(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-30
(45)【発行日】2025-10-08
(54)【発明の名称】電気絶縁電線
(51)【国際特許分類】
H01B 7/02 20060101AFI20251001BHJP
C08L 77/02 20060101ALI20251001BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20251001BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20251001BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20251001BHJP
【FI】
H01B7/02 B
C08L77/02
C08L101/00
C08K3/36
H01B7/00 303
(21)【出願番号】P 2021156224
(22)【出願日】2021-09-27
【審査請求日】2024-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】391018710
【氏名又は名称】東特塗料株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】521420646
【氏名又は名称】福保化学股▲わん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】甲賀 敏美
(72)【発明者】
【氏名】藤倉 裕一
(72)【発明者】
【氏名】渡部 貴智
(72)【発明者】
【氏名】テディ クンサディ
(72)【発明者】
【氏名】楊 穆武
(72)【発明者】
【氏名】朱 哲忻
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-094026(JP,A)
【文献】特開2009-146753(JP,A)
【文献】特開2002-042566(JP,A)
【文献】特開平02-135610(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0009581(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/02
C08L 77/02
C08L 101/00
C08K 3/36
H01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体に絶縁被膜を施し、当該絶縁被膜の外層に自己融着層を施してなる電気絶縁電線において、当該自己融着層を構成する樹脂組成物が、12ナイロンの結晶性樹脂と熱硬化性樹脂とオルガノシリカゾルとを含有
し、熱伝導率(W/m・K)を0.375以上、初期(常温25℃)の接着強度(N)を2.8以上とすることを特徴とする電気絶縁電線。
【請求項2】
樹脂組成物が、12ナイロンの結晶性樹脂と熱硬化性樹脂との混合比率において、前者の12ナイロンの結晶性樹脂が98~
55重量%で、後者の熱硬化性樹脂が2~
45重量%で、オルガノシリカゾルが、前記の12ナイロンの結晶性樹脂100重量部に対して5~60重量部であることを特徴とする、請求項1に記載の電気絶縁電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気絶縁電線に関し、特に、その自己融着層に、良好な熱伝導性と接着性を付与するものである。
【背景技術】
【0002】
電気絶縁電線は、例えば、
図1に示すように、導体1の外周に絶縁被膜2を施し、当該絶縁被膜2の外周にオ-バ-コ-ト層3を設けて構成され、当該オ-バ-コ-ト層3を自己融着層3とした自己融着性絶縁電線は、電気機器のコイル例えばテレビやパソコンのデイスプレイの偏向ヨ-クコイルのマグネットワイヤ、自動車、家電、パソコン、携帯電話、時計、医療など多くの分野で使用されている。
当該自己融着性絶縁電線にあっては、当該絶縁被膜2の外周の融着層3の自己融着性により、例えば、コイル巻線してから加熱すると、当該融着層3によりコイル線間を迅速且つ容易に接着できるので、電気機器の生産性の向上や製造コストの低減等の面から、広く実用化されている。
その為には、当該自己融着性絶縁電線にあっては、当該コイル線間の接着性の良さが求められる。
【0003】
又、 温度上昇による当該融着層3の劣化・熱分解を抑制するためには、当該融着層3が高い熱伝導性を有していることが要求される。
従来、絶縁被膜(絶縁被膜塗料)の熱伝導率を向上させるために、無機絶縁微粒子を使用することが提案されている。
