IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大日本印刷株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-隔て板、隔て板用のパネル及び建築物 図1
  • 特許-隔て板、隔て板用のパネル及び建築物 図2
  • 特許-隔て板、隔て板用のパネル及び建築物 図3
  • 特許-隔て板、隔て板用のパネル及び建築物 図4
  • 特許-隔て板、隔て板用のパネル及び建築物 図5
  • 特許-隔て板、隔て板用のパネル及び建築物 図6
  • 特許-隔て板、隔て板用のパネル及び建築物 図7
  • 特許-隔て板、隔て板用のパネル及び建築物 図8
  • 特許-隔て板、隔て板用のパネル及び建築物 図9
  • 特許-隔て板、隔て板用のパネル及び建築物 図10
  • 特許-隔て板、隔て板用のパネル及び建築物 図11
  • 特許-隔て板、隔て板用のパネル及び建築物 図12
  • 特許-隔て板、隔て板用のパネル及び建築物 図13
  • 特許-隔て板、隔て板用のパネル及び建築物 図14
  • 特許-隔て板、隔て板用のパネル及び建築物 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-10-16
(45)【発行日】2025-10-24
(54)【発明の名称】隔て板、隔て板用のパネル及び建築物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/00 20060101AFI20251017BHJP
   B32B 15/04 20060101ALI20251017BHJP
   B32B 15/20 20060101ALI20251017BHJP
【FI】
E04B1/00 502N
B32B15/04 Z
B32B15/20
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2024182261
(22)【出願日】2024-10-17
【審査請求日】2025-01-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100141830
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 卓久
(72)【発明者】
【氏名】石黒 寅夫
(72)【発明者】
【氏名】志田 貴紀
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-022703(JP,U)
【文献】特開2015-044352(JP,A)
【文献】特開2010-275610(JP,A)
【文献】特開平05-171460(JP,A)
【文献】実開昭61-095890(JP,U)
【文献】実公昭49-030671(JP,Y1)
【文献】実開昭58-118189(JP,U)
【文献】特許第7223187(JP,B1)
【文献】特開2022-128398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00
F16B 5/00-5/12
E04B 2/72-2/74
B32B 15/04,15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隔て板において、
フレームと、
前記フレームに取り付けられたパネルと、を備え、
前記パネルは、Al-Mn系合金を含む金属基材と、前記金属基材に積層された意匠層とを含み、
前記パネルは、前記フレームを覆うように前記フレームの外側に配置され、
前記パネルは、主たる面部材と、天面部材と、外面部材とを有し、前記天面部材と前記外面部材とは、それぞれ前記主たる面部材に対して折り曲げられている、隔て板。
【請求項2】
隔て板において、
フレームと、
前記フレームに取り付けられたパネルと、を備え、
前記パネルは、金属基材と、前記金属基材に積層された意匠層を含み、
前記パネルにスタッドボルトが固定され、
前記パネルは、前記スタッドボルトによって前記フレームに取り付けられ、
前記パネルは、前記フレームを覆うように前記フレームの外側に配置され、
前記パネルは、主たる面部材と、天面部材と、外面部材とを有し、前記天面部材と前記外面部材とは、それぞれ前記主たる面部材に対して折り曲げられている、隔て板。
【請求項3】
前記金属基材の厚さが1.0mm以上である、請求項1又は2に記載の隔て板。
【請求項4】
前記パネルにスタッドボルトが固定され、前記パネルは、前記スタッドボルトによって前記フレームに取り付けられている、請求項1に記載の隔て板。
【請求項5】
前記スタッドボルトは、アルミニウム又は鉄を含む、請求項2又は4に記載の隔て板。
【請求項6】
前記フレームに保持された蹴破り板を更に備えた、請求項1又は2に記載の隔て板。
【請求項7】
前記フレームは、下枠と、上枠と、外枠と、内枠と、を有し、前記外枠は、外側溝部を有し、前記外側溝部には、意匠材が収容されている、請求項1又は2に記載の隔て板。
【請求項8】
前記パネルは、前記金属基材を基準にして前記意匠層側に位置する第1面において、フロップ指標が4.5以上である領域を有する、請求項1又は2に記載の隔て板。
【請求項9】
前記意匠層は、有機着色剤を含有する、請求項1又は2に記載の隔て板。
【請求項10】
前記意匠層は、焼付け層である、請求項1又は2に記載の隔て板。
【請求項11】
前記パネルに対し、サンシャインウェザーメーターによる促進耐候試験を行い、紫外線照射時間が合計10000時間となったとき、前記促進耐候試験投入前後における色差(△E)の値が、7以下である、請求項1又は2に記載の隔て板。
【請求項12】
フレームを備える隔て板において、前記フレームを覆うように前記フレームの外側に取り付けて用いられる隔て板用のパネルにおいて、
Al-Mn系合金を含む金属基材と、
前記金属基材に積層された意匠層とを含み、
前記パネルは、主たる面部材と、天面部材と、外面部材とを有し、
前記天面部材と前記外面部材とは、それぞれ前記主たる面部材に対して折り曲げられている、パネル。
【請求項13】
前記金属基材に対して前記意匠層の反対側に位置する面側に向けて突出するように固定された、前記隔て板の前記フレームに取り付けるためのスタッドボルトを更に備えた、請求項12に記載のパネル。
【請求項14】
請求項1又は2に記載の隔て板を備えた、建築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、隔て板、隔て板用のパネル及び建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅のベランダに隔て板を設け、隣り合う住戸を仕切ることが行われている。この隔て板は、隣り合う住戸同士の境界を明確にし、住民の視線を遮ってプライバシーを確保する役割を果たす。また、隔て板には、火災等の非常時に避難者が蹴破って破壊して、通り抜けることが可能となっているものもある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-174308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の隔て板は、外観のバリエーションに乏しい。このため、従来の隔て板を用いた集合住宅においては、隔て板の意匠と外壁の意匠との統一が図れない場合が多い。
【0005】
本開示は、意匠性の高い隔て板、隔て板用のパネル及び建築物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の実施の形態は、以下の[1]~[15]に関する。
【0007】
[1]隔て板において、フレームと、前記フレームに取り付けられたパネルと、を備え、前記パネルは、Al-Mn系合金を含む金属基材と、前記金属基材に積層された意匠層とを含む、隔て板。
【0008】
[2]隔て板において、フレームと、前記フレームに取り付けられたパネルと、を備え、前記パネルは、金属基材と、前記金属基材に積層された意匠層を含み、前記パネルにスタッドボルトが固定され、前記パネルは、前記スタッドボルトによって前記フレームに取り付けられている、隔て板。
【0009】
[3]前記金属基材の厚さが1.0mm以上である、[1]又は[2]に記載の隔て板。
【0010】
[4]前記パネルにスタッドボルトが固定されている、[1]に記載の隔て板。
【0011】
[5]前記スタッドボルトは、アルミニウム又は鉄を含む、[2]又は[4]に記載の隔て板。
【0012】
[6]前記フレームに保持された蹴破り板を更に備えた、[1]乃至[5]のいずれか1つに記載の隔て板。
【0013】
[7]前記パネルは、前記フレームの外側に配置されている、[1]乃至[6]のいずれか1つに記載の隔て板。
【0014】
[8]前記フレームは、下枠と、上枠と、外枠と、内枠と、を有し、前記外枠は、外側溝部を有し、前記外側溝部には、意匠材が収容されている、[1]乃至[7]のいずれか1つに記載の隔て板。
【0015】
[9]前記パネルは、前記金属基材を基準にして前記意匠層側に位置する第1面において、フロップ指標が4.5以上である領域を有する、[1]乃至[8]のいずれか1つに記載の隔て板。
