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  • 特許-防曇性コーティング組成物及びその用途 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-25
(45)【発行日】2025-10-03
(54)【発明の名称】防曇性コーティング組成物及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20250926BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20250926BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20250926BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20250926BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20250926BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20250926BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20250926BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D133/00
C09D7/65
C09D7/63
B32B27/00 H
B32B27/18 C
B65D65/40 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021058019
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022154807
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2024-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000220099
【氏名又は名称】アールエム東セロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】城所 雅子
(72)【発明者】
【氏名】澤田 峻一
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-214693(JP,A)
【文献】特開平10-249979(JP,A)
【文献】特開2019-119060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00 - 10/00
C09D 101/00 - 201/10
B32B 1/00 - 43/00
B65D 65/00 - 65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)低分子界面活性剤と、(b)高分子界面活性剤とを含み、
反射IRスペクトル測定において、1730cm-1±30cm-1の吸収ピーク高さ(P2)と1560±30cm-1に吸収ピーク高さ(P4)の比(P4/P2)が0.08以上、1.80以下であり、
1730cm -1 ±30cm -1 の吸収ピーク高さ(P2)と1630±30cm -1 に吸収ピーク高さ(P3)の比(P3/P2)が0.03以上、0.60以下であるコーティング組成物。
【請求項2】
反射IRスペクトル測定において、1730cm-1±30cm-1の吸収ピーク高さ(P2)と3400±30cm-1に吸収ピーク高さ(P1)の比(P1/P2)が0.10以上、0.58以下である、請求項に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
DSC測定において、35±25℃に融点ピークを有する、請求項1または2に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
DSC測定において、更に15.3±5℃、及び118±15℃のそれぞれに融点ピークを有する、請求項に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
(a)低分子界面活性剤が、非イオン系界面活性剤を含む、請求項に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
(b)高分子界面活性剤が、アクリル系界面活性剤を含む、請求項又はに記載のコーティング組成物。
【請求項7】
熱融着層(A)、中間層(B)、及びラミネート層(C)が、この順に積層されてなり、熱融着層(A)上に請求項1からのいずれか一項に記載のコーティング組成物から形成されたコーティング層を有する、易開封性フィルム。
【請求項8】
熱融着層(A)が、ポリエチレンテレフタレート、エチレン系(共)重合体、及びプロピレン系(共)重合体の少なくとも一種を含有する、請求項に記載の易開封性フィルム。
【請求項9】
請求項又はに記載の易開封性フィルムを有する蓋材と、容器とを有する、易開封性包装。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング組成物に関し、より具体的には、防曇性、易開封性、及び低ブロッキング性のバランスに優れたコーティング層を形成し得るコーティング組成物及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子フィルムは、成形性、安全性、品質保持性等に優れることから、食品包装容器に広く使用されている。食品包装容器は、内容物等からの水蒸気が水滴として容器表面に付着することがある。この場合、食品包装容器の内容物(食品)が視認できなくなる、付着した水滴の落下による食品の劣化が生じる等が起こりうることから、防曇剤を用いて食品包装用の高分子フィルムに防曇性を付与することが行われている。
例えば、防曇性と耐油性とに優れた防曇剤として、特定の親水性(メタ)アクリル樹脂と、防曇剤と、親水性高分子と、を含むコーティング組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
コーティング剤を高分子フィルム表面に塗布すると、表面の状態が変化するので、ブロッキング性やヒートシール性が変化する場合がある。食品包装容器の蓋材等に使用する熱融着性の高分子フィルムにおいては、保管時に低ブロッキング性が、開封時にはヒートシール強度が適切なものであることが要求される。そこで、高分子フィルムの熱融着層等のブロッキング性やヒートシール性に悪影響を与えず、防曇性、ヒートシール強度(易開封性)、及び低ブロッキング性のバランスに優れたコーティング層を形成し得るコーティング剤が強く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-94422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記技術背景に鑑み、本発明は、熱融着性の高分子を含有するフィルム表面等に防曇コーティングを形成し得るコーティング組成物であって、防曇性、ヒートシール強度(易開封性)、及び低ブロッキング性が高いレベルでバランスしたフィルムを形成し得るコーティング組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定の反射赤外スペクトルピークを有する組成物を熱融着性の高分子フィルムに塗布することで、高分子フィルムのヒートシール強度(易開封性)、及び低ブロッキング性を実質的に損なわずに、防曇性を大幅に向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、
[1]
反射IRスペクトル測定において、1730cm-1±30cm-1の吸収ピーク高さ(P2)と1560±30cm-1に吸収ピーク高さ(P4)の比(P4/P2)が0.08以上、1.80以下であるコーティング組成物、に関する。
【0007】
下記、[2]から[11]は、いずれも本発明の好ましい態様又は実施形態である。
[2]
反射IRスペクトル測定において、1730cm-1±30cm-1の吸収ピーク高さ(P2)と1630±30cm-1に吸収ピーク高さ(P3)の比(P3/P2)が0.03以上、0.60以下である、[1]に記載のコーティング組成物。
[3]
反射IRスペクトル測定において、1730cm-1±30cm-1の吸収ピーク高さ(P2)と3400±30cm-1に吸収ピーク高さ(P1)の比(P1/P2)が0.10以上、0.58以下である、[1]または[2]に記載のコーティング組成物。
[4]
DSC測定において、35±25℃に融点ピークを有する、[1]から[3]のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
[5]
DSC測定において、更に15.3±5℃、及び118±15℃のそれぞれに融点ピークを有する、[4]に記載のコーティング組成物。
[6]
(a)低分子界面活性剤と、(b)高分子界面活性剤とを含む、[1]から[5]のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
[7]
(a)低分子界面活性剤が、非イオン系界面活性剤を含む、[6]に記載のコーティング組成物。
[8]
(b)高分子界面活性剤が、アクリル系界面活性剤を含む、[6]又は[7]に記載のコーティング組成物。
[9]
熱融着層(A)、中間層(B)、及びラミネート層(C)が、この順に積層されてなり、熱融着層(A)上に[1]から[8]のいずれか一項に記載のコーティング組成物から形成されたコーティング層を有する、易開封性フィルム。
[10]
熱融着層(A)が、ポリエチレンテレフタレート、エチレン系(共)重合体、及びプロピレン系(共)重合体の少なくとも一種を含有する、[9]に記載の易開封性フィルム。
[11]
[9]又は[10]に記載の易開封性フィルムを有する蓋材と、容器とを有する、易開封性包装。
【発明の効果】
【0008】
本発明のコーティング組成物は、防曇性、ヒートシール強度(易開封性)、及び低ブロッキング性、という実用上高い価値を有する性質を、従来技術の限界を超えた高いレベルで兼ね備えたコーティング層を熱融着性フィルム等の基材上に形成することができるものであり、内容物の視認性が求められる食品等の各種商品を収納する、易開封性のプラスチック容器の蓋材をはじめとする各種用途において、好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(a)は防曇性の評価基準の模式図であり、(b)は実際の防曇評価例の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、反射IRスペクトル測定において、
反射IRスペクトル測定において、1730cm-1±30cm-1の吸収ピーク高さ(P2)と1560±30cm-1に吸収ピーク高さ(P4)の比(P4/P2)が0.08以上、1.80以下である、コーティング組成物である。
上記の各波長領域に上記の強度比で吸収ピークを有することで、本発明のコーティング組成物は、基材となる高分子フィルムの熱融着層等のヒートシール強度(易開封性)、及び低ブロッキング性等を実質的に損なわずに、防曇性を大幅に向上できる。
