IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 本田技研工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-路面評価装置 図1
  • 特許-路面評価装置 図2
  • 特許-路面評価装置 図3
  • 特許-路面評価装置 図4A
  • 特許-路面評価装置 図4B
  • 特許-路面評価装置 図5A
  • 特許-路面評価装置 図5B
  • 特許-路面評価装置 図6
  • 特許-路面評価装置 図7
  • 特許-路面評価装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-24
(45)【発行日】2025-10-02
(54)【発明の名称】路面評価装置
(51)【国際特許分類】
   E01C 23/01 20060101AFI20250925BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20250925BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20250925BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20250925BHJP
   G16Y 40/10 20200101ALI20250925BHJP
【FI】
E01C23/01
G08G1/00 D
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/10
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2023580292
(86)(22)【出願日】2023-02-08
(86)【国際出願番号】 JP2023004166
(87)【国際公開番号】W WO2023153434
(87)【国際公開日】2023-08-17
【審査請求日】2024-08-02
(31)【優先権主張番号】P 2022019140
(32)【優先日】2022-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100081972
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】鬼丸 寛之
(72)【発明者】
【氏名】徳永 武雄
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 篤樹
(72)【発明者】
【氏名】大石 康夫
(72)【発明者】
【氏名】飯星 明
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-120409(JP,A)
【文献】国際公開第2018/051913(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 23/01
G08G 1/00
G16Y 10/40
G16Y 20/20
G16Y 40/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行中の車両の加速度を示す加速度情報と前記車両の位置情報とを含む、前記車両の走行情報を取得する走行情報取得部と、
前記車両が走行する道路の情報を含む地図情報を取得する地図情報取得部と、
天候に関する情報を含む天候情報を取得する天候情報取得部と、
前記走行情報取得部により取得された前記車両の走行情報に基づいて、前記車両が走行する道路の路面の粗さを示す路面粗さ値を導出する粗さ値導出部と、
前記天候情報取得部により取得された前記天候情報に基づき前記車両が走行した区間の天候を推測し、推測結果に基づき前記粗さ値導出部により導出された前記路面粗さ値を補正する粗さ値補正部と、
前記粗さ値補正部により補正された前記路面粗さ値を、前記地図情報取得部により取得された道路の情報に対応付けて出力する出力部と、
前記地図情報に含まれる複数の地点のそれぞれの位置情報に対応づけて、天候の種類ごとに予め決定された、天候による路面への影響が継続する時間を示す影響継続時間を記憶する記憶部と、を備え
前記粗さ値補正部は、前記車両が走行した区間に、走行時の天候が雨、雪、強風、低温、および高温のいずれかである悪天候地点が含まれるとき、前記粗さ値導出部により導出された前記路面粗さ値から、前記悪天候地点に対応する前記路面粗さ値であって、前記悪天候地点において前記天候が継続していると推測される期間に対応する前記路面粗さ値を削除し、