【0016】
[10]前記意匠層は、有機着色剤を含有する、[1]乃至[9]のいずれか1つに記載の隔て板。
【0017】
[11]前記意匠層は、焼付け層である、[1]乃至[10]のいずれか1つに記載の隔て板。
【0018】
[12]前記パネルに対し、サンシャインウェザーメーターによる促進耐候試験を行い、紫外線照射時間が合計10000時間となったとき、前記促進耐候試験投入前後における色差(△E)の値が、7以下である、[1]乃至[11]のいずれか1つに記載の隔て板。
【0019】
[13]隔て板用のパネルにおいて、Al-Mn系合金を含む金属基材と、前記金属基材に積層された意匠層とを含む、パネル。
【0020】
[14]前記金属基材に固定されたスタッドボルトを更に備えた、[13]に記載のパネル。
【0021】
[15][1]乃至[12]のいずれか1つに記載の隔て板を備えた、建築物。
【発明の効果】
【0022】
本開示によれば、意匠性の高い隔て板を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、第1の実施の形態による隔て板を示す正面図。
図2図2は、第1の実施の形態による隔て板を示す垂直断面図(図1のII-II線断面図)。
図3図3は、図1のIII-III線断面図。
図4図4は、図1のIV-IV線断面図。
図5図5は、第1の実施の形態の変形例による隔て板を示す正面図。
図6図6は、第2の実施の形態による隔て板を示す正面図。
図7図7は、第2の実施の形態による隔て板を示す垂直断面図(図6のVII-VII線断面図)。
図8図8は、第2の実施の形態による隔て板を示す水平断面図(図6のVIII-VIII線断面図)。
図9図9は、パネルを例示する概略断面図。
図10図10は、パネルの変形例を例示する概略断面図。
図11図11(a)-(e)は、パネルの製造方法を例示する概略断面図である。
図12図12は、実施例1-1~1-4、及び、比較例1-1~1-4の結果を示すグラフである。
図13図13は、実施例2-1~2-4、及び、比較例2-1~2-4の結果を示すグラフである。
図14図14は、実施例3-1~3-4の結果を示すグラフである。
図15図15は、実施例4-1~4-4の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1の実施の形態)
以下、第1の実施の形態について、図1乃至図4を参照して説明する。ただし、本開示は、多くの異なる態様で実施することが可能であり、下記に例示する実施の形態の記載内容に限定されるべきではない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状について模式的に表す場合があるが、これはあくまで一例であり、限定して解釈されるべきではない。以下の各図において、同一部分には同一の符号を付しており、一部詳細な説明を省略する場合がある。
【0025】
本明細書において、ある部材に、他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」あるいは「下に」と表記する場合、特に断りの無い限り、ある部材に接するように、直上あるいは直下に、他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合と、の両方を含む。また、本明細書において、ある部材の面に、他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「面に」と表記する場合、特に断りの無い限り、ある部材に接するように、直上あるいは直下に、他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合と、の両方を含む。
【0026】
(隔て板の構成)
図1乃至図4により、本実施の形態による隔て板の概略について説明する。図1乃至図4は、本実施の形態による隔て板を示す図である。
【0027】
図1乃至図4に示す隔て板10は、例えば集合住宅等の建築物90のベランダを仕切る隔壁である。隔て板10は、フレーム20と、パネル50と、を備える。パネル50はフレーム20に取り付けられている。パネル50は、金属基材55と、金属基材55に積層された意匠層56とを含む。
【0028】
本実施の形態によれば、パネル50は、金属基材55と、金属基材55に積層された意匠層56とを含む。これにより、隔て板10の意匠性を高めることができる。また隔て板10の意匠を建築物90の意匠に合わせることができ、隔て板10と建築物90との意匠の統一を図ることができる。また、金属基材55はAl-Mn系合金を含んでも良い。Al-Mn系合金を含む金属基材55は、一般的なアルミニウム板よりも強度が高い。このため、意匠層56を金属基材55に焼き付ける焼付温度を高温にでき、パネル50の耐候性を高められる。
【0029】
[フレーム]
図1に示すように、フレーム20は、ベランダの床面91、ベランダの天面92及び建物外壁面93にそれぞれ固定されている。フレーム20は、下枠21と、上枠22と、外枠23と、内枠24と、を有する。フレーム20は、パネル50の主たる面部材51の法線方向から見て長方形状である。下枠21と上枠22との間には、第1中桟25と、第2中桟26とが位置する。
【0030】
下枠21は、フレーム20の下部に位置する。下枠21は、水平方向に延びる。下枠21は、外枠23と内枠24とを互いに連結する。下枠21は、下部固定金具31を介してベランダの床面91に固定されている。下枠21には、パネル50に取り付けられた引っ掛け金具35により、パネル50が取り付けられている(図2参照)。
【0031】
上枠22は、フレーム20の上部に位置する。上枠22は、水平方向に延びる。上枠22は、外枠23と内枠24とを互いに連結する。上枠22は、上部固定金具32を介してベランダの天面92に固定されている。
【0032】
外枠23は、フレーム20の外縁(建物外壁面93の反対側)に位置する。外枠23は、ベランダの床面91と天面92との間で鉛直方向に延びる。
【0033】
内枠24は、フレーム20の内縁(建物外壁面93側)に位置する。内枠24は、ベランダの床面91と天面92との間で鉛直方向に延びる。内枠24は、内側固定金具33を介して建物外壁面93に固定されている。内側固定金具33は、鉛直方向に延びるとともに、ボルト34によって建物外壁面93に取り付けられている。
【0034】
第1中桟25は、下枠21と第2中桟26との間に位置する。第1中桟25は、水平方向に延びる。第1中桟25は、外枠23と内枠24とを互いに連結する。第1中桟25には、パネル50に取り付けられた引っ掛け金具35により、パネル50が取り付けられている。
【0035】
第1中桟25と下枠21との間には、一対の板取付枠27、28が位置する。一方の板取付枠27は外枠23側に位置し、他方の板取付枠28は内枠24側に位置する。一対の板取付枠27、28は、それぞれ鉛直方向に延びる。一対の板取付枠27、28は、それぞれ第1中桟25と下枠21とを互いに連結する。一対の板取付枠27、28には、蹴破り板30が嵌め込まれている。
【0036】
蹴破り板30は、火災等の非常時に、避難者が蹴破ることにより破壊可能となっている。蹴破り板30は、長方形形状の板状の部材である。蹴破り板30は、フレーム20に保持されている。蹴破り板30は、第1中桟25と、一対の板取付枠27、28と、下枠21とによって取り囲まれている。蹴破り板30の周縁は、第1中桟25、一対の板取付枠27、28、及び下枠21にそれぞれ設けられた溝部に収容されている。なお、図3に板取付枠27の溝部27bを示し、図4に下枠21の溝部21bを示す。蹴破り板30の材料は、例えばフレキシブルボード(繊維強化セメント板)、合板、ケイカル板(珪酸カルシウム板)、石膏等であっても良い。
【0037】
なお、例えば隔て板10が避難経路に設置されていない場合等には、蹴破り板30は必ずしも設けられていなくても良い。
【0038】
第2中桟26は、第1中桟25と上枠22との間に位置する。第2中桟26は、水平方向に延びる。第2中桟26は、外枠23と内枠24とを互いに連結する。第2中桟26には、パネル50に取り付けられた引っ掛け金具35により、パネル50が取り付けられている。
【0039】
[パネル]
パネル50は、フレーム20の外側に配置されている。パネル50は、実質的にフレーム20が外方から視認できないようにフレーム20を覆う。この場合、フレーム20には、2つパネル50が取り付けられている。2つパネル50は、フレーム20を介して互いに反対側を向く。すなわち、一方のパネル50は一方の住戸のベランダ側を向き、他方のパネル50は隣接する住戸のベランダ側を向く。2つパネル50は、実質的に対称な形状を有する。パネル50は、化粧部材と称しても良い。
【0040】
パネル50は、金属基材55と、金属基材55に積層された意匠層56とを含む。意匠層56は、金属基材55に直接積層されていても良く、他の層(例えば後述するプライマー層57及び下地層58等)を介して積層されていても良い。意匠層56は、耐候性を有するとともに意匠性を有する。このため意匠層56の意匠を、建築物90の建物外壁面93等に一致させることにより、統一感のある建築物90の外観を提供できる。
