(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-29
(45)【発行日】2025-10-07
(54)【発明の名称】治療用細菌組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20250930BHJP
C12N 15/31 20060101ALI20250930BHJP
A61K 35/74 20150101ALI20250930BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20250930BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250930BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250930BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20250930BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20250930BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20250930BHJP
【FI】
C12N1/20 E ZNA
C12N15/31
A61K35/74 A
A61K39/395 N
A61P43/00 121
A61P35/00
A61P37/04
C12N15/113 Z
C07K16/28
(21)【出願番号】P 2022570701
(86)(22)【出願日】2021-05-19
(86)【国際出願番号】 GB2021051206
(87)【国際公開番号】W WO2021234380
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2024-04-12
(32)【優先日】2020-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】522059955
【氏名又は名称】マイクロバイオティカ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・ロビンソン
(72)【発明者】
【氏名】トレヴァー・ローリー
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ロマノス
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン・ヴェルヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】サイモン・ハリス
(72)【発明者】
【氏名】ガイス・バクダーシュ
(72)【発明者】
【氏名】エイミー・ポップル
(72)【発明者】
【氏名】ドミニカ・クリスコ
【審査官】鳥居 敬司
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-500151(JP,A)
【文献】特表2020-512294(JP,A)
【文献】国際公開第2019/191390(WO,A2)
【文献】特表2019-517828(JP,A)
【文献】国際公開第2010/082665(WO,A1)
【文献】GONG, J et al.,The gut microbiome and response to immune checkpoint inhibitors: preclinical and clinical strategies,Clinical and Translational Medicine,2019年,Vol. 8, Article 9,pp. 1-14
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-1/38
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの種から選択される単離された細菌を含む組成物であって、第1の種由来の細菌は配列番号1に記載の核酸配列と少なくとも98.7%配列同一性を有する16S rDNA配列を含み、第2の種由来の細菌は配列番号2に記載の核酸配列と少なくとも98.7%配列同一性を有する16S rDNA配列を含む、組成物。
【請求項2】
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12又は13の異なる種由来の単離された細菌を更に含み、細菌は配列番号3~15に記載の核酸配列と少なくとも98.7%配列同一性を有する配列から選択される16S rDNA配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも4つの異なる種由来の単離された細菌を更に含み、細菌は配列番号3~15に記載の核酸配列と少なくとも98.7%配列同一性を有する配列から選択される16S rDNA配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも7つの異なる種由来の単離された細菌を更に含み、細菌は配列番号3~15に記載の核酸配列と少なくとも98.7%配列同一性を有する配列から選択される16S rDNA配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
配列番号7に記載の核酸配列と少なくとも98.7%配列同一性を有する配列から選択される16S rDNA配列を含む細菌単離物を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
経口投与又は直腸投与用に製剤化され
ている、請求項1~
5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
カプセル、錠剤、ゲル又は液体の形態である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
腸溶コーティング中にカプセル化されている、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
生菌、弱毒化菌又は死菌を含む、請求項1~
8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
細菌芽胞を含む、請求項1~
9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
細菌芽胞を含まない、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
1又は複数のヒトドナーに由来する細菌株を含む、請求項1~
11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
細菌が凍結乾燥されている、請求項1~
12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
少なくと
も1×10
3~1×10
13CFUの細菌を含む、請求項1~
13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
組成物の投与が、対象において免疫応答を誘導し、且つ/又は免疫チェックポイント阻害剤を含む抗がん療法の有効性を増加する、請求項1~
14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
請求項1~
15のいずれか一項に記載の組成物と薬学的担体とを含
む、医薬組成物。
【請求項17】
有効量の免疫チェックポイント阻害剤又はワクチンを更に含む、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
免疫チェックポイント阻害剤が、PD-1、PDL-1、CTLA-4、LAG3又はTIM-3の活性を阻害する、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
免疫チェックポイント阻害剤が、抗PD-1抗体、抗PDL-1抗体若しくは抗CTLA-4抗体又はそれらのフラグメントである、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
抗PD-1抗体、抗PDL-1抗体又は抗CTLA-4抗体が、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、セミプリマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、スパルタリズマブ、カムレリズマブ、シンチリマブ、チスレリズマブ、ピジリズマブ、トリパリマブ、イピリムマブ又はトレメリムマブから選択される、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
免疫チェックポイント阻害剤が
、干渉核酸分子、小分子若しくはタンパク質分解誘導キメラ分子(PROTAC)、代替的タンパク質スキャホールド又は他の免疫チェックポイント阻害剤で
ある、請求項
17に記載の医薬組成物。
【請求項22】
干渉核酸分子が、siRNA分子、shRNA分子又はアンチセンスRNA分子である、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
疾患の処置における使用のための、請求項1~
15のいずれか一項に記載の組成物又は請求項
16~22のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項24】
必要とする対象において、がん若しくは感染性疾患の処置における使用のため又はワクチンアジュバントとしての使用のため又はがん処置の有効性を増加するための、請求項1~
15のいずれか一項に記載の組成物又は請求項
16~23のいずれか一項に記載の医薬組成
物。
【請求項25】
がんが、黒色腫、ハーディング-パッセー黒色腫、若年性黒色腫、悪性黒子型黒色腫、悪性黒色腫、末端黒子型黒色腫、無色素性黒色腫、良性若年性黒色腫、クラウドマン黒色腫、S91黒色腫、結節型黒色腫、爪下黒色腫、皮膚黒色腫、ぶどう膜/眼内黒色腫及び表在拡大型黒色腫又は骨がん、膵臓がん、皮膚がん、頭頸部がん、皮膚悪性黒色腫若しくは眼内悪性黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門領域のがん、胃がん、精巣がん、乳がん、脳がん、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸部癌、膣癌、外陰癌、食道がん、小腸がん、内分泌系のがん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、腎臓がん、軟部組織肉腫、尿道がん、膀胱がん、直腸がん、肺がん、非小細胞肺がん、胸腺腫、尿路上皮癌、白血病、前立腺がん、中皮腫、副腎皮質癌、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、胃がん、及び多発性骨髄腫から選択される、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記対象が、免疫チェックポイント阻害剤を用いた療法を受けているところであるか、既に受けたか又は受ける予定であり、それによりがん又は感染性疾患を処置する、請求項
24又は25に記載の組成物。
【請求項27】
組成物の投与が、対象による免疫応答を増強し、且つ/又はがんによる免疫回避を阻害し、且つ/又は免疫チェックポイント阻害剤を用いた抗がん処置の有効性を増加する、請求項
24~26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
組成物が経口投与又は直腸投与により投与される、請求項
24~
27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
前記対象が免疫チェックポイント阻害剤を用いた事前の抗がん療法を既に受けている、請求項
24~
28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
治療が、免疫チェックポイント阻害剤を用いた抗がん療法を投与する工程を更に含
む、請求項
24~
28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
免疫チェックポイント阻害剤が細菌製剤の前、後又はそれと同時に投与される、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
免疫チェックポイント阻害剤が注射により投与さ
れる、請求項
30又は31に記載の組成物。
【請求項33】
注射が静脈内注射、筋肉内注射、腫瘍内注射又は皮下注射である、請求項30~32のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
免疫チェックポイント阻害剤がPD-1、PDL-1又はCTLA-4の活性を阻害
する、請求項
30又は
31に記載の組成物。
【請求項35】
免疫チェックポイント阻害剤が、抗PD-1抗体、抗PDL-1抗体又は抗CTLA-4抗体である、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
抗PD-1抗体、抗PDL-1抗体又は抗CTLA-4抗体が、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、セミプリマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、スパルタリズマブ、カムレリズマブ、シンチリマブ、チスレリズマブ、ピジリズマブ、トリパリマブ、イピリムマブ又はトレメリムマブから選択される、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
免疫チェックポイント阻害剤が
、干渉核酸分子、小分子若しくはタンパク質分解誘導キメラ分子(PROTAC)
、ペプチド阻害剤又は他の免疫チェックポイント阻害剤で
ある、請求項
30~
34のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項38】
干渉核酸分子が、siRNA分子、shRNA分子又はアンチセンスRNA分子である、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
治療が、外科的、放射線、及び/若しくは化学療法的がん介入又は第2の抗がん治療薬の投与を更に含む、請求項
24~
38のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項40】
治療が、対象に抗生物質を投与する工程を更に含む、請求項
24~
39のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項41】
対象ががんを発症するリスクがあると同定されている、請求項
24~
40のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項42】
請求項1~
16のいずれか一項に記載の組成物を
含む、キット。
【請求項43】
免疫チェックポイント阻害剤を含む抗がん処置を含む、請求項42に記載の組成物含有キット。
【請求項44】
請求項1~
16のいずれか一項に記載の組成物を含む、食品又はワクチンアジュバント。
【請求項45】
対象への投与前に糞便移植物を処理するための方法であって、糞便移植物を
、少なくとも2つの種から選択される単離された細菌で補う工程を含み、第1の種由来の細菌は配列番号1に記載の核酸配列と少なくとも98.7%配列同一性を有する16S rDNA配列を含み、第2の種由来の細菌は配列番号2に記載の核酸配列と少なくとも98.7%配列同一性を有する16S rDNA配列を含む、方法。
【請求項46】
免疫チェックポイント阻害剤を用いた抗がん処置の有効性を増加するための、請求項1~
15のいずれか一項に記載の組成物又は請求
項16に記載の医薬組成物。
【請求項47】
免疫チェックポイント遮断を増強するための、請求項1~
15のいずれか一項に記載の組成物又は請求
項16に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫チェックポイント阻害剤を用いた処置に応答する対象における腸マイクロバイオームが、免疫チェックポイント阻害剤を用いた処置に応答しない対象における腸マイクロバイオームとは異なっており、このことから、腸マイクロバイオームを、免疫チェックポイント阻害剤処置のための診断剤又は療法の供給源のいずれかとして使用することができるという知見に基づくものであり、具体的には、少なくとも2つの種から選択される単離された細菌を含む組成物であって、第1の種由来の細菌は配列番号1に記載の核酸配列と少なくとも98.7%配列同一性を有する16S rDNA配列を含み、第2の種由来の細菌は配列番号2に記載の核酸配列と少なくとも98.7%配列同一性を有する16S rDNA配列を含む、組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
序論
免疫抑制及び悪性がん細胞による回避は、がんの特徴の一つとして公知である。免疫チェックポイントとして公知である多数の共抑制受容体及びそれらのリガンドが、このプロセスの一因である。免疫チェックポイント阻害剤がん免疫療法は、それらが長期の寛解をもたらすことができるという点及びそれらが多くのがんに対して効果的でありうるという点で、がん管理において変革的であった。これらのチェックポイントには、プログラム細胞死1(PD-1)、PD-L1及びCTLA-4がある。臨床実務へのPD-1阻害剤の導入は、革命的な効果をがん処置に対して有したが、一貫した応答及び好ましい長期の結果は、わずかな患者においてのみ観察される。患者の大多数は療法に応答しない。最も高い割合は黒色腫についてである(40%に達する)が、それは他のがんについてははるかに低い。更に、大多数の患者は、免疫に関連する有害事象を発症し、療法を停止しなければならない。
【0003】
従って、(a)免疫チェックポイント阻害剤に対する応答を予測するためのバイオマーカー及び(b)療法に応答するがん患者の割合を増加するためのアプローチについての必要性が、存在する。
【0004】
PD-1(UniProt受託番号Q15116、GenBank受託番号U6486)タンパク質は、PDCD1遺伝子によりコードされ、55kDaのI型膜貫通タンパク質として発現される(Agata、1996年、Int Immunol、8(5):765~72)。PD-1は、免疫グロブリンスーパーファミリーメンバーであり(Ishida、1992年、EMBO、11(11):3887~95頁)、それはT細胞制御因子の拡張CD28/CTLA-4ファミリーの抑制性メンバーである。このファミリーの他のメンバーとしては、CD28、CTLA-4、ICOS及びBTLAが挙げられる。PD-1はモノマーとして存在し、他のCD28ファミリーメンバーの特徴である不対システイン残基を欠く(Zhang、2004年、Immunity、20:337~47頁)。その細胞質ドメインは、シグナル伝達の間にリン酸化される、免疫受容体チロシン依存性抑制モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based inhibitory motif)(ITIM)及び免疫受容体チロシン依存性スイッチモチーフ(immunoreceptor tyrosine-based switch motif)(ITSM)を含む(Riley、2009年、Immunol Rev、229(1):114~25頁)。
【0005】
PD-1は、B細胞、T細胞、及び単球において発現される(Agata、1996)。免疫原性自己寛容を維持することにおけるPD-1の役割が、自己免疫障害を発症するPDCD1-/-マウスにおいて実証された(Nishimura、1999年、Immunity、11:141~51頁、Nishimura、2001年、Science、291(5502):319~22頁)。従って、PD-1経路は抗原応答を制御し、自己免疫と寛容との間で平衡を保つ。
【0006】
PD-1について、その制御機能を媒介する2つのリガンドが存在する。PD-L1(B7-H1)は、樹状細胞、マクロファージ、休止B細胞、骨髄由来肥満細胞及びT細胞並びに非造血細胞系列において通常は発現される(Francisco、2010年、Immunol Rev、236:219~42頁において概説される)。PD-L2(B7-DC)は、樹状細胞及びマクロファージにおいて主に発現される(Tseng、2001年、J Exp Med、193(7):839~45頁)。リガンド発現は局所媒介因子によって影響され、リガンド発現は炎症性サイトカインにより上方制御されうる。
【0007】
PD-1は、TCRシグナルを負に制御する免疫抑制タンパク質として公知である。PD-1とPD-L1との間の相互作用は、免疫チェックポイントとして作用することができ、これは、例えば、腫瘍浸潤リンパ球の減少、T細胞受容体媒介性増殖の減少及び/又はがん性細胞による免疫回避をもたらすことができる。免疫抑制は、PD-1とPD-L1又はPD-L2との局所的相互作用を阻害することによって逆転されうる。その効果は、PD-1と、PD-L1及びPD-L2の両方との相互作用が遮断された場合に、相加的である。
【0008】
腫瘍又はウイルスが効果的な免疫認識を回避することができT細胞が「疲弊した」表現型を示すPD-1経路が、がん又は感染において利用されうる。
【0009】
PD-1:PD-L1相互作用の破壊は、T細胞活性を増強する。阻害性抗PD-1モノクローナル抗体は、PD-1とそのリガンドとの間の相互作用の遮断を示す(Wang、2014年、Cancer Immunol Res、2(9):846~56頁)。インビトロでのT細胞機能は、T細胞及び樹状細胞の混合リンパ球反応における改善された増殖及びサイトカイン応答により実証されるように、PD-1遮断により増強されうる。黒色腫患者由来の細胞傷害性Tリンパ球(CTL)もまた、抗体ニボルマブを使用して、インビトロでPD-1遮断により増強されることが示されており、制御性T細胞による抑制に対して耐性になることができる(Wang、2009年、Int Immunol、21(9):1065~1077頁)。この抗体は、黒色腫及び非小細胞肺癌(NSCLC)患者において有効であることが示されている。別のPD-1遮断抗体であるペムブロリズマブは、CTLA-4遮断に対して不応性であるNSCLC患者において応答を示す。ニボルマブ及びペムブロリズマブは両方とも、ヒトPD-1とそのリガンドとの相互作用を機能的に遮断する。
【0010】
がん患者の腸マイクロバイオームは、免疫チェックポイント療法に対する応答の主要なドライバーである。
【0011】
以前の研究は、臨床データベースを分析して、処置の有効性と関連する腸微生物叢を同定した(Frankel、Neoplasia(2017)19:848;Gopalakrishnan、Science(2018)359:97;Matson、Science(2018)359:104;Routy、Science(2018)359:91)。しかし、当該分野における主要な難問は、独立した研究において同定されたマイクロバイオームシグネチャーが非常に異なることであった。公開された研究は、応答基準及びがん指標が異なり、マイクロバイオーム分析に影響を与えることが公知である要因、例えばサンプルの収集、貯蔵及び処理並びに地理的位置もまた、異なる。従って、研究間のノイズの中でどれが真のシグネチャーであるのかを理解することが、困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】国際公開第2013/171515号
【文献】国際公開第2017/182796号
【文献】米国特許第9850225号
【非特許文献】
【0013】
【文献】Agata、1996年、Int Immunol、8(5):765~72頁
【文献】Ishida、1992年、EMBO、11(11):3887~95頁
【文献】Zhang、2004年、Immunity、20:337~47頁
【文献】Riley、2009年、Immunol Rev、229(1):114~25頁
【文献】Nishimura、1999年、Immunity、11:141~51頁
【文献】Nishimura、2001年、Science、291(5502):319~22頁
【文献】Francisco、2010年、Immunol Rev、236:219~42頁
【文献】Tseng、2001年、J Exp Med、193(7):839~45頁
【文献】Wang、2014年、Cancer Immunol Res、2(9):846~56頁
【文献】Wang、2009年、Int Immunol、21(9):1065~1077頁
【文献】Frankel、Neoplasia(2017)19:848
【文献】Gopalakrishnan、Science(2018)359:97
【文献】Matson、Science(2018)359:104
【文献】Routy、Science(2018)359:91
【文献】Green及びSambrook等、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」、第4版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(2012)
【文献】Yu S等、「Nanobodies targeting immune checkpoint molecules for tumor immunotherapy and immunoimaging」、Int J Mol Med.、2021;47(2):444~454頁
【文献】Chang H.N等、「Blocking of the PD-1/PD-L1 Interaction by a D-Peptide Antagonist for Cancer Immunotherapy.」、Angew. Chem. Int. Ed.、2015;54:11760~11764頁
【文献】Magiera-Mularz K.等、「Bioactive Macrocyclic Inhibitors of the PD-1/PD-L1 Immune Checkpoint.」、Angew. Chem. Int. Ed.、2017;56:13732~13735頁
【文献】Li C.、Zhang N等、「Peptide Blocking of PD-1/PD-L1 Interaction for Cancer Immunotherapy.」、Cancer Immunol. Res.、2018;6:178~188頁
【文献】Naran等、Front Microbiol.、2018;9:3158頁
【文献】Quin等、Front Immunol.、2019;10:2298頁
【文献】Rao等、Int. J. Infect. Dis.、2017;56:223頁
【文献】Koropatkin等、Nature Reviews Microbiology、第10巻、323~335頁(2012)
【文献】Li等、Cell Report、第30巻、第6号、P1753-1766.e6、2020年2月11日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、がんの有効な処置及び処置に対する応答を予測するバイオマーカーを提供する必要性が存在し、本発明はこの必要性に取り組むことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の概要
本発明は、免疫チェックポイント阻害剤を用いた処置に応答する対象における腸マイクロバイオームが、免疫チェックポイント阻害剤を用いた処置に応答しない対象における腸マイクロバイオームとは異なっており、このことから、腸マイクロバイオームを、免疫チェックポイント阻害剤処置のための診断剤又は療法の供給源のいずれかとして使用することができるという、知見に基づく。
【0016】
従って、本発明は、以下:
- 免疫チェックポイント阻害剤を用いた処置に応答する患者において同定されており、がんの処置、感染性疾患の処置を含む疾患の処置として使用されうるか又はワクチンアジュバントとして使用されうる、本明細書において規定される特定の細菌を含む組成物;
- 本明細書において規定される特定の細菌を有する組成物と、免疫チェックポイント阻害剤処置とを含む、併用療法;及び
- 免疫チェックポイント阻害剤処置から利益を受ける患者を同定するため、及び細菌療法又は他の療法を、例えばチェックポイント阻害剤療法の投与前に、受けうる患者もまた同定するための、免疫チェックポイント阻害剤処置のための診断剤としての本明細書において規定される特定の細菌の提供;
が挙げられるがこれらに限定はされない、多数の態様を目的とする。
【0017】
本発明のこれらの態様及び他の関連する態様並びに実施形態が、本明細書において更に記載される。
【0018】
本発明者等は、免疫チェックポイント阻害剤を用いた処置に対する応答に関連してその応答を高度に予測する、マイクロバイオームバイオマーカーシグネチャーを同定した。これは、当該分野において非常に意義があり、以下についての基礎を提供する:チェックポイント阻害剤療法のための予測バイオマーカー;生菌治療薬(live bacterial therapeutic)(LBT) 療法;チェックポイント阻害剤に応答する患者の割合を増加するために免疫チェックポイント阻害剤(例えば、がんの処置のための抗PD-1薬物、抗PD-L1薬物又は抗CTLA-4薬物)を用いる、生菌治療薬併用療法。特に、本発明者等は、免疫チェックポイント阻害剤を用いた処置に対する応答の指標である調節された存在量を示す、腸マイクロバイオームに存在する多数の細菌種を同定した。従って、これらの細菌の調節された存在量を検出することは、チェックポイント阻害剤療法に対する応答者を不応答者から識別するために使用することができる。更に、薬としてのそのような生菌の投与は、チェックポイント阻害剤に応答しない患者を応答者へと変換すると予測される。
【0019】
本明細書において同定され記載される細菌は、応答を決定するため及び/若しくは処置を提供するために個別に使用されうるか、又はそれらの細菌の組合せが、診断方法の識別力を増加し、不応答と対比する応答についての非侵襲的診断方法及び処置方法を提供するために、提供されうる。
【0020】
