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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-24
(45)【発行日】2025-10-02
(54)【発明の名称】抗ウイルス剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 59/16 20060101AFI20250925BHJP
   A01N 37/02 20060101ALI20250925BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20250925BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20250925BHJP
   C09D 5/14 20060101ALI20250925BHJP
   A61K 31/20 20060101ALI20250925BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20250925BHJP
   A61K 33/30 20060101ALI20250925BHJP
   A61K 33/00 20060101ALI20250925BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20250925BHJP
【FI】
A01N59/16 Z
A01N37/02
A01P1/00
C09D201/00
C09D5/14
A61K31/20
A61P31/12
A61P31/12 171
A61K33/30
A61K33/00
C08J5/00 CER
C08J5/00 CEZ
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022512202
(86)(22)【出願日】2021-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2021013255
(87)【国際公開番号】W WO2021200808
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2024-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2020060618
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390000527
【氏名又は名称】住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124648
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 和夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154450
【弁理士】
【氏名又は名称】吉岡 亜紀子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 義晃
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-523441(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109796700(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0018213(US,A1)
【文献】特表2007-510712(JP,A)
【文献】特開2015-078479(JP,A)
【文献】特開平08-269177(JP,A)
【文献】特表2006-514077(JP,A)
【文献】特開2000-191416(JP,A)
【文献】笹原武志,日本鉱業振興会研究助成による研究成果報告(その3) (3)亜鉛の殺菌特性活用に関する調査・研究,鉛と亜鉛,日本鉱業協会亜鉛需要開発センター,2012年,Vol.49, No.3, Issue 267th,pp.24-27
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
A01P
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
M(C2n-1
(nは6~10の整数を表わし、MはZnまたはZrOを表わす。)
で示される化合物を有効成分として含有し、
前記式(I)で表される化合物は、オクチル酸亜鉛、および、オクチル酸酸化ジルコニウムからなる群から選択される一種以上である、
ネコカリシウイルス、ノロウイルス、または、インフルエンザウイルス用の抗ウイルス剤。
【請求項2】