【0041】
パネル50は、主たる面部材51と、天面部材52と、外面部材53とを有する。天面部材52と外面部材53とは、それぞれ主たる面部材51に対してそれぞれ直角に折り曲げられている。
【0042】
主たる面部材51は、パネル50の最も広い面を構成する。主たる面部材51は、住戸のベランダ側を向く。主たる面部材51は、長方形形状の外周を有する。主たる面部材51の各辺は、それぞれフレーム20の下枠21、内枠24、上枠22及び外枠23に沿って延びる。
【0043】
主たる面部材51には、長方形状の開口部51aが形成されている。開口部51aからは蹴破り板30が外方に露出する。主たる面部材51は、開口部51aの内側に向けて折り曲げられて内側折曲部51bを形成する(図4参照)。内側折曲部51bの先端は、蹴破り板30側を向く。
【0044】
天面部材52は、パネル50の鉛直方向上部に位置する。天面部材52は、水平方向に平行に位置する。天面部材52は、フレーム20の上枠22を覆うように配置される。図2に示すように、一方のパネル50の天面部材52と、他方のパネル50の天面部材52とが、上枠22上で互いに対向するように配置される。天面部材52と上枠22は、一体となって上部固定金具32に固定される。
【0045】
外面部材53は、パネル50の外側(建物外壁面93の反対側)を向く。外面部材53は、鉛直方向に延びる。外面部材53は、フレーム20の外枠23を覆うように配置される。図3に示すように、一方のパネル50の外面部材53と、他方のパネル50の外面部材53とが、外枠23上で互いに対向するように配置される。
【0046】
パネル50は、フレーム20に対してスタッドボルト36によって取り付けられている。具体的には、パネル50には、内側(フレーム20側)に向けて突出するスタッドボルト36が固定されている。スタッドボルト36は、パネル50の金属基材55に対して溶接等によって固定されている。パネル50のスタッドボルト36をフレーム20のボルト用の開口に挿入し、ナット37をスタッドボルト36にねじ込むことにより、パネル50がフレーム20に取り付けられる。スタッドボルト36は、アルミニウム製又は鉄製であっても良い。
【0047】
図2に示すように、パネル50は、主たる面部材51に設けられたスタッドボルト36により、フレーム20の上枠22に取り付けられている。また、主たる面部材51に設けられたスタッドボルト36に引っ掛け金具35を固定し、引っ掛け金具35をフレーム20の下枠21、第1中桟25及び第2中桟26にそれぞれ嵌め込むことにより、パネル50がフレーム20の下枠21、第1中桟25及び第2中桟26に固定されている。さらに図4に示すように、パネル50は、主たる面部材51に設けられたスタッドボルト36により、フレーム20の下枠21に取り付けられている。
【0048】
図2に示すように、パネル50の天面部材52と、フレーム20の上枠22とがネジ等の締結部材38aによって互いに固定されている。また、図3に示すように、パネル50の外面部材53と、フレーム20の外枠23とがネジ等の締結部材38bによって互いに固定されている。また、図4に示すように、パネル50の内側折曲部51bと、フレーム20の下枠21とがネジ等の締結部材38cによって互いに固定されている。
【0049】
なお、パネル50の詳細な構成については後述する。
【0050】
図5は、本実施の形態による隔て板10の変形例を示す図である。図5に示すように、ベランダの床面91にフェンス94が設けられている。フレーム20の外枠23及びパネル50の外面部材53は、フェンス94に固定されていても良い。
【0051】
本実施の形態によれば、隔て板10のパネル50は、金属基材55に積層された意匠層56を含む。隔て板10が意匠層56を含むことにより、隔て板10の意匠性を高められる。また意匠層56の意匠を適宜変更できる。例えば、意匠層56の意匠を建築物90の建物外壁面93の意匠に一致させることにより、統一感のある建築物90の外観を提供できる。
【0052】
また本実施の形態によれば、隔て板10のパネル50は、Al-Mn系合金を含む金属基材55を含んでも良い。Al-Mn系合金を含む金属基材55は、純アルミニウムよりも強度が高い。このため、意匠層56を金属基材55に対して高温で焼き付けることができる。意匠層56を高温で焼き付けることにより、意匠層56の耐候性を高めることができる。
【0053】
また本実施の形態によれば、パネル50の金属基材55にスタッドボルト36が固定され、パネル50は、フレーム20に対してスタッドボルト36によって取り付けられている。これにより、パネル50をフレーム20に対して強固に取り付けられる。さらに、後述するように、金属基材55の厚さを1.0mm以上とした場合、金属基材55が十分に厚いため、金属基材55の、意匠層56の反対側の面にスタッドボルト36を溶接できる。このため、金属基材55に固定されたスタッドボルト36の痕跡が、意匠層56側に実質的に出現しない。これにより、スタッドボルト36の痕跡によって意匠層56の意匠性が低下することを抑制できる。
【0054】
また本実施の形態によれば、パネル50は、フレーム20の外側に取り付けられている。この場合、パネル50に覆われたフレーム20が外方から視認されないため、フレーム20によってパネル50の意匠性が低下することを抑制できる。
【0055】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態について、図6乃至図8を参照して説明する。図6乃至図8において、図1乃至図5に示す第1の実施の形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0056】
(隔て板の構成)
図6乃至図8を参照して、本実施の形態による隔て板の概略について説明する。図6乃至図8は、本実施の形態による隔て板を示す図である。
【0057】
図6乃至図8に示すように、隔て板10は、フレーム20と、パネル50と、を備える。パネル50はフレーム20に取り付けられている。パネル50は、金属基材55と、金属基材55に積層された意匠層56とを含む。
【0058】
[フレーム]
図6に示すように、フレーム20は、下枠21と、上枠22と、外枠23と、内枠24と、を有する。下枠21と上枠22との間には、第1中桟25と、第2中桟26とが位置する。
【0059】
図7に示すように、下枠21の上部には、蹴破り板30を保持する第1保持部材21aが取り付けられている。第1保持部材21aは、蹴破り板30を収容する第1溝部21bを有する。第1溝部21bには、蹴破り板30を押さえる第1押え部材21cが配置されている。
【0060】
第1中桟25の下部には、蹴破り板30を保持する第2保持部材25aが取り付けられている。第2保持部材25aは、蹴破り板30を収容する第2溝部25bを有する。第2溝部25bには、蹴破り板30を押さえる第2押え部材25cが配置されている。
【0061】
第1保持部材21a、第2保持部材25a、第1押え部材21c及び/又は第2押え部材25cは、パネル50と同様の板材から構成されても良い。すなわち、第1保持部材21a、第2保持部材25a、第1押え部材21c及び/又は第2押え部材25cは、金属基材と、金属基材に積層された意匠層とを含んでも良い。これにより、蹴破り板30の周囲の意匠性を高め、パネル50と一体化した意匠を提供できる。
【0062】
図8に示すように、外枠23には、型材29が取り付けられている。また外枠23は、外側溝部23aを有する。外側溝部23aは、ベランダの床面91と天面92との間で鉛直方向に延びる。外側溝部23aには、意匠材23bが収容されている。意匠材23bは、金属基材と、金属基材に積層された意匠層とを含んでも良い。意匠材23bにより、隔て板10の外枠23側の意匠性を高め、パネル50と一体化した意匠を提供できる。
【0063】
図6に示すように、外枠23及び意匠材23bは、ベランダの床面91よりも鉛直方向下方に延びる。これにより、ベランダの床面91よりも下方側の意匠性を高め、パネル50と一体化した意匠を提供できる。
【0064】
図8に示すように、内枠24は、内側溝部24aを有する。内側溝部24aは、ベランダの床面91と天面92との間で鉛直方向に延びる。内枠24は、内側溝部24aにおいて内側固定金具33及びボルト34によって建物外壁面93に取り付けられている。
【0065】
図8に示すように、一対の板取付枠27、28には、それぞれ蹴破り板30を保持する第3保持部材27a及び第4保持部材28aが取り付けられている。第3保持部材27a及び第4保持部材28aは、それぞれ蹴破り板30を収容する第3溝部27b及び第4溝部28bを有する。
【0066】
[パネル]
パネル50は、フレーム20の外側に配置されている。本実施の形態において、パネル50は、主たる面部材51を有し、天面部材及び外面部材を有していない。すなわち、パネル50は、折り曲げ部を有さない板状部材から構成されている。なお、これに限らず、パネル50は、天面部材52又は外面部材53を有しても良い。
【0067】
図6に示すように、主たる面部材51は、ベランダの床面91よりも鉛直方向下方に延びる下方延長部51cを有する。下方延長部51cにより、ベランダの床面91よりも下方側の意匠性を高め、パネル50と一体化した意匠を提供できる。
