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特許7748872複合フィルム、包装袋、蓋材、蓋付き容器、及び複合フィルムの製造方法
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  • 特許-複合フィルム、包装袋、蓋材、蓋付き容器、及び複合フィルムの製造方法 図1
  • 特許-複合フィルム、包装袋、蓋材、蓋付き容器、及び複合フィルムの製造方法 図2
  • 特許-複合フィルム、包装袋、蓋材、蓋付き容器、及び複合フィルムの製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-25
(45)【発行日】2025-10-03
(54)【発明の名称】複合フィルム、包装袋、蓋材、蓋付き容器、及び複合フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20250926BHJP
   B65D 81/34 20060101ALI20250926BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20250926BHJP
【FI】
B32B27/00 D
B65D81/34 U
B65D65/40 D
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021209875
(22)【出願日】2021-12-23
(65)【公開番号】P2022170658
(43)【公開日】2022-11-10
【審査請求日】2024-07-30
(31)【優先権主張番号】P 2021076567
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000162113
【氏名又は名称】共同印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(72)【発明者】
【氏名】▲吉▼村 誠悟
(72)【発明者】
【氏名】柴田 直明
(72)【発明者】
【氏名】小野 栞
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-240734(JP,A)
【文献】国際公開第2021/024981(WO,A1)
【文献】特開2017-124859(JP,A)
【文献】特開2019-034753(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、基材層と、熱軟化性接着樹脂層と、ヒートシール層と、がこの順で積層された複合フィルムであって、
前記熱軟化性接着樹脂層は、架橋構造を有する熱軟化性接着剤樹脂から構成されており
前記基材層と前記ヒートシール層との間の25℃におけるラミネート強度は、1.3N/15mm以上であり、
前記基材層と前記ヒートシール層との間の70℃におけるラミネート強度は、0.6N/15mm以下であり、かつ
前記ヒートシール層の側から施され、かつ前記熱軟化性接着樹脂層に到達しているハーフカットを有する、
複合フィルム。
【請求項2】
前記熱軟化性接着剤樹脂は、主剤1質量部に対して硬化剤0.2質量部未満含む接着剤組成物から形成される、請求項1に記載の複合フィルム。
【請求項3】
前記熱軟化性接着剤樹脂は、主剤1質量部に対して硬化剤を、0.125質量部を超え0.2質量部未満含む接着剤組成物から形成される、請求項1に記載の複合フィルム。
【請求項4】
前記熱軟化性接着樹脂層は、前記接着剤組成物の塗工量が2.5g/m未満の層である、請求項2又は3に記載の複合フィルム。
【請求項5】
前記熱軟化性接着剤樹脂は、エーテル系樹脂である、請求項1~4のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項6】
前記ヒートシール層が互いに熱融着されて形成されたシール部を備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の複合フィルムから形成された包装袋であって、
前記ハーフカットは、前記包装袋の内側から外側まで、前記シール部を横断する、包装袋。
【請求項7】
電子レンジ用である、請求項6に記載の包装袋。
【請求項8】
容器本体の上端開口部を密封するための、請求項1~5のいずれか一項に記載の複合フィルムから形成された蓋材であって、
前記密封は、前記上端開口部を前記蓋材が被覆するように、前記ヒートシール層が前記容器本体に熱融着されて、開封可能な接合部を形成するものであり、
前記ハーフカットは、前記接合部において、前記容器本体の内側から外側まで横断するように配置されている、蓋材。
【請求項9】
電子レンジ用である、請求項8に記載の蓋材。
【請求項10】
容器本体と、
前記容器本体の上端開口部を密封するための、請求項1~5のいずれか一項に記載の複合フィルムから形成された蓋材と、
を含む開封可能な蓋付き容器であって、
前記容器本体の前記上端開口部は、フランジを有し、
前記ヒートシール層が前記フランジに熱融着されて、開封可能な接合部を形成し、
前記ハーフカットは、前記容器本体の内側から外側まで、前記接合部を横断する、
開封可能な蓋付き容器。
【請求項11】
電子レンジ用である、請求項10記載の蓋付き容器。
【請求項12】
請求項1~5のいずれか一項に記載の複合フィルムの製造方法であって、
前記ヒートシール層を含むシートに、ロータリーダイカッターにより、前記ヒートシール層の厚み方向に貫通させるカットを施す、ハーフカット作製工程と、
前記ハーフカット作製工程の後に、前記ヒートシール層を含むシートに、前記基材層及び/又は前記熱軟化性接着樹脂層を積層する積層工程と、を備える、