例えば、特許文献1には、熱硬化性樹脂と無機充填材とを含有するコイル絶縁シ-トが記載されていて、 当該無機充填材としては、従来公知の無機充填材を使用することができ、特に限定されない旨記載され、又、当該無機充填材の構成材料としては、シリカ類(無定形シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、球状シリカ、合成シリカ、中空シリカ等)が挙げられている。
シリカとは、ケイ素Siの自然界での形態をいい、二酸化ケイ素(SiO2)の形態で生物の骨格などを形成している場合もある。
シリカは、圧力や温度などの条件により、様々な形(結晶多形)をとり、結晶性シリカと非結晶性シリカとの2つに大別される。 シリカゲルは、非結晶性シリカで、ケイ酸をゲル化したもので、通常、SiO2が、純度99.5%以上のものをさす。
シリカエアロゲル(aerogel) は、シリカゲル中に含まれる溶媒を超臨界乾燥により気体に置換した多孔性の物質である。
一方、シリカゾルは、溶媒にシリカを分散させたもので、有機溶剤にシリカ を分散させたものが、オルガノシリカゾルである。有機溶剤に分散したオルガノシリカゾルを得る方法には 、 水性シリカゾルをアルコ-ルなどの親水性溶媒 で溶媒置換する方法、 又、 親水性溶媒をさらに疎水性溶媒で置換する方法などが知られている 。
【0004】
特許文献2では、フェノ-ル類又はベンジルアルコ-ルを溶剤とした樹脂塗料に分散することができるオルガノシリカゾルが記載されていて、従来、導体の外周に絶縁体として樹脂塗料を塗布焼付けしたエナメル線において、有機溶剤に溶解した樹脂塗料中にシリカなどの無機絶縁材料微粉末を分散させた樹脂塗料により絶縁体を形成したものが知られていて、シリカ粒子は、エナメル線に耐部分放電性を付与するほか、熱伝導度の向上を図れることが記載されている。
【0005】
特許文献3では、ポリイミド系高分子の溶液に、シリカゾルを添加する工程を備えたポリイミド系高分子ワニスの製造方法が記載されている。
【0006】
樹脂(プラスチック)は、長いひも状の高分子が絡み合って構成されている。加熱され溶融状態となった樹脂は、分子運動している状態である。溶融状態から一定の温度に低下し固化するとき、結晶性樹脂と非晶性樹脂では、分子の停止状態に違いがある。
当該結晶性樹脂の主なものに、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PA(ポリアミド)、POM(ポリアセタ-ル、ポリオキシメチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレ-ト)、PBT(ポリブチレンテレフタレ-ト)・PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEEK(ポリエ-テルエ-テルケトン)、LCP(液晶ポリマー)、PIFE(ポリテトラフルオロエチレン等がある。
一方、非晶性樹脂の主なものには、PVC(ポリ塩化ビニル)、PS(ポリスチレン)、PMMA(ポリメチルメタクリレ-ト)、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)、PC(ポリカ-ボネ-ト)等がある。
上記PA(ポリアミド)には、結晶性樹脂と非晶性樹脂との両方がある。
【0007】
特許文献4には、基本組成が、熱可塑性非晶性ポリアミド樹脂に、熱可塑性結晶性ポリアミド樹脂を重量比10~80%添加してなるポリアミド系樹脂組成物が記載されている。当該熱可塑性非晶性ポリアミド樹脂としては、6,66、11、12,510ナイロンが好ましいとされ、当該熱可塑性結晶性ポリアミド樹脂も、同様に、6,66、11、12,510ナイロンが好ましいとされている。当該特許文献4の記載によれば、当該ポリアミド系樹脂組成物により、バリの発生が減少し、耐熱温度が上昇した旨の記載がある。尚、当該特許文献4では、特に、ナイロン6、ナイロン66が望ましいとの記載がある。
【0008】
特許文献5には、平衡吸水率の異なる結晶性ポリアミド樹脂と結晶性ポリアミド樹脂とからなるポリアミド樹脂に、球形状で平均粒子径が0.05~20μmのフィラ-を配合してなるポリアミド樹脂フィルムが記載されている。有機質フィラ-の例として、シリカが例示されているが、樹脂として、同じ熱可塑性の結晶性ポリアミド樹脂同士を混合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2021-86998号公報、
【文献】特開2004-203719号公報
【文献】WO2018/062296
【文献】特開昭62-062858
【文献】特開2000-109577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、自己融着層を有する電気絶縁電線におけるその自己融着層に対して、良好な熱伝導性と接着性を付与することができる技術を提供することを目的としたものである。
