(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-29
(45)【発行日】2025-10-07
(54)【発明の名称】負極、固体電池及び積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/134 20100101AFI20250930BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20250930BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20250930BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20250930BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20250930BHJP
H01M 4/74 20060101ALI20250930BHJP
H01M 4/80 20060101ALI20250930BHJP
H01M 4/1395 20100101ALI20250930BHJP
【FI】
H01M4/134
H01M4/38 Z
H01M10/052
H01M10/0562
H01M4/66 A
H01M4/74 A
H01M4/74 C
H01M4/80 C
H01M4/1395
(21)【出願番号】P 2024041990
(22)【出願日】2024-03-18
【審査請求日】2024-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100095566
【氏名又は名称】高橋 友雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179453
【氏名又は名称】會田 悠介
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】田名網 潔
(72)【発明者】
【氏名】酒井 洋
(72)【発明者】
【氏名】田中 俊充
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-108360(JP,A)
【文献】特開2021-99958(JP,A)
【文献】特開2018-206757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/134
H01M 4/38
H01M 10/052
H01M 10/0562
H01M 4/66
H01M 4/74
H01M 4/80
H01M 4/1395
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電池の負極であって、
負極活物質を含む負極合材が金属多孔体の孔内に充填されて形成された負極合材層と、
厚さ方向に対して加圧された前記金属多孔体の前記厚さ方向における固体電解質層側において、固体電解質が含まれる部分と、前記金属多孔体の孔内に空隙が設けられた部分とを有する空隙層と、を備え、
前記加圧の前における前記金属多孔体の比表面積は、500m
2/m
3以上6000m
2/m
3以下である、負極。
【請求項2】
前記空隙層において、前記固体電解質の密度は1.5g/cc以上1.8g/cc未満である、請求項1に記載の負極。
【請求項3】
前記空隙層において、前記金属多孔体の孔内の体積に対して前記孔内における前記空隙が占める体積の割合は、10%以下である、請求項1に記載の負極。
【請求項4】
前記負極活物質には、少なくとも、シリコン系の材料が含まれる、請求項1に記載の負極。
【請求項5】
前記負極合材層における前記負極活物質の目付量は、3mg/cm
2よりも大きい、請求項4に記載の負極。
【請求項6】
前記負極活物質の放電容量に対する、充放電に伴って前記空隙層の前記空隙に入ることが可能であるリチウムの放電容量の割合は、5%以上8%以下である、請求項4に記載の負極。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかに記載の負極と、リチウムを含む正極と、固体電解質層とを備えた、固体電池。
【請求項8】
固体電解質層と負極とを備えた積層体の製造方法であって、
負極活物質を含む負極合材を金属多孔体に塗工し、前記金属多孔体の孔内に前記負極合材が充填された負極合材層を形成する工程と、
前記負極合材層が形成された前記金属多孔体の表面に加圧装置の凹凸部を押し当てて前記表面に凹凸部を形成する工程と、
前記金属多孔体のうちの前記凹凸部が形成された面側に対して固体電解質を塗工して、前記固体電解質が含まれる部分と前記金属多孔体の孔内に空隙が設けられた部分とを有する空隙層、および、固体電解質層を形成する工程と、
を含む、積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負極、固体電池及び積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する二次電池に関する研究開発が行われている。固体電池はエネルギー密度が高く、幅広い用途で利用されている。特に、リチウムイオン二次電池は、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)等の動力源としてその重要性はますます高まっている。
