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特許7747708リチウム含有鉱物からリチウムを回収するための湿式製錬方法、及びこれから回収されたリチウム水溶液
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  • 特許-リチウム含有鉱物からリチウムを回収するための湿式製錬方法、及びこれから回収されたリチウム水溶液 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-22
(45)【発行日】2025-10-01
(54)【発明の名称】リチウム含有鉱物からリチウムを回収するための湿式製錬方法、及びこれから回収されたリチウム水溶液
(51)【国際特許分類】
   C22B 26/12 20060101AFI20250924BHJP
   C22B 1/02 20060101ALI20250924BHJP
   C22B 3/04 20060101ALI20250924BHJP
   C22B 3/20 20060101ALI20250924BHJP
【FI】
C22B26/12
C22B1/02
C22B3/04
C22B3/20
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023187328
(22)【出願日】2023-11-01
(65)【公開番号】P2024068160
(43)【公開日】2024-05-17
【審査請求日】2023-11-01
(31)【優先権主張番号】10-2022-0147137
(32)【優先日】2022-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】506081530
【氏名又は名称】コリア インスティチュート オブ ジオサイエンス アンド ミネラル リソースズ
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【弁理士】
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】シン シュンミュン
(72)【発明者】
【氏名】ジュー サンホ
(72)【発明者】
【氏名】シン ドンジュ
(72)【発明者】
【氏名】リ ドンソク
【審査官】森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-2326682(KR,B1)
【文献】国際公開第2022/204787(WO,A1)
【文献】特開2020-066795(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0010576(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00 - 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム含有鉱物からか焼と、アルカリ金属又はアルカリ土金属の酸化物との水浸出に
よってリチウムを回収するための湿式製錬方法であって、
(a-1)リチウム含有鉱物を破砕・粉砕するステップ;
(a-2)前記破砕・粉砕したリチウム含有鉱物を熱処理するステップ;
(a-3)前記熱処理されたリチウム含有鉱物と、アルカリ金属又はアルカリ土金属の
酸化物とを混合して水浸出した後、固液分離して、1次リチウム水浸出液と1次浸出残渣
に分離するステップ;
(a-4)前記1次浸出残渣をか焼するステップ;
(a-5)前記か焼した1次浸出残渣を水浸出した後、固液分離して、2次リチウム水
浸出液と2次浸出残渣に分離するステップ;及び
(a-6)前記1次リチウム水浸出液又は前記2次リチウム水浸出液からリチウムを回
収するステップ;を含み、
前記(a-2)破砕・粉砕したリチウム含有鉱物を熱処理するステップにおいて,
前記熱処理は、気体条件では窒素、アルゴン及び空気のうちから選択された少なくともいずれかを投入し、圧力条件で、大気圧で行われる,
前記リチウム含有鉱物スポジュメン(Spodumene,LiAlSi)であり、
前記スポジュメン(Spodumene,LiAlSi)には6-9%のLi Oが含まれ、
前記(a-2)ステップにおいて、前記スポジュメン(Spodumene,LiAlSi )を熱処理して、α-相(phase)からβ-相(phase)に相転移し、
前記(a-3)ステップの浸漬反応時間1~12時間において、
前記1次リチウム水浸出液のNa浸出率が23.4~52.3 wt%であり,
前記1次リチウム水浸出液のK浸出率が13.9~39.0 wt%であることを特徴とする,
リチウム含有鉱物からリチウムを回収するための湿式製錬方法。
【請求項2】
上記(a-1)リチウム含有鉱物を破砕・粉砕するステップにおいて、
前記リチウム含有鉱物をJaw Crusher、Gyratory Crusher、Roller Crusher、Cone Crusher、Hammermil Crusher、Tumbling Mill、Vibration Mill、Attrition Mill、Ball Mill、Rod Mill、Pebble Mill、及びAutogeneous Millからなる群から選択された一つ以上の装備で破砕・粉碎して、破砕・粉碎したリチウム含有鉱物を製造し、
前記破砕・粉碎したリチウム含有鉱物の粒子サイズは、5~300μmであることを特徴とする、
請求項1に記載のリチウム含有鉱物からリチウムを回収するための湿式製錬方法。
【請求項3】
前記(a-2)破砕・粉砕したリチウム含有鉱物を熱処理するステップにおいて、
前記熱処理は、温度500~1000℃、時間10分~6時間であることを特徴とする、
請求項1に記載のリチウム含有鉱物からリチウムを回収するための湿式製錬方法。
【請求項4】
上記(a-3)熱処理されたリチウム含有鉱物と、アルカリ金属又はアルカリ土金属の酸化物とを混合して水浸出した後、固液分離して、1次リチウム水浸出液と1次浸出残渣に分離するステップにおいて、
前記アルカリ金属又はアルカリ土金属の酸化物の種類は、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カリウム(KO)、及び酸化ナトリウム(NaO)のうちから選択された少なくともいずれかであることを特徴とする、
請求項1に記載のリチウム含有鉱物からリチウムを回収するための湿式製錬方法。
【請求項5】
上記(a-3)熱処理されたリチウム含有鉱物と、アルカリ金属又はアルカリ土金属の酸化物とを混合して水浸出した後、固液分離して、1次リチウム水浸出液と1次浸出残渣に分離するステップにおいて、
