IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

<>
  • 特許-電子部品及び回路装置 図1
  • 特許-電子部品及び回路装置 図2
  • 特許-電子部品及び回路装置 図3
  • 特許-電子部品及び回路装置 図4
  • 特許-電子部品及び回路装置 図5
  • 特許-電子部品及び回路装置 図6
  • 特許-電子部品及び回路装置 図7
  • 特許-電子部品及び回路装置 図8
  • 特許-電子部品及び回路装置 図9
  • 特許-電子部品及び回路装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-22
(45)【発行日】2025-10-01
(54)【発明の名称】電子部品及び回路装置
(51)【国際特許分類】
   H10D 1/68 20250101AFI20250924BHJP
   H10D 1/20 20250101ALI20250924BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20250924BHJP
   H01G 4/30 20060101ALN20250924BHJP
   H01G 4/33 20060101ALN20250924BHJP
【FI】
H10D1/68
H10D1/20
H01F17/00 B
H01G4/30 541
H01G4/33 102
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024509886
(86)(22)【出願日】2023-02-28
(86)【国際出願番号】 JP2023007305
(87)【国際公開番号】W WO2023181803
(87)【国際公開日】2023-09-28
【審査請求日】2024-09-18
(31)【優先権主張番号】P 2022046259
(32)【優先日】2022-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 翔太
【審査官】脇水 佳弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2001/0019865(US,A1)
【文献】国際公開第2009/104132(WO,A1)
【文献】特開2007-95950(JP,A)
【文献】特開2015-111671(JP,A)
【文献】特表2009-515356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10D 1/68
H10D 1/20
H01F 17/00
H01G 4/30
H01G 4/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成された絶縁体層と、
前記絶縁体層に形成された複数の導電体層と、
前記半導体基板上に形成された誘電体層と、
前記半導体基板の下面に形成された下面電極と、
を備え、
前記複数の導電体層のうちの少なくとも一つは配線パターンであり、
前記複数の導電体層のうちの少なくとも一つは、前記誘電体層を挟んで前記半導体基板又は前記下面電極とで対を成す平板電極であり、
前記半導体基板における、前記誘電体層及び前記平板電極の形成される第1領域に、前記第1領域以外の第2領域と比較して高い割合で、前記半導体基板より高導電率の導体部が配置され、
前記導体部は、前記半導体基板と別材料で構成され、前記半導体基板の中に複数埋め込まれている、
電子部品。
【請求項2】
前記導体部は、前記半導体基板における前記誘電体層の形成領域に形成された、
請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記複数の導電体層の少なくとも1つはスパイラル状又はループ状のインダクタパターンであり、前記インダクタパターンは前記半導体基板における前記第2領域内に形成されており、前記半導体基板のうち前記インダクタパターンが形成されたインダクタ領域には前記導体部が形成されていない、
請求項1または2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記複数の導電体層の一部は、他の素子に接続するための第1パッド電極及び第2パッド電極をそれぞれ構成し、
