IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダウ コーニング コーポレーションの特許一覧

<>
  • 特許-二重硬化性組成物 図1
  • 特許-二重硬化性組成物 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-24
(45)【発行日】2025-10-02
(54)【発明の名称】二重硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/06 20060101AFI20250925BHJP
   C08G 59/20 20060101ALI20250925BHJP
   C08G 77/14 20060101ALI20250925BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20250925BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20250925BHJP
   C09D 183/06 20060101ALI20250925BHJP
【FI】
C08L83/06
C08G59/20
C08G77/14
C08L63/00 Z
C09D163/00
C09D183/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022544232
(86)(22)【出願日】2021-01-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-16
(86)【国際出願番号】 US2021012136
(87)【国際公開番号】W WO2021150364
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2023-12-22
(31)【優先権主張番号】62/964,249
(32)【優先日】2020-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フー、ポンフェイ
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ、イェンフー
【審査官】大塚 龍平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/026822(WO,A1)
【文献】特開2012-193232(JP,A)
【文献】特表2017-500420(JP,A)
【文献】特開2011-021078(JP,A)
【文献】特開平07-126391(JP,A)
【文献】特開平02-043215(JP,A)
【文献】特表2017-510667(JP,A)
【文献】特表2010-513664(JP,A)
【文献】国際公開第97/035924(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/06
C08G 59/20
C08G 77/14
C08L 63/00
C09D 163/00
C09D 183/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
(a)ポリシロキサン樹脂であって、以下のシロキサン単位:
(i)[RSiO1/2]、
(ii)[(OZ)SiO(4-q)/2]、並びに
(iii)[(OZ)EPSiO(3-t)/2]及び[(OZ)RREPSiO(2-d)/2]のうちの少なくとも一方、
を含み、式中、各Rは、各出現において、独立して、ヒドロカルビルから選択され、REPは、エポキシ官能性ヒドロカルビル基であり、下付き文字qは、各出現において、0~3の範囲から選択される数であり、下付き文字tは、各出現において、0~2の範囲から選択される数であり、下付き文字dは、各出現において、0~1の範囲から選択される数であるが、但し、OZ基はヒドロキシル及び/又はアルコキシル官能基であり、OZ基の平均濃度が前記ポリシロキサン樹脂中のケイ素原子のモルに対して少なくとも15モルパーセントであることを条件とする、ポリシロキサン樹脂と、
(b)光酸発生剤と、
(c)湿気硬化性触媒と、
(d)任意選択的に、エポキシ官能性希釈剤と、を含む、組成物。
【請求項2】
前記組成物が、組成物重量に基づいて、(a)、(b)及び(c)以外の30重量%未満の液体成分を含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、前記ポリシロキサン樹脂成分(a)以外のアルコキシ官能性ケイ素含有種の組成物重量に基づいて、5重量パーセント未満を含有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリシロキサン樹脂が、メトキシ、エトキシ及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるアルコキシ基の樹脂ケイ素原子に対して少なくとも15モルパーセントを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
エポキシ官能基を有する置換ヒドロカルビル基である前記REP基が、3-グリシドキシプロピル基、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、及びそれらの組み合わせからなる基から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記光酸発生剤が、前記組成物の0.1~3.0重量パーセントの範囲の濃度で存在する、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、単一分子上に複数のヒドロキシル基若しくはアルコキシ基を有するシラン若しくはポリシランを含まないか、又は有機溶媒を含まないか、あるいは単一分子上に複数のヒドロキシル基若しくはアルコキシ基を有するシラン若しくはポリシランの両方を含まず、かつ有機溶媒も含まない、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリシロキサン樹脂が、シロキサン単位の総モルに対して10モルパーセント以下のD型シロキサン単位を含有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
