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特許7752309観覧施設評価装置、観覧施設評価方法、及び観覧施設評価プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-10-02
(45)【発行日】2025-10-10
(54)【発明の名称】観覧施設評価装置、観覧施設評価方法、及び観覧施設評価プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/08 20120101AFI20251003BHJP
   A63C 19/00 20060101ALI20251003BHJP
   G06F 30/13 20200101ALI20251003BHJP
   G06F 30/20 20200101ALI20251003BHJP
   E04H 3/22 20060101ALI20251003BHJP
【FI】
G06Q50/08
A63C19/00 Z
G06F30/13
G06F30/20
E04H3/22
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2025052410
(22)【出願日】2025-03-26
【審査請求日】2025-04-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520330940
【氏名又は名称】株式会社ラムサ
(73)【特許権者】
【識別番号】520330951
【氏名又は名称】勝又 英明
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(74)【代理人】
【識別番号】100141449
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 隆芳
(74)【代理人】
【識別番号】100142446
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 覚
(72)【発明者】
【氏名】西 豊彦
(72)【発明者】
【氏名】勝又 英明
(72)【発明者】
【氏名】松尾 浩
(72)【発明者】
【氏名】平間 信裕
(72)【発明者】
【氏名】岩井 彌
【審査官】藤澤 美穂
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-039554(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第115758531(CN,A)
【文献】国際公開第2015/016094(WO,A1)
【文献】特開2003-296620(JP,A)
【文献】特開2002-109336(JP,A)
【文献】特開平07-307932(JP,A)
【文献】田中 茂良,マルチメディアにおける AV空間談義,放送技術,第52巻・第8号,日本,兼六館出版株式会社,1999年08月01日,P.123-127
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
A63C 19/00
G06F 30/13
G06F 30/20
E04H 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
舞台と客席とを備える観覧施設に関する設計情報に基づいて、前記観覧施設に対応した空間座標を設定する空間座標設定部と、
前記空間座標における前記観覧施設に関する施設情報が入力される施設情報入力部と、
前記客席に着座した観客の視点と、前記観客が着座する前記客席より前方方向に位置し、前記空間座標に対応させた前方空間座標で示される点と、を通る直線であって、前記観客の視線である接線サイトラインを、前記施設情報に基づいて算出する接線情報算出部と、
前記接線サイトラインと、前記舞台上の特定の垂直な平面である注視平面と、が交わる点である可視点を算出する可視点算出部と、
前記可視点の前記空間座標と所定の評価基準とを比較し、前記舞台の観やすさを判定する可視点判定部と、
前記可視点判定部で判定された判定結果を表示する表示部と、を備え、
前記前方空間座標は、前記客席より前方に位置する前記客席に着座した前方観客の人体形状モデルの頭蓋に対応させた仮想頭蓋の中心から所定の長さの半径を有する半円形形状と、前記接線サイトラインとの接点の座標であり、
前記仮想頭蓋の中心の前記空間座標は、前記前方観客の眼球の前記空間座標とは異なる、観覧施設評価装置。
【請求項2】
前記観覧施設に設けられた障害物の形状のうち、前記接線サイトラインより上部に位置する可能性がある前記障害物のエッジの座標を、前記設計情報に基づいて設定する個別障害物設定部と、
全ての列における前記観客の視点に対して、前記障害物に対応する障害物俯角を算出し、前記障害物俯角が前記接線サイトラインの俯角より小さい場合に、前記障害物により前記舞台の観やすさが良好でないと判定する個別障害物判定部と、
をさらに備える請求項1に記載の観覧施設評価装置。
【請求項3】
前記舞台の舞台床面と、前記観客の視点との高さを判定する高舞台判定部をさらに備え、
前記可視点判定部は、前記高舞台判定部において前記舞台床面が前記観客の視点より高いと判定された場合には、前記舞台の先端である舞台端と、前記観客の視点とを結ぶ直線よりも下方にある前記舞台上の空間は観えないと判定する、請求項1に記載の観覧施設評価装置。
【請求項4】
前記観客が前記客席の最前列に着座する場合に、前記視点から下方向に45度より下方の範囲を除外した範囲を可視範囲として定める傾き判定部をさらに備え、
前記可視点判定部は、前記観客が前記客席の最前列に着座する場合に、前記傾き判定部において定められた前記可視範囲において前記舞台の観やすさを判定する、請求項1に記載の観覧施設評価装置。
【請求項5】
前記設計情報における前記障害物のオンオフを切り替える障害物判定スイッチをさらに備える、請求項2に記載の観覧施設評価装置。
【請求項6】
前記表示部は、前記視点から前記舞台の先端、又はプレイの中心領域への距離を表示する場合に、前記距離に対応した色のグラデーションで表示する、請求項1から5のいずれか一項に記載の観覧施設評価装置。
【請求項7】
コンピュータによって実行される観覧施設評価方法であって、
舞台と客席とを備える観覧施設に関する設計情報に基づいて、前記観覧施設に対応した空間座標を設定し、
前記空間座標における前記観覧施設に関する施設情報が入力され、
前記客席に着座した観客の視点と、前記観客が着座する前記客席より前方方向に位置し、前記空間座標に対応させた前方空間座標で示される点と、を通る直線であって、前記観客の視線である接線サイトラインを、前記施設情報に基づいて算出し、
前記接線サイトラインと、前記舞台上の特定の垂直な平面である注視平面と、が交わる点である可視点を算出し、
前記可視点の前記空間座標と所定の評価基準とを比較し、前記舞台の観やすさを判定し、
判定された判定結果を表示し、
前記前方空間座標は、前記客席より前方に位置する前記客席に着座した前方観客の人体形状モデルの頭蓋に対応させた仮想頭蓋の中心から所定の長さの半径を有する半円形形状と、前記接線サイトラインとの接点の座標であり、
前記仮想頭蓋の中心の前記空間座標は、前記前方観客の眼球の前記空間座標とは異なる、観覧施設評価方法。
【請求項8】
舞台と客席とを備える観覧施設に関する設計情報に基づいて、前記観覧施設に対応した空間座標を設定し、
前記空間座標における前記観覧施設に関する施設情報が入力され、
前記客席に着座した観客の視点と、前記観客が着座する前記客席より前方方向に位置し、前記空間座標に対応させた前方空間座標で示される点と、を通る直線であって、前記観客の視線である接線サイトラインを、前記施設情報に基づいて算出し、
前記接線サイトラインと、前記舞台上の特定の垂直な平面である注視平面と、が交わる点である可視点を算出し、
前記可視点の前記空間座標と所定の評価基準とを比較し、前記舞台の観やすさを判定し、
判定された判定結果を表示する処理をコンピュータに実行させ、
前記前方空間座標は、前記客席より前方に位置する前記客席に着座した前方観客の人体形状モデルの頭蓋に対応させた仮想頭蓋の中心から所定の長さの半径を有する半円形形状と、前記接線サイトラインとの接点の座標であり、
前記仮想頭蓋の中心の前記空間座標は、前記前方観客の眼球の前記空間座標とは異なる、観覧施設評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観覧施設評価装置、観覧施設評価方法、及び観覧施設評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、劇場、アリーナ、スタジアム等の観覧施設の客席、観覧席(以下、観客席とする)の断面形状を二次元の図面により検討し、観客の視点から舞台や競技フィールドの観やすさを判定する手法がある。例えば、特許文献1には、観客の視線に相当するサイトラインに基づいて、舞台の観えやすさ評価する観覧施設評価システムが開示されている。特許文献1に開示された観覧施設評価システムは、観客の視点の座標と、前方に位置する客席に着座した観客の眼の鉛直線上に想定した座標とを通る直線をサイトラインとして定め、サイトラインと舞台の平面とが交わる可視点により、舞台の観やすさを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6895602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、実際の人間の頭蓋は半球形状であるため、前列に着座した客席の眼の鉛直線上に想定した座標に基づいたサイトラインによる舞台に見えやすさの評価においては、視線の角度によって実際の見え方に対して誤差が発生する場合がある。例えば、特許文献1に開示されたサイトラインによる舞台の評価においては、水平方向又は見上げる場合には、実際より有利な評価結果となり、一方で、見下げる場合には、実際より不利な評価結果となる。