上記水浸出は、水に相転移したリチウム含有鉱物(A)と金属酸化物(B)との混合物の混合割合を質量比率(B/A)で1~6となるように投入し、
反応温度25~100℃、固液比1/20~1/5、反応時間0.5~12時間で行われることを特徴とする、
請求項1に記載のリチウム含有鉱物からリチウムを回収するための湿式製錬方法。
【請求項6】
前記1次リチウム水浸出液のリチウム浸出率は、1~35wt%であることを特徴とする、
請求項1に記載のリチウム含有鉱物からリチウムを回収するための湿式製錬方法。
【請求項7】
上記(a-4)1次浸出残渣をか焼するステップにおいて、
上記か焼工程条件下で、前記1次浸出残渣のか焼反応のギブス(Gibbs)自由エネルギーが0となる温度以上の温度で熱処理され、
上記か焼反応の熱処理温度は、500~1000℃であることを特徴とする、
請求項1に記載のリチウム含有鉱物からリチウムを回収するための湿式製錬方法。
【請求項8】
上記(a-5)か焼した1次浸出残渣を水浸出した後、固液分離して、2次リチウム水浸出液と2次浸出残渣に分離するステップにおいて、
上記水浸出は、か焼した1次浸出残渣を水に投入し、
反応温度25~100℃、固液比1/20~1/5、反応時間0.5~12時間で行われることを特徴とする、
請求項1に記載のリチウム含有鉱物からリチウムを回収するための湿式製錬方法。
【請求項9】
上記(a-5)か焼した1次浸出残渣を水浸出した後、固液分離して、2次リチウム水浸出液と2次浸出残渣に分離するステップは、
(a-7)前記2次浸出残渣をか焼するステップをさらに含み、
上記か焼反応の熱処理温度は、500~1000℃であることを特徴とする、
請求項1に記載のリチウム含有鉱物からリチウムを回収するための湿式製錬方法。
【請求項10】
上記(a-7)2次浸出残渣をか焼するステップは、
(a-8)前記か焼した2次浸出残渣を水浸出した後、固液分離して、3次リチウム水浸出液と3次浸出残渣に分離するステップをさらに含み、
上記水浸出は、か焼した2次浸出残渣を水に投入し、
反応温度25~100℃、固液比1/20~1/5、反応時間0.5~12時間で行われることを特徴とする、
請求項に記載のリチウム含有鉱物からリチウムを回収するための湿式製錬方法。
【請求項11】
上記(a-8)か焼した2次浸出残渣を水浸出した後、固液分離して、3次リチウム水浸出液と3次浸出残渣に分離するステップは、
(a-9)前記3次浸出残渣をか焼するステップをさらに含み、
上記か焼反応の熱処理温度は、500~1000℃であることを特徴とする、
請求項10に記載のリチウム含有鉱物からリチウムを回収するための湿式製錬方法。
【請求項12】
上記(a-9)3次浸出残渣をか焼するステップは、
(a-10)前記か焼した3次浸出残渣を水浸出した後、固液分離して、4次リチウム水浸出液と4次浸出残渣に分離するステップをさらに含み、
上記水浸出は、か焼した3次浸出残渣を水に投入し、
反応温度25~100℃、固液比1/20~1/5、反応時間0.5~12時間で行われることを特徴とする、
請求項11に記載のリチウム含有鉱物からリチウムを回収するための湿式製錬方法。
【請求項13】
請求項1に記載のリチウム含有鉱物からリチウムを回収するための湿式製錬方法で回収されたリチウム水溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学物質を使いすぎることなく、リチウム含有鉱物からか焼と、金属酸化物との水浸出によってリチウムを回収するための湿式製錬方法、及びこれから回収されたリチウム水溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムは、金属元素のうち最も軽い元素であって、リチウムを活用する産業は、バッテリ74%、ガラス及びセラミック14%、潤滑油3%、連続鋳造2%、高分子生産2%、空気処理1%などと、様々である。
【0003】
特に、近年、電気自動車、エネルギー貯蔵システム及び携帯用電子製品に使用するリチウムイオンバッテリの需要が急激に増加するにつれ、バッテリ市場が大きく成長している。
【0004】
これによって、リチウムイオンバッテリの正極材、負極材、及び電解液における核心原料物質であるリチウム化合物の需要も伴って爆発的に成長することが予想される。
【0005】
これらのリチウムの需要を満たすためにリチウムの生産量は、2010年28,100トンから2020年基準に82,500トンまで大きく上昇し、2021年には約100,000トンまで増加することが予想されている。
【0006】
2021年基準に244GWhであったリチウムイオンバッテリの需要は、2030年まで約34%の年平均成長率とともに、3,254GWhと大きく成長することが展望される。すなわち、これからもリチウム化合物の生産量は、増加し続けることが予想される。
【0007】
リチウムは、鉱物資源と塩湖資源から生産され、ほとんど炭酸リチウムの形に生産される。しかし、鉱物資源は、オーストラリア、塩湖資源は、アルゼンチン、ボリビア、チリのような南米に集中して分布されている。このように、リチウム資源は高い地域偏在性を示す。
【0008】
リチウムを含有している鉱物資源では、spodumene(LiAlSi)、lepidolite(K(Li,Al)(Si,Al)10(F,OH))、zinnwaldite(KLiFeAl(AlSi)O10(F,OH))、及びamblygonite((Li,Na)Al(PO)(F,OH))などがある。
【0009】
このうち代表的なリチウム鉱物は、6-9%のLiOが含有されているSpodumeneであり、Spodumeneからリチウムを回収する商用化工程は、硫酸法及びオーストラリアのSiLeach(登録商標)工程がある。
【0010】
硫酸法の場合、93%以上の高濃縮した硫酸溶液を使用して、β-spodumeneからリチウムを硫酸リチウムの形に抽出する。
【0011】
SiLeach(登録商標)工程の場合は、α-spodumeneからリチウムを浸出するために、硫酸とフッ酸とを混合して使用する。
【0012】
このように、リチウム鉱物からリチウムを回収するためには、高濃縮した酸性溶液が要求されることから、化学物質の使い過ぎが必ず必要である。
【0013】
よって、本出願人は、種々の研究を行って努力し、化学物質を使いすぎることなく、リチウム含有鉱物からか焼と、金属酸化物との水浸出によってリチウムを回収するための湿式製錬方法を獲得して、本発明を完成することになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