前記粗さ値補正部はさらに、前記悪天候地点の位置と前記天候とに対応する前記影響継続時間を前記記憶部から読み出し、該影響継続時間に基づいて、前記悪天候地点において前記天候による影響が継続している期間を推測し、前記粗さ値導出部により導出された前記路面粗さ値から、前記悪天候地点に対応する前記路面粗さ値であって、前記悪天候地点において前記天候による影響が継続していると推測される期間に対応する前記路面粗さ値をさらに削除することを特徴とする路面評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面の凹凸形状を表す路面プロファイルを評価する路面評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、従来、車両に設けられた加速度センサにより測定された横方向(走行方向に対する横方向)の加速度に基づいて、車両が走行した道路の路面の凹凸形状を表す路面プロファイルを検出するようにした装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-12138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、道路の路面の状態は、雨や雪など天候によって変化する。そのため、加速度センサにより測定された加速度に基づいて検出される路面プロファイルには、車両が走行した区間の天候状態によってばらつきが生じる。したがって、上記特許文献1記載の装置のように、単に加速度センサにより測定された加速度に基づいて路面プロファイルを検出するのでは、路面プロファイルを十分に評価することができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様である路面評価装置は、走行中の車両の加速度を示す加速度情報と車両の位置情報とを含む、車両の走行情報を取得する走行情報取得部と、車両が走行する道路の情報を含む地図情報を取得する地図情報取得部と、天候に関する情報を含む天候情報を取得する天候情報取得部と、走行情報取得部により取得された車両の走行情報に基づいて、車両が走行する道路の路面の粗さを示す路面粗さ値を導出する粗さ値導出部と、天候情報取得部により取得された天候情報に基づき車両が走行した区間の天候を推測し、推測結果に基づき粗さ値導出部により導出された路面粗さ値を補正する粗さ値補正部と、粗さ値補正部により補正された路面粗さ値を、地図情報取得部により取得された道路の情報に対応付けて出力する出力部と、地図情報に含まれる複数の地点のそれぞれの位置情報に対応づけて、天候の種類ごとに予め決定された、天候による路面への影響が継続する時間を示す影響継続時間を記憶する記憶部と、を備える。粗さ値補正部は、車両が走行した区間に、走行時の天候が雨、雪、強風、低温、および高温のいずれかである悪天候地点が含まれるとき、粗さ値導出部により導出された路面粗さ値から、悪天候地点に対応する路面粗さ値であって、悪天候地点において天候が継続していると推測される期間に対応する路面粗さ値を削除する。粗さ値補正部はさらに、悪天候地点の位置と天候とに対応する影響継続時間を記憶部から読み出し、該影響継続時間に基づいて、悪天候地点において天候による影響が継続している期間を推測し、粗さ値導出部により導出された路面粗さ値から、悪天候地点に対応する路面粗さ値であって、悪天候地点において天候による影響が継続していると推測される期間に対応する路面粗さ値をさらに削除する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、路面プロファイルを十分に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係る路面評価装置を備える路面評価システムの構成の一例を示す図。
図2】車載装置の要部構成を示すブロック図。
図3】本発明の実施形態に係る路面評価装置の要部構成を示すブロック図。
図4A】路面粗さ値と横加速度との相関関係の導出方法を説明するための図。
図4B】路面粗さ値と横加速度との相関関係の導出方法を説明するための図。
図5A】車両が走行する道路の地図の一例を示す図。
図5B図5Aの道路を走行した車両の車載装置から路面評価装置が取得した、走行情報の一例を示す図。
図6】路面粗さ値の一例を示す図。
図7図5Aの道路の天候情報の一例を示す図。
