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7750767造形物の補修方法、造形システム、及び貼付部材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-29
(45)【発行日】2025-10-07
(54)【発明の名称】造形物の補修方法、造形システム、及び貼付部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 73/04 20060101AFI20250930BHJP
   B29C 64/112 20170101ALI20250930BHJP
   B29C 64/386 20170101ALI20250930BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20250930BHJP
   B33Y 50/00 20150101ALI20250930BHJP
【FI】
B29C73/04
B29C64/112
B29C64/386
B33Y10/00
B33Y50/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022023047
(22)【出願日】2022-02-17
(65)【公開番号】P2023119917
(43)【公開日】2023-08-29
【審査請求日】2024-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142653
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】原山 健次
(72)【発明者】
【氏名】古瀬 真行
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-194004(JP,A)
【文献】特開2003-035021(JP,A)
【文献】特開2014-025271(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0307096(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 73/00-73/34
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形装置で造形がされた造形物を補修する造形物の補修方法であって、
一部分が欠損する破損が生じている前記造形物である補修対象造形物における欠損している箇所に取り付ける部材である欠損部用パーツを準備する準備段階と、
前記補修対象造形物において補修の対象となる位置である補修位置の指定を受け付ける補修位置指定段階と、
前記補修対象造形物及び前記欠損部用パーツの表面の少なくとも一部に貼り付ける部材である貼付部材を作成する貼付部材作成段階と、
前記補修対象造形物と、前記欠損部用パーツとを接触させた状態で、前記補修対象造形物と前記欠損部用パーツとの境界部分の少なくとも一部を覆うように、前記貼付部材を貼り付ける貼付段階と
を備え、
前記補修対象造形物の表面の少なくとも一部は、着色されており、
前記補修位置指定段階において、前記補修対象造形物の少なくとも一部を示す画像を画像表示装置に表示して、前記補修位置の指定を受け付け、
前記貼付部材作成段階において、積層造形法によって着色された前記造形物を造形可能な造形装置を用いて、
前記補修対象造形物及び前記欠損部用パーツに対して前記貼付部材を接着するための層である接着層と、
着色がされた層である着色層と
を備える前記貼付部材を作成し、
前記着色層について、前記補修対象造形物において前記貼付部材によって覆われる部分の色に合わせて着色して形成し、
かつ、前記貼付部材作成段階において、前記補修位置指定段階で指定された前記補修位置に合わせて、前記貼付部材の形状と、前記着色層における各位置の色とを決定し、決定した前記形状及び前記色に基づき、前記貼付部材を作成することを特徴とする造形物の補修方法。
【請求項2】
造形装置で造形がされた造形物を補修する造形物の補修方法であって、
一部分が欠損する破損が生じている前記造形物である補修対象造形物における欠損している箇所に取り付ける部材である欠損部用パーツを準備する準備段階と、
前記補修対象造形物及び前記欠損部用パーツの表面の少なくとも一部に貼り付ける部材である貼付部材を作成する貼付部材作成段階と、
前記補修対象造形物と、前記欠損部用パーツとを接触させた状態で、前記補修対象造形物と前記欠損部用パーツとの境界部分の少なくとも一部を覆うように、前記貼付部材を貼り付ける貼付段階と
を備え、
前記補修対象造形物の表面の少なくとも一部は、着色されており、
前記貼付部材作成段階において、積層造形法によって着色された前記造形物を造形可能な造形装置を用いて、
前記補修対象造形物及び前記欠損部用パーツに対して前記貼付部材を接着するための層である接着層と、
着色がされた層である着色層と
を備える前記貼付部材を作成し、
前記着色層について、前記補修対象造形物において前記貼付部材によって覆われる部分の色に合わせて着色して形成し、
かつ、前記貼付部材作成段階において、前記補修対象造形物の形状及び色を示すデータであり、前記補修対象造形物の造形時に用いられた造形物データに基づき、前記貼付部材の前記着色層における各位置の色を決定し、決定した前記色に基づき、前記貼付部材を作成することを特徴とする造形物の補修方法。
【請求項3】
造形装置で造形がされた造形物を補修する造形物の補修方法であって、
一部分が欠損する破損が生じている前記造形物である補修対象造形物における欠損している箇所に取り付ける部材である欠損部用パーツを準備する準備段階と、
前記補修対象造形物を3Dスキャンしたデータであるスキャンデータを生成するデータ生成段階と、
前記補修対象造形物及び前記欠損部用パーツの表面の少なくとも一部に貼り付ける部材である貼付部材を作成する貼付部材作成段階と、
前記補修対象造形物と、前記欠損部用パーツとを接触させた状態で、前記補修対象造形物と前記欠損部用パーツとの境界部分の少なくとも一部を覆うように、前記貼付部材を貼り付ける貼付段階と
を備え、
前記補修対象造形物の表面の少なくとも一部は、着色されており、
前記貼付部材作成段階において、積層造形法によって着色された前記造形物を造形可能な造形装置を用いて、
前記補修対象造形物及び前記欠損部用パーツに対して前記貼付部材を接着するための層である接着層と、
着色がされた層である着色層と
を備える前記貼付部材を作成し、
前記着色層について、前記補修対象造形物において前記貼付部材によって覆われる部分の色に合わせて着色して形成し、
かつ、前記貼付部材作成段階において、前記データ生成段階で生成した前記スキャンデータに基づき、前記貼付部材の前記着色層における各位置の色を決定し、決定した前記色に基づき、前記貼付部材を作成することを特徴とする造形物の補修方法。
【請求項4】
造形装置で造形がされた造形物を補修する造形物の補修方法であって、
一部分が欠損する破損が生じている前記造形物である補修対象造形物における欠損している箇所に取り付ける部材である欠損部用パーツを準備する準備段階と、
前記補修対象造形物及び前記欠損部用パーツの表面の少なくとも一部に貼り付ける部材である貼付部材を作成する貼付部材作成段階と、
前記補修対象造形物と、前記欠損部用パーツとを接触させた状態で、前記補修対象造形物と前記欠損部用パーツとの境界部分の少なくとも一部を覆うように、前記貼付部材を貼り付ける貼付段階と
を備え、
前記補修対象造形物の表面の少なくとも一部は、着色されており、
前記貼付部材作成段階において、積層造形法によって着色された前記造形物を造形可能な造形装置を用いて、
前記補修対象造形物及び前記欠損部用パーツに対して前記貼付部材を接着するための層である接着層と、
着色がされた層である着色層と
を備える前記貼付部材を作成し、
前記着色層について、前記補修対象造形物において前記貼付部材によって覆われる部分の色に合わせて着色して形成し、
前記補修対象造形物は、
前記補修対象造形物の表面において着色がされている着色領域と、
前記着色領域の内側に光反射性に形成されている光反射領域と
を備え、
前記貼付部材作成段階で用いる前記造形装置は、造形材料として紫外線硬化型の材料を吐出する装置であり、
それぞれが前記造形材料を吐出する複数の吐出ヘッドと、
吐出後の前記造形材料へ紫外線を照射する紫外線光源と
を備え、
前記複数の吐出ヘッドとして、少なくとも、
着色用の有色の前記造形材料である有色材料を吐出する着色材料用ヘッドと、
光反射性の前記造形材料である光反射性材料を吐出する光反射性材料用ヘッドと
を備え、
前記貼付部材作成段階において、
前記着色材料用ヘッドから吐出する前記有色材料を少なくとも用いて、前記着色層を形成し、
前記複数の吐出ヘッドのいずれかから吐出する前記造形材料を用いて、前記接着層を形成し、かつ、前記接着層の形成時において、前記紫外線光源から前記造形材料へ紫外線を照射することで、前記造形材料の粘度について、粘着性を有する状態にまで高め、
前記貼付段階において、前記補修対象造形物に前記貼付部材を貼り付けた後に、前記貼付部材に紫外線を照射することで、前記接着層における前記造形材料を硬化させることを特徴とする造形物の補修方法。
【請求項5】
造形装置で造形がされた造形物を補修する造形物の補修方法であって、
一部分が欠損する破損が生じている前記造形物である補修対象造形物における欠損している箇所に取り付ける部材である欠損部用パーツを準備する準備段階と、
前記補修対象造形物及び前記欠損部用パーツの表面の少なくとも一部に貼り付ける部材である貼付部材を作成する貼付部材作成段階と、
前記補修対象造形物と、前記欠損部用パーツとを接触させた状態で、前記補修対象造形物と前記欠損部用パーツとの境界部分の少なくとも一部を覆うように、前記貼付部材を貼り付ける貼付段階と
を備え、
前記補修対象造形物の表面の少なくとも一部は、着色されており、
前記貼付部材作成段階において、積層造形法によって着色された前記造形物を造形可能な造形装置を用いて、
前記補修対象造形物及び前記欠損部用パーツに対して前記貼付部材を接着するための層である接着層と、
着色がされた層である着色層と
を備える前記貼付部材を作成し、
前記着色層について、前記補修対象造形物において前記貼付部材によって覆われる部分の色に合わせて着色して形成し、
前記補修対象造形物は、
前記補修対象造形物の表面において着色がされている着色領域と、
前記着色領域の内側に光反射性に形成されている光反射領域と
を備え、
前記貼付部材作成段階で用いる前記造形装置は、それぞれが造形材料を吐出する複数の吐出ヘッドを備え、
前記複数の吐出ヘッドとして、少なくとも、
着色用の有色の前記造形材料である有色材料を吐出する着色材料用ヘッドと、
光反射性の前記造形材料である光反射性材料を吐出する光反射性材料用ヘッドと、
