(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-25
(45)【発行日】2025-10-03
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/14 20060101AFI20250926BHJP
B64D 27/24 20240101ALI20250926BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20250926BHJP
B60L 50/61 20190101ALI20250926BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20250926BHJP
B60L 9/18 20060101ALN20250926BHJP
【FI】
H02J7/14 H
B64D27/24
B60L15/20 S
B60L50/61
H02J7/14 N
H02J7/00 B
B60L9/18 P ZHV
(21)【出願番号】P 2022098126
(22)【出願日】2022-06-17
【審査請求日】2024-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】羽賀 久夫
【審査官】佐藤 卓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-77361(JP,A)
【文献】特開2019-205242(JP,A)
【文献】特開2007-159236(JP,A)
【文献】特開2014-50129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/14
B64D 27/24
B60L 15/20
B60L 50/61
H02J 7/00
B60L 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機と、
前記発電機を駆動させる駆動源と、
前記発電機で発電した電力を複数の電気負荷にそれぞれ供給する複数の電力供給ラインと、
電力の供給方向において、前記電気負荷よりも上流でそれぞれの前記電力供給ラインと接続される複数のバッテリと、
各々の前記バッテリの充電量に基づいて各々の前記バッテリに通電可能な電流値を算出する電流値算出部と、
前記電流値算出部で算出された電流値と前記バッテリの容量とに基づいて前記バッテリの要求電力を算出するバッテリ要求電力算出部と、
前記バッテリ要求電力算出部で算出された電力と前記電気負荷に要求される電力とを合計する電力合計部と、
を備え、
前記電力合計部で算出された電力を前記発電機で発電するように前記駆動源が制御されることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
複数の前記電力供給ラインの作動状態を検出する作動状態検出部をさらに備え、
前記作動状態検出部により検出された前記電力供給ラインの作動状態に基づいて前記発電機の発電量が制御されることを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記電源装置は、電気推進式の飛行体の電源であり、
前記電気負荷は、前記飛行体のプロペラを回転させる電気モータであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、航空機の電源装置等において、駆動源と、発電機と、複数のバッテリと、発電機又はバッテリの電力により駆動されるモータと、を有する電源装置が知られている。これらの電源装置では、複数のバッテリに対する充電量が平衡化されるように制御するための技術が種々提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、複数のバッテリの充電状態を検出し、検出したバッテリの充電状態に基づいて各バッテリへの給電の優先順位を決定する優先電池電流指令決定部を備える電源装置の構成が開示されている。優先電池電流指令決定部は、複数のバッテリのうち高圧バッテリの電流指令値、低圧バッテリの電流指令値、及びモータの駆動に必要なトルクのトルク指令値、のうちいずれか2つの指令値を優先的に制御することで、残りの1つを従属的に制御する。特許文献1に記載の技術によれば、これにより、各バッテリの充電量の平衡化を図り、電池性能を向上できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術にあっては、各バッテリの充電量に基づいて各バッテリへの電力配分を決定する。つまり各バッテリに対して必要な電力を計算し、さらに優先順位を決定する必要があるので、制御システムの構成が複雑になるおそれがある。また、複数のバッテリ間で電力の授受を行うための装置が必要であり、制御装置が複雑化してコストが増加するおそれがあった。さらに、バッテリの充電量を所定値に収めるために緻密な制御が要求されるので、より一層制御が複雑になる。