【0005】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本発明の目的は、観客席から舞台上の注視点に対するサイトラインをより正確に算出し、舞台の観やすさをより正確に評価することが可能な観覧施設評価装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の態様に係る観覧施設評価装置は、舞台と客席とを備える観覧施設に関する設計情報に基づいて、観覧施設に対応した空間座標を設定する空間座標設定部と、空間座標における観覧施設に関する施設情報が入力される施設情報入力部と、客席に着座した観客の視点と、観客が着座する客席より前方方向に位置し、空間座標に対応させた前方空間座標で示される点と、を通る直線であって、観客の視線である接線サイトラインを、施設情報に基づいて算出する接線情報算出部と、接線サイトラインと、舞台上の特定の垂直な平面である注視平面と、が交わる点である可視点を算出する可視点算出部と、可視点の空間座標と所定の評価基準とを比較し、舞台の観やすさを判定する可視点判定部と、可視点判定部で判定された判定結果を表示する表示部と、を備え、前方空間座標は、客席より前方に位置する客席に着座した前方観客の人体形状モデルの頭蓋に対応させた半円形形状と、接線サイトラインとの接点の座標である。
【0007】
本発明の他の態様に係る観覧施設評価方法は、コンピュータによって実行される観覧施設評価方法であって、舞台と客席とを備える観覧施設に関する設計情報に基づいて、観覧施設に対応した空間座標を設定し、空間座標における観覧施設に関する施設情報が入力され、客席に着座した観客の視点と、観客が着座する客席より前方方向に位置し、空間座標に対応させた前方空間座標で示される点と、を通る直線であって、観客の視線である接線サイトラインを、施設情報に基づいて算出し、接線サイトラインと、舞台上の特定の垂直な平面である注視平面と、が交わる点である可視点を算出し、可視点の空間座標と所定の評価基準とを比較し、舞台の観やすさを判定し、判定された判定結果を表示し、前方空間座標は、客席より前方に位置する客席に着座した観客の人体形状モデルの頭蓋に対応させた半円形形状と、接線サイトラインとの接点の座標である。
【0008】
本発明の他の態様に係る観覧施設評価プログラムは、舞台と客席とを備える観覧施設に関する設計情報に基づいて、観覧施設に対応した空間座標を設定し、空間座標における観覧施設に関する施設情報が入力され、客席に着座した観客の視点と、観客が着座する客席より前方方向に位置し、空間座標に対応させた前方空間座標で示される点と、を通る直線であって、観客の視線である接線サイトラインを、施設情報に基づいて算出し、接線サイトラインと、舞台上の特定の垂直な平面である注視平面と、が交わる点である可視点を算出し、可視点の空間座標と所定の評価基準とを比較し、舞台の観やすさを判定し、可視点判定部で判定された判定結果を表示する処理をコンピュータに実行させ、前方空間座標は、客席より前方に位置する客席に着座した前方観客の人体形状モデルの頭蓋に対応させた半円形形状と、接線サイトラインとの接点の座標である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、観客席から舞台上の注視点に対するサイトラインをより正確に算出し、舞台の観やすさをより正確に評価することが可能な観覧施設評価装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態に係る観覧施設評価装置の構成を示すブロック図である。
図2】第1の実施形態に係る観覧施設評価装置の機能的構成を示すブロック図である。
図3A】第1の実施形態に係る観覧施設評価装置が適用される観覧施設の一例を示す平面図である。
図3B】第1の実施形態に係る観覧施設評価装置が適用される観覧施設の一例を示す平面図である。
図3C】第1の実施形態に係る観覧施設評価装置が適用される観覧施設の一例を示す平面図である。
図4】第1の実施形態に係る観覧施設評価装置が適用される観覧施設の一例を示す斜視図である。
図5】舞台上の注視点の例を説明するための模式図である。
図6A】客席に着座した観客に関する寸法を説明するための模式図である。
図6B】観覧施設の断面図における1階席の座標を示すための模式図である。
図6C】観覧施設の断面図における2階席及びバルコニーの座標を示すための模式図である。
図7A】第1の実施形態に係る観覧施設評価装置100に適用される劇場におけるn列の観客からの舞台に対する視線を示す図である。
図7B】第1の実施形態に係る観覧施設評価装置の接線情報算出部の処理について説明するための図である。
図7C】第1の実施形態に係る観覧施設評価装置の接線情報算出部の処理について説明するための図である。
図8A】一般的なサイトライン作図法によるサイトラインと、本実施形態に係る観覧施設評価装置により算出される接線サイトラインとの差異について示す図である。
図8B】一般的なサイトライン作図法によるサイトラインと、本実施形態に係る観覧施設評価装置により算出される接線サイトラインとの差異について示す図である。
図8C】一般的なサイトライン作図法によるサイトラインと、本実施形態に係る観覧施設評価装置により算出される接線サイトラインとの差異について示す図である。
図8D】一般的なサイトライン作図法によるサイトラインと、本実施形態に係る観覧施設評価装置により算出される接線サイトラインとの差異について示す図である。
図8E】一般的なサイトライン作図法によるサイトラインと、本実施形態に係る観覧施設評価装置により算出される接線サイトラインとの差異について示す図である。
図9】第1の実施形態に係る観覧施設評価装置における評価基準の一例を示す図である。
図10A】第1の実施形態に係る観覧施設評価装置における表示基準の一例を示す図である。
図10B】第1の実施形態に係る観覧施設評価装置における表示基準の一例を示す図である。
図11A】第1の実施形態に係る施設情報を入力する際の初期入力画面の一例を示す図である。
図11B】第1の実施形態に係る施設情報を入力する際の断面座標系入力画面の一例を示す図である。
図12】第1の実施形態に係る観覧施設評価装置の表示結果の一例を示す図である。
図13】第1の実施形態に係る観覧施設評価装置の処理の一例を示すフローチャートである。
図14】第2の実施形態に係る観覧施設評価装置の機能的構成を示すブロック図である。
図15】第2の実施形態に係る観覧施設評価装置で適用される個別障害物について説明するための図である。
図16】第2の実施形態に係る観覧施設評価装置の処理の一例を示すフローチャートである。
図17】第3の実施形態に係る観覧施設評価装置の機能的構成を示すブロック図である。
図18】第3の実施形態に係る観覧施設評価装置の処理の一例を示すフローチャートである。
図19】第4の実施形態に係る観覧施設評価装置の機能的構成を示すブロック図である。
図20】他の実施形態に係る観覧施設評価装置の処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて本実施形態に係る観覧施設評価装置100について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。また、以下、本実施形態を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0012】
(観覧施設評価装置100の概要)
本実施形態に係る観覧施設評価装置100は、評価対象となる観覧施設において、観客席からの舞台の観やすさを判定し評価するシステムである。以下に、観覧施設評価装置100について幾つかの具体的な実施形態を参照して説明する。なお、以下の実施形態において、観覧施設評価装置100a、観覧施設評価装置100b、観覧施設評価装置100c、及び観覧施設評価装置100dを示すが、それぞれを区別して説明する必要がない場合は、単に「観覧施設評価装置100」と表記する。
【0013】
なお本開示において可視点は、特許文献1において注視点と記載された語におおむね相当するが、注視点(Point of Height見ようとする点)と、可視点(Clear Visible Point確実に見ることのできる限界点)とは、表現を区別している。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る観覧施設評価装置100の構成を示すブロック図である。図1に示すように、観覧施設評価装置100は、制御部110(CPU)と、記憶部120(メモリ)と、入出力IF130(Interface)と、通信IF140と、を含む一般的なコンピュータとして構成してもよい。
【0015】
観覧施設評価装置100を構成する各機能部は、コンピュータ等に設けられたプロセッサがメモリ上のプログラムを実行することによって構成される。観覧施設評価装置100を構成するコンピュータは、1台であっても複数であってもよい。物理的に離れた場所に設置されている複数のコンピュータが連結することによって、観覧施設評価装置100の機能を実現することも可能である。
【0016】
また、別の構成としては、観覧施設評価装置100は、各情報処理機能を実行するための専用のハードウェアを用意して、システムLSI(Large Scale Integration)等により当該情報処理機能を構成することも可能である。また、観覧施設評価装置100は、複数の情報処理機能を個別のハードウェアによりシステムを構成してもよい。
【0017】
制御部110は、記憶部120に格納されたプログラム(図示なし)に基づいて動作し、観覧施設評価装置100が備える各機能を実行する。なお、プログラムは、記憶部120に格納される形態に限定されず、例えば、観覧施設評価装置100内の、ROM等(図示なし)に記憶された構成としてもよい。
