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  • 特許-走路推定装置 図1
  • 特許-走路推定装置 図2A
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  • 特許-走路推定装置 図3A
  • 特許-走路推定装置 図3B
  • 特許-走路推定装置 図4
  • 特許-走路推定装置 図5
  • 特許-走路推定装置 図6A
  • 特許-走路推定装置 図6B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-10-14
(45)【発行日】2025-10-22
(54)【発明の名称】走路推定装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/32 20060101AFI20251015BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20251015BHJP
   B60W 30/10 20060101ALI20251015BHJP
   B60W 40/02 20060101ALI20251015BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20251015BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20251015BHJP
【FI】
G01C21/32
G09B29/00 Z
B60W30/10
B60W40/02
B60W60/00
G08G1/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2024510879
(86)(22)【出願日】2022-03-30
(86)【国際出願番号】 JP2022015931
(87)【国際公開番号】W WO2023188095
(87)【国際公開日】2023-10-05
【審査請求日】2024-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100081972
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】村橋 善光
【審査官】上野 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-154623(JP,A)
【文献】国際公開第2019/176083(WO,A1)
【文献】特開2019-064562(JP,A)
【文献】国際公開第2022/054712(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/32
G09B 29/00
B60W 30/10
B60W 40/02
B60W 60/00
G08G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、前記車両の周辺の外界状況を検出する外界状況検出部と、
前記車両の走行状態を検出する走行状態検出部と、
地図情報が予め記憶された記憶部を有するコントローラと、を備え、
前記コントローラは
前記外界状況検出部により検出された外界状況に基づいて所定周期で前記車両が走行すべき走路を推定し、
前記走路の情報を、前記走路が推定された推定時点における前記車両の位置情報に関連付けて前記地図情報に付加し、
前記走行状態検出部により検出された走行状態に基づいて前記車両が実際に走行した軌跡を特定し、
記走路が前記軌跡と一致するか否かを判定し、
一致しないと判定された場合の判定結果を走路推定の苦手シーンとして前記推定時点における前記車両の位置情報に関連付けて前記走路の情報とともに前記地図情報に付加し、
前記判定結果に基づいて、前記走路に基づく走路地図の生成を許可するか否かを決定することを特徴とする走路推定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の走路推定装置において、
前記車両に搭載された走行用アクチュエータをさらに備え、
前記コントローラは、前記判定結果に基づいて、前記車両の進路上における、前記走路に基づく前記走行用アクチュエータの制御を許可するか否かを決定することを特徴とする走路推定装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の走路推定装置において、
前記コントローラは、
前記判定結果に基づいて、前記走路の信頼度を算出し、
前記信頼度を前記推定時点における前記車両の位置情報に関連付けて前記地図情報に付加することを特徴とする走路推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動運転機能や運転支援機能を有する車両が走行すべき走路を推定する走路推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両を自動運転するようにした装置が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1記載の装置では、走行中に取得された三次元ポイントクラウドデータを、道路等の情報を含む予め確立された三次元ポイントクラウド地図と照合し、走行中に取得された二次元画像データと三次元ポイントクラウドデータとを融合して生成された三次元画像データから、道路等の静的オブジェクトの三次元ポイントクラウドデータを取得する。
