(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-22
(45)【発行日】2025-10-01
(54)【発明の名称】運転支援装置及び運転支援方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20250924BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20250924BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G08G1/09 H
(21)【出願番号】P 2023219944
(22)【出願日】2023-12-26
【審査請求日】2024-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 卓
【審査官】上野 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-168827(JP,A)
【文献】特開2022-138594(JP,A)
【文献】国際公開第2020/008227(WO,A1)
【文献】特開2009-157508(JP,A)
【文献】国際公開第2020/202367(WO,A1)
【文献】特開2005-032010(JP,A)
【文献】国際公開第2019/171100(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
G08G 1/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転支援装置であって、
前記運転支援装置が搭載された自車両の周囲に存在する周辺車両から、車車間通信によって、前記周辺車両の車速、位置、走行軌跡及びウインカの指示状態を表す周辺車両情報を取得する取得手段と、
前記自車両の
位置及びウインカの指示状態を表す自車両情報と、前記周辺車両情報とに基づいて、前記自車両と前記周辺車両との衝突の可能性を予測する予測手段と、
前記予測手段による予測結果に基づいて、前記自車両の乗員に報知を行う報知手段と、
前記周辺車両情報に含まれる前記周辺車両の走行軌跡に基づいて、前記周辺車両が車線変更を実行したかどうかを判定する判定手段と、を備え、
前記予測手段は、
前記自車両のウインカの指示状態と、前記周辺車両のウインカの指示状態と、前記自車両に対する前記周辺車両の位置とに少なくとも基づいて、前記自車両と前記周辺車両との衝突の可能性を予測
し、
前記周辺車両のウインカが前記周辺車両の車線変更の完了後にも継続して方向を指示している場合に、前記周辺車両のウインカの指示状態に基づかずに前記自車両と前記周辺車両との衝突の可能性を予測する、運転支援装置。
【請求項2】
右側及び左側のうち、前記自車両が位置する地域において通行を義務付けられている道路の側を第1の側とし、前記第1の側とは反対側を第2の側として、前記予測手段は、
前記自車両に対して前記周辺車両が前記第1の側又は前記第2の側にあることと、
前記自車両のウインカが前記第1の側又は前記第2の側を指示していることと、
前記周辺車両のウインカが前記第1の側又は前記第2の側を指示していることと、
のうちの少なくとも何れかに基づいて、前記自車両と前記周辺車両との衝突の可能性を予測する、請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記予測手段は、
前記自車両及び前記周辺車両が同一の交差点に向けて走行中に、
前記周辺車両が前記自車両に対して前記第1の側にある第1の範囲内又は前記第2の側にある第2の範囲内に位置しており、前記自車両のウインカが前記第2の側を指示しており、かつ前記周辺車両のウインカが前記第1の側を指示している場合に、
前記自車両と前記周辺車両との衝突の可能性がないと予測する、請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記予測手段は、
前記自車両及び前記周辺車両が同一の交差点に向けて走行中に、
前記周辺車両が前記自車両に対して前記第2の側にある第2の範囲内に位置しており、かつ前記周辺車両のウインカが前記第1の側を指示している場合、又は
前記周辺車両が前記自車両に対して前記第2の側にある第2の範囲内に位置しており、前記自車両のウインカが前記第1の側を指示しており、かつ前記周辺車両のウインカが前記第1の側又は前記第2の側を指示している場合に、
前記自車両と前記周辺車両との衝突の可能性がないと予測する、請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記予測手段は、
前記自車両及び前記周辺車両が同一の交差点に向けて走行中に、
前記周辺車両が前記自車両に対して前記第1の側にある第1の範囲内に位置しており、かつ前記自車両のウインカが前記第1の側を指示している場合に、
前記自車両と前記周辺車両との衝突の可能性がないと予測する、請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記予測手段は、
前記自車両及び前記周辺車両が同一の交差点に向けて走行中に、
前記周辺車両が前記自車両に対して前方の第3の範囲内に位置しており、前記自車両のウインカが前記第2の側を指示しており、前記周辺車両のウインカが前記第2の側を指示している場合に、
前記自車両と前記周辺車両との衝突の可能性がないと予測する、請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項7】
前記予測手段は、
前記自車両及び前記周辺車両が同一の交差点に向けて走行中に、
前記周辺車両が前記自車両に対して前方の第3の範囲内に位置しており、前記自車両のウインカが方向を指示していない又は前記第1の側を指示しており、前記周辺車両のウインカが方向を指示していない又は前記第1の側を指示している場合に、
前記自車両と前記周辺車両との衝突の可能性がないと予測する、請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項8】
前記報知手段は、
前記自車両又は前記周辺車両のウインカが方向の指示を変更した時点における前記予測手段による予測結果に基づいて、前記自車両の乗員に報知を行う、請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項9】
前記第1の範囲は、前記自車両に対して前記第1の側にあり所定の距離及び所定の角度で規定される扇形の範囲であり、
前記第2の範囲は、前記自車両に対して前記第2の側にあり所定の距離及び所定の角度で規定される扇形の範囲である、請求項3に記載の運転支援装置。
【請求項10】
前記第3の範囲は、前記自車両に対して前方にあり所定の距離及び所定の角度で規定される扇形の範囲である、請求項6又は7に記載の運転支援装置。
【請求項11】
運転支援方法であって、
取得手段が、自車両の周囲に存在する周辺車両から、車車間通信によって、前記周辺車両の車速、位置、走行軌跡及びウインカの指示状態を表す周辺車両情報を取得する取得工程と、
予測手段が、前記自車両の
位置及びウインカの指示状態を表す自車両情報と、前記周辺車両情報とに基づいて、前記自車両と前記周辺車両との衝突の可能性を予測する予測工程と、
報知手段が、前記予測工程における予測結果に基づいて、前記自車両の乗員に報知を行う報知工程と、
判定手段が、前記周辺車両情報に含まれる前記周辺車両の走行軌跡に基づいて、前記周辺車両が車線変更を実行したかどうかを判定する判定工程と、
を有し、
前記予測工程において、
前記自車両のウインカの指示状態と、前記周辺車両のウインカの指示状態と、前記自車両に対する前記周辺車両の位置とに少なくとも基づいて、前記自車両と前記周辺車両との衝突の可能性を予測
し、
前記周辺車両のウインカが前記周辺車両の車線変更の完了後にも継続して方向を指示している場合に、前記周辺車両のウインカの指示状態に基づかずに前記自車両と前記周辺車両との衝突の可能性を予測する、運転支援方法。
【請求項12】
コンピュータに、
自車両の周囲に存在する周辺車両から、車車間通信によって、前記周辺車両の車速、位置、走行軌跡及びウインカの指示状態を表す周辺車両情報を取得する取得工程と、
前記自車両の
位置及びウインカの指示状態を表す自車両情報と、前記周辺車両情報とに基づいて、前記自車両と前記周辺車両との衝突の可能性を予測する予測工程と、
前記予測工程における予測結果に基づいて、前記自車両の乗員に報知を行う報知工程と、
前記周辺車両情報に含まれる前記周辺車両の走行軌跡に基づいて、前記周辺車両が車線変更を実行したかどうかを判定する判定工程と、を実行させるためのプログラムであって、
前記予測工程において、
前記自車両のウインカの指示状態と、前記周辺車両のウインカの指示状態と、前記自車両に対する前記周辺車両の位置とに少なくとも基づいて、前記自車両と前記周辺車両との衝突の可能性を予測
し、
前記周辺車両のウインカが前記周辺車両の車線変更の完了後にも継続して方向を指示している場合に、前記周辺車両のウインカの指示状態に基づかずに前記自車両と前記周辺車両との衝突の可能性を予測する、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置及び運転支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通参加者の中でも脆弱な立場にある人々にも配慮した持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する取り組みが活発化している。この実現に向けて予防安全技術に関する研究開発を通して交通の安全性や利便性をより一層改善する研究開発に注力している。他車両(周辺車両)等との衝突を防止するための運転支援を行う装置が知られている。特許文献1には、他車両の方向指示器の状態に基づいて危険状態であるかを判定することが記載されている。特許文献2には、ウインカの状態に基づいて先行車両が車線変更するか進路変更するかを判定することが記載されている。特許文献3には、自車両が右折又は左折するかに基づいて、自車両と他車両とが衝突する可能性があるかを判定することが記載されている。特許文献4には、車両の運転者による操舵の状況に応じて衝突回避支援を抑制することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-16950号公報
