(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-24
(45)【発行日】2025-10-02
(54)【発明の名称】ノイズ低減装置、電力変換装置、車両、及びノイズ低減方法
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20250925BHJP
【FI】
H02M7/48 M
(21)【出願番号】P 2022043788
(22)【出願日】2022-03-18
【審査請求日】2024-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中田 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】関 淳志
(72)【発明者】
【氏名】湯河 潤一
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-108514(JP,A)
【文献】特開2009-254188(JP,A)
【文献】特開2012-110094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42- 7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に生じるノイズ成分と逆極性の相殺信号を生成するノイズ低減回路と、
前記相殺信号のレベルを検出し、前記検出されたレベルが適正範囲から外れるか否か判断し、判断結果に応じて前記ノイズ低減回路の故障を診断する故障診断回路と、
前記ノイズ低減回路の故障が発生したと前記故障診断回路で診断された場合、前記負荷に接続されるスイッチング回路を停止させ、所定時間待機し、前記スイッチング回路の動作を再開させる制御回路と、
を備えたノイズ低減装置。
【請求項2】
前記故障診断回路は、前記検出されたレベルが前記適正範囲から外れる場合、前記ノイズ低減回路に故障が発生したと診断し、前記検出されたレベルが前記適正範囲に収まっている場合、前記ノイズ低減回路に故障が発生していないと診断する
請求項1に記載のノイズ低減装置。
【請求項3】
前記ノイズ低減回路は、前記負荷に生じるノイズ成分を検出し、検出されたノイズ成分と逆極性の相殺電圧を生成する
請求項1に記載のノイズ低減装置。
【請求項4】
前記ノイズ低減回路は、前記負荷に生じるノイズ成分を検出し、検出されたノイズ成分と逆極性の相殺電流を生成する
請求項1に記載のノイズ低減装置。
【請求項5】
前記ノイズ低減回路は、1次巻線及び2次巻線を含む絶縁トランスを有し、
前記1次巻線の巻き数と前記2次巻線の巻き数との比は、1:1である
請求項1に記載のノイズ低減装置。
【請求項6】
前記ノイズ低減回路に故障が発生したと前記故障診断回路で診断された場合、前記負荷に接続されるスイッチング回路を通常時の電力より小さい電力で動作させる制御回路をさらに備えた
請求項1に記載のノイズ低減装置。
【請求項7】
前記ノイズ低減回路に故障が発生したと前記故障診断回路で診断された場合、前記負荷に接続されるスイッチング回路を停止させる制御回路をさらに備えた
請求項1に記載のノイズ低減装置。
【請求項8】
前記ノイズ低減回路に故障が発生したと前記故障診断回路で診断された場合、故障の発生を報知する報知装置をさらに備えた
請求項1に記載のノイズ低減装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載のノイズ低減装置を備えた電力変換装置。
【請求項10】
負荷に接続されるスイッチング回路と、
電源と前記スイッチング回路との間に配される第1のフィルタ回路と、
をさらに備え、
前記ノイズ低減装置は、前記第1のフィルタ回路と前記スイッチング回路との間に接続され前記負荷に生じるノイズ成分を検出する検出回路をさらに有する
請求項9に記載の電力変換装置。
【請求項11】
負荷に接続されるスイッチング回路と、
電源と前記スイッチング回路との間に配される第1のフィルタ回路と、
をさらに備え、
前記ノイズ低減装置は、前記第1のフィルタ回路と前記スイッチング回路との間に接続され前記負荷に生じるノイズ成分と逆極性の相殺信号を注入する注入回路をさらに有する
請求項9に記載の電力変換装置。
【請求項12】
負荷に接続されるスイッチング回路と、
電源と前記スイッチング回路との間に配される第1のフィルタ回路と、
をさらに備え、
前記ノイズ低減装置は、
前記第1のフィルタ回路と前記スイッチング回路との間に接続され前記負荷に生じるノイズ成分を検出する検出回路と、
前記第1のフィルタ回路と前記スイッチング回路との間に接続され前記負荷に生じるノイズ成分と逆極性の相殺信号を注入する注入回路と、
をさらに有する
請求項9に記載の電力変換装置。
【請求項13】
負荷に接続されるスイッチング回路と、
電源と前記スイッチング回路との間に配される第1のフィルタ回路と、
前記第1のフィルタ回路と前記スイッチング回路との間に配される第2のフィルタ回路と、
をさらに備え、
前記ノイズ低減装置は、前記第1のフィルタ回路と前記第2のフィルタ回路との間に接続され前記負荷に生じるノイズ成分と逆極性の相殺信号を注入する注入回路をさらに有する
請求項9に記載の電力変換装置。
【請求項14】
負荷に接続されるスイッチング回路と、
電源と前記スイッチング回路との間に配される第1のフィルタ回路と、
前記第1のフィルタ回路と前記スイッチング回路との間に配される第2のフィルタ回路と、
をさらに備え、
前記ノイズ低減装置は、
前記第2のフィルタ回路と前記スイッチング回路との間に接続され前記負荷に生じるノイズ成分を検出する検出回路と、
前記第1のフィルタ回路と前記第2のフィルタ回路との間に接続され前記負荷に生じるノイズ成分と逆極性の相殺信号を注入する注入回路と、
