(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-10-15
(45)【発行日】2025-10-23
(54)【発明の名称】造形物製作データ変換システム、造形物製作データ変換方法及び造形物製作データ変換プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/12 20060101AFI20251016BHJP
【FI】
G06F3/12 344
G06F3/12 308
(21)【出願番号】P 2025116001
(22)【出願日】2025-07-09
【審査請求日】2025-07-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594034005
【氏名又は名称】ホッティーポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089026
【氏名又は名称】木村 高明
(72)【発明者】
【氏名】堀田 秀敏
(72)【発明者】
【氏名】田鍋 史生
【審査官】佐藤 実
(56)【参考文献】
【文献】特開2025-36193(JP,A)
【文献】特開2025-1532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取得された測定対象物の3Dスキャンデータを、3Dプリンタにより造形するための3Dプリンタ用データに変換する造形物製作データ変換システムであって、
少なくとも1つ以上の制御部と、
前記測定対象物を三次元的にスキャンする3Dスキャナにより取得され、ノイズ除去前の前記3Dスキャンデータを入力データとし、ノイズが除去され、前記3Dプリンタ用データに変換された処理済みデータを出力データとする教師付きデータによる学習済みモデルを記憶する記憶部と、を備え、
前記制御部は、通信ネットワークを介して3Dスキャンデータを取得し、
前記学習済みモデルにより、3Dスキャンデータから前記処理済みデータを生成する、
ことを特徴とする造形物製作データ変換システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記処理済みデータを用いて、前記3Dプリンタにより前記測定対象物を造形することを特徴とする請求項1に記載の造形物製作データ変換システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記測定対象物に応じて造形素材、又は前記3Dプリンタを選択することを特徴とする請求項2記載の造形物製作データ変換システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記処理済みデータに基づき前記3Dプリンタを用いて造形物を造形する作業の費用見積を算出することを特徴とする請求項1記載の造形物製作データ変換システム。
【請求項5】
前記ノイズは、ハレーション又はアーチファクトノイズを含むことを特徴とする請求項1記載の造形物製作データ変換システム。
【請求項6】
測定対象物の3Dスキャンデータを取得し、取得された3Dスキャンデータを、前記測定対象物を3Dプリンタにより造形するための3Dプリンタ用データに変換する造形物製作データ変換システムを用いた造形物製作データ変換方法であって、
前記造形物製作データ変換システムにより、通信ネットワークを介して3Dスキャンデータを取得し、
前記測定対象物を三次元的にスキャンする3Dスキャナにより取得され、ノイズ除去前の3Dスキャンデータを入力データとし、ノイズが除去され、3Dプリンタ用データに変換された処理済みデータを出力データとする教師付きデータによる学習済みモデルを用いて、前記造形物製作データ変換システムにより、取得した3Dスキャンデータから前記処理済みデータを生成する、
ことを特徴とする造形物製作データ変換方法。
【請求項7】
測定対象物の3Dスキャンデータを取得し、取得された3Dスキャンデータを、前記測定対象物を3Dプリンタにより造形するための3Dプリンタ用データに変換する造形物製作データ変換システムが実行する造形物製作データ変換プログラムであって、
通信ネットワークを介して3Dスキャンデータを取得する工程と、
前記測定対象物を三次元的にスキャンする3Dスキャナにより取得され、ノイズ除去前の3Dスキャンデータを入力データとし、ノイズが除去され、3Dプリンタ用データに変換された処理済みデータを出力データとする教師付きデータによる学習済みモデルを用いて、取得した3Dスキャンデータから前記処理済みデータを生成する工程と、