【0003】
自動運転機能や運転支援機能を有する車両が普及することで、交通社会全体の安全性や利便性が向上し、持続可能な輸送システムを実現することができる。また、輸送の効率性や円滑性が向上することで、CO2排出量が削減され、環境への負荷を軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-85886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
予め確立された地図情報のないエリアでも車両の自動運転や運転支援を継続できることが好ましいが、上記特許文献1記載の装置のように予め確立された地図情報を用いる場合、このようなエリアで自動運転や運転支援を継続することが難しい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様である走路推定装置は、車両に搭載され、車両の周辺の外界状況を検出する外界状況検出部と、車両の走行状態を検出する走行状態検出部と、地図情報が予め記憶された記憶部を有するコントローラと、を備える。コントローラは、外界状況検出部により検出された外界状況に基づいて所定周期で車両が走行すべき走路を推定し、走路の情報を、走路が推定された推定時点における車両の位置情報に関連付けて地図情報に付加し、走行状態検出部により検出された走行状態に基づいて車両が実際に走行した軌跡を特定し、走が軌跡と一致するか否かを判定し、一致しないと判定された場合の判定結果を走路推定の苦手シーンとして推定時点における車両の位置情報に関連付けて走路の情報とともに地図情報に付加し、判定結果に基づいて、走路に基づく走路地図の生成を許可するか否かを決定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、予め確立された地図情報のないエリアでも車両の自動運転や運転支援の継続性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る走路推定装置の構成を模式的に示すブロック図。
図2A】推定された走路と実際の軌跡とが一致する場合の走路の一例を示す図。
図2B】推定された走路と実際の軌跡とが一致する場合の軌跡の一例を示す図。
図3A】推定された走路と実施の軌跡とが一致しない場合の走路の一例を示す図。
図3B】推定された走路と実際の軌跡とが一致しない場合の軌跡の一例を示す図。
図4】地図情報に関連付けて記憶された判定結果の一例を示す図。
図5】判定結果に基づく自動運転や運転支援の可否について説明するための図。
図6A】特定の時刻に推定された走路の除外について説明するための図。
図6B】走路地図の生成について説明するための図。
図7】判定結果に基づく信頼度の算出について説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1図7を参照して本発明の実施形態について説明する。本発明の実施形態に係る走路推定装置は、車両の運転者に対する運転支援を行うないし車両を自動運転するように走行用アクチュエータを制御する運転支援機能を有する車両に適用され、車両が走行すべき走路を推定する。本実施形態における「運転支援」は、運転者の運転操作を支援する運転支援と、運転者の運転操作によらず車両を自動運転する自動運転とを含み、SAEにより定義されるレベル1~レベル4の自動運転に相当し、「自動運転」は、レベル5の自動運転に相当する。
【0010】
自動運転や運転支援の中でも、操舵を支援する操舵支援は、運転者の負担を軽減する効果が大きいため、走行車線を規定する区画線が整備されている高速道路等だけでなく、区画線が整備されていない一般道の交差点等でも、支援を継続することが求められている。しかしながら、自動運転や運転支援に用いられる高精度地図は、高速道路や都市部等の交通量が多いエリアでは作成されているものの、住宅地や郊外などの交通量が少ないエリアでは作成されていない。また、最新の高精度地図を作成した後に工事等で道路構造が変化することがある。
【0011】
したがって、予め確立された高精度地図が作成されていないエリアでも自動運転や運転支援の継続性を高めるには、各車両が走行するときに車両側で独自に車載センサ等を用いて走行すべき走路を推定することが必要となる。そこで本実施形態では、車載センサ等を用いて車両が走行すべき走路を推定することで、予め確立された地図情報のないエリアでも車両の自動運転や運転支援の継続性を高めることができるよう、以下のように走路推定装置を構成する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る走路推定装置10の構成を模式的に示すブロック図である。図1に示すように、走路推定装置10は、車両1に搭載された外界状況検出部2と、走行状態検出部3と、走行用アクチュエータ4と、コントローラ5とを有する。コントローラ5には、外界状況検出部2と、走行状態検出部3と、走行用アクチュエータ4とが接続される。
【0013】
