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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-10-03
(45)【発行日】2025-10-14
(54)【発明の名称】除塵装置
(51)【国際特許分類】
   E02B 9/04 20060101AFI20251006BHJP
   E02B 5/08 20060101ALI20251006BHJP
【FI】
E02B9/04 E
E02B5/08 103Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022039805
(22)【出願日】2022-03-15
(65)【公開番号】P2023134885
(43)【公開日】2023-09-28
【審査請求日】2024-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】594162722
【氏名又は名称】株式会社ニシコー
(74)【代理人】
【識別番号】110004510
【氏名又は名称】弁理士法人維新国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】三好 哲也
(72)【発明者】
【氏名】中村 明日美
(72)【発明者】
【氏名】岩田 一輝
(72)【発明者】
【氏名】藤井 義徳
(72)【発明者】
【氏名】山崎 勝史
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-004500(JP,A)
【文献】特開2017-106217(JP,A)
【文献】特開2004-036147(JP,A)
【文献】特開2016-145485(JP,A)
【文献】米国特許第04725365(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 9/04
E02B 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取水口のスクリーンに滞留した塵芥を掻き上げる除塵装置であって、
所望間隔を空けて設けられる2以上の棒状体の先端にレーキを備えてなる熊手と、
前記スクリーンの上方に設けられ、前記スクリーンの幅方向に沿って延びる下部ガイドレールと、
前記下部ガイドレールの上方に設けられ、前記下部ガイドレールに沿って延びる上部ガイドレールと、
前記下部ガイドレールに沿って摺動自在な下部移動体と、
前記上部ガイドレールに沿って摺動自在な上部移動体と、
前記熊手の前記棒状体を個別に摺動自在に支持し、上端部側が水平軸回りに回動自在に前記上部移動体に連結されるとともに、前記上端部の反対側がリンク機構を介して前記下部移動体に連結される熊手ガイドと、
前記熊手を昇降させる昇降駆動手段と、
前記下部移動体に配設され、進退動するロッドの先端部が前記リンク機構に連結されるシリンダ装置と、
個々の前記熊手ガイドを構成する前記リンク機構同士をつないで連動させる連結体と、を備え、
前記連結体は手動操作用のハンドルを兼ねる、又は前記連結体は別体の前記ハンドルを備え、
前記シリンダ装置の前記ロッドが進退動することで前記熊手ガイドが前記水平軸を基軸に回動して、前記スクリーンに対する前記熊手の角度が変わる、ことを特徴とする除塵装置。
【請求項2】
取水口のスクリーンに滞留した塵芥を掻き上げる除塵装置であって、
所望間隔を空けて設けられる2以上の棒状体の先端にレーキを備えてなる熊手と、
前記スクリーンの上方に設けられ、前記スクリーンの幅方向に沿って延びるガイドレールと、
前記ガイドレールに沿って走行自在な移動体と、
前記熊手の前記棒状体を個別に摺動自在に支持し、上端部側が水平軸回りに回動自在に前記移動体の上部に連結されるとともに、前記上端部の反対側がリンク機構を介して前記移動体の下部に連結される熊手ガイドと、
前記熊手を昇降させる昇降駆動手段と、
前記移動体の下部に配設され、進退動するロッドの先端部が前記リンク機構に連結されたシリンダ装置と、
個々の前記熊手ガイドを構成する前記リンク機構同士をつないで連動させる連結体と、を備え、
前記連結体は手動操作用のハンドルを兼ねる、又は前記連結体は別体の前記ハンドルを備え、
前記シリンダ装置の前記ロッドが進退動することで前記熊手ガイドが前記水平軸を基軸に回動して、前記スクリーンに対する前記熊手の角度が変わる、ことを特徴とする除塵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は取水口のスクリーンに滞留・付着した塵芥を除去する除塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水力発電所などの取水口には、ゴミや流木などの塵芥が流入するのを防止するためのスクリーンが設置され、発電取水に塵芥が混入しないようになっている。そして、スクリーンに塵芥が滞留した場合には、棒にレーキが取り付けられた熊手を人が使用して、塵芥をスクリーンの上部に掻き上げていた。しかしながら、この除塵作業は、重労働で、しかも、河川などに転落するおそれがあった。このため、通常は除塵機を設置して、人力によらずに除塵作業を行うが、従来の通常の除塵機は大型で自動化されているため、スペースが狭い場所には設置できない、設置費用が高額である、などといった課題がある。
このような事情に鑑み、本願の出願人は過去に以下に示すような発明をし、特許出願した。
【0003】
特許文献1には「除塵装置」という名称で、取水口のスクリーンに滞留・付着した塵芥を除去する除塵装置に関する発明が開示されている。
特許文献1に開示される発明である除塵装置は、同文献中の図1に記載される符号をそのまま用いて説明すると、下部ガイドレール31に沿って摺動自在な下部移動体41と、上部ガイドレール32に沿って摺動自在な上部移動体42と、熊手2の棒状体21を摺動自在に支持し、上端部側が水平軸回りに回動自在に上部移動体42に連結され、反上端部側がリンク機構7を介して下部移動体41に連結された熊手ガイド5と、下部移動体41に配設され、進退動するロッドの先端部がリンク機構7に連結されたシリンダ装置8と、を備え、シリンダ装置8のロッドが進退動することで熊手ガイド5が回動して、スクリーン101に対する熊手2の角度が変わる、よう構成されてなるものである。
上記構成の特許文献1に開示される発明によれば、小型化が可能で、安定した除塵が可能な除塵装置を提供することができる。
【0004】
特許文献2には「除塵装置用レーキおよび除塵装置」という名称で、取水口のスクリーンに滞留・付着した塵芥を除去する除塵装置で使用される除塵装置用レーキおよび、この除塵装置用レーキを備えた除塵装置に関する発明が開示されている。
特許文献2に開示される発明は、上述の特許文献1に開示される発明における除塵装置用レーキと同様の作用・効果を奏する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2021-4500号公報
【文献】特開2021-4501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のような特許文献1,2に開示される除塵装置では、従来公知の大型の除塵機と比較して、その構造をシンプルにできるものの、スクリーン上に捕捉された塵芥をレーキで掻き上げる際に、レーキをスクリーン上に押し付ける動作を行うための駆動機構を備えていない。
つまり、特許文献1,2に開示される除塵装置では、スクリーン上に捕捉された塵芥をレーキで掻き上げる際に、レーキ、レーキアーム及びその支持構造の自重のみによりレーキがスクリーン上に押し付けられるだけである。このため、特許文献1,2に開示される発明の場合は、塵芥をレーキで掻き上げる際に、水流によってレーキがスクリーン上から浮き上がるように離間してしまい、効率良く塵芥を掻き上げることができない場合があった。
そして、レーキにより塵芥を掻き上げる時に、スクリーン上に浮き上がるようにレーキが離間した場合、作業者は取水口からスクリーン上に身を乗り出して手でレーキをスクリーン上に押さえ付けるよう動作することがある。この場合は、作業者が取水口に転落してしまうおそれがあり極めて危険であった。
さらに、特許文献1,2に開示される除塵装置では、レーキを支持するレーキアームが1本のみであるため、水平方向における幅の大きいレーキを用いることが難しい。つまり、特許文献1,2に開示される除塵装置では、水平方向における幅が小さい小型で軽量のレーキを用いる必要がある。この場合、スクリーン上に捕捉された塵芥をレーキで掻き上げる際に、水流によってレーキが水平方向に、つまり上部移動体又は下部移動体の移動方向に揺動し易い。そして、この場合は、効率良く塵芥を掻き上げることができないという課題が生じていた。