前記第1パッド電極は前記平板電極に電気的に接続されていて、
前記第2パッド電極は前記インダクタパターンの一端に電気的に接続されていて、
前記インダクタパターンの他端と前記平板電極とが電気的に接続されている、
請求項に記載の電子部品。
【請求項5】
前記導体部は前記誘電体層に接している、
請求項1に記載の電子部品。
【請求項6】
前記導体部は前記下面電極に接している、
請求項1に記載の電子部品。
【請求項7】
請求項1に記載の電子部品と、
前記電子部品を実装するための実装基板と、を備え、
前記実装基板のグランドパターンに前記電子部品の前記下面電極が接続されている、回路装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板を備えて、この半導体基板にキャパシタやインダクタ等を設けることにより構成される電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体基板上に積層された絶縁体層にインダクタやキャパシタ等のパッシブデバイスが形成された高周波集積回路装置が示されている。この高周波集積回路装置が備えるキャパシタはすべてMIM(metal-insulator-metal)構造のキャパシタであり、それらの電極は半導体基板に対する絶縁体層の積層側表面に配置される。
【0003】
特許文献2には、半導体基板上に誘電体層と電極層とを積層することで構成されたキャパシタを備える半導体装置が示されている。そのキャパシタの一方の電極は、半導体基板に対する絶縁体層の積層側表面にあり、他方の電極は半導体基板の下面にある。このため、この半導体装置の実装先の基板がグランド電位の導体であった場合、キャパシタとグランドとが電気的に直接接続されるので、両者を接続するための配線は不要である。このような構造のキャパシタを本明細書では便宜上「縦型キャパシタ」と表現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公報第98/012751号
【文献】特開2021-93439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の高周波集積回路装置では、例えば通信装置用のパワーアンプを構成する場合に、そのパワーアンプを、回路基板に形成されたグランド電位の銅箔面へ配置することが想定される。また、そのような高周波集積回路装置は、信号ラインとグランドとの間に挿入されるキャパシタを含む。このキャパシタを前述のMIMで構成した場合、当該キャパシタの一方の電極とグランドとをワイヤー等の配線構造体で接続する必要がある。この場合、配線構造体による寄生インピーダンスがキャパシタとグランドとの間に電気的に挿入されるため、このことがキャパシタのQ値等の電気的特性悪化の要因となる。
【0006】
特許文献2に示されるような縦型キャパシタであれば、上記配線構造体による電気的回路特性悪化の課題は生じない。しかし、特許文献1に示されるように、半導体基板上に積層された絶縁体層に、導体パターンによるインダクタ(以降、「パターンインダクタ」)などのパッシブデバイスを形成するとともに縦型キャパシタを形成しようとすると、次に述べるとおり、インダクタのQ値等の電気的特性が悪化する。
【0007】
まず、縦型キャパシタの等価直列抵抗(ESR)について考察する。縦型キャパシタの等価直列抵抗は、キャパシタに流れる電流の経路である内部配線や半導体基板の導電率によって決定される。一般に、内部配線よりも半導体基板の方が低導電率であり、また、電流経路が長い。このため、半導体基板の導電率が縦型キャパシタの等価直列抵抗を上げる主たる要因となりやすい。縦型キャパシタの等価直列抵抗を下げるには、半導体基板の導電率を高める必要がある。
【0008】
また、パターンインダクタの等価直列抵抗(ESR)も、内部配線を含む導体パターンや半導体基板の導電率によって決定される。すなわち、導体パターンはインダクタの電流経路の一部であるため、パターンインダクタの等価直列抵抗は導体パターンの導電率の影響を直接受ける。
【0009】
