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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-25
(45)【発行日】2025-10-03
(54)【発明の名称】アトマイザー
(51)【国際特許分類】
   F22B 1/28 20060101AFI20250926BHJP
   H05B 6/10 20060101ALI20250926BHJP
   H05B 6/44 20060101ALI20250926BHJP
   A24F 40/465 20200101ALN20250926BHJP
【FI】
F22B1/28 Z
H05B6/10 381
H05B6/44
A24F40/465
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2024187921
(22)【出願日】2024-10-25
(65)【公開番号】P2025074055
(43)【公開日】2025-05-13
【審査請求日】2024-10-25
(31)【優先権主張番号】202311417871.9
(32)【優先日】2023-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】524326967
【氏名又は名称】シェンチェン ウッディー ベイプス テクノロジー カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ジエ
(72)【発明者】
【氏名】リャオ,ジェンロン
【審査官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-502362(JP,A)
【文献】特開2004-205146(JP,A)
【文献】実開昭54-116845(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2011/0319270(US,A1)
【文献】特表2018-524983(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110351915(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 1/28
H05B 6/10
H05B 6/44
A24F 40/465
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アトマイザーであって、
前記アトマイザーは複数の加熱アセンブリを備え、各々の前記加熱アセンブリは、加熱スリーブ、導磁部材、励磁コイルを含み、
前記導磁部材は誘導部と2つの出力部を含み、2つの前記出力部は別々に前記誘導部の両端に設けられており、前記誘導部には前記励磁コイルが設けられており、前記出力部の前記誘導部から遠い一端は、前記加熱スリーブの径方向において前記加熱スリーブに対向して設けられており、
複数の前記加熱アセンブリの前記加熱スリーブは、前記加熱スリーブの軸方向で順次配列されており、複数の前記誘導部のうちの少なくとも2つの前記誘導部は、前記加熱スリーブの軸方向において幅が異なる、
ことを特徴とするアトマイザー。
【請求項2】
複数の前記励磁コイルが順次直列接続されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のアトマイザー。
【請求項3】
前記アトマイザーはプリント配線板(PCB)をさらに備え、隣り合う前記励磁コイルの結合部が前記PCBに溶接されている、
ことを特徴とする請求項2に記載のアトマイザー。
【請求項4】
前記加熱アセンブリは、前記加熱スリーブの軸方向に沿った蒸気放出方向を有し、複数の前記誘導部の前記蒸気放出方向における幅は、前記蒸気放出方向に沿って1つずつ小さくなる、
ことを特徴とする請求項1に記載のアトマイザー。
【請求項5】
隣り合う前記導磁部材は互いに離間して設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載のアトマイザー。
【請求項6】
前記出力部の前記加熱スリーブに面する一端の端面は、前記加熱スリーブの表面にマッチする、
ことを特徴とする請求項1に記載のアトマイザー。
【請求項7】
複数の前記励磁コイルのコイル巻き数密度が同じである、
ことを特徴とする請求項1に記載のアトマイザー。
【請求項8】
前記アトマイザーは断熱リングをさらに備え、前記断熱リングは隣り合う前記加熱スリーブの間に設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載のアトマイザー。
【請求項9】
前記加熱スリーブは円筒状に設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載のアトマイザー。
【請求項10】
複数の前記加熱スリーブの筒壁の厚さが同じであるように設けられている、