【0018】
記憶部120は、図2に示すように、空間情報DB121(Data Base)、施設情報DB122及び接線情報DB123に格納される情報をデータとして記憶部120に記憶する。
【0019】
また、記憶部120は、上述の通り、制御部110において実行される各機能に対するプログラムを記憶してもよい。なお、記憶部120に格納される情報やプログラムは、一つのストレージデバイスの中に物理的又は論理的に分けて設けられた領域として構成されていてもよい。あるいは、物理的に異なる複数のストレージデバイスに各データの記憶部120を設ける構成としてもよい。
【0020】
入出力IF130は、観覧施設評価装置100と、外部とのデータの送受信を行うためのインタフェースである。また、入出力IF130は、ユーザとの間においてやりとりされる情報を送受信するためのインタフェースであってもよい。入出力IF130は、例えば、入力IFと、出力IFとを備える(図示なし)。
【0021】
例えば、入出力IF130における入力IFは、ユーザによるさまざまな情報を入力するためのインタフェース機能を有し、観覧施設評価装置100の外部より情報が入力されてもよい。入力IFには、観覧施設評価装置100と接続された、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、トラックボール、及び、音声認識デバイス等を通じてユーザによって情報が入力される。また、入力IFは、外部記憶装置(図示なし)等からデータを入力するためのデータ入力端子として、情報を入力することができる。
【0022】
さらに、入出力IF130における出力IFは、観覧施設評価装置100に接続されたモニタ等の表示装置(図示なし)に、後述の空間情報や接線情報、評価結果等を表示させることができる。表示装置は、例えば、ディスプレイ装置、プロジェクター装置などである。
【0023】
通信IF140は、例えば、観覧施設評価装置100と、外部の装置との相互の通信を可能にするためのインタフェースである。
【0024】
(観覧施設評価装置100の機能的構成)
図2は、本実施形態に係る観覧施設評価装置100の機能的構成を示すブロック図である。図2に示すように、観覧施設評価装置100の制御部110は、空間座標設定部111と、施設情報入力部112と、接線情報算出部113と、可視点算出部114と、可視点判定部115と、表示部116と、を機能として備える。
【0025】
空間座標設定部111は、評価対象となる観覧施設のサイズ(寸法)や構造に関する設計情報を入力し、入力した設計情報を3次元軸上に空間座標として割り当てる。評価対象となる観覧施設の設計情報は、例えば観覧施設の3次元CAD(Computer Aided Design)データ、BIM(Building Information Modeling)データ、設計図面等である。これら設計情報は、あらかじめ観覧施設評価装置100内の記憶部120の空間情報DB121に格納されている。空間座標設定部111は、これらの設計情報を記憶部120から読み込むことで取得し、3次元軸上で座標を割り当てる。
【0026】
具体的には、空間座標設定部111は、図3Aに示すように、まず観覧施設の上位方向から見た平面図をXY平面として設定する。空間座標設定部111は、XY平面において、舞台20から観客席30の方向に向かって左右対称となる中心軸11を定め、中心軸11と、舞台20と観客席30との境とが交わる点を、座標原点10として定める。すなわち、XY平面において、X軸におけるマイナス側が舞台20側となり、X軸におけるプラス側が観客席30側となる。なお、本明細書において、観覧施設の客席や観覧席を総じて観客席30と称し、観客席30における個別の座席を客席と称する。
【0027】
図3Aに示すアクティングエリア20aは、舞台20における演技領域を示し、このアクティングエリア20aにおいて、演劇や演奏などが行われる。また、図3Aは、Y軸のプラス側に1階席30aを示し、Y軸のマイナス側に2階席30b及びサイドバルコニー席30cを示す概念図である。実際の観覧施設は、Y軸のプラス、マイナス両軸方向に、1階席30a、2階席30b、及び、サイドバルコニー席30cが存在する。
【0028】
また、空間座標設定部111は、図3Bに示すように、中心軸11を通る垂直面をXZ平面として定める。さらに、空間座標設定部111は、XY平面及びXZ平面と直交する面をYZ平面として定める。図3Cは、図3Aの一点鎖線A-Aにおける観覧施設の断面図であり、YZ平面の一例を示す断面図である。なお、図3Cには、プロセニアム20bが示されている。ここで、プロセニアムとは、舞台20の開口を形成し、舞台20の最前列に設けられた観客席30と舞台とを区切る額縁型の壁面である。図4は、空間座標設定部111によって空間座標が設定された観覧施設を、等角投影図法で示した場合の斜視図である。
【0029】
なお、観覧施設の設計情報は、空間座標設定部111が、あらかじめ観覧施設評価装置100の記憶部120に格納された設計情報から読み込むことで取得する例を示したが、設計情報の取得方法はこれに限定されない。例えば、ユーザが観覧施設評価装置100の外部から入出力IF130又は通信IF140を介して、観覧施設に関する設計情報を入力することで、空間座標設定部111が設計情報を取得する方法を用いてもよい。
【0030】
施設情報入力部112は、評価対象となる観覧施設の舞台20や観客席30に関する寸法や座標を施設情報として入力し、記憶部120の施設情報DB122に記憶する。この施設情報は、空間座標設定部111で設定された3次元軸上の座標空間に対応する値が入力される。施設情報入力部112における施設情報の入力は、例えば、ユーザが、図11A又は図11Bに示す初期値入力画面から値を入力することにより行われる。ユーザが、図11A又は図11Bに示す初期値入力画面において、必要な値を入力した後、入力ボタン(図示なし)を押すことで、施設情報入力部112に施設情報が入力され、記憶部120の施設情報DB122に記憶される。なお、初期値入力画面は、例えば、入出力IF130を介して、観覧施設評価装置100に接続されたディスプレイ装置等(図示なし)に表示される。
【0031】
施設情報のうち、舞台20に関する情報は、例えば、舞台20の高さSt及びプロセニアム20bの高さPrHである。図4図7Aに、観覧施設における、舞台20の高さSt及びプロセニアム20bの高さPrHを示す。舞台20の高さStは、観客席30の最前部の床から舞台床面までの高さである。また、プロセニアム20bの高さPrH(Procenium Height)は、舞台床面からプロセニアム20bの上端までの高さである。
【0032】
また、施設情報入力部112は、舞台上における観客からの視線の対象となる垂直の平面(以下、注視平面とする)の座標を入力する。注視平面は、YZ平面と平行な平面であり、舞台先端からX軸のマイナス方向への寸法をPSxとして、設定する。なお、注視平面は、舞台上の特定の垂直な平面に相当する。第1の実施形態において注視平面は、XZ平面の中心軸11上にあるものとする。すなわち、第1の実施形態において注視平面は、Y=0となり、X=PSxにおいて垂直方向に延びる線(以下、舞台注視線21とする)となる。また、PSxは、X軸上のマイナス方向(図3Aにおける左方向)をプラスの値とし、X軸上のプラス方向(図3Aにおける右方向)をマイナスの値とする。これは舞台においては通常、前端から奥に向かって各種寸法、座標を設定することを意識したものである。なお、注視平面は段階的かつ層状に設定することが可能である。すなわち、注視平面は、舞台上に奥行に応じて段階的に複数設定された鉛直面とすることで、可視点は断層的に評価される。
【0033】
図5に、舞台注視線21の設定の例を示す。なお、PSxは、舞台20の奥行に対し、観客席30からどの地点が見えなければならないかを明確にするためのものである。1階席の前方など低い位置にある客席からは、舞台の観客席30側の高い位置が観えやすく、舞台の奥行方向の低い位置に向かうにしたがって見えにくくなる。逆に1階席の後方や2階席では、舞台の前方の低い点に向かうにしたがって見えにくくなる。すなわちPSxの値としては、客席から観えるべき地点の最小値が入力される。図5においては、演奏や演劇等の演目によって異なる幾つかの注視点の例を示している。このように注視点として望ましい高さは、後述する図9図10A及び図10Bと関連する。
【0034】
例えば、舞台先端から舞台奥の方向にいるダンサー22aに対する舞台注視線21aとしては、PSx=3000となる。同様にチェロ奏者22bの場合の舞台注視線21bとしては、PSx=2000となる。舞台先端から1500mmの位置にいる俳優22cにおいては、舞台注視線21cは、PSx=1500となる。
【0035】
また、舞台よりも観客席30側に前舞台20cやオーケストラピット20dが存在する場合も同様に、舞台注視線21を定めることができる。舞台先端より観客席30側にある前舞台20cにいる俳優22dの場合の舞台注視線21dは、例えば、PSx=-1000となる。一方、オーケストラピット20dにいる指揮者22eについても同様に、舞台注視線21eは、例えば、PSx=-1500となる。
【0036】
さらに、施設情報入力部112は、客席情報として、客席、及び、客席に着座した観客に関する寸法や座標を入力し、記憶部120に記憶する。なお、客席情報についても、上述の舞台情報と同様に、図11Aに示す初期値入力画面を通じてユーザによって入力される。
【0037】
