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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-10-02
(45)【発行日】2025-10-10
(54)【発明の名称】静止観測システム
(51)【国際特許分類】
   B64G 1/10 20060101AFI20251003BHJP
   B64G 3/00 20060101ALI20251003BHJP
【FI】
B64G1/10 328
B64G3/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2024034189
(22)【出願日】2024-03-06
(62)【分割の表示】P 2021073797の分割
【原出願日】2021-04-26
(65)【公開番号】P2024053029
(43)【公開日】2024-04-12
【審査請求日】2024-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002491
【氏名又は名称】弁理士法人クロスボーダー特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】迎 久幸
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特許第6066940(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 1/10
B64G 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止軌道に投入されて観測地域の上空を飛翔する観測衛星と、
前記観測衛星に備えられ前記観測地域の中の各観測領域に対して可視光観測を行う光学観測装置と、
前記観測地域における東端の島と西端の島と南端の島と北端の島との少なくともいずれかのランドマークの位置を示す位置データベースと、
前記観測地域の上空における前記観測衛星の位置から前記ランドマークの位置への方位角を示す方位角データベースと、
前記光学観測装置によって撮像された撮像物の位置を、前記ランドマークの方位角と撮像時における前記光学観測装置の視線ベクトルの方位角の差分と、前記ランドマークの位置と、に基づいて算出する位置計測装置と、
を備える静止観測システム。
【請求項2】
観測対象の位置と前記ランドマークの位置と前記ランドマークの方位角とに基づいて、前記光学観測装置の視線ベクトルを前記観測対象の位置に向ける衛星制御装置を備える
請求項1に記載の静止観測システム。
【請求項3】
前記ランドマークの方位角を日変動のトレンドと季節変動のトレンドとの少なくともいずれかに応じて補正し、補正後の方位角に基づいて、位置座標が未知である対象の位置座標を計測する際の方位角を補正する衛星制御装置を備える
請求項1に記載の静止観測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、静止軌道からの観測に関するものである。
【背景技術】
【0002】
静止軌道から光学観測装置によって常時観測を行う静止観測システムが研究されている。
開発技術の向上により、衛星搭載用の光学観測装置が軌道高度約36000キロメートルの静止軌道から数メートルの分解能で100キロメートル程度の観測幅を撮像できるようになることが期待されている。
2次元可視検出器を具備する光学観測装置は、1シーンの撮像をした後に視線ベクトルを隣接領域に向けて撮像することを繰り返す。これにより、広域観測データを取得することができる。
光学観測装置の分解能が高いことはメリットである。しかし、撮像すべきシーン数が多いため、広域観測データを取得するのに時間がかかる。
【0003】
視線ベクトルの移動手段として、光学観測装置が視野変更装置を具備する手段と、観測衛星本体の姿勢を移動する手段がある。
高分解能な光学観測装置は有効開口径が大きく、視野変更装置も大型化する。そのため、観測衛星本体の姿勢を移動する手段が合理的である。
観測衛星本体の姿勢を移動することによって視線ベクトルを移動する場合、観測衛星が具備するモーメンタムホイールなどのアクチュエータを駆動して観測衛星の姿勢を移動し、観測衛星の姿勢の変動を制動制御によって静止する。そして、その後に撮像が行われる。そのため、視線ベクトルの移動に時間を要する。
【0004】
特許文献1は、複数の観測衛星群を用いて観測目標地域を観測するためのシステムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-126876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、静止軌道の観測衛星から光学観測を行う際に視線ベクトルの方位角の精度を向上できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の静止観測システムは、
静止軌道に投入されて観測地域の上空を飛翔する観測衛星と、
前記観測衛星に備えられ前記観測地域の中の各観測領域に対して可視光観測を行う光学観測装置と、
前記観測地域における東端の島と西端の島と南端の島と北端の島との少なくともいずれかのランドマークの位置を示す位置データベースと、
前記観測地域の上空における前記観測衛星の位置から前記ランドマークの位置への方位角を示す方位角データベースと、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、静止軌道の観測衛星から光学観測を行う際に視線ベクトルの方位角の精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1における観測衛星100の構成図。
図2】実施の形態1における観測領域全体111を示す図。
図3】実施の形態1における最東端観測領域112および西側隣接領域113を示す図。
図4】実施の形態1における観測地域110を示す図。
図5】実施の形態2における最東端観測領域112および西側隣接領域113を示す図。
図6】実施の形態3における静止観測システム200の構成図。
図7】実施の形態3における観測衛星100の構成図。
図8】実施の形態3における観測地域110を示す図。
図9】実施の形態3における観測地域110の各島の位置を示す表。
図10】実施の形態4における静止観測システム200の構成図。
図11】実施の形態5における静止観測システム200の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態および図面において、同じ要素または対応する要素には同じ符号を付している。説明した要素と同じ符号が付された要素の説明は適宜に省略または簡略化する。
【0011】
実施の形態1.
