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特許7753102イミダゾリウム両性イオン重合性化合物及びそれらを組み込んだ眼科用デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-10-03
(45)【発行日】2025-10-14
(54)【発明の名称】イミダゾリウム両性イオン重合性化合物及びそれらを組み込んだ眼科用デバイス
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/60 20060101AFI20251006BHJP
   G02C 7/04 20060101ALI20251006BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20251006BHJP
   A61F 2/16 20060101ALI20251006BHJP
   A61L 27/16 20060101ALI20251006BHJP
   A61L 27/34 20060101ALI20251006BHJP
   A61L 27/52 20060101ALN20251006BHJP
【FI】
C08F20/60
G02C7/04
G02B1/04
A61F2/16
A61L27/16
A61L27/34
A61L27/52
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021568566
(86)(22)【出願日】2021-05-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-18
(86)【国際出願番号】 IB2021054496
(87)【国際公開番号】W WO2021255551
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2024-04-24
(31)【優先権主張番号】63/039,485
(32)【優先日】2020-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/317,259
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510294139
【氏名又は名称】ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Vision Care, Inc.
【住所又は居所原語表記】7500 Centurion Parkway, Jacksonville, FL 32256, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】マハデバン・シブクマル
(72)【発明者】
【氏名】シンハ・ドーラ
(72)【発明者】
【氏名】ツァン・ヨン
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103816878(CN,A)
【文献】特開昭57-019735(JP,A)
【文献】特開昭56-078834(JP,A)
【文献】特開昭53-050732(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0115697(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0090202(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
G02C
G02B
A61F
A61L
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの両性イオン重合性化合物であって、
【化1】
式中、
が、H又はC ~C アルキルであり、
が、Hであり、
が、Hであり、
及びL が、独立して-CH -、-CH CH -、-CH CH CH -、-CH CH(CH )CH -、又は-CH CH CH CH -であり、
が、(メタ)アクリルアミドである、化合物。
【請求項2】
が、メタクリルアミドである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、H又はメチルであり、L が、プロピレンであり、L が、エチレン又はプロピレンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
が、H又はメチルであり、L が、プロピレンであり、L が、エチレン又はプロピレンであり、R が、メタクリルアミドである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
3-(1-(3-メタクリルアミドプロピル)-1H-イミダゾール-3-イウム-3-イル)プロパノエート、
3-(1-(3-メタクリルアミドプロピル)-2-メチル-1H-イミダゾール-3-イウム-3-イル)プロパノエート、又は
4-(1-(3-メタクリルアミドプロピル)-2-メチル-1H-イミダゾール-3-イウム-3-イル)ブタノエートである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載の両性イオン重合性化合物から誘導されるポリマーを含む、眼科用デバイス。
【請求項7】
前記ポリマーが、前記眼科用デバイスに収容されているか、又は前記眼科用デバイス上にコーティングされている、請求項に記載の眼科用デバイス。
【請求項8】
前記ポリマーが、前記化合物と、前記眼科用デバイスを作製するために好適な1つ又は2つ以上のモノマーと、のフリーラジカル反応生成物を含む、請求項に記載の眼科用デバイス。
【請求項9】
前記眼科用デバイスを作製するために好適な前記モノマーが、親水性成分、疎水性成分、シリコーン含有成分、及びこれらの2つ又は3つ以上の混合物から選択される、請求項に記載の眼科用デバイス。
【請求項10】
眼内レンズ又はソフトコンタクトレンズである、請求項のいずれか一項に記載の眼科用デバイス。
【請求項11】
ヒドロゲルコンタクトレンズである、請求項10に記載の眼科用デバイス。
【請求項12】
眼科用デバイスと、包装用溶液と、を含む、ブリスター包装であって、前記包装用溶液が、請求項1~のいずれか一項に記載の両性イオン重合性化合物から誘導されるポリマーを含む、ブリスター包装。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許出願第17/317,259号(2021年5月11日出願)及び米国特許仮出願第63/039,485号(2020年6月16日出願)に対する優先権を主張するものであり、その全体が参照として本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、イミダゾリウム両性イオン重合性化合物、それから作製されるポリマー、並びに眼科用デバイス及び/又は眼科用デバイスの包装用溶液におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
コンタクトレンズは、1950年代以来、視力を改善するために商業的に使用されてきた。最初のコンタクトレンズは、硬質材料から作製されていた。これらのレンズは依然として現在も使用されているが、それらの低い初期快適性、及び酸素に対する比較的低い透過性のために、全ての患者に好適であるわけではない。この分野で後に開発されたものは、ヒドロゲルをベースにしたソフトコンタクトレンズであり、これは現在極めて一般的である。ソフトレンズがより快適であり、その快適性レベルが増加したことにより、ソフトコンタクトレンズのユーザが、ハードコンタクトレンズのユーザよりも長時間にわたってレンズを装着することができることを、多くのユーザが見出している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多くの使用者は、それらの視力ケアの必要性のためにコンタクトレンズに依存し、したがって、例えば、親水性若しくは平衡含水量を増加させるために、及び/又は非汚染若しくは抗菌活性を提供するために、コンタクトレンズ及び他の眼科用デバイスの特性を更に改善するために、業界における継続的な取り組みが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、コンタクトレンズなどの眼科用デバイスにおける使用に好適な、新しい両性イオン重合性化合物に関する。化合物は、例えば、眼科用デバイスの共有構造に組み込まれ得るか、又はそれらは重合されて、眼科用デバイスへのコーティング又は非共有結合添加剤として使用され得る。ポリマーは、両性イオン重合性化合物から誘導することもまた、眼科用デバイスのための包装用溶液中の添加剤として使用され得る。結果として得られる眼科用デバイスは、ヒドロゲルコンタクトレンズにおいて特に望ましい、増加した含水量を含む、好ましい特性を呈する。
【0006】
したがって、一態様では、本発明は、式Iの両性イオン重合性化合物を提供し、
【0007】
【化1】
式中、R、R、及びRが、独立して、H、アルキル、シクロアルキル、フェニル、又はベンジルであり、L及びLが、各々独立して連結基であり、Rが、重合性基である。
【0008】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の両性イオン重合性化合物から誘導されるポリマーを含む眼科用デバイスを提供する。
【0009】
更なる態様では、本発明は、眼科用デバイス及び包装用溶液を含むブリスター包装を提供し、包装用溶液は、本明細書に記載されるような両性イオン重合性イオン化合物から誘導されるポリマーを含む。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、以下の説明に記載されている構造又はプロセス工程の詳細に限定されるものではないことを理解されたい。本発明は他の実施形態が可能であり、本明細書における教示を使用する様々な方法によって実行又は実施することが可能である。
【0011】
本開示において使用される用語に関しては、以下の定義が提供される。
【0012】
別段の定めがある場合を除き、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、本発明が属する技術分野における当業者が一般に理解するものと同じ意味を有する。ポリマーの定義は、Compendium of Polymer Terminology and Nomenclature,IUPAC Recommendations 2008,edited by:Richard G.Jones,Jaroslav Kahovec,Robert Stepto,Edward S.Wilks,Michael Hess,Tatsuki Kitayama,and W.Val Metanomskiに開示される定義に一致する。本明細書において言及される刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は全て、参照により本明細書に組み込まれる。
【0013】
本明細書で使用するとき、「(メタ)」という用語は、任意選択的なメチル置換を意味する。したがって、「(メタ)アクリレート」などの用語は、メタクリレート及びアクリレートの両方を意味する。
【0014】
どこに化学構造が記載されていようと、構造における置換基について開示された選択肢を任意の組み合わせで組み合わせてもよいことを理解すべきである。したがって、構造が置換基R及びR**を含有しており、これらがそれぞれ3つの可能性のある基のリストを含んでいる場合、9とおりの組み合わせが開示される。特性の組み合わせについても同じことが当てはまる。
【0015】
一般式[***における「n」などの下付き文字が、ポリマーの化学式における繰り返し単位の数を示すために使用されるとき、式は、高分子の数平均分子量を表すと解釈すべきである。
【0016】
「個体」という用語は、ヒト及び脊椎動物を含む。
【0017】
「眼科用デバイス」という用語は、眼若しくは眼の任意の一部(眼の表面を含む)の中又は上に存在する任意のデバイスを指す。これらのデバイスは、光学補正、外見向上、視力強化、治療効果(例えば、包帯として)、若しくは医薬成分及び栄養補助成分などの活性成分の供給、又は前述の任意の組み合わせを提供することができる。眼科用デバイスの例としては、限定されるものではないが、レンズ、光学及び眼挿入物(限定されるものではないが、涙点プラグを含む)などが挙げられる。「レンズ」は、ソフトコンタクトレンズ、ハードコンタクトレンズ、ハイブリッドコンタクトレンズ、眼内レンズ、及びオーバーレイレンズを含む。眼科用デバイスは、コンタクトレンズを含み得る。
【0018】
「コンタクトレンズ」という用語は、個体の眼の角膜上に置くことができる眼科用デバイスを指す。コンタクトレンズは、創傷治癒、薬剤若しくは栄養補助剤の送達、診断的評価若しくはモニタリング、紫外線吸収、可視光若しくはグレアの低減、又はこれらの任意の組み合わせを含む、矯正的、美容的、又は治療的な利益をもたらし得る。コンタクトレンズは、当該技術分野で既知の任意の適切な材料であり得、ソフトレンズ、ハードレンズ、又は弾性率、含水率、光透過、若しくはこれらの組み合わせなどの、異なる物理、機械、若しくは光学特性を有する少なくとも2つの別個の部分を含有するハイブリッドレンズであり得る。
【0019】
本発明の眼科用デバイスは、シリコーンヒドロゲル又は従来のヒドロゲルから構成され得る。シリコーンヒドロゲルは、典型的には、硬化されたデバイス内で互いに共有結合した、少なくとも1つの親水性モノマー及び少なくとも1つのシリコーン含有成分を含有する。
【0020】
「標的巨大分子」は、モノマー、マクロマー、プレポリマー、架橋剤、開始剤、添加剤、希釈剤などを含む反応性モノマー混合物から合成されている巨大分子を意味する。
【0021】
「重合性化合物」という用語は、1つ又は2つ以上の重合性基を含有する化合物を意味する。この用語は、例えば、モノマー、マクロマー、オリゴマー、プレポリマー、架橋剤などを包含する。
【0022】
「重合性基」は、フリーラジカル及び/又はカチオン重合、例えばラジカル重合開始条件に供されたときに重合することができる炭素-炭素二重結合などの、連鎖成長重合を受けることができる基である。フリーラジカル重合性基の非限定的な例としては、(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、O-ビニルカルバメート、O-ビニルカーボネート、及び他のビニル基が挙げられる。好ましくは、フリーラジカル重合性基は、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、及びスチリル官能基、並びに前述のうちの任意の混合物を含む。より好ましくは、フリーラジカル重合性基は、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、及びこれらの混合物を含む。重合性基は、任意選択的に置換されていてもよい。例えば、(メタ)アクリルアミド中の窒素原子は、水素に結合されてもよく、又は水素は、アルキル若しくはシクロアルキル(それ自体が更に置換されてもよい)で置換されてもよい。
【0023】
限定されるものではないが、バルク、溶液、懸濁液、及びエマルジョンを含む、任意の種類のフリーラジカル重合、並びに、安定性フリーラジカル重合、窒素酸化物媒介リビング重合、原子移動ラジカル重合、可逆的付加開裂連鎖移動重合、有機テルル媒介リビングラジカル重合などの、制御ラジカル重合法のいずれかを使用することができる。
【0024】
「モノマー」は、連鎖成長重合、特にフリーラジカル重合を受け、それによって標的巨大分子の化学構造内に繰り返し単位を作り出すことができる単官能性分子である。いくつかのモノマーは、架橋剤として作用することができる二官能性不純物を有する。「親水性モノマー」はまた、5重量パーセントの濃度にて25℃で、脱イオン水と混合したときに、透明な単相溶液が得られるモノマーである。「親水性成分」は、5重量パーセントの濃度にて25℃で、脱イオン水と混合したときに、透明な単相溶液が得られる、モノマー、マクロマー、プレポリマー、開始剤、架橋剤、添加剤、又はポリマーである。「疎水性成分」は、25℃で脱イオン水中でわずかに可溶性又は不溶性であるモノマー、マクロマー、プレポリマー、開始剤、架橋剤、添加剤、又はポリマーである。