複合フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合フィルム、包装袋、蓋材、蓋付き容器、及び複合フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品が充填されたパウチ商品は、容器内で発生する水蒸気を抜くために、電子レンジによる加熱の前に、パウチの開封を実施していた。
【0003】
これに対して、電子レンジによる加熱時に、蒸気抜きの孔が形成される包装用シートが提案されている。例えば、特許文献1には、基材フィルムとシーラントフィルムとが積層された電子レンジ調理用食品の包装用シート材が開示されており、シーラントフィルムを、異なる融点を有しかつ互いに熱接着性を有する熱可塑性樹脂からなる層の積層体とすることで、電子レンジ調理時の加熱により、包装用シート材のシーラントフィルムがヒートシールされたヒートシール部を部分的に破壊して、脱気孔を形成することが提案されている。
【0004】
特許文献1に記載の包装用シート材によれば、ヒートシール部の不特定箇所から蒸通することは可能である。しかしながら、ヒートシール部において、特定の箇所から蒸通することはできていなかった。
【0005】
これに対して、意図した位置から蒸気抜き可能な、電子レンジ用パウチが知られている。
【0006】
例えば、特許文献2には、パウチの包装材料として、基材層、熱軟化性層、及びヒートシール層が、この順で積層された積層体が提案されている。そして、積層体のヒートシール層側からハーフカットを施すことで、電子レンジで加熱調理したときに、ヒートシール層同士が熱融着されたヒートシール部において、当該ハーフカットを通して蒸気を通過させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平11-165771号公報
【文献】特開2017-124859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載された包装材料は、基材層とヒートシール層との間に、熱軟化性樹脂層以外に接着層を有していた。具体的には、特許文献2では、熱軟化性樹脂層はハーフカットが施された領域のみに配置されており、熱軟化性樹脂層は、全面に配置されている接着層の中に点在して埋め込まれる状態となっていた。
【0009】
このため、特許文献2に記載された包装材料は、積層体の製造工程が複雑になるばかりか、コストも大きくなるという問題があった。
【0010】
本発明は、上記の背景に鑑みてなされたものであり、基材層とヒートシール層との間に、熱軟化性を有する樹脂層の1層のみを配置した場合であっても、従来と同等の蒸気抜き性能を実現できるとともに、必要な個所にハーフカットを設けることで電子レンジ等による加熱に際して蒸気抜きの箇所を特定することができ、更に、ラミ浮きの発生が抑制された、複合フィルム、当該複合フィルムから形成された包装袋、蓋材、蓋付き容器、及び複合フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った。そして、包装材料となる複合フィルムの熱軟化性樹脂層として、特定の構成の接着剤組成物を適用すれば、上記の課題と解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、以下のとおりである。
【0012】
《態様1》
少なくとも、基材層と、熱軟化性接着樹脂層と、ヒートシール層と、がこの順で積層された複合フィルムであって、
前記熱軟化性接着樹脂層は、架橋構造を有する熱軟化性接着剤樹脂から構成されている、
複合フィルム。
《態様2》
前記熱軟化性接着剤樹脂は、主剤1質量部に対して硬化剤0.2質量部未満含む接着剤組成物から形成される、態様1に記載の複合フィルム。
《態様3》
前記熱軟化性接着剤樹脂は、主剤1質量部に対して硬化剤を、0.125質量部を超え0.2質量部未満含む接着剤組成物から形成される、態様1に記載の複合フィルム。
《態様4》
前記熱軟化性接着樹脂層は、前記接着剤組成物の塗工量が2.5g/m未満の層である、態様2又は3に記載の複合フィルム。
《態様5》
前記熱軟化性接着剤樹脂は、エーテル系樹脂である、態様1~4のいずれかに記載の複合フィルム。
《態様6》
前記基材層と前記ヒートシール層との間の25℃におけるラミネート強度は、1.3N/15mm以上であり、
前記基材層と前記ヒートシール層との間の70℃におけるラミネート強度は、0.6N/15mm以下である、
態様1~5のいずれか一態様に記載の複合フィルム。
《態様7》
前記複合フィルムは、前記ヒートシール層の側から施され、前記熱軟化性接着樹脂層に到達しているハーフカットを有する、態様1~6のいずれか一態様に記載の複合フィルム。
《態様8》
前記ヒートシール層が互いに熱融着されて形成されたシール部を備える、態様7に記載の複合フィルムから形成された包装袋であって、
前記ハーフカットは、前記包装袋の内側から外側まで、前記シール部を横断する、包装袋。
《態様9》
電子レンジ用である、態様8に記載の包装袋。
《態様10》
容器本体の上端開口部を密封するための、態様7に記載の複合フィルムから形成された蓋材であって、
前記密封は、前記上端開口部を前記蓋材が被覆するように、前記ヒートシール層が前記容器本体に熱融着されて、開封可能な接合部を形成するものであり、
前記ハーフカットは、前記接合部において、前記容器本体の内側から外側まで横断するように配置されている、蓋材。
《態様11》
電子レンジ用である、態様10に記載の蓋材。
《態様12》
容器本体と、
前記容器本体の上端開口部を密封するための、態様7に記載の複合フィルムから形成された蓋材と、
を含む開封可能な蓋付き容器であって、
前記容器本体の前記上端開口部は、フランジを有し、
前記ヒートシール層が前記フランジに熱融着されて、開封可能な接合部を形成し、
前記ハーフカットは、前記容器本体の内側から外側まで、前記接合部を横断する、
開封可能な蓋付き容器。
《態様13》
電子レンジ用である、態様12記載の蓋付き容器。
