(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-10-03
(45)【発行日】2025-10-14
(54)【発明の名称】移動体のエレベータ乗車支援方法、移動体制御方法、エレベータ制御装置、および移動体制御装置
(51)【国際特許分類】
B66B 5/14 20060101AFI20251006BHJP
B66B 1/14 20060101ALI20251006BHJP
【FI】
B66B5/14 B
B66B1/14 E
(21)【出願番号】P 2024095644
(22)【出願日】2024-06-13
【審査請求日】2024-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】三橋 知明
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-089941(JP,A)
【文献】実開昭54-174179(JP,U)
【文献】特開2021-024686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00- 5/28
B66B 1/00- 1/52
B66B 3/00- 3/02
B66B 13/00-13/30
B66B 15/00-19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの乗りかごに関して予め設定された、前記乗りかごの出入口方向への傾斜角度の許容上限値である角度閾値と、前記乗りかごを前記出入口方向に前記角度閾値で示される角度分、傾けるために要する、前記乗りかごのかご敷居にかける荷重量で示される荷重閾値とを記憶する閾値記憶部を有するエレベータ制御装置が、
前記乗りかごに乗り込もうとする移動体の重量の情報を取得し、
前記移動体の重量が前記荷重閾値以上である場合に、荷重閾値超過通知を出力
し、
所定期間ごとに、前記乗りかごを前記出入口方向に前記角度閾値で示される角度分、傾けるために要する、前記乗りかごのかご敷居にかける荷重量の計測値を取得し、取得した計測値が前回の計測時と異なる場合に、新たに計測された荷重量の情報で前記閾値記憶部内の荷重閾値を更新し、
前記荷重閾値が更新された回数が所定値以上になると、所定部品の交換を促す報知情報を出力する、移動体のエレベータ乗車支援方法。
【請求項2】
前記エレベータ制御装置は、
前記移動体が前記乗りかごのかご敷居に乗り上げた際に、前記乗りかごの出入口方向への傾斜角度が前記角度閾値以上であると判断すると、角度閾値超過通知を出力する、請求項1に記載の移動体のエレベータ乗車支援方法。
【請求項3】
前記角度閾値は、前記乗りかごのかごドア上部のかご開閉装置と、乗場の乗場ドア上部の乗場ドアとが接触せず、前記乗りかご上部に設置されたローラーガイドが変形しない角度で、予め設定される、請求項1に記載の移動体のエレベータ乗車支援方法。
【請求項4】
移動体制御装置が、
請求項1に記載のエレベータ乗車支援方法によりエレベータ制御装置から前記荷重閾値超過通知が出力されると、前記移動体を停止させるかまたは、予め設定された位置に移動させる、移動体制御方法。
【請求項5】
エレベータの乗りかごに関して予め設定された、前記乗りかごの出入口方向への傾斜角度の許容上限値である角度閾値と、前記乗りかごを前記出入口方向に前記角度閾値で示される角度分、傾けるために要する、前記乗りかごのかご敷居にかける荷重量で示される荷重閾値とを記憶する閾値記憶部と、
前記乗りかごに乗り込もうとする移動体の重量の情報を取得する移動体重量取得部と、
前記移動体の重量が前記荷重閾値以上である場合に、荷重閾値超過通知を出力する移動体情報処理部と、
所定期間ごとに、前記乗りかごを前記出入口方向に前記角度閾値で示される角度分、傾けるために要する、前記乗りかごのかご敷居にかける荷重量の計測値を取得し、取得した計測値が前回の計測時と異なる場合に、新たに計測された荷重量の情報で前記閾値記憶部内の荷重閾値を更新する閾値設定部と、
前記荷重閾値が更新された回数が所定値以上になると、所定部品の交換を促す報知情報を出力する機器管理部と、
を備えるエレベータ制御装置。
【請求項6】
請求項
5に記載のエレベータ制御装置に通信可能に接続され、