【0025】
「巨大分子」は、1500を超える数平均分子量を有する有機化合物であり、反応性であっても、非反応性であってもよい。
【0026】
「マクロモノマー」又は「マクロマー」は、連鎖成長重合、特にフリーラジカル重合を受け、それによって標的巨大分子の化学構造内に繰り返し単位を作り出すことができる1つの基を有する巨大分子である。一般的に、マクロマーの化学構造は、標的高分子の化学構造とは異なり、すなわち、マクロマーのペンダント基の繰り返し単位は、標的高分子又はその主鎖の繰り返し単位とは異なる。モノマーとマクロマーとの間の差は、ペンダント基の化学構造、分子量、及び分子量分布のうちの1つに過ぎない。結果として、かつ本明細書で使用するとき、特許文献は、約1,500ダルトン以下の比較的低い分子量を有する重合性化合物としてモノマーを定義することがあり、これは、本質的にいくつかのマクロマーを含む。具体的には、モノメタクリルオキシプロピル末端モノ-n-ブチル末端ポリジメチルシロキサン(分子量=500~1500g/mol)(mPDMS)及びモノ-(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシプロピル)-プロピルエーテル末端モノ-n-ブチル末端ポリジメチルシロキサン(分子量=500~1500g/mol)(OH-mPDMS)は、モノマー又はマクロマーと称され得る。更に、特許文献は、1つ又は2つ以上の重合性基を有するものとしてマクロマーを定義することがあり、マクロマーの一般的な定義を本質的に拡大してプレポリマーを含む。結果として、かつ本明細書で使用するとき、二官能性及び多官能性マクロマー、プレポリマー、及び架橋剤は、互換的に使用され得る。
【0027】
「シリコーン含有成分」は、通常は、シロキシ基、シロキサン基、カルボシロキサン基、及びこれらの混合物の形態で、少なくとも1つのケイ素-酸素結合を有する、反応性混合物中のモノマー、マクロマー、プレポリマー、架橋剤、開始剤、添加剤、又はポリマーである。
【0028】
本発明において有用なシリコーン含有成分の例は、米国特許第3,808,178号、同第4,120,570号、同第4,136,250号、同第4,153,641号、同第4,740,533号、同第5,034,461号、同第5,070,215号、同第5,244,981号、同第5,314,960号、同第5,331,067号、同第5,371,147号、同第5,760,100号、同第5,849,811号、同第5,962,548号、同第5,965,631号、同第5,998,498号、同第6,367,929号、同第6,822,016号、同第6,943,203号、同第6,951,894号、同第7,052,131号、同第7,247,692号、同第7,396,890号、同第7,461,937号、同第7,468,398号、同第7,538,146号、同第7,553,880号、同第7,572,841号、同第7,666,921号、同第7,691,916号、同第7,786,185号、同第7,825,170号、同第7,915,323号、同第7,994,356号、同第8,022,158号、同第8,163,206号、同第8,273,802号、同第8,399,538号、同第8,415,404号、同第8,420,711号、同第8,450,387号、同第8,487,058号、同第8,568,626号、同第8,937,110号、同第8,937,111号、同第8,940,812号、同第8,980,972号、同第9,056,878号、同第9,125,808号、同第9,140,825号、同第9,156,934号、同第9,170,349号、同第9,217,813号、同第9,244,196号、同第9,244,197号、同第9,260,544号、同第9,297,928号、同第9,297,929号、及び欧州特許第080539号に見出すことができる。これらの特許は、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0029】
「ポリマー」は、重合中に使用されるモノマーの繰り返し単位で構成される標的巨大分子である。
【0030】
「ホモポリマー」は、1つのモノマーから作製したポリマーであり、「コポリマー」は、2つ又は3つ以上のモノマーから作製したポリマーであり、「ターポリマー」は、3つのモノマーから作製したポリマーである。「ブロックコポリマー」は、組成上異なるブロック又はセグメントから成る。ジブロックコポリマーは、2つのブロックを有する。トリブロックコポリマーは、3つのブロックを有する。「くし形又はグラフトコポリマー」は、少なくとも1つのマクロマーから作製される。
【0031】
「繰り返し単位」は、特定のモノマー又はマクロマーの重合に対応する、ポリマー内の原子の最小の基である。
【0032】
「開始剤」は、続いてモノマーと反応してフリーラジカル重合反応を開始することができるラジカルに分解可能である分子である。熱開始剤は、温度に応じて特定の速度で分解し、典型例は、1,1’-アゾビスイソブチロニトリル及び4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)などのアゾ化合物、ベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、ジクミルペルオキシド、及びラウロイルペルオキシドなどのペルオキシド、過酢酸及び過硫酸カリウムなどの過酸、並びに様々な酸化還元系である。光開始剤は、光化学プロセスにより分解し、典型例は、ベンジル、ベンゾイン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、カンファーキノン、及びこれらの混合物の誘導体、並びに様々なモノアシル及びビスアシルホスフィンオキシド、並びにこれらの組み合わせである。
【0033】
「架橋剤」は、分子上の2つ又は3つ以上の位置でフリーラジカル重合を受け、それによって分岐点及びポリマーネットワークを作り出すことができる、二官能性又は多官能性モノマー又はマクロマーである。一般的な例は、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、メチレンビスアクリルアミド、トリアリルシアヌレートなどである。
【0034】
「プレポリマー」は、更に反応を受けてポリマーを形成可能な、残存している重合性基を含有するモノマーの反応生成物である。
【0035】
「ポリマーネットワーク」は、膨潤し得るが溶媒に溶解できない架橋巨大分子である。「ヒドロゲル」は、典型的には少なくとも10重量パーセントの水を吸収しながら、水又は水溶液中で膨潤するポリマーネットワークである。「シリコーンヒドロゲル」は、少なくとも1つの親水性成分と共に少なくとも1つのシリコーン含有成分から作製されるヒドロゲルである。親水性成分はまた、非反応性ポリマーを含んでもよい。
【0036】
「従来のヒドロゲル」は、いかなるシロキシ、シロキサン、又はカルボシロキサン基も有しない成分から作製されたポリマーネットワークを指す。従来のヒドロゲルは、親水性モノマーを含む反応性混合物から調製される。例としては、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(「HEMA」)、N-ビニルピロリドン(「NVP」)、N,N-ジメチルアクリルアミド(「DMA」)、又は酢酸ビニルが挙げられる。米国特許第4,436,887号、同第4,495,313号、同第4,889,664号、同第5,006,622号、同第5,039459号、同第5,236,969号、同第5,270,418号、同第5,298,533号、同第5,824,719号、同第6,420,453号、同第6,423,761号、同第6,767,979号、同第7,934,830号、同第8,138,290号、及び同第8,389,597号は、従来のヒドロゲルの形成を開示している。従来のヒドロゲルはまた、ポリビニルアルコールから形成されてもよい。従来のヒドロゲルレンズはコーティングを含んでもよく、コーティングは、基質と同じ又は異なる材料であってもよい。従来のヒドロゲルとしては、ポリビニルピロリドンなどの添加剤、及びホスホリルコリン、メタクリル酸の重合性誘導体などを含むコモノマーを含んでもよい。市販の従来のヒドロゲルとしては、エタフィルコン(etafilcon)、ゲンフィルコン(genfilcon)、ヒラフィルコン(hilafilcon)、レネフィルコン(lenefilcon)、ネソフィルコン(nesofilcon)、オマフィルコン(omafilcon)、ポリマコン(polymacon)、及びビフィルコン(vifilcon)(それらの変形の全てを含む)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
「シリコーンヒドロゲル」は、少なくとも1つの親水性成分及び少なくとも1つのシリコーン含有成分から作製されるポリマーネットワークを指す。反応性混合物中に存在し得る親水性成分の好適な族の例としては、(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、N-ビニルイミド、N-ビニルウレア、O-ビニルカルバメート、O-ビニルカーボネート、他の親水性ビニル化合物、及びこれらの混合物が挙げられる。シリコーン含有成分は周知であり、特許文献に広く記載されている。例えば、シリコーン含有成分は、少なくとも1つの重合性基(例えば、(メタ)アクリレート、スチリル、ビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、O-ビニルカルバメート、O-ビニルカーボネート、ビニル基、又は前述の混合物)、少なくとも1つのシロキサン基、及び重合性基をシロキサン基に接続する1つ又は2つ以上の連結基(化学結合であり得る)を含み得る。シリコーン含有成分は、例えば、1~220個のシロキサン繰り返し単位を含有し得る。シリコーン含有成分はまた、少なくとも1個のフッ素原子も含有し得る。シリコーンヒドロゲルレンズはコーティングを含んでもよく、コーティングは、基質と同じ又は異なる材料であってもよい。
【0038】
シリコーンヒドロゲルの例としては、アクアフィルコン(acquafilcon)、アスモフィルコン(asmofilcon)、バラフィルコン(balafilcon)、コムフィルコン(comfilcon)、デレフィルコン(delefilcon)、エンフィルコン(enfilcon)、ファンフィルコン(fanfilcon)、フォルモフィルコン(formofilcon)、ガリーフィルコン(galyfilcon)、ロトラフィルコン(lotrafilcon)、ナラフィルコン(narafilcon)、リオフィルコン(riofilcon)、サムフィルコン(samfilcon)、セノフィルコン(senofilcon)、ソモフィルコン(somofilcon)、及びステンフィルコン(stenfilcon)(これらの変形の全てを含む)に加えて、米国特許第4,659,782号、同第4,659,783号、同第5,244,981号、同第5,314,960号、同第5,331,067号、同第5,371,147号、同第5,998,498号、同第6,087,415号、同第5,760,100号、同第5,776,999号、同第5,789,461号、同第5,849,811号、同第5,965,631号、同第6,367,929号、同第6,822,016号、同第6,867,245号、同第6,943,203号、同第7,247,692号、同第7,249,848号、同第7,553,880号、同第7,666,921号、同第7,786,185号、同第7,956,131号、同第8,022,158号、同第8,273,802号、同第8,399,538号、同第8,470,906号、同第8,450,387号、同第8,487,058号、同第8,507,577号、同第8,637,621号、同第8,703,891号、同第8,937,110号、同第8,937,111号、同第8,940,812号、同第9,056,878号、同第9,057,821号、同第9,125,808号、同第9,140,825号、同第9156,934号、同第9,170,349号、同第9,244,196号、同第9,244,197号、同第9,260,544号、同第9,297,928号、同第9,297,929号、並びに国際公開第03/22321号、同第2008/061992号、及び米国特許出願公開第2010/0048847号で調製されるようなシリコーンヒドロゲルが挙げられる。これらの特許は、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0039】
「相互貫入ポリマーネットワーク」は、分子スケールで少なくとも部分的に交絡しているが、互いに共有結合しておらず、制動化学結合なしに分離することができない、2つ又は3つ以上のネットワークを含む。「半相互貫入ポリマーネットワーク」は、1つ又は2つ以上のネットワークと、少なくとも1つのネットワークと少なくとも1つのポリマーとの間の分子レベルで何らかの混合によって特徴付けられる1つ又は2つ以上のポリマーと、を含む。異なるポリマーの混合物は、「ポリマーブレンド」である。半相互貫入ネットワークは、技術的にはポリマーブレンドであるが、場合によっては、ポリマーは、容易に除去することができないように絡まっている。
【0040】
「反応性混合物」及び「反応性モノマー混合物」という用語は、一緒に混合され、重合条件にさらされたときに、本発明のポリマーネットワークに加えて、それから作製される眼科用デバイス、及びコンタクトレンズを形成する成分(反応性及び非反応性の両方)の混合物を指す。反応性モノマー混合物は、モノマー、マクロマー、プレポリマー、架橋剤、及び開始剤などの反応性成分、湿潤剤、ポリマー、染料などの添加剤、UV吸収剤、顔料、染料、及び光互変化合物などの光吸収化合物(これらはいずれも反応性又は非反応性であってよいが、得られるコンタクトレンズ、並びに医薬化合物及び栄養補助化合物内に保持されることが可能である)、及び任意の希釈剤を含んでいてよい。作製される眼科用デバイス及びその使用目的に基づき、多様な添加剤が添加され得ることが理解されるであろう。反応性混合物の成分の濃度は、希釈剤を除いて、反応性混合物中の全ての成分の重量百分率として表される。希釈剤が使用される場合、それらの濃度は、反応性混合物中の全ての成分及び希釈剤の量に基づき重量百分率として表される。
【0041】
「反応性成分」は、共有結合、水素結合、静電相互作用、相互貫入ポリマーネットワークの形成、又は任意の他の手段により、得られるヒドロゲルのポリマーネットワークの化学構造の一部となる、反応性混合物の成分である。
【0042】
「シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ」という用語は、少なくとも1つのシリコーン含有成分から作製されるヒドロゲルコンタクトレンズを指す。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは全般的に、従来のヒドロゲルと比較して増加した酸素透過性を有する。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、それらの含水量及びポリマー含有量の両方を使用して、酸素を眼に送る。
【0043】
「多官能性」という用語は、2つ又は3つ以上の重合性基を有する成分を指す。「単官能性」という用語は、1つの重合性基を有する成分を指す。
【0044】
「ハロゲン」又は「ハロ」という用語は、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素を指す。
【0045】