本発明者等は、チェックポイント阻害剤応答に関連する特定の腸細菌を同定した。従って、本発明は、患者、例えばがん患者におけるマイクロバイオームを調節して免疫チェックポイント阻害剤に対する治療的応答を改善するために使用することができる、腸細菌を提供する。本開示における研究は、抗PD-1薬物を用いた療法又は抗PD-1に加えて抗CTLA-4薬物を用いた併用療法を受けている、黒色腫患者のコホートを使用した。免疫チェックポイント療法前に採取した腸マイクロバイオームサンプルを、これらの患者において、メタゲノム全ゲノムショットガン配列決定を介して特徴付けた。免疫チェックポイント遮断療法に対する(例えば、PD-1ベースの療法に対する)応答者における腸マイクロバイオームの組成物において、不応答者と対比して顕著な差が観察され、応答者の腸マイクロバイオームにおいて、処置前の不応答者と対比して特定の細菌の存在量の増加又は減少を伴った。特に、本明細書において記載される細菌は、応答者において存在量がより多いことが見出された。従って、これらの細菌及びそれらのサブセットには、がんを含む疾患の処置のために単独又は免疫チェックポイント阻害剤処置と組み合わせてのいずれかで使用することができる組成物における用途が見出される。更に、これらの細菌は、バイオマーカーとして、すなわちチェックポイント阻害剤、例えばPD-1阻害剤療法に対する応答者を、免疫チェックポイント阻害剤処置についての不応答者から識別するための診断剤として、使用することができる。
【0021】
本研究は、「好ましい」腸マイクロバイオームを有する(調節された、例えば高い相対的な存在量の本明細書において記載される1又は複数の細菌を有する)患者が、抗腫瘍免疫応答を増強したことを示す。対照的に、「好ましくない」腸マイクロバイオーム(低い相対的存在量の本明細書に記載されるB1~B15種を含む)を有する患者は、抗腫瘍免疫応答を減じた。これらの知見は、腸マイクロバイオームの並行調節がチェックポイント遮断処置の有効性を顕著に増強する可能性を強調する。これらの知見に基づいて、疾患管理(例えば、がんの処置及び診断)の方法が、本明細書において提供される。本明細書において記載される組成物を、免疫チェックポイント遮断に対して好ましい応答を有する患者を同定するための予測バイオマーカー組成物として使用するための方法もまた、本明細書において提供される。更に、本明細書において記載される組成物は、免疫賦活特性を有する。従って、疾患の処置は、がんには限定されないが、組成物は、他の疾患、例えば免疫賦活処置から利益を受ける疾患の処置、例えば非がん免疫療法を提供する。
【0022】
第1の態様では、本発明は従って、Table 1(表1)から選択される1又は複数の細菌種に属する1又は複数の細菌単離物、特に細菌集団を含む、組成物に関する。従って、本発明は、Table 1(表1)から選択される1又は複数の細菌から選択される細菌を含む組成物に関する。詳細には、本発明は従って、配列番号1~15から選択される16S rDNAを有する1又は複数の細菌単離物を含む組成物に関する。
【0023】
組成物は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15の単離された細菌を含むことができるか又はこれらからなることができる。これらは、種々の種から選択される種々の細菌、つまり、配列番号1~29から選択される16S rDNA、又は配列番号1~29から選択される(例えば配列番号1~15から選択される)核酸配列と少なくとも95%、97%、98%、98.7%、99%若しくは100%配列同一性を有する配列、又は配列番号1~15から選択される核酸配列と少なくとも95%、97%、98%、98.7%若しくは99%配列同一性を有する配列を有する、細菌である。
【0024】
一実施形態では、組成物は従って、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15の細菌種から選択される単離された細菌を含むか又はそれらからなり、細菌は、配列番号1~29(例えば1~15)から選択される16S rDNA配列を含むか、又は配列番号1~15から選択される核酸配列と少なくとも95%、97%、98%、98.7%、99%若しくは100%配列同一性を有する配列を含む。
【0025】
一実施形態では、組成物は、少なくとも2つの種から選択される単離された細菌を含むか又はそれらからなり、第1の種由来の細菌は配列番号1に記載の核酸配列と少なくとも95%、97%、98%、98.7%、99%又は100%配列同一性を有する16S rDNA配列を含み、第2の種由来の細菌は配列番号2に記載の核酸配列と少なくとも95%、97%、98%、98.7%、99%又は100%配列同一性を有する16S rDNA配列を含む。
【0026】
一実施形態では、組成物は、少なくとも9つの種から選択される単離された細菌を含むか又はそれらからなり、細菌は、配列番号1~29(例えば1~15)から選択される16S rDNA配列を含むか、又は配列番号1~29(例えば1~15)から選択される配列と少なくとも95%、97%、98%、98.7%、99%若しくは100%配列同一性を有する配列を含む。一実施形態では、9つの種は、配列番号1に記載の16S rDNA配列を含むか又は配列番号1に記載の16S rDNA配列に対して少なくとも95%、97%、98%、98.7%、99%若しくは100%配列同一性を有する配列を含む細菌、及び配列番号2に記載の16S rDNA配列を含むか又は配列番号2に記載の16S rDNA配列に対して少なくとも95%、97%、98%、98.7%、99%若しくは100%配列同一性を有する配列を含む細菌を含む。
【0027】
別の態様では、本発明は、本明細書において記載される医薬組成物、薬学的担体及び任意選択で免疫チェックポイント阻害剤に関する。
【0028】
別の態様では、本発明は、疾患(例えば特定のがん又は感染性疾患)の処置における使用のための本明細書において記載される組成物に関する。組成物はまた、ワクチンアジュバントとして使用されうる。これは、ワクチン応答を増強するために使用され、投与は、ワクチンと一緒でありうる。
【0029】
別の態様では、本発明は、免疫チェックポイント阻害剤を用いた抗がん処置の有効性を増加することにおける本明細書において記載される組成物に関する。
【0030】
別の態様では、本発明は、対象においてTable 1(表1)の細菌から選択される1又は複数の細菌のレベル/存在量を調節する工程を含む、がんを処置するための方法に関する。
【0031】
別の態様では、本発明は、本明細書において記載される組成物を含み、免疫チェックポイント阻害剤を含む抗がん処置を任意選択で含む、キットに関する。
【0032】
別の態様では、本発明は、免疫チェックポイント阻害剤を用いた療法に応答する対象を同定するための方法に関し、この方法は、Table 1(表1)の細菌から選択される1又は複数の細菌の存在量を、前記対象由来の腸内フローラを含む生物サンプルにおいて決定する工程を含み、Table 1(表1)の細菌から選択される1又は複数の細菌の存在量の増加は、対象が、免疫チェックポイント阻害剤を用いた療法に応答することを示す。
【0033】
別の態様では、本発明は、免疫チェックポイント阻害剤を用いた療法に応答する患者を同定することにおける、Table 1(表1)の細菌から選択される1又は複数の細菌から選択される細菌の使用に関する。
【0034】
別の態様では、本発明は、
生物サンプルを受容するように構成された密封可能な容器と;
少なくとも1種の腸関連細菌から増幅された16S rDNAポリヌクレオチド配列を形成するように16S rDNAポリヌクレオチド配列を増幅するためのポリヌクレオチドプライマーであって、増幅された16S rDNA配列は配列番号1~配列番号29(例えば1~15)から選択されるポリヌクレオチド配列に対して少なくとも95%、97%、98%、98.7%、99%又は100%配列同一性を有する、ポリヌクレオチドプライマーと;
増幅された16S rDNA配列を検出するための検出試薬と;使用説明書と
を含む、キットに関する。
【0035】
別の態様では、本発明は、本明細書において記載される組成物を含む、食品又はワクチン応答をブーストするためのワクチン併用療法に関する。
【0036】
別の態様では、本発明は、糞便ドナーを、例えば、がんの処置のために、同定するための方法に関し、この方法は、対象の糞便サンプルをTable 1(表1)から選択される1又は複数の細菌の存在について評価する工程、並びに糞便ドナーをTable 1(表1)から選択される1又は複数の細菌の存在及び/又は存在量に基づいて同定する工程を含む。
【0037】
別の態様では、本発明は、FMT療法のためのドナーを、例えば、がんの処置のために、同定するための方法における、Table 1(表1)から選択される1又は複数の細菌の使用に関する。
【0038】
別の態様では、本発明は、対象への投与前に糞便移植物を処理するための方法に関し、この方法は、糞便移植物をTable 1(表1)から選択される1又は複数の単離された細菌で補う工程を含む。
【0039】
別の態様では、本発明は、糞便ドナーをスクリーニング/同定するための方法に関し、この方法は、対象の糞便サンプルをがんに対する応答に関連する1又は複数の細菌の存在について評価する工程;並びに糞便ドナーを1又は複数の細菌の存在及び/又は存在量に基づいて同定する工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】A)4回の黒色腫研究の全147人の患者を、臨床成績に従って応答者と非応答者に分割した。規定のシグネチャーの細菌の存在量を使用した機械学習予測に基づいて、免疫療法に応答しない蓋然性をベースライン糞便サンプルから予測した。0.5というカットオフを用いて、予測の精度を決定した。精度は91.16%であった。x軸は群である。B)各研究を別々に考慮した以外はAと同様。frankel精度84.62%、gajewski精度89.74%、melresist精度93.18%、wargo精度100%。x軸は群である。C)同じマイクロバイオームシグネチャーに基づく機械学習予測に基づく真陽性率の関数として偽陽性率を示す結合黒色腫データセットの受信者動作特性(ROC)曲線。AUC=0.98。x軸は1-特異度であり、y軸は感度である。D)各研究を別々に考慮した以外はCと同様。楽観的すぎる実行を防止し、一般化可能性を改善するために、ランダムフォレストアウトオブバッグエラーを用いた。AUC frankel 0.958、AUC gajewski 0.978、AUC melresist 0.983、AUC wargo 1。x軸は1-特異度であり、y軸は感度である。
【
図2】A)4回の黒色腫研究の全147人の患者を、臨床成績に従って応答者と非応答者に分割した。コンソーシアム1中の15種の細菌の存在量を用いた機械学習予測に基づいて、免疫療法に応答しない蓋然性をベースライン糞便サンプルから予測した。0.5というカットオフを用いて、予測の精度を決定した。精度は77.55%であった。B)各研究を別々に考慮した以外はAと同様。frankel精度79.49%、gajewski精度66.67%、melresist精度81.82%、wargo精度84%。C)コンソーシアム1に基づく機械学習予測に基づく真陽性率の関数として偽陽性率を示す結合黒色腫データセットの受信者動作特性(ROC)曲線。AUC=0.8。D)各研究を別々に考慮した以外はCと同様。楽観的すぎる実行を防止し、一般化可能性を改善するために、ランダムフォレストアウトオブバッグエラーを用いた。AUC frankel 0.867、AUC gajewski 0.725、AUC melresist 0.879、AUC wargo 0.773。
【
図3】A)4回の黒色腫研究の全147人の患者を、臨床成績に従って応答者と非応答者に分割した。コンソーシアム2中の9種の細菌の存在量を用いた機械学習予測に基づいて、免疫療法に応答しない蓋然性をベースライン糞便サンプルから予測した。0.5というカットオフを用いて、予測の精度を決定した。精度は74.15%であった。B)各研究を別々に考慮した以外はAと同様。frankel精度76.92%、gajewski精度69.23%、melresist精度75%、wargo精度76%。C)コンソーシアム2に基づく機械学習予測に基づく真陽性率の関数として偽陽性率を示す結合黒色腫データセットの受信者動作特性(ROC)曲線。AUC=0.75。D)各研究を別々に考慮した以外はCと同様。楽観的すぎる実行を防止し、一般化可能性を改善するために、ランダムフォレストアウトオブバッグエラーを用いた。AUC frankel 0.831、AUC gajewski 0.676、AUC melresist 0.788、AUC wargo 0.734。
【
図4】A)4回の黒色腫研究の全147人の患者を、臨床成績に従って応答者と非応答者に分割した。コンソーシアム3中の12種の細菌の存在量を用いた機械学習予測に基づいて、免疫療法に応答しない蓋然性をベースライン糞便サンプルから予測した。0.5というカットオフを用いて、予測の精度を決定した。精度は74.15%であった。B)各研究を別々に考慮した以外はAと同様。frankel精度76.92%、gajewski精度66.67%、melresist精度81.82%、wargo精度68%。C)コンソーシアム3に基づく機械学習予測に基づく真陽性率の関数として偽陽性率を示す結合黒色腫データセットの受信者動作特性(ROC)曲線。AUC=0.773。D)各研究を別々に考慮した以外はCと同様。楽観的すぎる実行を防止し、一般化可能性を改善するために、ランダムフォレストアウトオブバッグエラーを用いた。AUC frankel 0.844、AUC gajewski 0.685、AUC melresist 0.862、AUC wargo 0.76。
【
図5】A)4回の黒色腫研究の全147人の患者を、臨床成績に従って応答者と非応答者に分割した。コンソーシアム4中の9種の細菌の存在量を用いた機械学習予測に基づいて、免疫療法に応答しない蓋然性をベースライン糞便サンプルから予測した。0.5というカットオフを用いて、予測の精度を決定した。精度は71.43%であった。B)各研究を別々に考慮した以外はAと同様。frankel精度76.92%、gajewski精度64.1%、melresist精度77.27%、wargo精度64%。C)コンソーシアム4に基づく機械学習予測に基づく真陽性率の関数として偽陽性率を示す結合黒色腫データセットの受信者動作特性(ROC)曲線。AUC=0.737。D)各研究を別々に考慮した以外はCと同様。楽観的すぎる実行を防止し、一般化可能性を改善するために、ランダムフォレストアウトオブバッグエラーを用いた。AUC frankel 0.781、AUC gajewski 0.667、AUC melresist 0.791、AUC wargo 0.708。
【
図6】A)4回の黒色腫研究の全147人の患者を、臨床成績に従って応答者と非応答者に分割した。コンソーシアム5中の9種の細菌の存在量を用いた機械学習予測に基づいて、免疫療法に応答しない蓋然性をベースライン糞便サンプルから予測した。0.5というカットオフを用いて、予測の精度を決定した。精度は68.71%であった。B)各研究を別々に考慮した以外はAと同様。frankel精度71.79%、gajewski精度58.97%、melresist精度70.45%、wargo精度76%。C)コンソーシアム3に基づく機械学習予測に基づく真陽性率の関数として偽陽性率を示す結合黒色腫データセットの受信者動作特性(ROC)曲線。AUC=0.69。D)各研究を別々に考慮した以外はCと同様。楽観的すぎる実行を防止し、一般化可能性を改善するために、ランダムフォレストアウトオブバッグエラーを用いた。AUC frankel 0.75、AUC gajewski 0.596、AUC melresist 0.766、AUC wargo 0.675。
【
図7】A)4回の黒色腫研究の全147人の患者を、臨床成績に従って応答者と非応答者に分割した。コンソーシアム6中の9種の細菌の存在量を用いた機械学習予測に基づいて、免疫療法に応答しない蓋然性をベースライン糞便サンプルから予測した。0.5というカットオフを用いて、予測の精度を決定した。精度は69.39%であった。B)各研究を別々に考慮した以外はAと同様。frankel精度69.23%、gajewski精度58.97%、melresist精度77.27%、wargo精度72%。C)コンソーシアム3に基づく機械学習予測に基づく真陽性率の関数として偽陽性率を示す結合黒色腫データセットの受信者動作特性(ROC)曲線。AUC=0.71。D)各研究を別々に考慮した以外はCと同様。楽観的すぎる実行を防止し、一般化可能性を改善するために、ランダムフォレストアウトオブバッグエラーを用いた。AUC frankel 0.767、AUC gajewski 0.577、AUC melresist 0.81、AUC wargo 0.708。
【
図8】コンソーシアム1に基づく機械学習予測に基づく、真陽性率の関数として偽陽性率を示すNSCLCコホートの受信者動作特性(ROC)曲線。NSCLCデータセットは、Routy及びZitvogelら(2018年、Science 359:91~97頁)から得られ、Microbiotica社の高精度プラットホームを用いて分類されたメタゲノム配列である。楽観的すぎる実行を防止し、一般化可能性を改善するために、ランダムフォレストアウトオブバッグエラーを用いた。AUC=0.744。
【
図9】単離細菌は、樹状細胞成熟及びサイトカイン産生を誘導する。嫌気条件でヒト単球由来樹状細胞と約10:1の感染効率(MOI)で共培養することによって、樹状細胞(DC)を活性化する単離細菌の能力を決定した。フローサイトメトリーで決定される成熟マーカーCD86(A)及びCD83(B)の発現レベルによって、樹状細胞のその後の成熟を決定した。異なるドナー及び実験にまたがって正規化するために、LPS対照と比較する平均蛍光強度(MFI)の変化倍率でデータを示す。コンソーシアム5(約10:1のMOI)で処置した後のCD86(C)及びCD83(D)のDC発現をフローサイトメトリーにより同様に決定した。コンソーシアム5で刺激した後のそれらのマーカーのMFIが白い棒で示されている。コンソーシアム6、7、8、及び9で処置した後のCD86(E)及びCD83(F)のDC発現をフローサイトメトリーにより決定した。それらのマーカーのMFIが白い棒で示されている。(G)単離細菌単独(約10:1のMOI)又はコンソーシアム5及び6(約10:1のMOI)で処置した後のDCによるIL-12及びIL-10産生をELISAで決定した。MOI10、N=5(5回の独立した実験における5人のドナー)。データは、IL-10に対するIL-12の比率で示されている。LPS(10ng/ml)、ポリI:C(20μg/ml)、及びネズミチフス菌(約10:1のMOI)は、DC活性化の強い誘導因子であり、すべてのアッセイの陽性対照として用いられている(灰色の棒)。刺激されていないか、又は未熟な(Imm)DCが比較のために示されている(灰色の棒)。結果は、5回(A、B)、2回(C、D、E、及びF)、並びに3回(G)の独立した実験の平均±SEMである。
【
図10】単離細菌で処置した樹状細胞は、細胞傷害性CD8+Tリンパ球(CTL)を活性化する。
図9にあるように単離細菌又は対照刺激と共培養した後に、ヒト単球由来DCを洗浄し、精製された同種CD8+ T細胞と6日間共培養した。細胞内染色及びフローサイトメトリーを用いて、グランザイムB(A)、IFN-γ(B)、及びパーフォリン(C)の発現を分析することによって、CTL活性化を決定した。異なるドナー及び実験にまたがって正規化するために、データは、LPS対照と比較した陽性細胞の百分率の変化倍率として示されている。LPS(10ng/ml)、ポリI:C(20μg/ml)、及びネズミチフス菌(約10:1のMOI)は、DC活性化の強い誘導因子であり、すべてのアッセイの陽性対照として用いられている(灰色の棒)。刺激されていないか、又は未熟な(Imm)DCが比較のために示されている(灰色の棒)。結果は、4回の独立した実験における7人のドナーの平均±SEMである。
【
図11】コンソーシアム6、7、8、及び9で処置した樹状細胞は、細胞傷害性CD8+Tリンパ球(CTL)を活性化する。
図9にあるようにコンソーシアム6、7、8、及び9又は対照刺激と共培養した後に、ヒト単球由来DCを洗浄し、精製された同種CD8+T細胞と6日間共培養した。細胞内染色及びフローサイトメトリーを用いて、グランザイムB(A)、IFN-γ(B)、及びパーフォリン(C)の発現を分析することによって、CTL活性化を決定した。データは、陽性細胞の百分率として示されている。LPS(10ng/ml)、ポリI:C(20μg/ml)、及びネズミチフス菌(約10:1のMOI)は、DC活性化の強い誘導因子であり、すべてのアッセイの陽性対照として用いられている(灰色の棒)。刺激されていないか、又は未熟な(Imm)DCが比較のために示されている(灰色の棒)。結果は、1回の代表実験の二連の平均±SEMである。
【
図12】コンソーシアム5で処置した樹状細胞は、細胞傷害性CD8+ Tリンパ球(CTL)を活性化する。
図11にあるようにコンソーシアム5又は対照刺激と共培養した後に、ヒト単球由来DCを洗浄し、精製された同種CD8+T細胞と6日間共培養した。細胞内染色及びフローサイトメトリーを用いて、グランザイムB(A)、IFN-γ(B)、及びパーフォリン(C)の発現を分析することによって、CTL活性化を決定した。データは、陽性細胞の百分率として示されている。LPS(10ng/ml)、ポリI:C(20μg/ml)、及びネズミチフス菌(約10:1のMOI)は、DC活性化の強い誘導因子であり、すべてのアッセイの陽性対照として用いられている(灰色の棒)。刺激されていないか、又は未熟な(Imm)DCが比較のために示されている(灰色の棒)。結果は、1回の代表実験の二連の平均±SEMである。
【
図13】単離細菌並びにコンソーシアム6、7、8、及び9は、誘導CTLに腫瘍殺滅能力を付与する。細菌/コンソーシアムで処置されたDCによってプライミングされたCD8+ T細胞(
図10及び11にあるように)を、それらがSKOV-3細胞を殺滅する能力について評価した。細胞溶解は、SKOV-3細胞の電気インピーダンスの減少を測定することによって決定される。データは、CD8+ T細胞との共培養の72時間後のSKOV-3細胞の細胞溶解の百分率で示されている。LPS(10ng/ml)、ポリI:C(20μg/ml)、及びネズミチフス菌(約10:1のMOI)は、DC活性化の強い誘導因子であり、すべてのアッセイの陽性対照として用いられている(灰色の棒)。刺激されていないか、又は未熟な(Imm)DCが比較のために示されている(灰色の棒)。結果は、3回の独立した実験の平均±SEMである。
【
図14】コンソーシアム5及びブラウティア属種は、誘導CTLに腫瘍殺滅能力を付与する。コンソーシアム5又はブラウティア属種で処置されたDCによってプライミングされたCD8+ T細胞(
図12にあるように)を、それらがSKOV-3細胞を殺滅する能力について評価した。細胞溶解は、SKOV-3細胞の電気インピーダンスの減少を測定することによって決定される。データは、CD8+ T細胞との共培養の72時間後のSKOV-3細胞の細胞溶解の百分率で示されている。LPS(10ng/ml)、ポリI:C(20μg/ml)、及びネズミチフス菌(約10:1のMOI)は、DC活性化の強い誘導因子であり、すべてのアッセイの陽性対照として用いられている(灰色の棒)。刺激されていないか、又は未熟な(Imm)DCが比較のために示されている(灰色の棒)。結果は、1回の代表実験の二連の平均±SEMである。
【
図15】単離細菌は、形質細胞様樹状細胞によるIFN-α産生を誘導する可変的な能力を有する。加熱死菌(約10:1のMOI)と共に終夜インキュベーションした後の形質細胞様樹状細胞(pDC)によるIFN-α産生をELISAで決定した。それぞれ陰性対照及び陽性対照として、10ng/mlのIL-3及び10μg/mlのCpG(灰色の棒)でも行った。結果は、2回の独立した実験における3人のドナーの平均±SEMである。
【
図16】マウスがんモデルにおけるインビボ有効性。腫瘍移植の前に、SPF C57BL/6N雌マウスに飲料水中の抗生物質(カナマイシン(0.4mg/ml)、コリスチン(850U/ml)、メトロニダゾール(0.215mg/ml)、バンコマイシン(0.045mg/ml)、ゲンタマイシン(0.035mg/ml)を7日間(-9日目から-2日目)投与した。続いて、-1日目の経口経管栄養で黒色腫患者(20mg)から得たヒトドナー糞便を用いてマウスを再構成した。5×10
5個のMCA-205マウス線維肉腫細胞を0日目に側腹部に皮下移植した。-1日目から3週間、週2回の経口経管栄養によってコンソーシアム5(n=8)及びコンソーシアム6(n=8)を投与し(全量約1×10
9CFU/用量)、溶媒対照で処置した動物と比較した。6日目から2週間に2回抗PD-1抗体(RMP1-14)を投与した(10mg/kg腹腔内投与)。プロットは、溶媒対照、抗PD1、及びコンソーシアム5(A)又はコンソーシアム6(B)に応答した、体積で測定した経時的な腫瘍成長を示す。データは腫瘍サイズの平均±SEMであり、少なくとも3回(A)及び2回(B)の実験のものである。
【
図17】A)4回の黒色腫研究の全147人の患者を、臨床成績に従って応答者と非応答者に分割した。コンソーシアム10中の9種の細菌の存在量を用いた機械学習予測に基づいて、免疫療法に応答しない蓋然性をベースライン糞便サンプルから予測した。0.5というカットオフを用いて、予測の精度を決定した。精度は75.51%であった。B)各研究を別々に考慮した以外はAと同様。frankel精度74.36%、gajewski精度71.79%、melresist精度77.27%、wargo精度。C)コンソーシアム3に基づく機械学習予測に基づく、真陽性率の関数として偽陽性率を示す結合黒色腫データセットの受信者動作特性(ROC)曲線。AUC=0.81。D)各研究を別々に考慮した以外はCと同様。楽観的すぎる実行を防止し、一般化可能性を改善するために、ランダムフォレストアウトオブバッグエラーを用いた。AUC frankel 0.85、AUC gajewski 0.725、AUC melresist 0.826、AUC wargo 0.805。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図において、Conはコンソーシアムを表す。コンソーシアムは表3に示されている。
【0042】
詳細な説明
ここで本発明が更に説明される。以下の文章において、本発明の種々の態様がより詳細に規定される。そのように規定される各態様は、反対に明示されない限り、他の任意の態様若しくは他の任意の複数の態様と組み合わされうる。特に、好ましい又は有利であると示されている任意の特徴が、好ましい又は有利であると示されている他の任意の特徴若しくは他の任意の複数の特徴と組み合わされうる。
【0043】
一般的に、本明細書において記載される微生物学、細胞培養及び組織培養、病理学、分子生物学、がん免疫学、遺伝学、並びにタンパク質化学及び核酸化学並びにハイブリダイゼーションに関して使用される命名法、並びに本明細書において記載される微生物学、細胞培養及び組織培養、病理学、分子生物学、がん免疫学、遺伝学、並びにタンパク質化学及び核酸化学並びにハイブリダイゼーションの技術は、当該分野において周知であり一般的に使用されるものである。本開示の方法及び技術は、そうではないと示されない限りは、当該分野において周知である従来の方法、並びに本明細書全体を通じて引用され議論されている種々の概括的参考文献及びより詳細な参考文献において記載されている従来の方法に従って、一般的に実施される。例えば、Green及びSambrook等、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」、第4版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(2012)を参照のこと。
【0044】
本明細書において記載される分析化学、微生物学、バイオインフォマティクス、並びに医薬品化学及び創薬化学に関して使用される命名法、並びに本明細書において記載される分析化学、微生物学、バイオインフォマティクス、並びに医薬品化学及び創薬化学の実験手順及び技術は、当該分野において周知であり一般的に使用されるものである。
【0045】
本発明は、本明細書において開示される1又は複数の種由来の1又は複数の細菌単離物(例えば規定された細菌単離物のコンソーシアム)を各々が含むか又は各々がそれらからなる、細菌組成物に関する。組成物は、免疫賦活特性を有し、従って疾患の処置において有用な治療用組成物である。一部の実施形態では、組成物は、Table 1(表1)において同定される1つよりも多い種から選択される細菌単離物の混合物である。
【0046】
組成物は、糞便微生物叢移植物(FMT)ではなく、糞便物質を含まないが、糞便物質を含まない規定された細菌単離物の混合物を含む。従って、規定された細菌混合物を含む調製物は、FMTよりも安全な処置であると一般的に認められる。本組成物の利点は、それが、完全に規定され特徴付けられた細菌のみを含み、ドナー糞便において存在しうる未定義の成分も不必要な成分も含まず、それにより、治療用組成物を標準化することが可能であり、組成物の安全性を増加するということである。
【0047】
FMTは、例えば大腸内視鏡検査を介して、レシピエントに直接投与される、ヒトドナー由来の糞便サンプルに依存し、糞便サンプルにおいて存在する細菌は、レシピエントへのFMTの投与前に単離されない。FMTは広範に使用されているが、FMTに関連していくつかの不利が存在する。FMT物質の組成は、非常にドナー依存的であり、従って一貫しない。ドナーのスクリーニングにも関わらず、サンプルの細菌負荷を決定することは困難である。ドナーはまた、病原体についてスクリーニングされなければならず、薬剤耐性細菌の定着のリスクを評価しなければならない。以下に記載される特定の態様では、本発明はまた、本明細書において開示される1又は複数の種由来の1又は複数の細菌単離物を用いてFMT療法を増強すること、及び糞便ドナーをスクリーニング/同定するための方法に関する。
【0048】
本明細書において記載される組成物は、単離された細菌を含む。用語「単離された」とは、天然環境から単離されている細菌を指す。単離された細菌、例えば単離された細菌株は、他の細胞物質、化学物質及び/又は糞便物質を実質的に含まない。 従って、本明細書において使用される場合、用語「単離された」細菌とは、1若しくは複数の望ましくない成分(例えば別の細菌若しくは細菌株)、増殖培地の1若しくは複数の成分、及び/又はサンプル(例えば糞便サンプル)の1若しくは複数の成分から分離されている、細菌を指す。一部の実施形態では、細菌は、供給源から実質的に単離されていて、その供給源の他の成分が検出されないようになっている。本明細書において使用される場合、用語「種」とは、ゲノム配列及び/又は表現型特徴によって従来通りに規定される分類学的実体を指す。「株」とは、従来の微生物学技術に従って単離され精製された、ある種の特定の例である。細菌及び細菌単離物という用語は細菌集団である複数の細菌を指すことが、理解される。
【0049】