本発明のコーティング組成物の反射IRスペクトルは当該技術分野において慣用された方法により測定することができ、例えばポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂製のフィルム上にコーティング組成物を塗布し加熱乾燥して、厚み2μm程度のコーティング層を形成して、全反射吸収赤外分光法により測定することができる。より具体的には、本願実施例に記載の方法で測定を行うことができる。
【0011】
反射IRスペクトル測定において、1730cm-1±30cm-1の吸収ピーク高さ(P2)と1560±30cm-1に吸収ピーク高さ(P4)の比(P4/P2)が0.08以上、1.80以下である、ことで本発明のコーティング組成物が上記の効果を達成できるメカニズムは必ずしも明らかではないが、1730cm-1、及び1560cm-1のそれぞれプラスマイナス30cm-1以内の吸収ピークが、それぞれエステル基、及びカルボアニオンに対応するところ、これらの基、イオンが反射IRスペクトル測定により観測可能なレベルで存在することで、界面活性作用を通じて基材に防曇性を付与し得ること等と、何らかの関連が有ることが推定される。
【0012】
1560cm-1プラスマイナス30cm-1以内の吸収ピークの強度P4は、1730cm-1プラスマイナス30cm-1以内の吸収ピークの強度を基準として、その0.1~1.7倍であることが好ましく、0.15~1.5倍であることがより好ましい。すなわち、(P4/P2)は、0.1以上1.7以下であることが好ましく、0.15以上1.5以下であることがより好ましい。
ピーク強度P4について、上記にて測定した反射IRスペクトル上の該当ピークは、赤外線全反射測定(ATR法)により得る。得られた赤外線吸収スペクトルから、以下の手順(4)で上記吸収ピーク高さを算出し、ピーク強度とした。
(4)1530m-1と1780cm-1の吸光度のベースラインを直線(P)で結び、1560cm-1の吸光度ピークから垂直に直線(R)を引き、直線(R)と直線(P)との交点からピークまでの直線(R)上の長さを1560cm-1のピーク強度とする。
1560cm-1プラスマイナス30cm-1以内の吸収ピークの強度は、カルボアニオンを有する化合物を添加し、更にはその添加量を増やすことで、増大させることができる。例えば、第四級アンモニウム塩やカルボン酸塩等を使用し、更にはその使用量を増やすことで増大させることができる。
【0013】
ピーク強度P2について、上記にて測定した反射IRスペクトル上の該当ピークは、赤外線全反射測定(ATR法)により得る。得られた赤外線吸収スペクトルから、以下の手順(2)で上記吸収ピーク高さを算出し、ピーク強度とする。
(2)1530cm-1と1780cm-1の吸光度のベースラインを直線(P)で結び、1730cm-1の吸光度ピークから垂直に直線(R)を引き、直線(R)と直線(P)との交点からピークまでの直線(R)上の長さを1730cm-1の吸収ピーク強度とする。
1730cm-1プラスマイナス30cm-1以内の吸収ピークの強度は、エステル基を有する化合物を添加し、更にはその添加量を増やすことで、増大させることができる。例えば、(メタ)アクリル系単量体の(共)重合体等を使用し、更にはその使用量を増やすことで増大させることができる。
【0014】
3400cm-1プラスマイナス30cm-1以内の吸収ピークの強度P1には特に限定はないが、1730cm-1プラスマイナス30cm-1以内の吸収ピークP2の強度を基準として、その0.15~0.55倍であることが好ましく、0.20~0.50倍であることがより好ましく、0.25~0.48倍であることがより好ましい。すなわち、(P1/P2)は、0.1以上0.55以下であることが好ましく、0.2以上0.5以下であることがより好ましい。
ピーク強度P1に関し、上記にて測定した反射IRスペクトル上の該当ピークは、赤外線全反射測定(ATR法)により得る。得られた赤外線吸収スペクトルから、以下の手順(1)で上記吸収ピーク高さを算出し、ピーク強度とする。
(1)3040m-1と3800cm-1の吸光度のベースラインを直線(N)で結び、3400cm-1の吸光度ピークから垂直に直線(O)を引き、直線(N)と直線(O)との交点からピークまでの直線(O)上の長さを3400cm-1のピーク強度とする。
3400cm-1プラスマイナス30cm-1以内の吸収ピークの強度は、OH基、NH基、及び/又はCOOH基を有する化合物を添加し、更にはその添加量を増やすことで、増大させることができる。例えば、後述の(a)低分子界面活性剤としてグリセリン脂肪酸エステルを使用し、更にはその使用量を増やすことで増大させることができる。
【0015】
1630cm-1プラスマイナス30cm-1以内の吸収ピークの強度P3には特に限定はないが、1730cm-1プラスマイナス30cm-1以内の吸収ピークの強度P2を基準として、その0.03~0.60倍であることが好ましく、0.05~0.6倍であることがより好ましく、0.1~0.55倍であることが特に好ましい。すなわち、(P3/P2)は、0.03以上0.60以下であることが好ましく、0.1以上0.55以下であることが好ましく、0.2以上0.5以下であることがより好ましい。
ピーク強度P3に関し、上記にて測定した反射IRスペクトル上の該当ピークは、赤外線全反射測定(ATR法)により得る。得られた赤外線吸収スペクトルから、以下の手順(3)で上記吸収ピーク高さを算出し、ピーク強度とする。
(3)1530m-1と1780cm-1の吸光度のベースラインを直線(P)で結び、1630cm-1の吸光度ピークから垂直に直線(R)を引き、直線(R)と直線(P)との交点からピークまでの直線(R)上の長さを1630cm-1の吸収ピーク高さをピーク強度とする。
1630cm-1プラスマイナス30cm-1以内の吸収ピークの強度は、アミド基を有する化合物を添加し、更にはその添加量を増やすことで、増大させることができる。例えば、第四級アンモニウム塩等を使用し、更にはその使用量を増やすことで増大させることができる。
【0016】
本発明のコーティング組成物は、DSC測定において、35±25℃に融点ピークを有することが好ましい。
ここで、DSC測定における融点ピークは、コーティング組成物を100℃真空乾燥7時間で処理し、1回目の昇温は30~150℃、昇温速度10℃/分、昇温後1分保持し、次に冷却工程(150~―100℃、降温速度10℃/分、昇温後1分保持)し、2回目の昇温は、-100~150℃、昇温速度10℃/分、昇温後1分保持する条件の熱履歴で行うDSC測定における2回目の昇温過程において観測される吸熱ピークをいう。
35±25℃に融点ピークを有することで、すなわち35±25℃に融点ピークを有する成分を含有することで、本実施形態のコーティング組成物は、熱融着性を有する高分子フィルム等の特性、特にヒートシール性能等を損なうことなく、防曇性を付与することができる。
35±25℃の融点ピークを有する成分としては、後述の(a)低分子界面活性剤を好ましく用いることができ、より好ましくはグリセリン脂肪酸エステルを用いることができる。
【0017】
本発明のコーティング組成物は、DSC測定において、15.3±5℃に融点ピークを有することが好ましい。
15.3±5℃に融点ピークを有することで、すなわち15.3±5℃に融点ピークを有する成分を含有することで、本実施形態のコーティング組成物は、熱融着性を有する高分子フィルムの特性、特にヒートシール性能、易開封性、封緘性、透明性等、を損なうことなく、防曇性を付与することができる。
15.3±5℃の融点ピークを有する成分としては、後述の(a)低分子界面活性剤を好ましく用いることができ、より好ましくはジグリセリンモノラウレートを用いることができる。
【0018】
本発明のコーティング組成物は、DSC測定において、118℃±15℃に融点ピークを有することが好ましい。
118℃±15に融点ピークを有することで、すなわち118℃±15℃に融点ピークを有する成分を含有することで、本実施形態のコーティング組成物は、熱融着性を有する高分子フィルムの特性、特に低ブロッキング性、スリップ性、透明性等、を損なうことなく、防曇性を付与することができる。
118℃±15℃の融点ピークを有する成分としては、後述の(b)高分子界面活性剤を好ましく用いることができ、より好ましくはアクリル系界面活性剤を用いることができる。
【0019】
本発明のコーティング組成物は、反射IRスペクトルが上述の強度比の吸収ピークを有していればよく、その構成成分は特に限定されないが、(a)低分子界面活性剤と、(b)高分子界面活性剤とを含むことが好ましい。(a)低分子界面活性剤を含むことで、熱融着性を有する高分子フィルム等の特性、特にヒートシール性能、易開封性、封緘性、透明性等、を損なうことなく、防曇性を付与することができ、(b)高分子界面活性剤を含むことで、熱融着性を有する高分子フィルム等の特性、特に低ブロッキング性、スリップ性、透明性等、を損なうことなく、防曇性を付与することができる。
【0020】
(a)低分子界面活性剤
本実施形態のコーティング組成物において用いられる(a)低分子界面活性剤には特に制限はなく、低分子であって界面活性作用を示す化合物を、(a)低分子界面活性剤として使用することができる。
ここで、「低分子」とは、分子量5,000以下であることを意味する。(a)低分子界面活性剤の分子量は、3,000以下であることが好ましく、1,500以下であることが特に好ましい。
(a)低分子界面活性剤は、アニオン系低分子界面活性剤、カチオン系低分子界面活性剤、非イオン系低分子界面活性剤のいずれであってもよい。
コーティング組成物の安定性、防曇性の観点からは、非イオン系低分子界面活性剤であることが好ましく、脂肪酸エステル系の低分子界面活性剤であることが特に好ましい。
【0021】
アニオン系低分子界面活性剤の好ましい例として、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、およびラウリル硫酸カリウム等のアルキル硫酸塩、リグニンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸等のアルキルアリールスルホン酸、およびその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、および等スルホコハク酸ジオクチルナトリウム等のスルホコハク酸塩、ラウリルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェ-ト、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルホスフェ-ト、ポリオキシエチレンスチレン化フェノールエーテルサルフェートなどを挙げることができる。
【0022】
カチオン系低分子界面活性剤の好ましい例として、例えば塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム等の、ハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化ラウリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化トリ(ポリオキシエチレン)ステアリルアンモニウム等のハロゲン化アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、塩化ステアリルペンタエトキシアンモニウム、並びにクロロ-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース等を挙げることができる。
【0023】
