(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-10-01
(45)【発行日】2025-10-09
(54)【発明の名称】車載電気部品冷却構造
(51)【国際特許分類】
B60K 11/06 20060101AFI20251002BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20251002BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20251002BHJP
B60L 50/64 20190101ALI20251002BHJP
B60L 58/26 20190101ALI20251002BHJP
【FI】
B60K11/06
B60K1/04 Z
B60L3/00 H
B60L50/64
B60L58/26
(21)【出願番号】P 2022012331
(22)【出願日】2022-01-28
【審査請求日】2024-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【氏名又は名称】網屋 美湖
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】柘植 惇史
(72)【発明者】
【氏名】明石 憧
【審査官】熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-202692(JP,A)
【文献】特開2005-324771(JP,A)
【文献】特開2008-014565(JP,A)
【文献】特開2010-140861(JP,A)
【文献】特開2020-152160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/00-15/10
B60K 1/00-6/12
B60K 7/00-8/00
B60K 16/00
B60L 1/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗員室を形成する壁を貫通する通気孔を有する通気部と、前記車両の後部領域に設けられ且つ前記後部領域内の所定の電気部品を冷却するための空気の流れを発生させる送風機と、前記通気部から前記送風機まで延びる流路を形成するダクトと、を含む、車載電気部品冷却構造において、
前記ダクトは、筒状に形成された基準管部と、前記基準管部の外面よりも外側に膨らむと共に筒状に形成された複数の膨出管部と、を有
し、
前記複数の膨出管部は、少なくとも、第1膨出管部と、前記流路に沿う方向について前記第1膨出管部よりも通気部側に位置する第2膨出管部と、を含み、
前記第2膨出管部の内部容積は、前記第1膨出管部の内部容積よりも大きく、
前記通気部は、車両上下方向について前記所定の電気部品及び前記送風機よりも上方に位置しており、
前記第2膨出管部は、車幅方向に扁平な断面を有して車両上下方向に延びており、
前記第2膨出管部の車両上下方向のダクト長は、前記第2膨出管部の車幅方向のダクト幅よりも大きい、車載電気部品冷却構造。
【請求項2】
前記ダクト内の前記流路は、前記第1膨出管部と前記第2膨出管部との間の所定位置において屈曲している、請求項1に記載の車載電気部品冷却構造。
【請求項3】
前記第2膨出管部は、車幅方向内側から視た場合、車両上下方向について、前記第1膨出管部の車幅方向外側から前記通気部の後方まで延びている、請求項2に記載の車載電気部品冷却構造。
【請求項4】
前記ダクトは、筒状に形成されると共に前記通気部と接続する端部を有し、
前記ダクト内の前記流路は、前記第2膨出管部と前記端部との間の所定位置において屈曲している、請求項1~