をさらに有する
請求項9に記載の電力変換装置。
【請求項15】
請求項9に記載の電力変換装置を備えた車両。
【請求項16】
負荷に生じるノイズ成分と逆極性の相殺信号をノイズ低減回路で生成することと、
前記生成された相殺信号のレベルを検出することと、
前記検出されたレベルが適正範囲から外れる否か判断することと、
判断結果に応じて前記ノイズ低減回路の故障を診断することと、
前記ノイズ低減回路の故障が発生したと診断された場合、前記負荷に接続されるスイッチング回路を停止させ、所定時間待機し、前記スイッチング回路の動作を再開させること、
を備えたノイズ低減方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ノイズ低減装置、電力変換装置、車両、及びノイズ低減方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ノイズ低減装置は、所定の回路の負荷に生じるノイズ成分と逆極性の相殺信号を生成して、所定の回路又は負荷に相殺信号を供給することがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ノイズ低減装置が適正に動作しないことがある。この場合、所定の回路の負荷に生じるノイズ成分による不具合が発生する可能性がある。例えば、ノイズ成分がグランド電位等を介して他の装置に漏洩すると、他の装置が誤動作する可能性がある。
【0005】
本開示は、負荷に生じるノイズ成分による不具合を抑制できるノイズ低減装置、電力変換装置、車両、及びノイズ低減方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るノイズ低減装置は、ノイズ低減回路と故障診断回路と制御回路とを有する。ノイズ低減回路は、相殺信号を生成する。相殺信号は、負荷に生じるノイズ成分と逆極性の信号である、故障診断回路は、相殺信号のレベルを検出する。故障診断回路は、検出されたレベルが適正範囲に収まっているか否か判断する。故障診断回路は、判断結果に応じてノイズ低減回路の故障を診断する。制御回路は、ノイズ低減回路の故障が発生したと故障診断回路で診断された場合、負荷に接続されるスイッチング回路を停止させ、所定時間待機し、スイッチング回路の動作を再開させる。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係るノイズ低減装置によれば、負荷に生じるノイズ成分による不具合を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係るノイズ低減装置を含む電力変換装置が搭載される車両の概略構成を示す図。
【
図2】実施形態に係るノイズ低減装置を含む電力変換装置の機能構成を示す図。
【
図3】実施形態に係るノイズ低減装置を含む電力変換装置の構成を示す回路図。
【
図4】実施形態に係るノイズ低減装置を含む電力変換装置の動作を示すフローチャート。
【
図5】実施形態の第1の変形例に係るノイズ低減装置を含む電力変換装置の構成を示す図。
【
図6】実施形態の第2の変形例に係るノイズ低減装置を含む電力変換装置の構成を示す図。
【
図7】実施形態の第3の変形例に係るノイズ低減装置を含む電力変換装置の構成を示す図。
【
図8】実施形態の第4の変形例に係るノイズ低減装置を含む電力変換装置の構成を示す図。
【
図9】実施形態の第5の変形例に係るノイズ低減装置の動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本開示に係るノイズ低減装置の実施形態について説明する。
【0010】
(実施形態)
実施形態にかかるノイズ低減装置は、所定の回路の負荷に生じるノイズ成分と逆極性の相殺信号を生成して、所定の回路に相殺信号を供給するノイズ低減動作を行うが、適正にノイズ低減動作を行うための工夫が施される。ノイズ低減装置1は、
図1に示すような車両100に搭載され得る。
図1は、ノイズ低減装置1が搭載される車両100を示す図である。
【0011】
車両100は、複数の車輪102-1~102-4、車体101、及びノイズ低減装置1を有する。
【0012】
車輪102-1~102-4は、それぞれ、車軸周りに回転可能である。車輪(第1の車輪)102-1,102-2の後方には、車輪(第2の車輪)102-3,102-4が配され、それに応じて、前方の車軸及び後方の車軸(図示せず)が配される。車輪102-1,102-2は、それぞれ、前方の車軸の一端、他端に連結される。車輪102-3,102-4は、それぞれ、後方の車軸の一端、他端に連結される。
図1では、車両100が4つの車輪102を有する構成が例示されるが、車輪102の数は、3以下でもよいし、5以上でもよい。
【0013】
車体101は、車軸を回転可能に支持し、車軸を介して車輪102-1~102-4が結合される。車体101は、車輪102-1,102-2及び車輪102-3,102-4の回転によって、前方に移動可能である。
【0014】
ノイズ低減装置1は、車体101内に配され、車両100におけるAC/DCコンバータ、DC/DCコンバータ、インバータなどの電力変換装置103に含められる。電力変換装置103は、電源PS及び負荷LDの間に接続され、電源PSから受けた電力に対して電力変換を行い負荷LDに供給する。
【0015】
例えば、車両100が電気自動車又はハイブリッド自動車である場合、電力変換装置103は、例えば、負荷LDとしてのモータ106と電源としてのバッテリ105との間に接続された駆動装置である。電力変換装置103は、バッテリ105から供給された直流電力を交流電力に変換してモータ106に駆動電力として供給する。モータ106は、車輪102-1,102-2及び車輪102-3,102-4を回転させるための動力源として機能する。
