IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 本田技研工業株式会社の特許一覧

特許7748907車両制御装置、車両制御方法、およびプログラム
<>
  • 特許-車両制御装置、車両制御方法、およびプログラム 図1
  • 特許-車両制御装置、車両制御方法、およびプログラム 図2
  • 特許-車両制御装置、車両制御方法、およびプログラム 図3
  • 特許-車両制御装置、車両制御方法、およびプログラム 図4
  • 特許-車両制御装置、車両制御方法、およびプログラム 図5
  • 特許-車両制御装置、車両制御方法、およびプログラム 図6
  • 特許-車両制御装置、車両制御方法、およびプログラム 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-25
(45)【発行日】2025-10-03
(54)【発明の名称】車両制御装置、車両制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20250926BHJP
   B60W 30/12 20200101ALI20250926BHJP
   B60W 30/09 20120101ALI20250926BHJP
   B60W 40/04 20060101ALI20250926BHJP
   B60W 40/06 20120101ALI20250926BHJP
   B60W 40/08 20120101ALI20250926BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W30/12
B60W30/09
B60W40/04
B60W40/06
B60W40/08
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022056398
(22)【出願日】2022-03-30
(65)【公開番号】P2023148405
(43)【公開日】2023-10-13
【審査請求日】2024-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】井上 大地
(72)【発明者】
【氏名】田村 祥
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-047609(JP,A)
【文献】特開2017-084137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
B60W 30/12
B60W 30/09
B60W 40/04
B60W 40/06
B60W 40/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周辺状況を撮像したカメラ画像を取得する取得部と、
前記カメラ画像と地図情報に基づいて、前記車両の運転者の操作に依らずに前記車両の操舵および加減速を制御する運転制御部と、
前記車両の運転モードを、第1の運転モードと、第2の運転モードとを含む複数の運転モードのいずれかに決定し、前記第2の運転モードは前記運転者に課されるタスクが前記第1の運転モードに比して軽度な運転モードであり、少なくとも前記第2の運転モードを含む前記複数の運転モードの一部は前記運転制御部により制御されるものであり、前記決定した運転モードに係るタスクが運転者により実行されない場合に、よりタスクが重度な運転モードに前記車両の運転モードを変更するモード決定部と、
前記カメラ画像に示される道路区画線と前記地図情報に示される道路区画線との間に乖離が存在するか否かを判定する乖離判定部と、
前記カメラ画像に示される道路区画線と前記地図情報に示される道路区画線との間に乖離が存在すると判定された場合、前記車両の周辺に存在する一以上の他車両の軌跡と、前記カメラ画像に示される道路区画線との間の平行度を算出する平行度算出部と、を備え、
前記モード決定部は、算出された前記平行度が第1閾値以上である場合、前記第2の運転モードを継続することを決定する、
車両制御装置。
【請求項2】
前記平行度算出部は、前記車両の周辺に存在する一以上の他車両の数が第2閾値以上である場合に、前記平行度を算出する、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記平行度算出部は、前記車両の周辺に存在する一以上の他車両の軌跡と、前記カメラ画像に示される道路区画線と、前記地図情報に示される道路区画線とに基づいて、前記平行度を算出する、
請求項1又は2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記平行度算出部は、前記車両の周辺に存在する一以上の他車両の各々の軌跡と前記カメラ画像に示される道路区画線との間の角度の平均値と、前記車両の周辺に存在する一以上の他車両の各々の軌跡と前記地図情報に示される道路区画線との間の角度の平均値と、に基づいて前記平行度を算出する、
請求項3に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記平行度算出部は、前記車両の周辺に存在する一以上の他車両の各々の軌跡と前記カメラ画像に示される道路区画線との間の角度の中央値と、前記車両の周辺に存在する一以上の他車両の各々の軌跡と前記地図情報に示される道路区画線との間の角度の中央値と、に基づいて前記平行度を算出する、
請求項3に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記第2の運転モードは、前記運転者に、前記車両の操舵操作を受け付ける操作子を把持するタスクが課されない運転モードであり、
前記第1の運転モードは、前記運転者に、少なくとも、前記操作子を把持するタスクが課される運転モードである、
請求項1から5のいずれか1項に記載の車両制御装置。
【請求項7】
コンピュータが、
車両の周辺状況を撮像したカメラ画像を取得し、
前記カメラ画像と地図情報に基づいて、前記車両の運転者の操作に依らずに前記車両の操舵および加減速を制御し、
