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特許7752307仮想空間画像表示装置、仮想空間画像表示方法、及び仮想空間画像表示プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-10-02
(45)【発行日】2025-10-10
(54)【発明の名称】仮想空間画像表示装置、仮想空間画像表示方法、及び仮想空間画像表示プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/13 20200101AFI20251003BHJP
   G06T 19/00 20110101ALI20251003BHJP
   H04N 13/261 20180101ALI20251003BHJP
   H04N 13/359 20180101ALI20251003BHJP
【FI】
G06F30/13
G06T19/00 Z
H04N13/261
H04N13/359
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2025052402
(22)【出願日】2025-03-26
【審査請求日】2025-04-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520330940
【氏名又は名称】株式会社ラムサ
(73)【特許権者】
【識別番号】520330951
【氏名又は名称】勝又 英明
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(74)【代理人】
【識別番号】100141449
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 隆芳
(74)【代理人】
【識別番号】100142446
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 覚
(72)【発明者】
【氏名】西 豊彦
(72)【発明者】
【氏名】勝又 英明
(72)【発明者】
【氏名】松尾 浩
(72)【発明者】
【氏名】平間 信裕
(72)【発明者】
【氏名】岩井 彌
【審査官】松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】特許第6906161(JP,B1)
【文献】特許第6887085(JP,B1)
【文献】伊奈 諭,単眼視と両眼視のグラフィックスシミュレーション,筑波技術短期大学テクノレポート,2000年03月,No. 7,pp. 197-201 ,[取得日 2025.08.26],取得先 <https://tsukuba-tech.repo.nii.ac.jp/records/961>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 -30/28
H04N 13/00 -13/398
G06T 19/00 -19/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
舞台と客席とを備える観覧施設に関する設計情報に基づいて、前記観覧施設に対応した空間座標を設定する空間座標設定部と、
ユーザからの操作に関する操作情報が入力される操作情報入力部と、
前記空間座標が設定された前記設計情報に基づいて、単眼視野画像を生成する単眼視野画像生成部と、
前記操作情報に基づいて前記単眼視野画像又は両眼視野画像のどちらを表示するかを判定する視野判定部と、
前記視野判定部において、前記両眼視野画像を表示すると判定された場合に、前記単眼視野画像に含まれる観客の頭部の画像を水平方向に所定の長さ削減した前記両眼視野画像を生成する両眼視野画像生成部と、
前記視野判定部で判定された判定結果に基づいて、前記単眼視野画像又は前記両眼視野画像を表示する表示部と、を備える仮想空間画像表示装置。
【請求項2】
前記両眼視野画像生成部は、前記単眼視野画像に含まれる前記観客の頭部の形状モデルに対して、左右それぞれ30mm削減した前記両眼視野画像を生成する、請求項1に記載の仮想空間画像表示装置。
【請求項3】
前記両眼視野画像生成部は、前記単眼視野画像から削減した領域を半透明の画像で重畳させた前記両眼視野画像を生成する、請求項1又は2に記載の仮想空間画像表示装置。
【請求項4】
前記表示部は、前記両眼視野画像を表示させる場合に、前記単眼視野画像を所定のフレームレートの中に一定の割合で挿入させて動画として表示する、請求項1に記載の仮想空間画像表示装置。
【請求項5】
コンピュータによって実行される仮想空間画像表示方法であって、
舞台と客席とを備える観覧施設に関する設計情報に基づいて、前記観覧施設に対応した空間座標を設定し、
ユーザからの操作に関する操作情報が入力され、
前記空間座標が設定された前記設計情報に基づいて、単眼視野画像を生成し、
前記操作情報に基づいて前記単眼視野画像又は両眼視野画像のどちらを表示するかを判定し、
前記両眼視野画像を表示すると判定された場合に、前記単眼視野画像に含まれる観客の頭部の画像を水平方向に所定の長さ削減した前記両眼視野画像を生成し、
判定結果に基づいて、前記単眼視野画像又は前記両眼視野画像を表示する、仮想空間画像表示方法。
【請求項6】
舞台と客席とを備える観覧施設に関する設計情報に基づいて、前記観覧施設に対応した空間座標を設定し、
ユーザからの操作に関する操作情報が入力され、
前記空間座標が設定された前記設計情報に基づいて、単眼視野画像を生成し、
前記操作情報に基づいて前記単眼視野画像又は両眼視野画像のどちらを表示するかを判定し、
前記両眼視野画像を表示すると判定された場合に、前記単眼視野画像に含まれる観客の頭部の画像を水平方向に所定の長さ削減した前記両眼視野画像を生成し、