本発明の他の目的や新規な特徴については本件明細書及び図面の記載からも明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の特許請求の範囲は、次の通りである。
(請求項1)導体に絶縁被膜を施し、当該絶縁被膜の外層に自己融着層を施してなる電気絶縁電線において、当該自己融着層を構成する樹脂組成物が、12ナイロンの結晶性樹脂と熱硬化性樹脂とオルガノシリカゾルとを含有し、熱伝導率(W/m・K)を0.375以上、初期(常温25℃)の接着強度(N)を2.8以上とすることを特徴とする電気絶縁電線。
(請求項2)樹脂組成物が、12ナイロンの結晶性樹脂と熱硬化性樹脂との混合比率において、前者の12ナイロンの結晶性樹脂が98~55重量%で、後者の熱硬化性樹脂が2~45重量%で、オルガノシリカゾルが、前記の12ナイロンの結晶性樹脂100重量部に対して5~60重量部であることを特徴とする、請求項1に記載の電気絶縁電線。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、次のような利点がある。
本発明によれば、請求項1に示すように、導体に絶縁被膜を施し、当該絶縁被膜の外層に自己融着層を施してなる電気絶縁電線において、当該自己融着層を構成する樹脂組成物が、12ナイロンの結晶性樹脂と熱硬化性樹脂とオルガノシリカゾルとを含有し、熱伝導率(W/m・K)を0.375以上、初期(常温25℃)の接着強度(N)を2.8以上とすることを特徴とする電気絶縁電線により構成することにより、当該外層の自己融着層についてのコイル線間の接着性が良好になり、当該コイルを巻線してから加熱すると、当該融着層の接着性が良好になるので、コイル線間を迅速且つ容易に接着でき、従って、電気機器の生産性の向上や製造コストの低減等を果たすことができる。
又、当該自己融着層の熱伝導率を向上させることができるので、温度上昇による当該自己融着層の劣化・熱分解を抑制することができる。
本発明によれば、当該自己融着層を構成する樹脂組成物について、12ナイロンの結晶性樹脂と熱硬化性樹脂とオルガノシリカゾルとを含有し、熱伝導率(W/m・K)を0.375以上、初期(常温25℃)の接着強度(N)を2.8以上とすることにより、自己融着層の接着性や熱伝導率を向上させることができるだけではなく、電気絶縁電線の巻線の基本的な特性である可撓性を悪化させることなく、耐コロナ性が優れた電気絶縁電線を得ることができる。併せて、被膜損傷からの保護や高温時での優れた耐熱性などをも具備させることができる。
【0013】
本発明によれば、請求項2に示すように、当該自己融着層を構成する樹脂組成物について、98~55重量%の12ナイロンの結晶性樹脂と、2~45重量%の熱硬化性樹脂と、前記の12ナイロンの結晶性樹脂100重量部に対して5~60重量部のオルガノシリカゾルとを含有してなるようにすることにより、より一層、当該外層の自己融着層についてのコイル線間の接着性が良好になり、当該コイルを巻線してから加熱すると、当該融着層の接着性がより一層良好になるので、コイル線間を迅速且つ容易に接着でき、従って、電気機器の生産性の向上や製造コストの低減下等の役割を果たすことができ、しかも、当該自己融着層の熱伝導率を向上させることができるので、温度上昇による当該自己融着層の劣化・熱分解をより一層抑制することができる。
上記12ナイロンの結晶性樹脂が98重量%を超えても、当該自己融着層の熱伝導率を向上させることができるが、その効果が飽和し経済的ではないし、特に、高温雰囲気となると、接着力がなくなり、又、コイルがほつれる状態となる。
又、電気絶縁電線の巻線の基本的な特性である可撓性を悪化させることなく、耐コロナ性が優れた電気絶縁電線を得ることができると共に、被膜損傷からの保護や高温時での優れた耐熱性などをも具備させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】自己融着層のオ-バ-コ-ト層を有する電気絶縁電線の説明図である。
【
図2】実施例及び比較例に示す測定結果に基づくグラフ図である。
【
図3】実施例及び比較例に示す測定結果に基づくグラフ図である。
【
図4】実施例及び比較例に示す測定結果に基づくグラフ図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明において、自己融着層を構成する樹脂組成物は、12ナイロンの結晶性樹脂と熱硬化性樹脂とオルガノシリカゾルとを含有してなる。
当該12ナイロンには、結晶性樹脂の12ナイロンと非晶性樹脂の12ナイロンとがあるが、前者の12ナイロンの結晶性樹脂を使用する。その理由は、当該融着層の接着性と熱伝導率の向上を考慮したからである。
結晶性樹脂として、12ナイロンの結晶性樹脂の他に、6,66、11、510ナイロンがあるが、上記理由から、12ナイロンの結晶性樹脂の使用が好ましい。