外界状況検出部2は、車両1に搭載され、車両1の周辺、特に前方の外界状況を検出する。外界状況検出部2は、例えば、CCDやCMOS等の撮像素子を有し、車両1の周辺を撮像するカメラにより構成される。外界状況検出部2は、ミリ波(電波)を照射し、照射波が物体に当たって戻ってくるまでの時間から、その物体までの距離や方向を測定するミリ波レーダにより構成されてもよい。外界状況検出部2は、レーザ光を照射し、照射光が物体に当たって戻ってくるまでの時間から、その物体までの距離や方向を測定するライダ(LiDAR)により構成されてもよい。
【0014】
外界状況検出部2により検出された外界状況に基づいて、車両が走行可能な道路面、区画線や構造物により規定された走行車線、周辺車両や歩行者等の交通参加者を含む道路上の障害物等を認識し、車両1が走行すべき走路ELを推定することができる。より具体的には、所定時点tにおける車両1の現在位置P(t)から少なくとも外界状況検出部2により検出可能な所定距離先までの走路EL(t)を推定することができる。
【0015】
走行状態検出部3は、車両1の走行速度や進行方向等の走行状態を検出する。走行状態検出部3は、例えば、車両1の重心の鉛直方向、進行方向、および車幅方向の3軸回りの回転角速度および3軸方向の加速度を検出する慣性計測装置(IMU;Inertial Measurement Unit)により構成される。走行状態検出部3は、車両1の各車輪の回転速度をそれぞれ検出する車輪速センサにより構成されてもよい。走行状態検出部3には、測位衛星からの測位信号に基づいて車両1の現在位置(緯度、経度)を測定する測位ユニット等が含まれてもよい。
【0016】
走行状態検出部3により検出された走行状態に基づいて、所定時間毎の車両1の移動量を算出し、車両1が走行した軌跡ALを特定することができる。例えば、車両1の走路ELを推定した所定時点tから現時点までに車両1が走行した実際の軌跡AL(t)を特定することができる。車両1が走行した実際の軌跡ALは、所定時間毎の車両位置を接続することで特定してもよい。
【0017】
走行用アクチュエータ4には、車両1を転舵させるステアリングギアなどの転舵機構、車両1を駆動するエンジンやモータなどの駆動機構、車両1を制動するブレーキなどの制動機構が含まれる。
【0018】
コントローラ5は、CPU等の処理部6、RAM,ROM等の記憶部7、I/Oインタフェース、その他の周辺回路を有するコンピュータを含んで構成される。コントローラ5は、例えば車両1に搭載されて車両1の動作を制御する複数の電子制御ユニット(ECU)群の一部として構成される。コントローラ5の記憶部7には、ナビゲーション装置による車両1の現在地から目的地までの経路案内に用いられる一般的な地図情報が予め記憶される。記憶部7には自動運転用の高精度地図も記憶される。
【0019】
図2Aおよび図2Bは、所定時点tに推定された走路EL(t)と実際の軌跡AL(t)とが一致する場合の一例を示す図であり、図3Aおよび図3Bは、走路EL(t)と軌跡AL(t)とが一致しない場合の一例を示す図である。
【0020】
図2Aおよび図3Aに示すように、コントローラ5の処理部6は、外界状況検出部2により検出された外界状況に基づいて、車両1が走行すべき走路ELを推定する。より具体的には、所定時点tにおける車両1の現在位置P(t)から所定距離先までの走路EL(t)を推定する。このような走路ELの推定は、所定周期(例えば外界状況検出部2の検出周期、コントローラ5の制御周期、外界状況検出部2とコントローラ5との間の通信周期等)で行われる。
【0021】
推定された走路EL(t)の情報は、地図情報に関連付けられて記憶部7に記憶される。より具体的には、走路EL(t)が推定された時点tにおける車両1の現在位置P(t)の位置情報に関連付けられて地図情報に付加される。
【0022】
図2Bおよび図3Bに示すように、コントローラ5の処理部6は、走行状態検出部3により検出された走行状態に基づいて、運転者が関与して車両1が走行したときの実際の軌跡ALを特定し、特定された軌跡ALが推定された走路ELと一致するか否かを判定する。より具体的には、走路EL(t)が推定された時点tにおける車両1の現在位置P(t)から所定距離先までの区間を運転者が関与して車両1が走行したときの実際の軌跡AL(t)を特定し、推定された走路EL(t)の範囲内に収まっているか否かを判定する。
【0023】
なお、運転者が関与する走行には、運転支援を受けずに運転者が手動運転する場合の走行と、運転支援を受けて運転者が手動運転する場合の走行とが含まれる。
【0024】
図2Bに示すように、運転者が関与して車両1が走行したときの実際の軌跡AL(t)が、推定された走路EL(t)の範囲内に収まっているときは、推定された走路EL(t)が特定された軌跡AL(t)と一致すると判定される。あるいは、走路推定が適切であったと判定される。
【0025】
一方、図3Bに示すように、運転者が関与して車両1が走行したときの実際の軌跡AL(t)が、推定された走路EL(t)の範囲内に収まっていないときは、推定された走路EL(t)が特定された軌跡AL(t)と一致しないと判定される。このように、推定された走路ELと運転者が関与して実際に走行したときの軌跡ALとが一致しなかった場合は、走路推定が適切ではなかった可能性が高いため、外界状況検出部2による走路推定の苦手シーンとして扱われる。