判定結果に基づいて、前記単眼視野画像又は前記両眼視野画像を表示する、処理をコンピュータに実行させるための仮想空間画像表示プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮想空間画像表示装置、仮想空間画像表示方法、及び仮想空間画像表示プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、劇場、アリーナ、スタジアム等の観覧施設を設計するにあたり、観客席からの舞台やフィールド等(以下、舞台とする)の見やすさに関して定量的な値を算出し、その値に基づいて、見やすさを評価する手法が提案されている。特許文献1には、仮想空間画像を用いた観覧施設評価装置が開示されている。特許文献1に開示された観覧施設評価装置は、観客席からの視界を仮想空間画像によって生成し、表示させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6887085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
人間の左右それぞれの目から来る情報は途中の神経経路で交わることはなく、大脳視覚野において初めて、両眼視野画像を形成していることが、近年の大脳生理学の成果として報告されている。すなわち、両眼視野の場合、障害物を含む画像の断片はモザイク状に無意識に消去される、あるいは濃度が薄められ結果として意識から見えなくなると考えられている。一方で、特許文献1に開示された仮想空間画像における視界においては、単眼視野の画像であり、実際の両眼視野における画像とは異なる。
【0005】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本発明の目的は、観客席からの見え方をより正確に実現することが可能な仮想空間画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の態様に係る仮想空間画像表示装置は、舞台と客席とを備える観覧施設に関する設計情報に基づいて、観覧施設に対応した空間座標を設定する空間座標設定部と、ユーザからの操作に関する操作情報が入力される操作情報入力部と、空間座標が設定された設計情報に基づいて、単眼視野画像を生成する単眼視野画像生成部と、操作情報に基づいて単眼視野画像又は両眼視野画像のどちらを表示するかを判定する視野判定部と、視野判定部において、両眼視野画像を表示すると判定された場合に、単眼視野画像に含まれる観客の頭部の画像を水平方向に所定の長さ削減した両眼視野画像を生成する両眼視野画像生成部と、視野判定部で判定された判定結果に基づいて、単眼視野画像又は両眼視野画像を表示する表示部と、を備える。
【0007】
本発明の他の態様に係る仮想空間画像表示方法は、コンピュータによって実行される仮想空間画像表示方法であって、舞台と客席とを備える観覧施設に関する設計情報に基づいて、観覧施設に対応した空間座標を設定し、ユーザからの操作に関する操作情報が入力され、空間座標が設定された設計情報に基づいて、単眼視野画像を生成し、操作情報に基づいて単眼視野画像又は両眼視野画像のどちらを表示するかを判定し、両眼視野画像を表示すると判定された場合に、単眼視野画像に含まれる観客の頭部の画像を水平方向に所定の長さ削減した両眼視野画像を生成し、判定結果に基づいて、単眼視野画像又は両眼視野画像を表示する。
【0008】
本発明の他の態様に係る仮想空間画像表示プログラムは、舞台と客席とを備える観覧施設に関する設計情報に基づいて、観覧施設に対応した空間座標を設定し、ユーザからの操作に関する操作情報が入力され、空間座標が設定された設計情報に基づいて、単眼視野画像を生成し、操作情報に基づいて単眼視野画像又は両眼視野画像のどちらを表示するかを判定し、両眼視野画像を表示すると判定された場合に、単眼視野画像に含まれる観客の頭部の画像を水平方向に所定の長さ削減した両眼視野画像を生成し、判定結果に基づいて、単眼視野画像又は両眼視野画像を表示する、処理をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、観客席からの見え方をより正確に実現することが可能な仮想空間画像表示装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る仮想空間画像表示装置の一例を示すブロック図である。
図2】本実施形態に係る入力部の一例を示すブロック図である。
図3】本実施形態に係る記憶部に記憶された情報の一例を示すブロック図である。
図4A】本実施形態に係る仮想空間画像表示装置が適用される観覧施設の一例を示す平面図である。
図4B】本実施形態に係る仮想空間画像表示装置が適用される観覧施設の一例を示す平面図である。
図4C】本実施形態に係る仮想空間画像表示装置が適用される観覧施設の一例を示す平面図である。
図5】本実施形態に係る仮想空間画像表示装置が適用される観覧施設の一例を示す斜視図である。
図6】視線障害物を含む視野の例について説明するための図である。
図7A】観客席からの視線について説明するための図である。
図7B】観客席からの視線について説明するための図である。
図8】成人の頭の寸法について説明するための図である。
図9】本実施形態に係る仮想空間画像表示装置で適用される頭部のモデル形状について説明するための図である。
図10A】本実施形態に係る仮想空間画像表示装置で適用される頭部のモデル形状について説明するための図である。
図10B】本実施形態に係る仮想空間画像表示装置で適用される頭部のモデル形状について説明するための図である。
図11A】本実施形態に係る仮想空間画像表示装置で適用される頭部のモデル形状について説明するための図である。
図11B】本実施形態に係る仮想空間画像表示装置で適用される頭部のモデル形状について説明するための図である。
図12】本実施形態に係る仮想空間画像表示装置で適用される視差角について説明するための図である。
図13】本実施形態に係る仮想空間画像表示装置で適用される視差角について、焦点での距離との関係を説明するための図である。
図14A】本実施形態に係る仮想空間画像表示装置における単眼視野画像の一例を示す図である。
図14B】本実施形態に係る仮想空間画像表示装置における両眼視野画像の一例を示す図である。