又、12ナイロンの結晶性樹脂の他に、結晶性樹脂として、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、POM(ポリアセタ-ル、ポリオキシメチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレ-ト)、PBT(ポリブチレンテレフタレ-ト)・PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEEK(ポリエ-テルエ-テルケトン)、LCP(液晶ポリマー)、PIFE(ポリテトラフルオロエチレン等があるが、上記接着性の向上などの観点からは、難点がある。
一方、非晶性樹脂として、PVC(ポリ塩化ビニル)、PS(ポリスチレン)、PMMA(ポリメチルメタクリレ-ト)、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)、PC(ポリカ-ボネ-ト)等があるが、同様に、その使用には上記接着性の向上などの観点からは、難点がある。
【0016】
本発明において、自己融着層を構成する樹脂組成物は、上記12ナイロンの結晶性樹脂がベ-スとなるが、当該12ナイロンの結晶性樹脂に加えて、樹脂として、熱硬化性樹脂が添加される。
当該熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノ-ル樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂等が挙げられる。
又、当該熱硬化性樹脂は、1種又は2種以上を使用することができる。
【0017】
本発明では、自己融着層を構成する樹脂組成物は、上記12ナイロンの結晶性樹脂がベ-スとなって、当該12ナイロンの結晶性樹脂に加えて、樹脂として、熱硬化性樹脂が添加され、更に、当該樹脂分に対して、オルガノシリカゾルが添加される。
シリカゾルは、溶媒にシリカを分散させたもので、有機溶剤にシリカ を分散させたものが、オルガノシリカゾルである。
当該オルガノシリカゾルにおけるシリカ分散媒の有機溶剤には、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド、イソプロパノ-ル、エチレングリコ-ル、プロピレングリコ-ルモノメチルエ-テルアセテート、メチルエチルケトン、トルエン、エチレングリコ-ルモノプロピルエ-テル、シクロヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等が挙げられる。
有機溶剤に分散したオルガノシリカゾルを得る方法には 、 水性シリカゾルをアルコ-ルなどの親水性溶媒で溶媒置換する方法、又、親水性溶媒をさらに疎水性溶媒で置換する方法などが知られている 。
オルガノシリカゾルを形成しているシリカとは、ケイ素Siの自然界での形態をいい、二酸化ケイ素(SiO2)の形態で生物の骨格などを形成している場合もある。シリカは、圧力や温度などの条件により、様々な形(結晶多形)をとり、結晶性シリカと非結晶性シリカとの2つに大別される。
当該非結晶性シリカのシリカゲルは、ケイ酸をゲル化したもので、通常、SiO2が、純度99.5%以上のものをさす。シリカエアロゲル(aerogel) は、シリカゲル中に含まれる溶媒を超臨界乾燥により気体に置換した多孔性の物質である。
当該二酸化珪素(SiO2)の粒子径には制限はないが、その粒子径が80nm以下であることが、巻線の可撓性や耐コロナ性を向上させることができるので、好ましく、特に、好ましくは、10~50nmである。
当該オルガノシリカゾルは、市販のものを使用することができる。例えば、DMAC-ST、IPA-ST、EG-ST、NPC-ST-30(日産化学工業株式会社製)が挙げられ、これらオルガノシリカゾルは次のような物性を持つ。
DMAC-STは、そのSiO2の含有量が20~21%、H2O含有量が3以下、分散媒がN,N-ジメチルアセトアミド、粒子径が10~20nm、粘度が1~10cp(20℃)のオルガノシリカゾルである。
IPA-STは、そのSiO2の含有量が30~31%、H2O含有量が2以下、分散媒がイソプロパノ-ル、粒子径が10~20nm、粘度が3~20cp(20℃)のオルガノシリカゾルである。
EG-STは、そのSiO2の含有量が20~21%、H2O含有量が2以下、分散媒がエチレングリコ-ル、粒子径が10~20nm、粘度が20~100cp(20℃)のオルガノシリカゾルである。
NPC-ST-30は、そのSiO2の含有量が30~31%、H2O含有量が1.5以下、分散媒がエチレングリコールモノプロピルエ-テル、粒子径が10~15nm、粘度が25cp以下(20℃)のオルガノシリカゾルである。
上記のオルガノシリカゾルの中で、DMAC-STが特に好ましい。