非イオン系低分子界面活性剤の好ましい例としては、ラウリン酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ミリスチン酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸ジエタノールアミド、およびポリオキシエチレンステアリン酸アミド等のアルキロールアマイド、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、ジオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル、モノカプリル酸デカグリセリン、モノステアリン酸グリセリン、モノカプリル酸ソルビタン、モノラウリル酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、ジステアリン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、モノラウリリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、およびトリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、およびテトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等のソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(ブロック体)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、およびエチレンジアミンテトラポリオキシエチレンポリオキシプロピレン等の、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、並びにポリオキシエチレンスチレン化フェノールエーテルポリマー、などが挙げることができる。
中でも、脂肪酸エステルが好ましく、多価アルコール脂肪酸エステルがより好ましく、グリセリン脂肪酸エステルが特に好ましい。より具体的には、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノラウレート、ジグリセリンモノステアレート、ジグリセリンモノラウレート、デカグリセリンオレート、デカグリセリンラウレート等を特に好適に使用することができる。
【0024】
(b)高分子界面活性剤
本実施形態において用いられる(b)高分子界面活性剤には特に制限はなく、高分子であって界面活性作用を示す化合物を、(b)高分子界面活性剤として使用することができる。
ここで、「高分子」とは、分子量5,000以上であることを意味する。(b)高分子界面活性剤の分子量は、10,000~1,000,000であることが好ましく、10,000~500,000であることが特に好ましい。
【0025】
(b)高分子界面活性剤は、水溶性であることが好ましい。(b)高分子界面活性剤の構造にも特に制限はないが、水に不溶性の高分子主鎖を有し、その側鎖に水溶性の基を有することで、高分子化合物全体として水溶性を示す構造を有することが望ましい。
(b)高分子界面活性剤は、アニオン高分子界面活性剤、カチオン高分子界面活性剤、非イオン高分子界面活性剤のいずれであってもよい。これらのいずれに該当するかは、通常、上記側鎖の基の種類、数、割合等に依存する。
(b)高分子界面活性剤は、天然系高分子界面活性剤、半合成系高分子界面活性剤、合成系高分子界面活性剤のいずれであってもよいが、構造、物性の制御や入手の容易さの観点から、合成系高分子界面活性剤であることが望ましい。
【0026】
アニオン高分子界面活性剤の好ましい例として、(メタ)アクリル酸や、マレイン酸等の(共)重合体、カルボキシメチルセルロース、カルボキシデンプン、(メタ)アクリル酸グラフトデンプン、アルギン酸ナトリウム、ペクチニン酸ナトリウム、キサンタンガム等を挙げることができる。
中でも、アクリル系高分子界面活性剤、すなわち(メタ)アクリル系単量体の(共)重合体が好ましく用いられる。
【0027】
(メタ)アクリル系単量体の(共)重合体において用いられる(メタ)アクリル系単量体の例としては、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、シリル基を有する(メタ)アクリル系単量体、イソシアナート基を有する(メタ)アクリル系単量体等が挙げられる。
【0028】
ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体としては、特に制限されないが、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(HEMA)、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのうち、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレートを用いることが好ましい。
【0029】
カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体としては、特に制限されないが、(メタ)アクリル酸、((メタ)アクリロイルオキシ)酢酸、(メタ)アクリル酸2-カルボキシエチル、(メタ)アクリル酸3-カルボキシプロピル、コハク酸1-[2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]、フタル酸1-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)、ヘキサヒドロフタル酸水素2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル、およびこれらのラクトン変性物等の不飽和モノカルボン酸;不飽和ジカルボン酸(マレイン酸等)、酸無水酸(無水コハク酸、無水マレイン酸等)と、水酸基含有多官能(メタ)アクリレート(ペンタエリスリトールトリアクリレート)とを反応させて得られるカルボキシ基含有多官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのうち、酸価の調整が容易である等の観点から、メタクリル酸、(アクリロイルオキシ)酢酸、アクリル酸2-カルボキシエチル、アクリル酸3-カルボキシプロピルを用いることが好ましく、メタクリル酸を用いることがより好ましい。
【0030】
(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、特に制限されないが、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、β-(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、N-モノアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、N,N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、2-アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレ
ート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等が例示できる。
【0031】
シリル基を有する(メタ)アクリル系単量体としては、特に制限されないが、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン等が例示できる。
【0032】
イソシアナート基を有する(メタ)アクリル系単量体としては、特に制限されないが、(メタ)アクリロイルイソシアナート、(メタ)アクリロイルイソシアナートエチルのフェノールまたはメチルエチルケトオキシム付加物等が例示できる。
【0033】
また、前記他の単量体としては、特に制限されないが、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、ニトリル基含有エチレン性不飽和単量体、芳香族環を有するビニル化合物、メチロールアミド基またはそのアルコキシ化物含有重合性単量体、シリル基含有重合性単量体、オキサゾリン基含有重合性単量体、アミド基含有重合性単量体、カルボニル基含有重合性単量体、その他の化合物等が例示できる。
他の単量体を使用する場合には、アクリル系高分子界面活性剤に占める他の単量体由来の構成単位の割合は、10~90モル%であることが好ましく、30~70モル%であることが特に好ましい。
【0034】
本発明に適用可能なアクリル系高分子界面活性剤のうち商業的に入手可能なものとしては、例えばデクスノール RS-811(日本乳化剤株式会社製)、BYK-3441(ビックケミー・ジャパン株式会社製)、BYK-350(ビックケミー・ジャパン株式会社製)、BYK-381(ビックケミー・ジャパン株式会社製)、エレカットC048(竹本油脂株式会社製)等を挙げることができる。
【0035】
アニオン高分子界面活性剤の他の好ましい例として、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、カチオンデンプン、キトサン等を挙げることができる。
【0036】
非イオン高分子界面活性剤の好ましい例として、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリアクリルアミド、アルキルフェノールホルムアルデヒド縮合物のエチレンオキシド付加物、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、コーンスターチ、各種デンプン等を挙げることができる。
【0037】
更に、好適な高分子界面活性剤のより具体的な例とし、以下を挙げることができる。
(1)ポリ4-ビニルピリジン型陽イオン界面活性剤
(2)リニア多糖類の陽イオン性誘導体とオレフィン単量体のグラフト共重合体
(3)カチオンモノマーとノニオンモノマーとの共重合物(例えばアルキルビニルピリジニウムとアルキルビニルアルコールのアルキレンオキシド付加物との共重合物)
(4)ポリ2-ヒドロキシ-3-メタクロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド
(5)ポリメタクリル酸ジメチルアミノエチル
(6)アクリル酸重合物のアルカリ金属、アミン、アンモニアとの塩
(7)無水マレイン酸とアクリル酸との共重合物およびこれらのアルカリ金属、アミン、アンモニアとの塩
(8)イタコン酸とアクリル酸との共重合物およびこれらのアルカリ金属、アミン、アンモニアとの塩
(9)スルホン化スチレン-無水マレイン酸共重合体のアルカリ金属塩
(10)ポリビニルスルホン酸のアルカリ金属塩
(11)ポリスチレンスルホン酸のアルカリ金属塩
(12)ポリメタクリロイルオキシプロピルスルホン酸
(13)ポリエポキシコハク酸のアルカリ金属塩
(14)ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物
(15)メラミン-スルホン酸ホルマリン縮合物
(16)アルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリル酸アルキルアクリルアミドもしくはアクリロニトリルとの共重合体
(17)脂肪酸デキストリン
(18)カルボキシメチルセルロース
(19)ポリビニルアルコール