韓国公開特許第10-2021-0010576号(特許公開日:2021年 1月27日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
よって、本発明の目的は、化学物質を使いすぎることなく、リチウム含有鉱物からか焼と、金属酸化物との水浸出によってリチウムを回収するための湿式製錬方法を提供することにある。
【0016】
また、本発明の目的は、化学物質を使いすぎることなく、リチウム含有鉱物からか焼と、金属酸化物との水浸出によってリチウムを回収するための湿式製錬方法により回収したリチウム水溶液を提供することにある。
【0017】
本発明が解決しようとする課題は、以上で言及した課題に限らず、言及していないさらに他の課題は、以下の記載から当業者にとって明確に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本発明の一側面によれば、
リチウム含有鉱物からか焼と、アルカリ金属又はアルカリ土金属の酸化物との水浸出によってリチウムを回収するための湿式製錬方法であって、
(a-1)リチウム含有鉱物を破砕・粉砕するステップ;
(a-2)前記破砕・粉砕したリチウム含有鉱物を熱処理するステップ;
(a-3)前記熱処理されたリチウム含有鉱物と、アルカリ金属又はアルカリ土金属の酸化物とを混合して水浸出した後、固液分離して、1次リチウム水浸出液と1次浸出残渣に分離するステップ;
(a-4)前記1次浸出残渣をか焼するステップ;
(a-5)前記か焼した1次浸出残渣を水浸出した後、固液分離して、2次リチウム水浸出液と2次浸出残渣に分離するステップ;及び
(a-6)前記1次リチウム水浸出液又は前記2次リチウム水浸出液からリチウムを回収するステップ;を含む、
リチウム含有鉱物からリチウムを回収するための湿式製錬方法を提供する。
【0019】
本発明の一実施例によれば、上記(a-1)リチウム含有鉱物を破砕・粉砕するステップにおいて、
前記リチウム含有鉱物をJaw Crusher、Gyratory Crusher、Roller Crusher、Cone Crusher、Hammermil Crusher、Tumbling Mill、Vibration Mill、Attrition Mill、Ball Mill、Rod Mill、Pebble Mill、及びAutogeneous Millからなる群から選択された一つ以上の装備で破砕・粉碎して、破砕・粉碎したリチウム含有鉱物を製造し、
前記破砕・粉碎したリチウム含有鉱物の粒子サイズは、5~300μmであってもよい。
【0020】
本発明の一実施例によれば、前記リチウム含有鉱物は、スポジュメン(Spodumene,LiAlSi)、リチア雲母(Lepidolite,K(Li,Al)(Si,Al)10(F,OH)))、チンワルド雲母(Zinnwaldite,KLiFeAl(AlSi)O10(F,OH)))、及びアンブリゴナイト(Amblygonite,(Li,Na)Al(PO)(F,OH)))のうちから選択された少なくともいずれかであってもよい。
【0021】
本発明の一実施例によれば、上記(a-2)破砕・粉砕したリチウム含有鉱物を熱処理するステップにおいて、
前記熱処理は、温度500~1000℃、時間10分~6時間、気体条件では窒素、アルゴン及び空気のうちから選択された少なくともいずれかを投入し、圧力条件で、大気圧で行われることを特徴とし、
前記リチウム含有鉱物がスポジュメン(Spodumene,LiAlSi)である場合、
熱処理して、α-相(phase)からβ-相(phase)に相転移するステップをさらに含んでいてもよい。
【0022】
本発明の一実施例によれば、上記(a-3)熱処理されたリチウム含有鉱物と、アルカリ金属又はアルカリ土金属の酸化物とを混合して水浸出した後、固液分離して、1次リチウム水浸出液と1次浸出残渣に分離するステップにおいて、
前記アルカリ金属又はアルカリ土金属の酸化物の種類は、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カリウム(KO)、及び酸化ナトリウム(NaO)のうちから選択された少なくともいずれかであってもよい。
【0023】
本発明の一実施例によれば、上記(a-3)熱処理されたリチウム含有鉱物と、アルカリ金属又はアルカリ土金属の酸化物とを混合して水浸出した後、固液分離して、1次リチウム水浸出液と1次浸出残渣に分離するステップにおいて、
上記水浸出は、水に相転移しにリチウム含有鉱物(A)と金属酸化物(B)との混合物の混合割合を質量比率(B/A)で1~6となるように投入し、
反応温度25~100℃、固液比1/20~1/5、反応時間0.5~12時間で行うことができる。
【0024】
本発明の一実施例によれば、前記1次リチウム水浸出液のリチウム浸出率は、1~35wt%であってもよい。
【0025】
本発明の一実施例によれば、上記(a-4)1次浸出残渣をか焼するステップにおいて、
上記か焼工程条件下で、前記浸出残渣のか焼反応のギブス(Gibbs)自由エネルギーが0となる温度以上の温度で熱処理され、
上記か焼反応の熱処理温度は、500~1000℃であってもよい。
【0026】
本発明の一実施例によれば、上記(a-5)か焼した1次浸出残渣を水浸出した後、固液分離して、2次リチウム水浸出液と2次浸出残渣に分離するステップにおいて、
上記水浸出は、か焼した1次浸出残渣を水に投入し、
反応温度25~100℃、固液比1/20~1/5、反応時間0.5~12時間で行うことができる。
【0027】
本発明の一実施例によれば、上記(a-5)か焼した1次浸出残渣を水浸出した後、固液分離して、2次リチウム水浸出液と2次浸出残渣に分離するステップは、
(a-7)前記2次浸出残渣をか焼するステップをさらに含み、
上記か焼反応の熱処理温度は、500~1000℃であってもよい。
【0028】
本発明の一実施例によれば、上記(a-7)2次浸出残渣をか焼するステップは、
(a-8)前記か焼した2次浸出残渣を水浸出した後、固液分離して、3次リチウム水浸出液と3次浸出残渣に分離するステップをさらに含み、
上記水浸出は、か焼した2次浸出残渣を水に投入し、
反応温度25~100℃、固液比1/20~1/5、反応時間0.5~12時間で行うことができる。
【0029】
本発明の一実施例によれば、上記(a-8)か焼した2次浸出残渣を水浸出した後、固液分離して、3次リチウム水浸出液と3次浸出残渣に分離するステップは、
(a-9)前記3次浸出残渣をか焼するステップをさらに含み、
上記か焼反応の熱処理温度は、500~1000℃であってもよい。
【0030】
本発明の一実施例によれば、上記(a-9)3次浸出残渣をか焼するステップは、
(a-10)前記か焼した3次浸出残渣を水浸出した後、固液分離して、4次リチウム水浸出液と4次浸出残渣に分離するステップをさらに含み、