【0016】
あるいは、車両100が外部電源から充電可能なバッテリ105を搭載する場合、電力変換装置103は、例えば、商用電源又は充電ステーションの充電器などの電源PSが接続されるべき接続端子104と負荷LDとしてのバッテリ105との間に接続された車載充電器である。車載充電器では、電源PSから入力された交流電力が受動的なノイズフィルタ(ACF:交流フィルタ)を通り、整流回路で直流電力に変換され、PFC回路(力率改善回路)で力率と電圧とが制御される。制御後の直流電力が続くインバータで絶縁トランスを駆動する為に高周波の交流電力に変換され、絶縁トランスを経て2次側に接続された整流回路により直流電力に変換されて、直流電力でバッテリ105が充電される。
【0017】
あるいは、電力変換装置103は、例えば、負荷LDとして低電圧の第2のバッテリ(図示しない)と、電源としてのバッテリ105との間に接続されたDCDCコンバータである。電力変換装置103は、バッテリ105から供給された直流電力を絶縁して低電圧の直流電力に変換されて、前記第2のバッテリが充電される。
【0018】
電力変換装置103では、アクティブノイズキャンセル(ANC)機能が設けられることがある。ANC機能が電力変換装置103におけるノイズ成分を受けそれと逆相の相殺信号を生成して出力する事で、ノイズ成分による影響(EMI(Electromagnetic Interference)ノイズ等)が外部に放出されるのを抑制できる。
【0019】
電力変換装置103は、機能的に、
図2に示すように構成され得る。
図2は、ノイズ低減装置1を含む電力変換装置103の機能構成を示す図である。
【0020】
電力変換装置103は、電力変換機能103a及びノイズ低減装置1を有する。ノイズ低減装置1は、ノイズ低減機能103bを有する。ノイズ低減機能103bは、アクティブノイズキャンセル(ANC)機能103b1及び故障診断機能103b2を有する。故障診断機能103b2は、自律的に故障を診断する機能であり、自己診断機能と呼ぶこともできる。故障診断機能103b2は、制御機能103b21、検出機能103b22、ON/OFF切替機能103b23、及び注入機能103b24を有する。
【0021】
ANC機能103b1は、ノイズ成分と逆極性の相殺信号を電力変換機能103aの回路部に印加する機能である。ON/OFF切替機能103b23は、ANC機能103b1の動作のON/OFFを切り替える機能である。例えば電力変換装置103が外部の電源PSに接続される。図示しないECU(Electric Control Unit)から電力変換装置103の全体制御部へ充電指令が出された際に、制御機能103b21は、注入機能103b24に対して、相殺信号を電力変換機能103aの回路部に印加するようにする。検出機能103b22は、その際の相殺信号のレベルをモニターする。制御機能103b21は、相殺信号のレベルが所定の許容範囲から外れているか否かを確認する。このとき、制御機能103b21は、必要に応じて、ON/OFF切替機能103b23を適時切り替えてもよい。制御機能103b21は、ANC機能103b1の動作に応じて相殺信号のレベルが所定の許容範囲から外れているか否かを確認する。
【0022】
例えば、相殺信号のレベルが許容範囲を外れていると判断された場合、制御機能103b21は、ON/OFF切替機能103b23に対して、ANC機能103b1の動作をOFFするように指令する。これにより、ANC機能103b1の故障などにより、規定値以上のEMIノイズによる影響を抑制できる。
【0023】
あるいは、相殺信号のレベルが許容範囲を外れていると判断された場合、制御機能103b21は、ECUに対して、報知装置(例えば、ワーニング・ランプ)で故障発生を報知するように指令する。これにより、ANC機能103b1の故障に対処するように車両の運転者に促すことができ、規定値以上のEMIノイズが放置されることを防げる。
【0024】
上記の駆動装置の場合におけるノイズ低減装置1を含む電力変換装置103は、
図3に示すように構成され得る。
図3は、ノイズ低減装置1を含む電力変換装置103の構成を示す回路図である。
【0025】
電力変換装置103は、ノイズ低減装置1、スイッチング回路9、スイッチング制御回路10、ノイズフィルタ回路11-1、ノイズフィルタ回路11-2を有する。ノイズ低減装置1は、ノイズ低減制御回路2、ノイズ低減回路3、故障診断回路4、制御回路5、報知装置6、検出回路7、注入回路8を有する。
【0026】
電力変換装置103において、電力変換機能103a(
図2参照)は、主として、スイッチング回路9およびスイッチング制御回路10で実現される。ノイズ低減機能103bは、ノイズ低減装置1で実現される。ANC機能103b1は、ノイズ低減回路3で実現される。故障診断機能103b2は、ノイズ低減制御回路2、故障診断回路4、制御回路5、報知装置6、検出回路7、注入回路8で実現される。制御機能103b21は、主として、ノイズ低減制御回路2、故障診断回路4、制御回路5、報知装置6、検出回路7で実現される。検出機能103b22は、故障診断回路4で実現される。ON/OFF切替機能103b23は、故障診断回路4又は制御回路5で実現される。注入機能103b24は、注入回路8で実現される。
【0027】
スイッチング回路9は、電源PSと負荷LDとの間に接続される。ノイズフィルタ回路11-1、ノイズフィルタ回路11-2は、電源PSとスイッチング回路9との間に接続される。スイッチング回路9は、複数のスイッチング素子を有する。複数のスイッチング素子は、スイッチング制御回路10から供給されるゲート信号に応じてスイッチング動作を行う。これにより、スイッチング回路9は、電源PSからノイズフィルタ回路11-1,11-2経由で供給される電力に対して通常時の電力変換を行い負荷LDへ供給する。