ことを特徴とする請求項9に記載のアトマイザー。
【請求項11】
前記アトマイザーは、前記PCBに電気的に接続されて前記励磁コイルに電力を供給するためのバッテリーをさらに備える、
ことを特徴とする請求項3に記載のアトマイザー。
【請求項12】
前記PCBには、前記バッテリーからの直流電流を交流電流に変換するための交流電流発生器がさらに設けられている、
ことを特徴とする請求項11に記載のアトマイザー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願はアトマイザーの技術分野に属し、特にアトマイザーに関する。
【背景技術】
【0002】
アトマイザーは、液体を気化させ、または固体を昇華させて気体を生成するために使用される。気体を生成する過程では、霧化しようとする物質を加熱する必要がある。霧化しようとする物質を加熱する際には、加熱の均一性を確保する必要があり、これによって次の問題、即ち、局所的な過熱により、加熱された物質の分解や酸化などの化学反応を起こして物質の変性をもたらし、結果として、最終的に生成された霧が本来の性質を失い、予想される効果を得られないことが回避される。従来技術では、通常、単一の熱源を用いて霧化しようとする物質を加熱する。大きな霧化速度が必要な場合、局所的な過熱を招いて被霧化物質の変性をもたらしやすい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本願の実施形態は、従来のアトマイザーの場合、大きな霧化速度を必要とするときに霧化しようとする物質の局所的な過熱を招きやすい、という問題を解決するためのアトマイザーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願の実施形態はアトマイザーを提供する。アトマイザーは複数の加熱アセンブリを備え、各々の加熱アセンブリは、加熱スリーブ、導磁部材、励磁コイルを含む。導磁部材は誘導部と2つの出力部を含み、2つの出力部は別々に誘導部の両端に設けられており、誘導部には励磁コイルが設けられており、出力部の誘導部から遠い一端は、加熱スリーブの径方向において加熱スリーブに対向して設けられている。複数の加熱アセンブリの加熱スリーブは、加熱スリーブの軸方向で順次配列されており、複数の誘導部のうちの少なくとも2つの誘導部は、加熱スリーブの軸方向において幅が異なる。
【0005】
いくつかの実施形態では、複数の励磁コイルが順次直列接続されている。
【0006】
いくつかの実施形態では、アトマイザーはプリント配線板(PCB)をさらに備え、隣り合う励磁コイルの結合部がPCBに溶接されている。
【0007】
いくつかの実施形態では、加熱アセンブリは、加熱スリーブの軸方向に沿った蒸気放出方向を有し、複数の誘導部の蒸気放出方向における幅は、蒸気放出方向に沿って1つずつ小さくなる。
【0008】
いくつかの実施形態では、隣り合う導磁部材は互いに離間して設けられている。
【0009】
いくつかの実施形態では、出力部の加熱スリーブに面する一端の端面は、加熱スリーブの表面にマッチする。
【0010】
いくつかの実施形態では、複数の励磁コイルのコイル巻き数密度が同じである。
【0011】
いくつかの実施形態では、アトマイザーは断熱リングをさらに備え、断熱リングは隣り合う加熱スリーブの間に設けられている。
【0012】
いくつかの実施形態では、加熱スリーブは円筒状に設けられている。
【0013】
いくつかの実施形態では、複数の加熱スリーブの筒壁の厚さが同じであるように設けられている。
【発明の効果】
【0014】
本願の実施形態に係るアトマイザーにおいて、複数の導磁部材の誘導部のうち少なくとも2つの誘導部の加熱スリーブの軸方向における幅が異なることにより、励磁コイルに同じ電流が流れると、幅の異なる誘導部で生成される誘導磁場の磁束も異なる。レンツの法則によれば、誘導起電力が時間に従う磁束の変化率に等しいため、磁束の小さい誘導部が加熱スリーブに出力する誘導起電力も小さく、加熱スリーブに生成される渦電流の熱効率も低い。したがって、幅の異なる誘導部により、対応する加熱アセンブリの熱効率が異なる。異なる加熱アセンブリが被加熱物質を加熱する際、熱対流効果により、被加熱物質の異なる部分の温度が異なるため、異なる部分の被加熱物を同じ熱効率で加熱することはできない。そうしないと、温度がより高い部分が過熱するようになる。本願の実施形態に係るアトマイザーにおいて、少なくとも2つの加熱アセンブリが異なる電力の加熱を提供することができるので、局所的な過熱を回避することができる。また、複数の加熱アセンブリを採用しているため、大きな加熱効率を保証することができる。以上のことから、本願実施形態で提供されるアトマイザーは、大きな霧化速度を実現する際に、被霧化物質の局所的な過熱を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本願の実施形態における技術的解決策をより明確に説明するために、以下、実施形態の説明に使われる図面を簡単に紹介する。明らかに、以下の説明に使われる図面は本願のいくつかの実施形態に過ぎず、当業者は、創造的な努力なしに、これらの図面に基づいて他の図面を得ることができる。