前記エレベータ制御装置から前記荷重閾値超過通知が出力されると、前記移動体を停止させるかまたは、予め設定された位置に移動させる、移動体制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、移動体のエレベータ乗車支援方法、移動体制御方法、エレベータ制御装置、および移動体制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレベータと、ロボット等の自走式の移動体とを連動させることで、移動体がエレベータを利用して物資の運搬を行うサービスが普及し始めている。これらの移動体には、自重が100kg以上のものもあり、このような重量の大きい移動体が荷物を積載して乗りかごに乗り込むと、乗りかごの定格積載荷重を超える場合がある。
【0003】
そのため、エレベータの乗場内の乗りかごと連通する出入口下部の乗場敷居に荷重を計測する計測器を設置し、計測器で計測した、乗りかごに向かう物体の荷重が所定値を超えた場合に、報知情報を出力する技術がある(例えば、特許文献1)。この技術を用いることにより、移動体が乗り込んだときに乗りかごにかかる荷重が定格積載荷重を超えるか否かを移動体が乗り込む前に判断し、定格積載荷重を超える場合には移動体の乗り込みを停止させることで、ワイヤロープ、巻き上げ機、およびかご床等に過負荷がかからないように対応をとることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
重量の大きい移動体が乗りかごに乗り込む際には、上述したような、乗り込んだ後に乗りかごにかかる荷重量以外にも、乗り込み時に発生する乗りかごの傾きに関しても注意を払う必要がある。
【0006】
これは、重量の大きい移動体が乗りかごに乗り込む際に、乗りかご内の出入口付近に大きな荷重がかかると乗りかごが出入口方向に傾き、乗りかごのかごドア上部に設置されたかご開閉装置が乗場ドア側の開閉装置に衝突してこれらの機器が破損したり、乗りかご上部に設置されたローラーガイドが変形したり、かご敷居が破損したりするおそれがあることによる。
【0007】
しかし、上述したような、移動体が乗り込んだ後に乗りかごにかかる荷重量を用いる技術では、乗りかごの傾き度合いによるエレベータ部材の破損の発生を考慮して移動体の乗り込み可否を判定することができないという問題があった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、エレベータ部材の破損を防ぎつつ、移動体が安全にエレベータの乗りかごに乗り込むことができるように支援するための、移動体のエレベータ乗車支援方法、移動体制御方法、エレベータ制御装置、および移動体制御装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための実施形態によれば移動体のエレベータ乗車支援方法は、エレベータの乗りかごに関して予め設定された、乗りかごの出入口方向への傾斜角度の許容上限値である角度閾値と、乗りかごを出入口方向に角度閾値で示される角度分、傾けるために要する、乗りかごのかご敷居にかける荷重量で示される荷重閾値とを記憶する閾値記憶部を有するエレベータ制御装置が、乗りかごに乗り込もうとする移動体の重量の情報を取得し、移動体の重量が荷重閾値以上である場合に、荷重閾値超過通知を出力する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態によるロボット移動システムの構成を示す全体図である。
【
図2】一実施形態によるロボット移動システム内のエレベータ制御装置10の構成を示すブロック図である。
【
図3】作業者が実行する、エレベータ制御装置への角度閾値および荷重閾値の設定処理の実行順序を示すフローチャートである。
【
図4】乗りかごのかご敷居上に荷重がかかり、乗りかごが傾いた状態を示す説明図である。
【
図5】一実施形態によるロボット移動システムにおいて、ロボット装置が乗りかごに乗り込む際に、エレベータ制御装置が実行する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の一実施形態によるエレベータ制御装置を利用したロボット移動システムについて、説明する。
【0012】
〈一実施形態によるロボット移動システムの構成〉
図1は、一実施形態によるロボット移動システムSTの構成を示す全体図である。ロボット移動システムSTは、建物内に設置されたエレベータ1と、自走式の移動体であるロボット装置20と、移動体制御装置としてのロボット制御装置30とを備える。
【0013】
エレベータ1は、建物内の昇降路2上部に設置された巻き上げ機3と、巻き上げ機3に掛け渡されたロープ4と、ロープ4の一端に吊り下げられた乗りかご5と、ロープ4の他端に吊り下げられた釣合い錘6とを有する。
【0014】
