(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-26
(45)【発行日】2025-10-06
(54)【発明の名称】低相対弾性を有する回転成形組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/08 20250101AFI20250929BHJP
B29C 41/04 20060101ALI20250929BHJP
B29C 41/36 20060101ALI20250929BHJP
C08F 210/16 20060101ALI20250929BHJP
【FI】
C08L23/08
B29C41/04
B29C41/36
C08F210/16
(21)【出願番号】P 2022563390
(86)(22)【出願日】2021-04-09
(86)【国際出願番号】 IB2021052961
(87)【国際公開番号】W WO2021214584
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2024-03-29
(32)【優先日】2020-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505382548
【氏名又は名称】ノバ ケミカルズ(インターナショナル)ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベルユーミュール、セリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】モロイ、ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ミルザデー、アミン
【審査官】藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-510583(JP,A)
【文献】特表2008-505202(JP,A)
【文献】特開2019-044195(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0310532(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0141579(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/08
B29C 41/04
B29C 41/36
C08F 210/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)2.3~5.5の分子量分布Mw/Mnであって、Mw及びMnがASTM―6467に従って測定される、Mw/Mn;
2)ASTM―D792に従って測定される、0.940~0.957g/ccの密度;
3)ASTM D1238により190℃で2.16kgの負荷を用いて測定された、10分当たり4~10グラムのメルトインデックスI
2;及び
4)190℃及び0.05ラジアン/秒で測定された、0.03ラジアン/秒未満の相対弾性G’/G”
を有する二峰性ポリエチレン組成物であって、
前記二峰性ポリエチレン組成物は、以下のA及びB:
A.以下のA.i~A.iiiを有する、10~70重量%の第1エチレンコポリマー:
A.i.明細書に記載の方法に従って計算される、10分当たり0.4~5グラムのメルトインデックスI
2;
A.ii.1.8~3.0の分子量分布Mw/Mn;及び
A.iii.0.920~0.950g/ccの密度;
B.以下のB.i~B.iiiを有する、90~30重量%の第2エチレンコポリマー:
B.i.明細書に記載の方法に従って計算される、10分当たり4~1500グラムのメルトインデックスI
2;
B.ii.2.3~6.0の分子量分布Mw/Mn;及び
B.iii.前記第1エチレンコポリマーの密度より大きいが、0.967g/cc未満である密度;
を含んでおり、
ただし、前記第1エチレンコポリマーの密度は、前記第2エチレンコポリマーの密度よりも0.010~0.035g/ccの量だけ低い、
二峰性ポリエチレン組成物。
【請求項2】
前記第1エチレンコポリマーが、
A.iv.35,000~80,000の数平均分子量Mn;
A.v.70,000~150,000の重量平均分子量Mw;
A.vi.120,000~250,000のMz;及び
A.vii.炭素原子1000個あたり1~5の短鎖分岐の数(SCB1); を有することによって更に特徴付けられる、請求項1に記載の二峰性ポリエチレン組成物であって、
前記第1エチレンコポリマーのMw/Mnが2~3であり、
明細書に記載の方法に従って計算される、前記第1エチレンコポリマーのメルトインデックスI
2が10分当たり0.5~4.0グラムである、
二峰性ポリエチレン組成物。
【請求項3】
前記第2エチレンコポリマーが、
B.iv.12,000~30,000の数平均分子量Mn;
B.v.28,000~72,000の重量平均分子量Mw;
B.vi.70,000~150,000のMz;
B.vii.炭素原子1000個あたり0.1~2の短鎖分岐の数(SCB2);及び
B.viii.前記第1エチレンコポリマーの密度より大きいが、0.965g/cc未満である密度;
を有することによって更に特徴付けられる、請求項1に記載の二峰性ポリエチレン組成物であって、
前記第2エチレンコポリマーのMw/Mnが2。3~5.0であり、及び
明細書に記載の方法に従って計算される、前記第2エチレンコポリマーのメルトインデックスI
2が10分当たり4~100グラムであり、
ただし、前記第1エチレンコポリマーの密度は、前記第2エチレンコポリマーの密度よりも0.010~0.030g/ccの量だけ低い、
二峰性ポリエチレン組成物。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載の二峰性ポリエチレン組成物を含む回転成形部品。
【請求項5】
-40℃の試験温度でASTM D5628に従って試験された厚み0.250インチ
(6.35mm)の試験片で120フィート・ポンド
(162.7J)より大きい平均破壊エネルギーを有する、請求項
4に記載の回転成形部品。
【請求項6】
前記二峰性ポリエチレン組成物が、FTIR法によって測定される1.2モル%未満のコモノマー含有量を有する、請求項1に記載の二峰性ポリエチレン組成物。
【請求項7】
前記第1及び第2エチレンコポリマーがエチレンと1-オクテンとのコポリマーである、請求項1に記載の二峰性ポリエチレン組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の二峰性ポリエチレン組成物の製造プロセスであって、少なくとも2つの重合反応器において溶液重合条件下でエチレン及びα-オレフィンを重合触媒と接触させることを含む、プロセス。
【請求項9】
ポリオレフィン中空製品の製造プロセスであって、
請求項1に記載の二峰性ポリエチレン組成物を金型に充填すること、この金型をオーブンで280℃超に加熱して、安定化されたポリオレフィンを溶融させること、少なくとも2つの軸で金型を回転させてプラスチック材料が壁に広がるようにすること、金型を回転させながら冷却すること、金型を開放すること、及び、結果として得られた中空の製品を取り出すこと