「アルキル」は、指定された数の炭素原子を含有する任意選択的に置換された直鎖又は分岐鎖アルキル基を指す。数が指定されていない場合、アルキル(アルキル上の任意選択的な置換基を含む)は、1~16個の炭素原子を含有していてよい。好ましくは、アルキル基は、1~10個の炭素原子、代替的に1~8個の炭素原子、代替的に1~6個の炭素原子、又は代替的に1~4個の炭素原子を含有する。アルキルの例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソ-、sec-及びtert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、3-エチルブチルなどが挙げられる。アルキル上の置換基の例としては、ヒドロキシ、アミノ、アミド、アルコキシアルキル、オキソ((=O))、カルボキシ、アルキルカルボキシ、カルボニル、アルコキシ、チオアルキル、カルバメート、カーボネート、ハロゲン、フェニル、ベンジル、及びこれらの組み合わせから独立して選択される1つ、2つ、又は3つの基が挙げられる。好ましい置換基としては、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ハロ基、アルコキシアルキル基、又はオキソ基が挙げられる。「アルキレン」は、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、-CHCH(CH)CH-、及び-CHCHCHCH-などの、二価アルキル基を意味する。
【0046】
「ハロアルキル」は、1個又は2個以上のハロゲン原子で置換された上で定義されるアルキル基を指し、各ハロゲンは、独立して、F、Cl、Br、又はIである。好ましいハロゲンは、Fである。好ましいハロアルキル基は、1~6個の炭素、より好ましくは1~4個の炭素、更により好ましくは1~2個の炭素を含有する。「ハロアルキル」は、-CF-又は-CFCF-などのペルハロアルキル基を含む。「ハロアルキレン」は、-CHCF-などの二価ハロアルキル基を意味する。
【0047】
「シクロアルキル」は、指定された数の環炭素原子を含有する任意選択的に置換された環状炭化水素を指す。数が示されていない場合、シクロアルキルは、3~12個の環炭素原子を含有してもよい。好ましくは、C~Cシクロアルキル基、C~Cシクロアルキル、より好ましくはC~Cシクロアルキル、更により好ましくはC~Cシクロアルキルである。シクロアルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、及びシクロオクチルが挙げられる。シクロアルキル上の置換基の例としては、アルキル、ヒドロキシ、アミノ、アミド、アルコキシアルキル、カルボニル、アルコキシ、チオアルキル、アミド、カルバメート、カーボネート、ハロ、フェニル、ベンジル、及びこれらの組み合わせから独立して選択される1つ、2つ、又は3つの基が挙げられる。好ましい置換基としては、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ハロ基、アルコキシアルキル基、又はオキソ基が挙げられる。「シクロアルキレン」は、1,2-シクロヘキシレン、1,3-シクロヘキシレン、又は1,4-シクロヘキシレンなどの二価シクロアルキル基を意味する。
【0048】
「ヘテロシクロアルキル」は、少なくとも1つの環炭素が、窒素、酸素、及び硫黄から選択されるヘテロ原子で置換されている、上で定義されるシクロアルキル環又は環系を指す。ヘテロシクロアルキル環は、任意選択的に、他のヘテロシクロアルキル環及び/若しくは非芳香族炭化水素環及び/若しくはフェニル環に縮合しているか、又は他の方法で結合される。好ましいヘテロシクロアルキル基は、5~7員を有する。より好ましいヘテロシクロアルキル基は、5又は6員を有する。ヘテロシクロアルキレンは、二価ヘテロシクロアルキル基を意味する。
【0049】
「アリール」は、少なくとも1つの芳香環を含有する、任意選択的に置換された芳香族炭化水素環系を指す。アリール基は、示された数の環炭素原子を含有する。数が示されていない場合、アリールは、6~14個の環炭素原子を含有してもよい。芳香環は、任意選択的に、他の芳香族炭化水素環又は非芳香族炭化水素環に縮合していてもよく、又は他の方法で結合されてもよい。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、及びビフェニルが挙げられる。アリール基の好ましい例としては、フェニルが挙げられる。アリール上の置換基の例としては、アルキル、ヒドロキシ、アミノ、アミド、アルコキシアルキル、カルボキシ、アルキルカルボキシ、カルボニル、アルコキシ、チオアルキル、カルバメート、カーボネート、ハロ、フェニル、ベンジル、及びこれらの組み合わせから独立して選択される1つ、2つ、又は3つの基が挙げられる。「アリーレン」は、二価アリール基、例えば1,2-フェニレン、1,3-フェニレン、又は1,4-フェニレンを意味する。
【0050】
「ヘテロアリール」は、上で定義したように、少なくとも1個の環炭素原子が、窒素、酸素、及び硫黄から選択されるヘテロ原子で置換されているアリール環又は環系を指す。ヘテロアリール環は、1つ又は2つ以上のヘテロアリール環、芳香族若しくは非芳香族炭化水素環、又はヘテロシクロアルキル環に縮合していてもよく、又は別の方法で結合されてもよい。ヘテロアリール基の例としては、ピリジル、フリル、及びチエニルが挙げられる。「ヘテロアリーレン」は、二価ヘテロアリール基を意味する。
【0051】
「アルコキシ」は、酸素架橋を介して親分子部分に結合しているアルキル基を指す。アルコキシ基の例としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、及びイソプロポキシが挙げられる。「チオアルキル」は、硫黄架橋を介して親分子に結合しているアルキル基を意味する。チオアルキル基の例としては、例えば、メチルチオ、エチルチオ、n-プロピルチオ、及びイソプロピルチオが挙げられる。「アリールオキシ」は、酸素架橋を介して親分子部分に結合しているアリール基を指す。例としては、フェノキシが挙げられる。「環状アルコキシ」は、酸素架橋を介して親部分に結合しているシクロアルキル基を意味する。
【0052】
「アルキルアミン」は、-NH架橋を介して親分子部分に結合しているアルキル基を指す。アルキレンアミンは、-CHCHNH-などの二価アルキルアミン基を意味する。
【0053】
「シロキサニル」は、少なくとも1つのSi-O-Si結合を有する構造を指す。したがって、例えば、シロキサニル基は、少なくとも1つのSi-O-Si基(すなわち、シロキサン基)を有する基を意味し、シロキサニル化合物は、少なくとも1つのSi-O-Si基を有する化合物を意味する。「シロキサニル」は、モノマー(例えば、Si-O-Si)並びにオリゴマー/ポリマー構造(例えば、-[Si-O]-であって、式中、nは2又は3以上である、構造)を包含する。シロキサニル基中の各ケイ素原子は、それらの原子価を完全なものにするために、独立して選択されるR基(ここで、Rは、式Aの選択肢(b)~(i)で定義されるとおりである)で置換されている。
【0054】
「シリル」は、式RSi-の構造を指し、「シロキシ」は、式RSi-O-の構造を指し、ここで、シリル又はシロキシ中の各Rは、トリメチルシロキシ、C~Cアルキル(好ましくはC~Cアルキル、より好ましくはエチル又はメチル)、及びC~Cシクロアルキルから独立して選択される。
【0055】
「アルキレンオキシ」は、一般式-(アルキレン-O-)-又は-(O-アルキレン)-の基を指し、ここで、アルキレンは、上で定義したとおりであり、pは、1~200、又は1~100、又は1~50、又は1~25、又は1~20、又は1~10であり、各アルキレンは、独立して、ヒドロキシル、ハロ(例えば、フルオロ)、アミノ、アミド、エーテル、カルボニル、カルボキシル、及びこれらの組み合わせから独立して選択される1つ又は2つ以上の基で任意選択的に置換されている。pが1より大きい場合、各アルキレンは、同じであっても異なっていてもよく、アルキレンオキシは、ブロック又はランダム構成であってもよい。アルキレンオキシが分子中に末端基を形成するとき、アルキレンオキシの末端は、例えば、ヒドロキシ又はアルコキシ(例えば、HO-[CHCHO]-又はCHO-[CHCHO]-)であってもよい。アルキレンオキシの例としては、ポリエチレンオキシ、ポリプロピレンオキシ、ポリブチレンオキシ、及びポリ(エチレンオキシ-コ-プロピレンオキシ)が挙げられる。
【0056】
「オキサアルキレン」は、1つ又は2つ以上の非隣接CH基が、-CHCHOCH(CH)CH-などの酸素原子で置換されている、上で定義されるアルキレン基を指す。「チアアルキレン」は、1つ又は2つ以上の非隣接CH基が、-CHCHSCH(CH)CH-などの硫黄原子で置換されている、上で定義されるアルキレン基を指す。
【0057】
「連結基」という用語は、重合性基を親分子に連結させる部分を指す。連結基は、連結基がその一部である化合物に適合し、化合物の重合を不所望に妨害せず、重合条件、更には最終生成物の加工及び保管の条件下で安定である任意の部分であってよい。例えば、連結基は、結合であってもよく、又は1つ又は2つ以上アルキレン、ハロアルキレン、アミド、アミン、アルキレンアミン、カルバメート、エステル(-CO-)、アリーレン、ヘテロアリーレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アルキレンオキシ、オキサアルキレン、チアアルキレン、ハロアルキレンオキシ(1つ又は2つ以上ハロ基で置換されたアルキレンオキシ、例えば、-OCF-、-OCFCF-、-OCFCH-)、シロキサニル、アルキレンシロキサニル、又はこれらの組み合わせを含んでいてもよい。連結基は、1つ又は2つ以上の置換基で任意選択的に置換されてもよい。好適な置換基としては、アルキル、ハロ(例えば、フルオロ)、ヒドロキシル、HO-アルキレンオキシ、MeO-アルキレンオキシ、シロキサニル、シロキシ、シロキシ-アルキレンオキシ-、シロキシ-アルキレン-アルキレンオキシ-(1つを超えるアルキレンオキシ基が存在してもよく、アルキレン及びアルキレンオキシ中の各メチレンは、独立して、ヒドロキシルで任意選択的に置換されている)、エーテル、アミン、カルボニル、カルバメート、及びこれらの組み合わせから独立して選択されるものを挙げることができる。連結基はまた、(メタ)アクリレートなどの重合性基で置換されてもよい(連結基が連結している重合性基に加えて)。
【0058】
好ましい連結基としては、アルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン(例えば、フェニレン)、ヘテロアリーレン、オキサアルキレン、アルキレン-アミド-アルキレン、アルキレン-アミン-アルキレン、又は前述の基のいずれかの組み合わせが挙げられる。好ましい連結基としては、C~Cアルキレン(好ましくは、エチレン又はプロピレンなどのC~Cアルキレン)、C~Cオキサアルキレン(好ましくは、C~Cオキサアルキレン)、C~Cアルキレン-アミド-C~Cアルキレン、及びC~Cアルキレン-アミン-C~Cアルキレンも挙げられ、これらの各々は、ヒドロキシル及びシロキシから独立して選択される1基又は2基で任意選択的に置換されている。好ましい連結基としては、カルボキシレート、アミド、C~Cアルキレン-カルボキシレート-C~Cアルキレン、又はC~Cアルキレン-アミドC~Cアルキレンが更に挙げられる。
【0059】
連結基が部分(例えば、アルキレン-シクロアルキレン)の組み合わせから構成されている場合、部分は任意の順序で存在してもよい。これにかかわらず、列記する順序は、連結基が結合している末端重合性基から始まって、部分が化合物中に現れる好ましい順序を表す。
【0060】
「任意選択的に置換される」は、部分が1つ又は2つ以上の任意選択的な置換基を含有し得ることを意味する。「任意選択的な置換基」という用語は、基礎にある水素原子が置換基によって任意選択的に置換されることを意味する。置換部位において立体的に実用的であり、合成的に実現可能な任意の置換基が使用され得る。好適な任意選択的な置換基の識別は、当業者の能力の範囲内である。「任意選択的な置換基」の例としては、限定するものではないが、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~Cチオアルキル、C~Cシクロアルキル、アリール、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、NR、ベンジル、SOH、SONa、又は-Y-Pが挙げられ、式中、R及びRは、独立してH又はC~Cアルキルであり、Yは連結基であり、Pは重合性基である。前述の置換基は、任意選択的な置換基(これは、別途指示がない限り、好ましくは、更に置換されていない)で任意選択的に置換されてもよい。例えば、アルキルは、ハロによって置換されてもよい(例えば、CFをもたらす)。
【0061】
別途記載のない限り、比率、百分率、部などは重量による。
【0062】
別途記載のない限り、例えば、「2~10」のような数字範囲は、その範囲を定義する数字(例えば、2及び10)を含む。
【0063】
上記のように、本発明は、両性イオン重合性化合物を提供する。化合物は、式(I)の化合物であって、
【0064】
【化2】
式中、R、R、及びRが、独立して、H、アルキル、シクロアルキル、フェニル、又はベンジルであり、L及びLが、各々独立して連結基であり、Rが、重合性基である。
【0065】
式Iの化合物中のRは、Hである。式Iの化合物中のRは、C~Cアルキル、好ましくはC~Cアルキル、より好ましくはメチルであり得る。
【0066】
式Iの化合物中のRは、Hであり得る。
【0067】
式Iの化合物中のRは、Hであり得る。
【0068】
式Iの化合物中のL及びLは、独立して、アルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、オキサアルキレン、アルキレン-アミド-アルキレン、アルキレン-アミン-アルキレン、又はこれらの組み合わせであり得る。
【0069】
及びLは、独立してアルキレン、好ましくは独立してC~Cアルキレンであり得る。各アルキレンは、任意選択的に、例えば、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロ、アルコキシアルキル、及びオキソから独立して選択される1基又は2基で置換される。
【0070】
式Iの化合物中のPは、スチリル、ビニルカーボネート、ビニルエーテル、ビニルカルバメート、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、(メタ)アクリレート、又は(メタ)アクリルアミドであり得る。
【0071】
は、(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリルアミドであり得る。
【0072】
はメタクリレートであり得る。
【0073】
式Iの例示的な化合物を表1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
本発明の両性イオン重合性化合物は、様々な技術によって眼科用デバイスに組み込むためのポリマーに形成され得る。例えば、化合物は、ポリマーにホモ重合又は共重合されてもよく、それらのポリマーは、その後、眼科用デバイス上にコーティングされるか、又は眼科用デバイスが作製される反応性モノマー混合物に添加される(例えば、反応性モノマー混合物の他の成分と半相互貫入ネットワークを形成する)。
【0076】
本発明による両性イオン重合性化合物はまた、実施例によって更に実証されるように、グラフト化を介して眼科用デバイスに組み込まれ得る。例示的なグラフト化技術は、米国特許付与前公開第2018/0037690号に記載されており、その全体は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0077】
