(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-26
(45)【発行日】2025-10-06
(54)【発明の名称】ヘテロ金属材料の製造方法、および、ヘテロ金属材料の製造装置
(51)【国際特許分類】
B22D 23/00 20060101AFI20250929BHJP
【FI】
B22D23/00 E
B22D23/00 C
(21)【出願番号】P 2021199341
(22)【出願日】2021-12-08
【審査請求日】2024-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人クオリオ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【氏名又は名称】赤羽 修一
(72)【発明者】
【氏名】ルズギン ドミトリー バレンチノビッチ
(72)【発明者】
【氏名】渡部 愛理
(72)【発明者】
【氏名】奥川 将行
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特表平06-507941(JP,A)
【文献】特表平10-506153(JP,A)
【文献】特開平04-253561(JP,A)
【文献】特開平04-224072(JP,A)
【文献】特開平07-195168(JP,A)
【文献】特開平02-112867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 23/00
C23C 4/00-4/18
B22F 3/115
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性ガス雰囲気中で、回転する基板に向けて複数のノズルから互いに異なる金属種の金属溶融物を噴射し、噴射物
を、冷却された前記基板
による冷却作用で急冷
して前記基板上に
複数種の金属
の層を
渦巻状に積層させることを含む、ヘテロ金属材料の製造方法。
【請求項2】
前記金属溶融物の噴射方向を制御することにより前記金属の
積層方向を制御する、請求項1に記載のヘテロ金属材料の製造方法。
【請求項3】
前記複数のノズルのうち少なくとも1つのノズルから、前記基板の回転軸方向に前記金属溶融物を噴射する、請求項1又は2に記載のヘテロ金属材料の製造方法。
【請求項4】
前記複数のノズルのうち少なくとも1つのノズルから、前記基板の回転軸に対して斜め方向に前記金属溶融物を噴射する、請求項1~3のいずれか1項に記載のヘテロ金属材料の製造方法。
【請求項5】
前記急冷が冷却速度1000℃/s以上の冷却である、請求項1~4のいずれか1項に記載のヘテロ金属材料の製造方法。
【請求項6】
前記ヘテロ金属材料がアモルファス構造を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のヘテロ金属材料の製造方法。
【請求項7】
基板を回転可能に保持
し、かつ冷却装置を内蔵した基板保持部と、
内部に金属が配され、一端にノズルを有する坩堝と、前記金属を加熱溶融する加熱機構とを有し、回転する
前記基板に向けて前記ノズルから前記金属の溶融物を噴射する複数の噴射機構と、を
内部を不活性ガス雰囲気下に置換可能な真空チャンバ内に具備し、
前記坩堝は、
回転軸により軸支されることによって前記ノズルからの噴射角度を調整可能に配され、
前記基板保持部は、
回転する前記基板上に前記複数の噴射機構から噴射された複数種の前記金属溶融物の噴射物を、前記
冷却装置で冷却した前記基板
による冷却作用で急冷
することにより、前記複数の噴射機構から噴射された複数種の金属
の層を
前記基板上に渦巻状に積層させる
ヘテロ金属材料の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘテロ金属材料の製造方法、および、ヘテロ金属材料の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属を溶融させ、溶融物を基板上に噴霧して基板上に堆積させてインゴット(原料鋳塊)を作製することが行われている。例えば、特許文献1には、金属溶融物を噴射する噴射機構を有し、この噴射機構を用いて不活性ガスのジェット流により金属溶融物を基板上に噴射し、この基板上に金属のコヒーレントな堆積物を形成する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるように、金属溶融物の基板上への噴霧を温度制御することにより、金属の堆積物を結晶構造ないしアモルファス構造として得ることができる。しかし、特許文献1記載の技術では、得られる金属堆積物は、噴霧する金属種からなる単一の均一な金属材料である。つまり、得られる金属堆積物の物理・化学的な特性は、噴霧する金属種のものに制限される。
【0005】
本発明は、単一金属種では達成できない物理・化学的特性を示す金属材料を得ることができるヘテロ金属材料の製造方法及び製造装置を提供することを課題とする。
【0006】