【0026】
このような判定結果は、推定された走路EL(t)の情報とともに、地図情報に関連付けられて記憶部7に記憶される。より具体的には、走路EL(t)が推定された時点tにおける車両1の現在位置P(t)の位置情報に関連付けられて、推定された走路EL(t)の情報とともに地図情報に付加される。
【0027】
推定された走路ELと運転者が関与して実際に走行したときの軌跡ALとが一致しなかった場合、そのような走路EL(t)が推定された時点tまたはその前後の外界状況検出部2による検出結果を外部の解析装置等に送信してもよい。この場合、多数の車両1から外界状況検出部2による走路推定の苦手シーンのデータのみを効率的に収集し、走路推定が不適切となる要因を解析することができる。
【0028】
図4は、地図情報に関連付けて記憶された判定結果の一例を示す図である。図4に示すように、コントローラ5の記憶部7に記憶された地図情報には、運転者が関与して車両1が実際に走行したエリアにおける所定周期ごとの車両位置に対応して外界状況検出部2による走路推定の苦手シーンであるか否かの判定結果の情報が付加されている。
【0029】
図5は、判定結果に基づく自動運転や運転支援の可否について説明するための図であり、運転者が関与して車両1が過去に走行したエリアを、自動運転または運転支援を使用して車両1が走行している状況を示す。
【0030】
図5に示すように、コントローラ5の処理部6は、外界状況検出部2により検出された外界状況に基づいて走路ELを推定するとともに、車両1の進路上における過去の判定結果に基づいて、使用中の自動運転や運転支援を継続するか中断するかを決定する。換言すると、進路上の各地点において外界状況検出部2により検出された外界状況に基づいて推定された走路ELに基づく走行用アクチュエータ4の制御を許可するか否かを決定する。
【0031】
より具体的には、車両1の進路上の所定区間(例えば車両1の現在位置から300m程度先までの区間)内に、過去に走路ELを推定し、苦手シーンであると判定された地点があるか否かを判定する。所定区間内に苦手シーンであると判定された地点がある場合は、運転者に通知した上で、現在使用中の自動運転または運転支援を中断する。現在使用中の自動運転または運転支援の中断には、自動運転から運転支援へのレベルダウンや、運転支援のレベルダウンも含まれる。
【0032】
例えば、不適切な走路ELに基づいて操舵支援が行われると、運転者が把持するステアリングホイールに対し、不適切な方向への補助操舵トルクが印加され、それを運転者が修正する必要が生じることで、かえって運転者の負担となる。不適切な走路ELが推定される可能性の高い地点が近づくと、その地点の手前で運転者に通知した上で、自動運転や運転支援を中断することで、運転者に無用な負担を与えることを防止することができる。なお、自動運転や運転支援の可否を判定する所定区間の長さは、進路上の道路の形状や制限速度等に応じて変更されてもよい。
【0033】
外界状況検出部2による外界状況の検出には、周辺環境等の要因により限界があるため、地点によっては常に適切な走路ELを推定することが難しい。このような地点を苦手シーンとして登録しておくことで、苦手シーン以外では外界状況検出部2による走路推定を積極的に利用することができる。例えばDNN(Deep Neural Network)を用いて外界状況検出部2による検出結果に基づいて走路ELを認識する場合、走路ELのみを認識するような厳しい閾値を設定すると、地点によっては走路ELの認識自体ができず、走路推定を利用できなくなる。地点によっては走路EL以外も認識してしまうことを許容するような緩やかな閾値を設定するとともに、不適切な走路認識が行われる可能性の高い地点を苦手シーンとして登録しておくことで、装置全体として走路推定の可用性を高めることができる。
【0034】
図6Aは、特定の時刻t1~t4に推定された走路ELの除外について説明するための図であり、図6Bは、走路地図MAPの生成について説明するための図である。図6Aおよび図6Bに示すように、コントローラ5の処理部6は、地図情報に関連付けて記憶部7に記憶された判定結果に基づいて、推定された走路ELに基づく走路地図MAPの生成を許可するか否かを決定する。
【0035】
より具体的には、運転者が関与して車両1が過去に走行した各地点について苦手シーンであるか否かを判定し、苦手シーン以外で推定された走路ELは走路地図MAPの生成に利用することを許可し、苦手シーンで推定された走路ELは利用することを禁止する。図6Aおよび図6Bの例では、苦手シーンと判定された地点で時点t3に推定された走路EL(t3)が除外され、それ以外の地点で時点t1,t2,t4に推定された走路EL(t1),EL(t2),EL(t4)に基づいて走路地図MAPが生成される。生成された走路地図MAPは、地図情報に関連付けられて記憶部7に記憶される。
【0036】
車両1の自動運転中は、走行中に随時推定される最新の走路ELの形状と、記憶部7に走路地図MAP(または高精度地図)として記憶された走路ELの形状との一致性が確認される。コントローラ5の処理部6は、最新の走路ELと走路地図MAP(または高精度地図)上の走路ELとの形状の一致性を確認した上で、車両1が推定された走路EL内を走行するように走行用アクチュエータ4を制御する。