図15A】本実施形態に係る仮想空間画像表示装置における単眼視野画像の一例を示す図である。
図15B】本実施形態に係る仮想空間画像表示装置における両眼視野画像の一例を示す図である。
図16A】本実施形態に係る仮想空間画像表示装置における単眼視野画像の一例を示す図である。
図16B】本実施形態に係る仮想空間画像表示装置における両眼視野画像の一例を示す図である。
図17】本実施形態に係る仮想空間画像表示装置の処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて本実施形態に係る仮想空間画像表示装置1について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。また、以下、本実施形態を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0012】
(仮想空間画像表示装置1の概要)
本実施形態に係る仮想空間画像表示装置1は、評価対象となる観覧施設において、観客席からの舞台に対する視界を仮想空間画像で表示する装置である。以下に、仮想空間画像表示装置1について幾つかの具体的な実施形態を参照して説明する。
【0013】
図1は、本実施形態に係る仮想空間画像表示装置1の一例を示すブロック図である。仮想空間画像表示装置1は、入力部100と、記憶部200と、表示部300と、制御部400と、を含んで構成される。
【0014】
仮想空間画像表示装置1を構成する入力部100、表示部300、及び制御部400の各機能は、パーソナルコンピュータ等に設けられたプロセッサがメモリ上のプログラムを実行することによって構成される。仮想空間画像表示装置1を構成するパーソナルコンピュータは、1台であっても複数であってもよい。物理的に離れた場所に設置されている複数のパーソナルコンピュータが連結することによって、仮想空間画像表示装置1の機能を実現することも可能である。また、仮想空間画像表示装置1の機能を実現するものは、パーソナルコンピュータに限定されず、例えば、プロセッサを備えたサーバやタブレット等の機器においても実現可能である。
【0015】
入力部100は、ユーザによるさまざまな情報を入力するためのインタフェース機能を有し、仮想空間画像表示装置1の外部より情報が入力される。入力部100は、仮想空間画像表示装置1と接続された、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、トラックボール、及び、音声認識デバイス等を通じてユーザによって情報が入力される。本実施形態において、入力部100に入力される情報は、施設情報及び操作情報である。施設情報は、評価対象となる観覧施設のサイズ(寸法)や構造に関する設計情報、及び、人間のサイズを定義した人体モデルに関する情報が含まれる。また、操作情報は、ユーザが、仮想空間画像表示装置1に対して行う操作に関する指示や設定等に関する情報が含まれる。
【0016】
図2に入力部100の概略ブロック図を示す。図2に示すように、入力部100は、施設情報入力部110、及び、操作情報入力部120を含んで構成される。施設情報は施設情報入力部110に入力され、記憶部200に記憶される。また、操作情報は、操作情報入力部120に入力され、操作内容に応じて表示部300又は制御部400に入力され、あるいは記憶部200に記憶される。
【0017】
操作情報入力部120は、ユーザからの操作に関する操作情報が入力される。また、操作情報入力部120は、入力された操作情報を図3に示す操作情報DB220に格納する。本実施形態において、操作情報は例えば、仮想空間画像の生成を希望する観客席の位置情報であってもよい。また、操作情報は、指定された観客の位置からの視線に関する情報であってもよい。また、操作情報は、仮想空間画像として表示する画像が単眼視野の画像か、両眼視野の画像か、を選択するための情報も含まれる。
【0018】
図3に記憶部200の概略ブロック図を示す。記憶部200には、施設情報、操作情報、単眼視野画像情報、及び両眼視野画像情報が記憶される。施設情報は、上述の通り、評価対象となる観覧施設のサイズ(寸法)や構造に関する設計情報が含まれる。ここで、評価対象となる観覧施設の設計情報は、例えば観覧施設の3次元CAD(Computer Aided Design)データ、BIM(Building Information Modeling)データ、設計図面等である。これら設計情報は、入力部100を通じて、あらかじめ仮想空間画像表示装置1の記憶部200に格納されている。なお、記憶部200は、仮想空間画像表示装置1の内部に含まれる構成に限定されず、例えば、仮想空間画像表示装置1の外部に接続された外部記憶装置としてもよい。
【0019】
単眼視野画像情報は、後述の単眼視野画像生成部420で生成された仮想空間画像に関する情報である。また、両眼視野画像情報は、後述の両眼視野画像生成部430で生成された単眼化された両眼視野画像に関する情報である。なお、本実施形態において、単眼視野画像は、観客席からの視野であって、舞台や前方の人体モデルをCG(Computer Graphics)により表現した画像である。また、本実施形態において、両眼視野画像は、単眼視野画像と同様に、観客席からの視野であって、舞台や前方の人体モデルを、人間の両眼による視野に近づけ、CGにより表現した画像である。単眼視野画像情報及び両眼視野画像情報の詳細については後述する。
【0020】
表示部300は、仮想空間画像表示装置1に接続された表示装置(図示なし)に、単眼視野画像情報、両眼視野画像情報等を送り、表示装置に表示させる。具体的には、表示部300は、後述の視野判定部440で判定された判定結果に基づいて、単眼視野画像又は両眼視野画像を表示装置に表示させる。表示装置は、例えば、パーソナルコンピュータやタブレットのディスプレイ装置、HMD(Head Mounted Display)等が挙げられる。
【0021】
制御部400は、空間座標設定部410と、単眼視野画像生成部420と、両眼視野画像生成部430と、視野判定部440と、を含んで構成される。
【0022】