人工衛星から広域を撮像するための形態について、図1から図4に基づいて説明する。
【0012】
***構成の説明***
図1に基づいて、観測衛星100の構成を説明する。
観測衛星100は、静止軌道に投入される人工衛星(静止衛星)であり、静止軌道において観測地域110の上空を飛翔する。観測衛星100の具体例は気象衛星である。
【0013】
観測衛星100は、光学観測装置101を備える。「観測」は「撮像」に相当する。
光学観測装置101は、観測地域110の中の各観測領域に対して可視光観測を行う。可視光観測では、可視光を検出することによって撮像が行われる。
光学観測装置101は、可視検出器を備える。可視検出器は並べられた複数の可視検出素子を備える。可視検出器は可視検出センサともいう。
具体的には、光学観測装置101は、2次元可視検出器を備える。2次元可視検出器は、2次元に配列された複数の可視検出素子を備える。
光学観測装置101を用いた可視光観測により、観測データが得られる。観測データは、観測領域が映った画像のデータに相当する。
【0014】
観測衛星100は、光学観測装置101の視線ベクトルの方向を変えるための機能を有する。
例えば、観測衛星100は視野変更装置を備える。視野変更装置は、光学観測装置101の視野方向を変える。視野方向は視線ベクトルの方向に相当する。視野変更装置の具体例は駆動ミラーである。
例えば、観測衛星100は姿勢制御装置を備える。姿勢制御装置は、観測衛星100の姿勢を制御する。観測衛星100の姿勢を変えることにより、光学観測装置101の視線ベクトルの方向を変えることができる。具体的な姿勢制御装置はリアクションホイールである。
【0015】
観測衛星100は、光学観測装置101を使って、静止軌道から観測地域110の中の観測領域全体111を撮像する。
観測地域110の具体例は、日本の国土および領海などである。
観測領域全体111は、複数の観測領域から成る広域の観測範囲である。
観測地域110および観測領域全体111には、陸地(地表面)と海洋(海水面)が含まれる。
【0016】
***動作の説明***
広域撮像方法を説明する。広域撮像方法は、観測領域全体111を撮像するための方法であり、観測衛星100の動作の手順に相当する。
まず、観測衛星100が光学観測装置101の視線ベクトルを観測領域全体111の東端の列における南北の一端に向ける。具体的には、光学観測装置101の視線ベクトルは観測領域全体111の東端の列における北端に向けられる。但し、光学観測装置101の視線ベクトルが観測領域全体111の東端の列における南端に向けられてもよい。
その後、観測衛星100が光学観測装置101の視線ベクトルの移動を南北における順方向に繰り返すと共にし、光学観測装置101が撮像を繰り返す。具体的には、順方向は北から南への方向である。但し、順方向が南から北への方向であっても構わない。この動作を「順方向撮像」と称する。
順方向撮像の後に、観測衛星100が光学観測装置101の視線ベクトルを西側に移動する。この動作を「西側視線移動」と称する。
西側視線移動の後に、観測衛星100が光学観測装置101の視線ベクトルの移動を南北における逆方向に繰り返すと共に、光学観測装置101が撮像を繰り返す。この動作を「逆方向撮像」と称する。
逆方向撮像の後に、観測衛星100が西側視線移動を行う。
そして、観測衛星100および光学観測装置101は、順方向撮像と、順方向撮像の後の西側視線移動と、逆方向撮像と、逆方向撮像の後の西側視線移動と、を観測領域全体111が東端から西端まで撮影されるまで繰り返す。これにより、観測領域全体111が撮像される。
【0017】
図2および図3に基づいて、広域撮像方法を具体的に説明する。
【0018】
図2において、1つ1つのマスは光学観測装置101の視野範囲すなわち1回当たりの撮像範囲を表している。
観測領域全体111は、太枠のマスの集合である。
観測領域全体111のうち、東端の一列を最東端観測領域112と称する。
観測領域全体111のうち、最東端観測領域112の西側に隣接する一列を西側隣接領域113と称する。
観測領域全体111のうち、西端の一列を最西端観測領域114と称する。
【0019】
図3に、最東端観測領域112と西側隣接領域113を示す。
観測衛星100は、光学観測装置101の視野範囲が最東端観測領域112の最北端から最南端に移動するまで、光学観測装置101の視線ベクトルの変更を繰り返す。つまり、観測衛星100は光学観測装置101の視線ベクトルを緯度方向(南方向)に移動する。この間、光学観測装置101は撮像を繰り返す。
その後、観測衛星100は、光学観測装置101の視野範囲を最東端観測領域112の最南端から西側に隣接する観測領域(西側隣接領域113)の最南端に移動する。つまり、観測衛星100は、光学観測装置101の視線ベクトルを経度方向(西側)に移動する。