【0007】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものでありその目的は、スクリーン上に捕捉された塵芥を効率良くかつ安全にレーキで掻き上げることができ、かつ除塵装置自体の構造をシンプルにできる除塵装置を提供することにある。
さらに、本発明の目的は、スクリーン上に捕捉された塵芥をレーキで掻き上げる際に、レーキをしっかりとスクリーン上に押し当てることができる除塵装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための第1の発明である除塵装置は、取水口のスクリーンに滞留した塵芥を掻き上げる除塵装置であって、少なくとも1つの棒状体の先端にレーキを備えてなる熊手と、スクリーンの上方に設けられ、このスクリーンの幅方向に沿って延びる下部ガイドレールと、この下部ガイドレールの上方に設けられ、下部ガイドレールに沿って延びる上部ガイドレールと、下部ガイドレールに沿って摺動自在な下部移動体と、上部ガイドレールに沿って摺動自在な上部移動体と、熊手の棒状体を摺動自在に支持し、上端部側が水平軸回りに回動自在に上部移動体に連結されるとともに、上端部の反対側がリンク機構を介して下部移動体に連結される熊手ガイドと、熊手を昇降させる昇降駆動手段と、下部移動体に配設され、進退動するロッドの先端部がリンク機構に連結されるシリンダ装置と、を備え、リンク機構は直接又は間接的に設けられる手動操作用のハンドルを備え、シリンダ装置のロッドが進退動することで熊手ガイドが水平軸を基軸に回動して、スクリーンに対す熊手の角度が変わる、ことを特徴とするものである。
上記構成の第1の発明において、熊手を構成するレーキは、スクリーンに捕捉された塵芥を掻き上げて除去という作用を有する。また、下部ガイドレールは下部移動体をスクリーンの幅方向に、より具体的には水平方向に移動させるという作用を有する。さらに、上部ガイドレールは上部移動体をスクリーンの幅方向に、より具体的には水平方向に移動させるという作用を有する。つまり、上部移動体及び下部移動体は、これらに熊手ガイド等を介して取設される熊手を、スクリーンの幅方向に、より具体的には水平方向に移動させるという作用を有する。加えて、熊手ガイドは、リンク機構の動作と連動して熊手の棒状体を、水平軸(回動軸)を基軸にその周方向に揺動させるとともに、熊手の棒状体をその中心軸方向に摺動自在に支持するという作用を有する。また、昇降駆動手段は、熊手を構成する棒状体の中心軸方向に熊手をスライドさせることで、熊手を昇降させるという作用を有する。さらに、シリンダ機構は、熊手を、水平軸を基軸にスクリーンから離れる方向に跳ね上げるよう動作させるという作用を有する。この時、リンク機構は、シリンダ機構の動力を熊手ガイドに伝達するという作用を有する。そして、リンク機構に設けられるハンドルは、このハンドルを作業者が自身の方へ引き寄せる動作を行うことで、リンク機構を介して熊手ガイドに支持される熊手のレーキを、スクリーン上に押し当てるという作用を有する。
よって、上述のような第1の発明によれば、下部ガイドレールと上部ガイドレールに沿って下部移動体と上部移動体とを摺動させて、熊手を所望の位置に移動し、昇降駆動手段で熊手を上昇させると、熊手の棒状体が熊手ガイドで支持されながら、レーキがスクリーンに滞留した塵芥を掻き上げることが可能になる。また、シリンダ装置のロッドを進退動させることで、リンク機構を介してスクリーンに対する熊手ガイドつまり熊手の角度を変えることができる。より詳細には、熊手をスクリーンの鉛直下方側に降ろす際には、スクリーンからレーキから離れるように熊手の角度を変えることができる。そして、スクリーン上に捕捉された塵芥を熊手のレーキで掻き上げる際は、リンク機構に設けられるハンドルを操作することで、レーキをスクリーン上に押し当てることができる。
【0009】
第2の発明である除塵装置は、取水口のスクリーンに滞留した塵芥を掻き上げる除塵装置であって、少なくとも1つの棒状体の先端にレーキを備えてなる熊手と、スクリーンの上方に設けられ、このスクリーンの幅方向に沿って延びるガイドレールと、このガイドレールに沿って走行自在な移動体と、熊手の棒状体を摺動自在に支持し、上端部側が水平軸回りに回動自在に移動体の上部に連結されるとともに、この上端部の反対側がリンク機構を介して移動体の下部に連結される熊手ガイドと、熊手を昇降させる昇降駆動手段と、移動体の下部に配設され、進退動するロッドの先端部がリンク機構に連結されるシリンダ装置と、を備え、リンク機構は直接又は間接的に設けられる手動操作用のハンドルを備え、シリンダ装置のロッドが進退動することで熊手ガイドが上記水平軸を基軸に回動して、スクリーンに対する熊手の角度が変わる、ことを特徴とするものである。
上記構成の第2の発明は、上述の第1の発明における上部ガイドレール及び下部ガイドレールをガイドレールに、上部移動体及び下部移動体を移動体に、それぞれ置換したものである。
そして、第2の発明におけるガイドレールは、スクリーンの幅方向(水平方向)に移動体を移動させるという作用を有する。また、移動体は、この移動体に熊手ガイド等を介して間接的に取設される熊手をスクリーンの幅方向に、より具体的には水平方向に移動させるという作用を有する。
また、上記以外の第2の発明のそれぞれの構成による作用は、上述の第1の発明のそれぞれの構成による作用と同じである。
【0010】
第3の発明である除塵装置は、上述の第1又は第2の発明であって、熊手は、所望間隔を空けて2以上の棒状体を備え、個々の棒状体毎に熊手ガイド、リンク機構及びハンドルを備えている、ことを特徴とするものである。
上記構成の第3の発明は、上述の第1又は第2の発明による作用と同じ作用を有する。さらに、第3の発明において、熊手が所望間隔を空けて2以上の棒状体を備えていることで、スクリーンの幅方向における幅が大きいレーキを第3の発明において使用可能にするという作用を有する。そして、このように幅の大きいレーキを使用することで、熊手自体の重量も相対的に大きくなる。
この結果、第3の発明によれば、スクリーン上に捕捉された塵芥をレーキで掻き上げる際に、取水口に流入する水流の影響でレーキがスクリーン上に浮き上がるように離間したり、あるいはスクリーンの幅方向に揺動したりするのを好適に抑制するという作用を有する。
また、第3の発明において熊手が2以上の棒状体を備えることで、大型化したレーキを操作する際の物理的な負荷を複数の熊手ガイド及びリンク機構に分散させるという作用を有する。この場合、熊手ガイド及びリンク機構を1セットのみ備える場合に比べて、個々の熊手ガイド及びリンク機構に作用する物理的な負荷を分散するという作用を有する。
よって、第3の発明によれば、大型で重量の大きいレーキを使用する場合でも、第3の発明の使用中にリンク機構が破損するのを抑制するという作用を有する。
さらに、第3の発明において、個々のリンク機構がそれぞれハンドルを備えていることで、作業者がこのハンドルを自身に向かって引き寄せる動作を行うことで、リンク機構や熊手ガイド等を介してレーキがスクリーン上に押し付けられる。これにより、塵芥を掻き上げる作業中にレーキがスクリーン上から離間するのを防ぐことができる。
【0011】
第4の発明である除塵装置は、上述の第1又は第2の発明であって、熊手は、所望間隔を空けて2以上の棒状体を備え、棒状体毎に熊手ガイド及びリンク機構を備え、リンク機構同士をつないで連動させる連結体を備え、この連結体はハンドルを兼ねる、又は連結体は別体のハンドルを備えている、ことを特徴とするものである。
上記構成の第4の発明において、熊手が2以上の棒状体を備えていることによる作用、並びに個々の棒状体毎に熊手ガイド及びリンク機構を備えていることによる作用は、上述の第3の発明において熊手が2以上の棒状体を備えていることによる作用、並びに個々の棒状体毎に熊手ガイド及びリンク機構を備えていることによる作用と同じである。
さらに、第4の発明において連結体は、並設される2以上のリンク機構を互いに連結して連動させるという作用を有する。さらに、この連結体が、ハンドルを兼ねる、又は別体のハンドルを備えていることで、熊手のレーキをスクリーンに押し付ける際に操作すべきハンドルの数をリンク機構の数よりも少なくするという作用を有する。
【0012】
第5の発明である除塵装置は、上述の第1乃至第4のいずれかの発明であって、シリンダ装置を駆動する駆動装置は、下部ガイドレールに沿って摺動自在に下部移動体に連結されている、又はガイドレールに沿って摺動自在に移動体に連結されている、ことを特徴とするものである。
上記構成の第5の発明は、上述の第1乃至第4のそれぞれの発明による作用と同じ作用を有する。また、上述の第5の発明において、下部移動体又は移動体は、熊手の移動と併せて駆動装置を移動させるという作用を有する。
【0013】
第6の発明である除塵装置は、上述の第1乃至第5のいずれかの発明であって、シリンダ装置のロッドは、所定の操作がされると所定の位置まで進退動して自動で停止する、ことを特徴とするものである。