図8図3の演算部で実行される処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図1図8を参照して本発明の実施形態について説明する。本発明の実施形態に係る路面評価装置は、車両が走行する道路の路面プロファイルを評価するための装置である。図1は、本実施形態に係る路面評価装置を備える路面評価システムの構成の一例を示す図である。図1に示すように、路面評価システム1は、路面評価装置10と、車載装置30とを備える。路面評価装置10はサーバ装置として構成される。車載装置30は、通信網2を介して路面評価装置10と通信可能に構成される。
【0009】
通信網2には、インターネット網や携帯電話網等に代表される公衆無線通信網だけでなく、所定の管理地域ごとに設けられた閉鎖的な通信網、例えば無線LAN、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等も含まれる。
【0010】
車載装置30は、車両20に搭載される。車両20には、複数の車両20-1,20-2,・・・,20-nが含まれる。なお、車両20は、手動運転車両であってもよいし、自動運転車両であってもよい。また、車両20には、車種やグレードが異なる車両が含まれていてもよい。
【0011】
図2は、本実施形態に係る車載装置30の要部構成を示すブロック図である。車載装置30は、電子制御ユニット(ECU)31と、測位センサ32と、加速度センサ33と、舵角センサ34と、車速センサ35と、TCU(Telematic Control Unit)36とを有する。
【0012】
測位センサ32は、例えばGPSセンサであって、GPS衛星から送信された測位信号を受信し、車両20の絶対位置(緯度、経度など)を検出する。なお、測位センサ32には、GPSセンサだけでなく準天頂軌道衛星をはじめとしたGNSS衛星と言われる各国の衛星から送信される電波を利用して測位するセンサも含まれる。また、慣性航法とのハイブリッド手法によって車両位置を求めるようにしても良い。
【0013】
加速度センサ33は、車両20の左右方向の加速度、すなわち横加速度を検出する。なお、加速度センサ33は、車両20の横加速度とともに前後方向の加速度や上下方向の加速度を検出するように構成されてもよい。舵角センサ34は、車両20のステアリングホイール(不図示)の操舵角を検出する。車速センサ35は、車両20の車速を検出する。
【0014】
図2に示すように、ECU31は、CPU(プロセッサ)等の演算部310と、ROM、RAM等の記憶部320と、I/Oインターフェース等の図示しないその他の周辺回路とを有するコンピュータを含んで構成される。演算部310は、予め記憶部320に記憶されたプログラムを実行することで、センサ値取得部311および通信制御部312として機能する。
【0015】
センサ値取得部311は、各センサ32~35により検出される情報(値)を取得する。詳細には、センサ値取得部311は、加速度センサ33により検出された横加速度と、車速センサ35により検出された走行速度と、測位センサ32により検出された車両20の絶対位置とを所定周期で、例えば10msごとに取得する。通信制御部312は、センサ値取得部311により取得された情報(以下、走行情報と呼ぶ。)を、その検出時点を示す検出時期情報および車両20を識別可能な車両ID(車両識別情報)とともにTCU36を介して路面評価装置10に送信する。このとき、通信制御部312は、センサ値取得部311により取得された情報を、所定周期で送信する。より具体的には、通信制御部312は、処理負荷を増大させないように、且つ、通信網2の帯域を不要に圧迫しないように、センサ値取得部311により取得された情報を間引いて、例えば1sごとに送信する。
【0016】
路面評価装置10は、車両20(車載装置30)の加速度センサ33の検出値に基づいて路面の凹凸形状、すなわち路面の粗さ(以下、路面プロファイルともいう。)を検出する。この検出された路面プロファイルは、例えば道路管理会社等が有する端末に出力され、道路管理会社等により補修の要否等を検討する際の参照データとして用いられる。すなわち、加速度センサ33の検出値が、路面プロファイルを評価するために用いられる。
【0017】
図3は、本実施形態に係る路面評価装置10の要部構成を示すブロック図である。路面評価装置10は、CPU等の演算部110と、ROM、RAM等の記憶部120と、I/Oインターフェース等の図示しないその他の周辺回路とを有するコンピュータを含んで構成される。記憶部120は、道路の地図を含む地図情報や演算部110により処理される各種情報を記憶する。
【0018】
演算部110は、記憶部120に記憶されたプログラムを実行することで、情報取得部111、路面プロファイル導出部112、路面プロファイル補正部113、路面プロファイル出力部114、および通信制御部115として機能する。