硬化ポリシロキサン樹脂を形成するための方法であって、
(a)請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物を提供するステップと、
(b)前記組成物を紫外線に曝露するステップと、
(c)前記組成物を湿気に曝露するステップと、を含む、方法。
【請求項10】
ステップ(b)の前に、前記組成物を基材上に塗布することを更に含む、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ官能化ポリシロキサンを含有する二重硬化性組成物に関する。
【0002】
導入部
光及び湿気二重硬化性ポリシロキサン樹脂組成物は、例えば、コーティングの全ての部分を光に曝露することが困難であるが、なお、コーティングの急速な硬化が望ましい、コーティング、カプセル化、ポッティング及び接着剤用途において有用である。光硬化機構は、光に曝露されるときに組成物の急速な硬化を促進する。湿気硬化機構は、光への曝露からブロックされた組成物の一部分(「影領域」)を硬化させるのに役立つ。二重硬化機構は、光がコーティングの全ての領域にアクセスできない場合に、湿気硬化により完全に硬化させるコーティングにおいて価値がある。
【0003】
二重硬化性ポリシロキサン樹脂組成物は、(メタ)アクリレート系硬化システムを含むことができる。しかしながら、(メタ)アクリレート系システムは、酸素に感受性であり、酸素によって阻害されるため、少なくとも組成物表面では硬化中に不活性条件が必要である。必要な不活性雰囲気を用意すると、硬化プロセスに望ましくないコスト及び複雑さが追加される。
【0004】
別の二重硬化性ポリシロキサン樹脂組成物は、光トリガー硬化のための「チオール-エン」反応性システムに依拠する。紫外線(ultraviolet、UV)及び/又は可視光に曝露されると、チオール官能基は、ビニル基中などで炭素-炭素不飽和結合と反応し、それにわたって付加される。典型的には、チオール-エン反応性システムは、光トリガー硬化反応のための光開始剤を含む。
【0005】
二重硬化性ポリシロキサン樹脂組成物は、典型的には、配合物の急速な湿気硬化を達成して、基材への許容可能な接着性を有する強いコーティングを形成するために、多官能性アルコキシシラン系架橋剤を含む。シラン上の複数のアルコキシ基は、アルコキシシランの湿気硬化に関与して、組成物上にスキン形成を急速に付与する架橋構造を形成する。一般的に、摂氏23度(℃)で少なくとも60%の相対湿度の雰囲気中にあるとき、配合物を基材に塗布した後、4時間以下以内に湿気硬化スキンを達成することが望ましい。二重硬化性ポリシロキサン樹脂組成物の組成を単純化するために、23℃で少なくとも60%の相対湿度の雰囲気にさらされたときに二重硬化性ポリシロキサン樹脂組成物を基材に塗布してから4時間以内に、湿気硬化して、皮膚を形成するために、多官能性アルコキシシラン系成分を必要としない二重硬化性ポリシロキサン樹脂組成物を特定することが望ましい。
【0006】
二重硬化性ポリシロキサン樹脂組成物はまた、典型的には、非反応性有機溶媒を含む。非反応性有機溶媒は、組成物の粘度を低下させ、それによって組成物を基材に塗布し易くする。それは、ポリシロキサン樹脂を配合するときに重要である。ポリシロキサン樹脂は、典型的には、固体又は非常に高い粘度(26パスカル*秒(Pa*s)超)の液体であり、これが組成物成分をブレンドすることを困難にし、組成物を基材に塗布することを困難にする。残念ながら、非反応性有機溶媒は、硬化後でもポリシロキサン樹脂組成物中に汚染物質、典型的には抽出可能な汚染物質として残る。したがって、非反応性有機溶媒を必要とせずに、基材に塗布することができる二重硬化性ポリシロキサン樹脂組成物を特定することが望ましいであろう。
【0007】
光及び湿気の両方によって硬化して、硬化ポリシロキサン樹脂組成物を形成するが、26Pa*s以下の粘度を有するか、又はUV光及び湿気の両方によって硬化させるための(メタ)アクリレート系硬化システム、チオール-エン反応性システム、アルコキシシラン系架橋剤又は非反応性有機溶媒を必要とせず、23℃で少なくとも60%の相対湿度の雰囲気に曝露されたときに塗布の4時間以内に湿気硬化性スキンを形成する、二重硬化性ポリシロキサン樹脂組成物を特定することが望ましい。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、光及び湿気の両方によって硬化して、硬化ポリシロキサン樹脂組成物を形成するが、基材に塗布するか、又は硬化させるための(メタ)アクリレート系硬化システム、チオール-エン反応性システム、アルコキシシラン系架橋剤又は非反応性有機溶媒を必要としない二重硬化性ポリシロキサン樹脂組成物を提供する。本発明は、UV硬化を受けて、0.5ジュールのUV曝露又はそれよりも多いUV曝露時に不粘着非液体コーティングを形成し、23℃で少なくとも60%の相対湿度の雰囲気に曝露されたときに塗布の4時間以内に湿気硬化性スキンを形成し、本明細書で説明されるガラスへの接着性試験において3の接着性評価を達成することができる組成物を提供する。
【0009】
本発明は、エポキシ官能基、並びにケイ素原子に対して平均15モルパーセント以上のヒドロキシル及び/又はアルコキシル官能基(本明細書では「OZ」基と総称される)を有するポリシロキサン樹脂が、驚くべきことに、両方とも、26パスカル秒(Pa*s)以下の粘度を有するのに十分な流体であり、そのためポリシロキサン樹脂を溶媒なしで配合して、基材に容易に塗布することができる二重硬化性組成物を形成することができ、光及び湿気の両方によって硬化して、アルコキシシラン系架橋剤又は任意の追加の架橋剤を必要とせずに、記載された硬化性及び接着性特性を有する硬化ポリシロキサン樹脂組成物を形成することができることを発見した結果である。
【0010】
第1の態様では、本発明は、組成物であって、(a)ポリシロキサン樹脂であって、以下のシロキサン単位:[RSiO1/2]、[(OZ)SiO(4-q)/2]、並びに[(OZ)EPSiO(3-t)/2]及び[(OZ)RREPSiO(2-d)/2]のうちの少なくとも一方を含み、式中、各Rは、各出現において、独立して、ヒドロカルビルから選択され、REPは、エポキシ官能性ヒドロカルビル基であり、下付き文字qは、各出現において、0~3の範囲から選択される数であり、下付き文字tは、各出現において、0~2の範囲から選択される数であり、下付き文字dは、各出現において、0~1の範囲から選択される数であるが、但し、OZ基の平均濃度がポリシロキサン樹脂中のケイ素原子のモルに対して少なくとも15モルパーセントであることを条件とする、ポリシロキサン樹脂と、(b)光酸発生剤と、(c)湿気硬化性触媒と、(d)任意選択的に、エポキシ官能性希釈剤と、を含む、組成物、である。