3のいずれか一つに記載の車載電気部品冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載電気部品冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両における荷室等の後部領域に、バッテリ等の発熱する電気部品とこの電気部品を冷却するための送風機が配置されることがある。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されている高電圧バッテリの冷却構造では、後部座席の下方の領域(つまり、車両の後部領域)に、バッテリ収容室が設けられており、このバッテリ収容室に、バッテリとバッテリを冷却するためのブロア(以下、送風機という)とが配置されている。この冷却構造では、バッテリ収容室の一角を区画板で区画することによって冷却空気導入室が形成されており、冷却空気導入室を構成する壁材には、乗員室(客室)内の空気を冷却空気導入室内に取り入れるための通気部(スリット)が形成され、区画板には、送風機の吸気口が挿入される連通孔が形成されている。そして、遮蔽板が冷却空気導入室内において吸気口の近傍に設けられることで、通気部から送風機まで延びる蛇行した流路が形成され、その結果、送風機からの音が乗員室内に直接的に伝播することが低減されている。そして、冷却空気導入室を構成する上記壁材の一部は、後部座席の前端部分の下方のパネルやホイールハウスを形成する壁等の送風機近傍の壁材を利用して形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された冷却構造では、送風機の近傍に遮蔽板を設けると共に通気部と送風機との間の流路を送風機近傍の壁材の一部を利用して形成する必要があるため、冷却構造を構築する場所が制約され、冷却構造の要素についてのレイアウト上の自由度が低いという課題がある。なお、バッテリ以外の電気部品が送風機による冷却の対象とされることも考えられ、この場合においても同様の課題が生じ得る。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、従来よりもレイアウト上の自由度を向上させると共に、送風機から乗員室への音の伝搬を低減することができる車載電気部品冷却構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る車載電気部品冷却構造は、車両の乗員室を形成する壁を貫通する通気孔を有する通気部と、前記車両の後部領域に設けられ且つ前記後部領域内の所定の電気部品を冷却するための空気の流れを発生させる送風機と、前記通気部から前記送風機まで延びる流路を形成するダクトと、を含む。この車載電気部品冷却構造において、前記ダクトは、筒状に形成された基準管部と、前記基準管部の外面よりも外側に膨らむと共に筒状に形成された複数の膨出管部と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来よりもレイアウト上の自由度を向上させると共に送風機から乗員室への音の伝搬を低減することができる車載電気部品冷却構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車載電気部品冷却構造の正面図である。
【
図2】車載電気部品冷却構造の通気部の位置を示す図である。
【
図3】車載電気部品冷却構造の送風機及びダクトの斜視図である。
【
図5】
図4に示すA方向から視たダクトの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る車載電気部品冷却構造の実施の形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1は本発明の一実施形態に係る車載電気部品冷却構造の正面図(具体的には、車両前後方向の前方から視た車載電気部品冷却構造の正面図)であり、
図2は車載電気部品冷却構造の後述する通気部1の位置を示す図であり、
図3は車載電気部品冷却構造の要部(後述する送風機2及びダクト3)の斜視図である。なお、図において、矢印Fr方向は車両前後方向における前方を示し、矢印Rr方向は車両前後方向における後方を示す。矢印R及び矢印Lは、乗員が車両前方を見たときの車両幅方向(車幅方向)における右側及び左側を示す。そして、矢印Uは車両上下方向における上方を示す。
【0012】
図1及び
図2を参照すると、本実施形態の車載電気部品冷却構造は、通気部1と、送風機2と、ダクト3と、を含み、車両の後部領域内の所定の電気部品Pを空冷方式で冷却する。車両の後部領域とは、車両のリアシート4の座部4aの下方の領域及びリアシート4のシートバック4bの後方の領域を含む領域である。リアシート4よりも車両前後方向の前方の領域は車両の乗員室S1の大半の部分を構成している。
【0013】