その後、観測衛星100は、光学観測装置101の視野範囲が西側に隣接する観測領域の最南端から最北端に移動するまで、光学観測装置101の視線ベクトルの変更を繰り返す。つまり、観測衛星100は、光学観測装置101の視線ベクトルを緯度方向(北方向)に移動する。この間、光学観測装置101は撮像を繰り返す。
その後、観測衛星100は、光学観測装置101の視野範囲を西側に隣接する観測領域の最北端から更に西側に隣接する観測領域の最北端に移動する。つまり、観測衛星100は、光学観測装置101の視線ベクトルを経度方向(西側)に移動する。
観測衛星100および光学観測装置101は、緯度方向における撮像および視線ベクトルの移動と、西側に隣接する観測領域への視線ベクトルの移動と、を光学観測装置101の視野範囲が観測領域全体111の最西端に移動するまで繰り返す。
【0020】
***実施の形態1の補足***
図4に基づいて、実施の形態1を補足する。
移動前後において視線ベクトルの方位角の相違が大きいほど、視線ベクトルの移動に時間を要する。そのため、視線ベクトルの移動量が極力少ない広域撮像方法を選択することが合理的である。
また、広域観測データを取得する間に太陽の高度が変化することに着目すると、日照条件が好適な観測領域から順番に観測することが合理的である。
【0021】
例えば、光学観測装置101の2次元可視検出器が静止軌道から100km×100kmの範囲を撮像することができると仮定する。また、光学観測装置101が日本及び周辺海洋の広域観測データを取得すると仮定する。
日本の国土は約38万キロ平方メートルであり、領海は約43万キロ平方メートルであり、接続水域は約32万キロ平方メートルであり、排他的経済水域(延長大陸棚を含む)は約405万キロ平方メートルである。それらの合計は約518万キロ平方メートルである。
1画像の範囲は1万キロ平方メートル(=100km×100km)であるため、単純計算で約500回の撮像が必要となる。
静止軌道から北緯35度近傍を観測する場合、視線ベクトルの斜視効果によって撮像数の減少が見込める。とはいえ、全ての領域を撮像するだけで、日単位オーダーの時間が必要になる。
【0022】
撮像と視線ベクトルの変更に対して1回当たりに平均1分間かかると仮定すると、500回の撮像に500分かかることとなる。つまり、約8.3時間が必要となる。
2次元可視検出器が日照領域を観測する場合、午前8時から午後4時までかけても、時間が不足する。また、午前8時より早い時間帯と午後4時より遅い時間帯は、太陽の高度が低いため地表面が暗く、可視光による観測には適さない。
【0023】
地球は1時間に経度方向に15度自転する。つまり、地球は8時間に経度方向に120度自転する。このため、正午に太陽光が天頂から射す緯度が、東から西へ120度移動することになる。
日本には最東端から最西端までの経度差が約30度ある。この経度差は経度方向での太陽の2時間の移動に相当する。
したがって、正午前の4時間と正午後の4時間の合計約8時間をかけて東から西への撮像を行うと、最東端における太陽の高度は午前9時相当となり、最西端における太陽の高度は午後3時相当となる。そのため、撮像と視線ベクトルの変更に要する時間に対して約2時間の余裕が生まれる。
逆に、正午前後の合計約8時間をかけて西から東への撮像を行うと、最西端における太陽の高度は午前7時相当となり、最東端における太陽の高度は午後5時相当となる。そのため、暗い条件で可視観測が行われることとなる。
【0024】
***実施の形態1の効果***
従来の気象衛星は、2次元赤外検出器による光学観測装置を備える。
そして、従来の気象衛星は、観測領域全体の最北端から東西方向において撮像と視線ベクトルの変更とを繰り返し、その後に南側に隣接する観測領域に対して東西方向において撮像と視線ベクトルの変更を繰り返し、これを観測領域全体の最南端まで繰り返す。
従来の気象衛星は赤外線の検出によって昼夜を問わず観測データを取得するため、このような広域撮像方法が合理的である。
一方、観測衛星100は、2次元可視検出器による光学観測装置101を備える。地表面では日照領域が時間経過と共に東から西に移動するので、観測衛星100は東から西に順番に撮像を行う。そのため、1日において地表面を撮像できる時間が長い。その結果、より広域の観測データを取得することができる。また、監視対象に対する太陽光の入射角の変化が少ない状態で、広域の観測データを取得することができる。
また、観測衛星100は、光学観測装置101の視線ベクトルの移動を隣接領域までに限定する。そのため、視線ベクトルの方位角の変動が少なくなる。その結果、観測時間が短縮される。
【0025】
実施の形態2.