但し、後の[課題を解決するための手段]で述べるように、半導体基板の導電率が等価直列抵抗の起因となるメカニズムは縦型キャパシタとパターンインダクタとでは異なる。本発明の目的は、半導体基板上に積層された絶縁体層に、配線パターンによるインダクタを形成するとともに縦型キャパシタを形成する場合に、Q値の高いインダクタ及びQ値の高いキャパシタを備える電子部品及び回路装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
パターンインダクタがインダクタとして動作するときに、パターンインダクタは周囲に高周波磁界を発生するが、この高周波磁界により、パターンインダクタの近傍にある導体に渦電流を誘導し、この渦電流によってジュール熱が発生する。このジュール熱は一般に渦電流損と呼ばれ、渦電流が流れる導体の導電率が高いほど大きくなる。この渦電流損は、インダクタの電気的特性上は等価直列抵抗として見える。
【0011】
半導体基板上に積層された絶縁体層にパターンインダクタを形成した構造において、「半導体基板」が上記「インダクタの近傍にある導体」のことである。したがって、パターンインダクタの等価直列抵抗を下げるためには、半導体基板の導電率を下げる必要がある。
【0012】
ところが、縦型キャパシタ及びパターンインダクタの等価直列抵抗は、シリコン基板の導電率の影響を受けるので、これらはトレードオフの関係にある。例えば、縦型キャパシタのQ値を改善するためにシリコン基板の導電率を上げると、パターンインダクタのQ値が悪化し、パターンインダクタのQ値を改善するためにシリコン基板の導電率を下げると、縦型キャパシタのQ値が悪化する。
【0013】
そこで、本開示の一例としての電子部品は、
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成された絶縁体層と、
前記絶縁体層に形成された複数の導電体層と、
前記半導体基板上に形成された誘電体層と、
前記半導体基板の下面に形成された下面電極と、
を備え、
前記複数の導電体層のうちの少なくとも一つは配線パターンであり、
前記複数の導電体層のうちの少なくとも一つは、前記誘電体層を挟んで前記半導体基板又は前記下面電極とで対を成す平板電極であり、
前記半導体基板における、前記誘電体層及び前記平板電極の形成される第1領域に、前記第1領域以外の第2領域と比較して高い割合で、前記半導体基板より高導電率の導体部が配置された、
ことを特徴とする。
【0014】
また、本開示の一例としての回路装置は、
上記電子部品と、この電子部品が実装された実装基板とを備え、
前記実装基板のグランドパターンと前記電子部品の前記下面電極とが接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、半導体基板に流れる渦電流が抑制されることによるQ値の高いインダクタと、等価直列抵抗が低下することによるQ値の高いキャパシタと、を備える電子部品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1(A)は第1の実施形態に係る電子部品101の平面図であり、図1(B)は図1(A)におけるB-B部分での断面図である。
図2図2は電子部品101の回路図である。
図3図3は通信装置の送信部の回路構成を示すブロック図である。
図4図4(A)は図1(A)、図1(B)に示した電子部品101とは異なる電子部品101Aの回路図、図4(B)は図1(A)、図1(B)に示した電子部品101とは異なる別の電子部品101Bの回路図である。
図5図5は第2の実施形態に係る電子部品102の断面図である。
図6図6は第3の実施形態に係る電子部品103の断面図である。
図7図7は第4の実施形態に係る電子部品104の断面図である。
図8図8は第5の実施形態に係る電子部品105の断面図である。
図9図9(A)は第6の実施形態に係る電子部品106の部分縦断面図であり、図9(B)は図9(A)におけるX-X部分での平断面図である。
