IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

特許7753695画像検査用の学習モデルを更新する装置および方法
<>
  • 特許-画像検査用の学習モデルを更新する装置および方法 図1
  • 特許-画像検査用の学習モデルを更新する装置および方法 図2
  • 特許-画像検査用の学習モデルを更新する装置および方法 図3
  • 特許-画像検査用の学習モデルを更新する装置および方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-10-06
(45)【発行日】2025-10-15
(54)【発明の名称】画像検査用の学習モデルを更新する装置および方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20251007BHJP
【FI】
G01N21/88 J
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021110472
(22)【出願日】2021-07-02
(65)【公開番号】P2023007558
(43)【公開日】2023-01-19
【審査請求日】2024-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 駿
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特許第6607261(JP,B2)
【文献】特開2019-060780(JP,A)
【文献】特表2021-515927(JP,A)
【文献】特開2020-177430(JP,A)
【文献】特開2021-018643(JP,A)
【文献】特開2018-036884(JP,A)
【文献】特開2019-087044(JP,A)
【文献】特開2021-056803(JP,A)
【文献】特開2012-252507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-21/958
G01B 11/00-11/30
G06T 1/00-1/60
G06T 7/00-7/90
G06V 10/00-10/98
G06N 20/00-20/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像検査用の学習モデルを更新する装置であって、
画像検査の被検査体が配置される実空間を撮像して得られた撮像画像を用いて取得される前記実空間における光源の位置と向きとのうちの一方または両方の情報を表す第1光源情報を取得する光源情報取得部と、
前記学習モデルの学習に用いられた第1学習用画像の前記光源の位置と向きとのうちの一方または両方の情報を表す第2光源情報と、前記第1光源情報とが異なるか否かを判定する光源情報比較部と、
前記光源情報比較部によって前記第1光源情報と前記第2光源情報とが異なると判断された場合に、前記被検査体を模擬した三次元モデルと前記第1光源情報に従って前記光源を模擬した仮想光源とを仮想空間に配置し、前記仮想空間における前記三次元モデルの位置と向きとのうちの一方または両方を異ならせながら前記三次元モデルが表された複数の第2学習用画像を生成する学習用画像生成部と、
前記学習用画像生成部によって生成された前記複数の第2学習用画像を用いて前記学習モデルを更新する学習モデル生成部と、
を備える、装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、
前記学習モデル生成部による前記学習モデルの更新後に前記被検査体を撮像して得られた撮像画像と前記学習モデル生成部によって更新された前記学習モデルとを用いて、前記被検査体の画像検査を実行する画像検査部を備える、装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置であって、
前記光源情報比較部は、前記画像検査部による画像検査の誤判定率が予め定められた値を超えた場合に、前記第1光源情報と前記第2光源情報とが異なるか否かを判定する、装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3いずれか一項に記載の装置であって、
前記第1学習用画像を記憶する記憶部を備え、