(20)ポリオキシエチレン(以下、POEと略す)-ポリオキシプロピレン(以下、POPと略す)ブロックポリマー
(21)エチレンジアミン-POE・POPブロックポリマー
(22)POE-POPトリブロックポリマー
【0038】
溶剤
コーティング組成物は、必要に応じて、水や有機溶媒等の溶剤を含んでいてもよい。
前記溶剤としては、特に制限されないが、水、水溶性溶剤、非水溶性溶媒等を好ましく用いることができる。なお、ここで「水溶性溶剤」とは、1気圧、20℃において、溶剤と、同容量の純水とを穏やかに撹拌し、流動が収まった後に混合液が均一な外観を有するものを意味する。他方、「非水性溶剤」とは、1気圧、20℃において、溶剤と、同容量の純水とを穏やかに撹拌し、流動が収まった後に混合液が均一な外観を維持することができないものを意味する。
【0039】
前記水溶性溶剤としては、特に制限されないが、その好ましい例として、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル等のアルコール類;アセトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類等が挙げられる。
【0040】
前記非水溶性溶剤の好ましい例としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の芳香族類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類が挙げられる。
【0041】
これらの溶剤は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
溶剤の使用量にも特に制限はないが、上記実施態様においてコーティング組成物の全体を100質量部としたとき、(a)低分子界面活性剤及び(b)高分子界面活性剤の合計量が、0.1~15質量部となる様な量使用することが好ましく、0.1~5.0質量部となる様な量使用することが特に好ましい。
【0042】
それ以外の成分
コーティング組成物は、必要に応じて(a)低分子界面活性剤、(b)高分子界面活性剤、及び溶剤以外の添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、特に制限されないが、防曇補助剤、スリップ剤(ポリジメチルシロキサンを主体成分とするシリコーンエマルジョン液等)、帯電防止剤、酸化防止剤、抗菌剤、紫外線吸収剤等が例示できる。これらの添加剤は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
コーティング組成物の用途等
コーティング組成物の使用形態は特に制限されないが、熱融着性フィルム等のフィルム基材上に塗工してコーティング層を形成することが好ましい。
塗工方法は特に制限されないが、好ましい例としてスプレーコーター、ロールコーター、グラビアロールコーター、ナイフコーター、エアーナイフコーター、ローターダンプニング、アプリケーター方式等が挙げられる。
【0044】
コーティング層の形成にあたっては、塗工後に加熱、乾燥を行ってもよい。
乾燥温度についても、特に制限されないが、熱融着性を有する高分子フィルムに塗布する場合には、そのガラス転移温度(Tg)を超えない温度で乾燥させることが好ましい。
また、乾燥時間についても、特に制限されないが、0.01~10分であることが好ましく、0.05~3分であることがより好ましい。
【0045】
コーティング層の厚みには特に制限はないが、0.2~0.005μmであることが好ましく、0.1~0.005μmであることが特に好ましい。
また、コーティング層の塗工量(質量)によって特定する場合には、基材となるフィルム等の機能を阻害しない等の観点から、コーティング層の塗工量が、乾燥後で0.2g/m以下であることが好ましい。
一方、コーティングの効果を十分に実現する観点などから、コーティング層の塗工量が、乾燥後で0.005g/m以上であることが好ましい。
乾燥後のコーティング層の塗工量は、乾燥後で0.2~0.005g/mであることがより好ましく、0.1~0.005g/mであることが特に好ましい。
コーティング層の塗工量は、コーティング層形成前の熱融着性フィルムと形成後の熱融着性フィルムとの質量の差と、熱融着性フィルムの面積とから計算することができる。
【0046】
高分子フィルム
本発明のコーティング組成物を適用する基材には特に制限は無いが、熱融着性を有する高分子フィルム上に適用することが好ましい。このとき熱融着性を有する高分子フィルム(熱融着層)のブロッキング性やヒートシール性に悪影響を与えず、防曇性、ヒートシール強度(易開封性)、及び低ブロッキング性のバランスに優れたコーティング層を形成することができる。
本実施形態における熱融着性を有する高分子フィルムは、ポリエステル、エチレン系(共)重合体、及びプロピレン系(共)重合体の少なくとも一種を含有することが好ましく、ポリエチレンテレフタレート、エチレン系(共)重合体、プロピレン系(共)重合体の少なくとも一種を含有することが特に好ましい。
本発明のコーティング組成物はこれらのいずれを含有する熱融着性を有する高分子フィルムに適用された場合であっても、防曇性、ヒートシール強度(易開封性)、及び低ブロッキング性のバランスに優れたコーティング層を形成することができる。
【0047】
ポリエステル
本実施形態における高分子フィルムが含有するポリエステルは、優れた熱融着性を実現する観点から、非晶性(非晶質)あるいは低結晶性であることが望ましい。ポリエステルとしては、二塩基酸成分として、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバンシン酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-フェニレンジオキシジ酢酸、およびこれらの構造異性体、マロン酸、コハク酸、アジピン酸等のジカルボン酸またはその誘導体、p-ヒドロキシ安息香酸、p-ヒドロキシ安息香酸エステル類、グリコール酸などのオキシ酸またはその誘導体から選択される成分と、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ペンタメチレングリコールなどの脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノールのような脂環式グリコールやさらにはビスフェノールA、ビスフェノールSなどの芳香族ジヒドロキシ化合物誘導体から選択される成分とから、それぞれ1つ又は複数を選択し組み合わせて、二塩基酸成分とグリコール成分とのエステル交換反応またはエステル化反応を行い、次いで溶融重縮合反応により得られるものを、使用することができる。
【0048】
また、ポリエステルとしては、乳酸系重合体も使用でき、特に限定されないが、ポリ(D-乳酸)と、ポリ(L-乳酸)と、D-乳酸とL-乳酸との共重合体と、D-乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体あるいはL-乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体、あるいはこれらのブレンド物、また、ジカルボン酸およびジオールをエステル反応させて得られたポリエステル成分を乳酸成分と共重合させたものが挙げられる。なかでも、主たる構造単位がL-乳酸であるポリ乳酸が成膜安定性の点から特に好ましい。
【0049】
上記ヒドロキシカルボン酸、ジオールおよびジカルボン酸としては、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシカプロン酸類、カプロラクトン、ブチロラクトン、ラクチド、グリコリド等の環状ラクトン類などのヒドロキシカルボン酸;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどの脂肪族ジオール;テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸等を例示することができる。
【0050】
本実施形態で用いるポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレートが好ましく、二塩基酸成分とグリコール成分の組み合わせでガラス転移温度Tgが約-20~90℃、好ましくは-15℃~85℃の非晶性共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂が特に適している。
【0051】
エチレン系(共)重合体
本実施形態における高分子フィルムは、熱融着層にエチレン系(共)重合体を含有することが好ましく、より好ましくは熱融着層の質量を基準として1から99質量%含有する。
エチレン系(共)重合体の含有量が10質量%以上であることで、熱融着性が発現されることとなり、上記本実施形態の効果を実現することに寄与する。エチレン系(共)重合体の含有量は、18質量%以上であることが更に好ましく、47質量%以上であることが特に好ましい。
エチレン系(共)重合体の含有量が90質量%以下であることで、易開封性の発現をするとなり、上記本実施形態の効果を実現することに寄与する。エチレン系(共)重合体の含有量は、85質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることが特に好ましい。
【0052】
エチレン系(共)重合体の種類には特に制限は無く、エチレンの単独重合体、及びエチレンとエチレン以外の単量体との共重合体のいずれであってもよい。エチレンとエチレン以外の単量体との共重合体である場合においては、エチレン由来の構成単位の割合は50モル%超となる。エチレン由来の構成単位の割合が50モル%超であることで、エチレン系(共)重合体は、後述のプロピレン系系(共)重合体等から区別される。エチレン由来の構成単位の割合は、55モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることが特に好ましい。
【0053】
エチレン系(共)重合体は、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
高分子フィルムの熱融着性等を制御する観点からは、2種類以上を組み合わせて使用することが好ましく、後述の密度が900kg/m以上960kg/m以下のエチレン系重合体と、密度が900kg/m未満のエチレン・α-オレフィン共重合体とを使用することが好ましく、これらを後述のプロピレン系(共)重合体、粘着性付与樹脂等と組み合わせて使用することが特に好ましい。
【0054】
密度が900kg/m 以上960kg/m 以下のエチレン系(共)重合体(i)
本実施形態における高分子フィルムは、密度が900kg/m以上960kg/m以下のエチレン系(共)重合体(以下、エチレン系(共)重合体(i)ともいう。)を含有することが好ましく、1から50質量%含有することがより好ましい。
エチレン系(共)重合体(i)を、好ましくは1質量%以上、含有することは、熱融着性、易開封性、封緘性等の観点から好ましい。
エチレン系(共)重合体(i)の含有量が50質量%以下であることで耐衝撃性が向上し、上記本実施形態の効果を実現することに寄与する。エチレン系(共)重合体(i)の含有量は、45質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることが特に好ましい。
【0055】