上記水浸出は、か焼した3次浸出残渣を水に投入し、
反応温度25~100℃、固液比1/20~1/5、反応時間0.5~12時間で行うことができる。
【0031】
また、本発明の他の一側面によれば、
前記リチウム含有鉱物からリチウムを回収するための湿式製錬方法で回収されたリチウム水溶液を提供する。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、化学物質を使いすぎることなく、リチウム含有鉱物からか焼と、金属酸化物との水浸出によってリチウムを回収するための湿式製錬方法を提供するため、化学廃棄物の処理コストが節減され、リチウムの回収コストも節減される。
【0033】
また、本発明は、産業界に適用することができるように、前記化学物質を使いすぎることなく、リチウム含有鉱物からか焼と、金属酸化物との水浸出によってリチウムを回収するための湿式製錬方法により回収したリチウム水溶液を提供するため、適用範囲が広い。
【0034】
本発明の効果は、上記効果に限定されるものではなく、本発明の詳細な説明又は特許請求の範囲に記載した発明の構成から推論可能な効果をいずれも含むものであると理解しなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の一実施例によるリチウム含有鉱物からリチウムを回収するための湿式製錬方法の工程流れ図である。
図2】本発明の一実施例によるスポジュメン(Spodumene)の粒度分析によって獲得した粒度累積分布図である。
図3】本発明の一実施例によるスポジュメン(Spodumene)試料の熱処理前後のXRD分析結果である。
図4】本発明の一実施例によるCaO/Spodumene混合物の水浸出後、獲得した浸出残渣のXRD分析結果である。
図5】本発明の一実施例による水浸出の浸出残渣を900℃で、6時間か焼した後のか焼産物のXRD分析結果である。
図6】本発明の一実施例による4次水浸出後、獲得した浸出残渣のXRD分析結果である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付の図面を参照して、本発明による好ましい実施例を詳説することとする。
【0037】
本発明の利点及び特徴、並びにそれを達成する方法は、添付の図面と共に詳細に後述する実施例を参照すれば明確になる。
【0038】
しかし、本発明は、以下で開示の実施例によって限定されるものではなく、相異する様々な形態に具現されるものである。但し、本実施例は、本発明の開示を完全なものにして、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は、請求項の範疇によって定義されるだけである。
【0039】
また、本発明を説明するにあたり、関連する公知の技術などが本発明の要旨を曖昧にすると判断される場合、それに関する詳説を省略することとする。
【0040】
以下、本発明を詳説する。
【0041】
[リチウム含有鉱物からリチウムを回収するための湿式製錬方法]
本発明は、化学物質を使いすぎることなく、リチウム含有鉱物からか焼と、金属酸化物との水浸出によってリチウムを回収するための湿式製錬方法を提供する。
【0042】
本発明は、リチウム含有鉱物からか焼と、アルカリ金属又はアルカリ土金属の酸化物との水浸出によってリチウムを回収するための湿式製錬方法であって、
(a-1)リチウム含有鉱物を破砕・粉砕するステップ;
(a-2)前記破砕・粉砕したリチウム含有鉱物を熱処理するステップ;
(a-3)前記熱処理されたリチウム含有鉱物と、アルカリ金属又はアルカリ土金属の酸化物とを混合して水浸出した後、固液分離して、1次リチウム水浸出液と1次浸出残渣に分離するステップ;
(a-4)前記1次浸出残渣をか焼するステップ;
(a-5)前記か焼した1次浸出残渣を水浸出した後、固液分離して、2次リチウム水浸出液と2次浸出残渣に分離するステップ;及び
(a-6)前記1次リチウム水浸出液又は前記2次リチウム水浸出液からリチウムを回収するステップ;を含む。
【0043】
本発明は、化学物質を使いすぎることなく、リチウム含有鉱物からか焼と、金属酸化物との水浸出によってリチウムを回収するための湿式製錬方法を提供するため、化学廃棄物の処理コストが節減され、リチウムの回収コストも節減される。
【0044】
リチウムは、金属元素のうち最も軽い元素であって、リチウムを活用する産業は、バッテリ74%、ガラス及びセラミック14%、潤滑油3%、連続鋳造2%、高分子生産2%、空気処理1%などと、様々である。
【0045】
特に、近年、電気自動車、エネルギー貯蔵システム及び携帯用電子製品に使用するリチウムイオンバッテリの需要が急激に増加するにつれ、バッテリ市場が大きく成長している。
【0046】
これによって、リチウムイオンバッテリの正極材、負極材、及び電解液における核心原料物質であるリチウム化合物の需要も伴って爆発的に成長することが予想される。
【0047】
これらのリチウムの需要を満たすためにリチウムの生産量は、2010年28,100トンから2020年基準に82,500トンまで大きく上昇し、2021年には約100,000トンまで増加することが予想されている。
【0048】
2021年基準に244GWhであったリチウムイオンバッテリの需要は、2030年まで約34%の年平均成長率とともに、3,254GWhと大きく成長することが展望される。すなわち、これからもリチウム化合物の生産量は、増加し続けることが予想される。
【0049】
リチウムは、鉱物資源と塩湖資源から生産され、ほとんど炭酸リチウムの形に生産される。しかし、鉱物資源は、オーストラリア、塩湖資源は、アルゼンチン、ボリビア、チリのような南米に集中して分布されている。このように、リチウム資源は高い地域偏在性を示す。
【0050】
リチウムを含有している鉱物資源では、Spodumene(LiAlSi)、Lepidolite(K(Li,Al)(Si,Al)10(F,OH))、Zinnwaldite(KLiFeAl(AlSi)O10(F,OH))、及びAmblygonite((Li,Na)Al(PO)(F,OH))などがある。
【0051】
このうち代表的なリチウム鉱物は、6-9%のLiOが含有されているSpodumeneであり、Spodumeneからリチウムを回収する商用化工程は、硫酸法及びオーストラリアのSiLeach(登録商標)工程がある。
【0052】
硫酸法の場合、93%以上の高濃縮した硫酸溶液を使用して、β-spodumeneからリチウムを硫酸リチウムの形に抽出する。
【0053】
SiLeach(登録商標)工程の場合は、α-spodumeneからリチウムを浸出するために、硫酸とフッ酸とを混合して使用する。