【文献】特許第7274991号公報
【文献】特開2013-134567号公報
【文献】国際公開第2015/008380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
他車両のウインカの指示状態をカメラ等のセンサによって精度よく取得することは困難である。本開示の一部の側面は、自車両の運転支援を適切に行うために有利な技術を提供することを目的とする。そして、延いては持続可能な輸送システムの発展に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一部の実施形態によれば、運転支援装置であって、前記運転支援装置が搭載された自車両の周囲に存在する周辺車両から、車車間通信によって、前記周辺車両の車速、位置、走行軌跡及びウインカの指示状態を表す周辺車両情報を取得する取得手段と、前記自車両の位置及びウインカの指示状態を表す自車両情報と、前記周辺車両情報とに基づいて、前記自車両と前記周辺車両との衝突の可能性を予測する予測手段と、前記予測手段による予測結果に基づいて、前記自車両の乗員に報知を行う報知手段と、前記周辺車両情報に含まれる前記周辺車両の走行軌跡に基づいて、前記周辺車両が車線変更を実行したかどうかを判定する判定手段と、を備え、前記予測手段は、前記自車両のウインカの指示状態と、前記周辺車両のウインカの指示状態と、前記自車両に対する前記周辺車両の位置とに少なくとも基づいて、前記自車両と前記周辺車両との衝突の可能性を予測し、前記周辺車両のウインカが前記周辺車両の車線変更の完了後にも継続して方向を指示している場合に、前記周辺車両のウインカの指示状態に基づかずに前記自車両と前記周辺車両との衝突の可能性を予測する、運転支援装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
一部の実施形態によれば、自車両の運転支援を適切に行うために有利な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一部の実施形態に係る車両の構成例を説明するブロック図。
【
図2】一部の実施形態に係るリスク位置情報の例を説明する図。
【
図3】一部の実施形態に係る軌跡交点の例を説明する模式図。
【
図4】一部の実施形態に係る周辺車両の登録方法の例を説明するフロー図。
【
図5】一部の実施形態に係る周辺車両が含まれる範囲の例を説明する模式図。
【
図6】一部の実施形態に係る側方の周辺車両に関する運転支援動作の例を説明するフロー図。
【
図7】一部の実施形態に係る側方の周辺車両に関する運転支援動作の例を説明する模式図。
【
図8】一部の実施形態に係る側方の周辺車両に関する運転支援動作の例を説明する模式図。
【
図9】一部の実施形態に係る側方の周辺車両に関する運転支援動作の例を説明する模式図。
【
図10】一部の実施形態に係る前方の周辺車両に関する運転支援動作の例を説明するフロー図。
【
図11】一部の実施形態に係る前方の周辺車両に関する運転支援動作の例を説明する模式図。
【
図12】一部の実施形態に係る前方の周辺車両に関する運転支援動作の例を説明する模式図。
【
図13】一部の実施形態に係る判定対象の周辺車両の決定方法の例を説明する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0009】
<車両の構成例>
図1を参照して、一部の実施形態に係る車両100の構成例について説明する。
図1に示されるように、車両100は、センサ群101と、ウインカレバー102と、GNSS(Global Navigation Satellite System)アンテナ103と、車車間通信アンテナ104と、報知装置105と、制動装置106と、ウインカ107と、制御装置108とを含んでもよい。
図1は、以下の説明において参照される構成要素を示すが、車両100は、車両として動作するための他の構成要素、例えば、駆動装置、トランスミッションなどを含んでもよい。これに加えて又はこれに代えて、車両100は、
図1に示される構成要素の一部を含まなくてもよい。車両100は、四輪車であってもよいし、二輪車であってもよいし、他の形式の車両であってもよい。以下、車両100の運転者を単に運転者と表すことがある。
【0010】
制御装置108は、車両100の全体的な動作を制御する。後述するように、制御装置108は、制御装置108が搭載された車両100の運転支援を実行する。そのため、制御装置108は、運転支援装置と呼ばれてもよい。制御装置108によって提供される運転支援は、他の車両との衝突を防止(低減)するための衝突防止支援であってもよい。一部の実施形態において、制御装置108は、地図情報を用いずに衝突防止支援を実行可能である。以下の説明において、他の車両との区別を容易にするために、車両100を自車両100と表すことがある。また、車両100とは異なる車両を他車両と表すことがある。他車両のうち、現在において自車両100の周辺に存在する車両を周辺車両と表すことがある。周辺車両は、現在において自車両100と車車間通信が可能な車両のことであってもよい。
【0011】
センサ群101は、車両100の運転支援を実行するための各種センサを含む。例えば、センサ群101は、車両100の速度を検知する速度センサ、車両100の加速度を検知する加速度センサ等を含みうる。また、センサ群101は、車両100の周辺の物体を検知可能なカメラ、ミリ波レーダ、ライダ(LIDAR:Light Detection and Ranging)等の外界検知センサを含んでもよい。センサ群101は、その検知結果を制御装置108に対して出力する。
【0012】
ウインカレバー102は、運転者からウインカ107(方向指示器とも呼ばれうる)の指示状態の変更操作を受け付けるための操作子である。ウインカ107の指示状態とは、車両100の右側を指示している状態と、車両100の左側を指示している状態と、いずれの側も指示していない状態とを含みうる。制御装置108は、運転者によるウインカレバー102の操作に応じてウインカ107の指示状態を切り替える。ウインカ107は、車両100の右側と左側との両方に位置しうる。例えば、制御装置108は、右側を指示するように運転者がウインカレバー102を操作した場合に、車両100の右側にあるウインカ107を点滅させる。制御装置108は、左側を指示するように運転者がウインカレバー102を操作した場合に、車両100の左側にあるウインカ107を点滅させる。制御装置108は、いずれの方向も指示しないように運転者がウインカレバー102を操作した場合に、車両100の両側にあるウインカ107を消灯する。制御装置108は、運転者によるウインカレバー102の操作によらずに、ウインカ107の指示状態を変更してもよい。例えば、制御装置108は、車両100の転向が終了したことに応じて、点滅中のウインカ107を消灯してもよい。
【0013】
GNSSアンテナ103は、GNSS衛星から送信される位置測定用の電波を受信する。例えば、GNSSアンテナ103は、車両100の現在位置及び/又は走行軌跡(走行履歴)に関する情報を取得するために用いられうる。また、車車間通信アンテナ104は、周辺車両と各種データの送受信を行うアンテナである。例えば、車車間通信アンテナ104は、周辺車両の現在位置、速度及び走行軌跡に関する情報を取得するために用いられうる。
【0014】
報知装置105は、車両100の乗員(例えば運転者)に対して報知を行う装置である。制御装置108は、車両100が周辺車両と衝突する可能性がある場合、運転支援として、周囲車両との衝突可能性を報知装置105により車両100の乗員に報知することができる。例えば、報知装置105は、ディスプレイ等の表示部を含み、周囲車両との衝突可能性を示す情報を表示部に表示してもよいし、スピーカ等の音声出力部を含み、周囲車両との衝突可能性を示す情報を音声等によって音声出力部から出力してもよい。
【0015】
制動装置106は、例えばブレーキなどのような、車両100の制動動作を実行するための装置である。制御装置108は、車両100が周辺車両と衝突する可能性がある場合、運転支援として、制動装置106を動作させることによって車両100の減速支援を行い、周辺車両との衝突を回避することができる。
【0016】
制御装置108は、車両100を制御する装置(コンピュータ)であり、例えばECU(Electric Control Unit)によって構成されうる。制御装置108は、他車両との車車間通信及び車両100内での処理によって運転支援を実行可能である。例えば、制御装置108は、地図情報を用いずに運転支援を実行可能である。制御装置108は、処理部110と、記憶部111と、GNSSモジュール113と、車車間通信モジュール114とを含み、これらは不図示のバスによって接続されている。
【0017】
処理部110は、CPU(Central Processing Unit)に代表されるプロセッサであり、記憶部111に記憶されているプログラムを実行する。記憶部111は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)、ハードディスク等を含み、処理部110が車両100の運転支援処理を実行するためのプログラム(運転支援プログラム)、処理部110がリスク位置を学習するためのプログラム(学習プログラム)、各種のデータなどを記憶する。記憶部111は、車両100の走行軌跡と他車両の走行軌跡との交点に基づいて作成されたリスク位置情報112を記憶してもよい。リスク位置情報112は、複数のリスク位置を含んでもよい。リスク位置とは、車両100が他車両と衝突する可能性がある位置又はその可能性が高い位置のことであってもよい。リスク位置情報112は、データベースとして管理されてもよい。
