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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-10-10
(45)【発行日】2025-10-21
(54)【発明の名称】蓄電装置管理システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20251014BHJP
   G01R 31/367 20190101ALI20251014BHJP
   G01R 31/382 20190101ALI20251014BHJP
   G01R 31/385 20190101ALI20251014BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20251014BHJP
【FI】
H01M10/48 P
G01R31/367
G01R31/382
G01R31/385
H02J7/00 B
H02J7/00 X
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023506368
(86)(22)【出願日】2022-03-08
(86)【国際出願番号】 IB2022052018
(87)【国際公開番号】W WO2022195402
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2025-03-06
(31)【優先権主張番号】P 2021046222
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】長多 剛
(72)【発明者】
【氏名】塚本 洋介
(72)【発明者】
【氏名】田島 亮太
【審査官】杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-243716(JP,A)
【文献】特開2019-216552(JP,A)
【文献】特開2020-145186(JP,A)
【文献】特表2017-538935(JP,A)
【文献】国際公開第2019/193471(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/085011(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/367
G01R 31/382
G01R 31/385
H01M 10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置を有する電子機器と、サーバ装置と、を有し、
前記蓄電装置は、制御部と、蓄電池と、を有し、
前記制御部は、第1時点の第1のデータを利用して第2のデータを作成する第1の機能と、前記第2のデータを前記サーバ装置に送信する第2の機能と、を有し、
前記サーバ装置は、前記第2のデータを利用して第2時点の第1のデータを作成する第3の機能と、前記第2時点の第1のデータを前記制御部に送信する第4の機能と、を有し、
前記第1の機能、前記第2の機能、前記第3の機能、及び前記第4の機能が繰り返し行わ
前記サーバ装置が有する第3の機能は、第1のアルゴリズム、を有し、
前記制御部が有する第1の機能は、第2のアルゴリズム、を有し、
前記制御部は、複数のSOC-OCV特性データを有し、
前記サーバ装置は、前記第2のデータ及び前記第1のアルゴリズムを利用して、前記複数のSOC-OCV特性データの少なくとも一を作成する機能を有し、
前記制御部は、前記第2のアルゴリズムを利用して、前記複数のSOC-OCV特性データの中から、前記蓄電池の状態と最も近い第1のSOC-OCV特性データを選択する機能を有する、蓄電装置管理システム。
【請求項2】
請求項に記載の蓄電装置管理システムであって、
前記電子機器は、前記第1のSOC-OCV特性データと、前記電子機器の推定負荷と、を基に第2のSOC-OCV特性データを作成する第5の機能を有し、
前記第2のSOC-OCV特性データにおいてSOC値が0%となるOCV値は、前記第1のSOC-OCV特性データにおけるSOC値が0%となるOCV値よりも高い、蓄電装置管理システム。
【請求項3】
請求項又は請求項に記載の蓄電装置管理システムであって、
前記複数のSOC-OCV特性データの各々は、SOC値と対応する第1のビットデータと、OCV値と対応する第2のビットデータと、の組み合わせによって構成され、
前記第1のビットデータのビット数と、前記第2のビットデータのビット数と、が等しい蓄電装置管理システム。
【請求項4】
請求項乃至請求項のいずれか一に記載の蓄電装置管理システムであって、
前記サーバ装置が有する第3の機能は、第3のアルゴリズム、を有し、
前記制御部が有する第1の機能は、第4のアルゴリズム、を有し、
前記第1のデータはFCC値を有し、
前記第2のデータはR値を有し、
前記サーバ装置は、前記第2のデータ及び前記第3のアルゴリズム、を利用して、前記FCC値を推定する機能を有し、
前記制御部は、前記第1のデータ及び前記第4のアルゴリズムを利用して、前記R値を算出する機能を有する、蓄電装置管理システム。
【請求項5】
請求項乃至請求項のいずれか一に記載の蓄電装置管理システムであって、
前記制御部は、前記蓄電池の積算充電量を計測するクーロンカウンタを有し、
前記積算充電量が前記FCC値に達する度に、前記積算充電量のリセット及び前記第2の機能が実施される、蓄電装置管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、蓄電装置、電子機器、サーバ装置、コンピュータプログラム、及び蓄電装置管理システムに関する。
【0002】
また、本発明の一態様は、ニューラルネットワーク、及びそれを用いた蓄電装置の管理システムに関する。また、本発明の一態様は、ニューラルネットワークを用いた車両に関する。また、本発明の一態様は、ニューラルネットワークを用いた電子機器に関する。また、本発明の一態様は、車両に限定されず、構造体などに設置された太陽光発電パネルなどの発電設備から得られた電力を貯蔵するための蓄電装置にも適用できる、蓄電装置の管理システムに関する。
【0003】
なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明の一態様の技術分野は、物、方法、又は、製造方法に関する。又は、本発明は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、又は、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関する。特に、本発明の一態様は、半導体装置、表示装置、発光装置、蓄電装置、記憶装置、それらの駆動方法、又はそれらの製造方法に関する。
【0004】
なお、本明細書等において、半導体装置は、半導体特性を利用することで機能しうる素子、回路、又は装置等を指す。一例としては、トランジスタ、ダイオード等の半導体素子は半導体装置である。また別の一例としては、半導体素子を有する回路は、半導体装置である。また別の一例としては、半導体素子を有する回路を備えた装置は、半導体装置である。
【0005】
なお、本明細書中において電子機器とは、蓄電装置を有する装置全般を指し、蓄電装置を有する電気光学装置、蓄電装置を有する情報端末装置などは全て電子機器である。
【0006】
なお、本明細書中において、蓄電装置とは、蓄電機能を有する素子及び装置全般を指すものである。例えば、リチウムイオン二次電池などの蓄電装置(二次電池ともいう)、リチウムイオンキャパシタ、及び電気二重層キャパシタなどを含む。
【背景技術】
【0007】
近年、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタ、空気電池等、種々の蓄電装置の開発が盛んに行われている。特に高出力、高エネルギー密度であるリチウムイオン二次電池は、携帯電話、スマートフォン、もしくはノート型コンピュータ等の携帯情報端末、携帯音楽プレーヤ、デジタルカメラ、医療機器、又は、ハイブリッド車(HV)、電気自動車(EV)、もしくはプラグインハイブリッド車(PHV)等の次世代クリーンエネルギー自動車など、半導体産業の発展と併せて急速にその需要が拡大し、繰り返し充電可能なエネルギーの供給源として現代の情報化社会に不可欠なものとなっている。
【0008】
高い有用性をもつリチウムイオン電池であるが、高出力、高エネルギー密度である反面、過放電及び過充電に伴う安全性リスクが高いことが知られている。そのため、リチウムイオン二次電池を機器に用いる場合には、充電率、内部抵抗などの内部状態を正確に把握、管理することが求められている。リチウムイオン電池の内部状態を推定する手法としてクーロンカウンタ法やOCV(開回路電圧:Open Circuit Voltage)法、及びカルマンフィルタなどが知られている(特許文献1)。カルマンフィルタなどの状態推定手法において、推定対象となる蓄電装置のSOC(充電率:State of Charge)-OCV(開回路電圧:Open Circuit Voltage)特性、及びFCC(満充電容量:Full Charge Capasity)などのデータを、高い精度で有することが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】WO2019/193471号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の手法では、長期間運用して充電や放電を繰り返すと、蓄電装置の劣化、及び測定誤差が蓄積されることで、SOC-OCV特性、及びFCCなどのデータ精度が大きく低下する恐れがあった。また、データ精度が低い状態で蓄電装置を管理することで、蓄電装置の劣化を早めてしまう恐れや、蓄電装置を危険な状態へと導いてしまう恐れがあった。
【0011】
また、SOC-OCV特性データは、データ点数を多く、高精度、とすることが望ましいが、このようなデータは、蓄電装置の制御部が利用するデータとして、制御部の処理能力を超えたデータ容量になってしまう恐れがあった。
【0012】
また、新たなSOC-OCV特性データを作成する場合に、蓄電装置の制御部ではデータ作成のための演算能力が不足する場合があった。
【0013】
また、二次電池の容量を高い精度で推定できれば、その値に基づいて異常検知も行うことができる。二次電池の新たな異常検知方法を提供することも課題の一つである。
【0014】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、明細書、図面、請求項の記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様は、蓄電装置を有する電子機器と、サーバ装置と、を有し、蓄電装置は、制御部と、蓄電池と、を有し、制御部は、第1時点の第1のデータを利用して第2のデータを作成する第1の機能と、第2のデータをサーバ装置に送信する第2の機能と、を有し、サーバ装置は、第2のデータを利用して第2時点の第1のデータを作成する第3の機能と、第2時点の第1のデータを制御部に送信する第4の機能と、を有し、第1の機能、第2の機能、第3の機能、及び第4の機能が繰り返し行われる、蓄電装置管理システムである。
【0016】
また、本発明の一態様は、上記の蓄電装置管理システムであって、サーバ装置が有する第3の機能は、第1のアルゴリズム、を有し、制御部が有する第1の機能は、第2のアルゴリズム、を有し、制御部は、複数のSOC-OCV特性データを有し、サーバ装置は、第2のデータ及び第1のアルゴリズムを利用して、複数のSOC-OCV特性データの少なくとも一を作成する機能を有し、制御部は、第2のアルゴリズムを利用して、複数のSOC-OCV特性データの中から、蓄電池の状態と最も近い第1のSOC-OCV特性データを選択する機能を有する、蓄電装置管理システムである。
【0017】
また、本発明の一態様は、上記のいずれか一に記載の蓄電装置管理システムであって、電子機器は、第1のSOC-OCV特性データと、電子機器の推定負荷と、を基に第2のSOC-OCV特性データを作成する第5の機能を有し、第2のSOC-OCV特性データにおいてSOC値が0%となるOCV値は、第1のSOC-OCV特性データにおけるSOC値が0%となるOCV値よりも高い、蓄電装置管理システムである。
【0018】
また、本発明の一態様は、上記のいずれか一に記載の蓄電装置管理システムであって、複数のSOC-OCV特性データの各々は、SOC値と対応する第1のビットデータと、OCV値と対応する第2のビットデータと、の組み合わせによって構成され、第1のビットデータのビット数と、第2のビットデータのビット数と、が等しい蓄電装置管理システムである。
【0019】
また、本発明の一態様は、上記のいずれか一に記載の蓄電装置管理システムであって、サーバ装置が有する第3の機能は、第3のアルゴリズム、を有し、制御部が有する第1の機能は、第4のアルゴリズム、を有し、第1のデータはFCC値を有し、第2のデータはR(内部抵抗)値を有し、サーバ装置は、第2のデータ及び第3のアルゴリズム、を利用して、FCC値を推定する機能を有し、制御部は、第1のデータ及び第4のアルゴリズムを利用して、R値を算出する機能を有する、蓄電装置管理システムである。
【0020】
また、本発明の一態様は、上記のいずれか一のいずれか一に記載の蓄電装置管理システムであって、制御部は、蓄電池の積算充電量を計測するクーロンカウンタを有し、積算充電量がFCC値に達する度に、積算充電量のリセット及び第2の機能が実施される、蓄電装置管理システムである。
【0021】
また、本発明の一態様は、蓄電装置を有する電子機器であって、蓄電装置は、制御部と、蓄電池と、を有し、制御部は、複数のSOC-OCV特性データを有し、制御部は、複数のSOC-OCV特性データの中から、蓄電池の状態と最も近いデータを選択する機能を有する電子機器である。
【0022】
また、本発明の一態様は、蓄電装置を有する電子機器であって、蓄電装置は、制御部と、蓄電池と、を有し、制御部は、複数のSOC-OCV特性データを有し、制御部は、複数のSOC-OCV特性データの中から、蓄電池の状態と最も近いデータを選択する機能を有し、複数のSOC-OCV特性データの各々は、SOC値と対応する第1のビットデータと、OCV値と対応する第2のビットデータと、の組み合わせによって構成され、第1のビットデータのビット数と、第2のビットデータのビット数と、が等しい電子機器である。
【発明の効果】
【0023】
現在の蓄電装置の状態を示すSOC-OCV特性データ及びFCC値を、一定期間ごとにサーバ装置において推定し蓄電装置の制御部へとフィードバックすることで、高精度で蓄電装置を管理することが可能となる。蓄電装置の制御部において、サーバ装置から送信された複数のSOC-OCV特性データの中から、現在の蓄電装置の状態に最も近いSOC-OCV特性データを選択するという方法を用いることで、高精度のSOC-OCV特性データを用いた蓄電装置管理を、小さい計算量でおこなうことができる。
【0024】
二次電池の劣化が進んだとしても推定精度の高い二次電池の状態推定方法を提供することができる。また、短時間、低コストでSOCを高精度に推定する二次電池の状態測定システムを提供することができる。また、二次電池の新たな異常検知方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1は本発明の一態様を示す蓄電装置管理システムの概念図である。
図2は蓄電装置管理システムの、SOC-OCV特性データに関する処理機能について説明する図である。
図3は、SOC-OCV特性データのデータ記述方式について説明する図である。
図4は蓄電装置管理システムの、FCC、内部抵抗に関する処理機能について説明する図である。
図5は、R値の推定方法について説明する図である。
図6Aは本発明の一態様の正極活物質の上面図、図6B及び図6Cは本発明の一態様の正極活物質の断面図である。
図7は本発明の一態様の正極活物質の結晶構造を説明する図である。
図8は結晶構造から計算されるXRDパターンである。
図9は比較例の正極活物質の結晶構造を説明する図である。
図10は結晶構造から計算されるXRDパターンである。
図11Aはコイン型二次電池の分解斜視図であり、図11Bはコイン型二次電池の斜視図であり、図11Cはその断面斜視図である。
図12Aは、円筒型の二次電池の例を示す。図12Bは、円筒型の二次電池の例を示す。図12Cは、複数の円筒型の二次電池の例を示す。図12Dは、複数の円筒型の二次電池を有する蓄電システムの例を示す。
図13A及び図13Bは二次電池の例を説明する図であり、図13Cは二次電池の内部の様子を示す図である。
図14A乃至図14Cは二次電池の例を説明する図である。
図15A、及び図15Bは二次電池の外観を示す図である。
図16A乃至図16Cは二次電池の作製方法を説明する図である。
図17A乃至図17Cは、電池パックの構成例を示す図である。
図18A及び図18Bは二次電池の例を説明する図である。
図19A乃至図19Cは二次電池の例を説明する図である。
図20A及び図20Bは二次電池の例を説明する図である。
図21Aは本発明の一態様を示す電池パックの斜視図であり、図21Bは電池パックのブロック図であり、図21Cはモータを有する車両のブロック図である。
図22A乃至図22Dは、輸送用車両の一例を説明する図である。
図23A及び図23Bは、本発明の一態様に係る蓄電装置を説明する図である。
図24Aは電動自転車を示す図であり、図24Bは電動自転車の二次電池を示す図であり、図24Cは電動バイクを説明する図である。
図25A乃至図25Dは、電子機器の一例を説明する図である。
図26Aはウェアラブルデバイスの例を示しており、図26Bは腕時計型デバイスの斜視図を示しており、図26Cは、腕時計型デバイスの側面を説明する図である。図26Dは、ワイヤレスイヤホンの例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0027】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の蓄電装置管理システムの例について、図1乃至図5を用いて説明する。
【0028】
図1は、蓄電装置管理システムの概念図である。蓄電装置管理システムは、図1に示すように、サーバ装置1と、蓄電装置3を備える電子機器2と、を有する。蓄電装置管理システムは、ニューラルネットワークを有するアルゴリズムを有しており、人工知能(AI:Artificial Intelligence)を有する蓄電装置管理システムと言える。
【0029】
本実施の形態において、サーバ装置1が一つの電子機器2を管理するシステムの例を示すが、これに限らずサーバ装置1は複数の電子機器2を管理することができる。サーバ装置1が複数の電子機器2を管理する場合、高速な演算処理が可能であることが好ましいため、サーバ装置1は演算処理装置としてCPU(Central Processing Unit)及びGPU(Graphics Processing Unit)を有することが好ましい。なお、サーバ装置1が複数の電子機器2を管理する場合、複数の電子機器2及び複数の電子機器2が有する蓄電装置3は、一意の識別子(ユニークIDともいう)を有することが好ましい。識別子は、トレーサビリティの観点から、電子機器2及び電子機器2が有する蓄電装置3、の製造番号と関係付けて設定することが好ましい。
【0030】
サーバ装置1と、電子機器2と、は通信ネットワーク7を介して、データを送受信することができる。データは、サーバ装置1から電子機器2へ送られる第1のデータ11と、電子機器2からサーバ装置1へ送られる第2のデータ12と、を有する。蓄電装置3は、図5に示すように制御部4及び蓄電池5を有する。第1のデータ11は、蓄電池5に関するFCC値、及び蓄電池5に関するSOC-OCV特性データ、を有する。第2のデータ12は、蓄電装置3の制御部4が現在使用しているSOC-OCV特性データ、蓄電池5に関するR値、及び蓄電池5の積算充電量、を有する。蓄電池5の積算充電量は、電子機器2に蓄電装置3が搭載されて以降の積算充電量、及び前回のデータ送信時以降の積算充電量の何れか一または両方であり、両方の場合は蓄電池5の積算充電量を示すデータは2つとなる。また、第2のデータ12は、蓄電装置3の制御部4が現在使用しているSOC-OCV特性データと、蓄電池5の実際のSOC-OCV特性と、の誤差データを有してもよい。SOC-OCV特性に関する誤差データは、各SOCにおける開回路電圧差(ΔV)を配列として有することができるが、各SOCにおける開回路電圧差(ΔV)を積算した1つの値として有していてもよい。
【0031】
サーバ装置1と、電子機器2と、が通信ネットワーク7を介して、データ通信するタイミングとして、任意のタイミングでおこなってもよいが、蓄電装置3の充電中であれば、データ通信に使用する電力を外部電力で賄うことができるため好ましい。なお、蓄電装置3の充電中において、データ通信するタイミングとして例えば、前回のデータ通信を実施した時点以降において、蓄電装置3が有する蓄電池5のFCC値に相当する積算充電量が充電されたとき、とすることができる。サーバ装置1では、第2のデータが有する蓄電池5の積算充電量と、サーバ装置1が有する容量劣化テーブルと、に基づき、第1のデータが有するFCC値を推定する機能を有する。ここで、上記に示したタイミングでデータ通信を行う場合は、通信回数を基に積算充電量を算出することが可能となり好ましい。
【0032】
[SOC-OCV特性データに関する処理機能]
図2は、第1のデータ11及び第2のデータ12が有するSOC-OCV特性データに関して、サーバ装置1におけるSOC-OCV特性データの作成と、電子機器2又は制御部4におけるSOC-OCV特性データの選択と、を説明する図である。図2を用いて、蓄電装置管理システムの、SOC-OCV特性データの、作成及び選択に関する機能構成について説明する。なお、図2では、サーバ装置1と、電子機器2と、の間のデータ通信(データ送受信)を模式的に示しているが、本実施の形態としては1対1での直接のデータ通信に限らず、他の電子機器、インターネット回線、通信中継装置及び通信基地局などを介したデータ通信をおこなってもよい。データ通信の方式として有線通信を用いてもよいし、無線通信を用いてもよい。無線通信を用いる場合、例えば第4世代移動通信システム(4G)、第5世代移動通信システム(5G)などの通信規格に沿った無線通信を用いることができる。無線通信の信号周波数は、例えば、サブミリ波である300GHz~3THz、ミリ波である30GHz~300GHz、マイクロ波である3GHz~30GHz、極超短波である300MHz~3GHz、超短波である30MHz~300MHz、短波である3MHz~30MHz、中波である300kHz~3MHz、長波である30kHz~300kHz、及び超長波である3kHz~30kHzのいずれの周波数も用いることができる。
【0033】
サーバ装置1は、第1のアルゴリズム21を有する。第1のアルゴリズム21は、第2のデータ12を入力データとして、第1のSOC-OCV特性データ62を作成する機能を有する。第1のアルゴリズム21は、第1のニューラルネットワーク31を有することが好ましい。また、サーバ装置1は、第1のSOC-OCV特性データ62を、第1のデータ11の一部として、電子機器2に送信する機能を有する。電子機器2へ、と送信された第1のSOC-OCV特性データ62は、電子機器2または制御部4が有するSOC-OCV特性データリスト61の一部として加えられる。
【0034】
電子機器2または制御部4は、第2のアルゴリズム22を有する。第2のアルゴリズム22は、SOC-OCV特性データリスト61、ならびに制御部4が有する蓄電池5の電圧値、電流値、温度及び容量値を入力データとして、第2のSOC-OCV特性データ63を選択する機能を有する。第2のSOC-OCV特性データ63は、該選択時における蓄電池5の状態に最も近いものが選ばれる。最も近いとは、蓄電池5のSOC-OCV特性の全範囲と、最も差が小さいことをいう。電子機器2に搭載され使用されている蓄電池5のSOC-OCV特性の全範囲を実際に測定することは難しいため、第2のアルゴリズム22では、限られた入力データを基に第2のSOC-OCV特性データ63を選択する必要がある。そのため、第2のアルゴリズム22は、第2のニューラルネットワーク32を有することが好ましい。第2のアルゴリズム22は、第2のニューラルネットワーク32を有することで、限られた入力データを用いて蓄電池5の状態に最も近い第2のSOC-OCV特性データ63を選択できることとなる。また、電子機器2または制御部4は、第2のSOC-OCV特性データ63を、第2のデータ12の一部として、サーバ機器1に送信する機能を有する。
【0035】
第1のニューラルネットワーク31として例えば、FFNN(Feedforward Neural Network、順伝播型ニューラルネットワーク)、CNN(Convolutional Neural Network、畳み込みニューラルネットワーク)、RNN(Recurrent Neural Network、再帰型ニューラルネットワーク)およびLSTM(Long Short-Term Memory、長・短期記憶ユニット)の中から何れか一を用いることができる。
【0036】