【0003】
固体電池の構成としては、電極活物質の充填密度を大きくするために、負極を構成する集電体を発泡金属とした構成が知られている。この点に関して、特許文献1は、電極の単位面積あたりの活物質量を増加させるために、集電体である金属多孔体の孔内に負極合材が充填された固体電池を開示している。特許文献1における電極は、金属多孔体の弾性力を用いて、充放電中の体積変化に対する追随を可能とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さらなるエネルギーの効率化に寄与すべく、固体電池は、充放電を繰り返した場合にも電池寿命が維持できること等も求められている。このための要求特性として、例えば、固体電池の充放電を繰り返した際、リチウムイオンやナトリウムイオン等が負極において電子を受け取り、金属リチウムや金属ナトリウム等が負極に析出することの制御等が挙げられる。負極に金属リチウム等が析出すると、層間に隙間ができやすくなることにより固体電池の抵抗が増加することがあり、正極及び負極が電気的に接触する内部短絡も生じ得る。特に、高容量の負極では、この金属リチウム等の析出が起こりやすい。
【0006】
このような背景のもと、本発明は、固体電池として用いた場合に、内部短絡等の金属リチウム等の析出による影響を生じにくい負極を提供することを目的とする。そして、延いてはエネルギーの効率化に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る負極は、固体電池の負極であって、負極活物質を含む負極合材が金属多孔体の孔内に充填されて形成された負極合材層と、厚さ方向に対して加圧された前記金属多孔体の前記厚さ方向における固体電解質層側において、固体電解質が含まれる部分と、前記金属多孔体の孔内に空隙が設けられた部分とを有する空隙層と、を備え、前記加圧の前における前記金属多孔体の比表面積は、500m2/m3以上6000m2/m3以下である。
【0008】
この構成によれば、負極に金属リチウム等の析出が生じる場合において、空隙層において空隙であった金属多孔体の孔内に金属リチウム等の析出が集中的に起こりやすく、負極界面等への金属リチウム等の析出が抑制される。したがって、固体電池として用いられた場合に、内部短絡等の金属リチウム等の析出による影響を生じにくくすることができる。
【0009】
本発明の請求項2に係る発明は、請求項1に記載の負極における前記空隙層において、前記固体電解質の密度は1.5g/cc以上1.8g/cc未満である。
【0010】
この構成によれば、固体電池の製造工程におけるクラックの発生の抑制と、イオン伝導性が低下することの抑制と、を両立することができる。
【0011】
本発明の請求項3に係る発明は、請求項1に記載の負極における前記空隙層において、前記金属多孔体の孔内の体積に対して前記孔内における前記空隙が占める体積の割合は、10%以下である。
【0012】
この構成によれば、金属多孔体の孔内の体積に対して孔内における空隙が占める体積の割合が10%よりも大きい場合に比べて、負極の密度の低下が抑制されるため、負極に空隙層が設けられることに伴うエネルギー密度の低下を抑制できる。
【0013】
本発明の請求項4に係る発明は、請求項1に記載の負極において、前記負極活物質には、少なくとも、シリコン系の材料が含まれる。
【0014】
この構成によれば、負極活物質にシリコン系の材料が含まれる負極を好適に用いることができる。
【0015】
本発明の請求項5に係る発明は、請求項4に記載の負極において、前記負極合材層における前記負極活物質の目付量は、3mg/cm2よりも大きい。
【0016】
この構成によれば、負極合材層における負極活物質の目付量が3mg/cm2以下である場合に比べて、固体電池の容量を向上させつつ、充放電に伴う固体電池の容量の減少を抑制することができる。
【0017】
本発明の請求項6に係る発明は、請求項4に記載の負極において、前記負極活物質の放電容量に対する、充放電に伴って前記空隙層の前記空隙に入ることが可能であるリチウムの放電容量の割合は、5%以上8%以下である。
【0018】
この構成によれば、充放電に伴い析出する金属リチウム等を収容する空隙の確保と、エネルギー密度の低下の抑制と、を両立することができる。
【0019】
本発明の請求項7に係る固体電池は、請求項1乃至6の何れかに記載の負極と、リチウムを含む正極と、固体電解質層とを備える。
【0020】
この固体電池においては、負極に金属リチウム等の析出が生じる場合において、空隙層において空隙であった金属多孔体の孔内に金属リチウム等の析出が集中的に起こりやすく、負極界面等への金属リチウム等の析出が抑制される。したがって、内部短絡等の金属リチウム等の析出による影響を生じにくくすることができる。
【0021】
