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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-10-16
(45)【発行日】2025-10-24
(54)【発明の名称】二次電池の作製方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20251017BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20251017BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20251017BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20251017BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20251017BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20251017BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20251017BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20251017BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20251017BHJP
   H01M 50/186 20210101ALI20251017BHJP
   H01M 50/193 20210101ALI20251017BHJP
   H01M 50/609 20210101ALI20251017BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01G11/84
H01M4/62 Z
H01M10/052
H01M10/0568
H01M10/0569
H01M10/0585
H01M50/105
H01M50/184 C
H01M50/186
H01M50/193
H01M50/609
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2022541323
(86)(22)【出願日】2021-07-27
(86)【国際出願番号】 IB2021056782
(87)【国際公開番号】W WO2022029558
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2024-07-25
(31)【優先権主張番号】P 2020134687
(32)【優先日】2020-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】吉富 修平
(72)【発明者】
【氏名】石谷 哲二
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-084520(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101377459(CN,A)
【文献】国際公開第2018/030002(WO,A1)
【文献】特開2001-266841(JP,A)
【文献】国際公開第2021/039308(WO,A1)
【文献】特表2015-508223(JP,A)
【文献】特開2019-149256(JP,A)
【文献】特開2020-013156(JP,A)
【文献】国際公開第2017/047607(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04-10/39
H01M 4/00-4/62
H01M 50/00-50/198
H01G 11/34
H01G 11/54-11/56
H01G 11/84
H01G 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の外装体上に、第1の電極を配置し、
前記第1の電極上に、セパレータを配置し、
前記セパレータ上に、第2の電極を配置し、
前記第1の電極、前記セパレータ、及び、前記第2の電極の少なくとも一つに、電解質を滴下し、
前記第1の電極、前記セパレータ、及び、前記第2の電極の少なくとも一つに、前記電解質を含浸させた後、前記第1の外装体上に、前記第1の電極、前記セパレータ、及び、前記第2の電極を覆うように、第2の外装体を配置し、
前記第1の外装体及び前記第2の外装体によって、前記第1の電極、前記セパレータ、及び、前記第2の電極を封止し、
前記第1の電極と前記第2の電極とは、一方が正極であり、他方が負極であり、
前記電解質は、被滴下面からの最短距離が0mmより大きく1mm以下である位置から滴下される、二次電池の作製方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記電解質は、0.3mPa・s以上100mPa・s以下の粘度で滴下される、二次電池の作製方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記電解質は、20℃以上80℃以下の温度で滴下される、二次電池の作製方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一において、