他に、デグサ/アエロシリ-ズ(東新化成社製)等も使用できる。
本発明では、ナノサイズのシリカ粒子を分散媒体に分散したナノシリカゾルが好ましい。
【0018】
本発明の電気絶縁電線の自己融着層を構成する樹脂組成物は、12ナイロンの結晶性樹脂と熱硬化性樹脂との混合比率が、前者の12ナイロンの結晶性樹脂が98~55重量%で、後者の熱硬化性樹脂が2~45重量%で、オルガノシリカゾルが、前記の12ナイロンの結晶性樹脂100重量部に対して5~60重量部であることを特徴とする。
12ナイロンの結晶性樹脂が98~55重量%の範囲を逸脱し、熱硬化性樹脂が2~45重量%の範囲を逸脱し、オルガノシリカゾルが、前記の12ナイロンの結晶性樹脂100重量部に対して5~60重量部の範囲を逸脱し、即ち、オルガノシリカゾルの重量比が、前記の12ナイロンの結晶性樹脂100に対して5~60の重量比の範囲を逸脱すると、自己融着層の接着性や熱伝導率を向上させることができ難くなる。
上記12ナイロンの結晶性樹脂が98重量%を超えても、当該自己融着層の熱伝導率を向上させることができるが、その効果が飽和し経済的ではないし、特に、高温雰囲気となると、接着力がなくなり、又、コイルがほつれる状態となる。
又、電気絶縁電線の巻線の基本的な特性である可撓性や高温時での耐熱性なども具備し難くさせる。
【0019】
本発明では、12ナイロンの結晶性樹脂と熱硬化性樹脂とオルガノシリカゾルとを含有してなる樹脂組成物を有機溶剤に溶解させて自己融着層の電気絶縁塗料を構成することができる。
当該有機溶剤としては、例えば、クレゾ-ル、フェノ-ル、Nメチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、キシレン、ソルベントナフサが挙げられる。
当該溶剤としては、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0020】
本発明では、自己融着層に、滑剤の添加により、自己滑性を有しさせるようにしてもよい。
当該自己滑性層により、当該自己融着層に自己滑性を付与し、摩擦係数を低下させることが出来る。
当該滑剤としては、脂肪酸エステル、低分子ポリエチレン、ワックスなどが例示できる。
【0021】
本発明では、更には、必要に応じて、架橋剤を添加してもよい。
当該架橋剤としては、ブロックイソシアネ-ト樹脂などが挙げられる。
【0022】
本発明では、更には、必要に応じて、各種他の添加剤を添加してもよく、当該他の添加剤としては、層状粘度鉱物やカ-ボンナノチュ-ブ等の無機充填剤やカ-ボンブラックなどの着色剤やフェノ-ル系酸化防止剤等の酸化防止剤(耐候剤)や難燃剤や反応触媒などを使用してもよい。
【0023】
本発明の電気絶縁電線は、
図1に示すように、導体1の外周に絶縁被膜2を施し、当該絶縁被膜2の外周にオ-バ-コ-ト層3として、自己融着層3を設ければよい。
[導体]
導体1は、通常、金属導体1よりなり、例えば断面が円形状の丸線とされるが、断面が正方形状の角線又は長方形状の平角線や、複数の素線を撚り合わせた撚り線であってもよい。
金属導体1の材質としては、導電率が高くかつ機械的強度が大きい金属が好ましい。このような金属としては、例えば銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、銀、鉄、鋼、ステンレス鋼等が挙げられる。金属導体1は、これらの金属を線状に形成した材料や、このような線状の材料にさらに別の金属を被覆した多層構造のもの、例えばニッケル被覆銅線、銀被覆銅線、銅被覆アルミ線、銅被覆鋼線等を用いることができる。
金属導体1の平均断面積の下限としては、0.01mm
2が好ましく、0.1mm
2がより好ましい。一方、金属導体1の平均断面積の上限としては、100mm
2が好ましく、50mm
2がより好ましい。金属導体1の平均断面積が上記下限に満たない場合、金属導体1に対する自己融着層3の体積が大きくなり、当該絶縁電線を用いて形成されるコイル等の体積効率が低くなるおそれがある。逆に、金属導体1の平均断面積が上記上限を超える場合、従来の絶縁電線にワニスを含浸する方法でも比較的容易かつ安価にコイルを形成できるため、従来の絶縁電線に対して有利性が得られないおそれがある。
[絶縁被膜]
絶縁被膜(絶縁層)2は、絶縁性を有する樹脂組成物で形成される。絶縁層2を形成する樹脂組成物としては、特に限定されないが、例えばポリイミド、ポリビニルホルマ-ル、熱硬化ポリウレタン、熱硬化アクリル、エポキシ、熱硬化ポリエステル、熱硬化ポリエステルイミド、熱硬化ポリエステルアミドイミド、芳香族ポリアミド、熱硬化ポリアミドイミド、熱硬化ポリイミド等の熱硬化性樹脂や、例えばフェノキシ樹脂、ポリエ-テルスルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエ-テルイミド、ポリエ-テルエ-テルケトン等の熱可塑性樹脂を主成分とするものが使用できる。絶縁層2は2種類以上の樹脂の複合体又は積層体であってもよく、また熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との複合体又は積層体であってもよい。