【0019】
情報取得部111は、走行情報を取得する。より詳しくは、情報取得部111は、通信制御部115を介して、道路を走行中の複数の車両20それぞれの車載装置30から走行情報を受信する。なお、情報取得部111は、走行情報に付随する車両IDにより走行情報の送信元の車両20を特定可能である。
【0020】
情報取得部111は、複数の車両20(車載装置30)から受信した走行情報を記憶部120に時系列に記憶する。以下、記憶部120に時系列に記憶された走行情報を、時系列走行情報と呼ぶ。また、情報取得部111は、車両20が走行する道路の情報を含む地図情報を記憶部120から取得する。
【0021】
路面プロファイル導出部112は、情報取得部111により取得された走行情報に基づいて、路面の凹凸の量(深さまたは高さ)、つまり路面粗さを示す粗さ情報を導出する。粗さ情報は、路面の粗さの程度を示す路面粗さ値であり、例えば、国際的な指標であるIRI(国際ラフネス指標)で表される値である。以下、路面粗さ値を単に粗さ値と表現する場合がある。路面プロファイル導出部112は、導出した路面粗さ値を記憶部120に時系列に記憶する。
【0022】
一般に、路面の凹凸の量が大きいほど車両20の横加速度は大きく、路面粗さ値と横加速度とは所定の相関関係を有する。路面プロファイル導出部112は、この相関関係を用いて、横加速度から道路上の車両位置に対応する路面粗さ値を導出する。具体的には、路面プロファイル導出部112は、まず、予め測定された路面粗さ値と横加速度とに基づいて、路面粗さ値と横加速度との相関関係を導出する。
【0023】
図4Aおよび図4Bは、路面粗さ値と横加速度との相関関係の導出方法を説明するための図である。図4Aに示す車両V1は、路面の粗さを測定する測定機器MAを搭載する専用車両である。測定機器MAは、所定の道路(測定用コース等)RDを車両V1が走行しているときに、道路RDの路面粗さ値を測定する。図4Aの特性P1は、このとき測定される路面粗さ値、すなわち教師データとして用いられる路面粗さ値を示す。
【0024】
図4Bには、図1の車両20が図4Aと同一の道路RDを走行する様子が示される。図4Bの特性P2は、車両20が所定の道路RDを走行中に、車両20に設けられた加速度センサ33により検出された横加速度、すなわち、教師データとして用いられる横加速度を示す。
【0025】
路面粗さ値および横加速度の教師データは、路面評価装置10の記憶部120に記憶されていてもよいし、外部の記憶装置に記憶されていてもよい。路面プロファイル導出部112は、記憶部120または外部の記憶装置から読み出した路面粗さ値および横加速度の教師データを用いて機械学習を行い、路面粗さ値と横加速度との相関関係を導出する。なお、教師データとして走行速度や、前後方向加速度、ステアリング角度を加えて機械学習を行うようにしてもよい。
【0026】
図5Aは、車両20が走行する道路の地図の一例を示す図である。図5Aには、路面粗さの評価対象となる所定道路(国道X号の緯度Y~Zの区間)が示される。図5Aにおいて上方向が北方向に対応し、右方向が東方向に対応する。路面粗さの評価対象となる範囲(以下、評価対象道路と呼ぶ。)は、後述するようにユーザにより指定可能である。評価対象道路が片側複数車線である場合には、路面粗さの評価対象とされる車線がユーザにより指定される。図5Bは、図5Aの所定道路(国道X号の緯度Y~Zの区間)を走行した車両20の車載装置30から路面評価装置10が取得した、走行情報の一例を示す図である。図中の横軸は、車両20の走行車線に沿った進行方向の位置(緯度)であり、縦軸は、車両20の横加速度である。
【0027】
ところで、車両20が走行中に加速度センサ33により検出される横加速度は、車両が走行する地点の天候によって変化する。例えば、降雨時に路面に張った水の上を走行すると、タイヤにかかる水の浮力やタイヤから生じる水しぶきによるノイズが加速度センサ33により検出され、車両20の横加速度を精度よく検出できないときがある。強風時には、車両20にかかる風圧によるノイズが加速度センサ33により検出され、車両20の横加速度が精度よく検出できないときがある。降雪時には、タイヤの路面との摩擦係数が小さくなったり、積雪により路面の凹凸が変化したりするため、実際の路面の凹凸に対応した横加速度が加速度センサ33により検出されないときがある。
【0028】
