(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-10-16
(45)【発行日】2025-10-24
(54)【発明の名称】バッテリーパック
(51)【国際特許分類】
H01M 50/204 20210101AFI20251017BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20251017BHJP
H01M 10/6561 20140101ALI20251017BHJP
H01M 10/6567 20140101ALI20251017BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20251017BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20251017BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20251017BHJP
H01M 50/244 20210101ALI20251017BHJP
H01M 50/271 20210101ALI20251017BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20251017BHJP
H01M 10/6554 20140101ALI20251017BHJP
【FI】
H01M50/204 401H
H01M50/209
H01M10/6561
H01M10/6567
H01M10/625
H01M10/613
H01M10/647
H01M50/244 Z
H01M50/271 S
H01M10/6556
H01M10/6554
(21)【出願番号】P 2021201821
(22)【出願日】2021-12-13
【審査請求日】2024-10-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】岩元 翔平
(72)【発明者】
【氏名】橿村 友晃
(72)【発明者】
【氏名】キム ミンギュ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥンガナ スザン
【審査官】滝谷 亮一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/196114(WO,A1)
【文献】特表2020-527834(JP,A)
【文献】特表2022-549705(JP,A)
【文献】特表2023-527946(JP,A)
【文献】特表2023-554468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/204
H01M 50/209
H01M 10/6561
H01M 10/6567
H01M 10/625
H01M 10/613
H01M 10/647
H01M 50/244
H01M 50/271
H01M 10/6556
H01M 10/6554
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーモジュールと、前記バッテリーモジュールを収容したケースと、前記ケースの外側底面に接して配置されたクーリングプレートを具備したバッテリーパックであって、
前記バッテリーモジュールは、全体形状が直方体状のセルスタックと、これを前記ケースに固定する保持部材と、これらを接着する構造用接着剤を備え、
前記セルスタックは、矩形板状のセルを厚さ方向に積層して成り、かつその底面を前記ケースの内側底面に向けて配置され、
前記保持部材は、締結部材を介して前記セルスタックを前記ケースに固定しており、
前記構造用接着剤は、前記セルスタックの上面又は一方の側面と前記保持部材との間に設けられており、
前記セルスタックの底面と前記クーリングプレートとの間に熱伝導剤が設けられている
ことを特徴とするバッテリーパック。
【請求項2】
前記保持部材が、頂部、縁部、及び前記頂部と縁部を繋ぐ中間部からなるハット型断面形状を有しており、
前記セルスタックの上面側部分が、前記中間部で保持されており、
前記締結部材が、前記縁部に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のバッテリーパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーパックに係り、さらに詳細には、セルスタックとケースとの確実な接着固定及びセルスタックとクーリングプレートとの優れた熱伝導性を実現し得るバッテリーパックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バッテリーパックのエネルギー密度を高めるために、ボルトなどの締結部品の使用量を削減し得るバッテリーモジュールが提案されている(特許文献1参照。)。このバッテリーモジュールにおいては、モジュールケースの熱伝導性下部板の下側に冷却媒体を流通させる冷却器、典型的にはクーリングプレートが配置されており、さらに、バッテリーセルの底面と熱伝導性下部板との間に所定の接着力及び熱伝導度を有する接着剤が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のバッテリーモジュールのようにバッテリーセルとクーリングプレートとの間に接着剤、典型的には構造用接着剤を設けてしまうと、バッテリーセルからクーリングプレートまでの熱伝導性が低くなり、バッテリー性能の低下を引き起こしてしまうという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明者らが、熱伝導剤をバッテリーセルの底面とクーリングプレートとの間に設け、さらにバッテリーセルの側面とモジュールケースの内側面との間に構造用接着剤を設けて、熱伝導性を確保しようとしたところ、バッテリーセルを固定するための接着面積が十分に確保できなくなるという新たな技術的課題を見出した。