を含む、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転成形製品に使用するための高密度ポリエチレン組成物に関する。この組成物は、高い剛性と延性を備えている。この組成物はまた、特に、複雑な形状及び幾何形状を有する部品について成形を容易にする高い流動指数(フローインデックス)を有する。この組成物は低い相対弾性(G’/G”)を有する。
【背景技術】
【0002】
回転成形品の製造に使用するのに適した樹脂を製造するには、多くの異なる考慮事項があり、非限定的な例には次のものが含まれる:樹脂は、商業的に許容可能な製造速度での製造が可能である必要があること;樹脂は、回転成形プロセスでの使用に適している必要があること(例えば、適切な焼結温度及び金型から取り出すための適切な冷却速度を有すること);ならびに、得られる回転成形部品は、最終用途に適した特性を備えていなければならないこと。
【0003】
1995年1月17日にStehlingに発行され、Exxonに譲渡された米国特許第5,382,630号及び第5,382,631号は、優れた物性を有する二峰性樹脂を教示している。この特許では、ブレンドが、それぞれが3未満の多分散性(Mw/Mn)を有する2つ以上の成分を有し、ブレンドが3を超える多分散性を有し、ブレンド中に比較的分子量が高く、コモノマー含有量が低い成分を含まないことを要求している(すなわち、コモノマーの組み込みにより逆行(リバース)になっている)。
【0004】
2005年11月29日にLustigerらに発行され、ExxonMobilに譲渡された米国特許第6,969,741号は、回転成形に適したポリエチレンのブレンドを教示している。この特許は、各成分の密度の差が0.030g/cm3以上であることを教示している。本開示の組成物中の構成ポリマーの密度の差は、0.030g/cm3未満である。
【0005】
2013年7月16日にDavisの名前で発行され、Dow Global technologies Inc.に譲渡されたた米国特許第8,486,323号は、回転成形製品に使用され、高い耐衝撃性を有するポリマーブレンドを教示している。このブレンドは、炭素原子1000個あたり0.06未満の残留不飽和分を有する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、以下を提供する:
1)2.3~5.5の分子量分布Mw/Mn;
2)0.940~0.957g/ccの密度;
3)ASTM D1238により190℃で2.16kgの負荷を用いて測定された、10分当たり4~10グラムのメルトインデックスI2;及び
4)190℃及び0.05ラジアン/秒で測定された、0.03ラジアン/秒未満の相対弾性、G’/G”
を有する二峰性ポリエチレン組成物であって、
前記二峰性ポリエチレン組成物は、以下のA及びB:
A.以下のA.i~A.iiiを有する、10~70重量%の第1エチレンコポリマー:
A.i.ASTM D1238により190℃で2.16kgの負荷を用いて測定された、10分当たり0.4~5グラムのメルトインデックスI2;
A.ii.1.8~3.0の分子量分布Mw/Mn;及び
A.iii.0.920~0.950g/ccの密度;
B.以下のB.i~B.iiiを有する、90~30重量%の第2エチレンコポリマー:
B.i.ASTM D1238により190℃で2.16kgの負荷を用いて測定された、10分当たり4~1500グラムのメルトインデックスI2;
B.ii.2.3~6.0の分子量分布Mw/Mn;及び
B.iii.前記第1エチレンコポリマーの密度より大きいが、0.967g/cc未満である密度;
を含んでおり、
ただし、前記第1エチレンコポリマーの密度は、前記第2エチレンコポリマーの密度よりも0.010~0.035g/ccの量だけ低い、
二峰性ポリエチレン組成物。
【0007】
別の実施形態は、以下を提供する:
ポリオレフィン中空製品の製造プロセスであって、添付の特許請求の範囲の請求項1に記載の二峰性ポリエチレン組成物を金型に充填すること、この金型をオーブンで280℃超に加熱して、安定化されたポリオレフィンを溶融させること、少なくとも2つの軸で金型を回転させてプラスチック材料が壁に広がるようにすること、金型を回転させながら冷却すること、金型を開放すること、及び、結果として得られた中空の製品を取り出すことを含む、プロセス。
【0008】
別の実施形態は、以下を提供する:
第1反応器内の1種又は複数種の活性化剤と併せたホスフィンイミン配位子を含むシングルサイト触媒の存在下で、かつ、第2反応器内のチーグラーナッタ(ZN)触媒の存在下で、エチレン及び1種又は複数種のC4-8コモノマーを2つの連続溶液相反応器に供給することを含む、上記の二峰性ポリエチレン組成物の製造方法。
【0009】
一実施形態において、シングル触媒は、以下の式によって定義される:
【化1】
(式中、Mは、Ti、Zr及びHfからなる群から選択され;Plは、以下の式のホスフィンイミン配位子であり:
【化2】
(式中、各R
21は、水素原子;ハロゲン原子;ハロゲン原子で置換されていないか、ハロゲン原子でさらに置換されている、典型的にはC
1-10のヒドロカルビル基;C
1-8アルコキシ基;C
6-10アリールもしくはアリールオキシ基;アミド基;以下の式のシリル基:
【化3】
(式中、各R
22は、独立して、水素、C
1-8アルキルもしくはアルコキシ基、及びC
6-10アリールもしくはアリールオキシ基からなる群から選択される。);及び、以下の式のゲルマニル基:
【化4】
(式中、R
22は、上で定義したとおりである。)からなる群から独立して選択される。);
Lは、シクロペンタジエニル型配位子からなる群から独立して選択されるモノアニオン性シクロペンタジエニル型配位子であり、
Yは、活性化可能な配位子からなる群から独立して選択され;
mは、1又は2であり;
nは、0又は1であり;
pは整数であり、m+n+pの合計は、Mの原子価状態に等しい。)
【0010】
さらなる実施形態は、上記の二峰性ポリエチレン組成物から本質的になる回転成形部品を提供する。別の実施形態では、上記二峰性ポリエチレン組成物から作製された回転成形部品は、延性破壊を示す。
本発明の一態様を以下に示すが、本発明はそれに限定されない。
[発明1]
1)2.3~5.5の分子量分布Mw/Mn;
2)0.940~0.957g/ccの密度;
3)ASTM D1238により190℃で2.16kgの負荷を用いて測定された、10分当たり4~10グラムのメルトインデックスI
2
;及び
4)190℃及び0.05ラジアン/秒で測定された、0.03ラジアン/秒未満の相対弾性G’/G”
を有する二峰性ポリエチレン組成物であって、
前記二峰性ポリエチレン組成物は、以下のA及びB:
A.以下のA.i~A.iiiを有する、10~70重量%の第1エチレンコポリマー:
A.i.ASTM D1238により190℃で2.16kgの負荷を用いて測定された、10分当たり0.4~5グラムのメルトインデックスI
2
;
A.ii.1.8~3.0の分子量分布Mw/Mn;及び
A.iii.0.920~0.950g/ccの密度;
B.以下のB.i~B.iiiを有する、90~30重量%の第2エチレンコポリマー:
B.i.ASTM D1238により190℃で2.16kgの負荷を用いて測定された、10分当たり4~1500グラムのメルトインデックスI
2
;
B.ii.2.3~6.0の分子量分布Mw/Mn;及び
B.iii.前記第1エチレンコポリマーの密度より大きいが、0.967g/cc未満である密度;
を含んでおり、
ただし、前記第1エチレンコポリマーの密度は、前記第2エチレンコポリマーの密度よりも0.010~0.035g/ccの量だけ低い、
二峰性ポリエチレン組成物。
[発明2]
前記第1エチレンコポリマーが、
A.iv.35,000~80,000の数平均分子量Mn;
A.v.70,000~150,000の重量平均分子量Mw;
A.vi.120,000~250,000のMz;
A.vii.2~3のMw/Mn;
A.viii.炭素原子1000個あたり1~5の短鎖分岐の数(SCB1);及び
A.ix.ASTM D1238により190℃で2.16kgの負荷を用いて測定された、10分当たり0.5~4.0グラムのメルトインデックスI
2
を有することによって更に特徴付けられる、発明1に記載のポリエチレン組成物。
[発明3]
前記第2エチレンコポリマーが、
A.iv.12,000~30,000の数平均分子量Mn;
A.v.28,000~72,000の重量平均分子量Mw;
A.vi.70,000~150,000のMz;
A.vii.2.3~5.0のMw/Mn;
A.viii.炭素原子1000個あたり0.1~2の短鎖分岐の数(SCB2);
B.ix.前記第1エチレンコポリマーの密度より大きいが、0.965g/cc未満である密度;
B.x.ASTM D1238により190℃で2.16kgの負荷を用いて測定された、10分当たり4~100グラムのメルトインデックスI
2
;を有し、
ただし、前記第1エチレンコポリマーの密度は、前記第2エチレンコポリマーの密度よりも0.010~0.030g/ccの量だけ低いこと
によって更に特徴付けられる、発明1又は2に記載のポリエチレン組成物。
[発明4]
発明1、2又は3に記載のポリエチレン組成物を用いて製造された回転成形部品。
[発明5]
80~100%の延性指数を有する、発明4に記載の回転成形部品。
[発明6]
-40℃の試験温度でASTM D5628に従って試験された厚み0.250インチの試験片で120フィート・ポンドより大きい平均破壊エネルギーを有する、発明5に記載の回転成形部品。
[発明7]
前記第1エチレンコポリマーがシングルサイト触媒を用いて調製され、前記第2エチレンコポリマーがチーグラーナッタ触媒を用いて調製される、発明4又は5に記載の回転成形部品。
[発明8]
前記二峰性ポリエチレン組成物が、FTIR法によって測定される1.2モル%未満のコモノマー含有量を有する、発明1に記載のポリエチレン組成物。
[発明9]
前記第1及び第2エチレンコポリマーがエチレンと1-オクテンとのコポリマーである、発明1に記載のポリエチレン組成物。
[発明10]
前記二峰性ポリエチレン組成物が、少なくとも2つの重合反応器において溶液重合条件下でエチレン及びα-オレフィンを重合触媒と接触させることによって調製される、発明1に記載のポリエチレン組成物。
[発明11]
ポリオレフィン中空製品の製造プロセスであって、
発明1に記載の二峰性ポリエチレン組成物を金型に充填すること、この金型をオーブンで280℃超に加熱して、安定化されたポリオレフィンを溶融させること、少なくとも2つの軸で金型を回転させてプラスチック材料が壁に広がるようにすること、金型を回転させながら冷却すること、金型を開放すること、及び、結果として得られた中空の製品を取り出すこと
を含む、プロセス。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、例1のデコンボリューションを示す。実験的に測定されたGPCクロマトグラムは、速度論モデル予測に基づいて第1及び第2のエチレンインターポリマーにデコンボリューションされた。
【
図2】
図2は、例2のデコンボリューションを示す。実験的に測定されたGPCクロマトグラムは、速度論モデル予測に基づいて1及び第2のエチレンインターポリマーにデコンボリューションされた。
【
図3】
図3は、例1、2、3及び4の樹脂のゲル透過クロマトグラフ(GPC)によって得られた分子量分布のプロットである。
【
図4】
図4は、例1、8、9及び10の樹脂のゲル透過クロマトグラフ(GPC)によって得られた分子量分布のプロットである。
【
図5】
図5は、例3及び4の樹脂のゲル透過クロマトグラフ(GPC)によって得られた分子量分布、ならびにGPC-FTIRから測定された短鎖分岐分布(short chain branching distribution)のプロットである。
【
図6】
図6は、例5、6、8及び9の樹脂のゲル透過クロマトグラフ(GPC)によって得られた分子量分布、ならびにGPC-FTIRから測定された短鎖分岐分布のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
数値範囲
実験例において又は別段の指示があるときを除き、明細書及び特許請求の範囲で使用される成分の量、反応条件などに言及する全ての数値又は表現は、全ての場合において「約」という用語によって修飾されているものと理解されるべきである。したがって、反対のことが示されない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に示された数値パラメーターは、開示された実施形態の所望の特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、各数値パラメーターは、特許請求の範囲への均等論の適用を制限する試みとしてではなく、少なくとも報告された有効桁数を考慮して、通常の丸め手法を適用することによって解釈されるべきである。
【0013】
本開示の広い範囲を記述する数値範囲及びパラメーターは近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に示された数値は可能な限り正確に報告されている。ただし、数値のいずれにも、それぞれの試験測定で見出された標準偏差から必然的に生じる特定の誤差が本質的に含まれている。
【0014】
また、本明細書に列挙された任意の数値範囲は、そこに包含される全ての下位範囲を包含することを意図していることを理解されたい。例えば、「1から10」の範囲は、列挙された最小値1と列挙された最大値10との間のそれらの数値自体を含めた全ての下位範囲を包含すること;すなわち、1以上の最小値及び10以下の最大値を有する全ての下位範囲を包含することを意図している。開示された数値範囲は連続的であるため、それらは最小値と最大値との間の全ての値を含む。特に明記しない限り、本出願で指定された様々な数値範囲は近似値(概数)である。
【0015】
本明細書に示される全ての組成範囲は、実際には合計で100パーセント(体積パーセント又は重量パーセント)に制限され、それを超えない。組成物中に複数の成分が存在し得る場合、各成分の最大量の合計は100パーセントを超え得るが、これは実際に使用される複数成分の量が最大100パーセントに一致するという理解を伴うものであり、また当業者が容易に理解するとおりである。
【0016】