第2のニューラルネットワーク32として例えば、FFNN(Feedforward Neural Network、順伝播型ニューラルネットワーク)、CNN(Convolutional Neural Network、畳み込みニューラルネットワーク)、RNN(Recurrent Neural Network、再帰型ニューラルネットワーク)およびLSTM(Long Short-Term Memory、長・短期記憶ユニット)の中から何れか一を用いることができる。また、第2のニューラルネットワーク32では、決定木を用いて分類問題として、SOC-OCV特性データリスト61から第2のSOC-OCV特性データ63を選択してもよい。
【0037】
次に、図3を用いて第1のSOC-OCV特性データ62のデータ記述方式について説明する。本発明の一態様の蓄電装置管理システムとして、例えば、SOCデータ及びOCVデータを、図3に示すように特定のビットデータ(bit data)として割り当てるデータ記述方式を用いることができる。SOCデータとして、ビットデータと対応SOCとの関係を図3に示す。また、OCVデータとして、ビットデータと対応電圧との関係を図3に示しており、SOCデータにおける特定ビットデータが例えば0011であるとき、対応SOCは40%であり、OCVデータにおける対応電圧は3.30V、となる。蓄電装置3の通常の使用状況においては、SOCは0%以上100%以下、の範囲で使用されるが、蓄電装置3を長期間使用しない場合には0%以下の過放電状態になる可能性が存在する。また、充電においては、100%以上に充電される過充電について、潜在的なリスクとして対応する必要がある。そのため、図3で示すようにSOCデータは、0%よりも小さいSOC範囲及び、100%より大きいSOC範囲にも対応することが望ましい。また、OCVデータはSOCデータと対になるデータであり、各SOC値に対応する蓄電池5のOCV値がOCVデータとして割り当てられる。
【0038】
また、図3では第1のSOC-OCV特性データ62のデータ記述方式の一例として、SOCが100%に近い範囲において、ビットデータの割り当てを多くした例を示している。リチウムイオン電池において、SOCが100%を超える過充電状態は、蓄電池5の安全性の低下及び電池寿命の低下につながる可能性があるため、SOCが100%に近いSOC範囲では、ビットデータの割り当てを多くすることが望ましい。SOCが100%に近いSOC範囲として、好ましくは90%以上110%以下、より好ましくは95%以上105%以下、であることが好ましく、この範囲において、ビットデータの割り当てを、他の範囲に比べて、2倍以上にすることが望ましい。ビットデータの割り当てはサーバ装置1にて行うことができる。また、図3では、100%に近いSOC範囲のビットデータの割り当てを多くしたが、更に0%に近いSOC範囲についてもビットデータの割り当てを多くしてもよい。0%に近いSOC範囲についてもビットデータの割り当てを多くすることは、蓄電装置3を有する電子機器2の、突然のシャットダウンを防ぐことが容易になるため、好ましい。上記に示した例の様に、SOCの一部範囲のビットデータ割り当てを多くすることは、小さいビット数であっても必要十分なSOC-OCV特性データを形成することができるため、サーバ装置1と蓄電装置3と、のデータ通信の軽量化、及び蓄電装置3の内部での蓄積データの軽量化、が可能となるという効果を得ることが可能である。
【0039】
図3では、説明のため4ビットでの例を示しているが、これに限らず、例えば8ビット、16ビット、32ビット、64ビットなど、と大きなビット数でデータを記述してもよい。大きなビットデータを用いる場合では、上記に示したSOCの一部範囲のビットデータ割り当てを多くする必要がない場合がある。これは、SOC-OCV特性データに割り当てられるビット数が大きな場合には、SOCの一部範囲に限らず、SOCの全範囲を詳細に記述することができるためである。なお、SOCデータのビット数と、OCVデータのビット数は必ずしも一致する必要はないが、SOCデータのビット数と、OCVデータのビット数が一致する場合は、第1のニューラルネットワーク及び/または第2のニューラルネットワークにおける処理において、演算処理を行い易いため好ましい。
【0040】
また、図3では第1のSOC-OCV特性データ62のデータ記述方式の一例として、SOCデータ及びOCVデータの割り当て以外に、蓄電装置3の状態を表すState A乃至State Dを、余剰のビットデータに割り当てた例を示している。蓄電装置3の状態を表すState A乃至State Dとして例えば、蓄電池5の内部ショートなどの危険状態を示すデータとして割り当てることができる。
【0041】
以上に示したように、本発明の一態様の蓄電装置管理システムが有するSOC-OCV特性データに関するデータ処理機能によって、蓄電池5の残量推定精度を高めることが可能となる。また、サーバ装置1によって行われる、SOC-OCV特性データの軽量化(データ量の軽減)及びニューラルネットワーク処理への好適化、によって、蓄電装置3が有する制御部の低消費電力化、が可能となる。
【0042】
[FCC、内部抵抗に関する処理機能]
図4は、第1のデータ11が有するFCC値、及び第2のデータが有するR値、に関して、サーバ装置1におけるFCC値の推定と、電子機器2又は制御部4におけるR値の推定と、を説明する図である。図4を用いて、蓄電装置管理システムの、FCC値及びR値、の推定に関する機能構成について説明する。なお、サーバ装置1と、電子機器2と、の間のデータ通信(データ送受信)としては、図2で説明した通信方法を用いることができる。
【0043】
サーバ装置1は、第3のアルゴリズム23を有する。第3のアルゴリズム23は、蓄電装置で算出されたR値71a(蓄電装置で推定したある1時点前のRデータ:Rn-1)を入力データとして、FCC72を推定する機能を有する。第3のアルゴリズム23は、第3のニューラルネットワーク33を有することが好ましい。また、サーバ装置1は、FCC72を、第1のデータ11の一部として、電子機器2に送信する機能を有する。
【0044】
電子機器2または制御部4は、第4のアルゴリズム24を有する。第4のアルゴリズム24は、FCC72、第2のSOC-OCV特性データ63、ならびに制御部4が有する蓄電池5の電圧値、電流値、温度及び容量値を入力データとして、蓄電池5のR値71b(蓄電装置で推定したRデータ:R)を推定する機能を有する。第4のアルゴリズム24は、第4のニューラルネットワーク34を有することが好ましい。また、電子機器2または制御部4は、R値71(R)を、第2のデータ12の一部として、サーバ機器1に送信する機能を有する。
【0045】
第3のニューラルネットワーク33として例えば、FFNN(Feedforward Neural Network、順伝播型ニューラルネットワーク)、CNN(Convolutional Neural Network、畳み込みニューラルネットワーク)、RNN(Recurrent Neural Network、再帰型ニューラルネットワーク)およびLSTM(Long Short-Term Memory、長・短期記憶ユニット)の中から何れか一を用いることができる。
【0046】
第4のニューラルネットワーク34として例えば、FFNN(Feedforward Neural Network、順伝播型ニューラルネットワーク)、CNN(Convolutional Neural Network、畳み込みニューラルネットワーク)、RNN(Recurrent Neural Network、再帰型ニューラルネットワーク)およびLSTM(Long Short-Term Memory、長・短期記憶ユニット)の中から何れか一を用いることができる。
【0047】
次に、図5を用いてR値71の推定方法について説明する。図5は、電子機器2または制御部4が有する、第4のアルゴリズム24の機能を示しており、第1のSOC-OCV特性データ62、FCC72、及び蓄電装置3の内部測定値を、第4のアルゴリズム24に入力することで、R値71が推定される。SOC-OCV特性データ62は、図3にて説明したデータ形式であることが望ましい。なお、蓄電装置3の内部測定値は、蓄電池5の電圧値V、蓄電池5に流れる電流値I、蓄電池5の温度T及び制御部4が有するクーロンカウンタ6によって計測される容量値Qを有する。
【0048】
以上に示したように、本発明の一態様の蓄電装置管理システムが有するFCC値及びR値、の推定に関する機能によって、蓄電池5の、FCC値及びR値の推定精度を高めることが可能となる。また、軽量化(データ量の軽減)されたSOC-OCV特性データをR値の推定に用いることで、ニューラルネットワーク処理への好適化され、蓄電装置3が有する制御部の低消費電力化が可能となる。
【0049】
また、電子機器2が有する蓄電装置3は、SOC-OCV特性データリスト61及び第2のSOC-OCV特性データ63だけでなく、第3のSOC-OCV特性データを有してもよい。第3のSOC-OCV特性データは、第2のSOC-OCV特性データ63と、電子機器2の推定負荷を基に作成することができる。電子機器2の推定負荷として、電子機器2の平均消費電流値を用いることができる。第3のSOC-OCV特性データは、第2のSOC-OCV特性データ63と比較して、OCVデータにおいて、SOCが低い範囲の対応電圧が、電子機器2の推定負荷に応じて高めに設定される。単純化した例として、例えば第2のSOC-OCV特性データ63におけるSOC=10%が、第3のSOC-OCV特性データにおいてSOC=0%としてデータが記録されることになる。この例の場合、第3のSOC-OCV特性データにおいてSOCが0%となるOCVは、第2のSOC-OCV特性データ63におけるSOCが0%となるOCVよりも高いことになる。第3のSOC-OCV特性データを電子機器2の使用者に向けた状態表示に用いることで、電子機器2の突然のシャットダウンを防ぐことができるため好ましい場合がある。
【0050】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0051】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様の二次電池の例について説明する。
【0052】
本明細書等において、正極活物質の理論容量とは、正極活物質が有する挿入脱離可能なリチウムが全て脱離した場合の電気量をいう。例えば、LiFePOの理論容量は170mAh/g、LiCoOの理論容量は274mAh/g、LiNiOの理論容量は275mAh/g、LiMnの理論容量は148mAh/gである。
【0053】
また正極活物質中に挿入脱離可能なリチウムがどの程度残っているかを、組成式中のx、たとえばLiCoO中のx、またはLiMO中のxで示す。本明細書中のLiCoOは適宜LiM1Oに読み替えることができる。xは占有率ということができ、二次電池中の正極活物質の場合、x=(理論容量-充電容量)/理論容量としてもよい。たとえばLiCoOを正極活物質に用いた二次電池を219.2mAh/g充電した場合、Li0.2CoOまたはx=0.2ということができる。LiCoO中のxが小さいとは、たとえば0.1<x≦0.24をいう。
【0054】
コバルト酸リチウムが化学量論比をおよそ満たす場合、LiCoOでありリチウムサイトのLiの占有率はx=1である。また放電が終了した二次電池も、LiCoOであり、x=1といってよい。ここでいう放電が終了したとは、たとえば100mA/gの電流で、電圧が2.5V(対極リチウム)以下となった状態をいう。リチウムイオン二次電池では、リチウムサイトのリチウムの占有率がx=1となり、それ以上リチウムが入らなくなると、電圧が急激に低下する。このとき、放電が終了したといえる。一般的にLiCoOを用いたリチウムイオン二次電池では、放電電圧が2.5Vになるまでに放電電圧が急激に降下するため、上記の条件で放電が終了したとする。
【0055】
また、本明細書等において、正極活物質に挿入脱離可能なリチウムが全て挿入されているときの充電深度を0、正極活物質が有する挿入脱離可能なリチウムが全て脱離したときの充電深度を1ということがある。例えば、LiMO中のxとして、x=1のときの充電深度は0であり、x=0のとき充電深度は1であり、x=0.2のとき充電深度は0.8である。
【0056】
<二次電池の構成例>
以下に、正極、負極および電解液が、外装体に包まれている二次電池を例にとって説明する。
【0057】
〔正極〕
正極は、正極活物質層および正極集電体を有する。正極活物質層は正極活物質を有し、後述の導電材およびバインダを有していてもよい。
【0058】
〔負極〕
負極は、負極活物質層および負極集電体を有する。負極活物質層は負極活物質を有し、後述の導電材および上記に記載のバインダを有していてもよい。
【0059】
[集電体]
正極集電体および負極集電体として、ステンレス、金、白金、亜鉛、鉄、銅、アルミニウム、チタン等の金属、及びこれらの合金など、導電性の高く、リチウム等のキャリアイオンと合金化しない材料を用いることができる。集電体は、シート状、網状、パンチングメタル状、エキスパンドメタル状等の形状を適宜用いることができる。集電体は、厚みが10μm以上30μm以下のものを用いるとよい。
【0060】
なお負極集電体は、リチウム等のキャリアイオンと合金化しない材料を用いることが好ましい。
【0061】
集電体として上記に示す金属の上に積層して、チタン化合物を設けてもよい。チタン化合物として例えば、窒化チタン、酸化チタン、窒素の一部が酸素に置換された窒化チタン、酸素の一部が窒素に置換された酸化チタン、および酸化窒化チタン(TiO、0<x<2、0<y<1)から選ばれる一を、あるいは二以上を混合または積層して、用いることができる。中でも窒化チタンは導電性が高くかつ酸化を抑制する機能が高いため、特に好ましい。チタン化合物を集電体の表面に設けることにより例えば、集電体上に形成される活物質層が有する材料と金属との反応が抑制される。活物質層が酸素を有する化合物を含む場合には、金属と酸素との酸化反応を抑制することができる。例えば集電体としてアルミニウムを用い、活物質層が後述する酸化グラフェンを用いて形成される場合には、酸化グラフェンが有する酸素とアルミニウムとの酸化反応が懸念される。このような場合において、アルミニウムの上にチタン化合物を設けることにより、集電体と酸化グラフェンとの酸化反応を抑制することができる。
【0062】
[導電材]
導電材は、導電付与剤、導電助剤とも呼ばれ、炭素材料が用いられる。複数の活物質の間に導電材を付着させることで複数の活物質同士が電気的に接続され、導電性が高まる。なお、「付着」とは、活物質と導電材が物理的に密着していることのみを指しているのではなく、共有結合が生じる場合、ファンデルワールス力により結合する場合、活物質の表面の一部を導電材が覆う場合、活物質の表面凹凸に導電材がはまりこむ場合、互いに接していなくとも電気的に接続される場合などを含む概念とする。
【0063】
正極活物質層、負極活物質層、等の活物質層は、導電材を有することが好ましい。
【0064】
導電材としては、例えば、アセチレンブラック、およびファーネスブラックなどのカーボンブラック、人造黒鉛、および天然黒鉛などの黒鉛、カーボンナノファイバー、およびカーボンナノチューブなどの炭素繊維、ならびにグラフェン化合物のいずれか一種又は二種以上を用いることができる。
【0065】
炭素繊維としては、例えばメソフェーズピッチ系炭素繊維、等方性ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維を用いることができる。また炭素繊維として、カーボンナノファイバーまたはカーボンナノチューブなどを用いることができる。カーボンナノチューブは、例えば気相成長法などで作製することができる。
【0066】
また活物質層は導電材として銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金などの金属粉末または金属繊維、導電性セラミックス材料等を有してもよい。
【0067】
活物質層の総量に対する導電助剤の含有量は、1wt%以上10wt%以下が好ましく、1wt%以上5wt%以下がより好ましい。
【0068】
活物質と点接触するカーボンブラック等の粒状の導電材と異なり、グラフェン化合物は接触抵抗の低い面接触を可能とするものであるから、通常の導電材よりも少量で粒状の活物質とグラフェン化合物との電気伝導性を向上させることができる。よって、活物質の活物質層における比率を増加させることができる。これにより、二次電池の放電容量を増加させることができる。
【0069】
カーボンブラック、黒鉛、等の粒子状の炭素含有化合物または、カーボンナノチューブ等の繊維状の炭素含有化合物は微小な空間に入りやすい。微小な空間とは例えば、複数の活物質の間の領域等を指す。微小な空間に入りやすい炭素含有化合物と、複数の粒子にわたって導電性を付与できるグラフェンなどのシート状の炭素含有化合物と、を組み合わせて使用することにより、電極の密度を高め、優れた導電パスを形成することができる。
【0070】
[バインダ]
活物質層は、バインダを有することが好ましい。バインダは例えば、電解質と活物質とを束縛または固定する。またバインダは、電解質と炭素系材料、活物質と炭素系材料、複数の活物質同士、複数の炭素系材料、等を束縛または固定することができる。
【0071】
バインダとして、ポリスチレン、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル(ポリメチルメタクリレート、PMMA)、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、エチレンプロピレンジエンポリマー、ポリ酢酸ビニル、ニトロセルロース等の材料を用いることが好ましい。
【0072】
ポリイミドは熱的、機械的、化学的に非常に優れた安定な性質を有する。
【0073】
フッ素を有する高分子材料であるフッ素ポリマー、具体的にはポリフッ化ビニリデン(PVDF)などを用いることができる。PVDFは融点を134℃以上169℃以下の範囲に有する樹脂であり、熱安定性に優れた材料である。
【0074】
またバインダとして、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、スチレン-イソプレン-スチレンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体などのゴム材料を用いることが好ましい。またバインダとして、フッ素ゴムを用いることができる。
【0075】
また、バインダとしては、例えば水溶性の高分子を用いることが好ましい。水溶性の高分子としては、例えば多糖類などを用いることができる。多糖類としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、再生セルロースなどのセルロース誘導体または、澱粉などを用いることができる。また、これらの水溶性の高分子を、前述のゴム材料と併用して用いると、さらに好ましい。
【0076】
バインダは上記のうち複数を組み合わせて使用してもよい。
【0077】
<グラフェン化合物>
本明細書等においてグラフェン化合物とは、グラフェン、多層グラフェン、マルチグラフェン、酸化グラフェン、多層酸化グラフェン、マルチ酸化グラフェン、還元された酸化グラフェン、還元された多層酸化グラフェン、還元されたマルチ酸化グラフェン、グラフェン量子ドット等を含む。グラフェン化合物とは、炭素を有し、平板状、シート状等の形状を有し、炭素6員環で形成された二次元的構造を有するものをいう。該炭素6員環で形成された二次元的構造は炭素シートといってもよい。グラフェン化合物は官能基を有してもよい。またグラフェン化合物は屈曲した形状を有することが好ましい。またグラフェン化合物は丸まってカーボンナノファイバーのようになっていてもよい。
【0078】
本明細書等において酸化グラフェンとは例えば、炭素と、酸素を有し、シート状の形状を有し、官能基、特にエポキシ基、カルボキシ基またはヒドロキシ基を有するものをいう。
【0079】
本明細書等において還元された酸化グラフェンとは例えば、炭素と、酸素を有し、シート状の形状を有し、炭素6員環で形成された二次元的構造を有するものをいう。炭素シートといってもよい。還元された酸化グラフェンは1枚でも機能するが、複数枚が積層されていてもよい。還元された酸化グラフェンは、炭素の濃度が80atomic%より大きく、酸素の濃度が2atomic%以上15atomic%以下である部分を有することが好ましい。このような炭素濃度および酸素濃度とすることで、少量でも導電性の高い導電材として機能することができる。また還元された酸化グラフェンは、ラマンスペクトルにおけるGバンドとDバンドの強度比G/Dが1以上であることが好ましい。このような強度比である還元された酸化グラフェンは、少量でも導電性の高い導電材として機能することができる。
【0080】
酸化グラフェンを還元することにより、グラフェン化合物に孔を設けることができる場合がある。
【0081】
また、グラフェンの端部をフッ素で終端させた材料を用いてもよい。
【0082】
活物質層の縦断面においては、活物質層の内部領域において概略均一にシート状のグラフェン化合物が分散する。複数のグラフェン化合物は、複数の粒状の活物質を一部覆うように、あるいは複数の粒状の活物質の表面上に張り付くように形成されているため、互いに面接触している。
【0083】
ここで、複数のグラフェン化合物同士が結合することにより、網目状のグラフェン化合物シート(以下グラフェン化合物ネットまたはグラフェンネットと呼ぶ)を形成することができる。活物質をグラフェンネットが被覆する場合に、グラフェンネットは活物質同士を結合するバインダとしても機能することができる。よって、バインダの量を少なくすることができる、又は使用しないことができるため、電極体積または電極重量に占める活物質の比率を向上させることができる。すなわち、二次電池の充放電容量を増加させることができる。
【0084】
ここで、グラフェン化合物として酸化グラフェンを用い、活物質と混合して活物質層となる層を形成後、還元することが好ましい。つまり完成後の活物質層は還元された酸化グラフェンを有することが好ましい。グラフェン化合物の形成に、極性溶媒中での分散性が極めて高い酸化グラフェンを用いることにより、グラフェン化合物を活物質層の内部領域において概略均一に分散させることができる。均一に分散した酸化グラフェンを含有する分散媒から溶媒を揮発除去し、酸化グラフェンを還元するため、活物質層に残留するグラフェン化合物は部分的に重なり合い、互いに面接触する程度に分散していることで三次元的な導電パスを形成することができる。なお、酸化グラフェンの還元は、例えば熱処理により行ってもよいし、還元剤を用いて行ってもよい。
【0085】
また、予め、スプレードライ装置を用いることで、活物質の表面全体を覆って導電材であるグラフェン化合物を被膜として形成し、さらに活物質同士間をグラフェン化合物で電気的に接続し、導電パスを形成することもできる。
【0086】
またグラフェン化合物と共に、グラフェン化合物を形成する際に用いる材料を混合して活物質層に用いてもよい。たとえばグラフェン化合物を形成する際の触媒として用いる粒子を、グラフェン化合物と共に混合してもよい。グラフェン化合物を形成する際の触媒としてはたとえば、酸化ケイ素(SiO、SiO(x<2))、酸化アルミニウム、鉄、ニッケル、ルテニウム、イリジウム、プラチナ、銅、ゲルマニウム等を有する粒子が挙げられる。該粒子は平均粒子径(D50:メディアン径ともいう。)が1μm以下であると好ましく、100nm以下であることがより好ましい。
【0087】
[セパレータ]
正極と負極の間にセパレータを配置する。セパレータとしては、例えば、紙をはじめとするセルロースを有する繊維、不織布、ガラス繊維、セラミックス、或いはナイロン(ポリアミド)、ビニロン(ポリビニルアルコール系繊維)、ポリエステル、アクリル、ポリオレフィン、ポリウレタンを用いた合成繊維等で形成されたものを用いることができる。セパレータは袋状に加工し、正極または負極のいずれか一方を包むように配置することが好ましい。
【0088】
セパレータは直径20nm程度の大きさの孔、好ましくは直径6.5nm以上の大きさの孔、さらに好ましくは少なくとも直径2nmの孔を有する多孔質材料である。
【0089】
セパレータは多層構造であってもよい。例えばポリプロピレン、ポリエチレン等の有機材料フィルムに、セラミック系材料、フッ素系材料、ポリアミド系材料、またはこれらを混合したもの等をコートすることができる。セラミック系材料としては、例えば酸化アルミニウム粒子、酸化シリコン粒子等を用いることができる。フッ素系材料としては、例えばPVDF、ポリテトラフルオロエチレン等を用いることができる。ポリアミド系材料としては、例えばナイロン、アラミド(メタ系アラミド、パラ系アラミド)等を用いることができる。
【0090】
セラミック系材料をコートすると耐酸化性が向上するため、高電圧充放電の際のセパレータの劣化を抑制し、二次電池の信頼性を向上させることができる。またフッ素系材料をコートするとセパレータと電極が密着しやすくなり、出力特性を向上させることができる。ポリアミド系材料、特にアラミドをコートすると、耐熱性が向上するため、二次電池の安全性を向上させることができる。
【0091】
例えばポリプロピレンのフィルムの両面に酸化アルミニウムとアラミドの混合材料をコートしてもよい。また、ポリプロピレンのフィルムの、正極と接する面に酸化アルミニウムとアラミドの混合材料をコートし、負極と接する面にフッ素系材料をコートしてもよい。
【0092】