前記車両の運転モードを、第1の運転モードと、第2の運転モードとを含む複数の運転モードのいずれかに決定し、前記第2の運転モードは前記運転者に課されるタスクが前記第1の運転モードに比して軽度な運転モードであり、前記車両の運転者の操作に依らずに前記車両の操舵および加減速を制御することで行われるものであり、前記決定した運転モードに係るタスクが運転者により実行されない場合に、よりタスクが重度な運転モードに前記車両の運転モードを変更し、
前記カメラ画像に示される道路区画線と前記地図情報に示される道路区画線との間に乖離が存在するか否かを判定し、
前記カメラ画像に示される道路区画線と前記地図情報に示される道路区画線との間に乖離が存在すると判定された場合、前記車両の周辺に存在する一以上の他車両の軌跡と、前記カメラ画像に示される道路区画線との間の平行度を算出し、
算出された前記平行度が第1閾値以上である場合、前記第2の運転モードを継続することを決定する、
車両制御方法。
【請求項8】
コンピュータに、
車両の周辺状況を撮像したカメラ画像を取得させ、
前記カメラ画像と地図情報に基づいて、前記車両の運転者の操作に依らずに前記車両の操舵および加減速を制御させ、
前記車両の運転モードを、第1の運転モードと、第2の運転モードとを含む複数の運転モードのいずれかに決定させ、前記第2の運転モードは前記運転者に課されるタスクが前記第1の運転モードに比して軽度な運転モードであり、前記車両の運転者の操作に依らずに前記車両の操舵および加減速を制御することで行われるものであり、前記決定した運転モードに係るタスクが運転者により実行されない場合に、よりタスクが重度な運転モードに前記車両の運転モードを変更させ、
前記カメラ画像に示される道路区画線と前記地図情報に示される道路区画線との間に乖離が存在するか否かを判定させ、
前記カメラ画像に示される道路区画線と前記地図情報に示される道路区画線との間に乖離が存在すると判定された場合、前記車両の周辺に存在する一以上の他車両の軌跡と、前記カメラ画像に示される道路区画線との間の平行度を算出させ、
算出された前記平行度が第1閾値以上である場合、前記第2の運転モードを継続することを決定させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載されたカメラによって認識された道路区画線に基づいて自車両の走行を制御する技術が知られている。例えば、特許文献1には、認識された道路区画線に基づいて自車両を走行させ、道路区画線の認識度合いが所定基準を満たさない場合には、先行車両の軌跡に基づいて自車両を走行させる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-050086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術は、カメラによって認識された道路区画線と、自車両が搭載する地図情報とに基づいて自車両の走行を制御するものである。しかしながら、従来技術では、カメラによって認識された道路区画線と、自車両が搭載する地図情報の内容とが異なる場合、車両の運転制御を適切に変更できない場合があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、カメラによって認識された道路区画線と、自車両が搭載する地図情報の内容とが異なる場合であっても、車両の運転制御を適切に変更することができる車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムは、以下の構成を採用した。
(1):この発明の一態様に係る車両制御装置は、車両の周辺状況を撮像したカメラ画像を取得する取得部と、前記カメラ画像と地図情報に基づいて、前記車両の運転者の操作に依らずに前記車両の操舵および加減速を制御する運転制御部と、前記車両の運転モードを、第1の運転モードと、第2の運転モードとを含む複数の運転モードのいずれかに決定し、前記第2の運転モードは前記運転者に課されるタスクが前記第1の運転モードに比して軽度な運転モードであり、少なくとも前記第2の運転モードを含む前記複数の運転モードの一部は前記運転制御部により制御されるものであり、前記決定した運転モードに係るタスクが運転者により実行されない場合に、よりタスクが重度な運転モードに前記車両の運転モードを変更するモード決定部と、前記カメラ画像に示される道路区画線と前記地図情報に示される道路区画線との間に乖離が存在するか否かを判定する乖離判定部と、前記カメラ画像に示される道路区画線と前記地図情報に示される道路区画線との間に乖離が存在すると判定された場合、前記車両の周辺に存在する一以上の他車両の軌跡と、前記カメラ画像に示される道路区画線との間の平行度を算出する平行度算出部と、を備え、前記モード決定部は、算出された前記平行度が第1閾値以上である場合、前記第2の運転モードを継続することを決定するものである。
【0007】
(2):上記(1)の態様において、前記平行度算出部は、前記車両の周辺に存在する一以上の他車両の数が第2閾値以上である場合に、前記平行度を算出するものである。
【0008】
(3):上記(1)又は(2)の態様において、前記平行度算出部は、前記車両の周辺に存在する一以上の他車両の軌跡と、前記カメラ画像に示される道路区画線と、前記地図情報に示される道路区画線とに基づいて、前記平行度を算出するものである。
【0009】
(4):上記(3)の態様において、前記平行度算出部は、前記車両の周辺に存在する一以上の他車両の各々の軌跡と前記カメラ画像に示される道路区画線との間の角度の平均値と、前記車両の周辺に存在する一以上の他車両の各々の軌跡と前記地図情報に示される道路区画線との間の角度の平均値と、に基づいて前記平行度を算出するものである。
【0010】
(5):上記(3)の態様において、前記平行度算出部は、前記車両の周辺に存在する一以上の他車両の各々の軌跡と前記カメラ画像に示される道路区画線との間の角度の中央値と、前記車両の周辺に存在する一以上の他車両の各々の軌跡と前記地図情報に示される道路区画線との間の角度の中央値と、に基づいて前記平行度を算出するものである。
【0011】
(6):上記(1)から(5)のいずれかの態様において、前記第2の運転モードは、前記運転者に、前記車両の操舵操作を受け付ける操作子を把持するタスクが課されない運転モードであり、前記第1の運転モードは、前記運転者に、少なくとも、前記操作子を把持するタスクが課される運転モードであるものである。
【0012】