【0028】
ノイズフィルタ回路11-1は、電源PSと注入回路8との間に配され、例えばコモンモードコイルL3,L4、ライン間コンデンサC7,C6、ライン・アース間コンデンサC12,C11,C14,C13を含む。
【0029】
コモンモードコイルL3,L4は、それぞれ、一端が入力ノードNin1,Nin2に接続され、他端が注入回路8に接続される。コモンモードコイルL3,L4は、コアに互いに同相巻きに構成され、コイルに流れる電流の磁束を互いに打ち消し合いコモンモードノイズを減衰させ得る。
【0030】
ライン間コンデンサC7,C6は、それぞれ、一端が入力ノードNin1と注入回路8とを接続するラインに接続され、他端が入力ノードNin2と注入回路8とを接続するラインに接続される。ライン間コンデンサC7,C6は、ノイズをライン間でバイパスさせ、ノーマルモードノイズを減衰させ得る。
【0031】
ライン・アース間コンデンサC12,C11は、それぞれ、一端が入力ノードNin1と注入回路8とを接続するラインに接続され、他端がグランド電位に接続される。ライン・アース間コンデンサC12,C11は、ノイズをグランド電位にバイパスさせ、コモンモードノイズを減衰させ得る。
【0032】
ライン・アース間コンデンサC14,C13は、それぞれ、一端が入力ノードNin2と注入回路8とを接続するラインに接続され、他端がグランド電位に接続される。ライン・アース間コンデンサC14,C13は、ノイズをグランド電位にバイパスさせ、コモンモードノイズを減衰させ得る。
【0033】
ノイズフィルタ回路11-2は、注入回路8とスイッチング回路9との間に配され、例えばコモンモードコイルL5,L6、ライン間コンデンサC8、ライン・アース間コンデンサC15,C16を含む。
【0034】
コモンモードコイルL5,L6は、それぞれ、一端が注入回路8に接続され、他端がスイッチング回路9に接続される。コモンモードコイルL5,L6は、コアに互いに同相巻きに構成され、コイルに流れる電流の磁束を互いに打ち消し合いコモンモードノイズを減衰させ得る。
【0035】
ライン間コンデンサC8は、それぞれ、一端が注入回路8とスイッチング回路9とを接続するP側のラインLPに接続され、他端が注入回路8とスイッチング回路9とを接続するN側のラインLNに接続される。ライン間コンデンサC8は、ノイズをライン間でバイパスさせ、ノーマルモードノイズを減衰させ得る。
【0036】
ライン・アース間コンデンサC15は、一端が注入回路8とスイッチング回路9とを接続するP側のラインLPに接続され、他端がグランド電位に接続される。ライン・アース間コンデンサC15は、ノイズをグランド電位にバイパスさせ、コモンモードノイズを減衰させ得る。
【0037】
ライン・アース間コンデンサC16は、一端が注入回路8とスイッチング回路9とを接続するN側のラインLNに接続され、他端がグランド電位に接続される。ライン・アース間コンデンサC16は、ノイズをグランド電位にバイパスさせ、コモンモードノイズを減衰させ得る。
【0038】
電力変換装置103では、ノイズフィルタ回路11-1,11-2で除去しきれないノイズ成分が存在する可能性があり、その除去しきれないノイズ成分を抑制するために、ノイズ低減装置1が設けられる。
【0039】
ノイズ低減装置1において、検出回路7は、スイッチング回路9及び負荷LDの間に配される。検出回路7は、ノイズ成分に応じたパラメータを検出する。スイッチング回路9から負荷LDへ供給されるのが3相の交流電力である場合、検出回路7は、例えば3相のバランスの崩れに応じた電流を検出してもよい。検出回路7は、検出されたパラメータをノイズ低減制御回路2へ供給する。
【0040】
ノイズ低減制御回路2は、検出回路7及びノイズ低減回路3の間に配される。ノイズ低減制御回路2は、供給されたパラメータに応じて制御信号CSを生成する。パラメータ(例えば、3相の電流)は、スイッチング回路9から負荷LDへ供給される電力に同期したタイミングで変化する。このため、ノイズ低減制御回路2は、供給されたパラメータに応じて、スイッチング回路9から負荷LDへ供給される電力に同期してノイズ低減装置1を動作させる制御信号CSを生成できる。ノイズ低減制御回路2は、制御信号CSをノイズ低減回路3へ供給する。
【0041】
ノイズ低減回路3は、ノイズ低減制御回路2、故障診断回路4、注入回路8及び検出回路7の間に配される。ノイズ低減回路3は、負荷LDに生じるノイズ成分と逆極性の相殺信号を生成する。ノイズ低減回路3は、相殺信号を電圧の形態で生成し得る。ノイズ低減回路3は、相殺信号を注入回路8へ供給する。
【0042】
ノイズ低減回路3は、電源E、容量素子C1、容量素子C2、増幅器AM、トランジスタQ1、トランジスタQ2、容量素子C3、絶縁トランスTR、容量素子C4、容量素子C5を有する。
【0043】
電源Eは直流電源である。電源Eの両端に、トランジスタQ1、トランジスタQ2が直列に接続される。ノイズ低減制御回路2の出力ノードは増幅器AMを介してトランジスタQ1、トランジスタQ2の制御端子にそれぞれ接続される。トランジスタQ1及びトランジスタQ2の共通接続端子は容量素子C3を介して2次巻線L2の一端に接続される。
【0044】
トランジスタQ1及びトランジスタQ2はブリッジ接続される。トランジスタQ1,Q2は、バイポーラトランジスタでもよいし、MOSFETでもよい。バイポーラトランジスタである場合、トランジスタQ1がNPN型トランジスタであり、トランジスタQ2がPNP型トランジスタである。MOSFETである場合、トランジスタQ1がPチャネル型MOSFETであり、トランジスタQ2がNチャネル型MOSFETである。
【0045】