前記貼付部材における前記接着層の材料であり、前記補修対象造形物における前記着色領域及び前記光反射領域のそれぞれと同じ領域を形成する場合には用いられない接着材料を吐出する接着材料用ヘッドと
を備え、
前記貼付部材作成段階において、
前記着色材料用ヘッドから吐出する前記有色材料を少なくとも用いて、前記着色層を形成し、
前記接着材料用ヘッドから吐出する前記接着材料を用いて、前記接着層を形成することを特徴とする造形物の補修方法。
【請求項6】
一部分が欠損する破損が生じている造形物である補修対象造形物の補修時に前記補修対象造形物に貼り付ける部材である貼付部材を造形する造形システムであって、
積層造形法によって着色された前記造形物を造形可能な造形装置と、
前記造形装置の動作を制御する制御装置と
を備え、
前記貼付部材は、前記補修対象造形物における欠損している箇所に取り付ける部材である欠損部用パーツと、前記補修対象造形物とを接触させた状態で、前記補修対象造形物と前記欠損部用パーツとの境界部分の少なくとも一部を覆うように、前記補修対象造形物及び前記欠損部用パーツの表面の少なくとも一部に貼り付けられる部材であり、
前記補修対象造形物の表面の少なくとも一部は、着色されており、
前記貼付部材は、
前記補修対象造形物及び前記欠損部用パーツに対して前記貼付部材を接着するための層である接着層と、
着色がされた層である着色層と
を備え、
前記制御装置は、前記補修対象造形物において前記貼付部材によって覆われる部分の色に合わせて着色される前記着色層を有する前記貼付部材を示すデータを前記造形装置へ供給することで、前記貼付部材となる造形物を前記造形装置に造形させ
かつ、前記補修対象造形物の少なくとも一部を示す画像を画像表示装置に表示して、前記補修対象造形物において補修の対象となる位置である補修位置の指定を受け付け、指定された前記補修位置に合わせて、前記貼付部材の形状と、前記着色層における各位置の色とを決定することで、決定した前記形状及び前記色に基づき、前記貼付部材となる前記造形物を前記造形装置に造形させることを特徴とする造形システム。
【請求項7】
一部分が欠損する破損が生じている造形物である補修対象造形物の補修時に前記補修対象造形物に貼り付ける部材である貼付部材を製造する貼付部材の製造方法であって、
前記貼付部材は、前記補修対象造形物における欠損している箇所に取り付ける部材である欠損部用パーツと、前記補修対象造形物とを接触させた状態で、前記補修対象造形物と前記欠損部用パーツとの境界部分の少なくとも一部を覆うように、前記補修対象造形物及び前記欠損部用パーツの表面の少なくとも一部に貼り付けられる部材であり、
前記補修対象造形物の表面の少なくとも一部は、着色されており、
積層造形法によって着色された前記造形物を造形可能な造形装置を用いて、
前記補修対象造形物及び前記欠損部用パーツに対して前記貼付部材を接着するための層である接着層と、
着色がされた層である着色層と
を備える前記貼付部材を作成し、
かつ、前記着色層について、前記補修対象造形物において前記貼付部材によって覆われる部分の色に合わせて着色して形成し、
かつ、前記補修対象造形物の少なくとも一部を示す画像を画像表示装置に表示して、前記補修対象造形物において補修の対象となる位置である補修位置の指定を受け付け、指定された前記補修位置に合わせて、前記貼付部材の形状と、前記着色層における各位置の色とを決定することで、決定した前記形状及び前記色に基づき、前記貼付部材を作成することを特徴とする貼付部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造形物の補修方法、造形システム、及び貼付部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットヘッドを用いて造形物を造形する造形装置(3Dプリンタ)が知られている(例えば、特許文献1参照。)。このような造形装置においては、例えば、インクジェットヘッドにより形成するインクの層を複数層重ねることにより、積層造形法で造形物を造形する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-071282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
造形装置で造形する造形物の場合、例えば造形物が破損したとしても、通常、同じ造形物を再度造形することが可能である。これに対し、造形物の用途や、破損の仕方によっては、同じ造形物を再度造形するよりも、破損した造形物に対して補修を行う方が望ましい場合もある。また、この場合、例えば、破損した箇所を接着することで、造形物の補修を行うことが考えられる。しかし、このようにして造形物の補修を行う場合、例えば補修位置の強度が低下することで、同じ箇所に再度の破損が生じやすくなる場合もある。そのため、造形物の補修について、より適切な方法で行うことが望まれている。そこで、本発明は、上記の課題を解決できる造形物の補修方法、造形システム、及び貼付部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の発明者は、造形装置で造形した造形物を補修する方法について、鋭意研究を行った。そして、破損箇所に対して単に接着等を行うのではなく、破損箇所の周囲の少なくとも一部に対し、パッチ状の部材(以下、リペアパッチという)を貼り付けて、補強をすることを考えた。しかし、この場合、補修後の造形物の表面にリペアパッチが残ることで、補修後の造形物の見栄えが低下することが考えられる。特に、表面が着色されている造形物に対し、このような方法で補修を行うと、見栄えが大きく低下するおそれがある。これに対し、本願の発明者は、更なる鋭意研究により、補修対象の造形物における補修位置に合わせてリペアパッチを作成することを考えた。また、この場合において、補修対象の造形物と同一又は同様の造形物を造形可能な造形装置を用いて、補修対象の造形物における補修位置に合わせた着色を行った状態のリペアパッチを作成することを考えた。このように構成すれば、例えば、リペアパッチを用いることで、補修後の造形物の強度を適切に高めることができる。また、補修位置に合わせた着色がされているリペアパッチを用いることで、例えば、造形物に貼り付けたリペアパッチが過度に目立つことを適切に防止することができる。更には、造形装置を用いてリペアパッチを作成することで、例えば、補修位置に合わせた着色がされているリペアパッチを容易かつ適切に作成することができる。
【0006】
また、本願の発明者は、更なる鋭意研究により、このような効果を得るために必要な特徴を見出し、本発明に至った。上記の課題を解決するために、本発明は、造形装置で造形がされた造形物を補修する造形物の補修方法であって、一部分が欠損する破損が生じている前記造形物である補修対象造形物における欠損している箇所に取り付ける部材である欠損部用パーツを準備する準備段階と、前記補修対象造形物及び前記欠損部用パーツの表面の少なくとも一部に貼り付ける部材である貼付部材を作成する貼付部材作成段階と、前記補修対象造形物と、前記欠損部用パーツとを接触させた状態で、前記補修対象造形物と前記欠損部用パーツとの境界部分の少なくとも一部を覆うように、前記貼付部材を貼り付ける貼付段階とを備え、前記補修対象造形物の表面の少なくとも一部は、着色されており、前記貼付部材作成段階において、積層造形法によって着色された前記造形物を造形可能な造形装置を用いて、前記補修対象造形物及び前記欠損部用パーツに対して前記貼付部材を接着するための層である接着層と、着色がされた層である着色層とを備える前記貼付部材を作成し、前記着色層について、前記補修対象造形物において前記貼付部材によって覆われる部分の色に合わせて着色して形成する。
【0007】
このように構成した場合、補修対象造形物における補修位置の少なくとも一部へ貼付部材を貼り付けることで、例えば、補修後における補修対象造形物の強度を適切に高めることができる。また、着色層及び接着層を備える貼付部材を用いることで、例えば、造形装置により、適切に着色がされ、かつ、補修対象造形物に対して接着可能な貼付部材を容易かつ適切に作成することができる。更に、貼付部材の着色層について、補修対象造形物において貼付部材によって覆われる部分の色に合わせて着色して形成することで、例えば、補修後の補修対象造形物において貼付部材が過度に目立つことを適切に防止することができる。そのため、このように構成すれば、例えば、補修対象造形物に対する補修を容易かつ適切に行うことができる。
【0008】
この構成において、貼付部材としては、例えば、パッチ状の部材(リペアパッチ)を用いることが考えられる。このように構成すれば、例えば、補正対象造形物に対して容易かつ適切に貼付部材を貼り付けることができる。欠損部用パーツとしては、例えば、破損によって補正対象造形物から外れた部分等を用いることが考えられる。このように構成すれば、例えば、容易かつ適切に欠損部用パーツを準備することができる。この場合、例えば、破損前の造形物から欠損部用パーツを除いた部分について、補修対象造形物と考えることができる。また、補修対象造形物について、例えば、破損が生じる前の造形物の少なくとも一部に対応する構成等と考えることもできる。また、破損の状態や、補修に対して求められる品質等によっては、欠損部用パーツとして、破損が生じる前の造形物の一部ではなく、補修用に新たに作成した部品を用いることも考えられる。この場合、例えば、貼付部材の作成に用いる造形装置により、欠損部用パーツを更に作成(造形)することが考えられる。また、造形物の補修方法は、例えば、補修対象造形物に対して欠損部用パーツを接着する接着段階を更に備えることが好ましい。この場合、接着段階の動作を行った後に、貼付段階の動作を行うことが考えられる。このように構成すれば、例えば、補修対象造形物に対して欠損部用パーツをより適切に固定することができる。
【0009】
また、造形物の補修方法は、例えば、補修対象造形物において補修の対象となる位置である補修位置の指定をユーザから受け付ける補修位置指定段階を更に備えることが好ましい。この場合、補修位置指定段階では、例えば、補修対象造形物の少なくとも一部を示す画像を画像表示装置に表示して、補修位置の指定をユーザから受け付ける。そして、貼付部材作成段階では、例えば、補修位置指定段階で指定された補修位置に合わせて、貼付部材の形状と、着色層における各位置の色とを決定する。また、決定した形状及び色に基づき、貼付部材を作成する。このように構成すれば、例えば、ユーザの指定に基づき、補修位置に合わせた貼付部材をより適切に作成することができる。
【0010】