これにより、制御装置が複雑化され高価になるおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、従来技術と比較して制御システムの複雑化を抑制しつつ、複数のバッテリに対する充電量を平衡化することができる電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、請求項1に記載の発明に係る電源装置(例えば、実施形態における電源装置1)は、発電機(例えば、実施形態における発電機3)と、前記発電機を駆動させる駆動源(例えば、実施形態における駆動源2)と、前記発電機で発電した電力を複数の電気負荷にそれぞれ供給する複数の電力供給ライン(例えば、実施形態における電力供給ライン4)と、電力の供給方向において、前記電気負荷よりも上流でそれぞれの前記電力供給ラインと接続される複数のバッテリ(例えば、実施形態におけるバッテリ5)と、各々の前記バッテリの充電量に基づいて各々の前記バッテリに通電可能な電流値(例えば、実施形態におけるCレートCR1,CR2,CR3,CR4)を算出する電流値算出部(例えば、実施形態における電流値算出部11)と、前記電流値算出部で算出された電流値と前記バッテリの容量(例えば、実施形態におけるバッテリ容量BA)とに基づいて前記バッテリの要求電力(例えば、実施形態におけるバッテリの要求電力P,Q)を算出するバッテリ要求電力算出部(例えば、実施形態におけるバッテリ要求電力算出部12)と、前記バッテリ要求電力算出部で算出された電力と前記電気負荷に要求される電力とを合計する電力合計部(例えば、実施形態における電力合計部13)と、を備え、前記電力合計部で算出された電力を前記発電機で発電するように前記駆動源が制御されることを特徴としている。
【0008】
また、請求項2に記載の発明に係る電源装置は、複数の前記電力供給ラインの作動状態を検出する作動状態検出部(例えば、実施形態における作動状態検出部17)をさらに備え、前記作動状態検出部により検出された前記電力供給ラインの作動状態に基づいて前記発電機の発電量が制御されることを特徴としている。
【0009】
また、請求項3に記載の発明に係る電源装置は、前記電源装置は、電気推進式の飛行体(例えば、実施形態における飛行体10)の電源であり、前記電気負荷は、前記飛行体のプロペラ(例えば、実施形態におけるプロペラ8)を回転させる電気モータ(例えば、実施形態における電気モータ7)であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1に記載の電源装置によれば、発電機で発電された電力は、各電力供給ラインを通じて複数のバッテリにそれぞれ供給される。電源装置は、バッテリに通電可能な電流値を算出する電流値算出部と、電流値算出部で算出された電流値及びバッテリ容量に基づいて要求電力を算出するバッテリ要求電力算出部と、これらの電力及び電気負荷に要求される電力を合算する電力合計部と、を有する。電力合計部で算出された電力を発電機で発電するように、駆動源が制御される。よって、バッテリに通電可能な電流値とバッテリ容量とに基づいて、発電機で発電すべき電力(発電電力)を容易に算出することができる。電源装置では、発電機で発電された電力は、バッテリの電位差に応じて各電力供給ラインに分配される。よって、各バッテリの電位差に依らずに、複数のバッテリの充電量が均等となるように充電することができる。さらに、例えば各電力供給ラインにおける電気負荷の出力(消費電力)が互いに異なる場合であっても、充電量の低いバッテリから優先的に充電できる。これにより、充電量が低いバッテリと同じ電力供給ラインに接続された電気負荷の出力を向上できる。結果として、各電力供給ラインにおける出力を平衡化できるとともに、各電気負荷の出力のバラツキを是正できる。換言すれば、電気負荷の出力に依らずバッテリの充電量の平衡化を図ることができる。よって、安定した制御が可能となる。
また、例えばバッテリ毎に充放電を制御する従来技術と比較して、バッテリ毎の充放電を管理(制御)するための制御装置等が不要となる。これにより、電源装置のコストを削減できる。よって、従来よりも簡素かつ廉価な構成により、複数のバッテリに対して万遍なく充電させることができる。
したがって、従来技術と比較して制御システムの複雑化を抑制しつつ、複数のバッテリに対する充電量を平衡化することができる電源装置を提供できる。
充電量の低いバッテリから優先的に充電されるので、充電量の低いバッテリにおける過放電を抑制できる。また、相対的に充電量の高いバッテリへの電力供給が抑制されるので、充電量の高いバッテリにおける過充電を抑制できる。よって、バッテリを最適な使用範囲で使用することができ、バッテリの劣化を抑制できる。
さらに、複数のバッテリ間で電力の授受が行われないので、バッテリ間で電力の授受が行われる従来技術と比較して、制御システムの複雑化を抑制できる。また、バッテリ間で電力の授受を行わずに発電機からの電力のみによりバッテリの充放電を制御することにより、充放電の効率を向上することができる。
【0011】
本発明の請求項2に記載の電源装置によれば、電源装置は、電力供給ラインの作動状態を検出する作動状態検出部をさらに備え、電力供給ラインの作動状態に基づいて発電機の発電電力が制御される。これにより、例えばいずれかのバッテリに故障等の不具合が生じた場合に、不具合が生じた電力供給ラインへの電力供給を抑制することが可能となる。さらに、電力供給がストップされた分の電力を発電電力から減じる制御等を行うことにより、正常な電力供給ラインへの過充電を抑制できる。よって、故障等のアクシデントや不具合にも対応可能な汎用性の高い電源装置とすることができる。
【0012】
本発明の請求項3に記載の電源装置によれば、電源装置は、電気推進式の飛行体の電源として用いられる。ここで、複数のプロペラを回転させて飛行する飛行体では、例えば天候や飛行体の姿勢等により、電力供給ラインごとに消費される電力のバラツキが大きくなり易い。このため、特に電力供給ラインごとに電気負荷(電気モータ)への要求電力の差が大きい飛行体に上記の電源装置を適用した場合には、より好適に使用することができる。すなわち、バッテリを含めた電力供給ラインごとの消費電力に応じた電力供給を行うことができる。
また、各電力供給ラインにおける要求電力に応じて発電機からの電力が分配されるので、飛行体のコントロールを容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係る電源装置を搭載した飛行体の外観図。
