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特許7757644ゲル状組成物の冷凍物およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-10-14
(45)【発行日】2025-10-22
(54)【発明の名称】ゲル状組成物の冷凍物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 21/00 20160101AFI20251015BHJP
   A23B 2/80 20250101ALI20251015BHJP
   A23B 2/82 20250101ALI20251015BHJP
   A23G 3/52 20060101ALI20251015BHJP
   A23L 29/10 20160101ALI20251015BHJP
【FI】
A23L21/00
A23B2/80 A
A23B2/82 A
A23G3/52
A23L29/10
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021106951
(22)【出願日】2021-06-28
(65)【公開番号】P2023005187
(43)【公開日】2023-01-18
【審査請求日】2024-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100158724
【弁理士】
【氏名又は名称】竹井 増美
(72)【発明者】
【氏名】大野 洵
(72)【発明者】
【氏名】山村 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 圭佑
【審査官】中山 基志
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-063053(JP,A)
【文献】特開2011-103841(JP,A)
【文献】特開平01-257434(JP,A)
【文献】特開2016-029903(JP,A)
【文献】特開2010-227073(JP,A)
【文献】ソフリ総合カタログ,株式会社ヤヨイサンフーズ,2018年,https://frozenfoodcatalogue.com/yayoi-sunfoods-sofli/
【文献】味の素冷凍食品の病院・介護施設給食,味の素冷凍食品株式会社,2019年
【文献】日本食品標準成分表2015年版(七訂)鶏卵_卵黄_生,2015年,http://web.archive.org/web/20201129081401/https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=12_12010_7
【文献】日本食品標準成分表2015年版(七訂)油脂類_(バター類)_食塩不使用バター,2015年,http://web.archive.org/web/20190318123307/https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=14_14018_7
【文献】日本食品標準成分表2020年版(八訂)乳類_<牛乳及び乳製品>_(練乳類)_加糖練乳,2020年,http://web.archive.org/web/20220707105257/https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=13_13013_7
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23B2/80-2/97;20/00-20/30;80/00
A23D7/00-9/05
A23G1/00-9/52
A23L21/00-21/25;29/20-29/206;29/231-29/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂をゲル状組成物の全量に対し10重量%~40重量%、およびHLB値が11~15である乳化剤を含有し、ブリックス値が24%~60%であるゲル状組成物の冷凍物。
【請求項2】
ゲル状組成物が、ゼラチン、寒天、ローカストビーンガム、カラギーナンおよびペクチンからなる群より選択される1種以上を含有する、請求項1に記載の冷凍物。
【請求項3】
ゲル状組成物が乳化組成物である、請求項1または2に記載の冷凍物。
【請求項4】
乳化組成物が水中油型乳化組成物である、請求項に記載の冷凍物。
【請求項5】
ゲル状組成物が気泡を含有する、請求項1~のいずれか1項に記載の冷凍物。
【請求項6】
マイクロウェーブ加熱により解凍した際の液状化および解凍の偏りが抑制される、請求項1~のいずれか1項に記載の冷凍物。
【請求項7】
マイクロウェーブ加熱の条件が、1gあたり200W・秒~400W・秒である、請求項に記載の冷凍物。
【請求項8】
油脂をゲル状組成物の全量に対し10重量%~40重量%、およびHLB値が11~15である乳化剤を含有し、ブリックス値が24%~60%であるゲル状組成物を調製する工程、および前記ゲル状組成物を冷凍する工程を含む、ゲル状組成物の冷凍物の製造方法。