加えて、本発明による両性イオン重合性化合物は、眼科用デバイスを作製するために好適な他のモノマーを含有する反応性モノマー混合物に添加して、フリーラジカル重合条件下でそれと反応して、眼科用デバイスを作製することができるポリマーを形成し得る。このような反応性混合物は、上記の両性イオン重合性化合物に加えて、所望の眼科用デバイスを作製するのに好適な1つ又は2つ以上のモノマー、並びに任意選択的な成分を含み得る。したがって、反応性混合物は、例えば、親水性成分、疎水性成分、シリコーン含有成分、ポリアミドなどの湿潤剤、架橋剤、並びに希釈剤及び開始剤などの更なる成分を含有し得る。
【0078】
親水性成分
親水性モノマーの好適なファミリーの例としては、(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、N-ビニルイミド、N-ビニル尿素、O-ビニルカルバメート、O-ビニルカーボネート、他の親水性ビニル化合物、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0079】
親水性(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミドモノマーの非限定的な例としては、アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N-(4-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、2-アミノエチル(メタ)アクリレート、3-アミノプロピル(メタ)アクリレート、2-アミノプロピル(メタ)アクリレート、N-2-アミノエチル(メタ)アクリルアミド)、N-3-アミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-2-アミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス-2-アミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス-3-アミノプロピル(メタ)アクリルアミド)、N,N-ビス-2-アミノプロピル(メタ)アクリルアミド、グリセロールメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、(メタ)アクリル酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0080】
親水性モノマーはまた、アニオン性、カチオン性、双性イオン性、ベタイン、及びこれらの混合物など、イオン性であってもよい。このような荷電モノマーの非限定的な例としては、(メタ)アクリル酸、N-[(エテニルオキシ)カルボニル]-β-アラニン(VINAL)、3-アクリルアミドプロパン酸(ACA1)、5-アクリルアミドプロパン酸(ACA2)、3-アクリルアミド-3-メチルブタン酸(AMBA)、2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロリド(Q塩又はMETAC)、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、1-プロパンアミニウム,N-(2-カルボキシエチル)-N,N-ジメチル-3-[(1-オキソ-2-プロペン-1-イル)アミノ]-,分子内塩(CBT)、1-プロパンアミニウム,N,N-ジメチル-N-[3-[(1-オキソ-2-プロペン-1-イル)アミノ]プロピル]-3-スルホ-,分子内塩(SBT)、3,5-ジオキサ-8-アザ-4-ホスファウンデカ-10-エン-1-アミニウム,4-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチル-9-オキソ-,分子内塩,4-オキシド(9CI)(PBT)、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、3-(ジメチル(4-ビニルベンジル)アンモニオ)プロパン-1-スルホネート(DMVBAPS)、3-((3-アクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート(AMPDAPS)、3-((3-メタクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート(MAMPDAPS)、3-((3-(アクリロイルオキシ)プロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート(APDAPS)、及びメタクリロイルオキシ)プロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート(MAPDAPS)が挙げられる。
【0081】
親水性N-ビニルラクタムモノマー及びN-ビニルアミドモノマーの非限定的な例としては、N-ビニルピロリドン(NVP)、N-ビニル-2-ピペリドン、N-ビニル-2-カプロラクタム、N-ビニル-3-メチル-2-カプロラクタム、N-ビニル-3-メチル-2-ピペリドン、N-ビニル-4-メチル-2-ピペリドン、N-ビニル-4-メチル-2-カプロラクタム、N-ビニル-3-エチル-2-ピロリドン、N-ビニル-4,5-ジメチル-2-ピロリドン、N-ビニルアセトアミド(NVA)、N-ビニル-N-メチルアセトアミド(VMA)、N-ビニル-N-エチルアセトアミド、N-ビニル-N-エチルホルムアミド、N-ビニルホルムアミド、N-ビニル-N-メチルプロピオンアミド、N-ビニル-N-メチル-2-メチルプロピオンアミド、N-ビニル-2-メチルプロピオンアミド、N-ビニル-N,N’-ジメチル尿素、1-メチル-3-メチレン-2-ピロリドン、1-メチル-5-メチレン-2-ピロリドン、5-メチル-3-メチレン-2-ピロリドン、1-エチル-5-メチレン-2-ピロリドン、N-メチル-3-メチレン-2-ピロリドン、5-エチル-3-メチレン-2-ピロリドン、1-N-プロピル-3-メチレン-2-ピロリドン、1-N-プロピル-5-メチレン-2-ピロリドン、1-イソプロピル-3-メチレン-2-ピロリドン、1-イソプロピル-5-メチレン-2-ピロリドン、N-ビニル-N-エチルアセトアミド、N-ビニル-N-エチルホルムアミド、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルイソプロピルアミド、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルイミダゾール、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0082】
親水性O-ビニルカルバメートモノマー及びO-ビニルカーボネートモノマーの非限定的な例としては、N-2-ヒドロキシエチルビニルカルバメート及びN-カルボキシ-β-アラニンN-ビニルエステルが挙げられる。親水性ビニルカーボネートモノマー又はビニルカルバメートモノマーの更なる例は、米国特許第5,070,215号に開示されている。親水性オキサゾロンモノマーは、米国特許第4,910,277号に開示されている。
【0083】
他の親水性ビニル化合物としては、エチレングリコールビニルエーテル(EGVE)、ジ(エチレングリコール)ビニルエーテル(DEGVE)、アリルアルコール、及び2-エチルオキサゾリンが挙げられる。
【0084】
親水性モノマーはまた、(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルアミドなどの重合性部分を有する、直鎖若しくは分岐鎖ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、又はエチレンオキシド及びプロピレンオキシドの統計的ランダム若しくはブロックコポリマーのマクロマー又はプレポリマーであってもよい。これらのポリエーテルのマクロマーは、1つの重合性基を有し、プレポリマーは、2つ又は3つ以上の重合性基を有し得る。
【0085】
本発明の好ましい親水性モノマーは、DMA、NVP、HEMA、VMA、NVA、及びこれらの混合物である。好ましい親水性モノマーとしては、DMA及びHEMAの混合物が挙げられる。他の好適な親水性モノマーは、当業者には明らかとなるであろう。
【0086】
概して、反応性モノマー混合物中に存在し得る親水性モノマーの量に関して、特に制限はない。親水性モノマーの量は、含水量、透明性、湿潤性、タンパク質取り込みなどを含む、得られるヒドロゲルの所望の特性に基づいて選択され得る。湿潤性は、接触角によって測定され得、望ましい接触角は、約100°未満、約80°未満、及び約60°未満である。親水性モノマーは、反応性モノマー混合物中の反応性成分の総重量に基づき、例えば、約0.1~約100重量パーセントの範囲、代替的に約1~約80重量パーセントの範囲、代替的に約5~約65重量パーセントの範囲、代替的に約40~約60重量パーセントの範囲、又は代替的に約55~約60重量パーセントの範囲の量で存在し得る。
【0087】
シリコーン含有成分
本発明での使用に好適なシリコーン含有成分は、1つ又は2つ以上の重合性化合物を含み、各化合物は、独立して、少なくとも1つの重合性基、少なくとも1つのシロキサン基、及び重合性基をシロキサン基に接続する1つ又は2つ以上の連結基を含む。シリコーン含有成分は、例えば、下記に定義される基などの1~220個のシロキサン繰り返し単位を含有してもよい。シリコーン含有成分はまた、少なくとも1個のフッ素原子も含有し得る。
【0088】
シリコーン含有成分は、上で定義された1つ又は2つ以上の重合性基、1つ又は2つ以上の任意選択的に繰り返しシロキサン単位、及び重合性基をシロキサン単位に接続する1つ又は2つ以上の連結基を含み得る。シリコーン含有成分は、独立して、(メタ)アクリレート、スチリル、ビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、O-ビニルカルバメート、O-ビニルカーボネート、ビニル基、又はこれらの混合物である1つ又は2つ以上の重合性基、1つ又は2つ以上の任意選択的に繰り返しシロキサン単位、及び重合性基をシロキサン単位に接続する1つ又は2つ以上の連結基を含み得る。
【0089】
シリコーン含有成分は、独立して、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、スチリル、又は前述の混合物である1つ又は2つ以上の重合性基、1つ又は2つ以上の任意選択的に繰り返しシロキサン単位、及び重合性基をシロキサン単位に接続する1つ又は2つ以上の連結基を含み得る。
【0090】
シリコーン含有成分は、独立して、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、又は前述の混合物である1つ又は2つ以上の重合性基、1つ又は2つ以上の任意選択的に繰り返しシロキサン単位、及び重合性基をシロキサン単位に接続する1つ又は2つ以上の連結基を含み得る。
【0091】
式A.シリコーン含有成分は、式Aの1つ又は2つ以上の重合性化合物を含んでもよく、
【0092】
【化3】
式中、
少なくとも1つのRは、式R-L-の基であり、ここで、Rは、重合性基であり、Lは、連結基であり、残りのRは、それぞれ独立して、
(a)R-L-、
(b)1つ又は2つ以上のヒドロキシ、アミノ、アミド、アルコキシアルキル、カルボキシ、アルキルカルボキシ、カルボニル、アルコキシ、アミド、カルバメート、カーボネート、ハロ、フェニル、ベンジル、又はこれらの組み合わせで任意選択的に置換されているC~C16アルキル、
(c)1つ又は2つ以上のアルキル、ヒドロキシ、アミノ、アミド、アルコキシアルキル、カルボニル、アルコキシ、アミド、カルバメート、カーボネート、ハロ、フェニル、ベンジル、又はこれらの組み合わせで任意選択的に置換されているC~C12シクロアルキル、
(d)1つ又は2つ以上のアルキル、ヒドロキシ、アミノ、アミド、アルコキシアルキル、カルボキシ、アルキルカルボキシ、カルボニル、アルコキシ、アミド、カルバメート、カーボネート、ハロ、フェニル、ベンジル、又はこれらの組み合わせで任意選択的に置換されているC~C14アリール基、
(e)ハロ、
(f)アルコキシ、環状アルコキシ、又はアリールオキシ、
(g)シロキシ、
(h)ポリエチレンオキシアルキル、ポリプロピレンオキシアルキル、又はポリ(エチレンオキシ-co-プロピレンオキシアルキル)などのアルキレンオキシ-アルキル又はアルコキシ-アルキレンオキシ-アルキル、あるいは
(i)アルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、アルコキシアルキル、カルボキシ、アルキルカルボキシ、アルコキシ、アミド、カルバメート、ハロ又はこれらの組み合わせで任意選択的に置換されている1~100個のシロキサン繰り返し単位を含む一価シロキサン鎖であり、
nは、0~500、又は0~200、又は0~100、又は0~20であり、nが0以外であるとき、nが表示値と同等のモードを有する分布であることが理解される。nが2以上であるとき、SiO単位は、同じ又は異なるR置換基を担持してもよく、異なるR置換基が存在する場合、n基は、ランダム又はブロック構成であってもよい。
【0093】
式Aにおいて、3つのRは、それぞれ重合性基を含んでもよく、代替的に2つのRは、それぞれ重合性基を含んでもよく、又は代替的に1つのRは、重合性基を含んでもよい。
【0094】
本発明での使用に好適なシリコーン含有成分の例としては、限定するものではないが、表Aに列記される化合物が挙げられる。表Aの化合物がポリシロキサン基を含有する場合、このような化合物におけるSiO繰り返し単位の数は、別途記載のない限り、好ましくは3~100、より好ましくは3~40、又は更により好ましくは3~20である。
【0095】
【表2-1】
【0096】
【表2-2】
【0097】
好適なシリコーン含有成分の更なる非限定的な例は、表Bに列記されている。別途記載のない限り、適用可能であるj2は、好ましくは1~100、より好ましくは3~40、又は更により好ましくは3~15である。j1又はj2を含有する化合物において、j1とj2の合計は、好ましくは2~100、より好ましくは3~40、又は更により好ましくは3~15である。
【0098】
【表3-1】
【0099】
【表3-2】
【0100】
シリコーン含有成分の混合物を使用してもよい。例として、好適な混合物としては、4個及び15個のSiO繰り返し単位を含有するOH-mPDMSの混合物などの、異なる分子量を有するモノ-(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシプロピルオキシ)-プロピル末端モノ-n-ブチル末端ポリジメチルシロキサン(OH-MPDMS)の混合物、異なる分子量を有するOH-mPDMS(例えば、4個及び15個の繰り返しSiO繰り返し単位を含有する)と、ビス-3-アクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシプロピルポリジメチルシロキサン(ac-PDMS)などのシリコーン系架橋剤との混合物、2-ヒドロキシ-3-[3-メチル-3,3-ジ(トリメチルシロキシ)シリルプロポキシ]-プロピルメタクリレート(SiMAA)と、mPDMS 1000などのモノ-メタクリルオキシプロピル末端モノ-n-ブチル末端ポリジメチルシロキサン(mPDMS)との混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0101】
本発明で使用するシリコーン含有成分は、約400~約4000ダルトンの平均分子量を有し得る。
【0102】
シリコーン含有成分は、反応性混合物(希釈剤を除く)の、全ての反応性成分に基づいて、最大約95重量%、又は約10~約80重量%、又は約20~約70重量%の量で存在し得る。
【0103】
ポリアミド
反応性混合物は、少なくとも1つのポリアミドを含んでいてよい。本明細書で使用するとき、「ポリアミド」という用語は、アミド基を含有する繰り返し単位を含むポリマー及びコポリマーを指す。ポリアミドは、環状アミド基、非環状アミド基、及びこれらの組み合わせを含み得、当業者に既知の任意のポリアミドであってもよい。非環状ポリアミドは、ペンダント非環状アミド基を含み、ヒドロキシル基との会合が可能である。環状ポリアミドは、環状アミド基を含み、ヒドロキシル基との会合が可能である。