【
図4】電源装置における制御の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
(飛行体)
図1は、実施形態に係る電源装置1を搭載した飛行体10の外観図である。
飛行体10は、例えば、複数のプロペラ8を回転させて飛行する電気推進式の航空機である。飛行体10は、機体19と、電源装置1と、を備える。
【0016】
本実施形態において、機体19には、下方を向く8個のプロペラ(ロータ)51,52,53,54,55,56,57,58と、後方を向く2個の推進用プロペラ36,37と、が取り付けられている。以下、複数のプロペラ51,52,53,54,55,56,57,58を互いに区別しない場合は、プロペラ8と称する場合がある。
プロペラ8は、不図示の取り付け部材を介して機体19に取り付けられている。プロペラ8の基部(回転軸)には、電気モータ7(
図2参照)が取り付けられている。電気モータ7は、プロペラ8を駆動させる。電気モータ7は、例えばブラシレスDCモータである。プロペラ8は、飛行体10が水平姿勢である場合に、重力方向と平行な軸線周りに回転するブレードの固定翼である。
【0017】
推進用プロペラ36,37は、飛行体10の後方に取り付けられている。推進用プロペラ36,37は、不図示の取り付け部材を介して機体19に取り付けられている。推進用プロペラ36,37の基部(回転軸)には、推進用プロペラ36,37を駆動する電気モータ7(
図2参照)が取り付けられている。推進用プロペラ36,37は、飛行体10が水平姿勢である場合に、重力方向と交差する軸線(例えば飛行体10の前後方向に沿う軸線)周りに回転するブレードの固定翼である。
【0018】
制御信号に応じてプロペラ8及び推進用プロペラ36,37が回転することで、飛行体10は、所望の飛行状態で飛行する。制御信号は、操作者の操作または自動操縦における指示に基づく飛行体10を制御するための信号である。例えば、プロペラ51,54,55,58が第1方向(例えば時計方向)に回転し、プロペラ52,53,56,57が第2方向(例えば反時計方向)に回転することで飛行体10が飛行する。
【0019】
図2は、実施形態に係る電源装置1の概略構成図である。
図2に示すように、電源装置1は、上述した飛行体10に搭載される。電源装置1は、飛行体10の電源として使用される。電源装置1は、駆動源2と、発電機3と、複数の電力供給ライン4と、複数のバッテリ5と、ダイオード6と、電気モータ7(請求項の電気負荷)と、上述のプロペラ8と、制御部9(
図3参照)と、を備える。
【0020】
(駆動源)
駆動源2は、いわゆるガスタービンエンジンである。駆動源2は、複数(本実施形態では2個)設けられている。2個の駆動源2の構成は同一であるため、以下では1個の駆動源2を例にして説明する。駆動源2は、圧縮機と、タービンと、圧縮機及びタービン間を接続する回転軸(いずれも不図示)と、を有する。圧縮機は、飛行体10の機体に設けられた不図示の通風孔から吸入される吸入空気を圧縮する。タービンは、圧縮機と接続されて圧縮機と一体回転する。駆動源2には、スタータモータが接続されている。駆動源2の始動時には、まず後述するバッテリ5からの電力でスタータモータが駆動される。これにより、駆動源2は、スタータモータから伝達された回転力によって始動する。
【0021】
(発電機)
発電機3は、駆動源2と対応する個数(本実施形態では2個)設けられている。2個の発電機3の構成は同一であるため、以下では1個の発電機3を例にして説明する。発電機3は、伝達軸28及び減速機構(不図示)を介して駆動源2と接続されている。発電機3は、駆動源2の軸方向におけるタービン側に配置されている。発電機3は、駆動源2と同軸上に設けられている。発電機3は、駆動源2の駆動によって電力(交流電力)を発電する。発電機3で発電された交流電力は、不図示のパワードライブユニット(PDU)のコンバータ29で直流電力に変換され、電力供給ライン4を介して各バッテリ5に貯留される。
【0022】
(電力供給ライン)
電力供給ライン4は、コンバータ29を介して複数の発電機3にそれぞれ接続されている。電力供給ライン4は、発電機3で発電された電力を複数の電気モータ7(電気負荷)にそれぞれ供給する。電力供給ライン4は、複数(本実施形態では4個)設けられている。各発電機3で発電された電力は、一旦統合された後、制御部9(
図3参照)からの信号に応じて所定の割合で4個の電力供給ライン21,22,23,24にそれぞれ分配して供給される。具体的に、発電機3で発電された電力は、各電力供給ライン4に設けられたバッテリ5の充電量が低いものから優先的に供給されるようになっている。例えばバッテリ5とダイオード6とを接続することで、充電量が低いバッテリ5ほど優先的に(より多く)電力が供給される。電力供給ライン4は、第一電力供給ライン21と、第二電力供給ライン22と、第三電力供給ライン23と、第四電力供給ライン24と、を有する。各電力供給ライン4には、ダイオード6と、電気モータ7と、所定のプロペラ8と、が接続される。
【0023】
第一電力供給ライン21は、8個のプロペラ8のうち、第一プロペラ51、第八プロペラ58、及び推進用プロペラ36を駆動するための電力供給ライン4として使用される。換言すれば、第一プロペラ51、第八プロペラ58、及び推進用プロペラ36は、第一電力供給ライン21に供給された電力により駆動する。
【0024】
第二電力供給ライン22は、8個のプロペラ8のうち、第二プロペラ52、第七プロペラ57、及び推進用プロペラ36を駆動するための電力供給ライン4として使用される。換言すれば、第二プロペラ52、第七プロペラ57、及び推進用プロペラ36は、第二電力供給ライン22に供給された電力により駆動する。
