセル110が搭載されている。A/D変換回路130及びロードセル110が体重測定部に相当し、CPU170が第2制御部に相当する。
【0014】
ロードセル110は、筐体101の上に乗った患者等の体重に応じて生じる歪みが抵抗値の変化として現れる重量センサの一種である。ロードセル110からは、抵抗値の変化が電圧信号または電流信号として出力される。ロードセル110から出力された信号はA/D変換回路130でデジタル値に変換された後、CPU170に入力される。
【0015】
USB/シリアル変換回路145は、USBポート173から入出力される様々な信号をシリアルデータに変換してCPU170に入力する。ROMには、CPU170の処理手順が記されたプログラムが格納されており、CPU170は、該プログラムをRAM等に展開して実行することにより制御部として機能する。ROMには、各種演算に用いられる各種テーブル(マップ)も格納されている。CPU170は、これらのプログラム及びテーブルに従って、測定装置100における各種処理を実行する。各種処理は、ソフトウェアによるものに限られず、専用のハードウェア(電子回路)により処理を実行することも可能である。
【0016】
電源制御回路160は、内蔵する電源用電池140の充放電の制御と残量監視を行なう。電源制御回路160は、変動する電池140の電圧をそれぞれに必要な定電圧に変換し、CPU170、メモリ171、ロードセル110、A/D変換回路130、通信回路180等に供給する。電池140は、USBポート173を介して充電可能に構成される。
【0017】
電源スイッチ176は、測定装置100のON/OFFを行なうためのスイッチである。測定装置100は、電源スイッチ176によってONされても、低消費電力を実現するために、体重を測定しない時は原則としてスリープ状態になっている。
【0018】
スリープ状態では、測定装置100において、通信回路180と該通信回路180を制御するCPU170の一部機能が低電力で起動している。通信回路180は、周期的に起動し、ユーザ端末200のいずれかと通信が確立するとCPU170が本格的に起動する。通信回路180としては、たとえば、Bluetooth(登録商標) Low Energyという低電力規格に準拠したものを使用することが好ましい。CPU170は、RGBのインジケータであるLED175によって、測定装置100の稼働状態を外部に表示する。
【0019】
測定装置100においては、ユーザ端末200との通信が確立した後に、CPU170が低電力起動状態から高機能演算可能な状態に変化し、電源制御回路160にロードセル110等の他のユニットを通電させる。そして、体重測定時には、CPU170は、ロードセル110の信号演算を開始するため消費電力が増加する。
【0020】
CPU170は、重量測定を実現するために浮動小数点まで高速演算できる高い処理能力を有する。そのため荷重を検知するためにロードセル110と後段の処理回路を常時待機状態にしておくと消費電力が大きい。そこで本実施の形態の排尿量管理システム1では、スリープ状態においては、低消費電力の通信回路180および、それを制御するためのCPU170のONとOFFを定期的に繰り返す。そして、測定装置100のCPU170がユーザ端末200からの無線通信要求を受け取ってから、ロードセル110を含めて装置全体を起動する。
【0021】
以上の構成により、スリープ状態における測定装置100の消費電力を通信回路180と低電力状態のCPU170の消費電力に限定できる。排尿量管理システム1では、患者が排尿するたびに排尿前後の2回の体重測定が行われるため、たとえば1日に1回、体重測定が行われる場合に比べて測定装置100の消費電力が格段に増加する。これに対して、本実施の形態の測定装置100ではスリープ状態における消費電力を低減させたため、電池40の寿命を飛躍的に伸ばすことができる。
【0022】
[ユーザ端末の構成]
ユーザ端末200は、例えば、スマートフォンまたはタブレット端末などによって構成されており、測定装置100と分離して構成されている。ユーザ端末200は、CPU270と、メモリ271と、入力操作を受け付けるタッチパネルまたはボタンから成る入力操作部274と、画面を表示する表示部210と、音声指示部276と、近距離無線通信回路280とを含む。CPU270は本発明の第1制御部、演算装置として機能する。ユーザ端末200は、複数台(たとえば1~N台;Nは自然数)であっても良い。複数台である場合には、メモリ271に、各端末を他の端末と識別するための識別情報が予め記憶されている。
【0023】