《態様14》
態様7に記載の複合フィルムの製造方法であって、
前記ヒートシール層を含むシートに、ロータリーダイカッターにより、前記ヒートシール層の厚み方向に貫通させるカットを施す、ハーフカット作製工程と、
前記ハーフカット作製工程の後に、前記ヒートシール層を含むシートに、前記基材層及び/又は前記熱軟化性接着樹脂層を積層する積層工程と、を備える、
複合フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の複合フィルムによれば、基材層とヒートシール層との間に、熱軟化性を有する樹脂層の1層のみを配置した構成であっても、従来と同等の蒸気抜き性能を有する、パウチ等の包装袋や、開封可能な容器等を作製することができる。
【0014】
また、基材層とヒートシール層との間に、熱軟化性接着樹脂層以外に接着層を配置しない構成とした場合には、複合フィルムの製造工程を簡易なものとすることができるため、生産能力及び生産コストに寄与することができる。
【0015】
更に、必要となる箇所にハーフカットを備えさせることによって、電子レンジ等による加熱に際して、意図した位置から蒸気抜きを実施することができる。
【0016】
更に、本発明の複合フィルムは、保管時等においてラミ浮きの発生、及びそれによる外観不良が抑制された複合フィルムとなるため、本発明の複合フィルムによる包装材によれば、食品等の内容物の保管性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る複合フィルムの断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る包装袋を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る包装袋が、蒸気抜きするときの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
《複合フィルム》
本発明の複合フィルムは、少なくとも、基材層と、熱軟化性接着樹脂層と、ヒートシール層と、がこの順で積層された複合フィルムであり、熱軟化性接着樹脂層が、架橋構造を有する熱軟化性接着剤樹脂から構成されている、
複合フィルム。
【0019】
《複合フィルムの構成》
以下に、図面を参照しながら、本発明の複合フィルムの構成について説明する。図1に、本発明の複合フィルムの一実施形態に係る断面図を示す。
【0020】
図1に示される本発明の複合フィルムの一実施形態に係る複合フィルム10は、基材層1と、基材層1の内側に積層配置された熱軟化性接着樹脂層2と、熱軟化性接着樹脂層2の内側に積層配置されたヒートシール層3と、を備える。
【0021】
本発明の複合フィルムは、基材層と、熱軟化性接着樹脂層と、ヒートシール層と、を必須の構成として含み、これらがこの順で積層されている。本発明においては、基材層、熱軟化性接着樹脂層、及びヒートシール層以外に、任意の層を備えていてもよく、任意の層としては、例えば、バリア性を付与するためのバリア層や、強度を補強するための補強層、あるいは、層と層との間を接着するための接着層等が挙げられる。
【0022】
図1に示される複合フィルム10は、本発明において必須の構成である、基材層1、熱軟化性接着樹脂層2、及びヒートシール層3のみを備える態様であるが、例えば、基材層1、熱軟化性接着樹脂層2、ヒートシール層3との間や、これらの層を含む積層体の外側に、これら以外の層が存在していてもよい。
【0023】
本発明の複合フィルムを構成するそれぞれの層の厚み等は、複合フィルムの用途等に応じて、適宜決定することができる。
【0024】
<基材層>
基材層は、本発明の複合フィルムにおいて、必須の構成層である。
【0025】
本発明の複合フィルムは、基材層、熱軟化性接着樹脂層、及びヒートシール層が、この順で積層されているため、基材層は、例えば包装袋や包装体等の構造体を形成したときに、構造体の外層となる。このため、基材層は、最内層となるヒートシール層を熱融着して構造体を形成する時の保護層となりうる。また、内容物の表示等のための印刷を施すための印刷層ともなりうる。
【0026】
基材層を構成する材料としては、樹脂等、特に保護層となり、印刷が可能となる樹脂等であれば、特に限定されるものではない。一般的に用いられている樹脂を用いることができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレ-ト(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)等のポリオレフィン、ナイロン-6、ナイロン-66等のポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)等が挙げられる。
【0027】
基材層を構成する樹脂等は、1種のみならず、2種以上がブレンドされていてもよく、必要に応じて、機能性等を付与するための添加剤等が配合されていてもよい。
【0028】
なお、基材層は、予め成形されたフィルムから作製されることが好ましい。基材層となるフィルムは、上記の樹脂等から形成されたフィルムであればよく、未延伸であっても、一軸又は二軸延伸が施されていてもよい。中では、二軸延伸フィルムであることが好ましい。
【0029】
また、基材層となるフィルムには、酸化珪素、酸化アルミニウム等の酸化物が蒸着されていてもよい。
【0030】
更に、基材層となるフィルムは、単層であっても、複層からなる積層体となっていてもよい。
【0031】
<熱軟化性接着樹脂層>
熱軟化性接着樹脂層は、本発明の複合フィルムにおいて、必須の構成層である。熱軟化性接着樹脂層は、基材層とヒートシール層との間に配置される。
【0032】
(熱軟化性接着剤樹脂)
本発明の熱軟化性接着樹脂層を構成する熱軟化性接着剤樹脂は、架橋構造を有する。熱軟化性接着剤樹脂を形成するための材料としては、特に限定されるものではなく、架橋構造を形成することができ、熱により軟化し、接着性を有する樹脂層を形成できるものであればよい