を含むことを特徴とする造形物製作データ変換プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造形物製作データ変換システム、造形物製作データ変換方法及び造形物製作データ変換プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、様々な造形物が3Dプリンタにより作製されている。その中に、医療用人体パーツモデルも存在する。人体パーツモデルを、3Dプリンタを使用して作製する場合には、例えば、以下のようなプロセスを経る。
【0003】
(i)医師がCTスキャンにより対象とする人体パーツのデータ(DICOMデータ等)を取得する。(ii)上記CTスキャンデータをCD-R等のメディアを介して受け渡し、造形物の製作者側において、取得したCTスキャンデータに存在する様々なノイズ(例えば、X線が体内に埋め込まれた金属物に照射された際に発生するハレーション等)を手作業で除去する。
【0004】
(iii)専用ソフトを使用して作業者の手作業によりノイズ除去後の処理済みデータを3Dプリンタが読み取り可能な3Dプリンタ用データ(例えば、STL形式)に変換する。(iv)作成する造形物に応じて造形に使用する造形素材、及び3Dプリンタの種類を選定する。(v)3Dプリンタにより造形物を造形する。
【0005】
人体パーツのデータを取得して3Dプリンタにより造形物を造形する技術として、例えば、特許文献1には、管状組織の内腔を撮影した3次元医用画像データを受け付け、3次元プリンタにおいて用いられる3次元データを生成する3次元データ生成部を備えた3次元プリンタ用の3次元データ生成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、CTスキャンデータから様々なノイズ(例えば、X線が体内に埋め込まれた金属物に照射された際に発生するハレーション等)を手作業で除去し、3Dプリンタが読み取り可能なデータを作成する作業は、非常に手間がかかり作業者の技能に依存する側面がある。そのため、これらのプロセスには大きなコストが発生したり、作業ムラが生じ3Dプリンタ用の正確なデータを安定して作成できないことが想定される。
【0008】
本発明は、従来煩雑であった、人体パーツ等の測定対象物を、3Dプリンタを使用して製作するまでのユーザの作業負担を低減する造形物製作データ変換システム、造形物製作データ変換方法及び造形物製作データ変換プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明に係る造形物製作データ変換システムは、取得された測定対象物の3Dスキャンデータを、前記測定対象物を3Dプリンタにより造形するための3Dプリンタ用データに変換する造形物製作データ変換システムであって、少なくとも1つ以上の制御部と、前記測定対象物を三次元的にスキャンする3Dスキャナにより取得され、ノイズ除去前の3Dスキャンデータを入力データとし、ノイズが除去され、3Dプリンタ用データに変換された処理済みデータを出力データとする教師付きデータによる学習済みモデルを記憶する記憶部と、を備え、前記制御部は、通信ネットワークを介して3Dスキャンデータを取得し、前記学習済みモデルにより、3Dスキャンデータから前記処理済みデータを生成する、ことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明に係る造形物製作データ変換システムは、前記制御部は、前記処理済みデータを用いて、前記3Dプリンタにより前記測定対象物を造形することを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明に係る造形物製作データ変換システムは、前記制御部は、前記測定対象物に応じて造形素材、又は前記3Dプリンタを選択することを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明に係る造形物製作データ変換システムは、前記制御部は、前記処理済みデータに基づき前記3Dプリンタを用いて造形物を造形する作業の費用見積を算出することを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明に係る造形物製作データ変換システムは、前記ノイズは、ハレーション又はアーチファクトノイズを含むことを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明に係る造形物製作データ変換方法は、測定対象物の3Dスキャンデータを取得し、取得された3Dスキャンデータを、前記測定対象物を3Dプリンタにより造形するための3Dプリンタ用データに変換する造形物製作データ変換システムを用いた造形物製作データ変換方法であって、前記造形物製作データ変換システムにより、通信ネットワークを介して3Dスキャンデータを取得し、前記測定対象物を三次元的にスキャンする3Dスキャナにより取得され、ノイズ除去前の3Dスキャンデータを入力データとし、ノイズが除去され、3Dプリンタ用データに変換された処理済みデータを出力データとする教師付きデータによる学習済みモデルを用いて、前記造形物製作データ変換システムにより、取得した3Dスキャンデータから前記処理済みデータを生成する、ことを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の発明に係る造形物製作データ変換プログラムは、測定対象物の3Dスキャンデータを取得し、取得された3Dスキャンデータを、前記測定対象物を3Dプリンタにより造形するための3Dプリンタ用データに変換する造形物製作データ変換システムが実行する造形物製作データ変換プログラムであって、通信ネットワークを介して3Dスキャンデータを取得する工程と、前記測定対象物を三次元的にスキャンする3Dスキャナにより取得され、ノイズ除去前の3Dスキャンデータを入力データとし、ノイズが除去され、3Dプリンタ用データに変換された処理済みデータを出力データとする教師付きデータによる学習済みモデルを用いて、取得した3Dスキャンデータから前記処理済みデータを生成する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によると、従来、手作業で行っており煩雑であった、3Dスキャンデータのノイズ除去、および3Dプリンタで読み込み可能なデータへの変換といった一連の工程を自動化することができる。このため、人体パーツ等の測定対象物を、3Dプリンタを使用して製作するまでのユーザの作業負担を低減することができる。
【0017】
請求項2に記載の発明によると、CTスキャンデータを取得してから3Dプリンタを使用して造形物を造形するまでの作業を一貫して行うことができ、造形条件の検討や設定プロセスにかかる手間を省くことができる。
【0018】
請求項3に記載の本発明によると、測定対象物に応じた適切な素材及び、その素材に適合した3Dプリンタの選択又はその提案を自動で行うことができるため、造形を行う上で必要なユーザの技能やノウハウへの依存を低減し、また造形を行うユーザへの作業負担も低減することができる。
【0019】
請求項4に記載の本発明によると、学習済みモデルを利用して算定した見積金額の情報を3Dデータ取得システム側に送付することができるため、造形物の製作に要するコストの情報を3Dスキャンデータの提供から素早く取得し、造形物の製作依頼者に提供することができる。これにより、測定対象の3Dスキャンから造形物の製作要否の判断までにかかる時間を短縮することができる。
【0020】
請求項5に記載の本発明によると、手動によるノイズの除去にかかる手間を省くことができ、造形の際に不正確な凹凸又は形状により誤った形状の造形を低減することができる。
【0021】
請求項6及び請求項7に記載の本発明によると、従来煩雑であった、3Dスキャンデータのノイズ除去、および3Dプリンタで読み込み可能なデータへの変換といった一連の工程を自動化することができる。このため、人体パーツ等の測定対象物を、3Dプリンタを使用して製作するまでのユーザの作業負担を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】造形物製作システムの制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、造形物製作システム1の全体構成図である。造形物製作システム1は、データ取得システム11と、造形物製作データ変換システム12とを備える。データ取得システム11は、測定対象物Tを測定して3DスキャンデータD1を取得する3Dスキャナ2を含む。
【0024】
3Dスキャナ2は、測定対象物Tを立体的に走査して立体形状の3DスキャンデータD1を取得可能な装置である。3Dスキャナ2は、例えば、CTスキャン(Computed Tomography Scan)、MRI(Magnetic Resonance Imaging)、超音波スキャン、ToF(Time-of-Flight)、LiDARセンサ、レーザー三角測量、構造光測量、ステレオカメラ撮影、SfM-MVS(Structure-from-Motion/Multi-View-Stereo)、プローブを用いた接触スキャン、位相シフト法、等の任意の方式を利用することができる。
【0025】
また3Dスキャナ2は、測定対象物Tの大きさ又は規模によって任意の装置を用いることができ、例えば、ハンドヘルド型、卓上型、スタンド型、航空型(例えば、ドローン、航空機)を用いることができる。
【0026】
測定対象物Tは、例えば、封止材、止水材、ガスケット、カバー、又は、医療における手術練習用モデル等であり、建材用部品、家電用部品又は生体部位とすることができる。生体部位は、例えば、CTスキャナまたはMRIにより取得される内蔵又は骨等の部位である。