メモリ271には制御プログラム(システムソフトウェア)が格納されており、このプログラムをCPU270が実行することによりユーザ端末200の制御部として機能する。また、前記メモリ271には、排尿量管理システム1専用のアプリケーションソフトウェアが格納されており、CPU270がこのソフトウェアを実行して無線通信要求を送信し、これを測定装置100が受け取ったときにのみ、測定装置100とユーザ端末200との間で通信が行われるようになっている。つまり、測定装置100は、一般的なスマートフォン、タブレット端末から無線通信要求が送信されてきても反応しない。このような構成により、測定装置100とユーザ端末200との間で送受信される、該ユーザ端末200の所持者であるユーザの個人的な情報が第三者に漏洩しないようになっている。
【0024】
[排尿量測定処理]
次に、測定装置100及びユーザ端末200を使って実行される排尿量測定処理について説明する。図3は、排尿量測定処理が実行されているときのユーザ端末200の表示部に表示される画面の例である。
【0025】
排尿量測定処理の実行時には、電源スイッチ176によって測定装置100に電源が投入されているものとする。電源が投入されると、CPU170は通信回路180を起動して、通信が確立するか否かを判断する。そして、通信が確立しないと判断すると、CPU170は、一定時間スリープ状態となる。一定時間が経過すると、CPU170は再び通信回路180を起動して、通信が確立するか否かを判断する。スリープ状態の測定装置100は、通信回路180の起動、及び通信が確立するか否かの判断を行う処理を定期的に繰り返す。
【0026】
一方、ユーザがユーザ端末200を起動すると、CPU270は専用アプリケーションソフトウェアを実行する。これにより、表示部210の画面に排尿前の体重測定用の初期画面が表示される(図3(1))。この初期画面には、そのユーザ端末200の所持者であるユーザ(被検者)の氏名と識別番号が表示されているとともに、排尿量測定処理の開始の意思を確認するためのGUI(Graphical User Interface)ボタン211が表示される。このGUIボタン211は、矩形状の枠とその中に表示された「はじめる」の文字から成る。
【0027】
GUIボタン211にユーザがタッチしたことがCPU270によって検出されると、CPU270は通信回路280を起動して無線通信要求を送信させ、測定装置100との間で通信が確立するか否かを判断する。測定装置100が近くに無い場合、または測定装置100の主電源が落とされているなどの場合には、通信が確立しない。通信が確立しない状態が予め設定されたタイムアウト時間が経過すると、CPU270は、ユーザ端末200をOFF状態とする。
【0028】
測定装置100との間で通信が確立したと判断された場合は、CPU270は、測定装置100に対してコマンドC1を送信する。コマンド「C1」を受信した測定装置100のCPU170は、コマンドA1をユーザ端末200に返送する。ユーザ端末200のCPU70は、コマンドA1を受信したことに基づき、表示部210に、ユーザが次に行うべき動作を指示する画面(動作指示画面)を表示する(図3(2))。
【0029】
なお、以下の説明では、測定装置100からユーザ端末200に送信されるコマンドには、「A」と数字の組み合わせから成る記号を付し、ユーザ端末200から測定装置100に送信されるコマンドには「C」と数字の組み合わせから成る記号を付して両者を区別している。測定装置100からユーザ端末200に送信されてくるコマンドAは、トリガ信号に相当する。
【0030】
図4図3(2)の動作指示画面の拡大図である。この動作指示画面には、体重を測定するために測定装置100の筐体101の上に乗るようユーザに指示する文字メッセージ221(「測定装置に乗ってください」)と、ヒトが測定装置100の上に乗ろうとする様子を表す画像222が表示される。また、動作指示画面には、排尿量測定処理の進捗状況を表現するバー(進捗バー)223、測定装置100の状態に関する補足説明224も、併せて表示される。画像222は、静止画でもよく、動画でもよい。
【0031】
また、表示部210の画面表示と同時に、CPU270は、動作を指示する内容の音声メッセージ(「測定装置に乗ってください」)を音声指示部276から出力させる。
【0032】
したがって、ユーザは、表示部210の画面に表示される文字メッセージ221、画像222を見て、あるいは音声メッセージを聞いて次に行うべき動作を判断することができる。このように、文字メッセージ221と画像222という視覚情報と音声メッセージという聴覚情報の両方で、次に行うべき動作を指示するため、ユーザの視力、聴力のいずれか、または両方が低下している場合や、認知機能に問題がある場合でも利用しやすいシステムとなっている。また、画像222で動作指示の内容を表現したことで、文字や音声の指示内容を理解できない幼児や外国人の患者でも利用しやすいシステムとなっている。
【0033】
また、動作指示画面に表示される進捗バー223から、ユーザは、排尿測定処理の進行状態を視覚的に把握することができる。また、補足説明224から、ユーザは、測定装置100の状態と対応付けて排尿量測定処理を進めることができる。
【0034】