また、貼付部材作成段階では、例えば、補修対象造形物の造形時に用いられたデータに基づき、貼付部材を作成することが考えられる。この場合、補修対象造形物の造形時については、例えば、破損が生じる前の造形物を造形装置で造形した造形時等と考えることができる。また、このようなデータとして、例えば、造形物の形状及び色を示す造形物データを用いることが考えられる。より具体的に、この場合、貼付部材作成段階では、例えば、補修対象造形物の形状及び色を示すデータであり、補修対象造形物の造形時に用いられた造形物データに基づき、貼付部材の着色層における各位置の色を決定する。そして、決定した色に基づき、貼付部材を作成する。このように構成すれば、例えば、造形物データに基づき、補修対象造形物において貼付部材によって覆われる部分の色を適切に取得することができる。また、これにより、例えば、貼付部材の着色層について、補修対象造形物において貼付部材によって覆われる部分の色に合わせて適切に着色することができる。
【0011】
また、補修対象造形物において貼付部材によって覆われる部分の色については、例えば造形物データを用いずに、補修対象造形物から直接取得すること等も考えられる。この場合、造形物の補修方法は、例えば、補修対象造形物を3Dスキャンしたデータであるスキャンデータを生成するデータ生成段階を更に備える。また、この場合、貼付部材作成段階では、例えば、データ生成段階で生成したスキャンデータに基づき、貼付部材の着色層における各位置の色を決定する。そして、決定した色に基づき、貼付部材を作成する。このように構成した場合も、例えば、補修対象造形物において貼付部材によって覆われる部分の色を適切に取得することができる。また、これにより、例えば、貼付部材の着色層について、補修対象造形物において貼付部材によって覆われる部分の色に合わせて適切に着色することができる。また、データ生成段階では、例えば、欠損部用パーツについてもスキャンの対象にすることが考えられる。より具体的に、この場合、例えば、補修対象造形物に欠損部用パーツを取り付けた状態で、3Dスキャンを行うことが考えられる。このように構成すれば、例えば、補修対象造形物及び欠損部用パーツにおいて貼付部材によって覆われる部分の色を適切に取得することができる。また、これにより、例えば、貼付部材の着色層の各位置の色をより適切に決定することができる。
【0012】
また、この構成において、補修対象造形物は、例えば、補修対象造形物の表面において着色がされている着色領域と、着色領域の内側に光反射性に形成されている光反射領域とを備える。そして、貼付部材作成段階で用いる造形装置としては、このような造形物を造形可能な装置を用いることが考えられる。より具体的に、貼付部材作成段階で用いる造形装置としては、例えば、造形材料として紫外線硬化型の材料を吐出する装置を用いることが考えられる。この場合、この造形装置は、例えば、それぞれが造形材料を吐出する複数の吐出ヘッドと、吐出後の造形材料へ紫外線を照射する紫外線光源とを備える。また、複数の吐出ヘッドとして、少なくとも、着色用の有色の造形材料である有色材料を吐出する着色材料用ヘッドと、光反射性の造形材料である光反射性材料を吐出する光反射性材料用ヘッドとを備える。このように構成すれば、例えば、補修対象造形物に合わせた構成の貼付部材を適切に作成することができる。
【0013】
また、この場合、造形材料として用いる紫外線硬化型の材料について、例えば、完全に硬化するよりも少ない光量の紫外線を照射することで、粘着性の状態にすることが可能になる。そして、この場合、貼付部材の接着層について、造形材料をこのような粘着性の状態にすることで形成することが考えられる。より具体的に、この場合、貼付部材作成段階では、例えば、着色材料用ヘッドから吐出する有色材料を少なくとも用いて、着色層を形成する。着色層については、例えば、十分な量の紫外線を照射して、粘着性を有さない状態にまで造形材料を硬化させて形成することが考えられる。また、この場合、接着層についても、複数の吐出ヘッドのいずれかから吐出する造形材料を用いて形成することが考えられる。また、接着層の形成時には、紫外線光源から造形材料へ紫外線を照射することで、造形材料の粘度について、粘着性を有する状態にまで高めることが考えられる。また、この場合、例えば、貼付段階において、補修対象造形物に貼付部材を貼り付けた後に、貼付部材に更に紫外線を照射することで、接着層における造形材料を硬化させることが考えられる。このように構成すれば、例えば、紫外線硬化型の造形材料を用いて、貼付部材の接着層を適切に形成することができる。また、補修対象造形物に貼付部材を貼り付けた後に更に紫外線を照射して、接着層の硬化を完了させることで、補修対象造形物に対して貼付部材を適切に固定することができる。
【0014】
また、貼付部材の接着層の形成の仕方の変形例では、通常の造形物の造形時には造形材料として用いない接着材料で接着層を形成すること等も考えられる。この場合、通常の造形物の造形時には造形材料として用いない材料については、例えば、補修対象造形物と同じ造形物を造形する場合には用いない材料等と考えることができる。接着材料について、例えば、貼付部材における接着層の材料であり、補修対象造形物における着色領域及び光反射領域のそれぞれと同じ領域を形成する場合には用いられない材料等と考えることもできる。また、この場合、貼付部材の作成に用いる造形装置は、例えば、接着材料を吐出する接着材料用ヘッドを更に備える。また、貼付部材作成段階では、例えば、着色材料用ヘッドから吐出する有色材料を少なくとも用いて、着色層を形成する。そして、接着材料用ヘッドから吐出する接着材料を用いて、接着層を形成する。このように構成した場合も、着色層及び接着層を備える貼付部材を適切に作成することができる。また、このような接着材料としては、例えば、十分に紫外線を照射して硬化が完了した時点でも粘着性を維持する紫外線硬化型の材料等を用いることが考えられる。また、より具体的に、このような接着材料としては、例えば、下地形成用の公知の紫外線硬化型インク(プライマーインク)と同一又は同様の液体を用いることが考えられる。また、通常の造形物の造形時には造形材料として用いない接着材料として、例えば、紫外線硬化型ではない接着材料を用いること等も考えられる。これらのような接着材料を用いる場合、貼付段階では、例えば、更なる紫外線の照射を行うことなく、補修対象造形物への貼付部材の貼り付けを完了することが考えられる。このように構成した場合も、例えば、補修対象造形物に対して貼付部材を適切に貼り付けることができる。
【0015】
また、本発明の構成として、上記と同様の特徴を有する造形システムや貼付部材の製造方法等を用いることも考えられる。これら場合も、例えば、上記と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、例えば、破損した造形物に対する補修を容易かつ適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る造形物の補修方法に使用される造形システム10について説明をする図である。図1(a)は、造形システム10の構成の一例を示す。図1(b)は、造形システム10における造形装置12の要部の構成の一例を示す。図1(c)は、ヘッド部102の構成の一例を示す。
図2】本例の造形装置12により造形する造形物50と、造形物50の補修の動作とについて説明をする図である。図2(a)は、造形物50の構成の一例を示す。図2(b)は、造形物50における破損の生じ方の一例を示す。図2(c)は、リペアパッチ300の構成の一例を示す。
図3】リペアパッチ300を用いて造形物50の補修を行う動作について更に詳しく説明をする図である。図3(a)、(b)は、リペアパッチ300の構成の一例を示す。図3(c)は、補修対象の造形物50へのリペアパッチ300の貼り付け方の一例を示す。図3(d)は、リペアパッチ300を貼り付ける位置での造形物50及びリペアパッチ300の断面の構成の一例を示す断面図である。
図4】造形物50を補修する動作の一例を示すフローチャートである。
図5】パッチ用データを生成する動作の一例を示すフローチャートである。
図6】リペアパッチ300の構成等の変形例について説明をする図である。図6(a)、(b)は、リペアパッチ300の構成の変形例を示す。図6(c)は、におけるヘッド部102の構成の変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る造形物の補修方法に使用される造形システム10について説明をする図である。図1(a)は、造形システム10の構成の一例を示す。図1(b)は、造形システム10における造形装置12の要部の構成の一例を示す。本例において、造形システム10は、立体的な造形物を造形する造形システムであり、造形装置12及び制御PC14を備える。造形システム10において造形する造形物については、例えば、立体的な三次元構造物等と考えることができる。また、本例において、造形システム10は、複数の装置である造形装置12及び制御PC14により構成されている。造形システム10の変形例において、造形システム10は、一台の装置により構成されてもよい。この場合、例えば、制御PC14の機能を含む一台の造形装置12により造形システム10を構成すること等が考えられる。また、造形システム10は、造形装置12及び制御PC14以外の装置を更に備えてもよい。
【0019】
造形システム10において、造形装置12は、造形物の造形を実行する装置であり、制御PC14の制御に応じて、造形物を造形する。また、本例において、造形装置12は、フルカラーでの着色がされた造形物を造形可能なフルカラー造形装置であり、造形しようとする造形物を示すデータである造形物データを制御PC14から受け取り、造形物データに基づいて、造形物を造形する。また、造形装置12は、積層造形法により立体的な造形物50を造形する造形装置(3Dプリンタ)であり、例えば図1(b)に示すように、ヘッド部102、造形台104、走査駆動部106、及び制御部110を有する。この場合、積層造形法については、例えば、造形の材料で形成される層を重ねることで造形物50を造形する方法等と考えることができる。また、以下に説明をする点を除き、造形装置12は、公知の造形装置と同一又は同様の構成を有してよい。より具体的に、以下に説明をする点を除き、造形装置12は、インクジェットヘッドを用いて造形物50の材料となる液滴を吐出することで造形を行う公知の造形装置と同一又は同様の特徴を有してよい。また、造形装置12は、図示した構成以外にも、例えば、造形物50の造形等に必要な各種構成を更に備えてよい。
【0020】
ヘッド部102は、造形物50の材料を吐出する構成である。本例において、造形物50の材料としては、インクを用いる。インクについては、例えば、機能性の液体等と考えることができる。また、インクについて、例えば、インクジェットヘッドから吐出する液体等と考えることもできる。本例において、ヘッド部102は、造形物50の材料として、複数のインクジェットヘッドから、所定の条件に応じて硬化するインクを吐出する。そして、着弾後のインクを硬化させることにより、造形物50を構成する各層を重ねて形成して、積層造形法で造形物を造形する。また、本例では、このようなインクとして、紫外線の照射により液体状態から硬化する紫外線硬化型インク(UVインク)を用いる。この場合、紫外線硬化型インクは、紫外線硬化型の造形材料の一例である。また、ヘッド部102は、造形物50の材料に加え、サポート層52の材料を更に吐出する。これにより、ヘッド部102は、造形物50の周囲等に、必要に応じて、サポート層52を形成する。サポート層52については、例えば、造形中の造形物50の少なくとも一部を支持する積層構造物等と考えることができる。サポート層52は、造形物50の造形時において、必要に応じて形成され、造形の完了後に除去される。