【0011】
第2の態様では、本発明は、硬化ポリシロキサン樹脂を形成するための方法であって、(a)第1の態様の組成物を提供するステップと、(b)組成物を紫外線に曝露するステップと、(c)組成物を湿気に曝露するステップと、を含む、方法、である。
【0012】
本発明の組成物は、他の二重硬化性配合物よりも少ない成分を必要とし、なお、所望の接着性及び強度特性を有する硬化配合物を生成する光/湿気二重硬化性配合物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】樹脂中のシロキサン単位の相対位置を示す、それぞれ、樹脂A及びIの29Si核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance、NMR)スペクトルを提供する。x軸上のppmシフト値は、テトラメチルシラン(tetramethylsilane、TMS)に対するものであり、各単位の絶対位置に対する一般的なガイダンスを提供し、実際の位置は、基がシロキサン単位のケイ素に及びその周りに付着しているものに依存するであろう。
図2】樹脂中のシロキサン単位の相対位置を示す、それぞれ、樹脂A及びIの29Si核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance、NMR)スペクトルを提供する。x軸上のppmシフト値は、テトラメチルシラン(tetramethylsilane、TMS)に対するものであり、各単位の絶対位置に対する一般的なガイダンスを提供し、実際の位置は、基がシロキサン単位のケイ素に及びその周りに付着しているものに依存するであろう。
【発明を実施するための形態】
【0014】
試験方法は、日付が試験方法の番号とともに示されていない場合、本文書の優先日に直近の試験方法を指す。試験方法への言及は、試験の協会及び試験方法番号への参照の両方を含む。本明細書では、以下の試験方法の略語及び識別子が適用される。ASTMは、ASTMインターナショナル(ASTM International)を指し、ENは、欧州規格(European Norm)を指し、DINは、ドイツ規格協会(Deutsches Institut fuer Normung)を指し、ISOは国際標準化機構(International Organization for Standardization)を指す。
【0015】
「複数の」とは、2つ以上を意味する。「及び/又は」とは、「及び、又は代替として」を意味する。全ての範囲は、特に指示がない限り、端点を含む。商品名で識別される製品は、本明細書に別途記載のない限り、本文書の優先日において、それらの商品名でサプライヤーから入手可能な組成物を指す。
【0016】
「ポリシロキサン」は、複数のシロキサン結合を含有するポリマーを指す。ポリシロキサンは、SiO4/2(「Q」型)、RSiO3/2(「T」型)、RSiO2/2(「D」型)及びRSiO1/2(「M」型)のような当技術分野において既知のものから選択されるシロキサン単位を含む。R基上の下付き文字は、R基がケイ素原子にいくつ結合しているかを示す。酸素上の下付き文字は、別のケイ素にも結合しているケイ素に酸素がいくつ結合しているかを示し(つまり、シロキサン結合、「Si-O-Si」結合、ケイ素原子がどのように関与しているか)、式中、酸素が別のケイ素原子と共有されるため、その数を2で除算している。したがって、D型単位は、2つのR基に結合し、2つの酸素を他のケイ素原子と共有するケイ素原子を含む。一般的に、R基は、-OSi以外の任意の置換基(つまり、ケイ素へのシロキサン結合)であり得る。一般的に、R基は、炭素-ケイ素結合を介してケイ素原子に結合したヒドロカルビルである。しかしながら、本明細書における最も広い範囲でのR基はまた、炭素以外の原子、例えば硫黄又は酸素とともにケイ素原子に結合した基であり得る。例えば、R基は、ヒドロキシル基又はアルコキシル基から選択することができ、これは、「OZ」基と総称される。
【0017】
「MQ樹脂」は、M型及びQ型シロキサン単位を含有するポリシロキサンの一種である。MQ樹脂はまた、特に記載されない限り、D型及び/又はT型シロキサン単位を含み得る。
【0018】
「ヒドロカルビル」は、置換又は非置換炭化水素に由来する一価のラジカルである。置換炭化水素は、別の原子又は置換基で置き換えられた1つ又は2つ以上の水素又は炭素原子を有する。本明細書では、各出現におけるヒドロカルビルは、置換又は非置換炭化水素のいずれかに由来するヒドロカルビルにそれぞれ対応する置換又は非置換のいずれかであり得る。
【0019】
「エポキシ基」とは、2つの隣接する炭素原子への単結合によって結び付いた酸素原子を含有して、2つの炭素原子及び1つの酸素原子を含有する3員環を形成する官能基を指す。
【0020】
本明細書で使用される最も広い範囲の「光」は、電磁放射を指す。好ましくは、本明細書で使用される光は、可視光及び/又は紫外(UV)光を指す。
【0021】
非反応性有機溶媒のような「非反応性」とは、材料がUV又は湿気硬化中に組成物の他の成分と反応しないことを意味する。
【0022】
樹脂の分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography、GPC)によって決定される場合、重量平均分子量として報告される。GPC手順の詳細は、本明細書における実施例セクションにある。
【0023】
ASTM D2196の方法に従って、Brookfield粘度計(モデルDV-E)を使用して、樹脂及び組成物の粘度を決定する。
【0024】
本発明の組成物は、ポリシロキサン樹脂を含み、ポリシロキサン樹脂が、以下のシロキサン単位:[RSiO1/2]、[(OZ)SiO(4-q/2)]、並びに[(OZ)EPSiO(3-t)/2]及び[(OZ) RREPSiO(2-d)/2]のうちの少なくとも一方を含み、かつそれらからなり得る。ポリシロキサン樹脂は、[(OZ)EPSiO(3-t)/2]及び[(OZ)RREPSiO(2-d)/2]単位の両方を含有することができるか、又はそれがいずれか一方を含有する限り、もう一方を含まなくてもよい。