本実施形態では、冷却対象である電気部品Pは、車両の後部領域のうちのリアシート4よりも後方の領域に配置されている。具体的には、電気部品Pは、車体のフロア部を構成するフロアパネル5における車両前後方向についてリアシート4のシートバック4bよりも後方の部分に載置されている。換言すると、電気部品Pは、リアシート後方の荷室S2内に配置されている。
【0014】
車両の荷室S2の上部は、例えば、リアシート4の後方におけるリアシート4の上端に対応する高さ位置において車両前後方向にスライド可能に設けられたトノカバー(図示省略)によって開閉されるようになっている。トノカバーが閉じた状態においてトノカバーよりも上方の領域は乗員室S1の一部を構成している。なお、トノカバーが開いた状態(
図2に示された状態)では、荷室S2と乗員室S1とが互いに連通している。
【0015】
本実施形態では、車載電気部品冷却構造は、所定の電気部品Pを内部に収容する収容箱6を更に含む。収容箱6は、例えば、車幅方向に長い矩形の箱型に形成されており、脚部61を介してフロアパネル5の上に支持されている。本実施形態では、収容箱6と車両の後部領域におけるフロアパネル5との間には隙間Gが空けられている(
図1参照)。
【0016】
特に限定されるものではないが、本実施形態では、電気部品Pは、収容箱6の内部に収容された高電圧のバッテリである。なお、電気部品Pは、バッテリに限らず、例えば、DC-DCコンバータやAC-DCコンバータ等でもよく、発熱し易く且つ冷却する必要がある電気部品であればよい。
【0017】
通気部1は、車両の乗員室S1を形成する壁10を貫通する通気孔11を有する。本実施形態では、通気部1は、車両上下方向について所定の電気部品P及び送風機2よりも上方に位置している。具体的には、本実施形態では、通気部1は、車両上下方向について所定の電気部品P及び送風機2よりも上方であり且つ車両幅方向についてリアシート4の側部41と車体のサイドパネル7との間に位置している。
【0018】
詳しくは、通気孔11が貫通する壁10は、リアシート4のシートバック4bの車両幅方向外側の側部41に沿って上下方向に延びると共にサイドパネル7に取り付けられる樹脂製のトリムである。したがって、通気部1は、サイドパネル7に開口されたリアサイドドア用のドア開口縁部7aの近傍に位置している。また、通気部1近傍の壁10は、車両上下方向の上方に向かうにしたがって車両前後方向の後方側に寄るように僅かに傾いている。
【0019】
本実施形態では、電気部品Pを冷却するための空気は、通気部1から取り込まれてダクト3を通じて送風機2に導かれるように構成されている。したがって、本実施形態では、通気部1の通気孔11は空冷用の空気の吸気口として機能している。
【0020】
通気部1の通気孔11は、車両上下方向に長い概ね矩形の孔として開口されている。そして、通気部1は通気孔開口縁の内側に格子状に形成された異物侵入防止部12を有しており、異物侵入防止部12によって、大きな異物が通気孔11を通じて侵入することが防止されている。
【0021】
送風機2は、車両の後部領域に設けられ且つ当該後部領域内の所定の電気部品Pを冷却するための空気の流れを発生させるものである。送風機2は、電気部品Pと一緒に車両の後部領域に配置されている。本実施形態では、送風機2は、リアシート後方の荷室S2内において、電気部品Pの近傍に配置されている。具体的には、送風機2は、収容箱6における車幅方向の一方(
図2では左側)の側壁6a(換言すると、収容箱6の長手方向の一方の側壁6a)の近傍においてフロアパネル5の上に配置されている。
【0022】
図3を参照すると、送風機2は、ケーシング2aと、ダクト3と接続する筒状の接続部2bと、を有する。本実施形態では、送風機2は、通気部1及びダクト3を通じて吸い込んだ空気を収容箱6内に供給するように構成されている。
【0023】
特に限定されるものではないが、送風機2は、例えば、遠心ファン(又は遠心ブロア)であり、ケーシング2aの内部には、送風用の遠心羽根(例えば、シロッコファン)が回転可能に支持されている。
【0024】
ケーシング2aの一方の側面2a1には、空気を吸い込むための吸込口2a2が開口されている。前記遠心羽根を駆動するための電動モータはケーシング2aの他方の側面(吸込口2a2と反対側の側面)側に設けられている。ケーシング2aは、前記遠心羽根を取り囲むように形成されている。ケーシング2aの周方向の所定角度位置には、吸込口2a2から吸い込んだ空気を吐き出すための筒状の吐出筒2a3が設けられている。