本発明の請求項8に係る積層体の製造方法は、固体電解質層と負極とを備えた積層体の製造方法であって、負極活物質を含む負極合材を金属多孔体に塗工し、前記金属多孔体の孔内に前記負極合材が充填された負極合材層を形成する工程と、前記負極合材層が形成された前記金属多孔体の表面に加圧装置の凹凸部を押し当てて前記表面に凹凸部を形成する工程と、前記金属多孔体のうちの前記凹凸部が形成された面側に対して固体電解質を塗工して、前記固体電解質が含まれる部分と前記金属多孔体の孔内に空隙が設けられた部分とを有する空隙層、および、固体電解質層を形成する工程と、を含む。
【0022】
この製造方法によって製造された積層体を含む固体電池においては、負極に金属リチウム等の析出が生じる場合において、空隙層において空隙であった金属多孔体の孔内に金属リチウム等の析出が集中的に起こりやすく、負極界面等への金属リチウム等の析出が抑制される。したがって、固体電池として用いられた場合に、内部短絡等の金属リチウム等の析出による影響を生じにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】二次電池における積層体を模式的に示す断面図である。
【
図2】計測値から作成したコールコールプロットを示す図である。
【
図3】空隙層の空隙率とエネルギー密度との関係を示す図である。
【
図4】(A)は、充填工程を説明するための図であり、(B)は、負極合材が充填された後に乾燥された金属多孔体を模式的に示す図である。
【
図5】は、凹凸形成工程を説明するための図である。
【
図6】実施例1、比較例1および比較例2における、サイクルごとのコイン型セルの容量を示す図である。
【
図7】実施例2、比較例3および比較例4における、サイクルごとのコイン型セルの容量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0025】
[固体電池]
本実施形態の固体電池は、正極と、固体電解質層と、負極とが重なって形成された一単位のセルが複数積層したものから構成される。ただし、固体電池を構成するセルの数は、一つであってもよい。固体電池は、発火のリスクが低く、急速充電が可能であり、劣化しにくく長寿命である等のメリットを有することが知られている。一方で、固体電池は、負極に金属リチウム等が析出した場合における短絡現象が、電解質が液体である二次電池に比べて起こりやすい。
【0026】
固体電池において、負極界面等に金属リチウム等が析出した場合の短絡現象の発生は、以下の理由等で引き起こされると考えられる。固体電池では、負極と固体電界質層が固体同士で界面を形成している。金属リチウムが析出した場合、析出箇所では負極と固体電解質の界面においてリチウムイオンが伝導しにくくなり、抵抗も増加しやすい状態になる。これにより、電極又は固体電解質層にクラックが発生しやすくなり、セルとして機能しにくくなり、析出した金属リチウムが固体電解質層の隙間に侵入し、短絡現象を引き起こしやすい。
これに対し、本実施形態の負極は、負極界面等への金属リチウム等の析出を抑制しやすいため、固体電池であっても電池寿命の低下しにくいものとなる。
【0027】
本実施形態の固体電池は、コイン型、ボタン型、円筒型、角形、ラミネート型のいずれの構成であってもよい。また、本実施形態の固体電池は、携帯電話、ノートパソコン等のモバイル機器用、車載用等の幅広い用途への適用が可能である。
【0028】
[積層体]
図1は、固体電池の積層体1を模式的に示す断面図である。積層体1は、固体電解質層10と、負極20とを備える。固体電解質層10は、負極20に対して積層される。また、図示を省略するが、固体電池においては、正極(不図示)が、固体電解質層10に対して積層される。
【0029】
(固体電解質層)
固体電解質層10は、固体電解質11を含む。また、本実施形態の固体電解質11は、固体電解質層10に設けられるのみならず、後述する負極20の金属多孔体21の孔内にも設けられる。固体電解質11としては、硫化物系固体電解質材料、酸化物系固体電解質材料、窒化物系固体電解質材料、ハロゲン化物系固体電解質材料等が挙げられ。硫化物系固体電解質材料としては、LPS系ハロゲン(Cl、Br、I)や、Li2S-P2S5、Li2S-P2S5-LiI等が挙げられる。なお、上記「Li2S-P2S5」の記載は、Li2SおよびP2S5を含む原料組成物を用いてなる硫化物系固体電解質材料を意味し、他の記載についても同様である。酸化物系固体電解質材料としては、NASICON型酸化物、ガーネット型酸化物、ペロブスカイト型酸化物等が挙げられる。NASICON型酸化物としては、ば、Li、Al、Ti、PおよびOを含有する酸化物(例えばLi1.5Al0.5Ti1.5(PO4)3)が挙げられる。ガーネット型酸化物としては、例えば、Li、La、ZrおよびOを含有する酸化物(例えばLi7La3Zr2O12)が挙げられる。ペロブスカイト型酸化物としては、例えば、Li、La、TiおよびOを含有する酸化物(例えばLiLaTiO3)が挙げられる。
【0030】
固体電解質11の粒径は、0.5μmより大きく且つ5μm未満であることが好ましい。固体電解質11の粒径が0.5μm以下である場合、固体電解質11のスラリーを調製する際に固体電解質11の分散が不十分になりやすく、また、スラリーの粘度が調製しにくくなる分だけスラリーの塗工が困難になる。また、固体電解質11の粒径が5μm以上である場合、固体電解質11が金属多孔体21の孔内に均一に設けられにくい分だけ、固体電解質11の金属多孔体21への塗工にムラが生じやすくなる。また、固体電解質11の金属多孔体21への塗工にムラが生じると、電気抵抗が増加しやすくなる。