前記光源情報取得部は、前記記憶部に記憶された前記第1学習用画像を解析することによって前記第2光源情報を取得する、装置。
【請求項5】
画像検査用の学習モデルを更新する方法であって、
画像検査の被検査体が配置される実空間を撮像して得られた撮像画像を用いて取得される前記実空間における光源の位置と向きとのうちの一方または両方の情報を表す第1光源情報を取得する光源情報取得工程と、
前記学習モデルの学習に用いられた第1学習用画像の前記光源の位置と向きとのうちの一方または両方の情報を表す第2光源情報と、前記第1光源情報とが異なるか否かを判定する光源情報比較工程と、
前記光源情報比較工程において前記第1光源情報と前記第2光源情報とが異なると判断された場合に、前記被検査体を模擬した三次元モデルと前記第1光源情報に従って前記光源を模擬した仮想光源とを仮想空間に配置し、前記仮想空間における前記三次元モデルの位置と向きとのうちの一方または両方を異ならせながら前記三次元モデルが表された複数の第2学習用画像を生成する学習用画像生成工程と、
前記学習用画像生成工程において生成された前記複数の第2学習用画像を用いて前記学習モデルを更新する学習モデル生成工程と、
を有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像検査用の学習モデルを更新する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、カメラ等によって物体を撮像して得られた画像内の光源の位置を変更する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-235537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
機械学習によって生成された学習モデルが画像検査に用いられることがある。しかしながら、例えば、工場のレイアウト変更などによって被検査体を照らす光源の位置や向きが変更された場合に、画像検査の判定精度が低下することがある。そこで、上記文献のようにカメラによって被検査体を撮像して得られた画像内の光源の位置を変更することが考えられるが、それだけでは、画像検査の判定精度を確保することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の第1の形態によれば、画像検査用の学習モデルを更新する装置が提供される。この装置は、画像検査の被検査体が配置される実空間を撮像して得られた撮像画像を用いて取得される前記実空間における光源の位置と向きとのうちの一方または両方の情報を表す第1光源情報を取得する光源情報取得部と、前記学習モデルの学習に用いられた第1学習用画像の前記光源の位置と向きとのうちの一方または両方であって前記第1光源情報が表す一方または両方の情報を表す第2光源情報と、前記第1光源情報とが異なるか否かを判定する光源情報比較部と、前記光源情報比較部によって前記第1光源情報と前記第2光源情報とが異なると判断された場合に、前記被検査体を模擬した三次元モデルと前記第1光源情報に従って前記光源を模擬した仮想光源とを仮想空間に配置し、前記仮想空間における前記三次元モデルの位置と向きとのうちの一方または両方を異ならせながら前記三次元モデルが表された複数の第2学習用画像を生成する学習用画像生成部と、前記学習用画像生成部によって生成された前記複数の第2学習用画像を用いて前記学習モデルを更新する学習モデル生成部と、を備える。
この形態の装置によれば、実空間の光源の位置と向きとのうちの一方または両方が変更された場合に、実空間の光源の位置および向きに応じた位置および向きに配置された仮想光源に照らされた三次元モデルを用いて、三次元モデルの位置と向きとのうちの一方または両方の互いに異なる複数の第2学習用画像を生成し、複数の第2学習用画像を用いて学習モデルを更新することができる。そのため、被検査体に対する画像検査の判定精度を確保することができる。
(2)上記形態の装置は、前記学習モデル生成部による前記学習モデルの更新後に前記被検査体を撮像して得られた撮像画像と前記学習モデル生成部によって更新された前記学習モデルとを用いて、前記被検査体の画像検査を実行する画像検査部を備えてもよい。
この形態の装置によれば、更新した学習モデルを用いて被検査体に対する画像検査を実行することができる。
(3)上記形態の装置において、前記光源情報比較部は、前記画像検査部による画像検査の誤判定率が予め定められた値を超えた場合に、前記第1光源情報と前記第2光源情報とが異なるか否かを判定してもよい。