空間座標設定部410は、記憶部200から施設情報(設計情報)を読み込み、設計情報を3次元軸上に空間座標として割り当てる。すなわち、空間座標設定部410は、舞台と客席とを備える観覧施設に関する設計情報に基づいて、観覧施設に対応した空間座標を設定する。具体的には、空間座標設定部410は、図4Aに示すように、まず観覧施設の上位方向から見た平面図をXY平面として設定する。空間座標設定部410は、XY平面において、舞台20から観客席30の方向に向かって左右対称となる中心軸11を定め、中心軸11と、舞台20と観客席30との境とが交わる点を、座標原点10として定める。すなわち、XY平面において、X軸におけるプラス側が舞台20側となり、X軸におけるマイナス側が観客席30側となる。なお、本明細書において、観覧施設の客席や観覧席を総じて観客席30と称し、観客席30における個別の座席を客席と称する。
【0023】
図4Aに示すアクティングエリア20aは、舞台20における活動領域を示し、このアクティングエリア20aにおいて、演劇や演奏などが行われる。また、図4Aは、Y軸のプラス側に1階席30aを示し、Y軸のマイナス側に2階席30b及びサイドバルコニー席30cを示す概念図である。実際の観覧施設は、Y軸のプラス、マイナス両軸方向に、1階席30a、2階席30b、及び、サイドバルコニー席30cが存在する。
【0024】
また、空間座標設定部410は、図4Bに示すように、中心軸11を通る垂直面をXZ平面として定める。さらに、空間座標設定部410は、XY平面及びXZ平面と直交する面をYZ平面として定める。図4Cは、図4Aの一点鎖線A-Aにおける観覧施設の断面図であり、YZ平面の一例を示す断面図である。なお、図4Cには、プロセニアム20bが示されている。ここで、プロセニアムとは、舞台の開口を形成し、舞台の最前列に設けられた観客席と舞台とを区切る額縁型の壁面である。図5は、空間座標設定部410によって空間座標が設定された観覧施設を、等角投影図法で示した場合の斜視図である。
【0025】
なお、本実施形態において、図4A図4C及び図5に示すように、舞台側をX軸のプラス方向とし、観客席側をX軸のマイナス方向とする例を示したが、3次元座標軸における空間座標の設定はこれに限定されない。例えば、舞台側をX軸のマイナス方向とし、観客席側をX軸のプラス方向とする形態をとることもできる。同様に、Y軸及びZ軸においても、プラス、及びマイナスの方向は、上述の実施形態に限定されず、図4A図4C及び図5に示す例とは逆となる方向にY軸及びZ軸のプラス方向、及びマイナス方向を定めてもよい。
【0026】
なお、観覧施設の設計情報は、空間座標設定部410が、あらかじめ仮想空間画像表示装置1の記憶部200に格納された設計情報から読み込むことで取得する例を示したが、設計情報の取得方法はこれに限定されない。例えば、ユーザが仮想空間画像表示装置1の外部から観覧施設に関する設計情報を入力することで、空間座標設定部410が設計情報を取得する方法を用いてもよい。
【0027】
単眼視野画像生成部420は、空間座標設定部410で設定された観覧施設の空間座標に基づいて、仮想空間画像を生成し、仮想空間画像に関する情報を記憶部200に記憶する。仮想空間画像は、3次元カラーコンピュータグラフィックスによって表現されることが可能である。仮想空間画像で表現された仮想空間では、あらゆる位置及び角度から舞台、客席、観客等の仮想空間における構成要素を表現することが可能である。
【0028】
記憶部200に記憶された単眼視野画像情報は、表示部300において画像データに変換され、上述の表示装置(図示なし)の画面等に表示される。ここで、本実施形態に係る仮想空間画像表示装置1で適用される両眼視野について説明する。
【0029】
(両眼視野について)
健康な人間は左右の眼を持ち、それぞれの眼から来る情報は途中の神経経路で交わることはない。目から来る情報については、大脳視覚野において初めて視覚から得たい情報の目的に合致するように、脳がモザイク状に部分領域を組み合わせて、リアルタイムで両眼視野画像を形成していることが、近年の大脳生理学の成果として報告されている。
【0030】
この情報は、1秒間に数回前後の周期性で、左右の視野情報が素早く交互に入れ替わることが分かっている。また、その情報の優位性をめぐる選択は、両眼視野闘争(binocular rivalry)という名称で知られている。しかし、部分的な視野闘争においては、片方の眼の情報が視線障害物と脳に見なされる等の一定の条件が満たされると、そこに意識を集中しなくとも、大脳の作用により、選択的に採用と消去が随時行われる。その結果、障害物である画像の断片は薄められ、別の眼から来る見たい部分の画像の断片のみ優位となり採用される。
【0031】
図6は、視線障害物を含む視野について説明するための図である。例えば図6に示すように、左右の眼とも、自身の鼻や、眼鏡のフレームが見えているが、普段は意識されない。図6に示す左目に道路標識が手前に写っていても、前方の人物を見る時は、右目の画像に写っていない部分は消されてしまう。また、周囲の小さな画像の一部は意識されない。
【0032】
別の言い方をすれば、障害物を含む画像の断片はモザイク状に、無意識に消去されるか、濃度が薄められ、結果として意識から見えなくなると考えられる。この現象は、日常的には眼球の直前にある、鼻、まぶた、眉毛、頭髪など顔の一部、眼鏡使用者では眼鏡のフレームにおいて観察される。
【0033】
左右の眼の眼球の中心は、身体寸法の測定結果から、日本人の成人男性で65mm前後、成人女性で60mm前後左右に離れており、通常は地表面に対して平行な高さにあることが分かっている。このため、左右の視野には左右の視差が生じ、立体的な知覚が得られる。
【0034】
同時に左右の眼球位置が離れているために、眼の直前(概ね50cm~2メートル程度)の距離にある物体(以下これを視線障害物という)の、遥か前方にあるところに視線を置き、焦点を合わせ、左右の視野の中心点(固視点)を一致させたと仮定する。この場合、視線障害物の画像として認識され、神経細胞を経由して、大脳視覚野で画像が処理されるが、左右にピントがぼけて、位置が左右にずれた二重の画像となる。よって両眼では左右が一致しない不安定図形となり、局所視野闘争が起きる。この場合、通常は前方にある固視点が優位となり、障害物に片目のみがかかる画像の断片は消去されて、その部分は透明化される。