一実施形態では、組成物の細菌は、投与前には代謝的に不活性である。例えば、細菌は凍結乾燥されている。一実施形態では、組成物は、栄養細菌細胞を含み、細菌芽胞を含まない。一実施形態では、組成物は、栄養細菌細胞及び/又は細菌芽胞を含む。一実施形態では、組成物は、栄養細菌細胞を含み、細菌芽胞を含まないか又は芽胞を実質的に欠く。一実施形態では、組成物は、約0.5%未満、約1%未満、約2%未満、約3%未満、約4%未満又は約5%未満の芽胞を含む。
【0050】
組成物は、好ましくは生菌治療薬、細菌療法又は生菌バイオ医薬品である。本明細書において記載されるように、生菌製品 (細菌組成物、生菌コンソーシアム、細菌混合物又は細菌コンソーシアムとも呼ばれる)は、本明細書において記載される1又は複数の細菌種由来の1又は複数の細菌株を含む。生菌療法という用語は、本明細書において細菌療法と互換可能に使用され、健康を回復するため又は疾患 /疾患症状を軽減するため又は療法に対する応答を増加するために、生菌を使用する療法を定義する。
【0051】
本発明の細菌組成物は、免疫賦活効果を提供する。一部の実施形態では、細菌組成物は、対象に投与された場合に、免疫療法的効果、例えば抗がん効果(例えば、がん細胞の阻害若しくは細胞傷害)を誘導又は刺激する。一部の実施形態では、細菌組成物は、本明細書において更に説明されるように、対象に投与された場合に、抗がん効果若しくは他の有益な治療的効果を提供する免疫応答を誘導又は刺激する。
【0052】
本明細書において記載されるように、組成物は、Table 1(表1)において列挙される細菌種から選択される1又は複数の細菌種を含むことができる。生菌製品の特定の細菌又は細菌種の組合せが有益な効果、つまり免疫賦活効果、例えば抗がん効果を誘導する能力は、当該分野において公知である方法のいずれか、例えばインビトロアッセイ(例えば細胞培養を使用する)又はインビボ研究を使用して評価されうる。適切なアッセイが、実施例において示されている。
【0053】
一部の実施形態では、抗がん生菌製品は、特定の免疫細胞集団(例えばCD8+T細胞、Th17、Th1細胞)を誘導する。細胞(例えばCD8+T細胞、Th17、Th1細胞)の特定の集団の存在量は、当該分野において公知である任意の方法によって、例えば細胞型を示す細胞マーカーを検出すること、細胞型の直接的活性若しくは間接的活性を評価すること、及び/又は特定の細胞型により産生される1又は複数のサイトカインの産生を測定することによって、評価されうる。一部の実施形態では、抗がん生菌製品は、CD8+T細胞(又は「CD8+T細胞」)を誘導する。当業者によって理解されるように、本明細書において記載される1又は複数の種由来の細菌種及び/若しくは複数の株の組合せが、CD8+T細胞を誘導する抗がん生菌製品を産生するために選択され組み合わされうる。
【0054】
一実施形態では、単離された細菌、例えば、本明細書において列挙される種由来の単離された細菌株は、対象に投与された場合、前記対象の胃腸に定着することが可能である、生存可能な細菌でありうる。
【0055】
本発明者等は、様々な種由来の細菌を組み合わせることによって、チェックポイント阻害剤を用いた併用療法としての用途が見出される治療用組成物が提供されうることを、示した。第1の態様では、本発明は、Table 1(表1)において示される細菌種B1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、B8、B9、B10、B11、B12、B13、B14及び/若しくはB15又はそれらのサブセットのうちの1又は複数から選択される単離された細菌(例えば細菌株)を含む、組成物に関する。従って本発明は、配列番号1~19(例えば1~15)から選択される16S rDNAを有する1又は複数の細菌単離物(例えば細菌集団)を含む、組成物に関する。従って本発明は、Table 1(表1)において示される種のうちの1又は複数の細菌単離物を含むか又はそれらからなる、組成物に関する。
【0056】
下記のTable 1(表1)は、組成物に存在する単離された細菌が選択される、15の異なる細菌種を列挙している。各々の種を特徴付ける例示的な16S rDNA配列に対する言及もまた、Table 1(表1)において提供される。本明細書において使用される用語16S rDNA配列又は16S rDNAとは、16S rRNA 核酸配列、つまり核酸分子をコードする、DNA核酸配列、つまり核酸分子を指す。以下に言及される核酸配列は、Table 2(表2)において列挙される。また、以下に更に説明されるように、本明細書において記載される組成物の細菌及び他の態様の細菌は、以下に列挙される配列番号に対して特定の配列同一性を有する16S rDNA配列を有することができる。
【0057】
【0058】
【0059】
本明細書において記載される本発明の態様及び実施形態は、Table 1(表1)において示された種名及び/又は配列番号を参照することによって規定される。一部の場合では、同じ種について、例えば同じ種に属する種々の例示的な株に対応する、種々の例示的な配列が、Table 1(表1)において提供されている。複数の配列がある種について提供される場合、これらの配列は高い配列同一性を共有し、例えば、配列番号2及び配列番号17によって規定される種々の株は少なくとも99%配列同一性を有し、配列番号4及び配列番号16は少なくとも99%配列同一性を有し、配列番号6及び配列番号18は少なくとも99%配列同一性を有し、配列番号12及び配列番号20は少なくとも99%配列同一性を有する。
【0060】
本明細書において記載される態様及び実施形態では、B1~B15の各々について、上記で規定された配列(配列番号1~29)のいずれかが使用されうる。従って、単一の種について複数の配列が提供されている場合、これらの配列のうちのいずれかが使用されうる。
【0061】
本発明者等は免疫賦活効果(例えば抗がん効果)を有する特定の細菌種を有する組成物を提供することが、理解される。各種について、種々の株、つまり上記で同定された株又は同じ種に属する他の株が使用されうることもまた、理解される。類似するか又は同じ生物学的特性を有する近縁細菌株(例えば、16S rDNA配列によって規定される)もまた含まれうることが、理解されるべきである。一部の実施形態では、本明細書において提供される細菌株は、類似するか又は同じ生物学的特性を有する細菌株で置換されうる。
【0062】
一部の実施形態では、抗がん/生菌組成物は、Table 1(表1)において示された記載された15種のうちの1又は複数種の1又は複数の細菌株を含む。一部の実施形態では、抗がん/生菌組成物は、記載された15種のうちの1つよりも多い種(例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15種)の1又は複数の細菌株を含む。
【0063】
一実施形態では、組成物は、15の単離された細菌、例えばTable 1(表1)において示された16S rDNA配列若しくは下記で説明されるようにそれに対して特定の同一性パーセンテージを有する配列に関してか又は上記で示された種名に関して、例えばTable 1(表1)において列挙された15の細菌種の各々由来の細菌を含むか又はそれらからなる。
【0064】
本発明はまた、Table 1(表1)において列挙された細菌種のサブセットから選択される細菌を含むか又はそれらからなる組成物;例えばTable 1(表1)において示された16S rDNA配列若しくは下記で説明されるようにそれに対して特定の同一性パーセンテージを有する配列に関してか又は上記で示された種名に関して、Table 1(表1)において列挙された細菌種のうちの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14若しくは15から選択される種々の細菌を含むか又はそれらからなる組成物に関する。すべての組合せが想定される。
【0065】
従って、一実施形態では、組成物は、Table 1(表1)における種のうちの1若しくは複数に属する少なくとも1種の単離された細菌集団を含むか又はそれらからなる。例えば、組成物は、Table 1(表1)において列挙された2、3、6、9若しくは12の細菌種から選択される細菌を含むか又はそれらからなる。これらは、Table 3(表3)において示されるコンソーシアム(例えばコンソーシアム2、4、5、6及び10)から選択されうる。細菌は、Table 1(表1)における配列識別子において示されたそれらの16S rDNAを参照することによって規定されうる。従って、Table 1(表1)において列挙された細菌から選択される種々の細菌が、単一の組成物において組み合わされうる。
【0066】
例えば、組成物は、例えばTable 1(表1)において示された配列に関して、Table 1(表1)において示された少なくとも2種、例えば3種まで、4種まで、5種まで、6種まで、7種まで、8種まで、9種まで、10種まで、11種まで、12種まで、13種まで、14種まで、又は15種までから選択される、単離された細菌を含むか又はそれらからなる。例えば、組成物は、Table 1(表1)において列挙された9細菌種由来の単離された細菌を含むか又はそれらからなる。一例において、組成物は、Table 3(表3)において示される9種(つまりコンソーシアム2、4、5、6及び10)由来の単離された細菌を含むか又はそれらからなる。細菌は、Table 1(表1)における配列識別子において示されたそれらの16S rDNAを参照することによって規定されうる。
【0067】
一実施形態では、組成物は、例えばTable 1(表1)において示された配列番号に関して、Table 1(表1)において列挙された2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14若しくは15種から選択される単離された細菌を含むか又はそれらからなる。一実施形態では、組成物は、Table 3(表3)におけるコンソーシアムから選択される単離された細菌を含むか又はそれらからなる。一実施形態では、組成物は、Table 1(表1)において示された配列番号から選択される16S rDNAを有する単離された細菌を含むか又はそれらからなる。細菌は、Table 1(表1)における配列識別子において示されたそれらの16S rDNAを参照することによって規定されうる。本明細書において示される特定の配列同一性パーセンテージを有する配列もまた、本発明の範囲内にある。
【0068】
一実施形態では、組成物は、例えばTable 1(表1)において示された配列番号に関して、例えばTable 1(表1)において示された配列に関して、Table 1(表1)において列挙された少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種、少なくとも6種、少なくとも7種、少なくとも8種、少なくとも9種、少なくとも10種、少なくとも11種、少なくとも12種、少なくとも13種、少なくとも14種又は少なくとも15種から選択される単離された細菌を含む。一実施形態では、組成物は、Table 1(表1)において示された少なくとも9種から選択される単離された細菌を含む。本明細書において示される特定の配列同一性パーセンテージを有する配列もまた、本発明の範囲内にある。
【0069】
一実施形態では、組成物は、例えばTable 1(表1)において示された配列番号に関して、例えばTable 1(表1)において示された配列に関して、Table 1(表1)において列挙された2種以下、3種以下、4種以下、5種以下、6種以下、7種以下、8種以下、9種以下、10種以下、11種以下、12種以下、13種以下、14 種以下又は15種以下から選択される、単離された細菌を含むか又はそれらからなる。本明細書において示される特定の配列同一性パーセンテージを有する配列もまた、本発明の範囲内にある。
【0070】
一実施形態では、組成物は、例えばTable 1(表1)において示された配列番号に関して、例えばTable 1(表1)において示された配列に関して、Table 1(表1)において示された2~4種、2~5種、2~6種、2~7種、2~8種、2~9種、2~10種、2~11種、2~12種、2~13種、2~14種、又は2~15種選択される、単離された細菌を含むか又はそれらからなる。本明細書において示される特定の配列同一性パーセンテージを有する配列もまた、本発明の範囲内にある。
【0071】
一実施形態では、組成物は、配列番号1~15から選択される16s rDNA配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも98.7%又は少なくとも99%配列同一性(例えば配列番号16~29)を有する2~15細菌株を含むか又はそれらからなる、単離された細菌混合物を含む。例示的な組成物が、本明細書において、例えばTable 3(表3)において、示される。
【0072】
当業者は、Table 1(表1)から選択される本発明の組成物及び方法における使用のための細菌種が、Table 1(表1)及びTable 2(表2)において示される配列、又はそれらの配列に対して特定の同一性パーセンテージを有する配列を有することができ、生物学的活性、つまりがんに対する活性/免疫チェックポイント阻害剤を使用する療法の効果を増強することにおける有効性を保持することを、理解する。
【0073】
一実施形態では、組成物は、上記のとおりでありうるが、いかなる他の種(つまりTable 1(表1)において列挙されていない種)の細菌も含まないか、又は組成物は、別の種由来の細菌の僅少量若しくは生物学的に無関係な量だけしか含まない。生物学的に無関係によって、がんの処置に対して効果を有しない細菌が意味される。従って、一実施形態では、組成物は、記載された細菌からなる。
【0074】
一実施形態では、組成物は、Table 1(表1)において列挙された属に属する他の細菌種を含まない。
【0075】
一実施形態では、組成物は、Table 1(表1)において列挙された属に属する他の細菌種を含むことができるが、Table 1(表1)において列挙されていない属の細菌種を含まない。一実施形態では、組成物は、種々の属に属する他の細菌種を含むことができる。
【0076】
配列同一性を決定する方法は、当該分野において公知である。分岐群、操作的分類単位(operational taxonomic unit)(OTU)、種、及び株は、一部の実施形態では、それらの16S rDNA配列によって同定されることが、公知である。関連性は同一性パーセントによって決定され得、これは、当該分野において公知である方法を使用して決定されうる。
【0077】
本明細書において記載される組成物において使用される細菌種及び細菌株は、16S核酸配列(全長又はその部分、例えばV領域)に基づいて同定されうる。16SリボソームDNA遺伝子は、細菌リボソームの30SサブユニットのDNA成分をコードする。それはすべての細菌種において広範に存在する。種々の細菌種が、1~複数の16S rRNA遺伝子コピーを有する。16S rRNA遺伝子配列決定は、細菌系統発生学及び属/種分類を研究するためにハウスキーピング遺伝子を標的とする断然最も一般的な方法のうちの一つである。従って、細菌は、16S核酸配列をコードする遺伝子、例えば細菌におけるリボソームDNA(rDNA)の配列に基づいて、分類学的に分類されうる。この遺伝子配列はまた、リボソームDNA配列(rDNA)とも呼ばれる。細菌16S rDNAは、約1500ヌクレオチド長であり、系統発生学的アプローチを使用してある細菌単離物と別の細菌単離物との進化的関連性及び配列類似性を再構築することにおいて、使用される。16S rDNA配列は、それらが一般的に高度に保存されているが、ほとんどの微生物の属及び種を区別するために十分なヌクレオチド多様性を保有する特定の超可変領域を含むので、系統発生学的再構築のために使用される。
【0078】
全長16S rDNA配列又は16S rDNA配列の任意の超可変領域の配列を決定するための周知技術を使用して、ゲノムDNAが細菌サンプルから抽出され、16S rDNA(全長領域又は特定の超可変領域)がポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して増幅され、PCR生成物が浄化され、ヌクレオチド配列が画定されて、16S rDNA遺伝子又はこの遺伝子のサブドメインの遺伝子組成が決定される。全長16S rDNA配列決定が実施される場合、使用される配列決定方法は、サンガー配列決定でありうるが、これに限定はされない。1又は複数の超可変領域、例えばV4領域が使用される場合、配列決定は、サンガー法を使用して実施されうるか、又は次世代配列決定方法、例えば多重反応を可能にするバーコードプライマーを使用するイルミナ(合成による配列決定)法を使用して実施されうるが、これらに限定はされない。16S rDNAのV1~V9領域とは、細菌サンプルの遺伝子型決定のためにしばしば使用される16S rDNA遺伝子の最初の9個の超可変領域を指す。一部の実施形態では、V1~V9のうちの少なくとも1つが、細菌単離物を特徴付けるために使用される。
【0079】
一部の実施形態では、本明細書において記載されるように同定される細菌種は、当該分野において公知であり本明細書において記載される16S rDNA配列に対する配列同一性によって同定される。一部の実施形態では、選択された種は、Table 2(表2)において示される全長16S rDNA配列に対する配列同一性によって同定される。一部の実施形態では、選択された種は、Table 2(表2)において示される16S rDNA配列の部分(例えばV3及び/又はV4)に対する配列同一性によって同定される。
【0080】
本明細書において使用される場合、用語「相同性」又は「同一性」とは、最大の相同性パーセンテージを達成するようにある配列と参照配列とを整列した後、一部の実施形態では必要な場合はギャップを導入した後の、そのある配列における比較される参照配列の残基と同一である配列における核酸残基のパーセンテージを、一般的に指し、配列同一性の一部としていかなる保存的置換も考慮しない。従って、2つの核酸配列の間の相同性パーセンテージは、それら2つの配列の間の同一性パーセンテージに等しい。整列のための方法及びコンピュータプログラムは、周知である。2つの配列の間の同一性パーセンテージは、周知の数学的アルゴリズムを使用して決定されうる。
【0081】
一実施形態では、問い合わせ配列と参照配列との間の配列同一性の程度は、商業的に利用可能な配列比較プログラムの助けを得て決定されうる。これは、デフォルトスコアリングマトリックス及びデフォルトギャップペナルティを使用してそれら2つの配列を整列すること、正確な一致の数を同定すること、並びに正確な一致の数を参照配列の長さで除算することを、典型的には含む。同一性を決定するために有用な適切なコンピュータプログラムとしては、例えばBLAST(blast.ncbi.nlm.nih.gov)が挙げられる。
【0082】
配列番号に対して参照がなされる場合に本明細書において示される種々の実施形態では、全長配列に対して特定の配列同一性パーセンテージを有する配列もまた、本発明の範囲内にある。
【0083】
従って、Table 1(表1)における配列識別子に関してTable 2(表2)において列挙され本発明の組成物及び方法において使用される、細菌種の全長又は部分的16S rDNAは、対応する参照16S rDNA(つまり配列番号1~29)に対して、少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも98.7%、少なくとも99%、少なくとも99.5%又は少なくとも100%の配列同一性を有する。一部の実施形態では、閾値配列同一性は少なくとも94.5%である。一実施形態では、前記配列同一性は少なくとも95%である。一実施形態では、前記配列同一性は少なくとも96%である。一実施形態では、前記配列同一性は少なくとも97%である。一実施形態では、前記配列同一性は少なくとも98%である。一実施形態では、前記配列同一性は少なくとも98.7%である。一実施形態では、前記配列同一性は少なくとも99%である。
【0084】
一態様では、組成物は従って、配列番号1~15から選択される16S rDNA配列を含むか又は配列番号1~15から選択される核酸配列に対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を含む、細菌種である2以上の細菌を含む。そのような配列としては、配列番号16~29、例えば配列番号16~20が挙げられる。
【0085】
一部の実施形態では、閾値配列同一性は、94.5%、94.6%、94.7%、94.8%、94.9%、95.0%、95.1%、95.2%、95.3%、95.4%、95.5%、95.6%、95.7%、95.8%、95.9%、96.0%、96.1%、96.2%、96.3%、96.4%、96.5%、96.6%、96.7%、96.8%、96.9%、97.0%、97.1%、97.2%、97.3%、97.4%、97.5%、97.6%、97.7%、97.8%、97.9%、98.0%、98.1%、98.2%、98.3%、98.4%、98.5%、98.6%、98.7%、98.8%、98.9%、99.0%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%又は100%である。
【0086】
一実施形態では、本明細書において開示される細菌と同じ種に属する組成物に存在する細菌は、配列番号1~15から選択される核酸配列に対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば97%又は98.7%の同一性を有し、がんに対する活性/免疫チェックポイント阻害剤を使用する療法の効果を増強することにおける有効性を保持する。そのような配列としては、配列番号16~29、例えば配列番号16~20が挙げられる。
【0087】
一実施形態では、組成物は、以下の配列番号の16S rDNAを有する以下の15細菌のうちの1若しくは複数を含むか又はそれらからなる:
配列番号1又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列;
配列番号2又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列;
配列番号3又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列;
配列番号4又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列;
配列番号5又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列;
配列番号6又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列;
配列番号7又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列;
配列番号8又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列;
配列番号9又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列;
配列番号10又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列;
配列番号11又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列;
配列番号12又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列;
配列番号13又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列;
配列番号14又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列;
配列番号15又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列。
【0088】
上記の例は、配列番号16~29である。
【0089】
従って、組成物は、上記において示された16S rDNAを有する15細菌のうちの1又は複数に属する細菌の集団を含むか又はそれらからなる。
【0090】
一実施形態では、組成物は、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツイ(例えば配列番号15)を含まない。一実施形態では、組成物は、アリスティペス・インディスティンクタス(例えば配列番号5)、アリスティペス・オベシ(例えば配列番号4若しくは16)及び/又はアリスティペス・ティモネンシス(例えば配列番号10)を含まない。
【0091】
一実施形態では、組成物は、Table 3(表3)において示されるコンソーシアムを含む。
【0092】
従って、一実施形態では、組成物は、配列番号1又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号2又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号3又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号4又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号5又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号6又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号7又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号8又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;及び配列番号9又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌(Table 3(表3)におけるコンソーシアム2)を含むか或いはそれらかなる。
【0093】
一実施形態では、組成物は、配列番号1又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号2又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号3又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号6又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号7又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号8又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号9又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号11又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号12又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号13又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号14又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;及び配列番号15又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌(Table 3(表3)におけるコンソーシアム3)を含むか或いはそれらかなる。
【0094】
別の実施形態では、組成物は、配列番号1又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列;配列番号2又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号3又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号6又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号7又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号8又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号 9又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号11又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号14又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌(Table 3(表3)におけるコンソーシアム4)を含むか或いはそれらかなる。
【0095】
別の実施形態では、組成物は、配列番号1又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号7又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号8又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号9又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号13又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号16又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号 17又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号18又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;及び配列番号20又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌(Table 3(表3)におけるコンソーシアム5)を含むか或いはそれらかなる。
【0096】