1次元可視検出器が使用される形態について、主に実施の形態1と異なる点を図5に基づいて説明する。
【0026】
***構成の説明***
観測衛星100は、実施の形態1と同じく、光学観測装置101を備える。
但し、光学観測装置101の可視検出器は、1次元可視検出器である。1次元可視検出器は、1次元に配列された複数の可視検出素子を備える。
【0027】
***動作の説明***
広域撮像方法を説明する。
まず、観測衛星100が光学観測装置101の視線ベクトルを観測領域全体111の東端の列における南北の一端に向ける。具体的には、光学観測装置101の視線ベクトルは観測領域全体111の東端の列における北端に向けられる。但し、光学観測装置101の視線ベクトルが観測領域全体111の東端の列における南端に向けられてもよい。
その後、観測衛星100が光学観測装置101の視線ベクトルを南北における順方向に移動しながら、光学観測装置101が撮像を行う。具体的には、順方向は北から南への方向である。但し、順方向が南から北への方向であっても構わない。この動作を「順方向撮像」と称する。
順方向撮像の後に、観測衛星100が光学観測装置101の視線ベクトルを西側に動かす。この動作を「西側視線移動」と称する。
西側視線移動の後に、観測衛星100が光学観測装置101の視線ベクトルを南北における逆方向に移動しながら、光学観測装置101が撮像を行う。この動作を「逆方向撮像」と称する。
逆方向撮像の後に、観測衛星100が西側視線移動を行う。
そして、観測衛星100および光学観測装置101は、順方向撮像と、順方向撮像の後の西側視線移動と、逆方向撮像と、逆方向撮像の後の西側視線移動と、を観測領域全体111が東端から西端まで撮影されるまで繰り返す。これにより、観測領域全体111が撮像される。
【0028】
図5に基づいて、広域撮像方法を具体的に説明する。光学観測装置101の一次元可視検出器は、横一列に並んだ16個の可視検出素子を備える。
観測衛星100は、光学観測装置101の視野範囲が最東端観測領域112の最北端から最南端に移動するまで、光学観測装置101の視線ベクトルの変更を続ける。つまり、観測衛星100は光学観測装置101の視線ベクトルを緯度方向(南方向)に移動する。この間、光学観測装置101は撮像を続ける。
その後、観測衛星100は、光学観測装置101の視野範囲を最東端観測領域112の最南端から西側に隣接する観測領域(西側隣接領域113)の最南端に移動する。つまり、観測衛星100は、光学観測装置101の視線ベクトルを経度方向(西側)に移動する。
その後、観測衛星100は、光学観測装置101の視野範囲が西側に隣接する観測領域の最南端から最北端に移動するまで、光学観測装置101の視線ベクトルの変更を続ける。つまり、観測衛星100は、光学観測装置101の視線ベクトルを緯度方向(北方向)に移動する。この間、光学観測装置101は撮像を続ける。
その後、観測衛星100は、光学観測装置101の視野範囲を西側に隣接する観測領域の最北端から更に西側に隣接する観測領域の最北端に移動する。つまり、観測衛星100は、光学観測装置101の視線ベクトルを経度方向(西側)に移動する。
観測衛星100および光学観測装置101は、緯度方向における撮像および視線ベクトルの移動と、西側に隣接する観測領域への視線ベクトルの移動と、を光学観測装置101の視野範囲が観測領域全体111の最西端に移動するまで繰り返す。
【0029】
***実施の形態2の効果***
1次元可視検出器が画素列に対する直交方向に移動しながら撮像することによって2次元画像の観測データが得られる。この方法はプッシュブルーム撮像と呼ばれる。
1次元可視検出器を使用することにより、観測衛星100の方位角をほぼ等速度で変化しながら観測領域の撮像を行うことできる。そのため、実施の形態2は、2次元可視検出器が使用される実施の形態1と比較して、視線ベクトルの移動を制動によって静止させるまでの時間を短縮できる。
実施の形態2は、実施の形態1と同様に、東から西に順番に撮像することによって時間の変化に伴う日照領域の効果が得られる。
【0030】
実施の形態3.