【0037】
図7は、判定結果に基づく信頼度の算出について説明するための図であり、同一の場所を複数回(図7では4回)走行した後に算出される信頼度の一例を示す。図7に示すように、コントローラ5の処理部6は、地図情報に関連付けて記憶された判定結果に基づいて、推定された走路ELの信頼度を算出し、算出された信頼度を地図情報に関連付けて記憶する。
【0038】
信頼度は、例えば、過去の走行回数に対する、適切な走路ELが推定された実績回数の割合として算出することができる。図7の例では、過去4回のうち4回とも適切な走路ELが推定された地点の信頼度は100%、3回適切な走路ELが推定された地点の信頼度は75%、一度も適切な走路ELが推定されなかった地点の信頼度は0%のように算出される。
【0039】
特に自動運転を行う場合には、信頼性の高い走路推定を行う必要がある。自動運転によらず運転者が関与して複数回走行したときの実績に基づいて走路推定の信頼度を算出し、信頼度が適宜な閾値を超える場合に限って走路推定の結果を利用することで、信頼性の高い走路推定に基づく適切な自動運転を行うことができる。
【0040】
また、何らかの事情により過去に苦手シーンと判定された場合でも、複数回の走行の中で走路推定が適切であったと判定された回数が多くなれば、信頼性の高い走行シーンで推定された走路ELとして利用できるようになる。これにより、走路推定を利用できるエリアの欠損(中断)箇所を減らし、自動運転や運転支援の継続性を高めることができる。
【0041】
本実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)走路推定装置10は、車両1に搭載され、車両1の周辺の外界状況を検出する外界状況検出部2と、車両1の走行状態を検出する走行状態検出部3と、コントローラ5と、を備える(図1)。コントローラ5は、地図情報を記憶し、外界状況検出部2により検出された外界状況に基づいて所定周期で車両1が走行すべき走路ELを推定し、走行状態検出部3により検出された走行状態に基づいて車両1が実際に走行した軌跡ALを特定し、推定された走路ELが特定された軌跡ALと一致するか否かを判定し、判定結果を地図情報に関連付けて記憶する(図4)。
【0042】
すなわち、推定された走路ELと運転者が関与して実際に走行したときの軌跡ALとが一致しなかった場合は、外界状況検出部2による走路推定が適切ではなかった可能性が高い苦手シーンとして識別可能に登録される。これにより、苦手シーン以外で推定された走路ELを積極的に利用できるようになり、予め確立された地図情報のないエリアでも車両1の自動運転や運転支援の継続性を高めることができる。
【0043】
(2)走路推定装置10は、車両1に搭載された走行用アクチュエータ4をさらに備える(図1)。コントローラ5は、地図情報に関連付けて記憶された判定結果に基づいて、車両1の進路上における、推定された走路ELに基づく走行用アクチュエータ4の制御を許可するか否かを決定する(図5)。すなわち、苦手シーン以外で推定された走路ELを自動運転や運転支援に積極的に利用できるようになり、継続性を高めることができる。また、進路上に苦手シーンがある場合には、予め運転者に通知し、自動運転や運転支援を中断することで、不適切な操舵支援の発生とその修正に係る運転者の負担の発生を回避することができる。
【0044】
(3)コントローラ5は、地図情報に関連付けて記憶された判定結果に基づいて、推定された走路ELに基づく走路地図MAPの生成を許可するか否かを決定する(図6A図6B)。すなわち、苦手シーンで推定された走路ELを除外することで、正確な走路地図MAPを生成することができる。また、苦手シーン以外で推定された走路ELを走路地図MAPの生成に積極的に利用できるようになることで、結果として自動運転や運転支援の継続性を高めることができる。
【0045】
(4)コントローラ5は、地図情報に関連付けて記憶された判定結果に基づいて、推定された走路ELの信頼度を算出し、算出された信頼度を地図情報に関連付けて記憶する(図7)。すなわち、同じ走行シーンを走行したときの複数の判定結果に基づいて、その走行シーンにおける走路推定の信頼度を算出する。これにより、例えば走路推定が適切であったと判定された回数が多い、信頼性の高い走行シーンで推定された走路ELのみを利用することができる。また、特殊な事情により苦手シーンと判定された場合でも、走路推定が適切であったと判定された回数が多くなれば、信頼性の高い走行シーンで推定された走路ELとして利用できるようになるため、自動運転や運転支援の継続性を一層高めることができる。
【0046】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能であり、変形例同士を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 車両、2 外界状況検出部、3 走行状態検出部、4 走行用アクチュエータ、5 コントローラ、6 処理部、7 記憶部、10 走路推定装置、AL 軌跡、EL 走路、P 現在位置
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7