別の実施形態では、組成物は、配列番号1又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号2又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号7又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号9又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号13又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号16又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号 18又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号19又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;及び配列番号20又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌(Table 3(表3)におけるコンソーシアム6)を含むか或いはそれらかなる。
【0097】
別の実施形態では、組成物は、配列番号1又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号2又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号7又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号9又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号18又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;及び配列番号19又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌(Table 3(表3)におけるコンソーシアム7)を含むか或いはそれらかなる。
【0098】
別の実施形態では、組成物は、配列番号1又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号2又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;及び配列番号7又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌(Table 3(表3)におけるコンソーシアム8)を含むか或いはそれらかなる。
【0099】
別の実施形態では、組成物は、配列番号1又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;及び配列番号2又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌(Table 3(表3)におけるコンソーシアム9)を含むか或いはそれらかなる。
【0100】
従って、一実施形態では、組成物は、配列番号1又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号2又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号3又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号5又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号7又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号10又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号11又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;配列番号13又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌;及び配列番号14又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列又はそれに対して少なくとも90%、例えば少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、例えば少なくとも97%若しくは少なくとも98.7%の同一性を有する16S rDNA配列を有する、細菌(Table 3(表3)におけるコンソーシアム10)を含むか或いはそれらかなる。
【0101】
上記の組成物の実施形態について記載された同一性パーセンテージに関して、一実施形態では、配列同一性は少なくとも98.7%又は99%である。Table 1(表1)が単一の種について複数の配列を提供する場合、これらの配列のうちのいずれかが上記の実施形態に従って使用されうることが、理解される。
【0102】
一例では、組成物において使用される種は、それらの16S rDNA配列(例えば全長配列又は部分的配列)に基づいて同定される。一部の場合では、本発明において有用な細菌種の株、例えば本明細書において開示される種の株は、公開生物学的資源センター、例えば、ATCC(atcc.org)、DSMZ(dsmz.de)、又は理化学研究所バイオリソースセンター(Riken BioResource Center)(en.brc.riken.jp)から得られうる。本発明の種又は他の態様を同定するために有用な16s rDNA配列は、公開データベース、例えば、ヒト微生物叢研究プロジェクト(Human Microbiome Project)(HMP)ウェブサイト又はGenBankから得られうる。
【0103】
当業者は、組成物がTable 1(表1)において列挙された特定の細菌種の1又は1よりも多い株を含むことができることを理解する。例えば、本発明の組成物は、ある種について1よりも多い細菌株を含む。例えば、一部の実施形態では、本発明の組成物は、同じ種内から1よりも多い株(例えば、1よりも多い、2よりも多い、3よりも多い、4よりも多い、5よりも多い、6よりも多い、7よりも多い、8よりも多い、9よりも多い、10よりも多い、15よりも多い、20よりも多い、25よりも多い、30よりも多い、35よりも多い、40よりも多い又は45よりも多い株)を含む。別の実施形態では、本発明の組成物は、各種について1細菌株を含む。
【0104】
一実施形態では、組成物の細菌は、対象の消化管に定着することが可能である。一実施形態では、組成物の細菌は、対象の消化管において持続性生着することが可能である。
【0105】
一実施形態では、組成物は、以下の特徴のうちの1又は複数を有する:
・ 組成物は、免疫賦活効果を有する;
・ 組成物は、対象、組織若しくは細胞において、例えばチェックポイント阻害剤療法と一緒に使用された場合に、がんを処置及び/若しくは予防することにおいて効果的である;
・ 組成物は、対象、組織若しくは細胞において感染性疾患を処置及び/若しくは予防することにおいて効果的である;
・ 対象、組織若しくは細胞への組成物の投与は、対象において免疫応答を誘導し、且つ/若しくは免疫チェックポイント阻害剤を含む抗がん療法による有効性を増加する;
・ 対象、組織若しくは細胞への組成物の投与は、CD8+応答を増強する;
・ 対象、組織若しくは細胞への組成物の投与は、免疫チェックポイント遮断を増強する;
・ 組成物の投与は、免疫チェックポイントにおける腫瘍の応答性を維持若しくは誘導する;
・ 対象、組織若しくは細胞への組成物の投与は、免疫系の細胞型、例えばT細胞、B細胞、樹状細胞、マクロファージ、好中球、NK細胞、形質細胞様樹状細胞及びそれらの組合せの数若しくは活性を増加する;
・ 対象、組織若しくは細胞への組成物の投与は、腫瘍の増殖を抑制することが可能である細胞型、例えばT細胞、細胞傷害性Tリンパ球、ヘルパーT細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、形質細胞様樹状細胞、抗腫瘍マクロファージ、B細胞、樹状細胞及びそれらの組合せを支援するように、対象における免疫細胞の比を変える、並びに/又は
・ 対象、組織若しくは細胞への組成物の投与は、腫瘍を保護することが可能である細胞型、例えば骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)、制御性T細胞(Treg)、腫瘍関連好中球(TAN)、M2マクロファージ、腫瘍随伴マクロファージ(TAM)、及びそれらの組合せに対抗するように、対象における免疫細胞の比を変える;
・ 対象、組織若しくは細胞への組成物の投与は、対象において、がん/腫瘍の増殖、転移、及び/若しくは処置/免疫応答の回避を防止する細菌の存在量/レベルを増加する;
・ 対象、組織若しくは細胞への組成物の投与は、対象、組織若しくは細胞において、がんの処置に寄与し且つ/若しくはがん/腫瘍の増殖を阻害する、環境若しくは微小環境(例えばメタボローム)を作る細菌の存在量を増加する。
【0106】
対象は、ヒトでありうるか、又は動物モデル、例えばマウスモデルにおける動物でありうる。インビトロモデル、例えば組織ベースモデル又は細胞ベースモデルもまた、有効性を試験するために使用されうる。適切なモデル及びアッセイもまた、実施例において示される。
【0107】
本明細書において使用される場合、「免疫応答」とは、侵入する病原体、病原体に感染した細胞若しくは組織、又はがん性細胞若しくは他の異常な細胞の選択的標的化、それらへの結合、それらに対する損傷、それらの破壊、及び/或いは対象からのそれらの排除を生じる、免疫系の細胞(例えば、Tリンパ球、Bリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、好酸球、肥満細胞、樹状細胞、好中球等)並びにこれらの細胞のいずれか若しくは肝臓により産生される可溶性高分子(抗体、サイトカイン及び補体を含む)の作用を指す。これは、適切なマーカー又は細胞型を評価することによって、測定されうる。
【0108】
本明細書において使用される場合、用語「免疫療法」とは、免疫応答を誘導する工程、増強する工程、抑制する工程若しくは他の方法で改変する工程を含む方法による、がんの処置又は予防を指す。
【0109】
細菌単離物は、両方とも参考として援用される国際公開第2013/171515号又は国際公開第2017/182796号において記載されるように、単離及び培養されうる。一実施形態では、細菌株は、個別に培養及び増殖され、その後、組成物中で組み合わせられる。
【0110】
組成物において使用される細菌単離物は、好ましくは非病原性株である。換言すると、細菌は、健常ヒト個体において、前記個体に投与された場合に、好ましくは疾患を引き起こさない。
【0111】
一実施形態では、組成物に存在する各細菌は、1又は複数の抗生物質を用いた処置に対して感受性である。換言すると、細菌は、少なくとも1種の抗生物質を用いた処置に対して耐性ではない。これは、個体に投与された治療用組成物に含まれる細菌のうちの1又は複数が、予測に反して個体において疾患を引き起こした場合に、個体の抗生物質処置を可能にする。従って、一実施形態では、細菌は、βラクタム、フシジン酸、エルファマイシン、アミノグリコシド、ホスホマイシン、ツニカマイシン、メトロニダゾール及び/又はバンコマイシンからなる群から選択される1又は複数の抗生物質を用いた処置に対して感受性である。抗生物質耐性について細菌をスクリーニングするためのインビトロ方法及びインシリコ方法が、当該分野において公知である。
【0112】
一実施形態では、組成物に含まれる単離された細菌は、1若しくは複数の病原性因子をコードする1若しくは複数の遺伝子を含まないことができ、且つ/又は1若しくは複数の病原性因子を好ましくは産生しない。この文脈における病原性因子とは、個体において疾患を引き起こす細菌の能力を増強する特性である。病原性因子としては、細菌による細菌毒素(例えば内毒素及び外毒素)の産生、並びに細菌の病原性の一因となることができる加水分解性酵素の産生が挙げられる。病原性因子をコードする遺伝子について細菌をスクリーニングするための方法は、当該分野において公知である。
【0113】
一部の実施形態では、細菌株のうちの1又は複数は、ヒト由来細菌であり、このことは、その1又は複数の細菌株がヒト若しくはヒト(例えばヒトドナー)由来のサンプルから得られたか又は同定されたことを、意味する。本明細書において提供される組成物の一部の実施形態では、細菌株のすべてがヒト由来の細菌である。本明細書において提供される組成物の一部の実施形態では、細菌株は、1人よりも多いヒトドナーに由来する。
【0114】
本明細書において提供される生菌製品において使用される細菌株は、健常個体のマイクロバイオームから、例えばヒト糞便から、一般的には単離されるが、一部の場合では、健常個体由来ではないことができる。一部の実施形態では、生菌製品は、単一の個体を起源とする株を含む。一部の実施形態では、生菌製品は、複数の個体を起源とする株を含む。一部の実施形態では、細菌株は、複数の個体から個別に得られ、単離され、増殖される。個別に増殖された細菌組成物は、その後、本開示の組成物を提供するために組み合わされうる。本明細書において提供される生菌製品の細菌株の起源は健常個体由来のヒトマイクロバイオームに限定されないことが、理解されるべきである。
【0115】
単離及び特徴付けは、当該分野における標準的方法を使用して達成されうる。例えば、16S rRNAコード遺伝子のV4~V5領域が、増幅及び配列決定されうる。その後、配列が、細菌単離物のために本明細書において提供される16S 配列に整列及び比較されうる。配列プロトコール及び整列ソフトウェアは、当該分野において周知である。
【0116】
一部の場合では、本発明において有用な細菌種の株、例えば本明細書において開示される種の株は、上記のような公開生物学的資源センターから得られうる。
【0117】
本発明の組成物が本明細書において列挙される1よりも多い細菌株又は細菌種を含む一部の実施形態では、その個別の細菌株又は細菌種は、別個投与用、同時投与用、又は連続投与用でありうる。例えば、組成物がTable 1(表1)において列挙された種のすべて若しくはサブセット由来の細菌を含むことができるか、又は細菌株若しくは種がTable 1(表1)において列挙されたものから選択されるが、別個に貯蔵されえ、別個投与、同時投与、若しくは連続投与されうる。一部の実施形態では、1よりも多い細菌株又は細菌種が別個に貯蔵されるが、使用前に一緒に混合される。
【0118】
本明細書において説明されるように、本発明の細菌組成物は、対象に投与された場合に治療的効果を有し、がんの処置又は予防において使用されうる。従って、本明細書において記載される組成物は、治療用組成物である。従って、本発明はまた、本明細書において記載される細菌の組成物を含む医薬組成物に及ぶ。これは、更なる成分、例えばワクチンを含むことができる。
【0119】
一実施形態では、組成物は、薬学的に許容される賦形剤、担体、緩衝剤、安定剤、又は当業者にとって周知である他の物質を含むことができる。そのような物質は、非毒性であるべきであり、治療用組成物に存在する単離された細菌の有効性を妨害すべきではない。薬学的に許容される賦形剤又は他の物質の正確な性質は、投与経路に依存し、投与経路は、経口投与又は直腸投与でありうる。治療用組成物の調製のための多くの方法が、当業者にとって公知である。
【0120】
本発明の細菌組成物は、プレバイオティクス、薬学的に許容される担体、不溶性食物線維、緩衝剤、浸透圧物質、消泡剤及び/又は保存剤を含むことができる。組成物に含まれる賦形剤の特定の例が、以下に開示される。
【0121】
プレバイオティクスは、細菌組成物に存在する単離された細菌のための栄養分を提供して個体への投与後のその早期増殖及び定着を支援することができる。当該分野において公知である任意のプレバイオティクスが、使用されうる。プレバイオティクスの非限定的例としては、オリゴ糖、例えばフラクトオリゴ糖、例えばオリゴフルクトース及びイヌリン、マンナンオリゴ糖並びにガラクトオリゴ糖、水溶性オリゴフルクトース濃縮イヌリン並びに水溶性食物線維が挙げられる。不溶性食物線維が、例えば輸送又は貯蔵の間の保護を提供するために、担体として治療用組成物に含まれうる。緩衝剤が、存在する単離された細菌の生存度を増進するために、細菌組成物に含まれうる。抗真菌剤が、保存剤として、細菌組成物に含まれうる。
【0122】
一実施形態では、治療用細菌組成物は、本明細書において記載される細菌単離物以外の他の有効成分(他の単離された細菌を含む)を含まないことができ、プレバイオティクスを任意選択で含むことができる。従って、治療用組成物の有効成分は、本明細書において記載される細菌単離物及び任意選択のプレバイオティクスの群からなりうる。
【0123】
本発明の細菌組成物は、本明細書において他の箇所でより詳細に記載される種々の様式(カプセル、錠剤、ゲル又は液体の形態であることを含む)で対象に投与されうる。
【0124】
本発明の細菌組成物は、対象への経口投与用又は直腸投与用でありうる。組成物が経口投与用である場合、組成物は、カプセル又は錠剤の形態でありうる。治療用組成物が直腸投与用である場合、治療用組成物は、浣腸、錠剤又はカプセルの形態でありうる。適切なカプセル、錠剤及び浣腸の調製は、当該分野において周知である。カプセル又は錠剤は、そのカプセル又は錠剤を胃酸から保護するために腸溶コーティングを含むことができる。例えば、カプセル又は錠剤は、腸溶コーティング済、pH依存性、徐放性、及び/又は胃酸耐性でありうる。そのようなカプセル及び錠剤は、例えば、胃におけるカプセル又は錠剤の溶解を最小にするが小腸における溶解は可能にするために、使用される。経口投与が意図される場合、組成物は、固体形態又は液体形態でありえ、半固体形態、半液体形態、懸濁物形態及びゲル形態が、固体又は液体のいずれかとして本明細書において考慮される形態内に含まれる。
【0125】
経口投与用の固体組成物として、組成物は、散剤、顆粒剤、圧縮錠剤、丸剤、カプセル、チューインガム、ウェハー等へと製剤化されうる。そのような固体組成物は、1又は複数の不活性希釈剤を典型的には含む。更に、以下のうちの1又は複数が存在することができる:結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、結晶セルロース、又はゼラチン;賦形剤、例えば、デンプン、ラクトース又はデキストリン;崩壊剤、例えば、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、トウモロコシデンプン等;滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム;滑剤、例えば、コロイド状二酸化ケイ素;甘味剤、例えば、スクロース又はサッカリン;矯味矯臭剤、例えば、ペパーミント、サリチル酸メチル又は柑橘香料;及び着色剤。組成物がカプセル(例えばゼラチンカプセル)の形態である場合、それは、上記の型の物質に加えて、液体担体、例えば、ポリエチレングリコール、シクロデキストリン又は脂肪油を含むことができる。
【0126】
経口投与が意図される場合、組成物は、甘味剤、保存剤、色素/着色剤及び調味料のうちの1又は複数を含むことができる。注射による投与のための組成物において、界面活性剤、保存剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、緩衝剤、安定剤及び等張剤のうちの1又は複数もまた、含まれうる。
【0127】
細菌組成物は、粒子状でありうる薬学的に許容される担体又は溶媒を、組成物が例えば錠剤形態又は散剤形態であるように含むことができる。用語「担体」とは、共に組成物が投与される、希釈剤、アジュバント又は賦形剤を指す。そのような薬学的担体は、液体、例えば、水及び油(石油起源の油、動物起源の油、植物起源の油又は合成起源の油、例えば、ラッカセイ油、ダイズ油、鉱物油、ゴマ油等が挙げられる)でありうる。担体は、生理食塩水、アカシアガム、ゼラチン、デンプンペースト、タルク、ケラチン、コロイド状シリカ、尿素等でありうる。更に、助剤、安定剤、増粘剤、滑沢剤、及び着色剤が、使用されうる。一実施形態では、組成物及び薬学的に許容される担体は、滅菌されている。生理食塩水溶液及びデキストロース水溶液及びグリセロール水溶液もまた、液体担体として、特に注射可能溶液のために、使用されうる。適切な薬学的担体としては、賦形剤、例えば、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール等もまた、挙げられる。本組成物はまた、望ましい場合には、微量の湿潤剤若しくは乳化剤、又はpH緩衝剤も含むことができる。
【0128】
組成物は、1又は複数投与単位の形態を採ることができる。ある実施形態では、用量単位は、少なくとも1×103、少なくとも1×104、少なくとも1×105、少なくとも1×106、少なくとも1×107、少なくとも1×108、少なくとも1×109、少なくとも1×1010、少なくとも1×1011、少なくとも1×1012、少なくとも1×1013又は1×1013よりも多いコロニー形成単位(cfu)の栄養細菌細胞を含む。ある実施形態では、用量単位は、薬学的に許容される賦形剤、腸溶コーティング又はそれらの組合せを含む。細菌単離物又は組成物は、適切な用量で提供されうる。
【0129】
処理又は特定のプロセスが、組成物における細菌単離物の安定性又は生存度を改善するために適用されうる。細菌組成物は、乾燥形態又は湿潤形態で適用されうる。細菌組成物は、凍結乾燥されうる。凍結乾燥された治療用組成物は、1又は複数の安定剤及び/又は凍結保護物質を含むことができる。凍結乾燥された細菌組成物は、個体への投与前に、適切な希釈剤を使用して再構成されうる。
【0130】
本発明はまた、Table 1(表1)の細菌種から選択される1又は複数の細菌を含むか又は本明細書において記載される組成物を含み、有効量の免疫チェックポイント阻害剤を更に含む、医薬組成物に関する。
【0131】
免疫チェックポイントは、異常な免疫応答に起因する細胞損傷を最小にするために免疫ホメオスタシス(例えば、免疫応答の期間及び程度を調節する、自己寛容)を維持することに関与する、免疫系内における制御経路である。本明細書において「免疫チェックポイント阻害剤」と呼ばれる免疫チェックポイントの阻害剤は、免疫チェックポイントを特異的に阻害し、免疫応答に対する刺激効果又は阻害効果を有することができる。
【0132】
一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗体若しくはそのフラグメント、干渉核酸分子又は別の化学成分である。
【0133】
多数のチェックポイント阻害剤が当該分野において公知であり、抗体処置を含む、多数の処置が、規制当局によって認可された一方で、モノクローナル抗体又は抗体フラグメント、例えばシングルドメイン抗体を用いた処置を含む他の処置が、広範囲のがんにおける有効性を示している。
【0134】
一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1活性を阻害し、つまりPD-1アンタゴニストとして作用する。
【0135】
「PD-1アンタゴニスト」又は「PD-1阻害剤」とは、がん及び/若しくは免疫細胞において発現されるPD-L1と、免疫細胞(T細胞、B細胞若しくはNKT細胞)において発現されるPD-1との結合を遮断し、がん及び/若しくは免疫細胞において発現されるPD-L2と、免疫細胞により発現されるPD-1との結合もまた好ましくは遮断する、任意の化学物質又は生物学的分子を意味する。
【0136】
一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤又はPD-L2阻害剤、例えば、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体又は抗PD-L2抗体である。一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は抗PD-1抗体である。一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、ニボルマブ(MDX-1106、MDX-1106-04、ONO-4538、若しくはBMS-936558)、ペムブロリズマブ(商標名KEYTRUDA(登録商標)、前名ランブロリズマブ(登録商標)、Merck3745、MK-3475若しくはSCH-900475としてもまた公知である)、セミプリマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、スパルタリズマブ、カムレリズマブ、シンチリマブ、チスレリズマブ、ピジリズマブ又はトリパリマブから任意選択で選択される、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体である。
【0137】
一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4阻害剤)であり、つまりCTLA-4の活性を阻害する。CTLA-4(CD152)は、NCBI遺伝子ID:1493を有する、T細胞機能を阻害するB7/CD28ファミリーメンバーである。CTLA-4 mAb又はCTLA-4リガンドは、CTLA-4がそのネイティブリガンドに結合するのを防止することができ、それにより、CTLA-4によるT細胞の負の制御シグナルの伝達を遮断し種々の抗原に対するT細胞の応答性を増強することができる。この態様では、インビボ研究及びインビトロ研究からの結果は、実質的に一致する。
【0138】
CTLA-4阻害剤は、CTLA4抗体でありえ、任意選択でイピリムマブ又はトレメリムマブでありうる。
【0139】
一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗TGIT作用薬、抗LAG3作用薬、又は抗TIM3作用薬、例えば抗体である。本明細書において列挙されるチェックポイント標的は、限定するものではなく、当業者は、他のチェックポイント標的もまた本発明の範囲内にあり、他のチェックポイント標的が阻害されうることを、理解する。
【0140】
複数の免疫チェックポイント阻害剤が本明細書において開示される方法、組成物、及びキットにおいて使用されうることが、更に理解されるべきである。
【0141】
一部の実施形態では、がん免疫療法剤は、抗がんワクチン(がんワクチンとも本明細書において呼ばれる)を含む。がんワクチンは、がん細胞に対する免疫応答を増加するように一般的には作用する。例えば、がんワクチンは、がん抗原を含み、そのがん抗原を保有する細胞に対する免疫応答を誘導又は刺激するように作用する。誘導又は刺激される免疫応答は、抗体(液性)免疫応答及び/又はT細胞(細胞媒介性)免疫応答を含むことができる。
【0142】
他のように特定されない限り、本明細書において使用されるPD-1という用語は、ヒトPD-1を指す。用語「プログラム死1」、「プログラム細胞死1」、「タンパク質PD-1」、「PD-1」、PD1」、「PDCD1」、「hPD-1」及び「hPD-1」は、互換可能に使用され、ヒトPD-1のバリアント、アイソフォーム、種ホモログを含む。PD-1抗体又はPD-1抗体フラグメントという用語は、ヒトPD-1抗原に特異的に結合することが可能でありPD-1作用と拮抗することが可能である、分子を指す。ヒトPD-1アミノ酸配列は、NCBI座位番号:NP_005009において見出されうる。ヒトPD-L1アミノ酸配列及びヒトPD-L2アミノ酸配列は、それぞれ、NCBI座位番号:NP_054862及びNP_079515において見出されうる。
【0143】
本明細書において使用される用語「抗体」とは、2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖という4つのポリペプチド鎖を含んでなる、任意の免疫グロブリン(Ig)分子若しくはその抗原結合部分、又はIg分子の必須のエピトープ結合特徴を保持するそれらの任意の機能的フラグメント、変異体、バリアント、若しくは誘導体を、広範に指す。そのような変異体抗体形式、バリアント抗体形式、又は誘導体抗体形式は、当該分野において公知である。抗体は、単一特異性、又は多重特異性、例えば二重特異性でありうる。抗体は、別の抗体療法、例えばチェックポイント阻害剤を標的とする別の抗体と組み合わせてか、又は別の抗がん療法、例えば化学療法、並びに標的化療法、手術及び/若しくは放射線療法と組み合わせて、投与されうる。
【0144】
全長抗体において、各重鎖は、重鎖可変領域又は重鎖可変ドメイン(本明細書においてHCVRと略記される)及び重鎖定常領域を含んでなる。重鎖定常領域は、CH1、CH2及びCH3という3つのドメインを含んでなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域又は軽鎖可変ドメイン(本明細書においてLCVRと略記される)及び軽鎖定常領域を含んでなる。軽鎖定常領域は、1つのドメインCLを含んでなる。
【0145】
重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が散在している、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域へと更に細分されうる。各重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、アミノ末端からカルボキシ末端へと以下のFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4という順序で整列された、3つのCDR及び4つのFRから構成される。
【0146】
免疫グロブリン分子は、任意の型(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgAl及びIgA2)又はサブクラスでありうる。
【0147】
本明細書において使用される抗体という用語は、抗体ラグメント、例えばF(ab')2、Fab、Fv、scFv、重鎖のみの抗体、シングルドメイン抗体(VH、VL、VHH)又は抗体ミメティックタンパク質を含む。シングルドメイン抗体を含む、種々の抗体形式が、チェックポイント阻害剤に対する有効性を示すことが示された(例えば、Yu S等、「Nanobodies targeting immune checkpoint molecules for tumor immunotherapy and immunoimaging」、Int J Mol Med.、2021;47(2):444~454頁)。
【0148】
scFvフラグメント(約25kDa)は、VH及びVLという2つの可変ドメインからなる。当然、VHドメイン及びVLドメインは、疎水性相互作用を介して非共有結合的に会合されており、分離する傾向がある。しかし、それらのドメインを親水性の可動性リンカーで連結して単鎖Fv(scFv)を作製することによって、安定なフラグメントが操作されうる。最小の抗原結合フラグメントは、単一可変領域フラグメント、すなわちVHドメイン又はVLドメインである。軽鎖/重鎖パートナーそれぞれへの結合は、標的結合のためには必要とされない。そのようなフラグメントは、シングルドメイン抗体において使用される。従って、シングルドメイン抗体(約12~15kDa)は、VHドメイン又はVLドメインのいずれかを有する。
【0149】
抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、又はキメラ抗体でありうる。キメラ抗体は、1つの種に由来する抗体、好ましくは齧歯類抗体の相補性決定領域(CDR)を含む可変ドメインを含む一方で、その抗体分子の定常ドメインがヒト抗体の定常ドメインに由来する、組換えタンパク質である。
【0150】
ヒト化抗体は、1つの種由来の抗体、例えば齧歯類抗体由来のCDRが、その齧歯類抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域からヒト重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメイン(例えばフレームワーク領域配列)中に移されている、組換えタンパク質である。その抗体分子の定常ドメインは、ヒト抗体の定常ドメインに由来する。特定の実施形態では、親(齧歯類)抗体由来の限定数のフレームワーク領域アミノ酸残基が、ヒト抗体フレームワーク領域配列中に置換されうる。
【0151】
チェックポイント阻害剤は、抗体に限定はされない。一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、干渉核酸分子であり、任意選択で、その干渉核酸分子はsiRNA分子、shRNA分子又はアンチセンスRNA分子である。
【0152】
一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、小分子若しくはタンパク質分解誘導キメラ分子(PROteolysis TArgeting Chimera)(PROTAC)、代替的スキャホールドタンパク質(alternative scaffold protein)、生物製剤又は他の免疫チェックポイント阻害剤である。一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、干渉核酸分子である。一実施形態では、干渉核酸分子は、siRNA分子、shRNA分子又はアンチセンスRNA分子である。一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、小分子若しくはタンパク質分解誘導キメラ分子(PROTAC)又は他の免疫チェックポイント阻害剤である。小分子がチェックポイント阻害剤として使用されうる例は、スルファモノメトキシン及びスルファメチゾールに関する研究によって提供されている。PD-L1を阻害する例示的な小分子化合物は、参考として援用される米国特許第9850225号において開示されている。現在ヒト臨床試験中である小分子は、Ca-170と呼ばれる分子であり、これは、PD-L1経路及びT細胞活性化のVドメインIg抑制因子(V-domain Ig suppressor of the T-cell activation)(VISTA)経路の両方を阻害する。
【0153】
一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、ペプチド阻害剤である。例は、ペプチドアンタゴニストである(D)PPA-1であり、これは、インビボでPD-1/PD-L1相互作用を遮断し、腫瘍増殖を減少させる(Chang H.N等、「Blocking of the PD-1/PD-L1 Interaction by a D-Peptide Antagonist for Cancer Immunotherapy.」、Angew. Chem. Int. Ed.、2015;54:11760~11764頁)。別のペプチド阻害剤は、PD-L1の競合的阻害剤として作用することが示されたPL120131(Magiera-Mularz K.等、「Bioactive Macrocyclic Inhibitors of the PD-1/PD-L1 Immune Checkpoint.」、Angew. Chem. Int. Ed.、2017;56:13732~13735頁)及びTPP-1(Li C.、Zhang N等、「Peptide Blocking of PD-1/PD-L1 Interaction for Cancer Immunotherapy.」、Cancer Immunol. Res.、2018;6:178~188頁)である。
【0154】
別の態様では、疾患(例えば、がん)の処置における使用のための、本明細書において記載される細菌組成物が提供される。別の態様では、疾患(例えば、がん)の処置又は予防のための医薬の製造における、本明細書において記載される細菌組成物の使用が提供される。
【0155】
別の態様では、本明細書において記載される細菌組成物を対象に投与する工程を含む、疾患を処置又は予防するための方法が提供される。別の態様では、対象において疾患を処置又は予防するための方法が提供され、この方法は、対象において、Table 1(表1)において示されたB1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、B8、B9、B10、B11、B12、B13、B14及び/若しくはB15又はそれらのサブセットから選択される1又は複数の細菌のレベルを調節する工程、例えば、それらの細菌のレベル/相対的存在量を増加する工程を含む。一実施形態では、サブセットは、Table 1(表1)において示された1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15の細菌種から選択される細菌を含むか、又はそれらかなる。対象において1又は複数の細菌によるレベルを調節する工程は、対象による免疫応答を増強し、且つ/又はがんによる免疫回避を阻害し、且つ/又は免疫チェックポイント阻害剤を用いた抗がん処置による有効性を増加する。一実施形態では、方法は、本明細書において記載される組成物を投与する工程を含む。
【0156】
下記において説明されるように、レベル/存在量は、参照対象又は対象の集団に由来する基準値と比較されうる。
【0157】
一実施形態では、疾患は、がんである。一実施形態では、がんは黒色腫である。「黒色腫」とは、皮膚及び他の器官のメラニン細胞系から生じる腫瘍を意味すると受け取られる。黒色腫の非限定的例は、ハーディング-パッセー黒色腫、若年性黒色腫、悪性黒子型黒色腫、悪性黒色腫、末端黒子型黒色腫、無色素性黒色腫、良性若年性黒色腫、クラウドマン黒色腫、S91黒色腫、結節型黒色腫、爪下黒色腫、皮膚黒色腫、ぶどう膜/眼内黒色腫及び表在拡大型黒色腫である。
【0158】
本発明の組成物は、チェックポイント阻害剤によって処置可能であるがんの処置のために特に有用である。
【0159】
一実施形態では、がんは、異常に高レベルのPD-1を発現する細胞(例えば、疲弊したT細胞、B細胞、単球等)に関連する。他のがんとしては、PD-1並びに/又はそのリガンドであるPD-L1及び/若しくはPD-L2の上昇した発現によって特徴付けられる、がんが挙げられる。
【0160】
一実施形態では、がんは、高レベルのがん関連遺伝子変異及び/又は高レベルの腫瘍抗原発現を有するがんから選択される。別の実施形態では、がんは、免疫原性であることが公知であるか又は他のがん治療を用いた処置の際に免疫原性になることが可能である、がんから選択される。更なる実施形態では、がんは、患者の免疫系が役割を有する可能である非免疫学的治療、例えば化学治療によって一般的に処置されるがんから、選択されうる。
【0161】
がんは、固形腫瘍又は非固形腫瘍から選択されうる。例えば、黒色腫の他に、がんは、別の皮膚がんからか、又は骨がん、膵臓がん、頭頸部がん、皮膚悪性黒色腫若しくは眼内悪性黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門領域のがん、胃がん、精巣がん、乳がん、脳がん、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸部癌、膣癌、外陰癌、食道がん、小腸がん、内分泌系のがん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、腎臓がん、軟部組織肉腫、尿道がん、膀胱がん、直腸がん、肺がん、非小細胞肺がん、胸腺腫、尿路上皮癌、白血病、前立腺がん、中皮腫、副腎皮質癌、リンパ腫、例えばホジキン病、非ホジキンリンパ腫、胃がん、及び多発性骨髄腫から、選択されうる。
【0162】
一実施形態では、腫瘍は、固形腫瘍である。適宜処置されうる固形腫瘍の例としては、乳癌、肺癌、結腸直腸癌、膵臓癌、神経膠腫及びリンパ腫が挙げられる。そのような腫瘍の一部の例としては、類表皮腫瘍、扁平上皮腫瘍、例えば頭頸部腫瘍、結腸直腸腫瘍、前立腺腫瘍、乳腺腫瘍、肺腫瘍(小細胞肺腫瘍及び非小細胞肺腫瘍が挙げられる)、膵臓腫瘍、甲状腺腫瘍、卵巣腫瘍、及び肝腫瘍が挙げられる。他の例としては、カポジ肉腫、中枢神経系腫瘍、神経芽細胞種、毛細血管芽細胞腫、髄膜腫及び転移性脳腫瘍、黒色腫、消化器癌及び腎癌並びに消化器肉腫及び腎肉腫、横紋筋肉腫、神経膠芽腫、好ましくは多形神経膠芽腫、並びに平滑筋肉腫が挙げられる。本発明のアンタゴニストが効果的である血管新生化皮膚がんの例としては、扁平上皮癌、基底細胞癌、及び悪性ケラチノサイト、例えばヒト悪性ケラチノサイトの増殖を抑制することによって処置されうる皮膚がんが挙げられる。一実施形態では、がんはNSCLである。
【0163】
一実施形態では、腫瘍は非固形腫瘍である。非固形腫瘍の例としては、白血病、多発性骨髄腫及びリンパ腫が挙げられる。
【0164】
一態様では、がんは、PD-1陽性がん及び/若しくはPD-L1陽性がん又は別のチェックポイントタンパク質について陽性のがんとして同定される。一態様では、がんは、局所進行性がん、切除不能ながん、転移がん、又は再発がんである。
【0165】
本発明の作用薬を使用して増殖を阻害することができる、好ましいがんとしては、典型的には免疫療法に応答性であるがんが挙げられる。処置のために好ましいがんの非限定的例としては、黒色腫(例えば、転移性悪性黒色腫)、腎臓がん(例えば、明細胞癌)、前立腺がん(例えば、ホルモン難治性前立腺癌)、乳がん、結腸がん及び肺がん(例えば、非小細胞肺がん)が挙げられる。
【0166】
本明細書において使用される場合、「処置する」、「処置すること」又は「処置」とは、疾患又は障害を阻害又は軽減することを意味する。例えば、処置は、疾患若しくは障害に関連する症状の発生の延期、及び/又は前記疾患を発症するか若しくは発症すると予期されるそのような症状の重症度の減少を含むことができる。これらの用語は、既存の症状を軽減すること、追加的症状を予防すること、及びそのような症状の根本原因を軽減若しくは予防することを含む。従って、これらの用語は、処置される哺乳動物、例えばヒト患者の少なくとも一部に対して有益な結果が付与されることを意味する。多くの医学的処置は、その処置を受けるすべてではないが一部の患者にとっては、効果的である。
【0167】
用語「対象」又は「患者」とは、処置、観察、又は診断の対象である動物、例えばヒトを指す。単なる例として、対象としては、哺乳動物が挙げられるが、これに限定はされず、哺乳動物としては、ヒト又は非ヒト哺乳動物、例えば非ヒト霊長類、マウス、ウシ、ウマ、イヌ、ヒツジ、又はネコが挙げられるが、これらに限定はされない。一実施形態では、対象は、事前の抗がん処置を既に受けたか又は抗がん処置を受けているところである、がん患者である。一実施形態では、抗がん処置は、免疫チェックポイント阻害剤を用いた処置である。例示的な免疫チェックポイント阻害剤が、本明細書において記載されている。
【0168】
用語「抗がん療法」とは、がんを減少若しくは排除すること、がんの進行を遅くすること、がん転移のリスクを予防若しくは減少すること、及び/又はがんに関連するなんらかの1又は複数の症状を減少若しくは予防することを目指す、任意の治療レジメンを指す。本明細書において記載される抗がん療法は、抗がん療法を対象、例えば、がんを有する対象又はがんを有するリスクがある対象に投与する工程を含む。
【0169】
上記の方法及び使用に従う投与としては、経口投与又は直腸投与が挙げられる。
【0170】
一実施形態では、対象は、免疫チェックポイント阻害剤を用いた事前の抗がん療法を既に受けている。一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤を含む抗がん療法が、対象に投与される。これは、本発明の組成物と同時に、同じ医薬の一部又は第2の医薬のいずれかとして、投与されうる。それはまた、本発明の組成物の投与の前又は後に投与されうる。他の処置スケジュールもまた、本発明の範囲内にある。
【0171】
一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、細菌組成物の前、細菌組成物の後、又は細菌組成物と同時に、投与される。一実施形態では、チェックポイント療法が開始され、3~6か月後に何の応答も観察されない場合には、その後、本明細書において記載される細菌組成物を使用する処置で補われる。
【0172】
一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、細菌組成物の後に投与される。一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、注射/注入により投与される。一実施形態では、注射は、静脈内注射、筋肉内注射、腫瘍内注射又は皮下注射である。
【0173】
処置の態様に従って使用されうるチェックポイント阻害剤は、上記に規定されている。例えば、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1活性、CTLA-4活性又はPD-L1活性を阻害する。一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗PD-1抗体、抗CTLA-4抗体又は抗PD-L1抗体である。一実施形態では、抗PD-1抗体、抗CTLA-4抗体又は抗PD-L1抗体は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、セミプリマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、スパルタリズマブ、カムレリズマブ、シンチリマブ、チスレリズマブ、ピジリズマブ又はトリパリマブ、イピリムマブ又はトレメリムマブから選択される。
【0174】
特定の障害又は状態の処置において効果的/活性である抗体の量は、その障害又は状態の性質に依存し、標準的臨床技術によって決定されうる。更に、インビトロアッセイ又はインビボアッセイが、最適な投与量範囲を同定するのを助けるために任意選択で使用されうる。組成物において使用されるべき正確な用量もまた、投与経路及びその疾患又は障害の重症度に依存し、実務家の判断及び各患者の環境に従って決定されるべきである。年齢、体重、性別、食事、投与時期、排出速度、宿主の状態、薬物の組合せ、反応感受性及び疾患の重症度等の要因が、考慮されるべきである。
【0175】
典型的には、量は、組成物のうち少なくとも約0.01質量%の抗PD-1抗体、抗CTL-4抗体又は抗PD-L1抗体である。経口投与が意図される場合、この量は、組成物のうち約0.1質量%~約80質量%の範囲に及ぶように変化されうる。経口組成物は、組成物のうち約4質量%~約50質量%の抗体を含むことができる。
【0176】
抗体組成物は、1非経口投与単位が約0.01質量%~約2質量%の抗体を含むように、調製されうる。
【0177】
注射による投与のために、組成物は、典型的には動物の体重のうち約0.1mg/kg~約250mg/kg、好ましくは動物の体重のうち約0.1mg/kgから約20mg/kgの間、より好ましくは動物の体重のうち約1mg/kg~約10mg/kgを含むことができる。一実施形態では、組成物は、約1mg/kg~約30mg/kg、例えば、約5mg/kg~約25mg/kg、約10mg/kg~約20mg/kg、約1mg/kg~約5mg/kg、又は約3mg/kgの用量で投与される。投与スケジュールは、例えば1週間に1回から2週間に1回、3週間に1回、又は4週間に1回まで変化することができる。
【0178】
一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、干渉核酸分子である。一実施形態では、干渉核酸分子は、siRNA分子、shRNA分子又はアンチセンスRNA分子である。一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、小分子若しくはタンパク質分解誘導キメラ分子(PROTAC)又は他の免疫チェックポイント阻害剤、例えば上記の他の免疫チェックポイント阻害剤である。
【0179】
一実施形態では、方法及び使用は、抗がん療法の投与、例えば、免疫チェックポイント阻害剤に加えて第2の抗がん治療薬の投与を更に含む。抗がん療法は、治療剤又は放射線療法を含むことができ、抗がん療法としては、遺伝子治療、ウイルス療法、RNA療法、骨髄移植、ナノ療法、標的化抗がん療法又は腫瘍溶解性薬物又はそれらの組合せが挙げられる。他の治療剤の例としては、他のチェックポイント阻害剤、抗腫瘍薬、免疫原性薬物、弱毒化がん性細胞、腫瘍抗原、抗原提示細胞、例えば腫瘍由来抗原若しくは腫瘍由来核酸をパルスした樹状細胞、免疫刺激性サイトカイン(例えば、IL-2、IFNa2、GM-CSF)、標的化小分子及び標的化生物学的分子(例えばシグナル伝達経路の成分、例えば、チロシンキナーゼの調節物質及び受容体型チロシンキナーゼの阻害薬、並びに腫瘍特異的抗原に結合する作用薬(EGFRアンタゴニストが挙げられる))、抗炎症薬、細胞傷害性薬物、放射線毒性薬物、又は免疫抑制薬及び免疫刺激性サイトカイン(例えばGM-CSF)をコードする遺伝子でトランスフェクトされた細胞、化学療法が挙げられる。一実施形態では、組成物は、手術と組み合わせて使用される。一実施形態では、組成物は、末梢血移植物、骨髄移植物、臍帯血移植物、又は皮膚由来の幹細胞移植物を含む、幹細胞移植物療法と組み合わせて使用される。
【0180】
一実施形態では、組成物は、養子細胞移入(ACT)と組み合わせて使用される。一般に、養子細胞移入療法は、細胞を対象から採取する工程、詳細には、特定の細胞集団を産生又は増殖する工程、任意選択でその細胞を活性化する工程、及び増殖した細胞を対象に投与する工程を含む。一部の実施形態では、望ましい細胞は、がん細胞を死滅させることが可能であるか又は排除することが可能である、免疫細胞である。
【0181】
一部の実施形態では、養子細胞移入療法は、操作されたT細胞受容体又はキメラ抗原受容体を使用し、CAR-T療法とも呼ばれうる。CAR-T細胞は、対象から採取されキメラ抗原受容体(CAR)を細胞表面に発現するように遺伝子操作されている、T細胞を含む。CAR-T細胞受容体は、がん細胞の特定の抗原(例えば、がん抗原)を認識するように設計される。CAR-T細胞が対象に注入された後、そのCAR-T細胞は、その特定の抗原を表面に発現するがん細胞を認識して死滅させる。一部の実施形態では、CAR-T細胞は自家細胞であり、これは、そのT細胞が採取されて同じ対象へと再投与されたことを意味する。一部の実施形態では、CAR-T細胞は、CD8+T細胞である。一部の実施形態では、CAR-T細胞は同種細胞であり、これは、そのT細胞が、ある対象(例えばドナー)から採取されて別の対象(例えばレシピエント)へ投与されたことを意味する。
【0182】
CAR-T細胞によって標的とされうるがん抗原の例は、当該分野において公知であり、標的化のためのがん抗原の選択は、標的とされるがん等の要因に依存する。
【0183】
一部の実施形態では、抗がん療法は、1又は複数の共刺激因子を投与する工程を含む。一部の実施形態では、共刺激因子は、1又は複数の共刺激分子を標的とすることによって免疫応答を調節する、分子である。一部の実施形態では、共刺激因子は、抗がん免疫応答を、例えば免疫応答の下方制御を防止することによって、増強する。共刺激因子は、がん療法において単独で、又はそのがん療法の治療的効果を増強するために1又は複数のがん療法と組み合わせて、投与されうる。一部の実施形態では、共刺激因子は、CD-28、OX-40、4-1BB、又はCD40を標的とする、抗体である。
【0184】
本発明の一実施形態では、組成物は、化学療法剤及び/又は放射線療法とともに投与される。別の特定の実施形態では、化学療法剤及び/又は放射線療法は、本発明の組成物の投与の前又は後に、好ましくは本発明の組成物の投与の少なくとも1時間前又は後、少なくとも5時間前又は後、少なくとも12時間前又は後、少なくとも1日前又は後、少なくとも1週間前又は後、少なくとも1か月前又は後、より好ましくは少なくとも数か月(例えば3か月まで)前又は後に、投与される。
【0185】
本明細書において使用される場合、化学療法剤とは、がん細胞を特異的若しくは優先的に死滅させるか又はがん細胞の増殖を特異的若しくは優先的に阻害する、分子(例えば薬物)を指す。化学療法剤は、化学療法剤の分子標的、作用機序、及び/又はその薬の構造に基づいて、一般的には分類されうる。一部の実施形態では、化学療法剤は、アルキル化薬、植物アルカロイド、抗腫瘍抗生物質、代謝拮抗薬、トポイソメラーゼ阻害薬、又は他の抗腫瘍薬である。
【0186】
一実施形態では、化学療法剤は、アルキル化薬、スルホン酸アルキル、アジリジン、エチレンイミン、メチルメラミン(methylamelamine)、アセトゲニン、カンプトテシン、ブリオスタチン、カリスタチン(cally statin)、CC-1065、クリプトフィシン、ドラスタチン、デュオカルマイシン、エリュテロビン、パンクラチスタチン(pancratistatin)、サルコディクチン(sarcodictyin)、スポンギスタチン、ナイトロジェンマスタード、ニトロソ尿素、抗生物質、ダイネミシン;ビスホスホネート、エスペラミシン、ネオカルジノスタチンクロモフォア及び関連する色素タンパク質エンジイン抗生物質クロモフォア、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カルビシン(carabicin)、カミノマイシン(caminomycin)、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、アドリアマイシン(ドキソルビシン)、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン、代謝拮抗薬、葉酸アナログ、プリンアナログ、ピリミジンアナログ、アンドロゲン、抗副腎薬(anti-adrenal)、葉酸補充薬、アセグラトン、アルドホスファミドグリコシド、アミノレブリン酸、エニルウラシル、アムサクリン、ベストラブシル(bestrabucil)、ビサントレン、エダトレキサート、デメコルチン、ジアジコン、エフロルニチン(elformithine)、エリプチニウムアセタート(elliptinium acetate)、エポチロン、エトグルシド、硝酸ガリウム、ヒドロキシ尿素、レンチナン、ロニダミン(lonidainine)、マイタンシノイド、ミトグアゾン、ミトキサントロン、モピダモール(mopidanmol)、ニトラクリン(nitraerine)、ペントスタチン、フェナメット(phenamet)、ピラルビシン、ロソキサントロン、ポドフィリン酸(podophyllinic acid)、2-エチルヒドラジド、プロカルバジン、PSK多糖類複合体、ラゾキサン、リゾキシン、シゾフィラン(sizofuran)、スピロゲルマニウム、テヌアゾン酸、トリアジコン、2,2',2"-トリクロロトリエチルアミン、トリコテセン、ウレタン、ビンデシン、ダカルバジン、マンノムスチン、ミトブロニトール、ミトラクトール、ピポブロマン、ガシトシン(gacytosine)、アラビノシド(「Ara-C」)、シクロホスファミド、チオテパ、タキソイド、アブラキサン(クレモフォール不使用)、パクリタキセルのアルブミン操作ナノ粒子製剤及びタキソテール(ドセタキセル)、クロラムブシル、ジェムザール(ゲムシタビン)、6-チオグアニン、メルカプトプリン、メトトレキサート、白金アナログ、ビンブラスチン、白金、エトポシド(VP-16)、イホスファミド、ミトキサントロン、ビンクリスチン、ナベルビン、ビノレルビン、ノバントロン、テニポシド、エダトレキサート、ダウノマイシン、アミノプテリン、ゼローダ、イバンドロネート、イリノテカン(カンプトサール(Camptosar)、CPT-11)、トポイソメラーゼ阻害薬RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO)、レチノイド、カペシタビン、コンブレタスタチン、ロイコボリン(LV)、オキサリプラチン、ビニメチニブ(メクトビ)、エンコラフェニブ(ビラフトビ)、ラパチニブ(タイケルブ)、PKC-aの阻害薬、Rafの阻害薬、H-Rasの阻害薬、EGFRの阻害薬、VEGF-Aの阻害薬、それらの薬学的に許容される塩、酸又は誘導体、並びにそれらの組合せからなる群から選択される。
【0187】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、2以上の(例えば、2以上、3以上、4以上、5以上の)治療剤とともに投与されうる。
【0188】
一実施形態では、投与は、T細胞活性化に関与する作用薬、腫瘍微小環境変更因子 (TME)又は腫瘍特異的標的と一緒である。
【0189】
一実施形態では、方法及び使用は、抗生物質を対象に投与する工程を更に含む。
【0190】
なお別の態様では、本発明は、対象において免疫応答を調節する方法を提供し、この方法は、対象に本発明の組成物を投与する工程を含む。
【0191】
一部の実施形態では、個体は、1又は複数の抗がん療法に対して抵抗性である(抵抗性であることが実証された)がんを有する。一部の実施形態では、抗がん療法に対する抵抗性は、がん又は難治性がんの再発を含む。再発とは、元の部位又は新規部位における、処置後のがんの再出現を指すことができる。一部の実施形態では、抗がん療法に対する抵抗性は、抗がん療法を用いた処置中のがんの進行を含む。一部の実施形態では、がんは、初期であるか又は末期である。
【0192】
本発明の組成物は、免疫賦活特性を有する。従って、組成物の使用は、がんの処置に限定はされない。従って、免疫賦活特性に起因して、組成物には、免疫賦活を必要とするあらゆる疾患の処置、例えば非がん免疫療法において、用途が見出される。免疫療法は、免疫系を標的とするか又は操作する治療アプローチとして、集合的に定義される。最終的には、免疫療法は、宿主の適応免疫応答及び自然免疫応答を利用して罹患細胞の長期排除を実現することを目指し、受動的(養子アプローチ及び抗体ベースのアプローチが挙げられる)アプローチ並びに能動的(ワクチン療法及びアレルゲン特異的アプローチが挙げられる)アプローチに広く分類されうる。受動免疫療法が、ex vivoで生じた免疫エレメント(抗体、免疫細胞)の患者への投与を含み、宿主免疫応答を刺激しない一方で、能動免疫療法は、患者の免疫応答を誘導し、特定の免疫エフェクター(抗体及びT細胞)の発生を生じる。免疫療法は、感染性疾患を予防又は処置する能力を改善するための可能性のある様式を提供する(Naran等、Front Microbiol.、2018;9:3158)。従って、一部の実施形態では、疾患は、感染性疾患である。
【0193】
がん療法におけるPD-1及びPD-L1の遮断に関する最近の成功は、抗腫瘍免疫応答の制御におけるPD-1/PD-L1経路の重要な役割を示す。しかし、PD-1/PD-L経路によって制御されるシグナル伝達もまた、自己免疫応答、慢性感染症、及び敗血症におけるものと類似しうる実質的な炎症性効果に関連し、防御免疫と免疫病理との平衡を保つこと並びにホメオスタシス及び寛容における、この経路の役割と一致する(Quin等、Front Immunol.、2019;10:2298頁;Rao等、Int. J. Infect. Dis.、2017;56:223頁)。従って、別の態様では、本発明は、感染性疾患の処置における使用のための、本明細書において記載される組成物;例えば、table 1(表1)におけるB1~B15のうちの1又は複数を含む組成物、例えば配列番号1~15又はそれらに対して少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも98.7%又は少なくとも99%の配列同一性を有する配列(例えば配列番号16~29)から選択される配列を有する16S rDNAを有する1又は複数の細菌単離物を含む組成物を、提供する。本発明の組成物を対象に投与する工程を含む、感染性疾患の処置のための方法もまた、提供される。感染性疾患の処置のための医薬の製造における使用のための、本明細書において記載される組成物もまた、提供される。
【0194】
感染性疾患は、ウイルス感染、真菌感染及び細菌感染でありうる。感染性疾患は、慢性感染性疾患でありうる。非限定的例としては、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、B型肝炎(HBV)、C型肝炎(HCV)、JC(ジョン・カニンガム)ウイルス/進行性多巣性白質脳症及び結核が挙げられる。
【0195】
本発明の組成物を用いた感染の処置は、免疫療法、例えば免疫チェックポイント阻害剤、他の抗ウイルス薬又は抗感染薬を伴う、併用療法としてでありうる。
【0196】
別の態様では、本発明は、ワクチンアジュバントとしての使用のための、本明細書において記載される組成物、例えばtable 1(表1)におけるB1~B15のうちの1又は複数を含む組成物、例えば配列番号1~15又はそれらに対して少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも98.7%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列から選択される配列を有する16S rDNAを有する1又は複数の細菌単離物を含む組成物を、提供する。ワクチン有効性を増加するための方法もまた提供され、この方法は、本明細書において記載される組成物を対象に投与する工程を含み、この組成物は、例えばTable 1(表1)におけるB1~B15のうちの1又は複数を含む組成物、例えば配列番号1~15又はそれらに対して少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも98.7%、少なくとも99%若しくは少なくとも100%の配列同一性を有する配列(例えば配列番号16~29)から選択される配列を有する16S rDNAを有する1又は複数の細菌単離物を含む組成物である。前記対象は、細菌組成物の投与の前、細菌組成物の投与の後、又は細菌組成物の投与と同時に、ワクチンを受けることができる。
【0197】