電源Eの両端に、トランジスタQ1、トランジスタQ2の直列接続と並列に、容量素子C1、容量素子C2が直列に接続される。容量素子C1の一端が電源Eの正極に接続され、容量素子C2の一端が電源Eの負極に接続され、容量素子C1及び容量素子C2の他端が共通接続され2次巻線L2の一端に接続される。
【0046】
絶縁トランスTRは、1次巻線L1及び2次巻線L2を有する。1次巻線L1の巻き数と2次巻線L2の巻き数との比は、1:1である。1次巻線L1及び2次巻線L2は、互いに、磁気的に結合可能な位置に配される。絶縁トランスTRは、磁気コアを有してもよい。1次巻線L1及び2次巻線L2は、磁気コアを介して磁気的に結合されてもよい。
【0047】
1次巻線L1の両端には容量素子C4が接続される。容量素子C4は、一端が1次巻線L1の一端と注入回路8と故障診断回路4の検出ノード4aに接続され、他端が1次巻線L1の他端と故障診断回路4の検出ノード4bと容量素子C5の一端とに接続される。
【0048】
容量素子C5は、容量素子C4と基準電位(例えば、グランド電位)との間に接続される。容量素子C5は、一端が容量素子C4の他端と1次巻線L1の他端と故障診断回路4の検出ノード4bとに接続され、他端が基準電位に接続される。
【0049】
ここで、負荷LDは、例えば筐体が基準電位に接続され、ノイズ成分が筐体を通って基準電位に漏洩することがある。このノイズ成分が基準電位を通って容量素子C5の他端に流れ込み、容量素子C5の両端にノイズ成分に応じた電圧が発生する。これに応じて、容量素子C4の両端には、容量素子C5の両端電圧と逆極性の電圧、すなわちノイズ成分と逆極性の電圧が発生可能な状態になる。このとき、制御信号CSに応じてトランジスタQ1、トランジスタQ2がそれぞれオン・オフされ、制御信号CSに応じた信号が容量素子C3→2次巻線L2→1次巻線L1と伝達される。これにより、ノイズ成分と逆極性の相殺信号が容量素子C4の両端電圧として現れ注入回路8へ伝達される。相殺信号の振幅絶対値は、ノイズ成分の振幅絶対値に略等しいと見なせる適正範囲に収まっていることが望ましい。
【0050】
注入回路8は、電源PS及びスイッチング回路9の間に接続され、例えばノイズフィルタ回路11-1及びノイズフィルタ回路11-2の間に接続される。注入回路8は、ノイズフィルタ回路11-1及びノイズフィルタ回路11-2の間に相殺信号を注入する。注入回路8は、例えば容量素子C21及び容量素子C22を有する。容量素子C21及び容量素子C22はP側のラインとN側のラインとの間に直列接続され、相殺信号を保持する容量素子C4の一端が容量素子C21及び容量素子C22の接続点に接続される。容量素子C21及び容量素子C22の容量値が等しければ接続点にはP側の信号とN側の信号とのコモンモード成分が現れる。相殺信号はコモンモード成分に注入され得る。
【0051】
ノイズフィルタ回路11-1及びノイズフィルタ回路11-2の間に相殺信号が注入され、ノイズフィルタ回路11-1及びノイズフィルタ回路11-2を通ったノイズ成分に相殺信号を注入できるので、効果的にノイズ成分を相殺できる。ノイズフィルタ回路11-1及びノイズフィルタ回路11-2により、相殺信号が電源PS又は負荷LD側に与える影響を低減できる。
【0052】
ここで、ノイズ低減回路3が故障すると、相殺信号の振幅絶対値が適正範囲より下回って減少し、ノイズ成分を相殺することが困難になることがある。あるいは、ノイズ低減回路3が故障すると、相殺信号の振幅絶対値が適正範囲を超えて増大し、ノイズ成分を過剰に相殺し相殺信号自体が新たなノイズ成分となる可能性がある。
【0053】
そのため、故障診断回路4は、相殺信号のレベルを検出する。故障診断回路4は、検出ノード4aを介して容量素子C4の一端の電圧を検出し、検出ノード4bを介して容量素子C4の他端の電圧を検出する。故障診断回路4は、検出ノード4aで検出した電圧と検出ノード4bで検出した電圧との差分を取ることで相殺信号のレベルを検出することができる。
【0054】
故障診断回路4は、検出されたレベルが適正範囲から外れているか否か判断する。故障診断回路4は、検出ノード4bで検出した電圧と基準電位(例えば、グランド電位)との差分を取ることでノイズ成分のレベルを求める。故障診断回路4は、ノイズ成分のレベルを逆極性にしたレベルを相殺信号の目標レベルとし、目標レベルに対して所定の割合(例えば、±5%)でばらつく範囲を相殺信号の適正範囲としてもよい。
【0055】
故障診断回路4は、判断結果に応じてノイズ低減回路の故障を診断する。故障診断回路4は、検出されたレベルが適正範囲から外れる場合、ノイズ低減回路3に故障が発生したと診断する。故障診断回路4は、検出されたレベルが適正範囲に収まっている場合、ノイズ低減回路3に故障が発生していないと診断する。故障診断回路4は、診断結果を制御回路5へ供給する。
【0056】
制御回路5は、故障診断回路4から診断結果を受け、診断結果に応じてスイッチング制御回路10を制御してもよい。制御回路5は、ECU等が用いられ得る。
【0057】
例えば、制御回路5は、故障発生の診断結果に応じて、スイッチング回路9を所定の小電力で動作させてもよい。所定の小電力は、通常時の電力より小さい電力であり、ノイズフィルタ回路11-1,11-2で許容レベルまでノイズ成分を除去可能な電力である。制御回路5は、故障未発生の診断結果に応じて、スイッチング回路9を現在の電力で動作させつづけるようにスイッチング制御回路10を制御する。制御回路5は、故障発生の診断結果に応じて、スイッチング回路9を所定の小電力で動作させるようにスイッチング制御回路10を制御する。スイッチング制御回路10がPWM制御を行っていれば、制御回路5は、スイッチング回路9に供給すべきゲート信号のパルス幅を所定パルス幅以下に制限するようにスイッチング制御回路10を制御してもよい。スイッチング制御回路10がPFM制御を行っていれば、制御回路5は、スイッチング回路9に供給すべきゲート信号の周波数を所定周波数以下に制限するようにスイッチング制御回路10を制御してもよい。これにより、電力変換装置103から放出されるEMIノイズのレベルを法規制で定められた値以下、もしくは、所定のノイズレベル以下にすることができる。