(7):この発明の別の態様に係る車両制御方法は、コンピュータが、車両の周辺状況を撮像したカメラ画像を取得し、前記カメラ画像と地図情報に基づいて、前記車両の運転者の操作に依らずに前記車両の操舵および加減速を制御し、前記車両の運転モードを、第1の運転モードと、第2の運転モードとを含む複数の運転モードのいずれかに決定し、前記第2の運転モードは前記運転者に課されるタスクが前記第1の運転モードに比して軽度な運転モードであり、前記車両の運転者の操作に依らずに前記車両の操舵および加減速を制御することで行われるものであり、前記決定した運転モードに係るタスクが運転者により実行されない場合に、よりタスクが重度な運転モードに前記車両の運転モードを変更し、前記カメラ画像に示される道路区画線と前記地図情報に示される道路区画線との間に乖離が存在するか否かを判定し、前記カメラ画像に示される道路区画線と前記地図情報に示される道路区画線との間に乖離が存在すると判定された場合、前記車両の周辺に存在する一以上の他車両の軌跡と、前記カメラ画像に示される道路区画線との間の平行度を算出し、算出された前記平行度が第1閾値以上である場合、前記第2の運転モードを継続することを決定するものである。
【0013】
(8):この発明の別の態様に係るプログラムは、コンピュータに、車両の周辺状況を撮像したカメラ画像を取得させ、前記カメラ画像と地図情報に基づいて、前記車両の運転者の操作に依らずに前記車両の操舵および加減速を制御させ、前記車両の運転モードを、第1の運転モードと、第2の運転モードとを含む複数の運転モードのいずれかに決定させ、前記第2の運転モードは前記運転者に課されるタスクが前記第1の運転モードに比して軽度な運転モードであり、前記車両の運転者の操作に依らずに前記車両の操舵および加減速を制御することで行われるものであり、前記決定した運転モードに係るタスクが運転者により実行されない場合に、よりタスクが重度な運転モードに前記車両の運転モードを変更させ、前記カメラ画像に示される道路区画線と前記地図情報に示される道路区画線との間に乖離が存在するか否かを判定させ、前記カメラ画像に示される道路区画線と前記地図情報に示される道路区画線との間に乖離が存在すると判定された場合、前記車両の周辺に存在する一以上の他車両の軌跡と、前記カメラ画像に示される道路区画線との間の平行度を算出させ、算出された前記平行度が第1閾値以上である場合、前記第2の運転モードを継続することを決定させるものである。
【発明の効果】
【0014】
(1)~(8)によれば、カメラによって認識された道路区画線と、自車両が搭載する地図情報の内容とが異なる場合であっても、車両の運転制御を適切に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係る車両制御装置を利用した車両システム1の構成図である。
図2】第1制御部120および第2制御部160の機能構成図である。
図3】運転モードと自車両Mの制御状態、およびタスクの対応関係の一例を示す図である。
図4】実施形態に係る車両制御装置の動作が実行される場面の一例を示す図である。
図5】平行度に基づいて運転モードを決定する方法を説明するためのグラフである。
図6】平行度を算出する計算対象から除外される他車両の一例を示す図である。
図7】実施形態に係る車両制御装置によって実行される動作の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照し、本発明の車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムの実施形態について説明する。
【0017】
[全体構成]
図1は、実施形態に係る車両制御装置を利用した車両システム1の構成図である。車両システム1が搭載される車両は、例えば、二輪や三輪、四輪等の車両であり、その駆動源は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの内燃機関、電動機、或いはこれらの組み合わせである。電動機は、内燃機関に連結された発電機による発電電力、或いは二次電池や燃料電池の放電電力を使用して動作する。
【0018】
車両システム1は、例えば、カメラ10と、レーダ装置12と、LIDAR(Light Detection and Ranging)14と、物体認識装置16と、通信装置20と、HMI(Human Machine Interface)30と、車両センサ40と、ナビゲーション装置50と、MPU(Map Positioning Unit)60と、ドライバモニタカメラ70と、運転操作子80と、自動運転制御装置100と、走行駆動力出力装置200と、ブレーキ装置210と、ステアリング装置220とを備える。これらの装置や機器は、CAN(Controller Area Network)通信線等の多重通信線やシリアル通信線、無線通信網等によって互いに接続される。なお、図1に示す構成はあくまで一例であり、構成の一部が省略されてもよいし、更に別の構成が追加されてもよい。
【0019】
カメラ10は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラ10は、車両システム1が搭載される車両(以下、自車両M)の任意の箇所に取り付けられる。前方を撮像する場合、カメラ10は、フロントウインドシールド上部やルームミラー裏面等に取り付けられる。カメラ10は、例えば、周期的に繰り返し自車両Mの周辺を撮像する。カメラ10は、ステレオカメラであってもよい。
【0020】
レーダ装置12は、自車両Mの周辺にミリ波などの電波を放射すると共に、物体によって反射された電波(反射波)を検出して少なくとも物体の位置(距離および方位)を検出する。レーダ装置12は、自車両Mの任意の箇所に取り付けられる。レーダ装置12は、FM-CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式によって物体の位置および速度を検出してもよい。
【0021】
LIDAR14は、自車両Mの周辺に光(或いは光に近い波長の電磁波)を照射し、散乱光を測定する。LIDAR14は、発光から受光までの時間に基づいて、対象までの距離を検出する。照射される光は、例えば、パルス状のレーザー光である。LIDAR14は、自車両Mの任意の箇所に取り付けられる。
【0022】