前記電解質は、フッ素を含む、二次電池の作製方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一において、
前記電解質は、イオン液体を含む、二次電池の作製方法。
【請求項6】
第1の外装体上に、第1の電極を配置し、
前記第1の電極に、第1の電解質を滴下し、
前記第1の電極上に、セパレータを配置し、
前記セパレータ上に、第2の電解質を滴下し、
前記セパレータ上に、第2の電極を配置し、
前記第2の電極上に、第3の電解質を滴下し、
前記第1の外装体上に、前記第1の電極、前記セパレータ、及び、前記第2の電極を覆うように、第2の外装体を配置し、
前記第1の外装体及び前記第2の外装体によって、前記第1の電極、前記セパレータ、及び、前記第2の電極を封止し、
前記第1の電極と前記第2の電極とは、一方が正極であり、他方が負極であり、
前記第1の電解質は、前記第1の電極からの最短距離が0mmより大きく1mm以下である位置から滴下される、二次電池の作製方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記第2の電解質は、前記セパレータからの最短距離が0mmより大きく1mm以下である位置から滴下される、二次電池の作製方法。
【請求項8】
請求項6または7において、
前記第3の電解質は、前記第2の電極からの最短距離が0mmより大きく1mm以下である位置から滴下される、二次電池の作製方法。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれか一において、
前記第1の電解質は、0.3mPa・s以上100mPa・s以下の粘度で滴下される、二次電池の作製方法。
【請求項10】
請求項6乃至9のいずれか一において、
前記第1の電解質は、20℃以上80℃以下の温度で滴下される、二次電池の作製方法。
【請求項11】
請求項6乃至10のいずれか一において、
前記第1の電解質、前記第2の電解質、及び、前記第3の電解質は、それぞれ、フッ素を含む、二次電池の作製方法。
【請求項12】
請求項6乃至11のいずれか一において、
前記第1の電解質、前記第2の電解質、及び、前記第3の電解質は、それぞれ、イオン液体を含む、二次電池の作製方法。
【請求項13】
請求項6乃至12のいずれか一において、
前記第1の電解質、前記第2の電解質、及び、前記第3の電解質は、いずれも、同一の材料である、二次電池の作製方法。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか一において、
前記第1の外装体は、凹部を有し、
前記第1の電極、前記セパレータ、及び、前記第2の電極は、前記凹部に配置される、二次電池の作製方法。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか一において、
前記第1の外装体上の4隅に第1の樹脂層を配置し、
前記第1の外装体上に、前記第1の電極、前記セパレータ、及び、前記第2の電極を囲うように、枠状に第2の樹脂層を配置し、
前記第2の外装体を配置した後に、減圧下で前記第1の樹脂層に光を照射することで、前記第1の樹脂層を硬化し、
前記光の照射を行った後に、前記封止は、大気圧下で行う、二次電池の作製方法。
【請求項16】
請求項15において、
前記光は、紫外光である、二次電池の作製方法。
【請求項17】
請求項15または16において、
前記封止は、前記第2の樹脂層に光を照射し、前記第2の樹脂層を硬化させることで行われ、
前記第2の樹脂層は、前記減圧下で光が照射された面積よりも、前記封止の際に光が照射された面積の方が広い、二次電池の作製方法。
【請求項18】
請求項15または16において、
前記封止は、熱圧着により行われる、二次電池の作製方法。
【請求項19】
請求項15乃至18のいずれか一において、
前記減圧下で光を照射する前に、前記第1の電極に、第1のリード電極を接続させる工程と、前記第2の電極に、第2のリード電極を接続させる工程と、を有する、二次電池の作製方法。
【請求項20】
請求項1乃至19のいずれか一において、
前記第1の電極及び前記第2の電極の一方または双方は、グラフェンを含む、二次電池の作製方法。
【請求項21】
請求項1乃至20のいずれか一において、
前記第1の電極は、第1の集電体の一方の面または両面に、第1の活物質層を有する、二次電池の作製方法。
【請求項22】
請求項1乃至21のいずれか一において、
前記第2の電極は、第2の集電体の一方の面または両面に、第2の活物質層を有する、二次電池の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、二次電池及びその作製方法に関する。または、二次電池を有する携帯情報端末、車両等に関する。または、二次電池の製造装置に関する。
【0002】
なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本発明の一態様の技術分野としては、半導体装置、表示装置、発光装置、蓄電装置、記憶装置、電子機器、照明装置、それらの駆動方法、又はそれらの製造方法を一例として挙げることができる。
【0003】
なお、本明細書中において電子機器とは、蓄電装置を有する装置全般を指し、蓄電装置を有する電気光学装置、蓄電装置を有する情報端末装置などは全て電子機器である。
【0004】