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意検討を重ねた結果、回転する基板に向けて複数のノズルから互いに異なる金属種の金属溶融物を噴射し、噴射物が上記の回転基板上で急冷されて当該基板上に金属噴射物が堆積する形態とすることにより、基板上に堆積した金属鋳塊を、1つのノズルから噴霧した単一金属種の金属鋳塊とは異なる、特異な特性を発現する鋳塊とできることを見出した。本発明はこれらの知見に基づき完成されるに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は、以下の手段により解決された。
[1]
回転する基板に向けて複数のノズルから互いに異なる金属種の金属溶融物を噴射し、噴射物が基板上で急冷されて前記基板上に金属を堆積させることを含む、ヘテロ金属材料の製造方法。
[2]
前記金属溶融物の噴射方向を制御することにより前記金属の堆積方向を制御する、[1]に記載のヘテロ金属材料の製造方法。
[3]
前記複数のノズルのうち少なくとも1つのノズルから、前記基板の回転軸方向に前記金属溶融物を噴射する、[1]又は[2]に記載のヘテロ金属材料の製造方法。
[4]
前記複数のノズルのうち少なくとも1つのノズルから、前記基板の回転軸に対して斜め方向に前記金属溶融物を噴射する、[1]~[3]のいずれか1つの記載のヘテロ金属材料の製造方法。
[5]
不活性ガス雰囲気中で前記金属溶融物を噴射する、[1]~[4]のいずれか1つに記載のヘテロ金属材料の製造方法。
[6]
前記ヘテロ金属材料がアモルファス構造を含む、[1]~[5]のいずれか1つに記載のヘテロ金属材料の製造方法。
[7]
基板を回転可能に保持する基板保持部と、
内部に金属が配され、一端にノズルを有する坩堝と、前記金属を加熱溶融する加熱機構とを有し、回転する基板に向けて前記ノズルから前記金属の溶融物を噴射する複数の噴射機構と、を具備し、
前記坩堝は、前記ノズルからの噴射角度を調整可能に配され、
前記基板保持部は、前記金属溶融物の噴射物を、前記基板を介して急冷して金属を堆積させる
ヘテロ金属材料の製造装置。
【0008】
本発明において「金属」との用語は、特段の断りのない限り、純金属と金属合金の両方を包含する意味で用いている。
【発明の効果】
【0009】
本発明のヘテロ金属材料の製造方法及び製造装置によれば、特異な積層構造を有し、単一金属種では達成できない物理・化学的特性を示す金属材料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係るヘテロ金属材料の製造装置の構成例を示す模式図である。
【
図3】上記製造装置の複数の噴射機構の構成例を示す模式図である。
【
図4】上記製造装置の坩堝の一端及びその近傍を模式的に示す拡大断面図である。
【
図5】上記噴射機構を一方向に見た場合の構成例を示す模式図である。
【
図6】上記製造装置の操作盤の構成例を示すブロック図である。
【
図7】上記製造装置が実行する処理の手順を例示するフローチャートである。
【
図8】金属溶融物の噴射時における上記噴射機構を説明するための説明図である。
【
図9】金属溶融物の噴射時における上記噴射機構を説明するための説明図である。
【
図10】互いに異なる種類の金属が渦巻状に積層されたリング状の金属塊の一例を示す図面代用写真である。
【
図11】本発明の変形例に係る坩堝の構成例を示す模式図である。
【
図12】本発明の実施例に係るヘテロ金属材料の断面SEM-EDX画像である。
【
図13】本発明の実施例に係るヘテロ金属材料の断面SEM-EDX画像である。
【
図14】本発明の実施例及び比較例に係るヘテロ金属材料のマイクロビッカース硬さがプロットされたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態の例を説明する。なお、図面において各部の寸法および縮尺は、説明の便宜上、実際と相違する場合がある。また、図面は、理解を容易にするために模式的に示すことがある。さらに、本発明は、本発明で規定すること以外は、以下に例示する形態に限られない。
以降の説明では、相互に直交するX軸、Y軸およびZ軸を想定する。X軸、Y軸およびZ軸は、以降の説明で例示される全図において共通であり、相互に直交する3軸方向である。
図1に例示される通り、任意の地点からみてX軸に沿う一方向をX1方向と表記し、X1方向と反対の方向をX2方向と表記する。X軸方向は、X1方向およびX2方向の両方向を含む方向である。同様に、任意の地点からY軸に沿って相互に反対の方向をY1方向およびY2方向と表記する。Y軸方向は、Y1方向およびY2方向の両方向を含む方向である。また、任意の地点からZ軸に沿って相互に反対の方向をZ1方向およびZ2方向と表記する。Z軸方向は、Z1方向およびZ2方向の両方向を含む方向である。さらに、X軸とY軸とを含むX-Y平面は水平面に相当する。Z軸は鉛直方向に沿う軸線である。
【0012】
本明細書における「接続」とは、要素aと要素bとが直接的または間接的に無線、有線または電気的に接続される態様を意味する。
【0013】
本明細書における「~上」とは、要素aに要素bが直接設けられる態様、または、他の要素を介して要素aの上方(例えば鉛直上方)に要素bが設けられる態様を意味する。例えば、「基板上に金属材料を堆積させる」とは、基板に直接金属が堆積する態様、または、例えば任意の金属層などの他の要素を介して基板の上方に金属が堆積する態様を意味する。