投与は「治療有効量」においてでありえ、これは、個体に利点を示すのに十分である。そのような利点は、少なくとも1つの症状の少なくとも軽減でありうる。従って、特定の疾患の「処置」とは、少なくとも1つの症状の軽減を指す。投与される実際の量並びに投与の速度及び時間経過は、処置されるものの性質及び重症度、処置される特定の患者、個別の患者の臨床状態、組成物の送達部位、治療用組成物の型、投与の方法、投与のスケジューリング並びに医学の実務家にとって公知である他の要因に依存する。処置の処方、例えば投与量の決定等は、一般医及び他の医師の責任の範囲内にあり、症状の重症度及び/又は処置される疾患の進行に依存しうる。本発明の治療用組成物の治療有効量又は適切な用量は、そのインビトロ活性と動物モデルにおけるインビボ活性とを比較することによって、決定されうる。マウス及び他の試験動物における効果的な投与量をヒトに外挿するための方法は、公知である。正確な用量は、治療用組成物が予防用であるか又は処置用であるか等を含む、多数の要因に依存する。
【0198】
組成物の投与を必要とする方法の一実施形態では、その方法は、投与後の対象において、投与された細菌株のうちの1又は複数の存在を検出する更なる工程を含む。検出のための方法は、例えば、前記対象において、少なくとも1つの投与された細菌単離物の本明細書において規定された16S核酸配列を検出する工程を含む。
【0199】
本発明の組成物は、適切な培地又は適切な複数の培地において、組成物中に存在する2以上の単離された細菌を培養する工程を含む方法によって、調製されうる。本発明の治療用組成物に含まれるべき細菌を培養するために適切な培地及び条件は、本明細書において他の箇所で詳細に記載されている。例えば、本発明に従う治療用組成物を調製する方法は、
(i)第1の単離された細菌を培養する工程;
(ii)第2の単離された細菌及び任意選択で更に単離された細菌を培養する工程;並びに
(iii) (i)及び(ii)において得られた細菌を混合して治療用組成物を調製する工程
を含むことができる。
【0200】
組成物に含まれるべき単離された細菌は、別個の工程で培養されうる。換言すると、治療用組成物に含まれるべき各細菌の別個の培養物が、好ましくは調製される。これは、各細菌の増殖が評価されること、及び医薬組成物に含まれるべき各細菌の量が望ましいように制御されることを、可能にする。工程(i)及び(ii)において培養される細菌は、別個の16S核酸配列、つまり99%未満、98%未満、97%未満、96%未満又は95%未満の配列同一性を共有する16S核酸配列を、好ましくは有する。
【0201】
上記の方法は、組成物に含まれるべき単離された細菌各々を培養する工程を含むことができる。
【0202】
方法は、細菌が1又は複数の追加的成分、例えば、薬学的に許容される賦形剤、プレバイオティクス、担体、不溶性食物線維、緩衝剤、浸透圧物質、消泡剤、及び/又は保存剤と混合される1又は複数の更なる工程を、任意選択で含むことができる。更に、又は代替的に、方法は、(i)において得られた細菌及び任意選択で(ii)において得られた細菌を、ケモスタット培地又は生理食塩水(例えば0.9%生理食塩水)中に懸濁する工程を含むことができる。(i)において得られた細菌及び任意選択で(ii)において得られた細菌は、還元雰囲気(例えばN2、CO2、H2、又はそれらの混合物、例えばN2:CO2:H2)下で提供されうる。気体は、治療用組成物に存在する細菌の保存のために適切な比で存在することができる。例えば、還元雰囲気は、80%のN2、10%のCO2及び10%のH2を含むことができる。更に、又は代替的に、方法は、(i)において得られた細菌及び任意選択で(ii)において得られた細菌を、任意選択で安定剤及び/又は凍結保護物質の存在下で、凍結乾燥する工程を含むことができる。方法はまた、(i)において得られた細菌及び任意選択で(ii)において得られた細菌を含む、カプセル、錠剤、又は浣腸を調製する工程も含むことができる。カプセル又は錠剤は、腸溶コーティング済、pH依存性、徐放性、及び/又は胃酸耐性でありうる。
【0203】
本発明の組成物はまた、栄養補助食品、飲料又は他の食料品の形態で提供されうる。従って、本発明はまた、本発明の組成物を含む、食品又はワクチンに関する。
【0204】
がん患者に投与される抗PD-1抗体/抗PD-L1抗体/抗PD-L2抗体ベースの治療に対するアジュバントとしての使用のための免疫原性組成物もまた提供され、この使用のための免疫原性組成物は、Table 1(表1)において列挙された細菌から選択される細菌のフラグメントを含む。
【0205】
バイオマーカー
本発明は、がん患者における免疫チェックポイント阻害剤を用いた療法に対する腫瘍応答を予測するマイクロバイオームバイオマーカーを提供する。特に、本発明は、免疫チェックポイント阻害剤を用いた療法に対する腫瘍応答を予測するマイクロバイオームバイオマーカーシグネチャーを提供する。本明細書で使用される場合、マイクロバイオームバイオマーカーシグネチャーは、それぞれ、免疫チェックポイント阻害剤を用いた療法に応答性である対象における存在量が増加している表1に示す細菌種のうち少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15種からの細菌を含む複合バイオマーカーシグネチャーである。一実施形態では、シグネチャーは、免疫チェックポイント阻害剤を用いた療法に応答性である対象の集団における存在量がそれぞれ増加している表1から選択される少なくとも9、10、11、12、13、14、又は15種の細菌種からの細菌を含む。バイオマーカーシグネチャーについては、以下に更に詳細に記載する。
【0206】
別の態様は、対象におけるがんを処置するための方法であって、治療有効量の免疫チェックポイント阻害剤を前記対象に投与する工程を含み、対象が、腸マイクロバイオームに好ましい微生物プロファイルを有すると決定されている、方法を提供する。好ましい微生物プロファイルは、本明細書に記載のバイオマーカー/バイオマーカーシグネチャーの存在を特徴とする。
【0207】
別の態様は、対象におけるがんを処置する方法であって、対象が、腸マイクロバイオームに好ましくない微生物プロファイルを有すると決定されている方法を提供する。好ましくない微生物プロファイルは、本明細書に記載のバイオマーカー/バイオマーカーシグネチャーの不在を特徴とする。方法は、免疫チェックポイント阻害剤療法ではない抗がん療法の投与を更に含んでもよい。別の実施形態では、方法は、本明細書に記載の治療用細菌組成物及び免疫チェックポイント阻害剤療法、例えばPD-1阻害剤との併用療法の投与を含む。
【0208】
したがって、本発明は、免疫チェックポイント阻害剤、例えばPD-1を用いた療法に応答する対象を同定するための方法であって、腸(すなわち腸内)フローラを含む前記対象由来の生体試料における、表1中でB1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、B8、B9、B10、B11、B12、B13、B14、及び/又はB15と同定されている細菌のうちの1又は複数種の存在量を決定する工程を含み、B1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、B8、B9、B10、B11、B12、B13、B14、及び/又はB15のうちの1又は複数種、例えばB1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、B8、及び/又はB9のうちの1又は複数種の存在量の増加が、対象が免疫チェックポイント阻害剤、例えばPD-1を用いた療法に応答することを予測する方法にも関する。B1からB15は、表1に列挙されており、これは、細菌を定義する配列識別子への参照を含んでいる。対応する配列は、表2に列挙されている。一実施形態では、対象は、がん、例えば黒色腫と診断されている患者である。
【0209】
特に、本発明は、がんを有する対象における免疫チェックポイント阻害剤療法に対する応答を予測するための方法/免疫チェックポイント阻害剤を用いた療法に応答する対象を同定するための方法であって、
a)対象から得られた生物サンプルにおける、表1中のB1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、B8、B9、B10、B11、B12、B13、B14、及び/又はB15から選択される細菌の1又は複数種の存在量を決定する工程と、
b)存在量を、免疫チェックポイント阻害剤を用いた療法に応答しないがん患者由来の参照レベルと比較するか、又は存在量を、免疫チェックポイント阻害剤を用いた療法に応答するがん患者由来の参照レベルと比較する工程とを含み、
参照レベルが、免疫チェックポイント阻害剤を用いた療法に応答しないがん患者由来である場合に、参照レベルと比較した、B1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、B8、B9、B10、B11、B12、B13、B14、及び/若しくはB15のうちの1若しくは複数種の存在量の増加が、対象が免疫チェックポイント阻害剤を用いた療法に応答することを予測するか、又は
参照レベルが、免疫チェックポイント阻害剤を用いた療法に応答する患者由来である場合に、B1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、B8、B9、B10、B11、B12、B13、B14、及び/又はB15のうちの1又は複数種の存在量が同じか、実質的に同じか、若しくは増加していることが、対象が免疫チェックポイント阻害剤を用いた療法に応答することを予測する、
方法にも関する。
【0210】
追加の工程は、療法に応答する対象を同定する工程を含みうる。
【0211】
特に、本発明は、がんを有する対象における免疫チェックポイント阻害剤療法に対する応答を予測するための方法/免疫チェックポイント阻害剤を用いた療法に応答する対象を同定するための方法であって、
a)対象から得られた生物サンプルにおける、表1中のB1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、B8、B9、B10、B11、B12、B13、B14、及び/又はB15から選択される細菌のうちの1又は複数種の存在量を決定する工程と、
b)存在量を、がん患者若しくは健常対象由来の参照レベルと比較する工程と、
c)ランダムフォレスト分析を適用する工程とを含む方法にも関する。この実施形態では、参照レベルは、がん患者のプールであるがん患者由来である。これらは、応答者及び非応答者を含みうる。
【0212】
追加の工程は、療法に応答する対象を同定する工程又は応答を予測する工程を含みうる。
【0213】
したがって、表1中のB1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、B8、B9、B10、B11、B12、B13、B14、及びB15から選択され1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15種の異なる細菌の存在量が決定される。これらの種を特徴付けるそれぞれの配列を配列番号1~15として提供する。他の箇所で説明するように、配列番号16~29も用いることができる。一部の実施形態では、表1中でB1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、B8、B9、B10、B11、B12、B13、B14、及びB15と同定されている少なくとも9、10、11、12、13、14、又は15の異なる種から選択される細菌の存在量が決定される。したがって、次の配列番号、すなわち配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、若しくは15のうちの少なくとも9つのから選択される番号の配列又は例えば配列番号16~29等、それらと少なくとも97%、98%、98.7%又は99%配列同一性を有する配列を有する細菌の存在量が決定される。
【0214】
がんを処置されている、又は処置されたことのある患者における再発を予測するための方法であって、B1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、B8、B9、B10、B11、B12、B13、B14、及び/又はB15から選択される1又は複数種の細菌の存在/相対的存在量を、前記患者から例えば異なる時点に得られた糞便サンプルで評価する工程を含む方法も提供する。
【0215】
存在量が決定される場合、細菌、すなわち細菌種のそれぞれについて、存在量スコアを取得し、測定する。方法によると、表1に列挙した細菌のうちの1又は複数種の存在量、すなわち存在量スコアの増加が、対象が免疫チェックポイント阻害剤を用いた療法に応答することを予測する。増加は、参照値と比較した、存在量、すなわち存在量スコアの増加を指す。それゆえ、方法は、表1に列挙した細菌のうちの1又は複数種の存在量を1つ又は複数の参照値と比較する工程も含む。例えば、表1に列挙した細菌のうちの1又は複数種の存在量を、表1に列挙した細菌のうちの1又は複数種の参照値と比較することができる。代わりに、表1に列挙した細菌のちの1又は複数種の存在量の加算平均を、表1に列挙した細菌のうちの1又は複数種の存在量の参照加算平均である単一の参照値と比較することができる。一実施形態では、方法は、B1からB15までから選択される少なくとも9、10、11、12、13、14、又は15種の異なる細菌の存在量を決定し、それにより、複合シグネチャーに基づく、マイクロバイオームバイオマーカーシグネチャー、すなわちマイクロバイオームバイオマーカーシグネチャースコアを決定する。
【0216】
上記の方法の一実施形態では、表1に列挙した細菌のすべての存在量を決定する。別の実施形態では、表1に列挙した細菌のサブセットの存在量を決定する。例えば、サブセットは、表1から選択される1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15種の異なる細菌を含むか、又はそれからなる。一実施形態では、サブセットは、9種の細菌、例えば、アイゼンバーグエラ属種、ブチリシコッカス属種、クロストリジウム目種、アリスティペス・オベシアリスティペス・インディスティンクタスゴードニバクター・ウロリチンファシエンスフィーカリタリア属種、ブラウティア属種(B8)、及びバルネシエラ・インテスティニホミニスを含むか、又はそれからなる。一実施形態では、サブセットは、9又は12種の細菌、例えば、表3中の細菌コンソーシアムの1つを含むか、又はそれからなる。一実施形態では、バイオマーカーは、アリスティペス属種を含まない。
【0217】
参照値は、参照サンプルからの事前決定値であってもよい。例えば、参照値は、それぞれ、参照対象のプール内の細菌のそれぞれの平均存在量又はそれらの複合シグネチャーであってもよい。
【0218】
例えば、参照値が事前決定の値、例えば、事前決定の閾値である。そのような値は、参照サンプルから事前に決定することができる。B1~B15のうちの1又は複数種の細菌の存在量に関する事前決定の閾値は、サンプル、例えば糞便サンプル中の全微生物叢の割合としての、サンプル中の細菌の存在量を指し、その上又は下において、そのシグネチャーについて、サンプルが陽性であり、したがって免疫チェックポイント阻害剤を用いた療法に応答性であると評価される。例えば、試験サンプルの存在量スコアが事前決定の閾値以上である場合、そのサンプルは、そのシグネチャーについて陽性であると考えられ、対象は、免疫チェックポイント阻害剤を用いた療法に応答性である。
【0219】
例えば、サンプルプール中の被験細菌レベルの存在量スコアをコンピュータ上又はコンピュータ読み込み可能な媒体上に保存して、必要な場合に、試験サンプルからの被験細菌の存在量と比較する参照レベルとして使用する。参照値を確立するため、及び/又はサンプル中の、表1に列挙した細菌のうちの1又は複数種から選択される細菌の存在量を、免疫チェックポイント阻害剤を用いた処置に対する対象の応答性と相関させるために、1セットの対象における複数のバイオマーカーについての情報を含む訓練データを使用して訓練された、Coxモデル等のバイオマーカーの同定でよく使用されている機械学習アルゴリズム及び/若しくはモデル又は他のモデルを使用することができる。
【0220】
本明細書において、「相関」という用語は、1又は複数種の細菌の調節された存在量に基づいて処置状況に対する応答性を決定又は計算するのに使用され、相関関係の任意の方法、例えばアルゴリズムの方法を意味すると理解するべきである。本明細書に記載の方法論は、ランダムフォレスト分類として知られている数学的モデリング技法を用いるが、他のモデリング技法を用いてもよい。したがって、一実施形態では、サンプルにおける、表1に列挙した細菌のうちの1又は複数種から選択される細菌の存在量を、免疫チェックポイント阻害剤を用いた処置に対する対象の応答性と相関させるために、ランダムフォレスト分類モデル又は類似のモデルを用いる。したがって、一実施形態では、本発明の方法は、細菌の調節された存在量を、免疫チェックポイント阻害剤処置応答と相関させるために、コンピュータプログラムを用いるものでありうる。
【0221】
或いは、参照値が事前決定されず、単一の実験の部分として確立される。したがって、試験サンプル中の1又は複数種の被験細菌の存在量をサンプルのプール中の1又は複数種の被験細菌の存在量と比較してもよく、試験サンプルからの被験細菌の存在量及びプールからの被験細菌の存在量が単一の実験の経過中に決定される。
【0222】
様々な実施形態で、参照サンプル/サンプルプールが、免疫チェックポイント阻害剤を用いた療法に応答性又は非応答性であることが示されているがん患者の集団でありうる。他の実施形態では、参照サンプル/サンプルプールは、チェックポイント阻害剤を用いた療法をまだ受けていないがん患者の集団でありうる。
【0223】
一実施形態では、参照値を確立するのに使用される参照サンプルは、免疫チェックポイント阻害剤療法に対する不応答者由来でありうる。試験サンプルが、参照サンプルと比較して、B1からB15までから選択される1又は複数種の細菌の存在量の増加を示す場合、試験対象は、チェックポイント免疫阻害剤を用いた療法に応答する可能性が高い。増加は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は90%超でありうる。
【0224】
一実施形態では、参照値を確立するのに使用される参照サンプルは、免疫チェックポイント阻害剤療法に対する応答者由来でありうる。試験サンプルが、参照サンプルと比較して、B1からB15までから選択される1又は複数種の細菌の存在量が同じ、実質的に同じ、又は増加していることを示す場合、試験対象は、チェックポイント免疫阻害剤を用いた療法に応答する可能性が高い。
【0225】
当業者ならば理解するように、本明細書で使用する参照値又は参照遺伝子シグネチャースコアは、対象の参照集団において、応答者の大部分を不応答者の大部分から分離するように決定された、細菌存在量シグネチャーのスコアを意味する。
【0226】
本明細書で使用される場合、「応答者」又は「応答性」患者とも呼ばれる「処置に対する良い応答者」、又は換言して、この処置「から利益を得る」患者は、がんを罹患しており、この処置を受けた後にがんにおける臨床的に有意な緩和を示しているか、示す患者を指す。逆に、「悪い応答者」又は「非応答者」は、この処置を受けた後に、がんにおける臨床的に有意な緩和を示していないか、示さない。処置に対する応答は、免疫関連効果判定基準(irRC)、WHO又はRECIST判定基準等、当技術分野で認識されている基準に従って評価することができる。
【0227】
本明細書に記載のシグネチャーバイオマーカーは、免疫チェックポイント阻害剤を用いた処置からの臨床利益を達成する可能性が最も高いがん患者を同定するのに有用である。この有用性は、限定されるものではないが、患者のマイクロバイオーム遺伝子シグネチャースコアに基づいて患者が選択されるPD-1アンタゴニストの臨床試験、患者のマイクロバイオーム遺伝子シグネチャースコアを決定するため、又はマイクロバイオームシグネチャーバイオマーカーについて陽性又は陰性に患者を分類するための診断方法及び製品、患者のマイクロバイオームシグネチャースコアに基づいて患者の薬物療法を適合させることを伴う個別化処置方法、並びにマイクロバイオームシグネチャーバイオマーカーについて陽性の試験結果を有する患者の処置に使用するための、PD-1アンタゴニストを含む医薬組成物及び製剤が含まれる、様々な研究及び商業適用におけるこれらのバイオマーカーの使用を補助する。
【0228】
当業者ならば、本願で特許請求する適用のいずれの有用性も、本発明のバイオマーカーについて陽性の試験結果を有する患者の100%が免疫チェックポイント阻害剤に対する抗腫瘍応答を達成することを必要とせず、診断方法又はキットが、あらゆる対象におけるバイオマーカーの存在又は不在の決定に特定の程度の特異度若しくは感度を有することも必要せず、本願で特許請求する診断方法が、あらゆる対象について、その対象がPD-1アンタゴニストに対する有益な応答を有する可能性が高いかどうかの予測において100%正確であることも必要としないことも理解する。したがって、本発明者らは、本明細書において、「決定する」、「決定すること」、及び「予測すること」という用語は、明確な又は特定の結果を必要とすると解釈するべきではなく、代わりに、これらの用語は、特許請求の方法が少なくとも対象の大部分についての正確な結果を提供すること、又は任意の所与の対象についての結果又は予測が、誤っている可能性より、正しい可能性が高いことのいずれかを意味すると理解するべきであることを意図する。好ましくは、本発明の診断方法によって提供される結果の精度は、方法が使用される特定の適用に適していると当業者又は規制当局が考えるであろう精度である。
【0229】
本明細書で使用される場合、サンプルは、腸からの生物サンプル、すなわち、腸の腸内フローラを含むものである。これは、対象の腸から得られるサンプル、例えば糞便サンプルを指す。糞便サンプルから細菌を単離する方法は知られている。場合によっては、マイクロバイオームサンプルが粘膜生検によって得られる。試験サンプルは、評価されている対象から得られるサンプルである。
【0230】
方法の一実施形態では、存在量は相対的存在量である。本明細書で使用される場合、サンプル中の細菌に適用される「相対的存在量」という用語は、サンプル又は参照サンプル中の全微生物叢の割合としてのサンプル中の細菌の存在量を意味すると理解するべきである。一実施形態では、相対的存在量は、サンプル中の全微生物叢の割合としてのサンプル中の細菌の存在量である。
【0231】
一実施形態では、調節された存在量は、参照対象由来の同じサンプル中の相対的存在量と比較した、サンプル中の細菌の相対的存在量の差である。
【0232】
一実施形態では、細菌の相対的存在量を決定するために、サンプル中の全微生物叢の割合としてのサンプル中の細菌の存在量を測定する。次いで、そのような実施形態では、サンプル中の細菌の相対的存在量を参照個体由来の同じサンプル中の相対的存在量(本明細書では「参照相対的存在量」ともいう)と比較した。サンプル中の細菌の相対的存在量の差、例えば参照相対的存在量と比較した増加が、調節された相対的存在量である。調節された存在量の検出は、サンプル存在量値を絶対的参照値と比較することによって、絶対的に実施することもできる。
【0233】
例えば、寒天プレート定量化アッセイ、蛍光定量的なサンプル定量化、PCR法、16S rRNA/rDNA遺伝子アンプリコンシーケンシング、ショットガンメタゲノムシーケンシング、及び色素ベースの代謝物枯渇又は代謝物産生アッセイが含まれる、細菌の存在/存在量を検出する任意の適した方法を利用することができる。使用されるPCR技法は、DNA、cDNA、又はRNAの開始量を定量的に測定することができる。本発明によるPCRベースの技法の例には、限定されるものではないが、定量的PCR(Q-PCR)、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、定量的逆転写酵素PCR(QRT-PCR)、ローリングサークル増幅(RCA)、又はデジタルPCR等の技法が含まれる。これらの技法はよく知られており、容易に利用可能であり、正確な記載を必要としない。特定の実施形態では、本発明の細菌遺伝子のコピー数の決定が定量的PCRによって実施される。
【0234】
一実施形態では、核酸増幅反応を用いてサンプルを分析する。分析は、細菌ゲノム中の科、目特異的、綱特異的、及び/若しくは属特異的な16S rRNA/rDNA、又は他の配列を検出することを含みうる。一実施形態では、完全長16S rDNAを検出することができる。一実施形態では、部分的16S rDNA、例えばV領域の1つを検出することができる。一実施形態では、分析は、サンプル中の細菌核酸をビーズ又はアレイ、例えば核酸マイクロアレイにハイブリダイズさせることを含む。
【0235】
PCRベースの技法は、測定する配列に特異的であるように設計された増幅プライマーを用いて実施する。したがって、本発明は、上記の方法を実施するのに適した1セットのプライマー、すなわち、検出するべき微生物種(すなわち、表1及び表2及び表3に記載のものから選択される少なくとも1種以上)にそれぞれ特異的な配列を増幅するためのプライマー対を含む1セットのプライマーにも関する。
【0236】
B1~B15の16S rDNA配列を本明細書に示す。そのような分析のためのプライマーを生成するのにこれを用いることができる。一実施形態では、上記細菌のうちの複数を検出する。一実施形態では、ゲノムシーケンシングを用いて、細菌の核酸についてサンプルを分析する。
【0237】
一実施形態では、対象は、黒色腫患者等、がん患者である。がん患者は、抗がん処置を受けていても、受けていなくてもよい。したがって、対象は、免疫チェックポイント阻害剤を用いた処置を必要としているものでありうる。一実施形態では、対象は健常個体、例えば、黒色腫等、がんの家族歴がある健常個体である。
【0238】
一実施形態では、対象はがん患者であり、免疫チェックポイント阻害剤を用いた療法に応答する対象として同定されている場合、方法は、免疫チェックポイント阻害剤を前記患者に投与する更なる工程を含みうる。
【0239】
一実施形態では、方法は、腸フローラを含む生物サンプルを得る先行工程を含む。
【0240】
一実施形態では、方法は、免疫チェックポイント阻害剤を用いた処置を必要とする対象を同定する初期工程も含む。
【0241】
方法の一実施形態において、対象が応答者として同定される場合、例えば、表1に列挙した細菌のうちの1又は複数種が、サンプル中で存在量が増加していることが示されている場合、免疫チェックポイント阻害剤を含む抗がん療法を対象に投与する。
【0242】
チェックポイント阻害剤は、本明細書に定義されている通りである。方法の一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1活性を阻害し、すなわちPD-1アンタゴニストとして作用する。方法の一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-L1活性を阻害し、すなわちPD-L1アンタゴニストとして作用する。方法の一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4活性を阻害し、すなわちCTLA-4アンタゴニストとして作用する。方法の一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、LAG3、TIGIT、又はTIM3-活性を阻害する。
【0243】
一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗PD-1、PD-L1、又はCTLA-4抗体である。一実施形態では、抗PD-1抗体は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、セミプリマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、スパルタリズマブ、カムレリズマブ、シンチリマブ、チスレリズマブ、ピジリズマブ又はトリパリマブ、イピリムマブ又はトレメリムマブから選択される。
【0244】
一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、干渉核酸分子である。一実施形態では、干渉核酸分子は、siRNA分子、shRNA分子、又はアンチセンスRNA分子である。
【0245】
一実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、小分子又はタンパク質分解誘導キメラ分子(PROTAC)又は上に定義した別の免疫チェックポイント阻害剤である。
【0246】
一実施形態では、方法の更なる工程において、外科、放射線、及び/又は化学療法がん介入を行うか、又は第2の抗がん療法を前記対象に投与する。
【0247】
別の態様では、本発明は、対象が免疫チェックポイント阻害剤を用いた療法に応答しないリスクを検出する方法に関する。この方法は、腸の腸内フローラを含む前記対象由来の生物サンプルにおける、表1に列挙した細菌のうちの1又は複数種の存在量を決定する工程を含み、表1に列挙した細菌のうちの1又は複数種の存在量の減少又は参照レベル未満の存在量が、対象が免疫チェックポイント阻害剤を用いた療法に応答しないことを予測する。方法は、表1に列挙した細菌のうちの1又は複数種の存在量を1つ又は複数の参照値と比較する工程も含む。参照値は上記の通りである。決定する存在量は相対的存在量である。更なる工程において、対象が、免疫チェックポイント阻害剤を用いた療法に応答しない対象として同定されている場合に、代替の抗がん処置を投与する。或いは、更なる工程において、対象が、免疫チェックポイント阻害剤を用いた療法に応答しない対象として同定されている場合に、本明細書に記載の治療用細菌組成物を、チェックポイント阻害剤療法、例えば抗PD-1療法と共に投与する。
【0248】
別の態様では、本発明は、免疫チェックポイント阻害剤を用いた療法に応答する対象と、免疫チェックポイント阻害剤を用いた療法に応答しない対象を識別する方法に関する。方法は、腸の腸内フローラを含む前記対象由来の生物サンプルにおける、表1に列挙した細菌のうちの1又は複数種の存在量を決定する工程を含み、表1に列挙した細菌のうちの1又は複数種の存在量の減少又は参照レベル未満の存在量が、対象が免疫チェックポイント阻害剤を用いた療法に応答しないことを予測し、表1に列挙した細菌のうちの1又は複数種の存在量の増加が、対象が免疫チェックポイント阻害剤を用いた療法に応答することを予測する。方法は、表1に列挙した細菌の1又は複数種の存在量を1つ又は複数の参照値と比較する工程も含みうる。参照値は上記の通りである。決定する存在量は相対的存在量である。更なる工程において、対象が、免疫チェックポイント阻害剤を用いた療法に応答しない対象として同定されている場合に、代替の抗がん処置を投与する。
【0249】
上記のバイオマーカー方法の一実施形態では、表1から選択される1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15種の異なる細菌の調節された存在量が処置に対する応答を予測する。上記のバイオマーカー方法の別の実施形態では、表1から選択される少なくとも9、10、11、12、13、14、又は15種の異なる細菌の調節された存在量が処置に対する応答を予測する。したがって、少なくとも9、10、11、12、13、14、又は15種の異なる細菌の存在量を含む複合シグネチャーを確立することが方法の特定の実施形態である。それが、細菌の全体性、すなわち特に強力な識別ツールを提供するバイオマーカーシグネチャーである。