【0025】
第三電力供給ライン23は、8個のプロペラ8のうち、第三プロペラ53、第六プロペラ56、及び推進用プロペラ37を駆動するための電力供給ライン4として使用される。換言すれば、第三プロペラ53、第六プロペラ56、及び推進用プロペラ37は、第三電力供給ライン23に供給された電力により駆動する。
【0026】
第四電力供給ライン24は、8個のプロペラ8のうち、第四プロペラ54、第五プロペラ55、及び推進用プロペラ37を駆動するための電力供給ライン4として使用される。換言すれば、第四プロペラ54、第五プロペラ55、及び推進用プロペラ37は、第四電力供給ライン24に供給された電力により駆動する。
【0027】
(バッテリ)
バッテリ5は、各電力供給ライン4に1個ずつ設けられている。バッテリ5は複数(本実施形態では4個)設けられている。具体的に、バッテリ5は、第一バッテリ31と、第二バッテリ32と、第三バッテリ33と、第四バッテリ34と、を有する。第一バッテリ31は、第一電力供給ライン21に設けられている。第二バッテリ32は、第二電力供給ライン22に設けられている。第三バッテリ33は、第三電力供給ライン23に設けられている。第四バッテリ34は、第四電力供給ライン24に設けられている。各バッテリ5は、電力の供給方向において、電気モータ7よりも上流に設けられている。各バッテリ5には、発電機3の発電電力のうち電気モータ7へ供給されなかった余剰電力が貯蓄される。一方、電気モータ7の出力に対して発電機3からの発電電力が不足した場合には、バッテリ5からの電力により電気モータ7を駆動させる。
【0028】
本実施形態において、各バッテリ5の構成(定格)は同等となっている。例えば本実施形態では、4個のバッテリの容量及び最大Cレートがそれぞれ同等となっている。但し、電力供給ライン4ごとに要求電力や消費電力が異なるため、ある瞬間における各バッテリ5の充電量やCレート、消費電力(放電量)等は必ずしも一定とはならない。
【0029】
(ダイオード)
ダイオード6は、各電力供給ライン4に1個ずつ設けられている。つまり、ダイオード6は複数(本実施形態では4個)設けられている。各ダイオード6は、電力供給ライン4のうち、電力の供給方向においてバッテリ5よりも上流に設けられている。ダイオード6は、対応する電力供給ライン4に設けられたバッテリ5の電力を使用している。つまり、バッテリ5の電圧が低下すると、そのバッテリ5と同一の電力供給ライン4上に設けられたダイオード6の電圧も低下する。これにより、電圧の低いダイオード6を有する電力供給ライン4に優先的に発電機からの電力が供給される。ダイオード6は、基本的に、電力を電力供給ライン4の上流から下流の一方向のみに流れることを許容する。換言すれば、ダイオード6は、バッテリ5からの電力の逆流を遮断している。よって、発電機3からの発電が行われている状態では、複数のバッテリ5間で電力の授受が行われない。
【0030】
一方、ダイオード6は、駆動源2の始動時において、制御信号に応じて電力供給ライン4の下流から上流への電力の流れを許容する。これにより、バッテリ5からの電力を用いて駆動源2に接続されたスタータモータを駆動させることが可能となっている。
【0031】
(電気モータ)
電気モータ7は、各電力供給ライン4にそれぞれ設けられている。電気モータ7は、インバータ39を介して各バッテリ5とそれぞれ接続されている。具体的に、第一電気モータ41(より詳細には、第一電気モータ41-1及び41-2)は、第一電力供給ライン21に設けられている。第二電気モータ42(より詳細には、第二電気モータ42-1及び42-2)は、第二電力供給ライン22に設けられている。第三電気モータ43(より詳細には、第三電気モータ43-1及び43-2)は、第三電力供給ライン23に設けられている。第四電気モータ44(より詳細には、第四電気モータ44-1及び44-2)は、第四電力供給ライン24に設けられている。よって、本実施形態において、各電力供給ライン4には、それぞれ2個ずつの電気モータ7が設けられている。各電気モータ7は、電力の供給方向において、バッテリ5よりも下流に設けられている。各電気モータ7は、発電機3からの電力及びバッテリ5からの電力の少なくとも一方の電力により、飛行体10のプロペラ8を回転させる。各電気モータ7の構成は同等となっている。
【0032】
電気モータ7は、上記に加えてさらに4個の推進用電気モータ71,72,73,74を有する。推進用電気モータ71は、第一電力供給ライン21に設けられている。推進用電気モータ72は、第二電力供給ライン22に設けられている。推進用電気モータ73は、第三電力供給ライン23に設けられている。推進用電気モータ74は、第四電力供給ライン24に設けられている。推進用電気モータ71,72は、推進用プロペラ36を回転させる。推進用電気モータ73,74は、推進用プロペラ37を回転させる。
【0033】
(プロペラ)
プロペラ8は、予め決められた所定の電気モータ7にそれぞれ接続されている。プロペラ8は、所定の電力供給ライン4からの電力により駆動する。