【0025】
本発明の最も広い範囲では、ポリシロキサン樹脂は、RSiO1/2]、[(OZ)SiO(4-q/2)]、並びに[(OZ)EPSiO(3-t)/2]及び[(OZ)RREPSiO(2-d)/2]のうちの少なくとも一方以外のシロキサン単位を含み得る。例えば、ポリシロキサン樹脂は、RSiO2/2単位(D型単位)及び/又はRSiO3/2(T型単位)を更に含み得る。一般的に、D型単位の濃度が増加するにつれて、硬化組成物の硬度を低下させる、樹脂に線形特徴を付与するためのD型単位を含むことが望ましい場合がある。対照的に、本発明の1つの望ましい組成物は、2H以上の鉛筆硬度を有する硬化組成物を提供する。そのような硬質コーティングについては、ポリシロキサン樹脂中のD型単位の濃度を、シロキサン単位の総モルに対して10モル%以下、好ましくは5モル%以下、更により好ましくは2モル%以下、1モル%以下、又は更には0.5モル%以下に保つことが望ましい。ポリシロキサン樹脂は、硬化組成物中の最大硬度を達成するためにD型シロキサン単位を含まなくてもよい。
【0026】
各Rは、各出現において、独立して、ヒドロカルビルから、好ましくは非置換ヒドロカルビルから、及びより好ましくはメチル、エチルプロピル、ブチル及びフェニルからなる群から選択される。
【0027】
EPは、エポキシ官能性ヒドロカルビル基である。例えば、REPは、3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、3,4-エポキシシルコヘイル(epoxycylcoheyl))プロピル基、3-(2,3-エポキシプロピオキシ)プロピル基(3-グリシジルオキシプロピル基としても知られている)、3,5-エポキシブチル基、4,5-エポキシペンチル基、5,6-エポキシヘキシル基であり得る。
【0028】
下付き文字tは、各出現において、0~2の範囲から選択される数であり、下付き文字dは、各出現において、0~1の範囲から選択される数であり、下付き文字qは、各出現において、0~3の範囲から選択される数であるが、但し、ポリシロキサン樹脂中のOZ基の平均濃度(「OZ含有量」)が以下に記載されるような範囲にあることを条件とする。
【0029】
OZは、各出現において、独立して、ヒドロキシル基又はアルコキシル基である。望ましくは、各OZは、各出現において、独立して、ヒドロキシル、メトキシ及びエトキシから選択される。望ましくは、ポリシロキサン樹脂は、メトキシ基及び/又はエトキシ基を含む。OZ含有量は、15モルパーセント(モル%)以上であり、18モル%以上、20モル%以上、22モル%以上、更には25モル%以上、30モル%以上、40モル%以上、50モル%以上、60モル%以上又は70モル%以上であり得る。OZ含有量を増加させると、一般的に、樹脂の流動性が増加し(その粘度が低下し)、組成物が湿気硬化してスキンを形成するための速度が上昇する(必要とされる時間が減少する)。OZ含有量を増加させると、ガラス接着性が増加する傾向もある。したがって、これらの特徴を強化するために、より高いOZ含有量が望ましい。いくつかの用途では、樹脂の熱安定性が重要であり得、樹脂の熱安定性は、OZ含有量の増加とともに減少する傾向があるため、OZ含有量に対する上限が重要になるであろう。ポリシロキサン樹脂は、摂氏150度(℃)を上回る5%重量損失温度(熱重量分析(thermal gravimetric analysis、TGA)による)を有することが望ましい場合がある。そのような熱安定性を達成するために、OZ含有量は、80モル%以下、好ましくは60モル%以下、より好ましくは50モル%以下、更により好ましくは40モル%以下であり、30モル%以下、更には20モル%以下であり得ることが望ましい。疑義を避けるために、OZ含有量に対するこれらの上限のいずれかは、ポリシロキサン樹脂の好ましいOZ含有量を規定するために前述されたOZ含有量に対する下限のいずれかと組み合わせ可能であることが意図される。本明細書では、OZ含有量は、ポリシロキサン樹脂中のケイ素原子のモルに対するものである。
【0030】
29Si核磁気共鳴分光法(29Si NMR)を使用して、OZ含有量を決定する。Varian XL-400分光計を使用して、試料の29Si NMRを実行する。内部溶媒共鳴への化学シフトを参照し、テトラメチルシランに対して報告される。樹脂中の各シロキサン単位は、固有の位置に現れる。ピーク面積下で統合すると、ケイ素原子に対するOZ基の濃度の計算が可能になる。図1及び2は、互いに対する各シロキサン単位の一般的な位置を示し、テトラメチルシラン(tetramethyl silane、TMS)に対するX軸ppm値を有する、本明細書における実施例を使用した2つのポリシロキサン樹脂についての例示的な29Si NMRスペクトルを示す。スペクトルのピークは、それらが対応するシロキサン単位に関してラベル付けされており、ラベルは以下のとおりである。
M=RSiO1/2
D1=R(OZ)SiO1/2
D2=RSiO2/2
T1=R(OZ)SiO1/2
T2=R(OZ)SiO2/2
T3=RSiO3/2
Q1=(OZ)SiO1/2
Q2=(OZ)SiO2/2
Q3=(OZ)SiO3/2
Q4=SiO4/2
式中の各ピークについてのラベルがそのラベルに対応する統合されたピーク下面積に対応する以下の式を使用して、モル%としてのケイ素原子に対するOZ含有量を決定する。
【数1】
【0031】
驚くべきことに、この樹脂は、OZ含有量がポリシロキサンに対して15モル%以上であるとき、26Pa*s以下の粘度を有することが発見された。ポリシロキサン樹脂は、典型的には、15モル%未満のOZを含有し、固体である傾向がある。固体、及び高粘度(26Pa*s超)のポリシロキサン樹脂は、液体として塗布することができる組成物に配合するために、一般的に、溶媒、一般的に有機溶媒と混合して、液体を形成することを必要とする。本発明のポリシロキサン樹脂は、液体として塗布することができる組成物を配合又は形成するために、溶媒と混合して、液体を形成する必要はない。実際、本発明の組成物は、溶媒、特に非反応性溶媒を含まなくてもよく、また、同時に、液体であり得る。望ましくは、本発明の組成物は、有機溶媒を含まず、好ましくは完全に溶媒を含まない。