【0016】
本願及びその有益な効果をより完全に理解するために、以下に図面を参照しながら説明する。以下の説明において同じ符号は同じ部分を示す。
図1】本願の実施形態に係るアトマイザーの断面構造を示す概略図である。
図2図1の実施形態における複数の加熱アセンブリの構造を示す概略図である。
図3図1の実施形態における複数の導磁部材の構造を示す概略図である。
図4図1の実施形態における複数の励磁コイルが直列接続されている構造を示す概略図である。
図5図1の実施形態における複数の加熱スリーブ及び断熱リングの構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本願の実施形態の図面を参照しながら、本願の実施形態の技術的解決策を明確かつ完全に説明する。明らかに、説明される実施形態は、本願の一部の実施形態に過ぎず、すべての実施形態ではない。本願の実施形態に基づいて、当業者が創造的な努力なしに得られるすべての他の実施形態は、本願の保護範囲に属する。
【0018】
本願の実施形態は、従来のアトマイザーの場合、大きな霧化速度を必要とするときに霧化しようとする物質の局所的な過熱を招きやすい、という問題を解決するためのアトマイザーを提供する。以下、図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1を参照すると、本願の実施形態はアトマイザーを提供する。図1は、本願の実施形態に係るアトマイザーの断面構造を示す概略図である。図2を参照して、図2は、図1の実施形態における複数の加熱アセンブリの構造を示す概略図である。例示的に、本願に係るアトマイザーの一実施形態では、アトマイザーは複数の加熱モジュール10を備え、各々の加熱モジュール10は、加熱スリーブ11、導磁部材12、励磁コイル13を含む。
【0020】
導磁部材12は誘導部12bと2つの出力部12aを含む。2つの出力部12aは別々に誘導部12bの両端に設けられている。誘導部12bには励磁コイル13が設けられている。出力部12aの誘導部12bから遠い一端は、加熱スリーブ11の径方向において加熱スリーブ11に対向して設けられている。
【0021】
複数の加熱アセンブリ10の加熱スリーブ11は、加熱スリーブ11の軸方向で順次配列されている。複数の誘導部12bのうちの少なくとも2つの誘導部12bは、加熱スリーブ11の軸方向において幅が異なる。
【0022】
時間にしたがって強度が変化する磁場をコイル内に形成するために、励磁コイル13には通常、電流強度が変化する電流が入力され、この磁場は励起磁場となり得る。導磁部材12の材質は通常強磁性媒体であるため、励起磁場は導磁部材12の誘導部12bが誘導磁場を生成するように励起することができる。また、導磁部材12の材質は通常強磁性媒体であるため、誘導磁場と励起磁場は導磁部材12によって伝導され、誘導部12bから遠い出力部12aの一端を通じて加熱スリーブ11に出力することができる。励起磁場の強度は時間にしたがって変化するため、誘導磁場と励起磁場は両者とも時間にしたがって変化する。変化している磁場が加熱スリーブ11に入力されると、加熱スリーブ11の側壁に渦電界が生じるので、渦電流が生成され、さらに電流の熱効果が発生し、被加熱物40の加熱を開始する。
【0023】
渦電場を発生される誘導起電力の大きさは、レンツの法則によって計算することができ、即ち誘導起電力の大きさは、励起磁場と誘導磁場の時間に対する変化率に等しい。ここから分かるように、最終的に熱効率を決定するのは、磁場のフラックスの時間に従う変化率である。また、電磁気学の原理から分かるように、コイルに同じ強度の電流が流れ、且つ励磁コイル13の巻き数密度が同じであるとき、励起磁場の強度が同じである。加熱スリーブ11の軸方向における誘導部12bの幅が変化すれば、誘導部12bの巻き数方向の断面積が変化するので、励磁コイル13の巻き数密度が同じであり、且つ流れる電流が同じであるとき、異なる幅の誘導部12bに対応する導磁部材12から加熱スリーブ11に出力される磁束が異なり、結果として対応する加熱アセンブリ10の熱効率が異なる。言い換えると、加熱スリーブ11の軸方向における誘導部12bの幅を制御することで、対応する加熱アセンブリ10の熱効率を制御することができる。以上から分かるように、本願に係るアトマイザーの実施形態では、均一な加熱を実現して被加熱物40の局所温度が高すぎることを防止するために、様々な異なる熱効率を提供することができる。
【0024】
また、誘導部12bの幅によって熱効率を制御することで、各コイルのためにそれぞれ電源やコントローラを設ける必要がなくなるので、熱効率制御が簡単になり、コストが低くなる。
【0025】