【0054】
このように、リチウム鉱物からリチウムを回収するためには、高濃縮した酸性溶液が要求されることから、化学物質の使い過ぎが必ず必要である。
【0055】
よって、本出願人は、種々の研究を行って努力し、化学物質を使いすぎることなく、リチウム含有鉱物からか焼と、金属酸化物との水浸出によってリチウムを回収するための湿式製錬方法を獲得して、本発明を完成することになった。
【0056】
ここで、上記(a-1)リチウム含有鉱物を破砕・粉砕するステップにおいて、
前記リチウム含有鉱物をJaw Crusher、Gyratory Crusher、Roller Crusher、Cone Crusher、Hammermil Crusher、Tumbling Mill、Vibration Mill、Attrition Mill、Ball Mill、Rod Mill、Pebble Mill、及びAutogeneous Millからなる群から選択された一つ以上の装備で破砕・粉碎して、破砕・粉碎したリチウム含有鉱物を製造し、
前記破砕・粉碎したリチウム含有鉱物の粒子サイズは、5~300μmであってもよい。
【0057】
このとき、前記破砕・粉碎したリチウム含有鉱物の粒子サイズは、好ましくは、5~298μmであってもよく、より好ましくは、5~295μmであってもよい。
【0058】
そして、前記リチウム含有鉱物は、スポジュメン(Spodumene,LiAlSi)、リチア雲母(Lepidolite,K(Li,Al)(Si,Al)10(F,OH)))、チンワルド雲母(Zinnwaldite,KLiFeAl(AlSi)O10(F,OH)))、及びアンブリゴナイト(Amblygonite,(Li,Na)Al(PO)(F,OH)))のうちから選択された少なくともいずれかであってもよい。
【0059】
また、上記(a-2)破砕・粉砕したリチウム含有鉱物を熱処理するステップにおいて、
前記熱処理は、温度500~1000℃、時間10分~6時間、気体条件では窒素、アルゴン及び空気のうちから選択された少なくともいずれかを投入し、圧力条件で、大気圧で行われることを特徴とし、
前記リチウム含有鉱物がスポジュメン(Spodumene,LiAlSi)である場合、
熱処理して、α-相(phase)からβ-相(phase)に相転移するステップをさらに含んでいてもよい。
【0060】
ここで、上記熱処理条件が上記範囲を外れる場合、熱処理効率が減少し、経済的でない短所があり得る。
【0061】
このとき、上記熱処理温度は、好ましくは、500~980℃であってもよく、より好ましくは、500~950℃であってもよい。
【0062】
そして、上記熱処理時間は、好ましくは、10分~5.8時間であってもよく、より好ましくは、10分~5.5時間であってもよい。
【0063】
ここで、上記(a-3)熱処理されたリチウム含有鉱物と、アルカリ金属又はアルカリ土金属の酸化物とを混合して水浸出した後、固液分離して、1次リチウム水浸出液と1次浸出残渣に分離するステップにおいて、
前記アルカリ金属又はアルカリ土金属の酸化物の種類は、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カリウム(KO)、及び酸化ナトリウム(NaO)のうちから選択された少なくともいずれかであってもよい。
【0064】
また、上記(a-3)熱処理されたリチウム含有鉱物と、アルカリ金属又はアルカリ土金属の酸化物とを混合して水浸出した後、固液分離して、1次リチウム水浸出液と1次浸出残渣に分離するステップにおいて、
上記水浸出は、水に相転移したリチウム含有鉱物(A)と金属酸化物(B)との混合物の混合割合を質量比率(B/A)で1~6となるように投入し、
反応温度25~100℃、固液比1/20~1/5、反応時間0.5~12時間で行うことができる。
【0065】
ここで、上記水浸出時、相転移したリチウム含有鉱物(A)と金属酸化物(B)との混合物の混合割合が上記範囲を外れる場合、水浸出効率が減少し、経済的でない短所があり得る。
【0066】
このとき、上記水浸出時、相転移したリチウム含有鉱物(A)と金属酸化物(B)との混合物の混合割合は、好ましくは、質量比率(B/A)で1~5.8であってもよく、より好ましくは、質量比率(B/A)で1~5.5であってもよい。
【0067】
そして、上記水浸出時、反応温度が上記範囲を外れる場合、水浸出効率が減少し、経済的でない短所があり得る。
【0068】
このとき、上記水浸出時、反応温度は、好ましくは、25~98℃であってもよく、より好ましくは、25~95℃であってもよい。
【0069】
また、上記水浸出時、固液比が上記範囲を外れる場合、水浸出効率が減少し、経済的でない短所があり得る。
【0070】
このとき、上記水浸出時、固液比は、好ましくは、1/20~1/8であってもよく、より好ましくは、1/15~1/8であってもよい。
【0071】
そして、上記水浸出時、反応時間が上記範囲を外れる場合、水浸出効率が減少し、経済的でない短所があり得る。
【0072】
このとき、上記水浸出時、反応時間は、好ましくは、0.5~11.5時間であってもよく、より好ましくは、0.5~11時間であってもよい。
【0073】
また、前記1次リチウム水浸出液のリチウム浸出率は、1~35wt%であってもよい。
【0074】
そして、上記(a-4)1次浸出残渣をか焼するステップにおいて、
上記か焼工程条件下で、前記浸出残渣のか焼反応のギブス(Gibbs)自由エネルギーが0となる温度以上の温度で熱処理され、
上記か焼反応の熱処理温度は、500~1000℃であってもよい。
【0075】
ここで、上記か焼反応の熱処理温度が上記範囲を外れる場合、か焼反応効率が減少し、経済的でない短所があり得る。
【0076】
このとき、上記か焼反応の熱処理温度は、好ましくは、600~980℃であってもよく、より好ましくは、600~950℃であってもよい。
【0077】
また、上記(a-5)か焼した1次浸出残渣を水浸出した後、固液分離して、2次リチウム水浸出液と2次浸出残渣に分離するステップにおいて、
上記水浸出は、か焼した1次浸出残渣を水に投入し、
反応温度25~100℃、固液比1/20~1/5、反応時間0.5~12時間で行うことができる。
【0078】
ここで、前記か焼した1次浸出残渣の水浸出時、反応温度が上記範囲を外れる場合、水浸出効率が減少し、経済的でない短所があり得る。
【0079】
このとき、前記か焼した1次浸出残渣の水浸出時、反応温度は、好ましくは、25~98℃であってもよく、より好ましくは、25~95℃であってもよい。
【0080】
また、前記か焼した1次浸出残渣の水浸出時、固液比が上記範囲を外れる場合、水浸出効率が減少し、経済的でない短所があり得る。