【0032】
ポリシロキサン樹脂は、塩基触媒反応を使用して、エポキシ官能性アルコキシシラン及びシラノール官能性樹脂から合成することができる。そのような反応の例は、以下の実施例セクションに記述されている。
【0033】
望ましくは、組成物は、5重量パーセント未満(重量%)を含有し、4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、更には1重量%以下のポリシロキサン樹脂以外のアルコキシ官能性ケイ素含有成分を含有することができ、重量%は、組成物重量に対するものである。組成物は、ポリシロキサン樹脂以外のアルコキシ官能性ケイ素含有成分を含まなくてもよい。
【0034】
本発明の組成物は、光酸発生剤(photo acid generator、PAG)を更に含む。PAGは、光への曝露時に酸性になり、そのため、酸触媒反応のための光開始剤として作用する。この組成物は、組成物の急速なUV硬化を達成するために、つまり、0.5ジュールのUV放射曝露時に手で触れて不粘着である(及び液体ではない)組成物を達成するためのPAGを必要とする。PAGSは、典型的には、強酸を形成するために解離させるか、又は光への曝露時にプロトンを解離させることによって酸性になる。PAGの1つの一般的な種類としては、トリフェニルスルホニウム塩が挙げられる。PAGの例としては、ビス(4-ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、(p-ドデシルフェニル)(p-メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、(p-イソプロピルフェニル)(p-メチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、硝酸ジフェニルヨードニウム、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、(4-フルオロフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート、N-ヒドロキシナフタルイミドトリフレート、(4-ヨードフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート、(4-メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート、(4-フェノキシフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ-1-ブタンスルファネート、トリフェニルスルホニウムトリフレート、トリス(4-tert-ブイチフェニル)スルホニウムパーフルルロ-1-ブタンスルホネート(tris(4-tert-buityphenyl)sulfonium perflulro-1-butanesulfonate)、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ-1-ブタンスルホネート及びビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムp-トルエンスルホネートが挙げられる。
【0035】
PAGは、典型的には、0.1重量パーセント(重量%)以上、0.25重量%以上、0.5重量%以上、0.75重量%以上、1.0重量%以上、更には1.5重量%以上、また、同時に、典型的には、3.0重量%以下、2.5重量%以下、2.0重量%以下、1.5重量%以下の濃度で組成物中に存在し、組成物重量に対して重量%で1.0重量%以下、更には0.75重量%以下であり得る。
【0036】
組成物は、湿気硬化性触媒を更に含む。湿気硬化型触媒は、ポリオルガノシロキサン上のアルコキシシリル基が湿気と反応して硬化する速度を高める。好適な湿気硬化型触媒としては、チタン化合物、スズ化合物、及びジルコニウム化合物からなる群から選択される2つ以上の有機金属触媒のうちの任意の1つ又は組み合わせが挙げられる。望ましくは、湿気硬化性触媒は、チタン系触媒、スズ系触媒又はそれらの組み合わせである。好適なチタン化合物の例としては、テトライソプロピルオルトチタネート、チタンジイソプロポキシドビス(エチルアセトアセテート)、テトライソプロピルチタネートテトラブトキシオルトチタネート、ジ(イソプロポキシ)ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ(イソプロポキシ)ビス(メチルアセトアセテート)チタン、NSジ(イソプロポキシ)ビス(アセチルアセトネート)チタンが挙げられる。好適なスズ化合物の例としては、ジブチルスズジラウレート及びジブチルスズジオクトエートが挙げられる。好適なジルコニウム化合物の例としては、テトラ(イソプロポキシ)ジルコニウム、テトラ(n-ブトキシ)ジルコニウム、テトラ(t-ブトキシ)ジルコニウム、ジ(イソプロポキシ)ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ(イソプロポキシ)ビス(メチルアセトアセテート)ジルコニウム、及びジ(イソプロポキシ)ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウムが挙げられる。
【0037】
典型的には、湿気硬化型触媒の濃度は、組成物重量に対して、0.1重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上、2重量%以上、及び更には3重量%以上であり、また、同時に、一般的に、3重量%以下、2重量%以下、又は更には、1重量%以下である。
【0038】
組成物は、任意選択的に、エポキシ官能性希釈剤(「反応性希釈剤」)を含み得る。エポキシ官能性希釈剤は、組成物の粘度を低減するのに有用であり得る。しかしながら、エポキシ官能基は、希釈剤が組成物の硬化に関与することを可能にし、結果として、非反応性溶媒のような抽出可能な成分として残るのではなく、硬化樹脂に結合する。エポキシ官能性希釈剤は、分子当たり平均1つ以上、好ましくは2つ以上のエポキシ官能基を有することができる。好適なエポキシ官能性希釈剤の例としては、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、レゾルシノールジグリジシルエーテル(resorcinol diglydicyl ether)、ジクロルペンタジエンジオキシド、及びネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルからなる群から選択される2つ以上のうちのだれか(anyone)又は組み合わせが挙げられる。反応性希釈剤は、典型的には、組成物重量に対して30重量%未満、より典型的には15重量%以下の濃度で存在する。