物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14のうち一部または全部による検出結果に対してセンサフュージョン処理を行って、物体の位置、種類、速度などを認識する。物体認識装置16は、認識結果を自動運転制御装置100に出力する。物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14の検出結果をそのまま自動運転制御装置100に出力してよい。車両システム1から物体認識装置16が省略されてもよい。
【0023】
通信装置20は、例えば、セルラー網やWi-Fi網、Bluetooth(登録商標)、DSRC(Dedicated Short Range Communication)などを利用して、自車両Mの周辺に存在する他車両と通信し、或いは無線基地局を介して各種サーバ装置と通信する。
【0024】
HMI30は、自車両Mの乗員に対して各種情報を提示すると共に、乗員による入力操作を受け付ける。HMI30は、各種表示装置、スピーカ、ブザー、タッチパネル、スイッチ、キーなどを含む。
【0025】
車両センサ40は、自車両Mの速度を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサ、自車両Mの向きを検出する方位センサ等を含む。
【0026】
ナビゲーション装置50は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機51と、ナビHMI52と、経路決定部53とを備える。ナビゲーション装置50は、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置に第1地図情報54を保持している。GNSS受信機51は、GNSS衛星から受信した信号に基づいて、自車両Mの位置を特定する。自車両Mの位置は、車両センサ40の出力を利用したINS(Inertial Navigation System)によって特定または補完されてもよい。ナビHMI52は、表示装置、スピーカ、タッチパネル、キーなどを含む。ナビHMI52は、前述したHMI30と一部または全部が共通化されてもよい。経路決定部53は、例えば、GNSS受信機51により特定された自車両Mの位置(或いは入力された任意の位置)から、ナビHMI52を用いて乗員により入力された目的地までの経路(以下、地図上経路)を、第1地図情報54を参照して決定する。第1地図情報54は、例えば、道路を示すリンクと、リンクによって接続されたノードとによって道路形状が表現された情報である。第1地図情報54は、道路の曲率やPOI(Point Of Interest)情報などを含んでもよい。地図上経路は、MPU60に出力される。ナビゲーション装置50は、地図上経路に基づいて、ナビHMI52を用いた経路案内を行ってもよい。ナビゲーション装置50は、例えば、乗員の保有するスマートフォンやタブレット端末等の端末装置の機能によって実現されてもよい。ナビゲーション装置50は、通信装置20を介してナビゲーションサーバに現在位置と目的地を送信し、ナビゲーションサーバから地図上経路と同等の経路を取得してもよい。
【0027】
MPU60は、例えば、推奨車線決定部61を含み、HDDやフラッシュメモリなどの記憶装置に第2地図情報62を保持している。推奨車線決定部61は、ナビゲーション装置50から提供された地図上経路を複数のブロックに分割し(例えば、車両進行方向に関して100[m]毎に分割し)、第2地図情報62を参照してブロックごとに推奨車線を決定する。推奨車線決定部61は、左から何番目の車線を走行するといった決定を行う。推奨車線決定部61は、地図上経路に分岐箇所が存在する場合、自車両Mが、分岐先に進行するための合理的な経路を走行できるように、推奨車線を決定する。
【0028】
第2地図情報62は、第1地図情報54よりも高精度な地図情報である。第2地図情報62は、例えば、車線の中央の情報あるいは車線の境界の情報等を含んでいる。また、第2地図情報62には、道路情報、交通規制情報、住所情報(住所・郵便番号)、施設情報、電話番号情報、後述するモードAまたはモードBが禁止される禁止区間の情報などが含まれてよい。第2地図情報62は、通信装置20が他装置と通信することにより、随時、アップデートされてよい。
【0029】
ドライバモニタカメラ70は、例えば、CCDやCMOS等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。ドライバモニタカメラ70は、自車両Mの運転席に着座した乗員(以下、運転者)の頭部を正面から(顔面を撮像する向きで)撮像可能な位置および向きで、自車両Mにおける任意の箇所に取り付けられる。例えば、ドライバモニタカメラ70は、自車両Mのインストルメントパネルの中央部に設けられたディスプレイ装置の上部に取り付けられる。
【0030】
運転操作子80は、例えば、ステアリングホイール82の他、アクセルペダル、ブレーキペダル、シフトレバー、その他の操作子を含む。運転操作子80には、操作量あるいは操作の有無を検出するセンサが取り付けられており、その検出結果は、自動運転制御装置100、もしくは、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220のうち一部または全部に出力される。ステアリングホイール82は、「運転者による操舵操作を受け付ける操作子」の一例である。操作子は、必ずしも環状である必要は無く、異形ステアやジョイスティック、ボタンなどの形態であってもよい。ステアリングホイール82には、ステアリング把持センサ84が取り付けられている。ステアリング把持センサ84は、静電容量センサなどにより実現され、運転者がステアリングホイール82を把持している(力を加えられる状態で接していることをいう)か否かを検知可能な信号を自動運転制御装置100に出力する。
【0031】
自動運転制御装置100は、例えば、第1制御部120と、第2制御部160とを備える。第1制御部120と第2制御部160は、それぞれ、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め自動運転制御装置100のHDDやフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体(非一過性の記憶媒体)がドライブ装置に装着されることで自動運転制御装置100のHDDやフラッシュメモリにインストールされてもよい。自動運転制御装置100は「車両制御装置」の一例であり、行動計画生成部140と第2制御部160を合わせたものが「運転制御部」の一例である。
