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特許7753618アーク消去シリコーン組成物を有するヒューズ
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  • 特許-アーク消去シリコーン組成物を有するヒューズ 図1A
  • 特許-アーク消去シリコーン組成物を有するヒューズ 図1B
  • 特許-アーク消去シリコーン組成物を有するヒューズ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-10-06
(45)【発行日】2025-10-15
(54)【発明の名称】アーク消去シリコーン組成物を有するヒューズ
(51)【国際特許分類】
   H01H 85/38 20060101AFI20251007BHJP
   H01H 85/18 20060101ALI20251007BHJP
   H01H 85/10 20060101ALI20251007BHJP
【FI】
H01H85/38
H01H85/18
H01H85/10
【請求項の数】 5
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021147816
(22)【出願日】2021-09-10
(65)【公開番号】P2022065619
(43)【公開日】2022-04-27
【審査請求日】2024-05-21
(31)【優先権主張番号】63/092,075
(32)【優先日】2020-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519226506
【氏名又は名称】リテルフューズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チュン-クワン ツァン
(72)【発明者】
【氏名】トッド ディーチュ
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5596306(US,A)
【文献】特開2006-339161(JP,A)
【文献】特表2017-517095(JP,A)
【文献】特開平7-105827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 85/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒューズであって、
電気絶縁性の管状のヒューズ本体と、
前記ヒューズ本体の両端上に配置された導電性の第1のエンドキャップおよび第2のエンドキャップと、
前記ヒューズ本体を通って延在し、前記第1のエンドキャップを前記第2のエンドキャップに接続する可融性要素であって、前記可融性要素は、前記ヒューズ内の過電流状態で溶けて分離するように適合された中央部を有する、可融性要素と、
前記可融性要素上において前記中央部の両側に配置された第1のアークバリアおよび第2のアークバリアであって、前記第1のアークバリアおよび前記第2のアークバリアは、シリコーン樹脂に懸濁されたアーク消去フィラーを含むシリコーン組成物から形成されている、第1のアークバリアおよび第2のアークバリアと
を備え、
前記第1のアークバリアおよび前記第2のアークバリアは、前記可融性要素から前記ヒューズ本体の内面まで半径方向に延在する
るヒューズ。
【請求項2】
前記アーク消去フィラーは、メラミン、グアニジン、グアニン、ヒダントイン、アラントイン、尿素、メラミンホルムアルデヒド、メラミンシアヌレートポリマー、ホウ酸およびそれらの誘導体のうちの1または複数である
請求項1に記載のヒューズ。
【請求項3】
前記アーク消去フィラーは、メラミン粉末であり、前記メラミン粉末の粒子のサイズは、長さまたは直径が5μmから100μmの範囲内である
請求項2に記載のヒューズ。
【請求項4】
前記アーク消去フィラーは、前記シリコーン組成物の全質量の5~70重量%を占める
請求項1から3のいずれか一項に記載のヒューズ。
【請求項5】
前記可融性要素の前記中央部は、前記可融性要素が前記中央部で分離するように、前記可融性要素の他の部分に比べて薄く、狭く、穿孔またはさもなくば脆弱化されている
請求項1から4のいずれか一項に記載のヒューズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[背景]
[関連出願の相互参照]
本願は、2020年10月15日出願の米国仮特許出願番号第63/092,075号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は概して回路保護デバイスの分野に関する。より具体的には、本開示はアーク消去シリコーン組成物から形成されたアークバリアを有するヒューズに関する。
【背景技術】
【0003】
ヒューズは、通常、回路保護デバイスとして使用され、典型的には、電力の供給源と保護されるべき電気回路内の構成要素との間に実装される。通常のヒューズは、中空の電気絶縁性のヒューズ本体内に配置された可融性要素を含む。過電流状態などの障害状態が発生すると、可融性要素は溶けるか、さもなくば分離して、ヒューズを通る電流の流れを遮断する。
【0004】