【0021】
造形台104は、造形中の造形物50を支持する台状部材であり、ヘッド部102におけるインクジェットヘッドと対向する位置に配設され、造形中の造形物50及びサポート層52を上面に載置する。また、本例において、造形台104は、積層方向(図中のZ方向)へ移動可能な構成を有しており、走査駆動部106に駆動されることにより、造形物50の造形の進行に合わせて、積層方向への移動を行う。この場合、積層方向については、例えば、積層造形法において造形の材料が積層される方向等と考えることができる。また、本例において、積層方向は、造形装置12において予め設定される主走査方向(図中のY方向)及び副走査方向(図中のX方向)と直交する方向である。
【0022】
走査駆動部106は、造形中の造形物50に対して相対的に移動する走査動作をヘッド部102に行わせる駆動部である。本例において、造形中の造形物50に対して相対的に移動することについては、例えば、造形台104に対して相対的に移動すること等と考えることができる。また、ヘッド部102に走査動作を行わせることについては、例えば、ヘッド部102が有するインクジェットヘッドに走査動作を行わせること等と考えることができる。また、本例において、走査駆動部106は、走査動作として、主走査動作(Y走査)、副走査動作(X走査)、及び積層方向走査動作(Z走査)をヘッド部102に行わせる。この場合、主走査動作については、例えば、造形中の造形物50に対して相対的に主走査方向へ移動しつつインクを吐出する動作等と考えることができる。副走査動作については、例えば、主走査方向と直交する副走査方向へ造形中の造形物50に対して相対的に移動する動作等と考えることができる。また、副走査動作については、例えば、予め設定された送り量だけ副走査方向へ造形台104に対して相対的に移動する動作等と考えることもできる。本例において、走査駆動部106は、ヘッド部102に主走査動作及び副走査動作を行わせることで、ヘッド部102にインクの層を形成させる。また、積層方向走査動作については、例えば、造形中の造形物50に対して相対的に積層方向へ移動する動作等と考えることができる。走査駆動部106は、造形の動作の進行に合わせてヘッド部102に積層方向走査動作を行わせることにより、積層方向において、造形中の造形物50に対するインクジェットヘッドの相対位置を調整する。
【0023】
制御部110は、例えば造形装置12のCPUを含む構成であり、造形装置12の各部を制御することにより、造形物50の造形の動作を制御する。また、本例において、制御部110は、制御PC14から受け取る造形物データに基づき、造形しようとする造形物50の断面を示すデータであるスライスデータを生成する。そして、造形物50を構成するそれぞれのインクの層を形成する動作において、スライスデータに基づいてヘッド部102における各インクジェットヘッドの動作を制御することにより、造形物の造形に用いるインクを各インクジェットヘッドに吐出させる。本例によれば、例えば、造形物50の造形を適切に実行することができる。
【0024】
また、本例において、造形装置12は、通常の造形物以外に、造形物の補修に用いる部材であるリペアパッチを更に作成する。この場合、通常の造形物については、例えば、通常の造形の動作によって造形装置12において造形する造形物等と考えることができる。また、リペアパッチについては、例えば、そのリペアパッチを作成する造形装置12、又は他の造形装置によって過去に造形した造形物の補修時に用いる部材等と考えることができる。本例においてリペアパッチを作成する動作や、リペアパッチの用い方等については、後に更に詳しく説明をする。
【0025】
また、造形システム10において、制御PC14は、造形装置12の動作を制御するコンピュータ(ホストPC)であり、造形物データを造形装置12へ供給することにより、造形装置12による造形の動作を制御する。また、本例において、制御PC14は、表示部22、操作部24、及び本体部26を有し、外部から色彩を視認できる表面に着色がされた造形物を示す造形物データを造形装置12へ供給する。表示部22は、画像表示装置の一例であり、制御PC14のユーザに対して各種の情報を表示する。表示部22については、例えば、コンピュータのモニタに対応する構成等と考えることができる。操作部24は、ユーザの操作を受け付けることでユーザから情報の入力を受けるための構成である。操作部24については、例えば、コンピュータのマウスやキーボード等の入力装置に対応する構成等と考えることができる。本体部26は、制御PC14において各種の処理を実行する構成である。本体部26については、例えば、コンピュータの本体部分に対応する構成等と考えることができる。
【0026】
また、本例において、制御PC14は、造形装置12の動作を制御する制御装置の一例であり、例えば、造形システム10の外部から受け取った造形物データを造形装置12へ供給する。このように構成すれば、例えば、造形装置12に造形物データを適切に供給することができる。また、これにより、造形システム10において、造形物の造形を適切に実行することができる。また、この場合、制御PC14は、例えば、外部から受け取った造形物データに対し、造形装置12の構成や状態等に合わせた調整等を行って、造形装置12へ供給してもよい。また、本例において、造形装置12にリペアパッチを作成する場合、制御PC14は、リペアパッチを示す造形物データを造形装置12へ供給する。このように構成すれば、例えば、造形装置12にリペアパッチを適切に作成させることができる。また、造形物データについては、例えば、造形システム10の外部から受け取るのではなく、例えばユーザの指示や操作等に応じて、制御PC14において生成してもよい。例えば、造形装置12にリペアパッチを作成させる場合、リペアパッチを示す造形物データについて、制御PC14において生成すること等が考えられる。このように構成した場合も、例えば、造形装置12に造形物データを適切に供給することができる。
【0027】
続いて、造形装置12におけるヘッド部102の構成について、更に詳しく説明をする。図1(c)は、ヘッド部102の構成の一例を示す。本例において、ヘッド部102は、複数のインクジェットヘッド202、複数の紫外線光源204、及び平坦化ローラ206を有する。また、複数のインクジェットヘッド202として、図中において文字s~tを付して区別して示すように、インクジェットヘッド202s、インクジェットヘッド202w、インクジェットヘッド202y、インクジェットヘッド202m、インクジェットヘッド202c、インクジェットヘッド202k、及びインクジェットヘッド202tを有する。これらの複数のインクジェットヘッド202は、副走査方向における位置を揃えて、主走査方向へ並べて配設される。また、それぞれのインクジェットヘッド202は、造形台104と対向する面に、所定のノズル列方向へ複数のノズルが並ぶノズル列を有する。本例において、ノズル列方向は、副走査方向と平行な方向である。
【0028】
また、これらのインクジェットヘッド202のうち、インクジェットヘッド202sは、サポート層52の材料を吐出するインクジェットヘッドである。サポート層52の材料としては、例えば、サポート層用の公知の材料を好適に用いることができる。インクジェットヘッド202s以外のインクジェットヘッド202は、造形物50の材料を吐出するインクジェットヘッドである。また、本例において、インクジェットヘッド202s以外のインクジェットヘッド202については、例えば、造形物50を構成する造形材料を吐出する吐出ヘッドの一例等と考えることができる。また、インクジェットヘッド202s以外のインクジェットヘッド202のうち、インクジェットヘッド202wは、白色(W色)のインクを吐出するインクジェットヘッドである。また、本例において、インクジェットヘッド202wは、光反射性の造形材料である光反射性材料を吐出する光反射性材料用ヘッドの一例である。白色のインクは、光反射性材料の一例であり、例えば造形物50において光を反射する性質の領域(光反射領域)を形成する場合に用いられる。この光反射領域は、例えば、造形物50表面に対してフルカラー表現での着色を行う場合に、造形物50の外部から入射する光を反射する。フルカラー表現については、例えば、プロセスカラーのインクによる減法混色法の可能な組み合わせで行う色の表現等と考えることができる。プロセスカラーについては、例えば、色表現に用いる基本色等と考えることができる。
【0029】
インクジェットヘッド202y、インクジェットヘッド202m、インクジェットヘッド202c、インクジェットヘッド202k(以下、インクジェットヘッド202y~kという)は、着色された造形物50の造形時に用いられる着色用のインクジェットヘッドである。より具体的に、インクジェットヘッド202yは、イエロー色(Y色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド202mは、マゼンタ色(M色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド202cは、シアン色(C色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド202kは、黒色(K色)のインクを吐出する。また、本例において、インクジェットヘッド202y~kは、有色材料を吐出する吐出ヘッドである着色材料用ヘッドの一例である。この場合、有色材料については、例えば、着色された造形物の造形時に用いる着色用の有色の造形材料等と考えることができる。また、YMCKの各色は、プロセスカラーの一例である。YMCKの各色のインクは、有色材料の一例である。YMCKの各色のインクについては、例えば、着色用のカラーインク等と考えることもできる。インクジェットヘッド202tは、クリアインクを吐出するインクジェットヘッドである。クリアインクについては、例えば、可視光に対して無色で透明(T)なインク等と考えることができる。また、クリアインクについて、例えば、意図的に色材を添加していないインク等と考えることもできる。
【0030】