【0032】
図2は、第1制御部120および第2制御部160の機能構成図である。第1制御部120は、例えば、認識部130と、行動計画生成部140と、モード決定部150とを備える。第1制御部120は、例えば、AI(Artificial Intelligence;人工知能)による機能と、予め与えられたモデルによる機能とを並行して実現する。例えば、「交差点を認識する」機能は、ディープラーニング等による交差点の認識と、予め与えられた条件(パターンマッチング可能な信号、道路標示などがある)に基づく認識とが並行して実行され、双方に対してスコア付けして総合的に評価することで実現されてよい。これによって、自動運転の信頼性が担保される。
【0033】
認識部130は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14から物体認識装置16を介して入力された情報に基づいて、自車両Mの周辺にある物体の位置、および速度、加速度等の状態を認識する。物体の位置は、例えば、自車両Mの代表点(重心や駆動軸中心など)を原点とした絶対座標上の位置として認識され、制御に使用される。物体の位置は、その物体の重心やコーナー等の代表点で表されてもよいし、領域で表されてもよい。物体の「状態」とは、物体の加速度やジャーク、あるいは「行動状態」(例えば車線変更をしている、またはしようとしているか否か)を含んでもよい。
【0034】
また、認識部130は、例えば、自車両Mが走行している車線(走行車線)を認識する。例えば、認識部130は、第2地図情報62から得られる道路区画線のパターン(例えば実線と破線の配列)と、カメラ10によって撮像された画像から認識される自車両Mの周辺の道路区画線のパターンとを比較することで、走行車線を認識する。なお、認識部130は、道路区画線に限らず、道路区画線や路肩、縁石、中央分離帯、ガードレールなどを含む走路境界(道路境界)を認識することで、走行車線を認識してもよい。この認識において、ナビゲーション装置50から取得される自車両Mの位置やINSによる処理結果が加味されてもよい。また、認識部130は、一時停止線、障害物、赤信号、料金所、その他の道路事象を認識する。
【0035】
認識部130は、走行車線を認識する際に、走行車線に対する自車両Mの位置や姿勢を認識する。認識部130は、例えば、自車両Mの基準点の車線中央からの乖離、および自車両Mの進行方向の車線中央を連ねた線に対してなす角度を、走行車線に対する自車両Mの相対位置および姿勢として認識してもよい。これに代えて、認識部130は、走行車線のいずれかの側端部(道路区画線または道路境界)に対する自車両Mの基準点の位置などを、走行車線に対する自車両Mの相対位置として認識してもよい。
【0036】
行動計画生成部140は、原則的には推奨車線決定部61により決定された推奨車線を走行し、更に、自車両Mの周辺状況に対応できるように、自車両Mが自動的に(運転者の操作に依らずに)将来走行する目標軌道を生成する。目標軌道は、例えば、速度要素を含んでいる。例えば、目標軌道は、自車両Mの到達すべき地点(軌道点)を順に並べたものとして表現される。軌道点は、道なり距離で所定の走行距離(例えば数[m]程度)ごとの自車両Mの到達すべき地点であり、それとは別に、所定のサンプリング時間(例えば0コンマ数[sec]程度)ごとの目標速度および目標加速度が、目標軌道の一部として生成される。また、軌道点は、所定のサンプリング時間ごとの、そのサンプリング時刻における自車両Mの到達すべき位置であってもよい。この場合、目標速度や目標加速度の情報は軌道点の間隔で表現される。
【0037】
行動計画生成部140は、目標軌道を生成するにあたり、自動運転のイベントを設定してよい。自動運転のイベントには、定速走行イベント、低速追従走行イベント、車線変更イベント、分岐イベント、合流イベント、テイクオーバーイベントなどがある。行動計画生成部140は、起動させたイベントに応じた目標軌道を生成する。
【0038】
モード決定部150は、自車両Mの運転モードを、運転者に課されるタスクが異なる複数の運転モードのいずれかに決定する。モード決定部150は、例えば、乖離判定部152と平行度算出部154とを備える。乖離判定部152と平行度算出部154の機能については後述する。
【0039】
図3は、運転モードと自車両Mの制御状態、およびタスクの対応関係の一例を示す図である。自車両Mの運転モードには、例えば、モードAからモードEの5つのモードがある。制御状態すなわち自車両Mの運転制御の自動化度合いは、モードAが最も高く、次いでモードB、モードC、モードDの順に低くなり、モードEが最も低い。この逆に、運転者に課されるタスクは、モードAが最も軽度であり、次いでモードB、モードC、モードDの順に重度となり、モードEが最も重度である。なお、モードDおよびEでは自動運転でない制御状態となるため、自動運転制御装置100としては自動運転に係る制御を終了し、運転支援または手動運転に移行させるまでが責務である。以下、それぞれの運転モードの内容について例示する。
【0040】
モードAでは、自動運転の状態となり、運転者には前方監視、ステアリングホイール82の把持(図ではステアリング把持)のいずれも課されない。但し、モードAであっても運転者は、自動運転制御装置100を中心としたシステムからの要求に応じて速やかに手動運転に移行できる体勢であることが要求される。なお、ここで言う自動運転とは、操舵、加減速のいずれも運転者の操作に依らずに制御されることをいう。前方とは、フロントウインドシールドを介して視認される自車両Mの進行方向の空間を意味する。モードAは、例えば、高速道路などの自動車専用道路において、所定速度(例えば50[km/h]程度)以下で自車両Mが走行しており、追従対象の前走車両が存在するなどの条件が満たされる場合に実行可能な運転モードであり、TJP(Traffic Jam Pilot)と称される場合もある。この条件が満たされなくなった場合、モード決定部150は、モードBに自車両Mの運転モードを変更する。
【0041】