【0027】
造形物製作データ変換システム12は、測定対象物Tの3DスキャンデータD1を取得し、取得された3DスキャンデータD1を、測定対象物Tを3Dプリンタ4により造形するための3Dプリンタ用データに変換する。
【0028】
造形物製作データ変換システム12は、一つ又は二以上の複数の装置を備える。造形物製作データ変換システム12は、例えばクラウドサーバとして構成される。
【0029】
本実施形態では、造形物製作データ変換システム12を構成する装置として、造形物製作データ変換装置3を例示するが、造形物製作データ変換装置3の各機能部(制御部31、通信部32、入力部33、出力部34、及び記憶部35等)の一部又は複数は、複数の装置に各々設けられ又は分散して設けられ、各装置が協働することにより機能する構成としてもよい。
【0030】
造形物製作データ変換装置3は、サーバを想定しているが、これ以外にも、携帯型若しくはデスクトップ型のパーソナルコンピュータ、携帯電話、スマートフォン、又はタブレット等のその他の形式の装置を適用することができる。
【0031】
造形物製作データ変換装置3は、少なくとも1つ以上の制御部31と、通信部32と、入力部33と、出力部34と、及び記憶部35とを備える。
【0032】
制御部31は、プロセッサであり、例えば、中央処理装置(CPU,Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、GPU、MCU(Microcontroller Unit)、プロセッサコア、マルチプロセッサ、ASIC、FPGA等を適用することができる。
【0033】
制御部31は、集積回路等に形成された論理回路や専用回路によって実施形態に開示される各処理を実現してもよい。
【0034】
通信部32は、WAN又はLAN等のネットワークを介して、外部の装置又はシステムと有線又は無線により通信接続する機能を有する。
【0035】
入力部33は、造形物製作データ変換装置3のプログラムに情報や指示を入力する機能を備える。入力部33は、例えば、ユーザからの指示を受け付ける物理スイッチ、収音部、受光部、撮像部(カメラ)、加速度センサ等のその他の情報の検出又は入力を受け付ける機能を備えてもよい。
【0036】
出力部34は、造形物製作データ変換装置3の外部へ、情報を出力する機能を備える。出力部34は、例えば、表示部及び放音部を備える。表示部は、液晶又はOLED等の表示画面を備える表示装置を適用できる。
【0037】
記憶部35は、造形物製作データ変換プログラム351、データ取得システム11から取得した3Dスキャンデータ353、処理済みデータ354、処理済みデータ354を用いた造形の造形条件355、及び見積データ356を記憶する。
【0038】
記憶部35は、造形物製作データ変換プログラム351に限らず、他のプログラムを記憶してもよい。これらのプログラムを記憶する記憶部35は、HDD、SSD、フラッシュメモリなど各種の非一過性の記憶媒体により実現することができる。
【0039】
造形物製作データ変換プログラム351は、データ取得システム11から取得した測定対象物Tの3Dスキャンデータ353を、3Dプリンタにより測定対象物Tを造形するための3Dプリンタ用データである処理済みデータ354に変換するプログラムである。造形物製作データ変換プログラム351は、造形物製作データ変換システム12により実行される。
【0040】
造形物製作データ変換プログラム351は、学習済みモデル352を含む。学習済みモデル352は、測定対象物Tを三次元的にスキャンする3Dスキャナ2により取得され、ノイズ除去前の3Dスキャンデータ353を入力データとし、ノイズが除去され、3Dプリンタ用データに変換された処理済みデータを出力データとする教師付きデータにより予め学習されたAI(人工知能)モデル(プログラム)である。
【0041】
また本実施形態では、教師付きデータの出力データに、造形条件及び見積データを含む。造形条件は、測定対象物Tの種類(建材用部品、家電用部品、又は生体部位のうちの具体的な対象物)、3Dプリンタの種類(詳細は後述)、造形素材、を含むことができる。
【0042】
学習済みモデル352は、例えば、CNN(Convolution Neural Network)、RNN(Recurrent Neural Network)、LSTM(Long Short-Term Memory)等で構築することができる。
【0043】
3Dスキャンデータ353は、通信部32を介して、データ取得システム11の3Dスキャナ2により取得される、例えば、DICOM等の形式のデータである。3Dスキャンデータ353は、例えば、3Dスキャナ2がCTスキャナである場合は、断層画像(tif形式)及びMolcerファイル(mol形式)を含む。
【0044】