【0081】
このとき、前記か焼した1次浸出残渣の水浸出時、固液比は、好ましくは、1/20~1/8であってもよく、より好ましくは、1/15~1/8であってもよい。
【0082】
そして、前記か焼した1次浸出残渣の水浸出時、反応時間が上記範囲を外れる場合、水浸出効率が減少し、経済的でない短所があり得る。
【0083】
このとき、前記か焼した1次浸出残渣の水浸出時、反応時間は、0.5~11.5時間であってもよく、より好ましくは、0.5~11時間であってもよい。
【0084】
そして、上記(a-5)か焼した1次浸出残渣を水浸出した後、固液分離して、2次リチウム水浸出液と2次浸出残渣に分離するステップは、
(a-7)前記2次浸出残渣をか焼するステップをさらに含み、
上記か焼反応の熱処理温度は、500~1000℃であってもよい。
【0085】
ここで、上記か焼反応の熱処理温度が上記範囲を外れる場合、か焼反応効率が減少し、経済的でない短所があり得る。
【0086】
このとき、上記か焼反応の熱処理温度は、好ましくは、600~980℃であってもよく、より好ましくは、600~950℃であってもよい。
【0087】
また、上記(a-7)2次浸出残渣をか焼するステップは、
(a-8)前記か焼した2次浸出残渣を水浸出した後、固液分離して、3次リチウム水浸出液と3次浸出残渣に分離するステップをさらに含み、
上記水浸出は、か焼した2次浸出残渣を水に投入し、
反応温度25~100℃、固液比1/20~1/5、反応時間0.5~12時間で行うことができる。
【0088】
ここで、前記か焼した2次浸出残渣の水浸出時、反応温度が上記範囲を外れる場合、水浸出効率が減少し、経済的でない短所があり得る。
【0089】
このとき、前記か焼した2次浸出残渣の水浸出時、反応温度は、好ましくは、25~98℃であってもよく、より好ましくは、25~95℃であってもよい。
【0090】
また、前記か焼した2次浸出残渣の水浸出時、固液比が上記範囲を外れる場合、水浸出効率が減少し、経済的でない短所があり得る。
【0091】
このとき、前記か焼した2次浸出残渣の水浸出時、固液比は、好ましくは、1/20~1/8であってもよく、より好ましくは、1/15~1/8であってもよい。
【0092】
そして、前記か焼した2次浸出残渣の水浸出時、反応時間が上記範囲を外れる場合、水浸出効率が減少し、経済的でない短所があり得る。
【0093】
このとき、前記か焼した2次浸出残渣の水浸出時、反応時間は、好ましくは、0.5~11.5時間であってもよく、より好ましくは、0.5~11時間であってもよい。
【0094】
また、上記(a-8)か焼した2次浸出残渣を水浸出した後、固液分離して、3次リチウム水浸出液と3次浸出残渣に分離するステップは、
(a-9)前記3次浸出残渣をか焼するステップをさらに含み、
上記か焼反応の熱処理温度は、500~1000℃であってもよい。
【0095】
ここで、上記か焼反応の熱処理温度が上記範囲を外れる場合、か焼反応効率が減少し、経済的でない短所があり得る。
【0096】
このとき、上記か焼反応の熱処理温度は、好ましくは、600~980℃であってもよく、より好ましくは、600~950℃であってもよい。
【0097】
また、上記(a-9)3次浸出残渣をか焼するステップは、
(a-10)前記か焼した3次浸出残渣を水浸出した後、固液分離して、4次リチウム水浸出液と4次浸出残渣に分離するステップをさらに含み、
上記水浸出は、か焼した3次浸出残渣を水に投入し、
反応温度25~100℃、固液比1/20~1/5、反応時間0.5~12時間で行うことができる。
【0098】
ここで、前記か焼した3次浸出残渣の水浸出時、反応温度が上記範囲を外れる場合、水浸出効率が減少し、経済的でない短所があり得る。
【0099】
このとき、前記か焼した3次浸出残渣の水浸出時、反応温度は、好ましくは、25~98℃であってもよく、より好ましくは、25~95℃であってもよい。
【0100】
また、前記か焼した3次浸出残渣の水浸出時、固液比が上記範囲を外れる場合、水浸出効率が減少し、経済的でない短所があり得る。
【0101】
このとき、前記か焼した3次浸出残渣の水浸出時、固液比は、好ましくは、1/20~1/8であってもよく、より好ましくは、1/15~1/8であってもよい。
【0102】
そして、前記か焼した3次浸出残渣の水浸出時、反応時間が上記範囲を外れる場合、水浸出効率が減少し、経済的でない短所があり得る。
【0103】
このとき、前記か焼した3次浸出残渣の水浸出時、反応時間は、好ましくは、0.5~11.5時間であってもよく、より好ましくは、0.5~11時間であってもよい。
【0104】
図1は、本発明の一実施例によるリチウム含有鉱物からリチウムを回収するための湿式製錬方法の工程流れ図である。
【0105】
図1を参照すると、リチウム含有鉱物を破砕・粉碎(S110)した後、破砕・粉碎したリチウム含有鉱物を熱処理(S120)することができる。
【0106】
その後、前記熱処理されたリチウム含有鉱物と、アルカリ金属又はアルカリ土金属の酸化物とを混合して水浸出した後、固液分離して、1次リチウム水浸出液と1次浸出残渣に分離(S130)することができる。
【0107】
その後、前記1次浸出残渣をか焼(S140)することができ、前記か焼した1次浸出残渣を水浸出した後、固液分離して、2次リチウム水浸出液と2次浸出残渣に分離(S150)することができる。
【0108】
その後、前記1次リチウム水浸出液又は前記2次リチウム水浸出液からリチウムを回収(S160)することができる。
【0109】
ここで、前記か焼した1次浸出残渣を水浸出した後、固液分離して、2次リチウム水浸出液と2次浸出残渣に分離するステップは、
前記2次浸出残渣をか焼するステップをさらに含んでいてもよい。
【0110】
そして、前記2次浸出残渣をか焼するステップは、
前記か焼した2次浸出残渣を水浸出した後、固液分離して、3次リチウム水浸出液と3次浸出残渣に分離するステップをさらに含んでいてもよい。
【0111】
また、前記か焼した2次浸出残渣を水浸出した後、固液分離して、3次リチウム水浸出液と3次浸出残渣に分離するステップは、
前記3次浸出残渣をか焼するステップをさらに含んでいてもよい。
【0112】
そして、前記3次浸出残渣をか焼するステップは、
前記か焼した3次浸出残渣を水浸出した後、固液分離して、4次リチウム水浸出液と4次浸出残渣に分離するステップをさらに含んでいてもよい。
【0113】
その後、前記3次リチウム水浸出液又は前記4次リチウム水浸出液からリチウムを回収することができる。
【0114】
[リチウム含有鉱物からリチウムを回収するための湿式製錬方法で回収されたリチウム水溶液]