図2または図3を参照すると、出力部12aは、図2または図3に示すように励磁コイル13が巻き付けられなかったアームであってもよいが、本願の他の実施形態では、出力部12aに依然として励磁コイル13を巻き付けることも排除されない。導磁性を有する媒体は通常強磁性も有するので、誘導磁場を発生させるために使用することができる。
【0026】
図2を参照すると、本願のいくつかの実施形態では、誘導部12bから遠い出力部12aの一端は、加熱スリーブ11の径方向において加熱スリーブ11に対向して設けられている。これにより、誘導磁場及び励起磁場をできるだけ多く加熱スリーブ11に伝導し、磁場エネルギーの損失を回避することができる。
【0027】
図1を参照すると、被加熱物40は加熱スリーブ11内に置かれて加熱され、被加熱物40は固体であってもよく、液体であってもよい。被加熱物40が固体である場合、被加熱物40を加熱スリーブ11に直接接触させることができる。被加熱物40が液体である場合、液体の被加熱物40を収容するために、各加熱スリーブ11の内部にシールスリーブを設けることができ、貯液室を形成するために、加熱スリーブ11間を直接密封することもできる。
【0028】
図4を参照すると、複数の励磁コイル13が順次直列に接続されている。励磁コイル13のインピーダンスは、交流電流に対してある程度の降圧作用(直流電流に対する抵抗の降圧作用と同様)を有する。励磁コイル13は互いに直列接続されており、電流強度が変化する電流が流れると、コイルを通過するごとに電圧がある程度低下する。一方、励磁コイル13のインピーダンスの大きさと、その励起磁場及び誘導磁場の励磁コイル13での逆起電力は正の相関があり、また、逆起電力も同様にレンツの法則により計算することができるため、コイルの直列接続により、幅がより大きい誘導部12bに対応する励磁コイル13により高い電圧を割り当てることができ、それによって熱効率がより高くなる。従って、高い熱効率が必要な位置(すなわち幅が大きい誘導部12bを含む加熱アセンブリ10の加熱スリーブ11に対応する位置)においてより高い熱効率が得られて、これは熱効率の制御に有利である。
【0029】
図1を参照すると、本願のいくつかの実施形態では、アトマイザーはプリント配線板(PCB)20をさらに備え、隣り合う励磁コイル13の結合部がPCB20に溶接されている。プリント配線板(Print Circuit Board、PCB)20は、励磁コイル13の電気的接続方式をより多様化させることができる。PCB20には多くの回路構造があるため、励磁コイル13間の並列接続と直列接続の切り替えを実現することができる。並列接続を採用する場合、可変抵抗回路によって、異なる励磁コイル13に割り当てる電圧の大きさを配置することができ、それによって熱効率をより精確に制御することができる。もちろん、励磁コイル13とPCB板20との溶接は固定と位置制限のためだけであり、電気的接続を実現しない実施形態も排除されない。さらに、アトマイザーは、PCB20に電気的に接続されて励磁コイルに電力を供給するためのバッテリー30を備えることもできる。PCB20には、バッテリー30からの直流電流を交流電流に変換して励磁コイル13に交流電流を供給するための交流電流発生器60を設けることもできる。バッテリー30の設置により、アトマイザーは固定電源を必要としないので、移動や携帯に便利である。
【0030】
図1を参照すると、本願のいくつかの実施形態では、加熱アセンブリ10は、加熱スリーブ11の軸方向に沿った蒸気放出方向を有し、複数の誘導部12bの蒸気放出方向における幅は、蒸気放出方向に沿って1つずつ小さくなる。これらの実施形態は、被加熱物40が固体である場合に非常に効果的である。被加熱物40が固体である場合、加熱されて生成された気体が被加熱物40と混合し、ひいては気体の下流にある被加熱物40を加熱し、気体が蒸気放出方向に沿って移動するため、蒸気放出方向において、被加熱物40が気体によって加熱された後、被加熱物40の温度が徐々に上昇する。温度のより高い被加熱物40を加熱するとき、より小さな加熱電力が必要である。これにより、被加熱物40を霧化することができると同時に、被加熱物40が過熱して変性することが回避される。加えて、このような設置は液体に対しても同様に有効であり、ただ原因が異なる。沸騰しない限り、液体の気化は気液界面で発生することが多いが、液体内部には熱対流がある(もちろん、気体にも熱対流があるため、固体を加熱する際に生成された気体にも対流が発生し、いくつかの条件下で蒸気放出方向での被加熱物40は気体によって加熱される)ため、蒸気放出方向では依然として熱効率を下げる必要がある。しかし、蒸気放出方向において熱効率を下げることのみが本願の実施形態であると考えることができない。蒸気放出方向に熱効率を上げることも可能であるからである。例えば、被加熱物40の加熱スリーブ11の径方向におけるサイズが大きいという原因で、熱が被加熱物40の中心位置に入りにくい場合、蒸気放出方向と反対の加熱アセンブリ10の底部で被加熱物40を一回で気化させることは不可能であり、結果として、熱が熱伝達によって被加熱物40の中心位置に届くことができないと同時に、被加熱物40の外側が気化して大量の熱を吸入するので、中心位置は気化できないことになる。この場合、均一に加熱するためには蒸気放出方向と反対の底部に小さな加熱電力を有する加熱アセンブリ10を設置し、蒸気放出方向に徐々に加熱効率を高め、これにより徐々に昇温する被加熱物40に適応し、均一に加熱する効果が得られる。