なお、ユーザ端末200がコマンド「C1」を送信してから所定の時間が経過しても、コマンド「A1」が測定装置100から送信されてこない場合は、CPU270は、再びコマンド「C1」を送信する。そして、コマンド「C1」を送信する処理を複数回(例えば10回)繰り返しても測定装置100からコマンド「A1」が送信されてこない場合は、表示部210にエラー画面を表示する。
【0035】
一方、測定装置100のCPU170は、ユーザ端末200との間の通信が確立すると、ロードセル110などの測定に必要な回路をスリープ状態から測定可能状態に遷移させる。その後、CPU170は、A/D変換回路130から得られるデジタル値によってロードセル110の抵抗値の変化を一定時間観測する。
【0036】
ユーザが測定装置100の筐体101の上に乗ると、ロードセル110の抵抗値の変化を表すデジタル値がA/D変換回路130からCPU170に入力される。CPU170は、そのデジタル値からユーザが筐体101に乗った状態にあることを検知し、ユーザ端末200に向けてコマンドA2を送信する。測定装置100からのコマンドA2を受信したユーザ端末200のCPU270は、表示部210の画面を、体重測定中であることを表す画面(図3(3)に切り替えるとともに音声メッセージを音声指示部276から出力させる。この画面には、測定中の注意点を説明するための文字メッセージとして「測定中です、測定装置の上で動かないでください」が表示され、測定装置100の上で直立状態にあるヒトの画像が表示される。また、音声指示部276からは、この文字メッセージと同じ内容の音声メッセージが出力される。
【0037】
また、CPU170は、ロードセル110から入力されたデジタル値の平均化処理などを行ないつつ、ユーザの体重測定値を計算する。これにより、ユーザが筐体101の上で動いてしまい、ロードセル110の抵抗値の変化が安定しない場合でも、安定的に体重測定をすることが可能となる。
【0038】
CPU170は、ユーザの体重測定値の計算が終了すると、ユーザ端末200に対してコマンドA3を送信する。このコマンドA3を受信したユーザ端末200のCPU270は、表示部210の画面を、測定が終了したことを表す画面(図3(4))に切り替えるとともに音声メッセージを音声指示部276から出力する。この画面には、測定終了後の動作を説明するための文字メッセージとして「測定終了です、測定装置からおりてください」が表示され、測定装置100の上からヒトが下りた状態を表す画像が表示される。また、音声指示部276からは、この文字メッセージと同じ内容の音声メッセージが出力される。
【0039】
測定装置100からユーザが下りると、A/D変換回路130から入力されるデジタル値が急減する。デジタル値の変化からユーザが測定装置100から降りたことを検知したCPU170は、ユーザ端末200に対してコマンドA4を送信する。また、CPU170は、そのときのデジタル値から計算された体重測定値を、ユーザが測定装置100に乗っているときの体重測定値から差し引くことによって、ユーザの体重値を求める。求められた体重値は排尿前の体重値としてメモリ171に保存される。
【0040】
また、測定装置100からのコマンドA4を受信したユーザ端末200のCPU270は、コマンドC2を測定装置100に送信する。コマンドC2を受信した測定装置100のCPU170は、メモリ171から排尿前の体重値を読み出してユーザ端末200に送信する。排尿前の体重値を受信したユーザ端末200のCPU270は、その値をメモリ271に保存する。また、CPU270は、表示部210の画面を、ユーザが次に行うべき動作を指示するための動作指示画面(図3(5))に切り替えるとともに、音声メッセージを音声指示部276から出力する。また、これと同時に、ユーザ端末200は測定装置100に対してコマンドC3を送信する。
【0041】
この動作指示画面には、「トイレで排尿後再度測定します」という文字メッセージと、トイレでの排尿動作及び測定装置100に乗る動作を表す画像が表示される。また、この文字メッセージと同じ内容の音声メッセージが音声指示部276から出力される。
【0042】
ユーザ端末200からのコマンドC3を受信した測定装置100のCPU170は、ユーザ端末200に対してコマンドA5を送信する。コマンドA5を受信したユーザ端末200のCPU270は、測定装置100との通信を切断し、ユーザ端末200をスリープ状態にする。
【0043】
ユーザ端末200がスリープ状態になってから所定の時間が経過すると、CPU270は、表示部210の画面に、排尿後の体重測定用の初期画面を表示させる(図3(6))。この初期画面には、排尿後の体重測定処理の開始の意思を確認するためのGUIボタン212が表示される。このGUIボタン21は、矩形状の枠とその中に表示された「排尿後の測定にすすむ」の文字から成る。
【0044】