この形態の装置によれば、光源の位置や向きが変更されたことよって画像検査の誤判定率が増加した場合に、自動的に学習モデルを更新して画像検査の誤判定率を低減することができる。
(4)上記形態の装置は、前記第1学習用画像を記憶する記憶部を備え、前記光源情報取得部は、前記記憶部に記憶された前記第1学習用画像を解析することによって前記第2光源情報を取得してもよい。
この形態の装置によれば、記憶部に記憶された第1学習用画像を用いて第2光源情報を取得することができる。
(5)本開示の第2の形態によれば、画像検査用の学習モデルを更新する方法が提供される。この方法は、画像検査の被検査体が配置される実空間を撮像して得られた撮像画像を用いて取得される前記実空間における光源の位置と向きとのうちの一方または両方の情報を表す第1光源情報を取得する光源情報取得工程と、前記学習モデルの学習に用いられた第1学習用画像の前記光源の位置と向きとのうちの一方または両方であって前記第1光源情報が表す一方または両方の情報を表す第2光源情報と、前記第1光源情報とが異なるか否かを判定する光源情報比較工程と、前記光源情報比較工程において前記第1光源情報と前記第2光源情報とが異なると判断された場合に、前記被検査体を模擬した三次元モデルと前記第1光源情報に従って前記光源を模擬した仮想光源とを仮想空間に配置し、前記仮想空間における前記三次元モデルの位置と向きとのうちの一方または両方を異ならせながら前記三次元モデルが表された複数の第2学習用画像を生成する学習用画像生成工程と、前記学習用画像生成工程において生成された前記複数の第2学習用画像を用いて前記学習モデルを更新する学習モデル生成工程と、を有する。
この形態の方法によれば、実空間の光源の位置と向きとのうちの一方または両方が変更された場合に、実空間の光源の位置および向きに応じた位置および向きに配置された仮想光源に照らされた三次元モデルを用いて、三次元モデルの位置と向きとのうちの一方または両方の互いに異なる複数の第2学習用画像を生成し、複数の第2学習用画像を用いて学習モデルを更新することができる。そのため、被検査体に対する画像検査の判定精度を確保することができる。
本開示は、画像検査用の学習モデルを更新する装置や画像検査用の学習モデルを更新する装置以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、画像検査システムや画像検査装置や画像検査方法などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】画像検査システムの概略構成を模式的に示す説明図。
図2】学習モデル更新処理の内容を示すフローチャート。
図3】学習用画像生成処理の内容を示すフローチャート。
図4】仮想空間に配置された三次元モデルを示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における画像検査システム10の概略構成を模式的に示す説明図である。本実施形態では、画像検査システム10は、ステージ20と、光源30と、カメラ40と、カメラコントローラ45と、情報処理装置50と、表示装置60とを備えている。なお、情報処理装置50のことを画像検査用の学習モデルGMを更新する装置、あるいは、画像検査装置と呼ぶことがある。
【0009】
ステージ20は、例えば、工場などの屋内に配置されている。ステージ20には、画像検査の検査対象である被検査体RMが載置される。本実施形態では、被検査体RMは、自動車のバンパーである。自動車のバンパーでは、同じ車種用のバンパーであっても、バンパーに装着されるエンブレムやグリルなどの各種部品がグレードや販売地域などによって異なることがある。被検査体RMとしてのバンパーは、グレードや販売地域に応じて各種部品が適切に装着されていることを画像検査システム10によって検査される。被検査体RMは、例えば、図示されていないロボットアームによって搬送されて、ステージ20に載置される。
【0010】
光源30は、ステージ20に載置されている被検査体RMに光を照射する。光源30には、例えば、LED(Light Emitting Diode)照明を用いることができる。光源30は、図示されていない光源固定用治具によって固定されている。
【0011】