図10図10は第7の実施形態に係る電子部品107の部分平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以降、図を参照して幾つかの具体的な例を挙げて、本発明を実施するための複数の形態を示す。各図中には同一箇所に同一符号を付している。要点の説明又は理解の容易性を考慮して、実施形態を説明の便宜上、複数の実施形態に分けて示すが、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせは可能である。第2の実施形態以降では第1の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0018】
《第1の実施形態》
図1(A)は第1の実施形態に係る電子部品101の平面図であり、図1(B)は図1(A)におけるB-B部分での断面図である。ただし、図1(A)は、後に述べる保護膜10の形成前の状態での平面図である。
【0019】
この電子部品101は、半導体基板1と、この半導体基板1上に形成された絶縁体層2と、絶縁体層2に形成された導電体層3A,3B,3C,3D,3E,3F,3G,3Hと、半導体基板1上に形成された誘電体層4と、絶縁体層2中に形成された誘電体層5と、導電体層3G,3H上に形成された第1パッド電極9A及び第2パッド電極9Bと、半導体基板1の上面側に形成された保護膜10と、半導体基板1の下面に形成された下面電極8と、を備える。
【0020】
半導体基板1は例えばキャリアドーピングシリコン基板などの不純物半導体による基板、絶縁体層2は例えばSiN膜、導電体層3A,3B,3C,3D,3Eは例えばAl膜、導電体層3F,3G,3Hは例えばCu膜、誘電体層4,5は例えばSiO2膜、第1パッド電極9A及び第2パッド電極9Bは例えば下地をNiとし表面をAuとする金属膜、保護膜10は例えばソルダーレジスト等の有機絶縁膜、下面電極8は例えば下地をCuやNiとし表面をAuとする金属膜である。
【0021】
導電体層3A,3Bによる配線パターンはインダクタを構成する。導電体層3C,3Dは絶縁体層2中に形成されたキャパシタ電極を構成する。導電体層3Eは誘電体層4上に形成された平板電極を構成する。導電体層3F,3G,3Hは引出電極を構成する。第1パッド電極9A及び第2パッド電極9Bは例えばワイヤーボンディング用のパッドとして用いられる。下面電極8は例えばダイボンディング用電極として用いられる。
【0022】
導電体層3A,3Bによる配線パターンによって半導体基板1におけるインダクタ領域ZLを形成している。また、半導体基板1における、平板電極としての導電体層3E及び誘電体層4の形成領域はキャパシタ領域ZCである。このキャパシタ領域ZCは本発明に係る第1領域の一例である。半導体基板1の第1領域以外の領域は第2領域である。
【0023】
半導体基板1のキャパシタ領域ZCには導体部7が形成されている。この例では、導体部7は誘電体層4の下部に配置されている。本実施形態では、インダクタ領域ZLは第2領域の一部である。導体部7は、半導体基板1におけるキャパシタ領域ZC(第1領域)に、インダクタ領域ZLを含む半導体基板1の第2領域に比較して高い割合で配置されている。導体部7は例えば導電性ポリシリコンであり、半導体基板1に比較して高導電率である。この導体部7は、半導体基板1に例えば複数のトレンチを掘り、それらトレンチに上記導電性ポリシリコン等を埋めることで形成される。
【0024】
本実施形態では、導電体層3EはX軸方向に延びる辺とY軸方向に延びる辺とで構成されていて、複数の導体部7は互いに平行にY軸方向に延びる。
【0025】
導電体層3A,3Bは、スパイラル状の導電体層でありインダクタを構成する。導電体層3E、誘電体層4、半導体基板1、導体部7及び下面電極8はキャパシタを構成する。ここで、導電体層3Eはキャパシタの第1の電極であり、半導体基板1、導体部7及び下面電極8はキャパシタの第2の電極である。
【0026】
以上に示したとおり、半導体基板1におけるキャパシタ領域ZCに、インダクタ領域ZLに比較して高い割合で、半導体基板1より高導電率の導体部7が配置されている。このことにより、半導体基板1の導電率を低くすることができるので、導電体層3A,3Bによる配線パターンが発生する高周波磁界による半導体基板1に誘導される渦電流が抑制されてQ値の高いインダクタが得られる。また、平板電極としての導電体層3Eが形成されているキャパシタ領域ZCの導電率を高めることができ、Q値の高いキャパシタが得られる。
【0027】
