(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-10-03
(45)【発行日】2025-10-14
(54)【発明の名称】電流検出器のコア部材、電流検出器、および電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   G01R  15/20        20060101AFI20251006BHJP        
【FI】
G01R15/20 C 
(21)【出願番号】P 2024500921
(86)(22)【出願日】2022-02-21
(86)【国際出願番号】 JP2022007051
(87)【国際公開番号】W WO2023157316
(87)【国際公開日】2023-08-24
【審査請求日】2024-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片桐  一重
(72)【発明者】
【氏名】菅野  清隆
【審査官】青木  洋平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/067863(WO,A1)    
【文献】特開2013-120106(JP,A)      
【文献】特開2007-088019(JP,A)      
【文献】特開2014-077682(JP,A)      
【文献】特開2015-175757(JP,A)      
【文献】特開2009-042003(JP,A)      
【文献】特開平04-315059(JP,A)      
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R    15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
  磁気ギャップを有する環状のコアと、
前記磁気ギャップを間に挟んで前記コアの一部を
それぞれ封止する
一対の第1モールド部と、前記第1モールド部を封止する第2モールド部と、を備え、
  前記
一対の第1モールド部は、
略直方体形状をそれぞれ有し、
            
  前記一対の第1モールド部のそれぞれにおけるいずれか少なくとも1つの面は、前記磁気ギャップを挟んだ一対の押さえ面を
形成し、
            
  前記一対の押さえ面は、前記第2モールド部によって封止され、
  前記コアおよび前記第1モールド部は、前記第2モールド部の端面から突出している電流検出器のコア部材。
【請求項2】
  請求項1に記載の電流検出器のコア部材において、
  前記第1モールド部の前記一対の押さえ面は、その一部が前記第2モールド部から露出している電流検出器のコア部材。
【請求項3】
  請求項
1に記載の電流検出器のコア部材において、
  前記第1モールド部の前記一対の押さえ面には、凹部および凸部の少なくとも一方が形成される電流検出器のコア部材。
【請求項4】
  請求項
1に記載の電流検出器のコア部材において、
  前記第2モールド部は、前記第1モールド部の前記押さえ面の一部を押さえる押さえ部を有する電流検出器のコア部材。
【請求項5】
  請求項
4に記載の電流検出器のコア部材において、
  