【0025】
接続部2bは、例えば、円筒状に形成されている。接続部2bは、ケーシング2aの吸込口2a2の開口縁部に取り付けられ、ケーシング2aの一方の側面2a1から突出している。
【0026】
送風機2のケーシング2aの下部には、送風機2を下方から支持するための第1ブラケット2c及び第2ブラケット2dが設けられている。第1ブラケット2c及び第2ブラケット2dは、中間ブラケット2e等を介してフロアパネル5に連結されている。具体的には、中間ブラケット2eは、金属製の薄板材からなり下方に突出したハット状に屈曲するように形成されている。中間ブラケット2eの長手方向の中間部はフロアパネル5上に固定され、中間ブラケット2eの一端部は第1ブラケット2cの下端に固定され、中間ブラケット2eの他端部は第2ブラケット2dの下端に固定されている。
【0027】
送風機2が収容箱6の車幅方向の一方の側壁6aの近傍に配置された状態において、接続部2bは概ね車両前後方向の前方に向かって延び、ケーシング2aの吐出筒2a3は概ね車両上下方向の下方に向かって延びている。詳しくは、送風機2は、ケーシング2aの一方の側面2a1における車幅方向の内側の部分が一方の側面2a1における車幅方向の外側の部分よりも車両前後方向について僅かに前側に位置するように傾いた状態で、フロアパネル5上に配置されている。したがって、筒状の接続部2bは、車両前後方向の前方に向かうにしたがって収容箱6の一方の側壁6aから離れるように(換言すると、図では、左側のサイドパネル7の内面に近づくように)延びている。
【0028】
ダクト3は、通気部1から送風機2まで延びる流路を形成するものである。ダクト3の一端部は通気部1に接続され、ダクト3の他端部は送風機2の接続部2bに接続されている。本実施形態では、上述のように、通気部1の通気孔11は空冷用の吸気口として機能している。つまり、ダクト3は、乗員室S1内の空気を通気部1から送風機2まで導くための配管として用いられている。なお、ダクト3の構造については後に詳述する。
【0029】
ダクト3により導かれた空気は、送風機2の吐出筒2a3から吐き出される。吐出筒2a3から吐き出された空気は、収容箱6の車幅方向の一方の側壁6aに設けられた吸気管6bを通じて収容箱6の内部に導かれる。換言すると、送風機2によって圧送された空気は、収容箱6の内部に押し込まれる。そして、収容箱6の車幅方向の他方の側壁6cには、図示を省略された排気管が設けられている。送風機2が起動すると、空気が吐出筒2a3及び吸気管6bを通じて収容箱6内に押し込まれる。このとき、収容箱6の内部空間には、概ね一方の側壁6aから他方の側壁6cに向かうと共に収容箱6内の電気部品Pの表面に沿う空気の流れが発生する。このように空気が電気部品Pの表面に沿って流れることによって、電気部品Pが冷却される。そして、電気部品Pの表面を介した熱交換によって温まった空気は、前記排気管を通じて収容箱6外に排気される。
【0030】
ところで、送風機2が起動すると、高周波音が発生する場合が多い。この場合、高周波音(騒音)が送風機2の接続部2b、ダクト3及び通気部1を通じて乗員室S1に伝搬する可能性がある。これに対し、本実施形態に係る車載電気部品冷却構造は、高周波音の乗員室S1への伝搬を効果的に抑制し、乗員室S1内の快適性の維持を図るために、以下に説明する構造を有している。
【0031】
次に、ダクト3の構造について、主に
図3~
図5を参照して詳述する。
図4は送風機2とダクト3の組立体80の上面図であり、
図5は
図4に示すA方向から視たダクト3の側面図である。
【0032】
図3を参照すると、ダクト3は、通気部1と接続する第1端部31と、送風機2と接続する第2端部32と、筒状に形成された基準管部33と、基準管部33よりも外側に膨らむと共に筒状に形成された複数の膨出管部34と、を含む。なお、本実施形態では、第1端部31が、本発明に係る「通気部と接続する端部」に相当する。
【0033】
ダクト3は、例えば、樹脂材からなり、射出成形により成形されている。そして、ダクト3と送風機2とが組み合わされることによって、
図4及び