図6Aは客席に着座した観客に関する寸法等について説明するための図である。図6Aに示す各寸法は、図11Aに示す初期値入力画面の基本情報入力の領域にある「O」、「EH」、及び、「TH」に対応する寸法である。図6Aにおける水平距離31bは、着座した観客の目と直後の段床蹴上31aとの水平距離「O」又は「Ost」(Offset)を示す値である。また、図6Aにおける垂直距離31cは、着座した観客の床面からの目の高さ又は眼高「EH」(Eye Height)を示す値である。さらに、図6Aにおける垂直距離31dは、目と頭頂との距離「TH」(Top of Head)を示す。なお、目と頭頂との距離「TH」は、髪の毛等の長さを考慮し一定のマージンを加えたものである。なお、「EH」のデフォルト値は、例えば、1100mmとなる。性別や年齢層により目の高さは異なる。そのため、対象となる視点のみ高さを変える場合、例えば、「EH」が1050mmの場合は、青壮年層の70%の女性が舞台を見ることができる視点の高さとされている。
【0038】
また、施設情報入力部112は、客席情報として、1階席の最前列における直後の段床蹴上40までの水平位置H1を入力し、記憶部120に記憶する。水平位置H1についても、図11Aに示す初期値入力画面を通じてユーザによって入力される。
【0039】
図6Bに示す図は、中心軸11上の観客席30の断面図である。客席座標41は、1階席の最前列の客席の座標である。客席座標41は、初期値入力画面により入力された水平距離41a(水平位置H1)が用いられ、座標は(X1、Z1)=(H1、0)となる。ただし、V1の値は0であるとする。一方、1階席のn列目の客席座標42は、(Xn、Zn)=(Xn-1+Hn、Zn-1+Vn)となる。ここで、Hnは、n列目の客席とn-1列目の客席との水平距離42aである。同様にVnは、n列目の客席とn-1列目の客席との垂直距離42bである。
【0040】
さらに、施設情報入力部112は、客席情報として、2階席の最前列席の座標(H2_1、V2_1)及び、バルコニーの天井先端の座標(Bx、Bz)等を入力し、記憶部120に記憶する。2階席の最前列席の座標及びバルコニーの天井先端の座標についても初期値入力画面を通じてユーザによって入力される。
【0041】
図6Cに示す図は、2階席及びバルコニーの天井先端を示す断面模式図である。2階席の最前列の客席の座標51のうち、水平方向の位置を示す座標H2_1は、2階席の最前列席の直後の段床蹴上50と座標原点10との水平距離51aである。同様に、2階席の最前列の客席の座標51のうち、垂直方向の位置を示す座標V2_1は、2階席の最前列席の椅子の最後部と座標原点10との垂直距離51bである。同様に、バルコニーの天井先端の座標61(Bx、Bz)のうち、水平方向の位置を示す座標Bxは、バルコニーの天井先端と座標原点10との水平距離61aで示される。また、バルコニーの天井先端の座標61(Bx、Bz)のうち、垂直方向の位置を示す座標Bzは、バルコニーの天井先端と座標原点10との垂直距離61bで示される。
【0042】
図7Aは、本実施形態に係る観覧施設評価装置100に適用される劇場におけるn列の観客からの舞台に対する視線を示す図である。例えば、特許文献1に開示された観覧施設評価システムにおいては、特定の観客の視点から前列に位置する観客の頭越しに、舞台に向かって直線を放射し、その線の延長線が、舞台の任意の位置において、どの高さに達するかを評価する観覧施設評価システムである。
【0043】
特許文献1等における視線(サイトライン)の評価手法は、観察者である観客の視点、もしくは一般的な従来手法では、舞台側の視焦点(Point of Sight)と呼ばれる点から、前列の観客の視点を想定した位置の鉛直線上の一定寸法(通常100-120mm)上方の点を通過させることで、視線を評価する。
【0044】
しかし人間の頭蓋は半球形状であるため、この方法では視線(サイトライン)の角度によって、実際の見え方に対して誤差が発生する場合がある。具体的には水平方向を見る場合や、見上げる場合は、実際より有利な結果となり、反対に、見下げる場合は実際より不利な結果となる場合がある。
【0045】
また近年はコンピュータ・グラフィックによるサイトラインの確認がよく行われるようになったが、前列の観客の視点の上方を通過するサイトラインによる検証と、コンピュータ・グラフィックによる検証が必ずしも一致しない事例が存在する。本実施形態に係る観覧施設評価装置100は、このような従来技術の有する課題を改善することが可能となる。
【0046】
接線情報算出部113は、客席に着座した観客の視点と、観客が着座する客席より前方方向に位置し、空間座標に対応させた前方空間座標で示される点と、を通る直線であって、観客の視線である接線サイトラインを、施設情報に基づいて算出する。また、前方空間座標は、客席より前方に位置する客席に着座した前方観客の人体形状モデルの頭蓋に対応させた半円形形状と、接線サイトラインとの接点の座標に相当する。また、接線情報算出部113は、算出した接線サイトラインに関する情報を接線情報DB123に格納する。
【0047】
図7B及び図7Cを用いて、接線情報算出部113の処理について説明する。観察者であるn列の観客の眼球の中心を点Enとする。また、前列の観客の仮想頭蓋中心(Head Center)を点HDCn-1とする。仮想頭蓋の半径をHDR(Head Radius)とする。HDRは90mmを初期値とする。仮想頭蓋中心の前後位置を決定するにあたり眉間点と眼球中心の前後距離をEB(Eyeball)として想定する。EBは人種により平均値が異なるが顔面の凹凸が少ない日本人では25mmを初期値とする。このとき点EnからHDCn-1に引いた線分の長さをLとする。
【0048】
線分En-HDCn-1と点HDCn-1において、上方に直角をなす半径が、頭髪の円弧を交わる点を考える。これを仮接点(Preliminary Point of Tangency)と表わし、PPTと表記する。一方、観察者であるn列の観客の眼球の中心から放射される半直線が点Enと頭髪の円弧の接線となる場合の真の接点をPOT(Point of Tangency)と表す。この場合、直線POTEnは、必然的に仮想頭蓋中心と接点POTを結ぶ半径とは直角をなす。この図形的な性質から、以下のことが導かれる。
【0049】
水平線(図の左向き)と点Enから点HDCn-1に引いた線分のなす角度をα(単位rad)とすると、垂直線(上向き)とHDCn-1から仮接点PPTのなす角度はαに等しい。また、点Enから接点POTに引いた線分と、点EnからHDCn-1に引いた線分と、のなす角度をβ(単位rad)とすると、HDCn-1から接点POTに引いた線分と、HDCn-1から仮接点PPTに引いた線分とのなす角度はβに等しい。ちなみにβは必ず正の値となる。
【0050】
観察者であるn列の観客の眼球の中心から放射される半直線が点Enと頭髪の円弧の接線となるとき、その半直線は頭越しのサイトラインになる。このベクトルが図で左向き(=舞台方向)の水平線に対してなす角度をγ(単位rad)とする。γは見おろすサイトラインの場合は正となり、水平のサイトラインで0、見上げるサイトラインでは負の値となる。頭越しのサイトラインでは、値が小さいほど悪いサイトラインとなる。この場合、以下の式(1)が成立する。
[数1]
γ=α-β ・・・ (1)
【0051】
次に、n-1列の頭蓋の仮想中心である点HDCn-1の座標を求める。HDCn-1のX座標及びZ座標は、それぞれ以下の式(2)及び式(3)として定まる。
[数2]
HDCXn-1=Xn-1-OSTn-1-EB+HDR ・・・(2)
[数3]
HDCZn-1=Zn-1+EHn-1+TH-HDR ・・・(3)
【0052】
また、後列n列の点Enの位置であるX座標及びZ座標は、以下の式(4)及び式(5)により定まる。
[数4]
EXn=Xn-OSTn= Xn-1+Hn-OSTn ・・・(4)
[数5]
EZn=Zn+EHn=Zn-1+Vn+ EHn ・・・(5)
【0053】
従って、HDC→Enの差分は、X座標においては式(2)、(4)により以下の式(6)となる。
[数6]
Xn-OSTn=Xn-1+Hn-OSTn、
EXn-HDCXn-1=(Xn-1+Hn-OSTn)-(Xn-1-OSTn-1-EB+HDR)=Hn-OSTn+OSTn-1+EB-HDR ・・・(6)
【0054】
また、Z座標については式(3)、(5)により、以下の式(7)として定まる。
[数7]
(Zn-1+Vn+EHn)-(Zn-1+EHn-1+TH-HDR)
=Vn+EHn-EHn-1-TH+HDR ・・・(7)
【0055】
次にαを求める。ただし初期値TH=110、HDR=10とする。上記式(5)、及び式(6)により以下の式(8)が定まる。この式(8)により、α(rad)が求まる。
[数8]
α=arctan((EZn-HDCZn-1)/(EXn-HDCXn-1))
=arctan((Vn+EHn-EHn-1-TH+HDR)
/(Hn-OSTn+OSTn-1+EB-HDR)) ・・・(8)
【0056】
次にβを求める。前列n-1列の頭蓋の仮想中心である点HDCn-1と、後列n列の点Enの距離をLとおくと、Lは以下の式(9)となり、上記式(4)及び式(6)を代入することで、Lが求まる。
[数9]
L=((EXn-HDCXn-1)2+(EZn-HDCZn-1)2)1/2 ・・・(9)
【0057】
ここで髪の厚さ(マージン)HRT(Hair Thickness)を考慮する。sinβ=(HDR+HRT)/Lより、β(rad)は以下の式(10)により定まる。
[数10]
β=arcsin((HDR+HRT)/L) ・・・(10)
【0058】
また、γ=α-βによりγは求まる。このようにして点Enから舞台方向に向けて発する逆サイトライン(従来のサイトライン作図法とは逆方向の意)の角度γ(rad)と、その傾きtanγが求まる。また、接線情報算出部113は、算出した情報を接線情報DB123に格納する。
【0059】
図8A図8Eは、従来のサイトライン作図法によるサイトラインと、本実施形態に係る観覧施設評価装置100により算出される接線サイトラインとの差異について示す図である。なお、図8A図8Eにおいては、前後の椅子のピッチを900mmとし、頭頂差(頭頂と眼球中心の高さの差)を110mmとし、頭髪の厚みを10mm、合わせて120mmとする。破線のサイトラインは従来の方法によるサイトラインを示し、実線のサイトラインは本実施形態に係る観覧施設評価装置100による接線サイトラインを示す。