前記一対の押さえ面は、前記一対の
第1モールド部において前記磁気ギャップ側とは反対側の外表面であり、前記コアの外形よりも外側に形成される電流検出器のコア部材。
【請求項6】
  請求項
1に記載の電流検出器のコア部材において、
  前記コアおよび前記第1モールド部は、前記第2モールド部の下端面から突出している電流検出器のコア部材。
【請求項7】
  請求項1から請求項
6までのいずれ
か一項に記載の電流検出器のコア部材において、
  前記コアは、磁性帯板を渦巻き状に巻回してなる巻きコアである電流検出器のコア部材。
【請求項8】
  請求項1から請求項
6までのいずれ
か一項に記載の電流検出器のコア部材において、
  前記第1モールド部により封止された前記コアを複数備え、
  前記第2モールド部は、前記第1モールド部により封止された前記複数のコアを連結するように前記第1モールド部を封止してなる電流検出器のコア部材。
【請求項9】
  請求項1から請求項
6までのいずれ
か一項に記載の電流検出器のコア部材と、
  前記磁気ギャップ内に配置される電磁変換素子と、
  前記電磁変換素子が実装された回路基板と、を備えた電流検出器。
【請求項10】
  請求項
9に記載の電流検出器において、
  前記第2モールド部は、前記回路基板が搭載される基板搭載面を有するとともに、前記基板搭載面から前記磁気ギャップに向かって窪む溝部を有し、
  前記電磁変換素子は、前記第2モールド部の前記溝部に収容される電流検出器。
【請求項11】
  請求項
9に記載の電流検出器と、
  直流電力と交流電力とを相互に変換するインバータと、
  前記直流電力または前記交流電力を伝達するとともに前記コア内に挿通されるバスバと、を備えた電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  本発明は、電流検出器のコア部材、電流検出器、および電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
  直流電流を交流電流に変換する電力変換装置は、バスバに流れる電流を検出する電流検出器を備えている。電流検出器は、バスバが挿通されるコアとコアの磁気ギャップ内に配置される電磁変換素子とを用いて、バスバに流れる電流により発生する磁束を測定している。特に、信頼性が要求される車両用の電力変換装置では、電流検出器を構成するコアの実装には、高い精度や耐振性が要求される。
【0003】
  特許文献1には、コアと、コアの磁路に沿って1或いは複数箇所に成形されてコアの表面を覆うモールド樹脂部とより構成されるコア部品において、コア部品は、モールド樹脂部の表面が外装ケースの内面に接触した状態で、外装ケースの内部に固定される電流検出器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
  特許文献1に記載の電流検出器は、コアの実装において精度や耐振性に課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
  本発明による電流検出器のコア部材は、磁気ギャップを有する環状のコアと、前記磁気ギャップを間に挟んで前記コアの一部をそれぞれ封止する一対の第1モールド部と、前記第1モールド部を封止する第2モールド部と、を備え、前記一対の第1モールド部は、略直方体形状をそれぞれ有し、前記一対の第1モールド部のそれぞれにおけるいずれか少なくとも1つの面は、前記磁気ギャップを挟んだ一対の押さえ面を形成し、前記一対の押さえ面は、前記第2モールド部によって封止され、前記コアおよび前記第1モールド部は、前記第2モールド部の端面から突出している。
【発明の効果】
【0007】
  本発明によれば、コアの実装において高い精度や耐振性を備えた信頼性の高い電流検出器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
            
            
            【
図3】(A)(B)(C)電流検出器の側面図、上面図、断面図である。
 
            
            【
図5】(A)(B)コアの一部を封止した第1モールド部を示す外観斜視図、側面図である。
 
            【
図6】(A)(B)コア部材を示す外観斜視図である。
 
            【
図7】変形例にかかる第1モールド部を示す外観斜視図である。
 
          
【発明を実施するための形態】
【0009】
  以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施する事が可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。
【0010】
  図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0011】
  図1は、電力変換装置100の回路構成図である。
  電力変換装置100は、バッテリ200からの直流電力を交流電力に変換してモータ300を駆動する。また、電力変換装置100は、モータ300が外力により回転されて発電機として機能した場合に、発電された交流電力を直流電力に変換してバッテリ200を充電する。バッテリ200は、充放電可能な二次電池であり、バッテリ200の正極及び負極に接続された直流バスバB1、B2を介して直流電圧が電力変換装置100に印加される。モータ300は、例えば、内部に三相の巻線を有した三相同期電動機である。電力変換装置100より交流バスバBu、Bv、Bwを介して出力された三相の交流電流がモータ300の各相の巻線に流れる。
 