【請求項9】
ゲル状組成物が、ゼラチン、寒天、ローカストビーンガム、カラギーナンおよびペクチンからなる群より選択される1種以上を含有する、請求項に記載の製造方法。
【請求項10】
ゲル状組成物を乳化組成物とする、請求項8または9に記載の製造方法。
【請求項11】
乳化組成物が水中油型乳化組成物である、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
ゲル状組成物を冷凍する工程の前に、ゲル状組成物を起泡する工程を含む、請求項11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
マイクロウェーブ加熱により解凍した際の液状化および解凍の偏りが抑制される冷凍物の製造方法である、請求項12のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
マイクロウェーブ加熱の条件が、冷凍物1gあたり200W・秒~400W・秒である、請求項13に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロウェーブ加熱に適するゲル状組成物の冷凍物、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍食品の普及に伴い、ゼリーやムース等、ゲル状のデザートについても、冷凍状態の製品が上市されている。従来、これらの冷凍品は、冷蔵庫内または常温下にしばらく静置して解凍し、喫食されていた。
しかし、マイクロウェーブ調理器の普及により、冷凍食品を短時間で簡便に解凍することが可能となるに伴い、冷凍されたゲル状のデザートについても、マイクロウェーブ加熱による解凍が行われるに至り、加熱によるゲル状組成物の溶け(液状化)、ゲル状組成物の中心まで解凍されない(解凍の偏り)といった課題が存在することが明らかとなった。
【0003】
冷凍されたデザートをマイクロウェーブ加熱した際にも、おいしく喫食できるようにする技術として、ジエランガムまたはジエランガムと高分子多糖類を1種以上用いる技術(特許文献1)や、冷凍されたゼリー類をマイクロウェーブ加熱した際の食感を改善する技術として、加熱凝固性多糖類であるカードランを用いる技術が提案されている(特許文献2)。
また、電子レンジで加熱し、ゼリーが喫食適温になったときに上層部のゲルのみを完全に溶解させ、それが溶解していない下層部のゲル全体にかかった状態で喫食できる加熱喫食用二層ゼリーとして、κ-カラギーナンおよび/またはι-カラギーナンとキサンタンガムからなるゲルを上層部とし、ジェランガムからなるゲルを下層部とした加熱喫食用二層ゼリーが提案されている(特許文献3)。
しかしながら、冷凍されるゲル状組成物の調製に用いるゲル化剤の選択や組み合わせを工夫するのみでは、マイクロウェーブ加熱の際のゲル状組成物の保形性を十分に維持し、かつ、解凍の偏りを十分に改善することができなかった。
【0004】
そこで、マイクロウェーブ加熱に適し、マイクロウェーブ加熱の際の保形性が良好で、ゲル状組成物の液状化が抑制され、解凍の偏りが改善されて、良好に解凍され得るゲル状組成物の冷凍物が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平1-257434号公報
【文献】特開平2-000411号公報
【文献】特開平9-187232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、マイクロウェーブ加熱に適し、マイクロウェーブ加熱した際の保形性が良好で、ゲル状組成物の液状化が抑制され、解凍の偏りが改善されて、良好に解凍され得るゲル状組成物の冷凍物を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、油脂を含有するゲル状組成物のブリックス値を24%~60%として、冷凍物とすることにより、マイクロウェーブ加熱の際の保形性が良好となり、ゲル状組成物の液状化が抑制され、かつ、解凍の偏りが改善されることを見出し、さらに検討して、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下に関する。
[1]油脂を含有し、ブリックス値が24%~60%であるゲル状組成物の冷凍物。
[2]油脂の含有量が、ゲル状組成物の全量に対し5重量%~46重量%である、[1]に記載の冷凍物。
[3]ゲル状組成物が乳化剤を含有する、[1]または[2]に記載の冷凍物。
[4]乳化剤のHLB値が11~15である、[3]に記載の冷凍物。
[5]ゲル状組成物が、ゼラチン、寒天、ローカストビーンガム、カラギーナンおよびペクチンからなる群より選択される1種以上を含有する、[1]~[4]のいずれかに記載の冷凍物。
[6]ゲル状組成物が乳化組成物である、[1]~[5]のいずれかに記載の冷凍物。
[7]乳化組成物が水中油型乳化組成物である、[6]に記載の冷凍物。
[8]ゲル状組成物が気泡を含有する、[1]~[7]のいずれかに記載の冷凍物。
[9]マイクロウェーブ加熱に適する、[1]~[8]のいずれかに記載の冷凍物。