したがって、上記のような天候時には、車両20の横加速度に基づき導出された路面粗さ値の精度が低下するおそれがある。以下、雨、雪、強風、低温、および高温、より詳細には、所定降雨量以上の雨、所定降雪量以上の雪、所定風速以上の強風、所定温度以下の低温、および所定温度以上の高温を悪天候と表現する。図6は、悪天候時の路面粗さ値の一例を示す図である。図中の特性P1は、図5Aの所定道路を走行中の車両20の車載装置30から取得された走行情報(加速度情報)から導出された路面粗さ値を表す。図7は、図5Aの所定道路の天候情報の一例を示す図である。図7には、図6の路面粗さ値の導出に用いられた走行情報が取得された時点、より詳細には、車両20が国道X号の緯度Z付近を走行しているときの降水量情報が示されている。天候情報には、降水量情報や、降雪量情報、風速情報、気温情報等が含まれる。
【0029】
図6に示すように、降水量が80mm/h以上の猛烈な雨が降ったと推測される区間(国道X号の緯度W~Z)では、路面に張った水の影響等により車両20の横加速度が精度よく検出されず、晴天時と異なる路面粗さ値が導出される。図6には、車両20が上記区間(国道X号の緯度W~Z)を晴天時に走行したときに車載装置30により取得された走行情報に基づき導出された、路面粗さ値(特性P2)が破線で示されている。
【0030】
このように、車両20が同じ道路を走行した場合でも、車両20の走行情報に基づき導出される路面粗さ値は、走行時の天候によって変化する。特に、悪天候時には、車両20の横加速度に基づき導出される路面粗さ値の精度が低下しやすい。この点を考慮して、路面プロファイル補正部113は、車両20が走行した区間の天候情報に基づいて、路面プロファイル導出部112により導出された路面粗さ値を補正する。なお、天候情報は、天候情報を配信する外部サーバ等から、通信制御部115を介して情報取得部111により取得される。
【0031】
ここで、天候情報を用いた路面粗さ値の補正について説明する。情報取得部111、通信制御部115を介して走行情報を取得すると、走行情報に含まれる位置情報に基づいて、車両20の走行位置の天候情報を取得する。なお、車載装置30が、TCU36を介して外部サーバ等から、車両20の現在位置の天候情報を受信し、受信した天候情報を走行情報とともに路面評価装置10に送信してもよい。情報取得部111は、走行情報と天候情報とを対応付けて記憶部120に記憶する。
【0032】
路面プロファイル補正部113は、情報取得部111により取得された天候情報に基づいて、車両20の走行した区間の天候を推測し、その推測結果に基づいて、路面プロファイル導出部112により導出された路面粗さ値を補正する。
【0033】
具体的には、路面プロファイル補正部113は、路面粗さ値の導出に用いられた走行情報に対応付けられた天候情報を、記憶部120から読み出す。路面プロファイル補正部113は、読み出した天候情報に基づいて、車両20が走行した区間に走行時の天候が悪天候であった地点が含まれるか否か、すなわち、悪天候である地点を車両20が走行したか否かを判定する。路面プロファイル補正部113は、車両20が走行したときの天候が悪天候であった地点が含まれるとき、読み出した天候情報に基づいて、その悪天候の継続期間を推測する。そして、路面プロファイル補正部113は、その悪天候が継続していると推測される期間にその地点において取得された走行情報に基づき導出された路面粗さ値を、記憶部120から削除する。
【0034】
路面プロファイル出力部114は、記憶部120に記憶された路面粗さ値を、情報取得部111により取得された道路の情報に対応付けて出力する。
【0035】
通信制御部115は、不図示の通信部を制御して、外部の装置等とデータの送受信を行う。より詳しくは、通信制御部115は、通信網2を介して、車両20の車載装置30や道路管理会社等の端末と、データの送受信を行う。また、通信制御部115は、通信網2を介して、道路管理会社等の端末から送信される路面プロファイルの出力指示を受信する。また、通信制御部115は、通信網2に接続された各種サーバから、地図情報などを定期的に、あるいは任意のタイミングで取得する。通信制御部115は、各種サーバから取得した情報を記憶部120に記憶する。
【0036】
図8は、予め定められたプログラムに従い路面評価装置10の演算部110(CPU)で実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、路面評価装置10が起動している間、所定周期で繰り返される。まず、ステップS11で、車両20の車載装置30から走行情報を受信したか否かを判定する。ステップS11で否定されると、処理を終了する。ステップS11で肯定されると、ステップS12で、ステップS11で受信した走行情報に含まれる位置情報に基づいて、車両20の走行位置の天候情報を取得する。そして、走行情報と天候情報とを対応付けて記憶部120に記憶する。このとき、走行情報に付随する車両IDも記憶部120に記憶される。ステップS13で、路面プロファイルの出力指示を入力(受信)したか否かを判定する。