以上に示した電子部品101は、これを実装するための実装基板に実装される。この実装基板と電子部品101とで回路装置が構成される。実装基板にはグランドパターン及びその他の電極パターンが形成されている。そして、第1パッド電極9Aは導電体層3Eに電気的に接続され、第2パッド電極9Bはインダクタパターンを形成する導電体層3Aの一端に電気的に接続されていて、導電体層3Aの他端と導電体層3Eとが電気的に接続されている。
【0028】
電子部品101の下面電極8は、実装基板上に形成されたグランドパターンに接続され、第1パッド電極9A及び第2パッド電極9Bは、実装基板上に形成されたグランドパターン以外の電極パターンにワイヤーボンディングされる。
【0029】
図2は電子部品101の回路図である。図2に示すポートP1,P2は図1(A)、図1(B)に示した電子部品101の第1パッド電極9A及び第2パッド電極9Bにそれぞれ対応し、図2に示すグランドは図1(A)、図1(B)における下面電極8に対応する。図2に示すキャパシタC1は、導電体層3E、誘電体層4、導体部7、半導体基板1及び下面電極8により構成されるキャパシタである。図2に示すキャパシタC2は、導電体層3C,3D及び誘電体層5により構成されるキャパシタである。図2に示すインダクタL1は導電体層3A,3Bにより構成されるインダクタである。このようなLC回路によってインピーダンス整合回路を構成する。
【0030】
キャパシタ領域ZCに形成されたキャパシタC1は、半導体基板1や導体部を通して実装基板のグランドパターンに接続されるため、配線を経由する構造の経路装置に比べて等価直列抵抗ESRを抑制でき、Q値の高いインピーダンス整合回路が得られる。
【0031】
図3は通信装置の送信部の回路構成を示すブロック図である。この送信部は送信信号を入力してそれを変調して高周波送信信号を出力する送信回路、パワーアンプPA、送信回路とパワーアンプPAとをインピーダンス整合させるインピーダンス整合回路MCを備える。パワーアンプPAの出力信号はアンテナに導かれる。この図3に示す送信部を備える通信装置は例えば基地局に設けられる。
【0032】
図4(A)は図1(A)、図1(B)に示した電子部品101とは異なる電子部品101Aの回路図、図4(B)は図1(A)、図1(B)に示した電子部品101とは異なる別の電子部品101Bの回路図である。電子部品101AはキャパシタC1,C2及びインダクタL1によるπ型のインピーダンス整合回路であり、電子部品101BはインダクタL1,L2及びキャパシタC1によるT型のインピーダンス整合回路である。
【0033】
電子部品101Aにおいて、信号ラインとグランドとの間にシャント接続されるキャパシタC1,C2は、図1(A)、図1(B)においてキャパシタ領域ZCに構成した縦型キャパシタである。また、信号ラインにシリーズに挿入されたインダクタL1は図1(A)、図1(B)においてインダクタ領域ZLに構成されたインダクタである。
【0034】
電子部品101Bにおいて、信号ラインとグランドとの間にシャント接続されるキャパシタC1は、図1(A)、図1(B)においてキャパシタ領域ZCに構成した縦型キャパシタである。また、信号ラインにシリーズに挿入されたインダクタL1,L2は図1(A)、図1(B)においてインダクタ領域ZLに構成されたインダクタである。
【0035】
このようにして、Q値の高いキャパシタ及びQ値の高いインダクタで構成されたインピーダンス整合回路が得られる。
【0036】
なお、図1図2に示した例では、信号ラインとグランドとの間にシャント接続したキャパシタC1におけるESRを下げる目的で、半導体基板1の下面に形成した下面電極8をインピーダンス整合回路のグランドに接続させる例を示したが、第1パッド電極9A及び下面電極8の用い方はこれに限らない。例えば、第1パッド電極9Aを回路グランドに接続し、下面電極8を信号ラインのポートとして用いてもよい。すなわち、半導体基板1の下面電極をキャパシタ電極として使用してもよい。
【0037】
《第2の実施形態》
第2の実施形態では、キャパシタ領域に配置する導体部の構成が第1の実施形態で示した例とは異なる電子部品について例示する。
【0038】