本開示の組成物は二峰性ポリエチレンであり、2つの別個の成分にデコンボリューションすることができる。通常、これはゲル透過クロマトグラフィー(GPC)曲線の右側にある「ショルダー」(“shoulder”)の存在によって実証される(
図1参照)。この場合、
図2に示されるようにGPC曲線の右側に小さなショルダーがあり、これは少量のより高分子量の低密度成分を指している。
【0017】
高分子量成分は、0.4~5のメルトインデックスを有し、組成物全体の約10~約70重量%、好ましくは約15~約50重量%の量で存在する。低分子量成分は、組成物全体の約90~約30重量%、好ましくは組成物全体の重量に基づいて約85~約50重量%の対応する量で存在する。
【0018】
一実施形態では、高分子量成分は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定するとき、約70,000~約150,000の重量平均分子量(Mw)を有する。高分子量成分は、1.8~3.0の多分散度(Mw/Mn:重量平均分子量/数平均分子量)を有する。組成物全体のメルトインデックスI2は、約4~10である。
【0019】
高分子量成分は低分子量成分より低い密度を有する。組成物中の高分子量成分の密度は約0.920~約0.950g/cm3の範囲であり得る。この成分の密度、又は他のいずれかの成分もしくは全組成物の密度は、コモノマー組み込みの程度の関数である。高分子量成分は、好ましくは長鎖分岐(long chain branching)を全く有していない。
【0020】
低分子量成分は4~1,500のメルトインデックスを有する。一実施形態では、そのMwは、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)による測定で約28,000~約72,000であり、多分散性(Mw/Mn)は2.3~5.0である。
【0021】
低分子量成分は、高分子量成分よりも0.010~0.030g/cc高い密度を有する。
【0022】
二峰性ポリエチレン組成物を製造するために使用される触媒は、好ましくは長鎖分岐を生じない。
【0023】
二峰性ポリエチレン組成物の全体的な特性は以下を含み得る:
約0.940~約0.957g/cm3の密度;
ASTM D1238により190℃で2.16kgの負荷を用いて測定された、約4~約10のメルトインデックス(I2);及び
190(℃)及び0.05ラジアン/秒で測定された、0.03未満(特には0.01~0.03)の相対弾性(relative elasticity)G’/G”。
【0024】
一実施形態では、ポリエチレン組成物全体は、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)によって測定された、1.2モル%未満のコモノマー含有量を有する。
【0025】
ポリマーは、溶液重合技術を使用して製造することができる。エチレンと1種又は複数種のコモノマーとの溶液重合において、コモノマーの非限定的な例にはC3-8α-オレフィンが含まれ;場合によっては、1-ヘキセン又は1-オクテンが好ましく;また他の場合には、1-オクテンが好ましい。通常、モノマーは、典型的には、ペンタン、メチルペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン及び水添ナフサなど、非置換又はC1-4アルキル基で置換されていてよいC5-12炭化水素等の不活性炭化水素溶媒に溶解されている。市販されている適切な溶媒の例は、「Isopar E」(C8-12脂肪族溶媒、Exxon Chemical Co.)である。
【0026】
触媒及び活性化剤はまた、溶媒に溶解されるか、又は反応条件で溶媒と混和性の希釈剤に懸濁される。
【0027】
一実施形態において、シングルサイト触媒は以下の式の化合物である:
【化5】
(式中、Mは、Ti、Zr及びHfからなる群から選択され;Plは、以下の式のホスフィンイミン配位子であり:
【化6】
(式中、各R
21は、水素原子;ハロゲン原子;ハロゲン原子で置換されていないか、ハロゲン原子でさらに置換されている、典型的にはC
1-10のヒドロカルビル基;C
1-8アルコキシ基;C
6-10アリールもしくはアリールオキシ基;アミド基;以下の式のシリル基:
【化7】
(式中、各R
22は、独立して、水素、C
1-8アルキルもしくはアルコキシ基、及びC
6-10アリールもしくはアリールオキシ基からなる群から選択される。);及び、以下の式のゲルマニル基:
【化8】
(式中、R
22は、上で定義したとおりである。)からなる群から独立して選択される。);
Lは、シクロペンタジエニル型配位子からなる群から独立して選択されるモノアニオン性シクロペンタジエニル型配位子であり、
Yは、活性化可能な配位子からなる群から独立して選択され;
mは、1又は2であり;
nは、0又は1であり;
pは整数であり、m+n+pの合計は、Mの原子価状態に等しい。)
【0028】
好適なホスフィンイミンは、各R21がヒドロカルビル基、好ましくはC1-6ヒドロカルビル基、最も好ましくはC1-4ヒドロカルビル基であるものである。
【0029】
「シクロペンタジエニル」という用語は、環内に非局在化結合を有し、典型的にはη-5結合により活性触媒部位、一般に第4族金属(M)に結合している5員炭素環を指す。シクロペンタジエニル配位子は、置換されていないか、あるいは、以下の基:置換されていないか、又はハロゲン原子及びC1-4アルキル基からなる群から選択される1種以上の置換基で置換されているC1-10ヒドロカルビル基;ハロゲン原子;C1-8アルコキシ基;C6-10アリール又はアリールオキシ基;置換されていないか、又は2つまでのC1-8アルキル基で置換されているアミド基;置換されていないか、2つまでのC1-8アルキル基で置換されているホスフィド基;式-Si-(R)3(式中、各Rは、独立して、水素、C1-8アルキル又はアルコキシ基、及びC6-10アリール又はアリールオキシ基からなる群から選択される。)のシリル基;ならびに、式Ge-(R)3(Rは上記で定義した通りである。)のゲルマニル基からなる群から選択される1種以上の基で一部又は完全に至るまで置換されていてもよい。
【0030】
シクロペンタジエニル型配位子は、シクロペンタジエニル基、インデニル基、及びフルオレニル基からなる群から選択されてよく、これらの基は、置換されていないか、あるいは、フッ素原子、塩素原子;C1-4アルキル基;置換されていないか、もしくは1個以上のフッ素原子で置換されているフェニル基又はベンジル基からなる群から選択される1種以上の置換基によって一部又は完全に至るまで置換されていてもよい。
【0031】
活性化可能な配位子Yは、ハロゲン原子、C1-4アルキル基、C6-20アリール基、C7-12アリールアルキル基、C6-10フェノキシ基、2つまでのC1-4アルキル基で置換されていてもよいアミド基、及びC1-4アルコキシ基からなる群から選択されてよい。場合によっては、Yは、塩素原子、メチル基、エチル基及びベンジル基からなる群から選択される。
【0032】
適切なホスフィンイミン触媒は、1つのホスフィンイミン配位子(上記)と1つのシクロペンタジエニル型(L)配位子と2つの活性化可能な配位子とを含む第4族有機金属錯体である。これらの触媒は架橋されていない。