【0060】
図8Aに示す段差なしの場合、本開示の方法では接線となる状態で、従来の方法ではラインは10.5mm、頭にかぶっていて見えない。また、見上げるラインの場合、従来の方法は、実際には見えない状態においても、観えると判定されることになる。
【0061】
図8Bに示す段差が120mmの場合、本開示の方法と、従来の方法とは、ともにラインが水平となり、かつラインは一致し差異はない。頭頂差と床の段差が一致する場合のみ、結果が一致する。
【0062】
図8Cに示す段差が300mmの場合、下向きのラインとなるが、本開示の方法は、従来の方法よりも、下方を通過し、その差は差異11.6mmとなる。この差は20m前方では約256mmに拡大される。この場合の俯角は約12度だが、劇場の最上段では普通に見られる。
【0063】
図8Dに示す段差が540mmの場合、下向きのラインとなるが、本開示の方法は、従来の方法よりも、下方を通過し、その差は差異20.5mmとなる。この差は20m前方では約452mmに拡大される。この場合の俯角は約35度に達するが、劇場の最上段ではときおり見られる。
【0064】
図8Eに示す段差が720mmの場合、下向きのラインとなるが、本開示の方法は、従来の方法よりも、下方を通過し、その差は差異23.4mmとなる。この差は20m前方では約517mmに拡大される。この場合の俯角は約35度に達するが、スタジアムやオペラハウスの最上段では普通に見られる。誤差は角度では約1度ある。これは従来の方法が、ヒトの頭蓋の形状を考慮していない結果と言える。
【0065】
このように、従来の方法は、ヒトの頭蓋の形状を考慮した場合とは、かなり実態が異なることが分かる。
【0066】
可視点算出部114は、接線サイトラインと、3次元空間においては舞台上の特定の垂直な平面である注視平面と、断面図等2次元平面においては特定の注視線とが交わる点である可視点を算出する。
【0067】
可視点判定部115は、可視点の空間座標と所定の評価基準とを比較し、舞台の観やすさを判定する。図9に評価基準と、可視点PSzの値に対する観やすさの判定結果を示す。比較した結果、図9に示す通り、舞台面との差分で表わしたPSzの値が、0以下の場合には、舞台床面が観えるため、判定結果としては問題がない。PSzの値が、0より大きく150mm以下の場合は、足元まで観える、あるいは全身が観えるという状況となる。PSzの値が150mmより大きく、450mm以下の場合には膝以上が観えるという状況となる。PSzの値が450mmより大きく、900mm以下の場合には、腰以上が観えるという状況になる。
【0068】
PSzの値が、900mmより大きく、1050mm以下の場合には、胸以上が観える、あるいは上肢の動作や、顔が観えるという状況になる。PSzの値が、1050mmより大きく、1200mm以下の場合は、顔の表情が観えるという状況となる。PSzの値が1200mmより大きい場合には、よく観えないという判定結果となる。可視点判定部115は、各客席に対する判定結果を記憶部120に記憶する。
【0069】
表示部116は、可視点判定部115で判定された判定結果を表示する。表示部116は、図10A及び図10Bに示す表示基準に従って、図12に示すような、判定結果を表示する。図10Aは、見え方を基準にした表示基準であり、図10Bは距離を基準にした表示基準である。
【0070】
また、図12の一番左の図は、1列頭越し、図12の左から2番目の図は、2列頭越しの場合に判定結果であって、前後の観客の眼高が同じ場合の判定結果を示す。また、図12の右から2番目の図は、1列頭越し、図12の一番右の図は、2列頭越しの場合に判定結果であって、後ろの観客の眼高が前に比べて低い場合の判定結果を示す。
【0071】
(観覧施設評価装置100の処理フローの概要)
次に、観覧施設評価装置100の動作の一例のフローチャートについて、図13に基づいて説明する。図13に示す処理手順は、観覧施設評価装置100が実行されるコンピュータが有するプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)が実行する。この場合において、CPUはROM(Read Only Memory)(図示せず)に格納されたプログラムに従い実行する。
【0072】
なお、以下の処理手順の一部又は全部は、例えば、DSP(Digital Signal Processing)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアにより実行できる。但し本実施形態では、ROMのプログラムにしたがってCPUが実行する形態とした場合について説明する。
【0073】
ステップS1301において、空間座標設定部111は、観覧施設に関する設計情報に基づいて空間座標を設定する。観覧施設の設計情報は、例えば観覧施設のCADデータやBIMデータであり、記憶部120の空間情報DB121に記憶されている。具体的には、空間座標設定部111は、上述の図3A図3Cに示す3次元座標軸を設定する。その後、処理はステップS1302に進む。
【0074】
ステップS1302において、施設情報入力部112は、施設情報を入力し、記憶部120の施設情報DB122に記憶する。具体的には、例えば図11Aに示される初期値入力画面において、ユーザが数値を入力することにより、施設情報が入力される。ステップS1302において入力される施設情報は、舞台情報及び客席情報である。また、ステップS1302において入力される舞台情報は、例えば、舞台の高さSt、プロセニアムの上端までの高さPrH、舞台注視線21のX座標(PSx)である。その後、処理はステップS1303に進む。
【0075】
ステップS1303において、接線情報算出部113は、接線サイトラインを算出する。接線サイトラインは、客席に着座した観客の視点と、観客が着座する客席より前方方向に位置し、空間座標に対応させた前方空間座標で示される点と、を通る直線であって、観客の視線に相当し、施設情報に基づいて算出される。また、前方空間座標は、客席より前方に位置する客席に着座した前方観客の人体形状モデルの頭蓋に対応させた半円形形状と、接線サイトラインとの接点の座標に相当する。また、接線情報算出部113は、算出した接線サイトラインに関する情報を接線情報DB123に格納する。その後、処理はステップS1304に進む。
【0076】
ステップS1304において、可視点算出部114は、接線サイトラインと、舞台上の特定の垂直な平面である注視平面と、が交わる点である可視点を算出する。その後、処理はステップS1305に進む。
【0077】
ステップS1305において、可視点判定部115は、可視点の空間座標と所定の評価基準とを比較し、舞台の観やすさを判定する。その後、処理はステップS1306に進む。
【0078】
ステップS1306において、表示部116は、可視点判定部115で判定された判定結果を表示する。その後、処理はステップS1307に進む。
【0079】
ステップS1307において、制御部110は、ユーザが入力した情報を判定し、ユーザが終了を指定した場合(ステップS1307:YES)には、処理フローが終了する。一方で値の再調整など、ユーザが終了以外の操作を入力した場合(ステップS1307:NO)には、ステップS1302に戻り、ステップS1302からの処理が繰り返し実施される。すなわち、ユーザが操作情報として終了を指定するまでステップS1302からS1307までの処理が繰り返し実施される。
【0080】
上述の通り、第1の実施形態に係る観覧施設評価装置100は、舞台と客席とを備える観覧施設に関する設計情報に基づいて、観覧施設に対応した空間座標を設定する空間座標設定部111を備える。また、観覧施設評価装置100は、空間座標における観覧施設に関する施設情報が入力される施設情報入力部112を備える。また、観覧施設評価装置100は、施設情報に基づいて接線サイトラインを算出する接線情報算出部113を備える。本実施形態において接線サイトラインは、客席に着座した観客の視点と、観客が着座する客席より前方方向に位置し、空間座標に対応させた前方空間座標で示される点と、を通る直線であって、観客の視線に相当する。また、観覧施設評価装置100は、接線サイトラインと、舞台上の特定の垂直な平面である注視平面と、が交わる点である可視点を算出する可視点算出部114を備える。また、観覧施設評価装置100は、可視点の空間座標と所定の評価基準とを比較し、舞台の観やすさを判定する可視点判定部115を備える。また、観覧施設評価装置100は、可視点判定部115で判定された判定結果を表示する表示部116を備える。本実施形態に係る前方空間座標は、客席より前方に位置する客席に着座した前方観客の人体形状モデルの頭蓋に対応させた半円形形状と、接線サイトラインとの接点の座標である。
【0081】
これにより、観覧施設評価装置100で用いられる前方空間座標は、客席より前方に位置する客席に着座した前方観客の人体形状モデルの頭蓋に対応させた半円形形状と、接線サイトラインとの接点の座標である。そのため、観覧施設評価装置100は、観客席から舞台上の可視点に対するサイトラインをより正確に算出し、舞台の観やすさをより正確に評価することが可能となる。
【0082】
(第2の実施形態)
以上のとおり、具体的な実施形態を一つ説明したが、上述した実施形態は例示である。上述の実施形態では、観客の視点と、観客の前方の客席に着座する観客の人体形状モデルの頭蓋に対応させた半円形形状における接点とを直線として接線サイトラインを算出し、接線サイトラインと舞台上の舞台注視線とが交わる可視点を算出する形態を例示した。ここではさらに、観察者と、判定対象となる舞台との間に個別障害物があった場合の接線サイトラインを判定する第2の実施形態に係る観覧施設評価装置100bについて、第1の実施形態と異なる構成について説明する。
【0083】