上述したとおり、第一プロペラ51及び第八プロペラ58は、第一電気モータ41に接続され、第一電気モータ41の駆動に伴って回転軸回りに回転する。より詳細には、第一プロペラ51は、第一電気モータ41-1に接続され、第八プロペラ58は、第一電気モータ41-2に接続される。第二プロペラ52及び第七プロペラ57は、第二電気モータ42に接続され、第二電気モータ42の駆動に伴って回転軸回りに回転する。より詳細には、第二プロペラ52は、第二電気モータ42-1に接続され、第七プロペラ57は、第二電気モータ42-2に接続される。第三プロペラ53及び第六プロペラ56は、第三電気モータ43に接続され、第三電気モータ43の駆動に伴って回転軸回りに回転する。より詳細には、第三プロペラ53は、第三電気モータ43-1に接続され、第六プロペラ56は、第三電気モータ43-2に接続される。第四プロペラ54及び第五プロペラ55は、第四電気モータ44に接続され、第四電気モータ44の駆動に伴って回転軸回りに回転する。より詳細には、第四プロペラ54は、第四電気モータ44-1に接続され、第五プロペラ55は、第四電気モータ44-2に接続される。
【0034】
推進用プロペラ36は、推進用電気モータ71及び72と接続されている。推進用プロペラ36は、推進用電気モータ71及び72の駆動に伴って回転し、水平方向の推進力を発生させる。
推進用プロペラ37は、推進用電気モータ73及び74と接続されている。推進用プロペラ37は、推進用電気モータ73及び74の駆動に伴って回転し、水平方向の推進力を発生させる。
【0035】
(制御部)
図3は、実施形態に係る電源装置1の制御ブロック図である。
制御部9は、ガスタービンエンジンの出力を制御することにより、発電機3の発電電力を制御する。以下の説明では、各電気モータ7(プロペラ8)への出力要求があった場合に、バッテリ5の容量、バッテリ5のCレート、及び電気モータ7の要求電力に基づいて発電機3での発電電力を決定する際の制御について説明する。なお、制御部9は、例えば発電機3による発電を行わない場合や、飛行体10の離着陸時、巡航時等にも各種の制御を行ってもよい。
【0036】
図3に示すように、制御部9は、電流値算出部11と、バッテリ要求電力算出部12と、作動状態検出部17と、要求電力出力部14と、電力合計部13と、発電機ECU15と、を有する。
【0037】
電流値算出部11は、各々のバッテリ5の充電量に基づいて各々のバッテリ5に通電可能な電流値(以下、通電可能な電流値のことを単に「Cレート」という場合がある。)を算出する。具体的に、電流値算出部11は、まず各々のバッテリ5の充電量をそれぞれ検出する。バッテリ5の充電量は、例えばバッテリ端子の電圧を測定することにより、電圧から一意的に決定される。なお、バッテリ5の充電量を検出する方法として、例えばバッテリ5の充放電電流の積算値に基づいてバッテリ5の充電量を推定する、いわゆるクーロンカウント法(電流積算法)等を用いてもよい。
【0038】
次に、電流値算出部11は、検出したバッテリ5の充電量に基づいてバッテリ5のCレートを算出する。電流値算出部11は、第一電流値算出部61と、第二電流値算出部62と、第三電流値算出部63と、第四電流値算出部64と、を有する。
第一電流値算出部61は、第一バッテリ31のCレートCR1を算出する。第一バッテリ31のCレートCR1は、第一バッテリ31の充電量に応じて一意的に決定される値である。
第二電流値算出部62は、第二バッテリ32のCレートCR2を算出する。第二バッテリ32のCレートCR2は、第二バッテリ32の充電量に応じて一意的に決定される値である。
【0039】
第三電流値算出部63は、第三バッテリ33のCレートCR3を算出する。第三バッテリ33のCレートCR3は、第三バッテリ33の充電量に応じて一意的に決定される値である。
第四電流値算出部64は、第四バッテリ34のCレートCR4を算出する。第四バッテリ34のCレートCR4は、第四バッテリ34の充電量に応じて一意的に決定される値である。
【0040】
バッテリ要求電力算出部12は、電流値算出部11で算出された電流値(Cレート)及びバッテリ5の容量BAに基づいてバッテリ5の要求電力Pを算出する。バッテリ要求電力算出部12は、電流値算出部11にて算出された各Cレートを加算した値に、バッテリ1個当たりのバッテリ容量BAを乗じることにより、要求電力Pを算出する(P=BA×(CR1+CR2+CR3+CR4))。
【0041】
作動状態検出部17は、各電力供給ライン4にそれぞれ接続されている。また作動状態検出部17は、バッテリ要求電力算出部12と接続されている。作動状態検出部17は、複数の電力供給ライン4の作動状態をそれぞれ検出し、検出結果をバッテリ要求電力算出部12に出力する。作動状態検出部17は、例えば各々の電力供給ライン4におけるバッテリ5の不具合(失陥や故障等)の有無等を含む作動状態を検出する。
【0042】
制御部9は、作動状態検出部17により検出された電力供給ライン4の作動状態に基づいて、発電機3の発電量を制御する。具体的に、本実施形態において、バッテリ要求電力算出部12は、上述したバッテリ5のCレート及びバッテリ5の容量BAに加え、さらに作動状態検出部17からの検出結果に基づいて、バッテリ5の第二の要求電力Qを算出する。バッテリ5の第二の要求電力Qは、全ての電力供給ライン4(バッテリ5)が正常である場合のバッテリ5の要求電力Pに対して、少なくとも一部の電力供給ライン4(バッテリ5)に不具合が生じた場合のバッテリ5の要求電力である。換言すれば、要求電力Pは、システムが正常に機能している場合に算出されるバッテリ5の要求電力であり、第二の要求電力Qは、システムが正常に機能していない場合に算出されるバッテリ5の要求電力である。
【0043】
例えば複数のバッテリ5のうち第一バッテリ31のみに不具合が生じている場合、バッテリ要求電力算出部12は、上述したバッテリ5の要求電力Pに代えてバッテリ5の第二の要求電力Qを算出する。バッテリ要求電力算出部12は、電流値算出部11にて算出された各Cレートのうち、正常と判断されたバッテリ(ここでは第二バッテリ32、第三バッテリ33及び第四バッテリ34)のCレート(CR2、CR3及びCR4)を加算した値に、バッテリ1個当たりのバッテリ容量BAを乗じることにより、第二の要求電力Qを算出する(Q=BA×(CR2+CR3+CR4))。