モードBでは、運転支援の状態となり、運転者には自車両Mの前方を監視するタスク(以下、前方監視)が課されるが、ステアリングホイール82を把持するタスクは課されない。モードCでは、運転支援の状態となり、運転者には前方監視のタスクと、ステアリングホイール82を把持するタスクが課される。モードDは、自車両Mの操舵と加減速のうち少なくとも一方に関して、ある程度の運転者による運転操作が必要な運転モードである。例えば、モードDでは、ACC(Adaptive Cruise Control)やLKAS(Lane Keeping Assist System)といった運転支援が行われる。モードEでは、操舵、加減速ともに運転者による運転操作が必要な手動運転の状態となる。モードD、モードEともに、当然ながら運転者には自車両Mの前方を監視するタスクが課される。
【0042】
自動運転制御装置100(および運転支援装置(不図示))は、運転モードに応じた自動車線変更を実行する。自動車線変更には、システム要求による自動車線変更(1)と、運転者要求による自動車線変更(2)がある。自動車線変更(1)には、前走車両の速度が自車両の速度に比して基準以上に小さい場合に行われる、追い越しのための自動車線変更と、目的地に向けて進行するための自動車線変更(推奨車線が変更されたことによる自動車線変更)とがある。自動車線変更(2)は、速度や周辺車両との位置関係等に関する条件が満たされた場合において、運転者により方向指示器が操作された場合に、操作方向に向けて自車両Mを車線変更させるものである。
【0043】
自動運転制御装置100は、モードAにおいて、自動車線変更(1)および(2)のいずれも実行しない。自動運転制御装置100は、モードBおよびCにおいて、自動車線変更(1)および(2)のいずれも実行する。運転支援装置(不図示)は、モードDにおいて、自動車線変更(1)は実行せず自動車線変更(2)を実行する。モードEにおいて、自動車線変更(1)および(2)のいずれも実行されない。
【0044】
モード決定部150は、決定した運転モード(以下、現運転モード)に係るタスクが運転者により実行されない場合に、よりタスクが重度な運転モードに自車両Mの運転モードを変更する。
【0045】
例えば、モードAにおいて運転者が、システムからの要求に応じて手動運転に移行できない体勢である場合(例えば許容エリア外の脇見を継続している場合や、運転困難となる予兆が検出された場合)、モード決定部150は、HMI30を用いて運転者に手動運転への移行を促し、運転者が応じなければ自車両Mを路肩に寄せて徐々に停止させ、自動運転を停止する、といった制御を行う。自動運転を停止した後は、自車両はモードDまたはEの状態になり、運転者の手動操作によって自車両Mを発進させることが可能となる。以下、「自動運転を停止」に関して同様である。モードBにおいて運転者が前方を監視していない場合、モード決定部150は、HMI30を用いて運転者に前方監視を促し、運転者が応じなければ自車両Mを路肩に寄せて徐々に停止させ、自動運転を停止する、といった制御を行う。モードCにおいて運転者が前方を監視していない場合、或いはステアリングホイール82を把持していない場合、モード決定部150は、HMI30を用いて運転者に前方監視を、および/またはステアリングホイール82を把持するように促し、運転者が応じなければ自車両Mを路肩に寄せて徐々に停止させ、自動運転を停止する、といった制御を行う。
【0046】
第2制御部160は、行動計画生成部140によって生成された目標軌道を、予定の時刻通りに自車両Mが通過するように、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220を制御する。
【0047】
図2に戻り、第2制御部160は、例えば、取得部162と、速度制御部164と、操舵制御部166とを備える。取得部162は、行動計画生成部140により生成された目標軌道(軌道点)の情報を取得し、メモリ(不図示)に記憶させる。速度制御部164は、メモリに記憶された目標軌道に付随する速度要素に基づいて、走行駆動力出力装置200またはブレーキ装置210を制御する。操舵制御部166は、メモリに記憶された目標軌道の曲がり具合に応じて、ステアリング装置220を制御する。速度制御部164および操舵制御部166の処理は、例えば、フィードフォワード制御とフィードバック制御との組み合わせにより実現される。一例として、操舵制御部166は、自車両Mの前方の道路の曲率に応じたフィードフォワード制御と、目標軌道からの乖離に基づくフィードバック制御とを組み合わせて実行する。
【0048】
走行駆動力出力装置200は、車両が走行するための走行駆動力(トルク)を駆動輪に出力する。走行駆動力出力装置200は、例えば、内燃機関、電動機、および変速機などの組み合わせと、これらを制御するECU(Electronic Control Unit)とを備える。ECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、上記の構成を制御する。
【0049】
ブレーキ装置210は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、ブレーキECUとを備える。ブレーキECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って電動モータを制御し、制動操作に応じたブレーキトルクが各車輪に出力されるようにする。ブレーキ装置210は、運転操作子80に含まれるブレーキペダルの操作によって発生させた油圧を、マスターシリンダを介してシリンダに伝達する機構をバックアップとして備えてよい。なお、ブレーキ装置210は、上記説明した構成に限らず、第2制御部160から入力される情報に従ってアクチュエータを制御して、マスターシリンダの油圧をシリンダに伝達する電子制御式油圧ブレーキ装置であってもよい。
【0050】
ステアリング装置220は、例えば、ステアリングECUと、電動モータとを備える。電動モータは、例えば、ラックアンドピニオン機構に力を作用させて転舵輪の向きを変更する。ステアリングECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、電動モータを駆動し、転舵輪の向きを変更させる。
【0051】
[車両制御装置の動作]