カメラ40は、ステージ20に載置されている被検査体RMを撮像する。カメラ40は、光源30から光を照射されている被検査体RMを撮像する。カメラ40には、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサを有するカメラ、あるいは、COMS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサを有するカメラを用いることができる。カメラ40は、図示されていないカメラ固定用治具によって固定されている。カメラ40は、有線通信あるいは無線通信によってカメラコントローラ45に接続されており、カメラ40からの出力信号は、カメラコントローラ45に送信される。
【0012】
カメラコントローラ45は、カメラ40からの出力信号を処理することによって撮像画像RGを生成する。さらに、本実施形態では、カメラコントローラ45は、撮像画像RGを解析することによって、光源30の位置および向きを推定し、推定した光源30の位置および向きの情報を表す光源情報LDを生成する。カメラコントローラ45は、例えば、撮像画像RGに表された反射光の拡散反射成分がLambertianモデルに従い、撮像画像RGに表された反射光の鏡面反射成分がTorrance-Sparrow反射モデルに従うという条件を同時に満足するような反射パラメータ、光源30の位置、および、光源30の向きを探索する逐次的緩和法によって、光源30の位置および向きを推定する。カメラコントローラ45は、上述した方法によって1枚の撮像画像RGから光源30の位置および向きを推定することができる。カメラコントローラ45は、有線通信あるいは無線通信によって情報処理装置50に接続されており、カメラコントローラ45によって生成された撮像画像RGおよび光源情報LDは、情報処理装置50に送信される。
【0013】
情報処理装置50は、CPU101と、メモリ102と、入出力インタフェース103とを備えている。本実施形態では、情報処理装置50は、撮像画像取得部110と、光源情報取得部120と、光源情報比較部130と、学習用画像生成部140と、学習モデル生成部150と、画像検査部160とを有している。撮像画像取得部110、光源情報取得部120、光源情報比較部130、学習用画像生成部140、学習モデル生成部150、および、画像検査部160は、メモリ102に格納されたコンピュータプログラムをCPU101が実行することによってソフトウェア的に実現される。なお、撮像画像取得部110、光源情報取得部120、光源情報比較部130、学習用画像生成部140、学習モデル生成部150、および、画像検査部160のうちの少なくとも1つは、ハードウェア回路によって実現されてもよい。メモリ102のことを記憶部と呼ぶことがある。
【0014】
撮像画像取得部110は、撮像画像RGを取得する。本実施形態では、撮像画像取得部110は、カメラコントローラ45から送信された撮像画像RGを取得する。撮像画像取得部110によって取得された撮像画像RGは、メモリ102に記憶される。
【0015】
光源情報取得部120は、光源30の位置および向きの情報を表す光源情報LDを取得する。本実施形態では、光源情報取得部120は、カメラコントローラ45から送信された光源情報LDを取得する。光源情報取得部120によって取得された光源情報LDは、メモリ102に記憶される。
【0016】
光源情報比較部130は、2つの光源情報LDを比較することによって、2つの光源情報LDに表された光源30の位置と向きとのうちの少なくとも一方が異なるか否かを判定する。
【0017】
学習用画像生成部140は、学習モデル生成部150による機械学習に用いられる学習用画像VGを生成する。本実施形態では、学習用画像生成部140は、3Dシミュレータによって構成されている。学習用画像生成部140によって生成された学習用画像VGは、メモリ102に記憶される。
【0018】
学習モデル生成部150は、学習用画像VGを用いた機械学習を実行することによって学習モデルGMを生成する。学習モデル生成部150によって生成された学習モデルGMは、メモリ102に記憶される。
【0019】
画像検査部160は、カメラ40によって被検査体RMを撮像して得られた撮像画像RGと学習モデル生成部150によって生成された学習モデルGMとを用いて、被検査体RMの画像検査を実行する。画像検査部160による画像検査の検査結果RDは、メモリ102に記憶される。
【0020】