【0006】
本発明は、このような新たな技術的課題に基づいてなされたものであって、セルスタックとケースとの確実な接着固定及びセルスタックとクーリングプレートとの優れた熱伝導性を実現し得るバッテリーパックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、直方体状をなすセルスタックの底面とクーリングプレートとの間に熱伝導剤を設け、セルスタックの他の面と保持部材との間に構造用接着剤を設けることにより、前記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明のバッテリーパックは、バッテリーモジュールと、バッテリーモジュールを収容したケースと、ケースの外側底面に接して配置されたクーリングプレートを具備したバッテリーパックである。このバッテリーモジュールは、全体形状が直方体状のセルスタックと、これをケースに固定する保持部材と、これらを接着する構造用接着剤を備える。このセルスタックは、矩形板状のセルを厚さ方向に積層して成り、かつその底面をケースの内側底面に向けて配置される。この保持部材は、締結部材を介してセルスタックをケースに固定している。この構造用接着剤は、セルスタックの上面又は一方の側面と保持部材との間に設けられている。セルスタックの底面とクーリングプレートとの間に熱伝導剤が設けられている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、直方体状をなすセルスタックの底面とクーリングプレートとの間に熱伝導剤を設け、セルスタックの他の面と保持部材との間に構造用接着剤を設けることとしたため、セルスタックとケースとの確実な接着固定及びセルスタックとクーリングプレートとの優れた熱伝導性を実現し得るバッテリーパックを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のバッテリーパックの一実施形態においてケースの上側部分を切欠いた状態を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1に示したバッテリーパックのII-II線に沿って切った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のバッテリーパックについて図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下で引用する図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0012】
図1に示すように、本実施形態のバッテリーパック1は、複数のバッテリーモジュール10,・・・,10と、これらバッテリーモジュール10,・・・,10を収容したケース20を具備している。さらに、
図2に示すように、バッテリーパック1は、ケース20の外側底面20Aに一体化した状態で配置されたクーリングプレート30を具備しており、このクーリングプレート30中を冷媒31が流通している。
なお、
図2においては、便宜上、冷媒31を流通させる流路の一部のみを示している。また、切欠いたケースの上側部分を二点鎖線で示す。
【0013】
図2に示すように、本実施形態において、バッテリーモジュール10は、全体形状が直方体形状のセルスタック11と、セルスタック11をケース20に固定する保持部材13と、セルスタック11と保持部材13とを接着する構造用接着剤15を備えている。この保持部材13は、頂部131、縁部133,133及び頂部131と縁部133,133を繋ぐ中間部135,135からなるハット型断面形状を有する。
このバッテリーモジュール10において、セルスタック11はセルスタック11の底面11Aをケース20の内側底面20Bに向けており、セルスタック11の上側部分は保持部材13の中間部135,135で保持されている。なお、
図2においては、ケース20の上方向を矢印Zで示し、後述するセル12の厚さ方向を矢印Xで示す。
【0014】
さらに、このセルスタック11は、矩形板状をなす複数のセル12,・・・,12をセル12の側面12Aをケース20の内側底面20Bに向けかつセル12の厚さ方向に積層して構成されている。
【0015】
また、このバッテリーパック1において、保持部材13は、縁部133,133に設けられたボルトなどの締結部材17によってケース20の強度部材21に固定されている。
【0016】
さらに、このバッテリーパック1においては、構造用接着剤15がセルスタック11の上面11Bと保持部材13との間に設けられており、熱伝導剤19がセルスタック11の底面11Aとクーリングプレート30との間に設けられている。
【0017】
次に、本実施形態のバッテリーパックの利点について説明する。
本実施形態のバッテリーパック1によれば、所定のセルスタック11の上面11Bと保持部材13との間に構造用接着剤15を設け、底面11Aとクーリングプレート30との間に熱伝導剤19を設けたので、接着固定における強度効率(接着面積)の向上と熱伝導性の維持ないし向上を同時に実現できる。これにより、バッテリーパックにおけるセルスタックの接着固定を確実にしつつ、バッテリー性能の低下を抑制ないし防止できる。
【0018】
特に、セルスタックとクーリングプレートとの間となる位置に熱伝導剤19を設け、バッテリーモジュール10を締結部材17でケース20に固定することにより、上述したバッテリーパックを簡易な操作で作製できる。
【0019】
さらに、図示しないが、中間部135,135とセルスタック前面,背面(11C,11D)との間に構造用接着剤15を設けることも可能であり、これにより、接着固定における強度効率(接着面積)の更なる向上(拡大)を実現できる。
【0020】
また、本実施形態のバッテリーパック1においては、上述のようにセルスタック11が保持部材13の中間部135,135で保持され、締結部材(ボルト)17が縁部133,133に設けられている。これにより、ボルト頭部が出っ張ることを防止し、ケース20にバッテリーモジュール10を効率良く収容しつつ、セルスタック11とケース20との固定強度を保つことができる。