【0044】
バッテリ要求電力算出部12は、上述した要求電力P及び第二の要求電力Qのいずれか一方をバッテリ5の要求電力として選択する。より詳細に、全ての電力供給ライン4が正常に動作している場合、バッテリ要求電力算出部12は、要求電力Pをバッテリ5の要求電力として選択する。一方、複数の電力供給ライン4のうち少なくとも一部が正常に動作していない場合、バッテリ要求電力算出部12は、第二の要求電力Qをバッテリ5の要求電力として選択する。バッテリ要求電力算出部12は、選択したバッテリ5の要求電力(P又はQ)を、後述する電力合計部13に出力する。
【0045】
要求電力出力部14は、機体19の要求電力を検出し、後述する電力合計部13へ出力する。機体19の要求電力は、各電力供給ライン4の電気モータ7に対する要求電力の合計である。具体的に、要求電力出力部14は、第一電力供給ライン21の第一電気モータ41に対する要求電力である第一要求電力E1と、第二電力供給ライン22の第二電気モータ42に対する要求電力である第二要求電力E2と、第三電力供給ライン23の第三電気モータ43に対する要求電力である第三要求電力E3と、第四電力供給ライン24の第四電気モータ44に対する要求電力である第四要求電力E4と、をそれぞれ検出する。さらに、要求電力出力部14は、検出した要求電力E1,E2,E3,E4を加算することにより、機体19の要求電力として、合計要求電力E5を算出する(E5=E1+E2+E3+E4)。
【0046】
電力合計部13は、バッテリ要求電力算出部12で算出されたバッテリの要求電力(P又はQ)と、要求電力出力部14で算出された電気モータ7からの要求電力である合計要求電力E5と、を合計する。電力合計部13は、バッテリの要求電力(P又はQ)と電気モータ7の合計要求電力E5とを足し合わせた電力を目標発電電力として設定する。
【0047】
発電機ECU15は、駆動源2の駆動を制御することにより、発電機3における発電電力を制御する。発電機ECU15には、電力合計部13で算出された目標発電電力が入力される。発電機ECU15は、電力合計部13で算出された目標発電電力を発電機3で発電するように駆動源2を制御する。
【0048】
発電機3で発電された電力の一部は、各電気モータ7における要求電力に応じて各電力供給ライン4にそれぞれ供給される。発電機3で発電された電力の残りの一部は、充電量の低いバッテリ5が優先的に(より多く)充電されるように、各電力供給ライン4に分配されて各バッテリ5に充電される。よって、要求された出力を満たしつつ、各バッテリ5の充電量を回復又は維持することが可能となる。
【0049】
図4は、電源装置1における制御の流れを示すフローチャートである。以下、
図4を参照して電源装置1の制御部9が実行する制御について詳細に説明する。
始めに制御部9は、システムを起動させる(ステップS01)。次に制御部9は、システムが正常か否かを判断する(ステップS02)。システムが正常であるとは、複数の電力供給ライン4、より詳細には電力供給ライン4における各バッテリ5、のいずれにも失陥が見つからず、各バッテリ5が正常に機能している状態を指す。
【0050】
システムが正常である場合(ステップS02でYES)、発電機3により発電が行われているか否かを判断する(ステップS03)。発電中でない場合(ステップS03でNO)、ステップS02に戻って、システムが正常かつ発電中となるまで待機する。発電中であると判断された場合(ステップS03でYES)、電流値算出部11により各バッテリ5の充電量及びCレートが算出される。具体的に、第一電流値算出部61により、第一バッテリ31の充電量が検出され(ステップS04)、検出された充電量から第一バッテリ31のCレートCR1が算出される(ステップS05)。また、第二電流値算出部62により、第二バッテリ32の充電量が検出され(ステップS06)、検出された充電量から第二バッテリ32のCレートCR2が算出される(ステップS07)。同様に、
図4では図示を省略するが、第三電流値算出部63により第三バッテリ33の充電量が検出され、検出された充電量から第三バッテリ33のCレートCR3が算出される。第四電流値算出部64により第四バッテリ34の充電量が検出され、検出された充電量から第四バッテリ34のCレートCR4が算出される。なお、
図4に示す本実施形態の構成では、各バッテリ5の充電量及びCレートの算出を並列して行う例について説明したが、各バッテリ5の充電量及びCレートの算出を第一バッテリ31から第四バッテリ34まで順番に行ってもよい。
【0051】
すべてのバッテリ5のCレートが算出されると、バッテリ要求電力算出部12は、算出されたCレートを合算する(ステップS08)。さらにバッテリ要求電力算出部12は、合算されたCレートの合計値に1個当たりのバッテリ容量BAを乗じることにより、バッテリ要求電力Pを算出する(ステップS10)。ステップS10の処理が終わると、ステップS11に進む。
【0052】
ここで、ステップS02においてシステムが正常でないと判断された場合(ステップS02でNO)、ステップS21へ進む。ステップS21では、どのバッテリ5に失陥があるのかを検出する。具体的に、本実施形態では、第一バッテリ31、第二バッテリ32、第三バッテリ33及び第四バッテリ34のうちどのバッテリに失陥が生じているのかを検出する。ステップS21では、バッテリ5に失陥が生じていることが検出された場合に、残りの正常なバッテリによりシステムの起動状態を続行可能か否か(例えば機体19の飛行が可能か否か)を判断する。例えば4個のバッテリ5のうち1個のみに失陥が生じている場合、制御部9は、残りの3個のバッテリ5によりシステムを続行可能であると判断し、ステップS22に進む。一方、例えば4個のバッテリ5のうち2個以上に失陥が生じている場合、制御部9は、残りのバッテリ5だけではシステムを続行不能であると判断する。この場合、ステップS14に進み、システムを停止するとともにこのフローを終了する。