光学観測装置101について視線ベクトルの方位角の精度を向上させる形態について、主に実施の形態1および実施の形態2と異なる点を図6から図9に基づいて説明する。
【0031】
***構成の説明***
図6に基づいて、静止観測システム200の構成を説明する。
静止観測システム200は、観測衛星100と、地上システム210と、を備える。
【0032】
図7に基づいて、観測衛星100の構成を説明する。
観測衛星100は、光学観測装置101と、姿勢制御装置102と、推進装置103と、衛星制御装置104と、通信装置105と、電源装置106と、を備える。
【0033】
光学観測装置101は、実施の形態1で説明した通りである。
【0034】
姿勢制御装置102は、観測衛星100の姿勢と観測衛星100の角速度といった姿勢要素を制御するための装置である。
姿勢制御装置102は、各姿勢要素を所望の方向に変化させる。もしくは、姿勢制御装置102は、各姿勢要素を所望の方向に維持する。姿勢制御装置102は、姿勢センサとアクチュエータとコントローラとを備える。姿勢センサは、ジャイロスコープ、地球センサ、太陽センサ、スター・トラッカ、スラスタおよび磁気センサなどである。アクチュエータは、姿勢制御スラスタ、モーメンタムホイール、リアクションホイールおよびコントロール・モーメント・ジャイロ等である。コントローラは、姿勢センサの計測データまたは地上システム210からの各種コマンドにしたがって、アクチュエータを制御する。
姿勢制御装置102は、光学観測装置101の視線ベクトルの方位角を変更するために使用することができる。
【0035】
推進装置103は、観測衛星100に推進力を与える装置であり、観測衛星100の速度を変化させる。具体的には、推進装置103は電気推進機である。例えば、推進装置103は、イオンエンジンまたはホールスラスタである。
【0036】
衛星制御装置104は、観測衛星100の各装置を制御するコンピュータであり、処理回路を備える。例えば、衛星制御装置104は、地上システム210から送信される各種コマンドにしたがって、各装置を制御する。
【0037】
通信装置105は、地上システム210と通信するための通信装置である。例えば、通信装置105は、地上システム210から各種コマンドを受信する。また、通信装置105は、光学観測装置101によって得られる観測データを地上システム210に送信する。
【0038】
電源装置106は、太陽電池、バッテリおよび電力制御装置などを備え、観測衛星100の各装置に電力を供給する。
【0039】
図6に戻り、地上システム210の構成を説明する。
地上システム210は、通信装置211と、衛星管制装置212と、位置データベース213と、方位角データベース214と、を備える。
【0040】
通信装置211は、観測衛星100と通信を行う。具体的には、通信装置211は、各種コマンドを観測衛星100へ送信する。また、通信装置211は、観測衛星100から送信される観測データを受信する。
【0041】
衛星管制装置212は、処理回路および入出力インタフェースなどのハードウェアを備えるコンピュータである
衛星管制装置212は、観測衛星100を制御するために各種コマンドを生成する。また、衛星管制装置212は、観測衛星100から得られる観測データを解析する。
各種コマンドの生成および観測データの解析において、位置データベース213および方位角データベース214が利用される。
【0042】
位置データベース213は、観測地域110における東端の島と西端の島と南端の島と北端の島との少なくともいずれかのランドマークの位置を示す。
【0043】
方位角データベース214は、ランドマークの(絶対)方位角を示す。
【0044】
衛星管制装置212と衛星制御装置104とのそれぞれに備わる処理回路について説明する。
処理回路は、専用のハードウェアであってもよいし、メモリに格納されるプログラムを実行するプロセッサであってもよい。
処理回路において、一部の機能が専用のハードウェアで実現されて、残りの機能がソフトウェアまたはファームウェアで実現されてもよい。つまり、処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアまたはこれらの組み合わせで実現することができる。
専用のハードウェアは、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGAまたはこれらの組み合わせである。
ASICは、Application Specific Integrated Circuitの略称である。
FPGAは、Field Programmable Gate Arrayの略称である。
【0045】
図8および図9に基づいて、位置データベース213および方位角データベース214の具体例を説明する。
図8は観測地域110を示している。観測地域110は日本の国土および領海などである。最東端の島は南鳥島であり、最西端の島は与那国島であり、最南端の島は沖ノ鳥島であり、最北端の島は択捉島である。
図9は、南鳥島と与那国島と沖ノ鳥島と択捉島とのそれぞれの位置を示している。位置(座標値)は、経度および緯度で表される。
位置データベース213は、南鳥島と与那国島と沖ノ鳥島と択捉島とのそれぞれのランドマークの位置を示す。例えば、地物、人工物または沿岸形状などがランドマークとなる。
方位角データベース214は、最東端と最西端と最南端と最北端とのそれぞれの島のランドマークに対する光学観測装置101の視線ベクトルの方位角を示す。方位角はアジマス角度およびエレベーション角度で表される。
【0046】
***動作の説明***
視線ベクトルの調整方法を説明する。
まず、衛星管制装置212は、ランドマークの相対位置を示すコマンドを生成し、通信装置211を介してコマンドを観測衛星100へ送信する。衛星制御装置104は、通信装置105を介してコマンドを受信する。
次に、衛星制御装置104は、ランドマークの相対位置に基づいて、光学観測装置101の視線ベクトルをランドマークに向ける。
次に、光学観測装置101は、ランドマークを撮像して観測データを生成する。