なお、本明細書中において蓄電装置とは、蓄電機能を有する素子及び装置全般を指すものである。例えば、リチウムイオン二次電池などの蓄電装置(二次電池ともいう)、リチウムイオンキャパシタ、及び電気二重層キャパシタなどを含む。
【背景技術】
【0005】
近年、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタ、空気電池等、種々の蓄電装置の開発が盛んに行われている。特に高出力、高エネルギー密度であるリチウムイオン二次電池は、携帯電話、スマートフォン、もしくはノート型コンピュータ等の携帯情報端末、携帯音楽プレーヤ、デジタルカメラ、医療機器、または、ハイブリッド車(HV)、電気自動車(EV)、もしくはプラグインハイブリッド車(PHV)等の次世代クリーンエネルギー自動車など、半導体産業の発展と併せて急速にその需要が拡大し、繰り返し充電可能なエネルギーの供給源として現代の情報化社会に不可欠なものとなっている。
【0006】
リチウムイオン二次電池は、コバルト酸リチウム(LiCoO)またはリン酸鉄リチウム(LiFePO)などの正極活物質を含む正極と、リチウムの吸蔵・放出が可能な黒鉛等の炭素材料などの負極活物質を含む負極と、エチレンカーボネート(EC)またはジエチルカーボネート(DEC)などの有機溶媒などを含む電解質により構成される。
【0007】
また、リチウムイオン二次電池には、高容量、高性能、及びさまざまな動作環境での安全性などが求められている。
【0008】
特許文献1には製造の効率化を図ることのできる積層型電池の製造装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2017-117729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の一態様は、二次電池の作製工程の少なくとも一部を自動化することを課題の一つとする。
【0011】
本発明の一態様は、サイズが比較的大きな二次電池の作製方法を提供することを課題の一つとする。
【0012】
本発明の一態様は、二次電池を、効率よく短時間で作製することを課題の一つとする。本発明の一態様は、二次電池を、歩留まりよく作製することを課題の一つとする。本発明の一態様は、製造コストが低減された二次電池の作製方法を提供することを課題の一つとする。
【0013】
本発明の一態様は、信頼性の高い二次電池の作製方法を提供することを課題の一つとする。本発明の一態様は、安全性の高い二次電池の作製方法を提供することを課題の一つとする。
【0014】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。本発明の一態様は、必ずしも、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。明細書、図面、請求項の記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様は、第1の外装体上に第1の電極を配置し、第1の電極上にセパレータを配置し、セパレータ上に第2の電極を配置し、第1の電極、セパレータ、及び、第2の電極の少なくとも一つに、電解質を滴下し、第1の電極、セパレータ、及び、第2の電極の少なくとも一つに、電解質を含浸させた後、第1の外装体上に、第1の電極、セパレータ、及び、第2の電極を覆うように、第2の外装体を配置し、第1の外装体及び第2の外装体によって、第1の電極、セパレータ、及び、第2の電極を封止する、二次電池の作製方法である。第1の電極と第2の電極とは、一方が正極であり、他方が負極である。電解質は、被滴下面からの最短距離が0mmより大きく1mm以下である位置から滴下されることが好ましい。
【0016】
電解質は、0.3mPa・s以上100mPa・s以下の粘度で滴下されることが好ましい。
【0017】
電解質は、20℃以上80℃以下の温度で滴下されることが好ましい。
【0018】
電解質は、フッ素を含むことが好ましい。
【0019】
電解質は、イオン液体を含むことが好ましい。
【0020】
本発明の一態様は、第1の外装体上に第1の電極を配置し、第1の電極に第1の電解質を滴下し、第1の電極上にセパレータを配置し、セパレータ上に第2の電解質を滴下し、セパレータ上に第2の電極を配置し、第2の電極上に第3の電解質を滴下し、第1の外装体上に、第1の電極、セパレータ、及び、第2の電極を覆うように、第2の外装体を配置し、第1の外装体及び第2の外装体によって、第1の電極、セパレータ、及び、第2の電極を封止する、二次電池の作製方法である。第1の電極と第2の電極とは、一方が正極であり、他方が負極である。第1の電解質は、第1の電極からの最短距離が0mmより大きく1mm以下である位置から滴下されることが好ましい。第2の電解質は、セパレータからの最短距離が0mmより大きく1mm以下である位置から滴下されることが好ましい。第3の電解質は、第2の電極からの最短距離が0mmより大きく1mm以下である位置から滴下されることが好ましい。
【0021】
第1の電解質、第2の電解質、及び、第3の電解質は、それぞれ、0.3mPa・s以上100mPa・s以下の粘度で滴下されることが好ましい。
【0022】
第1の電解質、第2の電解質、及び、第3の電解質は、それぞれ、20℃以上80℃以下の温度で滴下されることが好ましい。
【0023】
第1の電解質、第2の電解質、及び、第3の電解質は、それぞれ、フッ素を含むことが好ましい。
【0024】
第1の電解質、第2の電解質、及び、第3の電解質は、それぞれ、イオン液体を含むことが好ましい。
【0025】