多層構造のセパレータを用いると、セパレータ全体の厚さが薄くても二次電池の安全性を保つことができるため、二次電池の体積あたりの容量を大きくすることができる。
【0093】
[電解質]
二次電池に液状の電解質を用いる場合、例えば、電解質としてエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン(DME)、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、メチルジグライム、アセトニトリル、ベンゾニトリル、テトラヒドロフラン、スルホラン、スルトン等のうちの1種、又はこれらのうちの2種以上を任意の組み合わせおよび比率で用いることができる。
【0094】
また、電解質の溶媒として、難燃性および難揮発性であるイオン液体(常温溶融塩)を一つ又は複数用いることで、二次電池の内部領域短絡または過充電等によって内部領域温度が上昇しても、二次電池の破裂または発火などを防ぐことができる。イオン液体は、カチオンとアニオンからなり、有機カチオンとアニオンとを含む。有機カチオンとして、四級アンモニウムカチオン、三級スルホニウムカチオン、および四級ホスホニウムカチオン等の脂肪族オニウムカチオン、ならびにイミダゾリウムカチオン、およびピリジニウムカチオン等の芳香族カチオンが挙げられる。また、アニオンとして、1価のアミド系アニオン、1価のメチド系アニオン、フルオロスルホン酸アニオン、パーフルオロアルキルスルホン酸アニオン、テトラフルオロボレートアニオン、パーフルオロアルキルボレートアニオン、ヘキサフルオロホスフェートアニオン、またはパーフルオロアルキルホスフェートアニオン等が挙げられる。
【0095】
特に、本発明の一態様の二次電池において、負極が有する第2の活物質としてシリコンを用いる場合、イオン液体を有する液状の電解質を用いることが好ましい。
【0096】
本発明の一態様の二次電池は例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどのアルカリ金属イオン又は、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン、ベリリウムイオン、マグネシウムイオンなどのアルカリ土類金属イオンをキャリアイオンとして有する。
【0097】
キャリアイオンとしてリチウムイオンを用いる場合には例えば、電解質はリチウム塩を含む。リチウム塩として例えば、LiPF、LiClO、LiAsF、LiBF、LiAlCl、LiSCN、LiBr、LiI、LiSO、Li10Cl10、Li12Cl12、LiCFSO、LiCSO、LiC(CFSO、LiC(CSO、LiN(CFSO、LiN(CSO)(CFSO)、LiN(CSO等を用いることができる。
【0098】
また、電解質はフッ素を含むことが好ましい。フッ素を含む電解質として例えば、フッ素化環状カーボネートの一種または二種以上と、リチウムイオンと、を有する電解質を用いることができる。フッ素化環状カーボネートは不燃性を向上させ、リチウムイオン二次電池の安全性を高めることができる。
【0099】
フッ素化環状カーボネートとして、フッ化エチレンカーボネート、例えば、モノフルオロエチレンカーボネート(炭酸フルオロエチレン、FEC、F1EC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC、F2EC)、トリフルオロエチレンカーボネート(F3EC)、テトラフルオロエチレンカーボネート(F4EC)などを用いることができる。なお、DFECには、シス-4,5、トランス-4,5などの異性体がある。電解質として、フッ素化環状カーボネートを一種または二種以上を用いてリチウムイオンを溶媒和させて、充放電時に電極が含む電解質内において輸送させることが低温で動作させる上で重要である。フッ素化環状カーボネートを少量の添加剤としてではなく、充放電時のリチウムイオンの輸送に寄与させると低温での動作が可能となる。二次電池内においてリチウムイオンは数個以上数十個程度の塊で移動する。
【0100】
フッ素化環状カーボネートを電解質に用いることで、電極が含む電解質内において溶媒和しているリチウムイオンが活物質粒子へ入る際に必要となる脱溶媒和のエネルギーを小さくする。この脱溶媒和のエネルギーを小さくできれば、低温範囲においてもリチウムイオンが活物質粒子へ挿入或いは脱離しやすくなる。なお、リチウムイオンは溶媒和した状態のまま移動することもあるが、配位する溶媒分子が入れ替わるホッピング現象が生じる場合もある。リチウムイオンが脱溶媒和しやすくなると、ホッピング現象による移動がしやすくなり、リチウムイオンの移動がしやすくなる場合がある。二次電池の充放電における電解質の分解生成物が、活物質の表面にまとわりつくことにより、二次電池の劣化が起こる懸念がある。しかしながら電解質がフッ素を有する場合には電解質がさらさらであり、電解質の分解生成物は活物質の表面に付着しづらくなる。このため、二次電池の劣化を抑制することができる。
【0101】
溶媒和したリチウムイオンは、電解質において、複数がクラスタを形成し、負極内、正極と負極の間、正極内、等を移動する場合がある。
【0102】
本明細書において、電解質は、固体、液体、または半固体の材料などを含む総称である。
【0103】
二次電池内に存在する界面、例えば活物質と電解質との界面で劣化が生じやすい。本発明の一態様の二次電池においては、フッ素を有する電解質を有することで、活物質と電解質との界面で生じうる劣化、代表的には電解質の変質または電解質の高粘度化を防ぐことができる。また、フッ素を有する電解質に対して、バインダまたはグラフェン化合物などをまとわりつかせる、または保持させる構成としてもよい。当該構成とすることで、電解質の粘度を低下させた状態、別言すると電解質のさらさらな状態を維持することが可能となり、二次電池の信頼性を向上させることができる。フッ素が2つついているDFECおよび4つ結合しているF4ECは、フッ素が1つ結合しているFECに比べて、粘度が低く、さらさらであり、リチウムとの配位結合が弱くなる。従って、活物質粒子に粘度の高い分解物が付着することを低減することができる。活物質粒子に粘度の高い分解物が付着する、或いはまとわりつくと活物質粒子の界面でリチウムイオンが移動しにくくなる。フッ素を有する電解質は、溶媒和することで活物質(正極活物質または負極活物質)表面につく分解物の生成を緩和する。また、フッ素を有する電解質を用いることにより、分解物が付着することを防ぐことでデンドライトの発生および成長を防止することができる。
【0104】
また、フッ素を有する電解質を主成分として用いることも特徴の一つであり、フッ素を有する電解質は、5体積%以上、10体積%以上、好ましくは30体積%以上100体積%以下とする。
【0105】
本明細書において、電解質の主成分とは、二次電池の電解質全体の5体積%以上であることを指している。また、ここでいう二次電池の電解質全体の5体積%以上とは二次電池の製造時に計量された電解質全体の占める割合を指している。また、二次電池を作製後に分解する場合には、複数種類の電解質がそれぞれどれくらいの割合であったかを定量することは困難であるが、ある一種類の有機化合物が電解質全体の5体積%以上であるかは判定することができる。
【0106】
フッ素を有する電解質を用いることで幅広い温度範囲、具体的には、-40℃以上150℃以下、好ましくは-40℃以上85℃以下で動作可能な二次電池を実現することができる。
【0107】
また、電解質にビニレンカーボネート、プロパンスルトン(PS)、tert-ブチルベンゼン(TBB)、リチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)、またスクシノニトリル、アジポニトリル等のジニトリル化合物などの添加剤を添加してもよい。添加剤の濃度は、例えば電解質全体に対して0.1体積%以上5体積%未満とすればよい。
【0108】
また、電解質は上記の他にγーブチロラクトン、アセトニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等の非プロトン性有機溶媒の一つまたは複数を有してもよい。
【0109】
また、電解質がゲル化される高分子材料を有することで、漏液性等に対する安全性が高まる。ゲル化される高分子材料の代表例としては、シリコーンゲル、アクリルゲル、アクリロニトリルゲル、ポリエチレンオキサイド系ゲル、ポリプロピレンオキサイド系ゲル、フッ素系ポリマーのゲル等がある。
【0110】
高分子材料としては、例えばポリエチレンオキシド(PEO)などのポリアルキレンオキシド構造を有するポリマー、PVDF、およびポリアクリロニトリル等、ならびにそれらを含む共重合体等を用いることができる。例えばPVDFとヘキサフルオロプロピレン(HFP)の共重合体であるPVDF-HFPを用いることができる。また、形成される高分子は、多孔質形状を有してもよい。
【0111】
また、上記構成は、液状の電解質を用いる二次電池の例を示したが特に限定されない。例えば、半固体電池および全固体電池を作製することもできる。
【0112】
本明細書等において液状の電解質を用いる二次電池の場合も、半固体電池の場合も正極と負極の間に配置される層を電解質層と呼ぶこととする。半固体電池の電解質層は成膜で形成される層と言え、液状の電解質層と区別することができる。
【0113】
また、本明細書等において半固体電池とは、電解質層、正極、負極の少なくとも一に、半固体材料を有する電池をいう。ここでいう半固体とは、固体材料の比が50%であることは意味しない。半固体とは、体積変化が小さいといった固体の性質を有しつつも、柔軟性を有する等の液体に近い性質も一部持ち合わせることを意味する。これらの性質を満たせば、単一の材料でも、複数の材料であってもよい。たとえば液体の材料を、多孔質の固体材料に浸潤させた物であってもよい。
【0114】
また本明細書等において、ポリマー電解質二次電池とは、正極と負極の間の電解質層にポリマーを有する二次電池をいう。ポリマー電解質二次電池は、ドライ(または真性)ポリマー電解質電池、およびポリマーゲル電解質電池を含む。
【0115】
電解質は、リチウムイオン導電性ポリマーとリチウム塩を有する。
【0116】
本明細書等においてリチウムイオン導電性ポリマーとは、リチウム等のカチオンの導電性を有するポリマーである。より具体的にはカチオンが配位できる極性基を有する高分子化合物である。極性基としては、エーテル基、エステル基、ニトリル基、カルボニル基、シロキサン等を有していることが好ましい。
【0117】
リチウムイオン導電性ポリマーとしてはたとえば、ポリエチレンオキシド(PEO)、主鎖としてポリエチレンオキシドを有する誘導体、ポリプロピレンオキシド、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリシロキサン、ポリフォスファゼン等を用いることができる。
【0118】
リチウムイオン導電性ポリマーは、分岐していてもよく、架橋していてもよい。また共重合体であってもよい。分子量はたとえば1万以上であることが好ましく、10万以上であることがより好ましい。
【0119】
リチウムイオン導電性ポリマーはポリマー鎖の部分運動(セグメント運動ともいう)により相互作用する極性基を変えながらリチウムイオンが移動していく。たとえばPEOならば、エーテル鎖のセグメント運動により相互作用する酸素を変えながらリチウムイオンが移動する。温度がリチウムイオン導電性ポリマーの融点または軟化点に近いか、それより高いときは結晶領域が溶解して非晶質領域が増大し、またエーテル鎖の運動が活発になるため、イオン伝導度が高くなる。そのためリチウムイオン導電性ポリマーとしてPEOを使用する場合は60℃以上で充放電を行うことが好ましい。
【0120】
シャノンのイオン半径(Shannon et al., Acta A 32(1976)751.)によれば、1価のリチウムイオンの半径は4配位のとき0.590×10-1nm、6配位のとき0.76×10-1nm、8配位のとき0.92×10-1nmである。また2価の酸素イオンの半径は、2配位のとき1.35×10-1nm、3配位のとき1.36×10-1nm、4配位のとき1.38×10-1nm、6配位のとき1.40×10-1nm、8配位のとき1.42×10-1nmである。隣り合うリチウムイオン導電性ポリマー鎖が有する極性基間の距離は、上記のようなイオン半径を保った状態でリチウムイオンおよび極性基が有する陰イオンが安定に存在できる距離以上であることが好ましい。かつリチウムイオンと極性基間の相互作用が十分に生じる距離であることが好ましい。ただし上述したようにセグメント運動が生じるため、常に一定の距離を保っている必要はない。リチウムイオンが通過するときに適切な距離であればよい。
【0121】
またリチウム塩としては、例えばリチウムと共に、リン、フッ素、窒素、硫黄、酸素、塩素、ヒ素、ホウ素、アルミニウム、臭素、ヨウ素のうち少なくとも一以上と、を有する化合物を用いることができる。たとえばLiPF、LiN(FSO(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、LiFSI)、LiClO、LiAsF、LiBF、LiAlCl、LiSCN、LiBr、LiI、LiSO、Li10Cl10、Li12Cl12、LiCFSO、LiCSO、LiC(CFSO、LiC(CSO、LiN(CFSO、LiN(CSO)(CFSO)、LiN(CSO、リチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)等のリチウム塩を一種、又はこれらのうちの二種以上を任意の組み合わせおよび比率で用いることができる。
【0122】
特にLiFSIを用いると、低温特性が良好となり好ましい。またLiFSI及びLiTFSAは、LiPF6等と比較して水と反応しにくい。そのためLiFSIを用いた電極および電解質層を作製する際の露点の制御が容易となる。たとえば水分を極力排除したアルゴンなどの不活性雰囲気、および露点を制御したドライルームだけでなく、通常の大気雰囲気でも取り扱う事ができる。そのため生産性が向上し好ましい。また、LiFSIおよびLiTFSAのような高解離性で可塑化効果のあるLi塩を用いた方が、エーテル鎖のセグメント運動を利用したリチウム伝導を用いる際は、広い温度範囲で使用できるため特に好ましい。
【0123】
有機溶媒がない、または非常に少ないことで、引火又は発火しにくい二次電池とすることができ、安全性が向上し好ましい。また、電解質が、有機溶媒がない、または非常に少ない電解質層であれば、セパレータを有さなくても十分な強度があり正極と負極を電気的に絶縁することが可能である。セパレータを用いなくてよいため、生産性の高い二次電池とすることができる。電解質と無機フィラーと、を有する電解質層とすれば、さらに強度が増し、より安全性の高い二次電池とすることができる。
【0124】
[外装体]
二次電池が有する外装体としては、例えばアルミニウムなどの金属材料および樹脂材料を用いることができる。また、フィルム状の外装体を用いることもできる。フィルムとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、アイオノマー、ポリアミド等の材料からなる膜上に、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケル等の可撓性に優れた金属薄膜を設け、さらに該金属薄膜上に外装体の外面としてポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の絶縁性合成樹脂膜を設けた三層構造のフィルムを用いることができる。また、フィルムとしてフッ素樹脂フィルムを用いることが好ましい。フッ素樹脂フィルムは酸、アルカリ、有機溶媒、等に対する安定性が高く、二次電池の反応などに伴う副反応、腐食、等を抑制し、優れた二次電池を実現することができる。フッ素樹脂フィルムとしてPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン:テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体)、FEP(パーフルオロエチレンプロペンコポリマー:テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体)、ETFE(エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー:テトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体)等が挙げられる。
【0125】
<負極活物質の一例>
負極活物質として、二次電池のキャリアイオンとの反応が可能な材料、キャリアイオンの挿入および脱離が可能な材料、キャリアイオンとなる金属との合金化反応が可能な材料、キャリアイオンとなる金属の溶解および析出が可能な材料、等を用いることが好ましい。
【0126】
以下に、負極活物質の一例について説明する。
【0127】
また、負極活物質として、シリコン、スズ、ガリウム、アルミニウム、ゲルマニウム、鉛、アンチモン、ビスマス、銀、亜鉛、カドミウム、インジウムから選ばれる一以上の元素を有する金属、または化合物を用いることができる。このような元素を用いた合金系化合物としては、例えば、MgSi、MgGe、MgSn、SnS、VSn、FeSn、CoSn、NiSn、CuSn、AgSn、AgSb、NiMnSb、CeSb、LaSn、LaCoSn、CoSb、InSb、SbSn等が挙げられる。
【0128】
また、シリコンに不純物元素としてリン、ヒ素、ホウ素、アルミニウム、ガリウム等を添加し、低抵抗化した材料を用いてもよい。また、リチウムをプリドープしたシリコン材料を用いても良い。プリドープの方法としてはフッ化リチウム、炭酸リチウム等とシリコンを混合してアニールする、リチウム金属とシリコンとのメカニカルアロイング、等の方法がある。また、シリコンを有する電極(シリコン電極)を形成した後に、リチウム金属等の電極と組み合わせて充放電反応によりリチウムをドープ(プリドープ)することができる。その後、ドープされたシリコン電極と、対極となる電極(例えば、プリドープされた負極に対して、正極)と、を組み合わせて二次電池を作製してもよい。
【0129】
負極活物質として例えば、シリコンナノ粒子を用いることができる。シリコンナノ粒子の平均粒子径D50は例えば、好ましくは5nm以上1μm未満、より好ましくは10nm以上300nm以下、さらに好ましくは10nm以上100nm以下である。
【0130】
シリコンナノ粒子は結晶性を有してもよい。また、シリコンナノ粒子が、結晶性を有する領域と、非晶質の領域と、を有してもよい。
【0131】
シリコンを有する材料として例えば、SiO(xは好ましくは2より小さく、より好ましくは0.5以上1.6以下)で表される材料を用いることができる。
【0132】
また負極活物質として例えば、黒鉛、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素、カーボンナノチューブ、カーボンブラックおよびグラフェン化合物などの炭素系材料を用いることができる。
【0133】
また、負極活物質として例えば、チタン、ニオブ、タングステンおよびモリブデンから選ばれる一以上の元素を有する酸化物を用いることができる。
【0134】
負極活物質として上記に示す金属、材料、化合物、等を複数組み合わせて用いることができる。
【0135】
負極活物質として例えば、SnO、SnO、二酸化チタン(TiO)、リチウムチタン酸化物(LiTi12)、リチウム-黒鉛層間化合物(Li)、五酸化ニオブ(Nb)、酸化タングステン(WO)、酸化モリブデン(MoO)等の酸化物を用いることができる。
【0136】
また、負極活物質として、リチウムと遷移金属の複窒化物である、LiN型構造をもつLi3-xN(M=Co、Ni、Cu)を用いることができる。例えば、Li2.6Co0.4は大きな充放電容量(900mAh/g)を示し好ましい。
【0137】
リチウムと遷移金属の複窒化物を負極材料として用いると、正極材料としてリチウムイオンを含まないV、Cr等の材料と組み合わせることができ好ましい。なお、正極材料にリチウムイオンを含む材料を用いる場合でも、あらかじめ正極材料に含まれるリチウムイオンを脱離させることで、負極材料としてリチウムと遷移金属の複窒化物を用いることができる。
【0138】
また、コンバージョン反応が生じる材料を負極活物質として用いることもできる。例えば、酸化コバルト(CoO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化鉄(FeO)等の、リチウムと合金化反応を行わない遷移金属酸化物を負極活物質に用いてもよい。コンバージョン反応が生じる材料としては、さらに、Fe、CuO、CuO、RuO、Cr等の酸化物、CoS0.89、NiS、CuS等の硫化物、Zn、CuN、Ge等の窒化物、NiP、FeP、CoP等のリン化物、FeF、BiF等のフッ化物でも起こる。なお、上記フッ化物の電位は高いため、正極材料として用いてもよい。
【0139】
また、負極活物質としてリチウムを用いることもできる。負極活物質としてリチウムを用いる場合、負極集電体上に箔状のリチウムを設けることができる。また、負極集電体上にリチウムを蒸着法及びスパッタリング法などの気相法によって設けてもよい。また、リチウムイオンを含有する溶液の中で、負極集電体上にリチウムを電気化学的手法によって析出させてもよい。
【0140】
負極活物質層が有することのできる導電材およびバインダとしては、正極活物質層が有することのできる導電材およびバインダと同様の材料を用いることができる。
【0141】
また、集電体として、正極集電体と同様の材料に加え、銅なども用いることができる。なお負極集電体は、リチウム等のキャリアイオンと合金化しない材料を用いることが好ましい。
【0142】
また、本発明の負極の別の形態として、負極活物質を有さない負極を用いることができる。負極活物質を有さない負極を用いた二次電池では、充電時において負極集電体上にリチウムが析出し、放電時において該負極集電体上のリチウムが溶出することができる。そのため、完全放電状態以外においては、負極集電体上にリチウムを有する形態となる。
【0143】
負極活物質を有さない負極を用いる場合、負極集電体上にリチウムの析出を均一化するための膜を有してもよい。リチウムの析出を均一化するための膜として、例えばリチウムイオン伝導性を有する固体電解質を用いることができる。固体電解質として、硫化粒系固体電解質、酸化物系固体電解質、及び高分子系固体電解質などを用いることができる。なかでも、高分子系固体電解質は負極集電体上に均一に膜形成することが比較的容易であるため、リチウムの析出を均一化するための膜として好適である。
【0144】
また、負極活物質を有さない負極を用いる場合、凹凸を有する負極集電体を用いることができる。凹凸を有する負極集電体を用いる場合、負極集電体の凹部は負極集電体が有するリチウムが析出し易い空洞となるため、リチウムが析出する際に、デンドライト状の形状となることを抑制することができる。
【0145】
<正極活物質の一例>
正極活物質として例えば、オリビン型の結晶構造、層状岩塩型の結晶構造、又はスピネル型の結晶構造を有するリチウムを有する複合酸化物等が挙げられる。
【0146】
本発明の一態様の正極活物質として層状の結晶構造を有する正極活物質を用いることが好ましい。
【0147】
層状の結晶構造として例えば、層状岩塩型の結晶構造が挙げられる。層状岩塩型の結晶構造を有するリチウムを有する複合酸化物として例えば、LiM(x>0かつy>0、より具体的には例えばy=2かつ0.8<x<1.2)で表されるリチウムを有する複合酸化物を用いることができる。ここでMは金属元素であり、好ましくはコバルト、マンガン、ニッケルおよび鉄から選ばれる一以上である。あるいはMは例えば、コバルト、マンガン、ニッケル、鉄、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ランタン、銅、亜鉛から選ばれる二以上である。
【0148】
LiMで表されるリチウムを有する複合酸化物として例えば、LiCoO、LiNiO、LiMnO等が挙げられる。また、LiNiCo1-x(0<x<1)で表されるNiCo系、LiMで表されるリチウムを有する複合酸化物として例えば、LiNiMn1-x(0<x<1)で表されるNiMn系、等が挙げられる。
【0149】
また、LiMOで表されるリチウムを有する複合酸化物として例えば、LiNiCoMn(x>0、y>0、0.8<x+y+z<1.2)で表されるNiCoMn系(NCMともいう)が挙げられる。具体的には例えば、0.1x<y<8xかつ0.1x<z<8xを満たすことが好ましい。一例として、x、yおよびzは、x:y:z=1:1:1またはその近傍の値を満たすことが好ましい。または一例として、x、yおよびzは、x:y:z=5:2:3またはその近傍の値を満たすことが好ましい。または一例として、x、yおよびzは、x:y:z=8:1:1またはその近傍の値を満たすことが好ましい。または一例として、x、yおよびzは、x:y:z=9:0.5:0.5またはその近傍の値を満たすことが好ましい。または一例として、x、yおよびzは、x:y:z=6:2:2またはその近傍の値を満たすことが好ましい。または一例として、x、yおよびzは、x:y:z=1:4:1またはその近傍の値を満たすことが好ましい。
【0150】