【0014】
本発明及び本明細書における「金属材料」は、結晶状態でもよく、アモルファス状態であってもよく、結晶状態とアモルファス状態とが混在してもよい。
【0015】
1.実施形態
[ヘテロ金属材料の製造装置の構成]
図1及び
図2は、本発明のヘテロ金属材料の製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」とも称す。)を実施するのに好適な一実施形態に係るヘテロ金属材料の製造装置1(以下、製造装置1と称す)の構成例を示す模式図である。
図1は製造装置1をY2方向に見た図であり、
図2は製造装置1をY1方向に見た図(
図1の裏面の図)である。
製造装置1は、
図3に示す基板ホルダー10と、
図3に示す複数の噴射機構20とを有する。さらに、製造装置1は、チャンバ40と、架台50と、基板回転昇降機構60と、複数の高周波発振器70と、排気装置80と、操作盤90と、ガス供給装置100とを有する。
製造装置1のX軸方向における寸法D1は特に制限されず、目的に応じて適宜に設定することができる。すなわち、研究用途では比較的小型の装置サイズとすることができ、工業的な利用においては装置を大型化することができる。
【0016】
チャンバ40は、のぞき窓41と、複数のビューポート42と、複数の放射温度計43と、複数の温度表示モニター44と、圧力計(図示略)とを有する。チャンバ40は、複数の噴射機構20、基板ホルダー10、放射温度計43および圧力計を収容する真空チャンバである。
ビューポート42は、放射温度計43が示す温度を確認可能なのぞき窓である。放射温度計43は、チャンバ40の内面に設けられ、後述する坩堝21内の温度を測定する。温度表示モニター44は、放射温度計43に接続され、放射温度計43により測定された温度を表示する。圧力計は、チャンバ40内に設けられ、チャンバ40の内圧(kPa)を測定する。
チャンバ40は排気管Pに接続され、排気管Pを介して外界に連通する。排気管Pには、リーク弁Vが設けられる。リーク弁Vと、後述するバルブV1~V3および流量調節バルブV4~V8は特に制限されない。例えば、電気的に管内の連通/遮断を切り替え可能に構成された電磁弁が採用される。なお、リーク弁V、バルブV1~V3および流量調節バルブV4~V8は、製造装置1が起動する前の初期状態において通常は閉弁状態である。
【0017】
図3は、複数の噴射機構20として2つの噴射機構20を有する場合の構成例を示す模式図である。噴射機構20は、坩堝21と、ガスアトマイザー22と、加熱機構23とを有する。
【0018】
本実施形態に係る噴射機構20(坩堝21)は回転軸X1により軸支され、回転軸X1のY軸周りの回動に伴い、回転軸X1を中心として回動可能に構成される(
図8及び
図9参照)。
【0019】
坩堝21は、Z軸方向に延在する筒状の筐体であり、金属溶融物を貯留する容器である。後述する高周波誘導加熱前の坩堝21内には、金属が配される。この金属は通常は金属合金(単に「合金」ともいう。)である。この合金は、例えば、Mg、Zn、Ca、Li、Ti、Cu、Sn、AlまたはFeなどをベースとする合金である。なかでも、後述のステップSt3において噴射される金属溶融物の流動性の観点から、Al、Mg、CuまたはFeベースの合金が好ましい。一例として、AZ91-Mg alloy合金、Al-Li 8090合金、またはZr-Cuをベースとする合金を好適に用いることができる。
本実施形態では、複数の坩堝21のうち一の坩堝21内に配される金属と、他の坩堝21に配される金属とは、互いに種類が異なる。
坩堝21の容量は、製造装置1の仕様及び用途に応じて適宜設定される。坩堝21を構成する材料も、加熱温度等に応じて適宜に設定すればよい。坩堝21は、例えば石英で構成されてもよく、窒化ホウ素坩堝(BN坩堝)であってもよい。
図4は、坩堝21の一端及びその近傍を拡大して模式的に示す断面図である。坩堝21は、
図4に例示されるように、ノズル211を有する。ノズル211は、坩堝21のZ1方向に位置する一端に一体的に設けられ、当該一端からZ1方向に延在する管である。
【0020】
図5は、噴射機構20をZ2方向に見た場合の構成例を示す模式図である。ガスアトマイザー22は、貫通孔221と、ガス流入口222と、ガス流路223と、ガス流出口224とを有する円環状の構造体である。
貫通孔221には、ノズル211が挿入され、ノズル211のZ軸周りの外周面を包囲する。ガス流入口222は、後述するガス供給装置100から供給されたガスの入口である。ガス流入口222は、
図5に例示されるように、ノズル211のZ1方向に位置する一端の周縁を包囲する。ガス流出口224は、ガス流入口222から流入したガスを噴射する出口である。ガス流路223は、ガス流入口222とガス流出口224とに連通し、ガス流入口222から流入したガスをガス流出口224に導く環状の空間である。
ガスアトマイザー22(ノズル211)と基板Bとの間の距離D2(