【0039】
組成物は、2つ以上の追加成分のうちのいずれか1つ若しくは任意の組み合わせを更に含むか、又は含まなくてもよい。追加の添加剤としては、顔料、着色剤、導電性充填剤(金属粉末及び金属フレークなど)、断熱充填剤、接着促進剤及び分散助剤が挙げられる。
【0040】
本発明の組成物は、ポリシロキサン樹脂が26Pa*s以下の粘度を有する液体であり、そのため組成物自体が、ポリシロキサン樹脂、光酸発生剤、湿気硬化性触媒及び反応性希釈剤の他に任意の追加成分(特に液体成分)を必要とせずに液体であるため、特に有利である。組成物は、30重量%未満、好ましくは20重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、1重量%以下のポリシロキサン樹脂、光酸発生剤、湿気硬化性触媒及び反応性希釈剤以外の液体成分を含有してもよく、更にはこれらを含まなくてもよく、同時に、組成物自体が液体であってもよい。
【0041】
組成物は、単一分子上に複数のOZ基を有するシラン及び/又はポリシランを含まなくてもよく、完全にシラン及び/又はポリシラン分子を含まなくてもよい。本明細書で説明されるようなこの組成物についての選択肢のいずれか又は全ては、何らかの形で組み合わせることができるが、1つの特に望ましい組成物は、単一分子上に複数のヒドロキシル基若しくはアルコキシ基を有するシラン若しくはポリシランを含まないか、又は有機溶媒を含まないか、あるいは単一分子上に複数のヒドロキシル基若しくはアルコキシ基を有するシラン若しくはポリシランの両方を含まず、かつ有機溶媒も含まない。組成物が複数のOZ基を有するシラン及び/又はポリシランを含まないときでも、組成物は、23℃で少なくとも60%の相対湿度の雰囲気中で4時間以内に湿気硬化して、スキンを形成することができる。
【0042】
本発明の組成物は、光及び又は湿気への曝露によって、硬化して、硬化ポリシロキサン樹脂を形成することができる二重硬化性組成物として有用である。有益には、組成物は、光及び湿気の両方によって硬化されて、組成物の曝露部分を光で急速に硬化させ、また、湿気による組成物の非露出部分を更に硬化させることができる。組成物は、硬化可能なコーティング充填剤として特に有用である。
【0043】
本発明の組成物を二重硬化させて、硬化ポリシロキサン樹脂を形成する方法は、組成物を提供し、次いで組成物を光、典型的には紫外線に曝露すること、及び組成物を湿気に曝露することを必要とする。組成物を光及び湿気に曝露する順序は重要ではなく、実際に同時に起こり得る。典型的には、組成物は、最初に光に曝露され、次いで湿気硬化させる。
【0044】
望ましくは、本発明の組成物から硬化ポリシロキサン樹脂を形成する方法は、組成物を光に曝露する前に組成物を基材に塗布することを更に含む。本発明の有益な態様は、組成物が液体であり、ポリシロキサン樹脂以外の溶媒又は液体成分を必要とせずに液体として塗布することができる組成物であることである。それにより、組成物を塗布し易くし、基材に塗布した後の溶媒の除去を必要とせずに、組成物が無溶媒であることを可能にする。したがって、硬化組成物は、液体として塗布され、硬化ポリシロキサン樹脂へと硬化され、硬化組成物から何も除去する必要なく、コーティング中に抽出可能な液体成分を含まない。
【実施例
【0045】
エポキシ官能化樹脂の特性評価
ASTM D2196の方法に従って、Brookfield粘度計(モデルDV-E)を使用して樹脂粘度を決定する。
【0046】
TA Instruments Q50デバイスにおける熱重量分析(TGA)を使用して熱安定性について樹脂を特性評価する。14~20ミリグラムの樹脂試料を白金パンに入れ、以下のプロファイルを使用して加熱する:60ミリリットル/分の窒素パージ下で、10℃/分で23℃から900℃まで昇温する(40ミリリットル/分の窒素で残りをパージする)。試料がその重量の5%を損失する、つまり5%重量損失温度である温度を決定する。
【0047】
真空デガッサを備えたWaters 2695 Separation Module、及びWaters 410示差屈折率検出器を使用したゲル透過クロマトグラフィーを使用して、樹脂についての分子量を決定する。PLgel 5マイクロメートルガードカラム(50ミリメートル×7.5ミリメートル)によって先行される2つの(300ミリメートル×7.5ミリメートル)Polymer Laboratories PLgel 5マイクロメートルMixed-Cカラム(分子量分離範囲200~2,000,000)を使用する。カラム及び検出器を35℃に維持しながら、溶離液として1.0ミリリットル/分で流れる特級グレードのテトラヒドロフラン(THF)を使用する。約0.l5体積パーセント濃度で、THF中で試料を調製し、時折振盪しながら3時間溶媒和させ、分析前に0.45マイクロメートルのポリテトラフルオロエチレンシリンジフィルターを通して濾過する。分析用に100マイクロリットルの試料を注入し、データを25分間収集する。ThermoLabsystems Atlasクロマトグラフィーソフトウェア及びPolymer Laboratories Cirrus GPCソフトウェアを使用して、データを収集し、分析を実行する。平均分子量は、580~2,300,000の分子量範囲に及ぶ標準ポリスチレンを訴えて(suing)作成された較正曲線(3次)に対するものである。
【0048】
エポキシ官能化樹脂の合成
樹脂A-MTCHEpQ樹脂