【0031】
また、固体電解質層10は、90質量部以上97質量部以下の固体電解質11と、3質量部以上10質量部以下のバインダーとからなることが好ましい。また、固体電解質層10の厚さは、セルの仕様によって種々の態様が用いられるため特に限定されないが、例えば、10μm以上50μm以下であることが好ましい。
また、固体電解質層10の電気抵抗は、インピーダンス測定により特定される。また、固体電解質層10の電子伝導率は、固体電解質層10の電気抵抗率の測定や、走査型プローブ顕微鏡を用いることにより特定される。さらに、固体電解質層10の厚さや密度は、CP加工後の走査型電子顕微鏡(SEM)の使用により特定される。
【0032】
(負極)
負極20は、集電体としての金属多孔体21と、負極合材22とを有する。
金属多孔体21は、互いに連続した孔部を有する。本実施形態では、金属多孔体21の孔内に、負極合材22が充填される。金属多孔体としては、メッシュ、織布、不織布、エンボス体、パンチング体、エキスパンド、発泡体等が挙げられる。また、金属多孔体に用いられる金属としては、ニッケル、アルミニウム、ステンレス、チタン、銅、銀等が挙げられる。
金属多孔質体からなる集電体は表面積が大きい。そのため、この集電体は、負極活物質を含む負極合剤を充填することで、電極の単位面積あたりの活物質量を増大できる。よって本実施形態の負極は、固体電池として用いた場合にエネルギー密度の高いものとなる。
【0033】
負極合材22は、負極活物質を含む。負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵および放出することができるものであれば特に限定されないが、例えば、シリコン系の材料、炭素系の材料、金属系の材料等が挙げられる。本実施形態の負極20は、負極合材22に含まれる負極活物質がシリコン系の材料である場合に、好適に用いられる。
ここで、負極活物質がシリコン系の材料である場合、固体電池として充放電を繰り返すとシリコンが膨張収縮しやすい。このため、負極活物質が集電体から滑落しやすい傾向があり、界面が不安定になり金属リチウムの析出が加速されやすい。一方、本実施形態の負極20においては、集電体が金属多孔体21であるため、負極活物質の滑落も生じにくい。
【0034】
負極活物質は、シリコン系の材料としては、Si、SiO、SiO2等が挙げられる。また、炭素系の材料としては、人工黒鉛、天然黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン等が挙げられる。また、金属系の材料としては、金属リチウム、リチウム合金、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物等が挙げられる。
また、負極合材22には、固体電解質11、バインダー、および導電助剤が含まれてもよい。
【0035】
負極合材22は、65質量部以上75質量部以下の負極活物質と、23質量部以上33質量部以下の固体電解質11と、1質量部のバインダーと、1質量部の導電助剤とからなることが好ましい。
また、負極合材22の電気抵抗、電子伝導率、厚さ、密度は、固体電解質層10に対する手法と同じ手法により測定される。
【0036】
また、負極活物質の粒径は、0.1μmより大きく且つ10μm未満であることが好ましい。負極活物質の粒径が0.1μm以下である場合、負極活物質を含む負極合材22のスラリーを調製する際に負極活物質の分散が不十分になりやすく、また、スラリーの粘度が調製しにくくなる分だけスラリーの塗工が困難になる。また、負極活物質の粒径が1μm以上である場合、負極活物質が金属多孔体21の孔内に均一に充填されにくい分だけ、負極合材22の金属多孔体21への充填塗工にムラが生じやすくなる。また、負極合材22の金属多孔体21への充填塗工にムラが生じると、電気抵抗が増加しやすくなる。
【0037】
また、負極20を構成する層は、負極合材層201と、空隙層202とからなる。
負極合材層201は、金属多孔体21の孔内に負極合材22が充填されることにより形成された層である。負極合材層201における負極活物質の目付量は、3mg/cm2よりも大きいことが好ましい。負極合材層201における負極活物質の目付量が3mg/cm2よりも大きい場合、固体電池の容量を向上させることができる。また、負極合材層201の厚さは、セルの仕様によって種々の態様が用いられるため特に限定されないが、例えば、10μm以上200μm以下であることが好ましい。
【0038】
空隙層202は、負極合材層201の上に位置しており、金属多孔体21および固体電解質11からなる。より具体的には、空隙層202には、固体電解質11が設けられている部分と、金属多孔体21の孔内の少なくとも一部が固体電解質11および負極合材22の何れも含まずに空隙である空隙部23とからなる。そのため、空隙層202は、固体電解質層10に比べて固体電解質11の密度が低い低密度層としても捉えられる。
なお、
図1では、空隙層202の空隙部23にのみ金属多孔体21が図示されているが、負極合材層201において負極合材22が充填されている部分、および、空隙層202において固体電解質11が充填されている部分にも、金属多孔体21が設けられている。