【0018】
GNSSモジュール113は、GNSSアンテナ103を介してGNSS衛星から車両100の位置情報等を受け付ける。また、車車間通信モジュール114は、車車間通信アンテナ104を介して他車両から各種情報を受け付ける。
【0019】
処理部110は、車両100の運転支援(一部の実施形態では衝突防止支援)を実行するために、取得部110aと、予測部110bと、支援部110cと、更新部110dとを含みうる。なお、処理部110は、各部110a~110dを含む構成に限られない。車両100で実行する運転支援の種類に応じて別のユニットが追加されたり一部のユニットが省略されたりしてもよい。
【0020】
取得部110aは、車車間通信アンテナ104(車車間通信モジュール114)を介して、車両100の周囲に存在する周辺車両から、当該周辺車両の現在位置、車速、走行軌跡及びウインカの指示状態を表す周辺車両情報を取得する。周辺車両情報は、周辺車両の現在位置、車速、走行軌跡及びウインカの指示状態を明示的に表してもよいし暗黙的に表してもよい。例えば、周辺車両情報は、車速をそのまま含んでもよいし、車速を算出するための情報(現在及びその直前の2つの地理的位置とそれらの測位時刻)を含んでもよい。取得部110aは、センサ群101及びGNSSアンテナ103(GNSSモジュール113)を介して、車両100の現在位置、速度、走行軌跡及びウインカ107の指示状態を表す自車両情報を取得してもよい。取得部110aは、ウインカ107の指示状態をウインカ107から取得してもよいし、ウインカ107への直近の変更命令を記憶しておき、記憶されている変更命令に基づいて指示状態を取得してもよい。
【0021】
予測部110bは、取得部110aで取得された自車両情報及び周辺車両情報に基づいて、車両100が他車両との衝突する可能性を予測する。予測部110bは、判定領域を設定し、その判定領域において車両100が他車両との衝突する可能性を予測してもよい。また、予測部110bは、リスク位置情報112に基づいて車両100の運転支援を行ってもよい。例えば、予測部110bは、リスク位置情報112に含まれる複数のリスク位置のうち少なくとも1つのリスク位置が自車両の付近に位置する場合に、そのリスク位置を含むように判定領域を設定してもよい。
【0022】
支援部110cは、予測部110bによる予測結果に基づいて、自車両100の運転支援(衝突防止支援)を行う。一部の実施形態において、支援部110cは、車両100の運転支援として、報知装置105による車両100の乗員への報知、及び、制動装置106による車両100の減速支援のうち少なくとも1つを実行しうる。減速支援は、自車両100が停止するまで減速するように支援すること、すなわち停止支援を含んでもよい。停止支援は、自車両100の減速だけでなく、自車両100の停止位置の決定や、その停止位置に向けた経路計画及びその経路に沿った自動操舵を含んでもよい。
【0023】
更新部110dは、車両100の走行軌跡と周辺車両の走行軌跡との交点を特定する。車両100の走行軌跡と周辺車両の走行軌跡との交点のことを、以下では軌跡交点と表す。軌跡交点の付近には道路の交差点が存在する可能性がある。また、更新部110dは、特定された軌跡交点に基づいて、記憶部111に記憶されているリスク位置情報112を更新する。例えば、更新部110dは、軌跡交点をリスク位置情報112に追加することによって、リスク位置情報112を更新してもよい。これに代えて又はこれに加えて、更新部110dは、リスク位置情報112に含まれる何れかのリスク位置を軌跡交点に基づいて補正することによって、リスク位置情報112を更新してもよい。
【0024】
続いて、
図2を参照して、リスク位置情報112の例について説明する。
図2の例では、リスク位置情報112がテーブル形式で記載されているが、リスク位置情報112は他の形式であってもよい。リスク位置情報112は、リスク位置ごとにレコードを有する。
図2に示されるリスク位置情報112のカラムは一例である。リスク位置情報112は、他のカラムを含んでもよいし、
図2に示されるカラムの一部を含まなくてもよい。
【0025】
リスク位置情報112は、リスク位置ごとに、リスク位置ID、登録日時、座標、及び通過方位に関する情報を含みうる。リスク位置IDは、リスク位置を一意に識別する番号である。登録日時は、リスク位置がリスク位置情報112に登録された日時である。座標は、リスク位置を特定するためのデータであり、例えば緯度及び経度のデータによって表される。座標は、緯度及び経度のデータに加えて、標高等の高度のデータを含んでもよい。通過方位は、リスク位置を決定するために使用された軌跡交点の通過時に車両100が向いていた方位(方向、角度)である。通過方位は、軌跡交点に進入するときの車両100の進行方向(進入方位)として理解されてもよい。
図2の例では、北向きを0°、東向きを90°、南向きを180°、西向きを270°として車両100の通過方位を規定している。
【0026】
続いて、
図3を参照して、軌跡交点の例について説明する。軌跡交点とは、上述のように、車両100の走行軌跡と他車両の走行軌跡との交点のことである。本明細書では、右側通行が義務付けられている地域に車両100が位置する場合について説明する。この場合に、左側及び右側のうち、車両100が位置する地域において通行を義務付けられている道路の側は右側となり、これとは反対側が左側となる。また、車両100の対向車線側は、車両100の左側になる。本明細書に記載される実施形態は、左側通行が義務付けられている地域に車両100が位置する場合にも適用可能である。この場合に、以下で説明される処理における左右(例えば、車両100や他の車両の右折と左折、ウインカの指示状態の右側と左側)が入れ替わる。具体的に、左側及び右側のうち、車両100が位置する地域において通行を義務付けられている道路の側は左側となり、これとは反対側が右側となる。また、車両100の対向車線側は、車両100の右側になる。
【0027】
図3(a)に示す例では、北方向に直進した自車両100の走行軌跡301aと、西向きに直進した他車両OVaの走行軌跡302aとが交差した位置が軌跡交点CPaとなる。なお、軌跡交点CPaを自車両100が通過するタイミング(時刻)と、軌跡交点CPaを他車両OVaが通過するタイミング(時刻)とは互いに異なるため、自車両100と他車両OVaとの衝突は生じていない。また、自車両100の走行軌跡301aは、センサ群101及びGNSSアンテナ103(GNSSモジュール113)を介して取得部110aによって取得された自車両情報に含まれる。他車両OVaの走行軌跡302aは、車車間通信アンテナ104(車車間通信モジュール114)を介して取得部110aによって取得された他車両情報に含まれる。その取得時における他車両OVaが自車両100の周辺に存在する周辺車両であるため、当該他車両情報は、周辺車両情報として理解されてもよい。
【0028】
図3(b)に示す例では、北方向に直進して左折した自車両100の走行軌跡301bと、南向きに直進した他車両OVbの走行軌跡302bとが交差した位置が軌跡交点CPbとなる。なお、軌跡交点CPbを自車両100が通過するタイミング(時刻)と、軌跡交点CPbを他車両OVbが通過するタイミング(時刻)とは互いに異なるため、自車両100と他車両OVbとの衝突は生じていない。また、自車両100の走行軌跡301bは、走行軌跡301aと同様に、センサ群101及びGNSSアンテナ103(GNSSモジュール113)を介して取得部110aによって取得された自車両情報に含まれる。他車両OVbの走行軌跡302bは、走行軌跡302aと同様に、車車間通信アンテナ104(車車間通信モジュール114)を介して取得部110aによって取得された他車両情報(周辺車両情報)に含まれる。
【0029】
制御装置108の機能は、ハードウェア及びソフトウェアの何れによっても実現可能である。例えば、制御装置108の機能は、前述したように処理部110(CPU)が運転支援プログラム及び/又は学習プログラムを実行することによって実現されてもよいし、PLD(Programmable Logic Device)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の集積回路により実現されてもよい。また、
図1の例では、制御装置108が単一の要素として示されているが、必要に応じて2以上の要素に分けられてもよい。
【0030】
<周辺車両の管理処理>
図4を参照して、周辺車両を管理する処理の例について説明する。
図4のフローチャートで示される処理は、記憶部111から読み出された学習プログラムに従って処理部110により実行される。
図4の処理は、例えば、車両100のイグニッションがオンになったことに応じて開始されてもよい。
図4の処理は、車両100のイグニッションがオフになるまで、繰り返し実行されうる。
【0031】
ステップS401で、処理部110(例えば、その取得部110a)は、自車両100の周囲に他の車両が存在するかどうかを判定する。処理部110は、自車両100の周囲に他の車両が存在すると判定された場合に処理をステップS402に遷移し、その他の場合に処理をステップS404に遷移する。例えば、処理部110は、車車間通信アンテナ104(車車間通信モジュール114)を介して車車間通信を行うことができた場合に、自車両100の周囲に他の車両が存在すると判定してもよい。
【0032】