図3参照)は特に制限されず、装置サイズに応じて適宜に設定される。基板BのX軸方向における寸法D4も同様に、装置サイズに応じて適宜に設定される。本実施形態に係るガスアトマイザーとしては、クローズドタイプのアトマイザーが採用される。このようなアトマイザーは、例えば、「豊田中央研究所 R&Dレビュー Vol.30 No.2 (1995.6)」に記載されている。
【0021】
加熱機構23は、坩堝21の外周面を包囲する加熱コイルである。加熱機構23の長手方向と、坩堝21の長手方向は互いに平行である。本実施形態に係る加熱機構23は、後述する高周波発振器70から供給された高周波電流により発生した磁束により坩堝21内を発熱させる。即ち、加熱機構23は、高周波誘導加熱により坩堝21内に配された金属を加熱する加熱コイルである。加熱機構23が坩堝21内に配された金属を加熱する温度は、溶融させる金属の融点に応じて適宜決定されるが、例えば1500℃程度まで加熱することができる。ここで、一の加熱機構23と他の加熱機構23との間の距離D3(
図3参照)は、各加熱機構23に生じる磁束が干渉し合わない距離であることが好ましい。
【0022】
架台50は、チャンバ40に連結する筐体であり、貫通孔(図示略)を介して、チャンバ40の内部空間に連通する。
【0023】
基板回転昇降機構60は、架台50の内部に設けられる。基板回転昇降機構60は、上記貫通孔を挿通し、チャンバ40内において基板ホルダー10を支持する。基板回転昇降機構60は、Z軸方向に伸縮可能に構成される。また、基板回転昇降機構60には電気モータ(図示略)が内蔵され、電気モータの回転により基板ホルダー10をZ軸周りに回転させる。
【0024】
基板ホルダー10は、基板Bを保持し、基板回転昇降機構60のZ軸方向の伸縮に伴い基板BをZ軸方向に移動させる。また、基板ホルダー10は、基板回転昇降機構60のZ軸周りの回転に伴い基板BをZ軸周りに回転させる。
本実施形態に係る基板ホルダー10は、
図3に例示されるように、冷却装置11と、温度計12とを有する。冷却装置11は、基板ホルダー10に内蔵され、基板ホルダー10の表面Sを冷却する。基板ホルダー10は、「基板保持部」の一例である。温度計12は、基板ホルダー10に設けられ、表面Sの温度を測定する。なお、温度計12の配置は
図1に例示された配置に限定されず、任意である。
【0025】
複数の高周波発振器70は、電気を高周波エネルギーに変換する高周波電源である。複数の高周波発振器70の各々は、複数の噴射機構20(加熱機構23)の各々に接続され、電力(高周波エネルギー)を供給する。高周波発振器70には、ホース(図示略)を介して冷却水循環装置(図示略)に接続される。冷却水循環装置から供給された冷却水は、高周波発振器70を経由した後、冷却水循環装置に戻るように循環する。
【0026】
排気装置80は、拡散ポンプ81と、ロータリーポンプ82とを有する。拡散ポンプ81は、バルブV1が設けられた排気管P1に接続され、排気管P1を介しチャンバ40の内部空間に連通する。ロータリーポンプ82は、バルブV2が設けられた排気管P2に接続され、排気管P2を介して拡散ポンプ81に接続される。ロータリーポンプ82は、拡散ポンプ81の補助ポンプとして機能する。ロータリーポンプ82は、排気管P2から分枝され、バルブV3が設けられた分枝管P3と、排気管P2とを介して、チャンバ40の内部空間に連通する。
【0027】
図6は、操作盤90の構成例を示すブロック図である。操作盤90は、架台50に設けられた情報処理装置である。操作盤90は、制御装置91と、記憶装置92と、通信装置93と、入力装置94と、表示装置95とを有する。これらは、バス96を介して相互に接続される。操作盤90は、製造装置1を構成する各要素(複数の高周波発振器70、冷却装置11、ガス供給装置100、リーク弁V、バルブV1~V3、流量調節バルブV4~V8、拡散ポンプ81、ロータリーポンプ82、基板回転昇降機構60、基板回転昇降機構60に内蔵される電動モータ、放射温度計43、温度計12、チャンバ40内の圧力計、回転軸X1および冷却水循環装置)に接続される。
【0028】
制御装置91は、上述した製造装置1の各要素を制御する単数又は複数のプロセッサで構成される。例えば、制御装置91は、CPU(Central Processing Unit)、SPU(Sound Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの1種類以上のプロセッサで構成される。
本実施形態では、制御装置91が、記憶装置92に記憶されたプログラムPGを実行することによって、本発明のヘテロ金属材料の製造方法を実施する上での各種処理を製造装置1に実行させる。このような処理としては、例えば、複数の噴射機構20の各々に供給される高周波電流(A)、高周波電圧(V)及び高周波電力(W)を制御する処理、冷却装置11が基板ホルダー10(表面S)を冷却する冷却温度(℃)及び冷却速度(L/min)を制御する処理、ガス供給装置100から出力されたガスの流量を調節する処理、リーク弁Vと各バルブV1~V8の開弁/閉弁を制御する処理、拡散ポンプ81およびロータリーポンプ82の起動/停止を制御する処理、基板回転昇降機構60に内蔵された電動モータの回転数(rpm)を制御する処理、冷却水循環装置から出力された冷却水の流量を制御する処理、ガスアトマイザー22の噴射圧(kPa)を制御する処理、坩堝21の長手方向と回転軸X1とのなす角を制御する処理などが挙げられる。