【0012】
  電力変換装置100、バッテリ200、モータ300は、例えば車両に搭載され、同じく車両に搭載された車両制御装置400は、モータ300に対するトルク指令などを電力変換装置100へ出力する。
【0013】
  電力変換装置100は、コンデンサ500、インバータ600、電流検出器700、制御部800を備える。
【0014】
  コンデンサ500は、ノイズ除去用コンデンサや平滑コンデンサを含む。インバータ600は、直流バスバB1、B2の間に三相分のスイッチングレグが接続され、各スイッチングレグは、上アームのスイッチング素子及び下アームのスイッチング素子より構成される。パワー半導体素子は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。インバータ600は、直流電力と交流電力とを相互に変換する。
【0015】
  電流検出器700の詳細は後述するが、交流バスバBu、Bv、Bwが挿通されるコアとコアの磁気ギャップ内に配置される電磁変換素子とを用いて、交流バスバBu、Bv、Bwに流れる電流により発生する磁束を測定し、電流値を求める。なお、本実施形態では、コアには、交流バスバBu、Bv、Bwが挿通される例で説明するが、コアには、直流電力を伝達する直流バスバが挿通されてもよい。
【0016】
  制御部800は、電流検出器700により検出された電流値と、モータ300に設置されたレゾルバ等により検出されたモータ300の回転角度と、バッテリ200からの入力電圧値(図示省略)とに基づいて、車両制御装置400より出力されたトルク指令に応じた最適な制御、且つ最適な効率になるように、インバータ600を駆動制御する。この制御により、レスポンスや操作性などの車両の挙動の向上を図っている。すなわち、本実施形態に示す、磁気特性の低下を抑え、高い検出精度や耐振性を備えた信頼性の高い電流検出器700を設けることは、車両の挙動の向上やモータ300の効率の向上が期待できる。
【0017】
  図2は、電流検出器700の外観斜視図である。
  電流検出器700のコア部材750は、磁気ギャップMを有する環状のコア730と、コア730の一部を封止する第1モールド部710と、第1モールド部710を封止する第2モールド部720と、を備える。第1モールド部710、第2モールド部720は、絶縁性合成樹脂などのモールド樹脂を金型内で封止することにより成形されたものである。
 
【0018】
  第1モールド部710は、詳細は後述するが、コア730の一部を封止する。第2モールド部720は、3相分のコア部材750を連結するように第1モールド部710の一部を封止する。コア部材750は、3相分のコア部材750のそれぞれに交流バスバBu、Bv、Bwが挿通される。第2モールド部720の上面には、回路基板760が設置される。
【0019】
  回路基板760には、コア730の磁気ギャップM内に配置される電磁変換素子が実装され、回路基板760は、第2モールド部720において3か所に形成された樹脂製のボス762によって第2モールド部720に熱カシメ固定される。ボス762は、第2モールド部720に対する回路基板760の位置決めも兼ねており、回路基板760がボス762によって位置決めされることで、磁気ギャップMから回路基板760に実装された電磁変換素子740(
図3(C)参照)までの位置決めがなされる。なお、ボス762の代わりにビス等の締結部材を用いて、回路基板760を第2モールド部720に固定してもよい。回路基板760は、コネクタ763を有し、電磁変換素子により測定された検出値に基づく電圧値がコネクタ763を介して制御部800へ出力される。
 
【0020】
  第2モールド部720は、コア730と、第1モールド部710と、回路基板760とが一体的に固定されて電流検出器700を構成する。電流検出器700は、位置決めピン780(
図3参照)によって位置決めされた状態で、第2モールド部720の両端にカラー764をねじ止めすることにより、電力変換装置100の筐体に固定される。
 
【0021】
  図3(A)、
図3(B)、
図3(C)は、電流検出器700の側面図、上面図、断面図である。
図3(A)は側面図、
図3(B)は上面図、
図3(C)は、
図3(B)のB-B線の断面図である。
 
【0022】
  図3(A)に示すように、コア730および第1モールド部710は、第2モールド部720の下端面721から突出している。
図3(B)に示すように、回路基板760が第2モールド部720の上端面である基板搭載面722に3か所のボス762で固定されている。
図3(C)に示すように、回路基板760は、電磁変換素子740が実装され、コア730の磁気ギャップ内に配置されている。すなわち、第2モールド部720は、回路基板760が搭載される基板搭載面722を有するとともに、基板搭載面722から磁気ギャップに向かって窪む溝部724を有し、電磁変換素子740は、溝部724に収容される。なお、本実施形態では、回路基板760に電磁変換素子740が実装されている例を示したが、電磁変換素子740を制御部800に実装して回路基板760を省略することも可能である。
 