複数の紫外線光源204は、インクを硬化させるための光源(UV光源)であり、紫外線硬化型インクを硬化させる紫外線を発生する。紫外線光源204については、例えば、造形装置12における複数のインクジェットヘッド202が吐出した後の造形材料へ紫外線を照射する光源等と考えることもできる。また、本例において、複数の紫外線光源204のそれぞれは、間にインクジェットヘッド202の並びを挟むように、ヘッド部102における主走査方向の一端側及び他端側のそれぞれに配設される。紫外線光源204としては、例えば、UVLED(紫外LED)等を好適に用いることができる。また、紫外線光源204として、メタルハライドランプや水銀ランプ等を用いることも考えられる。平坦化ローラ206は、造形物50の造形中に形成されるインクの層を平坦化するための平坦化手段である。平坦化ローラ206については、例えば、吐出ヘッドから吐出される材料で形成される層を平坦化するための構成等と考えることもできる。また、本例において、平坦化ローラ206は、主走査動作時にインクの層の表面と接触して、硬化前のインクの一部を除去することにより、インクの層を平坦化する。以上のような構成のヘッド部102を用いることにより、例えば、造形物50を構成するインクの層を適切に形成できる。また、複数のインクの層を重ねて形成することにより、例えば、造形物50を適切に造形できる。
【0031】
尚、ヘッド部102の具体的な構成については、上記において説明をした構成に限らず、様々に変形することもできる。例えば、ヘッド部102は、着色用のインクジェットヘッドとして、上記以外の色用のインクジェットヘッドを更に有してもよい。また、ヘッド部102における複数のインクジェットヘッドの並べ方についても、様々に変形可能である。例えば、一部のインクジェットヘッドについて、他のインクジェットヘッドと副走査方向における位置をずらしてもよい。
【0032】
続いて、本例の造形装置12により造形する造形物50の構成や、リペアパッチを用いて造形物50の補修を行う動作等について、更に詳しく説明をする。図2は、本例の造形装置12により造形する造形物50と、造形物50の補修の動作とについて説明をする図である。図2(a)は、造形物50の構成の一例を示す図であり、積層方向(Z方向)と直交する造形物50の断面であるX-Y断面の構成の一例を示す。この場合、X方向やY方向と垂直な造形物50のY-Z断面やX-Z断面の構成も、同様の領域を有する構成になる。
【0033】
上記においても説明をしたように、本例において、造形装置12(図1参照)は、インクジェットヘッド202y~k(図1参照)等を用いて、少なくとも表面が着色された造形物50を造形する。この場合、造形物50の表面が着色されることについては、例えば、造形物50において外部から色彩を視認できる領域の少なくとも一部が着色されること等と考えることができる。また、この場合、造形装置12は、例えば図中に示すように、光反射領域152及び着色領域154を備える造形物50を造形する。また、必要に応じて、造形物50の周囲等にサポート層52(図1参照)を形成する。
【0034】
光反射領域152は、着色領域154の内側に光反射性に形成される領域であり、着色領域154を介して造形物50の外側から入射する光を反射する。本例において、造形装置12は、インクジェットヘッド202w(図1参照)から吐出する白色のインクを用いて、造形物50の内部に光反射領域152を形成する。この場合、光反射領域152について、例えば、内部領域を兼ねた領域になっていると考えることができる。内部領域については、例えば、造形物50の内部を構成する領域等と考えることができる。造形物50の構成の変形例においては、内部領域について、光反射領域152とは別の領域として形成してもよい。この場合、造形装置12は、例えば、サポート層52の材料以外の任意のインクを用いて、内部領域を形成する。また、内部領域の周囲に、光反射領域152を形成する。着色領域154は、造形物50の表面においてインクジェットヘッド202y~kから吐出する着色用のインクにより着色がされる領域である。本例において、造形装置12は、インクジェットヘッド202y~kから吐出する着色用のインクと、インクジェットヘッド202t(図1参照)から吐出するクリアインクとを用いて、光反射領域152の周囲(外側)に着色領域154を形成する。また、この場合、造形装置12では、例えば、各位置への各色の着色用のインクの吐出量を調整することにより、様々な色を表現する。また、色の違いによって生じる着色用のインクの量の変化を補填するために、クリアインクを用いる。このように構成すれば、例えば、着色領域154の各位置を所望の色で適切に着色できる。また、これにより、例えば、着色された造形物50を適切に造形することができる。
【0035】
ここで、造形装置12において造形物50を造形した後、造形物50において、様々な破損が生じる場合がある。例えば、図2(b)に示す構成の造形物50のように、他の箇所と比べて細い部分が存在する造形物50の場合、細い部分において、破損が生じやすくなる。図2(b)は、造形物50における破損の生じ方の一例を示す図であり、一部が細くなっている造形物50において破損箇所60に破損が生じる様子の一例を示す。図中において、左側の図は、破損が生じる前の造形物50の一例を示す。右側の図は、破損箇所60に破損が生じた状態の造形物50の一例を示す。
【0036】
このような破損が造形物50に生じた場合において、簡易な方法で補修を行うのであれば、例えば、破損箇所を接着剤で接続すること等も考えられる。しかし、この場合、補修位置(補修後の破損箇所60)の強度が低下することで、再度の破損が生じやすくなることが考えられる。また、例えば、単に接着剤で接着箇所を接着するのではなく、破損箇所60をつなげた状態で粘着テープ等で補強を行えば、補修後の強度を高めることも可能である。しかし、この場合、造形物50の表面の一部が粘着テープ等で覆われることで、造形物50の見栄えが低下することになる。特に、着色された造形物50の補修を行う場合、着色されている箇所が粘着テープ等で覆われると、意匠性が大きく低下するおそれがある。
【0037】
これに対し、本例においては、例えば図2(c)に示すような薄膜状のリペアパッチ300を造形装置12で作成し、リペアパッチ300を用いて造形物50の補修を行うことで、補修位置の強度の低下を抑えつつ、補修後の見栄えの低下も抑える。図2(c)は、リペアパッチ300の構成の一例を示す。本例において、リペアパッチ300は、貼付部材の一例となるパッチ状の部材(補修用パッチ)であり、造形物50の補修時に造形物50に貼り付けられる。また、リペアパッチ300は、造形物50において補修時にリペアパッチ300によって覆われる部分の色に合わせて着色して形成される。このように構成した場合、例えば。リペアパッチ300を造形物50に貼り付けて造形物50の補修を行うことで、補修位置の強度を適切に高めることができる。また、造形物50の色に合わせて着色がされたリペアパッチ300を用いることで、例えば、リペアパッチ300を目立ちにくくして、補修後の見栄えの低下を適切に抑えることができる。そのため、本例によれば、例えば、造形物50の補修をより適切に行うことができる。
【0038】
尚、造形物50において補修時にリペアパッチ300によって覆われる部分の色に合わせてリペアパッチ300を着色することについては、例えば、その部分における造形物50の表面の色や図柄等に合わせてリペアパッチ300を着色すること等と考えることができる。また、図2(b)においては、図示の便宜上、比較的単純な形状の造形物50の例を示している。実際に補修の対象とする造形物50としては、より複雑な形状の造形物50を用いることも可能である。例えば、造形物50として、人物を示す人型のフィギュアの造形物等を用いることも考えられる。この場合、例えば、フィギュアの手足や指等について、破損が生じやすい細い部分等と考えることができる。また、リペアパッチ300を用いて行う造形物50の補修について、より具体的には、例えば図3に示すように実行することが考えられる。
【0039】
図3は、リペアパッチ300を用いて造形物50の補修を行う動作について更に詳しく説明をする図である。図3(a)、(b)は、リペアパッチ300の構成の一例を示す。図3(a)は、リペアパッチ300の表面の状態の一例を示す。図3(b)は、リペアパッチ300の構成の一例を示す断面図である。上記においても説明をしたように、本例では、造形システム10における造形装置12(図1参照)を用いて、リペアパッチ300を作成する。そのため、リペアパッチ300について、例えば、少ない層数のインクの層で構成される薄膜状の造形物等と考えることもできる。
【0040】
また、本例において、リペアパッチ300は、着色層302及び接着層304を備える可撓性の膜状体である。この場合、着色層302は、リペアパッチ300において着色がされる層である。また、上記においても説明をしたように、本例においては、造形物50において補修時にリペアパッチ300によって覆われる部分の色に合わせて、リペアパッチ300を着色する。この場合、リペアパッチ300における着色層302について、このように着色をすると考えることができる。また、本例において、着色層302に対する着色については、造形物50の表面への着色と同一又は同様に行う。より具体液に、造形物50の表面への着色については、例えば、表面における位置によって色を異ならせることで、文字や模様等を描くように着色を行うことが考えられる。そして、この場合、着色層302の形成について、例えば図3(a)に示すように、補修対象の造形物50においてリペアパッチ300によって覆われる部分の色に合わせて、造形物50の表面における文字や模様に合わせた文字や模様等を描くように着色をして行う。また、この場合、造形物50における着色領域154(図2参照)の形成時と同様に、リペアパッチ300の着色層302の形成時にも、色の違いによって生じる着色用のインクの量の変化を補填するために、クリアインクを用いる。そのため、リペアパッチ300の着色層302についても、例えば、着色用の有色のインク(カラーインク)に加えてクリアインクを更に用いて形成されると考えることができる。このように構成すれば、例えば、リペアパッチ300の着色層302について、造形物50の着色領域154と同様に着色をして形成することができる。
【0041】
また、接着層304は、造形物50に対してリペアパッチ300を接着するための層である。また、本例において、接着層304は、少なくとも造形物50へのリペアパッチ300の貼り付け時に粘着性になっている層である。このような接着層304の形成の仕方については、後に更に詳しく説明をする。また、本例において、接着層304は、インクジェットヘッド202w(図1参照)から吐出する白色のインクを用いて形成される白色の層である。この場合、接着層304について、例えば、着色層302を介して外部から入射する光を反射する光反射層を兼ねていると考えることができる。また、このような接着層304を形成することで、例えば、着色層302において、様々な色をより適切に表現することができる。更には、白色の接着層304によって造形物50の表面を覆うことで、例えば、造形物50の表面の文字や模様がリペアパッチ300を透けて視認されることを防止することもできる。また、これにより、例えば、造形物50の表面の文字や模様と、リペアパッチ300の着色層302に描かれた文字や模様とが2重に視認されること等を適切に防止することもできる。