【0035】
劇場の観客においては、前列の観客の後頭部の輪郭や手摺等、両眼視の場合は単眼のみでしか見えない視線障害物を含む画像断片は、意識から消去されて、その部分は透明化される。特に、舞台が明るく、観客席が暗いような、演目の光線状態を想定すると、前方にいる観客の後頭部のシルエットなどは舞台に比べて暗くなる。そのため、網膜上の視細胞に対する光の刺激は小さく、視覚神経への刺激が少なくなるため、明るい室内や、昼間の屋外でのイベントにくらべ、影となる画像は脳内での容易に消去・透明化されると考えられる。この現象の極端な例は視力検査において、左右の眼のいずれかの前にシャッターが下ろされたとき、どちらの眼で見ているか分からない状況が発生することで体験できる。
【0036】
このような現象に基づき、仮想空間画像表示装置1は、両眼で観察する観察者の目の前に前列の観客の頭等の視線障害物がある場合に、単眼視の視点で描写する時に生じる視野の欠損を勘案して、有効部分を追加してシミュレーションすることが可能となる。本実施形態については、特に劇場やアリーナ等において、舞台の中心方向を対象として、視線障害物となる前方の頭部をシミュレーションする場合について述べる。
【0037】
例えば、演劇やスポーツ観戦において、多くの場合、プレイヤーは舞台又は競技面の中を移動する。すなわちプレイの中心部は流動的に移動する。観客のほとんどがプレイする中心部の方向を向く。よって観察者も、その周囲の観客も舞台のプレイ中心方向を向くので、ほとんどの時間は観察者は前列観客の後頭部付近を見ることになる。図7A及び図7Bは、演劇やスポーツのプレイ中における、あるゾーンの観客の視線を説明するための図である。図7Aは、正面でプレイしている場合の観客の視線を示し、図7Bは、右斜め方向でプレイしている場合の観客の視線を示す。
【0038】
通常、人間の頭部は左右の幅のほうが、前後の奥行より小さいが、常に後頭部から見る場合は、小さい方の左右の輪郭を回転させた回転体で簡略的に近似することができると考えられる。本実施形態に係る仮想空間画像表示装置1は、この輪郭は左右の視差の半分ずつ、横方向に寸法を削ることで、実際の見え方をシミュレーションすることが可能となる。
【0039】
図8は、成人の頭の寸法について説明するための図である。頭長は、成人男性の場合は20~69歳で平均191mm、成人女性の場合は同じく平均180mmである考えられる。また、頭幅は成人男性平均で160mm、女性平均で155mmであると考えられている。すなわち、頭長は、男性、女性のどちらも頭幅より大きい。
【0040】
また、図7A及び図7Bに示す例により、観覧時は常に後頭部を見ていると考えて、大きい方の男性の頭幅を採用すれば160mmとなる。また、髪の毛のマージン10+10mmを加えても直径は180mmであると考えられる。図9は、本実施形態に係る仮想空間画像表示装置1で適用される頭部のモデル形状を示す図である。
【0041】
例えば、瞳孔間距離を64mmとし、前の人の頭との距離と、注視している舞台上の距離と、をシミュレーションする場合について考える。1m前後の距離にプライマリーな視線障害物となる前列の観客がおり、注視しているプレイエリア(固視点)との約10m以上ある場合においては、両眼でほぼ60mmに相当する視差となる。そのため、頭部の幅を30mmずつ削った回転体で、シミュレートすることが妥当であると考えられる。
【0042】
図10A及び図10Bは、本実施形態に係る仮想空間画像表示装置1で適用される頭部のモデル形状について説明するための図である。また、図11A及び図11Bは、図10A及び図10Bの頭部の形状モデルから左右30mmを削った、本実施形態に係る仮想空間画像表示装置1で適用される頭部のモデル形状を示す。
【0043】
前列の観客と観察者の頭との距離は、最もプライマリーな視線障害となるのは直前の列であり、この場合距離は0.75~1.0mである。また、セカンダリーな視線障害となるのは2つ前の列で、この場合距離は1.5~2.0mとなる。それ以降は、影響が徐々に下がっていく。したがって1m未満から2mを超える範囲で、定性的な状況が把握できれば十分に実用的な装置であると考えられる。
【0044】
図12は、本実施形態に係る仮想空間画像表示装置1で適用される視差角について説明するための図である。焦点Fまでの距離Dに応じた焦点と障害物obとの視差角θ(rad)は、以下のように定まる。焦点Fと、障害物obとの左眼の視差角をθ、右眼の視差角をθとする。また、瞳孔間距離をiとする。
tan(a)=tan(a)=i/(2d)、tan(b)=tan(b)=i/(2D)より、以下の式(1)が定まる。
[数1]
θ=θ=a-b・・・(1)
【0045】
また、距離Dを無限遠に拡大すると、b=b=0となるため、aと、θとは、同じ値に収束することがわかる。障害物の視差をa(rad)、無限遠と焦点の視差をb(rad)とすると、焦点Fと、障害物obとの視差角θは、以下のように定まる。
[数2]
θ=a-b ・・・(2)
[数3]
tan(a)=i/(2d) ・・・(3)
[数4]
tan(b)=i/(2D) ・・・(4)
[数5]
θ=a-b=arctan(i/(2d))-arctan(i/(2D))・・・(5)
【0046】
図13は、本実施形態に係る仮想空間画像表示装置1で適用される視差角について、焦点での距離との関係を説明するための図である。具体的には、図13は、視差を60mmと仮定し、視線障害物との距離を1m、1.5m、2mとし、注視する固視点を変化させた場合の計算上の視差寸法を記載する。
【0047】
図13において、n=D/dを示し、障害物obまでの距離d=1mとし、焦点Fまでの距離Dを2から50まで変化させた場合の視差角θを示す。距離Dが11m以上において、視差角θは、0.06で収束する。
【0048】