【0039】
本実施形態の負極20は、負極合材層201と空隙層201とを有することにより、固体電池としてエネルギー密度が高いものになる。付言すると、固体電池として充放電を繰り返した際、負極20の付近に存在するリチウムイオンと電子は、空隙層202における金属多孔体21の金属骨格と固体電解質11に沿って空隙部23まで伝わりやすく、リチウムイオンが、空隙部23の空隙において金属リチウムとして安定して析出しやすい。このような固体電池は、金属リチウムが負極のランダムな位置で析出する従来の固体電池と比べて、リチウムの析出位置を制御することができる。よって、従来の固体電池において金属リチウムの析出により生じていた内部短絡等を抑制し、サイクル特性の高い固体電池となる。すなわち、本実施形態では、充放電に伴い析出する金属リチウムを収容するために、空隙部23を有する空隙層202が負極20に設けられている。
【0040】
図1に示す例では、空隙層202における上部には空隙部23が設けられずに固体電解質11が充填されているが、これに限定されない。空隙層202には、上下方向における何れの位置においても、空隙部23が設けられてもよい。
【0041】
(正極)
正極は、正極活物質を含む正極合材を有する。正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵・放出することができるものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、LiCoO2、Li(Ni5/10Co2/10Mn3/10)O2、Li(Ni6/10Co2/10Mn2/10)O2、Li(Ni8/10Co1/10Mn1/10)O2、Li(Ni0.8Co0.15Al0.05)O2、Li(Ni1/6Co4/6Mn1/6)O2、Li(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2、LiCoO4、LiMn2O4、LiNiO2、LiFePO4、硫化リチウム等が挙げられる。
【0042】
(その他の成分)
固体電池には、上述した材料以外の他の成分を含んでもよい。また、他の成分は、特に限定されるものではなく、固体電池を作製する際に用いられ得る成分であればよい。他の成分としては、例えば、導電助剤、結着剤等が挙げられる。導電助剤としては、アセチレンブラック等があげられる。また、正極のバインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。また、負極のバインダーとしては、例えば、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、スチレンブタジエンゴム、ポリアクリル酸ナトリウム等が挙げられる。
【0043】
[積層体の特徴]
次に、本実施形態の積層体1の特徴構成について説明する。
【0044】
(金属多孔体の比表面積)
金属多孔体21は、負極20が形成される際やセルが形成される際に加圧されるときの圧力に応じた比表面積に制御されるが、加圧される前における金属多孔体21の比表面積は、500m2/m3以上6000m2/m3以下であることが好ましい。なお、金属多孔体21の比表面積は、水銀ポロシメーターにより測定される。
加圧される前における金属多孔体21の比表面積が6000m2/m3よりも大きい場合、金属多孔体21の強度が低くなり、固体電池の充放電に伴い金属多孔体21にクラックが生じるおそれがあり、固体電池としての機能の確保が困難になる場合がある。
また、加圧の前における金属多孔体21の比表面積が500m2/m3未満である場合、金属多孔体21と固体電解質11との接触面積や金属多孔体21の金属骨格同志の接触面積が小さく、電子の移動経路(電子パス)の形成が困難になって電気抵抗が上がりやすくなるため、充放電時において金属リチウムが析出しにくくなる。また、金属多孔体21の孔内に設けられる固体電解質11が偏在しやすくなる分だけ、拡散抵抗が上がりやすくなる。
【0045】
表1は、加圧される前における金属多孔体21の比表面積と、電気抵抗率との関係を示した表である。
【0046】
【0047】
表1には、加圧される前における比表面積がそれぞれ異なる3つの金属多孔体21の電気抵抗率が示されている。表1に示すように、加圧される前における比表面積が100m2/m3である金属多孔体21は、加圧される前における比表面積が500m2/m3である金属多孔体21および6000m2/m3である金属多孔体21に比べて、電気抵抗率が高い。
【0048】
図2は、負極20に印加する交流電圧の周波数を変えながら固体電池のインピーダンスを計測して得られた計測値から作成したコールコールプロットを示す図である。計測に用いられた固体電池は、加圧される前における金属多孔体21の比表面積が200m
2/m
3である負極20を備える固体電池、および、加圧される前における金属多孔体21の比表面積が5800m
2/m
3である負極20を備える固体電池の二つである。また、
図2において、横軸はインピーダンスの実数成分であり、縦軸はインピーダンスの虚数成分である。
【0049】