上記構成の第6の発明は、上述の第1乃至第5のそれぞれの発明による作用と同じ作用を有する。また、上述の第6の発明において、シリンダ装置のロッドが所定の操作がされると所定の位置まで進退動して自動で停止することで、スクリーンに対する熊手の角度を自動で制御可能にするという作用を有する。
【0014】
第7の発明である除塵装置は、上述の第1乃至第6のいずれかの発明であって、下部移動体又は移動体の下部は、熊手が接触することによる衝撃を緩和する緩和部材を備えている、ことを特徴とするものである。
上記構成の第7の発明は、上述の第1乃至第6のそれぞれの発明による作用と同じ作用を有する。また、上述の第7の発明において、緩和部材は、熊手の収納時に熊手が下部移動体又は移動体に接触した際の衝撃を緩和するという作用を有する。
【発明の効果】
【0015】
上述のような第1の発明によれば、熊手が少なくとも1つの棒状体を備え、個々の棒状体を熊手ガイドで支持するため、熊手を構成するレーキの幅が小さい場合や、大きい場合も同じ構造を利用して棒状体を保持することができる。この結果、シンプルな構成でありながらレーキの幅に対して汎用性を有する除塵装置を提供することができる。
また、第1の発明では、シリンダ装置のロッドが進退動すると、リンク機構を介して熊手ガイドが水平軸を基軸に回動して熊手の角度が変わるため、シリンダ装置のロッドのストロークを小さくすることができ、これにより除塵装置自体を小型化することが可能となる。しかも、シリンダ装置が下部移動体に配設されているため、下部移動体の摺動、移動に伴ってシリンダ装置も移動する。従って、シリンダ装置を移動させるための機構を別途設ける必要がないので、この点からも除塵装置自体を小型化、簡素化することが可能となる。
さらに、第1の発明では、熊手ガイドを上部移動体及び下部移動体に連結することで、熊手ガイドを安定した状態で保持しておくことができる。そして、この安定した状態で熊手の棒状体が支持されて熊手が昇降するため、流速が速い箇所や揚程が比較的高い箇所においても、熊手の安定した昇降及び熊手による安定した除塵が可能となる。同様に、シリンダ装置が下部移動体に配設されているため、除塵装置全体の重心を低くすることができる。この結果、第1の発明によれば、熊手の昇降動作を安定した状態で行うことができるので、この点からも安全に除塵作業を行うことができる。
さらに、第1の発明によれば、スクリーン上に捕捉された塵芥をレーキで掻き上る際に、水流等の影響でレーキがスクリーン上に浮き上がるように離間してしまう場合でも、作業者がシンク機構に設けられるハンドルを自身の方に(手前側に)引き寄せる動作を行うことで、レーキをスクリーン上に押し付けておくことができる。
この場合、レーキにより掻き上げ中の塵芥を、レーキとスクリーンの間にしっかりと保持しておくことができるので、塵芥の除去作業を効率的に行うことができる。
さらに、第1の発明によれば、スクリーン上に捕捉された塵芥をレーキで掻き上げる際に、レーキをスクリーン上に押し付けるために作業者が取水口側に身を乗り出す必要がなくなる。このため、スクリーンの除塵作業中に作業者の取水口への転落事故が起こるのを防ぐことができる。
よって、第1の発明によれば、スクリーンの除塵作業中の安全性を大幅に向上させることができる。
【0016】
第2の発明は、上述の第1の発明における上部ガイドレール及び下部ガイドレールを、ガイドレールに、上部移動体及び下部移動体を、台車状の移動体に、それぞれ置換したものである。
また、第2の発明では、シリンダ装置が移動体の下部に配設されているため、移動体の移動に伴ってシリンダ装置も移動する。従って、第2の発明ではシリンダ装置を移動させるための機構を別途設ける必要がないので、除塵装置自体を小型化、簡素化することが可能となる。
さらに、第2の発明による上記以外の効果は、第1の発明による効果と同じである。
【0017】
第3の発明は、上述の第1又は第2の発明による効果と同じ効果を有する。さらに、第3の発明によれば、スクリーンの幅方向における幅が大きいレーキを備えた熊手を使用することができる。この場合、熊手自体の重量も相対的に大きくなるので、レーキを掻き上げる際の水流による影響(スクリーン上からの離間や揺動)を軽減しつつ、一度の掻き上げで除塵できる範囲を広くすることができる。この場合、第3の発明を用いることで、スクリーンの除塵作業を一層効率的にかつ迅速に行うことができる。
さらに、第3の発明によれば、熊手のレーキをスクリーンの幅方向に大型化した際に、熊手ガイドやリンク機構に作用する物理的な負荷を、複数の熊手ガイド及びリンク機構に分散させることができる。
この場合、幅の大きいレーキを備える熊手を用いる場合でも、その支持構造及び駆動機構を簡素化することができ、これにより第3の発明である除塵装置全体を小型化することができる。
さらに、第3の発明によれば、個々のリンク機構がハンドルを備えていることで、水平方向における幅が大きいレーキを使用する場合でも、それぞれのハンドルを作業者の手元に引き寄せる動作を行うことで、レーキの幅方向の全域をくまなくスクリーン上に押し付けることができる。
よって、第3の発明によれば、スクリーンの幅方向(水平方向)における幅が大きいレーキを用いる場合でも、効率的にかつ安全に除塵作業を行うことができる。
【0018】
第4の発明は、上述の第1又は第2の発明による効果と同じ効果を有する。さらに、第4の発明において熊手が2以上の棒状体を備えていることによる効果、並びに個々の棒状体毎に熊手ガイド及びリンク機構を備えていることによる効果は、上述の第3の発明において熊手が2以上の棒状体を備えていることによる効果、並びに個々の棒状体毎に熊手ガイド及びリンク機構を備えていることによる効果と同じである。
また、第4の発明によれば、リンク機構同士を連結する連結体が、ハンドルを兼ねる、又は別体のハンドルを備えていることで、複数のリンク機構を作業者の手元側に引き寄せる動作を行う際に操作すべきハンドルの数を、リンク機構の数よりも少なくすることができる。
この場合、個々のリンク機構毎にハンドルを設ける場合に比べて、ハンドルを操作するために必要な作業者の数を少なくすることができる。
この場合、熊手を構成するレーキを、スクリーンの幅方向に大型化した場合でも、より少ない人数で安全にかつ効率的にスクリーンの除塵作業を行うことができる。
【0019】
第5の発明は、上述の第1乃至第4のそれぞれの発明による効果と同じ効果を有する。さらに、第1の発明を引用する第5の発明では、シリンダ装置の駆動装置が下部移動体に連結されているため、下部移動体とシリンダ装置の移動に伴って駆動装置も下部ガイドレールに沿って移動する。あるいは、第2の発明を引用する第5の発明では、シリンダ装置の駆動装置が移動体に連結されているため、下部移動体とシリンダ装置の移動に伴って駆動装置も下部ガイドレールに沿って移動する。
このため、シリンダ装置と駆動装置とを繋ぐケーブルなどを長く敷設したり束ねたりする機構を設ける必要がなく、第5の発明である除塵装置を小型化、簡素化することが可能となる。
また、下部移動体又は移動体、つまり熊手を移動させれば駆動装置も移動するため、人が下部移動体又は移動体を移動させる場合に比べてその労力を軽減することが可能となる。さらに、駆動装置が下部ガイドレール又はガイドレール側に配設されているため、装置全体の重心が低くなり、より安定した熊手の昇降や除塵が可能となる。
また、第5の発明によれば、下部移動体と駆動装置がそれぞれ独立して下部ガイドレール上を摺動するため、あるいは移動体と駆動装置がそれぞれ独立してガイドレール上を摺動するため、下部移動体又は移動体に駆動装置を配設・載置する場合に比べて、装置全体を安定して移動させることが可能となる。
【0020】
第6の発明は、上述の第1乃至第5のそれぞれの発明による効果と同じ効果を有する。さらに、第6の発明によれば、所定の操作を行うと、シリンダ装置のロッドが所定の位置まで進退動して自動で停止する。例えば、熊手を降ろす際に所定の操作を行うと、ロッドが進退動してレーキがスクリーンから所定距離だけ離れた時点(所定の位置)で、ロッドが停止する。このように、自動的にロッドが所定の位置で停止するため、スクリーンに対する熊手の角度を常に適正に制御することが可能となるとともに、この動作を人手により行う場合に比べて除塵作業時の人による労力を軽減することが可能となる。
【0021】
第7の発明は、上述の第1乃至第6のそれぞれの発明による効果と同じ効果を有する。さらに、第7の発明によれば、緩和部材を備えていることで、特に熊手の収納時に熊手が下部移動体又は移動体に接触することによる衝撃を緩和することができる。