GUIボタン212にユーザがタッチしたことがCPU270によって検出されると、CPU270は通信回路280を起動して無線通信要求を送信し、測定装置100との間で通信が確立するか否かを判断する。測定装置100が近くに無い場合、または測定装置100の主電源が落とされているなどの場合には、通信が確立しない。通信が確立しない状態が予め設定されたタイムアウト時間継続すると、CPU270は、ユーザ端末200をスリープ状態に戻す。
【0045】
また、排尿後の体重測定用の初期画面が表示部210に表示されてから所定時間が経過してもGUIボタン212のタッチ操作が行われなかった場合も、CPU270は、ユーザ端末200をスリープ状態に戻す。ユーザ端末200がスリープ状態に戻った後、所定の時間が経過すると、CPU270は、表示部210の画面に、排尿後の体重測定用の初期画面を再び表示させる。
【0046】
なお、表示部210に排尿後の体重測定用初期画面を表示した後、ユーザ端末200をスリープ状態に戻し、再度、表示部210に初期画面を表示する処理は、複数回(例えば10回)繰り返される(スヌーズ機能)。そして、上記の処理が複数回繰り返されても、ユーザ端末200と測定装置100との間で通信が確立しない場合、或いはGUIボタン212がタッチ操作されない場合は、CPU270はメモリ271に保存されている体重値のデータを破棄し、排尿量測定処理を終了する。
【0047】
一方、GUIボタン212がタッチ操作され、ユーザ端末200と測定装置100との間の通信が確立したと判断すると、CPU270は、コマンドC1を測定装置100に対して送信する。これ以降、ユーザの体重測定が終了するまでの間に行われる測定装置100及びユーザ端末200の動作、ユーザ端末200の表示部210に表示される画面(図3(7)~(9))、及び音声指示部276から出力される音声メッセージは、排尿前の体重測定時と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0048】
測定装置100のCPU170は、排尿後のユーザの体重値が求められると、この体重値をユーザ端末200に送信する。排尿後の体重値を受信したユーザ端末200のCPU270はメモリ271に保存されている排尿前の体重値を読み出して、排尿量の演算を実行する。排尿量は、排尿前の体重値から排尿後の体重値を差し引くことによって得られる。必要に応じて、尿の標準的な密度を用いて、体重値を体積に換算しても良い。演算により得られた排尿量は表示部210の画面に表示される(図3(10))とともにメモリ271に保存される。この画面には、排尿量とともに次の画面への移行を促すGUIボタン213が表示されている。このボタン213は矩形状の枠と、その中に表示された「つぎへ」の文字からなる。
【0049】
上記のGUIボタン213がタッチ操作されると、CPU270は、ユーザに付加情報を入力させるための画面(付加情報選択画面)を表示部210に表示させる。例えば図3(11)は、付加情報として就寝中の排尿であるか否かを選択させる画面であり、図3(12)は、付加情報として排尿時における尿意の有無、尿漏れの有無、大便の有無を選択させるための画面である。これらの付加情報選択画面には、選択ボタンとしてのGUIボタンが表示されている。なお、付加情報としては、これらの他、排尿量の評価、血尿の有無、排尿時における痛みの有無等を選択させるようにしても良い。
【0050】
付加情報選択画面上のGUIボタンのタッチ操作による付加情報の入力が終了すると、CPU270は、演算した排尿量、付加情報を、年月日、時刻とともに、メモリ271に記憶させる。また、CPU270は、メモリ271に記憶されている排尿量、付加情報等のデータを、管理者用端末300に送信する。図3(13)は、ユーザ端末200から管理者用端末300にデータが送信されている最中であることを表す待機画面を、図3(14)は、データ送信が終了し、全ての排尿量測定処理が終了したことを表す終了画面である。
【0051】
(変形例)
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく適宜に変更することができる。
例えば上記実施形態では、ユーザ端末の表示部210に動作指示画面を表示させると同時に音声指示メッセージを音声指示部276から出力させたが、表示部210に動作指示画面を表示させずに、音声指示メッセージのみを音声指示部276から出力させるようにしても良い。
【0052】
また、排尿量測定処理において表示部210に動作指示画面が表示されると必ず音声メッセージを音声指示部276から出力させたが、動作指示画面のうちの一部が表示部210に表示されたときに音声メッセージが音声指示部276から出力されるようにしても良い。
【0053】
さらにまた、上記実施形態や上述した各種の変形例も本発明の一例にすぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜変形、修正、追加等を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは当然である。