図14は、第2の実施形態に係る観覧施設評価装置100bの機能的構成を示すブロック図である。図14に示すように、観覧施設評価装置100bは、個別障害物設定部117aと、個別障害物判定部117bと、障害物情報DB124と、を含む点で、第1の実施形態に係る観覧施設評価装置100aとは、異なる。
【0084】
第2の実施形態に係る観覧施設評価装置100bにおいて、個別障害物は、例えば、観客席後方から見た場合の、最前列の観客の頭に相当する。この最前列の観客の頭は最下階においてもバルコニー階においても、高い確率で視線障害となる。
【0085】
また、個別障害物は、バルコニー席における、最前列先端にある手摺や腰壁にも相当する。例えば、手摺や腰壁は、傾斜が急な階層等に設置される落下防止用の手摺等である。この手摺や腰壁は、各座席の前にある場合と、任意の位置にある場合がある。後者の例としては、横通路の前側にある手摺、ボミトリー(隧道)の開口部における縁の腰壁、車椅子席の前の落下防止柵に相当する。さらに、それ以外の視線障害物の例としては、バルコニーの最先端部に設置される音響機器や映写装置などがある。なお、プロセニアムの上部の枠、客席の天井、舞台の縁は、個別障害物から除き、第2の実施形態に係る観覧施設評価装置100bにおける判定では取り扱わないものとする。
【0086】
図15を用いて、第2の実施形態に係る観覧施設評価装置100bの処理について説明する。個別障害物において、もっともクリティカルな点を例えば手摺(Handrail)とし、そのうちの一つをHDRとし、X座標、Z座標を(HDRx,HDRz)とする。観察者であるn列の観客の視点(眼)は、En(Exn,Ezn)であるから、障害物のエッジにおけるラインの傾き(俯角)は、その傾きを例えばθで表わすと、次の式(11)で示される。
[数11]
tanθ=(Ezn-HDRz)/(Exn-HDRx) ・・・(11)
【0087】
この俯角tanθの値がtanγより大きい場合か同じ値の場合は、個別障害物は頭越しのサイトラインよりも下に位置するので影響は与えないが、tanγより小さい場合は、頭越しのサイトラインよりも上にあって、サイトラインをさらに悪化させる。よって値の大小の比較のみで判定を行うことが可能となる。
【0088】
個別障害物設定部117aは、設計情報に基づき、障害物の形状のうち、頭越しの接線サイトラインより上部に位置する可能性がある障害物のエッジの座標を設定する。一つの障害物が多角形もしくは曲面を持つときは、複数の点を設定することができる。図15におけるHDR′はこのような一例を示す。
【0089】
個別障害物設定部117aにおいて設定された障害物は、観察者よりX座標が小さい場合、すなわち舞台側にある場合のみしか、判定の対象とはならないものとする。
【0090】
個別障害物判定部117bは、全ての列における観客の視点に対する、全ての障害物に対応する俯角tanθを算出する。また、個別障害物判定部117bは、算出した結果を障害物情報DB124に格納する。一つの障害物が多角形もしくは曲面を持つときは、各列の観察者に対して、最もクリティカルな、すなわち値が小さい、俯角tanθが記憶される。ある断面上に個別障害物が最大m個ある場合は、最大数n列に対しては、n×m個のtanθが反復処理により記憶される。なお、観察者の視点と、障害物のエッジの座標とを結ぶ直線は、障害物サイトラインに相当する。
【0091】
すなわち、個別障害物判定部117bは、全ての列における観客の眼に対する、全ての障害物に対応する障害物俯角を算出し、障害物俯角が接線サイトラインの俯角より小さい場合に、障害物により舞台の観やすさが良好でない(悪化する)と判定する。なお、障害物俯角は、俯角tanθに相当する。また、接線サイトラインの俯角は、tanγに相当する。
【0092】
さらに、特定の列における観客の視点に対して最も不利となる個別障害物は、最も俯角tanθが小さくなる場合なので、個別障害物判定部117bは、任意のn列に対する最小の値となるMIN(tanθ)を計算し、結果を障害物情報DB124に記憶する。
【0093】
図16は、第2の実施形態に係る観覧施設評価装置100bの処理の一例を示すフローチャートである。なお、図13に示す第1の実施形態に係る観覧施設評価装置100aの処理と同一の処理については、説明を省略する。
【0094】
ステップS1601の処理は、図13に示すステップS1301の処理と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0095】
ステップS1602において、個別障害物設定部117aは、設計情報に基づき、観覧施設に設けられた障害物の形状のうち、接線サイトラインより上部に位置する可能性がある障害物のエッジの座標を設定する。その後、処理はステップS1603に進む。
【0096】
ステップS1603~ステップS1605の処理は、図13に示すステップS1302~ステップS1304の処理と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0097】
ステップS1606において、可視点判定部115は、可視点の空間座標と所定の評価基準とを比較し、舞台の観やすさを判定する。また、ステップS1606において、個別障害物判定部117bは、全ての列における観客の視点に対して、障害物に対応する障害物俯角を算出し、障害物俯角が接線サイトラインの俯角より小さい場合に、舞台の観やすさが障害物により良好でないと判定する。その後、処理はステップS1607に進む。
【0098】
ステップS1607~ステップS1608の処理は、図13に示すステップS1306~ステップS1307の処理と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0099】
上述の通り、第2の実施形態に係る観覧施設評価装置100bは、観覧施設に設けられた障害物の形状のうち、接線サイトラインより上部に位置する可能性がある障害物のエッジの座標を、設計情報に基づいて設定する個別障害物設定部117aをさらに備える。観覧施設評価装置100bは、全ての列における観客の視点に対して、障害物に対応する障害物俯角を算出し、障害物俯角が接線サイトラインの俯角より小さい場合に障害物により舞台の観やすさが良好でないと判定する個別障害物判定部117bをさらに備える。
【0100】
この構成により、観覧施設評価装置100bは、障害物に対応する障害物俯角を算出し、障害物俯角が接線サイトラインの俯角より小さい場合に、障害物により舞台の観やすさが良好でない(悪化する)と判定する。これにより、観覧施設評価装置100bは、前列の観客だけでなく障害物を考慮に入れた舞台の観やすさの評価が可能になる。
【0101】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、第1及び/又は第2の実施形態と同じ符号を用いる場合、第1及び/又は第2の実施形態と同一の構成を示し、特に説明がない限り先行する説明を参照する。以下、第3の実施形態に係る観覧施設評価装置100cについて、第1及び/又は第2の実施形態と異なる構成について説明する。
【0102】
図17は、第3の実施形態に係る観覧施設評価装置100cの機能的構成を示すブロック図である。図17に示すように、観覧施設評価装置100cは、高舞台判定部118を備える点で、第1の実施形態に係る観覧施設評価装置100aと異なる。
【0103】
測定者の視点より舞台床面が高い場合は、舞台の先端(舞台端という)を通過するサイトラインよりも下方にある舞台上の空間は見えなくなるが、これを数値検証する必要性がある場合が生じる。
【0104】
例えば、歌舞伎等の伝統芸能においては、所作台と呼ばれる木製の台を舞台の大半に敷いたり、舞台の奥に座敷があり、舞台より数段分上がっていたりする場合がある。またミュージカル等の舞台では、デッキとよばれる数十センチの厚みの台を敷き詰めることがある。アリーナ等では平土間の客席部からの視認性をよくするため、舞台の高さを2m程度から5m以上も上げることがある。
【0105】
いずれの場合においても、舞台の先端(面:つら)のエッジがクリティカルとなり、舞台の奥にある人物等の下部が観客の視点からは見えないことが起きるのである。このような状況において、可視範囲を予測し、数値検証するために、第3の実施形態に係る観覧施設評価装置100cは高舞台判定部118を備える。
【0106】
まず舞台の高さは、すでに空間座標設定部111において、設定されているとする。高舞台判定部118では、単に舞台の高さ(ST)と特定の列における観客の視点の高さ(Ezn)を比較し、舞台の高さが高い場合にのみ、あらかじめ作成したプログラム上で動作させる。プログラムは視点と舞台の先端へ伸ばしたラインを延長し、注視線上の交点の高さを判定する極めて単純な判定式となる。算出した結果は、可視点算出部114に送られ、結果の値が置き換えられる。
【0107】
具体的には、高舞台判定部118は、舞台の舞台床面と、観客の視点との高さを判定する。さらに、可視点判定部115は、高舞台判定部118において舞台床面が観客の視点より高いと判定された場合には、舞台の先端である舞台端と、視点とを結ぶ直線よりも下方にある舞台上の空間は観えないと判定する。
【0108】
図18は、第3の実施形態に係る観覧施設評価装置100cの処理の一例を示すフローチャートである。なお、図13に示す第1の実施形態に係る観覧施設評価装置100aの処理と同一の処理については、説明を省略する。
【0109】
ステップS1801の処理は、図13に示すステップS1301の処理と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0110】
ステップS1802において、高舞台判定部118は、舞台の舞台床面と、観客の視点との高さを判定する。その後、処理はステップS1803に進む。
【0111】