本発明は、産業界に適用することができるように、化学物質を使いすぎることなく、リチウム含有鉱物からか焼と、金属酸化物との水浸出によってリチウムを回収するための湿式製錬方法により回収したリチウム水溶液を提供する。
【0115】
本発明は、前記リチウム含有鉱物からリチウムを回収するための湿式製錬方法で回収されたリチウム水溶液を提供する。
【0116】
本発明は、産業界に適用することができるように、前記化学物質を使いすぎることなく、リチウム含有鉱物からか焼と、金属酸化物との水浸出によってリチウムを回収するための湿式製錬方法により回収したリチウム水溶液を提供するため、適用範囲が広い。
【0117】
以下では、実施例によって本発明をより詳説する。しかし、下記の実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲が下記の実施例によって限定されるものではない。下記の実施例は、本発明の範囲内における当業者にとって適宜修正、変更することができる。
【0118】
<実施例>
<実施例1>スポジュメンの粒度分析及び相転移を行う
リチウムが含有されているスポジュメン(Spodumene)を破砕・粉碎した粉末を用意した。
【0119】
前記スポジュメン(Spodumene)の粒度分布は、図2及び下記の表1に示した。
【0120】
図2は、上記実施例1によるスポジュメン(Spodumene)の粒度分析によって獲得した粒度累積分布図である。
【0121】
【表1】
【0122】
図2及び上記表1を参照すると、α-spodumeneの粒度分析の結果、最も多く分布されている粒度サイズは、55.8μmであり、粒度分布のうち、10%(D10)は24.306μm、50%(D50)は59.14μm、90%(D90)は134.751μmである。すなわち、供給されたα-spodumeneの中間粒度は、59.14μmであり、試料の90%以上は、100mesh(150μm)以下の粒度サイズを有することが確認された。
【0123】
そして、下記の表2では、上記実施例1で使用したスポジュメン(Spodumene)の組成を示した。
【0124】
【表2】
【0125】
上記表2を参照すると、スポジュメン(Spodumene)内にはLi2.35wt%、Si31.7wt%、Al13.4wt%、Ca0.2wt%、Fe0.1wt%、Na0.32wt%、K0.33wt%、Mg0.02wt%が含有されている。
【0126】
図3は、上記実施例1のスポジュメン(Spodumene)試料の熱処理前後のXRD分析結果である。
【0127】
図3は、熱処理の前、α-spodumeneと、α-spodumeneを1000℃で、12時間熱処理して形成されたβ-spodumeneのXRD分析結果を示したものである。
【0128】
図3を参照すると、スポジュメン(Spodumene)試料の熱処理前後のXRD分析結果は、α-spodumeneからβ-spodumeneに相が変化していることを確認した。
【0129】
<実施例2>相転移したスポジュメンの粒度サイズによる水浸出を行う
上記実施例1におけるβ-spodumeneに相転移したスポジュメンの粒度サイズによる水浸出を行った。
【0130】
β-spodumeneの粒度サイズによるリチウムの浸出傾向を調べるために、100、200、及び270mesh基準に粒度分離を実施しており、各粒度別β-spodumene試料をCaOと1:1の質量比率で混合し、固液比1/10(30g/300mL)、反応温度100℃、攪拌速度200rpm、反応時間12時間の条件で浸出実験を行い、下記の表3に粒度サイズによる浸出率を示した。
【0131】
【表3】
【0132】
上記表3を参照すると、150μm undersizeのspodumeneを使用したとき、Li23.7wt%、Ca0.1wt%、Na26.5wt%、K20.8wt%、Al0.4wt%、Si0.01wt%が浸出され、75μm undersizeの場合は、Li29.2wt%、Ca0.1wt%、Na40.6wt%、K41.4wt%、Al0.6wt%、Si0.02wt%が浸出された。そして、53μm undersizeのspodumeneからLi29.1wt%、Ca0.1wt%、Na44.1wt%、K43.4wt%、Al0.5wt%、Si0.03wt%が浸出された。
【0133】
よって、Spodumeneの粒度サイズが小さくなるほど、金属イオンの浸出率も伴って増加したが、リチウムの場合は、75μm undersizeかつ53μm undersizeでの浸出率が約29wt%と類似であることが確認できた。
【0134】
<実施例3>反応温度による水浸出を行う
上記実施例1における相転移したβ-spodumeneをCaOと混合した後、水浸出時、反応温度による水浸出の結果を評価した。
【0135】
75μm undersizeのβ-spodumeneをCaOとの混合割合1:1、固液比1/10(30g/300mL)、攪拌速度200rpm、反応時間12時間の条件で、反応温度による浸出実験を行った。このとき、反応温度は、25、50、及び100℃に適用した後、下記の表4に反応温度による浸出率を示した。
【0136】
【表4】
【0137】
上記表4を参照すると、反応温度が25℃であるときは、Li0.45wt%、Ca2.1wt%、Na2.6wt%、K7.2wt%、Si0.001wt%が浸出され、50℃では、Li4.0wt%、Ca1.2wt%、Na8.1wt%、K10.8wt%、Al0.16wt%、Si0.001wt%が浸出された。100℃では、Li29.5wt%、Ca0.05wt%、Na40.6wt%、K42.9wt%、Al0.55wt%、Si0.02wt%が浸出されて、反応温度が増加するほど、リチウムの浸出率が急激に増加することが確認できた。
【0138】
<実施例4>反応時間による水浸出を行う
上記実施例1における相転移したβ-spodumeneをCaOと混合した後、水浸出時、反応時間による水浸出の結果を評価した。
【0139】
75μm undersizeのβ-spodumeneをCaOとの混合割合1:1、固液比1/10(30g/300mL)、反応温度100℃、攪拌速度200rpmの条件で、反応時間による浸出実験を行った。このとき、反応時間は、1、2、4、6、9、10、12時間に適用した後、下記の表5に反応時間による浸出率を示した。
【0140】
【表5】
【0141】
表5を参照すると、反応時間が経つほど、Liの浸出率が増加し、9時間が経過した時点から約33wt%の浸出率を維持することが確認できた。Caの場合、1時間が経過したときは、約0.8wt%の浸出率を示したが、4時間が経過した後からは、約0.1wt%に減少した。Na、K、Al、Siの場合、時間が経つほど、浸出率が増加し、12時間が経過したとき、それぞれ51wt%、38.4wt%、0.7wt%、及び0.02wt%であった。その他、FeとMgは、浸出されていない。