【0042】
また、本例において、造形装置12でのリペアパッチ300の作成時には、先に着色層302を形成し、その上に接着層304を形成する。このように構成すれば、例えば、粘着性の接着層304が造形装置12における造形台104(図1参照)に貼り付くこと等を適切に防止することができる。また、本例においては、リペアパッチ300についても、造形装置12によって積層造形法で造形していると考えることができる。この場合、着色層302及び接着層304のそれぞれについて、インクの層で形成すると考えることができる。また、また、造形装置12で作成中の着色層302及び接着層304について、例えば、積層造形法で造形の材料が重なる積層方向において重なると考えることができる。また、着色層302や接着層304については、積層方向へ重なる複数のインクの層で形成してもよい。リペアパッチ300における着色層302の厚さについては、造形物50における着色領域154(図2参照)の厚さと同程度にすることが好ましい。この場合、造形物50における着色領域154の厚さについては、例えば、造形物50の表面と直交する法線方向における厚さ等と考えることができる。より具体的に、リペアパッチ300における着色層302の厚さについては、例えば、造形物50における着色領域154の厚さの0.5~2倍程度、好ましくは、0.7~1.5倍程度にすることが考えられる。このように構成すれば、例えば、リペアパッチ300の着色層302において、造形物50における着色領域154に合わせた品質での色の表現を適切に行うことができる。
【0043】
また、このようなリペアパッチ300を用いて造形物50の補修を行う場合、例えば図3(c)、(d)に示すように、リペアパッチ300の貼り付けを行うことが考えられる。図3(c)は、補修対象の造形物50へのリペアパッチ300の貼り付け方の一例を示す。図3(c)において、左側の図は、リペアパッチ300の貼り付けを開始した時点での補修対象の造形物50とリペアパッチ300とを示している。右側の図は、リペアパッチ300の貼り付けが完了した時点での補修対象の造形物50とリペアパッチ300とを示している。
【0044】
図示した場合において、造形物50は、細い部分が折れて二つに分かれるように、破損している。この場合、二つに分かれた造形物50の一方に着目すると、例えば、一部が欠損する破損が生じていると考えることができる。また、二つに分かれた造形物50の一方について、例えば、補修対象の造形物と考えることができる。この場合、二つに分かれた造形物50の他方については、例えば、補修対象の造形物における欠損している箇所に取り付ける部材に相当すると考えることができる。また、このような観点から、以下においては、一部が欠損する破損が生じている造形物50において、補修に使用する部分の少なくとも一部について、補修対象造形物という。補修対象造形物については、例えば、破損が生じる前の造形物50の少なくとも一部に対応する構成等と考えることもできる。また、補修対象造形物において欠損している箇所に取り付ける部材について、欠損部用パーツという。この場合、例えば、破損前の造形物から欠損部用パーツを除いた部分について、補修対象造形物になっていると考えることもできる。
【0045】
より具体的に、図示したような破損が生じている場合、上記のように二つに分かれた造形物50の一方について、補修対象造形物の一例と考えることができる。また、二つに分かれた造形物50の他方について、欠損部用パーツの一例と考えることができる。また、この場合、例えば、破損によって補正対象造形物から外れた部分が欠損部用パーツになっていると考えることもできる。このような欠損部用パーツを用いることで、例えば、容易かつ適切に欠損部用パーツを準備することができる。また、破損の状態や、補修に対して求められる品質等によっては、欠損部用パーツとして、破損が生じる前の造形物50の一部ではなく、補修用に新たに作成した部品を用いることも考えられる。例えば、造形物50の破損の仕方によっては、元の造形物50の一部を欠損部用パーツとして用いることが難しい場合もある。このような場合には、欠損部用パーツについて、例えばリペアパッチ300の作成に用いる造形装置12(図1参照)を用いて、新たに作成(造形)する。
【0046】
また、図3(c)に示すように、本例において、造形物50の補修時には、二つに分かれた造形物50を破損箇所60の位置でつなげて、その上にリペアパッチ300を貼り付けている。このような動作については、例えば、補修対象造形物に対して欠損部用パーツを取り付け、その境界部分の少なくとも一部をリペアパッチ300で覆う動作等と考えることができる。また、リペアパッチ300の貼り付け方については、例えば、補修対象造形物及び欠損部用パーツの表面の少なくとも一部に貼り付けていると考えることができる。また、リペアパッチ300における接着層304について、例えば、補修対象造形物及び欠損部用パーツに対してリペアパッチ300を接着するための層として機能していると考えることができる。また、この場合、リペアパッチ300を貼り付ける前に、接着剤を用いて、二つに分かれた造形物50の一方に対して他方を接着することが好ましい。このように構成すれば、例えば、補修後の造形物50の強度をより適切に高めることができる。
【0047】
また、この場合、リペアパッチ300を貼り付ける前と後とで、造形物50の断面の様子は、例えば図3(d)に示すように変化する。図3(d)は、リペアパッチ300を貼り付ける位置での造形物50及びリペアパッチ300の断面の構成の一例を示す断面図である。図3(d)において、左側の図は、二つに分かれた造形物50の一方に対して他方を取り付けた後、リペアパッチ300を貼り付ける前の時点での造形物50の断面を示している。この場合、造形物50の断面は、破損が生じる前の造形物50の同じように、光反射領域152の周囲を着色領域154が囲む構成になる。また、図3(d)において、右側の図は、二つに分かれた造形物50の一方に対して他方を取り付けた後、更にリペアパッチ300を貼り付けた後の造形物50及びリペアパッチ300の断面を示している。この場合、図中に示すように、リペアパッチ300が貼り付けられる位置では、造形物50における着色領域154の外側に、リペアパッチ300における接着層304及び着色層302がこの順番で重なることになる。
【0048】
また、上記においても説明をしたように、本例において、リペアパッチ300における接着層304は、白色のインクを用いて、光反射層を兼ねるように形成される。この場合、リペアパッチ300が貼り付けられる位置において、造形物50の着色領域154の色は、リペアパッチ300における接着層304によって隠蔽され、外部から視認されないことになる。そのため、リペアパッチ300における接着層304について、例えば、造形物50の表面の色を隠蔽する隠蔽層として機能すると考えることもできる。また、この場合、リペアパッチ300において、接着層304の外側に着色層302が来ることで、着色層302に着色されている色について、例えば、補修後の造形物50の色になると考えることができる。そして、上記においても説明をしたように、本例において、リペアパッチ300における着色層302は、造形物50において補修時にリペアパッチ300によって覆われる部分の色に合わせて着色して形成される。そのため、このように構成すれば、例えば、リペアパッチ300を貼り付ける位置での補修後の造形物50の色について、補修前と同じ色にすることができる。また、これにより、例えば、リペアパッチ300を貼る付けることで補修後の造形物50の見栄えが低下することを適切に防止しつつ、リペアパッチ300を用いた造形物50の補修を適切に行うことができる。
【0049】
続いて、造形物50を補修する動作について、更に詳しく説明をする。図4は、造形物50を補修する動作の一例を示すフローチャートであり、一部分が欠損する破損が生じている造形物50に対して補修を行う動作の一例を示す。また、以下においては、補修対象の造形物50について、適宜、補修対象造形物と呼んで、説明をする。この場合、上記においても説明をしたように、補修対象造形物については、例えば、破損した造形物50の少なくとも一部等と考えることができる。また、本例において、この補修の動作は、造形装置12で造形がされた造形物50を補修する造形物50の補修方法の動作の一例である。
【0050】
本例において、補修対象造形物の補修を行う動作では、先ず、補修対象造形物に対して取り付ける欠損部用パーツを準備する(S102)。ステップS102の動作は、準備段階の動作の一例である。また、上記においても説明をしたように、欠損部用パーツとしては、破損前の造形物50の一部を用いることが考えられる。この場合、欠損部用パーツについて、例えば、破損によって造形物50から分離した部分等と考えることもできる。また、本例において、ステップS102では、破損によって分離した造形物50の各部を集め、その一部を補修対象造形物として扱い、他の部分を欠損部用パーツとして扱うことで、欠損部用パーツを準備する。また、上記においても説明をしたように、造形物50の破損の仕方によっては、元の造形物50の一部を欠損部用パーツとして用いずに、造形装置12を用いて新たに欠損部用パーツを造形すること等も考えられる。この場合、例えば、欠損部用パーツを造形する動作について、欠損部用パーツを準備する動作等と考えることができる。
【0051】
また、欠損部用パーツを準備した後には、リペアパッチ300を示すデータであるパッチ用データを生成し(S104)、パッチ用データに基づく造形の動作を造形装置12に行わせることで、造形装置12にリペアパッチ300を作成させる(S106)。ステップS104及びS106の動作は、貼付部材作成段階の動作の一例である。また、本例のステップS104では、造形システム10における制御PC14に、パッチ用データを生成させる。パッチ用データを生成する動作については、後に更に詳しく説明をする。また、ステップS106では、制御PC14に造形装置12へパッチ用データを供給させることで、パッチ用データに基づく造形の動作を造形装置12に行わせる。
【0052】
