(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-10-07
(45)【発行日】2025-10-16
(54)【発明の名称】還元鉄ブリケットの製造方法
(51)【国際特許分類】
C22B 1/16 20060101AFI20251008BHJP
C21B 13/00 20060101ALI20251008BHJP
【FI】
C22B1/16 101
C21B13/00
(21)【出願番号】P 2025530676
(86)(22)【出願日】2025-01-14
(86)【国際出願番号】 JP2025000783
【審査請求日】2025-05-27
(31)【優先権主張番号】P 2024059687
(32)【優先日】2024-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2021年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「グリーンイノベーション基金事業/製鉄プロセスにおける水素活用プロジェクト」/「水素だけで低品位の鉄鉱石を還元する直接水素還元技術の開発/直接水素還元技術の開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】飯田 洋行
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2024/054653(WO,A2)
【文献】特表2024-505404(JP,A)
【文献】特表2021-533552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00 - 1/26
C21B 11/00-13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体状の還元鉄を製造する還元鉄製造工程と、
成型機が内部に設けられた成型機ケーシング内に非酸化性かつ非窒素性のシールガスを供給し、前記成型機ケーシング内を非酸化性かつ非窒素性のシールガス雰囲気下とする工程と、
前記成型機が非酸化性かつ非窒素性のシールガス雰囲気下で前記還元鉄をブリケット化するブリケット工程と、を含むことを特徴とする、還元鉄ブリケットの製造方法。
【請求項2】
前記シールガスはCO
2ガス及び水素ガスからなる群から選択されるいずれか1種以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載の還元鉄ブリケットの製造方法。
【請求項3】
還元鉄を貯蔵する貯蔵ホッパ、または、前記貯蔵ホッパと
前記成型機ケーシングとを連結する連結部分に非酸化性かつ非窒素性のシールガスを供給する、請求項1または2に記載の還元鉄ブリケットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、還元鉄ブリケットの製造方法に関する。本願は、2024年04月02日に、日本に出願された特願2024-059687号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
例えばシャフト炉を用いた還元鉄の製造方法のように、固体状の還元鉄を製造する技術が知られている(特許文献1、2)。当該技術においては、製造された還元鉄の少なくとも一部を熱間でブリケット化(塊成化)して還元鉄ブリケット(ホットブリケットアイアン(HBI))とされる。還元鉄のブリケット化は、還元鉄が輸送中に再酸化されることを防止するために行われる。還元鉄のブリケット化は、還元鉄の再酸化を防止するために、非酸化性ガスの雰囲気下で行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国実開昭63-167162号公報
【文献】日本国特開2000-204419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には非酸化性ガスとして窒素ガスが開示され、特許文献2には非酸化性ガスとして還元炉排ガスが開示されている。これらのうち、主にコスト面の観点から窒素ガスが汎用されている。しかしながら、非酸化性ガスとして窒素ガスを用いた場合、還元鉄が窒化されるという問題があった。還元鉄に含まれる窒素は、例えば高級鋼の溶製において問題となる。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、還元鉄の窒化を防止しつつ還元鉄をブリケット化することが可能な、新規かつ改良された還元鉄ブリケットの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨は以下である。
(1)本発明の一態様に係る還元鉄ブリケットの製造方法は、固体状の還元鉄を製造する還元鉄製造工程と、成型機が内部に設けられた成型機ケーシング内に非酸化性かつ非窒素性のシールガスを供給し、前記成型機ケーシング内を非酸化性かつ非窒素性のシールガス雰囲気下とする工程と、前記成型機が非酸化性かつ非窒素性のシールガス雰囲気下で前記還元鉄をブリケット化するブリケット工程と、を含むことを特徴とする。
(2)上記(1)に記載の還元鉄ブリケットの製造方法において、前記シールガスはCO2ガス及び水素ガスからなる群から選択されるいずれか1種以上を含んでもよい。