表示装置60は、例えば、液晶ディスプレイや、有機ELディスプレイで構成されている。表示装置60には、画像検査部160による画像検査の検査結果RDが表示される。例えば、被検査体RMであるバンパーに、グレードや販売地域に応じた各種部品が適切に装着されていると画像検査部160によって判定された場合には、「OK」の文字が表示装置60に表示され、グレードや販売地域に応じた各種部品が適切に装着されていない場合には、「NG」の文字が表示装置60に表示される。表示装置60は、例えば、工場内のステージ20の近傍に配置されており、検査員は、表示装置60に表示された検査結果RDを確認することによって、グレードや販売地域に応じた各種部品がバンパーに適切に装着されているか否かを把握することができる。「NG」の文字が表示装置60に表示された場合には、検査員による目視検査が実行される。目視検査の結果、グレードや販売地域に応じた各種部品がバンパーに適切に装着されていた場合には、画像検査部160の誤判定であることが検査員によって情報処理装置50に入力される。検査結果RDには、誤判定率の情報が含まれる。
【0021】
本実施形態の画像検査システム10では、画像検査部160が学習モデルGMを用いた画像検査を実行するので、検査員が被検査体RMを目視検査する形態に比べて、検査員の負担を軽減することができる。さらに、本実施形態のように学習モデルGMを用いた画像検査では、一般に、検査員による目視検査に比べて短時間で検査することができる。しかしながら、例えば、工場内のレイアウト変更などによって光源30の位置や向きが変更された場合に、画像検査部160による画像検査の判定精度が低下することがある。判定精度が低下するとは、誤判定率が増加することを意味する。判定精度の低下は、例えば、光源30の位置や向きの変更前後で撮像画像RGに表される被検査体RMの色味が変化することによって生じる。本実施形態では、光源30の位置や向きが変更されたとしても、情報処理装置50が学習モデル更新処理を実行することにより画像検査に用いられる学習モデルGMを更新することで、画像検査における誤判定率を低減することができる。
【0022】
図2は、学習モデル更新処理の内容を示すフローチャートである。図3は、学習モデル更新処理において実行される学習用画像生成処理の内容を示すフローチャートである。図4は、学習用画像生成処理において用いられる仮想空間VSに配置された三次元モデルVMを示す説明図である。
【0023】
図2に示すように、本実施形態では、学習モデル更新処理は、メモリ102に記憶された検査結果RDに表された画像検査の誤判定率が所定の値を超えた場合に、情報処理装置50のCPU101によって開始される。学習モデル更新処理が開始されると、まず、ステップS110にて、撮像画像取得部110は、カメラコントローラ45を介してカメラ40を制御することによって、カメラ40を用いて被検査体RMを撮像し、カメラコントローラ45から被検査体RMの撮像画像RGを取得する。
【0024】
次に、ステップS120にて、光源情報取得部120は、光源30の位置および向きの情報を表す光源情報LDを取得する。本実施形態では、カメラコントローラ45が撮像画像RGを解析することによって光源30の位置および向きを推定することで光源情報LDを生成し、光源情報取得部120は、カメラコントローラ45によって生成された光源情報LDを取得する。光源情報取得部120によって取得された光源情報LDは、メモリ102に記憶される。なお、ステップS120のことを画像検査用の学習モデルGMを更新する方法の光源情報取得工程、あるいは、画像検査方法の光源情報取得工程と呼ぶことがある。
【0025】
ステップS130にて、光源情報比較部130は、ステップS120にて取得された現在の光源30の位置および向きを表す光源情報LDである第1光源情報LD1と、メモリ102に記憶された過去の光源30の位置および向きを表す光源情報LDである第2光源情報LD2とを比較することによって、光源30の位置と向きとのうちの少なくとも一方が変更されたか否かを判定する。本実施形態では、光源情報比較部130は、第1光源情報LD1に表された光源30の位置と向きとのうちの少なくとも一方と第2光源情報LD2に表された光源30の位置と向きとのうちの少なくとも一方とが互いに乖離している場合に、光源30の位置と向きとのうちの少なくとも一方が変更されたと判断する。