【0054】
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0055】
(第1項)
第1項の排尿量管理システムは、
音声指示部と、該音声指示部を制御する第1制御部とを有する被検者用端末と、
前記被検者用端末と無線通信可能に構成され、体重測定部と、該体重測定部に体重測定工程を実行させる第2制御部とを有する排尿量計測計と、
2回の前記体重測定工程のそれぞれで得られた体重測定値から排尿量を算出する演算装置と
を具備する排尿量測定システムにおいて、
前記排尿量計測計は、前記2回の体重測定工程に含まれる各測定段階が完了したときに、前記被者用端末の第1制御部にトリガ信号を送信し、
前記第1制御部が、前記トリガ信号を受信すると、該トリガ信号に対応する動作を指示する内容の音声指示メッセージを前記音声指示部から出力させるものである。
【0056】
第1項の排尿量管理システムにおいて、2回の体重測定工程とは、排尿前と排尿後のそれぞれにおいて被検者が排尿量計測計に乗って体重測定を実施する工程である。また、「トリガ信号に対応する動作」には、例えば、被検者が排尿量計測計に乗る動作、排尿量計測計から下りる動作、或いは、1回目の体重測定工程の後のトイレに行って排尿する動作が含まれる。
【0057】
第1項の排尿量管理システムによれば、排尿量計測計で体重測定工程が行われているときに被検者用端末の音声指示部から出力される音声指示メッセージを聞くことで、被検者が次に成すべき動作を容易に認知することができる。
【0058】
(第2項)
第1項の排尿量管理システムにおいて、
前記被検者用端末が、さらに表示部を有しており、
前記第1制御部が、前記音声指示メッセージと対応する指示画面を、前記音声指示部と連動して前記表示部に表示させるものとすることができる。
【0059】
(第3項)
第2項の排尿量管理システムにおいて、
前記指示画面は、前記音声指示メッセージの内容を示す文字列および/または画像であるものとすることができる。
【0060】
第2項及び第3項の排尿量管理システムによれば、音声指示メッセージという聴覚情報と、表示部に表示される指示画面という視覚情報の両方で、被検者に対して動作を指示することができる。
【0061】
(第4項)
第1項~第3項のいずれかの排尿量管理システムにおいて、前記第1制御部が、前記排尿量計測計からの前記信号を受信してから所定の時間が経過したときに、前記音声指示メッセージを前記音声指示部から出力させるものとすることができる。
【0062】
第4項の排尿量管理システムによれば、排尿量計測計から被検者が離れた位置にあり、被検者用端末が排尿量計測計からの信号を受信できない状態になった場合でも、被検者用端末の音声指示部から音声指示メッセージを出力させることができる。
【0063】
(第5項)
第1項~第4項のいずれかの排尿量管理システムにおいて、前記第1制御部が、1回目の体重測定工程が終了したときに前記排尿量計測計から送信されてくる信号を受信してから所定の時間が経過したときに、2回目の体重測定工程の実行を促す音声指示メッセージを前記音声指示部から出力させるものとすることができる。
【0064】
例えば1回目(排尿前)の体重測定工程を終えてトイレに行った被検者が、排尿後の体重測定を忘れてしまい、排尿量計測計から離れた場合、被検者用端末は該排尿量計測計からの信号を受信できない状態になる。そのような場合でも、第5項の排尿量管理システムでは、被検者用端末の音声指示部から音声指示メッセージを出力させて、被検者に2回目(排尿後)の体重測定を行うよう注意を促すことができる。
【0065】
(第6項)
第1項~第5項のいずれかの排尿量管理システムにおいて、
前記体重測定部が、スリープ状態と、該スリープ状態よりも消費電力が高い測定状態との間で遷移可能に構成されており、
前記第2制御部が、前記被検者用端末からの起動要求信号を受信すると、前記体重測定部を前記スリープ状態から前記測定可能状態に遷移させ、前記体重測定部が前記測定可能状態への遷移が終了した後、前記排尿量計測計から前記被検者用端末に対して前記トリガ信号が送信されるものとすることができる。
【0066】
第6項の排尿量管理システムによれば、体重測定部において体重測定処理が行われるまでは該体重測定部がスリープ状態にあるため、排尿量計測計の消費電力を抑えることができる。
【符号の説明】
【0067】
1…排尿量管理システム
100…測定装置
110…ロードセル
130…A/D変換回路
140…電源用電池
145…USB/シリアル変換回路
160…電源制御回路
165…LED制御回路
170…CPU
171…メモリ
173…USBポート
175…LED
176…電源スイッチ
180…通信回路
200…ユーザ端末
210…表示部
270…CPU
271…メモリ
274…入力操作部
276…音声指示部
280…近距離無線通信回路
300…管理者用端末
図1
図2
図3
図4