乗りかご5は、かごドア51と、かごドア51下部に設けられたかご敷居52と、かご敷居52にかかる荷重量を計測するかご荷重測定装置53と、かごドア51上部に設置されたかごドア開閉装置54と、乗りかご5を支持する縦枠55と、縦枠55上部に設置されたローラーガイド56と、縦枠55上部に設置され、乗りかご5のかごドア51方向への傾斜角度を計測する角度計測装置57とを有する。角度計測装置57は、例えばジャイロセンサで構成される。
【0015】
建物内の各階の乗場7には、乗場ドア71と、乗場ドア71下部の乗場敷居72と、乗場敷居72にかかる荷重量を計測する乗場荷重測定装置73と、乗場ドア71上部の乗場ドア装置74と、乗場7上部の乗場無線通信装置75とが設置されている。
【0016】
また、昇降路2上部には、エレベータ制御装置10が設置されている。エレベータ制御装置10は、巻き上げ機3、乗りかご5、乗場荷重測定装置73、およびロボット制御装置30に通信可能に接続されている。
【0017】
乗場荷重測定装置73と乗場荷重測定装置73とは、同じ仕様で構成された装置を用いることで、装置間の測定誤差がなるべく生じないようにすることができる。
【0018】
図2は、エレベータ制御装置10の構成を示すブロック図である。エレベータ制御装置10は、エレベータ制御装置10は、閾値記憶部11と、入力部12と、出力部13と、CPU14とを有する。
【0019】
閾値記憶部11は、乗りかご5に関して予め設定された、乗りかご5の出入口方向であるかごドア51方向への傾斜角度の許容上限値である角度閾値と、乗りかご5をかごドア51方向にこの角度閾値で示される角度分、傾けるために要する、乗りかご5のかご敷居52にかける荷重量で示される荷重閾値とを記憶する。この角度閾値は、乗りかご5がかごドア51方向に傾いたときにかごドア開閉装置54と乗場ドア装置74とが接触せず、ローラーガイド56が変形しない角度で、予め設定される。また、荷重閾値は、かご敷居52が破損しない荷重量で設定される。
【0020】
入力部12は、管理者による操作情報を入力する。出力部13は、例えば表示装置で構成され、CPU14で処理された情報を出力する。
【0021】
CPU14は、例えば汎用のマイクロコンピュータが備えるCPU(中央処理装置)であって、所定のエレベータ制御プログラムをインストールして実行することにより、以下に示す1又は2以上の情報処理部を構成する。CPU14は、移動体重量取得部としてのロボット重量取得部141と、傾斜角度取得部142と、移動体情報処理部としてのロボット情報処理部143と、閾値設定部144と、機器管理部145とを有する。
【0022】
ロボット重量取得部141は、ロボット装置20が乗りかご5に乗り込んだときにかご荷重測定装置53にかかった荷重量を、ロボット装置20の重量として取得する。傾斜角度取得部142は、角度計測装置57で計測された乗りかご5のかごドア51方向への傾斜角度を計測する。
【0023】
ロボット情報処理部143は、ロボット重量取得部141が取得したロボット装置20の重量が荷重閾値以上である場合に、荷重閾値超過通知を出力する。またロボット情報処理部143は、傾斜角度取得部142が取得した乗りかご5のかごドア51方向への傾斜角度が角度閾値以上である場合に、角度閾値超過通知を出力する。
【0024】
閾値設定部144は、閾値記憶部11に角度閾値および荷重閾値を記憶させ、所定期間間隔で荷重閾値を更新する。
【0025】
機器管理部145は、更新された荷重閾値に基づいて、エレベータ1内の部品の劣化状態を判定し、必要に応じて部品交換を促す報知情報を出力する。
【0026】
ロボット装置20は、前輪21および後輪22と、前輪21および後輪22を駆動する駆動装置23と、ロボット無線通信装置24とを有する。ロボット無線通信装置24は、乗場無線通信装置75を介してロボット制御装置30との通信を行う。
【0027】
ロボット制御装置30は、エレベータ制御装置10および各乗場7の乗場無線通信装置75と通信可能に接続されている。ロボット制御装置30は、エレベータ制御装置10から取得する通知情報に基づいてロボット装置20を制御する制御信号を生成し、ロボット装置20がある乗場7の乗場無線通信装置75を介してロボット装置20に送信する。
【0028】
〈一実施形態によるロボット移動システムの動作〉
本実施形態によるロボット移動システムの動作として、(1) 閾値設定処理、および(2) ロボット乗り込み処理について、説明する。
【0029】
(1) 閾値設定処理