エチレン系(共)重合体(i)は、エチレンに由来する構成単位の割合が50モル%以上であり、したがってプロピレン由来の構成単位の割合が50モル%未満であるので、この点においてプロピレン系重合体から区別される。また、密度が900kg/m以上であることにおいて、後述の密度が900kg/m未満のエチレン・α-オレフィン共重合体(ii)から区別される。
【0056】
エチレン系(共)重合体(i)は、密度が900~960kg/m、好ましくは905~930kg/m、更に好ましくは908~920kg/mの範囲にある。
エチレン系(共)重合体(i)の密度は、30分間沸水処理した試料を用いて、JIS K 7112のD法(密度勾配管法)により測定することができる。
エチレン系(共)重合体(i)の密度は、従来公知の方法により調整することが可能であり、例えばエチレン以外の共重合成分の量を増やすことや、或いは高圧法などにより分岐の量を増やすことなどで、密度を低下させることができる。
【0057】
エチレン系(共)重合体(i)は、エチレンの単独重合体であってもよく、エチレンと炭素数が3~10のα-オレフィンをはじめとする他の共重合成分との共重合体であってもよい。
他の共重合成分としては、上述の様に、例えばプロピレン、1-ブテン、1-ヘプテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン等の、炭素数が3~10のα-オレフィンを用いることが好ましいが、これらには限定されず、ジエン等のポリエン、極性モノマー等の他の共重合成分を使用することもできる。エチレン系(共)重合体(i)が共重合体である場合には、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよいが、ランダム共重合体であることが好ましい。
他の共重合成分由来の構成単位は50モル%未満であればよいが、通常30モル%以下であり、20モル%以下であることが特に好ましい。
【0058】
ポリマーの分類としては、エチレン系(共)重合体(i)の好適な例として、高圧法低密度ポリエチレン(HP-LDPE)、直鎖状あるいは線状低密度ポリエチレン(L-LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)と呼ばれているエチレンの単独重合体若しくはエチレン・α-オレフィン共重合体等を挙げることができる。これらの好適なポリマーの詳細は、900kg/m以上960kg/m以下という条件を満たす限りにおいて、従来本技術分野において知られているものと同様である。
【0059】
密度が900kg/m以上960kg/m以下のエチレン系(共)重合体(i)は、一種類のみを使用してもよく、2種以上の混合物を使用してもよい。
【0060】
密度が900kg/m以上960kg/m以下のエチレン系(共)重合体(i)のメルトフローレート(MFR)(ASTM D1238、190℃、2160g荷重)は、単独で、又は他の成分と混合した際に、フィルム形成能がある限り特に限定はされないが、通常、0.01~100g/10分、好ましくは0.1~70g/10分の範囲にある。
エチレン系(共)重合体(i)メルトフローレートは、従来当該技術分野において慣用される方法で調整することができ、例えば分子量を小さくすることや、分子量分布を大きくすることで、メルトフローレートを大きくすることができる。
【0061】
エチレン系(共)重合体(i)のゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定した分子量分布(M/M)は、通常1.5~4.0、好ましくは1.8~3.5の範囲にある。エチレン系(共)重合体(i)はまた、示差走査熱量計(DSC)の昇温速度10°C/分で測定した吸熱曲線から求めた鋭い吸熱ピークが1個ないし複数個あることが好ましく、該ピークの最高温度、すなわち融点が通常50~130℃好ましくは60~120℃の範囲にある。
【0062】
上記のようなエチレン系(共)重合体(i)は、チーグラー型触媒を代表例とするマルチサイト触媒、メタロセン触媒を代表例とするシングルサイト触媒を用いた従来公知の製造法により調製することができる。たとえば、エチレン系(共)重合体(i)として好ましく用いられる線状低密度ポリエチレン(LLDPE)は、遷移金属のメタロセン化合物を含む触媒を用いて調製することができる。このメタ口セン化合物を含む触媒は、(a)遷移金属のメタ口セン化合物と、(b)有機アルミニウムオキシ化合物と、(c)担体とから形成されることが好ましく、さらに必要に応じて、これらの成分と(d)有機アルミニウム化合物および/または有機ホウ素化合物とから形成されていてもよい。なお、このようなメタロセン化合物を含むオレフィン重合用触媒、および触媒を用いた線状低密度ポリエチレン(LLDPE)の調製方法は、たとえば特開平8-269270号公報に記載されている。
【0063】
密度が900kg/m 未満のエチレン・α-オレフィン共重合体(ii)
本実施形態における高分子フィルムは、密度が900kg/m以上960kg/m以下のエチレン系(共)重合体(i)と共に又はそれに代えて、密度が900kg/m未満のエチレン・α-オレフィン共重合体(以下、エチレン・α―オレフィン共重合体(ii)ともいう。)を含有することが好ましい。
【0064】
エチレン・α-オレフィン共重合体(ii)は、エチレンに由来する構成単位の割合が50モル%以上であり、したがってプロピレン由来の構成単位の割合が50モル%未満であるので、この点においてプロピレン系(共)重合体から区別される。また、密度が900kg/m未満であることにおいて、密度が900kg/m以上のエチレン系(共)重合体(i)から区別される。
密度が900kg/m未満のエチレン・α―オレフィン共重合体(ii)は、ランダム共重合体であることが好ましい。
【0065】
エチレン・α―オレフィン共重合体(ii)は、1種類の共重合体のみを使用してもよく、2種類の共重合体の組み合わせであってもよい。
後者の好適な例として、密度が860~895kg/mの範囲にあり、α―オレフィンが炭素数4~10である少なくとも1種類であるエチレン・α-オレフィンランダム共重合体(ii-1)及び密度が865~875kg/mの範囲にあるエチレン・プロピレンランダム共重合体(ii-2)から構成される樹脂組成物を挙げることができる。
さらに、好ましくは、エチレン・α―オレフィンランダム共重合体(ii-1)10~90質量部、特に好ましくは30~90質量部、及びエチレン・プロピレンランダム共重合体(ii-2)90~10質量部、特に好ましくは70~10質量部(但し、(ii-1)+(ii-2)=100質量部とする。)から構成される樹脂組成物を用いることができる。
【0066】
なお、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(ii-1)としては、下記の[ii-1a]から[ii-1c]の物性のうち少なくとも1個以上有するポリマーであることが望ましい。
[ii-1a]エチレン含有量が85~93モル%である
[ii-1b]X線による結晶化度が7~30%である
[ii-1c]示差走査熱量計(DSC)による昇温速度10℃/分での吸熱曲線から求めた融点が60~90℃の範囲にある
【0067】
すなわち、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(ii-1)として、[ii-1a]、[ii-1b]、または[ii-1c]の物性を有するエチレン・α-オレフィンランダム共重合体が好ましく、さらに[ii-1a]と[ii-1b]の物性、[ii-1a]と[ii-1c]の物性、または[ii-1b]と[ii-1c]の物性を有するエチレン・α-オレフィンランダム共重合体がより好ましく、さらに[ii-1a]、[ii-1b]、及び[ii-1c]の物性を有するエチレン・α-オレフィンランダム共重合体が特に好ましい。
【0068】
また、エチレン・プロピレンランダム共重合体(ii-2)としては、同様に下記の[ii-2a]、[ii-2b]の物性の少なくともいずれかを有するポリマーが望ましい。
[ii-2a]エチレン含有量が75~85モル%である
[ii-2b]X線による結晶化度が5%未満の範囲にある非晶性若しくは僅かに結晶性を有する
すなわち、エチレン・プロピレンランダム共重合体(ii-2)として、[ii-2a]、または[ii-2b]の物性を有するエチレン・プロピレンランダム共重合体が好ましく、さらに[ii-2a]と[ii-2b]の物性を有するエチレン・プロピレンランダム共重合体が特に好ましい。
【0069】
これらの共重合体の中から、エチレン・α-オレフィン共重合体(ii)として、得られる熱融着性フィルムの熱融着特性等を考慮すると、エチレン含有量が85~93モル%、X線による結晶化度が7~30%及び示差走査熱量計(DSC)による昇温速度10℃/分での吸熱曲線から求めた融点が60~90℃の範囲にある低結晶性のエチレン・α-オレフィンランダム共重合体(ii-1)及び、エチレン含有量が75~85モル%、X線による結晶化度が5%未満の範囲にある非晶性若しくは僅かに結晶性を有するエチレン・プロピレンランダム共重合体(ii-2)からなる組成物(混合物)を、特に好適に使用することができる。
【0070】
本実施形態中の高分子フィルムに用いることができる密度が900kg/m未満のエチレン・α-オレフィン共重合体(ii)としては、単独で、又は他の成分と混合してオレフィン系重合体組成物にした際に、フィルム形成能がある限り、メルトフローレート(MFR)(ASTMD1238、190℃、2160g荷重)は、特に限定はされないが、当該オレフィン系重合体組成物の加工性、耐油性等を考慮すると、メルトフローレート(MFR)(ASTMD1238、190℃、2160g荷重)が、好ましくは0.01~20g/10分、更に好ましくは0.1~10g/10分の範囲のものが好適である。
本実施形態中の高分子フィルムに用いることができる密度が900kg/m未満のエチレン・α-オレフィン共重合体(ii)は、例えば遷移金属化合物触媒成分、例えばバナジウム化合物やジルコニウム化合物と、有機アルミニウム化合物触媒成分とからなる触媒を用いて、エチレンとα-オレフィン等とを共重合することによって得ることができる。
【0071】
プロピレン系(共)重合体
本実施形態における高分子フィルムは、熱融着層にプロピレン系(共)重合体を含有することが好ましく、より好ましくは熱融着層の全質量に対して10から70質量%含有する。
プロピレン系(共)重合体の含有量が10質量%以上であることで、熱融着性、剛性を有することとなり、上記本実施形態の効果を実現することに寄与する。プロピレン系(共)重合体の含有量は、30質量%以上であることが更に好ましく、35質量%以上であることが特に好ましい。
プロピレン系(共)重合体の含有量が70質量%以下であることで、易開封性を有することとなり、上記本実施形態の効果を実現することに寄与する。プロピレン系(共)重合体の含有量は、65質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることが特に好ましい。
【0072】
プロピレン系(共)重合体は、一般にポリプロピレンの名称で製造・販売されている樹脂で、通常、密度が890~930kg/m程度のプロピレンの単独重合体若しくは、プロピレン共重合体、すなわち、プロピレンと共に、他の少量のα-オレフィン等から選ばれる少なくとも1種以上のコモノマーからなる共重合体である。