【0033】
熱軟化性接着剤樹脂を形成する材料となる熱軟化性接着剤組成物としては、例えば、主剤と硬化剤とを含む接着剤組成物であってよい。
【0034】
{主剤}
熱軟化性接着剤樹脂を形成する材料となる、接着剤組成物を構成する主剤は、特に限定されるものではないが、基材層へのドライラミネートが容易となる観点から、常温で液状であるものが好ましい。例えば、ポリオールが挙げられ、ポリオールとしては、例えば、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、シリコーンポリオール、ヒマシ油系ポリオール、フッ素系ポリオール等が挙げられる。主剤は、1種単独でも、2種類以上を併用してもよい。
【0035】
中では、ポリエステルポリオール又はポリエーテルポリオールが好適に用いられ、速硬化の観点からより好ましくは、ポリエステルポリウレタンポリオール及びポリエーテルポリウレタンポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリオールであってよい。
【0036】
特には、エーテル系樹脂層を形成することのできるポリエーテルポリオールが好適であり、ポリエーテルポリオールとしては、ポリエーテルポリウレタンポリオールであってもよい。
【0037】
{硬化剤}
熱軟化性接着剤樹脂を形成する材料となる、接着剤組成物を構成する硬化剤は、特に限定されるものではないが、基材層へのドライラミネートが容易となる観点から、常温で液状であるものが好ましい。硬化剤としては、例えば、ポリイソシアネートが挙げられる。
【0038】
ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナートメチルカプロエート等の脂肪族ジイソシアネート、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアナートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート又は2,6-トリレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4’-トルイジンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン等の芳香脂肪族ジイソシアネート、トリフェニルメタン-4,4’4”-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシナトベンゼン、2,4,6-トリイソシアナトトルエン等の芳香族又は芳香脂肪族の有機トリイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタン-2,2’-5,5’-テトライソシアネート等の芳香脂肪族テトライソシアネートで代表される有機テトライソシアネート等のポリイソシアネート単量体等が挙げられる。ポリイソシアネートとしては、これら単量体と他の化合物とが反応して得られる誘導体や付加体、又はこれら単量体から誘導された二量体、三量体等の誘導体であってもよい。
【0039】
{主剤と硬化剤との組成比}
熱軟化性接着剤樹脂を形成する材料となる、接着剤組成物に含まれる主剤と硬化剤との組成比は、例えば、主剤1質量部に対して、硬化剤0.2質量部未満であってよい。
【0040】
接着剤組成物に含まれる主剤と硬化剤との組成比が、主剤1質量部に対して硬化剤が0.2質量以上となる場合には、基材層とヒートシール層との間の70℃におけるラミネート強度の高い、熱軟化性接着樹脂層が形成される。その結果、得られる複合フィルムは、蒸気抜き性能が低下したものとなる。
【0041】
一方で、接着剤組成物に含まれる主剤と硬化剤との組成比が、主剤1質量部に対して硬化剤が0.01質量未満となる場合には、基材層とヒートシール層とを接着する強度の低い、熱軟化性接着樹脂層が形成される。その結果、得られる複合フィルムは、常温でのラミネート強度が弱く、ラミ浮きを発生してしまうことがある。
【0042】
熱軟化性接着剤樹脂を形成する材料となる、接着剤組成物に含まれる主剤と硬化剤との組成比は、主剤1質量部に対して、硬化剤0.15質量部以下、0.125質量部以下、0.10質量部以下、0.075質量部以下、又は0.05質量部以下であってよい。
【0043】
一方、接着剤組成物に含まれる主剤と硬化剤との組成比は、主剤1質量部に対して、硬化剤0.01質量部以上、0.025質量部以上、0.05質量部以上、0.075質量部以上、0.10質量部以上、0.125質量部以上、又は0.15質量部以上であってよい。
【0044】
中では、熱軟化性接着剤樹脂を形成する材料となる、接着剤組成物に含まれる主剤と硬化剤との組成比が、主剤1質量部に対して硬化剤が、0.125質量部を超え0.2質量部未満であると、本発明の複合フィルムが、ヒートシール層の側から施され、熱軟化性接着樹脂層に到達しているハーフカットを有している場合に、複合フィルムの加工工程において、当該ハーフカットから接着剤組成物が漏出することを抑制することができる。
【0045】
{その他の成分}
熱軟化性接着剤樹脂を形成する材料となる接着剤組成物には、主剤と硬化剤以外のその他の成分が、任意に含まれていてもよい。その他の成分としては、例えば、溶剤や、得られる熱軟化性接着樹脂層に機能性を付与するための成分、あるいは添加剤等が挙げられる。
【0046】
(ラミネート強度)
本発明の複合フィルムは、基材層とヒートシール層との間の25℃におけるラミネート強度が、1.3N/15mm以上であり、基材層とヒートシール層との間の70℃におけるラミネート強度が、0.6N/15mm未満である。
【0047】