過電流状態の結果としてヒューズの可融性要素が分離する場合、可融性要素の分離した部分の間を電気アークが(例えば可融性要素の分離した部分の間の残留気化粒子を通じて)伝搬することが場合により可能である。消去されていない場合、電気アークは、電力の供給源から回路内の保護された構成要素に大きな後続電流が流れることを可能にし得、可融性要素が物理的に開いているにもかかわらず、保護された構成要素に損傷を与える結果となる。さらに、電気アークによって生成された熱は、ヒューズのヒューズ本体を燃焼および/または破裂させることができ、場合によっては周囲の構成要素に損傷を引き起こす。したがって、電気アークをできるだけ早く消去して、それから結果として生じる、接続された周囲の構成要素への多くの損傷を防ぐまたは軽減することが望ましい。
【0005】
これらおよび他の考慮事項に関して本改善が有用であり得る。
【発明の概要】
【0006】
この概要は、以下に詳細な説明でさらに説明される概念の選択を簡略化した形式で紹介するために提供される。この概要は、請求される主題の主要な特徴または本質的な特徴を特定することを意図するものでなく、請求される主題の範囲を決定する補助として意図するものでもない。
【0007】
本開示の非限定的な実施形態によるヒューズは、電気絶縁性の管状のヒューズ本体と、ヒューズ本体の両端上に配置された導電性の第1のエンドキャップおよび第2のエンドキャップと、ヒューズ本体を通って延在し、第1のエンドキャップを第2のエンドキャップに接続する可融性要素であって、可融性要素は、ヒューズ内の過電流状態で溶けて分離するように適合された中央部を有する、可融性要素と、可融性要素上において中央部の両側に配置された第1のアークバリアおよび第2のアークバリアであって、第1のアークバリアおよび第2のアークバリアは、シリコーン樹脂に懸濁されたアーク消去フィラーを含むシリコーン組成物から形成されている、第1のアークバリアおよび第2のアークバリアとを含んでよい。
【0008】
本開示によるアーク消去シリコーン組成物を製造および分配する方法は、液体状態のシリコーン樹脂にアーク消去フィラーを加える段階と、アーク消去フィラーとシリコーン樹脂を混合して均質な組成物を形成する段階と、組成物をヒューズの可融性要素に分配する段階と、組成物を硬化させる段階とを含んでよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】通常の動作状態における本開示の例示的な実施形態によるヒューズを示す側断面図である。
【0010】
図1B】過電流状態の発生時の図1Aのヒューズを示す側断面図である。
【0011】
図2】本開示によるアーク消去シリコーン組成物を混合および分配するための例示的な方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以後添付の図面を参照して、本開示によるアーク消去シリコーン組成物から形成されたアークバリアを有するヒューズの例示的な実施形態をこれからより十分に説明する。しかしながら、ヒューズは、多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示がヒューズの特定の例示的な態様を当業者に伝達するように提供される。
【0013】
図1Aを参照し、本開示の例示的な実施形態による、アーク消去シリコーン組成物から形成されたアークバリアを有するヒューズ(以後、「ヒューズ10」)を示す側断面図が示されている。様々な実施形態において、ヒューズ10は管状のヒューズ本体12を持つカートリッジヒューズであってよい。本開示は、この点について限定されない。様々な代替的実施形態において、ヒューズ10は、表面実装ヒューズ、または概ね中空のヒューズ本体を通って延在する可融性要素を有する他のタイプのヒューズであり得る。ヒューズ本体12は、電気絶縁性、かつ好ましくは耐熱性材料から形成され得る。そのような材料の例は、セラミックおよびガラスを含むが、これらに限定されない。
【0014】
一対の導電性エンドキャップ18、20は、ヒューズ本体12の両端に配置されてよく、回路内でヒューズ10の電気的な接続を容易にするように適合されてよい。可融性要素24は、ヒューズ本体12の中空の内部を通って延在してよく、はんだなどによって、エンドキャップ18、20にそれらと電気的に連絡するよう接続されてよい。エンドキャップ18、20は、銅またはその合金の1つを含むがこれらに限定されない導電性材料から形成されてよく、ニッケルまたは他の導電性の耐食性コーティングでめっきされてよい。可融性要素24は、錫または銅を含むがこれらに限定されない導電性材料から形成されてよく、予め定められた最大値を超える電流量が可融性要素24を通って流れる過電流状態などの予め定められた障害状態の発生時に、溶けて分離するように構成されてよい。この最大値は通常、ヒューズ10の「定格」と呼ばれる。
【0015】
可融性要素24は、ワイヤ、波形ストリップ、絶縁性コアの周囲に巻かれたワイヤなどを含むがこれらに限定されない、所望の用途に適した任意のタイプの可融性要素であってよい。可融性要素24の中央部分25は、可融性要素24が中央部分25で分離することを確実にするために、可融性要素24の他の部分に比べて薄く、狭く、穿孔、またはさもなくば脆弱化されてよい。様々な実施形態において、場合により「メトカーフスポット」と呼ばれる、ある量の異種金属26(以後、「金属スポット26」)が、可融性要素24の中央部分25に適用されてよい。金属スポット26は、ニッケル、インジウム、銀、錫、または可融性要素24が形成されるベースメタル(例えば、銅)より低い溶融温度を有する他の金属のうちの1または複数から形成されてよい。したがって、金属スポット26は、過電流状態の発生時に可融性要素24のベースメタルに比べてより容易に溶け得、ベースメタルに拡散し得る。可融性要素24のベースメタルおよび金属スポット26の異種金属は、一方が他方に拡散することがベースメタル単独のものに比べて低い溶融温度および高い抵抗を有する金属間相をもたらし、可融性要素24の中央部分25を可融性要素24の他の部分に比べてより容易に溶かすように選択される。ヒューズ10の様々な実施形態において、金属スポット26は完全に省略されてよい。