【0029】
記憶装置92は、制御装置91が実行するプログラムPGと制御装置91が使用するデータとを記憶する単数または複数のメモリである。記憶装置92は、例えば磁気記録媒体または半導体記録媒体などの公知の記録媒体で構成される。記憶装置92は、複数種の記録媒体の組合せにより構成されてもよい。また、記憶装置92は、可搬型の記憶媒体、または制御装置91と通信可能な外部記憶媒体であってもよい。
【0030】
通信装置93は、上述した製造装置1の各要素と通信可能に接続される通信回路である。通信装置93は、これら各要素との接続における入出力インターフェースとして機能する。なお、本実施形態に係る操作盤90は、インターネットなどのネットワークに接続される通信インターフェース(図示略)をさらに有し、このネットワークを介してサーバー、パーソナルコンピューター、スマートフォンまたはタブレット端末などの外部接続機器に接続されてもよい。この場合、操作盤90と外部接続機器との間で各種のデータが交換されてもよい。
【0031】
入力装置94は、例えば、ハードウェアボタン、スイッチ、タッチパネルまたはレバーなど、操作者によって操作される装置である。入力装置94は、例えば、赤外線やその他の電波を利用したリモートコントロール装置であってもよいし、製造装置1の操作に対応した外部接続機器であってもよい。入力装置94は、操作者が入力した情報に基づいて入力信号を生成して制御装置91に出力する入力制御回路を含む。操作者は、この入力装置94を操作することによって、製造装置1に対して各種パラメーターを入力することにより、上述した制御を指示する。これにより、操作者は、その場の観察状況下に応じて、例えば、複数の金属層が積層された軽量なヘテロ金属材料を製造することができる。上記パラメーターとしては、例えば、坩堝21の設定温度、高周波発振器70から出力される高周波電圧、高周波電流及び高周波電力、基板ホルダー10の表面S(
図3参照)の温度、基板ホルダー10の回転速度、冷却水循環装置から出力される冷却水の流量、チャンバ40内の圧力、およびガスアトマイザー22の噴射圧などが挙げられる。
【0032】
表示装置95は、取得した情報を操作者に対して通知することが可能な装置で構成される。表示装置95は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)または有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどの表示装置である。表示装置95は、制御装置91の処理により得られた結果を表示する。具体的には、表示装置95は、例えば、現在の坩堝21内の温度、および基板ホルダー10の現在の表面温度などを表示する。
【0033】
ガス供給装置100は、例えばガスを貯留するボンベであり、ガスをチャンバ40内および複数のガスアトマイザー22に供給する。ガス供給装置100が貯留するガスは特に制限されず、通常は不活性ガスである。不活性ガスとしては、アルゴンガスなどの希ガスや窒素ガスなどが挙げられる。ガス供給装置100は、ガス供給管T(
図1参照)に接続される。ガス供給管Tは、チャンバ40に接続され、ガス供給装置100から出力されたガスをチャンバ40内に供給する。ガス供給管Tには流量調節バルブV4が設けられる。
噴射機構20を2つ設ける形態を想定したとき、ガス供給管Tから分枝した分枝管T1~T4を設けることができる。分枝管T1~T4のうち、分枝管T1は2つの坩堝21のうち一の坩堝21の流入口に接続され、分枝管T2は他の坩堝21の流入口に接続される。分枝管T3は2つのガスアトマイザー22のうち一のガスアトマイザー22のガス流入口222に接続され、分枝管T4は他のガスアトマイザー22のガス流入口222に接続される。
図1に例示されるように、分枝管T1、T2、T3、T4には、それぞれ、流量調節バルブV5、V6、V7、V8が設けられる。
【0034】
[ヘテロ金属材料の製造方法]
次に、本発明の製造方法の一例について、
図7を適宜参照しながら説明する。
図7は、製造装置1が実行する処理の手順を例示するフローチャートである。製造装置1は、
図7に例示されるように、排気工程(ステップSt1)、加熱工程(St2)、製膜工程(St3)、後処理工程(St4)と、を実行する。
【0035】
<ステップSt1:排気工程>
制御装置91は、拡散ポンプ81、ロータリーポンプ82およびガス供給装置100を起動させる。次に、制御装置91は、バルブV1~V3を開弁させ、チャンバ40内を真空状態になるまで排気させる。次いで、制御装置91は、流量調節バルブV4を開弁し、チャンバ40内にガスを供給することで、チャンバ40内を不活性ガス雰囲気下に置換する。
ここで、従来の製造方法(例えば、合金シートと鋼シートとを積層圧延によって複合化させる方法)では、積層金属材料が高強度であるが脆く、求められている機械的特性を示さない。これは、作製された複合金属材料の界面に酸化層が形成され、脆化が起こったためと考えられる。これに対し、本発明の製造方法では、上述のとおり、チャンバ40内が不活性ガス雰囲気下に置換され、かつ、回転する基板上に連続的に金属(金属粒)が素早く堆積していく。このため、後述するステップSt3において、互いに異なる種類の金属の層が渦巻状に積層・堆積された金属塊において、層間への酸化層の形成が抑制される。すなわち、高度に一体化されたヘテロ金属材料を得ることができ、従来達成できなかった特異な物性を発現させることも可能となる。