共重合体においては、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよいが、ランダム共重合体であることが特に好ましい。このプロピレンの共重合体における他のα-オレフィンとしては、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、4-メチル-1-ペンテンなどの、エチレンと炭素原子数が4~20程度のα-オレフィンを例示することができる。このような他のα-オレフィンは、1種単独で又は2種以上のα-オレフィンを組み合わせて共重合させてもよい。また、α-オレフィン以外のコモノマーの存在を排除するものではない。
【0073】
プロピレン系(共)重合体は、プロピレン由来の構成単位の割合が50モル%以上であることによって、エチレン系(共)重合体等から区別される。プロピレン由来の構成単位の割合は、60モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることが特に好ましい。
プロピレン由来の構成単位の割合が50モル%以上であるため、コモノマー由来の構成単位の割合は50モル%未満となる。通常のポリプロピレンにおいては、コモノマー由来の構成単位の割合は25モル%以下となる場合が多い。ランダム共重合体の場合には、10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることが特に好ましい。ブロック共重合体の場合には、20モル%以下であることが好ましく、15モル%以下であることが特に好ましい。
【0074】
これらプロピレン系(共)重合体の中でも、得られる熱融着性フィルムの熱融着性と耐熱性のバランス等から、示差走査熱量計(DSC)に基づく融点が110~145℃、特に115~140℃の範囲にあるプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体が好ましい。
【0075】
プロピレン系(共)重合体は、単独で、又は高分子フィルムを構成する他の成分、例えばエチレン(共)系重合体、粘着性付与樹脂等、と混合された状態で、フィルム形成能を有する限り、そのメルトフローレート(MFR)(ASTM D1238、230℃、2160g荷重)は特に限定はされないが、押出加工性の点から、通常、0.01~100g/10分、好ましくは0.1~70g/10分の範囲にある。
【0076】
高分子フィルムにおいては、プロピレン系(共)重合体として、2種以上のプロピレン系(共)重合体を組合せて使用することもできる。
【0077】
プロピレン系(共)重合体は、種々公知の製造方法、具体的には、例えば、チーグラー・ナッタ系触媒やシングルサイト触媒のようなオレフィン重合用触媒を用いて製造することができる。特にはシングルサイト触媒を用いて製造することができる。シングルサイト触媒は、活性点が均一(シングルサイト)である触媒であり、例えばメタロセン触媒(いわゆるカミンスキー触媒)やブルックハート触媒などがあげられる。メタロセン触媒は、メタロセン系遷移金属化合物と、有機アルミニウム化合物及び上記メタロセン系遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物とからなる触媒であり、無機物に担持されていてもよい。
【0078】
粘着性付与樹脂
本実施形態の高分子フィルムにおいて用いることができる粘着性付与樹脂は、粘着性付与剤として製造・販売されている公知の樹脂であり、具体的には、脂肪族系炭化水素樹脂、脂環族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、ポリテルペン系樹脂、ロジン類、スチレン系樹脂、クマロン・インデン樹脂などを挙げることができる。
【0079】
脂肪族系炭化水素樹脂の例としては、1-ブテン、イソブテン、ブタジエン、1,3-ペンタジエン、イソプレンなど炭素数4~5のモノ又はジオレフィンの少なくとも1種以上を含む留分を重合して得られる樹脂を挙げることができる。
脂環族系炭化水素樹脂の例として、スペントC4~C5留分中のジエン成分を環化二量化後重合させて得られる樹脂、シクロペンタジエンなどの環状モノマーを重合させた樹脂、芳香族系炭化水素樹脂を核内水添した樹脂などを挙げることができる。
芳香族系炭化水素樹脂の例として、ビニルトルエン、インデン、α-メチルスチレンなどのC8~C10のビニル芳香族炭化水素を少なくとも一種以上含有する留分を重合して得られる樹脂、あるいはこれら留分と上記脂肪族炭化水素留分を共重合して得られる樹脂などを挙げることができる。
【0080】
ポリテルペン系樹脂の例としては、α-ピネン重合体、β-ピネン重合体、ジペンテン重合体、テルペン・フェノール共重合体、α-ピネン・フェノール共重合体、これらの水素添加物などを挙げることができる。
ロジン類としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油などのロジン及びその変性物などであり、変性物としては水素添加、不均化、二量化、エステル化などの変性を施したものを例示することができる。
スチレン系炭化水素樹脂としては、純度の高いスチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、イソプロピルトルエンなどのスチレン系単量体の1種又は2種以上を重合して得られる分子量の低い樹脂状重合体を挙げることができる。
【0081】
本実施形態の熱融着性を有する高分子フィルム飲食品包装用の易開封性材料として使用する場合には、無臭性、食品衛生性、他成分との混和性などを考慮すると、芳香族系炭化水素樹脂を核内水添した樹脂あるいはポリテルペン系樹脂を、粘着性付与樹脂として使用することが好ましい。
【0082】
本実施形態の熱融着性を有する高分子フィルムを構成する樹脂の配合には特に限定はないが、上述の密度が900kg/m未満のエチレン・α-オレフィン共重合体(ii)及び/又は粘着性付与樹脂(d)を合計で1から50質量%含有することが好ましい。このとき、エチレン・α-オレフィン共重合体(ii)及び/又は粘着性付与樹脂の含有量が合計で1から50質量%である限りにおいて、エチレン・α-オレフィン共重合体(ii)のみを含有していてもよく、粘着性付与樹脂のみを含有していてもよく、またエチレン・α-オレフィン共重合体(ii)及び粘着性付与樹脂の両方を含有していてもよい。
【0083】
エチレン・α-オレフィン共重合体(ii)及び/又は粘着性付与樹脂の含有量が合計で1質量%以上であることにより、熱融着性、易開封性を有し、上記本実施形態の効果を実現することに寄与する。エチレン・α-オレフィン共重合体(ii)及び/又は粘着性付与樹脂の含有量は合計で5質量%以上であることが更に好ましく、10質量%以上であることが特に好ましい。
エチレン・α-オレフィン共重合体(ii)及び/又は粘着性付与樹脂の含有量が合計で99質量%以下であることにより、熱融着性、易開封性、耐衝撃性を有し、上記本実施形態の効果を実現することに寄与する。エチレン・α-オレフィン共重合体(ii)及び/又は粘着性付与樹脂の含有量は合計で95質量%以下であることが更に好ましく、90質量%以下であることが特に好ましい。
【0084】
本実施形態の熱融着性フィルムは、本発明の目的に反しない限りにおいて、上記ポリエステル、エチレン系(共)重合体、及びプロピレン系(共)重合体以外の、各種添加材、充填材、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤、核剤、難燃剤、顔料、染料、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、マイカ、タルク、クレー、抗菌剤、防曇剤等を添加することができる。さらにまた、その他の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴム類等を本発明の目的に反しない範囲で配合してもよい。
【0085】
易開封性フィルム
本実施形態の熱融着性フィルムは、上述の熱融着性を有する高分子フィルム表面にコーティング層が形成されたものであり、それ単独で熱融着性フィルムとして使用することができるが、本実施形態の熱融着性フィルムを熱融着層として使用し、他の層と組み合わせた積層フィルムとして使用してもよい。
本実施形態の熱融着性フィルムを熱融着層(A)として使用し、これを中間層(B)、及びラミネート層(C)と積層して形成した積層フィルムは、易開封性フィルム等として好ましく使用することができる。すなわち、本実施形態の熱融着性フィルムからなる熱融着層(A)、中間層(B)、及びラミネート層(C)が、この順に積層されてなる、易開封性フィルムは、本発明の特に好ましい実施形態の一つである。
熱融着層(A)
本実施形態の易開封性フィルムを構成する熱融着層(A)は、熱融着性の高分子フィルム表面にコーティング層が形成された、上記実施形態の熱融着性フィルムからなる。従って、熱融着層(A)の詳細は、上記実施形態の熱融着性フィルムに関して上記で説明したものと同様であり、また熱融着層(A)を構成する高分子フィルム、及びコーティング層の詳細も、上記実施形態に関して上記で説明したものと同様である。
【0086】
熱融着層(A)は、本実施形態の易開封性フィルムを、例えば本発明の熱融着性のフィルムを食品等の包装容器の蓋材等として使用する場合に、包装容器本体側に配置して、包装容器本体と融着することができる。熱融着層(A)は、上記実施形態の熱融着性フィルムを用いることで、防曇性、易開封性、低ブロッキング性等に優れるので、この様な使用形態において好適に用いることができる。
【0087】
熱融着層(A)の厚みには特に制限はないが、密封性等の観点から、1.5μm以上であることが好ましく、2μm以上であることが特に好ましい。
一方、易開封性等の観点からは、15μm以下であることが好ましく、10μm以下であることが特に好ましい。
【0088】
中間層(B)
本実施形態の易開封性フィルムを構成する中間層(B)の成分には特に制限はないが、易開封性フィルムの強度、透明性、軽量性等の観点から、ポリオレフィンを含有することが好ましく、エチレン(系)共重合体、又はプロピレン系(共)重合体を含有することが特に好ましい。
エチレン(系)共重合体、プロピレン系(共)重合体の詳細は、上記実施形態の熱融着性フィルムを構成する高分子フィルムに関して上記にて説明したものと同様である。
また、熱融着層(A)やラミネート層(C)との密着性等の観点から、酸変性ポリオレフィン系樹脂を含んでいてもよく、より好ましくは、酸変性ポリエチレン系樹脂を含んでいてもよい。
【0089】
中間層(B)においては、エチレン系(共)重合体も好ましく用いることができ、その好ましい例として、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状中密度ポリエチレン(LMDPE),中密度ポリエチレン(MDPE)等のポリエチレン樹脂や、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等が挙げられ、単独でも、2種以上を混合して使用しても良い。これらの中でも成膜性等が良好なことからLLDPEが好ましい。
酸変性ポリオレフィンの好ましい例としては、ポリオレフィンを不飽和カルボン酸又はその誘導体と共重合(例えば、グラフト共重合)した変性重合体を挙げることができる。その際のポリオレフィンとしては、オレフィン類の単独重合体、(オレフィン類同士の)相互共重合体、他の共重合可能なモノマー(例えば、他のビニル系モノマー)との共重合体を例示できる。具体的には、例えば、ポリエチレン(LDPE、LLDPEなど)、ポリプロピレン、ポリブテン、これらの相互共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等を例示できる。不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、例えば、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸、その酸無水物、そのエステル又はその金属塩等が例示できる。これらのなかでも、マレイン酸変性ポリオレフィンを用いることが好ましい。