(3)上記(1)または(2)に記載の還元鉄ブリケットの製造方法において、還元鉄を貯蔵する貯蔵ホッパ、または、前記貯蔵ホッパと前記成型機ケーシングとを連結する連結部分に非酸化性かつ非窒素性のシールガスを供給してもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、還元鉄の窒化を防止しつつ還元鉄をブリケット化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】還元鉄ブリケットの製造装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0010】
<1.還元鉄ブリケットの製造装置>
図1は還元鉄ブリケットの製造装置を示す模式図である。本実施形態に係る還元鉄ブリケットの製造装置は、還元炉1と、シールガス供給装置2と、貯蔵ホッパ3と、連結部分4Aと、フィーダ4と、成型機ケーシング5Aと、成型機5と、分離機6と、篩7と、篩下循環装置8と、輸送コンベア9と、温度計10とを備える。
【0011】
還元炉1は、酸化鉄原料を還元して固体状の還元鉄を製造する装置である。還元炉1は例えばシャフト炉、回転炉床炉である。シャフト炉では例えば以下の操業が行われる。まず、シャフト炉の上方から酸化鉄原料(例えば酸化鉄ペレット)を装入し、シャフト炉の下方から還元ガスを吹き込む。ここで、還元ガスは所定温度(例えば900~950℃程度)まで加熱された後、シャフト炉に吹き込まれる。そして、シャフト炉に吹き込まれた還元ガスがシャフト炉内の酸化鉄原料を還元する。このような直接還元プロセスにより、固体状の還元鉄が製造される。還元鉄はシャフト炉の下方から排出され、冷却される。シャフト炉の炉頂からは、水素ガス、COガス、水蒸気、及びCO2ガスを含む炉頂ガス(排ガス)が排出される。炉頂ガスから水蒸気が除去された後に、炉頂ガス中の水素ガスやCOガスが原料ガスの一部として再利用される。また、炉頂ガスから水蒸気が除去された後に、CO2ガスを除去する場合もある。
【0012】
シャフト炉で使用する還元ガスは、炭素分を含む原料ガス(例えば天然ガス、コークス炉ガス等)を水蒸気やCO2ガス、酸素ガスなどを用いて改質することで得られる。または原料ガスを改質せずにそのまま還元ガスとしてシャフト炉に使用される。還元ガスの主成分は水素ガス(H2)、COガス(CO)、CH4ガスである。
【0013】
貯蔵ホッパ3は、還元炉1から排出された還元鉄をいったん貯蔵する。貯蔵ホッパ3内の還元鉄の温度は温度計10により測定される。温度計10は例えば熱電対または放射熱温度計等である。貯蔵ホッパ3の下端部は、連結部分4Aを介して成型機ケーシング5Aに連結されている。したがって、貯蔵ホッパ3、連結部分4A、及び成型機ケーシング5Aの内部空間は連通している。連結部分4A内にはフィーダ4が設けられている。フィーダ4は、貯蔵ホッパ3に蓄えられた還元鉄を一定の速度で成型機ケーシング5A内に供給する。
【0014】
成型機ケーシング5A内には成型機5及び分離機6が設けられている。成型機5は、例えば1対のロールで構成され、フィーダ4から一定の速度で供給された還元鉄をブリケット化する。ここで、製造された還元鉄ブリケット同士はリブで連結されている。分離機6は、リブで連結された還元鉄ブリケットを単体に分離する。分離された還元鉄ブリケットは篩7に供給される。
【0015】
篩7は還元鉄ブリケット間に混入した微粉を篩下に除去する。その後、還元鉄ブリケットは散水やガスにより冷却された後、輸送コンベア9により次工程に輸送される。篩下の微粉は篩下循環装置8により貯蔵ホッパ3に戻される。
【0016】
シールガス供給装置2は、連結管aにより成型機ケーシング5Aに連結され、連結管bにより貯蔵ホッパ3に連結されている。シールガス供給装置2は、連結管bを介して貯蔵ホッパ3にシールガスを供給する。これにより、貯蔵ホッパ3、及び連結部分4Aの内部空間をシールガスでシールする。熱間成型でブリケットを製造するため、貯蔵ホッパ3、及び連結部分4A内の還元鉄は高温であるため窒化しやすい。そのため、貯蔵ホッパ3及び連結部分4A内を非酸化性かつ非窒素性のシールガス雰囲気とする。シールガス供給装置2は、連結管aを介して成型機ケーシング5A内にシールガスを供給し、成型機ケーシング5Aの内部空間をシールガスでシールすることが好ましい。成型機ケーシング5Aの内部空間では還元鉄の滞留時間が短いため、還元鉄の窒化は生じにくいが、成型機ケーシング5Aの内部空間をシールガスでシールすることで、より一層窒化を抑制することができる。したがって、本実施形態では、還元鉄製造工程で製造された固体状の還元鉄をシールガス雰囲気下に保持し、還元鉄をブリケット化する成型機5を備える成型機ケーシング5Aに上記還元鉄を供給することが好ましい。シールガスは、貯蔵ホッパ3の上端に設けられた排管cから外部に排出される。
【0017】
シールガスは、非酸化性かつ非窒素性である。つまり、シールガスは、実質的に酸素ガス及び窒素ガスを含まない。これにより、還元鉄の酸化のみならず窒化を防止することができる。なお、シールガスには、本実施形態の効果を損なわない限りでこれらのガスが含まれていてもよい。例えば、シールガスには、シールガスの製造上不可避的にこれらのガスが含まれていてもよい。