しかも、この緩和部材が下部移動体又は移動体に設けられているため、第7の発明を小型化、簡素化することが可能となる。すなわち、熊手の移動に伴って緩和部材を移動させるための機構を別途備える必要がない。また、緩和部材を特に下部移動体に設けることで、熊手が接触する際の衝撃を安定して下部ガイドレールで受けることが可能となる。あるいは、緩和部材を特に移動体に設けることで、熊手が接触する際の衝撃を安定して移動体で受けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係る除塵装置を示す側面図である。
図2図1の除塵装置の正面図である。
図3図1の除塵装置の設置状態を示す側面図である。
図4図1の除塵装置の設置状態を示す正面図である。
図5図1の除塵装置の設置状態を示す平面図である。
図6図1の除塵装置の下部移動体を示す平面図(図2のB-Bから見た図)である。
図7図1の除塵装置の上部移動体を示す平面図(図2のA-Aから見た図)である。
図8図1の除塵装置のリンク機構およびシリンダ装置の周辺を示す拡大図である。
図9図1の除塵装置の上部支持体の周辺を示す拡大図である。
図10図1の除塵装置の熊手の各位置の状態を示す図であり、(a)は開限位置、(b)は休止位置を示す。
図11図1の除塵装置の熊手を示す正面図(a)と側面図(b)である。
図12図11の熊手のレーキを示す正面図(a)と側面図(b)と平面図(c)である。
図13図12のレーキの爪板を示す平面図である。
図14図13のレーキのレーキローラを示す正面図(a)と側面図(b)である。
図15】本実施形態の第1の変形例に係る除塵装置の正面図である。
図16】並設される複数のリンク機構に対するハンドルの他の取設構造を示す部分斜視図である。
図17】本実施形態の第2の変形例に係る除塵装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態に係る除塵装置について図1乃至図17を参照しながら説明する。
【0024】
はじめに、本発明の実施形態に係る除塵装置(基本形態)について説明する。
図1及び図2は本発明の実施形態に係る除塵装置1Aを示す側面図と正面図である。また、図3乃至図5はそれぞれ本発明の実施形態に係る除塵装置の設置状態を示す側面図、正面図及び平面図である。
本実施形態に係る除塵装置1Aは、図3乃至図5に示すように、水力発電所などの取水口100の上に設置され、取水口100の開口前面に配設されたスクリーン101に滞留した、ゴミや流木などの塵芥を掻き上げて除去するための装置であり、主に、熊手2と、下部ガイドレール31及び上部ガイドレール32と、下部移動体41及び上部移動体42と、熊手ガイド5と、電動チェーンブロック(昇降駆動手段)6と、リンク機構7と、シリンダ装置8と、を備える。
【0025】
熊手2は、1つの棒状体21の先端に塵芥を掻き取るレーキ22が設けられたものであり、詳細については後述する。
【0026】
まず、図3乃至図5を参照しながら下部ガイドレール及び上部ガイドレールについて説明する。
下部ガイドレール31は、図3乃至図5に示すように、スクリーン101の上方に設けられ、スクリーン101の幅方向に沿って水平に延びる長尺のレールである。具体的には、断面が四角形状の中空棒体で構成され、取水口100の上の取水台102に設置された複数のポール33に支持されて、水平に延びて配設されている。また、下部ガイドレール31の配設高さは、人がスクリーン101側に転落するのを防止可能なように、例えば、平均的な体型の人の腰の辺りに、設定されている。一方、下部ガイドレール31の長さは、後述するようにして、熊手2をスクリーン101の幅方向に移動させてスクリーン101全面の除塵が行えるように、適宜設定されている。
【0027】
上部ガイドレール32は、下部ガイドレール31の上方に設けられ、下部ガイドレール31に沿って水平に延びる長尺のレールである。具体的には、断面が四角形状の中空棒体で構成され、図1に示すように、取水台102に設置された既設の網場架台103に支持されて、水平に延びて配設されている。すなわち、柱状の網場架台103がスクリーン101の幅方向に沿って複数設置され、各網場架台103にスクリーン101側に水平に延びるレール支持材34が配設されている。そして、各レール支持材34の上面に設けられた支持部35に支持されて、上部ガイドレール32が配設されている。
【0028】
この上部ガイドレール32は、下部ガイドレール31を基準にしてスクリーン101からより離れた位置の取水台102上に設置されている。つまり、下部ガイドレール31と上部ガイドレール32とが、段違い平行棒のように配設され、下部ガイドレール31と上部ガイドレール32とを含む面の傾斜方向が、スクリーン101の面の傾斜方向と同方向になるようになっている。
【0029】
また、図4に示すように、上部ガイドレール32の一端部32aが、下部ガイドレール31の一端部から突出して配設され、後述するようにして、この端部32aにおいて熊手2を格納できるようになっている。ここで、この一端部32aは、スクリーン101の外側に位置し、熊手2による除塵を行わない領域となっている。また、上部ガイドレール32の他端部は、下部ガイドレール31の他端部とほぼ同位置となっている。
【0030】
次に、図6を参照しながら下部移動体について詳細に説明する。
図6は先の図1に示す除塵装置の下部移動体を示す平面図(図2のB-Bから見た図)である。なお、図1乃至図5に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
下部移動体41は、下部ガイドレール31に沿って摺動自在な移動体であり、図6に示すように、略正三角形の下部主板411の各角部に、下部ローラ412が垂直軸回りに回転自在に配設されている。そして、1つの下部ローラ412と2つの下部ローラ412とで下部ガイドレール31を挟持した状態で、各下部ローラ412が回転することで、下部ガイドレール31に沿って摺動(移動)自在となっている。
【0031】
また、下部主板411には、下部ガイドレール31の一側面(反熊手2側の側面)に対向する下部側板413が配設され、この下部側板413に、2つの横行ロックネジ414が螺合されている。そして、横行ロックネジ414の横行ロックハンドル415を回して横行ロックネジ414を下部ガイドレール31に締め付ける(押圧する)ことで、下部移動体41を任意の位置で固定できるようになっている。
【0032】
また、下部主板411の上面には、互いに対向する一対の第1の連結部416が配設されている。この第1の連結部416は、板状で板面が略垂直方向に延び、下部ガイドレール31と平行な軸線を中心に、後述する第1のリンク71の一端部を回転自在に支持するものである。また、下部移動体41の下部主板411には、後述するようにして除塵装置1Aを休停止させる休止ロックピン417が設けられている。
【0033】
さらに、下部主板411の熊手2の棒状体21側の側面には、2つの下部ローラ412間に位置して略垂直方向に延びる緩和部材418が配設されている。この緩和部材418は、後述するように、熊手2の棒状体21が略垂直に延びた際に、棒状体21が下部移動体41や上部移動体42などの固定部材(非可動部材)に接触することによる衝撃を緩和するものであり、固定部材に接触する前に棒状体21が緩和部材418に接触するように配置されている。この緩和部材418は、ゴム材などの弾性材で構成され、その強度(バネ定数)や厚みは、衝撃を十分に緩和できるように設定されている。
【0034】
また、下部側板413の外側(反下部ガイドレール31側)の側面には、互いに対向する一対の第2の連結部419が配設されている。この第2の連結部419は、板状で板面が略垂直方向に延び、下部ガイドレール31と平行な軸線を中心に、後述するシリンダ80の基端部81を回転自在に支持するものである。
【0035】
一方、下部主板411には、下部ガイドレール31の他側面(熊手2側の側面)に対向する支持板41aが、一方の下部ローラ412側に配設されている。この支持板41aの自由端部(反下部ローラ412側)には連結孔41bが形成され、この連結孔41bに後述する駆動装置9のボルトなどを挿入することで、下部移動体41に駆動装置9を連結するものである。
【0036】
続いて、図7を参照しながら上部移動体について詳細に説明する。
図7は先の図1に示す除塵装置の上部移動体を示す平面図(図2のA-Aから見た図)である。なお、図1乃至図6に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
上部移動体42は、上部ガイドレール32に沿って摺動自在な移動体であり、図7に示すように、略三角形の上部主板421の各角部に、上部ローラ422が垂直軸回りに回転自在に配設されている。そして、1つの上部ローラ422と2つの上部ローラ422とで上部ガイドレール32を挟持した状態で、各上部ローラ422が回転することで、上部ガイドレール32に沿って摺動(移動)自在となっている。さらに、上部主板421の上面には、2つの第2の上部ローラ423が水平軸回りに回転自在に配設され、この第2の上部ローラ423が、上部ガイドレール32の上面に接して回転するようになっている。