【0053】
ステップS22に進むと、次に、制御部9は、正常と判断した残りのバッテリ5の充電量を検出する(ステップS22)。さらに、制御部9は、検出した正常なバッテリ5の充電量に基づいて、正常なバッテリ5のCレートを算出する(ステップS23)。次に、制御部9は、算出したバッテリ5のCレート及びバッテリ5の容量に基づいて、バッテリ5の第二の要求電力Qを算出し(ステップS24)、ステップS11に進む。
【0054】
ステップS11では、ステップS10で算出されたバッテリ5の要求電力P又はステップS24で算出されたバッテリ5の第二の要求電力Qと、要求電力出力部14により算出された機体19の要求電力(つまり電気モータ7に供給される電力)E5と、を加算することにより、目標発電電力を算出する。ここで制御部9は、例えばステップS02におけるシステムが正常か否かの判定結果を記録可能であり、ステップS02でシステムが正常であると判断された場合は、バッテリ5の要求電力Pを用いてステップS11における目標発電電力を算出する。一方、制御部9は、例えばステップS02においてシステムが正常でないと判断された場合は、バッテリ5の第二の要求電力Qを用いてステップS11における目標発電電力を算出する。
【0055】
次に、発電機ECU15は、駆動源2の駆動を制御することにより、発電機3を駆動し、発電機3による発電を行う(ステップS12)。このとき、発電機ECU15は、発電機3による発電電力が目標発電電力と一致するように発電機3を駆動する。
発電機3による発電が完了すると、システムから停止要求があるか否か判断する(ステップS13)。停止要求がある場合(ステップS13でYES)、システムを停止し(ステップS14)、この制御フローを終了する。一方、停止要求が無い場合(ステップS13でNO)、ステップSS02に戻って再び上述した制御フローを繰り返す。
【0056】
なお、上述の実施形態では、ステップS21において4個のバッテリ5のうち2個以上のバッテリ5に失陥が生じた場合にシステムを停止したが、システムを停止するか否かの条件(すなわち、ステップS21においてYESに進むかNOに進むかの条件)は、これに限られない。システムを停止させるバッテリ5の個数の閾値が1個又は3個等に設定されてもよい。また、例えば失陥が生じたバッテリ5の組み合わせに応じてステップS21における判定が変わるように予め設定されていてもよい。その他、失陥が生じたバッテリ5の個数以外の条件によりステップS21の判断を行ってもよい。
【0057】
(作用、効果)
次に、上述の電源装置1の作用、効果について説明する。
本実施形態の電源装置1によれば、発電機3で発電された電力は、各電力供給ライン4を通じて複数のバッテリ5にそれぞれ供給される。電源装置1は、バッテリ5に通電可能な電流値を算出する電流値算出部11と、電流値算出部11で算出された電流値及びバッテリ容量に基づいて要求電力(P又はQ)を算出するバッテリ要求電力算出部12と、これらの電力及び電気モータ(電気負荷)7に要求される電力を合算する電力合計部13と、を有する。電力合計部13で算出された電力を発電機3で発電するように、駆動源2が制御される。よって、バッテリ5に通電可能な電流値とバッテリ容量とに基づいて、発電機3で発電すべき電力(目標発電電力)を容易に算出することができる。電源装置1では、発電機3で発電された電力は、バッテリ5の電位差に応じて各電力供給ライン4に分配される。よって、各バッテリ5の電位差に依らずに、複数のバッテリ5の充電量が均等となるように充電することができる。さらに、例えば各電力供給ライン4における電気モータ7の出力(消費電力)が互いに異なる場合であっても、充電量の低いバッテリ5から優先的に充電できる。これにより、充電量が低いバッテリ5と同じ電力供給ライン4に接続された電気モータ7の出力を向上できる。結果として、各電力供給ライン4における出力を平衡化できるとともに、各電気モータ7の出力のバラツキを是正できる。換言すれば、電気モータ7の出力に依らずバッテリ5の充電量の平衡化を図ることができる。よって、安定した制御が可能となる。
また、例えばバッテリ5毎に充放電を制御する従来技術と比較して、バッテリ5毎の充放電を管理(制御)するための制御装置等が不要となる。これにより、電源装置1のコストを削減できる。よって、従来よりも簡素かつ廉価な構成により、複数のバッテリ5に対して万遍なく充電させることができる。
したがって、従来技術と比較して制御システムの複雑化を抑制しつつ、複数のバッテリ5に対する充電量を平衡化することができる電源装置1を提供できる。
充電量の低いバッテリ5から優先的に充電されるので、充電量の低いバッテリ5における過放電を抑制できる。また、相対的に充電量の高いバッテリ5への電力供給が抑制されるので、充電量の高いバッテリ5における過充電を抑制できる。よって、バッテリ5を最適な使用範囲で使用することができ、バッテリ5の劣化を抑制できる。
さらに、複数のバッテリ5間で電力の授受が行われないので、バッテリ5間で電力の授受が行われる従来技術と比較して、制御システムの複雑化を抑制できる。また、バッテリ5間で電力の授受を行わずに発電機3からの電力のみによりバッテリ5の充放電を制御することにより、充放電の効率を向上することができる。
【0058】