基材層とヒートシール層との間の25℃におけるラミネート強度が、1.3N/15mm以上であることにより、本発明の複合フィルムから形成された構造体は、常温付近で十分な強度を有し、保管及び取り扱いに際して基材層とヒートシール層との間での剥離(ラミ浮き)が発生しない。
【0048】
基材層とヒートシール層との間の25℃におけるラミネート強度は、1.5N/15mm以上、1.8N/15mm以上、2.0N/15mm以上、2.4N/15mm以上、2.8N/15mm以上、又は3.0N/15mm以上であってよい。
【0049】
一方で、基材層とヒートシール層との間の25℃におけるラミネート強度は、6.0N/15mm以下、5.0N/15mm以下、4.5N/15mm以下、4.0N/15mm以下、3.5N/15mm以下、又は3.0N/15mm以下であってよい。
【0050】
また、基材層とヒートシール層との間の70℃におけるラミネート強度が、0.6N/15mm未満であることにより、本発明の複合フィルムから形成された構造体が加熱された場合に、熱軟化性接着樹脂層の中に空間が形成され易くなり、当該空間を通して蒸気を移動させることで、従来と同等の蒸気抜き性能を発揮することができる。
【0051】
基材層とヒートシール層との間の70℃におけるラミネート強度は、0.5N/15mm以下、0.4N/15mm以下、0.3N/15mm以下、0.2/15mm以下、0.1/15mm以下、又は0.05N/15mm以下であってよい。
【0052】
一方で、基材層とヒートシール層との間の70℃におけるラミネート強度は、0.01N/15mm以上、0.05N/15mm以上、0.1N/15mm以上、0.2N/15mm以上、0.3N/15mm以上、0.4N/15mm以上、又は0.5N/15mm以上であってよい。
【0053】
本発明の複合フィルムは、基材層とヒートシール層との間の25℃におけるラミネート強度が、70℃におけるラミネート強度より大きいものなっていることで、本発明の複合フィルムを電子レンジ等で加熱した場合に、基材層とヒートシール層との間のラミネート強度が小さくなり、軟化性樹脂層の中に空間を形成し易くなる。そして、形成した空間を通して、蒸気を移動させることができるようになる。
【0054】
<ヒートシール層>
ヒートシール層は、本発明の複合フィルムにおいて、必須の構成層である。
【0055】
ヒートシール層は、例えば包装袋や包装体等の構造体を形成する際に、熱融着される層となる。このため、ヒートシール層は、複合フィルムの最内層となるように配置する。
【0056】
ヒートシール層を構成する材料としては、熱接着が可能であり、成形された構造体に十分なシール強度を付与できるものであれば、特に限定されるものではない。公知の材料を適用することができ、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレン共重合体(EP)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、アイオノマー樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等が挙げられる。
【0057】
例えば、内容物が充填される包装袋等の構造体を形成する場合には、本発明の複合フィルムを構成するヒートシール層は、内容物を充填するための空間を形成する層となる。このため、耐内容物性を付与したい場合には、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等を用いることが好ましい。
【0058】
ヒートシール層は、上記の材料から予め成形されたフィルムを用いて形成してもよいし、基材層、熱軟化性接着樹脂層、及び必要に応じてその他の層が積層された積層体の表面に、ヒートシール層を形成するための材料を溶融して押出し、冷却固化させて形成してもよい。
【0059】
また、ヒートシール層を構成する樹脂等は、1種のみならず、2種以上がブレンドされていてもよく、必要に応じて、機能性等を付与するための添加剤等が配合されていてもよい。
【0060】
更に、ヒートシール層は、単層であっても、複層からなる構成であっていてもよい。
【0061】
なお、本発明の複合フィルムを構成するヒートシール層は、使用の際に接合部の開封が容易となるよう、イージーピール性(易開封性)を有していてもよい。イージーピール性を有するヒートシール層とすれば、例えば、本発明の複合フィルムから蓋材を形成し、容器本体と熱融着させて包装体を形成した場合に、内容物を取り出すための開封が容易となる。
【0062】
(ハーフカット)
本発明の複合フィルムは、ヒートシール層の側から施され、熱軟化性接着樹脂層に到達しているハーフカットを有していてもよい。
【0063】
ここで、ハーフカットとは、複合フィルムの厚さ方向に形成され、複合フィルムの厚さ方向に貫通しない切れ目をいう。
【0064】
本発明の複合フィルムは、必要となる箇所にハーフカットを備えさせることによって、電子レンジ等による加熱に際して、意図した位置から蒸気抜きを実施することが可能となる。
【0065】
上記の通り、本発明の複合フィルムから構造体を形成した場合には、ヒートシール層が構造体の内側となり、すなわち、内容物と接する層となる。したがって、加熱によって内容物から発生する蒸気は、ハーフカットを通して、複合フィルムの厚み方向に入り込んでいくこととなる。
【0066】
このとき、ハーフカットが熱軟化性接着樹脂層に到達していれば、内容物から発生した蒸気は、ハーフカットを通過して直接、熱軟化性接着樹脂層まで到達することとなる。その結果、熱軟化性接着樹脂層は、蒸気の熱によって直接的に温められることとなり、間接的に温められる場合よりも軟化が容易となる。
【0067】
したがって、本発明の複合フィルムは、蒸気抜きが必要となる箇所にハーフカットを備えさせておくことで、意図した位置から蒸気抜きを実施することが可能となる。
【0068】
図1に示される複合フィルム10においては、ハーフカットCは、ヒートシール層3の側から設けられ、熱軟化性接着樹脂層2の表面に到達している。