【0023】
  電流検出器700は、電力変換装置100の図示省略した筐体に固定されるが、車両向けの電力変換装置100は使用電圧が高いため、安全な絶縁距離を確保する必要があり、電流検出器700は、電力変換装置100の筐体とは必要な絶縁距離を確保して固定される。
【0024】
  図4は、電流検出器700の一部拡大断面図である。この
図4は、
図3(C)に示した電流検出器700のうち、交流バスバBv付近の電流検出器700を拡大した図である。
 
【0025】
  コア730は、磁性帯板を渦巻き状に巻回してなる巻きコアである。巻きコアは、磁性帯板を巻いて接着し、これを切断したものである。巻きコアは、磁性帯板として方向性電磁鋼板を使用しており、無方向性電磁鋼板に比べ直線性等で優れた磁気特性を有し、磁束密度を高く設定することができ小型化することができる。一方で、磁性帯板を巻くことによりコア730の寸法にばらつきが生じる傾向にある。そこで、本実施形態では、第1モールド部710をコア730の外形より大きく成形し、これを第2モールド部720で封止することでコア730の寸法ばらつきを吸収している。
【0026】
  また、第1モールド部710は、磁気ギャップMを挟むコア730の一部をそれぞれ封止する一対のモールド部分で構成される。すなわち、第1モールド部710は、コア730の磁束飽和部Nを避けて、磁束飽和の少ない磁気ギャップM側をモールドする。磁束飽和部Nは、コア730の磁気ギャップMの位置とは交流バスバBvを挟んで反対の位置にあるが、磁束飽和部Nはこの部分に加わる外部からの応力により磁束密度が低下する。本実施形態では、第1モールド部710が、さらには第2モールド部720が磁束飽和部Nに形成されていないので、成形時の応力や成型後の外力が磁束飽和部Nに加わるのを防止でき、磁気特性の低下を抑え、高い検出精度を備えた電流検出器700を提供できる。
【0027】
  図4に示すように、第1モールド部710は、磁気ギャップMを挟んだ一対の押さえ面711を有する。第2モールド部720は、第1モールド部710の押さえ面711に対向する押さえ部723を有し、押さえ部723は、第1モールド部710の押さえ面711の一部を押さえる。すなわち、一対の押さえ面711は、第2モールド部720の押さえ部723で抑えられた状態で一体的に封止される。
 
【0028】
  さらに詳細に説明すると、一対の押さえ面711は、一対のモールド部分において磁気ギャップM側とは反対側の外表面であり、コア730の外形よりも外側に形成される。磁気ギャップMを挟んだ一対の押さえ面711は、第2モールド部720のモールド成形時に押さえ部723で第1モールド部710を介してコア730の押さえとなることで、磁気ギャップMの寸法変動や第2モールド部720に対する磁気ギャップMの位置決めが精度良く行え、高い精度を備えた電流検出器700を提供できる。すなわち、磁気ギャップMの大きさが外力や経年変化等の影響により変動するのを抑制する。押さえ面711は、コア730が変動する方向に対抗する面を設定する。
図4の例では、コア730が磁気ギャップMを広げるような外側に広がる傾向がある場合の例を示したものである。
 