【0068】
図7に示すように、パネル50は、フレーム20に対してスタッドボルト36によって取り付けられている。具体的には、パネル50には、内側(フレーム20側)に向けて突出するスタッドボルト36が固定されている。スタッドボルト36は、パネル50の金属基材55に対して溶接等によって固定されている。具体的には、パネル50に設けられたスタッドボルト36を取付金具39の開口に挿入し、ナット37をスタッドボルト36にねじ込む。さらに、取付金具39を下枠21に取り付けることにより、パネル50がフレーム20に取り付けられる。また、パネル50に設けられたスタッドボルト36に引っ掛け金具35を固定し、引っ掛け金具35をフレーム20の第1中桟25に嵌め込むことにより、パネル50がフレーム20の第1中桟25に取り付けられている。
【0069】
なお、パネル50の詳細な構成については後述する。
【0070】
本実施の形態によれば、フレーム20の外枠23は、外側溝部23aを有し、外側溝部23aには、意匠材23bが収容されている。これにより、フレーム20の外枠23を外方から見たときの意匠性を高められる。
【0071】
(パネル、及び、パネルの製造方法)
以下、上述した各実施の形態における、隔て板用のパネル、及び、パネルの製造方法について、詳細に説明する。
【0072】
A.パネル
図9及び図10は、本実施の形態におけるパネル50を例示する概略断面図である。図9に示すように、パネル50は、金属基材55と、意匠層56と、を厚さ方向Dにおいて、この順に有する。意匠層56は、有機着色剤を含有する。また、パネル50は、金属基材55を基準にして意匠層56側に位置する第1面50aにおいて、フロップ指標が4.5以上である領域を有しても良い。また、図10に示すように、パネル50は、金属基材55と、プライマー層57と、下地層58と、意匠層56と、表面保護層59と、を厚さ方向Dにおいて、この順に有していてもよい。
【0073】
本実施の形態において、意匠層56が有機着色剤を含有し、かつ、第1面50aにおけるフロップ指標が4.5以上であっても良い。この場合、金属基材55の光沢感を活かしつつ、幅広い意匠表現が可能なパネル50となる。金属基材55を用いたパネル50では、金属基材55の光沢感を活かすことで独特の意匠が生じ、その独特の意匠を利用することで、意匠表現の幅を広げることができる。すなわち、金属基材55の素地を活かした意匠表現、より具体的には、観察する角度によって、明度、彩度及び色相が多く変化する金属調の意匠表現が可能となる。
【0074】
意匠層56が有機着色剤を含有する場合、金属基材55の光沢感を過度に隠蔽することなく、明度及び彩度が高い意匠表現(多様な色彩表現)が可能となる。具体的には、真鍮、銅、腐食パターン、研磨パターン等の意匠表現を、従来よりも高いレベルで再現できることが可能になる。また、第1面50aにおけるフロップ指標が4.5以上である場合、金属基材55の光沢感を十分に活かすことができる。通常の色差評価では、パネル50の表面の光沢度の影響を大きく受けるため、金属基材55の光沢感を定量的に評価することが困難である。これに対して、本実施の形態においては、フロップ指標に着目することで、パネル50の表面の光沢度の影響を大きく受けずに、金属基材55の光沢感を定量的に評価することが可能になる。
【0075】
1.フロップ指標
本実施の形態におけるパネル50は、図9に示すように、金属基材55を基準にして意匠層56側に位置する第1面50aにおいて、フロップ指標が4.5以上である領域を有しても良い。
【0076】
金属基材55の光沢感は、受光や観察する位置や角度によって、明度、彩度及び色相が大きく変化する。この変化の特性はフロップと称され、フロップを定量的に評価した指標が、フロップ指標である。フロップ指標は、効果角が15°、45°、110°における各L(L 15、L 45、L 110)を用いて、以下の式から算出される。
フロップ指標=2.69×(L 15-L 1101・11/(L 450・85
フロップ指標の測定方法の詳細については、後述する実施例で説明する。
【0077】
上記領域におけるフロップ指標は、5以上であってもよく、6以上であってもよく、7以上であってもよく、8以上であってもよい。また、厚さ方向から見て、上記領域は、通常、有機着色剤を含有する領域である。
【0078】
パネル50を意匠層56側からみて、意匠層56の面積をSとし、上記領域の面積をSとする。Sに対するSの割合(S/S)は、例えば1%以上であり、3%以上であってもよく、5%以上であってもよい。一方、S/Sは、意匠層56のデザインにもよるが、100%であってもよく、100%未満であってもよい。後者の場合、金属基材55の光沢感を活かす領域と、金属基材55の光沢感を活かさない領域と、を有するデザインになる。S/Sは、80%以下であってもよく、60%以下であってもよい。
【0079】
2.意匠層
本実施の形態における意匠層56は、パネル50に意匠性を付与する層であり、有機着色剤を含有する。意匠層56は、絵柄(模様)を有する絵柄層であってもよく、表面絵柄層と称しても良い。意匠層56は、ベタ層(インキをベタ塗した層)であってもよく、絵柄層及びベタ層の組み合わせであってもよい。
【0080】
絵柄層における模様としては、例えば、木目模様、大理石模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様、草花模様、波目模様、ストライプ模様、金属調(メタリック)模様、錆風模様が挙げられる。
【0081】
意匠層56は、有機着色剤(有機顔料または有機染料)を含有する。有機着色剤としては、例えば、ペリレン系着色剤、シアニン系着色剤、ニッケル-アゾ錯体系着色剤、アゾメチン系着色剤、キナクリドン系着色剤、イソインドリノン系着色剤が挙げられる。
【0082】
有機着色剤の平均粒径は、例えば、100μm以上350μm以下であり、200μm以上300μm以下であってもよい。本明細書において、平均粒径とは、動的光散乱方法で測定した粒子径分布を体積累積分布で表したときの50%粒子径(d50:メジアン径)をいう。また、有機着色剤を含有する層における、有機着色剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、例えば、1質量部以上40質量部以下である。
【0083】
一方、意匠層56は、無機着色剤(無機顔料または無機染料)を含有していてもよい。無機着色剤としては、例えば、カーボンブラック、鉄黒、チタン白、アンチモン白、チタン黄、黄鉄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルーが挙げられる。また、意匠層56は、着色剤として、アルミニウム、真鍮等のメタリック系着色剤;二酸化チタン被膜雲母、塩基性炭酸鉛等のパール系着色剤を含有していてもよい。
【0084】
意匠層56は、樹脂を含有する。意匠層56に含まれる樹脂は、硬化性樹脂の硬化物(架橋構造体)であることが好ましく、熱硬化性樹脂の硬化物であることがより好ましい。意匠層56に含まれる樹脂としては、例えば、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ユリア系樹脂、ポリエステル系樹脂、メラミン系樹脂、アルキド系樹脂、アミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ウレタン-アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、セルロース系樹脂が挙げられる。中でも、硬化性樹脂は、フッ素系樹脂が好ましい。耐候性が良好だからである。フッ素系樹脂としては、例えば、フルオロエチレン-ビニルエーテル共重合体、フルオロエチレン-ビニルエステル共重合体、フルオロエチレン-アクリル共重合体が挙げられる。
【0085】
意匠層56に含まれる樹脂は、硬化性樹脂及び硬化剤を含有する樹脂組成物の硬化物であってもよい。上記硬化剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPID)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等のイソシアネート化合物が挙げられる。また、硬化性樹脂100質量部に対する、硬化剤の割合は、特に限定されないが、例えば、30質量部以上、70質量部以下であり、35質量部以上、65質量部以下であってもよい。また、意匠層56は、耐候剤等の添加剤を含有していてもよい。耐候剤の詳細については後述する。
【0086】
意匠層56は、1層構造であってもよく、2層以上の積層構造であってもよい。意匠層56は、有機着色剤を含有する絵柄層を有していることが好ましい。有機着色剤を含有する絵柄層は、1層であってもよく、2層以上であってもよい。また、意匠層56は、有機着色剤を含有するベタ層を有していてもよい。有機着色剤を含有するベタ層は、1層であってもよく、2層以上であってもよい。また、意匠層56は、有機着色剤を含有する層を少なくとも有するが、無機着色剤を含有する層をさらに有していてもよい。無機着色剤を含有する層は、無機着色剤を含有する絵柄層であってもよく、無機着色剤を含有するベタ層であってもよく、その両方であってもよい。無機着色剤を含有する絵柄層、及び、無機着色剤を含有するベタ層は、それぞれ、1層であってもよく、2層以上であってもよい。