【0104】
好適な非環状ポリアミドの例としては、式G及びG1の繰り返し単位を含むポリマー及びコポリマーが挙げられ、
【0105】
【化4】
式中、Xは、直接結合、-(CO)-、又は-(CONHR44)-であり、式中、R44は、C~Cアルキル基であり、R40は、H、直鎖若しくは分岐鎖の置換若しくは非置換C~Cアルキル基、R41は、H、直鎖又は分岐鎖の置換又は非置換C~Cアルキル基、最大2個の炭素原子を有するアミノ基、最大4個の炭素原子を有するアミド基、及び最大2個の炭素基を有するアルコキシ基から選択され、R42は、H、直鎖若しくは分岐鎖の置換若しくは非置換C~Cアルキル基、又はメチル、エトキシ、ヒドロキシエチル、及びヒドロキシメチルから選択され、R43は、H、直鎖若しくは分岐鎖の置換若しくは非置換C~Cアルキル基、又はメチル、エトキシ、ヒドロキシエチル、及びヒドロキシメチルから選択され、R40及びR41の炭素原子の数は合計で、7、6、5、4、3、又はそれ以下を含む、8以下であり、R42及びR43の炭素原子の数は合計で、7、6、5、4、3、又はそれ以下を含む、8以下である。R40及びR41の炭素原子の数は、合計で6以下又は4以下であってよい。R42及びR43の炭素原子の数は、合計で6以下であってよい。本明細書で使用するとき、置換アルキル基は、アミン基、アミド基、エーテル基、ヒドロキシル基、カルボニル基、若しくはカルボキシル基、又はこれらの組み合わせで置換されているアルキル基を含む。
【0106】
40及びR41は、独立して、H、置換又は非置換C~Cアルキル基から選択され得る。Xは、直接結合であってもよく、R40及びR41は、独立して、H、置換又は非置換C~Cアルキル基から選択され得る。R42及びR43は、独立して、H、置換又は非置換C~Cアルキル基、メチル、エトキシ、ヒドロキシエチル、及びヒドロキシメチルから選択され得る。
【0107】
本発明の非環状ポリアミドは、式G若しくは式G1の繰り返し単位の大部分を含み得るか、又は非環状ポリアミドは、少なくとも約70モルパーセント、及び少なくとも80モルパーセントなど、式G若しくは式G1の繰り返し単位の少なくとも50モルパーセントを含み得る。式G及び式G1の繰り返し単位の具体的な例としては、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニル-N-メチルプロピオンアミド、N-ビニル-N-メチル-2-メチルプロピオンアミド、N-ビニル-2-メチル-プロピオンアミド、N-ビニル-N,N’-ジメチル尿素、N,N-ジメチルアクリルアミド、メタクリルアミド、並びに式G2及びG3の非環状アミド由来の繰り返し単位が挙げられる。
【0108】
【化5】
【0109】
環状ポリアミドを形成するために使用され得る好適な環状アミドの例としては、α-ラクタム、β-ラクタム、γ-ラクタム、δ-ラクタム、及びε-ラクタムが挙げられる。好適な環状ポリアミドの例としては、式G4の繰り返し単位を含むポリマー及びコポリマーが挙げられ、
【0110】
【化6】
式中、R45は、水素原子又はメチル基であり、fは、1~10の数であり、Xは、直接結合、-(CO)-、又は-(CONHR46)-であり、ここで、R46は、C~Cアルキル基である。式G4において、fは8以下であってもよく、7、6、5、4、3、2、又は1を含む。式G4中、fは、5、4、3、2、又は1を含む、6以下であり得る。式G4中、fは、2、3、4、5、6、7、又は8を含む、2~8であり得る。式G4中、fは、2又は3であり得る。Xが直接結合のとき、fは、2であり得る。かかる事例において、環状ポリアミドは、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone、PVP)であり得る。
【0111】
本発明の環状ポリアミドは、式G4の繰り返し単位の50モルパーセント以上を含んでもよく、又は環状ポリアミドは、少なくとも70モルパーセント、及び少なくとも80モルパーセントなど、式G4の繰り返し単位の少なくとも50モルパーセントを含んでもよい。
【0112】
ポリアミドはまた、環状アミド及び非環状アミドの両方の繰り返し単位を含むコポリマーであってもよい。追加の繰り返し単位は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、他の親水性モノマー、及びシロキサン置換(メタ)アクリレートから選択されるモノマーから形成され得る。好適な親水性モノマーとして列記されるモノマーのいずれも、追加の繰り返し単位を形成するためにコモノマーとして使用され得る。ポリアミドを形成するために使用され得る追加のモノマーの具体的な例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、アクリロニトリル、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート及びヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなど、並びにこれらの混合物が挙げられる。イオン性モノマーも含まれ得る。イオン性モノマーの例としては、(メタ)アクリル酸、N-[(エテニルオキシ)カルボニル]-β-アラニン(VINAL、CAS#148969-96-4)、3-アクリルアミドプロパン酸(ACA1)、5-アクリルアミドペンタン酸(ACA2)、3-アクリルアミド-3-メチルブタン酸(AMBA)、2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロリド(Q塩又はMETAC)、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、1-プロパンアミニウム,N-(2-カルボキシエチル)-N,N-ジメチル-3-[(1-オキソ-2-プロペン-1-イル)アミノ]-,分子内塩(CBT、カルボキシベタイン、CAS 79704-35-1)、1-プロパンアミニウム,N,N-ジメチル-N-[3-[(1-オキソ-2-プロペン-1-イル)アミノ]プロピル]-3-スルホ-,分子内塩(SBT、スルホベタイン、CAS 80293-60-3)、3,5-ジオキサ-8-アザ-4-ホスファウンデカ-10-エン-1-アミニウム,4-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチル-9-オキソ-,分子内塩,4-オキシド(9CI)(PBT、ホスホベタイン、CAS 163674-35-9、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、3-(ジメチル(4-ビニルベンジル)アンモニオ)プロパン-1-スルホネート(DMVBAPS)、3-((3-アクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート(AMPDAPS)、3-((3-メタクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート(MAMPDAPS)、3-((3-(アクリロイルオキシ)プロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート(APDAPS)、メタクリロイルオキシ)プロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート(MAPDAPS)が挙げられる。
【0113】
反応性モノマー混合物は、非環状ポリアミド及び環状ポリアミドの両方又はそれらのコポリマーを含んでもよい。非環状ポリアミドは、本明細書に説明される非環状ポリアミド又はこれらのコポリマーのいずれかであり得、環状ポリアミドは、本明細書に説明される環状ポリアミド又はこれらのコポリマーのいずれかであり得る。ポリアミドは、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルメチルアセトアミド(polyvinylmethyacetamide)(PVMA)、ポリジメチルアクリルアミド(PDMA)、ポリビニルアセトアミド(PNVA)、ポリ(ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド)、ポリアクリルアミド、並びにこれらのコポリマー及び混合物の群から選択され得る。ポリアミドは、PVP(例えば、PVP K90)とPVMA(例えば、約570KDaのMを有する)の混合物であってよい。
【0114】
反応性混合物中の全てのポリアミドの総量は、あらゆる場合において、反応性モノマー混合物の反応性成分の総重量に基づいて、1重量パーセント~約15重量パーセントの範囲内、及び約5重量パーセント~約15重量パーセントの範囲内など、1重量パーセント~約35重量パーセントの範囲内であり得る。
【0115】
理論に束縛されるものではないが、シリコーンヒドロゲルと共に使用されるとき、ポリアミドは内部湿潤剤として機能する。本発明のポリアミドは、非重合性であってもよく、この場合、半相互貫入ネットワークとしてシリコーンヒドロゲル内に組み込まれる。ポリアミドは、シリコーンヒドロゲル内に封入されるか、又は物理的に保持される。代替的に、本発明のポリアミドは、例えば、ポリアミドマクロマー又はプレポリマーとして重合性であり得、この場合、シリコーンヒドロゲル内に共有結合的に組み込まれる。重合性及び非重合性ポリアミドの混合物もまた、使用され得る。
【0116】
ポリアミドが反応性モノマー混合物内に組み込まれているとき、ポリアミドは、少なくとも100,000ダルトン、約150,000超、約150,000~約2,000,000ダルトン、約300,000~約1,800,000ダルトンの重量平均分子量を有し得る。反応性モノマー混合物と相溶性である場合、高分子量ポリアミドを使用することができる。
【0117】
架橋剤
概して、架橋モノマー、多官能性マクロマー、及びプレポリマーとも称される1つ又は2つ以上の架橋剤を反応性混合物に添加することが望ましい。架橋剤は、二官能性架橋剤、三官能性架橋剤、四官能性架橋剤、及びこれらの混合物から選択されてもよく、これにはシリコーン含有架橋剤及び非シリコーン含有架橋剤が含まれる。非シリコーン含有架橋剤としては、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、テトラエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)、トリアリルシアヌレート(TAC)、グリセロールトリメタクリレート、メタクリルオキシエチルビニルカーボネート(HEMAVc)、アリルメタクリレート、メチレンビスアクリルアミド(MBA)、及びポリエチレングリコールジメタクリレートが挙げられ、ポリエチレングリコールは、最大約5000ダルトンの分子量を有する。架橋剤は、通常の量、例えば、反応性配合物100グラム当たり約0.000415~約0.0156モルで反応性混合物中に使用される。代替的に、親水性モノマー及び/又はシリコーン含有成分が分子設計により、又は不純物のために多官能性である場合、反応性混合物への架橋剤の添加は、任意選択的である。架橋剤として作用することができ、存在する場合に反応性混合物への追加の架橋剤の添加を必要としない親水性モノマー及びマクロマーの例としては、(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミドでエンドキャップされたポリエーテルが挙げられる。他の架橋剤は当業者に既知となり、本発明のシリコーンヒドロゲルを作製するために使用され得る。
【0118】
配合物中の他の反応性成分のうちの1つ又は2つ以上に対して同様の反応性を有する架橋剤を選択することが望ましい場合がある。場合によっては、得られるシリコーンヒドロゲルのいくらかの物理的、機械的、又は生物学的特性を制御するために、異なる反応性を有する架橋剤の混合物を選択することが望ましい場合がある。シリコーンヒドロゲルの構造及び形態は、使用される希釈剤及び硬化条件によっても影響を受け得る。
【0119】
弾性率を更に増加させ、引張強度を維持するために、マクロマー、架橋剤、及びプレポリマーを含む、多官能性シリコーン含有成分も含まれ得る。シリコーン含有架橋剤は、単独で、又は他の架橋剤と組み合わせて使用され得る。架橋剤として作用することができ、存在する場合に反応性混合物への架橋モノマーの添加を必要としないシリコーン含有成分の例としては、α,ω-ビスメタクリロイルプロピル(bismethacryloxypropyl)ポリジメチルシロキサンが挙げられる。別の例は、ビス-3-アクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシプロピルポリジメチルシロキサン(ac-PDMS)である。
【0120】
硬い化学構造、及びフリーラジカル重合を受ける重合性基を有する架橋剤もまた使用され得る。好適な硬い構造の非限定的な例としては、1,4-フェニレンジアクリレート、1,4-フェニレンジメタクリレート、2,2-ビス(4-メタクリルオキシフェニル)-プロパン、2,2-ビス[4-(2-アクリルオキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン、及び4-ビニルベンジルメタクリレート、並びにこれらの組み合わせなど、フェニル及びベンジル環を含む架橋剤が挙げられる。硬い架橋剤は、全反応性成分の総重量に基づき、約0.5~約15、又は約2~10、3~7の量で含まれ得る。本発明のシリコーンヒドロゲルの物理的及び機械的特性は、反応性混合物中の成分を調整することによって特定の用途に最適化され得る。
【0121】
シリコーン架橋剤の非限定的な例としては、表Bに示される多官能性化合物などの、上記の多官能性シリコーン含有成分も含む。
【0122】
更なる構成成分
反応性混合物は、希釈剤、開始剤、UV吸収剤、可視光吸収剤、光互変化合物、医薬品、栄養補助剤、抗菌物質、着色剤、顔料、共重合性染料、非重合性染料、離型剤、及びこれらの組み合わせなどであるがこれらに限定されない、追加成分を含有し得る。
【0123】
シリコーンヒドロゲル反応性混合物用の好適な希釈剤の種類には、2~20個の炭素原子を有するアルコール、一級アミンから誘導される10~20個の炭素原子を有するアミド、及び8~20個の炭素原子を有するカルボン酸が挙げられる。希釈剤は、一級、二級及び三級アルコールであり得る。
【0124】
概して、反応性成分は、希釈剤中で混合して、反応性混合物を形成する。好適な希釈剤は、当該技術分野において既知である。シリコーンヒドロゲルについて、好適な希釈剤は、国際公開第03/022321号及び米国特許第6020445号に開示されており、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0125】
シリコーンヒドロゲル反応性混合物用の好適な希釈剤の種類には、2~20個の炭素を有するアルコール、一級アミンから誘導される10~20個の炭素原子を有するアミド、及び8~20個の炭素原子を有するカルボン酸が挙げられる。一級及び三級アルコールが使用され得る。好ましい種類には、5~20個の炭素を有するアルコール及び10~20個の炭素原子を有するカルボン酸が挙げられる。
【0126】
使用され得る具体的な希釈剤には、1-エトキシ-2-プロパノール、ジイソプロピルアミノエタノール、イソプロパノール、3,7-ジメチル-3-オクタノール、1-デカノール、1-ドデカノール、1-オクタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、2-オクタノール、3-メチル-3-ペンタノール、tert-アミルアルコール、tert-ブタノール、2-ブタノール、1-ブタノール、2-メチル-2-ペンタノール、2-プロパノール、1-プロパノール、エタノール、2-エチル-1-ブタノール、(3-アセトキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)-プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、1-tert-ブトキシ-2-プロパノール、3,3-ジメチル-2-ブタノール、tert-ブトキシエタノール、2-オクチル-1-ドデカノール、デカン酸、オクタン酸、ドデカン酸、2-(ジイソプロピルアミノ)エタノール、これらの混合物などが挙げられる。アミド希釈剤の例としては、N,N-ジメチルプロピオンアミド及びジメチルアセトアミドが挙げられる。