図5は第2の実施形態に係る電子部品102の断面図である。その断面位置は図1(B)に示した位置に対応している。図1(B)に示した電子部品101では、導体部7が半導体基板1の上部に形成されていたが、図5に示す例では導体部7は半導体基板1の下部に形成されている。また、導体部7は下面電極8に直接的に導通、すなわち接触している。つまり、図1(B)に示した電子部品101の例では、半導体基板1の上部に複数のトレンチを掘り、それらトレンチに導電体を埋めることで導体部7を形成したが、図5に示す例では、半導体基板1の下部に複数のトレンチを掘り、それらトレンチに導電体を埋めることで導体部7を形成している。
【0039】
本実施形態で示すように、キャパシタ領域ZCに配置する導体部7は半導体基板1の下部に形成してもよい。電子部品102においても、縦型キャパシタの第2の電極を構成する、半導体基板1、導体部7及び下面電極8の合成導電率が高いので、Q値の高いキャパシタが構成できる。
【0040】
《第3の実施形態》
第3の実施形態では、キャパシタ領域に配置する導体部の構成がこれまでの実施形態で示した例とは異なる電子部品について例示する。
【0041】
図6は第3の実施形態に係る電子部品103の断面図である。その断面位置は図1(B)に示した位置に対応している。図1(B)に示した電子部品101では、導体部7が半導体基板1の上部寄りの位置に形成されていたが、図6に示す例では導体部7が半導体基板1の上面から下面にかけて形成されている。
【0042】
本実施形態で示すように、キャパシタ領域ZCに配置する導体部7は半導体基板1の上面から下面にかけて形成してもよい。電子部品103においても、縦型キャパシタの第2の電極を構成する、半導体基板1、導体部7及び下面電極8の合成導電率が高いので、Q値の高いキャパシタが構成できる。
【0043】
《第4の実施形態》
第4の実施形態では、キャパシタ領域に配置する導体部の構成がこれまでの実施形態で示した例とは異なる電子部品について例示する。
【0044】
図7は第4の実施形態に係る電子部品104の断面図である。その断面位置は図1(B)に示した位置に対応している。図1(B)に示した電子部品101では、導体部7が半導体基板1の上部寄りの位置に形成されていたが、図7に示す例では導体部7が半導体基板1の内部に形成されている。
【0045】
本実施形態で示すように、キャパシタ領域ZCに配置する導体部7は半導体基板1の内部に形成してもよい。電子部品104においても、縦型キャパシタの第2の電極を構成する、半導体基板1、導体部7及び下面電極8の合成導電率が高いので、Q値の高いキャパシタが構成できる。
【0046】
《第5の実施形態》
第5の実施形態では、キャパシタ領域に配置する導体部の構成がこれまでの実施形態で示した例とは異なる電子部品について例示する。
【0047】
図8は第5の実施形態に係る電子部品105の断面図である。その断面位置は図1(B)に示した位置に対応している。図1(B)に示した電子部品101では、導体部7が半導体基板1の上部に形成されていて、図5に示した電子部品102では、導体部7が半導体基板1の下部に形成されていたが、図8に示す例では複数の導体部7のうち一部が半導体基板1の上部に形成されていて、一部が半導体基板1の下部に形成されている。
【0048】
本実施形態で示すように、キャパシタ領域ZCに配置する導体部7は半導体基板1の上部下部の両方に形成してもよい。電子部品102においても、縦型キャパシタの第2の電極を構成する、半導体基板1、導体部7及び下面電極8の合成導電率が高いので、Q値の高いキャパシタが構成できる。
【0049】
《第6の実施形態》
第6の実施形態では、縦型キャパシタの構成がこれまでの実施形態で示した例とは異なる電子部品について例示する。
【0050】
図9(A)は第6の実施形態に係る電子部品106の部分縦断面図であり、図9(B)は図9(A)におけるX-X部分での平断面図である。図9(A)、図9(B)いずれも、縦型キャパシタ部分について図示していて、その他の部分の構成はこれまでの実施形態で示した電子部品と同様である。
【0051】
本実施形態の電子部品106は、半導体基板1と、この半導体基板1上に形成された絶縁体層2と、絶縁体層2に形成された導電体層3E,3F,3Gと、半導体基板1上に形成された誘電体層4と、導電体層3G上に形成された第1パッド電極9Aと、半導体基板1の上面側に形成された保護膜10と、半導体基板1の下面に形成された下面電極8と、を備える。各部の材料例は第1の実施形態で説明したとおりである。