第1光源情報LD1に表された光源30の位置と向きとのうちの少なくとも一方と第2光源情報LD2に表された光源30の位置と向きとのうちの少なくとも一方とが互いに乖離しているとは、第1光源情報LD1に表された光源30の位置と第2光源情報LD2に表された光源30の位置とが所定距離以上離れている状態と、第1光源情報LD1に表された光源30の向きと第2光源情報LD2に表された光源30の向きとが所定角度以上離れている状態とのうちの少なくとも一方の状態であることを意味する。なお、ステップS130のことを画像検査用の学習モデルGMを更新する方法の光源情報比較工程、あるいは、画像検査方法の光源情報比較工程と呼ぶことがある。光源情報比較部130は、学習モデル更新処理の開始前に画像検査に用いていた学習モデルGMの学習に用いられた学習用画像VGにおける光源30の位置および向きを表す光源情報LDを第2光源情報LD2として用いる。学習モデル更新処理の開始前に画像検査に用いていた学習モデルGMの学習に用いられた学習用画像VGのことを第1学習用画像VG1と呼ぶことがある。
【0026】
ステップS130にて光源30の位置と向きとのうちの少なくとも一方が変更されたと判断されなかった場合、情報処理装置50は、この処理を終了する。ステップS130にて光源30の位置と向きとのうちの少なくとも一方が変更されたと判断された場合、ステップS140にて、学習用画像生成部140は、学習用画像生成処理を開始する。
【0027】
図3に示すように、学習用画像生成処理が開始されると、まず、ステップS141にて、学習用画像生成部140は、図4に示す仮想空間VSに、被検査体RMを模擬した三次元モデルVMを配置する。本実施形態では、学習用画像生成部140は、メモリ102に予め記憶された三次元モデルVMを読み込んで、仮想空間VSに三次元モデルVMを配置する。三次元モデルVMは、被検査体RMの三次元形状だけではなく、被検査体RMの材質をも模擬している。なお、被検査体RMが配置された現実の空間のことを実空間と呼ぶことがある。
【0028】
次に、ステップS142にて、学習用画像生成部140は、学習モデル更新処理のステップS120にて取得された第1光源情報LD1に表された光源30の位置および向きに従って、仮想空間VSに配置された仮想光源VLの位置および向きを変更する。なお、ステップS141とステップS142との順序は逆でもよい。
【0029】
ステップS143にて、学習用画像生成部140は、カメラ40の視点を模擬した仮想カメラVCによって仮想空間VSに配置された三次元モデルVMをキャプチャすることにより、仮想光源VLに照らされた三次元モデルVMが表された学習用画像VGを生成する。学習用画像VGには、カメラ40が被検査体RMを撮像する視点と同じ視点で三次元モデルVMが表される。学習用画像生成部140によって生成された学習用画像VGは、メモリ102に記憶される。
【0030】
ステップS144にて、学習用画像生成部140は、所定枚数の学習用画像VGを生成したか否かを判定する。学習用画像生成部140は、例えば、1000枚の学習用画像VGを生成したか否かを判定する。
【0031】
ステップS144にて所定枚数の学習用画像VGを生成したと判断されなかった場合、学習用画像生成部140は、ステップS145にて、仮想光源VLの位置および向きを変更せずに仮想空間VSにおける三次元モデルVMの位置と向きとのうちの少なくとも一方を変更した後、ステップS143に処理を戻して学習用画像VGを生成する。学習用画像生成部140は、ステップS144にて所定枚数の学習用画像VGを取得したと判断されるまでステップS143からステップS145までの処理を繰り返すことによって、三次元モデルVMの位置と向きとのうちの少なくとも一方が互いに異なる所定枚数の学習用画像VGを生成する。
【0032】
ステップS144にて所定枚数の学習用画像VGを取得したと判断された場合、学習用画像生成部140は、ステップS146にて、全ての三次元モデルVMについて学習用画像VGを生成したか否かを判定する。ステップS146にて全ての三次元モデルVMについて学習用画像VGを生成したと判断されなかった場合、学習用画像生成部140は、ステップS147にて、仮想空間VSに配置される三次元モデルVMを切り替える。本実施形態では、複数種類の三次元モデルVMがメモリ102に予め記憶されている。各三次元モデルVMは、複数種類の被検査体RM、つまり、グレードや販売地域の異なる複数種類のバンパーを模擬している。学習用画像生成部140は、所定枚数の学習用画像VGの生成が終了した三次元モデルVMとは異なる種類の三次元モデルVMを読み込むことによって、仮想空間VSに配置されている三次元モデルVMを切り替えた後、ステップS143に処理を戻して学習用画像VGを生成する。