【0037】
また、上部主板421の上面には、互いに対向する一対の第3の連結部424が配設されている。この第3の連結部424は、板状で板面が略垂直方向に延び、上部ガイドレール32と平行な軸線を中心に、後述する上部支持体52を回転自在に支持するものである。
【0038】
このような下部移動体41と上部移動体42とは、先の図1及び図2に示すように、2本の連結柱43によって連結されている。
【0039】
さらに、図8及び図9を参照しながら熊手ガイド及びその取設構造について説明する。
先の図1に示すように、熊手ガイド5は、熊手2の棒状体21を長手方向に摺動自在に支持し、上端部側が水平軸X(図1を参照)回りに回動自在に上部移動体42に連結され、この上端部の反対側(反上端部側)がリンク機構7を介して下部移動体41に連結されたものであり、主として、下部支持体51と、上部支持体52と、熊手カバー53と、を備える。
【0040】
図8は先の図1に示す除塵装置のリンク機構及びシリンダ装置の周辺を示す拡大図である。また、図9は先の図1に示す除塵装置の上部支持体の周辺を示す拡大図である。なお、図1乃至図7に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
下部支持体51は、図8に示すように、熊手2を構成する棒状体21の両側面を挟むように配設された2つの下部支持板511間に、2つの上部支持ローラ512が水平軸回りに回転自在に配設されている。そして、上部支持ローラ512が棒状体21の上下面に接して回転支持することで、棒状体21が下部支持体51に対して摺動(移動)自在となっている。
【0041】
上部支持体52は、図9に示すように、棒状体21の両側面を挟むように配設された2つの上部支持板521間に、2つの上部支持ローラ522が水平軸回りに回転自在に配設されている。そして、上部支持ローラ522が棒状体21の上下面に接して回転支持することで、棒状体21が上部支持体52に対して摺動(移動)自在となっている。
【0042】
また、上部支持板521には、上部移動体42側に突出した回転支持部523が設けられ、この回転支持部523が、上部移動体42の第3の連結部424に水平軸X回りに回転自在に連結されている。このようにして、熊手ガイド5の上端部側である上部支持体52が上部移動体42に連結され、水平軸X回りに回動自在となっている。
【0043】
このような下部支持体51と上部支持体52とが、断面がコ字状の棒体で棒状体21に沿って延びる熊手カバー53によって連結され、この熊手カバー53で支持体51、52間の棒状体21が覆われるようになっている。また、下部支持体51と上部支持体52との距離は、熊手2のレーキ22に強い水圧がかかっても、熊手2の棒状体21を安定して支持して、レーキ22による塵芥の掻き上げを安定して行えるように設定されている。また、熊手カバー53の下部支持体51側(反上端部側)が、後述するリンク機構7を介して下部移動体41に連結されている。
【0044】
ここで、熊手の駆動機構について説明する。
本実施形態に係る除塵装置1Aでは、熊手2を昇降させる手段として例えば図1に示すような電動チェーンブロック6を採用している。
この電動チェーンブロック6は、熊手2を昇降させる電動機であり、下部支持体51に配設されている。すなわち、図1に示すように、下部支持体51の上面に本体62が配設されて人の腰辺りに位置し、チェーン61の先端が熊手2の接続部材23に接続されている。そして、チェーン61を巻き出したり巻き取ったりすることで、熊手2(レーキ22)が降下したり上昇したりするものである。また、本体62を遠隔操作するための押ボタンスイッチ63は、例えば連結柱43の中央部に配設された水平バー431に配置してもよい(図1を参照)。
【0045】
一方、図1図4に示すように、各レール支持材34の下面に、上部ガイドレール32と平行に延びるケーブルガイドレール64が配設されている。そして、図2に示すように、このケーブルガイドレール64に、電動チェーンブロック6の電源ケーブル65に取り付けられた複数のケーブル滑車66が移動自在に配設されて、電源ケーブル65がケーブルガイドレール64に沿って移動・伸縮自在となっている。また、電動チェーンブロック6には、熊手2の上限位置を規定するための上限リミットが設けられている。
【0046】
さらに、図8を参照しながらリンク機構及びシリンダ装置について説明する。
リンク機構7は、熊手ガイド5の反上端部側(中央部で下端部側)を上下動自在(回動自在)に下部移動体41に連結する機構である。すなわち、図8に示すように、第1のリンク71の一端部が、下部移動体41の第1の連結部416に水平軸回りに回転自在に連結されている。この第1のリンク71の他端部が、第2のリンク72の一端部に相互に水平軸回りに回転自在に連結されている。さらに、第2のリンク72の他端部が、熊手ガイド5の熊手カバー53に取り付けられた第3のリンク73の自由端部に、水平軸回りに回転自在に連結されている。ここで、各リンク71~73の長さ及び第3のリンク73と後述する連結板74の取付位置は、後述するシリンダ装置8のロッド82が進退動することで、熊手ガイド5つまり熊手2が所定の角度だけ回動し、かつ、ロッド82のストロークが小さくなるように設定されている。
【0047】
さらに、本実施形態に係る除塵装置1Aのリンク機構7は、手動操作用のハンドル75を備えている。すなわち、図8に示すように、リンク機構7においてその端部が鉛直方向に配されている第1のリンク71の側面上にハンドル75が一体に固設されている。なお、このハンドル75の使用方法については、後段において説明する。
また、ハンドル75の取設方法としては、第1のリンク71の側面上に溶接してもよいし、ボルト・ナット等の従来公知の固定具を用いて固設してもよい。
【0048】
シリンダ装置8は、下部移動体41に配設され、進退動するロッド82の先端部82aがリンク機構7に連結された装置である。すなわち、本実施形態では、油圧を駆動源とし、図8に示すように、シリンダ80に対してロッド82が軸方向に進退動自在となっている。このシリンダ80の基端部81が、下部移動体41の第2の連結部419に水平軸回りに回転自在に連結され、ロッド82の先端部82aが、リンク機構7の第1のリンク71に取り付けられた連結板74の自由端部に、水平軸回りに回転自在に連結されている。
【0049】
このシリンダ装置8は、駆動装置9から油圧を供給されることで駆動し、シリンダ装置8と駆動装置9とは、ケーブルや管などで繋がっている。この駆動装置9は、先の図2に示すように、下部に移動ローラ91が配設され、この移動ローラ91が回転することで下部ガイドレール31に沿って摺動(移動)自在となっている。また、駆動装置9に配設されたボルトなどを下部移動体41の連結孔41bに挿入してナットを締め付けることで、下部移動体41に着脱自在に連結されている。これにより、下部移動体41つまりシリンダ装置8が下部ガイドレール31に沿って移動するのに伴って、駆動装置9も下部ガイドレール31に沿って移動する。
【0050】
そして、シリンダ装置8(駆動装置9)の操作部を操作してロッド82を進退動させることで、熊手ガイド5が上部移動体42側の水平軸Xを基軸に回動して、スクリーン101に対する熊手2の棒状体21の角度(レーキ22とスクリーン101との距離や接触強さ)を任意に変えられるようになっている。すなわち、ロッド82が進動すると(伸びると)、リンク機構7が伸びる方向に動作して、熊手ガイド5つまり熊手2が時計回りに回動する。また、ロッド82が退動すると(縮むと)、リンク機構7が縮む方向に動作して、熊手ガイド5つまり熊手2が反時計回りに回動する。
【0051】
ここで、図10を参照しながら、シリンダ装置8(駆動装置9)の作動に伴う熊手ガイド5の動作について説明する。
図10は先の図1に示す除塵装置の熊手の各位置の状態を示す図であり、(a)は開限位置を、(b)は休止位置をそれぞれ示している。なお、図1乃至図9に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
例えば、ロッド82が上死点まで伸びた開限位置では、図10(a)に示すように、水平面に対する棒状体21の傾斜角が67°となる。ここで、水平面に対するスクリーン101の傾斜角を68.2°とする。一方、ロッド82が下死点まで縮んだ休止位置では、図10(b)に示すように、水平面に対する棒状体21の傾斜角が80°程度となる。この際、下部移動体41の休止ロックピン417を、下部ガイドレール31の所定位置(休止場所)に設けられた休止孔に挿入することで、除塵装置1Aが休停止するようになっている。
【0052】