次に、衛星制御装置104は、通信装置105を介して観測データを地上システム210へ送信する。衛星管制装置212は、通信装置211を介して観測データを受信する。
【0047】
次に、衛星管制装置212は、観測データを解析することによって、ランドマークの位置を算出する。算出される位置を計測位置と称する。
具体的には、衛星管制装置212は、可視光観測で得られた観測データを画像化し、画像に映っているランドマークの画像内の計測位置を算出する。ランドマークの位置座標は既知である。位置座標は座標値を意味する。このとき、衛星管制装置212は、観測衛星100の姿勢制御に関連するテレメトリ情報から、観測データから得られる画像について画像の上下左右の端部の画素に対応する地点が撮像された瞬間の視線ベクトルの方位角を抽出する。抽出される視線ベクトルの方位角が、上下左右の端部の画素に対応する地点の計測位置として扱われる。さらに、衛星管制装置212は、画像にランドマークが映るように撮像が行われるまでに変更された視線ベクトルの方位角の差分を解析する。これにより、衛星管制装置212は、ランドマークが撮像された瞬間の視線ベクトルの方位角が算出される。
【0048】
次に、衛星管制装置212は、ランドマークの計測位置と位置データベース213に示されるランドマークの位置の差分に基づいて、光学観測装置101の視線ベクトルの誤差を算出する。算出される誤差を調整量と称する。
位置データベース213には、ランドマークを撮像するための視線ベクトルの方位角が予め示されている。そのため、視線ベクトルの誤差がなければ、ランドマークを中心に撮像して得られる画像ではランドマークが画像の中心に映っているはずである。しかるに、ランドマークが画像の中心から離れた位置に映っていれば、それは方位角の誤差に起因するものと判断される。したがって、衛星管制装置212は、計測位置と位置データベース213に示されるランドマークの位置の差分を画像におけるランドマークの位置の差分として評価し、位置の差分を方位角の差分に換算することによって方位角の誤差を調整量として算出する。
【0049】
次に、衛星管制装置212は、調整量を示すコマンドを生成し、通信装置211を介してコマンドを観測衛星100へ送信する。衛星制御装置104は、通信装置105を介してコマンドを受信する。
【0050】
そして、衛星制御装置104は、調整量に応じて、光学観測装置101の視線ベクトルの方位角を調整する。
調整によって視線ベクトルの方位角の誤差が解消されるので、視線ベクトルの方位角の精度が向上する。その結果、ランドマーク以外の任意の撮像対象を撮像したときの計測位置の精度が向上する。
【0051】
光学観測装置について視線ベクトルの方位角の精度を「指向方向決定精度」と称する。
指向方向決定精度は、静止衛星に具備される姿勢センサの精度が誤差要因となって劣化する。また、指向方向決定精度は、静止軌道における温度変化に伴う静止衛星(及び光学観測装置)の熱変形などが誤差要因となって劣化する。
指向方向決定精度は、地表面を観測する場合に既知のランドマークの座標値を基準にして誤差要因を排除することにより、向上することができる。
しかるに、海洋上で船舶等の移動体を観測する場合に視線ベクトルの方位角に誤差があると、移動体を追跡しようとしても移動体を見失うリスクがある。
そこで、海洋監視において既知のランドマークの座標値をデータベースに記録する。例えば、最東端の南鳥島、最西端の与那国島、最南端の沖ノ鳥島および最北端の択捉島のそれぞれの地物、人工物または沿岸形状などがランドマークとなる。これらのランドマークは、撮像によって得られる観測データの中で目印となる。
さらに、海洋監視において観測衛星100に対する既知のランドマークの方位角をデータベースに記録する。方位角はアジマス角度とエレベーション角度で表される。
【0052】
***実施の形態3の効果***
実施の形態3により、光学観測装置101について視線ベクトルの方位角の精度を向上させることが可能となる。
【0053】
***実施の形態3の補足***
観測衛星100が、位置データベース213および方位角データベース214を備えてもよい。
衛星制御装置104が、ランドマークの計測位置および視線ベクトルの調整量を算出してもよい。
【0054】
実施の形態4.
撮像物の位置を計測する形態について、主に実施の形態3と異なる点を図10に基づいて説明する。
【0055】
***構成の説明***
図5に基づいて、静止観測システム200の構成を説明する。
地上システム210は、さらに、位置計測装置215を備える。
【0056】
位置計測装置215は、衛星管制装置212と同じく、処理回路および入出力インタフェースなどのハードウェアを備えるコンピュータである。
位置計測装置215は、観測衛星100から得られる観測データを解析することによって、撮像された物(撮像物)の位置を計測する。撮像物の具体例は、船舶のような移動体である。
撮像物の位置の計測において、位置データベース213および方位角データベース214が利用される。
【0057】
***動作の説明***
撮像物の位置計測方法を説明する。
位置計測装置215は、光学観測装置101によって撮像された撮像物の位置を、ランドマークの方位角と撮像時における光学観測装置101の視線ベクトルの方位角の差分と、ランドマークの位置と、に基づいて算出する。
【0058】
例えば、撮像物の位置は以下のように算出される。
まず、衛星制御装置104は、光学観測装置101の視線ベクトルを観測領域に向ける。
次に、光学観測装置101は、観測領域を撮像して観測データを生成する。
次に、衛星制御装置104は、ランドマークの方位角に基づいて、光学観測装置101の視線ベクトルをランドマークに向ける。このとき、光学観測装置101の視線ベクトルの方位角は、ランドマークの方位角と同じである。
次に、光学観測装置101は、ランドマークを撮像して観測データを生成する。
次に、衛星制御装置104は、通信装置105を介して観測領域の観測データとランドマークの観測データと方位角のデータとを地上システム210へ送信する。