また、上記に示したNiCoMn系において、アルミニウム、マグネシウム、チタン及びホウ素の中から選ばれる何れか一以上を、0.1mol%以上3mol%以下、で有することが好ましい。
【0151】
また、層状岩塩型の結晶構造を有するリチウムを有する複合酸化物として例えば、LiMnO、LiMnO-LiMeO(MeはCo、Ni、Mn)等が挙げられる。
【0152】
上記のリチウムを有する複合酸化物に代表されるような層状の結晶構造を有する正極活物質を用いると、体積あたりのリチウム含有量が多く体積あたりの容量が高い二次電池を実現することができる場合がある。このような正極活物質では、充電に伴う体積あたりのリチウムの脱離量も多く、安定した充放電を行うためには、脱離した後の結晶構造の安定化が求められる。また充放電において結晶構造が崩れることにより高速充電または高速放電が阻害される場合がある。
【0153】
正極活物質としてLiMn等のマンガンを含むスピネル型の結晶構造を有するリチウム含有材料に、ニッケル酸リチウム(LiNiOまたはLiNi1-x(0<x<1)(M=Co、Al等))を混合すると好ましい。該構成とすることによって、二次電池の特性を向上させることができる。
【0154】
また、正極活物質として、組成式LiMnで表すことができるリチウムマンガン複合酸化物を用いることができる。ここで、元素Mは、リチウム、マンガン以外から選ばれた金属元素、またはシリコン、リンを用いることが好ましく、ニッケルであることがさらに好ましい。また、リチウムマンガン複合酸化物の粒子全体を測定する場合、放電時に0<a/(b+c)<2、かつc>0、かつ0.26≦(b+c)/d<0.5を満たすことが好ましい。なお、リチウムマンガン複合酸化物の粒子全体の金属、シリコン、リン等の組成は、例えばICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析計)を用いて測定することができる。またリチウムマンガン複合酸化物の粒子全体の酸素の組成は、例えばEDX(エネルギー分散型X線分析法)を用いて測定することが可能である。また、ICPMS分析と併用して、融解ガス分析、XAFS(X線吸収微細構造)分析の価数評価を用いることで求めることができる。なお、リチウムマンガン複合酸化物とは、少なくともリチウムとマンガンとを含む酸化物をいい、クロム、コバルト、アルミニウム、ニッケル、鉄、マグネシウム、モリブデン、亜鉛、インジウム、ガリウム、銅、チタン、ニオブ、シリコン、およびリンなどからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を含んでいてもよい。
【0155】
[正極活物質の構造]
図6乃至図10を用いて本発明の一態様の正極活物質について説明する。
【0156】
図6Aは本発明の一態様である正極活物質100の上面模式図である。図6A中のA-Bにおける断面模式図を図6Bに示す。また、図6Aの領域Cにおける断面模式図を図6Cに示す。
【0157】
<含有元素と分布>
正極活物質100は、リチウムと、遷移金属M1と、酸素と、添加元素Xと、を有する。正極活物質100はLiM1O(M1は、Fe、Ni、Co、Mnから選ばれる一以上)で表される複合酸化物に添加元素Xが添加されたものといってもよい。
【0158】
正極活物質100が有する遷移金属M1としては、リチウムとともに空間群R-3mに属する層状岩塩型の複合酸化物を形成しうる金属を用いることが好ましい。遷移金属M1として例えばマンガン、コバルト、ニッケルのうち少なくとも一を用いることができる。つまり正極活物質100が有する遷移金属としてコバルトのみを用いてもよいし、ニッケルのみを用いてもよいし、コバルトとマンガンの2種、またはコバルトとニッケルの2種を用いてもよいし、コバルト、マンガン、ニッケルの3種を用いてもよい。つまり正極活物質100は、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、コバルトの一部がマンガンで置換されたコバルト酸リチウム、コバルトの一部がニッケルで置換されたコバルト酸リチウム、ニッケル-マンガン-コバルト酸リチウム等の、リチウムと遷移金属を含む複合酸化物を有することができる。遷移金属としてコバルトに加えてニッケルを有すると、充電深度が0.8以上(x=0.2未満)になるような深い深度の充電状態において結晶構造がより安定になる場合があり好ましい。
【0159】
正極活物質100が有する添加元素Xとしては、ニッケル、コバルト、マグネシウム、カルシウム、塩素、フッ素、アルミニウム、マンガン、チタン、ジルコニウム、イットリウム、バナジウム、鉄、クロム、ニオブ、ランタン、ハフニウム、亜鉛、ケイ素、硫黄、リン、ホウ素、及びヒ素から選ばれる一以上を用いることが好ましい。これらの元素が、正極活物質100の結晶構造をより安定化させる場合がある。つまり正極活物質100は、マグネシウム及びフッ素を有するコバルト酸リチウム、マグネシウム、フッ素及びチタンを有するコバルト酸リチウム、マグネシウム及びフッ素を有するニッケル-コバルト酸リチウム、マグネシウム及びフッ素を有するコバルト-アルミニウム酸リチウム、ニッケル-コバルト-アルミニウム酸リチウム、マグネシウム及びフッ素を有するニッケル-コバルト-アルミニウム酸リチウム、マグネシウム及びフッ素を有するニッケル-マンガン-コバルト酸リチウム等を有することができる。なお、本明細書等において、添加元素Xを混合物、原料の一部などと置き換えて呼称してもよい。
【0160】
図6Bに示すように、正極活物質100は、表層部100aと、内部100bを有する。表層部100aは内部100bよりも添加元素Xの濃度が高いことが好ましい。また図6Bにグラデーションで示すように、添加元素Xは内部から表面に向かって高くなる濃度勾配を有することが好ましい。本明細書等において、表層部100aとは正極活物質100の表面から10nm程度までの領域をいう。ひび、及び/またはクラックにより生じた面も表面といってよく、図6Cに示すように当該表面から10nm程度までの領域を表層部100cと呼ぶ。また正極活物質100の表層部100a及び表層部100cより深い領域を、内部100bとする。
【0161】
本発明の一態様の正極活物質100では、充電により正極活物質100からリチウムが抜けても、コバルトと酸素の八面体からなる層状構造が壊れないよう、添加元素Xの濃度の高い表層部100a、すなわち粒子の外周部が補強している。
【0162】
また添加元素Xの濃度勾配は、正極活物質100の表層部100a全体に均質に存在することが好ましい。表層部100aの一部に補強があっても、補強のない部分が存在すれば、ない部分に応力が集中する恐れがあり好ましくないためである。粒子の一部に応力が集中すると、そこからクラック等の欠陥が生じ、正極活物質の割れ及び充放電容量の低下につながる恐れがある。
【0163】
マグネシウムは2価であり、層状岩塩型の結晶構造における遷移金属サイトよりもリチウムサイトに存在する方が安定であるため、リチウムサイトに入りやすい。マグネシウムが表層部100aのリチウムサイトに適切な濃度で存在することで、層状岩塩型の結晶構造を保持しやすくできる。またマグネシウムは酸素との結合力が強いため、マグネシウムの周囲の酸素の脱離を抑制することができる。マグネシウムは、適切な濃度であれば充放電に伴うリチウムの挿入及び脱離に悪影響を及ぼさず好ましい。しかしながら、過剰であるとリチウムの挿入及び脱離に悪影響が出る恐れがある。
【0164】
アルミニウムは3価であり、層状岩塩型の結晶構造における遷移金属サイトに存在しうる。アルミニウムは周囲のコバルトの溶出を抑制することができる。またアルミニウムは酸素との結合力が強いため、アルミニウムの周囲の酸素の脱離を抑制することができる。そのため添加元素Xとしてアルミニウムを有すると充放電を繰り返しても結晶構造が崩れにくい正極活物質100とすることができる。
【0165】
フッ素は1価の陰イオンであり、表層部100aにおいて酸素の一部がフッ素に置換されていると、リチウム脱離エネルギーが小さくなる。これは、リチウム脱離に伴うコバルトイオンの価数の変化がフッ素の有無で異なるためであり、例えばフッ素を有さない場合は3価から4価、フッ素を有する場合は2価から3価と、コバルトイオンの酸化還元電位が異なることによる。そのため正極活物質100の表層部100aにおいて酸素の一部がフッ素に置換されていると、フッ素近傍のリチウムイオンの脱離及び挿入がスムースに起きやすいと言える。そのため二次電池に用いたときに充放電特性、レート特性等が向上し好ましい。
【0166】
チタン酸化物は超親水性を有することが知られている。そのため、表層部100aにチタン酸化物を有する正極活物質100とすることで、極性の高い溶媒に対して濡れ性がよくなる可能性がある。二次電池としたときに正極活物質100と、極性の高い電解液との界面の接触が良好となり、抵抗の上昇を抑制できる可能性がある。なお、本明細書等において、電解液は、液体状の電解質に対応する。
【0167】
二次電池の充電電圧の上昇に伴い、正極の電圧は一般的に上昇する。本発明の一態様の正極活物質は、高い電圧においても安定な結晶構造を有する。充電状態において正極活物質の結晶構造が安定であることにより、充放電の繰り返しに伴う容量の低下を抑制することができる。
【0168】
また、二次電池のショートは二次電池の充電動作、及び/または放電動作における不具合を引き起こすのみでなく、発熱及び発火を招く恐れがある。安全な二次電池を実現するためには、高い充電電圧においてもショート電流が抑制されることが好ましい。本発明の一態様の正極活物質100は、高い充電電圧においてもショート電流が抑制される。そのため高い容量と安全性と、を両立した二次電池とすることができる。
【0169】
本発明の一態様の正極活物質100を用いた二次電池は好ましくは、高い容量、優れた充放電サイクル特性、及び安全性を同時に満たす。
【0170】
添加元素Xの濃度勾配は、例えば、エネルギー分散型X線分光法(EDX:Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)を用いて評価できる。EDX測定のうち、領域内を走査しながら測定し、領域内を2次元に評価することをEDX面分析と呼ぶ場合がある。また、EDXの面分析から、線状の領域のデータを抽出し、原子濃度について正極活物質粒子内の分布を評価することを線分析と呼ぶ場合がある。
【0171】
EDX面分析(例えば元素マッピング)により、正極活物質100の表層部100a、内部100b及び結晶粒界近傍等における、添加元素Xの濃度を定量的に分析することができる。また、EDX線分析により、添加元素Xの濃度の分布を分析することができる。
【0172】
正極活物質100についてEDX線分析をしたとき、表層部100aのマグネシウム濃度のピーク(濃度が最大となる位置)は、正極活物質100の表面から中心に向かった深さ3nmまでに存在することが好ましく、深さ1nmまでに存在することがより好ましく、深さ0.5nmまでに存在することがさらに好ましい。
【0173】
また正極活物質100が有するフッ素の分布は、マグネシウムの分布と重畳することが好ましい。そのためEDX線分析をしたとき、表層部100aのフッ素濃度のピーク(濃度が最大となる位置)は、正極活物質100の表面から中心に向かった深さ3nmまでに存在することが好ましく、深さ1nmまでに存在することがより好ましく、深さ0.5nmまでに存在することがさらに好ましい。
【0174】
なお、全ての添加元素Xが同様の濃度分布でなくてもよい。例えば正極活物質100が添加元素Xとしてアルミニウムを有する場合はマグネシウム及びフッ素と若干異なる分布となっていることが好ましい。例えばEDX線分析をしたとき、表層部100aのアルミニウム濃度のピークよりも、マグネシウム濃度のピークが表面に近いことが好ましい。例えばアルミニウム濃度のピークは正極活物質100の表面から中心に向かった深さ0.5nm以上20nm以下に存在することが好ましく、深さ1nm以上5nm以下に存在することがより好ましい。
【0175】
また正極活物質100についてEDX線分析またはEDX面分析をしたとき、粒界近傍において、遷移金属M1の原子数に対する添加元素Xの原子数の割合(X/M1)は、0.020以上0.50以下が好ましい。さらには0.025以上0.30以下が好ましい。さらには0.030以上0.20以下が好ましい。例えば添加元素Xがマグネシウム、遷移金属M1がコバルトであるときは、粒界近傍において、コバルトの原子数に対するマグネシウムの原子数の割合(Mg/Co)は、0.020以上0.50以下が好ましい。さらには0.025以上0.30以下が好ましい。さらには0.030以上0.20以下が好ましい。
【0176】
なお上述したように正極活物質100が有する添加元素は、過剰であるとリチウムの挿入及び脱離に悪影響が出る恐れがある。また二次電池としたときに抵抗の上昇、容量の低下等を招く恐れもある。一方、不足であると表層部100a全体に分布せず、結晶構造を保持する効果が不十分になる恐れがある。このように添加元素Xは正極活物質100において適切な濃度となるように調整する。
【0177】
そのため、例えば正極活物質100は、過剰な添加元素Xが偏在する領域を有していてもよい。このような領域の存在により、過剰な添加元素Xがそれ以外の領域から除かれ、正極活物質100の内部及び表層部の大部分において適切な添加元素Xの濃度とすることができる。正極活物質100の内部及び表層部の大部分において適切な添加元素Xの濃度とすることで、二次電池としたときの抵抗の上昇、容量の低下等を抑制することができる。二次電池の抵抗の上昇を抑制できることは、特に高レートでの充放電において極めて好ましい特性である。
【0178】
また過剰な添加元素Xが偏在している領域を有する正極活物質100では、作製工程においてある程度過剰に添加元素Xを混合することが許容される。そのため生産におけるマージンが広くなり好ましい。
【0179】
なお本明細書等において、偏在とはある元素の濃度が、ある領域Aと、ある領域Bとで異なることをいう。偏析、析出、不均一、偏り、濃度が高いまたは濃度が低い、などといってもよい。
【0180】
<結晶構造>
コバルト酸リチウム(LiCoO)などの層状岩塩型の結晶構造を有する材料は、放電容量が高く、二次電池の正極活物質として優れることが知られている。層状岩塩型の結晶構造を有する材料として例えば、LiM1O(M1は、Fe、Ni、Co、Mnから選ばれる一以上)で表される複合酸化物が挙げられる。
【0181】
遷移金属化合物におけるヤーン・テラー効果は、遷移金属のd軌道の電子の数により、その効果の強さが異なることが知られている。
【0182】
ニッケルを有する化合物においては、ヤーン・テラー効果により歪みが生じやすい場合がある。よって、LiNiOにおいて充電深度が0.8以上(x=0.2未満)になるような深い深度の充電と、放電とを繰り返し行った場合、歪みに起因する結晶構造の崩れが生じる懸念がある。LiCoOにおいてはヤーン・テラー効果の影響が小さいことが示唆され、充電深度が0.8以上(x=0.2未満)になるような深い深度の充電と、放電とを繰り返した場合の耐性がより優れる場合があり好ましい。
【0183】
図7乃至図10を用いて、正極活物質について説明する。図7乃至図10では、正極活物質が有する遷移金属としてコバルトを用いる場合について述べる。
【0184】
<従来の正極活物質>
図9に示す正極活物質は、ハロゲン及びマグネシウムが添加されないコバルト酸リチウム(LiCoO、LCO)である。図9に示すコバルト酸リチウムは、充電深度によって結晶構造が変化する。換言すると、LixCoOと表記する場合において、リチウムサイトのリチウムの占有率xに応じて結晶構造が変化する。
【0185】
図9に示すように、x=1の状態(放電状態)であるコバルト酸リチウムは、空間群R-3mの結晶構造を有する領域を有し、ユニットセル中にCoO層が3層存在する。そのためこの結晶構造を、O3型結晶構造と呼ぶ場合がある。なお、CoO層とはコバルトに酸素が6配位した8面体構造が、稜共有の状態で平面方向に連続した構造をいうこととする。
【0186】
また従来のコバルト酸リチウムは、x=0.5程度のときリチウムの対称性が高まり、単斜晶系の空間群P2/mに帰属する結晶構造を有することが知られている。この構造は、ユニットセル中にCoO層が1層存在する。そのため、単斜晶O1型結晶構造と呼ぶ場合がある。またx=0のときは、三方晶系の空間群P-3m1の結晶構造を有し、ユニットセル中にCoO層が1層存在する。そのためこの結晶構造を、三方晶O1型結晶構造と呼ぶ場合がある。
【0187】
またx=0.12程度のときのコバルト酸リチウムは、空間群R-3mの結晶構造を有する。この構造は、P-3m1(O1)のようなCoOの構造と、R-3m(O3)のようなLiCoOの構造と、が交互に積層された構造ともいえる。そのためこの結晶構造を、H1-3型結晶構造と呼ぶ場合がある。リチウムの挿入脱離にはムラが生じうるため、実験的にはx=0.25程度からH1-3型結晶構造が観測される。なお、実際にはH1-3型結晶構造は、ユニットセルあたりのコバルト原子の数が他の構造の2倍となっている。しかし図9をはじめ本明細書では、他の構造と比較しやすくするためH1-3型結晶構造のc軸をユニットセルの1/2にした図で示すこととする。
【0188】
H1-3型結晶構造は一例として、ユニットセルにおけるコバルトと酸素の座標を、Co(0、0、0.42150±0.00016)、O1(0、0、0.27671±0.00045)、O2(0、0、0.11535±0.00045)と表すことができる。O1及びO2はそれぞれ酸素原子である。このようにH1-3型結晶構造は、1つのコバルト及び2つの酸素を用いたユニットセルにより表される。一方、後述するように、本発明の一態様のO3’型結晶構造は好ましくは、1つのコバルト及び1つの酸素を用いたユニットセルにより表される。これは、O3’型結晶構造の場合とH1-3型構造の場合では、コバルトと酸素との対称性が異なり、O3’型結晶構造の方が、H1-3型構造に比べてO3の構造からの変化が小さいことを示す。正極活物質が有する結晶構造をいずれのユニットセルを用いて表すのがより好ましいか、の選択は例えば、XRDパターンのリートベルト解析において、GOF(goodness of fit)の値がより小さくなるように選択すればよい。
【0189】
充電電圧がリチウム金属の酸化還元電位を基準に4.6V以上になるような高電圧の充電、あるいはx=0.24以下になるような深い深度の充電と、放電とを繰り返すと、コバルト酸リチウムはH1-3型結晶構造と、放電状態のR-3m(O3)の構造と、の間で結晶構造の変化(つまり、非平衡な相変化)を繰り返すことになる。
【0190】
しかしながら、これらの2つの結晶構造は、CoO層のずれが大きい。図9に点線及び矢印で示すように、H1-3型結晶構造では、CoO層がR-3m(O3)から大きくずれている。このようなダイナミックな構造変化は、結晶構造の安定性に悪影響を与えうる。
【0191】
さらに体積の差も大きい。同数のコバルト原子あたりで比較した場合、H1-3型結晶構造と放電状態のO3型結晶構造の体積の差は3.0%以上である。
【0192】
加えて、H1-3型結晶構造が有する、P-3m1(O1)のようなCoO層が連続した構造は不安定である可能性が高い。
【0193】
そのため、充電深度が0.8以上(x=0.2未満)になるような深い深度の充電と、放電とを繰り返すとコバルト酸リチウムの結晶構造は崩れていく。結晶構造の崩れが、サイクル特性の悪化を引き起こす。これは、結晶構造が崩れることで、リチウムが安定して存在できるサイトが減少し、またリチウムの挿入脱離が難しくなるためだと考えられる。
【0194】
<本発明の一態様の正極活物質>
<内部>
本発明の一態様の正極活物質100は、充電深度が0.8以上になるような深い深度の充電と、放電との繰り返しにおいて、CoO層のずれを小さくすることができる。さらに、体積の変化を小さくすることができる。よって、本発明の一態様の正極活物質は、優れたサイクル特性を実現することができる。また、本発明の一態様の正極活物質は、充電深度が0.8以上になるような深い深度の充電状態において安定な結晶構造を取り得る。よって、本発明の一態様の正極活物質は、充電深度が0.8以上になるような深い深度の充電状態を保持した場合において、ショートが生じづらい場合がある。そのような場合には安全性がより向上するため、好ましい。
【0195】
本発明の一態様の正極活物質では、十分に放電された状態と、充電深度が0.8以上になるような深い深度まで充電された状態における、結晶構造の変化及び同数の遷移金属原子あたりで比較した場合の体積の差が小さい。
【0196】
正極活物質100の充放電前後の結晶構造を、図7に示す。正極活物質100はリチウムと、遷移金属としてコバルトと、酸素と、を有する複合酸化物である。上記に加えて添加元素Xとしてマグネシウムを有することが好ましい。また添加元素Xとしてフッ素、塩素等のハロゲンを更に有することが好ましい。
【0197】
図7のx=1(放電状態)の結晶構造は、図9と同じR-3m(O3)である。一方、本発明の一態様の正極活物質100は、十分に充電された充電状態の場合、H1-3型結晶構造とは異なる構造の結晶を有する。本構造は、空間群R-3mに帰属され、コバルト、マグネシウム等のイオンが酸素6配位位置を占める。また、本構造のCoO層の対称性はO3型と同じである。よって、本構造を本明細書等ではO3’型の結晶構造と呼ぶ。なお、図7に示されているO3’型結晶構造の図では、コバルト原子の対称性と酸素原子の対称性について説明するために、リチウムの表示を省略しているが、実際はCoO層の間にコバルトに対して例えば20原子%以下のリチウムが存在する。また、O3型結晶構造及びO3’型結晶構造のいずれの場合も、CoO層の間、つまりリチウムサイトに、希薄にマグネシウムが存在することが好ましい。また、酸素サイトに、ランダムかつ希薄に、フッ素等のハロゲンが存在することが好ましい。
【0198】
なおO3’型結晶構造では、リチウムなどの軽元素は酸素4配位位置を占める場合がありうる。
【0199】
またO3’型結晶構造は、層間にランダムにリチウムを有するが、CdCl2型の結晶構造に類似する結晶構造であるということもできる。このCdCl型に類似した結晶構造は、ニッケル酸リチウムをx=0.06まで充電したとき(Li0.06NiO)の結晶構造と近いが、純粋なコバルト酸リチウム、またはコバルトを多く含む層状岩塩型の正極活物質では通常この結晶構造を取らないことが知られている。
【0200】
本発明の一態様の正極活物質100では、充電深度が0.8以上になるような深い深度まで充電し多くのリチウムが脱離したときの、結晶構造の変化が、従来の正極活物質よりも抑制されている。例えば、図7中に点線で示すように、これらの結晶構造ではCoO層のずれがほとんどない。
【0201】
より詳細に説明すれば、本発明の一態様の正極活物質100は、充電電圧が高い場合にも構造の安定性が高い。例えば、従来の正極活物質においてはH1-3型結晶構造となる充電電圧、例えばリチウム金属の電位を基準として4.6V程度の電圧においてもR-3m(O3)の結晶構造を保持できる充電電圧の領域が存在し、さらに充電電圧を高めた領域、例えばリチウム金属の電位を基準として4.65V乃至4.7V程度の電圧においてもO3’型結晶構造を取り得る領域が存在する。さらに充電電圧を高めるとようやく、H1-3型結晶が観測される場合がある。なお、二次電池において例えば負極活物質として黒鉛を用いる場合には、例えば二次電池の電圧が4.3V以上4.5V以下においてもR-3m(O3)の結晶構造を保持できる充電電圧の領域が存在し、さらに充電電圧を高めた領域、例えばリチウム金属の電位を基準として4.35V以上4.55V以下においてもO3’型結晶構造を取り得る領域が存在する。
【0202】
そのため、本発明の一態様の正極活物質100においては、充電深度が0.8以上になるような深い深度の充電と、放電とを繰り返しても結晶構造が崩れにくい。
【0203】
また正極活物質100では、x=1のO3型結晶構造と、x=0.2のO3’型結晶構造のユニットセルあたりの体積の差は2.5%以下、より詳細には2.2%以下である。
【0204】
なおO3’型結晶構造は、ユニットセルにおけるコバルトと酸素の座標を、Co(0,0,0.5)、O(0,0,x)、0.20≦x≦0.25の範囲内で示すことができる。
【0205】
CoO2層間、つまりリチウムサイトにランダムかつ希薄に存在する添加元素X、例えばマグネシウムは、CoO2層のずれを抑制する効果がある。そのためCoO層間にマグネシウムが存在すると、O3’型結晶構造になりやすい。そのためマグネシウムは本発明の一態様の正極活物質100の粒子の少なくとも一部の表層部に分布しており、さらに正極活物質100の粒子の表層部の全体に分布していることが好ましい。またマグネシウムを正極活物質100の粒子の表層部の全体に分布させるために、本発明の一態様の正極活物質100の作製工程において、加熱処理を行うことが好ましい。
【0206】
しかしながら、加熱処理の温度が高すぎると、カチオンミキシングが生じて添加元素X、例えばマグネシウムがコバルトサイトに入る可能性が高まる。コバルトサイトに存在するマグネシウムは、高電圧充電状態において、R-3mの構造を保つ効果がない。さらに、加熱処理の温度が高すぎると、コバルトが還元されて2価になってしまう、リチウムが蒸散または昇華するなどの悪影響も懸念される。
【0207】