【0250】
上記の様々方法の一実施形態では、表1から選択される少なくとも9細菌種/9細菌種の集団、すなわち配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、及び15から選択される9種の存在量を評価する。一実施形態では、この9種のサブセットは、表3に示すコンソーシアム、すなわちコンソーシアム2、4、5、6、又は10に対応している。一実施形態では、9種は、配列番号1又はそれと少なくとも97%、98%、98.7%、若しくは99%配列同一性を有する配列によって定義される細菌を含む。一実施形態では、9種は、配列番号2又はそれと少なくとも97%、98%、98.7%、若しくは99%配列同一性を有する配列によって定義される細菌を含む。一実施形態では、9種は、配列番号3又はそれと少なくとも97%、98%、98.7%、若しくは99%配列同一性を有する配列によって定義される細菌を含む。一実施形態では、9種は、配列番号4又はそれと少なくとも97%、98%、98.7%、若しくは99%配列同一性を有する配列によって定義される細菌を含む。一実施形態では、9種は、配列番号5又はそれと少なくとも97%、98%、98.7%、若しくは99%配列同一性を有する配列によって定義される細菌を含む。一実施形態では、9種は、配列番号6又はそれと少なくとも97%、98%、98.7%、若しくは99%配列同一性を有する配列によって定義される細菌を含む。一実施形態では、9種は、配列番号7又はそれと少なくとも97%、98%、98.7%、若しくは99%配列同一性を有する配列によって定義される細菌を含む。一実施形態では、9種は、配列番号8又はそれと少なくとも97%、98%、98.7%、若しくは99%配列同一性を有する配列によって定義される細菌を含む。一実施形態では、9種は、配列番号9又はそれと少なくとも97%、98%、98.7%、若しくは99%配列同一性を有する配列によって定義される細菌を含む。一実施形態では、9種は、配列番号10又はそれと少なくとも97%、98%、98.7%、若しくは99%配列同一性を有する配列によって定義される細菌を含む。一実施形態では、9種は、配列番号11又はそれと少なくとも97%、98%、98.7%、若しくは99%配列同一性を有する配列によって定義される細菌を含む。一実施形態では、9種は、配列番号12又はそれと少なくとも97%、98%、98.7%、若しくは99%配列同一性を有する配列によって定義される細菌を含む。一実施形態では、9種は、配列番号13又はそれと少なくとも97%、98%、98.7%、若しくは99%配列同一性を有する配列によって定義される細菌を含む。一実施形態では、9種は、配列番号14又はそれと少なくとも97%、98%、98.7%、若しくは99%配列同一性を有する配列によって定義される細菌を含む。一実施形態では、9種は、配列番号15又はそれと少なくとも97%、98%、98.7%、若しくは99%配列同一性を有する配列によって定義される細菌を含む。一実施形態では、9種は、アリスティペス属種を含まない。
【0251】
一実施形態では、上記のバイオマーカー方法は、免疫チェックポイント阻害剤、例えばPD-1、PD-L1、又はCTLA-4アンタゴニストを用いた療法に対する腫瘍応答を予測する別のバイオマーカーを決定する更なる工程を含みうる。例えば、バイオマーカーは、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)又はプログラム細胞死リガンド2(PD-L2)遺伝子シグネチャーでありうる。したがって、方法は、試験対象の腫瘍からのサンプルを取得する工程と、腫瘍サンプルにおける、PD-1及び/又はPD-L1遺伝子シグネチャー内の1又は複数の遺伝子のRNA発現レベルを測定する工程と、RNA発現レベルを参照レベルと比較する工程とを含みうる。発現は、免疫組織化学を含めた任意の適切な方法で測定することができる。
【0252】
別の態様では、本発明は、チェックポイント阻害剤を用いた治療介入、例えばPD-1療法の有効性を決定する際の予測バイオマーカーとして使用するための表1に列挙した細菌のうちの1又は複数種に関する。本明細書で使用する、予測バイオマーカーという用語は、治療介入の効果に関して情報、すなわち免疫チェックポイント阻害剤を用いた処置に対する応答性を与えるバイオマーカーを記載する用語である。したがって、本発明は、免疫チェックポイント阻害剤を用いた療法に応答する患者の同定における、1又は複数種の細菌、例えば表1に列挙した細菌種のうちの1又は複数種から選択される1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15種の異なる細菌の使用に関する。
【0253】
本発明は、例えば表3にあるような、表1に列挙した細菌のうちの1又は複数種のコンソーシアムであるバイオマーカーシグネチャーであって、チェックポイント阻害剤療法を用いた、例えばPD-1阻害剤又は別のチェックポイント阻害剤療法を用いた治療介入の有効性を予測するのに使用することができるバイオマーカーシグネチャーにも関する。
【0254】
システム及びコンピュータ読み込み可能な媒体
本発明の実施形態は、対象における、免疫チェックポイント阻害剤を用いた処置に対する応答性を決定するための方法を実施するシステム(及びコンピュータシステムをもたらすためのコンピュータの読み込み可能な媒体)も提供する。別の態様では、対象が免疫チェックポイント阻害剤を用いた処置に応答する尤度を示すための、コンピュータに実装された方法を提供する。この方法は、個体についてのコンピュータバイオマーカー情報を回収する工程であって、バイオマーカー情報は、それぞれが、表1に記載の細菌の群から選択される1又は複数種の細菌の存在量に対応するバイオマーカー値を含む工程と、コンピュータでバイオマーカー値のそれぞれの分類を実施する工程と、複数の分類に基づいて、対象が免疫チェックポイント阻害剤を用いた処置に応答する尤度を示す工程とを含む。
【0255】
別の態様では、対象が免疫チェックポイント阻害剤を用いた処置に応答する尤度を示すためのコンピュータプログラム製品を提供する。コンピュータプログラム製品は、個体からの生物サンプルに起因するデータを回収するコードであって、データが、表1に記載の細菌の群から選択される1又は複数種の細菌の存在量にそれぞれが対応するバイオマーカー値を含むコードと、個体が、免疫チェックポイント阻害剤を用いた処置に応答する尤度をバイオマーカー値の関数として示す分類方法を実行するコードとを含む、コンピューティングデバイス又はシステムのプロセッサーで実行可能なプログラムコードを組み込んだコンピュータ読み込み可能な媒体を含む。
【0256】
一実施形態では、比較モジュールによって読み込まれる記憶装置に格納された参照データ、例えば、本明細書に記載の参照サンプル中の特定の細菌の相対的存在量が比較される。「比較モジュール」は、比較操作に利用可能な様々なソフトウェアプログラム及びフォーマットを用いて、決定システムで決定された細菌存在量情報データを、参照サンプル及び/又は格納されている参考データ、例えば事前決定の閾値と比較することができる。一実施形態では、比較モジュールは、1つ又は複数の入力からの情報を1つ又は複数の参照データパターンと比較するためのパターン認識技法を用いるように構成されている。比較モジュールは、パターンを比較するための既存の市販ソフトウェア又はフリー利用可能なソフトウェアを用いて構成されていてもよく、実施される特定のデータ比較に最適化されていてもよい。比較モジュールは、応答関連の細菌に関係するコンピュータ読み込み可能な情報を提供する。
【0257】
比較モジュールは、事前に定義された判定規準又はユーザによって定義された判定規準によって、コンピュータ読み込み可能な形態で処理することができるコンピュータ読み込み可能な比較結果を提供して、格納及び出力しうる比較結果に部分的に基づくコンテントを提供する。
【0258】
したがって、本明細書に記載の方法は、対象における、免疫チェックポイント阻害剤を用いた処置に対する応答性を決定するための方法を実施するシステム(及びコンピュータシステムをもたらすためのコンピュータの読み込み可能な媒体)を提供する。
【0259】
FMT
病気の患者の腸へのヒト微生物叢の移植又は投与は、糞便微生物叢移植(FMT)と呼ばれ、糞便細菌療法としても一般的に公知である。FMTは、欠けている有益な機能若しくは微生物叢を常在性腸細菌にもたらすか又は有害な微生物叢に取って代わるか又は好ましくない生態環境を作ることにより重要な病原体を制御する、多様な微生物群を腸に再生息させると考えられている。
【0260】
別の態様では、本発明は、糞便ドナーをスクリーニング/同定するための方法に関し、この方法は、対象の糞便サンプルをがんに対する応答(例えば、患者が免疫チェックポイント阻害剤で処置された場合のがんに対する応答)に関連する1又は複数の細菌の存在について評価する工程;並びに糞便ドナーを1又は複数の細菌の存在及び/又は存在量に基づいて同定する工程;を含む。
【0261】
例えば、そのような方法において、Table 1(表1)から選択される1又は複数の細菌及び糞便ドナーは、Table 1(表1)から選択される1又は複数の細菌の存在及び/又は存在量に基づいて同定される。
【0262】
別の態様では、本発明は、糞便ドナーをスクリーニング/同定するための方法に関し、この方法は、対象の糞便サンプルをTable 1(表1)から選択される1又は複数の細菌の存在について評価する工程;並びに糞便ドナーをTable 1(表1)から選択される1又は複数の細菌の存在及び/又は存在量に基づいて同定する工程を含む。方法はまた、糞便サンプルをドナーから得る工程を含むことができる。対象の糞便サンプルを1又は複数の細菌の存在について評価する工程は、当該分野において公知である方法、例えばショットガン配列決定アプローチを使用して、例えば細菌ゲノムの配列分析によって、行われうる。例えば、細菌の1又は複数は所定の閾値を超えて存在し、ドナーは、細菌療法目的のためのドナーとして選択される。所定の閾値は、ドナー集団から得られた糞便サンプルにおける1又は複数の細菌の平均存在量に基づくことができる。平均よりも高い存在量は、糞便がFMT療法のために適していることを示す。
【0263】
本発明はまた、FMT療法のためのドナーを同定するための方法における、Table 1(表1)から選択される1又は複数の細菌の使用に関する。
【0264】
本発明は、対象への投与前に糞便移植物を処理するための方法に関し、この方法は、糞便移植物をTable 1(表1)から選択される1又は複数の細菌単離物で補うか又は上記の方法によってドナーから得られた糞便サンプルで補う工程を含む。
【0265】
本発明の別の態様に従って、免疫チェックポイント阻害剤療法を用いた処置を必要とする個体が、table 1(表1)の種のうちの1若しくは複数の存在量が多いことが示されている健常個体由来の糞便微生物叢、及び/或いは免疫チェックポイント阻害剤療法を用いて処置されこの療法に応答することが証明された1若しくは数人の個体由来の糞便微生物叢、及び/或いは想定された処置に応答する可能性があると個体を同定する腸微生物叢プロファイルを示す1若しくは数人の個体由来又は応答性患者由来の糞便微生物叢を使用して、FMTによって処置される。
【0266】
上記の態様では、FMT療法は、本明細書において言及される疾患(例えば、がん、例えば黒色腫)の処置用である。
【0267】
宿主における細菌の存在量を増加するための組成物及び方法
本発明の別の態様では、対象のマイクロバイオームは、Table 1(表1)において列挙される細菌又はそれらのサブセットの存在量を増加するように変更されうる。グリカン代謝は、ヒト腸微生物叢に影響を与えることが示されており、プレバイオティクスは、抗腫瘍免疫を促進する細菌分類群を富化できる(Koropatkin等、Nature Reviews Microbiology、第10巻、323~335頁(2012);Li等、Cell Report、第30巻、第6号、P1753-1766.e6、2020年2月11日)。従って、オリゴ糖(例えばグリカン)を含む組成物の投与によって、対象においてtable 1(表1)において列挙されている細菌又はそれらのサブセットの存在量を増加するための方法が、提供される。そのような方法における使用のための、オリゴ糖(例えばグリカン)を含む組成物もまた、想定される。
【0268】
キット
更なる態様において、本発明はキットに関する。キットは、本明細書において記載される組成物を含み、本明細書において記載される免疫チェックポイント阻害剤を含む抗がん処置を任意選択で含む。例において、キットは、サンプルを損なうことなく(例えば、凍結乾燥形態でパッケージされているか又は水性媒体中にパッケージされている等の)収集された物質を輸送するための物質を含むことができる。キットは、処理された物質又は処置を、滅菌容器、例えば、経鼻胃(NG)管、バイアル(例えば、停留浣腸を用いる使用のため)、胃酸耐性カプセル(例えば、腸管に到達するため酸-生物耐性であり、滅菌した外側を有する)等に含むことができる。キットはまた、使用説明書を含むことができる。
【0269】
代替的な態様では、キットは、
・ 生物サンプル(例えば糞便サンプル)を受容するように構成された密封可能な容器と;
・ 増幅された16S rDNAポリヌクレオチド配列を形成するように少なくとも1種の腸関連細菌から16S rDNAポリヌクレオチド配列を増幅するためのポリヌクレオチドプライマーであって、増幅された16S rDNA配列は配列番号1~配列番号15から選択されるポリヌクレオチド配列に対して少なくとも97%、98%、98.7%又は99%相同性(例えば配列番号16~29)を有する、ポリヌクレオチドプライマーと;
・ 増幅された16S rDNA配列を検出するための検出試薬と;
・ 使用説明書と;
を含む。
【0270】
本発明はまた、オリゴ糖(例えばグリカン)を含む組成物を含む、対象においてtable 1(表1)において列挙されている細菌又はそのサブセットの存在量を組成物の投与によって増加するための方法における使用のためのキットに関する。
【0271】
本発明はまた、免疫チェックポイント阻害剤を用いた抗がん処置の有効性を増加することにおける、本発明の組成物、つまり、Table 1(表1)において示された配列番号に関してTable 1(表1)において示された1又は複数の細菌単離物を含むか又はそれらからなる組成物の、使用に関する。本発明はまた、免疫チェックポイント遮断を増強することにおける、本発明の組成物、つまり、Table 1(表1)において示された配列番号に関してTable 1(表1)において示された1又は複数の細菌単離物を含むか又はそれらからなる組成物の、使用に関する。本発明はまた、免疫チェックポイント阻害剤を用いた抗がん処置の有効性を増加するための方法に関し、この方法は、本発明の組成物、つまり、配列番号に関してTable 1(表1)において示された1又は複数の細菌単離物を含むか又はそれらからなる組成物を、対象に投与する工程を含む。本発明はまた、免疫チェックポイント遮断を増強するための方法に関し、この方法は、本発明の組成物、つまり、Table 1(表1)において示された配列番号に関してTable 1(表1)において示された1又は複数の細菌単離物を含むか又はそれらからなる組成物の、対象への投与を含む。
【0272】
本発明はまた、免疫賦活効果を提供することにおける、本発明の組成物の使用に関する。
【0273】
本発明はまた、がん患者が、免疫チェックポイント阻害剤の投与前に、本発明の細菌組成物、つまり、Table 1(表1)において示された配列番号に関してTable 1(表1)において示された1又は複数の細菌単離物を含むか又はそれらからなる細菌組成物を、必要とするかどうかを決定するための方法に関し、この方法は、前記患者由来の糞便サンプルにおいて、Table 1(表1)における種から選択される1又は複数の細菌単離物の有無について評価する工程を含む。
【0274】
態様
本発明は、以下の態様において更に記載される。
1. 少なくとも2つの種から選択される単離された細菌を含む組成物であって、第1の種由来の細菌は配列番号1に記載の核酸配列と少なくとも98.7%配列同一性を有する16S rDNA配列を含み、第2の種由来の細菌は配列番号2に記載の核酸配列と少なくとも98.7%配列同一性を有する16S rDNA配列を含む、組成物。
2. 少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12又は13の異なる種由来の単離された細菌を更に含み、細菌は配列番号3~15に記載の核酸配列と少なくとも98.7%配列同一性を有する配列から選択される16S rDNA配列を含む、態様1に記載の組成物。
3. 少なくとも4つの異なる種由来の単離された細菌を更に含み、細菌は配列番号3~15に記載の核酸配列と少なくとも98.7%配列同一性を有する配列から選択される16S rDNA配列を含む、態様1に記載の組成物。
4. 少なくとも7つの異なる種由来の単離された細菌を更に含み、細菌は配列番号3~15に記載の核酸配列と少なくとも98.7%配列同一性を有する配列から選択される16S rDNA配列を含む、態様1に記載の組成物。
5. 配列番号7に記載の核酸配列と少なくとも98.7%配列同一性を有する配列から選択される16S rDNA配列を含む細菌単離物を更に含む、態様1に記載の組成物。
6. Table 3(表3)において示されるコンソーシアム1~4又は6~10から選択されるコンソーシアムを含む、態様1に記載の組成物。
7. 経口投与又は直腸投与のために製剤化されている、態様1~6のいずれか一態様に記載の組成物。
8. カプセル、錠剤、ゲル又は液体の形態である、態様7に記載の組成物。
9. 腸溶コーティング中にカプセル化されている、態様8に記載の組成物。
10. 生菌、弱毒化菌又は死菌を含む、態様1~9のいずれか一態様に記載の組成物。
11. 細菌芽胞を含む、態様1~10のいずれか一態様に記載の組成物。
12. 細菌芽胞を含まない、態様1~11のいずれか一態様に記載の組成物。
13. 1又は複数のヒトドナー由来の細菌株を含む、態様1~12のいずれか一態様に記載の組成物。
14. 細菌が凍結乾燥されている、態様1~13のいずれか一態様に記載の組成物。
15. 少なくとも約1×103~1×1013CFUの細菌を含む、態様1~14のいずれか一態様に記載の組成物。
16. 組成物の投与が、対象において免疫応答を誘導し、且つ/又は免疫チェックポイント阻害剤を含む抗がん療法の有効性を増加する、態様1~15のいずれか一態様に記載の組成物。
17. 態様1~16のいずれか一態様に記載の組成物と薬学的担体とを含む、医薬組成物。
18. 有効量の免疫チェックポイント阻害剤又はワクチンを更に含む、態様17に記載の医薬組成物。
19. 免疫チェックポイント阻害剤がPD-1、PDL-1、CTLA-4、LAG3又はTIM-3の活性を阻害する、態様18に記載の医薬組成物。
20. 免疫チェックポイント阻害剤が抗PD-1抗体、抗PDL-1抗体若しくは抗CTLA-4抗体又はそれらのフラグメントである、態様19に記載の医薬組成物。
21. 抗PD-1抗体、抗PDL-1抗体又は抗CTLA-4抗体がニボルマブ、ペムブロリズマブ、セミプリマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、スパルタリズマブ、カムレリズマブ、シンチリマブ、チスレリズマブ、ピジリズマブ、トリパリマブ、イピリムマブ又はトレメリムマブから選択される、態様20に記載の医薬組成物。
22. 免疫チェックポイント阻害剤が干渉核酸分子、小分子若しくはタンパク質分解誘導キメラ分子(PROTAC)、代替的タンパク質スキャホールド(alternative protein scaffold)又は他の免疫チェックポイント阻害剤である、態様18に記載の医薬組成物。
23. 干渉核酸分子がsiRNA分子、shRNA分子又はアンチセンスRNA分子である、態様22に記載の医薬組成物。
24. 疾患の処置における使用のための、態様1~16のいずれか一態様に記載の組成物又は態様17~23のいずれか一態様に記載の医薬組成物。
25. がん若しくは感染性疾患の処置における使用のため又はワクチンアジュバントとしての使用のため又はがん処置の有効性を増加するための、態様1~16のいずれか一態様に記載の組成物又は態様17~23のいずれか一態様に記載の医薬組成物。
26. それを必要とする対象においてがん又は感染性疾患を処置するための方法であって、態様1~16のいずれか一態様に記載の組成物又は態様17に記載の医薬組成物を前記対象に投与する工程を含む、方法。
27. 前記対象が、免疫チェックポイント阻害剤を用いた療法を受けているところであるか、既に受けたか又は受ける予定であり、それによりがん又は感染性疾患を処置する、態様26に記載の方法。
28. それを必要とする対象においてがんを処置するための方法であって、態様18に記載の組成物を前記対象に投与する工程を含む、方法。
29. 組成物の投与が、対象による免疫応答を増強し、且つ/又はがんによる免疫回避を阻害し、且つ/又は免疫チェックポイント阻害剤を用いた抗がん処置の有効性を増加する、態様26又は27に記載の方法。
30. がんが、黒色腫、例えば、ハーディング-パッセー黒色腫、若年性黒色腫、悪性黒子型黒色腫、悪性黒色腫、末端黒子型黒色腫、無色素性黒色腫、良性若年性黒色腫、クラウドマン黒色腫、S91黒色腫、結節型黒色腫、爪下黒色腫、皮膚黒色腫、ぶどう膜/眼内黒色腫及び表在拡大型黒色腫又は骨がん、膵臓がん、皮膚がん、頭頸部がん、皮膚悪性黒色腫若しくは眼内悪性黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門領域のがん、胃がん、精巣がん、乳がん、脳がん、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸部癌、膣癌、外陰癌、食道がん、小腸がん、内分泌系のがん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、腎臓がん、軟部組織肉腫、尿道がん、膀胱がん、直腸がん、肺がん、非小細胞肺がん、胸腺腫、尿路上皮癌、白血病、前立腺がん、中皮腫、副腎皮質癌、リンパ腫、例えば、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、胃がん、及び多発性骨髄腫から選択される、態様25に記載の使用のための組成物又は態様26~29のいずれか一態様に記載の方法。
31. 組成物又は医薬組成物が経口投与又は直腸投与により投与される、態様25に記載の使用のための組成物又は態様26~29のいずれか一態様に記載の方法。
32. 前記対象が免疫チェックポイント阻害剤を用いた事前の抗がん療法を既に受けている、態様25に記載の使用のための組成物又は態様26~29のいずれか一態様に記載の方法。
33. 免疫チェックポイント阻害剤を用いた抗がん療法を投与する工程を更に含む、態様25に記載の使用のための組成物又は態様26~29のいずれか一態様に記載の方法。
34. 免疫チェックポイント阻害剤が細菌製剤の前、後又はそれと同時に投与される、態様33に記載の使用のための組成物又は方法。
35. 免疫チェックポイント阻害剤が注射により投与される、態様33又は34に記載の使用のための組成物又は方法。
36. 注射が静脈内注射、筋肉内注射、腫瘍内注射又は皮下注射である、態様33~35のいずれか一態様に記載の使用のための組成物又は方法。
37. 免疫チェックポイント阻害剤がPD-1、PDL-1又はCTLA-4の活性を阻害する、態様33~36のいずれか一態様に記載の使用のための組成物又は方法。
38. 免疫チェックポイント阻害剤が抗PD-1抗体、抗PDL-1抗体又は抗CTLA-4抗体である、態様37に記載の使用のための組成物又は方法。
39. 抗PD-1抗体、抗PDL-1抗体又は抗CTLA-4抗体がニボルマブ、ペムブロリズマブ、セミプリマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、スパルタリズマブ、カムレリズマブ、シンチリマブ、チスレリズマブ、ピジリズマブ、トリパリマブ、イピリムマブ又はトレメリムマブから選択される、態様38に記載の使用のための組成物又は方法。
40. 免疫チェックポイント阻害剤が干渉核酸分子、小分子若しくはタンパク質分解誘導キメラ分子(PROTAC)又は他の免疫チェックポイント阻害剤である、態様33~37のいずれか一態様に記載の使用のための組成物又は方法。
41. 干渉核酸分子がsiRNA分子、shRNA分子若しくはアンチセンスRNA分子又は小分子若しくはペプチドである、態様40に記載の使用のための組成物又は方法。
42. 外科的、放射線、及び/若しくは化学療法的がん介入又は第2の抗がん治療薬の投与を更に含む、態様25若しくは30~41のいずれか一態様に記載の使用のための組成物又は態様26~41のいずれか一態様に記載の方法。
43. 対象に抗生物質を投与する工程を更に含む、態様25若しくは30~42のいずれか一態様に記載の使用のための組成物又は態様26~42のいずれか一態様に記載の方法。
44. 対象ががんを発症するリスクがあると同定されている、態様25若しくは30~43のいずれか一態様に記載の使用のための組成物又は態様26~43のいずれか一態様に記載の方法。
45. 態様1~17のいずれか一態様に記載の組成物を含み、免疫チェックポイント阻害剤を含む抗がん処置を任意選択で含む、キット。
46. 態様1~17のいずれか一態様に記載の組成物を含む、食品又はワクチンアジュバント。
47. 対象への投与前に糞便移植物を処理するための方法であって、糞便移植物を少なくとも2つの種から選択される単離された細菌で補う工程を含み、第1の種由来の細菌は配列番号1に記載の核酸配列と少なくとも98.7%配列同一性を有する16S rDNA配列を含み、第2の種由来の細菌は配列番号2に記載の核酸配列と少なくとも98.7%配列同一性を有する16S rDNA配列を含む、方法。
48. 免疫チェックポイント阻害剤を用いた抗がん処置の有効性を増加することにおける、態様1~17のいずれか一態様に記載の組成物又は態様18に記載の医薬組成物の使用。
49. 免疫チェックポイント遮断を増強することにおける、態様1~17のいずれか一態様に記載の組成物又は態様18に記載の医薬組成物の使用。
50. 態様1~17のいずれか一態様に記載の組成物又は態様18に記載の医薬組成物を投与する工程を含む、免疫チェックポイント遮断を増強するための方法。
51. Table 1(表1)から選択される1又は複数の細菌から選択される細菌を含む組成物。
52. 対象においてTable 1(表1)の細菌から選択される1又は複数の細菌のレベルを調節する工程を含む、がんを処置又は予防するための方法。
【0275】
本発明はまた、以下の追加的態様において更に記載される。
1. 免疫チェックポイント阻害剤を用いた療法に応答する対象を同定するための方法であって、少なくとも9つの異なる種由来の細菌の存在量を、前記対象由来の腸内フローラを含む生物サンプルにおいて決定する工程を含み、前記細菌は配列番号1~15から選択される16S rDNA配列を含むか又は配列番号1~15から選択される核酸配列と少なくとも98.7%配列同一性を有する配列を含み、前記存在量は、免疫チェックポイント阻害剤を用いた療法に対する対象の応答を示す、方法。
2. 態様1に記載の免疫チェックポイント阻害剤を用いた療法に応答する患者を同定するための方法であって、
a)細菌の存在量を対象から得られた生物サンプルにおいて決定する工程;及び
b)存在量を、免疫チェックポイント阻害剤を用いた療法に応答しないがん患者又は免疫チェックポイント阻害剤を用いた療法に応答するがん患者由来の基準レベルと比較する工程;
を含み、
基準レベルが免疫チェックポイント阻害剤を用いた療法に応答しない患者由来の場合、基準レベルと比較した細菌の各々の存在量の増加は、対象が免疫チェックポイント阻害剤を用いた療法に応答することを示し、又は
基準レベルが免疫チェックポイント阻害剤を用いた療法に応答する患者由来の場合、細菌の各々の同じ存在量若しくは実質的に同じ存在量若しくは存在量の増加は、対象が免疫チェックポイント阻害剤を用いた療法に応答することを示す、方法。
3. a)細菌の存在量を対象から得られた生物サンプルにおいて決定する工程;
b)存在量をがん患者由来の基準レベルと比較する工程;及び
c)ランダムフォレスト分析を適用する工程;
を含む、態様1に記載の免疫チェックポイント阻害剤を用いた療法に応答する患者を同定するための方法。
4. 細菌種が配列番号1若しくは2から選択される16S rDNA配列を含むか又は16S rDNA配列に対して少なくとも98.7%配列同一性を有する16S rDNA配列を含む、態様1~3のいずれか一態様に記載の方法。
5. 10、11、12、13、14又は15の種由来の細菌の存在量を決定する工程を含み、前記細菌は配列番号1~15から選択される16S rDNA配列を含むか又は配列番号1~15から選択される核酸配列と少なくとも98.7%配列同一性を有する配列を含む、態様1~4のいずれか一態様に記載の方法。
6. 前記対象ががん患者である、態様1~5のいずれか一態様に記載の方法。
7. がんが、黒色腫、骨がん、膵臓がん、頭頸部がん、皮膚悪性黒色腫若しくは眼内悪性黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門領域のがん、胃がん、精巣がん、乳がん、脳がん、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸部癌、膣癌、外陰癌、食道がん、小腸がん、内分泌系のがん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、腎臓がん、軟部組織肉腫、尿道がん、膀胱がん、直腸がん、肺がん、非小細胞肺がん、胸腺腫、尿路上皮癌、白血病、前立腺がん、中皮腫、副腎皮質癌、リンパ腫、例えばホジキン病、非ホジキンリンパ腫、胃がん、及び多発性骨髄腫から選択される、態様6に記載の方法。
8. 黒色腫が、ハーディング-パッセー黒色腫、若年性黒色腫、悪性黒子型黒色腫、悪性黒色腫、末端黒子型黒色腫、無色素性黒色腫、良性若年性黒色腫、クラウドマン黒色腫、S91黒色腫、結節型黒色腫、爪下黒色腫、皮膚黒色腫、ぶどう膜/眼内黒色腫及び表在拡大型黒色腫から選択される、態様7に記載の方法。
9. 免疫チェックポイント阻害剤を用いた処置を必要とする対象を同定する工程を更に含む、態様1~8のいずれか一態様に記載の方法。
10. 免疫チェックポイント阻害剤を前記対象に投与する工程を更に含む、態様1~9のいずれか一態様に記載の方法。