次に、衛星管制装置212は、通信装置211を介して観測領域の観測データとランドマークの観測データと方位角のデータとを受信する。
次に、衛星管制装置212は、可視光観測で得られた観測データを画像化し、観測衛星100の姿勢制御に関連するテレメトリ情報から、画像の上下左右の端部の画素に対応する地点が撮像された瞬間の視線ベクトルの方位角を抽出する。抽出される視線ベクトルの方位角が、上下左右の端部の画素に対応する地点の計測位置として扱われる。
次に、衛星管制装置212は、画像化された観測領域の観測データに上下左右の端部の画素に対応する地点の計測位置が付された情報と、画像化されたランドマークの観測データに上下左右の端部の画素に対応する地点の計測位置が付された情報と、を位置計測装置215に送信する。
次に、位置計測装置215は、受信した画像の中からランドマークの方位角の計測位置を算出する。ランドマークの位置座標が既知であるため、画像内の計測位置が想定とずれていれば、それは視線ベクトルの方位角の誤差が原因である。そこで、位置計測装置215は、位置座標が既知であるランドマークの方位角との差分に基づいて、方位角の調整量を算出する。
次に、位置計測装置215は、観測領域の画像から位置計測の対象とする撮像物を選択し、その対象が撮像された方位角を算出する。
次に、位置計測装置215は、撮像物が撮像された方位角を、ランドマークの方位角の調整量を使って調整する。観測領域を撮像してからランドマークを撮像すれば、光学観測装置101を具備した観測衛星100が持つ方位角誤差は同等である。
従って、位置座標が既知であるランドマークの方位角の調整量と同じ調整量を使って、観測領域が撮像された方位角の誤差が解消される。
このように、位置計測装置215は、観測領域の観測データとランドマークの観測データと方位角差分データとに基づいて、観測領域に存在する撮像物の位置を算出する。
【0059】
***実施の形態4の特徴***
光学観測装置101は、移動体を観測した後にランドマークを撮像する。
位置計測装置215は、移動された視線ベクトルの方位角の差分に基づいて、移動体の位置を計測する。
【0060】
広い海洋から発見された船舶(遭難船または不審船)を追跡する際、海洋にランドマークがないと船舶の位置を計測することが難しい。また、静止衛星の視線ベクトルの誤差に伴う位置誤差が大きい。
このとき、船舶を撮像した後にランドマークの撮像することにより、船舶の位置を高い精度で計測できる。
【0061】
***実施の形態4の効果***
実施の形態4により、撮像物の位置を高い精度で計測することができる。
【0062】
***実施の形態4の補足***
観測衛星100が、位置計測装置215を備えてもよい。つまり、観測衛星100において、撮像物の位置が算出されてもよい。
【0063】
実施の形態5.
移動体を観測する形態について、主に実施の形態1から実施の形態4と異なる点を図11に基づいて説明する。
【0064】
***構成の説明***
図11に基づいて、静止観測システム200の構成を説明する。
地上システム210は、さらに、移動体データベース216を備える。
移動体データベース216は、移動体ごとに、識別子と各時刻の位置とを示す。
【0065】
***動作の説明***
移動体の観測方法を説明する。
衛星制御装置104は、観測対象の位置とランドマークの位置とランドマークの方位角とに基づいて、光学観測装置101の視線ベクトルを観測対象の位置に向ける。そして、光学観測装置101は、観測対象を撮像する。観測対象の具体例は、船舶のような移動体である。
【0066】
相対方位角は、観測対象が撮像される瞬間の視線ベクトルの方位角とランドマークが撮像される瞬間の視線ベクトルの方位角の差分として導出された方位角である。
実施の形態4の位置計測装置215によって方位角の調整量が導出され、ランドマークの視線ベクトルの誤差が解消される。そのため、衛星制御装置104において、ランドマークからの相対方位角で視線ベクトルの方位角を司令し、観測対象を撮像すれば、視線ベクトルの誤差が解消され、観測対象を確実に撮像することができる。
【0067】
例えば、移動体は以下のように観測される。
衛星管制装置212は、移動体データベース216から移動体の最後の位置情報を抽出する。
衛星管制装置212は、移動体の最後の位置とランドマークの位置とランドマークの方位角とに基づいて、移動体の最後の位置における移動体の相対方位角を算出する。
衛星管制装置212は、移動体の相対方位角にランドマークの調整量を加算して視線ベクトルの誤差を解消した後の移動体の方位角(調整後方位角)を示すコマンドを生成し、通信装置211を介してコマンドを観測衛星100へ送信する。衛星制御装置104は、通信装置105を介してコマンドを受信する。
衛星制御装置104は、移動体の調整後方位角に基づいて、光学観測装置101の視線ベクトルを移動体の最後の位置を含む観測領域に向ける。
光学観測装置101は、観測領域を撮像して観測データを生成する。移動体の最後の位置における時刻からの経過時間が短ければ、移動体が観測領域の中に存在する。
【0068】
***実施の形態5の特徴***
移動体データベース216は、移動体のIDと位置座標を時刻情報と共に記録する。
光学観測装置101は、ユーザからの要請により最後に更新された位置座標の周辺に視線ベクトルを移動して撮像を行う。
【0069】
広い海洋から発見された船舶(遭難船または不審船)を追跡する際、海洋にランドマークがないと船舶の位置を計測することが難しい。また、静止衛星の視線ベクトルの誤差に伴う位置誤差が大きい。
このとき、ランドマーク(人工物ないし自然物)の撮像と船舶の撮像を繰り返すことにより、キャリブレーションが行える。
IDが登録された船舶において衛星測位システムなどによって計測された位置座標がデータベースに登録される。つまり、船舶の移動に伴う位置座標の変化が記録される。海難事故また遭難によって船舶が消息を絶った段階で、最後に記録された位置座標の周辺を捜索することにより、短時間で船舶を発見できる。
【0070】
***実施の形態5の効果***
実施の形態5により、移動体を観測することができる。
【0071】
実施の形態6.