ステップSt1では、制御装置91により、後述するステップSt3において形成される金属塊が所望の状態となるようにチャンバ40内の圧力が制御されることが好ましい。この制御は、例えば、制御装置91が操作者からの入力に基づき、排気装置80および流量調節バルブV4を制御することにより実行される。
【0036】
<ステップSt2:加熱工程>
制御装置91は、複数の高周波発振器70を起動させる。これにより、複数の加熱機構23の各々に高周波電流が供給され、複数の坩堝21の各々に配された金属種が高周波誘導加熱されて金属溶融物となる。この際、後述するステップSt3において形成される金属種の堆積物が所望の状態となるように、坩堝21内の温度が制御されることが好ましい。具体的には、坩堝21内の温度が例えば500℃以上1500℃以下の範囲に制御されることが好ましい。この制御は、例えば、制御装置91が操作者からの入力に基づいて、高周波発振器70を制御することにより実行される。なお、ステップSt2では、複数の加熱機構23のうち一の加熱機構23に供給される高周波電流の周波数と、他の加熱機構23に供給される高周波電流の周波数は、互いに異なってもよい。
【0037】
<ステップSt3:製膜工程>
制御装置91は、基板回転昇降機構60を介して基板ホルダー10をZ軸周りに回転させることにより、基板BをZ軸周りに所望の速度で回転させる。次に、制御装置91は、流量調節バルブV5~V8を開弁させ、複数の坩堝21の各々と、複数のガスアトマイザー22の各々にガスを供給する。これにより、複数の噴射機構20の各々が並行して基板Bに向けて金属溶融物を噴霧する。具体的には、各坩堝21に溜まった金属溶融物が、坩堝21の流入口から流入したガスによりZ1方向に押し出され、さらに、ガス流出口224(
図4参照)から噴射されたガスにより放射状に拡散されて、基板B上に噴霧される。この際、複数の坩堝21の各々の流入口に流入されるガスの流量と、複数のガスアトマイザー22の各々のガス流入口に流入されるガスの流量は、それぞれ独立して制御されてもよい。即ち、各バルブV5~V8は、制御装置91によりそれぞれ独立して制御されてもよい。
基板B上に噴霧された金属溶融物の噴射物は、基板B上に到達して急冷され、基板B上に金属が堆積する。ここで、制御装置91が操作者からの入力に基づき基板B(基板ホルダー10)の回転速度を制御することによっても、形成される金属塊の異種材料の比率を所望の比率に制御することができる。
本実施形態では、制御装置91が操作者からの入力に基づいてバルブV5~V8を制御することにより、基板B上の金属層の1層の厚みを、例えば100μm以下に制御することも可能である。これにより、基板B上に形成されるヘテロ金属材料を任意のデザインとすることができる。前述の「デザイン」とは、例えば、ヘテロ金属材料の機能的な視点、及び、美的造形を考慮した意匠的な視点を含む意味である。
基板B上に噴霧された金属溶融物は、冷却装置11(
図3参照)により急冷され、基板B上に堆積する。金属溶融物の基板B上における冷却速度は、例えば1000℃/s以上に制御される。この制御は、制御装置91が操作者からの入力に基づき、冷却装置11を制御することにより実行される。
ステップSt3では、上記の複数の噴射機構20の各々が回転する基板B上に金属溶融物を噴霧する工程と、基板B上に堆積した金属溶融物を急冷する工程とが並行して実行されることにより、基板B上に結晶構造ないしアモルファス構造の金属層を、渦巻状に、逐次的に形成することができる。
即ち、回転する基板Bに向けて複数のノズル211の各々から互いに異なる金属種の金属溶融物が噴射され、噴射物が基板B上で急冷されて、基板B上に複数種の金属の層を渦巻状に、層間に酸化層を実質的に生じずに、規則的に形成することができる。つまり、1種の金属種では達成できない、複数の金属種の物理・化学的特性を併せ持つなど、特異な物性を発現するヘテロ金属材料を基板B上に得ることができる。換言すると、異種材料の融合により新たな機能を有するヘテロ金属材料を製造することができる。例えば、互いに異なる金属材料の層が酸化層を介さずに交互に渦巻状に積層された金属塊を製造することが可能となり、新規物性を有するヘテロ金属材料からなる部品や製品の創出が可能となる。例えば、軽量で硬い素材で出来た金属材料の層を、柔軟性のある金属材料の層の層間に入れることによって、硬さと弾力性を兼ね備える、高度に一体化されたヘテロ金属材料を得ることができる。なお、ステップSt3では、必要に応じて距離D2が制御装置91により制御されてもよい。
【0038】
次に、上記製造装置1を用いて上述したようにヘテロ金属材料を製造する上で、ステップSt3において噴射機構20が取り得る形態を幾つか説明する。
図8及び
図9は、金属溶融物の噴射時における噴射機構20を説明するための説明図である。
【0039】
(形態1)
制御装置91は、