前記有効成分はオクチル酸亜鉛である、請求項1に記載の抗ウイルス剤。
【請求項3】
JIS K5101-13-1により測定された吸油量が1.5~5mL/gの範囲の粉体をさらに含む、請求項1または請求項2に記載の抗ウイルス剤。
【請求項4】
防除対象のウイルスがインフルエンザウイルスおよび/またはノロウイルスである請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の抗ウイルス剤。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の抗ウイルス剤が配合されてなる抗ウイルス用加工品。
【請求項6】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の抗ウイルス剤が配合されてなる抗ウイルス用基材から形成された抗ウイルス用加工品。
【請求項7】
抗ウイルス用加工品に抗ウイルス性能を付与するための、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の抗ウイルス剤が配合されてなる抗ウイルス用基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗ウイルス剤に関する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザウイルスやノロウイルスなどのウイルスは、種々の疾病の原因となることから、防除に有用な抗ウイルス性能を有する抗ウイルス剤が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、優れた抗ウイルス性能を有する抗ウイルス剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、かかる課題を解決すべく鋭意検討した結果本発明に至った。すなわち本発明は、
(1)式(I)で示される化合物を有効成分として含有する抗ウイルス剤。
M(C2n-1 (I)
(nは6~10の整数を表わし、MはZnまたはZrOを表わす。)
(2)有効成分として、オクチル酸亜鉛を含有する上記の抗ウイルス剤。
(3)JIS K5101-13-1により測定された吸油量が1.5~5mL/gの範囲の粉体をさらに含む上記の抗ウイルス剤。
(4)防除対象のウイルスがインフルエンザウイルスおよび/またはノロウイルスである上記の抗ウイルス剤。
(5)上記の抗ウイルス剤が配合されてなる抗ウイルス性加工品。
を提供する。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、優れた抗ウイルス性能を有する抗ウイルス剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明に従った抗ウイルス剤は、次の式(I)で示される化合物を有効成分として含有する。
M(C2n-1 (I)
(nは6~10の整数を表わし、MはZnまたはZrOを表わす。)
【0007】
一般式(I)で示される化合物は、直鎖構造、分岐構造または環状構造のいずれの構造を有してもよい。具体的には、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸ジルコニウム、バーサチック酸亜鉛、および、バーサチック酸ジルコニウムからなる群から選択される一種以上が挙げられる。このうちオクチル酸亜鉛が好ましい。
【0008】
本発明の抗ウイルス剤は、一般式(I)で示される化合物をそのまま使用することも可能であるが、通常、溶媒等を加えて製剤化し使用する。製剤としては、例えば油剤、乳剤、可溶化製剤、水和剤、マイクロカプセル剤、粉剤、錠剤、エアゾール剤、炭酸ガス製剤等が挙げられる。
【0009】
製剤化の際に使用される溶媒としては、水、エタノール、イソプロパノール、フェノキシエタノール、ベンジルアルコールなどの一価アルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコール系溶剤およびその誘導体、グリセリン、ジグリセリンなどのグリセリン系溶剤およびその誘導体、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、γ-ブチロラクトンなどの環状有機溶媒、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステルなどのエステル系溶媒、メチルナフタレン、フェニルキシリルエタン、アルキルベンゼンなどの芳香族系溶媒、ノルマルパラフィン、イソパラフィンなどの脂肪族炭化水素溶媒、菜種油、綿実油、大豆油、ヒマシ油、ターペン、ミネラルスピリットなどが挙げられる。これら溶媒は、単独で使用してもよく、2種類以上を併用することも可能である。
【0010】