【0087】
意匠層56は、厚さ方向において、金属基材55側から、無機着色剤を含有する層、及び、有機着色剤を含有する層を、この順に有していてもよい。無機着色剤を含有する層、及び、有機着色剤を含有する層は、それぞれ独立に、ベタ層であってもよく、絵柄層であってもよい。例えば、無機着色剤を含有するベタ層を設けることで、金属基材55の色を調整することができる。あるいは、無機着色剤を含有する絵柄層と、有機着色剤を含有する絵柄層とを重ねることで、有機着色剤を含有する層により、金属基材55の光沢感を活かしつつ、無機着色剤を含有する層により、部分的に隠蔽領域を設けることが可能となり、複雑な意匠表現が可能となる。
【0088】
同様に、意匠層56は、厚さ方向において、金属基材55側から、有機着色剤を含有する層、及び、無機着色剤を含有する層を、この順に有していてもよい。この場合も、有機着色剤を含有する層、及び、無機着色剤を含有する層は、それぞれ独立に、ベタ層であってもよく、絵柄層であってもよい。また、意匠層56は、有機着色剤及び無機着色剤の両方を含有する層を有していてもよい。なお、意匠層56は、無機着色剤を含有する層を有しなくてもよい。
【0089】
意匠層56は、焼付け層であることが好ましい。焼付け層とは、塗工された組成物を加熱硬化させる(焼付け塗装する)ことで形成される層であり、例えば、接着層を介して貼付された意匠層56とは異なる層である。また、意匠層56の厚さは、特に限定されないが、例えば、1μm以上10μm以下であり、3μm以上7μm以下であってもよい。なお、意匠層56が複数の層を有する場合は、複数の層の合計の厚さが、上記範囲内にあることが好ましい。
【0090】
3.金属基材
本実施の形態における金属基材55は、金属元素を含有する基材である。金属基材55に含まれる金属元素としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、チタンが挙げられる。金属基材55は、上記金属元素を主成分として含有することが好ましい。
【0091】
金属基材55は、1種の金属元素を含有する金属単体であってもよく、2種の金属元素を含有する合金であってもよい。また、金属基材55は、炭素成分を含有していてもよい。金属基材の具体例としては、例えば、アルミニウム基材、アルミニウム合金基材(例えばジュラルミン基材)、スチール基材(鋼基材)、ステンレス鋼基材、銅基材、銅合金基材(例えば真鍮基材、青銅基材)、チタン基材、チタン合金基材が挙げられる。金属基材の表面は、めっき加工されていてもよい。
【0092】
とりわけ金属基材55は、Al-Mn系合金であることが好ましい。Al-Mn系合金は、主にMn(マンガン)が添加され、純アルミニウムの強度を高めたアルミニウム合金である。Al-Mn系合金は、アルミニウムマンガン系合金、又は、3000系アルミニウム合金と称しても良い。金属基材55がAl-Mn系合金であることにより、後述するように金属基材55に意匠層56を高温で焼き付けることが可能となる。意匠層56を高温で焼き付けることにより、パネル50の耐候性を向上できる。
【0093】
金属基材55は、曲げ加工が施されていても良い。金属基材55の厚さは、例えば、1.0mm以上であり、1.2mm以上であってもよく、1.5mm以上であってもよく、1.7mm以上であってもよい。金属基材55の厚さは、例えば、5.0mm以下であり、4.0mm以下であってもよく、3.0mm以下であってもよい。金属基材55の厚さを1.0mm以上とした場合、金属基材55が十分に厚いため、金属基材55に対して、意匠層56の反対側に位置する面側に向けて突出するように、上述したスタッドボルト36を溶接できる。この場合、金属基材55が十分に厚いため、金属基材55に固定されたスタッドボルト36の痕跡が意匠層56側に実質的に出現しない。これにより、スタッドボルト36の痕跡によって意匠層56の意匠性が低下することを抑制できる。
【0094】
4.プライマー層
本実施の形態におけるパネル50は、金属基材55と意匠層56との間に、プライマー層57を有していてもよい。プライマー層57を設けることで、プライマー層57に隣接する2つの層の密着性が向上する。
【0095】
プライマー層57は、樹脂を含有する。プライマー層57に含まれる樹脂は、硬化性樹脂の硬化物(架橋構造体)であることが好ましく、熱硬化性樹脂であることがより好ましい。プライマー層57に含まれる樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリルポリオール系樹脂、アクリル系樹脂、エステル系樹脂、アミド系樹脂、ブチラール系樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン-アクリル共重合体、ポリカーボネート系ウレタン-アクリル共重合体(ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、末端、側鎖に2個以上の水酸基を有する重合体(ポリカーボネートポリオール)由来のウレタン-アクリル共重合体)、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル共重合体樹脂、塩素化プロピレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂(硝化綿)、酢酸セルロース系樹脂、フッ素系樹脂が挙げられる。
【0096】
プライマー層57に含まれる樹脂は、硬化性樹脂及び硬化剤を含有する樹脂組成物の硬化物であってもよい。上記硬化剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPID)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等のイソシアネート化合物が挙げられる。また、プライマー層57は、耐候剤等の添加剤を含有していてもよい。耐候剤の詳細については後述する。
【0097】
プライマー層57は、焼付け層であることが好ましい。また、プライマー層57の厚さは、特に限定されないが、例えば、1μm以上10μm以下であり、2μm以上5μm以下であってもよい。
【0098】
5.下地層
本実施の形態におけるパネル50は、金属基材55と意匠層56との間に、下地層58を有していてもよい。例えば、下地層58を設けることで、金属基材55の光沢感を調整できる。金属基材55の光沢感を活かすため、下地層58は、通常、透明(有色透明または無色透明)な層である。
【0099】
下地層58は、樹脂を含有する。下地層58に含まれる樹脂は、硬化性樹脂の硬化物(架橋構造体)であることが好ましく、熱硬化性樹脂の硬化物であることがより好ましい。また、硬化性樹脂は、フッ素系樹脂が好ましい。耐候性が良好だからである。また、下地層58は、着色剤を含有していてもよく、含有していなくてもよい。また、下地層58は、無機着色剤を含有していてもよい。硬化性樹脂及び着色剤については、上述した意匠層56に用いられる硬化性樹脂と同様であるので、ここでの説明は省略する。また、下地層58は、耐候剤等の添加剤を含有していてもよい。耐候剤の詳細については後述する。
【0100】
下地層58は、焼付け層であることが好ましい。また、下地層58の厚さは、特に限定されないが、例えば、5μm以上40μm以下であり、10μm以上30μm以下であってもよい。
【0101】
6.表面保護層
本実施の形態におけるパネル50は、意匠層56を基準として、金属基材55とは反対側に、表面保護層59を有していてもよい。表面保護層59を設けることで、例えば、パネル50の耐擦傷性が向上する。
【0102】
表面保護層59は、樹脂を含有する。表面保護層59に含まれる樹脂は、硬化性樹脂の硬化物(架橋構造体)であることが好ましく、熱硬化性樹脂の硬化物であることがより好ましい。また、硬化性樹脂は、フッ素系樹脂が好ましい。耐候性が良好だからである。また、表面保護層59は、着色剤を含有していてもよい。硬化性樹脂及び着色剤については、上述した意匠層56に用いられる硬化性樹脂と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0103】
表面保護層59は、1種または2種以上のフィラーを含有していてもよい。フィラーの一例として、有機フィラーが挙げられる。有機フィラーとしては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ナイロン系樹脂、オレフィン系樹脂、尿素系樹脂等の樹脂フィラーが挙げられる。これらの中でも、アクリル系樹脂フィラー(アクリルビーズ)が好ましい。アクリル系樹脂フィラーは、耐熱性が良好であり、製造面での制約が少ないからである。一方、フィラーの他の例として、無機フィラーが挙げられる。無機フィラーとしては、例えば、シリカ、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム、合成ケイ酸塩が挙げられる。
【0104】
フィラーの平均粒径は、例えば、5μm以上60μm以下であり、10μm以上50μm以下であってもよく、20μm以上40μm以下であってもよい。