【0037】
路面プロファイルの出力指示には、評価対象道路を特定可能な区間情報が含まれる。区間情報は、例えば、「道路:国道X号線、区間:緯度Y~Z」といったように、評価対象とする道路の名称と区間とを示す情報である。なお、道路が片側2車線など片側複数車線である場合には、「道路:国道X号線、車線:右端、区間:緯度Y~Z」といったように、区間情報に評価対象とする車線の情報が含まれてもよい。また、評価対象とする区間の指定には、緯度以外の情報が用いられてもよい。例えば、緯度の代わりに経度が用いられてもよいし、緯度に加えて経度が用いられてもよい。また、区間の始点からの距離が用いられてもよい。さらに、路面プロファイルの出力指示には、評価対象とする所定期間を指定した期間情報が含まれてもよい。期間情報には、例えば「〇月〇日から過去1か月間」、「現在から過去1年以内」といったように、評価対象とする所定期間を特定可能な情報が含まれる。
【0038】
ステップS13で否定されると、処理を終了する。ステップS13で肯定されると、ステップS14で、記憶部120から地図情報を読み出し、地図情報に含まれる道路の情報を取得する。ステップS15で、記憶部120から車両20の走行情報(時系列走行情報)を取得する。より詳しくは、路面プロファイルの出力指示に含まれる区間情報と、ステップS14で取得された道路の情報とに基づいて、区間情報により特定される評価対象道路に対応する走行情報を記憶部120から読み出す。なお、路面プロファイルの出力指示に区間情報とともに期間情報が含まれるときは、区間情報により特定される評価対象道路に対応する走行情報のうち、期間情報により指定された所定期間に取得された走行情報を記憶部120から読み出す。
【0039】
ステップS16で、ステップS15で記憶部120から読み出した走行情報のそれぞれに基づいて路面粗さ値を導出し、導出した路面粗さ値を出力対象として記憶部120に記憶する。ステップS17で、ステップS15で記憶部120から読み出した走行情報に対応付けられた天候情報を記憶部120から読み出す。
【0040】
ステップS18で、ステップS17で読み出した天候情報に基づいて、天候が雨、雪、強風、低温、および高温のいずれかである地点(以下、悪天候地点と呼ぶ)を車両20が走行したか否かを推測する。このとき、ステップS17で読み出した天候情報に、雨、雪、強風、低温、および高温のいずれかを示す情報が含まれるとき、車両20が悪天候地点を走行したと判定する。ステップS18で否定されると、ステップS20に進む。
【0041】
ステップS18で肯定されると、ステップS19で、ステップS16で導出された路面粗さ値を補正する。詳細には、ステップS16で記憶部120に記憶された路面粗さ値のうち、悪天候地点に対応する走行情報に基づき導出された路面粗さ値を出力対象から除外する。出力対象から除外された路面粗さ値は、記憶部120から削除される。悪天候地点に対応する走行情報とは、車両20が悪天候地点を走行中に車載装置30により取得された走行情報である。
【0042】
ステップS20で、出力対象の路面粗さ値を記憶部120から読み出し、読み出した路面粗さ値をステップS14で取得した道路の情報に対応付けた情報、すなわち路面プロファイル情報を生成して出力する。より詳しくは、出力指示で指定された区間の各位置に、読み出した路面粗さ値を対応付けた情報を路面プロファイル情報として出力する。路面プロファイル情報は、通信網2を介して、路面プロファイルの出力指示の送信元の端末や、予め定められた出力先の端末に出力される。路面プロファイル情報はディスプレイ等の表示装置に表示可能な情報であり、ユーザは、ユーザの端末が有するディスプレイに路面プロファイル情報を表示させることで、路面プロファイルを確認したり評価したりすることができる。
【0043】
本発明の実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)路面評価装置10は、走行中の車両20の加速度を示す加速度情報と車両20の位置情報とを含む、車両20の走行情報と、車両20が走行する道路の情報を含む地図情報と、天候に関する情報を含む天候情報と、を取得する情報取得部111と、情報取得部111により取得された車両20の走行情報に基づいて、車両20が走行する道路の路面の粗さを示す路面粗さ値を導出する路面プロファイル導出部112と、情報取得部111が取得した天候情報に基づき車両20が走行した区間の天候を推測し、その推測結果に基づき路面プロファイル導出部112により導出された路面粗さ値を補正する路面プロファイル補正部113と、路面プロファイル補正部113により補正された路面粗さ値を、情報取得部111により取得された道路の情報に対応付けて出力する路面プロファイル出力部114と、を備える(図3)。