【0033】
活性化剤
触媒のための活性化剤は、典型的には、アルミノキサン及びイオン性活性化剤からなる群から選択される。
【0034】
アルモキサン(「アルミノキサン」としても知られている)
適切なアルモキサンは、式:(R4)2AlO(R4AlO)mAl(R4)2であってよく、ここで、各R4は独立してC1-20ヒドロカルビル基からなる群から選択され、mは0~50であり、好ましくは、R4はC1-4アルキル基であり、mは5~30である。好適なアルモキサンの非限定的な一例は、各Rがメチルであるメチルアルモキサン(又は「MAO」)である。
【0035】
アルモキサンは、共触媒(助触媒)として、特にメタロセン型触媒としてよく知られている。アルモキサンは、容易に入手可能な商品でもある。
【0036】
アルモキサン共触媒の使用は、一般に、触媒中のアルミニウム対遷移金属のモル比が、約20:1~約1000:1、他の場合には約50:1~約250:1であることを必要とする。
【0037】
市販されているMAOは、触媒活性を低下させ及び/又はポリマーの分子量分布を広げることができる遊離アルミニウムアルキル(例えば、トリメチルアルミニウム又は「TMA」)を典型的に含有する。狭い分子量分布のポリマーが必要な場合には、そのような市販のMAOを、TMAと反応することができる添加剤で処理することが好ましい。好適な添加剤の非限定的な例は、アルコール又はヒンダードフェノールを含む。
【0038】
「イオン活性化剤」共触媒
いわゆる「イオン活性化剤」(”ionic activator”)もメタロセン触媒としてよく知られている。例えば、米国特許第5,198,401号(Hlatky、Turner)及び米国特許第5,132,380号(Stevens、Neithamer)を参照のこと。
【0039】
いずれの理論にも拘束されることを望まないが、「イオン活性化剤」は、触媒をイオン化してカチオンにし、次いでカチオン形態の触媒を安定化する嵩高く不安定な非配位性のアニオンを与える方法で、活性化可能な配位子の1つ以上の引き抜きを最初に引き起こすと当業者に考えられている。嵩高く非配位性のアニオンは、カチオン性触媒中心でオレフィン重合を進行させることを可能にする。おそらくは、非配位性アニオンは触媒に配位するモノマーによって置換されるのに十分に不安定であるからであろう。イオン活性化剤の非限定的な例は、以下のようなホウ素含有イオン活性化剤である:
式[R5]+[B(R7)4]-の化合物
(式中、Bはホウ素原子であり、R5は芳香族ヒドロカルビル(例えば、トリフェニルメチルカチオン)であり、各R7は、独立して、非置換のフェニル基、又は、フッ素原子、非置換もしくはフッ素原子で置換されたC1-4アルキル基又はアルコキシ基、及び式-Si-(R9)3のシリル基(式中、各R9は、独立して、水素原子及びC1-4アルキル基からなる群から選択される)からなる群から選択される3~5個の置換基で置換されたフェニル基からなる群から独立に選択される。);
式[(R8)tZH]+[B(R7)4]-の化合物
(式中、Bはホウ素原子であり、Hが水素原子であり、Zが窒素原子又はリン原子であり、tが2又は3であり、R8は、C1-8アルキル基、非置換又は3個までのC1-4アルキル基で置換されたフェニル基からなる群から選択され、あるいは、1つのR8は、窒素原子と一緒になってアニリニウム基を形成してもよく、R7は上で定義した通りである。);ならびに
式B(R7)3の化合物
(式中、R7は上記で定義した通りである。)
【0040】
上記化合物において、好ましくは、R7は、ペンタフルオロフェニル基であり、R5は、トリフェニルメチルカチオンであり、Zは、窒素原子であり、R8は、C1-4アルキル基であるか、又は、窒素原子と一緒になったR8は、2つのC1-4アルキル基で置換されたアニリニウム基を形成する。
【0041】
「イオン活性化剤」は、1つ以上の活性化可能な配位子を引き抜くことができ、それによって、触媒中心をカチオンにイオン化するが、触媒と共有結合しないようにし、そして触媒とイオン化活性化剤との間に十分な距離を提供して、結果的に生じた活性部位に重合性オレフィンが入ることを可能にする。
【0042】
イオン活性化剤の例としては、トリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ボロン;トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)ボロン;トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(フェニル)ボロン;トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)ボロン;トリメチルアンモニウムテトラ(o-トリル)ボロン;トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボロン;トリプロピルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ボロン;トリブチルアンモニウムテトラ(m,m-ジメチルフェニル)ボロン;トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボロン;トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボロン;トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(o-トリル)ボロン;N,N-ジメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ボロン;N,N-ジエチルアニリニウムテトラ(フェニル)ボロン;N,N-ジエチルアニリニウムテトラ(フェニル)n-ブチルボロン、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ボロン、ジ(イソプロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボロン;ジシクロヘキシルアンモニウムテトラ(フェニル)ボロン;トリフェニルホスホニウムテトラ(フェニル)ボロン;トリ(メチルフェニル)ホスホニウムテトラ(フェニル)ボロン;トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラ(フェニル)ボロン;トロピリウムテトラキスペンタフルオロフェニルボラート;トリフェニルメチリウムテトラキスペンタフルオロフェニルボラート;ベンゼン(ジアゾニウム)テトラキスペンタフルオロフェニルボラート;トロピリウムフェニルトリスペンタフルオロフェニルボラート;トリフェニルメチリウムフェニルトリスペンタフルオロフェニルボラート;ベンゼン(ジアゾニウム)フェニルトリスペンタフルオロフェニルボラート;トロピリウムテトラキス(2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)ボラート;トリフェニルメチリウムテトラキス(2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)ボラート;ベンゼン(ジアゾニウム)テトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ボラート;トロピリウムテトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ボラート;ベンゼン(ジアゾニウム)テトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ボラート;トロピリウムテトラキス(1,2,2-トリフルオロエテニル)ボラート;トリフェニルメチリウムテトラキス(1,2,2-トリフルオロエテニル)ボラート;ベンゼン(ジアゾニウム)テトラキス(1,2,2-トリフルオロエテニル)ボラート;トロピリウムテトラキス(2,3,4,5-テトラフルオロフェニル)ボラート;トリフェニルメチリウムテトラキス(2,3,4,5-テトラフルオロフェニル)ボラート;ベンゼン(ジアゾニウム)テトラキス(2,3,4,5-テトラフルオロフェニル)ボラートが挙げられる。