第1の電解質、第2の電解質、及び、第3の電解質は、いずれも、同一の材料であることが好ましい。
【0026】
第1の外装体は、凹部を有することが好ましい。第1の電極、セパレータ、及び、第2の電極は、凹部に配置されることが好ましい。
【0027】
第1の外装体上に、樹脂層を配置することが好ましい。第2の外装体を配置した後に、減圧下で樹脂層に光を照射することで、樹脂層の少なくとも一部を硬化することが好ましい。封止は、光の照射を行った後、大気圧下で行うことが好ましい。樹脂層は、第1の電極、セパレータ、及び、第2の電極を囲うように、枠状に配置されることが好ましい。
【0028】
光は、紫外光であることが好ましい。
【0029】
封止は、樹脂層に光を照射し、樹脂層を硬化させることで行われることが好ましい。樹脂層は、減圧下で光が照射された面積よりも、封止の際に光が照射された面積の方が広いことが好ましい。または、封止は、熱圧着により行われることが好ましい。
【0030】
減圧下で光を照射する前に、第1の電極に、第1のリード電極を接続させる工程と、第2の電極に、第2のリード電極を接続させる工程と、を有することが好ましい。
【0031】
第1の電極及び第2の電極の一方または双方は、グラフェンを含むことが好ましい。
【0032】
第1の電極は、第1の集電体の一方の面または両面に、第1の活物質層を有することが好ましい。
【0033】
第2の電極は、第2の集電体の一方の面または両面に、第2の活物質層を有することが好ましい。
【0034】
本発明の一態様は、第1の外装体と第2の外装体の間に、正極、セパレータ、及び、負極をそれぞれ1つ以上有する積層体が設けられた二次電池の、製造装置である。当該製造装置は、搬送室、第1の処理室、及び、第2の処理室を有する。搬送室は、第1の処理室から第2の処理室に作製中の二次電池を搬送する機能を有する。第1の処理室は、第1のステージ、吸着機構、及び、電解質滴下機構を有する。第1のステージは、作製中の二次電池を支持する機能を有する。吸着機構は、積層体を構成する部材を吸着し、第1の外装体上に配置する機能を有する。電解質滴下機構は、積層体を構成する部材上に、被滴下面からの最短距離が0mmより大きく1mm以下である位置から、電解質を滴下する機能を有する。第2の処理室は、第1の外装体及び第2の外装体によって、正極、セパレータ、及び、負極を封止する機能を有する。
【0035】
吸着機構は、第1の外装体を吸着し、第1のステージ上に配置する機能を有することが好ましい。
【0036】
第1の処理室は、不活性ガス供給機構を有することが好ましい。不活性ガス供給機構は、第1の処理室の内部に不活性ガスを供給する機能を有することが好ましい。
【0037】
不活性ガスは、アルゴンガスであることが好ましい。
【0038】
第1の処理室は、シール材料供給機構を有することが好ましい。シール材料供給機構は、第1の外装体上に、樹脂層を形成する機能を有することが好ましい。第2の処理室は、排気機構、及び、光照射機構を有することが好ましい。排気機構は、第2の処理室の内部を減圧する機能を有することが好ましい。光照射機構は、樹脂層の少なくとも一部に光を照射する機能を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0039】
本発明の一態様により、二次電池の作製工程の少なくとも一部を自動化できる。
【0040】
本発明の一態様により、サイズが比較的大きな二次電池の作製方法を提供できる。大容量の二次電池を搭載する場合、小型の二次電池を搭載する場合に比べて、搭載する二次電池の個数を低減することができる。搭載する二次電池の個数を低減することで、個々の電池の制御が容易となり、充電制御回路の負担が低減される。
【0041】
本発明の一態様の二次電池の作製方法では、複数の二次電池の封止工程を一度に行うことができるため、二次電池の作製工程を大幅に短縮することができる。したがって、二次電池の製造コストを低減することができる。また、二次電池を、効率よく短時間で作製することができる。また、二次電池を、歩留まりよく作製することができる。
【0042】
本発明の一態様により、信頼性の高い二次電池の作製方法を提供できる。また、本発明の一態様により、安全性の高い二次電池の作製方法を提供できる。
【0043】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。本発明の一態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。明細書、図面、請求項の記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1Aは、電気自動車に搭載された二次電池の一例を示す図である。図1Bは、電極に電解質を滴下した後の状態を説明する上面図である。
図2は、二次電池の製造装置の一例を示す上面図である。
図3は、二次電池の作製方法の一例を示すフロー図である。
図4は、二次電池の作製方法の一例を示すフロー図である。
図5A図5Dは、二次電池の作製方法の一例を示す断面図である。
図6A及び図6Bは、二次電池の作製方法の一例を示す断面図である。
図7A及び図7Bは、多面取りを説明する上面図である。図7Cは、二次電池の作製方法の一例を示す断面図である。
図8は、二次電池の作製方法の一例を示す斜視図である。
図9A及び図9Bは、二次電池の作製方法の一例を示す斜視図である。
図10A及び図10Bは、二次電池の作製方法の一例を示す斜視図である。