当該絶縁被膜2は、例えば、1層~3層に構成され、例えば、下地及び中地のダブル2層に構成することが出来る。
【実施例】
【0024】
以下に実施例を挙げ本発明のより詳細な理解に供する。当然のことながら本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
実施例1
【0025】
12ナイロンの結晶性樹脂が90重量%と、熱硬化性樹脂10重量%とからなるベ-スワニスに、当該ベ-スワニスを構成する12ナイロンの結晶性樹脂100重量部に対して、オルガノシリカゾル30重量部を添加して、自己融着層を構成をし、直径0.4mmのAIW(耐熱エナメル銅線:ポリアミドイミド銅線 )に塗布し、横炉を使用し、300/320℃、線速28.0mm/min.、当該自己融着層片皮膜10~11umで、直径4.0mmのヘリカコイルを作成した。コイル間の接着処理条件は、180℃x10分とした。
ヘリカコイルにおける接着強度(N)を、JISC:3216-3で測定した。
又、熱伝導率(W/m・K)を、ASTM-D7984に準拠して測定した。
その結果を表1に示す。
12ナイロンの結晶性樹脂::ダイアミドL1600 ダイセル・エポニック社製
熱硬化性樹脂:エポキシ樹脂(jER1002:三菱ケミカル株式会社製)
オルガノシリカゾルは、DMAC-ST(日産化学工業株式会社製)で、SiO2の含有量が20~21%、H2O含有量が3以下、分散媒がN,N-ジメチルアセトアミド、粒子径が10~20nm、粘度が1~10cp(20℃)
実施例2
【0026】
実施例1において、オルガノシリカゾルを、12ナイロンの結晶性樹脂100重量部に対して50重量部とした以外は、実施例1と同様にして、ヘリカコイルを作成し、同様にして、接着強度(N)及び熱伝導率(W/m・K)を測定した。
その結果を表1に示す。
実施例3
【0027】
実施例1において、12ナイロンの結晶性樹脂を55重量%、熱硬化性樹脂を45重量%とした以外は、実施例1と同様にして、ヘリカコイルを作成し、同様にして、接着強度(N)及び熱伝導率(W/m・K)を測定した。
その結果を表1に示す。
実施例4
【0028】
実施例1において、12ナイロンの結晶性樹脂を55重量%、熱硬化性樹脂を45重量%とし、オルガノシリカゾルを、12ナイロンの結晶性樹脂100重量部に対して50重量部とした以外は、実施例1と同様にして、ヘリカコイルを作成し、同様にして、接着強度(N)及び熱伝導率(W/m・K)を測定した。
その結果を表1に示す。
実施例5
【0029】
実施例1において、12ナイロンの結晶性樹脂を60重量%、熱硬化性樹脂を40重量%とした以外は、実施例1と同様にして、ヘリカコイルを作成し、同様にして、接着強度(N)及び熱伝導率(W/m・K)を測定した。
その結果を表1に示す。
実施例6
【0030】
実施例1において、12ナイロンの結晶性樹脂を60重量%、熱硬化性樹脂を40重量%とし、オルガノシリカゾルを12ナイロンの結晶性樹脂100重量部に対して50重量部とした以外は、実施例1と同様にして、ヘリカコイルを作成し、同様にして、接着強度(N)及び熱伝導率(W/m・K)を測定した。
その結果を表1に示す。
実施例7
【0031】
実施例1において、12ナイロンの結晶性樹脂を70重量%、熱硬化性樹脂を30重量%とした以外は、実施例1と同様にして、ヘリカコイルを作成し、同様にして、接着強度(N)及び熱伝導率(W/m・K)を測定した。
その結果を表1に示す。
実施例8
【0032】
実施例1において、12ナイロンの結晶性樹脂を70重量%、熱硬化性樹脂を30重量%とし、オルガノシリカゾルを12ナイロンの結晶性樹脂100重量部に対して50重量部とした以外は、実施例1と同様にして、ヘリカコイルを作成し、同様にして、接着強度(N)及び熱伝導率(W/m・K)を測定した。
その結果を表1に示す。
実施例9
【0033】
実施例1において、12ナイロンの結晶性樹脂を80重量%、熱硬化性樹脂を20重量%とした以外は、実施例1と同様にして、ヘリカコイルを作成し、同様にして、接着強度(N)及び熱伝導率(W/m・K)を測定した。
その結果を表1に示す。
実施例10
【0034】
実施例1において、12ナイロンの結晶性樹脂を80重量%、熱硬化性樹脂を20重量%とし、オルガノシリカゾルを12ナイロンの結晶性樹脂100重量部に対して50重量部とした以外は、実施例1と同様にして、ヘリカコイルを作成し、同様にして、接着強度(N)及び熱伝導率(W/m・K)を測定した。