11. 免疫チェックポイント阻害剤がPD-1、PD-L1又はCTLA-4の活性を阻害する、態様1~10のいずれか一態様に記載の方法。
12. 免疫チェックポイント阻害剤が抗PD-1抗体、抗PDL-1抗体又は抗CTLA-4抗体である、態様11に記載の方法。
13. 抗PD-1抗体、抗PDL-1抗体又は抗CTLA-4抗体が、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、セミプリマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、スパルタリズマブ、カムレリズマブ、シンチリマブ、チスレリズマブ、ピジリズマブ、トリパリマブ、イピリムマブ又はトレメリムマブから選択される、態様12に記載の方法。
14. 免疫チェックポイント阻害剤が、干渉核酸分子、小分子若しくはタンパク質分解誘導キメラ分子(PROTAC)又は他の免疫チェックポイント阻害剤である、態様1~11のいずれか一態様に記載の方法。
15. 干渉核酸分子がsiRNA分子、shRNA分子若しくはアンチセンスRNA分子又は小分子若しくはペプチドである、態様14に記載の方法。
16. 存在量が、サンプルにおける全微生物叢の割合としてのサンプルにおける細菌の存在量である、態様1~15のいずれか一態様に記載の方法。
17. 前記対象から腸内フローラを含む生物サンプルを得る工程を更に含む、態様1~16のいずれか一態様に記載の方法。
18. サンプルが糞便サンプルである、態様1~17のいずれか一態様に記載の方法。
19. 免疫チェックポイント阻害剤を用いた療法に応答する患者を同定することにおける、少なくとも9種の異なる細菌種から選択される細菌の使用であって、前記細菌は配列番号1~15から選択される16S rDNA配列を含むか又は配列番号1~15から選択される核酸配列と少なくとも98.7%配列同一性を有する配列を含む、使用。
20. 生物サンプルを受容するように構成された密封可能な容器と;
少なくとも9つの異なる細菌種から16S rDNAポリヌクレオチド配列を増幅するためのポリヌクレオチドプライマーであって、前記細菌は配列番号1~15から選択される16S rDNA配列を含むか又は配列番号1~15から選択される核酸配列と少なくとも98.7%配列同一性を有する配列を含む、ポリヌクレオチドプライマーと;
増幅された16S rDNA配列を検出するための検出試薬と;
使用説明書と
を含む、キット。
21. 糞便ドナーを同定するための方法であって、対象の糞便サンプルを少なくとも9つの異なる細菌種由来の細菌の存在について評価する工程であり、前記細菌は配列番号1~15から選択される16S rDNA配列を含むか又は配列番号1~15から選択される核酸配列と少なくとも98.7%配列同一性を有する配列を含む、工程;並びに糞便ドナーを細菌の存在及び/又は存在量に基づいて同定する工程;を含む、方法。
22. FMT療法のためのドナーを同定するための方法における、少なくとも9つの異なる細菌種由来の細菌の使用であって、前記細菌は配列番号1~15から選択される16S rDNA配列を含むか又は配列番号1~15から選択される核酸配列と少なくとも98.7%配列同一性を有する配列を含む、使用。
23. がん患者が免疫チェックポイント阻害剤の投与前に細菌補償を必要とするかどうかを決定するための方法であって、前記患者由来の糞便サンプルにおいて、少なくとも9つの異なる細菌種由来の細菌の有無を評価する工程を含み、前記細菌は配列番号1~15から選択される16S rDNA配列を含むか又は配列番号1~15から選択される核酸配列と少なくとも98.7%配列同一性を有する配列を含む、方法。
24. がんを有する対象における免疫チェックポイント阻害剤療法に対する応答を予測するための方法であって、少なくとも9つの異なる種由来の細菌の存在量を、前記対象由来の腸内フローラを含む生物サンプルにおいて決定する工程を含み、前記細菌は配列番号1~15から選択される16S rDNA配列を含むか又は配列番号1~15から選択される核酸配列と少なくとも98.7%配列同一性を有する配列を含み、前記存在量は、免疫チェックポイント阻害剤を用いた療法に対する対象の応答又は不応答を示す、方法。
25. 態様24に記載のがんを有する対象における免疫チェックポイント阻害剤療法に対する応答を予測するための方法であって、
a)細菌の存在量を対象から得られた生物サンプルにおいて決定する工程;
b)存在量を、免疫チェックポイント阻害剤療法に応答しない患者又は免疫チェックポイント阻害剤療法に応答する患者由来の基準レベルと比較する工程;
を含み、
基準レベルが免疫チェックポイント阻害剤療法に応答しない患者由来の場合、基準レベルと比較した細菌の各々の存在量の増加は、対象が免疫チェックポイント阻害剤を用いた療法に応答することを示し、又は
基準レベルが免疫チェックポイント阻害剤療法に応答する患者由来の場合、細菌の各々の同じ存在量若しくは実質的に同じ存在量若しくは存在量の増加は、対象が免疫チェックポイント阻害剤を用いた療法に応答することを示す、方法。
26. a)細菌の存在量を対象から得られた生物サンプルにおいて決定する工程;及び
b)存在量をがん患者又は健常対象由来の基準レベルと比較する工程;及び
c)ランダムフォレスト分析を適用する工程;
を含む、態様24に記載の方法。
27. 応答を予測する工程を含む、態様24~26のいずれか一態様に記載の方法。
28. 対象が不応答者であると予測された場合、免疫チェックポイント阻害剤ではない抗がん療法が投与される、態様24~27のいずれか一態様に記載の方法。
29. 対象が不応答者であると予測された場合、1又は複数の種由来の単離された細菌を含む組成物が投与され、細菌は配列番号1~15から選択される配列を含むか又は配列番号1~15から選択される核酸配列と少なくとも98.7%配列同一性を有する配列を含む、態様24~28のいずれか一態様に記載の方法。
30. 対象が不応答者であると予測された場合、少なくとも2つの種から選択される単離された細菌を含む組成物が投与され、第1の種由来の細菌は配列番号1に記載の核酸配列と少なくとも98.7%配列同一性を有する16S rDNA配列を含み、第2の種由来の細菌は配列番号2に記載の核酸配列と少なくとも98.7%配列同一性を有する16S rDNA配列を含む、態様29に記載の方法。
31. 組成物が、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12又は13の異なる種由来の単離された細菌を更に含み、細菌は配列番号3~15に記載の核酸配列と少なくとも98.7%配列同一性を有する配列から選択される16S rDNA配列を含む、態様24~31のいずれか一態様に記載の方法。
32. 対象が応答者であると予測された場合、免疫チェックポイント阻害剤療法が投与される、態様24~27のいずれか一態様に記載の方法。
【0276】
本発明の更なる態様及び実施形態は、以下の実験例を含む本開示を考慮すれば、当業者にとって明らかである。
【0277】
本明細書において異なるように定義されない限り、本開示に関して使用される科学用語及び技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有する。上記の開示は、本発明を製造及び使用する方法並びにそれらの最良の形態を含む、本発明の範囲内に含まれる主題の概括的記載を提供し、一方、以下の実施例は、当業者が本発明を実施するのを更に可能にするため及び本発明の完全な記載を提供するために、提供される。しかし、これらの実施例の詳細は本発明に対して限定するものとして読み取られるべきではなく、本発明の範囲は本開示に付随する特許請求の範囲及びその等価物から理解されるべきことを、当業者は理解する。本発明の種々の更なる態様及び実施形態は、本開示を考慮すれば当業者にとって明らかである。
【0278】
本明細書において言及されるすべての文書は、遺伝子受託番号に対するいかなる言及及び特許公開に対する言及を含み、その全体が参考として援用される。
【0279】
「及び/又は」は、本明細書において使用される場合、その2つの特定の特徴又は成分の各々の、もう一方を伴うか又は伴わない詳細な開示として受け取られるべきである。例えば、「A及び/又はB」は、あたかも各々が本明細書において個別に示されているかのように、(i)A、(ii)B、並びに(iii)A及びBの各々の詳細な開示として受け取られるべきである。そうではないと文脈が示さない限り、上記に示されている特徴の記載及び定義は、本発明のいかなる特定の態様にも実施形態にも限定されず、記載されているすべての態様及び実施形態に対して等しく適用される。
【0280】
本発明は、非限定的な実施例において更に説明される。
【実施例1】
【0281】
免疫療法に対する応答をドライブする腸細菌及び単離株の同定
本発明者らは、黒色腫患者のマイクロバイオームがどのように免疫チェックポイント阻害剤療法に対する応答に影響を与えるか、MELRESIST研究で分析した。この研究は、Cambridge University Hospitalsで行い、サンプル収集及び加工の最良標準を用いて実施した。研究は、69人の患者を含み、その多くで、長期の糞便サンプル採取を行った。本発明者らは、ショットガンメタゲノムシーケンシングを行うことによって、ベースラインMELRESIST糞便サンプルにおける腸細菌の相対的存在量を分析した。主として培養単離株由来の参照品質ゲノムに基づいて構築した包括的かつ高度に精選された参照ゲノムデータベースを用いて、メタゲノムシーケンシングを分析した。この参照ベースのメタゲノム分析により、感受性が高く正確な細菌の同定が得られる(Forsterら Nat Biotechnol. 2019: 37: 186)。この分析を補助するために、本発明者らは、免疫チェックポイント阻害剤療法を受けようとしている黒色腫患者由来の3つの追加のショットガンメタゲノムデータセットを、同じ分析プラットホームを用いて再分析した。
【0282】
免疫チェックポイント阻害剤療法に対する応答を最も強く予測する特定の細菌種を選択するために、マイクロバイオームを機械学習アプローチで検査した。当分野で初めて、複数の研究にまたがる応答に関連し、それを強く予測する一貫したマイクロバイオームシグネチャーを同定した。MELRESISTデータセットのサイズ及び品質、参照ベースのメタゲノム分析による細菌の包括的かつ正確な同定、及び機械学習分析のすべてがこの交差研究のマイクロバイオームシグネチャーの発見に寄与した。このシグネチャーは更に、免疫チェックポイント阻害剤応答の主要なドライバーとしての腸マイクロバイオームの中心的な重要性も確認する。これは、予測バイオマーカー及び生細菌治療薬併用療法の両方が、チェックポイント阻害剤に応答する患者の割合を増加させる基礎を提供する。特徴削減ステップを用いて、このマイクロバイオームシグネチャーを、免疫療法に応答する患者における存在量が多い種を含む小さな細菌コンソーシアムに小型化した。これらの小型化されたコンソーシアムは、複数の研究にまたがって応答を予測し、それゆえ生物マーカーとして作用することができる。加えて、これらのコンソーシアムは、がんの処置で免疫チェックポイント阻害剤と同時投与するための生菌治療薬を形成することができる。
【0283】
この分析は、コンソーシアム中の13種を代表する単離株の同定を可能にした。これらの株で刺激された樹状細胞は、個々に、又は最大9種のコンソーシアムとして、細胞傷害性Tリンパ球を強力に活性化した。9種からなる2つのコンソーシアムをがんの同系マウスモデルで試験したところ、両コンソーシアムとも腫瘍成長の抑制を実証した。これらの結果は、抗腫瘍応答のドライバーとしての細菌を検証する。
【0284】
1.1 MELRESIST臨床研究に基づく発見
MELRESISTはCambridge University Hospitalsで行われた研究であり、研究中、69人の進行黒色腫患者が、抗PD1ベースの免疫療法による処置の前及び/又は後に、糞便サンプルを与えた。療法に対する応答、抗生物質の使用、及び毒性を含めた完全な臨床メタデータも記録された。可能なかぎり最も高い標準を確実にするために、厳密なサンプル収集プロトコールを用いた。Microbiotica社において、DNAを単一バッチで抽出し、ショットガンメタゲノミクスを行った。ショットガンメタゲノミクスシーケンシングは、当技術分野でよく知られており、例えば、Quince, C.ら、Shotgun metagenomics, from sampling to analysis. Nat Biotechnol 35, 833~844頁 (2017年)に記載されている。
【0285】
より高い感度及び特異度の細菌の同定を与えるために、参照ベースのメタゲノミクスを用いて、ベースライン糞便サンプルの配列を分析した。可動エレメントをマスクする生物情報学ツールによって精度を更に改善し、それによって、遺伝子水平伝播によって引き起こされたスプリアスシグナルを減少させる。適した方法は、参照により組み込まれているWO2020065347にも記載されている。追加の分類フィルタリングにより、夾雑及び遺伝子重複によって引き起こされる誤割当の読み取りデータを除去する。このプラットホームは、メタゲノム読み取りデータの95%超を正確に分類し、サンプル中のほとんどすべての細菌の存在量の正確なマッピングをもたらすことができる。
【0286】
分析を補助し、検証するために、Microbiotica社の高精度プラットホームを用いて、免疫チェックポイント阻害剤療法を受けようとしている黒色腫患者由来の3つの追加データセットを再分析した。これらは以下の通りだった。
・Frankel Neoplasia (2017) 19:848、進行黒色腫、39人の患者
・Gopalakrishnanら及びWargo Science (2018) 359:97、転移性黒色腫、25人の患者(図ではWargoと記載されている)
・Matsonら及びGajewski Science (2018) 359:104、転移性黒色腫、39人の患者(図ではGajewskiと記載されている)
【0287】
1.2 免疫療法に対する応答を予測するマイクロバイオームシグネチャーを得るための生物情報学分析
MELRESIST由来のベースラインサンプルを用いて、サンプル中の各細菌の相対的存在量を臨床成績データに連結することによって応答のシグネチャーを定義した。一次解析において、6カ月目の安定疾患、部分奏効及び完全奏効はすべて応答と決定し、進行疾患は非応答とした。シグネチャーの部分として、応答を予測する検出力が最も高い種を選択するために、ランダムフォレストモデルを含めた機械学習アプローチを用いた。
【0288】
ランダムフォレスト分類は、多数の決定木の結果に基づくアルゴリズムである。単一の決定木では、すべての特徴が利用されるまで、サンプルを応答者カテゴリーと不応答者カテゴリーに最も良く分離する特徴が繰り返し選択される。有病率データの場合には、これらの特徴が、所与の種の存在又は不在でありえ、その場合、単一種の存在が、応答者サンプルと優先的に関連している可能性があり、その逆も同様であろう。代わりに、所与の種の相対的存在量が応答を予測するものでありえ、その際、応答者サンプル中のその種の存在量が多くなっているか、少なくなっている。単一の決定木は典型的にデータに過剰適合し、ロバストな結果を生成しないので、代わりにランダムフォレストがしばしば用いられる。ランダムフォレスト分類は、多数の異なる決定木に基づいており、各木は、利用可能なデータのサブセットを用いるのみであり、例えば、各木について、観察された種の20%をランダムに省く。場合によっては、サンプルのサブセットがランダムフォレストを訓練するのに用いられる。したがって、ランダムフォレスト分類は、すべての可能な特徴及びサンプル全体でどのシグナルが最も強力かを学習する。すべてのランダムフォレストモデルについて、楽観的すぎる実行を防止し、一般化可能性を改善するためにアウトオブバッグエラーを用いた。
【0289】
本発明者らは、複数の研究にわたって応答と連結された細菌を同定するために、追加の黒色腫データセットを含めることによって、分析を広げた。最初に、異なる研究からのデータを標準化し、例えば、必要な場合には、効果判定基準をMELRESIST研究と一貫するように変えた。その後、機械学習プロセスを用いて、4つの黒色腫データセットすべての結合データセットについてシグネチャーを生成させた。その後、このシグネチャーが生物マーカーとして機能する能力を結合データセットで試験し、これは、患者が療法に応答するかどうかを91%の精度で予測した(
図1A)。この分析の受信者動作特性(ROC)カーブは、0.98という曲線下面積(AUC)があり(
図1C)、それによって、このシグネチャーがどれだけ強く予測するかを確認した。重要なことに、個々に研究に対して試験した場合、シグネチャーは83~100%正確であり(
図1B)、ROC曲線は0.96~1のAUCを有した(
図1D)。これは、複数の研究にまたがって正確に応答を予測するマイクロバイオームに基づいた予測バイオマーカーの初めての実証である。
【0290】
生物マーカーとしてのシグネチャーを進歩させ、生菌治療薬に含める細菌を選択するために、本発明者らは、応答と最もロブストに関連づけられた細菌を同定した。3つ又は4つ研究すべての応答した患者で一貫して存在量が増加した種を先に進めるために選択した。続いて、メタゲノム読み取りデータが広く均等にゲノムをカバーしなかった種を除外することによって、最もシグナルがクリーンな細菌を選択するために、フィルタリングステップを適用した。
【0291】
全分析を始めから反復した。ただし、可能な場合、より良好な臨床応答と連結した細菌に焦点を絞るために、安定疾患である患者は除外した。この再分析は、それを検証する最初の療法と相当な程度重複しており、種の最終リストを洗練するのに使用された。これらの分析により、すべてが後で複数の研究にわたって免疫チェックポイント阻害剤療法に応答した黒色腫患者における存在量が増加した15の細菌種、1つのコンソーシアムのリストを生成した(表1及び3参照)。試験を反復することによって、結合データセット中のバイオマーカーとして、この小型化したシグネチャーのロバストネスが実証された。これは、患者が療法に応答するかどうかを77%の精度で予測した(
図2A)。この分析の受信者動作特性(ROC)カーブは、0.8という曲線下面積(AUC)を有し(
図2C)、それによって、このシグネチャーがいかに強く予測するかを確認する。重要なことに、研究に対して個々に試験した場合、シグネチャーは67~84%正確であり(
図2B)、ROCは0.73~0.88というAUCを有した(
図2D)。上記15種のうち9又は12種で構成される6つの追加のコンソーシアム2、3、4、5、6、及び10(表3)もバイオマーカーとして試験したところ、結合データセット及び個々の研究の両方で応答を良好に予測した(
図3~7及び17)。
【0292】
したがって、結果は、同定された細菌を、黒色腫患者における抗PD1療法に応答するための予測バイオマーカーとして使用すること、及びチェックポイント阻害剤に応答する患者の割合を増加させる細菌併用療法としても使用することができることを示した。
【0293】
これらの細菌が、チェックポイント阻害剤が使用される他のがん適応症における有用性を有することができるかどうか理解するために、本発明者らは、非小細胞肺がん(NSCLC)患者コホートにおける完全なシグネチャーの的中率を分析した(Routyら、2018年、Science 359:91~97頁)。研究では、抗PD1ベースの療法の前に、患者糞便を採取し、それをショットガンメタゲノムシーケンシングにかけた。これを、Microbiotica社の高精度プラットホームを用いて再分析した。コンソーシアム1における15種は、NSCLC患者が抗PD1療法に応答するかどうかを予測的した(ROC AUC=0.722:
図8)。それゆえ、本明細書に記載されている、黒色腫患者で発見された細菌は、NSCLCにおける応答とも連結している。これは、本明細書に記載の細菌を、別のがん適応症における予測バイオマーカーとして使用することができることを示している。また、これは、本明細書に記載の細菌を、他のがん適応症の細菌併用療法として使用することができることも示唆している。
【0294】
1.3 細菌単離株の選択
培養単離株から得たゲノムを使用する参照ベースのメタゲノム分析は、同定された細菌を特定の株及び/又は関連カルチャーコレクションにおける密接に関係する株の単離株に再連結するのを可能にする。望ましい開発可能性及び安全プロファイルを有する株を選択するために、表1中に種を代表するすべての利用可能な株についてインシリコ特徴分析を行った。一次選択判定規準は、抗菌剤耐性、バクテリオファージ産生、及び胞子形成からなった。更に試験するために、良好なプロファイルを有する株を選択した。インビトロアッセイ及びインビボモデルでの試験を可能にするために、これらを増殖させ、細胞バンクを生成し、成長を特徴付けた。加えて、各株について、実験室試験及びインシリコ分析による完全な開発可能性試験及び安全性試験を行った。各ゲノムアセンブリについて、16S rDNA領域を2つの方法で同定した。第1に、barrnap(https://github.com/tseemann/barrnap)を使用し、第2に、7F(5'-AGAGTTTGATYMTGGCTCAG-3')(配列番号30)、1510R(5'-ACGGYTACCTTGTTACGACTT-3')(配列番号31)ユニバーサル16Sプライマーに一致するDNAを探索することにより望ましい長さ(1200~1800bp)の配列をインシリコで抽出することによって同定した。複数のオーバーラップした16S配列をアセンブリから抽出し、最も長いものを残した。
【0295】
1.4 宿主相互作用
リード細菌は、複数の研究にわたる臨床応答との強い関連性に基づいて選択されており、それゆえ、生菌治療薬に含めるのに適した候補であると考えられる。作用機序を理解するために、完全なコンソーシアムとして、及びサブコンソーシアムとして、ヒト細胞を用いたいくつかのインビトロアッセイで、細菌を個々にプロファイリングした。細胞傷害性Tリンパ球(CTL)は、グランザイムB及びパーフォリン放出並びにIFNγ等のサイトカインの産生を介して腫瘍細胞を直接溶解させることによる、抗腫瘍免疫応答における重要なエフェクター細胞である。CTLは、共刺激受容体及び共抑制受容体を発現することができる。免疫チェックポイント阻害剤療法は、共抑制受容体(例えばPD-1)とそれらのリガンド(例えばPD-L1)の間の相互作用を遮断することによって、CTL活性の抑制を遮断する。後者は、免疫介在性欠乏をエスケープする作用機序として腫瘍細胞によって発現されうる。これが、チェックポイント阻害剤療法で反転される。CTLは、樹状細胞によって活性化され、教育される。樹状細胞は、細菌を感知し、それに応答する多くの受容体を有するセンチネル自然免疫細胞である。それゆえ、同定された細菌(個々に又はコンソーシアムとして)を、樹状細胞(DC)を刺激する能力について、次いでこれらのDCがCTLを活性化するかどうか試験した。
【0296】
上記15種のうち13種を代表する細菌株を同定し、細菌培地中で増殖させた。これらを洗浄し、嫌気条件にあるヒト単球由来DCに添加し、これと共培養した。その後、抗生物質を添加し、DCを好気環境で培養した。成熟マーカーであるCD86(共刺激リガンド)及びCD83の上方制御によって、DCの活性化を測定した。13種のうち11種は、両マーカーの発現をロブストに誘導し、ゴードニバクター・ウロリチンファシエンス及びアリスティペス・インディスティンクタスは、DC成熟の活性化が不十分だった(
図9A及び9B)。実際、多くが、すべてDCの非常に強力な活性化因子であることが知られている陽性対照のリポ多糖(LPS)、ポリI:C、及びネズミチフス菌と類似したレベルのCD86及びCD83発現を誘導した。9種からなる2つのコンソーシアム(コンソーシアム5及び6)並びに6、3、及び2種を含有する、コンソーシアム6のサブコンソーシアムもすべて、CD86及びCD83の上方制御によって測定されるDC成熟を引き起こした(
図9B~9E)。これらの細菌は、DCからのサイトカインの放出も引き起こした。IL-12は、CTL応答のプライミングに非常に重要なサイトカインであり、IL-10は、T細胞応答の抑制に関連している。それゆえ、IL-12に対するIL-10の比率を用いて、DCが陽性CTL応答の強い誘導因子でありうるかどうか測定した。10種のうち9種を試験し、コンソーシアム5及び6は、LPSおよいポリI:Cのような強い炎症刺激と比較された場合でさえ、IL-10より高いレベルのIL-12を誘導した(
図9G)。放出されたサイトカインのレベルが、意味のある比率をなすには低すぎたので、ゴードニバクター・ウロリチンファシエンスのデータは示されていない。これらのデータは、免疫チェックポイント阻害剤療法に対する応答に関連しているとして同定された細菌がDC成熟の強力な活性化因子を増やし、増強されたT細胞応答を指示することができるサイトカインを放出することを示している。
【0297】
これらのDCがCTLを刺激するのにどの程度有効であったかを理解するために、成熟DCを、同種のCD8発現T細胞(CTL)と6日間共培養した。CTLの活性化は、グランザイムB、パーフォリン、及びIFNγの上方制御によって定量化した。上記細菌種のうち13種を試験し、すべてが、潜在的にCTLを活性化することができるDCを誘導することが示された(
図10)。活性化のレベルは、強力な炎症刺激であるLPS、ポリI:C、及びネズミチフス菌に匹敵するか、それより高かった。興味深いことに、ゴードニバクター・ウロリチンファシエンス及びアリスティペス・インディスティンクタスでさえ、DCによるCD86及びCD83発現の不十分な刺激因子であるにもかかわらず、ロバストなCTL活性化をもたらすことが示された。試験されたコンソーシアム(5、6、7、8、及び9)も、すべてが強いCTL活性化を誘導した(
図11及び12)。これらのデータは、免疫チェックポイント阻害剤療法に対する応答に関連しているとして同定された細菌が、DCの刺激を介したCTL応答の強力な活性化因子であることを実証している。これは、個々の種及び2~9種のコンソーシアムにもあてはまる。CTL活性化のこの誘導は、それによってこれらの細菌の存在量の上昇が抗PD1の存在下における増強された抗腫瘍免疫をもたらす鍵となる作用機序でありうる。これは、これらの細菌を含む治療用組成物がワクチン応答及び/又は抗ウイルス免疫を増強することができることも示すことができる。
【0298】
細菌は、強力なCTL活性化をもたらす。したがって、次に、腫瘍細胞を殺すそれらの能力を試験した。このアッセイでは、細菌で刺激されたDCで活性化されたCTLを腫瘍細胞系SKOV-3細胞と共に共培養した。試験した種の10種すべてが、電気インピーダンスの低減で測定される、CTLによる腫瘍細胞の強力な細胞溶解をもたらした。腫瘍細胞殺滅のレベルは、他の既知の強い生得的な刺激にまさる。試験されたコンソーシアム(5、6、7、8、及び9)も高レベルの腫瘍細胞殺滅をもたらした(
図13及び14)。これらのデータは、免疫チェックポイント阻害剤療法に対する応答に関連しているとして同定された細菌が、免疫介在の腫瘍細胞殺滅の強力な活性化因子であることを実証している。これは、試験された個々の種及び2~9種のコンソーシアムにもあてはまる。
【0299】
全体として、上のデータは、抗PD-1応答に関連しているとして同定された細菌種が、CTL活性化及び腫瘍細胞殺滅を引き起こすようにDCを刺激することができることを示している。この作用機序は、これらの細菌が黒色腫における抗PD-1ベースの療法に対する応答に関連している理由を、少なくとも部分的に説明する可能性が高い。この作用機序は、複数の腫瘍における免疫チェックポイント阻害剤の有効性と関連しており、これは、本明細書に記載の細菌を、他のがん適応症の細菌併用療法として使用することができることを示している。実際、本明細書に記載の細菌は、例えば、養子T細胞移入療法及びCAR-T細胞療法のためのCTL応答を増強するいかなる免疫療法とも有効な併用療法となる可能性が高い。興味深いことに、試験された株のうちの2株(ゴードニバクター・ウロリチンファシエンス及びアリスティペス・インディスティンクタス)は、DC活性化の古典的なマーカー(CD86及びCD83)を誘導しなかったが、DCはなおCTL活性化を誘導した。
【0300】
1型インターフェロン(IFN)であるIFNα及びIFNβは、CTL免疫の強力な誘導因子であり、直接的な抗腫瘍効果を有しうる。形質細胞様樹状細胞は、非常に高いレベルのIFNα及びIFNβを産生することができる。抗PD-1応答に関連する単離細菌がIFNα放出を誘導したかどうかを試験するために、上記種のうちの9種を代表する株で形質細胞様樹状細胞を刺激した。形質細胞様樹状細胞は、嫌気条件に耐容性を示さなかった。したがって、加熱死菌を好気環境で使用した。9株のうち7株は、形質細胞様DCからのIFNα放出を誘導した(
図15)。これは、それによってこれらの細菌が抗腫瘍免疫応答を増強する別の潜在的機序でありうる。興味深いことに、マイクロバイオームからの持続性1型インターフェロンシグナルは、肺における抗ウイルス応答の増強と関連づけられている(Bradleyら、2019年、Cell Reports 28:245~256頁)。それゆえ、同定された種は、抗ウイルス応答及び/又は抗ウイルスワクチン有効性の潜在的なドライバーでもありうる。
【0301】
上記の機序アッセイに加えて、がんの同系モデルの有効性について、2つの選択されたコンソーシアムを試験した。MCA205腫瘍細胞を移植する1日前に黒色腫患者のマイクロバイオームを植え付ける前に、SPFマウスを抗生物質で処置した。経口経管栄養によってコンソーシアム5又は6を投与することによって、陽性対照(抗PD1)と同じ程度までではないけれど、腫瘍成長阻害を誘導する(
図16)。これは、これらのコンソーシアムの抗腫瘍能力を示し、改善された臨床成績との関連性によって、これらの種の選択を検証する。MCA-205は、線維肉腫細胞系である。これは、本明細書に記載の細菌が、黒色腫だけではないがん適応症でも可能性を有することを更に実証する。併せて、ここに提示したデータは、本発明者らが、複数の黒色腫研究及びNSCLCにおけるチェックポイント阻害剤療法に対する応答を予測する細菌種を同定したことを示している。これらの種は、CTLの活性化及び腫瘍細胞殺滅をもたらすDCを刺激することができる。これらの種の2つのコンソーシアムは、インビボがんモデルで更に検証される。
【0302】
【0303】
【0304】
【0305】
【0306】
【0307】
【0308】
【0309】
【0310】
【0311】
【0312】
【0313】
【0314】
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【0318】
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【0320】
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【0322】
【図 】
【配列表】