さらに、上部ガイドレール32の一端部32a(図7を参照)に上部移動体42が位置する状態(格納位置)では、下部移動体41が下部ガイドレール31から外れて、熊手ガイド5がさらに反時計回りに回動して、自重によって熊手2の棒状体21が、ほぼ垂直に延びるようになっている(図示せず)。このようにして、上部ガイドレール32の一端部32aにおいて、熊手2が格納されるものである。
【0053】
また、シリンダ装置8のロッド82は、操作部で所定の操作がされると所定の位置まで進退動して自動で停止するようになっている。すなわち、熊手2を降ろす際に所定のボタン操作(第1の操作)を行うと、ロッド82が進動して上死点つまり開限位置で(図10(a)を参照)自動停止する。また、熊手2で塵芥を掻き取る際に所定のボタン操作(第2の操作)を行うと、レーキ22がスクリーン101に接するまでロッド82が退動して(図1)自動停止する。この状態で、熊手2が上昇してレーキ22がスクリーン101の上端を超えると、後述するように、熊手2が自重によって反時計回りに回転してロッド82がさらに退動し、下死点つまり休止位置で(図10(b)を参照)停止する。
【0054】
なお、本実施形態では、レーキ22をスクリーン101に当接させる際及び、その後休止位置まで上昇させる間においては、シリンダ装置8に対する油圧は作用しておらず、熊手2や熊手ガイド5などの自重によって熊手2等が反時計回りに回動し、ロッド82が退動する。すなわち、熊手2を降ろす際にのみシリンダ装置8に対して油圧を作用させ、熊手2を上昇させて休止位置に至るまでは、油圧を作用させない。
【0055】
次に、図11乃至図14を参照しながら熊手の構造について説明する。
図11は先の図1に示す除塵装置における熊手の正面図(a)と側面図(b)である。また、図12は先の図11に示す熊手のレーキを示す正面図(a)と側面図(b)と平面図(c)である。さらに、図13は先の図12に示すレーキの爪板を示す平面図である。加えて、図14は先の図13に示すレーキのレーキローラを示す正面図(a)と側面図(b)である。なお、図1乃至図10に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
熊手2は、図11に示すように、1本の棒状体21の先端にレーキ22が配設されて構成されている。棒状体21は、断面が四角形状の中空棒体で構成され、その長さは、レーキ22がスクリーン101の下端から上端まで昇降できるように設定されている。
【0056】
レーキ22は、図12に示すように、細長いビーム材を格子状に組んだ網状体で、円弧状(ショベル状)に形成され、大きさ及び形状は、一度の上昇でスクリーン101に滞留した所定量の塵芥を掻き上げられるように、設定されている。また、レーキ22は、棒状体21に着脱自在となっている。すなわち、レーキ22の一端縁(円弧の一方の縁辺)の中央部に筒状の連結筒22aが配設され、この連結筒22a内に棒状体21を挿入してボルト締結し、ボルト解除して棒状体21を引き出すことで着脱自在となっている。そして、棒状体21とレーキ22を連結した状態で、図11に示すように、レーキ22の一端縁から接線状に棒状体21が延びるように、連結筒22aが配設されている。また、連結筒22aの背面(塵芥を掻き取る面の反対側)には、連結筒22aに対して略垂直に延びる柱状体23aが配設され、この柱状体23aの頂部に、電動チェーンブロック6のチェーン61を接続するためのリング状の接続部材23が取り付けられている。
【0057】
さらに、レーキ22の先端側(円弧の他方の縁辺側)には、爪板220が取り付けられている。この爪板220は、レーキ22の先端縁に沿って延びる板状体で、図13に示すように、細長い略長方形状で、一方の長辺側に大爪221と小爪222が複数形成されている。大爪221は、細長く大きく突出した爪で、主に大きな塵芥を掻き取れるように形成されており、図12に示すように、スクリーン101の垂直方向に延びる縦材101aのピッチとほぼ同じピッチで、複数形成されている。
【0058】
また、小爪222は、略三角形状で大爪221よりも小さく突出した爪で、主に大爪221間の小さな塵芥を掻き取れるように形成されており、図13に示すように、各大爪221間に複数形成されている。このような大爪221と小爪222とによって、大きな塵芥を掻き取るとともに、小さい塵芥を掻き落とさない(漏らさない)ようになっている。
【0059】
このような爪板220の背面には、円筒状で水平方向に延びる2つのレーキローラ24が配設されている。すなわち、図14に示すように、板状で板面が略垂直方向に延びる一対のローラ支持板241が、互いに対向して爪板220の背面(塵芥を掻き取る面の反対側)に取り付けられている。このローラ支持板241の中央部には孔が形成されている。そして、ローラ支持板241間にレーキローラ24が配置され、ローラ支持板241の孔とレーキローラ24の筒内にボルト242が挿入されてナット243が締め付けられることで、レーキローラ24がボルト242周りに回転自在に配設されている。また、ボルト242のネジ先端部には、ピン孔242aが形成され、このピン孔242aにロックピン・割りピンを挿入することで、ボルト242の緩みを防止できるようになっている。そして、レーキ22が取水台102側に突出した際に、レーキローラ24が取水台102に沿って回転することで、レーキ22が円滑に回動、移動するようになっている。
【0060】
続いて、上述のような構成の除塵装置1Aによる除塵作業などについて説明する。
【0061】
スクリーン101に滞留した塵芥を除塵する場合、まず、熊手2を下部ガイドレール31、上部ガイドレール32に沿って所望の除塵箇所まで移動させ、横行ロックハンドル415を回して横行ロックネジ414を締め付けて、熊手2を固定する。次に、上記のように、操作部で第1の操作を行ってシリンダ装置8のロッド82を進動させて、熊手2を図10(a)に示すような開限位置に寝かせ、熊手2のレーキ22がスクリーン101に滞留した塵芥に触れないように、レーキ22をスクリーン101から離す。
【0062】
この状態で、電動チェーンブロック6を起動して、熊手2をスクリーン101の下端まで降下させる。次に、上記のように、操作部で第2の操作を行って(油圧の作用を解除して)シリンダ装置8のロッド82を退動させて、レーキ22の爪板220をスクリーン101に接触させる。続いて、電動チェーンブロック6を起動して、レーキ22をスクリーン101の上端まで上昇させると、熊手2の自重によってレーキ22がスクリーン101を押圧しながら塵芥を掻き上げ、レーキ22内の塵芥が取水台102にふるい落とされる。
【0063】
上述のように本実施形態に係る除塵装置1Aでは、レーキ22をスクリーン101に当接させる際にシリンダ装置8に対する油圧が作用せず、スクリーン101上へのレーキ22の押し付けは、熊手2及び熊手ガイド5等の自重のみによりなされている。
このため、熊手2のレーキ22でスクリーン101上に捕捉された塵芥を掻き上げる際に、レーキ22がスクリーン101上から浮き上がるように離間してしまい、レーキ22で塵芥を上手く引き上げられない場合がある。
【0064】
この場合は、取水台102上にいる作業者M(先の図3を参照)が、リンク機構7に取設されているハンドル75を把持して、作業者Mの手前側に引き寄せることで、リンク機構7に接続される熊手ガイド5を介して熊手2のレーキ22をスクリーン101上に押し付けることができる。
そして、作業者Mがハンドル75を自身の側(手元側)に引き寄せることで、レーキ22をスクリーン101上に密着させた状態で鉛直上方に引き上げることができる。
この場合、水流等の影響により引き上げ途中のレーキ22がスクリーン101上から浮き上がるように離間したり、レーキ22が水平方向に揺動したりするのを防止できるので、効率良くかつ確実にスクリーン101上の塵芥を除去することができる。
【0065】
他方、本実施形態に係る除塵装置1Aにおいてリンク機構7がハンドル75を備えない場合で、かつレーキ22がその掻き上げ動作時に、スクリーン101上に浮き上がるように離間してしまう場合は、作業者Mがレーキ22の浮き上がり(離間)や、水平方向に揺動するのを防止するために、下部ガイドレール31から身を乗り出すようにして熊手ガイド5を自身の手前側に引き寄せる動作を行うことがあった。この場合は、作業者Mが取水口100側に転落する危険があり、作業中の安全性を十分に確保することができなかった。
これに対して、本実施形態に係る除塵装置1Aでは、リンク機構7がハンドル75を備えていることで、レーキ22により塵芥を掻き上げる最中に、作業者Mが下部ガイドレール31から身を乗り出す必要がなくなる。この結果、スクリーン101上の除塵作業を安全に行うことができる。
【0066】