図3は、2人の作業者により実行する、エレベータ制御装置10への角度閾値および荷重閾値の設定処理の実行順序を示すフローチャートである。第1作業者はまず、所定重量の検査用ウェイトを所定個数(例えば1つ)、乗りかご5のかご敷居52上に載せる(S1)。このとき、かご敷居52上に荷重がかかると、
図4に示すように乗りかご5がかごドア51方向に傾き、かご敷居52と乗場敷居72との間のクリアランスDが広がる。作業者は、かご敷居52と乗場敷居72との間のクリアランスDの距離を計測する(S2)。
【0030】
第1作業者は、このクリアランスDが所定値以下、例えば30mmを超えていない判定すると(S3の「NO」)、さらに検査用ウェイトを追加し、再度クリアランスの距離を計測する(S4→S2)。この所定値(30mm)は、乗りかご5がかごドア51方向に傾いたときにかごドア開閉装置54と乗場ドア装置74とが接触せず、ローラーガイド56が変形しないようなかご敷居52と乗場敷居72との間の距離で、予め設定される。
【0031】
かご敷居52と乗場敷居72との間のクリアランスDが30mm超になるまでステップS2~S4を繰り返し、30mm超になると(S3の「YES」)、第1作業者は、積み上げた検査用ウェイトの総重量を算出して荷重閾値として取得し、エレベータ制御装置10近傍にいる第2作業者にこの荷重閾値の情報を伝える。
【0032】
第2作業者は、このクリアランスDが30mm超になったときに角度計測装置57で計測された乗りかご5の傾斜角度θを、角度閾値として認識する。
【0033】
第2作業者は、これらの荷重閾値および角度閾値の情報を入力部12から入力する。閾値設定部144は、入力部12から入力された荷重閾値および角度閾値の情報を、閾値記憶部11に記憶させることで設定する(S5)。以上で、閾値設定処理を終了する。
【0034】
なお、所定期間ごと、例えばエレベータ1の定期点検の際に、作業者は上述したステップS1~S4を実行する。そして作業者は、かご敷居52と乗場敷居72との間のクリアランスが30mm超になったときの検査用ウェイトの個数が前回と異なる場合、つまり乗りかご5をかごドア51方向に角度閾値で示される角度分、傾けるために要する、かご敷居52にかける荷重量の計測値が前回の計測時と異なる場合に、今回積み上げた検査用ウェイトの総重量を計測して新たな荷重閾値として取得する。
【0035】
作業者は、新たな荷重閾値の情報を入力部12から入力する。閾値設定部144は、新たな荷重閾値の情報を取得すると、取得した情報で閾値記憶部内の荷重閾値の情報を更新する。
【0036】
(2) ロボット乗り込み処理
図5は、ロボット装置20が乗りかご5に乗り込む際に、エレベータ制御装置10が実行する処理を示すフローチャートである。
図5を参照して、本実施形態による移動体のエレベータ乗車支援方法および移動体制御方法について説明する。
【0037】
かごドア51および乗場ドア71が戸開すると、ロボット装置20が乗りかご5に向かって走行し、前輪21が乗場敷居72上に載った状態で停止する。ロボット装置20が停止すると(S11の「YES」)、乗場荷重測定装置73が乗場敷居72にかかる荷重量を計測し、計測値をエレベータ制御装置10に送信する。
【0038】
エレベータ制御装置10では、ロボット重量取得部141が、乗場荷重測定装置73から送信された計測値の情報をロボット装置20の重量として取得する。ロボット情報処理部143は、ロボット重量取得部141が取得したロボット装置20の重量が、閾値記憶部11に記憶された荷重閾値未満であると判定すると(S12の「YES」)、乗り込み許可通知を生成してロボット制御装置30に送信する。
【0039】
ロボット制御装置30は、エレベータ制御装置10から乗り込み許可通知を取得すると、乗りかご5への乗り込み指示を生成し、ロボット装置20がある乗場7の乗場無線通信装置75を介してロボット装置20に送信する。ロボット装置20は、ロボット制御装置30から送信された乗り込み指示を、ロボット無線通信装置24を介して取得し、これに基づいて駆動装置23が前輪21および後輪22を駆動してロボット装置20を前進させて乗りかご5に乗り込ませる。ロボット装置20が乗りかご5に乗り込むと、乗り込み許可通知が出力された場合のロボット乗り込み処理が完了する。
【0040】
ステップS12において、ロボット情報処理部143は、ロボット重量取得部141が取得したロボット装置20の重量が荷重閾値以上であると判定すると(S12の「NO」)、荷重閾値超過通知を生成してロボット制御装置30に送信する(S14)。
【0041】