【0127】
好ましい希釈剤には、3,7-ジメチル-3-オクタノール、1-ドデカノール、1-デカノール、1-オクタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、2-オクタノール、3-メチル-3-ペンタノール、2-ペンタノール、t-アミルアルコール、tert-ブタノール、2-ブタノール、1-ブタノール、2-メチル-2-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、エタノール、3,3-ジメチル-2-ブタノール、2-オクチル-1-ドデカノール、デカン酸、オクタン酸、ドデカン酸、これらの混合物などが挙げられる。
【0128】
より好ましい希釈剤には、3,7-ジメチル-3-オクタノール、1-ドデカノール、1-デカノール、1-オクタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、2-オクタノール、1-ドデカノール、3-メチル-3-ペンタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、t-アミルアルコール、tert-ブタノール、2-ブタノール、1-ブタノール、2-メチル-2-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、3,3-ジメチル-2-ブタノール、2-オクチル-1-ドデカノール、これらの混合物などが挙げられる。
【0129】
希釈剤が存在する場合、概して、希釈剤の存在量に関して特定の制限はない。希釈剤を使用するとき、希釈剤は、(反応性配合物及び非反応性配合物を含む)反応性混合物の総重量に基づいて、約5~約50重量パーセントの範囲及び約15~約40重量パーセントの範囲など、約2~約70重量パーセントの範囲の量で存在し得る。希釈剤の混合物を使用してもよい。
【0130】
重合開始剤は、反応性混合物中で使用してもよい。重合開始剤としては、例えば、ラウリルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、イソ-プロピルパーカーボネート、アゾビスイソブチロニトリルなどの、中程度の高温でフリーラジカルを発生させるもの、並びに芳香族アルファ-ヒドロキシケトン、アルコキシオキシベンゾイン、アセトフェノン、アシルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド、及び三級アミン+ジケトン、これらの混合物などの光開始剤系のうちの少なくとも1つを挙げることができる。光開始剤の具体例としては、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4-4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド(DMBAPO)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(Irgacure 819)、2,4,6-トリメチルベンジルジフェニルホス-フィンオキシド及び2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾインメチルエステル、並びにカンファーキノンとエチル4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾエートとの組み合わせがある。
【0131】
市販の(IGM Resins B.V.(The Netherlands)製の)可視光開始剤系としては、Irgacure(登録商標)819、Irgacure(登録商標)1700、Irgacure(登録商標)1800、Irgacure(登録商標)819、Irgacure(登録商標)1850、及びLucrin(登録商標)TPO開始剤が挙げられる。市販の(IGM Resins B.V.製の)UV光開始剤としては、Darocur(登録商標)1173及びDarocur(登録商標)2959が挙げられる。使用され得るこれらの及び他の光反応開始剤は、Volume III,Photoinitiators for Free Radical Cationic & Anionic Photopolymerization,2nd Edition by J.V.Crivello & K.Dietliker;edited by G.Bradley;John Wiley and Sons;New York;1998.開始剤は、反応性混合物の光重合を開始するのに有効な量、例えば、反応性モノマー混合物の100部当たり約0.1~約2重量部で、反応性混合物中で使用される。反応性混合物の重合は、使用する重合開始剤に応じて熱又は可視光若しくは紫外光又は他の手段を適切に選択して使用して開始することができる。代替的に、開始は、光開始剤なしで電子ビームを使用して実施され得る。しかしながら、光開始剤が使用されるとき、好ましい開始剤は、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(Irgacure(登録商標)819)、又は1-ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトンとビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4-4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド(DMBAPO)との組み合わせなどの、ビスアシルホスフィンオキシドである。
【0132】
本発明の眼科用デバイスを作製するための反応性混合物は、式Iの両性イオン重合性化合物に加えて、上記の他の重合性化合物及び任意選択的な成分のいずれかを含んでもよい。
【0133】
好ましい反応性混合物は、式Iの両性イオン重合性化合物及び親水性成分を含み得る。
【0134】
好ましい反応性混合物は、式Iの両性イオン重合性化合物、並びにDMA、NVP、HEMA、VMA、NVA、メタクリル酸、及びこれらの混合物から選択される親水性成分を含み得る。HEMA及びメタクリル酸の混合物が好ましい。
【0135】
好ましい反応性混合物は、式Iの両性イオン重合性化合物、親水性成分、及びシリコーン含有成分を含み得る。
【0136】
好ましい反応性混合物は、式Iの両性イオン重合性化合物、親水性成分、及び式Aの化合物を含むシリコーン含有成分を含み得る。
【0137】
好ましい反応性混合物は、式Iの両性イオン重合性化合物、並びにDMA、NVP、HEMA、VMA、NVA、及びこれらの混合物から選択される親水性成分、式Aの化合物などのシリコーン含有成分、並びに内部湿潤剤を含み得る。
【0138】
好ましい反応性混合物は、式Iの両性イオン重合性化合物、DMA、HEMA、及びこれらの混合物から選択される親水性成分と、2-ヒドロキシ-3-[3-メチル-3,3-ジ(トリメチルシロキシ)シリルプロポキシ]-プロピルメタクリレート(SiMAA)、モノ-メタクリルオキシプロピル末端モノ-n-ブチル末端ポリジメチルシロキサン(mPDMS)、モノ-(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシプロピル)-プロピルエーテル末端モノ-n-ブチル末端ポリジメチルシロキサン(OH-mPDMS)、及びこれらの混合物から選択されるシリコーン含有成分と、湿潤剤(好ましくはPVP又はPVMA)と、を含み得る。親水性成分については、DMA及びHEMAの混合物が好ましい。シリコーン含有成分については、SiMAA及びmPDMSの混合物が好ましい。
【0139】
好ましい反応性混合物は、式Iの両性イオン重合性化合物、DMA、及びHEMAの混合物を含む親水性成分と、2~20個の繰り返し単位を有するOH-mPDMSの混合物(好ましくは4個及び15個の繰り返し単位の混合物)を含むシリコーン含有成分と、を含み得る。好ましくは、反応性混合物は、ac-PDMSなどのシリコーン含有架橋剤を更に含む。また好ましくは、反応性混合物は、湿潤剤(好ましくはDMA、PVP、PVMA、又はこれらの混合物)を含有する。
【0140】
好ましい反応性混合物は、式Iの両性イオン重合性化合物と、約1~約15重量%の少なくとも1つのポリアミド(例えば、非環状ポリアミド、環状ポリアミド、又はこれらの混合物)と、4~8個のシロキサン繰り返し単位を有する少なくとも1つの第1の単官能性ヒドロキシル置換ポリ(二置換シロキサン)(例えば、OH-mPDMS(式中、nは4~8であり、好ましくはnは4である))と、10~200個、又は10~100個、又は10~50個、又は10~20個のシロキサン繰り返し単位を有する単官能性ヒドロキシル置換ポリ(二置換シロキサン)である少なくとも1つの第2のヒドロキシル置換ポリ(二置換シロキサン)(例えば、OH-mPDMS(式中、nは10~200、又は10~100、又は10~50、又は10~20であり、好ましくはnは15である)と、約5~約35重量%の少なくとも1つの親水性モノマーと、任意選択的に、10~200個又は10~100個のシロキサン繰り返し単位を有する多官能性ヒドロキシル置換ポリ(二置換シロキサン)(例えば、ac-PDMS)と、を含み得る。好ましくは、第1の単官能性ヒドロキシル置換ポリ(二置換シロキサン)及び第2のヒドロキシル置換ポリ(二置換シロキサン)は、0.4~1.3又は0.4~1.0の第1の単官能性ヒドロキシル置換ポリ(二置換シロキサン)の重量パーセントの第2のヒドロキシル置換ポリ(二置換シロキサン)の重量パーセントに対する比を提供するような濃度で存在する。
【0141】
前述の反応性混合物は、1つ又は2つ以上開始剤、内部湿潤剤、架橋剤、UV、又は高エネルギー可視光吸収剤、及び希釈剤などであるが、これらに限定されない、任意選択的な成分を含有し得る。
【0142】
ヒドロゲルの硬化及びレンズの製造
反応性混合物は、振盪又は撹拌などの当該技術分野で既知の方法のいずれかによって形成され、既知の方法によるポリマー物品又はデバイスの形成に使用され得る。反応性成分は、反応性混合物を形成するために、希釈剤を使用するか又は使用しないかのいずれかで一緒に混合される。
【0143】
例えば、眼科用デバイスは、反応性成分及び任意選択的に希釈剤を重合開始剤と混合し、適切な条件で硬化させて、後で旋盤加工、切削などによって適切な形状に成形され得る生成物を形成することによって調製することができる。代替的に、反応性混合物は、成形型に入れた後に硬化させ、適切な物品にすることができる。
【0144】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズなどの成形眼科用デバイスを作製する方法は、反応性モノマー混合物を調製することと、反応性モノマー混合物を第1の成形型に移すことと、第2の成形型を、反応性モノマー混合物で充填された第1の成形型の上に配置することと、フリーラジカル共重合によって反応性モノマー混合物を硬化させて、コンタクトレンズの形状でシリコーンヒドロゲルを形成することと、を含み得る。
【0145】
反応性混合物は、回転成形及び静的成形を含む、コンタクトレンズの作製において、反応性混合物を成形するための任意の既知のプロセスを介して硬化されてもよい。回転成形方法は、米国特許第3,408,429号及び同第3,660,545号に開示され、静的成形方法は、米国特許第4,113,224号及び同第4,197,266号に開示されている。本発明のコンタクトレンズは、シリコーンヒドロゲルの直接成形により形成してもよく、これは経済的であり、含水レンズの最終形状を正確に制御できる。この方法では、反応性混合物は、所望の最終シリコーンヒドロゲルの形状を有する成形型内に配置され、反応性混合物は、モノマーが重合する条件に供され、それにより所望の最終製品のおよその形状のポリマーを生成する。
【0146】
硬化後、レンズを抽出に供して、未反応成分を除去し、レンズをレンズ成形型から取り外してもよい。抽出は、アルコールなどの有機溶媒など、従来の抽出流体を使用して行われてもよいし、又は水溶液を使用して抽出してもよい。
【0147】
水溶液は、水を含む溶液である。本発明の水溶液は、少なくとも約20重量パーセントの水、又は少なくとも約50重量パーセントの水、又は少なくとも約70重量パーセントの水、又は少なくとも約95重量パーセントの水を含み得る。水溶液はまた、無機塩又は離型剤、湿潤剤、スリップ剤、医薬成分及び栄養補助剤、これらの組み合わせなどの追加の水溶性配合物を含んでもよい。離型剤は、化合物又は化合物の混合物であり、これは、水と組み合わせると、離型剤を含まない水溶液を使用してコンタクトレンズを取り外すのに必要な時間と比較した場合、成形型からコンタクトレンズを取り外すのに必要な時間が減少する。水溶液は、精製、再利用又は特別な廃棄処理などの特別な取り扱いを必要としない場合がある。
【0148】
抽出は、例えば、水溶液中にこのレンズを浸漬すること、又は水溶液の流れにレンズをさらすことを介して行うことができる。抽出はまた、例えば、水溶液を加熱することと、水溶液を撹拌することと、水溶液の離型剤の濃度を、レンズの離型が生じるのに十分なレベルにまで増大させることと、レンズの機械的撹拌又は超音波撹拌と、少なくとも1種の濾過助剤又は抽出助剤を水溶液に取り入れて、未反応成分をレンズから適切に除去することを容易にするのに十分な濃度にすることと、のうちの1つ又は2つ以上を含むことができる。熱、振動又はその両方の追加の有無にかかわらず、前述は、バッチプロセス又は連続プロセスで行われてもよい。
【0149】
浸出及び離型を促進するために、物理的撹拌の適用が望ましい場合がある。例えば、レンズが付着しているレンズ成形型部分は、水溶液中で振動させるか又は前後運動させることができる。他の方法には、超音波を水溶液に通すことが含まれてもよい。
【0150】
レンズは、限定されないがオートクレービングなどの既知の手段により殺菌してもよい。
【0151】
本発明によるシリコーンヒドロゲル眼科用デバイス(例えば、コンタクトレンズ)は、好ましくは、以下の特性を示す。全ての値の前には「約」が付き、このデバイスは、列記する性質の任意の組み合わせを有することができる。特性は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許付与前公開第2018/0037690号に記載されているように、当業者に既知の方法によって決定することができる。
【0152】
平衡含水量%:少なくとも20%、又は少なくとも25%かつ最大80%、又は最大70%
ヘイズ:30%以下、又は10%以下
前進動的接触角(Wilhelmyプレート法):100°以下、又は80°以下、又は50°以下
引張弾性率(psi):150以下、又は135以下、120以下、又は80~135
酸素透過性(Dk、バーラー):少なくとも60バーラー、又は少なくとも80、又は少なくとも100、又は少なくとも150、又は少なくとも200
破断伸び:少なくとも100
イオン性シリコンヒドロゲルに関しては、(前述したものに加えて)以下の性質もまた好ましい場合がある。
リゾチーム取り込み(μg/レンズ):少なくとも100、又は少なくとも150、又は少なくとも500、又は少なくとも700
ポリクオタニウム1(PQ1)取り込み(%):15以下、又は10以下、又は5以下。
【0153】
上記の方法論によって眼科用デバイスに組み込まれることに加えて、両性イオン重合性化合物は、ブリスター包装の包装用溶液中で代替的に(又は加えて)使用され得る。したがって、本実施形態によれば、眼科用デバイス及び包装用溶液を含むブリスター包装が提供され得、包装用溶液は、上記のような両性イオン重合性化合物から誘導されるポリマーを含む。