さらに、上述のような除塵作業をすべての除塵箇所に対して行い、除塵作業を休止する場合には、先にも述べた通り、熊手2を休止位置(図10(b))に位置させてシリンダ装置8を停止する。さらに、下部ガイドレール31の所定の休止場所まで熊手2を移動し、休止ロックピン417を下部ガイドレール31の休止孔に挿入して、除塵装置1Aを休停止させる。また、網場を昇降させる場合など、除塵装置1Aを格納する必要がある場合には、上部ガイドレール32の一端部32aに上部移動体42が位置するまで熊手2を移動する。これにより、下部移動体41が下部ガイドレール31から外れて、熊手2の棒状体21が略垂直に延び、熊手2が格納されるものである。この際、棒状体21が略垂直に延びると、棒状体21が緩和部材418に当たり下部移動体41等への衝撃が緩和される。
【0067】
以上のように、本実施形態に係る除塵装置1Aによれば、作業者Mがすべて人力で除塵する場合に比べて、作業者Mの労力・負担を大きく軽減することができ、作業時間を大きく短縮することができる。そして、除塵作業に要する時間を短縮できる結果、取水を早期に復旧させて発電量を増加させることが可能となる。
さらに、本実施形態に係る除塵装置1Aによれば、リンク機構7がハンドル75を備えていることで、効率的にかつ確実にスクリーン101上に捕捉された塵芥を除去できる上、除塵作業中の作業者Mの安全性を大幅に向上させることができる。
【0068】
また、本実施形態に係る除塵装置1Aでは特に、熊手2が1本の棒状体21で構成され、棒状体21に沿って延びる熊手ガイド5で棒状体21を支持するよう構成されているため、レーキ22の水平方向における幅を小さくすることができる。
この場合、本実施形態に係る除塵装置1Aを一層小型化することが可能となり、スペースが狭い場所にも除塵装置を設置することが可能となる。
また、実施形態に係る除塵装置1Aでは、シリンダ装置8のロッド82が進退動すると、リンク機構7を介して熊手ガイド5が回動して熊手2の角度が変わるため、ロッド82で直接熊手ガイド5を回動させる場合に比べて、シリンダ装置8のロッド82のストロークを小さくすることができる。よって、この点からも本実施形態に係る除塵装置1Aを小型化することが可能となる。
しかも、本実施形態に係る除塵装置1Aによれば、シリンダ装置8が下部移動体41に配設されているため、下部移動体41の摺動、移動に伴ってシリンダ装置8も移動する。従って、シリンダ装置8を移動させるための機構を別途設ける必要がなく、このような構造によっても除塵装置を小型化、簡素化することが可能となる。
【0069】
さらに、本実施形態に係る除塵装置1Aによれば、上部移動体42と下部移動体41に連結されて安定した熊手ガイド5で熊手2の棒状体21が支持されながら、熊手2が昇降するため、流速が速い箇所や揚程が比較的高い箇所においても、熊手2の安定した昇降及び熊手2による安定した除塵が可能となる。
同様に、本実施形態に係る除塵装置1Aによれば、シリンダ装置8が下部移動体41に配設されているため、除塵装置全体の重心が低くなり、より安定した熊手2の昇降や除塵作業が可能になる。
【0070】
また、本実施形態に係る除塵装置1Aによれば、シリンダ装置8の駆動装置9が下部移動体41に連結されているため、下部移動体41とシリンダ装置8の移動に伴って駆動装置9も下部ガイドレール31に沿って移動する。
このため、シリンダ装置8と駆動装置9とを繋ぐケーブルや管などを長く敷設したり束ねたりする機構を設ける必要がなく、このような構造よっても除塵装置1Aを小型化、簡素化することが可能となる。
また、本実施形態に係る除塵装置1Aでは、下部移動体41つまり熊手2を移動させれば駆動装置9も移動するため、作業者Mによる労力を軽減することが可能となる。さらに、駆動装置9が下部ガイドレール31側に配設されているため、除塵装置全体の重心が低くなり、より安定した熊手2の昇降や除塵が可能となる。
また、本実施形態に係る除塵装置1Aでは、下部移動体41と駆動装置9がそれぞれ独立して下部ガイドレール31上を摺動するため、下部移動体41に駆動装置9を配設・載置する場合に比べて、除塵装置全体を安定して移動させることが可能となる。
【0071】
さらに、本実施形態に係る除塵装置1Aでは、所定の操作を行うと、シリンダ装置8のロッド82が所定の位置まで進退動して自動で停止する。例えば、上記のように、熊手2を降ろす際に第1の操作を行うと、ロッド82が進動してレーキ22がスクリーン101から所定距離だけ離れた時点(所定の位置)で、ロッド82が停止する。
このように、本実施形態に係る除塵装置1Aでは、自動的にロッド82が所定の位置で停止するため、スクリーン101に対する熊手2の角度を常に適正に制御することが可能となるとともに、作業者Mによる労力を軽減することが可能となる。
【0072】
また、本実施形態に係る除塵装置1Aでは、緩和部材418が配設されているため、熊手2が接触することによる衝撃を緩和することができる。しかも、この緩和部材418が下部移動体41に設けられているため、除塵装置全体を小型化、簡素化することが可能となる。
すなわち、本実施形態に係る除塵装置1Aでは、熊手2の移動に伴って緩和部材418が移動できるような機構を別途備える必要がない。また、緩和部材418を下部移動体41に設けることで、衝撃を安定して下部ガイドレール31で受けることが可能となる。
【0073】
そして、本実施形態に係る除塵装置1Aでは、上述のような様々な工夫により除塵装置全体の小型化、及び軽量化が可能なため、作業者Mが容易に移動させたり、除塵作業したりすることができ、使い勝手がよい。
【0074】
一方、本実施形態に係る除塵装置1Aでは、レーキ22の爪板220に、大きな塵芥を掻き取る大爪221と小さな塵芥を掻き取る小爪222とが交互に複数形成されているため、大きな塵芥と小さい塵芥を漏らさずに(掻き落とさずに)効率的に掻き取ることが可能となる。しかも、スクリーン101の縦材101aのピッチとほぼ同じピッチで大爪221が複数形成されているため、縦材101a間に大爪221を配置することで、縦材101a間に滞留した塵芥を効果的に除去することが可能となる。
【0075】
ここで、本実施形態に係る除塵装置の第1の変形例について図15を参照しながら説明する。
図15は本実施形態の第1の変形例に係る除塵装置の正面図である。なお、図1乃至図14に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
本実施形態の第1の変形例に係る除塵装置1Aは、図15に示すように、レーキ22’の幅方向に所望間隔を空けながら複数本の棒状体21を備えてなる熊手2’を備えていてもよい。
この場合は、図15に示すように、それぞれの棒状体21に対して熊手ガイド5と、リンク機構7と、下部移動体41及び上部移動体42をセットで設けておくとよい。
また、第1の変形例に係る除塵装置1Aでは、電動チェーンブロック(昇降駆動手段)6や、シリンダ装置8の駆動装置9については、全ての棒状体21に対する設備に対して兼用とし、1台の除塵装置1Aに1台のみ備えていてもよいし、それぞれの棒状体21に対する設備毎に個別に設けてもよい(図示せず)。
さらに、第1の変形例に係る除塵装置1Aでは、特に図示していないが、それぞれのリンク機構7が個別にハンドル75を備えている。
なお、第1の変形例に係る除塵装置1Aにおいて、上記以外の構成は全て除塵装置1Aと同じであるため、ここではその詳細な説明については省略する。
【0076】
上述のような第1の変形例に係る除塵装置1Aでは、熊手2’が所望間隔を空けながら2本以上の棒状体を備えていることで、スクリーン101の幅方向(水平方向)における幅Wが、先の図11等に示すレーキ22の幅よりも大きいレーキ22’を使用することができる。
このように、第1の変形例に係る除塵装置1Aでは、より大型のレーキ22’を取り扱うことができるため、一度の除塵作業で塵芥を除去できる範囲を広くできる。この結果、第1の変形例に係る除塵装置1Aによれば、先の除塵装置1Aよりも一層作業効率の優れた除塵装置を提供することができる。
【0077】
また、第1の変形例に係る除塵装置1Aによれば、レーキ22’の幅Wが大型化することで、熊手2’自体の重量も相対的に大きくなる。
この結果、第1の変形例に係る除塵装置1Aによれば、スクリーン101上に捕捉された塵芥をレーキ22’で掻き上げる際に、取水口100に流入する水流でレーキ22’がスクリーン101上に浮き上がるように離間したり、あるいはスクリーン101の幅方向に揺動したりするのを好適に抑制することができる。
また、第1の変形例に係る除塵装置1Aでは、レーキ22’の支持構造として熊手ガイド5やリンク機構7等を複数セット備えることになるので、下部ガイドレール31や上部ガイドレール32に対して熊手2’がより強固になる。よって、このような構造によっても、塵芥をレーキ22’で掻き上げる際に、レーキ22’がスクリーン101上に浮き上がるように離間したり、あるいはスクリーン101の幅方向に揺動したりするのを好適に抑制することができる。
よって、第1の変形例に係る除塵装置1Aによれば、これらの点からもスクリーン101の除塵作業を効率的に行うことが可能になる。
【0078】