ステップS1803~ステップS1805の処理は、図13に示すステップS1302~ステップS1304の処理と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0112】
ステップS1806において、可視点判定部115は、可視点の空間座標と所定の評価基準とを比較し、舞台の観やすさを判定する。また、可視点判定部115は、高舞台判定部118において舞台床面が観客の視点より高いと判定された場合には、舞台の先端である舞台端と、視点とを結ぶ直線よりも下方にある舞台上の空間は観えないと判定する。その後、処理はステップS1807に進む。
【0113】
ステップS1807~ステップS1808の処理は、図13に示すステップS1306~ステップS1307の処理と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0114】
上述の通り、第3の実施形態に係る観覧施設評価装置100cは、舞台の舞台床面と、観客の視点との高さを判定する高舞台判定部118をさらに備える。また、可視点判定部115は、高舞台判定部118において舞台床面が観客の視点より高いと判定された場合には、舞台の先端である舞台端と、観客の視点とを結ぶ直線よりも下方にある舞台上の空間は観えないと判定する。
【0115】
この構成により、観覧施設評価装置100cは、高舞台判定部118において、舞台の舞台床面と、観客の視点の高さとを判定する。また、観覧施設評価装置100cは、舞台床面が観客の視点より高いと判定された場合には、可視点判定部115において、舞台の先端である舞台端と、観客の視点とを結ぶ直線よりも下方にある舞台上の空間は観えないと判定する。これにより、観覧施設評価装置100cは、観客の視点より舞台床面が高い場合の可視範囲の検証をより正確に実施することが可能となる。
【0116】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、第1~第3の実施形態と同じ符号を用いる場合、第1~第3の実施形態と同一の構成を示し、特に説明がない限り先行する説明を参照する。以下、第4の実施形態に係る観覧施設評価装置100dについて、第1~第3の実施形態と異なる構成について説明する。
【0117】
図19は、第4の実施形態に係る観覧施設評価装置100dの機能的構成を示すブロック図である。図19に示すように、観覧施設評価装置100dは、傾き判定部119を備える点で、第2の実施形態に係る観覧施設評価装置100bと異なる。
【0118】
例えば、各階層の最前列の観客に対しては、前列は存在しないため、前列の観客の頭によって遮られることがない。そのため、仮に舞台や競技場等で最下階の観客席の床より舞台等のほうが低い場合を想定する。一般的に上方向30度以内、下方45度以内が舞台鑑賞等においては、人間のもつ最適な視野とされており、観覧施設評価装置100dにおいては、これを外れる範囲を可視範囲外としてカットする。
【0119】
また、下方をカットするもう一つの理由は、見おろす角度が45度を超える場合、多くの観客は高所に対する恐怖感を感じるため好ましくないと考えられる一般的な考えがある。通常、舞台には床があるので、その下は見えないことになるが、演出によっては舞台に穴が開いていたり、奈落が見えたりすることもあるので、概念的には可視点がマイナスとなってもよいと考える。
【0120】
ただし、最下階ではなく、バルコニー階層の最前列では、下方の視野においては、個別障害物である手摺のほうが、クリティカルになることがほとんどである。上方については特に問題とはならないので、観覧施設評価装置100dでは、上方向の視野については判定の対象とはしない。
【0121】
具体的には、傾き判定部119は、観客が客席の最前列に着座する場合に、視点から下方向に45度より下方の範囲を除外した範囲を可視範囲として定める。さらに、可視点判定部115は、観客が客席の最前列に着座する場合に、傾き判定部119において定められた可視範囲において舞台の観やすさを判定する。
【0122】
これにより、第4の実施形態に係る観覧施設評価装置100dは、観客が客席の最前列に着座する場合においても、舞台の観やすさをより正確に判定することが可能となる。
【0123】
(他の実施形態)
実施形態につき、図面を参照しつつ詳細に説明したが、以上の実施形態に記載した内容により本実施形態が限定されるものではない。また、上記に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、上記に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0124】
上述の観覧施設評価装置100bにおいては、個別障害物設定部117aと、個別障害物判定部117bとを備え、全ての列における観客の視点に対して、障害物が相当するtanθを算出し、判定結果が障害物情報DB124に格納されることを示した。さらにその中で、最も不利な障害物となる個別障害物は、最もtanθが小さくなる場合なので、任意のn列に対する最小の値となるMIN(tanθ)が計算されて、障害物情報DB124に格納されることを示した。
【0125】
例えば、上述の状態では、本来の段床と椅子と観客の身体寸法によって判定される逆サイトラインの角度γ(rad)、又はその傾きtanγと、個別障害物のうち最も不利になるラインの角度θ(rad)又はその傾きtanθとの、大小関係は判定されていない。
【0126】
そのため、観客席の主たる断面である段床の奥行(X方向)の数列と、段差(Z方向)の数列と、が確定され決定した後に、部分詳細に相当する手摺等を個別に設計するというプロセスを鑑みて、判定する構成を用いてもよい。
【0127】
例えば、ユーザの入力画面に「障害物判定スイッチ」を設け、次の機能のオン、オフができるプロシージャを設けてもよい。すなわち、障害物判定スイッチは、設計情報における障害物のオンオフを切り替える。
(1)オフの状態では、可視点判定部115で判定される結果は、傾きtanγによる。
(2)オンの状態では、可視点判定部115で判定される結果は、傾きtanγと、個別障害物による傾きtanθを比較して、不利な方が設定され、判定される。
【0128】
この「障害物判定スイッチ」をオンとすると、手摺による障害が加味されるので、オフの状態より判定結果が悪くなる場合は、全体の断面ではなく、部分的なディテールに課題があると、設計者による判定が容易になる。
【0129】
また、設計内容を精査・修正(ブラッシュアップ)していくと、「障害物判定スイッチ」のオン、オフで結果が変わらなくなる。設計者はこれを目標とすることで、劇場の設計を進めることができる。なお、「障害物判定スイッチ」をオンとして、結果が悪化する場合の原因を探るには、「障害物情報DB124」を参照すればよく、あるいは図面情報に戻り、断面図を当たってもよい。
【0130】
当該機能は、断面図、CGでも見逃しがちな検証を可能とする。CG上、図形を設定する位置を間違えると、結果が変わってしまい、見逃すと設計瑕疵を招く原因になる。このような観点から、ヒューマンエラーの予防として数値検証が重要であると考えられる。
【0131】
図20は、他の実施形態に係る観覧施設評価装置100の処理の一例を示すフローチャートである。なお、図16に示す第2の実施形態に係る観覧施設評価装置100bの処理と同一の処理については、説明を省略する。
【0132】
ステップS2001~ステップS2004の処理は、図16に示すステップS1601~ステップS1604の処理と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0133】
ステップS2005において、制御部110は、ユーザの入力によって障害物スイッチがオンにされたか否かを判定する。ステップS2005において、制御部110は、障害物スイッチがオンであると判定した場合には、処理はステップS2006に進む。一方で、ステップS2005において、制御部110は、障害物スイッチがオフであると判定した場合には、処理はステップS2007に進む。
【0134】
ステップS2006において、可視点算出部114は、接線サイトラインの傾きtanγと、個別障害物による障害物サイトラインの傾きtanθを比較する。また、可視点算出部114は、傾きが小さい方のサイトラインと、舞台上の特定の垂直な平面である注視平面と、が交わる点である可視点を算出する。その後、処理は、ステップS2008に進む。
【0135】
ステップS2007において、接線サイトラインと、舞台上の特定の垂直な平面である注視平面と、が交わる点である可視点を算出する。その後、処理はステップS2008に進む。
【0136】
ステップS2008~ステップS2010の処理は、図16に示すステップS1606~ステップS1608の処理と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0137】
上述の通り、他の実施形態に係る観覧施設評価装置100は、設計情報における障害物のオンオフを切り替える障害物判定スイッチをさらに備える。この構成により、観覧施設評価装置100dのユーザは、障害物のオンオフを容易に実施することが可能となる。これにより、観覧施設評価装置100dのユーザは、設計内容の精査、修正を効率よく実施することが可能となる。
【0138】
また、表示部116は、一観客の視点から、舞台先端(基本的に中央)、又はプレイの中心領域への距離を表示した場合、それを色のグラデーションで表し、あらかじめ作成したカラーチャートによるバースケールと比較することにより視認性を高めてもよい。例えばカラーチャート、及びバースケールは図10A及び図10Bに示すようなものであってもよい。これにより、観覧施設評価装置100は、設計者でなくてもビジュアルとして評価結果を認識することが可能となる。
【0139】