【0058】
また、制御回路5は、故障発生の診断結果に応じて、スイッチング回路9を再起動させてもよい。制御回路5は、故障発生の診断結果に応じて、スイッチング回路9を所定の小電力で所定時間動作させた後、スイッチング回路9を再起動させる。これにより、スイッチング回路9内に不要電荷が滞留していれば、その不要電荷を排出でき、故障状態を抜け出せる可能性がある。あるいは、ノイズ低減回路3が故障状態を抜け出せる可能性がある。これにより、電力変換装置103におけるEMIノイズを低減できる。
【0059】
あるいは、制御回路5は、故障発生の診断結果に応じて、スイッチング回路9を停止させてもよい。制御回路5は、故障未発生の診断結果に応じて、スイッチング回路9へのゲート信号の供給を継続するようにスイッチング制御回路10を制御する。制御回路5は、故障発生の診断結果に応じて、スイッチング回路9へのゲート信号の供給を停止させるようにスイッチング制御回路10を制御する。すなわち、制御回路5は、故障発生の診断結果に応じて、スイッチング回路9を停止させる。これにより、電力変換装置103におけるEMIノイズの発生を防止できる。
【0060】
また、制御回路5は、診断結果に応じて報知装置6を制御してもよい。制御回路5は、故障未発生の診断結果に応じて、待機するように報知装置6を制御する。制御回路5は、故障発生の診断結果に応じて、故障発生を報知するように報知装置6を制御する。報知装置6は、視覚的な手段で報知してもよいし、聴覚的な手段で報知してもよい。視覚的な手段は、例えば、車室内のディスプレイ上にエラーメッセージを表示することでもよいし、車室内のアラームランプを点灯又は点滅させることでもよい。聴覚的な手段は、例えば、車室内のスピーカーからエラーメッセージを音声で出力させることでもよいし、ブザーを鳴らすことでもよい。これにより、ユーザはノイズ低減回路3が故障したことを認識でき、ノイズ低減回路3の保守(修理等)を行うようにユーザに促すことができる。
【0061】
なお、制御回路5に代えて、故障診断回路4が診断結果に応じてスイッチング制御回路10を直接的に制御してもよい。
【0062】
あるいは、ノイズ低減装置1による故障診断は、
図4に示すように、段階的に行われてもよい。
図4は、ノイズ低減装置1を含む電力変換装置103の動作を示すフローチャートである。
【0063】
例えば故障診断が2段階で行われる場合、故障診断に用いられる適正範囲として、相殺信号の目標レベルを包含する第1の適正範囲と、目標レベル及び第1の適正範囲を包含する第2の適正範囲とが設けられてもよい。第1の適正範囲は、相殺信号の目標レベルに対して所定の割合(例えば、±3%)でばらつく範囲を相殺信号の第1の適正範囲としてもよい。第2の適正範囲は、相殺信号の目標レベルに対してさらに大きな所定の割合(例えば、±6%)でばらつく範囲を相殺信号の第2の適正範囲としてもよい。
【0064】
電力変換装置103は、電源PSからの電力供給が開始されると、スイッチング回路9を通常時の電力で動作させる(S1)。ノイズ低減装置1は、負荷LDに生じるノイズ成分を検出し、ノイズ成分と逆極性の相殺信号を生成する。ノイズ低減装置1は、生成された相殺信号を注入回路8を通じて電源PSとスイッチング回路9の間に注入する。
【0065】
ノイズ低減装置1は、ノイズ信号を検出して第1の適正範囲を設定するとともに、相殺信号のレベルを検出し、相殺信号が第1の適正範囲から外れるか否かを判断する(S2)。ノイズ低減装置1は、相殺信号が第1の適正範囲から外れるまで(S2でNo)、ノイズ低減回路3の故障が発生していないとして、スイッチング回路9を通常時の電力で動作させる(S1)。
【0066】
ノイズ低減装置1は、相殺信号が第1の適正範囲から外れると(S2でYes)、ノイズ低減回路3の故障が発生したとして、スイッチング回路9を所定の小電力で動作させる(S3)。所定の小電力は、通常時の電力より小さい電力であり、ノイズフィルタ回路11-1,11-2で許容レベルまでノイズ成分を除去可能な電力である。ノイズ低減装置1は、例えば制御回路5にタイマー(図示せず)を有し、タイマーを用いて所定の小電力での動作(S3)の継続時間を計ってもよい。
【0067】
所定の小電力での動作(S3)の継続時間が所定時間に達すると、ノイズ低減装置1は、スイッチング回路9を再起動させる(S4)。すなわち、ノイズ低減装置1は、スイッチング回路9を一時的に停止させ、所定時間待機し、その後、スイッチング回路9の動作を再開させる。
【0068】
ノイズ低減装置1は、ノイズ信号を検出して第2の適正範囲を設定するとともに、相殺信号のレベルを検出し、相殺信号が第2の適正範囲から外れるか否かを判断する(S5)。ノイズ低減装置1は、相殺信号が第2の適正範囲に収まっていれば(S5でNo)、ノイズ低減回路3の故障が一時的なものでありすでに収まっているとして、スイッチング回路9を通常時の電力で動作させる(S1)。
【0069】
ノイズ低減装置1は、相殺信号が第2の適正範囲から外れていれば(S5でYes)、ノイズ低減回路3の故障が一時的なものでなく現在も継続しているとして、スイッチング回路9を停止させ(S6)、故障発生をユーザに向けて報知する(S7)。
【0070】