【0043】
容易に入手される市販のイオン活性化剤としては、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボラート;トリフェニルメチリウムテトラキスペンタフルオロフェニルボラート;及びトリスペンタフルオロフェニルボランが挙げられる。
【0044】
イオン活性化剤は、触媒中の第IV族金属に対して数モル当量程度のホウ素で使用することができる。触媒からの第IV族金属のホウ素に対する好適なモル比は、約1:1~約3:1の範囲であってよく、他の場合には約1:1~約1:2の範囲であってよい。
【0045】
ある場合には、イオン活性化剤は、アルキル化活性化剤(スカベンジャーとしても作用し得る)と組み合わせて使用することができる。イオン活性化剤は、(R3)pMgX2-p(Xはハロゲン化物であり、各R3は独立してC1-10アルキル基からなる群から選択され、pは1又は2である。);R3Li(R3は上で定義された通りである。);(R3)qZnX2-q(R3は上で定義された通りであり、Xはハロゲンであり、pは1又は2である。);(R3)sAlX3-s(R3は上で定義された通りであり、Xはハロゲンであり、sは1~3の整数である。)からなる群から選択されてよい。好ましくは、上記化合物において、R3はC1-4アルキル基であり、Xは塩素である。市販の化合物には、トリエチルアルミニウム(TEAL)、塩化ジエチルアルミニウム(DEAC)、ジブチルマグネシウム((Bu)2Mg)、及びブチルエチルマグネシウム(BuEtMg又はBuMgEt)が含まれる。
【0046】
ホスフィンイミン触媒が、イオン活性化剤(例えば、ホウ素化合物)とアルキル化剤との組み合わせで活性化される場合、触媒からの第IV族金属:イオン活性化剤からのメタロイド(ホウ素):アルキル化剤からの金属のモル比は、約1:1:1~約1:3:10の範囲であってよく、他の場合には約1:1.3:5~約1:1.5:3の範囲であってよい。
【0047】
第2の触媒
一実施形態において、ZN触媒が第2反応器で使用される。エチレン(任意選択で、1種又は複数種のアルファオレフィンコモノマー、特に1-ブテン;1-ヘキセン;又は1-オクテンと共に)の溶液重合に良好に機能する任意のZN触媒系が好適である可能性がある。米国特許第10,023,706号及び第9,695,309号に開示されたZN触媒は、具体的な(しかし限定的ではない)例である。
【0048】
重合プロセス
高温溶液プロセスにおける反応器(単数又は複数)の温度は、約80℃~約300℃であり、他の場合には、約120℃~250℃である。温度の上限は、良好なポリマー特性を維持しながら(溶液粘度を低下させるように)操作温度を最大にしたいという要望など、当業者に周知の考慮事項によって影響を受ける(重合温度が上昇すると一般的にポリマーの分子量が低下するため)。一般に、重合温度の上限は、約200~約300℃であり得る。2つの反応器を使用するプロセスは、第2反応器の温度を第1反応器の温度より高くしつつ2つの温度で実施され得る。最も好ましい反応プロセスは「中圧プロセス」(“medium pressure process”)であり、これは、反応器(単数又は複数)内の圧力が、好ましくは約6,000psi(約42,000キロパスカル又はkPa)未満であることを意味する。好ましい圧力は、約10,000~約40,000kPa(1450~5800psi)、最も好ましくは約14,000~約22,000kPa(2,000psi~3,000psi)である。
【0049】
一部の反応スキームでは、反応器システム(反応器系)内の圧力は、重合溶液を単相溶液として維持し、ポリマー溶液を反応器システムから熱交換器システムを介して揮発分除去システムへ供給するために必要な上流圧力を与える程度に十分に高くあるべきである。他のシステム(系)は、ポリマーの分離を容易にするために、溶媒をポリマーに富んだ流れとポリマーの少ない流れに分離することを可能にする。
【0050】
溶液重合プロセスは、1つ以上の撹拌タンク反応器を含む撹拌「反応器システム」(“reaction system”:「反応器系」)で、又は1つ以上のループ反応器で、又はループ反応器及び撹拌タンク反応器の混合システムで行うことができる。反応器は、タンデム又は並列操作であることができる。二重タンデム反応器システムでは、第1の重合反応器は、好ましくはより低い温度で作動する。各反応器の滞留時間は、反応器の設計と容量によって異なる。一般に、反応器は、反応物の完全な混合を達成する条件下で操作するべきである。さらに、最終的に得られるポリマーの約20~約60重量%が第1反応器で重合され、残りが第2反応器で重合されることが好ましい。
【0051】
有用な溶液重合プロセスでは、少なくとも2つの重合反応器を直列に使用する。第1反応器における重合温度は、約80℃~約180℃(他の場合には約120℃~160℃)であり、第2反応器は、典型的にはより高い温度(約220℃まで)で操作される。最も好ましい反応プロセスは「中圧プロセス」であり、これは各反応器内の圧力が、好ましくは約6,000psi(約42,000キロパスカル又はkPa)未満、最も好ましくは約2,000psi~約3,000psi(約14,000~約22,000kPa)であることを意味する。
【実施例】
【0052】
試験方法
ユニバーサル較正(ASTM-6467)を用いた示差屈折率検出を伴う高温ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって、Mn、Mw及びMz(g/mol)を測定した。分子量分布(MWD)(これは「多分散度」(“polydispersity”)又は「多分散指数」(“polydispersity index”)としても当業者に知られている)は、重量平均分子量(Mw)の数平均分子量(Mn)に対する比である。
【0053】
フーリエ変換赤外線分光法(「GPC-FTIR」)と組み合わせたGPCを用いて、分子量の関数としてコモノマー含有量を測定した。GPCによるポリマーの分離後、オンラインFTIRでポリマー及びメチル末端基の濃度を測定する。メチル末端基は分岐度の計算に使用される。従来の較正(キャリブレーション)により、分子量分布を計算することができる。
【0054】