【0033】
学習用画像生成部140は、ステップS146にて全ての三次元モデルVMについて学習用画像VGを生成したと判断されるまでステップS143からステップS146までの処理を繰り返すことによって、各三次元モデルVMの学習用画像VGを所定枚数生成する。ステップS146にて全ての三次元モデルVMについて学習用画像VGを生成したと判断された場合、学習用画像生成部140は、学習用画像生成処理を終了する。なお、学習用画像生成処理のことを画像検査用の学習モデルGMを更新する方法の学習用画像生成工程、あるいは、画像検査方法の学習用画像生成工程と呼ぶことがある。学習用画像生成処理によって生成された学習用画像VGのことを第2学習用画像VG2と呼ぶことがある。
【0034】
図3に示すように、学習用画像生成処理が終了した後、学習モデル更新処理のステップS150にて、学習モデル生成部150は、学習用画像VGにグレードや販売地域を表すラベルを付与して、学習用データセットを生成する。ステップS160にて、学習モデル生成部150は、学習用データセットを読み込んで機械学習を実行することによって学習モデルGMを生成して、メモリ102に記憶された学習モデルGMを更新する。本実施形態では、学習モデル生成部150は、畳み込みニューラルネットワークの機械学習を実行することによって学習モデルGMを生成する。その後、情報処理装置50は、学習モデル更新処理を終了する。なお、ステップS160のことを画像検査用の学習モデルGMを更新する方法の学習モデル生成工程、あるいは、画像検査方法の学習モデル生成工程と呼ぶことがある。
【0035】
以上で説明した本実施形態における画像検査システム10によれば、実空間の光源30の位置と向きとのうちの少なくとも一方が変更された場合に、情報処理装置50は、実空間の光源30の位置および向きに応じた位置および向きに配置された仮想光源VLに照らされた三次元モデルVMを用いて、三次元モデルVMの位置と向きとのうちの少なくとも一方の互いに異なる複数の学習用画像VGを生成し、複数の学習用画像VGを用いて学習モデルGMを更新する。そのため、実空間の光源30の位置と向きとのうちの少なくとも一方が変更された場合であっても、被検査体RMに対する画像検査の判定精度を確保することができる。特に、本実施形態では、三次元モデルVMの位置と向きとのうちの少なくとも一方の互いに異なる複数の学習用画像VGを用いて学習モデルGMを更新するので、ステージ20に載置された被検査体RMの位置や向きが基準の位置や向きに対してずれた場合であっても、画像検査の判定精度を確保することができる。さらに、本実施形態では、三次元モデルVMを用いて生成された画像が学習用画像VGとして用いられるので、カメラ40によって被検査体RMを撮像して得られた撮像画像RGが学習用画像VGとして用いられる形態に比べて短時間で学習用画像VGを収集することができる。
【0036】
また、本実施形態では、情報処理装置50は、学習モデル生成部150による学習モデルGMの更新後に被検査体RMを撮像して得られた撮像画像RGと学習モデル生成部150によって更新された学習モデルGMとを用いて、被検査体RMの画像検査を実行する画像検査部160を備えている。そのため、情報処理装置50によって、更新した学習モデルGMを用いた被検査体RMに対する画像検査を実行することができる。
【0037】
また、本実施形態では、情報処理装置50は、画像検査部160による画像検査の誤判定率が予め定められた値を超えた場合に、学習モデル更新処理を開始する。そのため、画像検査の誤判定率が増加した場合に、自動的に学習モデルGMを更新して画像検査の誤判定率を低減することができる。特に、本実施形態では、光源30の位置や向きが変更されたことや、画像検査の誤判定率が増加したことを検査員が認識していない場合であっても、自動的に学習モデルGMを更新して画像検査の誤判定率を低減することができる。
【0038】
B.他の実施形態:
(B1)上述した実施形態の画像検査システム10では、カメラコントローラ45は、カメラ40からの出力信号を受信して撮像画像RGを生成する機能と、撮像画像RGを解析することによって光源30の位置および向きを推定して、光源情報LDを生成する機能とを有している。これに対して、情報処理装置50は、上述したカメラコントローラ45の機能の少なくとも一部を有してもよい。例えば、画像検査システム10に、カメラコントローラ45が設けられずに、カメラコントローラ45の上述した機能の全てを情報処理装置50が有してもよい。あるいは、画像検査システム10において、カメラコントローラ45がカメラ40からの出力信号を受信して撮像画像RGを生成し、情報処理装置50の光源情報取得部120がカメラコントローラ45から送信された撮像画像RGを解析することによって光源30の位置および向きを推定して、光源情報LDを生成してもよい。
【0039】
(B2)上述した実施形態の画像検査システム10では、第2光源情報LD2が情報処理装置50のメモリ102に記憶されている。これに対して、第2光源情報LD2が情報処理装置50のメモリ102に記憶されていなくてもよい。この場合、例えば、撮像画像RGを解析することによって光源30の位置および向きを推定して、光源情報LDを生成する機能を有するように光源情報取得部120が構成され、光源情報取得部120は、光源30の位置や向きが変更される前に撮像された撮像画像RGをメモリ102から読み込んで解析することによって、第2光源情報LD2を生成してもよい。
【0040】
(B3)上述した各実施形態の画像検査システム10では、情報処理装置50には、画像検査部160が設けられている。これに対して、情報処理装置50に画像検査部160が設けられずに、例えば、カメラコントローラ45に画像検査部160が設けられてもよい。この場合、カメラ40を用いて撮像して得られた撮像画像RGと、情報処理装置50から取得した学習モデルGMとを用いて被検査体RMの画像検査を実行してもよい。
【0041】
(B4)上述した各実施形態の画像検査システム10では、情報処理装置50のメモリ102に記憶された画像検査の検査結果RDに表された誤判定率が所定の値を超えた場合に、情報処理装置50によって学習モデル更新処理が自動的に開始される。これに対して、情報処理装置50は、自動的に学習モデル更新処理を開始しなくてもよい。例えば、画像検査システム10の定期点検時に、定期点検の作業者によって情報処理装置50に所定の開始操作が行われた場合に、情報処理装置50は、学習モデル更新処理を開始してもよい。
【0042】
(B5)上述した各実施形態の画像検査システム10では、学習用画像生成部140は、学習用画像生成処理において、複数種類の三次元モデルVMを用いて学習用画像VGを生成する。これに対して、学習用画像生成部140は、学習用画像生成処理において、1種類のみの三次元モデルVMを用いて学習用画像VGを生成してもよい。
【0043】
(B6)上述した各実施形態の画像検査システム10では、第1光源情報LD1および第2光源情報LD2には、光源30の位置および向きの情報が表されている。これに対して、第1光源情報LD1および第2光源情報LD2には、光源30の向きの情報が表されていなくてもよい。この場合、第1光源情報LD1に表された光源30の位置と第2光源情報LD2に表された光源30の位置とが乖離している場合に、学習用画像生成部140は、第1光源情報LD1に従って仮想光源VLの位置を変更し、位置を変更された仮想光源VLに照らされた三次元モデルVMが表された学習用画像VGを生成してもよい。また、第1光源情報LD1および第2光源情報LD2には、光源30の位置の情報が表されていなくてもよい。この場合、第1光源情報LD1に表された光源30の向きと第2光源情報LD2に表された光源30の向きとが乖離している場合に、学習用画像生成部140は、第1光源情報LD1に従って仮想光源VLの向きを変更し、向きを変更された仮想光源VLに照らされた三次元モデルVMが表された学習用画像VGを生成してもよい。
【0044】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0045】
10…画像検査システム、20…ステージ、30…光源、40…カメラ、45…カメラコントローラ、50…情報処理装置、60…表示装置、101…CPU、102…メモリ、103…入出力インタフェース、110…撮像画像取得部、120…光源情報取得部、130…光源情報比較部、140…学習用画像生成部、150…学習モデル生成部、160…画像検査部
図1
図2
図3
図4