図2に示すコールコールプロットにおいては、最初のY軸との切片が電子抵抗の推定値とされ、描かれた右半円Y軸との切片が拡散抵抗の推定値とされる。
図2に示すように、加圧の前における金属多孔体21の比表面積が5800m
2/m
3である負極20を備える固体電池よりも、加圧の前における金属多孔体21の比表面積が200m
2/m
3である負極20を備える固体電池の方が、電気抵抗および拡散抵抗の何れも高いことが確認された。
【0050】
(空隙層における固体電解質の密度)
空隙層202においては、固体電解質11の密度が1.5g/cc以上1.8g/cc未満であることが好ましい。
空隙層202における固体電解質11の密度が1.8g/cc以上である場合、セルの形成工程において負極20が加圧される際に空隙層202においてクラックが生じるおそれがある。また、空隙層202における固体電解質11の密度が1.5g/cc未満である場合、エネルギー密度が低下し、また、空隙層202における固体電解質11の粒子間の接触面積が小さくなるため、イオン伝導性が低下しやすくなる。この場合、セルとしてのイオン拡散抵抗が大きくなるために、固体電池の急速充電が困難になる等のレート特性の悪化を招くおそれがある。
【0051】
なお、空隙層202における固体電解質11の密度は、積層体1を形成するために負極20および固体電解質層10がロールプレスによって加圧される際に受ける圧力によって制御される。
また、アルゴンビームを積層体1に照射することで空隙層202の垂直断面を作製し、作製した空隙層202の断面を電子顕微鏡で観察することで、空隙層202の厚さが測定される。そして、測定された空隙層202の厚さと、空隙層202における固体電解質11の単位面積あたりの重量とから、空隙層202における固体電解質11の密度が算出される。
【0052】
(空隙層の空隙率)
空隙層202において、金属多孔体21の孔内の体積に対して空隙部23の空隙が占める体積の割合は、10%以下であることが好ましい。なお、空隙層202において、金属多孔体21の孔内の体積に対して空隙部23の空隙が占める体積の割合を、以下では、空隙層202の空隙率と称することがある。
空隙層202の空隙率が10%よりも大きいと、負極20の密度が低下するため、固体電池の容量を確保するために必要な負極20の厚さが大きくなる。また、負極20の厚さが大きくなると、予め定められた厚さの固体電池を構成するセルの数が減少することにより、固体電池のエネルギー密度が低下するおそれがある。さらに、固体電池における正極と負極20との初期の容量比(N/P比)が目標の値からずれやすくなることで、固体電池の容量の低下を伴う劣化が進行しやすくなる。
【0053】
なお、空隙層202の空隙率は、積層体1を形成するために負極20および固体電解質層10がロールプレスによって加圧される際に受ける圧力によって制御される。
また、空隙層202の空隙率は、ガス吸着法によって測定される。
【0054】
図3は、空隙層202の空隙率とエネルギー密度との関係を示す図である。
図3には、空隙層202における密度がそれぞれ異なる固体電解質11が設けられた四つの固体電池のエネルギー密度が示されている。また、各固体電池のエネルギー密度は、空隙層202の空隙率ごとに示されている。
【0055】
図3に示すように、空隙層202における固体電解質11の密度が1.4g/ccである場合、空隙層202における固体電解質11の密度が1.5g/cc、1.6g/cc、および1.8g/ccである場合に比べて、固体電池のエネルギー密度が低くなることが確認された。
また、何れの固体電池においても、空隙層202の空隙率が10%よりも大きい場合、固体電池のエネルギー密度の低下が顕著になることが確認された。
【0056】
(負極活物質に対するリチウムの放電割合)
負極20における負極活物質の放電容量に対する、充放電に伴って空隙層202の空隙部23における空隙に入ることが可能であるリチウムの放電容量の割合は、5%以上8%以下であることが好ましい。なお、充放電に伴って空隙層202の空隙部23における空隙に入ることが可能であるリチウムとは、空隙部23に予め設けられた空隙が全て充放電に伴い析出した金属リチウムで満たされた場合において空隙層202に存在する金属リチウムを意味する。また、負極20における負極活物質の放電容量に対する、充放電に伴って空隙層202の空隙部23における空隙に入ることが可能であるリチウムの放電容量の割合を、以下では、負極活物質に対するリチウムの放電割合と称することがある。
負極活物質に対するリチウムの放電割合が5%未満である場合、充放電に伴い析出する金属リチウムの収容に必要な空隙部23の空隙が不足することがある。また、負極活物質に対するリチウムの放電割合が8%よりも大きい場合、固体電池の容量を確保するために必要な負極20の厚さが大きくなる。また、負極20の厚さが大きくなると、予め定められた厚さの固体電池を構成するセルの数が減少することにより、固体電池のエネルギー密度が低下するおそれがある。
【0057】
[固体電池の製造方法]
次に、固体電池の製造方法について説明する。
本実施形態の固体電池は、負極20を製造する負極製造工程と、負極20に対して固体電解質層10を積層することで積層体1を製造する積層体製造工程と、積層体1に対して正極を積層する積層工程とにより製造される。また、負極製造工程は、金属多孔体21の孔内に負極合材22を充填塗工する充填工程と、負極合材22が充填された金属多孔体21に凹凸を形成する凹凸形成工程とを含む。