【0044】
この構成により、車両20が道路を走行する天候に依らずに、十分に評価可能な路面プロファイルを導出することができる。また、路面プロファイル測定用の専用車両等を用いずに一般車両の走行情報を用いて、道路の路面プロファイルを十分に評価することが可能となる。さらに、道路管理会社等のユーザは、現地に行くことなく路面評価装置10により出力された路面プロファイルに基づいて補修が必要な道路を推測することができ、道路管理に要する費用を削減することが可能となる。
【0045】
(2)路面プロファイル補正部113は、車両20が走行した区間に、走行時の天候が雨、雪、強風、低温、および高温のいずれかである地点が含まれるとき、路面プロファイル導出部112により導出された路面粗さ値から、その地点に対応する路面粗さ値を削除する。具体的には、路面プロファイル補正部113は、路面プロファイル導出部112により導出された路面粗さ値から、その地点に対応する路面粗さ値であって、その地点においてその天候が継続していると推測される期間に対応する路面粗さ値を削除する。これにより、悪天候地点に対応する路面粗さ値が、路面プロファイルの評価に用いられなくなるため、路面プロファイルを精度よく評価できる。
【0046】
上記実施形態は種々の形態に変形することができる。以下、変形例について説明する。
【0047】
(第1変形例)
通常、雨や雪などの天候による路面への影響は、その天候が回復した後も継続する。また、その継続時間は道路が設置されている位置や、路面の傾斜角度、舗装の種類等によって異なる。したがって、図7の国道Xの緯度Y付近と緯度Z付近とでは、例えば、降雨の後に路面に水が張った状態が継続する時間が異なる可能性がある。
【0048】
そこで、この点を考慮して、本変形例では、評価対象区間を走行中に車両20が悪天候地点を走行したと推測されるとき、路面プロファイル補正部113は、その悪天候地点において悪天候による路面への影響が継続する時間(以下、影響継続時間と呼ぶ。)を推測する。路面プロファイル補正部113は、影響継続時間が経過するまでの間に車両20がその悪天候地点を走行したときに取得された走行情報を、路面プロファイル出力部114の出力対象から除外する。
【0049】
なお、影響継続時間は、地図上の道路の各地点における天候の種類、舗装の種類、路面の傾斜角度等に基づいて予め決定される。記憶部120には、天候の種類ごとに予め決定された各地点の影響継続時間と、各地点の位置情報(緯度や経度)とを対応づけた影響継続時間テーブルが記憶される。路面プロファイル補正部113は、影響継続時間テーブルに基づき、悪天候地点における影響継続時間を推測する。詳細には、影響継続時間テーブルに登録されている影響継続時間のうち、悪天候地点に最も近い地点の影響継続時間であって、悪天候地点における天候の種類に対応した影響継続時間に基づいて、悪天候地点の影響継続時間を推測する。なお、悪天候地点から所定距離内に位置する1または複数の地点の影響継続時間から算出される平均値や中央値などの代表値を、悪天候地点の影響継続時として推測してもよい。また、悪天候地点と同一の地点が影響継続時間テーブルに登録されているときは、影響継続時間テーブルに記憶されている影響継続時間をそのまま用いてもよい。
【0050】
なお、影響継続時間は、雨や雪など悪天候の種類によって異なる場合がある。したがって、影響継続時間テーブルには、悪天候の種類に対応した影響継続時間がそれぞれ記憶されてもよい。この場合、路面プロファイル補正部113は、情報取得部111により取得された天候情報に基づいて悪天候地点の天候の種類を判断し、悪天候地点の天候の種類に対応する影響継続時間を影響継続時間テーブルから取得する。
【0051】