【0154】
ブリスターパッケージは、一般に、ボウル部分及び箔トップを含む。これらの包装は、ソフトコンタクトレンズ及びその水性包装用溶液を収容する。ボウル部分は、任意の好適な材料から作製され得る。典型的には、ボウル部分は、ポリプロピレンなどの疎水性材料から作製される。ポリプロピレンは、コンタクトレンズ包装に一般的に使用される材料である。ポリプロピレンは、コンタクトレンズ製造の滅菌工程に耐えるのに十分な弾性であり、いくつかの好適な形状及びサイズに射出成形することができる。そのような包装の非限定的な例に関しては、米国特許第4,691,820号、同第5,054,610号、同第5,337,888号、同第5,375,698号、同第5,409,104号、同第5,467,868号、同第5,515,964号、同第5,609,246号、同第5,695,049号、同第5,697,495号、同第5,704,468号、同第5,711,416号、同第5,722,536号、同第5,573,108号、同第5,823,327号、同第5,704,468号、同第5,983,608号、同第6,029,808号、同第6,044,966号、及び同第6,401,915号を参照されたく、これらの全ては、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0155】
コンタクトレンズなどの眼科用デバイスと共に使用するための包装用溶液は周知である。好適な溶液には、食塩水、他の緩衝液、及び脱イオン水が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、包装用溶液は、塩を含有する生理食塩水で、塩化ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、又は同酸の対応するカリウム塩を含み得るが、これらに限定されない。これらの成分は、一般に化合されて、酸及びその共役塩基を含む緩衝液を形成するので、酸及び塩基の添加は、pHに比較的小さな変化しか引き起こさない。緩衝液は更に、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、水酸化ナトリウム、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-2,2’,2”-ニトリロトリエタノール、n-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、酢酸、酢酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸など、及びこれらの組み合わせを含んでもよい。好ましくは、溶液は、ホウ酸緩衝水溶液若しくはリン酸緩衝生理食塩水溶液である。
【0156】
ここで、本発明のいくつかの実施形態を、以下の実施例にて詳細に記述する。
【実施例
【0157】
コンタクトレンズを特徴付けるために使用される試験方法は、以下に記載される。いくつかの略語を見出しとして表に使用し、括弧内の表にいくつかの標準偏差を報告した。
【0158】
含水量は、重力測定法で測定した。レンズは、包装溶液中で24時間平衡化した。3枚の試験レンズをそれぞれ、先端がスポンジ状のスワブを使用して包装溶液から取り出し、包装溶液で湿らせておいたブロッティングワイプ上に置く。レンズの両面をこのワイプと接触させる。ピンセットを使用して、試験レンズを風袋重量測定した秤量皿に置き、秤量する。次いで、更に2セットの試料を調製し、秤量する。全ての重量測定は3回行い、それらの値の平均を計算に使用した。湿重量は、秤量皿及び湿レンズの総合重量から秤量皿単独の重量を引いたものとして定義される。
【0159】
乾燥重量は、60℃で30分間予熱した真空オーブンに試料皿を置いて測定した。圧力が少なくとも1インチHgに達するまで真空を適用し、より低圧も許容される。真空バルブ及びポンプがオフにされ、レンズが少なくとも12時間(通常一晩)、乾燥される。パージバルブが開口されて、乾燥空気又は乾燥窒素ガスが入る。オーブンを大気圧に到達させる。秤量皿を取り出し、秤量する。乾燥重量は、秤量皿及び乾燥レンズの総合重量から秤量皿単独の重量を引いたものとして定義される。試験レンズの含水量は、以下のように計算した:%含水量(%WC)=(湿重量-乾燥重量)/湿重量×100。平均含水量及びその標準偏差を計算し、平均値は、試験レンズのパーセント含水量として報告された。標準偏差は、表において、括弧内列記されている。
【0160】
グラフト化重量増加率(%GWG)を以下のように計算した:(グラフト化レンズの乾燥重量-基材レンズの乾燥重量)/基材レンズ×100の乾燥重量。グラフト化レンズ及び基材レンズの両方を、脱イオン水中で数時間平衡させ、真空乾燥の前にあらゆる残留塩を取り除いた。通常、各試料について少なくとも3個のレンズの重量を量り、平均した。
【0161】
コンタクトレンズの屈折率(RI)をLeica ARIAS 500 Abbe屈折計の手動モード、又はReichert ARIAS 500 Abbe屈折計の自動モードで、100マイクロメートルのプリズムギャップ距離で測定した。機器は、脱イオン水を使用して20℃(±0.2℃)にて較正した。プリズムアセンブリを開いて、光源に最も近い磁性ドット間の下方プリズムの上に試験レンズを配置した。プリズムが乾燥している場合は、数滴の生理食塩水を底部プリズムに塗布した。レンズの前面湾曲部を底部プリズムに接触させた。次いで、プリズムアセンブリを閉じた。陰影線がレチクル視野に現れるように対照を調節した後、屈折率を測定した。RI測定は、5枚の試験レンズで行われた。5つの測定から計算された平均RIは、その標準偏差と共に屈折率として記録された。
【0162】
ここで、本発明を以下の実施例を参照しながら説明する。本発明の例示の実施形態をいくつか説明するに先立ち、本発明が以下の説明において明らかにされる構成又は処理工程の詳細に限定されないことが理解されよう。本発明は、他の実施形態が可能であり、かつ様々な手法で実践又は実行できる。
【0163】
以下の略語は、実施例を通して使用され、以下の意味を有する。
DMA:N,N-ジメチルアクリルアミド(Jarchem)
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート(Bimax)
CBT:1-プロパンアミニウム,N-(2-カルボキシエチル)-N,N-ジメチル-3-[(1-オキソ-2-プロペン-1-イル)アミノ]-,分子内塩、カルボキシベタイン、CAS 79704-35-1
【0164】
【化7】
Norbloc:2-(2’-ヒドロキシ-5-メタクリリルオキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール(Janssen)
Blue HEMA:1-アミノ-4-[3-(4-(2-メタクリロイルオキシ-エトキシ)-6-クロロトリアジン-2-イルアミノ)-4-スルホフェニルアミノ]アントラキノン-2-スルホン酸(米国特許第5,944,853号に記載)
PVP K90:ポリ(N-ビニルピロリドン)(ISP Ashland)
EGDMA:エチレングリコールジメタクリレート(Esstech)
TEGDMA:テトラエチレングリコールジメタクリレート(Esstech)
AIBN:アゾビスイソブチロニトリル
Omnirad 403:ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド
Omnirad 819:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(IGM樹脂)
Omnirad 1173:2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン
Omnirad 1700:25重量%のOmnirad 403及び75重量%のOmnirad 1173の混合物
TEMPO:(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシル又は(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシダニル
HO-mPDMS:モノ-n-ブチル末端モノ-(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシプロピル)-プロピルエーテル末端ポリジメチルシロキサン(M=400-1500g/mol)(Ortec又はDSM-Polymer Technology Group)
HO-mPDMS(n=4):
【0165】
【化8】
HO-mPDMS(n=15):
【0166】
【化9】
nBu:n-ブチル
PP:プロピレンのホモポリマーであるポリプロピレン
Z:ポリシクロオレフィン熱可塑性ポリマーであるZeonor(Nippon Zeon Co Ltd)
D3O:3,7-ジメチル-3-オクタノール(Vigon)
BAGE:ホウ酸グリセロールエステル(ホウ酸のグリセロールに対するモル比は1:2であった)、299.3グラム(mol)のグリセロール及び99.8グラム(mol)のホウ酸を、好適な反応器内で1247.4グラムの5%(重量/重量)エチレンジアミン四酢酸水溶液に溶解させた後、適度な減圧下(2~6トル)にて4~5時間撹拌しながら90~94℃まで加熱し、室温まで冷却した。
【0167】
ホウ酸塩緩衝包装用溶液:18.52グラム(300mmol)のホウ酸、3.7グラム(9.7mmol)のホウ酸ナトリウム十水和物、及び28グラム(197mmol)の硫酸ナトリウムを、十分な脱イオン水に溶解させて、2リットルのメスフラスコを満たした。
mL:ミリリットル
nm:ナノメートル
LED:発光ダイオード
TL03光:Phillips TLK 40W/03電球
NMR:核磁気共鳴分光法
O:酸化ジューテリウム
【0168】
実施例1
3-(1-(3-メタクリルアミドプロピル)-1H-イミダゾール-3-イウム-3-イル)プロパノエート(A)の合成
【0169】
【化10】
【0170】
1-(3-メタクリルアミドプロピル)-1H-イミダゾール(19.3グラム、0.1モル)及びエチル-3-ブロモプロピオネート(19.0グラム、0.105モル)の10mLのエタノール溶液を、一定撹拌しながら80℃で加熱した。8時間後、この混合物を室温まで冷却し、エチルアルコールを減圧下で蒸発させた。残留物質を150mLの水に溶解させ、100mLの酢酸エチルで3回洗浄した。0.1グラムのブチル化ヒドロキシトルエンを添加した後、温度を20℃以下に維持しながら、揮発性有機成分を50mmHgの圧力で蒸発させた。炭酸ナトリウム(15g、約1.4当量)を水溶液に加え、室温で24時間撹拌した。水の回転蒸発後、残留固体を温かいアセトニトリル(2X150mL)で洗浄し、液体をデカントする。粗生成物を(5:95)エチルアルコールに再溶解させ、アセトニトリル混合物を濾過する。150mgのブチル化ヒドロキシトルエンを濾液に添加した後、溶媒を減圧下で蒸発させ、結果として得られた固体を酢酸エチルで洗浄し、更にロータリーエバポレーター内で乾燥させて、所望の生成物(化合物(A))を得る。化合物(A)は、3-(1-(3-メタクリルアミドプロピル)-1H-イミダゾール-3-イウム-3-イル)プロパノエートである。H NMR(500MHz,DO)δ(ppm):1.93(3H,s,CH),2.18(2H,dddd,J=6.5Hz,CH),2.77(2H,t,J=7Hz,CH),3.35(2H,t,J=6.5Hz,CH),4.28(2H,t,J=7Hz,CH),4.43(2H,t,J=6.5Hz),5.48(1H,bs,vinylic),5.70(1H,bs,vinylic),7.54-7.55(2H,dd,J=5,2Hz,Ar-H),8.83(1H,bs,Ar-H)。
【0171】
実施例2
3-(1-(3-メタクリルアミドプロピル)-2-メチル-1H-イミダゾール-3-イウム-3-イル)プロパノエート(B)の合成
【0172】
【化11】
【0173】
無水メタクリル酸(34グラム、0.22モル)を、温度を10℃未満に維持しながら、水中で2-メチル-1-(3-アミノプロピル)-1H-イミダゾール(27.8グラム、0.2モル)及び23.32グラムの炭酸ナトリウム(0.22モル)の冷却かつ撹拌した懸濁液に滴下して添加した。この溶液を室温まで加温し、更に3時間撹拌した。0.05グラムのブチル化ヒドロキシトルエンを反応混合物に添加した後、揮発性成分を20℃未満の温度で減圧下で蒸発させた。生成物を、酢酸エチルとヘキサンとの75:25(体積/体積)混合物に再溶解し、短いシリカゲルプラグを通して濾過した。次いで、溶媒を減圧下で蒸発させ、生成物を「そのまま」として、続くアルキル化反応のために使用して、所望の両性イオンを形成した。2-メチル-1-(3-アクリルアミドプロピル)-1H-イミダゾール(10.4グラム、0.05モル)及びβ-ラクトン(3.6グラム、0.06モル)を、100ミリグラムの懸濁炭酸ナトリウムを含有する50mLのエチルアルコールに溶解した。混合物を室温で20時間撹拌した後、溶液は薄層クロマトグラフィーによって単一の主生成物を含有するように見えた。100mLの酢酸エチルを添加し、混合物をフリットガラス漏斗を通して真空濾過して、炭酸ナトリウムを除去した。20℃未満の温度を維持しながら、全ての揮発性成分を減圧下で蒸発させた。残渣を温酢酸エチルで2回未満洗浄し、フリットガラス漏斗で真空濾過した。濾液を減圧下で乾燥させて、所望の生成物(化合物(B))を得た。H NMR(500MHz,DO)δ(ppm):1.93(3H,s,CH),2.11(2H,m,CH),2.64(3H,s,CH),2.65-2.69(2H,m,CH),3.35(2H,t,J=6.75Hz,CH),4.17(2H,m,CH),4.33(2H,m,CH),5.48(1H,s,vinylic),5.70(1H,s,vinylic),7.42(2H,s,vinylic)。
【0174】
実施例3
4-(1-(3-メタクリルアミドプロピル)-2-メチル-1H-イミダゾール-3-イウム-3-イル)ブタノエート(C)の合成
【0175】
【化12】
【0176】
20mLのエタノール中の2-メチル-1-(3-アクリルアミドプロピル)-1H-イミダゾール(10グラム、0.048モル)及び10.3グラムのエチル4-ブロモブチレート(1.1当量)の溶液を、撹拌しながら80℃で加熱し、薄層クロマトグラフィーにより反応をモニタリングした。一晩撹拌した後、混合物を室温まで冷却した。0.100グラムのBHTを添加し、温度を20℃未満に維持しながら、揮発性成分を減圧下で蒸発させた。生成物を水に溶解し、混合物を100mLの酢酸エチルで3回抽出し、未反応の4-ブロモブチレートを除去した。0.100グラムのブチル化ヒドロキシトルエン及び6.0グラムの炭酸ナトリウム(0.056モル)を水性部分に添加した。次いで、水性部分を室温で撹拌して、所望の両性イオンを生成した。反応が完了したら、揮発性成分を減圧下で蒸発させ、温度を20℃未満に維持した。生成物をアセトニトリル中10%(体積/体積)エチルアルコールに再溶解し、結果として得られた懸濁液を濾過して、残留炭酸ナトリウムを除去した。揮発性溶媒を減圧下で濾液から除去し、温度を20℃未満に維持した。生成物(化合物(C))を、フリットガラス漏斗上で温かいアセトニトリルで洗浄し、所望の両性イオンを得た。H NMR(500MHz,DO)δ(ppm):1.94(3H,s,CH),2.07(1H,m,CH),2.14(1H,m,CH),2.24(2H,t,J=7.5Hz,CH),2.63(3H,s,CH),3.37(2H,t,J=7.25Hz,CH),4.15(2H,t,J=7.25Hz,CH),4.20(2H,t,J=7.25Hz),CH),5.48(1H,s,vinylic),5.70(1H,s,vinylic),7.44(2H,s,Ar-H)。
【0177】