そこで、マグネシウムを正極活物質100の粒子の表層部の全体に分布させるための加熱処理よりも前に、コバルト酸リチウムにフッ素化合物等のハロゲン化合物を加えておくことが好ましい。ハロゲン化合物を加えることでコバルト酸リチウムの融点降下が起こる。融点降下させることで、カチオンミキシングが生じにくい温度で、マグネシウムを正極活物質100の粒子の表層部の全体に分布させることが容易となる。さらにフッ素化合物が存在すれば、電解液が分解して生じたフッ酸に対する耐食性が向上することが期待できる。
【0208】
なお、マグネシウム濃度を所望の値以上に高くすると、結晶構造の安定化への効果が小さくなってしまう場合がある。マグネシウムが、リチウムサイトに加えて、コバルトサイトにも入るようになるためと考えられる。本発明の一態様の正極活物質が有するマグネシウムの原子数は、コバルト等の遷移金属の原子数の0.001倍以上0.1倍以下が好ましく、0.01倍より大きく0.04倍未満がより好ましく、0.02倍程度がさらに好ましい。ここで示すマグネシウムの濃度は例えば、ICP-MS等を用いて正極活物質の全体の元素分析を行った値であってもよいし、正極活物質100の作製の過程における原料の配合の値に基づいてもよい。
【0209】
コバルト酸リチウムにコバルト以外の金属(以下、添加元素X)として、例えばニッケル、アルミニウム、マンガン、チタン、バナジウム及びクロムから選ばれる一以上の金属を添加してもよく、特にニッケル及びアルミニウムの一以上を添加することが好ましい。マンガン、チタン、バナジウム及びクロムは4価であることで安定な場合があり、構造安定性への寄与が高い場合がある。添加元素Xを添加することにより、充電深度が0.8以上になるような深い深度の充電状態において結晶構造がより安定になる場合がある。ここで、本発明の一態様の正極活物質において、添加元素Xは、コバルト酸リチウムの結晶性を大きく変えることのない濃度で添加されることが好ましい。例えば、前述のヤーン・テラー効果等を発現しない程度の量であることが好ましい。
【0210】
ニッケル、マンガンをはじめとする遷移金属及びアルミニウムはコバルトサイトに存在することが好ましいが、一部がリチウムサイトに存在していてもよい。またマグネシウムはリチウムサイトに存在することが好ましい。酸素は、一部がフッ素と置換されていてもよい。
【0211】
本発明の一態様の正極活物質のマグネシウム濃度が高くなるのに伴って正極活物質の容量が減少することがある。その要因として例えば、リチウムサイトにマグネシウムが入ることにより、充放電に寄与するリチウム量が減少する可能性が考えられる。本発明の一態様の正極活物質が添加元素Xとして、マグネシウムに加えて、ニッケルを有することにより、充放電サイクル特性を高めることができる場合がある。また本発明の一態様の正極活物質が添加元素Xとして、マグネシウムに加えて、アルミニウムを有することにより、充放電サイクル特性を高めることができる場合がある。また、添加元素Xとして、マグネシウム、ニッケル及びアルミニウムを有する本発明の一態様の正極活物質とすることにより、充放電サイクル特性を高めることができる場合がある。
【0212】
以下に、添加元素Xとして、マグネシウム、ニッケル及びアルミニウムを有する本発明の一態様の正極活物質の元素の濃度を検討する。
【0213】
本発明の一態様の正極活物質が有するニッケルの原子数は、コバルトの原子数の10%以下が好ましく、7.5%以下がより好ましく、0.05%以上4%以下がさらに好ましく、0.1%以上2%以下が特に好ましい。ここで示すニッケルの濃度は例えば、ICP-MS等を用いて正極活物質の全体の元素分析を行った値であってもよいし、正極活物質の作製の過程における原料の配合の値に基づいてもよい。
【0214】
充電深度が0.8以上になるような深い深度まで充電した状態を長時間保持すると、正極活物質の構成元素が電解液に溶出し、結晶構造が崩れる恐れが生じる。しかし上記の割合でニッケルを有することで、正極活物質100からの構成元素の溶出を抑制できる場合がある。
【0215】
本発明の一態様の正極活物質が有するアルミニウムの原子数は、コバルトの原子数の0.05%以上4%以下が好ましく、0.1%以上2%以下がより好ましい。ここで示すアルミニウムの濃度は例えば、ICP-MS等を用いて正極活物質の全体の元素分析を行った値であってもよいし、正極活物質の作製の過程における原料の配合の値に基づいてもよい。
【0216】
また、本発明の一態様の添加元素Xを有する正極活物質は、添加元素Xとしてリンを用いることが好ましい。また、本発明の一態様の正極活物質は、リンと酸素を含む化合物を有することがより好ましい。
【0217】
本発明の一態様の正極活物質が添加元素Xとしてリンを含む化合物を有することにより、高温かつ充電深度が0.8以上になるような深い深度の充電状態を長時間保持した場合において、ショートが生じづらい場合がある。
【0218】
本発明の一態様の正極活物質が添加元素Xとしてリンを有する場合には、電解液の分解により発生したフッ化水素とリンが反応し、電解液中のフッ化水素濃度が低下する可能性がある。
【0219】
電解液がリチウム塩としてLiPFを有する場合、加水分解により、フッ化水素が発生する場合がある。また、正極の構成要素として用いられるPVDFとアルカリとの反応によりフッ化水素が発生する場合もある。電解液中のフッ化水素濃度が低下することにより、集電体の腐食、及び/または被膜はがれを抑制できる場合がある。また、PVDFのゲル化、及び/または不溶化による接着性の低下を抑制できる場合がある。
【0220】
本発明の一態様の正極活物質100が添加元素Xとしてリン及びマグネシウムを有する場合、充電深度が0.8以上になるような深い深度の充電状態における安定性が極めて高い。添加元素Xとしてリン及びマグネシウムを有する場合、リンの原子数は、コバルトの原子数の1%以上20%以下が好ましく、2%以上10%以下がより好ましく、3%以上8%以下がさらに好ましく、加えてマグネシウムの原子数は、コバルトの原子数の0.1%以上10%以下が好ましく、0.5%以上5%以下がより好ましく、0.7%以上4%以下がより好ましい。ここで示すリン及びマグネシウムの濃度は例えば、ICP-MS等を用いて正極活物質100の全体の元素分析を行った値であってもよいし、正極活物質100の作製の過程における原料の配合の値に基づいてもよい。
【0221】
正極活物質100がクラックを有する場合、その内部にリン、より具体的には例えばリンと酸素を含む化合物が存在することにより、クラックの進行が抑制される場合がある。
【0222】
なお図7に示すように、O3型結晶構造とO3’型結晶構造では酸素原子の対称性がわずかに異なる。具体的にはO3型結晶構造では酸素原子が点線に沿って整列しているのに対して、O3’型結晶構造の酸素原子は厳密には整列しない。これはO3’型結晶構造ではリチウムの減少に伴い4価のコバルトが増加し、ヤーン・テラーひずみが大きくなりCoOの8面体構造がゆがんだことによる。またリチウムの減少に伴いCoO層の酸素同士の反発が強くなったことも影響する。
【0223】
<表層部100a>
マグネシウムは本発明の一態様の正極活物質100の粒子の表層部100aの全体に分布していることが好ましく、これに加えて表層部100aのマグネシウム濃度が、全体の平均よりも高いことが好ましい。例えば、XPS等で測定される表層部100aのマグネシウム濃度が、ICP-MS等で測定される全体の平均のマグネシウム濃度よりも高いことが好ましい。
【0224】
また、本発明の一態様の正極活物質100がコバルト以外の元素、例えばニッケル、アルミニウム、マンガン、鉄及びクロムから選ばれる一以上の金属を有する場合において、該金属の粒子表面近傍における濃度が、全体の平均よりも高いことが好ましい。例えば、XPS等で測定される表層部100aのコバルト以外の元素の濃度が、ICP-MS等で測定される粒子全体における該元素の濃度よりも高いことが好ましい。
【0225】
正極活物質100の表層部100aは、いうなれば全て結晶欠陥である上に、充電時には表面からリチウムが抜けていくので内部よりもリチウム濃度が低くなりやすい部分である。そのため、不安定になりやすく結晶構造が崩れやすい。表層部100aのマグネシウム濃度が高ければ、結晶構造の変化をより効果的に抑制することができる。また表層部100aのマグネシウム濃度が高いと、電解液が分解して生じたフッ酸に対する耐食性が向上することも期待できる。
【0226】
またフッ素等のハロゲンも、本発明の一態様の正極活物質100の表層部100aにおける濃度が、全体の平均よりも高いことが好ましい。電解液に接する領域である表層部100aにハロゲンが存在することで、フッ酸に対する耐食性を効果的に向上させることができる。
【0227】
このように本発明の一態様の正極活物質100の表層部100aは内部100bよりも、添加元素、例えばマグネシウム及びフッ素の濃度が高い、内部100bと異なる組成であることが好ましい。またその組成として常温で安定な結晶構造をとることが好ましい。そのため、表層部100aは内部100bと異なる結晶構造を有していてもよい。例えば、本発明の一態様の正極活物質100の表層部100aの少なくとも一部が、岩塩型の結晶構造を有していてもよい。また表層部100aと内部100bが異なる結晶構造を有する場合、表層部100aと内部100bの結晶の配向が概略一致していることが好ましい。
【0228】
層状岩塩型結晶、および岩塩型結晶の陰イオンは立方最密充填構造(面心立方格子構造)をとる。O3’型結晶も、陰イオンは立方最密充填構造をとると推定される。なお、本明細書等では、陰イオンがABCABCのように3層が互いにずれて積み重なる構造であれば、立方最密充填構造と呼ぶこととする。そのため陰イオンは厳密に立方格子でなくてもよい。同時に現実の結晶は必ず欠陥を有するため、分析結果が必ずしも理論通りでなくてもよい。たとえば電子回折またはTEM像等のFFT(高速フーリエ変換)において、理論上の位置と若干異なる位置にスポットが現れてもよい。たとえば理論上の位置との方位が5度以下、または2.5度以下であれば立方最密充填構造をとるといってよい。
【0229】
層状岩塩型結晶と岩塩型結晶が接するとき、陰イオンにより構成される立方最密充填構造の向きが揃う結晶面が存在する。
【0230】
または、以下のように説明することもできる。立方晶の結晶構造の(111)面における陰イオンは三角形形状の配列を有する。層状岩塩型は空間群R-3mであって、菱面体構造であるが、構造の理解を容易にするため一般に複合六方格子で表現され、層状岩塩型の(0001)面は六角格子を有する。立方晶(111)の三角格子は、層状岩塩型の(0001)面の六角格子と同様の原子配列を有する。両者の格子が整合性を持つことを、立方最密充填構造の向きが揃うということができる。
【0231】
ただし、層状岩塩型結晶およびO3’型結晶の空間群はR-3mであり、岩塩型結晶の空間群Fm-3m(一般的な岩塩型結晶の空間群)およびFd-3m(最も単純な対称性を有する岩塩型結晶の空間群)とは異なるため、上記の条件を満たす結晶面のミラー指数は層状岩塩型結晶およびO3’型結晶と、岩塩型結晶では異なる。本明細書では、層状岩塩型結晶、O3’型結晶、および岩塩型結晶において、陰イオンにより構成される立方最密充填構造の向きが揃うとき、結晶の配向が概略一致する、と言う場合がある。
【0232】
二つの領域の結晶の配向が概略一致することは、TEM(透過電子顕微鏡)像、STEM(走査透過電子顕微鏡)像、HAADF-STEM(高角散乱環状暗視野走査透過電子顕微鏡)像、ABF-STEM(環状明視野走査透過電子顕微鏡)像、電子回折、TEM像等のFFT等から判断することができる。X線回折(XRD)、中性子線回折等も判断の材料にすることができる。
【0233】
<粒界>
本発明の一態様の正極活物質100が有する添加元素Xは、内部にランダムかつ希薄に存在していてもよいが、一部は粒界に偏析していることがより好ましい。
【0234】
換言すれば、本発明の一態様の正極活物質100の結晶粒界及びその近傍の添加元素Xの濃度も、内部の他の領域よりも高いことが好ましい。
【0235】
結晶粒界は面欠陥として考えることができる。そのため、粒子表面と同様に、不安定になりやすく結晶構造の変化が始まりやすい。そのため、結晶粒界及びその近傍の添加元素Xの濃度が高ければ、結晶構造の変化をより効果的に抑制することができる。
【0236】
また、結晶粒界及びその近傍の添加元素Xの濃度が高い場合、本発明の一態様の正極活物質100の粒子の結晶粒界に沿ってクラックが生じた場合でも、クラックにより生じた表面の近傍で添加元素Xの濃度が高くなる。そのためクラックが生じた後の正極活物質においてもフッ酸に対する耐食性を高めることができる。
【0237】
なお本明細書等において、結晶粒界の近傍とは、粒界から10nm程度までの領域をいうこととする。
【0238】
<粒径>
本発明の一態様の正極活物質100の粒径が大きすぎるとリチウムの拡散が難しくなる、又は集電体に塗工したときに活物質層の表面が粗くなりすぎる、等の問題がある。一方、小さすぎると、集電体への塗工時に活物質層を担持しにくくなる、電解液との反応が過剰に進む等の問題点も生じる。そのため、平均粒子径D50が、1μm以上100μm以下が好ましく、2μm以上40μm以下であることがより好ましく、5μm以上30μm以下がさらに好ましい。
【0239】
<分析方法>
ある正極活物質が、充電深度が0.8以上になるような深い深度まで充電されたときO3’型結晶構造を示す本発明の一態様の正極活物質100であるか否かは、充電深度が0.8以上になるような深い深度まで充電された正極を、XRD、電子回折、中性子線回折、電子スピン共鳴(ESR)、核磁気共鳴(NMR)等を用いて解析することで判断できる。特にXRDは、正極活物質が有するコバルト等の遷移金属の対称性を高分解能で解析できる、結晶性の高さ及び結晶の配向性を比較できる、格子の周期性歪み及び結晶子サイズの解析ができる、二次電池を解体して得た正極をそのまま測定しても十分な精度を得られる、等の点で好ましい。
【0240】
本発明の一態様の正極活物質100は、これまで述べたように充電深度が0.8以上になるような深い深度まで充電した状態と放電状態とで結晶構造の変化が少ないという特徴を有する。充電深度が0.8以上になるような深い深度まで充電した状態で、放電状態との変化が大きな結晶構造が50wt%以上を占める材料は、充電深度が0.8以上になるような深い深度の充電と、放電とに耐えられないため好ましくない。そして添加元素を添加するだけでは目的の結晶構造をとらない場合があることに注意が必要である。例えばマグネシウム及びフッ素を有するコバルト酸リチウム、という点で共通していても、充電深度が0.8以上になるような深い深度まで充電した状態でO3’型結晶構造が60wt%以上になる場合と、H1-3型結晶構造が50wt%以上を占める場合と、がある。また、所定の電圧では、O3’型結晶構造がほぼ100wt%になり、さらに当該所定の電圧をあげるとH1-3型結晶構造が生じる場合もある。そのため、本発明の一態様の正極活物質100であるか否かを判断するには、XRDをはじめとする結晶構造についての解析が必要である。
【0241】
ただし、充電深度が0.8以上になるような深い深度まで充電した状態または放電状態の正極活物質は、大気に触れると結晶構造の変化を起こす場合がある。例えばO3’型結晶構造からH1-3型結晶構造に変化する場合がある。そのため、サンプルはすべてアルゴン雰囲気等の不活性雰囲気でハンドリングすることが好ましい。
【0242】
<充電方法>
ある複合酸化物が、本発明の一態様の正極活物質100であるか否かを判断するための充電深度が0.8以上になるような深い深度の充電は、例えば対極リチウムでコインセル(CR2032タイプ、直径20mm高さ3.2mm)を作製して充電することができる。
【0243】
より具体的には、正極には、正極活物質、導電材及びバインダを混合したスラリーを、アルミニウム箔の正極集電体に塗工したものを用いることができる。
【0244】
対極にはリチウム金属を用いることができる。なお対極にリチウム金属以外の材料を用いたときは、二次電池の電位と正極の電位が異なる。本明細書等における電圧及び電位は、特に言及しない場合、正極の電位である。
【0245】
電解液が有する電解質には、1mol/Lの六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を用い、電解液には、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)がEC:DEC=3:7(体積比)、ビニレンカーボネート(VC)が2wt%で混合されたものを用いることができる。
【0246】
セパレータには厚さ25μmのポリプロピレンを用いることができる。
【0247】
正極缶及び負極缶には、ステンレス(SUS)で形成されているものを用いることができる。
【0248】
上記条件で作製したコインセルを、4.6V、0.5Cで定電流充電し、その後電流値が0.01Cとなるまで定電圧充電する。なおここでは1Cは137mA/gとする。温度は25℃とする。このようにして充電した後に、コインセルをアルゴン雰囲気のグローブボックス中で解体して正極を取り出せば、充電深度が0.8以上になるような深い深度まで充電された正極活物質を得られる。この後に各種分析を行う際、外界成分との反応を抑制するため、アルゴン雰囲気で密封することが好ましい。例えばXRDは、アルゴン雰囲気の密閉容器内に封入して行うことができる。
【0249】
<XRD>
図8にO3’型結晶構造のモデルから計算される、CuKα1線による理想的な粉末XRDパターンを示す。また比較のためx=1のLiCoO(O3)の結晶構造から計算される理想的なXRDパターンも示す。図10には、H1-3型結晶構造のモデルから計算される、CuKα1線による理想的な粉末XRDパターンを示す。また比較のためx=1のLiCoO(O3)と、x=0のCoO(O1)の結晶構造から計算される理想的なXRDパターンも示す。なお、LiCoO(O3)及びCoO(O1)のパターンはICSD(Inorganic Crystal Structure Database)より入手した結晶構造情報からMaterials Studio(BIOVIA)のモジュールの一つである、Reflex Powder Diffractionを用いて作成した。2θの範囲は15°から75°とし、Step size=0.01、波長λ1=1.540562×10-10m、λ2は設定なし、Monochromatorはsingleとした。O3’型結晶構造のパターンは本発明の一態様の正極活物質のXRDパターンから結晶構造を推定し、TOPAS ver.3(Bruker社製結晶構造解析ソフトウェア)を用いてフィッティングし、他と同様にXRDパターンを作成した。
【0250】
図8に示すように、O3’型結晶構造では、2θ=19.30±0.20°(19.10°以上19.50°以下)、及び2θ=45.55±0.10°(45.45°以上45.65°以下)に回折ピークが出現する。より詳しく述べれば、2θ=19.30±0.10°(19.20°以上19.40°以下)、及び2θ=45.55±0.05°(45.50°以上45.60°以下)に鋭い回折ピークが出現する。しかし図10に示すようにH1-3型結晶構造及びCoO(P-3m1、O1)ではこれらの位置にピークは出現しない。そのため、充電深度が0.8以上になるような深い深度まで充電された状態で2θ=19.30±0.20°、及び2θ=45.55±0.10°のピークが出現することは、本発明の一態様の正極活物質100の特徴であるといえる。
【0251】
これは、x=1の結晶構造と、高電圧充電状態の結晶構造と、はXRDの回折ピークが出現する位置が近いということもできる。より具体的には、両者の主な回折ピークのうち2つ以上、より好ましくは3つ以上において、ピークが出現する位置の差が、2θ=0.7°以下、より好ましくは2θ=0.5°以下であるということができる。
【0252】
なお、本発明の一態様の正極活物質100は充電深度が0.8以上になるような深い深度まで充電したときO3’型結晶構造を有するが、正極活物質100のすべてがO3’型結晶構造でなくてもよい。他の結晶構造を含んでいてもよいし、一部が非晶質であってもよい。ただし、XRDパターンについてリートベルト解析を行ったとき、O3’型結晶構造が50wt%以上であることが好ましく、60wt%以上であることがより好ましく、66wt%以上であることがさらに好ましい。O3’型結晶構造が50wt%以上、より好ましくは60wt%以上、さらに好ましくは66wt%以上あれば、十分にサイクル特性に優れた正極活物質とすることができる。
【0253】
また、測定開始から100サイクル以上の充放電を経ても、リートベルト解析を行ったときO3’型結晶構造が35wt%以上であることが好ましく、40wt%以上であることがより好ましく、43wt%以上であることがさらに好ましい。
【0254】
また、正極活物質の粒子が有するO3’型結晶構造の結晶子サイズは、放電状態のLiCoO(O3)の1/10程度までしか低下しない。そのため、充放電前の正極と同じXRDの測定条件であっても、高電圧充電状態において明瞭なO3’型結晶構造のピークが確認できる。一方単純なLiCoOでは、一部がO3’型結晶構造に似た構造を取りえたとしても、結晶子サイズが小さくなり、ピークはブロードで小さくなる。結晶子サイズは、XRDピークの半値幅から求めることができる。
【0255】
本発明の一態様の正極活物質においては、前述の通り、ヤーン・テラー効果の影響が小さいことが好ましい。本発明の一態様の正極活物質は、層状岩塩型の結晶構造を有し、遷移金属としてコバルトを主として有することが好ましい。また、本発明の一態様の正極活物質において、ヤーン・テラー効果の影響が小さい範囲であれば、コバルトの他に、先に述べた添加元素Xを有してもよい。
【0256】
格子定数の好ましい範囲について考察を行ったところ、本発明の一態様の正極活物質において、XRDパターンから推定できる、充放電を行わない状態、あるいは放電状態の正極活物質の粒子が有する層状岩塩型の結晶構造において、a軸の格子定数が2.814×10-10mより大きく2.817×10-10mより小さく、かつc軸の格子定数が14.05×10-10mより大きく14.07×10-10mより小さいことが好ましいことがわかった。充放電を行わない状態とは例えば、二次電池の正極を作製する前の粉体の状態であってもよい。
【0257】
あるいは、充放電を行わない状態、あるいは放電状態の正極活物質の粒子が有する層状岩塩型の結晶構造において、a軸の格子定数をc軸の格子定数で割った値(a軸/c軸)が0.20000より大きく0.20049より小さいことが好ましい。
【0258】
あるいは、充放電を行わない状態、あるいは放電状態の正極活物質の粒子が有する層状岩塩型の結晶構造において、XRD分析をしたとき、2θが18.50°以上19.30°以下に第1のピークが観測され、かつ2θが38.00°以上38.80°以下に第2のピークが観測される場合がある。
【0259】
なお粉体XRDパターンに出現するピークは、正極活物質100の体積の大半を占める、正極活物質100の内部100bの結晶構造を反映したものである。表層部100a等の結晶構造は、正極活物質100の断面の電子回折等で分析することができる。
【0260】
<XPS>
X線光電子分光(XPS)では、表面から2乃至8nm程度(通常5nm程度)の深さまでの領域の分析が可能であるため、表層部100aの約半分の領域について、各元素の濃度を定量的に分析することができる。また、ナロースキャン分析をすれば元素の結合状態を分析することができる。なおXPSの定量精度は多くの場合±1原子%程度、検出下限は元素にもよるが約1原子%である。
【0261】
本発明の一態様の正極活物質100についてXPS分析をしたとき、添加元素Xの原子数は遷移金属の原子数の1.6倍以上6.0倍以下が好ましく、1.8倍以上4.0倍未満がより好ましい。添加元素Xがマグネシウム、遷移金属M1がコバルトである場合は、マグネシウムの原子数はコバルトの原子数の1.6倍以上6.0倍以下が好ましく、1.8倍以上4.0倍未満がより好ましい。またフッ素等のハロゲンの原子数は、遷移金属の原子数の0.2倍以上6.0倍以下が好ましく、1.2倍以上4.0倍以下がより好ましい。
【0262】
XPS分析を行う場合には例えば、X線源として単色化アルミニウムを用いることができる。また、取出角は例えば45°とすればよい。
【0263】
また、本発明の一態様の正極活物質100についてXPS分析したとき、フッ素と他の元素の結合エネルギーを示すピークは682eV以上685eV未満であることが好ましく、684.3eV程度であることがさらに好ましい。これは、フッ化リチウムの結合エネルギーである685eV、及びフッ化マグネシウムの結合エネルギーである686eVのいずれとも異なる値である。つまり、本発明の一態様の正極活物質100がフッ素を有する場合、フッ化リチウム及びフッ化マグネシウム以外の結合であることが好ましい。
【0264】
さらに、本発明の一態様の正極活物質100についてXPS分析したとき、マグネシウムと他の元素の結合エネルギーを示すピークは、1302eV以上1304eV未満であることが好ましく、1303eV程度であることがさらに好ましい。これは、フッ化マグネシウムの結合エネルギーである1305eVと異なる値であり、酸化マグネシウムの結合エネルギーに近い値である。つまり、本発明の一態様の正極活物質100がマグネシウムを有する場合、フッ化マグネシウム以外の結合であることが好ましい。
【0265】