図5に示されるように、ダクト3と送風機2との組立体80が構成される。
【0034】
第1端部31は、筒状に形成され、ダクト3における通気部1と接続する一端部を構成している。具体的には、第1端部31は、概ね角筒状に形成され、車両の乗員室S1を形成する壁10の裏面側から、通気部1の通気孔周縁部に当接することで、通気部1に接続する。第1端部31は、車両前後方向の前方であり且つ通気部1近傍の壁10の傾きに応じた斜め上方の方向に向かって延びている。なお、第1端部31の内側には、第1端部31の内周面に沿うように環状に形成されたシール部材35が嵌め込まれており、シール部材35が通気部1の通気孔周縁部に当接することで、ダクト3と通気部1(壁10)との間の隙間がシールされている。
【0035】
第2端部32は、筒状に形成されると共に送風機2の接続部2bが内部に挿入される部分であり、ダクト3における送風機2と接続する他端部を構成している。第2端部32は、円筒状に形成されている。そして、ダクト3の第2端部32の内部に、送風機2の接続部2bが挿入され(嵌め込まれ)、ダクト3の他端部と送風機2の接続部2bとが接続される。
【0036】
基準管部33は、ダクト3内の流路の流路断面積を絞る絞り部を構成する部分である。特に限定されるものではないが、基準管部33は、概ね円筒状に形成されると共に、ダクト3における送風機2側の部分に分離して設けられている。つまり、二つの基準管部33が設けられている。
【0037】
複数の膨出管部34は、基準管部33の外面よりも外側に膨らむように筒状に形成された部分であり、ダクト3内の流路における前記絞り部よりも拡大された空間を構成する部分(拡大部)である。複数の膨出管部34は、ダクト3内の流路に沿う方向について、互いに離隔している。複数の膨出管部34は、互いに異なる大きさで膨出している。つまり、複数の膨出管部34は、互いに異なる容量の内部容積を有している。
【0038】
本実施形態では、ダクト3は、複数の膨出管部34として、送風機2側に位置する第1膨出管部34Aと、通気部1側に位置する第2膨出管部34Bとを有する。第2膨出管部34Bの内部容積は、第1膨出管部34Aの内部容積よりも大きい。
【0039】
換言すると、第1膨出管部34Aは、ダクト3内の流路に沿う方向について第2膨出管部34Bよりも送風機2側に位置する。そして、第2膨出管部34Bは、ダクト3内の流路に沿う方向について第1膨出管部34Aよりも通気部1側に位置している。さらにいうと、第1膨出管部34Aは騒音(高周波音)の発生源である送風機2の近傍に位置し、第2膨出管部34Bは騒音の伝搬を抑制する対象領域である乗員室S1の近傍に位置している。
【0040】
第1膨出管部34Aは、概ね円筒状断面を有すると共に、二つの基準管部33の間に位置している。第1膨出管部34Aは、二つの基準管部33と連続し、概ね車両前後方向の前方に向かって延びている。詳しくは、第1膨出管部34A及び二つの基準管部33からなる送風機側配管部36は、水平方向に延びると共に、車両前後方向の前方に向かうにしたがって収容箱6の一方の側壁6aから離れるように(換言すると、左側のサイドパネル7の内面に近づくように)緩やかに湾曲している(
図4参照)。
【0041】
第2膨出管部34Bは、概ね角筒状断面を有すると共に、二つの基準管部33のうちの通気部1側の基準管部33と第1端部31との間に位置している。
【0042】
本実施形態では、第2膨出管部34Bは、車幅方向に扁平な断面を有して車両上下方向に延びている。そして、第2膨出管部34Bの車両上下方向のダクト長は、第2膨出管部34Bの車幅方向のダクト幅よりも大きい。つまり、第2膨出管部34Bは、車幅方向に互いに対向する内壁を有した、概ね縦長形状の筒体として形成されている。
【0043】
本実施形態では、ダクト3内の流路は、第1膨出管部34Aと第2膨出管部34Bとの間の所定の位置において屈曲している。特に限定されるものではないが、第1膨出管部34Aと第2膨出管部34Bとの間の前記所定の位置は、ダクト3における、二つの基準管部33のうちの通気部1側の基準管部33と第2膨出管部34Bとの接続部分37(換言すると、ダクト3における送風機側配管部36と第2膨出管部34Bとの接続部分37)に設定されている。
【0044】