【0069】
なお、ハーフカットの深さは、熱軟化性接着樹脂層の表面までであっても、あるいは、熱軟化性接着樹脂層の内部まで施されていても、更には、熱軟化性接着樹脂層を貫通していても、いずれであってもよい。
【0070】
ただし、ハーフカットは、複合フィルムの最外層となる基材層には到達しない深さであることが好ましい。ハーフカットが基材層に到達すると、複合フィルムから形成される構造体の強度が低下する場合がある。
【0071】
特には、ハーフカットは、ヒートシール層のみに施されていることが好ましい。ヒートシール層のみにハーフカットを施すことができれば、複合フィルムの強度が最も高くなる状態で、ハーフカットの効果を享受することができる。
【0072】
ハーフカットの形状は、連続的な線であっても、断続的な線であってもいずれでもよい。また、少なくとも1本が施されていればよく、その数は限定されない。複数本のハーフカットを備えさせる場合には、ハーフカット同士は、略並行であることが好ましい。
【0073】
また、ハーフカットの長さは、特に限定されるものではない。蒸気抜きを実施したい箇所のみが備えるような長さであってもよいし、複合フィルムの全体にわたって、均等に設けてもよい。
【0074】
ハーフカットを形成する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、複合フィルムを形成した後に、レーザー等で作製してもよいし、複合フィルムを生産する途中で、ダイカッター等により、ヒートシール層を含むシートのヒートシール層側から作成し、その後に他の層と積層させて複合フィルムとしてもよい。
【0075】
<その他の層>
本発明の複合フィルムは、基材層と、熱軟化性接着樹脂層と、ヒートシール層とを、必須の構成層として含んでいれば、これら以外の層が含まれていてもよい。
【0076】
その他の層としては、特に限定されるものではなく、例えば、バリア性を付与するためのバリア層や、強度を補強するための補強層、あるいは、層と層との間を接着するための接着層等が挙げられる。
【0077】
バリア性を付与するためのバリア層としては、例えば、酸素や水蒸気等のガスを遮断する機能を発現する、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ナイロン(NY)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、又はポリアクリロニトリル(PAN)からなる層等が挙げられる。
【0078】
強度を補強するための補強層の材料としては、例えば、紙、合成紙、不織布等が挙げられる。これらには、隣接する層との接着性を付与するための接着剤が塗布されていてもよい。また、上記の基材層を構成する材料による層を、基材層とは別に、補強層として備えさせることも可能である。
【0079】
層と層との間を接着するための接着層としては、例えば、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、アイオノマーからなる層等が挙げられる。
【0080】
また、その他の層は、層と層とをドライラミネート又はホットメルトラミネートする際に使用する、接着剤からなる層であってもよい。
【0081】
その他の層を構成する樹脂等は、1種のみならず、2種以上がブレンドされていてもよい。また、必要に応じて、機能性等を付与するための添加剤等が配合されていてもよい。
【0082】
《複合フィルムの製造方法》
本発明の複合フィルムの製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用することができる。例えば、ドライラミネーション法、ホットメルトラミネーション法、エクストルージョンラミネーション法、及びサンドイッチラミネーション方法等が挙げられる。
【0083】
例えば、基材層となるフィルムと、ヒートシール層となるフィルムとを、熱軟化性接着樹脂層となる接着剤組成物によって接着し、積層体を形成してもよい。
【0084】
この方法による場合には、熱軟化性接着樹脂層を形成するための接着剤組成物の塗工量は、特に限定されるものではないが、例えば、5.0g/m以下、4.5g/m以下、4.0g/m以下、3.5g/m以下、3.0g/m以下、2.5g/m以下、2.0g/m以下、1.5g/m以下、又は1.0g/m以下であってよく、0.25g/m以上、0.5g/m以上、0.75g/m以上、1.0g/m以上、1.5g/m以上であってよい。
【0085】
中でも、接着剤組成物の塗工量が2.5g/m未満である場合には、本発明の複合フィルムが、ヒートシール層の側から施され、熱軟化性接着樹脂層に到達しているハーフカットを有している場合に、複合フィルムの加工工程において、当該ハーフカットから接着剤組成物が漏出することを抑制することができる。
【0086】
ハーフカットを有する複合フィルムを製造方法する場合には、特に限定されるものではないが、例えば、複合フィルムを製造した後に、レーザー等でハーフカットを作製する方法が挙げられる。
【0087】
あるいは、複合フィルムを生産する途中で、ハーフカットを作製し、ハーフカットを有する層とその他の層とを積層させて、複合フィルムとしてもよい。この場合には、例えば、ヒートシール層を含むシートに、ロータリーダイカッターを用いて、ヒートシール層の厚み方向に貫通させるカットを施し(ハーフカット作製工程)、次いで、ヒートシール層を含むシートに、基材層や熱軟化性接着樹脂層を積層する(積層工程)ことで、複合フィルムを製造することがきる。
【0088】
《複合フィルムの作用》
以下に、図面を参照しながら、本発明の複合フィルムの作用について説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る包装袋を示す図である。また、図3は、本発明の一実施形態に係る包装袋が、蒸気抜きするときの概略図である。