表層部100aに多く存在することが好ましい添加元素X、例えばマグネシウム及びアルミニウムは、XPS等で測定される濃度が、ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析)、あるいはGD-MS(グロー放電質量分析法)等で測定される濃度よりも高いことが好ましい。
【0266】
マグネシウム及びアルミニウムは、加工によりその断面を露出させ、断面をTEM-EDXを用いて分析する場合に、表層部100aの濃度が、内部100bの濃度に比べて高いことが好ましい。加工は例えばFIBにより行うことができる。
【0267】
XPS(X線光電子分光)の分析において、マグネシウムの原子数はコバルトの原子数の0.4倍以上1.5倍以下であることが好ましい。一方ICP-MSの分析によるマグネシウムの原子数の比Mg/Coは0.001以上0.06以下であることが好ましい。
【0268】
一方、遷移金属に含まれるニッケルは表層部100aに偏在せず、正極活物質100全体に分布していることが好ましい。ただし前述した過剰な添加元素Xが偏在する領域が存在する場合はこの限りではない。
【0269】
<表面粗さと比表面積>
本発明の一態様の正極活物質100は、表面がなめらかで凹凸が少ないことが好ましい。表面がなめらかで凹凸が少ないことは、表層部100aにおける添加元素Xの分布が良好であることを示す一つの要素である。なお、正極活物質100の作製工程において、添加元素Xを添加する前のコバルト酸リチウムまたは、ニッケル-コバルト-マンガン酸リチウムに対し、初期加熱を行った場合には、充電深度が0.8以上になるような深い深度の充電と、放電との繰り返し特性が顕著に優れるため、正極活物質100として特に好ましい。
【0270】
また、正極活物質100の表面がなめらかで凹凸が少ないことで、正極活物質100の表面での安定性が向上し、ピットの発生を抑制できる可能性がある。
【0271】
表面がなめらかで凹凸が少ないことは、例えば正極活物質100の断面SEM像または断面TEM像、正極活物質100の比表面積等から判断することができる。
【0272】
例えば以下のように、正極活物質100の断面SEM像から表面のなめらかさを数値化することができる。
【0273】
まず正極活物質100をFIB等により加工して断面を露出させる。このとき保護膜、保護剤等で正極活物質100を覆うことが好ましい。次に保護膜等と正極活物質100との界面のSEM像を撮影する。該SEM像に画像処理ソフトでノイズ処理を行う。例えばガウスぼかし(σ=2)を行った後、二値化を行う。さらに画像処理ソフトで界面抽出を行う。さらにmagic handツール等で保護膜等と正極活物質100との界面ラインを選択し、データを表計算ソフト等に抽出する。表計算ソフト等の機能を用いて、回帰曲線(二次回帰)から補正を行い、傾き補正後データからラフネス算出用パラメータを求め、標準偏差を算出した二乗平均平方根(RMS)表面粗さを求めた。また、この表面粗さは、正極活物質は少なくとも粒子外周の400nmにおける表面粗さである。
【0274】
本実施の形態の正極活物質100の粒子表面においては、ラフネスの指標である二乗平均平方根(RMS)表面粗さは10nm以下、3nm未満、好ましくは1nm未満、さらに好ましくは0.5nm未満の二乗平均平方根表面粗さ(RMS)であることが好ましい。
【0275】
なおノイズ処理、界面抽出等を行う画像処理ソフトについては特に限定されないが、例えば「ImageJ」を用いることができる。また表計算ソフト等についても特に限定されないが、例えばMicrosoft Office Excelを用いることができる。
【0276】
また例えば、定容法によるガス吸着法にて測定した実際の比表面積ARと、理想的な比表面積Aiとの比からも、正極活物質100の表面のなめらかさを数値化することができる。
【0277】
理想的な比表面積Aiは、すべての粒子の直径がD50と同じであり、重量が同じであり、形状は理想的な球であるとして計算して求める。
【0278】
メディアン径D50は、レーザ回折・散乱法を用いた粒度分布計等によって測定することができる。比表面積は、例えば定容法によるガス吸着法を用いた比表面積測定装置等によって測定することができる。
【0279】
本発明の一態様の正極活物質100は、メディアン径D50から求めた理想的な比表面積Aiと、実際の比表面積ARの比AR/Aiが2以下であることが好ましい。
【0280】
[正極活物質複合体]
または、本発明の一態様の正極活物質100は、正極活物質100の少なくとも一部を覆う被覆層を有する正極活物質複合体、としてもよい。被覆層として例えば、ガラス、酸化物、及びLiM2PO(M2は、Fe、Ni、Co、Mnから選ばれる一以上)の、一以上を用いることができる。
【0281】
正極活物質複合体の被覆層が有するガラスとして、非晶質部を有する材料を用いることができる。非晶質部を有する材料として、例えば、SiO、SiO、Al、TiO、LiSiO、LiPO、LiS、SiS、B、GeS、AgI、AgO、LiO、P、B、及びV等から選ばれる1以上を有する材料、Li11、又はLi1+x+yAlTi2-xSi3-y12(0<x<2、0<y<3、)等、を用いることができる。非晶質部を有する材料は、全体が非晶質の状態で用いること、又は一部が結晶化された結晶化ガラス(ガラスセラミックスともいう)の状態で用いること、ができる。ガラスはリチウムイオン伝導性を有することが望ましい。リチウムイオン伝導性とは、リチウムイオン拡散性及びリチウムイオン貫通性を有する、ともいえる。また、ガラスは、融点が800℃以下であることが好ましく、500℃以下であることがより好ましい。また、ガラスが電子伝導性を有することが好ましい。また、ガラスは、軟化点が800℃以下であることが好ましく、例えばLiO-B-SiO系ガラスを用いることができる。
【0282】
正極活物質複合体の被覆層が有する酸化物の例として、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム及び、酸化ニオブ等がある。また、正極活物質複合体の被覆層が有するLiM2PO(M2は、Fe、Ni、Co、Mnから選ばれる一以上)の例として、LiFePO、LiNiPO、LiCoPO、LiMnPO、LiFeNiPO、LiFeCoPO、LiFeMnPO、LiNiCoPO、LiNiMnPO(a+bは1以下、0<a<1、0<b<1)、LiFeNiCoPO、LiFeNiMnPO、LiNiCoMnPO(c+d+eは1以下、0<c<1、0<d<1、0<e<1)、LiFeNiCoMnPO(f+g+h+iは1以下、0<f<1、0<g<1、0<h<1、0<i<1)等がある。
【0283】
正極活物質複合体の被覆層の作製には、複合化処理を用いることができる。複合化処理としては、例えば、メカノケミカル法、メカノフュージョン法、及びボールミル法などの機械的エネルギーによる複合化処理、共沈法、水熱法、及びゾル-ゲル法などの液相反応による複合化処理、ならびに、バレルスパッタ法、ALD(Atomic Layer Deposition)法、蒸着法、及びCVD(Chemical Vapor Deposition)法などの気相反応による複合化処理、のいずれか一以上の複合化処理を用いることができる。なお、機械的エネルギーによる複合化処理として例えば、ホソカワミクロン製のピコボンドを用いることができる。また、複合化処理において、1回又は複数回の加熱処理を行うことが好ましい。
【0284】
正極活物質複合体により正極活物質が電解液等と接することが低減されるため、二次電池の劣化を抑制できる。
【0285】
本実施の形態の内容は他の実施の形態の内容と自由に組み合わせることができる。
【0286】
(実施の形態3)
本実施の形態では、先の実施の形態で説明した作製方法によって作製された正極または負極を有する二次電池の複数種類の形状の例について説明する。
【0287】
[コイン型二次電池]
コイン型の二次電池の一例について説明する。図11Aはコイン型(単層偏平型)の二次電池の分解斜視図であり、図11Bは、外観図であり、図11Cは、その断面図である。コイン型の二次電池は主に小型の電子機器に用いられる。本明細書等において、コイン型電池は、ボタン型電池を含む。
【0288】
図11Aでは、わかりやすくするために部材の重なり(上下関係、及び位置関係)がわかるように模式図としている。従って図11A図11Bは完全に一致する対応図とはしていない。
【0289】
図11Aでは、正極304、セパレータ310、負極307、スペーサ322、ワッシャー312を重ねている。これらを負極缶302と正極缶301で封止している。なお、図11Aにおいて、封止のためのガスケットは図示していない。スペーサ322、ワッシャー312は、正極缶301と負極缶302を圧着する際に、内部を保護または缶内の位置を固定するために用いられている。スペーサ322、ワッシャー312はステンレスまたは絶縁材料を用いる。
【0290】
正極集電体305上に正極活物質層306が形成された積層構造を正極304としている。
【0291】
正極と負極の短絡を防ぐため、セパレータ310と、リング状絶縁体313を正極304の側面及び上面を覆うようにそれぞれ配置する。セパレータ310は、正極304よりも広い平面面積を有している。
【0292】
図11Bは、完成したコイン型の二次電池の斜視図である。
【0293】
コイン型の二次電池300は、正極端子を兼ねた正極缶301と負極端子を兼ねた負極缶302とが、ポリプロピレン等で形成されたガスケット303で絶縁シールされている。正極304は、正極集電体305と、これと接するように設けられた正極活物質層306により形成される。また、負極307は、負極集電体308と、これに接するように設けられた負極活物質層309により形成される。また、負極307は、積層構造に限定されず、リチウム金属箔またはリチウムとアルミニウムの合金箔を用いてもよい。
【0294】
なお、コイン型の二次電池300に用いる正極304および負極307は、それぞれ活物質層は片面のみに形成すればよい。
【0295】
正極缶301、負極缶302には、電解質に対して耐食性のあるニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、又はこれらの合金、およびこれらと他の金属との合金(例えばステンレス鋼等)を用いることができる。また、電解質などによる腐食を防ぐため、ニッケルおよびアルミニウム等を被覆することが好ましい。正極缶301は正極304と、負極缶302は負極307とそれぞれ電気的に接続する。
【0296】
これら負極307、正極304およびセパレータ310を電解液に浸し、図11Cに示すように、正極缶301を下にして正極304、セパレータ310、負極307、負極缶302をこの順で積層し、正極缶301と負極缶302とをガスケット303を介して圧着してコイン形の二次電池300を製造する。
【0297】
上記の構成を有することで、高容量、且つ、充放電容量が高く、且つ、サイクル特性に優れたコイン型の二次電池300とすることができる。なお、負極307、正極304の間に固体電解質層を有する場合にはセパレータ310を不要とすることもできる。
【0298】
[円筒型二次電池]
円筒型の二次電池の例について図12Aを参照して説明する。円筒型の二次電池616は、図12Aに示すように、上面に正極キャップ(電池蓋)601を有し、側面及び底面に電池缶(外装缶)602を有している。これら正極キャップ601と電池缶(外装缶)602とは、ガスケット(絶縁パッキン)610によって絶縁されている。
【0299】
図12Bは、円筒型の二次電池の断面を模式的に示した図である。図12Bに示す円筒型の二次電池は、上面に正極キャップ(電池蓋)601を有し、側面および底面に電池缶(外装缶)602を有している。これら正極キャップと電池缶(外装缶)602とは、ガスケット(絶縁パッキン)610によって絶縁されている。
【0300】
中空円柱状の電池缶602の内側には、帯状の正極604と負極606とがセパレータ605を間に挟んで捲回された電池素子が設けられている。図示しないが、電池素子は中心軸を中心に捲回されている。電池缶602は、一端が閉じられ、他端が開いている。電池缶602には、電解液に対して耐腐食性のあるニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、又はこれらの合金、およびこれらと他の金属との合金(例えば、ステンレス鋼等)を用いることができる。また、電解液による腐食を防ぐため、ニッケルおよびアルミニウム等を電池缶602に被覆することが好ましい。電池缶602の内側において、正極、負極およびセパレータが捲回された電池素子は、対向する一対の絶縁板608、609により挟まれている。また、電池素子が設けられた電池缶602の内部は、非水電解液(図示せず)が注入されている。非水電解液は、コイン型の二次電池と同様のものを用いることができる。
【0301】
円筒型の蓄電池に用いる正極および負極は捲回するため、集電体の両面に活物質を形成することが好ましい。なお図12A乃至図12Dでは円筒の直径よりも円筒の高さの方が大きい二次電池616を図示したが、これに限らない。円筒の直径が、円筒の高さよりも大きい二次電池としてもよい。このような構成により、たとえば二次電池の小型化を図ることができる。
【0302】
前述の実施の形態で得られる正極活物質100を正極604に用いることで、高容量、且つ、充放電容量が高く、且つ、サイクル特性に優れた円筒型の二次電池616とすることができる。
【0303】
正極604には正極端子(正極集電リード)603が接続され、負極606には負極端子(負極集電リード)607が接続される。正極端子603および負極端子607は、ともにアルミニウムなどの金属材料を用いることができる。正極端子603は安全弁機構613に、負極端子607は電池缶602の底にそれぞれ抵抗溶接される。安全弁機構613は、PTC素子(Positive Temperature Coefficient)611を介して正極キャップ601と電気的に接続されている。安全弁機構613は電池の内圧の上昇が所定の閾値を超えた場合に、正極キャップ601と正極604との電気的な接続を切断するものである。また、PTC素子611は温度が上昇した場合に抵抗が増大する熱感抵抗素子であり、抵抗の増大により電流量を制限して異常発熱を防止するものである。PTC素子には、チタン酸バリウム(BaTiO3)系半導体セラミックス等を用いることができる。
【0304】
図12Cは蓄電システム615の一例を示す。蓄電システム615は複数の二次電池616を有する。それぞれの二次電池の正極は、絶縁体625で分離された導電体624に接触し、電気的に接続されている。導電体624は配線623を介して、制御回路620に電気的に接続されている。また、それぞれの二次電池の負極は、配線626を介して制御回路620に電気的に接続されている。制御回路620として、過充電または過放電を防止する保護回路等を適用することができる。
【0305】
図12Dは、蓄電システム615の一例を示す。蓄電システム615は複数の二次電池616を有し、複数の二次電池616は、導電板628及び導電板614の間に挟まれている。複数の二次電池616は、配線627により導電板628及び導電板614と電気的に接続される。複数の二次電池616は、並列接続されていてもよいし、直列接続されていてもよい。複数の二次電池616を有する蓄電システム615を構成することで、大きな電力を取り出すことができる。
【0306】
複数の二次電池616が、並列に接続された後、さらに直列に接続されてもよい。
【0307】
複数の二次電池616の間に温度制御装置を有していてもよい。二次電池616が過熱されたときは、温度制御装置により冷却し、二次電池616が冷えすぎているときは温度制御装置により加熱することができる。そのため蓄電システム615の性能が外気温に影響されにくくなる。
【0308】
また、図12Dにおいて、蓄電システム615は制御回路620に配線621及び配線622を介して電気的に接続されている。配線621は導電板628を介して複数の二次電池616の正極に、配線622は導電板614を介して複数の二次電池616の負極に、それぞれ電気的に接続される。
【0309】
制御回路620は、実施の形態1に記載の第2のアルゴリズム及び第4のアルゴリズムを有することが好ましい。
【0310】
[二次電池の他の構造例]
二次電池の構造例について図13及び図14を用いて説明する。
【0311】
図13Aに示す二次電池913は、筐体930の内部に端子951と端子952が設けられた捲回体950を有する。捲回体950は、筐体930の内部で電解液中に浸される。端子952は、筐体930に接し、端子951は、絶縁材などを用いることにより筐体930に接していない。なお、図13Aでは、便宜のため、筐体930を分離して図示しているが、実際は、捲回体950が筐体930に覆われ、端子951及び端子952が筐体930の外に延在している。筐体930としては、金属材料(例えばアルミニウムなど)又は樹脂材料を用いることができる。
【0312】
なお、図13Bに示すように、図13Aに示す筐体930を複数の材料によって形成してもよい。例えば、図13Bに示す二次電池913は、筐体930aと筐体930bが貼り合わされており、筐体930a及び筐体930bで囲まれた領域に捲回体950が設けられている。
【0313】
筐体930aとしては、有機樹脂など、絶縁材料を用いることができる。特に、アンテナが形成される面に有機樹脂などの材料を用いることにより、二次電池913による電界の遮蔽を抑制できる。なお、筐体930aによる電界の遮蔽が小さければ、筐体930aの内部にアンテナを設けてもよい。筐体930bとしては、例えば金属材料を用いることができる。
【0314】
さらに、捲回体950の構造について図13Cに示す。捲回体950は、負極931と、正極932と、セパレータ933と、を有する。捲回体950は、セパレータ933を挟んで負極931と、正極932が重なり合って積層され、該積層シートを捲回させた捲回体である。なお、負極931と、正極932と、セパレータ933と、の積層を、さらに複数重ねてもよい。
【0315】
また、図14A乃至図14Cに示すような捲回体950aを有する二次電池913としてもよい。図14Aに示す捲回体950aは、負極931と、正極932と、セパレータ933と、を有する。負極931は負極活物質層931aを有する。正極932は正極活物質層932aを有する。
【0316】
前述の実施の形態で得られる正極活物質100を正極932に用いることで、高容量、且つ、充放電容量が高く、且つ、サイクル特性に優れた二次電池913とすることができる。
【0317】
セパレータ933は、負極活物質層931aおよび正極活物質層932aよりも広い幅を有し、負極活物質層931aおよび正極活物質層932aと重畳するように捲回されている。また正極活物質層932aよりも負極活物質層931aの幅が広いことが安全性の点で好ましい。またこのような形状の捲回体950aは安全性および生産性がよく好ましい。
【0318】
図14Bに示すように、負極931は端子951と電気的に接続される。端子951は端子911aと電気的に接続される。また正極932は端子952と電気的に接続される。端子952は端子911bと電気的に接続される。
【0319】
図14Cに示すように、筐体930により捲回体950aおよび電解液が覆われ、二次電池913となる。筐体930には安全弁、過電流保護素子等を設けることが好ましい。安全弁は、電池破裂を防止するため、筐体930の内部が所定の内圧で開放する弁である。
【0320】
図14Bに示すように二次電池913は複数の捲回体950aを有していてもよい。複数の捲回体950aを用いることで、より充放電容量の大きい二次電池913とすることができる。図14Aおよび図14Bに示す二次電池913の他の要素は、図13A乃至図13Cに示す二次電池913の記載を参酌することができる。
【0321】
<ラミネート型二次電池>
次に、ラミネート型の二次電池の例について、外観図の一例を図15A及び図15Bに示す。図15A及び図15Bは、正極503、負極506、セパレータ507、外装体509、正極リード電極510及び負極リード電極511を有する。
【0322】
図16Aは正極503及び負極506の外観図を示す。正極503は正極集電体501を有し、正極活物質層502は正極集電体501の表面に形成されている。また、正極503は正極集電体501が一部露出する領域(以下、タブ領域という)を有する。負極506は負極集電体504を有し、負極活物質層505は負極集電体504の表面に形成されている。また、負極506は負極集電体504が一部露出する領域、すなわちタブ領域を有する。正極及び負極が有するタブ領域の面積および形状は、図16Aに示す例に限られない。
【0323】
<ラミネート型二次電池の作製方法>
ここで、図15Aに外観図を示すラミネート型二次電池の作製方法の一例について、図16B及び図16Cを用いて説明する。
【0324】
まず、負極506、セパレータ507及び正極503を積層する。図16Bに積層された負極506、セパレータ507及び正極503を示す。ここでは負極を5組、正極を4組使用する例を示す。負極とセパレータと正極からなる積層体とも呼べる。次に、正極503のタブ領域同士の接合と、最表面の正極のタブ領域への正極リード電極510の接合を行う。接合には、例えば超音波溶接等を用いればよい。同様に、負極506のタブ領域同士の接合と、最表面の負極のタブ領域への負極リード電極511の接合を行う。
【0325】
次に外装体509上に、負極506、セパレータ507及び正極503を配置する。
【0326】
次に、図16Cに示すように、外装体509を破線で示した部分で折り曲げる。その後、外装体509の外周部を接合する。接合には例えば熱圧着等を用いればよい。この時、後に電解液を入れることができるように、外装体509の一部(または一辺)に接合されない領域(以下、導入口という)を設ける。
【0327】
次に、外装体509に設けられた導入口から、電解液を外装体509の内側へ導入する。電解液の導入は、減圧雰囲気下、或いは不活性雰囲気下で行うことが好ましい。そして最後に、導入口を接合する。このようにして、ラミネート型の二次電池500を作製することができる。
【0328】
前述の実施の形態で得られる正極活物質100を正極503に用いることで、高容量、且つ、充放電容量が高く、且つ、サイクル特性に優れた二次電池500とすることができる。
【0329】
[電池パックの例]
アンテナを用いて無線充電が可能な本発明の一態様の二次電池パックの例について、図17A乃至図17Cを用いて説明する。
【0330】
図17Aは、二次電池パック531の外観を示す図であり、厚さの薄い直方体形状(厚さのある平板形状とも呼べる)である。図17Bは二次電池パック531の構成を説明する図である。二次電池パック531は、回路基板540と、二次電池513と、を有する。二次電池513には、ラベル529が貼られている。回路基板540は、シール515により固定されている。また、二次電池パック531は、アンテナ517を有する。
【0331】
二次電池513の内部は、捲回体を有する構造にしてもよいし、積層体を有する構造にしてもよい。
【0332】
二次電池パック531において例えば、図17Bに示すように、回路基板540上に、制御回路590を有する。また、回路基板540は、端子514と電気的に接続されている。また回路基板540は、アンテナ517、二次電池513の正極リード及び負極リードの一方551、正極リード及び負極リードの他方552と電気的に接続される。
【0333】
あるいは、図17Cに示すように、回路基板540上に設けられる回路システム590aと、端子514を介して回路基板540に電気的に接続される回路システム590bと、を有してもよい。
【0334】
回路基板540または回路システム590bは、実施の形態1に記載の第2のアルゴリズム及び第4のアルゴリズムを有することが好ましい。
【0335】
なお、アンテナ517はコイル状に限定されず、例えば線状、板状であってもよい。また、平面アンテナ、開口面アンテナ、進行波アンテナ、EHアンテナ、磁界アンテナ、誘電体アンテナ等のアンテナを用いてもよい。又は、アンテナ517は、平板状の導体でもよい。この平板状の導体は、電界結合用の導体の一つとして機能することができる。つまり、コンデンサの有する2つの導体のうちの一つの導体として、アンテナ517を機能させてもよい。これにより、電磁界、磁界だけでなく、電界で電力のやり取りを行うこともできる。
【0336】
二次電池パック531は、アンテナ517と、二次電池513との間に層519を有する。層519は、例えば二次電池513による電磁界を遮蔽することができる機能を有する。層519としては、例えば磁性体を用いることができる。
【0337】
本実施の形態の内容は他の実施の形態の内容と自由に組み合わせることができる。
【0338】
(実施の形態4)
本実施の形態では、前述の実施の形態で得られる正極活物質100を用いて全固体電池を作製する例を示す。
【0339】
図18Aに示すように、本発明の一態様の二次電池400は、正極410、固体電解質層420および負極430を有する。
【0340】
正極410は正極集電体413および正極活物質層414を有する。正極活物質層414は正極活物質411および固体電解質421を有する。正極活物質411には、前述の実施の形態で得られる正極活物質100を用いている。また正極活物質層414は、導電材およびバインダを有していてもよい。
【0341】
固体電解質層420は固体電解質421を有する。固体電解質層420は、正極410と負極430の間に位置し、正極活物質411および負極活物質431のいずれも有さない領域である。