具体的には、ダクト3内の流路は、第2端部32から送風機側配管部36まで概ね車両前後方向の前方に延び、接続部分37において概ね90度の角度で上方に屈曲し、その後、第2膨出管部34Bでは概ね車両上下方向の上方に延びている。
【0045】
本実施形態では、ダクト3内の流路は、さらに、第2膨出管部34Bと第1端部31との間の所定の位置においても屈曲している。具体的には、ダクト3は、筒状に形成されると共に第2膨出管部34Bの上部と第1端部31とを接続する通気部側配管部38を有している。通気部側配管部38は、概ね矩形筒状に形成されている。そして、特に限定されるものではないが、第2膨出管部34Bと第1端部31との間の前記所定の位置は、ダクト3における、第2膨出管部34Bと通気部側配管部38との接続部分39に設定されている。
【0046】
詳しくは、本実施形態では、通気部側配管部38の一端部は第2膨出管部34Bの車幅方向外側の側壁における上端側の部分に接続され、通気部側配管部38の他端部は第1端部31に接続されている。つまり、ダクト3内の流路はダクト3における接続部分39において車幅方向にシフトしており、例えば、クランク状に屈曲している。
【0047】
具体的には、ダクト3内の流路は、第2膨出管部34Bにおいて車両上下方向の上方に延び、接続部分39において概ね90度の角度で車幅方向外側に屈曲し、その後、通気部側配管部38では車両前後方向の前方であり且つ斜め上方の方向に延びている。
【0048】
次に、本実施形態に係る車載電気部品冷却構造の作用について、送風機2の起動により、高周波音が送風機2から発生した場合を一例に挙げて説明する。
【0049】
送風機2から発生した高周波音の一部は、送風機2の接続部2bからダクト3(ダクト3内の流路)を通じて伝搬し始める。この音の伝搬の経路には、送風機2側から通気部1側に向かって、一つ目の基準管部33(絞り部)、第1膨出管部34A(拡大部)、二つ目の基準管部33(絞り部)、一つ目の屈曲部分(接続部分37)、第2膨出管部34B(拡大部)、二つ目の屈曲部分(接続部分39)、及び、通気部側配管部38が順番に設けられている。このように、音の伝搬経路に、複数の膨出管部34(第1膨出管部34A、第2膨出管部34B)、換言すると、複数組の絞り部と拡大部が設けられている。したがって、ダクト3を通じて伝搬し始めた高周波音のレベルは、伝搬経路の途中の複数の膨出管部34内で効果的に減衰される。その結果、高周波音のレベルは、通気部1の手前では、乗員室S1内の乗員が気にならない程度まで減衰される。
【0050】
また、本実施形態に係る車載電気部品冷却構造では、通気部1と送風機2との間の流路はダクト3によって形成されており、このダクト3に複数の膨出管部34(34A、34B)を設けることによって、送風機2からの高周波音の乗員室S1への伝搬を低減する構造である。したがって、本実施形態に係る車載電気部品冷却構造は、送風機の近傍に遮蔽板を設けると共に通気部と送風機との間の流路を送風機近傍の壁材の一部を利用して形成した従来の構造と比較すると、冷却構造を構築する場所の制約が少なく、冷却構造に関する要素のレイアウト上の自由度が高い。具体的には、例えば、通気部1と送風機2との間の流路が複雑な経路を辿らざるを得なかったり、通気部1と送風機2が車両上下方向について大きく異なる高さ位置に配置せざるを得なかったり、送風機2を通気部1に対して従来の構造の場合よりも大きく離れた位置に配置せざるを得なかったりする場合等であっても、複数の膨出管部34を有するダクト3を冷却構造の適用領域のレイアウトに合わせた長さ及び形状等で形成するだけで、乗員室S1への高周波伝搬についての低減構造を容易に構築することができる。したがって、本実施形態に係る車載電気部品冷却構造は、冷却構造を構築する場所の制約が従来の構造よりも低く、冷却構造の要素(通気部1、送風機2及びダクト3等)についてのレイアウト上の自由度が従来の構造よりも高い。
【0051】
以上のように、本実施形態に係る車載電気部品冷却構造は、従来よりもレイアウト上の自由度を向上させると共に、送風機2から乗員室S1への音の伝搬を低減することができる。また、音の伝搬経路に、複数の膨出管部34(第1膨出管部34A、第2膨出管部34B)、換言すると、複数組の絞り部と拡大部が設けられているため、送風機2から乗員室S1への音の伝搬がより効果的に低減される。
【0052】