ここで、造形装置12にリペアパッチ300を作成させることについては、例えば、積層造形法によって着色された造形物を造形可能な造形装置12を用いてリペアパッチ300を作成すること等と考えることができる。また、上記においても説明をしたように、本例において、リペアパッチ300は、着色層302及び接着層304を備える。そして、これらの層のうち、接着層304については、例えば、造形装置12での通常の造形時に形成されるインクの層とは性質が異なる層と考えることができる。より具体的に、上記においても説明をしたように、本例の造形装置12において、造形材料としては、紫外線硬化型インクを用いる。そして、この場合、紫外線硬化型インクについて、例えば、完全に硬化するよりも少ない光量の紫外線を照射することで、粘着性の状態にすることが可能になる。そのため、本例では、リペアパッチ300の接着層304について、紫外線硬化型インクをこのような粘着性の状態にすることで形成する。また、本例において、ステップS106では、上記においても説明をしたように、造形装置12における複数のインクジェットヘッド202のいずれかから吐出するインクを用いて、リペアパッチ300における着色層302及び接着層304を形成する。そして、この場合、着色層302については、造形装置12における紫外線光源204から十分な量の紫外線を照射して、粘着性を有さない状態にまでインクを硬化させて形成する。これに対し、着色層302の上に形成する接着層304の形成時には、着色層302の形成時よりも少ない光量の紫外線を紫外線光源204から照射することで、接着層304の形成に用いる白色のインクについて、完全には硬化させずに、粘着性を有する状態にまで粘度を高める。このように構成すれば、例えば、造形装置12で通常の造形物の造形時に用いる造形材料である紫外線硬化型インクを用いて、粘着性の接着層304を適切に形成することができる。紫外線硬化型インクについて、完全には硬化させずに、粘着性を有する状態にまで粘度を高めた状態については、例えば、インクを半硬化(仮硬化)させた状態等と考えることもできる。
【0053】
また、リペアパッチ300を作成した後には、例えば公知の接着剤を用い、補修対象造形物に対して欠損部用パーツを接着することで、補修対象造形物に対して欠損部用パーツを取り付ける(S108)。ステップS108の動作は、接着段階の動作の一例である。また、本例においては、接着によって、補修対象造形物と欠損部用パーツとを接触させた状態で、更に、補修対象造形物と欠損部用パーツとの境界部分の少なくとも一部を覆うように、リペアパッチ300を貼り付ける(S110)。ステップS110の動作は、貼付段階の動作の一例である。また、上記においても説明をしたように、本例において、リペアパッチ300における接着層304は、紫外線硬化型インクが完全には硬化しない状態で形成されている。そのため、本例において、ステップS110では、補修対象造形物にリペアパッチ300を貼り付けた後に、リペアパッチ300に更に紫外線を照射して、接着層304における紫外線硬化型インクを硬化させる。また、これにより、例えば、接着層304の形成に用いた紫外線硬化型インクの硬化を完了させて、補修対象造形物に対してリペアパッチ300を固定する。このように構成すれば、例えば、補修対象造形物に対して、リペアパッチ300をより適切に貼り付けることができる。また、これにより、例えば、補修対象造形物に対する補修を適切に行うことができる。
【0054】
続いて、ステップS104においてパッチ用データを生成する動作について、更に詳しく説明をする。上記においても説明をしたように、本例において、リペアパッチ300は、補修対象造形物及び欠損部用パーツにおいて補修時にリペアパッチ300によって覆われる部分の色に合わせて着色して形成される。また、この場合、リペアパッチ300の形状についても、補修対象造形物及び欠損部用パーツの形状に合わせて作成することが考えられる。そこで、本例では、補修対象造形物の造形時に用いられたデータに基づいてリペアパッチ300を作成することで、このようなリペアパッチ300を作成する。この場合、補修対象造形物の造形時については、例えば、破損が生じる前の造形物50を造形装置12で造形した造形時等と考えることができる。また、本例では、このようなデータとして、造形装置12において用いた造形物データを用いる。この場合、造形物データについて、例えば、補修対象の造形物50の造形時における形状及び色を示すデータ等と考えることができる。造形物データについては、例えば、補修対象となる造形物50の全体を示す3Dデータ等と考えることもできる。本例においては、補修対象造形物の造形時に用いられた造形物データに基づき、造形システム10における制御PC14により、図5に示す動作により、パッチ用データの生成を行う。
【0055】
図5は、パッチ用データを生成する動作の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示す動作では、先ず、造形物50の全体を示す3Dデータを取得する(S202)。より具体的に、本例のステップS202において、制御PC14は、ユーザの指示等に応じて、造形物50の全体を示す3Dデータとして、補修対象造形物の造形時に用いられた造形物データを取得する。そして、制御PC14は、取得した造形物データに基づき、補修対象造形物の少なくとも一部を示す画像を表示部22に表示する(S204)。ステップS204の動作は、ユーザに対して補修対象造形物を示す動作の一例である。この場合、例えば、補修対象造形物となる造形物50の全体を表示部22に表示することが考えられる。また、例えばユーザの指示に応じて、造形物50の一部を拡大して表示部22に表示してもよい。また、本例において、ステップS204では、表示部22に表示する補修対象造形物として、破損が生じる前の造形物50を表示していると考えることもできる。
【0056】
また、本例では、破損が生じて補修の対象となる位置について、ユーザの指示に応じて決定する。そのため、ステップS204で表示部22へ造形物50を表示した後、制御PC14は、例えば操作部24に対するユーザの操作に応じて、補修対象造形物において補修の対象となる位置である補修位置の指定(選択)をユーザから受け付ける(S206)。ステップS206の動作は、補修位置指定段階の動作の一例である。また、ステップS206の動作については、例えば、補修対象造形物の少なくとも一部を示す画像を画像表示装置に表示して、補修位置の指定をユーザから受け付ける動作等と考えることができる。このように構成すれば、例えば、作成すべきリペアパッチ300に対応する補修位置を適切に決定することができる。また、補修位置の指定を受け付けた後、制御PC14は、指定された補修位置に合わせて、リペアパッチ300の形状と、リペアパッチ300の着色層302における各位置の色とを決定する(S208)。そして、制御PC14は、決定した形状及び色に基づき、作成すべきリペアパッチ300を示すパッチ用データとして、リペアパッチ300用の造形物データを生成する(S210)。この場合、ステップS210で生成する造形物データについては、例えば、リペアパッチ300の形状及び色を示す3Dデータ等と考えることもできる。
【0057】
このように構成した場合、例えば、造形物50を示す造形物データに基づき、補修対象造形物においてリペアパッチ300によって覆われる部分の色や形状等を適切に取得することができる。また、ユーザによる補修位置の指定を受け付けることで、例えば、補修位置を適切に決定することができる。また、これにより、例えば、造形物50補修位置に合わせたリペアパッチ300の形状及び色を適切に決定することができる。そのため、本例によれば、例えば、リペアパッチ300の着色層302について、補修対象の造形物50においてリペアパッチ300によって覆われる部分の色に合わせて適切に着色することができる。また、本例において、制御PC14は、リペアパッチ300用の造形物データを造形装置12へ供給することで、ステップS208で決定した決定した形状及び色に基づき、造形装置12にリペアパッチ300を作成させる。このように構成すれば、例えば、造形物50の形状及び色や補修位置に合わせたリペアパッチ300を適切に作成することができる。
【0058】
また、パッチ用データを作成する動作については、上記において説明をした動作に限らず、様々に変更が可能である。例えば、図5を用いて説明をした上記の動作において、制御PC14は、補修対象造形物の造形時に用いた造形物データに基づき、リペアパッチ300を示すパッチ用データを生成している。しかし、パッチ用データを生成する動作の変形例では、このような造形物データを用いずに、パッチ用データを生成してもよい。この場合、例えば補修対象となる破損した造形物50に対して3Dスキャンを行うことで、補修対象造形物の形状及び色を直接取得することが考えられる。また、より具体的に、この場合、図5に示す動作におけるステップS202において、補修対象造形物の形状及び色を示すデータとして、破損した造形物50を3Dスキャンしたデータであるスキャンデータを生成する。この場合、ステップS202の動作について、例えば、データ生成段階の動作の一例と考えることができる。また、この場合、破損前の造形物50を示す造形物データに代えてスキャンデータを用いてステップS204以降の動作を行うことで、スキャンデータに基づき、パッチ用データを生成する。このように構成した場合も、例えば、リペアパッチ300の形状や、リペアパッチ300の着色層302の各位置の色について、スキャンデータに基づいて適切に決定することができる。また、決定した形状及び色に基づき、造形物50の形状及び色や補修位置に合わせたリペアパッチ300を適切に作成することができる。
【0059】
また、スキャンデータに基づいてパッチ用データを生成する場合、上記において説明をした欠損部用パーツに対応する部分についても、スキャンの対象にすることが好ましい。より具体的に、この場合、例えば、造形物50の一部に対応する補修対象造形物に対して欠損部用パーツを取り付けた状態で、3Dスキャンを行うことが考えられる。このように構成すれば、例えば、補修対象造形物及び欠損部用パーツにおいてリペアパッチ300によって覆われる部分の形状及び色を適切に取得することができる。また、これにより、例えば、リペアパッチ300の形状や着色層302の各位置の色をより適切に決定することができる。また、この場合、例えば、補修対象造形物に対して欠損部用パーツを仮止めした状態で、3Dスキャンを行うことが考えられる。3Dスキャンの方法としては、例えば、公知の様々な方法を用いることが考えられる。また、この場合、例えば、スマートフォン等を用いて互いに異なる方向から撮影した複数の写真を利用した3Dスキャン等を行うことが考えられる。このように構成すれば、例えば、専用の高価な装置等を用いることなく、容易に3Dスキャンを実行することができる。また、パッチ用データの生成については、例えば、制御PC14以外のコンピュータで行ってもよい。この場合、制御PC14は、外部から受け取るパッチ用データを造形装置12へ供給することで、造形装置12にリペアパッチ300を作成させる。
【0060】
また、パッチ用データを作成する動作では、補修位置について、例えば、破損前の造形物50を示す造形物データと、破損した造形物50の状態とに基づき、決定すること等も考えられる。より具体的に、この場合、補修対象の造形物50の造形時に使用した造形物データと、破損した造形物50を示す画像(例えば、写真等)とに基づき、破損が生じている位置(破損位置)を検知することが考えられる。この場合、パッチ用データを作成する動作を実行するコンピュータ(例えば、制御PC14)は、例えば、検知した破損位置に基づいて補修位置の候補を決定して、表示部22に表示する。そして、必要に応じて補修位置の変更や修正の指示等をユーザから受け付け、受け付けた指示に基づき、補修位置を決定する。このように構成すれば、例えば、補修位置をより容易かつ適切に決定することができる。