また粉剤として製剤化する場合には、一般式(I)で示される化合物をJIS K5101-13-1により測定された吸油量が1.5~5mL/gの範囲の粉体に担持させることができる。このような粉体としては、例えば、上記の吸油量を有するケイ酸カルシウムや二酸化ケイ素が挙げられ、フローライト(登録商標)Rやフローライト(登録商標)RT(富田製薬株式会社製)、トクシール(登録商標)NR(Oriental Silicas Corporation)などが市販されている。かかる粉体に担持させる際、通常、粉体の重量に対し一般式(I)で示される化合物の重量が4倍以下となるようにする。
【0011】
製剤化の際には、界面活性剤、pH調整剤、消泡剤、防錆剤、粘度調整剤、金属封鎖剤、光安定化剤、紫外線吸収剤、抗菌剤などを配合してもよい。これらは単独で、または、2種以上組み合わせて配合してもよい。
【0012】
界面活性剤としては、例えばポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのブロックコポリマー、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油などのノニオン界面活性剤、アルキルサルフェート塩、アルキルエーテルサルフェート塩、アルキルスルホサクシネート塩、アルキルスルホネート塩、アルキルアリルスルホネート塩、脂肪酸アミドスルホネート塩、リグニンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルホスフェート塩、アルキルエーテルホスフェート塩、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物塩などのアニオン界面活性剤、アルキルアミン塩、アルキルアンモニウム塩などのカチオン界面活性剤、グリシン型、ベタイン型、イミダゾリン型などの両性界面活性剤が挙げられる。
【0013】
本発明の抗ウイルス剤は、樹脂コンパウンド、フィルムまたはシート等のプラスチック剤、塗料、表面処理剤などのコーティング剤、接着剤、織布、不織布などの繊維、紙などの基材に配合され抗ウイルス性加工品として使用されることができる。抗ウイルス性加工品に抗ウイルス剤を配合する場合、抗ウイルス剤の配合量は、抗ウイルス性加工品の基材100重量部に対して0.01~20重量部であることが好ましく、より好ましくは、抗ウイルス性加工品の基材100重量部に対して0.1~10重量部である。
【0014】
本発明の抗ウイルス性加工品を用いることにより、壁材、手すり、床材、木質フロア材、キッチンカウンター、家具、壁紙など住環境に関する部材、冷蔵庫やエアコンの筐体、フィルターなどの繊維製品、携帯用電子機器の画像表示部の保護フィルムなど電気製品に関する部材、自動車や電車のシートやフロアマットなど工業製品に関する部材、包装紙や段ボールなど梱包に関する部材などに抗ウイルス性能を付与することが可能となる。
【0015】
抗ウイルス性能とは、ウイルスが付着してもウイルス感染価が低下して感染性を示さなくなることをいう。
【0016】
本発明の抗ウイルス剤は、インフルエンザウイルスおよびノロウイルスに対し特に効果を有する。また本発明の抗ウイルス剤は、コロナウイルス、ライノウイルス、RSウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルス等のウイルスの防除に期待される。
【実施例
【0017】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0018】
なお、特に明記しない限り、部は重量部を、%は重量%を意味する。
【0019】
実施例1
2-エチルヘキサン酸亜鉛(富士フイルム和光純薬株式会社製、オクチル酸亜鉛純度99%) 20部、ターペン 16部、レオドールTW-O106V(花王株式会社製、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート) 45部および水 19部を混合して抗ウイルス剤を得た(オクチル酸亜鉛含有量:19.8%)。
【0020】
実施例2
ネオデカン酸亜鉛(富士フイルム和光純薬株式会社製) 20部、ターペン 16部、レオドールTW-O106V 45部および水 19部を混合して抗ウイルス剤を得た(ネオデカン酸亜鉛含有量:19.8%)。
【0021】
実施例3
ビス(2-エチルヘキサン酸)酸化ジルコニウム(IV)・ミネラルスピリット溶液(富士フイルム和光純薬株式会社製、オクチル酸酸化ジルコニウム純度55%) 36部、レオドールTW-O106V 45部および水 19部を混合して抗ウイルス剤を得た(オクチル酸酸化ジルコニウム含有量:19.8%)。
【0022】
実施例4
2-エチルヘキサン酸亜鉛(富士フイルム和光純薬株式会社製、オクチル酸亜鉛純度99%) 80部およびフローライトRT(吸油量4.2mL/g) 20部を混合して抗ウイルス剤を得た(オクチル酸亜鉛含有量:79.2%)。