また、第1の変形例に係る除塵装置1Aでは、熊手2’が2以上の棒状体を備えていることで、大型化したレーキ22’を操作する際の物理的な負荷を、複数組の熊手ガイド5、リンク機構7、下部移動体41及び上部移動体42に分散させることができる。
よって、第1の変形例に係る除塵装置1Aによれば、レーキ22’が大型化してその重量が増した場合でも、熊手2’の操作中にその駆動機構が破損するリスクを低減することができる。
従って、第1の変形例に係る除塵装置1Aによれば、大型のレーキ22’を有しながら、装置全体の構造が簡素でかつ小型化された除塵装置を提供することができる。この場合、狭小なエリアに大型のレーキ22’を備えた除塵装置を設置することができ、しかもその設置に要する費用を廉価にできる。
【0079】
加えて、第1の変形例に係る除塵装置1Aにおいても個々のリンク機構7がハンドル75を備えているので、レーキ22’の引き上げ時にハンドル75を作業者M側に引き寄せることで、先に述べた除塵装置1Aの場合と同様に、スクリーン101上の除塵作業を効率的にかつ安全に行うことができる。
【0080】
なお、第1の変形例に係る除塵装置1Aでは、上記の通りそれぞれのリンク機構7に個別にハンドル75を設けてもよいが、上記以外の取設構造を有していてもよい。
ここで、上記以外のリンク機構7へのハンドル75の取設構造について図16を参照しながら説明する。
図16は並設される複数のリンク機構に対するハンドルの他の取設構造を示す部分斜視図である。なお、図1乃至図15に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
スクリーン101の幅方向(水平方向)に複数のリンク機構7が並設される第1の変形例に係る除塵装置1Aでは、例えば図16に示すように、それぞれのリンク機構7を構成する第1のリンク71同士をつなぐように連結体76を架け渡して固設するとともに、この連結体76にハンドル75を固設してもよい。つまり、第1のリンク71に間接的にハンドル75を設けてもよい。
【0081】
この場合、並設される複数のリンク機構7において第1のリンク71同士が連結体76により一体化されることで、複数のリンク機構7の動作を連動させることができる。
この場合、レーキ22’による塵芥の掻き上げ中に、連結体76に取設されるハンドル75を作業者Mの手元側に引き寄せる動作を行うだけで(先の図3を参照)、レーキ22’の幅方向の全域をくまなくスクリーン101上に押し付けることができる。
この場合、それぞれのリンク機構7の第1のリンク71に個別にハンドル75を設ける場合に比べて、ハンドル75操作に必要な作業者Mの数を少なくすることができる。
この結果、大型のレーキ22’を用いながら少人数で効率良くかつ安全にスクリーン101上の除塵作業を行うことができる。
【0082】
なお、図16に示すハンドル75の取設構造では、連結体76に別体のハンドルを設ける場合を例に挙げて説明しているが、連結体76自体を人が手で把持できる程度の太さの棒状体により構成し、この棒状の連結体76をハンドル75としても使用できるよう構成してもよい(図示せず)。
この場合は、並設されるリンク機構7同士をつないで連動させる連結体76とハンドル75を兼用することができるので、第1の変形例に係る除塵装置1Aの操作性を向上しつつ、その構造を簡素化及び小型化することができる。
【0083】
最後に、本実施形態に係る除塵装置の第2の変形例について図17を参照しながら説明する。
図17は本実施形態の第2の変形例に係る除塵装置の側面図である。なお、図1乃至図16に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
【0084】
上述の除塵装置1A、1Aでは、熊手2及びその駆動機構である熊手ガイド5を、スクリーン101の幅方向に移動させる手段として、下部ガイドレール31及び上部ガイドレール32と、下部移動体41及び上部移動体42と、を備える場合を例に挙げて説明しているが、熊手2及び熊手ガイド5の移動手段としてこれら以外の構造を採用してもよい。
より具体的には、上述の除塵装置1A、1Aにおける下部ガイドレール31及び上部ガイドレール32に代えてガイドレール36を設けるとともに、下部移動体41及び上部移動体42に代えて移動体44(台車)を備えてなる除塵装置1B(図17を参照)としてもよい。
【0085】
上述のような第2の変形例に係る除塵装置1Bでは、熊手2及び、その駆動機構である熊手ガイド5及びリンク機構7等を搭載した移動体44が、取水口100上に設けられる取水台102において、スクリーン101の幅方向に敷設される一対のガイドレール36上を移動しながらスクリーン101上に捕捉された塵芥の除去作業を、熊手2や熊手2’により行えるよう構成されている。
また、上述のような第2の変形例に係る除塵装置1Bでは、先の除塵装置1A、1Aにおいて、下部移動体41や上部移動体42と連動して移動する設備は全て移動体44とともにガイドレール36上を移動するよう構成されている。
【0086】
より詳細には、上述のような第2の変形例に係る除塵装置1Bでは、熊手ガイド5の上部支持体52が、移動体44の上部441に、水平軸Xを基軸に回動可能に取設されるとともに、熊手ガイド5の下部支持体51側が、リンク機構7及びシリンダ装置8を介して移動体44の下部442に取設されている。
さらに、移動体44は、必要に応じてガイドレール36上を走行するための車輪45を備えてもよいし、ガイドレール36上を直接スライド可能に構成されていてもよい。
【0087】
加えて、上述のような第2の変形例に係る除塵装置1Bが、先の図11に示すような熊手2を備える場合は、そのリンク機構7にハンドル75を備えている。
また、第2の変形例に係る除塵装置1Bが、先の図15に示すような熊手2’を備える場合は、複数の棒状体21に対応して設けられる個々のリンク機構7に個別にハンドル75が設けられている、あるいは並設される複数のリンク機構7を連動させるように設けられる連結体76にハンドル75が設けられている。
【0088】
そして、上述のような第2の変形例に係る除塵装置1Bによれば、先に述べた除塵装置1A、1Aと同様の作用・効果を奏する。
【0089】
以上、本発明の実施形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、本発明に含まれる。例えば、上記の実施形態では、シリンダ装置8の駆動源が油圧であるが、空圧などのその他の駆動源であってもよい。また、リンク機構についても上記のリンク機構7に限らず、熊手ガイド5つまり熊手2が所定の角度だけ回動し、かつ、ロッド82のストロークが小さくなるようなリンク機構であればよい。さらに、リンク機構7の動きを規制するストッパを設け、スクリーン101に対する熊手2の角度を常に適正に制御できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0090】
1A,1A,1B…除塵装置 2,2’ …熊手 21…棒状体 22,22’ …レーキ 220…爪板 221…大爪 222…小爪 22a…連結筒 23…接続部材 23a…柱状体 241…ローラ支持板 24…レーキローラ 242…ボルト 242a…ピン孔 243…ナット 31…下部ガイドレール 32…上部ガイドレール 32a…一端部 33…ポール 34…レール支持材 35…支持部 36…ガイドレール 41…下部移動体 41a…支持板 41b…連結孔 411…下部主板 412…下部ローラ 413…下部側板 414…横行ロックネジ 415…横行ロックハンドル 416…第1の連結部 417…休止ロックピン 418…緩和部材 419…第2の連結部 42…上部移動体 421…上部主板 422…上部ローラ 423…第2の上部ローラ 424…第3の連結部 424…連結部 43…連結柱 431…水平バー 44…移動体 441…上部 442…下部 45…車輪 5…熊手ガイド 51…下部支持体 511…下部支持板 512…上部支持ローラ 52…上部支持体 521…上部支持板 522…上部支持ローラ 523…回転支持部 53…熊手カバー 6…電動チェーンブロック(昇降駆動手段) 61…チェーン 62…本体 63…押ボタンスイッチ 64…ケーブルガイドレール 65…電源ケーブル 66…ケーブル滑車 7…リンク機構 71…第1のリンク 72…第2のリンク 73…第3のリンク 74…連結板 75…ハンドル 76…連結体 8…シリンダ装置 80…シリンダ 81…基端部 82…ロッド 82a…先端部 9…駆動装置 91…移動ローラ 100…取水口 101…スクリーン 101a…縦材 102…取水台 103…網場架台 M…作業者 X…水平軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
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