磁気撹拌棒を装備した3リットル(3-L)フラスコに、800グラム(g)のトルエン、((CHSiO1/243.2(HOSiO3/211.5(SiO4/245.3の平均組成を有する500gのポリシロキサン樹脂粉末(DOWSIL(商標)MQ-1600として市販されており、DOWSILはThe Dow Chemical Companyの商標である)を添加する。337gの2-(3,4-エポキシシクロヘシル)エチルトリメトキシシラン(Gelest,Inc.及びSigma-Aldrichから入手可能)及び0.82gの水酸化カリウムを添加する。窒素下、還流(70℃の内部反応温度)で、撹拌及び加熱する。ガスクロマトグラフィーによって、反応混合物をシランの存在について監視する。シランが消費されると(約4時間)、反応混合物を23℃に冷却し、次いで4.1gの酢酸を添加する。反応混合物を1時間撹拌する。1ミクロンフィルターを通して反応混合物を濾過して、透明な流体を得る。roto-vapを使用して揮発性物質を除去して、透明な液体樹脂を得る。29Si NMRによる分析は、樹脂が以下のような全シロキサン単位に対する各シロキサン単位の平均濃度を有することを示す:31.68モル%のM、1.56モル%のT1、5.05モル%のT2、10.10モル%のT3、0.43モル%のQ1、3.44モル%のQ2、15.71モル%のQ3、31.89モル%のQ4。T1、T2及びT3単位上のR基は、「TCHEp」単位を一緒に形成するための2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルを含むである。反応特徴及び樹脂特徴は、表1に含まれる。
【0049】
樹脂B~G:様々なレベルのOZ及び分子量を有するMTCHEpQ。
磁気撹拌棒を装備した3リットル(3-L)フラスコに、800グラム(g)のトルエン、樹脂Aを作製する際に使用した500gのポリシロキサンポリシロキサン樹脂粉末、337gの2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン及び0.82gの水酸化カリウムを添加する。ガスクロマトグラフィーによって決定される場合、全てのシランが消費されるまで、窒素下で、撹拌及び還流する(70℃の内部温度)。20gのメタノール中に12.3gの水を添加する。ディーン-スタークヘッドをフラスコに取り付ける。混合物を撹拌し、加熱し、ディーン-スタークトラップ内で揮発性物質を収集する。収集した揮発性物質の体積をトルエンと交換し、内部温度まで、及び表1に記載されている反応時間まで加熱を続ける。反応混合物を23℃に冷却し、酢酸で中和する。1ミクロンフィルターを通して反応混合物を濾過して、透明な液体を得る。roto-vapを使用して液体から揮発性物質を除去して、結果として生じる液体樹脂を得る。29Si NMR及び13C NMR(エポキシの存在を明らかにする)によって、並びに熱安定性について分析する。内部反応温度及び反応時間は、得られた樹脂特徴とともに表1にある。
【0050】
樹脂H:MTEp
磁気撹拌棒を装備した3リットルフラスコに、800グラムのトルエン、及び樹脂Aを作製するために使用される500グラムのポリシロキサン樹脂粉末を添加する。325グラムの(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン及び0.82gの水酸化カリウムを添加し、ガスクロマトグラフィーを使用して反応混合物を監視しながら、窒素下で、混合物を100℃で撹拌する。5時間後、反応を23℃に冷却し、4.1gの酢酸を添加し、1時間撹拌する。溶液を1マイクロメートルフィルターを通して濾過して、透明な液体を得る。roto-vapを使用して、透明な液体を形成する(form)揮発性物質を除去して、透明な液体樹脂(樹脂H)を得る。29Si NMR及び13C NMRによって、並びに熱安定性について分析し、13C NMRは、エポキシ環が無傷であることを示す。29Si NMRは、樹脂が以下のような全シロキサン単位に対する各シロキサン単位の平均濃度を有することを示す:31.42モル%のM、1.40モル%のT1、4.63モル%のT2、10.56モル%のT3、0.21モル%のQ1、3.44モル%のQ2、14.76モル%のQ3、33.59モル%のQ4。T1、T2及びT3単位上のR基は、「TEp」単位を一緒に形成するためのグリシドキシプロピルである。反応特徴及び樹脂特徴は、表1に含まれる。
【0051】
樹脂I:MDEp
磁気撹拌棒を装備した100ミリリットルフラスコに、25グラムのトルエン、及び樹脂Aを作製する際に使用される14.7グラムのポリシロキサン樹脂粉末を添加する。8.8グラムの2-(3,4-エポキシシクロヘクスル(epoxycyclohexl))エチルメチルジメトキシシラン)及び0.16グラムの水酸化カリウムを添加する。ガスクロマトグラフィーによって反応混合物を監視しながら、窒素下、還流(70℃の内部反応温度)で、混合物を撹拌及び加熱する。8時間後、混合物を50℃に冷却し、0.2グラムの酢酸を添加し、それを23℃に冷却すると1時間撹拌する。1マイクロメートルフィルターを通して溶液を濾過して、透明な液体を得る。roto-vapによって、透明な液体を形成する(form)揮発性物質を除去して、透明な液体樹脂(樹脂I)を得る。29Si NMR及び13C NMRによって、並びに熱安定性について分析し、13C NMRは、エポキシ環が無傷であることを示す。29Si NMRは、ポリシロキサン樹脂粉末が以下のような全シロキサン単位に対する各シロキサン単位の平均濃度を有することを示す:36.3モル%のM、5.28モル%のD1、7.53モル%のD2、0.00モル%のQ1、1.62モル%のQ2、8.10モル%のQ3、41.18モル%のQ4。D1及びD2単位上のR基は、「DEp」単位を一緒に形成するためのエポキシシクロヘクスルエチルである。反応特徴及び樹脂特徴は、表1に含まれる。

【0052】
樹脂J~M:様々なレベルのOZ及び分子量を有するMTCHEpQ。
以下の手順を使用し、かつ以下のようなエポキシ官能性シラン反応物の種類及び量を選択することによって、樹脂J~Mを調製する:樹脂J(646.6gの3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン)、樹脂K(977.5gの2-(3,4-エポキシシクロヘクスル(epoxycyclohexl))エチルメチルジメトキシシラン)、樹脂L(811.8gの3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン)、樹脂M(846.3gの2-(3,4-エポキシシクロヘクスル(epoxycyclohexl))エチルメチルジメトキシシラン)。
【0053】