ステップS402で、処理部110(例えば、その取得部110a)は、ステップS401で発見された他の車両を周辺車両として登録する。例えば、記憶部111は、周辺車両のリストを記憶してもよく、処理部110は、発見された周辺車両の情報をこのリストに追加してもよい。後述するように、周辺車両は、衝突可能性の判定対象となる。周辺車両の情報をリストで管理する代わりに、繰り返し実行される処理において、各サイクルの開始時に車車間通信が可能なすべての他の車両から情報を取得し、各サイクルの終了時にこのサイクルで取得した情報を破棄してもよい。
【0033】
ステップS403で、処理部110(例えば、その取得部110a)は、周辺車両からの車車間通信による周辺車両情報の取得を開始する。上述のように、周辺車両情報は、周辺車両の車速、位置及び走行軌跡を表してもよい。処理部110は、ステップS402で周辺車両情報の取得を開始した後、周辺車両と車車間通信が出来なくなるまで、周辺車両情報を定期的に(例えば、100m秒ごとに)繰り返し取得する。
【0034】
周辺車両情報の取得の開始後に、ステップS403で、処理部110(例えば、その取得部110a)は、登録されている1つ以上の周辺車両に車車間通信が行えなくなった車両が存在するかどうかを判定する。処理部110は、このような車両が存在する場合に処理をステップS405に遷移し、それ以外の場合に処理をステップS401に遷移する。例えば、周辺車両が車車間通信の通信範囲から外れたり、周辺車両の電源がオフになったりした場合に、車両100は周辺車両と車車間通信を行えなくなる。
【0035】
ステップS405で、処理部110(例えば、その取得部110a)は、車車間通信が行えなくなった周辺車両の登録を解除する。言い換えると、処理部110は、車車間通信が行えなくなった車両を周辺車両として扱わない。例えば、処理部110は、記憶部111に記憶されている周辺車両のリストから、車車間通信が行えなくなった周辺車両の情報を削除する。
【0036】
以上のように、処理部110は、
図4の処理を実行することによって、自車両100の周辺にある他車両(すなわち、周辺車両)から定期的に最新の周辺車両情報を取得できる。
【0037】
<運転支援処理>
図5~
図13を参照して、一部の実施形態の運転支援処理について説明する。
図3(a)を参照して説明したように、他車両が自車両100の側方の範囲に含まれる場合に、自車両100と他車両とのどちらも直進すると、これらの車両が衝突する可能性がある。一方、
図3(b)を参照して説明したように、他車両が自車両100の前方の範囲に含まれる場合に、自車両100が左折し他車両が直進すると、これらの車両が衝突する可能性がある。このように、自車両100に対する他車両の位置に応じて、これらの車両が衝突する可能性がある状況が異なりうる。そこで、一部の実施形態では、制御装置108は、自車両100に対して周辺車両が前方の範囲内に存在するか、側方の範囲内に存在するかに応じて、別々の運転支援を行う。
【0038】
図5を参照して、運転支援の方法を選択するための範囲について説明する。範囲500は、車両100の前方に位置する。車両100の前方とは、車両100の正面を含む範囲のことであってもよい。範囲500は、
図5に示されるように、扇形の範囲であってもよいし、他の形状を有してもよい。扇形の範囲は、所定の距離及び所定の角度で規定されてもよい。所定の距離は、例えば800m以上1000m以下、例えば900mであってもよい。以下の扇形の範囲の所定の距離についても同様である。範囲500は、車両100の正面の方向に対して対称であってもよい。範囲500の中心角は、例えば100度~110度程度であってもよい。
【0039】
範囲501は、車両100の側方に位置する。車両100の側方とは、車両100の斜め前方を含む範囲のことであってもよい。範囲501は、車両100の真横の方向を含んでもよい。範囲501は、
図5に示されるように、扇形の範囲であってもよいし、他の形状を有してもよい。扇形の範囲は、所定の距離及び所定の角度で規定されてもよい。
図5の例では、車両100の右側と左側とのそれぞれに範囲501が位置する。範囲501の中心角は、例えば80度~90度程度であってもよい。
【0040】
図5の例では、範囲500の一部と範囲501の一部とが重なる。この重なる部分の中心角は、例えば10度~20度程度であってもよい。周辺車両がこの重なる部分に存在する場合に、この周辺車両は、
図3(a)の状況での運転支援と、
図3(b)の状況での運転支援との両方の対象となる。
図5の例に代えて、範囲500と範囲501とは、互いに接するだけであってもよいし、互いに離れていてもよい。範囲500と、車両100の右側にある範囲501と、車両100の左側にある範囲501とは、いずれも同じ大きさであってもよいし、少なくとも一部が異なる大きさであってもよい。
【0041】
制御装置108は、周辺車両が範囲501に含まれる場合に、
図3(a)に示されるように、自車両100が直進することによって他車両と衝突しうる。そこで、制御装置108は、自車両100が直進することによる衝突の可能性を予測する。この動作については、
図6~
図9を参照して後述する。一方、制御装置108は、周辺車両が範囲500に含まれる場合に、
図3(b)に示されるように、自車両100が左折することによって他車両と衝突しうる。そこで、制御装置108は、自車両100が直進することによる衝突の可能性を予測する。この動作については、
図10~
図12を参照して後述する。自車両100に対する範囲500及び501の位置は、事前に(例えば、車両100の製造時や、ソフトウェアの更新時に)設定され、記憶部111に記憶されていてもよい。
【0042】
図6は、周辺車両RV(
図7(a))が自車両100の側方の範囲501内に存在する場合に運転支援を実行するための処理の例について説明する。
図6のフローチャートで示される処理は、記憶部111から読み出された運転支援プログラムに従って処理部110により実行される。
図6の処理は、例えば、運転支援の設定がオンの間に、
図6のステップS602で周辺車両RVが新たに登録されるごとに、この周辺車両RVに関して実行されてもよい。
図6の処理では、複数の他車両が周辺車両として登録されうる。
図6の処理は、これらの複数の周辺車両のそれぞれについて実行される。
【0043】
ステップS601で、処理部110(例えば、その予測部110b)は、周辺車両RVが自車両100の側方の範囲501内に存在するかどうかを判定する。処理部110は、周辺車両RVが自車両100の側方の範囲501内に存在すると判定された場合に処理をステップS602に遷移し、それ以外の場合にステップS601を繰り返す。この判定は、周辺車両RVから取得された最新の周辺車両情報に含まれる周辺車両RVの現在位置に基づいて行われてもよい。
図7(a)に示される例では、周辺車両RVは、範囲501内に存在する。
【0044】
ステップS602で、処理部110(例えば、その予測部110b)は、自車両100の予測進路と、周辺車両RVの予測進路とが交差するかどうかを判定する。処理部110は、これらの予測両車両の進路が交差すると判定された場合に処理をステップS603に遷移し、それ以外の場合にステップS602を繰り返す。予測進路とは、車両から正面に延びる半直線のことであってもよい。
図7(a)に示される例では、自車両100の予測進路700と周辺車両RVの予測進路701とが交差する。自車両100の予測進路700と周辺車両RVの予測進路701との交点を予測交点702と表す。自車両100の予測進路700は、自車両情報(具体的に、現在位置及び走行軌跡)に基づいて決定されてもよい。処理部110は、最新の自車両情報をこの時点で取得してもよい。周辺車両RVの予測進路701は、最新の周辺車両情報(具体的に、現在位置及び走行軌跡)に基づいて決定されてもよい。
【0045】
ステップS603で、処理部110(例えば、その予測部110b)は、予測交点702を基準位置として判定領域を設定し、その判定領域を記憶部111に記憶する。判定領域とは、衝突可能性の予測が行われる領域のことであってもよい。
図7(a)を参照して、予測交点702を基準位置として設定される判定領域703の一例について説明する。判定領域703は、予測交点702を含み、自車両100の予測進路700に平行な辺を含む長方形であってもよい。これに代えて、判定領域703は他の形状を有してもよい。予測交点702に対する判定領域703の位置及び形状は、事前に(例えば、車両100の製造時や、ソフトウェアの更新時に)設定され、記憶部111に記憶されていてもよい。処理部110は、判定領域703の近くにリスク位置が存在する場合に、そのリスク位置を含むように判定領域703を拡張してもよい。
【0046】
図7(a)に示されるように、処理部110は、周辺車両RVが自車両100に対して右側(すなわち、対向車線側とは反対側)にある場合と、
図7(b)に示されるように、周辺車両RVが自車両100に対して左側(すなわち、対向車線側)にある場合とで、異なる形状(サイズ)の判定領域703を設定してもよい。周辺車両RVが自車両100の右側にあっても左側にあっても、判定領域703の車幅方向の長さ704は、同じ長さ(例えば、1車線相当の長さである3m~4m)であってもよい。周辺車両RVが自車両100の右側にある場合の判定領域703の車長方向の長さ705は、周辺車両RVが自車両100の左側にある場合の判定領域703の車長方向の長さ705よりも長くてもよい。周辺車両RVが自車両100の右側にある場合の判定領域703の車長方向の長さ705は、例えば3車線相当の長さである9m~11mであってもよい。周辺車両RVが自車両100の左側にある場合の判定領域703の車長方向の長さ705は、例えば2車線相当の長さである6m~8mであってもよい。
【0047】
周辺車両RVが自車両100の右側にあっても左側にあっても、判定領域703のうち自車両100から遠くにある辺と予測交点702との距離は同じ(例えば、半車線相当の1.5m程度)であってもよい。その結果、周辺車両RVが自車両100に対して右側にある場合の判定領域703のうち、予測交点702よりも自車両100の方にある部分の長さ706は、周辺車両RVが自車両100に対して左側にある場合の判定領域703のうち、予測交点702よりも自車両100の方にある部分の長さ706よりも大きい。周辺車両RVが自車両100の右側にある場合に、予測交点702と自車両100との間に、周辺車両RVが走行中の車線の対向車線が存在する可能性がある。そのため、判定領域703を自車両100の方に広げることによって、この対向車線を走行中の他の車両(車車間通信機能を有しない可能性がある)との衝突を抑制できる。