なお、故障診断はn段階(nは3以上の整数)で行われてもよい。この場合、故障診断に用いられる適正範囲として、相殺信号の目標レベルを包含する第1の適正範囲と、目標レベル及び第1の適正範囲を包含する第2の適正範囲と、・・・目標レベル、第1の適正範囲、・・・第(n-1)の適正範囲を包含する第nの適正範囲とが設けられてもよい。第1の適正範囲は、相殺信号の目標レベルに対して所定の割合(例えば、±1%)でばらつく範囲を相殺信号の第1の適正範囲としてもよい。第2の適正範囲は、相殺信号の目標レベルに対してさらに大きな所定の割合(例えば、±2%)でばらつく範囲を相殺信号の第2の適正範囲としてもよい。・・・第nの適正範囲は、相殺信号の目標レベルに対してさらに大きな所定の割合(例えば、±n%)でばらつく範囲を相殺信号の第nの適正範囲としてもよい。
【0071】
以上のように、本実施形態では、ノイズ低減装置1は、故障診断回路4が相殺信号のレベルを検出して適正範囲から外れるか否か判断し、判断結果に応じてノイズ低減回路3の故障を診断する。ノイズ低減装置1は、故障発生の診断結果に応じて、スイッチング回路9を小電力で動作させたり、スイッチング回路9を停止させたり、故障発生を報知装置6で報知させたりする。これにより、ノイズ低減回路3の故障によるEMIノイズの増大等を抑制でき、ノイズに関する法規制を順守した電力変換装置を提供できる。
【0072】
また、本実施形態では、電力変換装置103において、ノイズフィルタ回路11-1,11-2とノイズ低減装置1とで電力変換に伴うノイズの抑制を行うので、ノイズフィルタ回路11-1,11-2単独でノイズ抑制を行う場合に比べてノイズフィルタ回路11-1,11-2を小型化できる。また、ノイズ低減装置1でノイズ低減回路3の故障診断を行い、故障発生が診断された際にその影響を抑制するような処理が行われる。これにより、ノイズ増大を抑制しながら電力変換装置103を小型化できる。
【0073】
なお、実施形態では、注入回路8がノイズフィルタ回路11-1及びノイズフィルタ回路11-2の間に接続される構成が例示されるが、注入回路8はノイズフィルタ回路11-2及びスイッチング回路9の間に接続されてもよい。
【0074】
また、実施形態では、相殺信号を電圧の形態で注入するノイズ低減装置1が例示されるが、ノイズ低減装置は、電力変換装置103のノイズを低減可能な任意の構成をとり得る。
【0075】
例えば、実施形態の第1の変形例として、ノイズ低減装置1iは、
図5に示すように、相殺信号を電流の形態で注入するように構成されてもよい。
図5は、実施形態の第1の変形例に係るノイズ低減装置1iを含む電力変換装置103iの構成を示す図である。
【0076】
ノイズ低減装置1iは、ノイズ低減回路3、故障診断回路4、検出回路7、注入回路8(
図3参照)にかえて、ノイズ低減回路3i、故障診断回路4i、検出回路7i、注入回路8iを有する。
【0077】
ノイズ低減回路3iは、負荷に生じるノイズ成分と逆極性の相殺信号を電流の形態で生成する。ノイズ低減回路3iは、電源E、容量素子C1、容量素子C2、トランジスタQ1、トランジスタQ2を有する。
【0078】
検出回路7iは、ノイズ成分に応じたパラメータを検出する。検出回路7iは、容量素子C12、容量素子C14及び電流検出器72を有する。電流検出器72は、例えばホール効果を利用したものや、環状コアからなる零相変流器等が用いられ得る。電流検出器72は、容量素子C12とアースとを接続するライン73と、容量素子C14とアースとを接続するライン74とを通る電流の差分をノイズ成分に応じたパラメータとして検出する。
【0079】
ここで、ノイズフィルタ回路11-1及びノイズフィルタ回路11-2の間に検出回路7iが挿入され、ノイズフィルタ回路11-1又はノイズフィルタ回路11-2を通ったノイズ成分を検出できるので、相殺すべきノイズ成分を効果的に検出できる。
【0080】
検出回路7iは、検出されたノイズ成分に応じたパラメータをノイズ低減制御回路2へ供給する。
【0081】
ノイズ低減制御回路2は、パラメータに応じてノイズ低減回路3iのトランジスタQ1及びトランジスタQ2をオン・オフ制御する。これにより、ノイズ低減回路3iは、相殺信号を電流の形態で生成して注入回路8iへ供給する。注入回路8iは、容量素子C23を有し、容量素子C23を用いて相殺信号を負荷LDの筐体と共通接続される基準電位へ電流の形態で注入する。
【0082】
故障診断回路4iは、検出ノード4b、検出ノード4c及び検出器4dを有する。検出ノード4bは、検出回路7iに接続される。故障診断回路4iは、ノイズ成分に応じたパラメータを検出ノード4bで受け、パラメータに応じて、ノイズ成分のレベルを求める。故障診断回路4iは、ノイズ成分のレベルを逆極性にしたレベルを相殺信号の目標レベルとし、目標レベルに対して所定の割合(例えば、±5%)でばらつく範囲を相殺信号の適正範囲としてもよい。
【0083】
検出器4dは、注入回路8iと基準電位との間に配され、注入回路8iから基準電位に注入される相殺信号を検出する。故障診断回路4iは、検出器4dで検出される相殺信号のレベルを検出ノード4cで受ける。
【0084】
故障診断回路4iは、検出されたレベルが適正範囲から外れているか否か判断し、判断結果に応じてノイズ低減回路の故障を診断する点は、実施形態と同様である。故障診断回路4iの診断結果に応じた、制御回路5及び報知装置6の動作も、実施形態と同様である。
【0085】
このように、相殺信号を電流の形態で抽入するノイズ低減装置1iによっても、故障発生の診断結果に応じて、スイッチング回路9を小電力で動作させたり、スイッチング回路9を停止させたり、故障発生を報知装置6で報知させたりする。これにより、ノイズ低減回路3iの故障によるEMIノイズの増大等を抑制でき、ノイズに関する法規制を順守した電力変換装置を提供できる。
【0086】
また、実施形態の第2の変形例として、
図6に示すように、電力変換装置103pにおいて、ノイズ低減装置1pは、ノイズフィルタ回路11-2とスイッチング回路9との間でノイズ信号を検出してもよい。