【0029】
  押さえ面711は、磁気ギャップM側とは反対側の外表面に限らず、コア730の変形方向を抑制する面、例えば、磁気ギャップM側、上面、下面などに設定することができる。そして、押さえ面711に対向して、押さえ面711を第2モールド部720の押さえ部723で封止して固定することで、コア730の磁気ギャップMの拡大/縮小方向の変形やコア730のがたつきを抑えることができる。押さえ部723によりコア730の位置精度やコア730に対する回路基板760の位置精度が向上する。
【0030】
  第1モールド部710の一対の押さえ面711は、第1モールド部710が第2モールド部720によって封止された箇所から露出している。この露出部分は、コア730が第1モールド部710によりモールド成形された状態で、露出部分を治具等で保持して、次の工程である第2モールド部720のモールド成形を行うためである。この工程で、磁気ギャップMの成形時の寸法変動(ギャップの広がり)を抑えることができ、磁気特性のばらつきを抑えることができる。また、コア730の磁束飽和部Nに治具等による外力が加わるのを防止することもできる。
【0031】
  コア730の磁気特性のばらつきは磁気ギャップMの変動により影響を受ける。本実施形態では、第2モールド部720は、押さえ部723で第1モールド部710の押さえ面711の一部を押さえて、第1モールド部710を第2モールド部720によって一体的に封止する。さらに、第2モールド部720は、3相分のコア部材750を連結するように第1モールド部710を封止する。このような構成にしたので、磁気ギャップMの変動を抑える強固な構造にできる。したがって、車両の振動等による磁気ギャップMの変動を抑え、高い精度や耐振性を備えた信頼性の高い電流検出器を提供できる。
【0032】
  図5(A)、
図5(B)は、コア730の一部を封止した第1モールド部710を示す外観斜視図、側面図である。
図5(A)は外観斜視図、
図5(B)は側面図である。
 
【0033】
  図5(A)、
図5(B)に示すように、コア730は第1モールド部710のモールド成形時にモールド樹脂により固定される。そのうえで、
図4に示すように、第1モールド部710の一部が第2モールド部720のモールド成形時にモールド樹脂により固定される。したがって、コア730をビスや嵌合構造などで固定する場合に比較して、コア730の固定のためのそのほかの構造を不要とし、固定部の摩耗によるコア730のガタ付きが生じる虞もなく、耐振性に優れている。また篏合構造が不要になることで、コア730が実装される電流検出器700を小型化できるとともに、電力変換装置100内でのレイアウト性も向上し、回路基板760と制御部800の統合も容易となる。さらに、磁束未飽和部を樹脂封止することから、磁気特性の低下も生じない。
 
【0034】
  また、第1モールド部710は、コア730の全体を覆うことなくコア730の一部を封止している。そのうえで、
図3(C)に示すように、第1モールド部710の一部を第2モールド部720のモールド成形時にモールド樹脂により固定している。したがって、封止するモールド樹脂を低減でき、電流検出器700も小型化できる。
 
【0035】
  図5(A)、
図5(B)に示すように、第1モールド部710の一対の押さえ面711には、コア730の厚みDの方向に凹部712が設けられている。この凹部712には、
図3(C)、
図4の断面図に示すように、第2モールド部720のモールド成形時に第2モールド部720を形成するモールド樹脂が入り込み、第1モールド部710と第2モールド部720を強固に固定する。すなわち、一対の押さえ面711は、第2モールド部720のモールド成形時に第1モールド部710を介してコア730の押さえとなることで、磁気ギャップMの寸法変動や第2モールド部720に対する磁気ギャップMの位置決めが精度良く行える。さらに、凹部712における第1モールド部710と第2モールド部720のアンカー効果により、強固に固定されるので、耐久性及び信頼性が求められる車両向けのコア部材として適している。
 
【0036】
  なお、凹部712はコア730の厚みDの方向に設けた例で説明したが、コア730の厚みDの方向と直交する方向に設けても良い。また、コア730の厚みDの方向およびコア730の厚みDの方向と直交する方向に、すなわち十字形状に設けてもよい。また、凹部712に限らず、これを凸部にし、コア730の厚みDの方向、またはコア730の厚みDの方向と直交する方向の少なくとも一方向に設けても良い。さらに、凹部と凸部を組み合わせて設けてもよい。
【0037】
  図6(A)、
図6(B)は、コア部材750を示す外観斜視図である。
図6(B)は、
図6(A)に示す外観斜視図より下方から見た外観斜視図である。
 