【0048】
ステップS604で、処理部110(例えば、その予測部110b)は、判定領域703における自車両100と周辺車両RVとの衝突の可能性を予測する。処理部110は、自車両100と周辺車両RVとの衝突の可能性があると予測された場合に処理をステップS605に遷移し、それ以外の場合に処理をステップS607に遷移する。
【0049】
衝突可能性は、周辺車両RVが予測交点702に到達するまでの予測時間(以下では、単に「到達時間」と表す)に基づいて判定されてもよい。この到達時間は、例えば、周辺車両RVから取得された最新の周辺車両情報に基づいて算出されてもよい。例えば、処理部110は、周辺車両RVと予測交点702との間の距離を周辺車両RVの速度で除算することにより、予測交点702への周辺車両RVの予測時間を予測することができる。
【0050】
処理部110は、この到達時間が時間閾値以下である場合に、衝突可能性があると予測し、この到達時間が時間閾値よりも大きい場合に、衝突可能性がないと判定してもよい。時間閾値は、自車両100の乗員によって設定可能であってもよい。
【0051】
処理部110は、周辺車両RVの速度に応じて時間閾値を変更してもよい。
図8は、周辺車両RVの速度と周辺車両RVの停止時間との関係を示す図である。周辺車両RVの停止時間は、一般的なブレーキ操作による減速度(例えば0.4G)において周辺車両RVが停止するまでの時間である。
図8では、周辺車両RVの速度に関する規定範囲(速度上限値、速度下限値)と、衝突余裕時間(TTC)に関する時間上限値および時間下限値とが示されている。規定範囲は、自車両100の運転支援が行われる周辺車両RVの速度範囲である。時間上限値は、運転者等によって任意に設定された衝突余裕時間の上限値であり、時間下限値は、GNSSの計測位置精度から設定される衝突余裕時間の下限値である。
【0052】
処理部110は、
図8で線800によって表される「周辺車両RVの速度と停止時間との関係」に基づいて、周辺車両RVの速度に対応する停止時間を時間閾値として設定する。線800は、一般的なブレーキ操作(すなわち、平常時に車両を減速するための操作)と、緊急時のブレーキ操作(すなわち、車両を急停止するための操作)との境界を示す。例えば、一般的なブレーキ操作の減速度は0.4G以下であるため、線800は、0.4Gに対応する傾きを有してもよい。線800よりも上側の領域801では、到達時間が停止時間よりも長く、周辺車両RVの運転者が一般的なブレーキ操作を行えば、周辺車両RVが予測交点702に到達する前に周辺車両RVを停止させることができる。そのため、到達時間が時間閾値(停止時間)より大きい場合には、自車両SVの運転支援が抑制されうる。一方、線800よりも下側の領域802では、到達時間が停止時間よりも短く、周辺車両RVの運転者が一般的なブレーキ操作(例えば減速度0.4G)を行ったとしても、周辺車両RVが停止する前に予測交点702に到達しうる。そのため、到達時間が時間閾値(停止時間)以下である場合には、自車両SVの運転支援が実行されうる。なお、処理部110は、周辺車両RVの速度に応じて時間閾値を連続的に変更してもよいし、段階的に変更してもよい。
【0053】
衝突可能性は、周辺車両RVが予測交点702に到達するまでの到達時間に代えて又はこれに加えて、自車両100が判定領域703に進入したことに基づいて判定されてもよい。例えば、処理部110は、自車両100が判定領域703に進入した場合に、衝突可能性があると予測し、自車両100が判定領域703に進入していない場合に、衝突可能性がないと判定してもよい。
【0054】
さらに、衝突可能性は、周辺車両RVが予測交点702に到達するまでの予測時間と、自車両100が予測交点702に到達するまでの予測時間との差(以下、「到着時間差」と表す)に基づいて判定されてもよい。処理部110は、到着時間差が時間閾値以下である場合に、衝突可能性があると予測し、到達時間差が時間閾値よりも大きい場合に、衝突可能性がないと判定してもよい。時間閾値は、自車両100の乗員によって設定可能であってもよい。
【0055】
さらに、衝突可能性は、自車両100のウインカ107の指示状態と、周辺車両RVのウインカの指示状態と、自車両100に対する周辺車両RVの位置とに基づいて予測されてもよい。例えば、衝突可能性は、自車両100に対して周辺車両RVが右側又は左側にあることと、自車両100のウインカ107が右側又は左側を指示していることと、周辺車両RVのウインカが右側又は左側を指示していることと、のうちの少なくとも何れかに基づいて予測されてもよい。
【0056】
図9を参照して、ウインカの指示状態に基づく衝突可能性の予測の具体例について説明する。
図9(a)は、周辺車両RVが自車両100に対して左側にある範囲501内に位置している場合について説明する。自車両100のウインカ107が方向を指示していない(例えば、ウインカ107が消灯している)場合に、自車両100は、自車両100の前方の交差点を直進する進路901Sをとると予想される。自車両100のウインカ107が右側を指示している(例えば、自車両100の右側のウインカ107が点滅している)場合に、自車両100は、自車両100の前方の交差点を右折する進路901Rをとると予想される。自車両100のウインカ107が左側を指示している(例えば、自車両100の左側のウインカ107が点滅している)場合に、自車両100は、自車両100の前方の交差点を左折する進路901Lをとると予想される。
【0057】
周辺車両RVのウインカが方向を指示していない場合に、周辺車両RVは、周辺車両RVの前方の交差点を直進する進路902Sをとると予想される。周辺車両RVのウインカが右側を指示している場合に、周辺車両RVは、周辺車両RVの前方の交差点を右折する進路902Rをとると予想される。周辺車両RVのウインカが左側を指示している場合に、周辺車両RVは、周辺車両RVの前方の交差点を左折する進路902Lをとると予想される。
【0058】
処理部110は、自車両100について予測される3つの進路901S、901R及び901Lと、周辺車両RVについて予測される3つの進路902S、902R及び902Lとのペアのうち、両車両の進路が交差又は一致するペアについて衝突可能性があると予測し、それ以外のペアについて衝突可能性がないと予測してもよい。
図9(a)の表910は、上記の説明をまとめたものである。表910において、「YES」は衝突可能性があると予測されることを表し、「NO」は衝突可能性がないと予測されることを表す。後述する表911及び1210についても同様である。例えば、自車両100のウインカ107が左側を指示しており、かつ他車両のウインカが左側を指示している場合に、処理部110は、衝突可能性があると予測してもよい。一方、自車両100のウインカ107が右側を指示しており、かつ他車両のウインカが右側を指示している場合に、処理部110は、衝突可能性がないと予測してもよい。
【0059】
図9(b)は、周辺車両RVが自車両100に対して右側にある範囲501内に位置している場合について説明する。自車両100について予測される進路については、
図9(a)と同様である。周辺車両RVのウインカが方向を指示していない場合に、周辺車両RVは、周辺車両RVの前方の交差点を直進する進路903Sをとると予想される。周辺車両RVのウインカが右側を指示している場合に、周辺車両RVは、周辺車両RVの前方の交差点を右折する進路903Rをとると予想される。周辺車両RVのウインカが左側を指示している場合に、周辺車両RVは、周辺車両RVの前方の交差点を左折する進路903Lをとると予想される。
【0060】
処理部110は、自車両100について予測される3つの進路901S、901R及び901Lと、周辺車両RVについて予測される3つの進路903S、903R及び903Lとのペアのうち、両車両の進路が交差又は一致するペアについて衝突可能性があると予測し、それ以外のペアについて衝突可能性がないと予測してもよい。
図9(b)の表911は、上記の説明をまとめたものである。
【0061】
上述の4つの条件(すなわち、到着時間が時間閾値以下であること、自車両100が判定領域703に進入したこと、到着時間差が別の時間閾値以下であること、ウインカの指示状態が上記条件を満たすこと)を任意に組み合わせて衝突可能性が判定されてもよい。例えば、処理部110は、これらの4つの条件のすべてが満たされる場合に、衝突可能性があると判定し、それ以外の場合に衝突可能性がないと判定してもよい。これに代えて、処理部110は、これらの4つの条件の少なくとも1つが満たされる場合に、衝突可能性があると判定し、それ以外の場合に衝突可能性がないと判定してもよい。これに代えて、処理部110は、これらの4つの条件の事前に設定された2つの条件の少なくとも1つが満たされる場合に、衝突可能性があると判定し、それ以外の場合に衝突可能性がないと判定してもよい。具体的に、処理部110は、周辺車両RVが予測交点702に到達するまでの予測時間が第1の時間閾値よりも小さい場合に、到着時間差が第2の時間閾値よりも小さいならば、衝突可能性があると予測し、到着時間差が第2の時間閾値よりも大きいならば、衝突可能性がないと予測してもよい。
【0062】