【0105】
表面保護層59は、耐候剤を含有することが好ましい。意匠層56に含まれる有機着色剤は、一般的に、無機着色剤は耐候性が低いため、表面保護層59が、十分な耐候性を有することが好ましい。耐候剤としては、例えば、紫外線吸収剤及び光安定剤が挙げられる。
【0106】
紫外線吸収剤としては、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、オキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、シアノ(メタ)アクリレート系紫外線吸収剤等の有機系紫外線吸収剤、二酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛等の無機系紫外線吸収剤が挙げられる。これらの中でも、トリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。
【0107】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が挙げられる。ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルポニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス[2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル]-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2’-エチル)ヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノールが挙げられる。
【0108】
表面保護層59に含まれる紫外線吸収剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上10質量部以下であり、0.8質量部以上8質量部以下であってもよく、1質量部以上5質量部以下であってもよい。紫外線吸収剤の含有量が多いと、紫外線吸収剤のブリードアウトが発生する可能性があり、紫外線吸収剤の含有量が少ないと、十分な紫外線吸収性能が得られない可能性がある。
【0109】
一方、光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニルメタクリレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、2,4-ビス[N-ブチル-N-(1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ]-6-(2-ヒドロキシエチルアミン)-1,3,5-トリアジン)が挙げられる。
【0110】
表面保護層59に含まれる光安定剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、例えば、1質量部以上10質量部以下であり、1.5質量部以上8質量部以下であってもよく、2質量部以上5質量部以下であってもよい。光安定剤の含有量が多いと、光安定剤のブリードアウトが発生する可能性があり、光安定剤の含有量が少ないと、十分な光安定性が得られない可能性がある。
【0111】
表面保護層59は、焼付け層であることが好ましい。また、表面保護層59の厚さは、特に限定されないが、例えば、5μm以上40μm以下であり、10μm以上30μm以下であってもよい。
【0112】
7.パネル
本実施の形態におけるパネル50は、金属基材55と、意匠層56と、を厚さ方向において、この順に有する。パネル50は、上述したプライマー層57、下地層58、及び表面保護層59の少なくとも一つをさらに有していてもよい。本実施の形態におけるパネル50の層構成は、特に限定されないが、例えば、以下のような層構成が挙げられる。記号「/」は各層の境界を意味する。また、記号「/」で区画された2つの部材は、直接接触して配置されていてもよく、他の部材を介して配置されていてもよい。
【0113】
(1)金属基材55/意匠層56
(2)金属基材55/プライマー層57/意匠層56
(3)金属基材55/下地層58/意匠層56
(4)金属基材55/プライマー層57/下地層58/意匠層56
(5)金属基材55/意匠層56/表面保護層59
(6)金属基材55/プライマー層57/意匠層56/表面保護層59
(7)金属基材55/下地層58/意匠層56/表面保護層59
(8)金属基材55/プライマー層57/下地層58/意匠層56/表面保護層59
【0114】
本実施の形態におけるパネル50は、金属基材55を基準にして意匠層56側に位置する第1面に、複数の凸部(盛り上げ部)を有していてもよい。凸部は、フィラー及び着色剤の少なくとも一方と、フィラー及び着色剤の少なくとも一方を凝集させるバインダ樹脂と、を含有することが好ましい。着色剤の種類は特に限定されないが、例えばパール系着色剤が挙げられる。また、凸部の平均高さは、例えば、10μm以上60μm以下であり、15μm以上45μm以下であってもよく、25μm以上35μm以下である。凸部の平均高さは、例えば100点以上の凸部高さの算術平均として求められる。
【0115】
パネル50の耐候性は、サンシャインウェザーメーターによる促進耐候試験によって測定できる。具体的には、パネル50に対し、サンシャインウェザーメーターによる促進耐候試験を行う。この場合、紫外線照射時間が合計10000時間となったとき、促進耐候試験投入前後における色差(△E)の値が、7以下であっても良く、5以下であっても良く、3以下であっても良い。促進耐候試験の詳細については、後述する実施例で説明する。
【0116】
B.パネルの製造方法
図11は、本実施の形態におけるパネル50の製造方法を例示する概略断面図である。まず、図11(a)に示すように、金属基材55を準備する(金属基材準備工程)。次に、図11(b)に示すように、金属基材55の一方の面上に、プライマー層57を形成する(プライマー層形成工程)。次に、図11(c)に示すように、プライマー層57の金属基材55とは反対の面上に、下地層58を形成する(下地層形成工程)。次に、図11(d)に示すように、下地層58のプライマー層57とは反対の面上に、有機着色剤を含有する組成物を塗工し、加熱硬化させることで、意匠層56を形成する(意匠層形成工程)。次に、図11(e)に示すように、意匠層56の下地層58とは反対の面上に、表面保護層59を形成する(表面保護層形成工程)。これにより、パネル50が得られる。
【0117】
1.金属基材準備工程
本実施の形態におけるパネルの製造方法は、金属基材55を準備する金属基材準備工程を有する。金属基材55は、上記「A.パネル」に記載した内容と同様である。
【0118】
2.プライマー層形成工程
本実施の形態におけるパネル50の製造方法は、金属基材55の一方の面側に、プライマー層57を形成するプライマー層形成工程を有していてもよい。プライマー層形成工程においては、プライマー層57を、金属基材55の一方の面に対して、直接形成してもよく、他の層を介して形成してもよい。
【0119】
プライマー層57の形成方法としては、例えば、プライマー層57用の組成物を塗工し、加熱硬化させる方法が挙げられる。組成物の塗工方法としては、例えば、ロールコート、リバースコート、エアースプレー塗装、静電塗装、粉体塗装が挙げられる。厚さ方向から見て、プライマー層57は、例えば、金属基材55の全面に形成される。加熱温度(基材到達温度)は、例えば、100℃以上300℃以下である。
【0120】
3.下地層形成工程
本実施の形態におけるパネルの製造方法は、金属基材55の一方の面側に、下地層58を形成する下地層形成工程を有していてもよい。下地層形成工程においては、下地層58を、金属基材55の一方の面に対して、直接形成してもよく、上述したプライマー層57等の他の層を介して形成してもよい。
【0121】
下地層58の形成方法としては、例えば、下地層58用の組成物を塗工し、加熱硬化させる方法が挙げられる。組成物の塗工方法としては、例えば、フローコート、ロールコート、リバースコート、エアースプレー塗装、静電塗装、粉体塗装が挙げられる。厚さ方向から見て、下地層58は、例えば、金属基材55の全面を覆うように形成される。加熱温度(基材到達温度)は、例えば、150℃以上300℃以下であり、200℃以上250℃以下であってもよい。
【0122】
4.意匠層形成工程
本実施の形態におけるパネル50の製造方法は、金属基材55の一方の面側に、有機着色剤を含有する組成物を塗工し、加熱硬化させることで、意匠層56を形成する意匠層形成工程を有する。意匠層形成工程においては、意匠層56を、金属基材55の一方の面に対して、直接形成してもよく、上述したプライマー層57、下地層58等の他の層を介して形成してもよい。
【0123】