【0058】
(充填工程)
図4(A)は、充填工程を説明するための図である。また、
図4(B)は、負極合材22が充填塗工された後に乾燥された金属多孔体21を模式的に示す図である。
図4(A)に示すように、金属多孔体21の孔内への負極合材22の充填塗工には、二つのコーター30および二つのプランジャー40が用いられる。本実施形態では、プランジャー40が、コーター30にスラリーとして充填された負極合材22を押し出すことにより、コーター30からスラリーが吐出される。また、コーター30は、金属多孔体21の厚さ方向における両外側にそれぞれ設けられ、金属多孔体21の両面に対してスラリーを吐出することで、金属多孔体21の孔内にスラリーを充填塗工する。
【0059】
また、コーター30およびプランジャー40は、金属多孔体21の長手方向(図示の例では上下方向)に移動することが可能である。プランジャー40は、コーター30とともに移動しながら、コーター30に充填されたスラリーを押す力を制御することで、コーター30からスラリーを吐出させるか否かを制御する。言い換えると、プランジャー40は、コーター30に充填されたスラリーを押す力を制御することで、金属多孔体21の長手方向の位置に応じて、金属多孔体21の孔内にスラリーを充填塗工させるか否かを制御する。
【0060】
金属多孔体21は、孔内にスラリーが充填塗工された後、厚さ方向が上下方向を向く状態で乾燥される。この乾燥の工程において、金属多孔体21の孔内に充填塗工されたスラリーは重力を受けて下側に浸漬する。そのため、
図4(B)に示すように、乾燥された金属多孔体21においては、孔内に負極合材22が充填された層の上に、孔内に負極合材22が充填されていない層が形成される。
【0061】
(凹凸形成工程)
図5は、凹凸形成工程を説明するための図である。
上述した充填工程の後、金属多孔体21は、
図5に示すように、加圧装置であるロールプレス50により加圧される。
ロールプレス50は、表面が凹凸状に形成された凹凸部の一例としての凹凸ローラー51と、表面が正円状に形成された正円ローラー52とを備える。凹凸ローラー51および正円ローラー52は、金属多孔体21の厚さ方向においてそれぞれ異なる面側に設けられ、金属多孔体21を挟んで押圧する。より具体的には、凹凸ローラー51は、金属多孔体21において負極合材22が充填されていない層側を押圧し、正円ローラー52は、金属多孔体21において負極合材22が充填されている層側を押圧する。また、ロールプレス50のこの押圧により金属多孔体21に与える圧力に応じて、金属多孔体21の比表面積が制御される。
【0062】
また、凹凸ローラー51および正円ローラー52は、金属多孔体21を挟んで押圧した状態で、凹凸ローラー51が図中反時計回り方向に回転するとともに正円ローラー52が図中時計回り方向に回転することで、金属多孔体21の長手方向に沿って移動する。これにより、金属多孔体21が長手方向にわたって加圧されるとともに、金属多孔体21のうちの凹凸ローラー51が押し当てられた側の表面部には、凹んだ凹部211と突出した凸部212とからなる凹凸部210が形成される。この凹凸部210は、
図4(B)に示した、金属多孔体21のうちの孔内に負極合材22が充填されていない部分から形成されている。そのため、金属多孔体21の凹凸部210は、孔内に負極合材22が充填されていない部分である。
【0063】
(積層体製造工程)
次に、加圧された金属多孔体21に対して、固体電解質11が塗工される。本実施形態では、金属多孔体21の凹凸部210の表面に対して、固体電解質11が塗工される。このとき、金属多孔体21の凹部211に固体電解質11が入り込むとともに、凸部212の表面に固体電解質11が積まれる。また、凹凸部210の表面のみならず凹凸部210の上にも固体電解質11が層状に積まれてロールプレスされることにより、
図1に示す負極合材層201と空隙層202とからなる負極20が形成されるとともに、この負極20と固体電解質層10とからなる積層体1が形成される。ここで、
図1に示す金属多孔体21の空隙部23は、
図5に示す金属多孔体21の凸部212の孔内の部分である。
なお、金属多孔体21のうちの凸部212の孔内の少なくとも一部に空隙が設けられれば、この凸部212の孔内の一部に固体電解質11が含まれてもよいし、含まれなくてもよい。
【0064】
(積層工程)
次に、形成された積層体1に対して正極がさらに積層された積層体が、1軸プレスにより加圧されることにより、固体電池としての一単位のセルが形成される。
【実施例】
【0065】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0066】
[実施例1]
(コイン型セル(固体電池)の作製)
負極活物質であるシリコン65質量部と、固体電解質33質量部と、バインダー1質量部と、導電助剤1質量部とを用いて負極合材のスラリーを調製した。次に、得られたスラリーを、充填工程として
図4(A)に示した方法により、集電体として用いられ比表面積が5800m
2/m
3である金属多孔体の孔内に充填して金属多孔体を乾燥させた後、凹凸形成工程として