[10]マイクロウェーブ加熱の条件が、1gあたり200W・秒~400W・秒である、[9]に記載の冷凍物。
[11]油脂を含有し、ブリックス値が24%~60%であるゲル状組成物を調製する工程、および前記ゲル状組成物を冷凍する工程を含む、ゲル状組成物の冷凍物の製造方法。
[12]油脂の含有量を、ゲル状組成物の全量に対し5重量%~46重量%とする、[11]に記載の製造方法。
[13]ゲル状組成物が乳化剤を含有する、[11]または[12]に記載の製造方法。
[14]乳化剤のHLB値が11~15である、[13]に記載の製造方法。
[15]ゲル状組成物が、ゼラチン、寒天、ローカストビーンガム、カラギーナンおよびペクチンからなる群より選択される1種以上を含有する、[11]~[14]のいずれかに記載の製造方法。
[16]ゲル状組成物を乳化組成物とする、[11]~[15]のいずれかに記載の製造方法。
[17]乳化組成物が水中油型乳化組成物である、[16]に記載の製造方法。
[18]ゲル状組成物を冷凍する工程の前に、ゲル状組成物を起泡する工程を含む、[11]~[17]のいずれかに記載の製造方法。
[19]マイクロウェーブ加熱に適する冷凍物の製造方法である、[11]~[18]のいずれかに記載の製造方法。
[20]マイクロウェーブ加熱の条件が、冷凍物1gあたり200W・秒~400W・秒である、[19]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、マイクロウェーブ加熱に適し、マイクロウェーブ加熱の際の保形性が良好で、ゲル状組成物の液状化が抑制され、かつ、解凍の偏りが改善されたゲル状組成物の冷凍物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、マイクロウェーブ加熱に適するゲル状組成物の冷凍物(以下、本明細書にて、「本発明の冷凍物」ともいう)を提供する。
本発明の冷凍物は、油脂を含有し、ブリックス値が24%~60%であるゲル状組成物の冷凍物である。
【0011】
本発明の冷凍物の調製に用いられるゲル状組成物に含有される油脂としては、前記ゲル状組成物に均一に分散され得る可食性の油脂であれば、特に制限されず、アボカド油、アマニ油、アーモンド油、アンズ油、エゴマ油、オリーブ油、カカオ脂、カシス油、カシュー油、キャノーラ油、クルミ油、ゴマ油、コムギ油、コメ油、シソ油、大豆油、月見草油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、パーム油、パーム核油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、ヘーゼルナッツ油、ベニバナ油、マカダミア油、綿実油、ヤシ油、落花生油等の植物性油脂;サラダ油等の精製加工油脂;牛脂、鯨油、鮫油、豚脂等の動物性油脂、バター、マーガリン、ショートニング、カカオ代用脂等の半固形状または固形状の加工油脂等が例示される。
本発明の冷凍物をマイクロウェーブ加熱により解凍した際のゲル状組成物の食感に及ぼす影響等の観点からは、ショートニング、ナタネ油、バター、マーガリン等が好ましく用いられる。
本発明においては、上記油脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を選択して混合して用いてもよい。
なお、上記油脂としては、各社より食品用として提供されている市販の製品を利用することができる。
本発明の冷凍物の調製に用いられるゲル状組成物における油脂の含有量は、5重量%~46重量%であることが好ましく、10重量%~40重量%であることがより好ましい。
【0012】
本発明の冷凍物の調製に用いるゲル状組成物においては、ブリックス値が24%~60%であり、好ましくは30%~55%であり、より好ましくは36%~50%である。
ここで、「ブリックス値」とは、ショ糖、果糖、転化糖、ブドウ糖等、いわゆる糖の含有量を測るために、糖度として用いられる物理量であり、20℃のショ糖溶液の質量百分率に相当する値で定められている。すなわち、ショ糖1gのみを溶質として含有する水溶液100gをBrix屈折計(糖度屈折計)で測定したとき、その示度(ブリックス値)が1%であるとされ、前記ショ糖溶液と同じ糖度屈折計の値を示す溶液のブリックス値が1%であると定義される。
【0013】
本発明において、上記ゲル状組成物のブリックス値は、ゲル状組成物に添加される糖の種類および添加量により調整することができる。
ゲル状組成物に添加し得る糖としては、食品に糖質として用いられる糖であれば、特に制限されず、単糖類、二糖類、オリゴ糖、転化糖等が挙げられる。
単糖類としては、エリトロース、トレオース等のアルドテトロース;エリトルロース等のケトテトロース;リボース、リキソース、キシロース、アラビノース、アピオース等のアルドペントース;リブロース、キシルロース等のケトペントース;アロース、タロース、グロース、グルコース(ブドウ糖)、アルトロース、マンノース、ガラクトース、イドース等のアルドヘキソース;プシコース、フルクトース(果糖)、ソルボース、タガトース等のケトヘキソース;セドヘプツロース等のケトヘプトース等が例示される。