【0142】
<実施例5>CaOとβ-spodumeneの質量比率による水浸出を行う
上記実施例1における相転移したβ-spodumeneをCaOと混合した後、水浸出時、CaOとβ-spodumeneの質量比率による水浸出の結果を評価した。
【0143】
75μm undersizeのβ-spodumeneをCaOとの混合割合1:1、固液比1/10(30g/300mL)、反応温度100℃、攪拌速度200rpm、反応時間9時間の条件で、CaOとβ-spodumeneの質量比率による浸出実験を行った。このとき、CaOとβ-spodumeneの質量比率(CaO/β-spodumene)は、1、2、3、4の条件で行った後、下記の表6にCaOとβ-spodumeneの質量比率による浸出率を示した。
【0144】
【表6】
【0145】
上記表6を参照すると、CaO/β-spodumeneの比率が1であるときは、Li31.7wt% Ca0.1wt%、Na33.7wt%、K25.2wt%、Al0.6wt%、Si0.02wt%が浸出され、CaO/β-spodumeneの比率が2であるときは、Li38.2wt%、Ca0.1wt%、Na47.6wt%、K39.4wt%、Al0.5wt%、Si0.02wt%が浸出された。そして、CaO/β-spodumeneの比率が3であるときは、Li39.2wt%、Ca0.1wt%、Na51.8wt%、K42.9wt%、Al0.5wt%、Si0.02wt%が浸出され、CaO/β-spodumeneの比率が4であるときは、Li39.1wt%、Ca0.1wt%、Na54.3wt%、K47.3wt%、Al0.5wt%、Si0.01wt%が浸出された。
【0146】
よって、CaO/β-spodumeneの比率が1以上である場合、Liの浸出率が大きく上昇することを確認した。
【0147】
<実施例6>水浸出残渣のか焼を行う
上記実施例1における相転移したβ-spodumeneをCaOと混合した後、水浸出を行って分離した水浸出残渣についてか焼を行った。
【0148】
75μm undersizeのβ-spodumeneを、CaO/β-spodumeneの質量比率3、固液比1/10(30g/300mL)、攪拌速度200rpm、反応温度100℃の条件で、9時間水浸出を行った後、獲得した浸出残渣のXRD分析結果を図4に示した。
【0149】
図4は、上記実施例6によるCaO/Spodumene混合物の水浸出後、獲得した浸出残渣のXRD分析結果である。
【0150】
図4を参照すると、水浸出後、獲得した浸出残渣には未反応のβ-spodumene、Ca(OH)、CaCOが観察された。前記浸出残渣に存在するCa(OH)とCaCOを再度CaOに変換するために、900℃で、6時間熱処理を行った。そのとき、か焼産物のXRD分析結果を図5に示した。
【0151】
図5は、上記実施例6による水浸出の浸出残渣を900℃で、6時間か焼した後のか焼産物のXRD分析結果である。
【0152】
図5を参照すると、Ca(OH)とCaCOがいずれもCaOに変換されていることが確認できた。前記か焼産物を再度固液比1/10、反応温度100℃、攪拌速度200rpm、反応時間9時間の条件で水浸出を行い、さらにリチウムを浸出するために、このような水浸出とか焼工程を繰り返してリチウムを浸出し続けた。
【0153】
<実施例7>連続か焼及び水浸出を行う
上記実施例1における相転移したβ-spodumeneをCaOと混合した後、水浸出を行って分離した水浸出残渣について連続か焼及び水浸出を行った。
【0154】
75μm undersizeのβ-spodumeneを、CaO/β-spodumeneの質量比率3、固液比1/10(30g/300mL)、攪拌速度200rpm、反応温度100℃の条件で、9時間水浸出を行った後、獲得した水浸出残渣について連続か焼及び水浸出を行った後、下記の表7に4回の水浸出を連続して行って獲得した浸出率を示した。
【0155】
【表7】
【0156】
上記表7を参照すると、1次水浸出から2、3、4次水浸出を行ったとき、リチウムがそれぞれ38.9wt%、31.7wt%、18.5wt%、及び8.1wt%浸出され、最終的に、spodumeneからリチウムを計97.2wt%浸出することができた。このとき、Ca0.9wt%、Na94.7wt%、K82.8wt%、Al2.2wt%、Si0.05wt%が共に浸出され、Fe、Mgの浸出は、発生していない。各々の水浸出実験で獲得した浸出液をいずれも混合したとき、Li197.2mg/L、Ca155.3mg/L、Na31.9mg/L、K29.3mg/L、Al22.2mg/L、Si1.5mg/Lが分析された。
【0157】
各水浸出におけるリチウムのmass balanceを検討すると、計180.6mgのリチウムが含有されているspodumeneから1、2、3、及び4次水浸出によってそれぞれ70.4、57.3、33.4、及び14.6mgのリチウムを浸出して、計175.7mgのLi(97.2wt%)のリチウムを浸出した。
【0158】
そして、4次水浸出後、獲得した浸出残渣のXRD分析結果を図6に示した。
【0159】
図6は、上記実施例7による4次水浸出後、獲得した浸出残渣のXRD分析結果である。
【0160】
図6を参照すると、4次水浸出後、獲得した浸出残渣は、Ca(OH)、CaCO及びCaSiOから構成されている。前記浸出残渣も900℃でのか焼工程を経てCaOに変換させると、再度浸出工程で再使用することができると判断される。
【0161】
今まで、本発明によるリチウム含有鉱物からリチウムを回収するための湿式製錬方法、及びこれから回収されたリチウム水溶液に関する具体的な実施例について説明したが、本発明の範囲から外れない限りでは、様々な実施の変形が可能であることは自明である。
【0162】
よって、本発明の範囲は、上述した実施例に限って定めてはならず、後述する特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等なものによって定めるべきである。
【0163】
すなわち、前述した実施例は、すべての面で例示的なものであり、限定的なものではないと理解しなければならず、本発明の範囲は、詳細な説明よりは、後述する特許請求の範囲によって示され、その特許請求の範囲の意味及び範囲、並びにその等価概念から想到するすべての変更又は変形した形態は、本発明の範囲に含まれるものであると解釈しなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6