ステップS605で、処理部110(例えば、その支援部110c)は、支援条件が満たされるかどうかを判定する。処理部110は、支援条件が満たされると判定された場合に処理をステップS606に遷移し、それ以外の場合に処理をステップS607に遷移する。支援条件とは、運転支援を実行するために満たすべき条件であってもよい。例えば、支援条件は、周辺車両RVの速度が規定範囲内かどうかに基づいてもよい。規定範囲は、周辺車両RVの速度に関する速度下限値及び速度上限値によって事前に設定されうる。周辺車両RVの速度が規定範囲の速度下限値以下である場合、周辺車両RVの運転者は、自車両100に気付き、自車両100に衝突することなく周辺車両RVを減速させる可能性が高い。つまり、周辺車両RVの速度に関する規定範囲の速度下限値は、自車両100に衝突することなく周辺車両RVを減速させることができる値に設定されうる。また、周辺車両RVの速度が規定範囲の上限値以上である場合、周辺車両RVは、自車両100が進入する道路の近傍の高速道路を走行している等、自車両100が進入する道路を走行している車両でない可能性が高い。つまり、周辺車両RVの速度に関する規定範囲の上限値は、自車両100が進入する道路を走行している車両か、或いは、当該道路の近傍の高速道路を走行している車両かを判別することができる値に設定されうる。このように、周辺車両RVの速度が規定範囲内か否かに応じて運転支援を実行/抑制することで、自車両100の運転者が運転支援の煩わしさを感じることを低減することができる。
【0063】
ステップS606で、処理部110(例えば、その支援部110c)は、自車両100の運転支援を行う。処理部110は、自車両100の運転支援として、報知装置105により自車両100の乗員に対して衝突可能性の報知を行ったり、制動装置150により自車両100の制動動作を行ったりしうる。
【0064】
ステップS608で、処理部110(例えば、その予測部110b)は、運転支援を実行したことによって不要になった判定領域(ステップS603で記憶された判定領域)を記憶部111から削除する。これによって、不要な情報で記憶部111の容量が消費されることが抑制される。
【0065】
ステップS604で衝突可能性がないと判定されたか、ステップS605で支援条件が満たされないと判定された場合に、ステップS607が実行される。ステップS607で、処理部110(例えば、その予測部110b)は、
図6の方法の処理対象の周辺車両RVが、
図4のステップS405で登録が解除されているかどうかを判定する。処理部110は、周辺車両RVの登録が解除されていると判定された場合に処理をステップS608に遷移し、それ以外の場合に処理をステップS602に遷移する。周辺車両RVの登録が解除されている場合に、周辺車両RVが自車両100の周辺に存在しなくなったと考えられる。そこで、処理部110は、この周辺車両RVとの衝突に関して運転支援を実行せずに処理を終了する。この場合にも、ステップS608で、処理部110(例えば、その予測部110b)は、不要になった判定領域を記憶部111から削除する。
【0066】
ステップS607で周辺車両RVの登録が解除されていないと判定された場合に、ステップS602に処理が戻る。この場合に、自車両100の予測進路と周辺車両RVの予測進路とがなおも交差している場合に、ステップS603において、予測交点702を基準位置として判定領域が設定される。車両(自車両100又は周辺車両RV)が車線内でその位置を変化したり、車線変更したりした場合に、予測交点702の位置が変化しうる。周辺車両情報が繰り返し取得されるため、処理部110は、このような予測交点702の位置の変化を検出できる。そこで、ステップS603で、処理部110(例えば、その予測部110b)は、新たに取得された周辺車両情報に基づいて、基準位置を再設定し、それに伴い、記憶部111に記憶されている判定領域を更新する。これによって、ステップS604の判定は、更新後の判定領域に基づいて実行される。ステップS603で、予測交点902を決定できなかった場合(例えば、自車両100の予測進路900と周辺車両RVの予測進路901とが交差しなくなった場合)に、直近に決定された基準位置及び判定領域が維持されてもよい。
【0067】
図6の方法によれば、自車両100の側方の範囲501内に複数の周辺車両が存在する場合に、複数の周辺車両のそれぞれについて個別の基準位置が使用される。具体的に、
図6の方法は、複数の周辺車両のそれぞれについて個別に実行される。その結果、自車両100の予測進路と周辺車両の予測進路との予測交点も、複数の周辺車両のそれぞれについて決定される。その結果、複数の周辺車両のそれぞれについて、個別の基準位置に基づいて個別の判定領域が設定される。これによって、複数の周辺車両のそれぞれとの衝突の可能性を適切に予測できる。
【0068】
図10は、周辺車両RV(
図11)が自車両100の前方の範囲500内に存在する場合に運転支援を実行するための処理の例について説明する。
図10のフローチャートで示される処理は、記憶部111から読み出された学習プログラムに従って処理部110により実行される。
図10の処理は、例えば、運転支援の設定がオンになったことに応じて開始されてもよい。
図10の処理は、運転支援の設定がオフになるまで、又は車両100のイグニッションがオフになるまで、繰り返し実行されうる。
【0069】
ステップS1001で、処理部110(例えば、その予測部110b)は、自車両100の車速が閾値範囲内であるかどうかを判定する。処理部110は、自車両100の車速が閾値範囲内であると判定された場合に処理をステップS1002に遷移し、それ以外の場合に処理をステップS1003に遷移する。この判定は、最新の自車両情報に含まれる自車両100の車速及び加速度に基づいて行われてもよい。ステップS1001で使用される閾値の上端は、車両100が転向(例えば、左折又は右折)するために減速した後の車速が下回る値であり、例えば時速20kmであってもよい。ステップS1001で使用される閾値の下端は、車両100が停止している状態又はほぼ停止している状態の車速が下回る値であり、例えば時速2kmであってもよい。自車両100が閾値範囲内であると判定された位置を、転向準備位置1101(
図11)と表す。なお、自車両100は転向しない場合であっても閾値範囲内になりうる。この場合であっても、処理部110は、転向準備位置1101を検出し、ステップS1002以降の処理を実行する。
【0070】
ステップS1002で、処理部110(例えば、その予測部110b)は、転向準備位置1101を基準位置として判定領域を設定し、その基準位置及び判定領域を記憶部111に記憶する。判定領域とは、衝突可能性の予測が行われる領域のことであってもよい。
図11を参照して、転向準備位置1101を基準位置として設定される判定領域1102の一例について説明する。判定領域1102は、転向準備位置1101の左前の位置を中心とし、自車両100の車長方向に平行な辺を含む長方形であってもよい。判定領域1102の自車両100の車幅方向の長さは、例えば、1車線相当の長さである3m~4mであってもよい。判定領域1102の自車両100の車長方向の長さは、例えば、3車線相当の長さである9m~11mであってもよい。判定領域1102の右下の角は、転向準備位置1101に重なってもよい。これに代えて、判定領域1102は他の形状を有してもよい。基準位置に対する判定領域1102の位置は、事前に(例えば、車両100の製造時や、ソフトウェアの更新時に)設定され、記憶部111に記憶されていてもよい。処理部110は、判定領域1102の近くにリスク位置が存在する場合に、そのリスク位置を含むように判定領域1102を拡張してもよい。処理部110は、転向準備位置1101(すなわち、基準位置)を含み、自車両100の予測進路に直交する方向で自車両100に対して対向車線側(
図11)の例では左側)にオフセットするように判定領域1102を設定する。これによって、自車両100が左折することによって発生しうる衝突の可能性を適切に予測できるようになる。
【0071】
ステップS1003以降の処理は、ステップS1002で設定された基準位置及び判定領域を用いて実行される。上述のように、
図13の方法は繰り返し実行されるため、ステップS1001及びS1002も繰り返し実行される。したがって、自車両100の車速が閾値範囲内(例えば、時速2km以上時速20km未満)である間に基準位置及び判定領域は更新され続け、最新の基準位置及び判定領域を用いてステップS1003以降の処理が実行される。自車両100の車速が閾値範囲外(例えば、時速2km未満又は時速20km以上)になったことに応じて基準位置及び判定領域の更新が停止され、更新停止時の基準位置及び判定領域を用いてステップS1003以降の処理が実行される。ステップS1003の実行時点で基準位置及び判定領域が設定されていない場合に、処理部110は、ステップS1003~S1010を省略して処理をS1001に戻してもよい。
【0072】
ステップS1003で、処理部110(例えば、その予測部110b)は、自車両100の予測転向軌跡1104を決定する。予測転向軌跡1104とは、自車両100が対向車線側に転向(例えば、左折)する場合に予測される転向軌跡のことであってもよい。予測転向軌跡1104は、事前に(例えば、車両100の製造時や、ソフトウェアの更新時に)設定され、記憶部111に記憶されていてもよい。このように事前に設定された予測転向軌跡1104は、デフォルトの予測転向軌跡1104と呼ばれてもよい。
【0073】
予測転向軌跡1104の複数の候補が記憶部111に記憶されていてもよい。処理部110(例えば、その予測部110b)は、転向準備位置1101における自車両100の舵角に基づいて、予測転向軌跡1104の複数の候補から1つの予測転向軌跡1104を選択して、後続の処理に使用してもよい。例えば、処理部110は、自車両100の舵角が小さい場合に、自車両100が小さな交差点を左折しようとしていると考えられるため、曲率半径が小さな予測転向軌跡1104を選択してもよい。一方、処理部110は、自車両100の舵角が大きい場合に、自車両100が大きな交差点を左折しようとしていると考えられるため、曲率半径が大きな予測転向軌跡1104を選択してもよい。
【0074】