二糖類としては、トレハロース、コージビオース、ニゲロース、マルトース、イソマルトース、ラクトース、スクロース(ショ糖)等が挙げられる。
オリゴ糖としては、フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳菓オリゴ糖等が挙げられる。
転化糖とは、酸または酵素(インベルターゼ)により、ショ糖を加水分解して得られる果糖およびブドウ糖の混合物である。
本発明においては、上記の糖は1種を単独で用いてもよく、2種以上を選択して混合して用いてもよい。
本発明においては、糖としては、グルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)、スクロース(ショ糖)、トレハロース等が好ましく用いられる。
なお、上記糖としては、各社より食品用として提供されている市販の製品を利用することができる。
【0014】
本明細書において、「ゲル状組成物」とは、ゾルと同じく液体分散媒のコロイドに分類される組成物のうち、常温において流動性のない固体状の組成物をいう。
本発明において、安定なゲル状組成物を形成するためには、ゲル化剤を用いることが好ましい。本発明においては、液体分散媒のコロイドをゲル化することができ、可食性であるゲル化剤であれば、特に制限されることなく用いることができ、たとえば、寒天、ペクチン、グアーガム、ローカストビーンガム、タマリンドガム、カラギーナン等の植物性多糖類;キサンタンガム等の微生物由来の多糖類;カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の半合成水溶性高分子;ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン等の合成水溶性高分子;ゼラチン等のタンパク質が挙げられる。
本発明において、上記したゲル化剤は、1種を選択して単独で、または2種以上を選択して組み合わせて用いることができる。
本発明においては、得られるゲル状組成物の食感等の観点から、寒天、ペクチン、ローカストビーンガム、カラギーナン、ゼラチン等が好ましく用いられる。
なお、上記ゲル化剤としては、各社より食品用として提供されている市販の製品を利用することができる。
【0015】
本発明の冷凍物の調製に用いられるゲル状組成物におけるゲル化剤の含有量は、ゲル化剤の種類や特性、求められるゲル状組成物の性質(ゲル強度等)に応じて、適宜設定することができるが、ゲル状組成物の全量に対して、通常0.1重量%~3重量%であり、好ましくは0.5重量%~2重量%であり、より好ましくは1重量%~2重量%である。
【0016】
本発明において、ゲル状組成物には、上記した油脂から選択される1種または2種以上が分散される。
油脂の分散安定化には、ゲル化剤として上記した多糖類や水溶性高分子等も寄与し得るが、油脂の分散安定性の観点からは、乳化剤を用いて油脂を乳化することが好ましい。
油脂の乳化に用い得る乳化剤としては、食品に使用することができる可食性の乳化剤であれば特に制限されることなく使用することができ、たとえば、グリセリン脂肪酸エステル(グリセリンステアリン酸エステル、グリセリンオレイン酸エステル等)、有機酸モノグリセリド(酢酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、コハク酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド等)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(ポリグリセリンステアリン酸エステル、ポリグリセリンオレイン酸エステル等)、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル(プロピレングリコールステアリン酸エステル、プロピレングリコールオレイン酸エステル等)、ショ糖脂肪酸エステル(ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖オレイン酸エスエル、ショ糖酢酸エステル、ショ糖イソ酪酸エステル等)、レシチン(植物レシチン、卵黄レシチン等)、酵素分解レシチン等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。
本発明においては、上記乳化剤は、1種を選択して単独で用いてもよく、2種以上を選択して組み合わせて用いてもよい。
ゲル状組成物における油脂の乳化分散効果の観点からは、本発明において乳化剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等が好ましく用いられる。また、本発明においては、親水性で、水中油型乳化物の調製に適する乳化剤が好ましく、HLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance)値が11~15である乳化剤がより好ましい。
なお、上記乳化剤としては、各社より食品用として提供されている市販の製品を利用することができる。
【0017】