処理済みデータ354は、造形物製作データ変換プログラム351により、3Dスキャンデータ353を3Dプリンタ4が読込み及び処理可能なデータ形式(例えば、STL形式)に変換処理されたデータである。
【0045】
造形条件355は、測定対象物Tの種類(建材用部品、家電用部品、又は生体部位のうちの具体的な対象物)、3Dプリンタの種類、造形素材、造形のパラメータを含む。
【0046】
3Dプリンタの種類としては、MEX(熱溶解積層)方式や光造形(SLA/DLP)方式等の造形方式、又は、予め登録した複数の装置(造形物製作データ変換システム12を利用する事業者、又は、その他の外部の事業者が管理又は所有する3Dプリンタ)のうち選択された一つ又は二以上の複数とすることができる。
【0047】
造形素材としては、処理済みデータ354の造形に適した3Dプリンタの種類に対応した材料が選択され、例えば、樹脂、金属、セラミックス若しくはガラス、又はこれらの複合材等を含むことができる。
【0048】
具体的には、例えば、PLA(ポリ乳酸)、シリコーン、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、PETG(ポリエチレンテレフタレートグリコール)、TPU(熱可塑性ポリウレタン)、ナイロン、カーボンファイバー複合材、ナイロン+ガラスビーズ、TPU粉末、ステンレス鋼、アルミ合金、チタン合金、インコネル(ニッケル合金)、木質フィラメント(PLA+木粉)、導電性フィラメント、水溶性サポート材(PVA、HIPS)、等の一つ又は二以上の複数を含むことができる。
【0049】
造形のパラメータとしては、レイヤー高さ、ノズル径、印刷速度、押出温度、ベッド温度、インフィル率、インフィルパターン(ハニカム又はグリッド等)、サポート構造、環境温度制御、光造形の照射時間、等の一つ又は二以上の複数を含むことができる。
【0050】
見積データ356は、処理済みデータ354を用いて3Dプリンタ4により造形物を造形した場合に、3Dプリンタ4を管理又は所有する事業者が、依頼主(例えば、3Dスキャンデータ353を提供するデータ取得システム11側の事業者)に対して提示するサービス費用に関するデータである。
【0051】
見積データ356は、例えば、選択された造形条件355に基づいて算出される。
【0052】
次に、造形物製作データ変換プログラム351を用いた造形物製作システム1の制御方法又は作業方法のフローチャートの各工程について、
図2を参照して説明する。造形物製作システム1は、造形物製作データ変換システム12を用いた造形物製作データ変換方法を実行することができる。
【0053】
ステップS01で、データ取得システム11は、3Dスキャナ2を用いて測定対象物Tを三次元的にスキャンして測定し、3Dスキャンデータを取得する。
【0054】
ステップS02で、制御部31は、通信ネットワークを介してデータ取得システム11から3DスキャンデータD1を取得し、3Dスキャンデータ353として記憶部35に記憶する。
【0055】
測定した3Dスキャンデータ353は、ハレーション又はアーチファクトノイズ等のノイズを含むことがあり、3Dプリンタ用データとしては、そのままでは利用できない場合がある。そのため、ステップS03で、制御部31は、学習済みモデル352を用いて、造形物製作データ変換システム12(造形物製作データ変換装置3)により取得した3Dスキャンデータ353からノイズを除去する。
【0056】
また、制御部31は、さらに、3Dプリンタ4が読込み及び処理可能なデータ形式(例えば、STL形式)に変換して、処理済みデータ354を生成する。処理済みデータ354は、記憶部35に記憶される。
【0057】
ステップS04で、制御部31は、造形物製作データ変換プログラム351の学習済みモデル352を用いて、3Dプリンタ4により処理済みデータ354の造形物を造形する際の造形条件を出力する。出力された造形条件は、記憶部35に造形条件355として記憶する。
【0058】
なお、造形物製作データ変換システム12は、記憶部35に、流通している3Dプリンタに関する情報を記憶しており、制御部31は、ステップS04において、当該記憶部35から、造形対象物に応じて適切な3Dプリンタを特定し、又はレコメンドしてもよい。
【0059】
造形物製作データ変換装置3は、前述したとおり、主な3Dプリンタの種類に関する情報も記憶する。3Dプリンタの業界は発展速度が早いため、3Dプリンタの機種を含む新しい造形条件等の情報は随時追加更新する機能を備えてもよい。
【0060】
また、制御部31は、過去のデータや技術資料を学習した学習済みモデル352を用いて、臓器など柔軟な測定対象物Tを造形するのであれば、「材料としてシリコーンを用いた3Dプリンタ△△で硬度Hs「〇〇」の材料を用いるのが最適」、骨などの硬いものでサイズが〇〇cm×〇〇cm×〇〇cmのものが造形対象であれば「●●社の硬質3Dプリンタ「△△」を使用し、材料は□□を用いて、充填率〇〇%を用いるのが最適」、等と選択肢を提示することができる。