図8に例示されるように、坩堝21の長手方向が回転軸Xに平行な状態となるように回転軸X1を制御する。この状態において、2つの噴射機構20にガスが供給されると、回転する基板Bに向けて2つの噴射機構20の各々から回転軸方向(回転軸Xに平行な方向)に沿って金属溶融物が噴霧される。これにより、互いに異なる2種類の金属層が、酸化層を介さずに、交互に渦巻状に積層された、例えばリング状のヘテロ金属材料を基板B上に得ることができる。こうして基板B上に得られるヘテロ金属材料は、2種類の平板の金属材料を交互に積層してなるヘテロ金属材料と異なり、層間に実質的に酸化層を有しない渦巻状の積層状態であるため、材料全体の特性をより一体化することができる。
図10は、噴射機構20を2つ設けた製造装置1を用いて、
図8に示すように金属溶融物を基板B状に噴射して得た、金属材料からなるリング状の金属塊の写真である。
【0040】
(形態2)
制御装置91は、
図9に例示されるように、坩堝21の長手方向が回転軸Xに対して傾斜する状態となるように回転軸X1を制御する。この状態において、2つの噴射機構20にガスが供給されると、回転する基板Bに向けて2つの噴射機構20の各々から回転軸Xに対して斜め方向に金属溶融物が噴霧される。これにより、
図9に例示されるような、互いに異なる2種類の屈曲した金属層が、層間に実質的に酸化層を有しない状態で渦巻状に交互に積層されたヘテロ金属材料を基板B上に得ることができる。こうして基板B上に得られるヘテロ金属材料は、2種類の平板の金属層を交互に積層してなるヘテロ金属材料と異なり、折り曲げ等をせずに、屈曲したヘテロ金属材料を得ることができる。つまり、折り曲げるなどの工程を経ることなく、屈曲したヘテロ金属材料を製造することが可能となる。なお、屈曲の形状は、坩堝21の長手方向と回転軸Xとの角度(以下、噴射角度と記述する)を調整することにより制御することができる。この場合、噴射角度は、0°越え45°以下であることが好ましい。
【0041】
<ステップSt4:後処理工程>
制御装置91は、バルブV1~V3と、流量調節バルブV4~V8を閉弁させ、拡散ポンプ81およびロータリーポンプ82を停止させる。次いで、制御装置91は、リーク弁Vを開弁させ、チャンバ40内のガスを外界に放出させる。
【0042】
2.変形例
以上、本発明の好ましい実施形態の一例について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく種々の変更を加え得る。前述の態様に付与され得る具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様を、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合してもよい。なお、本発明は、本発明で規定すること以外は、下記の変形例にも何ら限定されるものではない。
【0043】
[変形例1]
上記実施形態の一例では、複数の噴射機構20の各々が基板Bの回転軸Xに対して傾斜する方向に金属溶融物を噴射する態様を示したが、上記傾斜の形態はこれに限られない。例えば、複数の噴射機構20のうち、一の噴射機構20が回転軸Xに沿って金属溶融物を噴射し、他の噴射機構20が回転軸Xに対して傾斜する方向に金属溶融物を噴射する態様であってもよい。
【0044】
[変形例2]
上記実施形態では、噴射機構20が2つである形態を主に説明したが、本発明はこれに限られず、噴射機構20が3つ以上であってもよい。噴射機構20の数は2~10の整数とすることができ、2~8が好ましく、2~6がより好ましく、2~4とすることも好ましく、2又は3とすることも好ましく、2であることも好ましい。
【0045】
[変形例3]
上記実施形態では、複数の噴射機構20の各々の噴射方向が制御装置91による電気的な制御により実行されるがこれに限られず、例えば、操作者の手動によって当該噴射方向が制御されてもよい。
【0046】
[変形例4]
本実施形態に係る製造装置1の構成は
図1及び
図2に例示された構成に限定されない。例えば、複数の噴射機構20と基板Bとの間に、通常のシャッター機構(図示略)が設けられてもよい。この場合、制御装置91がシャッター機構の開閉状態を制御することにより、基板B上に形成される金属層の厚みが好適に制御される。
【0047】
[変形例5]
図11は、本発明の変形例に係る坩堝21の構成例を示す模式図である。本実施形態に係る坩堝21の構成は
図3に例示される構成に限定されない。例えば、
図11に例示されるように、基板B側に向かって円錐状に先細る構成であってもよい。この場合、坩堝21の基板B側(Z1方向側)の先端が鑢などで研磨されていてもよい。
【0048】
3.付記
本発明は、インゴットなどの原料鋳塊を製造する製造装置及び製造方法に限られず、その用途は特に制限されない。
【0049】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本発明は、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0050】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0052】
[実施例]