【0089】
本発明の複合フィルムを用いて形成される構造体は、特に限定されるものではない。本発明の複合フィルムは、最内層がヒートシール層となっているため、ヒートシール層を互いに熱融着させる、又はフランジを有する容器本体のフランジ部にヒートシール層を熱融着させる等により、様々な構造体を形成することができる。
【0090】
図2は、ヒートシール層を互いに熱融着させて形成した包装袋を示す図である。図2は、ハーフカットCを有する本発明の複合フィルム10の外周が互いに熱融着されて、シール部4が形成された包装袋100となっている。
【0091】
複合フィルム10は、図1に示される、基材層1、熱軟化性接着樹脂層2、及びヒートシール層3からなる積層体であり、図2に示されるように、複合フィルム10は、X方向及びY方向で形成されたX-Y面に、各層が延在し、Z方向(図示せず)が複合フィルム10の厚み方向となる。すなわち、図2は、基材層1側から見た、包装袋100の上面図である。
【0092】
図2に示される包装袋100を構成する複合フィルム10において、ハーフカットCは、断続的な直線で設けられており、包装袋100のシール部4を、包装袋100の内側から外側まで横断するように形成されている。
【0093】
このような包装袋100が加熱され、包装袋100の内部に充填された内容物から蒸気が発生した場合には、図2に示されるように、発生した蒸気5は、シール部4のハーフカットCが施された箇所から、包装袋100の外部に排出される。
【0094】
ここで、蒸気5が、シール部4のハーフカットCが施された箇所から、包装袋100の外部に排出される作用について、図3を用いて説明する。
【0095】
図3は、複合フィルム10のZ方向(図示せず)を示した断面図である。そして、図3には、図1に示される複合フィルム10から図2に示される包装袋100が形成され、当該包装袋100が加熱されて、包装袋100の内容物から蒸気5が発生した場合に、蒸気5によって、複合フィルム10の熱軟化性接着樹脂層2が軟化した状態が示されている。
【0096】
包装袋100の内部で発生した蒸気5は、複合フィルム10のヒートシール層3に形成されたハーフカットCから、複合フィルム10の厚み方向(Z方向)に入り込み、熱軟化性接着樹脂層2に到達すると、直接、熱軟化性接着樹脂層2に熱を与える。これにより、熱軟化性接着樹脂層2は軟化し、柔軟になる。
【0097】
包装袋100の内部の圧力は、内容物から発生する蒸気の圧力によって高まり、上昇する。そして、図3に示されるように、内圧の上昇によって、軟化した熱軟化性接着樹脂層2とヒートシール層3との間で層間剥離が生じ、熱軟化性接着樹脂層2は、蒸気5の圧力によって包装袋100の外側に持ち上がり、当該剥離部分に空間6が形成される。
【0098】
そして、内容物から発生した蒸気5は、シール部4を横断するように形成されているハーフカットCの領域に発現した空間6を通して、図2に示されるように、包装袋100の内部から外部へと排出される。
【0099】
《複合フィルムの用途》
本発明の複合フィルムを用いて形成される構造体は、特に限定されるものではない。
【0100】
例えば、本発明の複合フィルムのヒートシール層を互いに熱融着することで、三方シール袋、四方シール袋、ガセット包装袋、ピロー包装袋、ゲーベルトップ型の有底容器、テトラクラシック(登録商標)、ブリックパック(登録商標)、チューブ容器等を形成することができる。また、ヒートシール層にチャックを設けて、チャック付き包装袋とすることもできる。
【0101】
あるいは、例えば、本発明の複合フィルムから蓋材を形成し、容器本体に熱融着することで、開封可能な包装体とすることもできる。
【0102】
以下に、本発明の複合フィルムを用いた包装袋、及び蓋材について説明する。
【0103】
(包装袋)
包装袋は、本発明の複合フィルムのヒートシール層が互いに熱融着されて、シール部を形成することで作製することができる。
【0104】
このとき、複合フィルムにハーフカットを施し、ヒートシール層が互いに熱融着されたシール部を、包装袋の内側から外側に、ハーフカットが横断するように配置してもよい。
【0105】
ハーフカットがシール部を、包装袋の内側から外側に横断する形態とすれば、包装袋を加熱したときに、当該ハーフカット部分に、蒸気を通過させるための空間を形成することができる。そして、当該空間を通して、包装袋の内部で発生した蒸気を、包装袋の外部に排出することができる。
【0106】
このような包装袋は、加熱がなされる包装袋に好適に用いることができ、例えば、電子レンジ用の包装袋として、大変に有益なものとなる。
【0107】
(蓋材)
本発明の複合フィルムは、容器本体の上端開口部を密封するための蓋材ともなりうる。
【0108】
容器本体の密封は、容器の上端開口部を本発明の複合フィルムからなる蓋材が被覆するように、複合フィルムのヒートシール層を容器本体に熱融着させることで、開封可能な接合部を形成して行うことができる。
【0109】
容器の上端開口部が、フランジを有する場合には、本発明の複合フィルムからなる蓋材のヒートシール層を、容器本体のフランジに熱融着させて、開封可能な接合部を形成することで、蓋付き容器を形成してもよい。
【0110】
このとき、ヒートシール層がイージーピール性(易開封性)を有するものであれば、形成された密封容器は、開封容易な蓋付き容器となる。
【0111】
また、複合フィルムにハーフカットを施し、ハーフカットを、容器本体のフランジとヒートシール層とが熱融着された接合部に、容器本体の内側から外側に横断するように配置してもよい。
【0112】
ハーフカットが接合部を、容器本体の内側から外側に横断する形態とすれば、密閉容器を加熱したときに、当該ハーフカット部分に、蒸気を通過させるための空間が形成される。そして、当該空間を通して、密閉容器の内部で発生した蒸気を、密閉容器の外部に排出することができる。