【0061】
ステップS05で、制御部31は、測定対象物に応じて造形素材又は3Dプリンタ4を選択又は決定する。造形素材又は3Dプリンタ4の選択又は決定は、ユーザの指示により行われてもよい。なお、造形素材又は3Dプリンタ4の選択又は決定は、ステップS05の段階ではなく実際に造形を行う際に行われてもよい。
【0062】
ユーザは、出力部34を介して出力された造形条件又は、レコメンドされた造形条件を、承認又は選択指示することにより、より幅広い選択肢から、造形サービスを行う装置又は造形条件を選択することができる。
【0063】
ステップS06で、制御部31は、処理済みデータに基づき3Dプリンタ4を用いて造形物を造形する作業の費用見積りを算出する。制御部31は、算出した見積りデータD2を、見積データ356として記憶部35に記憶する。
【0064】
ステップS07で、制御部31は、見積データ356(D2)を、データ取得システム11又はデータ取得システム11のユーザが管理若しくは所有する装置へ送信する。これにより、3DスキャンデータD1を提供したユーザは、測定対象物の造形に必要なサービス料金を把握し、造形サービスを利用した造形実施可否や造形個数についての判断を行うことが可能となる。
【0065】
ステップS08で、制御部31は、処理済みデータ354を用いて、3Dプリンタ4により測定対象物を造形する。他社から提供された3DスキャンデータD1に基づいて造形サービスを行う場合、3Dプリンタ4による造形物の造形は、ステップS07においてユーザから造形指示を受けてから行われてもよい。
【0066】
以上、本実施形態では、制御部31が、通信ネットワークを介して3DスキャンデータD1を取得し、学習済みモデル352により、3Dスキャンデータ353から処理済みデータ354を生成する、造形物製作データ変換システム12、造形物製作データ変換方法及び造形物製作データ変換プログラム351について説明した。
【0067】
従来煩雑であった、手作業による3Dスキャンデータのノイズ除去、および3Dプリンタで読み込み可能なデータへの変換といった一連の工程を自動化することができる。このため、人体パーツ等の測定対象物を、3Dプリンタを使用して製作するまでのユーザの作業負担を低減することができる。
【0068】
なお、本実施形態では、学習済みモデル352が造形物製作データ変換プログラム361の一部であるものとして図示したが、学習済みモデル352は学習済みモデル352を外部のプログラムとして呼び出して実行してもよい。
【0069】
また、本実施形態では、造形物製作データ変換システム12は、造形物製作データ変換プログラム351により、ステップS04~S06の処理を行う例について説明したが、造形物製作データ変換システム12は、ステップS04~S06の一部又は全部を、造形物製作データ変換プログラム351とは異なるプログラムにより実行してもよい。
【0070】
また、ステップS04~S06を実行(推論)する学習済みモデルは、本実施形態で説明したように一つの学習済みモデル352により構成されてもよいし、別のモデルであってもよく、上記実施の形態に限定されない。
【符号の説明】
【0071】
1 造形物製作システム
2 3Dスキャナ
3 造形物製作データ変換装置
4 3Dプリンタ
11 データ取得システム
12 造形物製作データ変換システム
31 制御部
32 通信部
33 入力部
34 出力部
35 記憶部
351 造形物製作データ変換プログラム
352 学習済みモデル
353 3Dスキャンデータ
354 処理済みデータ
355 造形条件
356 見積データ
D1 3Dスキャンデータ
D2 見積データ
T 測定対象物
【要約】
【課題】従来煩雑であった、人体パーツ等の測定対象物を、3Dプリンタを使用して製作するまでのユーザの作業負担を低減する。
【解決手段】造形物製作データ変換システムは、測定対象物の3Dスキャンデータを取得し、取得された3Dスキャンデータを、測定対象物を3Dプリンタにより造形するための3Dプリンタ用データに変換する。造形物製作データ変換システムは、少なくとも1つ以上の制御部と、測定対象物を三次元的にスキャンする3Dスキャナにより取得され、ノイズ除去前の3Dスキャンデータを入力データとし、ノイズが除去され、3Dプリンタ用データに変換された処理済みデータを出力データとする教師付きデータによる学習済みモデルを記憶する記憶部と、を備える。制御部は、通信ネットワークを介して3Dスキャンデータを取得し、学習済みモデルにより、3Dスキャンデータから処理済みデータを生成する。
【選択図】
図1