また、上記実施形態では、情報取得部111が、走行情報取得部として加速度センサにより検出された車両20の横加速度を車両20の運動を示す情報として取得するようにしたが、車両20の運動を示す情報は、加速度センサにより検出された車両20の横加速度に限らない。すなわち、車両20の運動を示す情報を取得するのであれば、情報取得部111の構成は前後方向加速度を検出する等いかなるものでもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、情報取得部111が、地図情報取得部として車両20が走行する道路の情報を含む地図情報を記憶部120から取得するようにしたが、地図情報は、外部のサーバや外部の記憶装置に記憶されてもよい。すなわち、車両20が走行する道路の情報を含む地図情報を取得するのであれば、地図情報取得部の構成はいかなるものでもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、路面プロファイル補正部113が、粗さ値補正部として、路面プロファイル出力部114の出力対象から除外された路面粗さ値を記憶部120から削除するようにした。しかしながら、粗さ値補正部は、出力対象から除外された路面粗さ値を記憶部120から削除せずに、悪天候地点に対応する走行情報に基づき導出された路面粗さ値を出力対象から除外するように路面プロファイル出力部114に指示してもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、情報取得部111が、通信制御部115を介して走行情報を取得すると、走行情報に含まれる位置情報に基づいて、車両20の走行位置の天候情報を取得するようにしたが、天候情報取得部の構成はこれに限られない。天候情報取得部は、通信制御部115を介して所定数の走行情報を取得するたびに天候情報を取得してもよい。そして、取得した天候情報を、所定数の走行情報に対応付けて記憶部120に記憶してもよい。
【0055】
また、路面プロファイル補正部113は、粗さ値導出部としての路面プロファイル導出部112により導出された路面粗さ値を、車速センサ35により検出された車速と舵角センサ34により検出された舵角とに基づいて補正するようにしてもよい。カーブしている道路を車両20が走行するとき、加速度センサ33は、路面の凹凸により発生する横加速度だけでなく、車両20の速度や舵角に応じて発生する遠心力による横加速度を検出する。そこで、そのような場合には、路面プロファイル補正部113は、加速度センサ33により検出された横加速度に基づき導出された路面粗さ値から、遠心力による横加速度に基づく成分を排除するように、路面粗さ値を補正してもよい。それにより、直線以外の道路の路面粗さ値についても精度よく導出することが可能となる。
【0056】
また、上記実施形態では、路面プロファイル出力部114が、出力部として路面プロファイル情報をユーザの端末に出力するようにしたが、出力部は、路面プロファイル情報が記憶部120に記憶された地図情報にマッピングされるように、路面プロファイル情報を記憶部120に出力してもよい。すなわち、路面プロファイル情報を出力するのであれば、出力部の構成はいかなるものでもよい。
【0057】
さらに、上記実施形態では、路面プロファイル導出部112が、粗さ値導出部として、IRIで表された路面粗さ値を導出する例を示したが、路面粗さ値は、他の指標で表されてもよい。例えば、教師データとして取得される路面粗さ値がIRI以外の指標で表される場合には、路面プロファイル導出部112は、その指標で表された路面粗さ値を導出するようにしてもよい。
【0058】
また、本発明は、走行中の車両20の加速度を示す加速度情報と車両20の位置情報とを含む、車両20の走行情報を取得するステップ(S15)と、車両20が走行する道路の情報を含む地図情報を取得するステップ(S14)と、天候に関する情報を含む天候情報を取得するステップ(S17)と、取得された車両20の走行情報に基づいて、車両20が走行する道路の路面の粗さを示す路面粗さ値を導出するステップ(S16)と、取得された天候情報に基づき車両20が走行した区間の天候を推測し、その推測結果に基づき路面粗さ値を補正するステップ(S18,S19)と、補正された路面粗さ値を、取得された道路の情報に対応付けて出力するステップ(S20)と、をコンピュータにより実行することを含む路面評価方法としても用いることができる。
【0059】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態と変形例の一つまたは複数を任意に組み合わせることも可能であり、変形例同士を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0060】
10 路面評価装置、20,20-1~20-n 車両、30 車載装置、110 演算部、111 情報取得部、112 路面プロファイル導出部、113 路面プロファイル補正部、114 路面プロファイル出力部、120 記憶部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8