【0052】
本実施形態では、半導体基板1の上面に複数のトレンチを掘り、これらトレンチの内面と半導体基板1の上面に誘電体材を被覆されることで誘電体層4が形成されている。また、導電体層3Eが誘電体層4上に被覆されている。導体部7は、半導体基板1の下面に複数のトレンチを掘り、それらトレンチに導電体を埋めることで形成されている。
【0053】
本実施形態によれば、導体部7と誘電体層4との間隙を小さくできるので、縦型キャパシタのQ値を効果的に高めることができる。また、導電体層3Eと半導体基板1との間に介在する誘電体層4の実効面積を大きくでき、縦型キャパシタを省スペース化できる。
【0054】
《第7の実施形態》
第7の実施形態では、縦型キャパシタの構成がこれまでの実施形態で示した例とは異なる電子部品について例示する。
【0055】
図10は第7の実施形態に係る電子部品107の部分平断面図である。その断面位置は図9(B)に示した位置に対応している。
【0056】
図9(A)、図9(B)に示した例では、導電体層3Eの下部及び導体部7をライン状に形成し、誘電体層4の下部を溝状に形成したが、本実施形態では、導電体層3E及び導体部7の下部を円柱状に形成し、誘電体層4の下部を円筒状に形成している。
【0057】
本実施形態によれば、第6の実施形態の場合と同様に、導体部7と誘電体層4との間隙を小さくできるので、縦型キャパシタのQ値を効果的に高めることができる。また、導電体層3Eと半導体基板1との間に介在する誘電体層4の実効面積を大きくでき、縦型キャパシタを省スペース化できる。
【0058】
以上に示した各実施形態では、インダクタ領域ZLに形成されるインダクタパターンをスパイラル状としたが、インダクタ領域ZLに形成されるインダクタパターンはスパイラル状に限らない。例えばループ状でもよいし、それぞれループ状の複数の導体パターンを積層してそれらを層間接続導電体で繋いだヘリカル状であってもよい。
【0059】
また、図1ではY軸方向に延びた導体部を示したが、導体部の形状はこれに限らない。例えば、複数の円柱形状でもよいし、複数の十字形状でもよいし、複数の筒形状でもよい。
【0060】
最後に、本発明は上述した各実施形態に限られるものではない。当業者によって適宜変形及び変更が可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変形及び変更が含まれる。
【0061】
各実施形態ではパッシブコンポーネントとしてキャパシタ及びインダクタを備える電子部品を示したが、パッシブコンポーネントと共にアクティブコンポーネントを備える電子部品についても同様に適用できる。
【0062】
また、図1(A)、図1(B)に示した例では、半導体基板1の平面に対して垂直方向に視て、導体部7が、X軸方向では誘電体層4の形成領域に導体部7が収まり、Y軸方向では誘電体層4の形成領域から導体部7がはみ出ているが、これに限られない。例えば、導体部7が、X軸方向において誘電体層4の形成領域外にも配置されていてもよい。その場合でも、半導体基板1、導体部7及び下面電極8が構成する第2電極に流れる電流経路の実質的な導電率を高めるために有効である。
【0063】
また、以上に示した複数の実施形態では、導体部7を縦型キャパシタのキャパシタ領域ZCにのみ配置したが、導体部はキャパシタ領域外に配置されていてもよい。その場合でも、導体部7が、半導体基板1におけるキャパシタ領域ZCに、インダクタ領域ZLに比較して高い割合で配置されていればよい。
【符号の説明】
【0064】
C1,C2…キャパシタ
L1,L2…インダクタ
MC…インピーダンス整合回路
P1,P2…ポート
PA…パワーアンプ
ZC…キャパシタ領域
ZL…インダクタ領域
1…半導体基板
2…絶縁体層
3A,3B,3C,3D,3E,3F,3G,3H…導電体層
4,5…誘電体層
7…導体部
8…下面電極
9A…第1パッド電極
9B…第2パッド電極
10…保護膜
101,101A,101B,102,103,104,105,106,107…電子部品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10