【0113】
このような蓋付き容器は、加熱がなされる蓋付き容器に好適に用いることができ、例えば、電子レンジ用の蓋付き容器として、大変に有益なものとなる。
【実施例
【0114】
以下、実施例及び比較例等により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0115】
<材料>
実施例及び比較例においては、層を構成する材料として、以下を準備した。
【0116】
(1)基材層
・PET#12:二軸延伸PETフィルム(東洋紡エステル(登録商標)E5100、東洋紡株式会社、厚み:12μm)
・OPP#20:二軸延伸PPフィルム(パイレン(登録商標)P2161、東洋紡株式会社、厚み:20μm)
・Ny#15:ナイロンフィルム(ボニール(登録商標)RX、興人フィルム&ケミカルズ株式会社、厚み:15μm)
【0117】
(2)熱軟化性接着樹脂層
・TM-396(主剤)/CAT-22B(硬化剤)(東洋モートン株式会社)
・エリーテル(登録商標)XP-1586(ユニチカ株式会社)
【0118】
(3)ヒートシール層
・CPP#20:無延伸PPフィルム(パイレン(登録商標)P1128、東洋紡株式会社、厚み:20μm)
・CPP#30:無延伸PPフィルム(パイレン(登録商標)P1128、東洋紡株式会社、厚み:30μm)
・E1901T#50:積層PPフィルム(ディファレン(登録商標)E1901T、DIC株式会社、厚み:50μm)
【0119】
《実施例1~4、比較例1~6、参考例1》
<複合フィルムの製造>
表1又は表2に記載した材料を用いて、基材層となるフィルムと、ヒートシール層となるフィルムを、熱軟化性接着樹脂層を形成する接着剤組成物によって接着し、積層体を作製した。なお、接着剤組成物の塗工量は、それぞれ3.0g/mとした。
【0120】
積層体におけるヒートシール層となるフィルムには、ヒートシール層の厚み方向に貫通させるカットを施し(ハーフカット作製工程)、次いで、ヒートシール層を含むシートに、基材層及び熱軟化性接着樹脂層を積層して、ハーフカットを有する複合フィルムを得た。
【0121】
<ラミネート強度の測定>
実施例1~4、比較例1~6、及び参考例1で得られた複合フィルムを15mm幅にカットし、基材層とヒートシール層との層間強度を、25℃雰囲気下と70℃雰囲気下にて測定した。なお、測定は、T字剥離にて、300mm/minの条件で実施し、変位20~50mmの区間平均を求めた。結果を表1又は表2に示す。なお、表において「材破」とは、ラミネート強度が高すぎて剥離の途中で材料が破壊し、測定不可であった状況を意味する。
【0122】
<パウチの作製>
実施例1~4、比較例1~6、及び参考例1で作製した複合フィルムを用いて、内寸130mm×135mmのピロー袋を作製した。このとき、ピロー袋の内部に、水10ccを含浸させた紙ワイパー(キムワイプ(登録商標)、日本製紙クレシア製)を封入した。また、ハーフカットは、ピロー袋のシール部に、包装袋の内側から外側まで、シール部を横断するように配置した。なお、ピロー袋の作製条件は、インパルスシーラーにより、加熱0.9秒、冷却2.0秒とした。
【0123】
<パウチの蒸気の通過性評価>
作製したパウチに対して、電子レンジ(700W)にて、60秒間のレンジアップを実施した。その際、目視にて、ヒートシール部からパウチの内側の蒸気が排出されたか確認した。なお、それぞれのパウチについて、5回ずつのレンジアップを実施し、以下の基準で評価した。結果を表1又は表2に示す。
○:5回すべてにおいて、蒸気が排出された。
×:少なくとも1回、蒸気が排出されない場合があった。
【0124】
<パウチのラミ浮き評価>
上記の要領で、それぞれ5個ずつのパウチを作製し、25℃雰囲気下で1日静置した。静置後、目視にてラミ浮きの有無を確認し、以下の評価基準で評価した。結果を表1又は表2に示す。
〇:5個全てのパウチで、ラミ浮きはなかった。
△:1~3個のパウチに、ラミ浮きが見られた。
×:4~5個のパウチに、ラミ浮きが見られた。
【0125】
【表1】
【0126】
【表2】
【0127】
《実施例5~9、比較例7》
<複合フィルムの製造>
表3に記載した材料を用いて、基材層となるフィルムと、ヒートシール層となるフィルムを、熱軟化性接着樹脂層を形成する接着剤組成物によって接着し、積層体を作製した。なお、接着剤組成物の塗工量は、表3に記載した量とした。
【0128】
実施例1と同様に、積層体におけるヒートシール層となるフィルムには、ヒートシール層の厚み方向に貫通させるカットを施し(ハーフカット作製工程)、次いで、ヒートシール層を含むシートに、基材層及び熱軟化性接着樹脂層を積層して、ハーフカットを有する複合フィルムを得た。
【0129】
<ラミネート強度の測定>
実施例1と同様にして、基材層とヒートシール層との層間強度を測定した。結果を表3に示す。
【0130】
<パウチの作製>
実施例1と同様にして、内寸130mm×135mmのピロー袋を作製した。
【0131】
<パウチの蒸気の通過性評価及びパウチのラミ浮き評価>
実施例1と同様にして、パウチの蒸気の通過性評価及びパウチのラミ浮き評価を実施した。結果を表3に示す。
【0132】
<ハーフカットからの接着剤の漏出評価>
実施例5~9、及び比較例7においては、複合フィルムの各原反を4000m巻きで作製し、エージングを実施後に取り出して、直ちに巻替えを実施した。巻替え時に、ロール等に漏出した接着剤が付着していないか確認し、以下の評価基準で評価した。結果を表3に示す。
〇:接着剤の漏出は見られなかった。
△:かすかに漏出(加工に問題を及ぼさない)
×:接着剤の漏出が見られた。
【0133】
【表3】
【符号の説明】
【0134】
10 複合フィルム
1 基材層
2 熱軟化性接着樹脂層
3 ヒートシール層
4 シール部
5 蒸気
6 空間
100 包装袋
C ハーフカット
図1
図2
図3