【0342】
負極430は負極集電体433および負極活物質層434を有する。負極活物質層434は負極活物質431および固体電解質421を有する。また負極活物質層434は、導電材およびバインダを有していてもよい。なお、負極活物質431として金属リチウムを用いる場合は粒子にする必要がないため、図18Bのように、固体電解質421を有さない負極430とすることができる。負極430に金属リチウムを用いると、二次電池400のエネルギー密度を向上させることができ好ましい。
【0343】
固体電解質層420が有する固体電解質421としては、例えば硫化物系固体電解質、酸化物系固体電解質、ハロゲン化物系固体電解質等を用いることができる。
【0344】
硫化物系固体電解質には、チオリシコン系(Li10GeP12、Li3.25Ge0.250.75等)、硫化物ガラス(70LiS・30P、30LiS・26B・44LiI、63LiS・36SiS・1LiPO、57LiS・38SiS・5LiSiO、50LiS・50GeS等)、硫化物結晶化ガラス(Li11、Li3.250.95等)が含まれる。硫化物系固体電解質は、高い伝導度を有する材料がある、低い温度で合成可能、また比較的やわらかいため充放電を経ても導電経路が保たれやすい等の利点がある。
【0345】
酸化物系固体電解質には、ペロブスカイト型結晶構造を有する材料(La2/3-xLi3xTiO等)、NASICON型結晶構造を有する材料(Li1-YAlTi2-Y(PO等)、ガーネット型結晶構造を有する材料(LiLaZr12等)、LISICON型結晶構造を有する材料(Li14ZnGe16等)、LLZO(LiLaZr12)、酸化物ガラス(LiPO-LiSiO、50LiSiO・50LiBO等)、酸化物結晶化ガラス(Li1.07Al0.69Ti1.46(PO、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO等)が含まれる。酸化物系固体電解質は、大気中で安定であるといった利点がある。
【0346】
ハロゲン化物系固体電解質には、LiAlCl、LiInBr、LiF、LiCl、LiBr、LiI等が含まれる。また、これらハロゲン化物系固体電解質を、ポーラス酸化アルミニウムまたはポーラスシリカの細孔に充填したコンポジット材料も固体電解質として用いることができる。
【0347】
また、異なる固体電解質を混合して用いてもよい。
【0348】
中でも、NASICON型結晶構造を有するLi1+xAlTi2-x(PO(0<x<1)(以下、LATP)は、アルミニウムとチタンという、本発明の一態様の二次電池400に用いる正極活物質が有してもよい元素を含むため、サイクル特性の向上について相乗効果が期待でき好ましい。また、工程の削減による生産性の向上も期待できる。なお本明細書等において、NASICON型結晶構造とは、M(XO(M:遷移金属、X:S、P、As、Mo、W等)で表される化合物であり、MO八面体とXO四面体が頂点を共有して3次元的に配列した構造を有するものをいう。
【0349】
〔外装体と二次電池の形状〕
本発明の一態様の二次電池400の外装体には、様々な材料および形状のものを用いることができるが、正極、固体電解質層および負極を加圧する機能を有することが好ましい。
【0350】
例えば図19は、全固体電池の材料を評価するセルの一例である。
【0351】
図19Aは評価セルの断面模式図であり、評価セルは、下部部材761と、上部部材762と、それらを固定する固定ねじまたは蝶ナット764を有し、押さえ込みねじ763を回転させることで電極用プレート753を押して評価材料を固定している。ステンレス材料で構成された下部部材761と、上部部材762との間には絶縁体766が設けられている。また上部部材762と、押さえ込みねじ763の間には密閉するためのOリング765が設けられている。
【0352】
評価材料は、電極用プレート751に載せられ、周りを絶縁管752で囲み、上方から電極用プレート753で押されている状態となっている。この評価材料周辺を拡大した斜視図が図19Bである。
【0353】
評価材料としては、正極750a、固体電解質層750b、負極750cの積層の例を示しており、断面図を図19Cに示す。なお、図19A乃至図19Cにおいて同じ箇所には同じ符号を用いる。
【0354】
正極750aと電気的に接続される電極用プレート751および下部部材761は、正極端子に相当するということができる。負極750cと電気的に接続される電極用プレート753および上部部材762は、負極端子に相当するということができる。電極用プレート751および電極用プレート753を介して評価材料に押圧をかけながら電気抵抗などを測定することができる。
【0355】
また、本発明の一態様の二次電池の外装体には、気密性に優れたパッケージを使用することが好ましい。例えばセラミックパッケージまたは樹脂パッケージを用いることができる。また、外装体を封止する際には、外気を遮断し、密閉した雰囲気下、例えばグローブボックス内で行うことが好ましい。
【0356】
図20Aに、図19と異なる外装体および形状を有する本発明の一態様の二次電池の斜視図を示す。図20Aの二次電池は、外部電極771、772を有し、複数のパッケージ部材を有する外装体で封止されている。
【0357】
図20A中の一点破線で切断した断面の一例を図20Bに示す。正極750a、固体電解質層750bおよび負極750cを有する積層体は、平板に電極層773aが設けられたパッケージ部材770aと、枠状のパッケージ部材770bと、平板に電極層773bが設けられたパッケージ部材770cと、で囲まれて封止された構造となっている。パッケージ部材770a、770b、770cには、絶縁材料、例えば樹脂材料およびセラミックを用いることができる。
【0358】
外部電極771は、電極層773aを介して正極750aと電気的に接続され、正極端子として機能する。また、外部電極772は、電極層773bを介して負極750cと電気的に接続され、負極端子として機能する。
【0359】
前述の実施の形態で得られる正極活物質100を用いることで、高エネルギー密度かつ良好な出力特性をもつ全固体二次電池を実現することができる。
【0360】
本実施の形態の内容は、他の実施の形態の内容と適宜組み合わせることができる。
【0361】
(実施の形態5)
本実施の形態では、円筒型の二次電池である図12Dとは異なる二次電池を電気自動車(EV)に適用する例を図21Cを用いて示す。
【0362】
電気自動車には、メインの駆動用の二次電池として第1のバッテリ1301a、1301bと、モータ1304を始動させるインバータ1312に電力を供給する第2のバッテリ1311が設置されている。第2のバッテリ1311はクランキングバッテリー(スターターバッテリーとも呼ばれる)とも呼ばれる。第2のバッテリ1311は高出力できればよく、大容量はそれほど必要とされず、第2のバッテリ1311の容量は第1のバッテリ1301a、1301bと比較して小さい。
【0363】
第1のバッテリ1301aの内部構造は、図13Aまたは図14Cに示した捲回型であってもよいし、図15Aまたは図15Bに示した積層型であってもよい。また、第1のバッテリ1301aは、実施の形態4の全固体電池を用いてもよい。第1のバッテリ1301aに実施の形態4の全固体電池を用いることで高容量とすることができ、安全性が向上し、小型化、軽量化することができる。
【0364】
本実施の形態では、第1のバッテリ1301a、1301bを2つ並列に接続させている例を示しているが3つ以上並列に接続させてもよい。また、第1のバッテリ1301aで十分な電力を貯蔵できるのであれば、第1のバッテリ1301bはなくてもよい。複数の二次電池を有する電池パックを構成することで、大きな電力を取り出すことができる。複数の二次電池は、並列接続されていてもよいし、直列接続されていてもよいし、並列に接続された後、さらに直列に接続されていてもよい。複数の二次電池を組電池とも呼ぶ。
【0365】
また、車載用の二次電池において、複数の二次電池からの電力を遮断するため、工具を使わずに高電圧を遮断できるサービスプラグまたはサーキットブレーカを有しており、第1のバッテリ1301aに設けられる。
【0366】
また、第1のバッテリ1301a、1301bの電力は、主にモータ1304を回転させることに使用されるが、DCDC回路1306を介して42V系の車載部品(電動パワステ(パワーステアリング)1307、ヒーター1308、デフォッガ1309など)に電力を供給する。後輪にリアモータ1317を有している場合にも、第1のバッテリ1301aがリアモータ1317を回転させることに使用される。
【0367】
また、第2のバッテリ1311は、DCDC回路1310を介して14V系の車載部品(オーディオ1313、パワーウィンドウ1314、ランプ類1315など)に電力を供給する。
【0368】
また、第1のバッテリ1301aについて、図21Aを用いて説明する。
【0369】
図21Aでは9個の角型二次電池1300を一つの電池パック1415としている例を示している。また、9個の角型二次電池1300を直列接続し、一方の電極を絶縁体からなる固定部1413で固定し、もう一方の電極を絶縁体からなる固定部1414で固定している。本実施の形態では固定部1413、1414で固定する例を示しているが電池収容ボックス(筐体とも呼ぶ)に収納させる構成としてもよい。車両は外部(路面など)から振動または揺れが加えられることを想定されているため、固定部1413、1414および電池収容ボックスなどで複数の二次電池を固定することが好ましい。また、一方の電極は配線1421によって制御回路部1320に電気的に接続されている。またもう一方の電極は配線1422によって制御回路部1320に電気的に接続されている。
【0370】
制御回路部1320は、実施の形態1に記載の第2のアルゴリズム及び第4のアルゴリズムを有することが好ましい。
【0371】
また、制御回路部1320は、酸化物半導体を用いたトランジスタを含むメモリ回路を用いてもよい。酸化物半導体を用いたトランジスタを含むメモリ回路を有する充電制御回路、又は電池制御システムを、BTOS(Battery operating system、又はBattery oxide semiconductor)と呼称する場合がある。
【0372】
酸化物半導体として機能する金属酸化物を用いることが好ましい。例えば、酸化物として、In-M-Zn酸化物(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、又はマグネシウムから選ばれた一種、又は複数種)等の金属酸化物を用いるとよい。特に、酸化物として適用できるIn-M-Zn酸化物は、CAAC-OS(C-Axis Aligned Crystal Oxide Semiconductor)、CAC-OS(Cloud-Aligned Composite Oxide Semiconductor)であることが好ましい。また、酸化物として、In-Ga酸化物、In-Zn酸化物を用いてもよい。CAAC-OSは、複数の結晶領域を有し、当該複数の結晶領域はc軸が特定の方向に配向している酸化物半導体である。なお、特定の方向とは、CAAC-OS膜の厚さ方向、CAAC-OS膜の被形成面の法線方向、またはCAAC-OS膜の表面の法線方向である。また、結晶領域とは、原子配列に周期性を有する領域である。なお、原子配列を格子配列とみなすと、結晶領域とは、格子配列の揃った領域でもある。さらに、CAAC-OSは、a-b面方向において複数の結晶領域が連結する領域を有し、当該領域は歪みを有する場合がある。なお、歪みとは、複数の結晶領域が連結する領域において、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の向きが変化している箇所を指す。つまり、CAAC-OSは、c軸配向し、a-b面方向には明らかな配向をしていない酸化物半導体である。また、CAC-OSとは、例えば、金属酸化物を構成する元素が、0.5nm以上10nm以下、好ましくは、1nm以上3nm以下、またはその近傍のサイズで偏在した材料の一構成である。なお、以下では、金属酸化物において、一つまたは複数の金属元素が偏在し、該金属元素を有する領域が、0.5nm以上10nm以下、好ましくは、1nm以上3nm以下、またはその近傍のサイズで混合した状態をモザイク状、またはパッチ状ともいう。
【0373】
さらに、CAC-OSとは、第1の領域と、第2の領域と、に材料が分離することでモザイク状となり、当該第1の領域が、膜中に分布した構成(以下、クラウド状ともいう。)である。つまり、CAC-OSは、当該第1の領域と、当該第2の領域とが、混合している構成を有する複合金属酸化物である。
【0374】
ここで、In-Ga-Zn酸化物におけるCAC-OSを構成する金属元素に対するIn、Ga、およびZnの原子数比のそれぞれを、[In]、[Ga]、および[Zn]と表記する。例えば、In-Ga-Zn酸化物におけるCAC-OSにおいて、第1の領域は、[In]が、CAC-OS膜の組成における[In]よりも大きい領域である。また、第2の領域は、[Ga]が、CAC-OS膜の組成における[Ga]よりも大きい領域である。または、例えば、第1の領域は、[In]が、第2の領域における[In]よりも大きく、且つ、[Ga]が、第2の領域における[Ga]よりも小さい領域である。また、第2の領域は、[Ga]が、第1の領域における[Ga]よりも大きく、且つ、[In]が、第1の領域における[In]よりも小さい領域である。
【0375】
具体的には、上記第1の領域は、インジウム酸化物、インジウム亜鉛酸化物などが主成分である領域である。また、上記第2の領域は、ガリウム酸化物、ガリウム亜鉛酸化物などが主成分である領域である。つまり、上記第1の領域を、Inを主成分とする領域と言い換えることができる。また、上記第2の領域を、Gaを主成分とする領域と言い換えることができる。
【0376】
なお、上記第1の領域と、上記第2の領域とは、明確な境界が観察できない場合がある。
【0377】
例えば、In-Ga-Zn酸化物におけるCAC-OSでは、エネルギー分散型X線分光法(EDX:Energy Dispersive X-ray spectroscopy)を用いて取得したEDXマッピングにより、Inを主成分とする領域(第1の領域)と、Gaを主成分とする領域(第2の領域)とが、偏在し、混合している構造を有することが確認できる。
【0378】
CAC-OSをトランジスタに用いる場合、第1の領域に起因する導電性と、第2の領域に起因する絶縁性とが、相補的に作用することにより、スイッチングさせる機能(On/Offさせる機能)をCAC-OSに付与することができる。つまり、CAC-OSとは、材料の一部では導電性の機能と、材料の一部では絶縁性の機能とを有し、材料の全体では半導体としての機能を有する。導電性の機能と絶縁性の機能とを分離させることで、双方の機能を最大限に高めることができる。よって、CAC-OSをトランジスタに用いることで、高いオン電流(Ion)、高い電界効果移動度(μ)、および良好なスイッチング動作を実現することができる。
【0379】
酸化物半導体は、多様な構造をとり、それぞれが異なる特性を有する。本発明の一態様の酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、a-like OS、CAC-OS、nc-OS、CAAC-OSのうち、二種以上を有していてもよい。
【0380】
また、高温環境下で使用可能であるため、制御回路部1320は酸化物半導体を用いるトランジスタを用いることが好ましい。プロセスを簡略なものとするため、制御回路部1320は単極性のトランジスタを用いて形成してもよい。半導体層に酸化物半導体を用いるトランジスタは、動作周囲温度が単結晶Siトランジスタよりも広く-40℃以上150℃以下であり、二次電池が過熱しても特性変化が単結晶Siトランジスタに比べて小さい。酸化物半導体を用いるトランジスタのオフ電流は、150℃であっても測定下限以下であるが、単結晶Siトランジスタのオフ電流特性は、温度依存性が大きい。例えば、150℃では、単結晶Siトランジスタはオフ電流が上昇し、電流オン/オフ比が十分に大きくならない。制御回路部1320は、安全性を向上することができる。また、前述の実施の形態で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池と組み合わせることで安全性についての相乗効果が得られる。
【0381】
酸化物半導体を用いたトランジスタを含むメモリ回路を用いた制御回路部1320は、マイクロショート等の不安定性の原因に対し、二次電池の自動制御装置として機能させることもできる。二次電池の不安定性の原因を解消する機能としては、過充電の防止、過電流の防止、充電時過熱制御、組電池でのセルバランス、過放電の防止、残量計、温度に応じた充電電圧及び電流量自動制御、劣化度に応じた充電電流量制御、マイクロショート異常挙動検知、マイクロショートに関する異常予測などが挙げられ、そのうちの少なくとも一つの機能を制御回路部1320が有する。また、二次電池の自動制御装置の超小型化が可能である。
【0382】
また、マイクロショートとは、二次電池の内部の微小な短絡のことを指しており、二次電池の正極と負極が短絡して充放電不可能の状態になるというほどではなく、微小な短絡部でわずかに短絡電流が流れてしまう現象を指している。比較的短時間、且つ、わずかな箇所であっても大きな電圧変化が生じるため、その異常な電圧値がその後の推定に影響を与える恐れがある。
【0383】
マイクロショートの原因の一つは、充放電が複数回行われることによって、正極活物質の不均一な分布により、正極の一部と負極の一部で局所的な電流の集中が生じ、セパレータの一部が機能しなくなる箇所が発生、または副反応による副反応物の発生によりミクロな短絡が生じていると言われている。
【0384】
また、マイクロショートの検知だけでなく、制御回路部1320は、二次電池の端子電圧を検知し、二次電池の充放電状態を管理するとも言える。例えば、過充電を防ぐために充電回路の出力トランジスタと遮断用スイッチの両方をほぼ同時にオフ状態とすることができる。
【0385】
また、図21Aに示す電池パック1415のブロック図の一例を図21Bに示す。
【0386】
制御回路部1320は、少なくとも過充電を防止するスイッチと、過放電を防止するスイッチを含むスイッチ部1324と、スイッチ部1324を制御する制御回路1322と、第1のバッテリ1301aの電圧測定部と、を有する。制御回路部1320は、使用する二次電池の上限電圧と下限電圧が設定されており、外部からの電流上限、および外部への出力電流の上限などを制限している。二次電池の下限電圧以上上限電圧以下の範囲内は、使用が推奨されている電圧範囲内であり、その範囲外となるとスイッチ部1324が作動し、保護回路として機能する。また、制御回路部1320は、スイッチ部1324を制御して過放電および過充電を防止するため、保護回路とも呼べる。例えば、過充電となりそうな電圧を制御回路1322で検知した場合にスイッチ部1324のスイッチをオフ状態とすることで電流を遮断する。さらに充放電経路中にPTC素子を設けて温度の上昇に応じて電流を遮断する機能を設けてもよい。また、制御回路部1320は、外部端子1325(+IN)と、外部端子1326(-IN)とを有している。
【0387】
スイッチ部1324は、nチャネル型のトランジスタおよびpチャネル型のトランジスタを組み合わせて構成することができる。スイッチ部1324は、単結晶シリコンを用いるSiトランジスタを有するスイッチに限定されず、例えば、Ge(ゲルマニウム)、SiGe(シリコンゲルマニウム)、GaAs(ガリウムヒ素)、GaAlAs(ガリウムアルミニウムヒ素)、InP(リン化インジウム)、SiC(シリコンカーバイド)、ZnSe(セレン化亜鉛)、GaN(窒化ガリウム)、GaOx(酸化ガリウム;xは0より大きい実数)などを有するパワートランジスタでスイッチ部1324を形成してもよい。また、OSトランジスタを用いた記憶素子は、Siトランジスタを用いた回路上などに積層することで自由に配置可能であるため、集積化を容易に行うことができる。またOSトランジスタは、Siトランジスタと同様の製造装置を用いて作製することが可能であるため、低コストで作製可能である。即ち、スイッチ部1324上にOSトランジスタを用いた制御回路部1320を積層し、集積化することで1チップとすることもできる。制御回路部1320の占有体積を小さくすることができるため、小型化が可能となる。
【0388】
第1のバッテリ1301a、1301bは、主に42V系(高電圧系)の車載機器に電力を供給し、第2のバッテリ1311は14V系(低電圧系)の車載機器に電力を供給する。
【0389】
本実施の形態では、第1のバッテリ1301aと第2のバッテリ1311の両方にリチウムイオン二次電池を用いる一例を示す。第2のバッテリ1311は鉛蓄電池、全固体電池、または電気二重層キャパシタを用いてもよい。例えば、実施の形態4の全固体電池を用いてもよい。第2のバッテリ1311に実施の形態4の全固体電池を用いることで高容量とすることができ、小型化、軽量化することができる。
【0390】
また、タイヤ1316の回転による回生エネルギーは、ギア1305を介してモータ1304に送られ、モータコントローラ1303およびバッテリーコントローラ1302から制御回路部1321を介して第2のバッテリ1311に充電される。またはバッテリーコントローラ1302から制御回路部1320を介して第1のバッテリ1301aに充電される。またはバッテリーコントローラ1302から制御回路部1320を介して第1のバッテリ1301bに充電される。回生エネルギーを効率よく充電するためには、第1のバッテリ1301a、1301bが急速充電可能であることが望ましい。
【0391】
バッテリーコントローラ1302は第1のバッテリ1301a、1301bの充電電圧及び充電電流などを設定することができる。バッテリーコントローラ1302は、用いる二次電池の充電特性に合わせて充電条件を設定し、急速充電することができる。
【0392】
また、図示していないが、外部の充電器と接続させる場合、充電器のコンセントまたは充電器の接続ケーブルは、バッテリーコントローラ1302に電気的に接続される。外部の充電器から供給された電力はバッテリーコントローラ1302を介して第1のバッテリ1301a、1301bに充電する。また、充電器によっては、制御回路が設けられており、バッテリーコントローラ1302の機能を用いない場合もあるが、過充電を防ぐため制御回路部1320を介して第1のバッテリ1301a、1301bを充電することが好ましい。また、充電機のコンセントまたは充電器の接続ケーブルに制御回路を備えている場合もある。制御回路部1320は、ECU(Electronic Control Unit)と呼ばれることもある。ECUは、電動車両に設けられたCAN(Controller Area Network)に接続される。CANは、車内LANとして用いられるシリアル通信規格の一つである。また、ECUは、マイクロコンピュータを含む。また、ECUは、CPUまたはGPUを用いる。
【0393】
充電スタンドなどに設置されている外部の充電器は、100Vコンセント、200Vコンセント、3相200V且つ50kWなどがある。また、非接触給電方式等により外部の充電設備から電力供給を受けて、充電することもできる。
【0394】
急速充電を行う場合、短時間での充電を行うためには、高電圧での充電に耐えうる二次電池が望まれている。
【0395】
また、上述した本実施の形態の二次電池は、前述の実施の形態で得られる正極活物質100を用いている。さらに、導電材としてグラフェンを用い、電極層を厚くして担持量を高くしても容量低下を抑え、高容量を維持することが相乗効果として大幅に電気特性が向上された二次電池を実現できる。特に車両に用いる二次電池に有効であり、車両全重量に対する二次電池の重量の割合を増加させることなく、航続距離が長い、具体的には一充電走行距離が500km以上の車両を提供することができる。
【0396】
特に上述した本実施の形態の二次電池は、前述の実施の形態で説明した正極活物質100を用いることで二次電池の動作電圧を高くすることができ、充電電圧の増加に伴い、使用できる容量を増加させることができる。また、前述の実施の形態で説明した正極活物質100を正極に用いることでサイクル特性に優れた車両用の二次電池を提供することができる。
【0397】
次に、本発明の一態様である二次電池を車両、代表的には輸送用車両に実装する例について説明する。
【0398】
また、図12D図14C図21Aのいずれか一に示した二次電池を車両に搭載すると、ハイブリッド車(HV)、電気自動車(EV)、又はプラグインハイブリッド車(PHV)等の次世代クリーンエネルギー自動車を実現できる。また、農業機械、電動アシスト自転車を含む原動機付自転車、自動二輪車、電動車椅子、電動カート、小型又は大型船舶、潜水艦、固定翼機および回転翼機等の航空機、ロケット、人工衛星、宇宙探査機、惑星探査機、宇宙船などの輸送用車両に二次電池を搭載することもできる。本発明の一態様の二次電池は高容量の二次電池とすることができる。そのため本発明の一態様の二次電池は、小型化、軽量化に適しており、輸送用車両に好適に用いることができる。
【0399】