次に、実施形態に係る車両制御装置の動作について説明する。以下の説明において、自車両Mは、モードBの運転モードにて走行中であることを前提とするものとする。図4は、実施形態に係る車両制御装置の動作が実行される場面の一例を示す図である。図4において、自車両Mは車線L1上を走行しており、自車両Mの前方には3台の他車両M1、M2、M3が走行している様子を表している。
【0052】
自車両Mが車線L1を走行中、認識部130は、自車両Mの周辺状況、特に、自車両Mの両側の道路区画線を、カメラ10によって撮像された画像に基づいて認識する。以下、カメラ10によって撮像された画像に基づいて認識された道路区画線をCLによって表し(以下、「カメラ道路区画線CL」と称する)、第2地図情報62に基づいて認識された道路区画線をMLによって表す(以下、「地図道路区画線ML」と称する)。
【0053】
乖離判定部152は、自車両Mが走行中、カメラ道路区画線CLと地図道路区画線MLとの間に乖離(アンマッチ)が存在するか否かを判定する。ここで、乖離とは、例えば、カメラ道路区画線CLと地図道路区画線MLとの間の距離が所定値以上であったり、又はカメラ道路区画線CLと地図道路区画線MLとの間の角度が所定値以上であることを意味する。
【0054】
平行度算出部154は、カメラ道路区画線CLと地図道路区画線MLとの間に乖離が存在すると判定された場合、自車両Mから所定距離以内に閾値以上の台数の他車両が存在するか否かを判定する。自車両Mから所定距離以内に閾値以上の台数の他車両が存在すると判定された場合、平行度算出部154は、これら他車両の軌跡と、カメラ道路区画線CLとの間の平行度を、以下に説明する方法によって算出する。
【0055】
例えば、図4の場合、平行度算出部154は、まず、他車両M1、M2、M3の各々について、走行軌跡T1、T2、T3を算出する。平行度算出部154は、例えば、カメラ画像に基づいて、所定期間における他車両M1、M2、M3の位置の変位を測定することによって、走行軌跡T1、T2、T3を算出することができる。
【0056】
次に、平行度算出部154は、算出した走行軌跡T1、T2、T3と、カメラ道路区画線CLおよび地図道路区画線MLとの間の角度を算出する。例えば、図4の場合、平行度算出部154は、他車両M1について、走行軌跡T1とカメラ道路区画線CL1(カメラ道路区画線CL1は、計算方法を説明する便宜上、カメラ道路区画線CLを平行移動して図示したものである。以下、CL2、CL3についても同様)との間の角度θc1と、走行軌跡T1と地図道路区画線ML1(地図道路区画線ML1は、計算方法を説明する便宜上、地図道路区画線MLを平行移動して図示したものである。以下、ML2、ML3についても同様)との間の角度θm1を算出する。同様に、平行度算出部154は、他車両M2について、走行軌跡T2とカメラ道路区画線CL2との間の角度θc2と、走行軌跡T2と地図道路区画線ML2との間の角度θm2を算出する。同様に、平行度算出部154は、他車両M3について、走行軌跡T3とカメラ道路区画線CL3との間の角度θc3と、走行軌跡T3と地図道路区画線ML3との間の角度θm2を算出する。なお、このとき、平行度算出部154は、例えば、他車両の走行軌跡を基準にして、時計回りの方向を正の角度、反時計回りの方向を負の角度として算出する(この設定は逆であってもよい)。
【0057】
次に、平行度算出部154は、検出された他車両について、算出した走行軌跡T1とカメラ道路区画線CL1との間の角度と、走行軌跡T1と地図道路区画線ML1との間の角度の平均値をそれぞれ算出する。より具体的には、図4の場合、平行度算出部154は、θc_av=(|θc1|+|θc2|+|θc3|)/3によって、走行軌跡T1とカメラ道路区画線CL1との間の角度の平均値を算出し、θm_av=(|θm1|+|θm2|+|θm3|)/3によって、走行軌跡T1と地図道路区画線ML1との間の角度の平均値を算出する。
【0058】
次に、平行度算出部154は、θm_av-θc_avによって、検出された他車両の走行軌跡Tとカメラ道路区画線CLとの間の平行度を算出する。すなわち、平行度θm_av-θc_avは、他車両がカメラ道路区画線CLと地図道路区画線MLのいずれとより平行に走行しているかを示す指標値であると言える。平行度θm_av-θc_avの値が大きければ大きいほど、他車両はカメラ道路区画線CLにより平行に走行していることを表し、平行度θm_av-θc_avの値が小さければ小さいほど、他車両は地図道路区画線MLにより平行に走行していることを表す。
【0059】
なお、上記の例においては、平行度算出部154は、走行軌跡T1とカメラ道路区画線CL1との間の角度の平均値と、走行軌跡T1と地図道路区画線ML1との間の角度の平均値をそれぞれ算出している。しかし、本発明はそのような構成に限定されず、平行度算出部154は、走行軌跡T1とカメラ道路区画線CL1との間の角度の中央値と、走行軌跡T1と地図道路区画線ML1との間の角度の中央値をそれぞれ求めても良い。これにより、他車両のうちの特定の車両が、異常な走行軌跡を辿ることにより、計算結果の精度が低下することを防ぐことができる。
【0060】
図5は、平行度に基づいて運転モードを決定する方法を説明するためのグラフである。図5に示す通り、モード決定部150は、算出された平行度θm_av-θc_avが閾値Th以上の場合(斜線Rによって示される領域)、カメラ道路区画線CLの信頼性は地図道路区画線MLの信頼性よりも高いと判断して、カメラ道路区画線CLを参照線として用いたモードBの運転モードを継続させる。閾値Thは、安全マージンを考慮して、ゼロより大きい値に設定される。一方、算出された平行度θm_av-θc_avが閾値未満の場合、モード決定部150は、運転モードをモードBよりもタスクが重度の運転モード(モードC、モードD、又はモードE)に変更する。これにより、カメラによって認識された道路区画線と、自車両が搭載する地図情報の内容とが異なる場合であっても、車両の運転制御を適切に変更することができる。
【0061】