また、視線障害物である距離dが1mのとき、固視点(距離D)が17m以上ならば、女性の瞳孔間距離の平均値に一致する。また、視線障害物である距離dが1mのとき、固視点(距離D)が37m以上ならば、女性の瞳孔間距離の平均値に一致する。さらに、視線障害物である距離dが2mのときは固視点(距離D)が50m以上のとき、女性の瞳孔間距離の平均値に一致する。
【0049】
しかし、この場合、髪の毛のマージンを考慮しない場合とは20mmの違いがあり、この場合は40mm以上が安全側の許容範囲とも考えられる。40mm以上が許容範囲であれば、視線障害物が2mでも固視点が、11m以遠であればよいことになるので、十分実用的であると考えられる。
【0050】
図14A図15A、及び図16Aは、それぞれ異なる観客席からの視界を、単眼視野にて仮想空間画像表示したものである。また、図14B図15B、及び図16Bは、それぞれ、図14A図15A、及び図16Aに対応する仮想空間画像であって、両眼視野にて仮想空間画像表示したものである。
【0051】
図14B図15B、及び図16Bに示すように、本実施形態に係る仮想空間画像表示装置1は、両眼視野における仮想空間画像を表示することで観客席からの見え方をより正確に実現することが可能となる。
【0052】
図1の仮想空間画像表示装置1の一例を示すブロック図に戻り説明を進める。
【0053】
単眼視野画像生成部420は、空間座標が設定された設計情報に基づいて、単眼視野画像を生成する。具体的には、単眼視野画像生成部420は、図3に示す施設情報DB210に格納された設計情報211及び人体モデル情報212に基づいて、単眼視野画像を生成する。また、単眼視野画像生成部420は、生成した単眼視野画像を図3に示す単眼視野画像情報DB230に格納する。
【0054】
両眼視野画像生成部430は、単眼視野画像生成部420で生成された単眼視野画像に基づいて、両眼視野画像を生成する。具体的には、両眼視野画像生成部430は、図11A及び図11Bに示すように仮想空間画像における視界に存在する他の観客の頭部の形状モデルから左右30mm削減した両眼視野画像を生成する。また、両眼視野画像生成部430は、生成した両眼視野画像を図3に示す両眼視野画像情報DB240に格納する。すなわち、両眼視野画像生成部430は、後述の視野判定部440において、両眼視野画像を表示すると判定された場合に、単眼視野画像に含まれる観客の頭部の画像を水平方向に所定の長さ削減した両眼視野画像を生成する。
【0055】
視野判定部440は、操作情報に基づいて単眼視野画像又は両眼視野画像のどちらを表示するかを判定する。
【0056】
(仮想空間画像表示装置1の処理フローの概要)
次に、仮想空間画像表示装置1の動作の一例のフローチャートについて、図17に基づいて説明する。図17に示す処理手順は、仮想空間画像表示装置1が実行されるパーソナルコンピュータが有するプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)が実行する。CPUの一部の機能を実行する動作部の一例には、入力部100、表示部300、及び制御部400が挙げられる。この場合において、CPUはROM(Read Only Memory)(図示せず)に格納されたプログラムにしたがい実行する。
【0057】
なお、以下の処理手順の一部又は全部は、例えば、DSP(Digital Signal Processing)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアにより実行できる。但し本実施形態では、ROMのプログラムにしたがってCPUが実行する形態とした場合について説明する。
【0058】
ステップS1701において、空間座標設定部410は、記憶部200から施設情報(設計情報)を読み込み、設計情報を3次元軸上に空間座標として割り当てる。すなわち、空間座標設定部410は、舞台と客席とを備える観覧施設に関する設計情報に基づいて、観覧施設に対応した空間座標を設定する。その後、処理はステップS1702に進む。
【0059】
ステップS1702において、操作情報入力部120は、ユーザからの操作に関する操作情報を取得する。また、操作情報入力部120は、入力された操作情報を図3に示す操作情報DB220に格納する。本実施形態において、操作情報は例えば、仮想空間画像の生成を希望する観客席の位置情報であってもよい。また、操作情報は、指定された観客の位置からの視線に関する情報であってもよい。また、操作情報は、仮想空間画像として表示する画像が単眼視野の画像か、両眼視野の画像か、を選択するための情報も含まれる。その後、処理はステップS1703に進む。
【0060】
ステップS1703において、単眼視野画像生成部420は、空間座標が設定された設計情報に基づいて、単眼視野画像を生成する。具体的には、単眼視野画像生成部420は、図3に示す施設情報DB210に格納された設計情報211及び人体モデル情報212に基づいて、単眼視野画像を生成する。また、単眼視野画像生成部420は、生成した単眼視野画像を図3に示す単眼視野画像情報DB230に格納する。その後、処理はステップS1704に進む。
【0061】
ステップS1704において、視野判定部440は、操作情報に基づいて単眼視野画像又は両眼視野画像のどちらを表示するかを判定する。ステップS1704において、視野判定部440は、操作情報に基づいて単眼視野画像を表示すると判定した場合(ステップS1704:YES)には、処理はステップS1705に進む。一方で、ステップS1704において、視野判定部440は、操作情報に基づいて両眼視野画像を表示すると判定した場合(ステップS1704:NO)には、処理はステップS1706に進む。
【0062】
ステップS1705において、表示部300は、単眼視野画像を表示装置に表示させる。その後、処理はステップS1708に進む。
【0063】