本実施形態では、通気部1側の第2膨出管部34Bの内部容積が送風機2側の第1膨出管部34Aの内部容積よりも大きいので、騒音(高周波音)の発生源である送風機2の近傍に位置する第1膨出管部34Aにおいて減衰しきれなかった騒音が、騒音の伝搬を抑制する対象領域である乗員室S1の近傍に位置する第2膨出管部34Bにおいて確実に減衰される。また、複数の膨出管部34が互いに異なる大きさで膨出されることで、ダクト3が冷却構造の適用領域のレイアウトに合わせて設置及び形成され易くなり、レイアウト上の自由度が高くなっている。
【0053】
本実施形態では、第2膨出管部34Bは車幅方向に扁平な断面を有して車両上下方向に延びており、第2膨出管部34Bの車両上下方向のダクト長は第2膨出管部34Bの車幅方向のダクト幅よりも大きい。これにより、送風機2からの音が第2膨出管部34Bにおける車幅方向に相対する二つの内壁の間で反射して干渉し易くなり、その結果、送風機2からの音が通気部1の手前で効果的に減衰し易くなる。
【0054】
本実施形態では、ダクト3内の流路が、第1膨出管部34Aと第2膨出管部34Bとの間の所定位置と、第2膨出管部34Bと第1端部31との間の所定位置において屈曲しているため、音の伝搬経路が複数の箇所で屈曲することになる。したがって、屈曲した箇所(接続部分37、接続部分39)において、送風機2からの音がダクト3の内壁において複雑に反射してより干渉し易くなる。
【0055】
本実施形態の説明は、本発明を説明するための例示であって、特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではない。また、本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【0056】
例えば、本実施形態では、第2膨出管部34Bの内部容積が、第1膨出管部34Aの内部容積よりも小さくてもよいし、第1膨出管部34Aの内部容積と同じでもよい。さらに、複数の膨出管部34は、二個に限らず、三個以上でもよい。各膨出管部34の形状は適宜に設定することができる。例えば、膨出管部34は、円筒状や矩形筒状に限らず、三角形の筒状や五角形の筒状や楕円形の筒状等の適宜の断面形状を採用することができる。また、適宜の形状の膨出管部34の外周面がサイドパネル7や樹脂製のトリム(壁10)に接触していてもよい。これにより、ダクト3の振動が抑制される。
【0057】
また、本実施形態では、ダクト3内の流路は、接続部分37では概ね90度に屈曲し、接続部分39ではクランク状に屈曲しているが、これらにかぎらず、適宜の角度や形状で屈曲してもよい。例えば、ダクト3内の流路は、鋭角に屈曲してもよい。これにより、音の減衰効果がさらに増大し得る。また、ダクト3内の流路は2箇所で屈曲しているが、これに限らず、1箇所で屈曲してもよいし、3箇所以上の箇所で屈曲してもよいし、屈曲してなくてもよい。また、通気部1は、リアシート4の側方のトリムに形成されているが、これに限らず、乗員室S1を形成する適宜の壁に形成されてもよい。さらに、電気部品Pはリアシート後方の荷室S2に配置されるものとしたが、これに限らず、リアシート4の座部4aの下方に配置されていてもよい。この場合、送風機2は電気部品Pと一緒に座部4aの下方に配置されてもよいし、荷室S2に配置されてもよい。また、送風機2が座部4aの下方に配置され、電気部品Pが荷室S2に配置されてもよい。
【0058】
本実施形態では、送風機2は通気部1及びダクト3を通じて吸い込んだ空気を収容箱6内に供給することで電気部品Pを冷却しているが、空気の流れの向きはこれに限らない。つまり、空気の流れは、本実施形態とは逆でもよい。この場合、送風機2は収容箱6内の空気を吸い込み、吸い込んだ空気をダクト3及び通気部1を通じて排気することで、収容箱6内に電気部品Pの表面に沿う空気の流れを発生させ、電気部品Pを冷却する。そして、この場合であっても、ダクト3の複数の膨出管部34によって、送風機2からの音がダクト3及び通気部1を通じて乗員室S1に伝搬することが効果的に抑制される。
【符号の説明】
【0059】
1…通気部、2…送風機、3…ダクト、10…壁、11…通気孔、31…第1端部(端部)、33…基準管部、34…複数の膨出管部、34A…第1膨出管部、34B…第2膨出管部、P…電気部品、S1…乗員室