電源装置1は、電力供給ライン4の作動状態を検出する作動状態検出部17をさらに備え、電力供給ライン4の作動状態に基づいて発電機3の発電電力が制御される。これにより、例えばいずれかのバッテリ5に故障等の不具合が生じた場合に、不具合が生じた電力供給ライン4への電力供給を抑制することが可能となる。さらに、電力供給がストップされた分の電力を発電電力から減じる制御等を行うことにより、正常な電力供給ライン4への過充電を抑制できる。よって、故障等のアクシデントや不具合にも対応可能な汎用性の高い電源装置1とすることができる。
【0059】
電源装置1は、電気推進式の飛行体10の電源であり、電気負荷は、飛行体10のプロペラ8を回転させる電気モータ7である。このように電源装置1は、電気推進式の飛行体10の電源として用いられる。ここで、複数のプロペラ8を回転させて飛行する飛行体10では、例えば天候や飛行体の姿勢等により、電力供給ライン4ごとに消費される電力のバラツキが大きくなり易い。このため、特に電力供給ライン4ごとに電気モータへの要求電力の差が大きい飛行体10に上記の電源装置1を適用した場合には、より好適に使用することができる。すなわち、バッテリ5を含めた電力供給ライン4ごとの消費電力に応じた電力供給を行うことができる。
また、各電力供給ライン4における要求電力に応じて発電機3からの電力が分配されるので、飛行体10のコントロールを容易にすることができる。
【0060】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
上述の各実施形態では、2個の発電機3に対して4個の電力供給ライン4がそれぞれ接続される構成としたが、これに限られない。例えば、1個の発電機3に対して2個の電力供給ライン4が接続されてもよい。つまり、2個の発電機3のうち一方の発電機3に第一電力供給ライン21及び第二電力供給ライン22が接続され、2個の発電機3のうち他方の発電機3に第三電力供給ライン23及び第四電力供給ライン24が接続されてもよい。この場合、第一電力供給ライン21及び第二電力供給ライン22と、第三電力供給ライン23及び第四電力供給ライン24と、が互いに独立していてもよい。
【0061】
発電機3や駆動源2の個数は2個に限定されない。同様に、プロペラ8の数は8個に限定されない。また、各プロペラ8と電力供給ライン4との組み合わせは上述した実施形態に限定されない。また、ダイオード6は設けなくてもよい。ダイオード6を設けない場合、例えば電力供給を制御することにより、バッテリ5間での電力の授受を規制する構成としてもよい。
【0062】
各バッテリ5の容量や定格がそれぞれ異なっていてもよい。この場合、各バッテリ5のCレートを算出した後、バッテリ5毎にCレートとバッテリ容量を乗じた値を算出し、これらを加算することにより要求電力Pを算出してもよい。つまり、第一バッテリ31、第二バッテリ32、第三バッテリ33及び第四バッテリ34のバッテリ容量をそれぞれBA1、BA2、BA3及びBA4とした場合、P=BA1×CR1+BA2×CR2+BA3×CR3+BA4×CR4の式により要求電力Pを算出してもよい。第二の要求電力Qについても同様である。
【0063】
第一電流値算出部61、第二電流値算出部62、第三電流値算出部63及び第四電流値算出部64はまとめられてもよい。すなわち、単一の電流値算出部11により各バッテリ5のCレート(CR1、CR2、CR3及びCR4)が算出されてもよい。
作動状態検出部17は無くてもよい。但し、作動状態検出部17における検出結果を用いて制御することで過充電を抑制し、かつ汎用性を向上できる点で、作動状態検出部17を有する本実施形態の構成は優位性がある。
【0064】
上述の実施形態では、第一バッテリ31のみに不具合が生じた場合を例に説明したが、これに限られない。例えば第二バッテリ32のみに不具合が生じた場合、第二バッテリ32以外のCレートを用いて第二の要求電力Qを算出してもよい(この場合、Q=BA×(CR1+CR3+CR4))。同様に、第三バッテリ33のみに不具合が生じた場合、第三バッテリ33以外のCレートを用いて第二の要求電力Qを算出してもよい(この場合、Q=BA×(CR1+CR2+CR4))。同様に、第四バッテリ34のみに不具合が生じた場合、第四バッテリ34以外のCレートを用いて第二の要求電力Qを算出してもよい(この場合、Q=BA×(CR1+CR2+CR3))。
また、例えば第一バッテリ31及び第二バッテリ32に不具合が生じた場合、第一バッテリ31及び第二バッテリ32以外のCレートを用いて第二の要求電力Qを算出してもよい(この場合、Q=BA×(CR3+CR4))。他の組み合わせにおいても同様である。
【0065】
上述の実施形態では、不具合が生じたバッテリ5のCレートを計算から除くことにより第二の要求電力Qを算出したが、これに限られない。例えば各々の電力供給ライン4の作動状態に応じてCレートの値に係数(K1、K2、K3及びK4)を乗じることにより、電力供給ライン4の状態に応じてCレートの値を補正してもよい。つまり、Q=BA×(K1・CR1+K2・CR2+K3・CR3+K4・CR4)としてもよい。ここで、係数K1からK4は、電力供給ライン4の作動状態に対応して変化する値であってもよい。係数K1からK4は、予め設定された値であってもよく、例えば機械学習等により適宜変化する値であってもよい。
【0066】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 電源装置
2 駆動源
3 発電機
4 電力供給ライン
5 バッテリ
7 電気モータ(電気負荷)
8 プロペラ
10 飛行体
11 電流値算出部
12 バッテリ要求電力算出部
13 電力合計部
17 作動状態検出部
BA,BA1,BA2,BA3,BA4 バッテリ容量
CR1,CR2,CR3,CR4 Cレート(バッテリに通電可能な電流値)
P,Q バッテリの要求電力