ロボット制御装置30は、エレベータ制御装置10から荷重閾値超過通知を取得すると、予め設定された荷重閾値超過時の動作内容を特定し、特定した動作内容に基づく動作指示を生成してロボット装置20に送信する。ここで、ロボット制御装置30には、ロボット装置20の重量が荷重閾値超過時のロボット装置20の動作内容として、所定位置(例えば、ロボット集積所)まで後退させるかまたは、乗りかご5への乗り込みを続行させることが予め設定されている。
【0042】
ロボット制御装置30は、ロボット装置20の重量が荷重閾値超過時の動作内容として所定位置まで後退させることが設定されている場合には、所定位置までの後退指示を生成し、ロボット装置20に送信する。ロボット装置20は、ロボット制御装置30から送信された後退指示を取得し、これに基づいてロボット装置20を所定位置まで後退させる。
【0043】
エレベータ制御装置10では、ロボット装置20が後退して乗場荷重測定装置73が乗場敷居72にかかる荷重がなくなったと判定すると(S15の「YES」)、処理を終了する。
【0044】
またロボット制御装置30は、ロボット装置20の重量が荷重閾値超過時の動作内容として乗りかご5への乗り込みを続行させることが設定されている場合には、低速での乗り込み指示を生成し、ロボット装置20に送信する。ロボット装置20は、ロボット制御装置30から低速での乗り込み指示を取得すると、これに基づいてロボット装置20を低速で乗りかご5に乗り込ませる。
【0045】
ロボット装置20が低速で乗りかご5に乗り込み、前輪21がかご敷居52上に乗り上げると、かご荷重測定装置53がかご敷居52に荷重がかかったことをエレベータ制御装置10に通知する。
【0046】
エレベータ制御装置10では、かご荷重測定装置53からかご敷居52に荷重がかかったことが通知されると、ロボット情報処理部143が、かご敷居52上にロボット装置20が乗り上げたと判断する(S16の「YES」)。ロボット情報処理部143は、かご敷居52上にロボット装置20が乗り上げたと判断すると、角度計測装置57から、乗りかご5のかごドア51方向への傾斜角度を所定時間間隔で取得する。
【0047】
ロボット情報処理部143は、取得した傾斜角度が、閾値記憶部11に記憶された角度閾値未満である間は、ロボット装置20の乗りかご5への乗り込みが完了するまで動作を継続させる(S17の「YES」→S18の「NO」)。つまり、ロボット情報処理部143は、ロボット制御装置30への通知は何ら行わない。ロボット装置20の乗りかご5への乗り込みが完了すると(S18の「YES」)、処理を終了する。
【0048】
ステップS17において、ロボット情報処理部143は、ロボット装置20の乗り込み動作中に取得した傾斜角度が閾値記憶部11に記憶された角度閾値以上になったと判定すると(S17の「NO」)、角度閾値超過通知を生成してロボット制御装置30に送信する(S19)。
【0049】
ロボット制御装置30は、エレベータ制御装置10から角度閾値超過通知を取得すると、所定位置までの後退指示を生成し、ロボット装置20に送信する。ロボット装置20は、ロボット制御装置30から送信された後退指示を取得し、これに基づいてロボット装置20を所定位置まで後退させる。
【0050】
エレベータ制御装置10では、ロボット装置20が後退してかご荷重測定装置53がかご敷居52にかかる荷重がなくなると、ロボット装置20の後退を認識し(S20)、処理を終了する。
【0051】
またエレベータ制御装置10は、ステップS14で荷重閾値超過通知を生成してロボット制御装置30に送信したときに、併せて乗場7に設置された乗場表示装置(図示せず)またはロボット装置20を管理する管理者の携帯端末(図示せず)等に、ロボット装置20に積載された荷物を減らすように指示する情報を表示させてもよい。この表示情報を視認したロボット装置20の管理者がロボット装置20に積載されている荷物を減らし、これによりロボット重量取得部141が取得したロボット装置20の重量が荷重閾値未満になったときには、ロボット情報処理部143は、乗り込み許可通知を生成してロボット制御装置30に送信してもよい。
【0052】
また上述した実施形態において、ロボット制御装置30には、ロボット装置20の重量が荷重閾値超過時のロボット装置20の動作内容として、所定位置まで後退させるかまたは、乗りかご5への乗り込みを続行させることが予め設定されている場合について説明したが、これには限定されない。ロボット制御装置30は、エレベータ制御装置10から荷重閾値超過通知を取得したときに、ロボット装置20を所定位置まで後退させるかまたは乗りかご5への乗り込みを続行させるかを問い合わせる情報を乗場の表示装置またはロボット装置20の管理者の携帯端末等に出力させ、ロボット装置20の管理者がいずれかの動作を選択したときに、この選択内容に応じてロボット装置20を動作させてもよい。