磁気撹拌棒を装備した3リットルフラスコに、800グラムのトルエン、及び樹脂Aを作製する際に使用される500グラムのポリシロキサン樹脂粉末を添加する。上述のような所望の樹脂用のエポキシ官能性シラン及び1.15gの水酸化カリウムを添加する。ガスクロマトグラフィーを使用して反応の進行を監視しながら、混合物を還流(約70℃)で撹拌する。シランが完全に消費された後(約3時間)、混合物を23℃に冷却し、5.8グラムの酢酸を添加し、1時間撹拌する。混合物を1マイクロメートルフィルターを通して濾過して、透明な液体を得る。roto-vapを使用して、透明な液体から揮発性物質を除去する。29Si NMR及び13C NMRによって、並びに熱安定性について分析し、13C NMRは、エポキシ環が無傷であることを示す。29Si NMRは、樹脂が以下のように全シロキサン単位に対する各シロキサン単位の平均濃度を有することを示す。T単位上のR基は、樹脂J及びLのためのグリシドキシプロピル、並びに樹脂K及びMのための2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルである。反応特徴及び樹脂特徴は、表1に含まれる。
【0054】
データは、OZ含有量を増加させる同じエポキシ官能基がより低い粘度の樹脂、及びより低い5%重量損失温度(熱安定性の低下)をもたらすことを明らかにしている。これは、全てが同じエポキシ官能基を有する一連の樹脂A~Gで最も容易に見られる。
【表1】
モル% M、Q及びエポキシ官能化シロキサン単位は、シロキサン単位の総モルに対するものである。
モル% OZは、ケイ素原子のモルに対するものである。
【0055】
二重硬化性組成物
二重硬化性組成物の調製
表3は、試料組成物の各々についての配合情報を含む。指定された重量%のエポキシ官能性樹脂、PAG、湿気硬化性触媒及び反応性希釈剤を、琥珀色のデンタルミキサーカップ内で一緒に組み合わせることによって、組成物の100グラムの試料を調製する。成分の組み合わせをデンタルミキサーで混合して、よくブレンドされた組成物を形成する。試料の各々について、以下のUV硬化及び湿気硬化ステップに進む。
【0056】
エポキシ官能化樹脂は、上述のものから選択される。他の成分は、表2のものから選択される。
【表2】
【表3】
「該当なし(0)」は、成分が配合物中に含まれていなかったことを意味する。
【0057】
二重硬化性組成物の特性評価
以下の特性評価方法を使用して、試料を特性評価する。表4は、これらの特性評価の結果を含む。
【0058】
紫外線(UV)硬化。250マイクロメートル厚コーティング用のドローダウンバーを使用して、組成物をガラス基材上にコーティングする。Fusion Systems Corporation機器モデル31983-Eを使用して、23℃、UV放射下(0.l5ジュールの線量広帯域)で直ちに硬化させる。0.5ジュールのUV放射に試料を曝露する。曝露後、試料が液体であるか、又は手で触れて粘着性である場合、試料は「不合格」である。試料が非液体であり、手で触れて非粘着性である場合、試料は「合格」である。
【0059】
湿気硬化。UV硬化直後、又はUV硬化を行わない場合、UVコーティング用に調製されているが、UV硬化されていないコーティング上で、コーティングされたガラス基材を23℃及び相対湿度60%の環境に置くことにより、試料を湿気硬化する。試料がスキンを形成するのにかかる時間(「スキン硬化時間」)を記録する。許容可能であるか、又は「合格」するために、試料は、4時間以下のスキン硬化時間を有する必要がある。
【0060】
組成物の粘度。ASTM D2196の方法に従って、Brookfield粘度計(モデルDV-E)を使用して組成物の粘度を決定する。
【0061】
鉛筆硬度。ASTM D3363-05に従って、鉛筆硬度を測定する。湿気硬化後6日間、又は試料が湿気硬化されていなかった場合、UV硬化の1時間後に試料上の鉛筆硬度を測定する。合格するためには2H以上の鉛筆硬度が必要とされる。
【0062】
ガラスへの接着性。Gardco PA-2000接着性試験キットを使用したASTM方法D3359に従って、23℃で6日間、60%の相対湿度でUV硬化及び湿気硬化の両方を行った試料のクロスハッチ接着性試験を使用して、ガラスへの接着強度を測定する。不十分な接着性(評価1)は、コーティングした領域の50%を超えるコーティングが除去されたことを意味する。普通の接着性(評価2)は、コーティングした領域の5~50%を超えるコーティングが除去されたことを意味する。良好な接着性(評価3)は、コーティングした領域の5%未満を超えるコーティングが除去されたことを意味する。
【表4】
【0063】
触媒についての要件。試料1~6は、本発明の組成物中のPAG及び湿気硬化性触媒の両方に対する必要性を明らかにしている。試料2及び5は、湿気硬化性触媒が存在していないとき、望ましい4時間以内はもちろん、6日以内にスキンを形成することができず、ガラスへの接着性が不十分であることを示す。試料3及び6は、PAGが組成物に存在していないとき、組成物はUV硬化試験に不合格であることを示す。試料1及び4は、PAG及び湿気硬化性触媒の両方を含有する同じ組成物がUV硬化試験に合格し、4時間未満のスキン硬化時間を有し、ガラスへの良好な接着性を達成していることを示す。試料1~3は、反応性希釈剤の非存在下でのこの性能を示し、一方、試料4~6は、反応性希釈剤の存在下でのこれらの結果を示す。
【0064】
OZ含有量の影響。試料1、4、及び7~12は、反応性希釈剤を有する及び有しない組成物中のOZ含有量の影響を示す。一般的な傾向として、試料は、OZ含有量の減少がより高い粘度の組成物及びより長いスキン硬化時間をもたらすことを明らかにしている。データはまた、OZ含有量が15モル%未満であるとき、組成物の粘度が26Pa*s超であり、スキン硬化時間が4時間を超え、なお、OZ含有量が15モル%以上であるとき、組成物の粘度が26Pa*s以下であり、スキン硬化時間が4時間以下であることを明らかにしている。試料1及び7~10は、反応性希釈剤を含まない組成物についてのこれらの観察結果を明らかにし、一方、試料8、11及び12は、反応性希釈剤を含有する組成物についてのこれらの観察結果を明らかにしている。
【0065】
異なるエポキシ官能基、PAG及び湿気硬化性触媒。試料13~24は、種々のエポキシ官能化樹脂上の異なるエポキシ官能基、異なるPAG及び異なる湿気硬化性触媒を使用して、前の観察結果と一致する組成性能を示す。
図1
図2