ステップS1706において、両眼視野画像生成部430は、単眼視野画像生成部420で生成された単眼視野画像に基づいて、両眼視野画像を生成する。具体的には、両眼視野画像生成部430は、図11A及び図11Bに示すように仮想空間画像における視界に存在する他の観客の頭部の形状モデルを左右30mm削減した両眼視野画像を生成する。また、両眼視野画像生成部430は、生成した両眼視野画像を図3に示す両眼視野画像情報DB240に格納する。すなわち、ステップS1706において両眼視野画像生成部430は、後述の視野判定部440において、両眼視野画像を表示すると判定された場合に、単眼視野画像に含まれる観客の頭部の画像を水平方向に所定の長さ削減した両眼視野画像を生成する。その後、処理はステップS1707に進む。
【0064】
ステップS1707において、表示部300は、両眼視野画像を表示装置に表示させる。その後、処理はステップS1708に進む。
【0065】
ステップS1708において、制御部400は、ユーザが入力した操作情報を判定し、ユーザが終了を指定した場合(ステップS1708:YES)には、処理フローが終了する。一方で値の再調整など、ユーザが終了以外の操作を入力した場合(ステップS1708:NO)には、ステップS1702に戻り、ステップS1702からの処理が繰り返し実施される。すなわち、ユーザが操作情報として終了を指定するまでステップS1702からS1708までの処理が繰り返し実施される。
【0066】
上述の通り、仮想空間画像表示装置1は、舞台と客席とを備える観覧施設に関する設計情報に基づいて、観覧施設に対応した空間座標を設定する空間座標設定部410を備える。また、仮想空間画像表示装置1は、ユーザからの操作に関する操作情報が入力される操作情報入力部120を備える。また、仮想空間画像表示装置1は、空間座標が設定された設計情報に基づいて、単眼視野画像を生成する単眼視野画像生成部420を備える。また、仮想空間画像表示装置1は、操作情報に基づいて単眼視野画像又は両眼視野画像のどちらを表示するかを判定する視野判定部440を備える。また、仮想空間画像表示装置1は、視野判定部440において、両眼視野画像を表示すると判定された場合に、単眼視野画像に含まれる観客の頭部の画像を水平方向に所定の長さ削減した両眼視野画像を生成する両眼視野画像生成部430を備える。さらに、仮想空間画像表示装置1は、視野判定部440で判定された判定結果に基づいて、単眼視野画像又は両眼視野画像を表示する表示部300を備える。
【0067】
これにより、仮想空間画像表示装置1は、一般的な仮想空間画像に相当する単眼視野画像に含まれる観客の頭部の画像を、水平方向に所定の長さ削減することで、人間の両眼による視野に近づけた両眼視野画像を生成し、表示する。そのため、仮想空間画像表示装置1は、観客席からの見え方を人間の両眼による視野に近づけることで、観客席からの見え方を正確に実現することが可能となる。
【0068】
また、仮想空間画像表示装置1の両眼視野画像生成部430は、単眼視野画像に含まれる観客の頭部の形状モデルに対して、左右それぞれ30mm削減した両眼視野画像を生成してもよい。これにより、仮想空間画像表示装置1は、人間の両眼による視野をより正確に再現することで、観客席からの見え方をより正確に実現することが可能となる。
【0069】
(他の実施形態)
実施形態につき、図面を参照しつつ詳細に説明したが、以上の実施形態に記載した内容により本実施形態が限定されるものではない。また、上記に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、上記に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0070】
例えば、図14Bの残像Aに示すように、仮想空間画像表示装置1は、両眼視野画像を表示する場合に、単眼視野画像の場合の画像から削減した領域を半透明の画像で重畳(表示)させてもよい。半透明の画像は、例えば、10%~30%の不透過率、又は透過率70%~90%の画像であってもよい。これにより、仮想空間画像表示装置1は、上述の両眼視野闘争により一部が意識に残る視覚情報を、CG等の中に表現として残すことができる。
【0071】
これは、両眼視野闘争により周期的に現れる障害物の残像の時間的発生確率を、不透過率に置き換えたものである。例えば、時間的に周期の20%で発生するような画像ならば、20%の不透過率に置き換えて、簡便に疑似的に表現する手法と考えることができる。
【0072】
また、上述の実施形態において、仮想空間画像表示装置1は、静止画として単眼視野画像又は両眼視野画像を表示する形態を示したが、表示する画像は動画であってもよい。また、表示させる画像を動画とした場合であって両眼視野画像を表示する場合に、表示部300は、単眼視野画像を所定のフレームレートの中に一定の割合で挿入させた、動画として表示してもよい。
【0073】
例えば、表示が動画の場合であって、フレームレートが60fpsであった場合は、両眼視野を想定して障害物を除いた画像の中に、6コマごとに1コマの画像(1秒間当り10コマ)を挿入してもよい。この場合、仮想空間画像表示装置1は、両眼視野闘争により周期的に現れる障害物を、あたかも1/6すなわち16.6%の確率で、簡便に、かつ疑似的に表現することが可能になる。
【0074】
また、仮想空間画像表示装置1における処理(仮想空間画像表示方法)をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム(仮想空間画像表示プログラム)、及びそのプログラムを記録したコンピュータで読み取り可能な記録媒体は、本実施形態の範囲に含まれる。ここで、コンピュータで読み取り可能な記録媒体の種類は任意である。また、上記コンピュータプログラムは、上記の記録媒体に記録されたものに限られず、電気通信回線、無線又は有線通信回線、インターネットを代表とするネットワーク等を経由して伝送されるものであってもよい。
【0075】
(付記)
以上の実施の形態の記載により、下記の技術が開示される。
【0076】
(技術1)舞台と客席とを備える観覧施設に関する設計情報に基づいて、前記観覧施設に対応した空間座標を設定する空間座標設定部と、
ユーザからの操作に関する操作情報が入力される操作情報入力部と、