観覧施設評価装置100における処理(観覧施設評価方法)をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム(観覧施設評価プログラム)、及びそのプログラムを記録したコンピュータで読み取り可能な記録媒体は、本実施形態の範囲に含まれる。ここで、コンピュータで読み取り可能な記録媒体の種類は任意である。また、上記コンピュータプログラムは、上記の記録媒体に記録されたものに限られず、電気通信回線、無線又は有線通信回線、インターネットを代表とするネットワーク等を経由して伝送されるものであってもよい。
【0140】
(付記)
以上の実施の形態の記載により、下記の技術が開示される。
【0141】
(技術1)舞台と客席とを備える観覧施設に関する設計情報に基づいて、前記観覧施設に対応した空間座標を設定する空間座標設定部と、
前記空間座標における前記観覧施設に関する施設情報が入力される施設情報入力部と、
前記客席に着座した観客の視点と、前記観客が着座する前記客席より前方方向に位置し、前記空間座標に対応させた前方空間座標で示される点と、を通る直線であって、前記観客の視線である接線サイトラインを、前記施設情報に基づいて算出する接線情報算出部と、
前記接線サイトラインと、前記舞台上の特定の垂直な平面である注視平面と、が交わる点である可視点を算出する可視点算出部と、
前記可視点の前記空間座標と所定の評価基準とを比較し、前記舞台の観やすさを判定する可視点判定部と、
前記可視点判定部で判定された判定結果を表示する表示部と、を備え、
前記前方空間座標は、前記客席より前方に位置する前記客席に着座した前方観客の人体形状モデルの頭蓋に対応させた半円形形状と、前記接線サイトラインとの接点の座標である、観覧施設評価装置。
【0142】
この構成により、観覧施設評価装置100で用いられる前方空間座標は、客席より前方に位置する客席に着座した前方観客の人体形状モデルの頭蓋に対応させた半円形形状と、接線サイトラインとの接点の座標である。これにより、観覧施設評価装置100は、観客席から舞台上の可視点に対するサイトラインをより正確に算出し、舞台の観やすさをより正確に評価することが可能となる。
【0143】
(技術2)前記観覧施設に設けられた障害物の形状のうち、前記接線サイトラインより上部に位置する可能性がある前記障害物のエッジの座標を、前記設計情報に基づいて設定する個別障害物設定部と、
全ての列における前記観客の視点に対して、前記障害物に対応する障害物俯角を算出し、前記障害物俯角が前記接線サイトラインの俯角より小さい場合に、前記障害物により前記舞台の観やすさが良好でないと判定する個別障害物判定部と、
をさらに備える技術1に記載の観覧施設評価装置。
【0144】
この構成により、観覧施設評価装置100bは、障害物に対応する障害物俯角を算出し、障害物俯角が接線サイトラインの俯角より小さい場合に、障害物により舞台の観やすさが良好でないと判定する。これにより、観覧施設評価装置100bは、前列の観客だけでなく障害物を考慮に入れた舞台の観やすさの評価が可能になる。
【0145】
(技術3)前記舞台の舞台床面と、前記観客の視点との高さを判定する高舞台判定部をさらに備え、
前記可視点判定部は、前記高舞台判定部において前記舞台床面が前記観客の視点より高いと判定された場合には、前記舞台の先端である舞台端と、前記観客の視点とを結ぶ直線よりも下方にある前記舞台上の空間は観えないと判定する、技術1又は2に記載の観覧施設評価装置。
【0146】
この構成により、観覧施設評価装置100cは、高舞台判定部118において、舞台の舞台床面と、観客の視点の高さとを判定する。また、観覧施設評価装置100cは、舞台床面が観客の視点より高いと判定された場合には、可視点判定部115において、舞台の先端である舞台端と、観客の視点とを結ぶ直線よりも下方にある舞台上の空間は観えないと判定する。これにより、観覧施設評価装置100cは、観客の視点より舞台床面が高い場合の可視範囲の検証をより正確に実施することが可能となる。
【0147】
(技術4)前記観客が前記客席の最前列に着座する場合に、前記視点から下方向に45度より下方の範囲を除外した範囲を可視範囲として定める傾き判定部をさらに備え、
前記可視点判定部は、前記観客が前記客席の最前列に着座する場合に、前記傾き判定部において定められた前記可視範囲において前記舞台の観やすさを判定する、技術1から3のいずれか一つに記載の観覧施設評価装置。
【0148】
この構成により、観覧施設評価装置100dは、観客が客席の最前列に着座する場合においても、舞台の観やすさをより正確に判定することが可能となる。
【0149】
(技術5)前記設計情報における前記障害物のオンオフを切り替える障害物判定スイッチをさらに備える、技術2に記載の観覧施設評価装置。
【0150】
この構成により、観覧施設評価装置100dのユーザは、障害物のオンオフを容易に実施することが可能となる。これにより、観覧施設評価装置100dのユーザは、設計内容の精査、修正を効率よく実施することが可能となる。
【0151】
(技術6)前記表示部は、前記視点から前記舞台の先端、又はプレイの中心領域への距離を表示する場合に、前記距離に対応した色のグラデーションで表示する、技術1から5のいずれか一つに記載の観覧施設評価装置。
【0152】
この構成により、観覧施設評価装置100の表示部116は、一観客の視点から、舞台先端への距離を表示した場合、それを色のグラデーションで表し、あらかじめ作成したカラーチャートによるバースケールと比較することにより視認性を高めることができる。これにより、観覧施設評価装置100は、設計者でなくてもビジュアルとして評価結果を認識することが可能となる。
【0153】
(技術7)コンピュータによって実行される観覧施設評価方法であって、
舞台と客席とを備える観覧施設に関する設計情報に基づいて、前記観覧施設に対応した空間座標を設定し、
前記空間座標における前記観覧施設に関する施設情報が入力され、
前記客席に着座した観客の視点と、前記観客が着座する前記客席より前方方向に位置し、前記空間座標に対応させた前方空間座標で示される点と、を通る直線であって、前記観客の視線である接線サイトラインを、前記施設情報に基づいて算出し、
前記接線サイトラインと、前記舞台上の特定の垂直な平面である注視平面と、が交わる点である可視点を算出し、
前記可視点の前記空間座標と所定の評価基準とを比較し、前記舞台の観やすさを判定し、
判定された判定結果を表示し、
前記前方空間座標は、前記客席より前方に位置する前記客席に着座した前方観客の人体形状モデルの頭蓋に対応させた半円形形状と、前記接線サイトラインとの接点の座標である、観覧施設評価方法。
【0154】
この構成により、観覧施設評価方法で用いられる前方空間座標は、客席より前方に位置する客席に着座した前方観客の人体形状モデルの頭蓋に対応させた半円形形状と、接線サイトラインとの接点の座標である。これにより、観覧施設評価方法は、観客席から舞台上の可視点に対するサイトラインをより正確に算出し、舞台の観やすさをより正確に評価することが可能となる。
【0155】
(技術8)舞台と客席とを備える観覧施設に関する設計情報に基づいて、前記観覧施設に対応した空間座標を設定し、
前記空間座標における前記観覧施設に関する施設情報が入力され、
前記客席に着座した観客の視点と、前記観客が着座する前記客席より前方方向に位置し、前記空間座標に対応させた前方空間座標で示される点と、を通る直線であって、前記観客の視線である接線サイトラインを、前記施設情報に基づいて算出し、
前記接線サイトラインと、前記舞台上の特定の垂直な平面である注視平面と、が交わる点である可視点を算出し、
前記可視点の前記空間座標と所定の評価基準とを比較し、前記舞台の観やすさを判定し、
判定された判定結果を表示する処理をコンピュータに実行させ、
前記前方空間座標は、前記客席より前方に位置する前記客席に着座した前方観客の人体形状モデルの頭蓋に対応させた半円形形状と、前記接線サイトラインとの接点の座標である、観覧施設評価プログラム。
【0156】
この構成により、観覧施設評価プログラムで用いられる前方空間座標は、客席より前方に位置する客席に着座した前方観客の人体形状モデルの頭蓋に対応させた半円形形状と、接線サイトラインとの接点の座標である。これにより、観覧施設評価プログラムは、観客席から舞台上の可視点に対するサイトラインをより正確に算出し、舞台の観やすさをより正確に評価することが可能となる。
【0157】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0158】
100、100a、100b、100c、100d 観覧施設評価装置
110 制御部
111 空間座標設定部
112 施設情報入力部
113 接線情報算出部
114 可視点算出部
115 可視点判定部
116 表示部
117a 個別障害物設定部
117b 個別障害物判定部
118 高舞台判定部
119 傾き判定部
120 記憶部
121 空間情報DB
122 施設情報DB
123 接線情報DB
124 障害物情報DB
130 入出力IF
140 通信IF
【要約】
【課題】観客席から舞台上の注視点に対するサイトラインをより正確に算出し、舞台の観やすさをより正確に評価することが可能な観覧施設評価装置を提供する。
【解決手段】観覧施設評価装置100は、施設情報に基づいて接線サイトラインを算出する接線情報算出部113を備える。接線サイトラインは、客席に着座した観客の視点と、観客が着座する客席より前方方向に位置し、空間座標に対応させた前方空間座標で示される点と、を通る直線であって、観客の視線である。また、観覧施設評価装置100は、接線サイトラインと、注視平面と、が交わる点である可視点を算出する可視点算出部114と、可視点の空間座標と所定の評価基準とを比較し、舞台の観やすさを判定する可視点判定部115と、を備える。前方空間座標は、客席より前方に位置する客席に着座した前方観客の人体形状モデルの頭蓋に対応させた半円形形状と、接線サイトラインとの接点の座標である。
【選択図】図2
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20