【0061】
また、リペアパッチ300の構成等についても、上記において説明をした構成に限らず、様々に変更が可能である。図6は、リペアパッチ300の構成等の変形例について説明をする図である。図6(a)、(b)は、リペアパッチ300の構成の変形例を示す。以下に説明をする点を除き、図6において、図1~5と同じ符号を付した構成は、図1~5における構成と、同一又は同様の特徴を有してよい。上記においては、リペアパッチ300の構成について、主に、白色のインクを用いてリペアパッチ300における接着層304を形成して、接着層304に光反射層を兼ねさせる構成について、説明をした。しかし、リペアパッチ300の構成の変形例においては、リペアパッチ300の接着層304について、白色以外のインクを用いて、白色以外の色で形成してもよい。この場合、例えば、クリアインクを用いて、無色で透明な接着層304を形成すること等が考えられる。また、この場合、例えば図6(a)に示すように、着色層302及び接着層304の他に光反射層306を更に備える構成のリペアパッチ300を作成することが考えられる。より具体的に、この場合、着色層302と接着層304との間に、白色のインクを用いて、白色の光反射層306を形成することが考えられる。また、この場合、リペアパッチ300における各層のうち、接着層304のみを粘着性に形成し、着色層302及び光反射層306については、十分な量の紫外線を照射して、粘着性を有さない状態で形成することが考えられる。このように構成した場合も、造形物50と同様に着色がされたリペアパッチ300を適切に作成することができる。
【0062】
また、図1~5においては、図示の便宜上、リペアパッチ300の形状について、単純な形状の例を図示していた。しかし、上記においても説明をしたように、リペアパッチ300の形状については、造形物50における補修位置に合わせた形状にすることが考えられる。そのため、リペアパッチ300の形状については、例えば図6(b)に示す形状のように、補修位置に合わせた様々な形状にすることが考えられる。また、この場合、必要に応じて、より複雑な形状のリペアパッチ300を作成すること等も考えられる。
【0063】
また、上記においては、リペアパッチ300における接着層304の形成の仕方について、主に、通常の造形物の造形時に造形材料として用いる紫外線硬化型インクを用いて形成をする方法について、説明をした。しかし、接着層304の形成の仕方の変形例では、例えば、通常の造形物の造形時には造形材料として用いない接着材料で接着層304を形成すること等も考えられる。この場合、通常の造形物の造形時には造形材料として用いない材料については、例えば、補修対象造形物と同じ造形物を造形する場合には用いない材料等と考えることができる。また、より具体的に、接着材料については、例えば、リペアパッチ300における接着層304の材料であり、補修対象の造形物50における光反射領域152及び着色領域154(図2参照)と同じ領域を形成する場合には用いられない材料等と考えることができる。また、この場合、通常の造形物の造形時に用いる造形材料以外に接着材料を更に吐出可能な構成の造形装置12を用いて、リペアパッチ300を作成することが考えられる。より具体的に、この場合、例えば、図6(c)に示す構成のヘッド部102を備える造形装置12を用いて、リペアパッチ300を作成することが考えられる。
【0064】
図6(c)は、造形装置12(図1参照)におけるヘッド部102の構成の変形例を示す。本変形例において、ヘッド部102は、複数のインクジェットヘッドとして、図1(c)に示した構成のヘッド部102におけるインクジェットヘッド202s~tに加え、インクジェットヘッド208を更に有する。また、インクジェットヘッド208に対する主走査方向の一方側及び他方側に、インクジェットヘッド208用の紫外線光源204を更に有する。この場合、造形装置12について、例えば、補修対象の造形物50と同一又は同様の造形物を造形する場合にはインクジェットヘッド208を使用せずに造形を行い、かつ、リペアパッチ300の作成時にはインクジェットヘッド208を用いる構成等と考えることができる。
【0065】
また、本変形例において、インクジェットヘッド208は、接着層304の材料として用いる接着材料を吐出する接着材料用ヘッドの一例である。リペアパッチ300としては、例えば図6に示す構成のように、光反射層306と接着層304とを分けた構成のリペアパッチ300を形成することが考えられる。より具体的に、リペアパッチ300の形成時において、造形装置12は、例えば、インクジェットヘッド202y~kから吐出する有色のインクと、インクジェットヘッド202tから吐出するクリアインクとを用いて、着色層302を形成する。また、インクジェットヘッド202wから吐出する白色のインクを用いて、着色層302の上に、光反射層306を形成する。そして、インクジェットヘッド208から吐出する接着材料を用いて、光反射層306の上に、接着層304を形成する。このように構成した場合も、例えば、造形物50の補修に用いるリペアパッチ300を適切に作成することができる。
【0066】
本変形例において、インクジェットヘッド208から吐出する接着材料としては、例えば、吐出位置に粘着性の状態で定着するインクを用いることが考えられる。また、このような接着材料としては、例えば、十分に紫外線を照射して硬化が完了した時点でも粘着性を維持する紫外線硬化型インク等を用いることが考えられる。より具体的に、このような接着材料としては、例えば、下地形成用の公知の紫外線硬化型インク(プライマーインク)と同一又は同様の液体を用いることが考えられる。このようなプライマーインクとしては、例えば、ミマキエンジニアリング社が販売している公知のプライマーインク(例えば、PR-200型インク等)を用いることが考えられる。また、このような接着層304を備えるリペアパッチ300を用いる場合、リペアパッチ300の作成が完了した時点での接着層304について、半硬化の状態等ではなく、硬化が完了した状態になっていると考えることができる。そのため、この場合、造形物の補修時に更なる紫外線の照射を行うことなく、補修対象造形物へのリペアパッチ300の貼り付けを完了することが考えられる。このように構成した場合も、例えば、補修対象造形物に対してリペアパッチ300を適切に貼り付けることができる。造形装置12の構成の更なる変形例では、通常の造形物の造形時には造形材料として用いない接着材料として、例えば、紫外線硬化型ではない接着材料を用いること等も考えられる。
【0067】
続いて、上記において説明をした各構成に関する補足説明を行う。また、以下においては、説明の便宜上、様々な変形例を含めて、本例の構成という。上記においても説明をしたように、本例においては、破損した造形物の少なくとも一部を補修対象の造形物として用いて、造形物の補修を行う。この場合、造形装置12を用いて作成したリペアパッチ300を造形物における補修位置の少なくとも一部へ貼り付けることで、例えば、補修後における造形物の強度を適切に高めることができる。また、少なくとも着色層302及び接着層304を備えるリペアパッチ300を用いることで、例えば、造形装置12により、適切に着色がされ、かつ、造形物に対して接着可能なリペアパッチ300を容易かつ適切に作成することができる。更に、リペアパッチ300の着色層302について、補修対象の造形物においてリペアパッチ300によって覆われる部分の色に合わせて着色して形成することで、例えば、補修後の造形物においてリペアパッチ300が過度に目立つことを適切に防止することができる。
【0068】
この点に関し、造形物を造形可能な造形装置12を用いてリペアパッチ300の作成を行うのであれば、リペアパッチ300を用いて補修を行うのではなく、例えば、破損した造形物と同じ形状及び色の新たな造形物を作成すればよいようにも思われる。しかし、造形物の用途等によっては、新たな造形物を作成するよりも、補修を行う方が好ましい場合もある。より具体的に、例えば、新たな造形物を造形する場合、造形の材料として用いるインクが多くなることで、多くの費用がかかることが考えられる。また、造形装置12で造形を行った後に追加の加工等を行っていた造形物が破損した場合、造形装置12での造形を行うのみでは、破損した造形物と同じ造形物を造形できない場合もある。これに対し、本例によれば、リペアパッチ300を用いることで、造形物の補修を低コストで適切に行うことができる。また、この場合、本例において行う造形物の補修については、例えば、コストをかけずに行う簡易な補修を行う場合に特に適した方法等と考えることができる。
【0069】
また、上記においても説明をしたように、本例においては、積層造形法で造形物の造形を実行可能な造形装置12を用いて、リペアパッチ300を作成する。この場合、例えば、補修対象の造形物を造形した造形装置12(同一機体の造形装置)を用いて、リペアパッチ300を作成することが考えられる。また、リペアパッチ300の作成に用いる造形装置12は、補修対象の造形物を造形した機体と異なる造形装置12であってもよい。この場合、例えば、造形物を造形した機体と同じ機種の造形装置12や、互換機種の造形装置12を用いることが好ましい。このように構成すれば、例えば、補修対象の造形物と同様に着色がされたリペアパッチ300をより適切に作成することができる。また、この場合、例えば、積層造形法で積層するそれぞれのインクの層の厚さについて、造形物の造形時とリペアパッチ300の作成時とで同じにすることが好ましい。このように構成すれば、例えば、造形物に合わせた着色がされたリペアパッチ300をより適切に作成することができる。また、補修に対して求められる品質等によっては、造形物を造形した造形装置と同じ機種や互換機種ではない造形装置12を用いて、リペアパッチ300を作成してもよい。このような場合も、造形物の表面に合わせた着色がされたリペアパッチ300を用いることで、造形物の補修を適切に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、例えば造形物の補修方法に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0071】
10・・・造形システム、102・・・ヘッド部、104・・・造形台、106・・・走査駆動部、110・・・制御部、12・・・造形装置、14・・・制御PC、152・・・光反射領域、154・・・着色領域、202・・・インクジェットヘッド、204・・・紫外線光源、206・・・平坦化ローラ、208・・・インクジェットヘッド、22・・・表示部、24・・・操作部、26・・・本体部、300・・・リペアパッチ、302・・・着色層、304・・・接着層、306・・・光反射層、50・・・造形物、52・・・サポート層、60・・・破損箇所
図1
図2
図3
図4
図5
図6