前記空間座標が設定された前記設計情報に基づいて、単眼視野画像を生成する単眼視野画像生成部と、
前記操作情報に基づいて前記単眼視野画像又は両眼視野画像のどちらを表示するかを判定する視野判定部と、
前記視野判定部において、前記両眼視野画像を表示すると判定された場合に、前記単眼視野画像に含まれる観客の頭部の画像を水平方向に所定の長さ削減した前記両眼視野画像を生成する両眼視野画像生成部と、
前記視野判定部で判定された判定結果に基づいて、前記単眼視野画像又は前記両眼視野画像を表示する表示部と、を備える仮想空間画像表示装置。
【0077】
この構成により、仮想空間画像表示装置1は、一般的な仮想空間画像に相当する単眼視野画像に含まれる観客の頭部の画像を、水平方向に所定の長さ削減することで、人間の両眼による視野に近づけた両眼視野画像を生成し、表示する。そのため、仮想空間画像表示装置1は、観客席からの見え方を人間の両眼による視野に近づけることで、観客席からの見え方を正確に実現することが可能となる。
【0078】
(技術2)前記両眼視野画像生成部は、前記単眼視野画像に含まれる前記観客の頭部の形状モデルに対して、左右それぞれ30mm削減した前記両眼視野画像を生成する、技術1に記載の仮想空間画像表示装置。
【0079】
この構成により、仮想空間画像表示装置1は、人間の両眼による視野をより正確に再現することで、観客席からの見え方をより正確に実現することが可能となる。
【0080】
(技術3)前記両眼視野画像生成部は、前記単眼視野画像から削減した領域を半透明の画像で重畳させた前記両眼視野画像を生成する、技術1又は2に記載の仮想空間画像表示装置。
【0081】
この構成により、仮想空間画像表示装置1は、両眼視野闘争により一部が意識に残る視覚情報を、CG等の中に表現として残すことができる。
【0082】
(技術4)前記表示部は、前記両眼視野画像を表示させる場合に、前記単眼視野画像を所定のフレームレートの中に一定の割合で挿入させて動画として表示する、技術1から3のいずれか一つに記載の仮想空間画像表示装置。
【0083】
この構成により、仮想空間画像表示装置1は、両眼視野闘争により周期的に現れる障害物を、簡便に、かつ疑似的に表現することが可能になる。
【0084】
(技術5)コンピュータによって実行される仮想空間画像表示方法であって、
舞台と客席とを備える観覧施設に関する設計情報に基づいて、前記観覧施設に対応した空間座標を設定し、
ユーザからの操作に関する操作情報が入力され、
前記空間座標が設定された前記設計情報に基づいて、単眼視野画像を生成し、
前記操作情報に基づいて前記単眼視野画像又は両眼視野画像のどちらを表示するかを判定し、
前記両眼視野画像を表示すると判定された場合に、前記単眼視野画像に含まれる観客の頭部の画像を水平方向に所定の長さ削減した前記両眼視野画像を生成し、
判定結果に基づいて、前記単眼視野画像又は前記両眼視野画像を表示する、仮想空間画像表示方法。
【0085】
この構成により、仮想空間画像表示方法は、一般的な仮想空間画像に相当する単眼視野画像に含まれる観客の頭部の画像を、水平方向に所定の長さ削減することで、人間の両眼による視野に近づけた両眼視野画像を生成し、表示する。そのため、仮想空間画像表示方法は、観客席からの見え方を人間の両眼による視野に近づけることで、観客席からの見え方を正確に実現することが可能となる。
【0086】
(技術6)舞台と客席とを備える観覧施設に関する設計情報に基づいて、前記観覧施設に対応した空間座標を設定し、
ユーザからの操作に関する操作情報が入力され、
前記空間座標が設定された前記設計情報に基づいて、単眼視野画像を生成し、
前記操作情報に基づいて前記単眼視野画像又は両眼視野画像のどちらを表示するかを判定し、
前記両眼視野画像を表示すると判定された場合に、前記単眼視野画像に含まれる観客の頭部の画像を水平方向に所定の長さ削減した前記両眼視野画像を生成し、
判定結果に基づいて、前記単眼視野画像又は前記両眼視野画像を表示する、処理をコンピュータに実行させるための仮想空間画像表示プログラム。
【0087】
この構成により、仮想空間画像表示プログラムは、一般的な仮想空間画像に相当する単眼視野画像に含まれる観客の頭部の画像を、水平方向に所定の長さ削減することで、人間の両眼による視野に近づけた両眼視野画像を生成し、表示する。そのため、仮想空間画像表示プログラムは、観客席からの見え方を人間の両眼による視野に近づけることで、観客席からの見え方を正確に実現することが可能となる。
【0088】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0089】
1 仮想空間画像表示装置
100 入力部
110 施設情報入力部
120 操作情報入力部
200 記憶部
210 施設情報DB
211 設計情報
212 人体モデル情報
220 操作情報DB
230 単眼視野画像情報DB
240 両眼視野画像情報DB
300 表示部
400 制御部
410 空間座標設定部
420 単眼視野画像生成部
430 両眼視野画像生成部
440 視野判定部
【要約】
【課題】観客席からの見え方をより正確に実現することが可能な仮想空間画像表示装置を提供する。
【解決手段】仮想空間画像表示装置1は、観覧施設に対応した空間座標を設定する空間座標設定部410と、ユーザからの操作に関する操作情報が入力される操作情報入力部と、を備える。仮想空間画像表示装置1は、設計情報に基づいて、単眼視野画像を生成する単眼視野画像生成部420と、操作情報に基づいて単眼視野画像又は両眼視野画像のどちらを表示するかを判定する視野判定部440と、を備える。また、仮想空間画像表示装置1は、両眼視野画像を表示すると判定された場合に、単眼視野画像に含まれる観客の頭部の画像を水平方向に所定の長さ削減した両眼視野画像を生成する両眼視野画像生成部430を備える。さらに、仮想空間画像表示装置1は、視野判定部で判定された判定結果に基づいて、単眼視野画像又は両眼視野画像を表示する表示部300を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A
図16B
図17