【0021】
さらに、本実施形態のバッテリーパック1においては、クーリングプレート30がケース20の外側底面20Aに一体化した状態で配置されているので、セルスタック11とクーリングプレート30との間の熱伝導性の更なる向上を実現できる。
【0022】
ここで、上述した実施形態における構成要素の仕様、材質等について詳細に説明する。
【0023】
(ケース)
ケース20としては、電気自動車などの車両の下部に搭載される従来公知のケースを適用することができる。このケースはいわゆるパックケースと言われるものである。また、このケースは、通常、高張力鋼板などの鋼板で形成されている。
【0024】
(クーリングプレート)
クーリングプレート30としては、セル12で発生する熱を放熱し得れば特に限定されるものではない。クーリングプレート30の好適例としては、アルミニウムや銅、ステンレス鋼などの金属材料で形成された流路内に冷媒31を流通させるものを挙げることができる。なお、冷媒としては、空気を適用することもできるが、水、水にエチレングリコールや防錆剤などを添加したロングライフクーラント(LLC)を好適例として挙げることができる。但し、これらに限定されず、二酸化炭素、イソブタンなどの炭化水素を冷媒として用いることもできる。クーリングプレートの流路を形成する金属材料としては、熱伝導性が優れているという観点からは、アルミニウムや銅で形成されていることが好ましく、ケースとの一体化が容易であるという観点からは、ステンレス鋼で形成されていることが好ましい。
【0025】
(セルスタック)
セルスタック11におけるセル12としては、例えば、リチウムイオン二次電池など従来公知の二次電池を挙げることができる。また、セルの外装材としては、従来公知の角形金属缶やアルミニウムラミネートフィルムを挙げることができる。セルスタック11におけるセルは図示しないエンドプレートで挟持されていてもよい。
【0026】
(保持部材)
保持部材17としては、例えば、鋼板で形成されたいわゆるモジュールトップカバーを適用することができる。
【0027】
(構造用接着剤)
構造用接着材15としては、例えば、エポキシ系接着材、アクリル系接着材、ウレタン系接着材、フェノール系接着材を挙げることができる。
【0028】
(熱伝導剤)
熱伝導剤19としては、例えば、上記構造用接着材15よりも熱伝導性が高く、接着性が低い熱伝導性接着材を好適例として挙げることができる。熱伝導剤としては、例えば、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、SBR、天然ゴム、再生ゴム、ブチルゴム、ブロックゴム、ポリサルファイド、シリコーン等のゴムなどを挙げることができる。その中でも、アクリル樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂がより好ましく、ポリオレフィン系樹脂が更に好ましい。また、これらに熱伝導性を有する無機系フィラーを添加して熱伝導性を向上させたものも好適例として挙げることができる。このような無機系フィラーとしては、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ベリリウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、ダイヤモンドなどを挙げることができる。さらに、熱伝導性接着材の典型例としては、上述した構造用接着材に上述した熱伝導性を有する無機系フィラーを添加したものを挙げることができる。
【0029】
以上、本発明を一実施形態によって説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【0030】
本発明においては、セルスタック11からクーリングプレート30への効率的な熱伝達を実現すべく、セルスタック11の底面11Aとクーリングプレート30の間に熱伝導剤19を配置すると共に、セルスタック11とクーリングプレート30との間には構造用接着剤15が介在しない構造を採用したことを骨子とする。
【0031】
よって、熱伝導剤19のかかる配置が実現できれば、
図2に示す構造とは天地逆転の他、異なる姿勢を採ることが可能である。
図2に示す構造においては、セルスタックの底面及び上面がセルスタックを形成する面において最も広い面積を有している。しかしながら、これに限定されず、例えば、セルスタックの図示しない一方の側面が上面よりも広い面積を有している場合には、セルスタックの一方の側面側に配置された保持部材と一方の側面との間に構造用接着剤を設けてもよい。また、ケースの外側底面とクーリングプレートの配置は、直接接触のみならず、更に熱伝導剤を介して接触させてもよく、外側底面を共有化させてケースとクーリングプレートを一体化させてもよい。
【0032】
また、上記の実施形態のバッテリーパック1においては、セルスタック11の一部がハット型断面形状の保持部材13の中間部135,135で保持されており、締結部材17が縁部133,133に設けられている。しかしながら、本発明のバッテリーパックにおいては、保持部材が、少なくとも構造用接着剤を介してセルスタックを接着し、締結部材によってケースに固定されていれば、特に限定されない。従って、例えば、保持部材13は平板形状であってもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 バッテリーパック
10 バッテリーモジュール
11 セルスタック
11A 底面
11B 上面
11C 前面
11D 背面
12 セル
12A 側面
13 保持部材
131 頂部
133 縁部
135 中間部
15 構造用接着剤
17 締結部材
19 熱伝導剤
20 ケース
20A 外側底面
20B 内側底面
21 強度部材
30 クーリングプレート
31 冷媒