その結果を表1に示す。
比較例1
【0035】
実施例1において、オルガノシリカゾルを0重量%とした以外は、実施例1と同様にして、ヘリカコイルを作成し、同様にして、接着強度(N)及び熱伝導率(W/m・K)を測定した。
その結果を表2に示す。
比較例2
【0036】
実施例1において、12ナイロンの結晶性樹脂を55重量%、熱硬化性樹脂を45重量%とし、オルガノシリカゾルを0重量%とした以外は、実施例1と同様にして、ヘリカコイルを作成し、同様にして、接着強度(N)及び熱伝導率(W/m・K)を測定した。
その結果を表2に示す。
比較例3
【0037】
実施例1において、12ナイロンの結晶性樹脂を60重量%、熱硬化性樹脂を40重量%とし、オルガノシリカゾルを0重量%とした以外は、実施例1と同様にして、ヘリカコイルを作成し、同様にして、接着強度(N)及び熱伝導率(W/m・K)を測定した。
その結果を表2に示す。
比較例4
【0038】
実施例1において、12ナイロンの結晶性樹脂を70重量%、熱硬化性樹脂を30重量%とし、オルガノシリカゾルを0重量%とした以外は、実施例1と同様にして、ヘリカコイルを作成し、同様にして、接着強度(N)及び熱伝導率(W/m・K)を測定した。
その結果を表2に示す。
比較例5
【0039】
実施例1において、12ナイロンの結晶性樹脂を80重量%、熱硬化性樹脂を20重量%とし、オルガノシリカゾルを0重量%とした以外は、実施例1と同様にして、ヘリカコイルを作成し、同様にして、接着強度(N)及び熱伝導率(W/m・K)を測定した。
その結果を表2に示す。
比較例6
【0040】
実施例1において、前記12ナイロンの結晶性樹脂に変えて、ナイロン6/66の結晶性樹脂を55重量%、熱硬化性樹脂を45重量%とし、オルガノシリカゾルを0重量%とした以外は、実施例1と同様にして、ヘリカコイルを作成し、同様にして、接着強度(N)及び熱伝導率(W/m・K)を測定した。
その結果を表2に示す。
比較例7
【0041】
実施例1において、前記12ナイロンの結晶性樹脂に変えて、ナイロン6/66の結晶性樹脂を55重量%、熱硬化性樹脂を45重量%とし、オルガノシリカゾルを実施例1と同じく30重量%とした以外は、実施例1と同様にして、ヘリカコイルを作成し、同様にして、接着強度(N)及び熱伝導率(W/m・K)を測定した。
その結果を表2に示す。
比較例8
【0042】
実施例1において、前記12ナイロンの結晶性樹脂に変えて、ナイロン6/66の結晶性樹脂を55重量%、熱硬化性樹脂を45重量%とし、オルガノシリカゾルを50重量%とした以外は、実施例1と同様にして、ヘリカコイルを作成し、同様にして、接着強度(N)及び熱伝導率(W/m・K)を測定した。
その結果を表2に示す。
実施例11
【0043】
実施例1において、12ナイロンの結晶性樹脂を95重量%、熱硬化性樹脂を5重量%とした以外は、実施例1と同様にして、ヘリカコイルを作成し、同様にして、接着強度(N)を測定した。当該接着強度(N)は、初期(常温、25℃)の状態と、熱履歴(高温雰囲気、160℃及び180℃)の状態での接着強度(N)を測定し、又、ヘリカコイルのほつれ状態を観察した。
その結果を表3に示す。
尚、表3には表示していないが、ヘリカコイルのほつれ状態はなかった。
実施例12
【0044】
実施例11において、12ナイロンの結晶性樹脂を97重量%、熱硬化性樹脂を3重量%とした以外は、実施例11と同様にして、ヘリカコイルを作成し、同様にして、当該ヘリカコイルの初期(常温、25℃)の状態と、熱履歴(高温雰囲気、160℃及び180℃)の状態での接着強度(N)を測定し、又、ヘリカコイルのほつれ状態を観察した。
その結果を表3に示す。
尚、表3には表示していないが、ヘリカコイルのほつれ状態はなかった。
実施例13
【0045】
実施例11において、12ナイロンの結晶性樹脂を98重量%、熱硬化性樹脂を2重量%とした以外は、実施例11と同様にして、ヘリカコイルを作成し、同様にして、当該ヘリカコイルの初期(常温、25℃)の状態と、熱履歴(高温雰囲気、160℃及び180℃)の状態での接着強度(N)を測定し、又、ヘリカコイルのほつれ状態を観察した。
その結果を表3に示す。
尚、表3には表示していないが、ヘリカコイルのほつれ状態はなかった。
尚又、表3には、実施例1で得られたヘリカコイルの初期(常温、25℃)の状態と、熱履歴(高温雰囲気、160℃及び180℃)の状態での接着強度(N)の測定結果を示した。そして、当該実施例1で得られたヘリカコイルのほつれ状態を観察した。表3には、当該実施例1で得られたヘリカコイルのほつれ状態の観察結果を表示していないが、ヘリカコイルのほつれ状態はなかった。
比較例9
【0046】