本発明において、ゲル状組成物における上記乳化剤の添加量は、油脂の種類や含有量、乳化剤の種類等に応じて適宜設定されるが、油脂を5重量%~46重量%含有するゲル状組成物において、通常0.01重量%~2重量%であり、好ましくは0.1重量%~1.5重量%である。
本発明において、油脂は乳化によりゲル状組成物に分散されることが好ましく、水中油型乳化により分散されることがより好ましい。
【0018】
本発明の冷凍物の調製に用いられるゲル状組成物には、上記した油脂、糖、ゲル化剤、乳化剤の他に、本発明の特徴を損なわない範囲で、ゲル状の食品に含有される通常の栄養成分や添加剤を含有させることができる。
上記栄養成分としては、卵黄、カゼイン、コラーゲン、大豆タンパク質等のタンパク質;タンパク加水分解物;タンパク部分分解物;L-アスパラギン酸ナトリウム、DL-アラニン、L-イソロイシン等のアミノ酸;ビタミンA(レチノール等)、カロテノイド(β-カロテン等)、ビタミンB群(ビタミンB、B、B、B12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン等)、ビタミンC(L-アスコルビン酸等)、ビタミンD(エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール等)、ビタミンE(α-トコフェロール、γ-トコフェロール等)、ビタミンK(フィロキノン、メナキノン、メナジオン等)等のビタミン;亜鉛塩、塩化カルシウム、塩化第二鉄等のミネラル等が挙げられる。
また、上記添加剤としては、水(精製水、水道水等の食品製造用水)、多価アルコール(グリセリン等)等の溶剤;アルギン酸、澱粉等の増粘剤;食塩、砂糖、醤油、アミノ酸塩、核酸、酵母エキス等の調味料;野菜エキス、果実エキス、畜肉エキス、魚介エキス等のエキス;有機酸塩(フマル酸塩等)等のpH調整剤;色素;酸味料;香料等が挙げられる。
本発明においては、上記した栄養成分および添加剤は、1種または2種以上を用いることができ、ゲル状の食品における通常の使用量等に準じて用いることができる。
【0019】
従って、本発明の冷凍物の調製に用いられるゲル状組成物は、油脂、ブリックス値を24%~60%の範囲に調整し得る糖、ゲル化剤および乳化剤、ならびに必要に応じて、栄養成分や添加剤を含有し、好ましくは乳化組成物として調製され、より好ましくは水中油型乳化組成物として調製される。
【0020】
本発明の冷凍物は、油脂を含有し、ブリックス値が24%~60%であるゲル状組成物を調製し、該ゲル状組成物を冷凍することにより、調製することができる。
油脂を含有し、ブリックス値が24%~60%であるゲル状組成物は、油脂を分散させたゲル状組成物、または油脂を乳化させてなるゲル状組成物の調製方法として、通常採用される方法により調製することができる。
たとえば、ブリックス値を24%~60%の範囲に調整し得る糖、乳化剤および必要に応じて添加される親水性添加剤を食品製造用水に加えて混合し、75℃~85℃程度に加熱して均一とした水相成分に、油脂に必要に応じて添加される親油性添加剤を加えて混合し、75℃~85℃程度に加熱して均一とした油相成分を徐々に添加して攪拌混合する、または、油脂および親油性添加剤、糖、乳化剤および親水性乳化剤を食品製造用水に添加して攪拌混合し、75℃~85℃程度に加熱してホモジナイズ処理する等して乳化させた後、別途ゲル化剤を食品製造用水に加えて攪拌混合し、75℃~85℃程度に加熱して調製したゲル化液と混合し、冷却してゲル状組成物とすることができる。
ゲル状組成物の冷凍は、エアブラスト冷凍機、液化ガス冷凍機、コンタクト冷凍機等、食品の分野で通常ゲル状食品の急速冷凍に用いられる冷凍機を用いて、ゲル状組成物の種類や量等に応じて、適宜行うことができる。
【0021】
本発明において、冷凍物の解凍のしやすさの観点から、本発明の冷凍物の調製に用いられるゲル状組成物は、気泡を含有することが好ましい。気泡は、乳化剤の起泡作用によりゲル状組成物に含有させることができ、たとえば、ハンドミキサー、連続式発泡機等を用いてゲル状組成物を起泡させることにより、含有させることができる。
ゲル状組成物に気泡を含有させ得る起泡性乳化剤としては、食品の分野で起泡性乳化剤として用いられるものであれば、特に制限されることなく用いることができるが、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルおよびソルビタン脂肪酸エステルの混合物等が好ましく用いられる。
【0022】
本発明において、ゲル状組成物は、一層のゲル状組成物であってもよく、二層以上の多層のゲル状組成物であってもよい。多層のゲル状組成物は、食品用の多層ゲル状組成物の通常の製造方法に従って、製造することができる。
また、本発明の冷凍物の調製に用いられるゲル状組成物には、生クリームや、植物性油脂を乳化させて調製されるホイップクリーム等により、トッピングを行ってもよい。かかるトッピングは、通常用いられる原材料により、通常の方法で行うことができる。
【0023】
本発明の冷凍物は、マイクロウェーブ加熱に適し、マイクロウェーブ加熱により解凍した際のゲル状組成物の保形性が良好で、該組成物の液状化が抑制され、かつ、解凍の偏りが改善される。