実施例4-グラフト化シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ
表2に列記される75重量パーセントの配合物及び25重量パーセントの希釈剤D3Oで構成される反応性モノマー混合物を調製した。反応性モノマー混合物を、圧力下でステンレス鋼シリンジを使用して3μmフィルターを通して濾過し、続いて減圧下で約30分間脱気した。窒素ガス雰囲気及び0.2パーセント未満の酸素ガス(体積/体積)を有するグローブボックス内で、約75~100μLの反応性混合物は、エッペンドルフピペットを使用して室温でZeonorからなるフロントカーブ成形型内に分注した。次いで、55:45(重量/重量)のZeonor及びポリプロピレンのブレンドから作製されたベースカーブ成形型をフロントカーブ成形型の上に配置した。成形型を、分注前にグローブボックス内で最低12時間平衡化させた。それぞれが8個のレンズ成形型アセンブリを含有する約4個のパレットを含有するプレートを、約62℃に維持した隣接するグローブボックスに移し、4mW/cmの強度を有する435nmのLED光を使用して、12分間、上からレンズを硬化した。
【0178】
黄色光の元で作業し、(例えば、容器をアルミホイルなどで包むことで)更なる露光への一般的な露光を制限することにより、ほとんどのレンズがフロントカーブ成形型に接着している状態で、レンズを手動で成形型から取り出し、70パーセントのイソプロパノール中にレンズを約1又は2時間(15mL当たり約1個のレンズ)、場合により一晩懸濁することによって剥離され、続いて、70パーセントイソプロパノールで2回、脱イオン水で2回洗浄し、最終的に、アルミホイルで覆った容器内で脱イオン水に入れて、冷蔵庫で保管した。これらのレンズ(4A)は、化学グラフト化反応が開始され得る共有結合モノアシルホスフィンオキシド基を含んでいた。各洗浄工程を約30分続けた。当業者は、正確なレンズ剥離プロセスが、イソプロパノール水溶液の濃度、各溶媒での洗浄の回数及び各工程の継続時間に関して、レンズ配合及び成形型材料に応じて変化させることができることを理解している。レンズ剥離プロセスの目的は、希釈剤が膨潤したネットワークから、脱イオン水又は包装用の溶液膨潤ヒドロゲルに、全てのレンズを欠陥なく剥離させることである。
【0179】
25枚のレンズ(4A)を、100mLのガラスジャー内の、50:50(体積/体積)の1,2-プロピレングリコール水溶液の10%(重量/体積)CBT溶液(50mL)に懸濁させ、減圧下(約40mmHg)にて15分間脱気し、窒素ガスを通気してパージした。ジャーにキャップを付け、0.2パーセント未満の酸素ガス(体積/体積)を含む窒素ガス雰囲気かつ温度が55℃のグローブボックスに移し、振盪器で90分間平衡させた(180rpm)。次いで、懸濁液の温度は、55℃であった。キャップを透明なプラスチックカバーで置き換え、懸濁液を振盪しながら、1.2mW/cmの強度を有する420のLEDを使用して上から20分間照射した。照射後、レンズを取り出し、脱イオン水にて2回、ホウ酸塩緩衝包装用溶液で2回洗浄した。レンズをバイアル瓶内で保管した。1日平衡化させた後、レンズを検査し、122℃で30分間オートクレービングして滅菌した。レンズ(4B)は滅菌後、3~4日平衡させ、その後、表3に列記したように滅菌レンズの物理的特性を測定した。
【0180】
25枚のレンズ(4A)を、100mLのガラスジャー内の、50:50(体積/体積)の1,2-プロピレングリコール水溶液の10%(重量/体積)化合物(B)溶液(50mL)に懸濁させ、減圧下(約40mmHg)にて15分間脱気し、窒素ガスを通気してパージした。ジャーにキャップを付け、0.2パーセント未満の酸素ガス(体積/体積)を含む窒素ガス雰囲気かつ温度が55℃のグローブボックスに移し、振盪器で90分間平衡させた(180rpm)。次いで、懸濁液の温度は、55℃であった。キャップを透明なプラスチックカバーで置き換え、懸濁液を振盪しながら、1.2mW/cmの強度を有する420のLEDを使用して上から20分間照射した。照射後、レンズを取り出し、脱イオン水にて2回、ホウ酸塩緩衝包装用溶液で2回洗浄した。レンズをバイアル瓶内で保管した。1日平衡化させた後、レンズを検査し、122℃で30分間オートクレービングして滅菌した。レンズ(4C)は滅菌後、3~4日平衡させ、その後、表3に列記したように滅菌レンズの物理的特性を測定した。
【0181】
25枚のレンズ(4A)を、100mLのガラスジャー内の、50:50(体積/体積)の1,2-プロピレングリコール水溶液の10%(重量/体積)化合物(C)溶液(50mL)に懸濁させ、減圧下(約40mmHg)にて15分間脱気し、窒素ガスを通気してパージした。ジャーにキャップを付け、0.2パーセント未満の酸素ガス(体積/体積)を含む窒素ガス雰囲気かつ温度が55℃のグローブボックスに移し、振盪器で90分間平衡させた(180rpm)。次いで、懸濁液の温度は、55℃であった。キャップを透明なプラスチックカバーで置き換え、懸濁液を振盪しながら、1.2mW/cmの強度を有する420のLEDを使用して上から20分間照射した。照射後、レンズを取り出し、脱イオン水にて2回、ホウ酸塩緩衝包装用溶液で2回洗浄した。レンズをバイアル瓶内で保管した。1日平衡化させた後、レンズを検査し、122℃で30分間オートクレービングして滅菌した。レンズ(4D)は滅菌後、3~4日平衡させ、その後、表3に列記したように滅菌レンズの物理的特性を測定した。
【0182】
【表4】
【0183】
【表5】
【0184】
グラフト化レンズ4Dは、許容可能な円形度を有する円形であった。グラフト化レンズ4Cは、わずかに円形でないが、許容可能であった。グラフト化レンズ4Bは、波形縁部で完全に歪んだ。
【0185】
実施例5-ポリマー
調製1
50.0グラム(39.2mmol)のテルル粉末を無水テトラヒドロフラン中の14.4mLの3.0Mメチルリチウム溶液(43.1mmol)と反応させて、テルロラート中間体を形成し、これを8.82グラム(45.1mmol)のエチルα-ブロモイソブチレートと反応させて、有機テルル仲介リビングラジカル重合メディエーター、エチル2-メチル-2-メチルテラニル-プロパノエート(Te-Me)を形成した。反応は、金属交換工程のための氷浴で実施した。エチルα-ブロモイソブチレートの添加後、反応混合物を温め、反応が完了するまで室温で維持した(約2時間)。その後、テトラヒドロフランをロータリーエバポレーターにて減圧下で除去した。粗生成物を50~55℃(1~2mbar)で真空蒸留して、有機テルル仲介リビングラジカル重合メディエーター、Te-Meを得、プロトン核磁気共鳴スペクトル法によって同定した。
【0186】
以下の実施例5A~5D、及び6は先見的であり、本発明を更に説明するために役立つ。
【0187】
実施例5A
26.5グラム(100mmol)の化合物(A)及び578ミリグラム(3.5mmol)のAIBNを1リットル反応器内に添加し、約250mLの50:50(体積/体積)水性メタノールに溶解する。室温で約15分間、窒素ガスを、系を通してバブリングすることによって、溶液を脱気する。反応混合物を窒素ガス雰囲気下で60~62℃で約12時間加熱し、次いで、室温まで冷却する。溶媒を減圧下にて蒸発させる。アセトンを残渣に添加する。結果として得られた混合物を、一定の撹拌で12時間、62℃に加熱する。その後、混合物を室温まで冷却する。室温で2時間放置すると、不溶性固体は沈殿する。アセトンをデカントし、廃棄する。粗生成物を、撹拌しながら、室温でアセトン中で更に2時間すすぎ洗いする。アセトンをデカントし、廃棄する。次いで、ホモポリマーを60~65℃で一定の重量まで真空乾燥する。
【0188】
実施例5B
13.3グラム(50mmol)の化合物(A)、5.0グラム(50mmol)のDMA、及び578ミリグラム(3.5mmol)のAIBNを1リットル反応器内に添加し、約250mLの50:50(体積/体積)水性メタノールに溶解する。室温で約15分間、窒素ガスを、系を通してバブリングすることによって、溶液を脱気する。反応混合物を窒素ガス雰囲気下で60~62℃で約12時間加熱し、次いで、室温まで冷却する。溶媒を減圧下にて蒸発させる。アセトンを残渣に添加する。結果として得られた混合物を、一定の撹拌で12時間、62℃に加熱する。その後、混合物を室温まで冷却する。室温で2時間放置すると、不溶性固体は沈殿する。アセトンをデカントし、廃棄する。粗生成物を、撹拌しながら、室温でアセトン中で更に2時間すすぎ洗いする。アセトンをデカントし、廃棄する。次いで、コポリマーを60~65℃で一定の重量まで真空乾燥する。
【0189】
実施例5C
13.3グラム(50mmol)の化合物(A)、5.0グラム(50mmol)のDMA、907ミリグラム(3.5mmol)のTe-Me、及び578ミリグラム(3.5mmol)のAIBNを1リットル反応器内に添加し、約250mLの50:50(体積/体積)水性メタノールに溶解する。室温で約15分間、窒素ガスを、系を通してバブリングすることによって、溶液を脱気する。反応混合物を窒素ガス雰囲気下で60~62℃で約12時間加熱し、次いで、室温まで冷却する。溶媒を減圧下にて蒸発させる。アセトンを残渣に添加する。結果として得られた混合物を、一定の撹拌で12時間、62℃に加熱する。その後、混合物を室温まで冷却する。室温で2時間放置すると、不溶性固体は沈殿する。アセトンをデカントし、廃棄する。粗生成物を、撹拌しながら、室温でアセトン中で更に2時間すすぎ洗いする。アセトンをデカントし、廃棄する。次いで、コポリマーを60~65℃で一定の重量まで真空乾燥する。
【0190】
実施例5D
13.3グラム(50mmol)の化合物(A)、907ミリグラム(3.5mmol)のTe-Me、及び578ミリグラム(3.5mmol)のAIBNを1リットル反応器内に添加し、約250mLの1-プロパノールに溶解する。室温で約15分間、窒素ガスを、系を通してバブリングすることによって、溶液を脱気する。反応混合物を窒素ガス雰囲気下で60~62℃で約3時間加熱する。13.0グラム(100mmol)のHEMAを30mLの1-プロパノールに溶解し、室温で15分間、系を通して窒素ガスをバブリングすることによって脱気し、反応容器に充填し、約6時間持続して撹拌しながら70~72℃で加熱する。最後に、13.3グラム(50mmol)の化合物(A)を30mLの1-プロパノールに溶解し、室温で15分間、系を通して窒素ガスをバブリングすることによって脱気し、反応容器に充填し、約4時間持続して撹拌しながら60~62℃で加熱する。
【0191】
反応混合物の揮発性成分をロータリーエバポレーターにて減圧下で除去する。粗生成物を60℃で400mLのトルエンに再溶解し、室温まで冷却する。混合溶媒系を回転蒸発によって除去して、1-プロパノールを含まない粗生成物を得る。粗生成物は、メチルテルル末端基を含有する。この有機金属末端基を除去するために、粗生成物を、メチルテルルの理論モル量の3.5倍を表す量のTEMPOを含有する250mLのトルエンに溶解する。この溶液を88℃で4時間加熱する。反応混合物を室温まで冷却し、次いで揮発性成分をロータリーエバポレーター上にて60~65℃で蒸発させる。残渣を1000mLのアセトニトリル中に72℃で30分間溶解して、混濁溶液を形成する。この濁った溶液を、室温に冷却した。ある時間放置した後、不溶性固体を沈殿させた後、溶媒をデカントする。トリブロックコポリマーを、アセトニトリルから蒸発することによって単離し、60~65℃で一定重量まで真空乾燥させた。トリブロックコポリマーは、沈殿又は抽出によって更に精製され得る。
【0192】
実施例6-ヒドロゲルコンタクトレンズ
50重量パーセントの表4に列記する配合物及び50重量パーセントの希釈剤BAGEで構成される反応性モノマー混合物を調製する。反応性モノマー混合物を、圧力下でステンレス鋼シリンジを使用して3μmフィルターを通して濾過し、続いて減圧下で約30分間脱気する。窒素ガス雰囲気及び0.2パーセント未満の酸素ガス(体積/体積)を有するグローブボックス内で、約75~100μLの反応性混合物は、エッペンドルフピペットを使用して室温でZeonorからなるフロントカーブ成形型内に分注する。次いで、55:45(重量/重量)のZeonor及びポリプロピレンのブレンドから作製されたベースカーブ成形型をフロントカーブ成形型の上に配置する。成形型を、分注前にグローブボックス内で最低12時間平衡化させる。それぞれが8個のレンズ成形型アセンブリを含有する約4個のパレットを含有するプレートを、約62℃に維持した隣接するグローブボックスに移し、4.5mW/cmの強度を有するTL03光を使用して、5分間、上からレンズを硬化する。
【0193】
レンズは、フロントカーブ成形型に接着しているほとんどのレンズと手動で成形型から取り出され、80パーセントのイソプロパノール中にレンズを約1又は2時間(15mL当たり約1個のレンズ)、場合により一晩懸濁することによって剥離され、続いて、80パーセントイソプロパノールで2回、脱イオン水で2回、ホウ酸塩緩衝包装用溶液で2回洗浄し、最終的に、バイアル瓶中のホウ酸塩緩衝包装用溶液中に保管される。1日平衡化させた後、レンズを検査し、122℃で30分間オートクレービングして滅菌した。
【0194】
【表6】
【0195】
〔実施の態様〕
(1) 式Iの両性イオン重合性化合物であって、
【0196】
【化13】
式中、R、R、及びRが、独立して、H、アルキル、シクロアルキル、フェニル、又はベンジルであり、
及びLが、各々独立して連結基であり、
が、重合性基である、化合物。
(2) Rが、H又はC~Cアルキルである、実施態様1に記載の化合物。
(3) Rが、Hである、実施態様1~2のいずれかに記載の化合物。
(4) Rが、Hである、実施態様1~3のいずれかに記載の化合物。
(5) L及びLが、独立して、アルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、オキサアルキレン、アルキレン-アミド-アルキレン、アルキレン-アミン-アルキレン、又はこれらの組み合わせである、実施態様1~4のいずれかに記載の化合物。
【0197】
(6) L及びLが、独立してアルキレンである、実施態様1~5のいずれかに記載の化合物。
(7) Pが、スチリル、ビニルカーボネート、ビニルエーテル、ビニルカルバメート、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、(メタ)アクリレート、又は(メタ)アクリルアミドを含む、実施態様1~6のいずれかに記載の化合物。
(8) 3-(1-(3-メタクリルアミドプロピル)-1H-イミダゾール-3-イウム-3-イル)プロパノエート、
3-(1-(3-メタクリルアミドプロピル)-2-メチル-1H-イミダゾール-3-イウム-3-イル)プロパノエート、又は
4-(1-(3-メタクリルアミドプロピル)-2-メチル-1H-イミダゾール-3-イウム-3-イル)ブタノエートである、実施態様1に記載の化合物。
(9) 実施態様1~8のいずれかに記載の両性イオン重合性化合物から誘導されるポリマーを含む、眼科用デバイス。
(10) 前記ポリマーが、前記デバイスに収容されているか、又は前記デバイス上にコーティングされている、実施態様9に記載の眼科用デバイス。
【0198】
(11) 前記ポリマーが、前記化合物と、前記眼科用デバイスを作製するために好適な1つ又は2つ以上のモノマーと、のフリーラジカル反応生成物を含む、実施態様9に記載の眼科用デバイス。
(12) 前記眼科用デバイスを作製するために好適な前記モノマーが、親水性成分、疎水性成分、シリコーン含有成分、及びこれらの2つ又は3つ以上の混合物から選択される、実施態様11に記載の眼科用デバイス。
(13) 眼内レンズ又はソフトコンタクトレンズである、実施態様9~12のいずれかに記載の眼科用デバイス。
(14) ヒドロゲルコンタクトレンズである、実施態様13に記載の眼科用デバイス。
(15) 眼科用デバイスと、包装用溶液と、を含む、ブリスター包装であって、前記包装用溶液が、実施態様1~8のいずれかに記載の両性イオン重合性化合物から誘導されるポリマーを含む、ブリスター包装。