中間層(B)に使用可能な添加剤等は、熱融着層(A)において用いられる高分子フィルムに関連して上記で説明したものと同様である。
【0090】
本実施形態の易開封性フィルムを構成する各層のうち、熱融着層(A)は適切なシール特性等が得られるよう設計することが好ましく、ラミネート層(C)は基材フィルム等との間のラミネート強度等を考慮して設計することが好ましいのに対して、中間層(B)は、熱融着層(A)とラミネート層(C)との密着性が得られる設定とすることが好ましい。
【0091】
中間層(B)の厚みは、2μm以上であることが好ましく、3μm以上であることが特に好ましい。
一方、(B)中間層の厚みは、45μm以下であることが好ましく、43μm以下であることが特に好ましい。
【0092】
ラミネート層(C)
本実施形態の易開封性フィルムを構成するラミネート層(C)は、必要又は所望に応じて、後述の基材フィルムをはじめとする他の層と積層することができる。
従って、ラミネート層(C)は、基材フィルムをはじめとする他の層との間のラミネート強度等を考慮して設計することが好ましい。例えば、基材フィルムをはじめとする他の層と同種の材料を使用することが好ましく、したがって基材フィルムに好ましく用いられる、ポリオレフィン系の材料を用いることが好ましい。また、基材等の種類によっては、PET等のポリエステル系の材料やナイロン等のポリアミド系の材料を使用することができる。
また、基材等との間のラミネート強度を更に向上するため、(C)ラミネート層の表面((B)中間層と積層する面とは反対側の面)に、コロナ処理、粗面化処理等の処理を行ってもよい。
【0093】
一方で、(B)中間層との積層強度を向上する観点からは、(B)中間層と同種の材料、より具体的にはポリオレフィン、より好ましくはエチレン系重合体を使用することも好ましい。
ラミネート層(C)に使用可能な添加剤等は、熱融着層(A)において用いられる高分子フィルムに関連して上記で説明したものと同様である。
【0094】
中間層(B)がエチレン系重合体を含有する場合には、中間層(B)との積層強度の観点からラミネート層(C)もエチレン系重合体を含有することが好ましい。直鎖状低密度ポリエチレンを含有することが特に好ましい。
このときの含有量には特に制限は無いが、(C)ラミネート層におけるエチレン系重合体の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、60~99.9質量%であることがより好ましく、80~99.9質量%であることが特に好ましい。
【0095】
本実施形態の易開封性フィルムを保管等する際のブロッキング防止の観点からは、ラミネート(C)層は、ブロキング防止剤を含んでいてもよい。
ブロッキング防止剤としては、粉末状のシリカ、好ましくは合成シリカ、等を好適に使用することができる。粉末状のシリカをラミネート層(C)中に均一に分散させる観点からは、粉末状のシリカを、ラミネート層(C)を構成する材料との混和性に優れた樹脂中、例えば低密度ポリエチレン中に分散してマスターバッチを形成し、次いでマスターバッチをラミネート層(C)を構成する材料中に添加してもよい。
【0096】
(C)ラミネート層の厚みには特に制限はないが、ラミネート強度等の観点から、1.5μm以上であることが好ましく、2μm以上であることが特に好ましい。
(C)ラミネート層の厚みは、20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることが特に好ましい。
【0097】
本実施形態の易開封性フィルムは、上述の様に、熱融着層(A)、中間層(B)、及びラミネート層(C)を有する。本実施形態の積層フィルムにおいては、好ましくは中間層(B)を介して、ラミネート層(C)と熱融着層(A)とが積層されるが、それ以外の層が存在していてもよく、例えば熱融着層(A)と中間層(B)との間に接着層が介在していてもよい。
【0098】
本実施形態の易開封性フィルムは、種々公知のフィルム成形方法、例えば、予めラミネート層(C)、中間層(B)、及び熱融着層(A)となるフィルムをそれぞれ成形した後、熱融着層(A)上にコーティング層を形成し、これらのフィルムを貼り合せて積層フィルムとする方法、多層ダイを用いて中間層(B)及び熱融着層(A)からなる複層フィルムを得た後、当該中間層(B)面に、ラミネート層(C)を押出して積層フィルムとし、その後熱融着層(A)上にコーティング層を形成する方法、多層ダイを用いてラミネート層(C)及び中間層(B)からなる複層フィルムを得た後、当該中間層(B)面に、熱融着層(A)を押出して積層フィルムとし、その後熱融着層(A)上にコーティング層を形成する方法、あるいは、多層ダイを用いてラミネート層(C)、中間層(B)及び熱融着層(A)からなる積層フィルムを得、その後熱融着層(A)上にコーティング層を形成する方法などを採用することができる。
【0099】
また、フィルム成形方法は、種々公知のフィルム成形方法、具体的には、T-ダイキャストフィルム成形方法、インフレーションフィルム成形方法等を採用し得る。
実施形態の易開封性フィルム及びそれを構成する各層は、延伸されていないフィルム(無延伸フィルム)であっても、延伸フィルムであってもよい。
【0100】
本実施形態の易開封性フィルムの厚さには特に限定はされないが、実用的な強度を確保する等の観点から、通常10μm以上であり、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上である。一方、例えば基材フィルム等と積層された後においても実用的な可撓性を有する等の観点からは、通常100μm以下であり、好ましくは80μm以下、より好ましくは70μm以下である。
【0101】
本実施形態の易開封性フィルムは延伸フィルムであっても無延伸フィルムであってもよいが、機械的物性の向上の観点からは、延伸フィルムであることが好ましく、二軸延伸フィルムであることが特に好ましい。
二軸延伸は、逐次二軸延伸、同時二軸延伸、多段延伸等の方法が適宜採用される。
二軸延伸の条件としては、公知の二軸延伸フィルムの製造条件、例えば、逐次二軸延伸法では、縦延伸温度を100℃~145℃、延伸倍率を4~7倍の範囲、横延伸温度を150~190℃、延伸倍率を8~11倍の範囲とすることが挙げられる。
【0102】
基材フィルム
所望に応じて、本実施形態の易開封性フィルムを、好ましくはそのラミネート層(C)において、基材フィルムと積層することができる。
【0103】
基材フィルムには特に制限はなく、例えば通常プラスチック包装に使用されるフィルムを、好適に使用することができる。
好ましい基材フィルムの材質としては、例えば、結晶性ポリプロピレン、結晶性プロピレン-エチレン共重合体、結晶性ポリブテン-1、結晶性ポリ4-メチルペンテン-1、低-、中-、或いは高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)等のポリオレフィン類;ポリスチレン、スチレン-ブタジエン共重合体等の芳香族ビニル共重合体;ポリ塩化ビニル、塩化ビニリデン樹脂等のハロゲン化ビニル重合体;アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合体の如きニトリル重合体;ナイロン6、ナイロン66、パラまたはメタキシリレンアジパミドの如きポリアミド類;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリテトラメチレンテレフタレート等のポリエステル類;各種ポリカーボネート;ポリオキシメチレン等のポリアセタール類等の熱可塑性樹脂から構成されたプラスチックフィルムを挙げることができる。また、包装する内容物が酸素に敏感なものの場合には、上記フィルムに金属酸化物等を蒸着したフィルム、或いは有機化合物を被覆したフィルムや、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂からなる層を設けてもよい。
これらの材料からなるプラスチックフィルムは、未延伸、一軸延伸、或いは二軸延伸して用いられる。
【0104】
基材フィルムとして、これらのプラスチックフィルムを単層で、或いは、二種以上を積層したものとして使用することができ、また、これらのプラスチックフィルムの一種、或いは、二種以上と、アルミニウム等の金属箔、紙、セロファン等を貼合わせて構成することもできる。
好ましい基材フィルムとして、例えば、延伸ナイロンフィルム、延伸ポリエステルフイルムからなる単層フィルム、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンフィルムとPETを積層した二層構成のフィルム、PET/ナイロン/ポリエチレンを積層した三層構成のフィルム等が挙げられる。これらの積層フィルムの製造に際しては、各層間に必要に応じて接着剤、アンカー剤を介在させることもできる。また、デザインを表現するインキ層を設けてもよい。
【0105】
基材層をラミネート層(C)等に積層する方法には特に制限はないが、例えば押出しラミネート等によりラミネート層(C)に基材フィルムを直接積層することができる。また、ドライラミネート等により接着剤を介してラミネート層(C)に基材フィルムを積層してもよい。接着剤としては、ウレタン系接着剤、酸変性ポリオレフィン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリエーテル系接着剤、ポリアミド系接着剤等、通常のものを使用することができる。
基材フィルムの厚さは任意に設定することができるが、通常は、7~500μm、好ましくは7~50μmの範囲から選択することができる。
【0106】
本実施形態の易開封性フィルムのラミネート層(C)に基材フィルムを積層した積層フィルムは、各種用途において好ましく使用され、特に易開封性フィルム等の包材として使用するのに適している。
その様な包材の好ましい例として、蓋材を挙げることができる。すなわち、本実施形態の易開封性フィルムのラミネート層(C)に基材フィルムを積層した積層フィルムは、その易開封性等を活かして、熱融着層(A)を容器側の最内層として用いる容器用の蓋材として用いることができる。
容器蓋材として用いる場合は、本発明の熱融着性フィルムをそのまま蓋材として用いても良いし、印刷して用いても良い。更に印刷されたあるいはされていない基材フィルムと貼り合せて蓋材にしても良い。又、用途によっては予め容器形状に合わせてカットして蓋材にしても良い。容器蓋材とする場合には、基材フィルムと貼り合せて使用するのが好ましい。
上記易開封性フィルムを有する蓋材と容器とを組み合わせることで、易開封性包装を構成することができる。
【0107】
実施形態の易開封性フィルムは、熱融着層(A)において各種被着体に熱融着させることにより熱シール層を形成させることができる。このような被着体としてプロピレン系重合体、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等を例示することができる。これら被着体は、フィルム、シート、トレー、カップ、ボトル等、種々の形状のものであることができる。この中では特にポリエステルを被着体とすると、熱シール層の密封性、易開封性、耐熱性、耐油性などに優れており好ましい。