実施例11において、12ナイロンの結晶性樹脂を99重量%、熱硬化性樹脂を1重量%とした以外は、実施例11と同様にして、ヘリカコイルを作成し、同様にして、当該ヘリカコイルの初期(常温、25℃)の状態と、熱履歴(高温雰囲気、160℃及び180℃)の状態での接着強度(N)を測定し、又、ヘリカコイルのほつれ状態を観察した。
その結果を表3に示す。
表3にも示すように、高温雰囲気下では、ヘリカコイルの接着力がなくなってきて、ヘリカコイルがほつれる状態となる。
比較例10
【0047】
実施例11において、12ナイロンの結晶性樹脂を100重量%、熱硬化性樹脂を0重量%とした以外は、実施例11と同様にして、ヘリカコイルを作成し、同様にして、当該ヘリカコイルの初期(常温、25℃)の状態と、熱履歴(高温雰囲気、160℃及び180℃)の状態での接着強度(N)を測定し、又、ヘリカコイルのほつれ状態を観察した。
その結果を表3に示す。
表3にも示すように、高温雰囲気下では、ヘリカコイルの接着力がなくなってきて、ヘリカコイルがほつれる状態となる。
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
図2に、上記測定結果に基づき、オルガノシリカゾルの12ナイロンの結晶性樹脂100重量部に対しての重量比を横軸にし、一方、熱伝導率(W/m・K)を縦軸にして、当該12ナイロンの結晶性樹脂に対する重量比の変化に基づいて、熱伝導率(W/m・K)がどの様に変化するのかをグラフ化した。実線は本発明の実施例を表し、点線は比較例を示す。
【0052】
図3に、上記測定結果に基づき、12ナイロンの結晶性樹脂の重量%を横軸にし、一方、熱伝導率(W/m・K)を縦軸にして、当該12ナイロンの結晶性樹脂の重量%が、50を超え、60、70、80、90、100%とした場合、熱伝導率(W/m・K)がどの様に変化するのかをグラフ化した。
【0053】
図4に、上記測定結果に基づき、オルガノシリカゾルの12ナイロンの結晶性樹脂100重量部に対しての重量比を横軸にし、一方、熱伝導率(W/m・K)を縦軸にして、当該オルガノシリカゾルの12ナイロンの結晶性樹脂100に対する重量比が、0、30及び50のときの熱伝導率(W/m・K)の測定結果がどの様に変化するのかをグラフ化した。
図4において、折れ線aは、12ナイロンの結晶性樹脂を55重量%、熱硬化性樹脂を45重量%としたとき(NY-55)、折れ線bは、12ナイロンの結晶性樹を60重量%、熱硬化性樹脂を40重量%としたとき(NY-60)、折れ線cは、12ナイロンの結晶性樹を70重量%、熱硬化性樹脂を30重量%としたとき(NY-70)、折れ線dは、12ナイロンの結晶性樹脂を80重量%、熱硬化性樹脂を20重量%としたとき(NY-80)、折れ線eは、12ナイロンの結晶性樹を90重量%、熱硬化性樹脂を10重量%としたとき(NY-90)である。
【0054】
結果
実施例及び比較例の結果から、オルガノシリカゾルを添加しない比較例では、
接着強度が、本発明の実施例より高い数値となるが、熱伝導率の数値が、表1及び
図2~
図4から、本発明の実施例より低下することが判る。
ナイロンについては、12ナイロンの結晶性樹脂ではなく、同じ結晶性樹脂ではあるが、ナイロン6/66の結晶性樹脂とした場合には、熱伝導率の数値が、本発明の実施例より低下することが判る。
又、
図4から、12ナイロンの結晶性樹脂が、増大するに従い、熱伝導率(W/m・K)が向上することが判る。
即ち、12ナイロンの結晶性樹脂と熱硬化性樹脂との重量比において、12ナイロンの結晶性樹脂の割合が増えると、当該自己融着層の熱伝導率を向上させることができるが、98%を超えると、その効果が飽和し経済的ではないし、特に、高温雰囲気となると、接着力がなくなり、又、コイルがほつれる状態となる。
本発明において、オルガノシリカゾルの12ナイロンの結晶性樹脂に対する重量比が、30及び50と増大するに従い、熱伝導率(W/m・K)も向上することが判る。
当該自己融着性絶縁電線にあっては、先に、本出願人は、特開2009-146753で、導体1の外周に絶縁被膜2を施し、当該絶縁被膜2の外周にオ-バ-コ-ト層の自己融着層3を設けた当該自己融着性絶縁電線について特許5384003を取得した。
当該絶縁被膜2の外周の融着層3において、適宜粒子径の二酸化珪素(SiO
2)をベ-ス塗料に添加すると、巻線の基本的な特性である可撓性を悪化させることなく、耐コロナ性を向上させることができることに着目して、当該特許5384003を取得したのであるが、それに加えて、今次の出願は、コイル巻線に付いての接着強度や熱伝導率を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、自己融着層の他、外層の各種被覆保護層にも適用できる。
又、本発明は、各種電気絶縁電線や電気絶縁塗料に適用できる。
【符号の説明】
【0056】
1 導体
2 絶縁被膜
3 自己融着層