数学的デコンボリューションを実行して、各反応器で生成された成分のポリマーの相対量、分子量、及びコモノマー含有量を推算した。
【0055】
コポリマーサンプルの短鎖分岐度(1000炭素原子あたりのSCB)を、ASTM D6645-01に従うフーリエ変換赤外分光法(FTIR)によって測定した。測定にはThermo-Nicolet 750 Magna-IR分光光度計を用いた。またFTIRを用いて、不飽和の内部、側鎖及び末端レベル(便宜上「unsats」とも称される)を測定した。
【0056】
コモノマーの含有量はまた、Randall Rev.Macromol.Chem.Phys.,C29(2&3),p.285;米国特許第5,292,845号及びWO2005/121239にて論じられた炭素13核磁気共鳴(NMR)技術によって測定することができる。
【0057】
組成分布に関する情報は、昇温溶出分別(TREF)からも得られた。ポリマー試料(80~100mg)をポリマーチャー結晶(Polymer Char crystal)-TREFユニットの反応容器に導入した。反応容器を35mlの1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)によって満たし、所望の溶解温度(例えば150℃)に2時間加熱した。次いで、この溶液(1.5ml)を、ステンレス鋼ビーズを充填したTREFカラム内に装填した。所与の安定化温度(例えば110℃)で45分間平衡化させた後、ポリマー溶液を安定化温度から30℃までの温度降下(0.09℃/分)で結晶化させた。30℃で30分間平衡化した後、結晶化したサンプルをTCB(0.75mL/分)により30℃から安定化温度まで所定の昇温速度(0.25℃/分)で溶出させた。その溶解温度で30分間の操作の最後にTREFカラムを清浄化した。社内で開発されたポリマーチャーソフトウェア(Polymer Char software)、Excelスプレッドシート及びTREFソフトウェアを使用してデータを処理した。
【0058】
CDBIは、その組成がコモノマー組成の中央値(メディアン値)の50%以内であるポリマーのパーセントであると定義される。これは、米国特許第5,376,439号に示されているように、組成分布硬曲線及び組成分布曲線の正規化された累積積分から計算される。
【0059】
ポリエチレン組成物の密度(g/cm3)をASTM D792に従って測定した。
【0060】
ポリエチレン組成物のメルトインデックス12、16及びI21を、ASTM D1238に従って測定した。明確化のため:I2を190℃で2.16キログラムの負荷で測定し;I21を同じ温度で21.6キログラムの負荷で測定する。
【0061】
ポリエチレン組成物を構成する第1及び第2エチレンポリマーの密度及びメルトインデックスを、組成物モデルに基づいて決定した。以下の式を使用して密度及びメルトインデックスI
2を計算した(NOVA Chemicalsに譲渡され、2011年9月20日に公開されたWangによる米国特許第8,022,143B2号参照)。
【数1】
式中、M
n、M
w、M
z及びSCB/1000Cは、上記デコンボリューションの結果から得られた個々のエチレンポリマー成分のデコンボリューション値である。
【0062】
一次融解ピーク(℃)、融解熱(J/g)、及び結晶化度(%)は、次のように示差走査熱量測定(DSC)を使用して決定された:最初に装置をインジウムで較正した;その後、ポリマー試験片を0℃で平衡化させる;昇温速度10℃/分で200℃まで加熱した;次いで、溶融物をその温度で5分間保持した;次いで、溶融物を10℃/分の冷却速度で0℃まで冷却し、0℃で5分間維持した;試験片を10℃/分の昇温速度で200℃まで再び加熱した。報告される融解ピーク(Tm)、融解熱、及び結晶化度は、2回目の加熱に基づいて計算される。
【0063】
レオロジー - キャピラリーレオメトリーによる溶融物の強度
溶融ポリマーは、一定の押出速度でキャピラリー・ダイから押し出される。押し出されたストランドは、引張速度(haul-off speed)を上昇させながら延伸(drawn)される。溶融物を延伸する力を連続的にモニタリングし、フィラメントの破断時又は破断前のその力のレベルの最大定常値を溶融物の強度として定義する。ダイ出口での延伸速度の押出速度に対する比は、延伸比(stretch ratio)として定義される。
【0064】
溶融物強度は、直径2mm、L/D比10:1のフラットダイを備えたキャピラリー・レオメーター(バレル直径=15mm)で190℃にて測定される。圧力変換器:10,000psi(68.95MPa)。ピストン速度:5.33mm/分。引張角度(Haul-off Angle):52°。引張速度の増分:50~80m/分2又は65±15m/分2。ポリマー溶融物は、キャピラリー・ダイから一定速度で押し出され、その後、ポリマーストランドは、破断するまで引張速度を上昇させながら延伸される。力対時間曲線のプラトー(plateau)領域における力の最大定常値は、ポリマーの溶融物強度として定義される。溶融物の延伸比は、ダイ出口での速度に対するプーリーでの速度との比として定義される。
【0065】
レオロジー - DMA
レオロジー特性は、回転レオメーターでの周波数掃引試験測定を使用して測定された。
【0066】
圧縮成形されたディスクの形態のサンプルを、2つの試験ジオメトリ(ドライブシャフト上に取り付けられた上部のジオメトリ及び基部に取り付けられた下部のジオメトリ)間の環境試験チャンバー内に配置した。解析は、固定したひずみと一定の温度で、所定の周波数の範囲にわたって実行される。レオメーターは、市販の機器(TA InstrumentsによってDHR-3の名称で販売されている)であった。
【0067】
この試験技術は、ポリマー溶融物のさまざまな特性を研究する機会を与え、それによって、弾性率及び粘性率(G’及びG”)、複素粘度、複素弾性率(G*)、損失正接、動的粘度、複素弾性率の異相成分、位相角、及び振動周波数の関数としてのその他のレオロジー特性が生成され、分子構造と相関するレオロジー挙動に関する情報が提供される。
【0068】
試験データから得られるレオロジーパラメーターは、以下のとおりである:クロスオーバー周波数、クロスオーバー弾性率、3つのエリスモデル(Ellis Model)定数:エリス(Ellis)定数C1(又はゼロせん断粘度)、エリス定数C2(又は特性緩和時間の逆数)、エリス定数C3(又は累乗指数)、ダウ・レオロジー・インデックス(DRI)、緩和スペクトルインデックス(RSI)、溶融弾性インデックス(G’@G”=500Pa)、粘度比、コールコール(Cole-Cole)及びVGPプロット。
【0069】
相対弾性は、0.05ラジアン/秒の周波数におけるG’とG”の比率として定義される。理論に束縛されることを望むものではないが、比較的低い相対弾性が、回転成形プロセス中の粉末の緻密化と相関することが観察されている。
【0070】
アイゾット衝撃試験は、ASTM D256-10E1に従って実施された。
引張衝撃試験は、ASTM D1822-13に従って実施された。
【0071】