なお、本実施形態では、図5を参照して説明した通り、モード決定部150は、算出された平行度θm_av-θc_avが閾値Th以上の場合、カメラ道路区画線CLを参照線として用いたモードBの運転モードを継続させる。しかし、本発明はそのような構成に限定されず、算出された平行度θm_av-θc_avが閾値Th以上の場合であっても、モード決定部150は、自車両Mの乗員に報知した上で、運転モードをモードBからモードCに変更しても良い。例えば、モード決定部150は、乖離判定部152によって乖離が判定され、かつ平行度θm_av-θc_avが閾値Th以上の場合、乖離を示す情報を自車両Mの乗員に報知し、乗員にモードCへの変更をレコメンドしたり、乖離の判定から一定期間後にモードCへの変更を行ってもよい。
【0062】
なお、上記の説明において、平行度算出部154は、自車両Mから所定距離以内に閾値以上の台数の他車両が存在すると判定された場合、これら他車両の軌跡と、カメラ道路区画線CLとの間の平行度を算出している。このとき、平行度算出部154は、自車両Mから所定距離以内に存在する他車両であっても、平行度を算出するために不適切な他車両は計算対象から除外しても良い。
【0063】
図6は、平行度を算出する計算対象から除外される他車両の一例を示す図である。図6は、自車両Mに加えて、車線L1を走行する他車両M1と、車線L1の隣接車線である車線L2を走行する他車両M2とが存在する状況を表している。図6に示される通り、平行度算出部154は、例えば、算出した走行軌跡M1が直線によって近似できない(より具体的には、走行軌跡M1と近似直線との誤差が閾値以上である)場合、当該走行軌跡M1に対応する他車両M1を、平行度を算出するための計算対象から除外する。また、例えば、自車両Mが走行する車線L1とは異なる車線L2を走行する他車両M2を、平行度を算出するための計算対象から除外する。これにより、平行度の算出精度を向上することができる。
【0064】
次に、図7を参照して、実施形態に係る車両制御装置によって実行される動作の流れについて説明する。図7は、実施形態に係る車両制御装置によって実行される動作の流れの一例を示すフローチャートである。本フローチャートに係る処理は、自車両Mが、カメラ道路区画線CLを用いたモードBの運転モードにて走行している間に所定サイクルで実行されるものである。
【0065】
まず、モード決定部150は、認識部130を介して、カメラ道路区画線CLと地図道路区画線MLとを取得する(ステップS100)。次に、乖離判定部152は、取得されたカメラ道路区画線CLと地図道路区画線MLとの間に乖離が存在するか否かを判定する(ステップS102)。
【0066】
次に、乖離判定部152は、取得されたカメラ道路区画線CLと地図道路区画線MLとの間に乖離が存在すると判定された場合、自車両Mから所定距離以内に閾値以上数の他車両が存在するか否かを判定する(ステップS104)。自車両Mから所定距離以内に閾値以上の数の他車両が存在しないと判定された場合、モード決定部150は、運転モードをモードBからモードCに変更する(ステップS106)。
【0067】
一方、自車両Mから所定距離以内に閾値以上の数の他車両が存在すると判定された場合、平行度算出部154は、これら他車両の走行軌跡と、カメラ道路区画線CLと、地図道路区画線MLとに基づいて、平行度を算出する(ステップS108)。次に、モード決定部150は、算出した平行度が閾値以上であるか否かを判定する(ステップS110)。算出した平行度が閾値未満であると判定された場合、モード決定部150は、ステップS106において、運転モードをモードBからモードCに変更する。一方、算出した平行度が閾値以上であると判定された場合、モード決定部150は、カメラ道路区画線CLを用いたモードBの継続を決定する(ステップS112)。これにより、本フローチャートの処理が終了する。
【0068】
以上の通り説明した本実施形態によれば、カメラ道路区画線と地図道路区画線との間に乖離が発生し、かつ自車両の周辺に複数の他車両が存在する場合、当該複数の他車両の走行軌跡と、カメラ道路区画線と、地図道路区画線とに基づいて平行度を算出し、算出された平行度に応じて、自車両の運転モードを制御する。これにより、カメラによって認識された道路区画線と、自車両が搭載する地図情報の内容とが異なる場合であっても、車両の運転制御を適切に変更することができる。
【0069】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
プログラムを記憶した記憶装置と、
ハードウェアプロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、前記コンピュータによって読み込み可能な命令を実行することにより(the processor executing the computer-readable instructions to:)
車両の周辺状況を撮像したカメラ画像を取得し、
前記カメラ画像と地図情報に基づいて、前記車両の運転者の操作に依らずに前記車両の操舵および加減速を制御し、
前記車両の運転モードを、第1の運転モードと、第2の運転モードとを含む複数の運転モードのいずれかに決定し、前記第2の運転モードは前記運転者に課されるタスクが前記第1の運転モードに比して軽度な運転モードであり、前記車両の運転者の操作に依らずに前記車両の操舵および加減速を制御することで行われるものであり、前記決定した運転モードに係るタスクが運転者により実行されない場合に、よりタスクが重度な運転モードに前記車両の運転モードを変更し、
前記カメラ画像に示される道路区画線と前記地図情報に示される道路区画線との間に乖離が存在するか否かを判定し、
前記カメラ画像に示される道路区画線と前記地図情報に示される道路区画線との間に乖離が存在すると判定された場合、前記車両の周辺に存在する一以上の他車両の軌跡と、前記カメラ画像に示される道路区画線との間の平行度を算出し、
算出された前記平行度が第1閾値以上である場合、前記第2の運転モードを継続することを決定する、
ように構成されている、車両制御装置。
【0070】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0071】
10 カメラ
12 レーダ装置
14 LIDAR
16 物体認識装置
100 自動運転制御装置
120 第1制御部
130 認識部
140 行動計画生成部
150 モード決定部
152 乖離判定部
154 平行度算出部
160 第2制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7