【0023】
実施例5
2-エチルヘキサン酸亜鉛(富士フイルム和光純薬株式会社製、オクチル酸亜鉛純度99%) 75部およびフローライトR(吸油量4.8mL/g) 25部を混合して抗ウイルス剤を得た(オクチル酸亜鉛含有量:74.3%)。
【0024】
比較例1
ラウリン酸亜鉛(富士フイルム和光純薬工業製) 20部、ターペン 16部、レオドールTW-O106V 45部および水 19部を混合して製剤を得た(ラウリン酸亜鉛含有量:20%)。
【0025】
比較例2
ステアリン酸亜鉛(富士フイルム和光純薬工業製) 20部、ターペン 16部、レオドールTW-O106V 45部および水 19部を混合して製剤を得た(ステアリン酸亜鉛含有量:20%)。
【0026】
比較例3
ターペン 16部、レオドールTW-O106V 45部、水 39部を混合して製剤を得た。
【0027】
[ネコカリシウイルスに対する抗ウイルス試験]
ISO21702に従い、ネコカリシウイルスF-9株(Feline calicivirus、Strain:F-9 ATCC VR-782)をCRFK細胞(ネコ腎臓由来細胞)により培養しウイルス感染価2×10Plaque Forming Unit/mL(以下、PFU/mLと記す)の試験ネコカリシウイルス懸濁液を得た。
実施例1で得た製剤の濃度が5%となるように滅菌蒸留水を用いて希釈した。この希釈液0.9mLに前述の試験ネコカリシウイルス懸濁液0.1mLを加え、25℃で2時間静置した。
【0028】
上記で得た試験ネコカリシウイルス懸濁液が添加された希釈液の0.1mLとSCDLP培地(日本製薬製)0.9mLとを混合した。得られた混合液の0.1mLとE-MEM培地(富士フイルム和光純薬製)0.9mLとを混合し、ウイルス感染価測定用の試料1を得た。次いで試料1 0.1mLに対しE-MEM培地を10倍量、100倍量、1000倍量、100000倍量、1000000倍量加える段階希釈法により希釈倍率の異なる試料2~6を作製した。
試料1~6について、CRFK細胞を対象にプラーク測定法によりネコカリシウイルス感染価(FCV感染価対数値)を測定した。
【0029】
実施例2~3および比較例1~3についても上記と同様の操作を行い、それぞれの製剤のネコカリシウイルス感染価(FCV感染価対数値)を測定した。また滅菌蒸留水のみでネコカリシウイルス感染価(FCV感染価対数値)を測定し、この結果を対照とした。測定結果を表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
[インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス試験]
上述のネコカリシウイルスに対する抗ウイルス試験において、ネコカリシウイルスF-9株(Feline calicivirus、Strain:F-9 ATCC VR-782)をインフルエンザウイルスH3N2株(influenza A virus:A/Hong Kong/8/68:TC adapted ATCC VR-1679)に、CRFK細胞(ネコ腎臓由来細胞)をMDCK細胞(イヌ腎臓由来細胞)に変更し、希釈液の濃度を5%から1%に変更した以外は、同様の手順にてインフルエンザウイルス感染価(IV感染価対数値)を測定した。測定結果を表2に示す。
【0032】
【表2】
【0033】
[ポリ塩化ビニルシートの作製]
ZEST-1300(ポリ塩化ビニル、新第一塩ビ株式会社製) 100部、フタル酸ジイソノニル 45部、エポキシ化大豆油 6.2部およびLBK-793K(堺化学工業株式会社製) 12.3部を混合後、ラボプラストミルにより170℃で混練し塩ビゾルを得た。
この塩ビゾルのみからなる樹脂組成物を180℃に加温したプレス成型機にて3分間プレス後、冷却することによりポリ塩化ビニルシート-0を得た。また、この塩ビゾル 100部と2-エチルヘキサン酸亜鉛(富士フイルム和光純薬株式会社製、オクチル酸亜鉛純度99%)を1部、または、3部とを混練した樹脂組成物を得た。それぞれの樹脂組成物を180℃に加温したプレス成型機にて3分間プレス後、冷却することによりポリ塩化ビニルシート(シート-1,2)を得た。
【0034】
[ポリ塩化ビニルシートの抗ウイルス性試験]
ISO21702に従い、シートの抗ウイルス性試験を行った。まず、前述のポリ塩化ビニルシート-0,1,2をそれぞれ50mm×50mmにカットし試験片を得た。試験片をプラスチックシャーレに入れ、それぞれの試験片の略中心域に前述の試験ネコカリシウイルス懸濁液を0.4mL滴下した。ウイルス懸濁液全体を覆うように、40mm×40mmのポリエチレンフィルムを載置し、25℃、湿度95%下で24時間保管した。次いで試験片とポリエチレンフィルムに挟まれている試験ネコカリシウイルス懸濁液をSCDLP培地により洗い出した。この洗い出し液の希釈系列をE-MEM培地を用いる段階希釈法によって作製した。得られた希釈液についてCRFK細胞を対象にプラーク測定法によりネコカリシウイルス感染価(FCV感染価対数値)を測定した。測定結果を表3に示す。