ステップS1004で、処理部110(例えば、その予測部110b)は、自車両100の前方の範囲500内に存在する周辺車両RVを、後続の処理の対象車両として特定する。範囲500内に周辺車両RVが存在しなければ、対象車両は特定されない。範囲500内に複数の周辺車両RVが存在すれば、これらの複数の周辺車両RVのいずれも対象車両として特定される。この特定は、周辺車両RVから取得された最新の周辺車両情報に含まれる周辺車両RVの現在位置に基づいて行われてもよい。
図11に示される例では、1つの周辺車両RVが範囲500内に存在する。
【0075】
ステップS1005で、処理部110(例えば、その予測部110b)は、判定領域1102における自車両100と周辺車両RVとの衝突の可能性を予測する。処理部110は、自車両100と周辺車両RVとの衝突の可能性があると判定された場合に処理をステップS1006に遷移し、それ以外の場合に処理をステップS1008に遷移する。
【0076】
衝突可能性は、ステップS1003で決定された予測転向軌跡1104と、周辺車両RVの予測進路1103との交点1105が判定領域1102に含まれることに基づいて判定されてもよい。例えば、処理部110は、交点1105が判定領域1102に含まれる場合に、衝突可能性があると判定し、交点1105が判定領域1102に含まれない場合に、衝突可能性がないと判定してもよい。
【0077】
さらに、衝突可能性は、自車両100のウインカ107の指示状態と、周辺車両RVのウインカの指示状態と、自車両100に対する周辺車両RVの位置とに基づいて予測されてもよい。例えば、衝突可能性は、自車両100に対して周辺車両RVが右側又は左側にあることと、自車両100のウインカ107が右側又は左側を指示していることと、周辺車両RVのウインカが右側又は左側を指示していることと、のうちの少なくとも何れかに基づいて予測されてもよい。
【0078】
図12は、周辺車両RVが自車両100に対して前方にある範囲500内に位置している場合について説明する。自車両100について予測される進路については、
図9(a)と同様である。周辺車両RVのウインカが方向を指示していない場合に、周辺車両RVは、周辺車両RVの前方の交差点を直進する進路1201Sをとると予想される。周辺車両RVのウインカが右側を指示している場合に、周辺車両RVは、周辺車両RVの前方の交差点を右折する進路1201Rをとると予想される。周辺車両RVのウインカが左側を指示している場合に、周辺車両RVは、周辺車両RVの前方の交差点を左折する進路1201Lをとると予想される。
【0079】
処理部110は、自車両100について予測される3つの進路901S、901R及び901Lと、周辺車両RVについて予測される3つの進路1201S、1201R及び1201Lとのペアのうち、両車両の進路が交差又は一致するペアについて衝突可能性があると予測し、それ以外のペアについて衝突可能性がないと予測してもよい。
図12の表1210は、上記の説明をまとめたものである。
【0080】
ステップS1006で、処理部110(例えば、その支援部110c)は、支援条件が満たされるかどうかを判定する。処理部110は、支援条件が満たされると判定された場合に処理をステップS1007に遷移し、それ以外の場合に処理をステップS1008に遷移する。ステップS1006は、ステップS605と同様であってもよいため、重複する説明を省略する。
【0081】
ステップS1007で、処理部110(例えば、その支援部110c)は、自車両100の運転支援を行う。処理部110は、自車両100の運転支援として、報知装置105により自車両100の乗員に対して衝突可能性の報知を行ったり、制動装置150により自車両100の制動動作を行ったりしうる。
【0082】
ステップS1010で、処理部110(例えば、その予測部110b)は、運転支援を実行したことによって不要になった基準位置及び判定領域(ステップS603で記憶された基準位置及び判定領域)を記憶部111から削除する。これによって、不要な情報で記憶部111の容量が消費されることが抑制される。
【0083】
ステップS1005で衝突可能性がないと判定されたか、ステップS1006で支援条件が満たされないと判定された場合に、ステップS1008が実行される。ステップS1008で、処理部110(例えば、その予測部110b)は、自車両100が、ステップS1002で記憶された基準位置から所定の距離(例えば、30m)以上離れたかどうかを判定する。処理部110は、自車両100が基準位置から所定の距離以上離れたと判定された場合に処理をステップS1010に遷移し、それ以外の場合に処理をステップS1009に遷移する。自車両100が基準位置から所定の距離以上離れた場合には、その地点において自車両100が周辺車両RVと衝突する可能性はないと考えられる。そこで、処理部110は、この周辺車両RVとの衝突に関して運転支援を実行せずに処理を終了する。この場合にも、ステップS1010で、処理部110(例えば、その予測部110b)は、不要になった基準位置及び判定領域を記憶部111から削除する。
【0084】
ステップS1009で自車両100が基準位置から所定の距離以上離れていないと判定された場合に、ステップS1009が実行される。ステップS1009で、処理部110(例えば、その予測部110b)は、自車両100の舵角の変化に基づいて、予測転向軌跡1104を更新してもよい。例えば、処理部110は、自車両100が予測転向軌跡1104で想定されているよりも大きな舵角で自車両100が左折している場合に、曲率半径が小さくなるように予測転向軌跡1104を更新してもよい。一方、処理部110は、自車両100が予測転向軌跡1104で想定されているよりも小さな舵角で自車両100が左折している場合に、曲率半径が大きくなるように予測転向軌跡1104を更新してもよい。予測転向軌跡1104の更新は、自車両100の現在の舵角がデフォルトの予測転向軌跡1104の舵角以上になった場合に行われてもよい。その後、処理部110は、処理をステップS1004に遷移し、範囲500内に新たに含まれるようになった周辺車両RVを、後続の処理の対象車両として特定する。また、ステップS1005の衝突可能性は、更新された予測転向軌跡1104に基づいて判定される。
【0085】
図10の方法によれば、自車両100の前方の範囲500内に複数の周辺車両が存在する場合に、複数の周辺車両について共通の基準位置(すなわち、転向準備位置1101)が使用される。その結果、複数の周辺車両のそれぞれについて、共通の基準位置に基づいて共通の判定領域が設定される。これによって、自車両100の対向車線側への転向時(例えば、左折時)の衝突可能性を適切に推定できる。
【0086】
上述の実施形態によれば、周辺車両の位置に応じて適切に衝突可能性を予測できる。その結果、自車両100の運転支援が適切に行うことが可能となる。なお、車車間通信を通じて周辺車両から取得した周辺車両情報に基づく運転支援が実行されない状況であっても、他の基準による(例えば、カメラやレーダの検知結果に基づく)運転支援が実行されてもよい。
【0087】
上述のウインカの指示状態に基づく衝突可能性を予測する際に、処理部110は、周辺車両情報に含まれる周辺車両の走行軌跡に基づいて、周辺車両RVが車線変更を実行したかどうかを判定してもよい。周辺車両RVのウインカが周辺車両RVの車線変更の完了後にも継続して方向を指示している場合(例えば、ウインカが点滅し続けている場合)に、周辺車両RVの運転者がウインカを消し忘れた可能性がある。この場合に、周辺車両RVのウインカの指示状態と、周辺車両RVの予測進路とが一致するとは限らない。そこで、処理部110は、周辺車両RVのウインカが周辺車両RVの車線変更の完了後にも継続して方向を指示している場合に、周辺車両RVのウインカの指示状態に基づかずに衝突可能性を予測してもよい。具体的に、
図9(b)に示されるように、周辺車両RVが自車両100に対して右側にある範囲501内に位置しており、自車両100のウインカが右側を指示している場合に、周辺車両RVがどの方向に進もうとも、両車両の進路が交差又は一致することがないため、衝突可能性がないと予測されてもよい。一方、周辺車両RVが自車両100に対して右側にある範囲501内に位置しており、自車両100のウインカが左側を指示している場合に、周辺車両RVの進路によっては、両車両の進路が交差又は一致する。そこで、処理部110は、安全を考慮して、衝突可能性があると予測してもよい。
【0088】
上述の衝突可能性の予測は、周辺車両RVから取得された最新の周辺車両情報(ウインカの指示状態を含む)及び自車両100から取得された最新の自車両情報(ウインカ107の指示状態を含む)を用いて行われうる。そのため、処理部110は、自車両100又は周辺車両RVのウインカが方向の指示を開始した変更における衝突可能性の予測結果に基づいて、自車両100の乗員に報知を行ってもよい。このようにウインカが方向の指示を変更した時点における衝突可能性の予測結果に基づくことによって、リアルタイムでウインカの方向を監視することができ、早い段階で運転者に衝突可能性を報知できる。ウインカによる方向指示の変更は、ウインカによる方向指示の開始であってもよいし、ウインカによる方向指示の終了であってもよい。
【0089】
上述の運転支援方法では、周辺車両RVが
図5の範囲500又は501内に位置することに基づいて、この周辺車両RVを衝突可能性の予測の対象とする。処理部110は、他の情報に基づいて、周辺車両RVを衝突可能性の予測の対象とするかどうかを判定してもよい。
図13を参照して、衝突可能性の予測の対象とする周辺車両RVの判定方法の一例について説明する。
【0090】
処理部110は、自車両100の進路ベクトル1301に対する周辺車両RVの進路ベクトル1302の回転角度1303にさらに基づいて、周辺車両RVを衝突可能性の予測の対象とするかどうかを判定してもよい。進路ベクトル1301とは、車両の進行方向を向いた単位ベクトルであってもよい。説明のために、回転角度1303は、時計回りの方向を正とし、反時計回りの方向を負とする。