【0108】
包装容器への収納物には特に制限はないが、食品、医薬品、医療器具、日用品、雑貨等の包装に好ましく用いることができる。本発明の熱融着性フィルムの優れた視認性、防曇性、ヒートシール強度(易開封性)、及び低ブロッキング性を活かして、総菜、サラダ、果物等の包装容器として、特に好適に用いられる。
【実施例
【0109】
以下、実施例/比較例を参照しながら、本発明を具体的に説明する。なお、本発明はいかなる意味においても、以下の実施例によって限定されるものではない。
【0110】
実施例/比較例における物性、特性の評価は、以下の方法により行った。
(反射IRスペクトル)
厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、コーティング組成物を塗布し、80℃で20秒間加熱乾燥し、乾燥後で厚み約2μmのコーティングが形成されたサンプルを作製した。コーティングが形成された面について、日本分光株式会社製IRT-5200装置を用いて、下記の条件にて反射IRスペクトルを測定した。
測定セル:Ge
入射角:45°
分解能:4cm-1
積算回数:100回
【0111】
(融点ピーク)
コーティング組成物について、通常のDSCによる融点の測定方法に従って、第2回昇温における吸熱ピーク測定した。下記に装置と測定条件を示す。
装置:SII社(セイコーインスツル株式会社)製 X-DSC7000
第1回昇温:30℃常温から150℃まで10℃/minの昇温速度で昇温。
保持:150℃にて1min保持。
冷却:-100℃まで10℃/minで冷却。1min保持
第2回昇温:150℃まで10℃/minの昇温速度で昇温し、1min保持。
【0112】
(塗工量)
重量測定法によりコーティング層の塗工量を評価した。
コーティング層が形成されたサンプルを10cm×10cmにカットし、重量を測定した。その後、エタノールで湿らせたキムワイプを用いて、コート面の洗浄を行った。洗浄後のサンプル重量を測定し、洗浄前と洗浄後の重量差を塗工量とした。なお、重量差を面積で除してg/m単位に換算する。
【0113】
(防曇性)
透明ビーカーに30mLの精製水を入れ、測定面(コーティング面)を内側(水側)にして試料のフィルムで覆い、冷蔵庫(約5℃に設定)で保管した。24時間の保管の後、冷蔵庫から取り出し、取出し直後のフィルムの曇り具合を目視にて観察して、曇りなしを5点、曇りのため不透明を1点として、5点満点で評価した。
図1(a)に評価基準の模式図を、(b)に実際の防曇評価例の写真を示す。
【0114】
(ブロッキング強度)
2枚の試料フィルムを、コーティング面と非コーティング面とが接する様に重ね、40℃、4kgの加圧下で24hr保管後、万能型引張試験機(株式会社エー・アンド・ディー製)を用いて該2枚の試料フィルムの剥離強度(N/5.2cm)を測定した。
【0115】
(ヒートシール強度)
上記試料フィルムのコーティング面を熱融着性基材1の場合は、A-PETシート(軟化点77℃、結晶化温度126℃)、熱融着性基材2と3の場合はPPシート(メイン融点162.9℃、サブ融点107.5℃)に合わせ、精密ヒートシーラー(テスター産業製)も用いて温度120~180℃、圧力0.2MPaで幅5mmのシールバーにより、1.0秒間ヒートシールした後、放冷し、次いでヒートシールしたサンプルから15mm幅の試験片を切り取り、23℃、50%RHの恒温室において引張速度300mm/分の条件で、万能型引張試験機(株式会社エー・アンド・ディー製)で180度方向に剥離して最大荷重を測定した。(単位:N/15mm)
【0116】
実施例/比較例で用いた材料/成分の詳細は、以下のとおりである。
熱融着性基材
【0117】
・熱融着性基材1
それぞれ厚み5.1μm/6.3μm/18.6μmの熱融着層/中間層/ラミネート層からなる、3層構成、厚み30μmの積層フィルムを基材フィルムとして使用した。
各層を構成する樹脂は、以下のとおりであった。
・熱融着層
ポリエチレンテレフタレート樹脂(Tg:73℃、密度:1340kg/m
・中間層
ポリオレフィン樹脂(MFR(2.16kg190℃):5.6g/10分、密度:903kg/m
・ラミネート層
ポリエチレン樹脂(MFR(2.16kg190℃):3g/10分、密度:928kg/m、融点:114℃)
【0118】
・熱融着性基材2
それぞれ厚み3.6μm/21.9μm/4.5μmの熱融着層/中間層/ラミネート層からなる、3層構成、厚み30μmの積層フィルムを熱融着性基材2として使用した。
各層を構成する樹脂は、以下のとおりであった。
・熱融着層
エチレン系共重合体+プロピレンランダム共重合体+粘着付与剤のメルトブレンド樹脂
密度:925kg/m
融点:123.1℃(メイン) 143.0℃、98.7℃、85.2℃(サブ)
・中間層
プロピレン単独重合体
MFR(2.16kg230℃):7g/10分
密度:910kg/m
融点:161℃
・ラミネート層
直鎖状低密度ポリエチレン
MFR(2.16kg190℃):3.6g/10分
密度:909kg/m
融点:115℃
【0119】
・熱融着性基材3
それぞれ厚み3.3μm/23.4μm/3.3μmの熱融着層/中間層/ラミネート層からなる、3層構成、厚み30μmの積層フィルムを熱融着性基材3として使用した。
各層を構成する樹脂は、以下のとおりであった。
・熱融着層
エチレン系共重合体+プロピレンランダム共重合体+粘着付与剤のメルトブレンド樹脂
密度:920kg/m
融点:126.2℃(メイン) 142.6℃(サブ)℃
・中間層
熱融着層と同じ樹脂を使用した。
・ラミネート層
プロピレンランダム共重合体
MFR(2.16kg230℃):7.3g/10分
密度:910kg/m
融点:143℃)
【0120】
高分子界面活性剤
アクリル系高分子界面活性剤1(固形分15%水溶液、4級アンモニウム塩を含むアクリル系重合体、分子量約26,000、酸価1.0、融点:118℃)を使用した。
【0121】
低分子界面活性剤
低分子界面活性剤1(ジグリセリンモノラウレート、分子量:349)を使用した。
【0122】
コーティング組成物の作製及び評価
(比較例1)
低分子界面活性剤1を溶媒(イソプロパノールと水の混合溶媒)中に分散して、濃度2質量%のコーティング組成物を製造した。
当該コーティング組成物の、反射IRスペクトル、及び融点ピークを、上記の方法に従って評価した。結果を表1に示す。
【0123】
(実施例1から4)
低分子界面活性剤1と高分子界面活性剤1とを表1に示す質量比で混合して溶媒(イソプロパノールと水の混合溶媒)中に分散して、濃度2質量%のコーティング組成物を製造した。
当該コーティング組成物の、反射IRスペクトル、及び融点ピークを、上記の方法に従って評価した。結果を表1に示す。
【表1】
【0124】
コーティングの適用及び評価
(ブランク1)
比較対照用として、コーティングを行っていない熱融着性基材1について、上記の方法にしたがって防曇性、ブロッキング強度、及びヒートシール強度を評価した。
結果を表2に示す。
コーティングを行っていないため、防曇性に劣っていた。
【0125】
(比較試験1-1)
比較例1のコーティング組成物を、熱融着性基材1の熱融着層側の面にバーコーターを用いて塗工し、80℃に調節された恒温槽にて1分乾燥させることで熱融着性基材1の熱融着層上にコーティング層が形成されたフィルムを得た。乾燥後の質量から塗工量を求めたところ0.2g/mであった。
得られたフィルムについて、上記の方法にしたがって防曇性、ブロッキング強度、及びヒートシール強度を評価した。結果を表2に示す。
防曇性に優れ、ヒートシール強度も適切であったが、ブロッキングが生じた。
【0126】
(試験1-1から1-8、比較試験1-2)
表1に示す実施例1から3、及び比較例2のコーティング組成物を、表1に示す塗工量となる様に、熱融着性基材1の熱融着層側の面にバーコーターを用いて塗工し、80℃に調節された恒温槽にて1分乾燥させることで基材フィルムの熱融着層上にコーティング層が形成されたフィルムを得た。
得られたフィルムについて、上記の方法にしたがって防曇性、ブロッキング強度、及びヒートシール強度を評価した。結果を表2に示す。
各実施例のコーティング組成物を用いると、防曇性、ヒートシール性、耐ブロッキング性の全てにおいて良好であった。比較例2のコーティング組成物を用いると、ヒートシール強度が不十分であった。
【表2】
【0127】
(ブランク2)
比較対照用として、コーティングを行っていない熱融着性基材2について、上記の方法にしたがって防曇性、及びブロッキング強度を評価した。
結果を表3に示す。
コーティングを行っていないため、防曇性に劣っていた。
【0128】
(比較試験2-1)
比較例1のコーティング組成物を、熱融着性基材2の熱融着層側の面にバーコーターを用いて塗工し、80℃に調節された恒温槽にて1分乾燥させることで熱融着性基材2の熱融着層上にコーティング層が形成されたフィルムを得た。乾燥後の質量から塗工量を求めたところ0.050g/mであった。
得られたフィルムについて、上記の方法にしたがって防曇性、及びブロッキング強度を評価した。結果を表3に示す。
後述の試験例2-1から2-4のいずれと比較しても、防曇性及び耐ブロッキング性の少なくとも一方において劣っていた。
【0129】
(試験2-1から2-3、比較試験2-2)
比較例1のコーティング組成物を、表3に示す実施例1から3、及び比較例2のコーティング組成物に変更したことを除くほか、比較試験2-1と同様にして、熱融着性基材2の熱融着層上にコーティング層が形成されたフィルムを得た。乾燥後の質量から塗工量を求めたところ0.050g/mであった。
得られたフィルムについて、上記の方法にしたがって防曇性、及びブロッキング強度を評価した。結果を表3に示す。
各実施例のコーティング組成物を用いると、比較試験2-1と比較して、防曇性、ヒートシール性、及び耐ブロッキングのバランスに優れていた。比較例2のコーティング組成物を用いると、防曇性が不十分であった。
【表3】

【0130】
(ブランク3)
比較対照用として、コーティングを行っていない熱融着性基材3について、上記の方法にしたがって防曇性、及びブロッキング強度を評価した。
結果を表4に示す。
コーティングを行っていないため、防曇性に劣っていた。
【0131】
(試験3-1及び3-2)
実施例2のコーティング組成物を、表4に示す塗工量となる様に、熱融着性基材3の熱融着層側の面にバーコーターを用いて塗工し、80℃に調節された恒温槽にて1分乾燥させることで熱融着性基材1の熱融着層上にコーティング層が形成されたフィルムを得た。
得られたフィルムについて、上記の方法にしたがって防曇性、及びブロッキング強度を評価した。結果を表4に示す。
防曇性、ヒートシール性、及び耐ブロッキングのバランスに優れていた。
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明のコーティング組成物は、防曇性、ヒートシール強度(易開封性)、及び低ブロッキング性、という実用上高い価値を有する性質を、従来技術の限界を超えた高いレベルで兼ね備えたコーティング層を形成し得るものであり、内容物の視認性が求められる食品等の各種商品を収納する、易開封性のプラスチック容器の蓋材をはじめとする各種用途において好適に使用することができ、食品加工業、流通、小売、外食などの産業の各分野において高い利用可能性を有する。
図1