Al-Li 8090合金(Al:95.1質量%、Li:2.5質量%、Cu:1.3質量%、Mg:1.0質量%、Zr:0.1質量%)をアルミナ坩堝に入れ、アルゴン雰囲気下(純度99.9995%)で30分溶解して均一化し、銅製の型に流し込み、高さ20mm×幅100mm×奥行き50mmの大きさの金属塊を作製した。さらに、この金属塊を、高さ10mm×幅10mm×奥行き50mmの四角柱状の金属片にカットし、本発明の製造装置に係る2つの石英坩堝のうち一方の石英坩堝にセットした。
次いで、AZ91-Mg alloy合金(Mg:90質量%、Al:8.8質量%、Zn:0.8質量%、Mn:0.4質量%)について、Al-Li 8090合金と同様にして金属片を作製し、上記2つの石英坩堝のうち他方の石英坩堝にセットした。
【0053】
Al-Li 8090合金の金属片がセットされた石英坩堝内を加熱機構が800℃に加熱し、当該金属片を溶融させた。同様に、AZ91-Mg alloy合金の金属片がセットされた石英坩堝内を加熱機構が750℃に加熱し、当該金属片を溶融させた。次いで、Al-Li 8090合金が溶融した溶融物が入った、噴射角度が0°である石英坩堝と、AZ91-Mg alloy合金が溶融した溶融物が入った、噴射角度が0°である石英坩堝とが並行して、回転する基板(回転速度:80回転/分)に向けて溶融物を噴射した。当該基板上の溶融物を冷却装置が18℃に急冷して固化し、互いに異なる金属層が、酸化層を介さずに渦巻状に積層された積層物(
図8参照)である環状のヘテロ金属材料(
図10参照)を得た。
【0054】
[SEM-EDX測定]
実施例に係るヘテロ金属材料について、SEM(走査型電子顕微鏡)-EDX(エネルギー分散型X線分析)測定を行った。
図12及び
図13は、この測定により得られた断面SEM-EDX画像である。なお、
図12は、SEMに付属するEDX装置によりAlが元素分析された断面画像である。
図13は、当該EDX装置によりMgが元素分析された断面画像である。
図12及び
図13に示されるように、2種の金属層(レイヤー)が交互に幾重にも積層されていることがわかる。
【0055】
[マイクロビッカース硬さの測定]
実施例に係るヘテロ金属材料のマイクロビッカース硬さ(HV)を測定した。具体的には、実施例に係るヘテロ金属材料について、冷間圧延により厚みを50%まで薄くし、圧延直後の状態のマイクロビッカース硬さと、圧延してから170℃で8時間エージングさせた後のマイクロビッカース硬さを測定した。
図14はこの測定結果を示すグラフである。
なお、
図14に示される「●」は、「K. Dunkan, J. Martin, Journal of Material Science Letters 10 (1991) 1098-1100」に記載の文献値(文献値1:Al-Li 8090合金のみのデータ)を示すプロットであり、圧延直後の状態のマイクロビッカース硬さ(
図14の左に示されるプロット)と、圧延してから170℃で8時間エージングさせた後のマイクロビッカース硬さ(
図14の右に示されるプロット)を測定した測定結果を示すプロットである。
また、
図14に示される「▲」は、「Y. Li, Y. Chen, H. Cui, B. Xiung, J. Zhang, Materials Characterization, 60 (2009) 240-245」に記載の文献値(文献値2:AZ91-Mg alloy合金のみのデータ)を示すプロットであり、圧延直後の状態のマイクロビッカース硬さ(
図14の左に示されるプロット)と、圧延してから175℃で8時間エージングさせた後のマイクロビッカース硬さ(
図14の右に示されるプロット)を測定した測定結果を示すプロットである。
【0056】
図14を参照すると、上記文献値では、170~175℃のエージングによりマイクロビッカース硬さが徐々に上昇することが確認された。これに対し、実施例に係るヘテロ金属材料は、圧延直後ではマイクロビッカース硬さが上記文献値の中間的な値を示すものの、170~175℃のエージングにより上記文献値よりもマイクロビッカース硬さが格段に上昇することがわかった。この結果は、本発明の製造方法により、単に複数の金属種の中間的な物性を示すヘテロ金属材料が得られるに留まらず、複数の金属種が一体的に複合化し、特異な物理・化学的特性を発現し得ることを示している。
【符号の説明】
【0057】
1 ヘテロ金属材料の製造装置
10 基板ホルダー
11 冷却装置
12 温度計
20 噴射機構
21 坩堝
211 ノズル
22 ガスアトマイザー
221 貫通孔
222 ガス流入口
223 ガス流路
224 ガス流出口
23 加熱機構
40 チャンバ
41 のぞき窓
42 ビューポート
43 放射温度計
44 温度表示モニター
50 架台
60 基板回転昇降機構
70 高周波発振器
80 排気装置
81 拡散ポンプ
82 ロータリーポンプ
90 操作盤
91 制御装置
92 記憶装置
93 通信装置
94 入力装置
95 表示装置
100 ガス供給装置
B 基板
P,P1,P2 排気管
P3 分岐管
S 基板ホルダーの表面
T ガス供給管
T1~T4 分枝管
V リーク弁
V1~V3 バルブ
V4~V8 流量調節バルブ