【0016】
ヒューズ10は、可融性要素24上に可融性要素24の長さに沿って中央部分25の両側に配置されたアークバリア30a、30bをさらに含んでよい。アークバリア30a、30bのそれぞれは、可融性要素24を半径方向に取り囲んでよく、可融性要素24からヒューズ本体12の内面までまたはその近くまで、延在してよい。アークバリア30a、30bは、シリコーン樹脂34に懸濁されたアーク消去フィラー32から形成されたシリコーン組成物から形成されてよい。様々な実施形態において、アーク消去フィラー32は、メラミン粉末であってよい。この本開示は、この点について限定されない。様々な代替的実施形態において、アーク消去フィラー32は、グアニジン、グアニン、ヒダントイン、アラントイン、尿素、メラミンホルムアルデヒド、メラミンシアヌレートポリマー、ホウ酸およびそれらの誘導体若しくは混合物、または以下に説明するような燃焼時に同様の吸熱、アーク消去特性を示す他のフィラーのうちの1または複数を含んでよい。アーク消去フィラー32は、シリコーン樹脂34全体に実質的に均一に分散されてよく、シリコーン組成物の約5~70重量%を占めてよい。
【0017】
ヒューズ10に過電流状態が発生すると、可融性要素24の中央部25が溶けて分離し得、図1Bに示されるように可融性要素24の分離した端部の間に残されたギャップを横切って電気アーク36が伝搬し得る。電気アークからの熱は、アークバリア30a、30bのシリコーンを燃焼および分解し得、それは電気アーク36およびそれにより生成される熱を含み得る。シリコーンが分解するにつれて、アークバリア30a、30b内のアーク消去フィラー32は露出され得、または電気アーク36からの熱によって燃焼し得る。アーク消去フィラー32が燃焼して分解すると、それは熱を吸収する吸熱化学反応を受ける。それにより電気アーク36は急速に冷却される。さらに、アークバリア30a、30bに組み込まれた特定のアーク消去フィラー32(例えば、メラミン)に応じて、吸熱化学反応の特定の副生成物は、電気アーク36が持続する能力を妨げ得る非導電性ガス(例えば、アンモニア)であってよい。またさらに、吸熱化学反応の他の副生成物は水を生成してよく、それは電気アーク36をさらに冷却し得る。したがって、アーク消去フィラー32は、ヒューズ10に電気的過電流状態が発生すると、熱を吸収し得、電気アークを維持するのに不利なガスを放出し得、電気アークをさらに冷却し得る水を生成し得、それらの全てが急速なアーク消去に寄与し得る。それにより、ヒューズ10に接続されている、および/またはヒューズ10の近くに位置している構成要素は、電気アーク36が持続することが許容された場合にさもなくば結果として生じ得る損傷から保護される。
【0018】
図2を参照すると、本開示のシリコーン組成物を混合および分配するための例示的な方法を示すフロー図が示されている。方法は、ここでは図1Aおよび1Bに示されるヒューズ10の図と併せて説明される。
【0019】
例示的な方法のブロック100において、アーク消去フィラー(例えば、メラミン粉末)を、液体状態のシリコーン樹脂に加えてよい。様々な実施形態において、アーク消去フィラーは、シリコーン組成物の全質量の5~70重量%を占めてよい。本開示は、この点について限定されない。メラミン粉末がアーク消去フィラーとして使用される場合、粉末粒子のサイズは、長さまたは直径が5μmから100μmの範囲内であってよい。本開示は、この点について限定されない。
【0020】
例示的な方法のブロック110において、均質またはほぼ均質なシリコーン組成物を形成するために、シリコーンとアーク消去フィラーとを共に混合してよい。方法のブロック120において、シリコーン組成物は、可融性要素上に分配されてよい。例えば、図1Aを参照して、シリコーン組成物は、可融性要素24上に可融性要素24の長さに沿って中央部分25の両側に分配され得る。
【0021】
例示的な方法のブロック130において、分配されたシリコーン組成物は、アークバリア30a、30bを形成するために硬化またはさもなくば固められてよい。様々な例において、シリコーン組成物には熱硬化、湿度硬化、UV硬化などがされてよい。本開示は、この点について限定されない。
【0022】
本明細書で使用されるように、単数形で記載され、単語「a」または「an」で始まる要素または段階は、そのような除外が明示的に記載されない限り、複数の要素または段階を除外しないものと理解されるべきである。さらに、本開示の「一実施形態」への参照は、記載された特徴をも組み込んだ追加の実施形態の存在を除外するものとして解釈されることを意図するものでない。
【0023】
本開示は特定の実施形態を参照しているが、添付の特許請求の範囲で定められているように、本開示の領域および範囲から逸脱することなく、説明した実施形態に対する多数の改善、改変および変更が可能である。したがって、本開示が説明した実施形態に限定されず、また以下の特許請求の範囲の文言およびそれらの均等物によって定められる全範囲を有することが意図されている。
図1A
図1B
図2