なお、マイクロウェーブ加熱の条件は、特に制限されないが、本発明の冷凍物1gに対し、200W・秒~400W・秒の条件で行われることが好ましく、260W・秒~300W・秒の条件で行われることがより好ましい。
【0024】
また、本発明は、マイクロウェーブ加熱に適するゲル状組成物の冷凍物の製造方法(以下、本明細書にて「本発明の製造方法」ともいう)を提供する。
本発明の製造方法は、油脂を含有し、ブリックス値が24%~60%であるゲル状組成物を調製する工程、および前記ゲル状組成物を冷凍する工程を含む。
【0025】
本発明の製造方法において、ゲル状組成物に含有される油脂については、本発明の冷凍物において上記した通りである。
本発明の製造方法において、ゲル状組成物のブリックス値は、ゲル状組成物に添加される糖の種類および添加量により24%~60%に調整され、好ましくは30%~55%に調整され、より好ましくは36%~50%に調整される。
ゲル状組成物に含有される糖、およびブリックス値の測定方法については、本発明の冷凍物において上記した通りである。
本発明の製造方法において、ゲル状組成物の調製に用いるゲル化剤、および油脂の分散、乳化に用いる乳化剤、ならびに調製されるゲル状組成物については、本発明の冷凍物において上記した通りである。
本発明の製造方法において、ゲル状組成物を冷凍する工程は、本発明の冷凍物において上記した急速冷凍機を用いて、食品を急速冷凍する際に通常採用される条件(温度、時間等)にて行うことができる。
【0026】
本発明の製造方法は、ゲル状組成物を冷凍する工程の前に、ゲル状組成物を起泡して気泡を含有させる工程を含むことが好ましい。ゲル状組成物の起泡については、本発明の冷凍物について上記した通りである。
また、本発明の製造方法は、ゲル状組成物を冷凍する工程の前に、ゲル状組成物にトッピングを施す工程を含むことができる。ゲル状組成物のトッピングについては、本発明の冷凍物について上記した通りである。
【0027】
さらに、本発明の製造方法は、ゲル状組成物をプラスチック容器等に充填する工程、プラスチックフィルム等により包装する工程等、冷凍食品の製造において通常採用される充填、包装工程を含むことができる。
【0028】
本発明の製造方法により、マイクロウェーブ加熱に適するゲル状組成物の冷凍物を製造することができる。
本発明の製造方法により製造されたゲル状組成物の冷凍物では、マイクロウェーブ加熱により解凍した際のゲル状組成物の保形性が良好で、該組成物の液状化が抑制され、かつ、解凍の偏りが改善される。
なお、マイクロウェーブ加熱の条件については、本発明の冷凍物について上記した通りである。
【実施例
【0029】
以下、本発明について、実施例によりさらに詳細に説明する。なお、以下の実施例および比較例において、冷凍ムースの調製に用いた油脂、乳化剤、糖、ゲル化剤およびその他の原材料としては、いずれも食品用として提供されている市販の製品を用い、水としては、食品製造用水を用いた。
【0030】
[実施例1~4、比較例1]冷凍ムース
表1に示す組成に基づき、下記の方法により、実施例1~4および比較例1の冷凍ムース(一層)を調製した。調製した各ムースについて、Brix屈折計(「糖度計RA-250H」、京都電子工業株式会社)により、ブリックス値を測定した。
<製造方法>
表1中の(1)~(4)の成分を攪拌混合した後、80℃まで加熱し、ホモジナイザー(「ウルトラタラックス2」、IKA社)にてホモジナイズ処理を行い、乳化物を調製した。別途、(5)~(7)の成分を混合し80℃まで加熱してゲル化液を調製し、前記乳化物と混合して、カップに50gずつ充填した。次いで、急速冷凍機(「MC-173」、中野冷機株式会社)にて-30℃にて60分間冷却して冷凍した。
【0031】
【表1】
【0032】
実施例1~4および比較例1の各冷凍ムースを、電子レンジ(「NE-1901」、パナソニック株式会社)にて1,900Wで7秒間(実施例3の冷凍ムースは6秒間)加熱して解凍し、解凍されたムースについて、パネリスト4名に外観を観察させ、側面および中心部の固さを評価させた。評価結果は、パネリスト4名の合議により決し、下記の評価基準に従って、「◎」、「○」、「×」の三段階にて表した。評価結果を、ブリックス値の測定結果とともに表2に示した。
<評価基準>
(1)外観
ムースの形状が良好に維持されている;◎
ムースの形状が維持されているがやや軟化している;○
ムースが溶けており、液状化している;×
(2)側面の固さ
スプーンで掬った際に、形状が保たれている;◎
スプーンで掬った際に、形状がやや保たれている(掬った断面の形状がやや残る);○
側面が液状化している;×
(3)中心部の固さ
解凍されており、スプーンが抵抗なく入る;◎
ほぼ解凍されているが、スプーンがやや入りにくい;○
解凍されておらず、スプーンが自然に入らない;×
【0033】
【表2】
【0034】
表2に示されるように、ブリックス値が44.9である実施例1の冷凍ムースでは、電子レンジで解凍した際、ムースの形状が良好に維持され、側面における液状化も見られず、中心部も良好に解凍されていると評価された。