【0038】
  図6(A)、
図6(B)に示すように、電流検出器700のコア部材750は、環状のコア730と、第1モールド部710と、第2モールド部720とを備える。第1モールド部710は、コア730の一部を封止する。第2モールド部720は、第1モールド部710で封止された3個のコア730を連結して、第1モールド部710を一体的に封止する。
図6(B)に示すように、第1モールド部710の一部は、第2モールド部720によって封止された箇所から露出している。第2モールド部720は、コア730の一部を封止した第1モールド部710を、モールド成形時に位置決めして封止するので、コアの位置精度を高精度で保つことができる。そのうえで、前述のように電流検出器700は、位置決めピン780によって位置決めされた状態で、第2モールド部720の両端にカラー764をねじ止めすることにより、電力変換装置100の筐体に固定されるが、この位置決めピン780も第2モールド部720の成形時に成形されるので、結果として電流検出器700の取り付け位置精度も向上する。なお、第2モールド部720の成形時に同時に位置決めピン780を成形する例で説明したが、第2モールド部720の成形時に同時にビスを成形して、このビスで電流検出器700の取り付け位置を規定してもよく、この場合も同様の効果を奏する。
 
【0039】
  なお、第2モールド部720は、第1モールド部710で封止された3個のコア730を連結して、第1モールド部710を一体的に封止する例で説明したが、第1モールド部710で封止されたコア730の連結個数は限定せず、適宜設定することができる。
【0040】
  図7は、変形例にかかる第1モールド部710’を示す外観斜視図である。
  この変形例では、一対の押さえ面711を、一対のモールド部分においてコア730の厚みDの方向と直交する外表面とし、コア730の外形よりも外側に形成される。さらに、押さえ面711には凸部713を設ける。凸部713は、磁気ギャップMの対面方向と直交する方向である。
 
【0041】
  この変形例で示す一対の押さえ面711は、第2モールド部720のモールド成形時に第1モールド部710を介してコア730の押さえとなることで、磁気ギャップMの寸法変動や第2モールド部720に対する磁気ギャップMの位置決めが精度良く行える。さらに、凸部713における第1モールド部710と第2モールド部720のアンカー効果により、強固に固定されるので、耐久性及び信頼性が求められる車両向けのコア部材として適している。
【0042】
  なお、凸部713は磁気ギャップMの対面方向と直交する方向に設けた例で説明したが、磁気ギャップMの対面方向と同じ方向に設けても良い。また、対面方向と直交する方向および対面方向と同じ方向に、すなわち十字形状に設けてもよい。また、凸部713に限らず、これを凹部にし、磁気ギャップMの対面方向と直交する方向、または磁気ギャップMの対面方向と同じ方向の少なくとも一方向に設けても良い。さらに、凹部と凸部を組み合わせて設けてもよい。
【0043】
  以上説明した実施形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)電流検出器のコア部材750は、磁気ギャップMを有する環状のコア730と、コア730の一部を封止する第1モールド部710と、第1モールド部710を封止する第2モールド部720と、を備え、第1モールド部710は、磁気ギャップMを挟んだ一対の押さえ面711を有し、一対の押さえ面711は、第2モールド部720によって封止される。これにより、コアの実装において高い精度や耐振性を備えた信頼性の高い電流検出器を提供できる。また、コア730、第1モールド部710および第2モールド部720が一体的に封止されることで、電流検出器の小型化を図ることもできる。
【0044】
  本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の特徴を損なわない限り、本発明の技術思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。また、上述の実施形態と変形例を組み合わせた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0045】
  100・・・電力変換装置、200・・・バッテリ、300・・・モータ、400・・・車両制御装置、500・・・コンデンサ、600・・・インバータ、700・・・電流検出器、710・・・第1モールド部、711・・・押さえ面、712・・・凹部、720・・・第2モールド部、722・・・基板搭載面、723・・・押さえ部、724・・・溝部、730・・・コア、740・・・電磁変換素子、750・・・コア部材、760・・・回路基板、800・・・制御部、M・・・磁気ギャップ、N・・・磁束飽和部、Bu、Bv、Bw・・・交流バスバ。