【0018】
シールガスは、例えば、CO2ガス及び水素ガスからなる群から選択されるいずれか1種以上を含むガスで構成される。より具体的には、シールガスは、CO2ガスまたは水素ガスで構成されるか、あるいはこれらのガスの混合ガスで構成される。シールガスは、本実施形態の効果を損なわない限りで、さらに他の種のガスを含んでいてもよい。
【0019】
シールガスに水素ガスが含まれる場合、当該水素ガスと還元鉄に含まれる窒素が反応してアンモニアが生成し、水素ガスによって還元鉄に含まれる窒素が除去されるという効果が期待できる。この結果、高級鋼の製造がより容易になる。なお、水素ガスによる脱窒を行う場合、貯蔵ホッパ3内の還元鉄の温度を700℃程度に維持することが好ましい。これにより、水素ガスによる脱窒を効率よく進めることができる。なお、上述したように、貯蔵ホッパ3内の還元鉄の温度は温度計10により測定される。また、貯蔵ホッパ3内の還元鉄の温度は、例えば貯蔵ホッパ3内に供給されるシールガスの流量によって調整可能である。シールガスに水素ガスが含まれる場合、シールガス中の水素濃度は、例えば、50体積%以上、90体積%以上、98体積%以上、または100体積%であってよい。シールガス中の水素濃度は、例えば、100体積%以下、100体積%未満、または98体積%未満であってよい。シールガスが純水素である場合、シールガス中の水素濃度は98体積%以上100体積%以下となる。また、例えば、シャフト炉に天然ガスを吹き込んで鉄鉱石を還元した後、シャフト炉の炉頂から排出されたガスを改質したガスは水素を50体積%以上含有することがある。
【0020】
なお、シールガスの温度、流量は特に制限されず、本実施形態の効果を損なわない限りで適宜調整されればよい。シールガスの供給量は、装置の接合部の隙間、貯蔵ホッパ3の上端に設けられた排管c、ブリケットの排出部から装置内部に大気が流入しない程度であり、貯蔵ホッパ3、連結部分4A、及び成型機ケーシング5A内の圧力が、外部の圧力以上になればよい。
【0021】
また、連結管aは省略されてもよい。この場合、成型機ケーシング5A内はシールガスでシールされないことになる。しかし、成型機ケーシング5A内では還元鉄はブリケット化されるので、気孔率が下がり、周囲のガスと反応しにくくなる。つまり、酸化及び窒化されにくくなる。したがって、成型機ケーシング5A内がシールされなくても還元鉄ブリケットの品質は確保される。
【0022】
<2.還元鉄ブリケットの製造方法>
つぎに、還元鉄ブリケットの製造装置を用いた還元鉄ブリケットの製造方法を説明する。本実施形態に係る還元鉄ブリケットの製造方法は、固体状の還元鉄を製造する還元鉄製造工程と、非酸化性かつ非窒素性のシールガス雰囲気下で還元鉄をブリケット化するブリケット工程と、を含む。
【0023】
より具体的には、まず、還元炉1により固体状の還元鉄を製造する(還元鉄製造工程)。ついで、製造された還元鉄を貯蔵ホッパ3内でいったん貯蔵する。貯蔵ホッパ3内の還元鉄の温度は温度計10により測定される。
【0024】
ついで、フィーダ4は、貯蔵ホッパ3に蓄えられた還元鉄を一定の速度で成型機ケーシング5A内に供給する。ついで、成型機5は、フィーダ4から一定の速度で供給された還元鉄をブリケット化する。ここで、製造された還元鉄ブリケット同士はリブで連結されている。分離機6は、リブで連結された還元鉄ブリケットを単体に分離する。分離された還元鉄ブリケットは篩7に供給される。
【0025】
一方で、シールガス供給装置2は、連結管bを介して貯蔵ホッパ3にシールガスを供給する。これにより、貯蔵ホッパ3、及び連結部分4Aの内部空間をシールガスでシールする。シールガス供給装置2は、連結管aを介して成型機ケーシング5A内にシールガスを供給し、及び成型機ケーシング5Aの内部空間をシールガスでシールすることが好ましい。
【0026】
シールガスは、非酸化性かつ非窒素性である。つまり、シールガスは、実質的に酸素ガス及び窒素ガスを含まない。これにより、還元鉄の酸化のみならず窒化を防止することができる。したがって、成型機5は、非酸化性かつ非窒素性のシールガス雰囲気下で前記還元鉄をブリケット化する(ブリケット工程)。
【0027】
篩7は還元鉄ブリケット間に混入した微粉を篩下に除去する。その後、還元鉄ブリケットは、輸送コンベア9により次工程に輸送される。篩下の微粉は篩下循環装置8により貯蔵ホッパ3に戻される。
【0028】
以上により、本実施形態に係る還元鉄ブリケットの製造方法によれば、非酸化性かつ非窒素性のシールガス雰囲気下で還元鉄をブリケット化するので、還元鉄の窒化を防止しつつ還元鉄をブリケット化することができる。
【0029】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0030】
1 還元炉
2 シールガス供給装置
3 貯蔵ホッパ
4 フィーダ
4A 連結部分
5 成型機
5A 成型機ケーシング
6 分離機
7 篩
8 篩下循環装置
9 輸送コンベア
10 温度計
【要約】
本発明の一態様に係る還元鉄ブリケットの製造方法は、固体状の還元鉄を製造する還元鉄製造工程と、非酸化性かつ非窒素性のシールガス雰囲気下で前記還元鉄をブリケット化するブリケット工程と、を含むことを特徴とする