ブリックス値がそれぞれ24.2および57.1である実施例2および3の各冷凍ムースでは、電子レンジで解凍した後のムースの外観は「◎」と評価され、ムースの形状は良好に維持されていたが、側面の保形性がやや低下し、中心部において解凍がやや不十分な箇所があると評価された。ブリックス値が60以上である実施例4の冷凍ムースでは、電子レンジで解凍した後に、ムースの形状は維持されているものの、やや軟化しており、中心部の解凍が許容範囲ではあるものの、やや不十分であると評価された。
一方、ブリックス値が16.5%である比較例1の冷凍ムースでは、電子レンジで解凍した際、側面部の液状化が見られ、中心部の解凍が不十分であると評価された。
以上の結果から、マイクロウェーブ調理器により加熱解凍する際に、ゲルの保形性を良好に保ち、解凍の偏りを解消するには、ゲル状組成物のブリックス値を24%~60%に調整することが好ましいことが示唆された。
【0035】
[実施例5~8、比較例2]冷凍ムースの解凍性に対するゲル化剤の種類の影響の検討
表3に示す組成に基づき、下記方法により冷凍ムースを調製した。起泡性乳化剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルの混合物、エタノール、D-ソルビトールおよびプロピレングリコールの水溶液を用いた。
<製造方法>
表3中、成分(7)~(11)、(14)を成分(2)に添加し、攪拌混合した後、加熱溶解した成分(1)、(12)、(13)を添加して80℃に加熱し、ホモジナイザー(「ウルトラタラックス2」、IKA社)を用いてホモジナイズ処理し、乳化物を調製した。別途、成分(3)、(4)を成分(5)に加えて攪拌混合し、80℃に加熱してゲル化液を調製し、前記乳化物と混合して、カップに50gずつ充填し、成分(6)により調製したホイップクリームをトッピングした。次いで急速冷凍機(「MC-173」、中野冷機株式会社)にて-30℃にて60分間冷却して冷凍した。
【0036】
【表3】
【0037】
実施例5~8および比較例2の冷凍ムースについて、電子レンジ(「NE-1901」、パナソニック株式会社)にて1,900Wで8秒間加熱して解凍し、解凍されたムースの外観、側面および中心部の固さについて、上記実施例1~4および比較例1の場合と同様に評価した。
また、冷凍ムース中に存在する気泡の影響を確認するため、起泡した場合と起泡しない場合のそれぞれについて評価した。評価結果を表4に示した。起泡前にBrix屈折計(「糖度計RA-250H」、京都電子工業株式会社)により測定したブリックス値も、表4に併せて示した。
【0038】
【表4】
【0039】
ゲル状組成物を起泡させた後に冷凍した場合、実施例7の冷凍ムースについては、起泡時にゲルが破壊されてしまい、保形性が認められなかった。しかし、表4に示されるように、本発明の実施例5、6および8の各冷凍ムースでは、解凍後の外観、側面および中心部の固さのいずれについても良好な評価が得られた。
また、ゲル状組成物を起泡させずに冷凍した場合には、実施例5~8の各冷凍ムースにおいて、解凍後の外観、側面および中心部の固さのいずれについても良好な評価が得られた。
一方、ゲル化剤を含有しない比較例2の冷凍ムースでは、起泡させて冷凍した場合および起泡させずに冷凍した場合のいずれにおいても保形性が認められず、解凍後にムースの形状が維持されなかった。
以上の結果から、ゲル状組成物の形状を維持するためにゲル化剤を用いることは必要であるが、ゲル化剤の種類は、マイクロウェーブ加熱により解凍した際の保形性および解凍の偏りには影響しないことが示唆された。
【0040】
[実施例9~13、比較例3]冷凍ムースの解凍性に対する油脂の含有量の影響の検討
表5に示す組成に基づき、上記実施例1~4および比較例1の冷凍ムースと同様に、実施例9~13の冷凍ムース(一層)を調製した。比較例3の冷凍ムースは、表5中の成分(2)~(4)を混合して80℃に加熱し、成分(5)~(7)を混合し、80℃に加熱して調製されるゲル化液と混合し、カップに50gずつ充填し、実施例9~13と同様に冷凍して調製した。
【0041】
【表5】
【0042】
実施例9~13および比較例3の冷凍ムースについて、電子レンジ(「NE-1901」、パナソニック株式会社)にて1,900Wで7秒間(実施例12は6秒間)加熱して解凍し、解凍されたムースの外観、側面および中心部の固さについて、上記実施例1~4および比較例1の場合と同様に評価した。評価結果を表6に示した。また、Brix屈折計(「糖度計RA-250H」、京都電子工業株式会社)により測定したブリックス値も、表6に併せて示した。
【0043】
【表6】
【0044】
表6に示されるように、油脂を10重量%、33重量%および40重量%それぞれ含有する実施例10~12の各冷凍ムースでは、電子レンジによる加熱により解凍した際、ムースの保形性が良好で、解凍の偏りも認められなかった。油脂の含有量が5重量%である実施例9の冷凍ムースおよび46.4重量%である実施例13の冷凍ムースでは、解凍後、ムースの形状は維持されているものの、やや軟化が認められ、側面をスプーンで掬った際にやや液状化している部分が認められ、中心部の解凍がやや不十分であると評価された。特に、油脂含有量の多い実施例13の冷凍ムースでは、グラニュー糖が溶けにくく、また油脂が分離しやすく、ゲル状組成物の安定性上問題があった。