回転成形部品は、Ferry Industries Inc.から商品名Rotospeed RS3-160で販売されている回転成形機で調製された。この機械は、密閉オーブン内で中心軸の周りを回転する2つのアームを有する。これらのアームには、アームの回転軸にほぼ垂直な軸を中心に回転するプレートが取り付けられている。各アームには、寸法が12.5インチ(31.8 cm)×12.5インチ×12.5インチのプラスチックキューブを生成する6つの鋳造アルミニウム型が取り付けられている。アームの回転は毎分約8回転(rpm)に設定し、プレートの回転は約2rpmに設定した。これらの金型は、最初に約3.7kgの粉末状ポリエチレン樹脂(35USメッシュサイズ)の標準装填物を充填したとき、公称厚み約0.25インチ(0.64cm)の部品を製造する。密閉されたオーブン内の温度は、560°F(293℃)の温度に維持された。これらの金型とその内容物は、完全な粉末の高密度化が達成されるまで、指定された期間加熱された。その後、部品を取り出す前に、制御された環境でこれらの金型を冷却した。密度と色を測定するために、成形品から試験片を採取した。ARM衝撃試験を、ASTM D5628に従って-40℃の試験温度で実施した。
【0072】
衝撃試験に供する試験片は、回転成形部品からのものである必要がある。試験片の断面が-40°F±3.5°F(-40℃±2℃)以上にまで均一に冷却されるように、試験片を状態調整するべきである。
【0073】
回転成形部品の衝撃試験技術は、一般にブルーストン階段法(Bruceton StA.ircase Method)又はアップ・アンド・ダウン法(Up-and-Dow Method)と称される。この手順では、試験片の50%の破壊を引き起こす特定のダーツの高さを確立する。パーセンテージ延性は破壊(fA.ilure)のパーセンテージを表し、これにより延性特性を示した。サンプルに対して、落下重量衝撃試験機を使用して衝撃試験を行う。サンプルが所与の高さ/重量で破壊されなかった場合、破壊が発生するまで高さ又は重量のいずれかを段階的に増大させる。破壊がいったん発生すると高さ/重量が同じ増分だけ減少し、全てのサンプルが利用されるまでプロセスが繰り返される。落下するダーツは、成形時に金型と接触していた部品の表面に衝撃を与えるべきである。ポリエチレンの場合、延性破壊は、適切に処理されたサンプルで一般的に発生する望ましい破壊モードである。脆性破壊又は粉砕による破壊は、一般に、使用されたプロセスパラメータによって最適な特性が得られなかったことを示す。
【0074】
延性破壊:
破壊点から外側にひびが入るのではなく、破壊点で糸状の繊維を含む穴を残して、試験片をダーツが貫通することによって示される。ダーツの下の領域は、破壊点で伸びて薄くなる。
【0075】
脆性破壊:
部品が衝撃点で物理的に割れるか、又は亀裂が入ることによって示される。サンプルは、伸びが全く無いか、ほとんど無い。本明細書で使用される「延性指数」(“ductility index”)という用語は、複数部品の試験における延性破壊を発現する部品のパーセンテージを指す。例えば、10個の部品を試験し、そのうちの8個が延性破壊を発現する場合(つまり、部品の80%が延性破壊を発現した場合)、試験結果は80%の延性指数を有すると報告される。
【0076】
樹脂
二重反応器パイロットプラントで二峰性ポリエチレン組成物を調製した。この二重反応器プロセスでは、最初の反応器の内容物が2番目の反応器に流れ込み、その両方が十分に混合される。このプロセスは、連続供給ストリームを用いて作動される。触媒(シクロペンタジエニルトリ(t-ブチル)ホスフィンイミンチタンジクロリド)[注:この触媒は、実験的重合を説明する表では「PI-cat」と称されている]は、活性化剤と共に最初の反応器に供給され、ZN触媒が2番目の反応器に供給された。全体の生産速度は約90kg/時であった。
【0077】
重合条件を表1に示す。
【0078】
パイロットプラントで調製されたポリマー組成物は、プラーク試験トライアルを実施する前に、回転成形用途向けの従来の添加剤パッケージを使用して安定化された。回転成形組成物は、通常、処理プロセス中にポリエチレンを劣化から保護し、続いて回転成形部品を大気への露出から保護するための添加剤パッケージを含有する。本開示の組成物は、任意の特定の添加剤パッケージの使用に限定されることを意図していない。実施例に示される本発明の組成物は、以下の添加剤を含んでいた(全ての量はポリエチレンの重量に対するppm重量部で示される):500ppmのヒンダードフェノール(CAS登録番号2082-79-3);550ppmのホスファイト(CAS登録番号31570-04-4);450ppmのジホスファイト(CAS登録番号154862-43-8);250ppmのヒドロキシルアミン(CAS登録番号143925-92-2);750ppmのヒンダードアミン光安定剤(HALS)-1(CAS登録番号70624-18-9);750ppmのHALS-2(CAS登録番号65447-77-0);及び750ppmの酸化亜鉛。
【0079】
表2は、GPCデコンボリューション結果を開示しており、ここで例1及び2は、第1のエチレンポリマー(反応器1で合成)及び第2のエチレンポリマー(反応器2で合成)に数学的にデコンボリューションされた。第1及び第2のエチレンポリマーの密度及びメルトインデックスは、基本的な速度論モデル(各触媒配合物について特定の速度論定数を有する)ならびに供給及び反応器条件に基づいて計算された。密度及びメルトインデックスを計算するために使用される式は上述された(また、米国特許第8,022,143号明細書に記載されている)。シミュレーションは、上記の二重反応器ソリューションパイロットプラントの構成に基づいて行った。第1のエチレンインターポリマーは、シングルサイト触媒配合物の挙動を説明する基本的な速度論モデルに基づいた分布に適合していた。第2のエチレンインターポリマーは、不均一系触媒配合物の挙動を説明する基本的な速度論モデルに基づいた分布に適合していた。表2に示されるように、例1の場合、第1及び第2のエチレンポリマーは、例1の88重量%を構成し;例1の残り(12重量%)は、触媒失活剤の添加に先立って、管連結の反応器1及び2にて合成され(3重量%未満、第1のエチレンポリマーと同じ組成を有する)、さらに、反応器2に続く管にて合成された(10重量%未満、第2のエチレンポリマーと同じ組成を有する)。
【0080】
本明細書に開示された回転成形樹脂(例1~4)の圧縮(プレス加工された)プラークの特性が表3aに示され;比較樹脂が表3bに示される(比較例5~8)。本明細書に開示された、ポリエチレン組成物から製造された回転成形部品ならびに圧縮プラークの特性が表4aに示され;比較物が表4b及び表4cに示される。より高密度の樹脂は、良好な靭性も必要とする回転成形用途では上首尾に機能しないのが通常である。例1及び2は、最適成形条件での高密度、良好な靭性(50%超の延性)及び高い平均破壊エネルギーの組み合わせにより、比較例を上回る優れた性能を示す。理論に拘束されることを望むものではないが、密度が高いと剛性が高くなり、成形部品で同等の構造強度を達成するために使用する材料を少なくすることが可能になる。
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【産業上の利用可能性】
【0090】
高い剛性及び延性を与え、回転成形品の調製に有用であり得る高密度ポリエチレン組成物が提供される。