図6は、実施形態の第2の変形例に係るノイズ低減装置1pを含む電力変換装置103pの構成を示す図である。
【0087】
ノイズ低減装置1pにおいて、検出回路7pは、ノイズフィルタ回路11-2及びスイッチング回路9の間に接続される。検出回路7pは、ノイズフィルタ回路11-2及びスイッチング回路9の間でノイズ成分に応じたパラメータを検出する。検出回路7pは、容量素子C15、容量素子C16及び電流検出器72を有する。電流検出器72は、環状コアからなる零相変流器等が用いられ得る。電流検出器72は、ライン73,74を通る電流の差分をノイズ成分に応じたパラメータとして検出する。
【0088】
このとき、注入回路8は、電源PS及びスイッチング回路9の間に接続される。注入回路8は、ノイズフィルタ回路11-1及びノイズフィルタ回路11-2の間に接続されてもよいし、電源PS及びノイズフィルタ回路11-1の間に接続されてもよい。
【0089】
このように、ノイズフィルタ回路11-2及びスイッチング回路9の間に検出回路7pが挿入され、ノイズフィルタ回路11-1,11-2を通ったノイズ成分を検出できるので、相殺すべきノイズ成分を効果的に検出できる。
【0090】
また、実施形態の第3の変形例として、
図7に示すように、電力変換装置103jにおけるノイズフィルタ回路11-1が1つ備わり、ノイズフィルタ回路11-2がない場合、ノイズ低減装置1は、ノイズフィルタ回路11-1とスイッチング回路9との間に相殺信号を注入してもよい。
図7は、実施形態の第3の変形例に係るノイズ低減装置1を含む電力変換装置の構成を示す図である。
【0091】
ノイズ低減装置1において、注入回路8は、ノイズフィルタ回路11-1及びスイッチング回路9の間に接続される。注入回路8は、ノイズフィルタ回路11-1及びスイッチング回路9の間に相殺信号を注入する。注入回路8は、容量素子C21及び容量素子C22を有する。容量素子C21及び容量素子C22はP側のラインLPとN側のラインLNとの間に直列接続され、相殺信号を保持する容量素子C4の一端が容量素子C21及び容量素子C22の接続点に接続される。容量素子C21及び容量素子C22の容量値が等しければ接続点にはP側の信号とN側の信号とのコモンモード成分が現れる。相殺信号はコモンモード成分に注入され得る。
【0092】
このように、ノイズフィルタ回路11-1及びスイッチング回路9の間に相殺信号が注入され、ノイズフィルタ回路11-1を通ったノイズ成分に相殺信号を注入できるので、効果的にノイズ成分を相殺できる。それとともに、ノイズフィルタ回路11-1により、相殺信号が電源PS側に与える影響を低減できる。
【0093】
また、実施形態の第4の変形例として、
図8に示すように、電力変換装置103kにおけるノイズフィルタ回路11-1が1つ備わり、ノイズフィルタ回路11-2がない場合、ノイズ低減装置1iは、ノイズフィルタ回路11-1とスイッチング回路9との間でノイズ信号を検出してもよい。
図8は、実施形態の第4の変形例に係るノイズ低減装置1iを含む電力変換装置103kの構成を示す図である。
【0094】
ノイズ低減装置1iにおいて、検出回路7iは、ノイズフィルタ回路11-1及びスイッチング回路9の間に接続される。検出回路7iは、ノイズフィルタ回路11-1及びスイッチング回路9の間でノイズ成分に応じたパラメータを検出する。検出回路7iは、容量素子C12、容量素子C14及び電流検出器72を有する。電流検出器72は、例えば環状コアからなる零相変流器等が用いられ得る。電流検出器72は、容量素子C12とアースとを接続するライン73と、容量素子C14とアースとを接続するライン74とを通る電流の差分をノイズ成分に応じたパラメータとして検出する。
【0095】
このように、ノイズフィルタ回路11-1及びスイッチング回路9の間に検出回路7iが挿入され、ノイズフィルタ回路11-1を通ったノイズ成分を検出できるので、相殺すべきノイズ成分を効果的に検出できる。
【0096】
また、実施形態の第5の変形例として、
図9に示すように、ノイズ低減装置1による段階的な故障診断に応じてスイッチング回路9の停止が複数回行われてもよい。
図9は、実施形態の第5の変形例にかかるノイズ低減装置1を含む電力変換装置103の動作を示すフローチャートである。
【0097】
電力変換装置103において、S1,S2が行われた後、相殺信号が第1の適正範囲から外れると(S2でYes)、ノイズ低減装置1は、スイッチング回路9を停止させ(S11)、所定時間経過した後に、スイッチング回路9を所定の小電力で動作させる(S3)。その後、S4,S5が行われた後、相殺信号が第2の適正範囲から外れていれば(S5でYes)、ノイズ低減装置1は、スイッチング回路9を停止させ(S6)、故障発生をユーザに向けて報知する(S7)。
【0098】
このように、ノイズ低減装置1による段階的な故障診断に応じてスイッチング素子9の停止が複数回行われるので、スイッチング回路9内に不要電荷が滞留していれば、その不要電荷を排出でき、故障状態を抜け出せる可能性を高めることができる。
【0099】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば、電源PSを交流電源、負荷LDをバッテリとし、電力変換装置を車載充電器としてもよいし、電源PSをバッテリ、負荷LDを低電圧の第2のバッテリとし、電力変換装置をDCDCコンバータとしてもよい。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0100】
1,1i ノイズ低減装置
3,3i ノイズ低減回路
4,4i 故障診断回路
9 スイッチング回路
11-1,11-2 ノイズフィルタ回路
100 車両
103,103i,103j,103k 電力変換措置