一方、油脂を含有しない比較例3の冷凍ムースでは、解凍後、ムースが溶けてしまい、形状が維持されず、側面において液状化が認められ、加熱時間を短くして側面が溶けないようにすると中心部分が十分に解凍されなかった。
上記の結果から、ゲル状組成物の保形性の観点から、油脂を含有させる必要があるが、解凍の偏りをなくすためには、油脂の含有量を5重量%~46重量%とすることが好ましく、10重量%~40重量%とすることがより好ましいことが示唆された。
【0045】
[実施例14~17]冷凍ムースの解凍性に対する油脂の種類の影響の検討
表7に示す組成に基づき、下記の方法により、実施例14~17の冷凍ムース(一層)を調製した。
<製造方法>
表7中、成分(6)、(7)、(8)、(9)を成分(2)に添加し、攪拌混合した後、加熱溶解した成分(1)を添加し、70℃~75℃に加熱し、ホモジナイザー(「ウルトラタラックス2」、IKA社)を用いてホモジナイズ処理を行い、乳化物を調製した。次いで、別途成分(3)、(4)を成分(5)に添加して攪拌混合し、80℃に加熱して調製したゲル化液と混合し、カップに50gずつ充填した。次いで急速冷凍機(「MC-173」、中野冷機株式会社)にて-30℃にて60分間冷却して冷凍した。
【0046】
【表7】
【0047】
実施例14~17の各冷凍ムースを電子レンジ(「NE-1901」、パナソニック株式会社)にて1,900Wで8秒間加熱して解凍し、解凍されたムースの外観、側面および中心部の固さについて、上記実施例1~4および比較例1の場合と同様に評価し、表8に示した。実施例14~17の各冷凍ムースについて、起泡前にBrix屈折計(「糖度計RA-250H」、京都電子工業株式会社)により測定したブリックス値も、表8に併せて示した。
【0048】
【表8】
【0049】
表8に示されるように、油脂としてショートニング、カカオ脂代用脂、サラダ油およびマーガリンのそれぞれを18.20重量%含有する実施例14~17の各冷凍ムースでは、電子レンジによる加熱により解凍した際、いずれも保形性が良好で、解凍の偏りも認められず、冷凍ムースの解凍性に対し、油脂の種類および融点の影響は認められなかった。
以上の結果から、油脂の種類や油脂の融点は、本発明の冷凍物を解凍する際の保形性や解凍の均一性には影響しないことが示唆された。
【0050】
[実施例18~20]冷凍ムースの解凍性に対する乳化剤のHLB値の影響の検討
表9に示す組成に基づき、上記実施例1~4および比較例1の冷凍ムースと同様に、実施例18~20の冷凍ムース(一層)を調製した。
実施例18~20の各冷凍ムースについて、電子レンジ(「NE-1901」、パナソニック株式会社)にて1,900Wで7秒間加熱して解凍し、解凍されたムースの外観、側面および中心部の固さについて、上記実施例1~4および比較例1の場合と同様に評価した。評価結果を表10に示した。また、Brix屈折計(「糖度計RA-250H」、京都電子工業株式会社)により測定したブリックス値も、表10に併せて示した。
【0051】
【表9】
【0052】
【表10】
【0053】
表10に示されるように、実施例18~20の冷凍ムースのいずれについても、マイクロウェーブ加熱による解凍の後、ゲルの形状および解凍の偏りについて、大きな問題は認められなかった。
特に、HLB値がそれぞれ11および15である乳化剤を含有する実施例19および20の各冷凍ムースにおいては、マイクロウェーブ加熱により解凍した後において、ゲルの形状は良好に維持され、解凍の偏りも認められなかった。
以上の結果から、HLB値が11~15であり、親水性で水中油型乳化物の調製に適する乳化剤を用いた場合に、マイクロウェーブ加熱による解凍に対し、ゲルの形状が良好に維持され、また、解凍の偏りも良好に抑制されることが示唆された。
【0054】
[実施例21~23]マイクロウェーブ加熱の条件の検討
実施例1の冷凍ムースを、電子レンジ(「NE-1901」、パナソニック株式会社)により、表11に示す条件にて加熱して解凍し、解凍後のムースについて、それぞれ実施例21~23として、上記実施例1~4および比較例1の場合と同様に、外観、側面および中心部の固さを評価した。評価結果は、表11に併せて示した。
【0055】
【表11】
【0056】
表11に示されるように、実施例21~23のいずれの加熱条件においても、解凍後のムースの外観、側面の固さおよび中心部の固さは良好であると評価された。
上記の結果から、本発明の冷凍物を解凍するためのマイクロウェーブ調理器による加熱条件については、マイクロウェーブ調理器の性能に応じて、出力および加熱時間を調整すればよく、本発明の冷凍物1gあたり、260W・秒~300W・秒程度とすることが適切であることが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上、詳述したように、本発明により、マイクロウェーブ加熱に適し、マイクロウェーブ加熱の際の保形性が良好で、ゲル状組成物の液状化が抑制され、かつ、解凍の偏りが改善されたゲル状組成物の冷凍物を提供することができる。