【0091】
周辺車両RVが自車両100の前方にある範囲500内に含まれたとしても、周辺車両RVが自車両100と同じ方向に走行していたり、自車両100に対して右方向又は左方向に走行していたりする場合には、自車両100と周辺車両RVとの衝突可能性はないと考えられる。そこで、処理部110は、周辺車両RVが自車両100の前方にある範囲500内にあり、かつ回転角度1303が所定の範囲内(例えば、160°~200°)に含まれる場合に、周辺車両RVを
図6及び
図10の処理において衝突可能性の判定対象としてもよい。
【0092】
周辺車両RVが自車両100の右側にある範囲501内に含まれたとしても、周辺車両RVが自車両100と同じ方向又は反対方向に走行していたり、自車両100に対して右方向に走行していたりする場合には、自車両100と周辺車両RVとの衝突可能性はないと考えられる。そこで、処理部110は、周辺車両RVが自車両100の右側にある範囲501内にあり、かつ回転角度1303が所定の範囲内(例えば、-110°~-70°)に含まれる場合に、周辺車両RVを
図6及び
図10の処理において衝突可能性の判定対象としてもよい。
【0093】
周辺車両RVが自車両100の左側にある範囲501内に含まれたとしても、周辺車両RVが自車両100と同じ方向又は反対方向に走行していたり、自車両100に対して左方向に走行していたりする場合には、自車両100と周辺車両RVとの衝突可能性はないと考えられる。そこで、処理部110は、周辺車両RVが自車両100の左側にある範囲501内にあり、かつ回転角度1303が所定の範囲内(例えば、70°~110°)に含まれる場合に、周辺車両RVを
図6及び
図10の処理において衝突可能性の判定対象としてもよい。
【0094】
<実施形態のまとめ>
<項目1>
運転支援装置(108)であって、
前記運転支援装置が搭載された自車両(100)の周囲に存在する周辺車両(RV)から、車車間通信によって、前記周辺車両の車速、位置、走行軌跡及びウインカの指示状態を表す周辺車両情報を取得する取得手段(110a)と、
前記自車両の車速、位置、走行軌跡及びウインカ(107)の指示状態を表す自車両情報と、前記周辺車両情報とに基づいて、前記自車両と前記周辺車両との衝突の可能性を予測する予測手段(110b)と、
前記予測手段による予測結果に基づいて、前記自車両の乗員に報知を行う報知手段(110c)と、を備え、
前記予測手段は、前記自車両のウインカの指示状態と、前記周辺車両のウインカの指示状態と、前記自車両に対する前記周辺車両の位置とに少なくとも基づいて、前記自車両と前記周辺車両との衝突の可能性を予測する、運転支援装置。
この項目によれば、車車間通信によって、周辺車両のウインカの指示状態を精度よく取得できる。このウインカの指示状態を使用して、自車両と周辺車両との衝突の可能性を精度よく予測できる。それによって、運転者に対して過度な報知を行うことを抑制できる。
<項目2>
右側及び左側のうち、前記自車両が位置する地域において通行を義務付けられている道路の側を第1の側とし、前記第1の側とは反対側を第2の側として、前記予測手段は、
前記自車両に対して前記周辺車両が前記第1の側又は前記第2の側にあることと、
前記自車両のウインカが前記第1の側又は前記第2の側を指示していることと、
前記周辺車両のウインカが前記第1の側又は前記第2の側を指示していることと、
のうちの少なくとも何れかに基づいて、前記自車両と前記周辺車両との衝突の可能性を予測する、項目1に記載の運転支援装置。
この項目によれば、特定の状況において、運転者に対して過度な報知を行うことを抑制できる。
<項目3>
前記予測手段は、
前記周辺車両が前記自車両に対して前記第1の側にある第1の範囲(501)内又は前記第2の側にある第2の範囲(501)内に位置しており、前記自車両のウインカが前記第2の側を指示しており、かつ前記周辺車両のウインカが前記第1の側を指示している場合に、
前記自車両と前記周辺車両との衝突の可能性がないと予測する、項目2に記載の運転支援装置。
この項目によれば、特定の状況において、運転者に対して過度な報知を行うことを抑制できる。
<項目4>
前記予測手段は、
前記周辺車両が前記自車両に対して前記第2の側にある第2の範囲(501)内に位置しており、かつ前記周辺車両のウインカが前記第1の側を指示している場合、又は
前記周辺車両が前記自車両に対して前記第2の側にある第2の範囲内に位置しており、前記自車両のウインカが前記第1の側を指示しており、かつ前記周辺車両のウインカが前記第1の側又は前記第2の側を指示している場合に、
前記自車両と前記周辺車両との衝突の可能性がないと予測する、項目2又は3に記載の運転支援装置。
この項目によれば、特定の状況において、運転者に対して過度な報知を行うことを抑制できる。
<項目5>
前記予測手段は、
前記周辺車両が前記自車両に対して前記第1の側にある第1の範囲(501)内に位置しており、かつ前記自車両のウインカが前記第1の側を指示している場合に、
前記自車両と前記周辺車両との衝突の可能性がないと予測する、項目2乃至4の何れか1項に記載の運転支援装置。
この項目によれば、特定の状況において、運転者に対して過度な報知を行うことを抑制できる。
<項目6>
前記予測手段は、
前記周辺車両が前記自車両に対して前方の第3の範囲(500)内に位置しており、前記自車両のウインカが前記第2の側を指示しており、前記周辺車両のウインカが前記第2の側を指示している場合に、
前記自車両と前記周辺車両との衝突の可能性がないと予測する、項目2乃至5の何れか1項に記載の運転支援装置。
この項目によれば、特定の状況において、運転者に対して過度な報知を行うことを抑制できる。
<項目7>
前記予測手段は、
前記周辺車両が前記自車両に対して前方の第3の範囲(500)内に位置しており、前記自車両のウインカが方向を指示していない又は前記第1の側を指示しており、前記周辺車両のウインカが方向を指示していない又は前記第1の側を指示している場合に、
前記自車両と前記周辺車両との衝突の可能性がないと予測する、項目2乃至6の何れか1項に記載の運転支援装置。
この項目によれば、特定の状況において、運転者に対して過度な報知を行うことを抑制できる。
<項目8>
前記報知手段は、
前記自車両又は前記周辺車両のウインカが方向の指示を変更した時点における前記予測手段による予測結果に基づいて、前記自車両の乗員に報知を行う、項目1乃至7の何れか1項に記載の運転支援装置。
この項目によれば、早い段階で衝突可能性を予測できる。
<項目9>
前記運転支援装置は、前記周辺車両情報に含まれる前記周辺車両の走行軌跡に基づいて、前記周辺車両が車線変更を実行したかどうかを判定する判定手段をさらに備え、
前記予測手段は、前記周辺車両のウインカが前記周辺車両の車線変更の完了後にも継続して方向を指示している場合に、前記周辺車両のウインカの指示状態に基づかずに前記自車両と前記周辺車両との衝突の可能性を予測する、項目1乃至8の何れか1項に記載の運転支援装置。
この項目によれば、運転者が車線変更後にウインカを消し忘れた場合にも適切な運転支援を提供できる。
<項目10>
前記第1の範囲は、前記自車両に対して前記第1の側にあり所定の距離及び所定の角度で規定される扇形の範囲であり、
前記第2の範囲は、前記自車両に対して前記第2の側にあり所定の距離及び所定の角度で規定される扇形の範囲である、項目3に記載の運転支援装置。
この項目によれば、適切な範囲内の周辺車両を衝突可能性の予測対象にできる。
<項目11>
前記第3の範囲は、前記自車両に対して前方にあり所定の距離及び所定の角度で規定される扇形の範囲である、項目6又は7に記載の運転支援装置。
この項目によれば、適切な範囲内の周辺車両を衝突可能性の予測対象にできる。
<項目12>
運転支援方法であって、
取得手段が、自車両(100)の周囲に存在する周辺車両(RV)から、車車間通信によって、前記周辺車両の車速、位置、走行軌跡及びウインカの指示状態を表す周辺車両情報を取得する取得工程(S403)と、
予測手段が、前記自車両の車速、位置、走行軌跡及びウインカの指示状態を表す自車両情報と、前記周辺車両情報とに基づいて、前記自車両と前記周辺車両との衝突の可能性を予測する予測工程(S604、S1005)と、
報知手段が、前記予測工程における予測結果に基づいて、前記自車両の乗員に報知を行う報知工程と、を有し、
前記予測工程において、前記自車両のウインカの指示状態と、前記周辺車両のウインカの指示状態と、前記自車両に対する前記周辺車両の位置とに少なくとも基づいて、前記自車両と前記周辺車両との衝突の可能性を予測する、運転支援方法。
この項目によれば、運転者に対して過度な報知を行うことを抑制できる。
<項目13>
コンピュータに、
自車両(100)の周囲に存在する周辺車両(RV)から、車車間通信によって、前記周辺車両の車速、位置、走行軌跡及びウインカの指示状態を表す周辺車両情報を取得する取得工程(S403)と、
前記自車両の車速、位置、走行軌跡及びウインカの指示状態を表す自車両情報と、前記周辺車両情報とに基づいて、前記自車両と前記周辺車両との衝突の可能性を予測する予測工程(S604、S1005)と、
前記予測工程における予測結果に基づいて、前記自車両の乗員に報知を行う報知工程(S606、S1007)と、を実行させるためのプログラムであって、
前記予測工程において、前記自車両のウインカの指示状態と、前記周辺車両のウインカの指示状態と、前記自車両に対する前記周辺車両の位置とに少なくとも基づいて、前記自車両と前記周辺車両との衝突の可能性を予測する、プログラム。
この項目によれば、運転者に対して過度な報知を行うことを抑制できる。
【0095】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0096】
100:車両、101:センサ群、102:ウインカレバー、103:GNSSアンテナ、104:車車間通信アンテナ、105:報知装置、106:制動装置、107:ウインカ、108:制御装置