図22A乃至図22Dにおいて、本発明の一態様を用いた移動体の一例として、輸送用車両を例示する。図22Aに示す自動車2001は、走行のための動力源として電気モータを用いる電気自動車である。または、走行のための動力源として電気モータとエンジンを適宜選択して用いることが可能なハイブリッド自動車である。二次電池を車両に搭載する場合、実施の形態3で示した二次電池の一例を一箇所または複数個所に設置する。図22Aに示す自動車2001は、電池パック2200を有し、電池パックは、複数の二次電池を接続させた二次電池モジュールを有する。さらに二次電池モジュールに電気的に接続する充電制御装置を有すると好ましく、充電制御装置は実施の形態1に記載の第2のアルゴリズム及び第4のアルゴリズムを有することが好ましい。
【0400】
また、自動車2001は、自動車2001が有する二次電池にプラグイン方式および非接触給電方式等により外部の充電設備から電力供給を受けて、充電することができる。充電に際しては、充電方法およびコネクタの規格等はCHAdeMO(登録商標)またはコンボ等の所定の方式で適宜行えばよい。二次電池は、商用施設に設けられた充電ステーションでもよく、また家庭の電源であってもよい。例えば、プラグイン技術によって、外部からの電力供給により自動車2001に搭載された蓄電装置を充電することができる。充電は、ACDCコンバータ等の変換装置を介して、交流電力を直流電力に変換して行うことができる。
【0401】
また、図示しないが、受電装置を車両に搭載し、地上の送電装置から電力を非接触で供給して充電することもできる。この非接触給電方式の場合には、道路または外壁に送電装置を組み込むことで、停車中に限らず走行中に充電を行うこともできる。また、この非接触給電の方式を利用して、2台の車両どうしで電力の送受電を行ってもよい。さらに、車両の外装部に太陽電池を設け、停車時および走行時に二次電池の充電を行ってもよい。このような非接触での電力の供給には、電磁誘導方式または磁界共鳴方式を用いることができる。
【0402】
図22Bは、輸送用車両の一例として電気により制御するモータを有した大型の輸送車2002を示している。輸送車2002の二次電池モジュールは、例えば公称電圧3.0V以上5.0V以下の二次電池を4個セルユニットとし、48セルを直列に接続した170Vの最大電圧とする。電池パック2201の二次電池モジュールを構成する二次電池の数などが違う以外は、図22Aと同様な機能を備えているので説明は省略する。
【0403】
図22Cは、一例として電気により制御するモータを有した大型の輸送車両2003を示している。輸送車両2003の二次電池モジュールは、例えば公称電圧3.0V以上5.0V以下の二次電池を百個以上直列に接続した600Vの最大電圧とする。前述実施の形態で説明した正極活物質100を正極用いた二次電池を用いることで、レート特性および充放電サイクル特性の良好な二次電池を製造することができ、輸送車両2003の高性能化および長寿命化に寄与することができる。また、電池パック2202の二次電池モジュールを構成する二次電池の数などが違う以外は、図22Aと同様な機能を備えているので説明は省略する。
【0404】
図22Dは、一例として燃料を燃焼するエンジンを有した航空機2004を示している。図22Dに示す航空機2004は、離着陸用の車輪を有しているため、輸送車両の一種とも言え、複数の二次電池を接続させて二次電池モジュールを構成し、二次電池モジュールと充電制御装置とを含む電池パック2203を有している。
【0405】
航空機2004の二次電池モジュールは、例えば4Vの二次電池を8個直列に接続した32Vの最大電圧とする。電池パック2203の二次電池モジュールを構成する二次電池の数などが違う以外は、図22Aと同様な機能を備えているので説明は省略する。
【0406】
本実施の形態の内容は、他の実施の形態の内容と適宜組み合わせることができる。
【0407】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様である二次電池を建築物に実装する例について図23Aおよび図23Bを用いて説明する。
【0408】
図23Aに示す住宅は、本発明の一態様である二次電池を有する蓄電装置2612と、ソーラーパネル2610を有する。蓄電装置2612は、ソーラーパネル2610と配線2611等を介して電気的に接続されている。また蓄電装置2612と地上設置型の充電装置2604が電気的に接続されていてもよい。ソーラーパネル2610で得た電力は、蓄電装置2612に充電することができる。また蓄電装置2612に蓄えられた電力は、充電装置2604を介して車両2603が有する二次電池に充電することができる。蓄電装置2612は、床下空間部に設置されることが好ましい。床下空間部に設置することにより、床上の空間を有効的に利用することができる。あるいは、蓄電装置2612は床上に設置されてもよい。
【0409】
蓄電装置2612に蓄えられた電力は、住宅内の他の電子機器にも電力を供給することができる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置2612を無停電電源として用いることで、電子機器の利用が可能となる。
【0410】
図23Bに、本発明の一態様に係る蓄電装置の一例を示す。図23Bに示すように、建物799の床下空間部796には、本発明の一態様に係る蓄電装置791が設置されている。また、蓄電装置791に実施の形態5に説明した制御回路を設けてもよく、前述の実施の形態で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池を蓄電装置791に用いることで長寿命な蓄電装置791とすることができる。
【0411】
蓄電装置791には、制御装置790が設置されており、制御装置790は、配線によって、分電盤703と、蓄電コントローラ705(制御装置ともいう)と、表示器706と、ルータ709と、に電気的に接続されている。制御装置790は、実施の形態1に記載の第2のアルゴリズム及び第4のアルゴリズムを有することが好ましい。
【0412】
商業用電源701から、引込線取付部710を介して、電力が分電盤703に送られる。また、分電盤703には、蓄電装置791と、商業用電源701と、から電力が送られ、分電盤703は、送られた電力を、コンセント(図示せず)を介して、一般負荷707及び蓄電系負荷708に供給する。
【0413】
一般負荷707は、例えば、テレビおよびパーソナルコンピュータなどの電気機器であり、蓄電系負荷708は、例えば、電子レンジ、冷蔵庫、空調機などの電気機器である。
【0414】
蓄電コントローラ705は、計測部711と、予測部712と、計画部713と、を有する。計測部711は、一日(例えば、0時から24時)の間に、一般負荷707、蓄電系負荷708で消費された電力量を計測する機能を有する。また、計測部711は、蓄電装置791の電力量と、商業用電源701から供給された電力量と、を計測する機能を有していてもよい。また、予測部712は、一日の間に一般負荷707及び蓄電系負荷708で消費された電力量に基づいて、次の一日の間に一般負荷707及び蓄電系負荷708で消費される需要電力量を予測する機能を有する。また、計画部713は、予測部712が予測した需要電力量に基づいて、蓄電装置791の充放電の計画を立てる機能を有する。
【0415】
計測部711によって計測された一般負荷707及び蓄電系負荷708で消費された電力量は、表示器706によって確認することができる。また、ルータ709を介して、テレビおよびパーソナルコンピュータなどの電気機器において、確認することもできる。さらに、ルータ709を介して、スマートフォンおよびタブレットなどの携帯電子端末によっても確認することができる。また、表示器706、電気機器、携帯電子端末によって、予測部712が予測した時間帯ごと(または一時間ごと)の需要電力量なども確認することができる。
【0416】
本実施の形態の内容は、他の実施の形態の内容と適宜組み合わせることができる。
【0417】
(実施の形態7)
本実施の形態では、二輪車、自転車に本発明の一態様である蓄電装置を搭載する例を示す。
【0418】
また、図24Aは、本発明の一態様の蓄電装置を用いた電動自転車の一例である。図24Aに示す電動自転車8700に、本発明の一態様の蓄電装置を適用することができる。本発明の一態様の蓄電装置は例えば、複数の蓄電池と、保護回路と、を有する。
【0419】
電動自転車8700は、蓄電装置8702を備える。蓄電装置8702は、運転者をアシストするモータに電気を供給することができる。また、蓄電装置8702は、持ち運びができ、図24Bに自転車から取り外した状態を示している。また、蓄電装置8702は、本発明の一態様の蓄電装置が有する蓄電池8701が複数内蔵されており、そのバッテリ残量などを表示部8703で表示できるようにしている。また蓄電装置8702は、実施の形態5に一例を示した二次電池の充電制御または異常検知が可能な制御回路8704を有する。制御回路8704は、蓄電池8701の正極及び負極と電気的に接続されている。制御回路8704は、実施の形態1に記載の第2のアルゴリズム及び第4のアルゴリズムを有することが好ましい。また、制御回路8704に図20A及び図20Bで示した小型の固体二次電池を設けてもよい。図20A及び図20Bで示した小型の固体二次電池を制御回路8704に設けることで制御回路8704の有するメモリ回路のデータを長時間保持することに電力を供給することもできる。また、前述の実施の形態で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池と組み合わせることで安全性についての相乗効果が得られる。前述の実施の形態で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池及び制御回路8704は、二次電池による火災等の事故撲滅に大きく寄与することができる。
【0420】
また、図24Cは、本発明の一態様の蓄電装置を用いた二輪車の一例である。図24Cに示すスクータ8600は、蓄電装置8602、サイドミラー8601、方向指示灯8603を備える。蓄電装置8602は、方向指示灯8603に電気を供給することができる。また、前述の実施の形態で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池を複数収納された蓄電装置8602は高容量とすることができ、小型化に寄与することができる。
【0421】
また、図24Cに示すスクータ8600は、座席下収納8604に、蓄電装置8602を収納することができる。蓄電装置8602は、座席下収納8604が小型であっても、座席下収納8604に収納することができる。
【0422】
本実施の形態の内容は、他の実施の形態内容と適宜組み合わせることができる。
【0423】
(実施の形態8)
本実施の形態では、本発明の一態様である二次電池を電子機器に実装する例について説明する。二次電池を実装する電子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、又はテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。携帯情報端末としてはノート型パーソナルコンピュータ、タブレット型端末、電子書籍端末、携帯電話機などがある。
【0424】
図25Aは、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機2100は、筐体2101に組み込まれた表示部2102の他、操作ボタン2103、外部接続ポート2104、スピーカ2105、マイク2106などを備えている。なお、携帯電話機2100は、二次電池2107を有している。前述の実施の形態で説明した正極活物質100を正極に用いた二次電池2107を備えることで高容量とすることができ、筐体の小型化に伴う省スペース化に対応できる構成を実現することができる。
【0425】
携帯電話機2100は、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、インターネット通信、コンピュータゲームなどの種々のアプリケーションを実行することができる。
【0426】
操作ボタン2103は、時刻設定のほか、電源のオン、オフ動作、無線通信のオン、オフ動作、マナーモードの実行及び解除、省電力モードの実行及び解除など、様々な機能を持たせることができる。例えば、携帯電話機2100に組み込まれたオペレーティングシステムにより、操作ボタン2103の機能を自由に設定することもできる。
【0427】
また、携帯電話機2100は、通信規格された近距離無線通信を実行することが可能である。例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで通話することもできる。
【0428】
また、携帯電話機2100は外部接続ポート2104を備え、他の情報端末とコネクタを介して直接データのやりとりを行うことができる。また外部接続ポート2104を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は外部接続ポート2104を介さずに無線給電により行ってもよい。
【0429】
携帯電話機2100はセンサを有することが好ましい。センサとして例えば、指紋センサ、脈拍センサ、体温センサ等の人体センサ、タッチセンサ、加圧センサ、加速度センサ、等が搭載されることが好ましい。
【0430】
図25Bは複数のローター2302を有する無人航空機2300である。無人航空機2300はドローンと呼ばれることもある。無人航空機2300は、本発明の一態様である二次電池2301と、カメラ2303と、アンテナ(図示しない)を有する。無人航空機2300はアンテナを介して遠隔操作することができる。前述の実施の形態で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池は高エネルギー密度であり、安全性が高いため、長期間に渡って長時間の安全な使用ができ、無人航空機2300に搭載する二次電池として好適である。
【0431】
図25Cは、ロボットの一例を示している。図25Cに示すロボット6400は、二次電池6409、照度センサ6401、マイクロフォン6402、上部カメラ6403、スピーカ6404、表示部6405、下部カメラ6406および障害物センサ6407、移動機構6408、演算装置等を備える。
【0432】
マイクロフォン6402は、使用者の話し声及び環境音等を検知する機能を有する。また、スピーカ6404は、音声を発する機能を有する。ロボット6400は、マイクロフォン6402およびスピーカ6404を用いて、使用者とコミュニケーションをとることが可能である。
【0433】
表示部6405は、種々の情報の表示を行う機能を有する。ロボット6400は、使用者の望みの情報を表示部6405に表示することが可能である。表示部6405は、タッチパネルを搭載していてもよい。また、表示部6405は取り外しのできる情報端末であっても良く、ロボット6400の定位置に設置することで、充電およびデータの受け渡しを可能とする。
【0434】
上部カメラ6403および下部カメラ6406は、ロボット6400の周囲を撮像する機能を有する。また、障害物センサ6407は、移動機構6408を用いてロボット6400が前進する際の進行方向における障害物の有無を察知することができる。ロボット6400は、上部カメラ6403、下部カメラ6406および障害物センサ6407を用いて、周囲の環境を認識し、安全に移動することが可能である。
【0435】
ロボット6400は、その内部領域に本発明の一態様に係る二次電池6409と、半導体装置または電子部品を備える。前述の実施の形態で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池は高エネルギー密度であり、安全性が高いため、長期間に渡って長時間の安全な使用ができ、ロボット6400に搭載する二次電池6409として好適である。
【0436】
図25Dは、掃除ロボットの一例を示している。掃除ロボット6300は、筐体6301上面に配置された表示部6302、側面に配置された複数のカメラ6303、ブラシ6304、操作ボタン6305、二次電池6306、各種センサなどを有する。図示されていないが、掃除ロボット6300には、タイヤ、吸い込み口等が備えられている。掃除ロボット6300は自走し、ゴミ6310を検知し、下面に設けられた吸い込み口からゴミを吸引することができる。
【0437】
例えば、掃除ロボット6300は、カメラ6303が撮影した画像を解析し、壁、家具または段差などの障害物の有無を判断することができる。また、画像解析により、配線などブラシ6304に絡まりそうな物体を検知した場合は、ブラシ6304の回転を止めることができる。掃除ロボット6300は、その内部領域に本発明の一態様に係る二次電池6306と、半導体装置または電子部品を備える。前述の実施の形態で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池は高エネルギー密度であり、安全性が高いため、長期間に渡って長時間の安全な使用ができ、掃除ロボット6300に搭載する二次電池6306として好適である。
【0438】
図26Aは、ウェアラブルデバイスの例を示している。ウェアラブルデバイスは、電源として二次電池を用いる。また、使用者が生活または屋外で使用する場合において、防沫性能、耐水性能または防塵性能を高めるため、接続するコネクタ部分が露出している有線による充電だけでなく、無線充電も行えるウェアラブルデバイスが望まれている。
【0439】
例えば、図26Aに示すような眼鏡型デバイス4000に本発明の一態様である二次電池を搭載することができる。眼鏡型デバイス4000は、フレーム4000aと、表示部4000bを有する。湾曲を有するフレーム4000aのテンプル部に二次電池を搭載することで、軽量であり、且つ、重量バランスがよく継続使用時間の長い眼鏡型デバイス4000とすることができる。前述の実施の形態で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池は高エネルギー密度であり、筐体の小型化に伴う省スペース化に対応できる構成を実現することができる。
【0440】
また、ヘッドセット型デバイス4001に本発明の一態様である二次電池を搭載することができる。ヘッドセット型デバイス4001は、少なくともマイク部4001aと、フレキシブルパイプ4001bと、イヤフォン部4001cを有する。フレキシブルパイプ4001b内またはイヤフォン部4001c内に二次電池を設けることができる。前述の実施の形態で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池は高エネルギー密度であり、筐体の小型化に伴う省スペース化に対応できる構成を実現することができる。
【0441】
また、身体に直接取り付け可能なデバイス4002に本発明の一態様である二次電池を搭載することができる。デバイス4002の薄型の筐体4002aの中に、二次電池4002bを設けることができる。前述の実施の形態で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池は高エネルギー密度であり、筐体の小型化に伴う省スペース化に対応できる構成を実現することができる。
【0442】
また、衣服に取り付け可能なデバイス4003に本発明の一態様である二次電池を搭載することができる。デバイス4003の薄型の筐体4003aの中に、二次電池4003bを設けることができる。前述の実施の形態で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池は高エネルギー密度であり、筐体の小型化に伴う省スペース化に対応できる構成を実現することができる。
【0443】
また、ベルト型デバイス4006に本発明の一態様である二次電池を搭載することができる。ベルト型デバイス4006は、ベルト部4006aおよびワイヤレス給電受電部4006bを有し、ベルト部4006aの内部領域に、二次電池を搭載することができる。前述の実施の形態で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池は高エネルギー密度であり、筐体の小型化に伴う省スペース化に対応できる構成を実現することができる。
【0444】
また、腕時計型デバイス4005に本発明の一態様である二次電池を搭載することができる。腕時計型デバイス4005は表示部4005aおよびベルト部4005bを有し、表示部4005aまたはベルト部4005bに、二次電池を設けることができる。前述の実施の形態で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池は高エネルギー密度であり、筐体の小型化に伴う省スペース化に対応できる構成を実現することができる。
【0445】
表示部4005aには、時刻だけでなく、メールおよび電話の着信等、様々な情報を表示することができる。
【0446】
また、腕時計型デバイス4005は、腕に直接巻きつけるタイプのウェアラブルデバイスであるため、使用者の脈拍、血圧等を測定するセンサを搭載してもよい。使用者の運動量および健康に関するデータを蓄積し、健康を管理することができる。
【0447】
図26Bに腕から取り外した腕時計型デバイス4005の斜視図を示す。
【0448】
また、側面図を図26Cに示す。図26Cには、内部領域に二次電池913を内蔵している様子を示している。二次電池913は実施の形態3に示した二次電池である。二次電池913は表示部4005aと重なる位置に設けられており、高密度、且つ、高容量とすることができ、小型、且つ、軽量である。
【0449】
腕時計型デバイス4005においては、小型、且つ、軽量であることが求められるため、前述の実施の形態で得られる正極活物質100を二次電池913の正極に用いることで、高エネルギー密度、且つ、小型の二次電池913とすることができる。
【0450】
図26Dはワイヤレスイヤホンの例を示している。ここでは一対の本体4100aおよび本体4100bを有するワイヤレスイヤホンを図示するが、必ずしも一対でなくてもよい。
【0451】
本体4100aおよび4100bは、ドライバユニット4101、アンテナ4102、二次電池4103を有する。表示部4104を有していてもよい。また無線用IC等の回路が載った基板、充電用端子等を有することが好ましい。またマイクを有していてもよい。
【0452】
ケース4110は、二次電池4111を有する。また無線用IC、充電制御IC等の回路が載った基板、充電用端子を有することが好ましい。また表示部、ボタン等を有していてもよい。
【0453】
本体4100aおよび4100bは、スマートフォン等の他の電子機器と無線で通信することができる。これにより他の電子機器から送られた音データ等を本体4100aおよび4100bで再生することができる。また本体4100aおよび4100bがマイクを有すれば、マイクで取得した音を他の電子機器に送り、該電子機器により処理をした後の音データ再び本体4100aおよび4100bに送って再生することができる。これにより、たとえば翻訳機として用いることもできる。
【0454】
またケース4110が有する二次電池4111から、本体4100aが有する二次電池4103に充電を行うことができる。二次電池4111および二次電池4103としては先の実施の形態のコイン型二次電池、円筒形二次電池等を用いることができる。前述の実施の形態で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池は高エネルギー密度であり、二次電池4103および二次電池4111に用いることで、ワイヤレスイヤホンの小型化に伴う省スペース化に対応できる構成を実現することができる。
【0455】
図25A乃至図25Dに示した電子機器が有する二次電池は、実施の形態1に記載の第2のアルゴリズム及び第4のアルゴリズムを有する制御部を備えることが好ましい。または、電子機器自体が実施の形態1に記載の第2のアルゴリズム及び第4のアルゴリズムを有していてもよい。
【0456】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0457】
1:サーバ装置、2:電子機器、3:蓄電装置、4:制御部、5:蓄電池、6:クーロンカウンタ、7:通信ネットワーク、11:第1のデータ、12:第2のデータ、21:第1のアルゴリズム、22:第2のアルゴリズム、23:第3のアルゴリズム、24:第4のアルゴリズム、31:第1のニューラルネットワーク、32:第2のニューラルネットワーク、33:第3のニューラルネットワーク、34:第4のニューラルネットワーク、61:SOC-OCV特性データリスト、62:第1のSOC-OCV特性データ、63:第2のSOC-OCV特性データ、71:蓄電装置で推定したR値、71a:蓄電装置で推定した1時点前のR値、71b:蓄電装置で推定したR値、72:サーバ装置が推定したFCC
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図12C
図12D
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図14C
図15A
図15B
図16A
図16B
図16C
図17A
図17B
図17C
図18A
図18B
図19A
図19B
図19C
図20A
図20B
図21A
図21B
図21C
図22A
図22B
図22C
図22D
図23A
図23B
図24A
図24B
図24C
図25A
図25B
図25C
図25D
図26A
図26B
図26C
図26D