【0035】
前述のポリ塩化ビニルシートの抗ウイルス性試験において、試験ウイルスをネコカリシウイルスからインフルエンザウイルスに変更して、MDCK細胞を対象としたプラーク測定法によりインフルエンザウイルス感染価(IV感染価対数値)を測定した。測定結果を表3に示す。
【0036】
【表3】
【0037】
[紫外線硬化型アクリル樹脂塗膜の作製]
紫外線硬化型アクリル樹脂のみからなる樹脂組成物、紫外線硬化型アクリル樹脂100部と2-エチルヘキサン酸亜鉛(富士フイルム和光純薬株式会社製、オクチル酸亜鉛純度99%)5部ないし10部とを混合した樹脂組成物の計3種の樹脂組成物を準備した。これらの樹脂組成物をそれぞれ、10g/mとなるようにアルミ袋にアプリケータで塗布した後、紫外線硬化装置HLR100T-2(アズワン製)を用いて350mJ/cmの紫外線を照射して硬化させた。次いで60℃の乾燥機に24時間静置し、紫外線硬化型アクリル樹脂塗膜(塗膜-0,1,2)を得た。
【0038】
[紫外線硬化型アクリル樹脂塗膜の抗ウイルス性試験]
ISO21702に従い、塗膜の抗ウイルス性試験を行った。まず、前述の塗膜-0,1,2をそれぞれ50mm×50mmにカットし試験片を得た。得られた試験片をプラスチックシャーレに入れ、それぞれの試験片の略中心域に前述の試験ネコカリシウイルス懸濁液を0.4mL滴下した。ウイルス懸濁液全体を覆うように、40mm×40mmのポリエチレンフィルムを載置し、これらを25℃、湿度95%下で24時間保管した。その後、試験片とポリエチレンフィルムに挟まれている試験ネコカリシウイルス懸濁液をSCDLP培地により洗い出した。この洗い出し液の希釈系列を、E-MEM培地を用いる段階希釈法によって作製した。得られた希釈液についてCRFK細胞を対象にプラーク測定法によりネコカリシウイルス感染価(FCV感染価対数値)を測定した。
【0039】
紫外線硬化型アクリル樹脂塗膜に対する抗ウイルス性試験の結果を表4に示す。
【0040】
【表4】
【0041】
実施例6
2-エチルヘキサン酸亜鉛(富士フイルム和光純薬株式会社製、オクチル酸亜鉛純度99%) 70部、ナロアクティー(登録商標)CL70(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル)(三洋化成工業株式会社製) 30部を混合して抗ウイルス剤を得た(オクチル酸亜鉛含量:69.3%)。
【0042】
[加工繊維の作製]
実施例6で得られた製剤を蒸留水で希釈して分散液を調製した。抗菌試験用標準布(一般社団法人繊維評価技術協議会頒布綿)に製剤の担持量が1.2g/mまたは2.4g/mとなるように浸漬処理した。その後、105℃で乾燥し加工繊維(加工繊維-1,2)を得た。また、前述の標準布を蒸留水に浸漬後、105℃で乾燥することで比較用の加工繊維(加工繊維-0)を得た。
【0043】
[加工繊維の抗ウイルス性試験]
ISO18184に従い、繊維の抗ウイルス性試験を行った。まず、加工繊維-0、1、2をそれぞれ乾燥重量として0.4gとなるようにカットし、ガラス製バイアル瓶に入れた。それぞれの加工繊維に対し、繊維全体に浸みこむように前述の試験ネコカリシウイルス懸濁液を0.2mL滴下した後、キャップを閉め、25℃で2時間保管した。その後、該バイアル瓶にSCDLP培地を加えて充分混ぜることによってネコカリシウイルス懸濁液を洗い出した。この洗い出し液の希釈系列を、E-MEM培地を用いる段階希釈法によって作製した。得られた希釈液についてCRFK細胞を対象にプラーク測定法によりネコカリシウイルス感染価(FCV感染価対数値)を測定した。測定結果を表5に示す。
【0044】
前述の加工繊維の抗ウイルス性試験において、試験ウイルスをネコカリシウイルスからインフルエンザウイルスに変更して、MDCK細胞を対象としたプラーク測定法によりインフルエンザウイルス感染価(IV感染価対数値)を測定した。測定結果を表5に示す。
【0045】
【表5】
【0046】
以上に開示された実施の形態と実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態と実施例ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正や変形を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の抗ウイルス剤は、優れた抗ウイルス性を有することから、抗ウイルス剤が配合されてなる抗ウイルス性加工品を用いて壁材、手すり、床材、木質フロア材、キッチンカウンター、家具、壁紙など住環境に関する部材等に抗ウイルス性能を付与することが可能となる。