意匠層56の形成方法としては、例えば、意匠層56用の組成物を塗工し、加熱硬化させる方法が挙げられる。組成物の塗工方法としては、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、グラビアオフセット印刷、フレキソ印刷、活版印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、転写印刷が挙げられる。厚さ方向から見て、意匠層56は、金属基材55の全面を覆うように形成されていてもよく、金属基材55の一部を覆うように形成されていてもよい。加熱温度(基材到達温度)は、例えば、150℃以上300℃であり、200℃以上250℃以下であってもよい。また、後述する表面保護層59等の他の層を形成する工程を、後工程として行う場合、意匠層56を形成するための加熱硬化は、後工程の前に行ってもよく、後工程における他の層を形成するための加熱硬化と同時に行ってもよい。
【0124】
上述したように、本実施の形態におけるパネル50は、Al-Mn系合金を含む金属基材55を備えても良い。Al-Mn系合金を含む金属基材55は、一般的なアルミニウム板よりも強度が高い。このため、意匠層56を金属基材55に焼き付ける加熱温度を高温にでき、パネル50の耐候性を高められる。
【0125】
5.表面保護層形成工程
本実施の形態におけるパネル50の製造方法は、意匠層56の金属基材55とは反対の面側に、表面保護層59を形成する表面保護層形成工程を有していてもよい。表面保護層形成工程においては、表面保護層59を、意匠層56の金属基材55とは反対の面に対して、直接形成してもよく、他の層を介して形成してもよい。
【0126】
表面保護層59の形成方法としては、例えば、表面保護層59用の組成物を塗工し、加熱硬化させる方法が挙げられる。組成物の塗工方法としては、例えば、フローコート、ロールコート、リバースコート、エアースプレー塗装、静電塗装、粉体塗装が挙げられる。厚さ方向から見て、表面保護層59は、例えば、金属基材55の全面を覆うように形成される。加熱温度(基材到達温度)は、例えば、150℃以上300℃であり、200℃以上250℃以下であってもよい。
【0127】
6.パネル
上述した各工程により得られるパネルについては、上記「A.パネル」に記載した内容と同様である。
【0128】
[実施例]
次に、本実施の形態におけるパネルの具体的実施例について説明する。
【0129】
[実施例1-1]
金属基材として、アルミニウム板(A3004PH32、寸法:300mm×600mm、厚さ:1.0mm、クロメート処理済)を準備した。次に、前処理として、準備したアルミニウム板を湯洗洗浄し、その後、150℃(基材到達温度)で乾燥した。
【0130】
次に、アルミニウム板の全面に、下記の下地層用の組成物を、乾燥後の膜厚が18μmとなるように、カーテンフローコーターにより塗工した。その後、216℃(基材到達温度)で焼付けを行い、下地層を形成した。
【0131】
(下地層用の組成物)
熱硬化性フッ素樹脂(フルオロエチレン-ビニルエーテル共重合体)
硬化剤(イソシアネート)
グレー系着色剤(酸化チタン、酸化クロム;熱硬化性フッ素樹脂に対して5質量%)
溶剤(キシレン:トルエン=1:1、質量比)
固形分濃度:17質量%
【0132】
次に、下地層の全面に、下記の意匠層用の組成物を、乾燥後の膜厚が0.5μm以上15μm以下となるように、グラビアオフセット印刷により塗工した。
【0133】
(意匠層用の組成物)
熱硬化性フッ素樹脂(フルオロエチレン-ビニルエーテル共重合体)
硬化剤(イソシアネート)
有機着色剤(ペリレン系顔料(赤)、シアニン系顔料(青)、ニッケルアゾ錯体系顔料(黄)の3色ブレンド;熱硬化性フッ素樹脂に対して15質量%)
溶剤(キシレン:シクロヘキサン=1:1、質量比)
固形分濃度:19質量%
【0134】
次に、意匠層の全面に、下記の表面保護層用の組成物Aを、乾燥後の膜厚が19μmとなるように、バーコーターにより塗工した。その後、224℃(基材到達温度)で焼付けを行い、表面保護層を形成し、パネルを得た。なお、得られた表面保護層を、表面保護層Aと称する。
【0135】
(表面保護層用の組成物A)
熱硬化性フッ素樹脂(フルオロエチレン-ビニルエーテル共重合体)
硬化剤(イソシアネート)
溶剤(キシレン:トルエン=1:1、質量比)
固形分濃度:30質量%
【0136】
[実施例1-2]
表面保護層用の組成物Aの代わりに、下記の表面保護層用の組成物Bを用いたこと以外
は、実施例1-1と同様にして、パネルを得た。なお、得られた表面保護層を、表面保護層Bと称する。
【0137】
(表面保護層用の組成物B)
熱硬化性フッ素樹脂(フルオロエチレン-ビニルエーテル共重合体)
硬化剤(イソシアネート)
フィラー(シリカ、平均粒径1μm;熱硬化性フッ素樹脂に対して10質量%)
溶剤(キシレン:トルエン=1:1、質量比)
固形分濃度:30質量%
【0138】
[実施例1-3]
表面保護層用の組成物Aの代わりに、下記の表面保護層用の組成物Cを用いたこと以外は、実施例1-1と同様にして、パネルを得た。なお、得られた表面保護層を、表面保護層Cと称する。
【0139】
(表面保護層用の組成物C)
熱硬化性フッ素樹脂(フルオロエチレン-ビニルエーテル共重合体)
硬化剤(イソシアネート)
フィラー(シリカ、平均粒径1μm;熱硬化性フッ素樹脂に対して10質量%)
フィラー(アクリルビーズ、平均粒径10μm・熱硬化性フッ素樹脂に対して4質量%)
フィラー(アクリルビーズ、平均粒径30μm・熱硬化性フッ素樹脂に対して2質量%)
溶剤(キシレン:トルエン=11、質量比)
固形分濃度:30質量%
【0140】
[実施例1-4]
表面保護層用の組成物Aの代わりに、下記の表面保護層用の組成物Dを用いたこと以外は、実施例1-1と同様にして、パネルを得た。なお、得られた表面保護層を、表面保護層Dと称する。
【0141】
(表面保護層用の組成物D)
熱硬化性フッ素樹脂(フルオロエチレン-ビニルエーテル共重合体)
硬化剤(イソシアネート)
フィラー(シリカ、平均粒径1μm;熱硬化性フッ素樹脂に対して10質量%)
フィラー(アクリルビーズ、平均粒径30μm・熱硬化性フッ素樹脂に対して4質量%)
フィラー(アクリルビーズ、平均粒径50μm・熱硬化性フッ素樹脂に対して2質量%)
溶剤(キシレン:トルエン=11、質量比)
固形分濃度:30質量%
【0142】
[実施例2-1~2-4]
意匠層用の組成物に含まれる有機着色剤として、ペリレン系顔料(赤)のみを用いたこと以外は、それぞれ、実施例1-1~1-4と同様にして、パネルを得た。
【0143】
[実施例3-1~3-4]
意匠層用の組成物に含まれる有機着色剤として、シアニン系顔料(青)のみを用いたこと以外は、それぞれ、実施例1-1~1-4と同様にして、パネルを得た。
【0144】
[実施例4-1~4-4]
意匠層用の組成物に含まれる有機着色剤として、ニッケルアゾ錯体系顔料(黄)のみを用いたこと以外は、それぞれ、実施例1-1~1-4と同様にして、パネルを得た。
【0145】
[比較例1-1~1-4]
意匠層用の組成物に含まれる有機着色剤の代わりに、無機着色剤(酸化鉄系顔料(赤)、コバルト系顔料(青)、酸化鉄系顔料(黄)の3色ブレンド)を用いたこと以外は、それぞれ、実施例1-1~1-4と同様にして、パネルを得た。
【0146】
[比較例2-1~2-4]
意匠層用の組成物に含まれる有機着色剤の代わりに、酸化鉄系顔料(赤)を用いたこと以外は、それぞれ、実施例1-1~1-4と同様にして、パネルを得た。
【0147】
[評価]
各実施例及び各比較例で得られたパネルを用いて、フロップ指標を測定した。具体的には、パネルを、表面保護層が上面となるように、水平に配置し、三次元変角分光測色システム(村上色彩技術研究所製、型番GCMS-4)を用いて、明度指数Lを測定した。測定条件は、入射角45°、あおり角0°、面内回転角0°とし、光源をD65とし、受光角30°、0°、-65°におけるLを測定した。その後、以下の式から、フロップ指標を算出した。その結果を表1及び表2に示す。
フロップ指標=2.69×(L 15-L 1101・11/(L 450・85
(L 15は受光角30°におけるLに該当し、L 45は受光角0°におけるLに該当し、L 110は受光角-65°におけるLに該当する)
【0148】
【表1】
【0149】
【表2】
【0150】
表1に示すように、各実施例では、フロップ指標が高く、金属基材の光沢感が良好に表現できていることが確認された。また、有機着色剤を用いていることから、意匠層による光沢感の隠蔽を抑制しつつ、鮮やかな意匠表現が可能であった。これに対して、表2に示すように、各比較例では、フロップ指標が低く、金属基材の光沢感が良好に表現できていないことが確認された。これは、無機着色剤を用いていることから、意匠層による光沢感の隠蔽が大きいためであると推測される。
【0151】
図12は、実施例1-1~1-4、及び、比較例1-1~1-4の結果を示すグラフである。なお、図12に示す△は、意匠層を形成しなかったこと以外は、実施例1-1~1-4と同様にして作製したサンプルのフロップ指標であり、後述する図13図15に示す△も同様である。図12に示すように、実施例1-1~1-4では、比較例1-1~1-4に比べて、フロップ指標が高く、金属基材の光沢感が良好に表現できていることが確認された。また、実施例1-1~1-4を比較すると、フロップ指標は、第1面(表面保護層の表面)の光沢度の影響を受けにくく、金属基材の光沢感を正確に評価できることが確認された。
【0152】