図5に示した方法により加圧することで、目付量が5mg/cm
2である負極活物質を含む負極合材層を形成するとともに、金属多孔体の表面に凹凸を形成した。
次に、固体電解質90質量部とバインダー10質量部とを用いて固体電解質のスラリーを調製し、得られたスラリーを金属多孔体のうちの凹凸が形成された面側に塗布して金属多孔体を乾燥させてからロールプレスにより加圧することで、
図1に示す積層体を作製した。
さらに、リチウムからなる正極合材のスラリーを調製し、得られたスラリーを積層体に塗布して積層体を乾燥させた後、3MPaの圧力により積層体を加圧する1軸プレス処理を行うことで、直径が10mmであるコイン型のセルを作製した。
【0067】
[実施例2]
負極合材層における負極活物質の目付量を10mg/cm2にする以外は、実施例1と同様にして実施例2のコイン型セルを作製した。
【0068】
[比較例1]
集電体として銅箔を用いるとともに、この銅箔に負極合材を積載して凹凸のないロールプレスを用いて加圧することで負極を作製した以外は、実施例1と同じ方法により、負極合材層における負極活物質の目付量が5mg/cm
2であり、直径が10mmである比較例1のコイン型セルを作製した。この比較例1のコイン型セルの負極においては、金属多孔体が用いられておらず、
図1に示すような空隙層も形成されていない。
【0069】
[比較例2]
孔内に負極合材が充填された集電体として用いられ比表面積が200m
2/m
3である金属多孔体に対して凹凸のないロールプレスを用いて加圧することで負極を作製した以外は、実施例1と同じ方法により、負極合材層における負極活物質の目付量が5mg/cm
2であり、直径が10mmである比較例2のコイン型セルを作製した。比較例2のコイン型セルの負極は、金属多孔体が用いられている点で実施例1および実施例2と共通するが、
図1に示すような空隙層が形成されていない点で実施例1および実施例2とは異なる。
【0070】
[比較例3]
負極合材層における負極活物質の目付量を10mg/cm2にする以外は、比較例1と同様にして比較例3のコイン型セルを作製した。
【0071】
[比較例4]
負極合材層における負極活物質の目付量を10mg/cm2にする以外は、比較例2と同様にして比較例4のコイン型セルを作製した。
【0072】
[コイン型セルの評価]
得られたコイン型セルを用いて、60℃の温度条件下で、0.05Cレートで1.2V~0Vのカットオフ電位で充放電試験を行った。以上の操作を1.0C、2.0C、3.0Cの各Cレートで実施し、充放電させたときの容量をサイクルごとに測定した。
【0073】
図6は、実施例1、比較例1および比較例2における、サイクルごとのコイン型セルの容量を示す図である。
図6に示す容量は、充放電前のコイン型セルの容量に対する、充放電後のコイン型セルの容量の割合である。
実施例1では、比較例1および比較例2に比べて、サイクルを重ねた場合においても容量が減少しにくい傾向にあり、サイクルを重ねた場合であっても高い容量を維持することが確認された。以上の結果から、金属多孔体の孔内に固体電解質が含まれる部分と空隙が含まれる部分とを有する空隙層が設けられた負極を備える固体電池では、金属リチウムの析出による内部短絡等が抑制され、耐久性(サイクル特性)に優れた結果が得られることがわかる。
【0074】
図7は、実施例2、比較例3および比較例4における、サイクルごとのコイン型セルの容量を示す図である。
図7に示す容量は、充放電前のコイン型セルの容量に対する、充放電後のコイン型セルの容量の割合である。
実施例2では、比較例3および比較例4に比べて、サイクルを重ねた場合においても容量が減少しにくい傾向にあり、サイクルを重ねた場合であっても高い容量を維持することが確認された。特に、負極合材層における負極活物質の目付量が10mg/cm
2であると、負極合材層における負極活物質の目付量が5mg/cm
2である場合に比べて、サイクルを重ねた場合に容量が減少しやすい傾向にあるところ、実施例2のように空隙層が設けられた負極を備える固体電池では、耐久性(サイクル特性)に優れた結果が得られることがわかる。
【0075】
以上の結果から、本発明によれば、固体電池として用いた場合に、内部短絡等の金属リチウム等の析出による影響を生じにくい負極を提供できることが分かった。
【符号の説明】
【0076】
1…積層体
10…固体電解質層
11…固体電解質
20…負極
21…金属多孔体
22…負極合材
23…空隙部
201…負極合材層
202…空隙層
【要約】
【課題】本発明は、固体電池として用いた場合に、内部短絡等の金属リチウム等の析出による影響を生じにくい負極を提供することを目的とする。そして、延いてはエネルギーの効率化に寄与するものである。
【解決手段】固体電池の負極であって、
負極活物質を含む負極合材が金属多孔体の孔内に充填されて形成された負極合材層と、
厚さ方向に対して加圧された前記金属多孔体の前記厚さ方向における固体電解質層側において、固体電解質が含まれる部分と、前記金属多孔体の孔内に空隙が設けられた部分とを有する空隙層と、を備え、
前記加圧の前における前記金属多孔体の比表面積は、500m
2/m
3以上6000m
2/m
3以下である、負極。
【選択図】
図1