【0031】
図1または図2を参照して、蒸気放出方向について説明する。自然に霧が出るアトマイザーの蒸気放出方向は、通常、重力方向とは逆方向であり、且つ加熱スリーブ11の軸方向に沿った方向である。例えば、いくつかの空気加湿器が挙げられる。しかし、もちろん、病院で使用される吸入式治療のためのアトマイザーのような負圧を持つアトマイザーがある。この場合、蒸気放出方向は、重力方向とは関係なく、圧力が低下する方向に沿う方向である。もちろん、負圧を有するアトマイザーの霧化方向も加熱スリーブ11の軸方向に沿うことが多い。
【0032】
図1または図2を参照すると、本願のいくつかの実施形態では、隣り合う導磁部材12間は互いに離間して設けられている。加熱スリーブ11における最も加熱された位置は、導磁部材12の出力部12aが正対する位置であるため、導磁部材12が互いに離間して設けられていることにより、加熱スリーブ11の熱が隣り合う加熱スリーブ11に伝わりにくくなり、熱効率制御の精度を高めることができる。
【0033】
図2を参照すると、本願のいくつかの実施形態では、出力部12aの加熱スリーブ11に面する一端の端面は、加熱スリーブ11の表面にマッチする。これにより、出力部12aの加熱スリーブ11に面する端面と加熱スリーブ11との間に形成されるエアギャップの体積が小さくなり、ここでの磁束漏洩を回避し、磁気エネルギーの利用率を高め、ひいてはアトマイザーをより省エネにすることができる。
【0034】
図4を参照すると、本願のいくつかの実施形態では、複数の励磁コイル13のコイル巻き数密度が同じである。電磁気学の原理によれば、励磁コイル13内部に発生する磁場の強度、すなわち励起磁場の強度は、巻き数密度とコイル中の電流の強度との積に正比例するため、異なる励磁コイル13の巻き数密度が同じである時に、同じ電流が流れると励起磁場の強度は等しく、加熱効率は加熱スリーブ11の軸方向における誘導部12bの幅にのみ関係し、熱効率の制御を容易にすることができる。
【0035】
図1および図5を参照すると、本願のいくつかの実施形態では、アトマイザーは断熱リング50をさらに備え、断熱リング50は隣り合う加熱スリーブ11の間に設けられている。これにより、加熱スリーブ11間の熱伝達が回避され、加熱効率の制御がより精確になる。
【0036】
図5を参照すると、本願のいくつかの実施形態では、加熱スリーブ11は円筒状に設けられている。円筒状の加熱スリーブ11が軸方向の回転対称性を有するため、被加熱物40の中心軸線上の任意一点から加熱スリーブ11の内壁までの距離が等しく、これは、熱が被加熱物40の中心に均一に伝達されることに有利であり、加熱がより均一になるようにすることができる。
【0037】
図5を参照すると、選択的に、複数の加熱スリーブ11の筒壁の厚さが同じであるように設けられている。渦電流が加熱スリーブ11の筒壁の延在方向に沿って流れるため、筒壁が厚いほど、筒壁の渦電流の流れに垂直な横断面における断面積が大きくなり、筒壁の渦電流に対する抵抗が小さくなる。これから分かるように、筒壁の厚さにより熱効率が変化するので、加熱スリーブ11の筒壁の厚さは一致するように設けることにより、筒壁の加熱効率に与える影響を排除することができ、加熱効率の制御をより便利にすることができる。
【0038】
上記実施形態では、各実施形態の説明にはそれぞれ重点がある。ある実施形態において詳しく説明されなかった部分については、他の実施形態の関連説明を参照することができる。
【0039】
本願の説明において、用語「第1」、「第2」は説明だけに使用され、相対的な重要性を示したり暗示したり、指された技術的特徴の数を暗黙的に示したりするとは理解されない。したがって、「第1」、「第2」で限定される特徴は、1つまたは複数の特徴を明示的または暗黙的に含むことができる。
【0040】
以上、本願の実施形態に係るアトマイザーについて詳細に紹介した。本明細書では、具体的な例を用いて本願の原理及び実施形態を説明した。上記の実施形態の説明は本願の方法及びその核心的な思想を理解するためのものである。また、当業者にとって、本願の思想に基づいて、具体的な実施形態及び応用範囲に変更が生じる可能性がある。以上をまとめると、本明細書は本願を限定するものであると理解されるべきではない。
【符号の説明】
【0041】
10…加熱アセンブリ、11…加熱スリーブ、12…導磁部材、12a…出力部、12b…誘導部、13…励磁コイル、20…プリント配線板(PCB)、30…バッテリー、40…被加熱物、50…断熱リング、60…交流電流発生器
図1
図2
図3
図4
図5