図13は、実施例2-1~2-4、及び、比較例2-1~2-4の結果を示すグラフである。図13に示すように、実施例2-1~2-4では、比較例2-1~2-4に比べて、フロップ指標が高く、金属基材の光沢感が良好に表現できていることが確認された。また、図14は、実施例3-1~3-4の結果を示すグラフであり、図15は、実施例4-1~4-4の結果を示すグラフである。図14及び図15に示すように、実施例3-1~3-4及び実施例4-1~4-4では、フロップ指標が高く、金属基材の光沢感が良好に表現できていることが確認された。
【0153】
[実施例5-1]
まず、実施例1-1と同様にして、アルミニウム板の全面に下地層を形成した。次に、下地層の全面に、下記の意匠層用の第1組成物を、乾燥後の膜厚が0.5μm以上1.5μm以下となるように、グラビアオフセット印刷により塗工し、無機着色剤層を形成した。
【0154】
(意匠層用の第1組成物)
熱硬化性フッ素樹脂(フルオロエチレン-ビニルエーテル共重合体)
硬化剤(イソシアネート)
無機着色剤(カーボンブラック;熱硬化性フッ素樹脂に対して4質量%)
溶剤(キシレン:シクロヘキサン=1:1、質量比)
固形分濃度:15質量%
【0155】
次に、無機着色剤層の全面に、下記の意匠層用の第2組成物を、乾燥後の膜厚が0.5μm以上1.5μm以下となるように、グラビアオフセット印刷により塗工し、有機着色剤層を形成した。これにより、無機着色剤層及び有機着色剤層を有する意匠層を得た。
【0156】
(意匠層用の第2組成物)
熱硬化性フッ素樹脂(フルオロエチレン-ビニルエーテル共重合体)
硬化剤(イソシアネート)
有機着色剤(ペリレン系顔料(赤)、シアニン系顔料(青)、ニッケルアゾ錯体系顔料(黄)の3色ブレンド;熱硬化性フッ素樹脂に対して15質量%)
溶剤(キシレン:シクロヘキサン=1:1、質量比)
固形分濃度:19質量%
【0157】
次に、意匠層の全面に、実施例1-1と同様にして、表面保護層Aを形成し、パネルを得た。
【0158】
[実施例5-2~5-4]
意匠層用の第2組成物に含まれる有機着色剤として、ペリレン系顔料(赤)のみを用いたこと、シアニン系顔料(青)のみを用いたこと、及び、ニッケルアゾ錯体系顔料(黄)のみを用いたこと以外は、実施例5-1と同様にして、それぞれパネルを得た。
【0159】
[比較例3-1]
有機着色剤層を形成しなかったこと以外は、実施例5-1と同様にして、パネルを得た。
【0160】
[比較例3-2]
有機着色剤層を形成せず、さらに、表面保護層用の組成物Aの代わりに、上述した表面保護層用の組成物Bを用いたこと以外は、実施例5-1と同様にして、パネルを得た。
【0161】
[比較例3-3]
有機着色剤層を形成せず、さらに、表面保護層用の組成物Aの代わりに、上述した表面保護層用の組成物Cを用いたこと以外は、実施例5-1と同様にして、パネルを得た。
【0162】
[比較例3-4]
有機着色剤層を形成せず、さらに、表面保護層用の組成物Aの代わりに、上述した表面保護層用の組成物Dを用いたこと以外は、実施例5-1と同様にして、パネルを得た。
【0163】
[評価]
実施例5-1~5-4及び比較例3-1~3-4で得られたパネルを用いて、フロップ指標を測定した。測定方法は、上記と同様である。その結果を表3及び表4に示す。
【0164】
【表3】
【0165】
【表4】
【0166】
表3及び表4に示すように、有機着色剤層を有する実施例5-1~5-4では、有機着色剤層を有しない比較例3-1~3-4と同程度に、フロップ指標が高いことが確認された。すなわち、有機着色剤層による光沢感の隠蔽は限定的であり、有機着色剤層により鮮やかな意匠表現が可能であることが確認された。
【0167】
[実施例6-1~6-3]
下地層用の組成物として、下記の下地層用の組成物Xを用い、表面保護層用の組成物Aの代わりに、下記の表面保護層用の組成物A2を用いたこと以外は、それぞれ、実施例2-1、実施例3-1及び実施例4-1と同様にして、パネルを得た。
【0168】
(下地層用の組成物X)
熱硬化性フッ素樹脂(フルオロエチレン-ビニルエーテル共重合体)
硬化剤(イソシアネート)
グレー系着色剤(酸化チタン、酸化クロム;熱硬化性フッ素樹脂に対して5質量%)
紫外線吸収剤
ヒンダードアミン系光安定剤
固形分濃度:17質量%
【0169】
(表面保護層用の組成物A2)
熱硬化性フッ素樹脂(フルオロエチレンービニルエーテル共重合体)
硬化剤(イソシアネート)
紫外線吸収剤
ヒンダードアミン系光安定剤溶剤(キシレン:トルエン=1:1、質量比)
固形分濃度:30質量%
【0170】
[評価]
実施例6-1~6-3で得られたパネルの耐候性を評価した。得られたパネルに対し、サンシャインウェザーメーター(SWOM)による促進耐候試験を行った。具体的には、下記の照射条件で、102分間の照射を行い、続いて18分間の照射及び噴霧を行う、計120分を1サイクルとして、上記サイクルを繰り返し行う試験を、紫外線照射時間が合計10000時間となるように実施した。
【0171】
<促進耐候試験の条件>
(試験装置)
スガ試験機製、商品名「S80」
(照射条件)
照度:255W/m、ブラックパネル温度:65℃、槽内湿度:5096RH、時間:102分間の照射、続いて18分間の照射及び噴霧
【0172】
パネルの耐候性は、色差及び光沢保持率により評価した。色差に関しては、促進耐候試験投入前後における色差(△E)の値を、分光色差計(コニカミノルタ社製分光測色計CM-5)を用いて測定した。一方、光沢保持率については、グロスメーターを用いて、JISK5600に準拠して表面保護層の60°グロス値を測定した。60°グロス値は、10箇所の測定値の平均値として求めた。その結果を表5に示す。
【0173】
【表5】
【0174】
表5に示すように、実施例6-1~6-3では、色差(△E)の値が小さく、光沢保持率が大きく、良好な耐候性を示すことが確認された。有機着色剤は、無機着色剤に比べると耐候性が低いことが知られているが、実施例6-1~6-3では、有機着色剤を用いつつ、外装部材にも適用可能なパネルが得られた。
【0175】
[実施例7]
金属基材として、アルミニウム板(A3004PH32、寸法:300mm×600mm、厚さ:1.0mm、クロメート処理済)を準備した。次に、前処理として、準備したアルミニウム板を湯洗洗浄し、ポリエステル系プライマーを塗布後、200℃(基材到達温度)で乾燥した。
【0176】
次に、アルミニウム板の全面に、下記の下地層用の組成物を、乾燥後の膜厚が18μmとなるように、カーテンフローコーターにより塗工した。その後、216℃(基材到達温度)で焼付けを行い、下地層を形成した。
【0177】
(下地層用の組成物)
熱硬化性ポリエステル系樹脂
溶剤(キシレン:シクロヘキサノン=1:1)
固形分濃度:40質量%
【0178】
次に、下地層の全面に、下記の意匠層用の組成物を、乾燥後の膜厚が0.5μm以上15μm以下となるように、グラビアオフセット印刷により塗工した。
【0179】
(意匠層用の組成物)
熱硬化性ポリエステル系樹脂有機着色剤(ペリレン系顔料(赤)、シアニン系顔料(青)、ニッケルアゾ錯体系顔料(黄)の3色ブレンド;熱硬化性フッ素樹脂に対して7.5質量%)
溶剤(キシレン:シクロヘキサン=1:1、質量比)
固形分濃度:19質量%
【0180】
次に、意匠層の全面に、下記の表面保護層用の組成物を、乾燥後の膜厚が22μmとなるように、バーコーターにより塗工した。その後、224℃(基材到達温度)で焼付けを行い、表面保護層を形成し、パネルを得た。
【0181】
(表面保護層用の組成物)
熱硬化性ポリエステル系樹脂
紫外線吸収剤
ヒンダードアミン系光安定剤
フィラー(シリカ、平均粒径2μm;熱硬化性ポリエステル系樹脂に対して3質量%)
溶剤(キシレン:シクロヘキサノン=1:1)
固形分濃度:42質量%
【0182】
得られたパネルの耐候性を、上記と同様に評価した。その結果、紫外線照射時間が500時間までは、色差(△E)及び光沢保持率が、ある程度保持されたが、紫外線照射時間が1000時間に達すると、色差(△E)は4.3となり、光沢保持率は10%となった。実施例7と、実施例6-1~6-3とを比べると、熱硬化性樹脂としてフッ素系樹脂を用いることで、耐候性が顕著に向上することが確認された。
【0183】
上記各実施の形態及び変形例に開示されている複数の構成要素を必要に応じて適宜組合せることも可能である。あるいは、上記各実施の形態及び変形例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0184】
10 隔て板
20 フレーム
21 下枠
22 上枠
23 外枠
24 内枠
30 蹴破り板
50 パネル
51 主たる面部材
52 天面部材
53 外面部材
55 金属基材
56 意匠層
90 建築物
【要約】      (修正有)
【課題】意匠性の高い隔て板、隔て板用のパネル及び建築物を提供する。
【解決手段】隔て板10は、フレーム20と、フレームに取り付けられたパネル50と、を備える。パネルは、Al-Mn系合金を含む金属基材55と、金属基材に積層された意匠層56とを含む。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15