視線ベクトルの方位角を補正する形態について、主に実施の形態1から実施の形態5と異なる点を説明する。
【0072】
***構成の説明***
静止観測システム200の構成は、実施の形態3から実施の形態5における構成と同じである。
【0073】
***動作の説明****
視線ベクトルの校正方法を説明する。
ランドマークの視線ベクトルに誤差がなければ、画像化されたランドマークは視線ベクトルのコマンドで司令された想定通りの位置に映る。しかし、視線ベクトルに誤差があると、画像の中の位置が想定とずれることになる。画像の位置誤差を視線ベクトルの方位角に換算して得られる値が調整量となる。視線ベクトルの誤差を解消する方法は実施の形態3で示した通りである。
さらに、一度調整量が算出された後に、さらに時間推移に伴ってランドマークの視線ベクトルの方位角に誤差が加算されると、その誤差が後に観測対象の位置の計測誤差となる。
具体的には、1日の日照環境の変化に起因する熱変形と、一年間における軌道面に対する太陽光の入射角度の変化に起因する熱変形と、による視線ベクトルの時間変化が、方位角の誤差の主要因となる。そこで、ランドマークを1日に何度か撮像し、ランドマークの方位角の日変動を計測し、調整量の日変動のトレンドをデータベースに記録する。同様に、ランドマークの方位角の一年間の変動を計測し、調整量の季節変動のトレンドをデータベースに記録する。
時間推移に伴う熱変形の日変動および季節変動は再現性が高い。そのため、視線ベクトルの方位角の1日の誤差量の推移と視線ベクトルの方位角の一年間の誤差量の推移は、ランドマークの日変動のトレンドとランドマークの季節変動のトレンドとに基づいて、校正することができる。
具体的には、ランドマークの調整量の日変動のトレンドとランドマークの調整量の季節変動のトレンドとを参照して、観測対象が撮像された季節及び時間における調整量が補正される。
このように、衛星制御装置104は、ランドマークの方位角を日変動のトレンドと季節変動のトレンドとの少なくともいずれかに応じて補正する。そして、衛星制御装置104は、補正後の方位角に基づいて、位置座標が未知である対象の位置座標を計測する際の方位角を補正する。
【0074】
***実施の形態6の特徴***
静止軌道を飛翔する観測衛星では、1日に太陽光の入射方向が南北軸回りに1回転する。そのため、時間推移に応じて太陽光の入射方向が変化し、温度変化に伴う熱変形が生じ、視線ベクトルの方位角が変化する、という可能性がある。
1日にランドマークを複数回観測することにより、方位角の日変動を校正することができる。
季節の変化に起因して方位角の変動が発生する場合、年間にランドマークを複数回観測することにより、方位角の季節変動を校正することができる。
【0075】
撮像物または観測対象などの位置を計測する場合、基準となるランドマークの方位角が校正されることにより、位置計測の精度が向上する。
【0076】
***実施の形態6の効果***
実施の形態6により、視線ベクトルの方位角を補正して位置計測精度を向上させることができる。
【0077】
***実施の形態の補足***
各実施の形態は、好ましい形態の例示であり、本開示の技術的範囲を制限することを意図するものではない。各実施の形態は、部分的に実施してもよいし、他の形態と組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0078】
100 観測衛星、101 光学観測装置、102 姿勢制御装置、103 推進装置、104 衛星制御装置、105 通信装置、106 電源装置、110 観測地域、111 観測領域全体、112 最東端観測領域、113 西側隣接領域、114 最西端観測領域、200 静止観測システム、210 地上システム、211 通信装置、212 衛星管制装置、213 位置データベース、214 方位角データベース、215 位置計測装置、216 移動体データベース。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11