【0053】
また上述した実施形態において、エレベータ制御装置10内の機器管理部145が、閾値設定部144により荷重閾値が更新された回数が所定値以上になると、ローラーガイド56等の所定部品が劣化したと判断し、これらの部品の交換を促す報知情報を出力してもよい。
【0054】
[実施形態の効果]
上述した実施形態によれば、移動体のエレベータ乗車支援方法により、エレベータの乗りかごに関して予め設定された、乗りかごの出入口方向への傾斜角度の許容上限値である角度閾値と、乗りかごを出入口方向に角度閾値で示される角度分、傾けるために要する、乗りかごのかご敷居にかける荷重量で示される荷重閾値とを記憶する閾値記憶部を有するエレベータ制御装置が、乗りかごに乗り込もうとするロボット装置の重量の情報を取得し、ロボット装置の重量が荷重閾値以上である場合に、荷重閾値超過通知を出力する。
【0055】
これにより、エレベータ部材の破損を防いで保守管理の手間および費用を抑えつつ、ロボット装置が安全にエレベータの乗りかごに乗り込むことができるように支援することができる。
【0056】
また、エレベータ制御装置は、ロボット装置が乗りかごのかご敷居に乗り上げた際に、乗りかごの出入口方向への傾斜角度が角度閾値以上であると判断すると、角度閾値超過通知を出力する。これにより、さらに精度良く、エレベータ部材の破損を防ぎつつ、ロボット装置が安全にエレベータの乗りかごに乗り込むことができるように支援することができる。
【0057】
また、角度閾値は、乗りかごのかごドア上部のかご開閉装置と、乗場の乗場ドア上部の乗場ドアとが接触せず、乗りかご上部に設置されたローラーガイドが変形しない角度で、予め設定される。これにより、ロボット装置が乗りかごのかご敷居に乗り上げた際にエレベータ部材が破損しないように、適切な角度閾値を設定することができる。
【0058】
また、エレベータ制御装置は、所定期間ごとに、乗りかごを出入口方向に角度閾値で示される角度分、傾けるために要する、乗りかごのかご敷居にかける荷重量の計測値を取得し、取得した計測値が前回の計測時と異なる場合に、新たに計測された荷重量の情報で閾値記憶部内の荷重閾値を更新する。これにより、閾値記憶部内の荷重閾値を精度良く保つことができる。
【0059】
また、エレベータ制御装置は、荷重閾値が更新された回数が所定値以上になると、所定部品の交換を促す報知情報を出力する。これにより、荷重閾値の変動に関わる部材の劣化を判定してエレベータの保守支援を行うことができる。
【0060】
また実施形態によれば、移動体制御方法により、ロボット装置制御装置が、上述したエレベータ乗車支援方法によりエレベータ制御装置から荷重閾値超過通知が出力されると、ロボット装置を停止させるかまたは、予め設定された位置に移動させる。これにより、エレベータの部材に破損が生じないように、ロボット装置を制御することができる。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
ST…ロボット移動システム、1…エレベータ、2…昇降路、3…巻き上げ機、4…ロープ、5…乗りかご、6…釣合い錘、7…乗場、10…エレベータ制御装置、11…閾値記憶部、12…入力部、13…出力部、14…CPU、20…ロボット装置、21…前輪、22…後輪、23…駆動装置、24…ロボット無線通信装置、30…ロボット制御装置、51…かごドア、52…かご敷居、53…かご荷重測定装置、54…かごドア開閉装置、55…縦枠、56…ローラーガイド、57…角度計測装置、71…乗場ドア、72…乗場敷居、73…乗場荷重測定装置、74…乗場ドア装置、75…乗場無線通信装置、141…ロボット重量取得部、142…傾斜角度取得部、143…ロボット情報処理部、144…閾値設定部、145…機器管理部
【要約】
【課題】 エレベータ部材の破損を防ぎつつ、移動体が安全にエレベータの乗りかごに乗り込むことができるように支援するための、移動体のエレベータ乗車支援方法を提供する。
【解決手段】 実施形態によればエレベータ乗車支援方法は、エレベータの乗りかごに関して予め設定された、乗りかごの出入口方向への傾斜角度の許容上限値である角度閾値と、乗りかごを出入口方向に角度閾値で示される角度分、傾けるために要する、乗りかごのかご敷居にかける荷重量で示される荷重閾値とを記憶する閾値記憶部を有するエレベータ制御装置が、乗りかごに乗り込もうとする移動体の重量の情報を取得し、移動体の重量が荷重閾値以上である場合に、荷重閾値超過通知を出力する。
【選択図】
図4