図11Aは、二次電池の作製方法の一例を示す上面図である。図11Bは、作製中の二次電池の一例を示す断面図である。図11Cは、作製中の二次電池の一例を示す上面図である。
図12A及び図12Bは、二次電池の作製方法の一例を示す上面図である。
図13は、二次電池の作製方法の一例を示す上面図である。
図14は、二次電池の作製方法の一例を示す上面図である。
図15A図15Dは、集電体の一例を示す上面図である。
図16は、正極活物質の結晶構造を説明する図である。
図17は、正極活物質の結晶構造を説明する図である。
図18A図18Cは、二次電池の外観の一例を示す図である。
図19A及び図19Bは、二次電池の外観の一例を示す図である。
図20A図20Cは、二次電池の作製方法の一例を示す図である。
図21は、二次電池の一例を示す断面図である。
図22Aは、二次電池の一例を示す図である。図22B及び図22Cは、積層体の作製方法の一例を示す図である。
図23A図23Cは、二次電池の作製方法の一例を示す図である。
図24A及び図24Bは、電極組立体の一例を示す断面図である。図24Cは、二次電池の一例を示す断面図である。
図25A及び図25Bは、二次電池の一例を示す図である。図25Cは、二次電池の内部の様子を示す図である。
図26A図26Cは二次電池の一例を示す図である。
図27Aは、電池パックの一例を示す斜視図である。図27Bは電池パックの一例を示すブロック図である。図27Cは、モータを有する車両の一例を示すブロック図である。
図28A図28Dは、輸送用車両の一例を示す図である。
図29A及び図29Bは、蓄電装置の一例を示す図である。
図30A図30Eは、電子機器の一例を示す図である。
図31Aは、実施例の実験方法を説明する図である。図31B図31Eは、実施例の実験結果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0046】
なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、同様の機能を指す場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
【0047】
また、図面において示す各構成の、位置、大きさ、及び、範囲などは、理解の簡単のため、実際の位置、大きさ、及び、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、及び、範囲などに限定されない。
【0048】
なお、「膜」という言葉と、「層」という言葉とは、場合によっては、又は、状況に応じて、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変更することが可能である。または、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能である。
【0049】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の二次電池の作製方法について図1図14を用いて説明する。
【0050】
二次電池の作製工程では、正極、セパレータ、及び、負極を有する積層体を、缶または袋状の外装体に入れた後に電解液を注入し、その後、封止することが多い。このような方法では、正極及び負極の内部まで電解質が含浸するまでの時間が長くなる場合がある。また、このような方法では、正極及び負極の内部への電解質の含浸が不十分となる場合がある。また、このような方法では、リチウムイオンが注入口から外方拡散する恐れがある。また、このような方法は、工程数が多くなりやすい。また、電解液を注入する量を精度よく調節することが困難な場合がある。二次電池に必要な量の電解液を正確に提供することが、均一な特性を有する二次電池の大量生産につながるといえる。
【0051】
本発明の一態様の二次電池の作製方法では、第1の外装体上に第1の電極を配置し、第1の電極上にセパレータを配置し、セパレータ上に第2の電極を配置し、配置された第1の電極、セパレータ、及び、第2の電極の少なくとも一つに、電解質を滴下する。電解質を複数滴、滴下することで、第1の電極、セパレータ、または、第2の電極に電解質を均一または十分に含浸させることができる。
【0052】
ここで、例えば、第1の電極に電解質を滴下する際、電解質を滴下するノズルが、第1の電極と接触してしまうと、電解質を滴下することが困難となる。また、ノズルが、第1の電極から離れすぎてしまうと、所定の時間内に電解質の一部または全部を滴下することができない恐れがある。これにより、滴下位置がずれる、滴下量が不均一となる、といった不具合が生じることがある。そのため、電解質を滴下する際は、被滴下面からの最短距離が0mmより大きく1mm以下である位置から電解質を滴下することが好ましい。被滴下面は、滴下対象(例えば、第1の電極、セパレータ、または、第2の電極)の表面ということもできる。
【0053】
本発明の一態様の二次電池の作製方法では、第1の電極、セパレータ、及び、第2の電極のいずれか一または複数に対して電解質を複数滴、滴下し、電解質を含浸させた後、第1の電極、セパレータ、及び、第2の電極の積層構造(以下、積層体ともいう)を、第1の外装体及び第2の外装体によって封止する。例えば、薄型(ラミネート型)の二次電池の場合、第1の外装体と第2の外装体の外周縁(二次電池の形状が薄い直方体の場合、上面から見て四辺)を隙間なく封止する。封止の方法としては、樹脂層に光を照射する方法、外装体を熱圧着する方法等を用いることができる。
【0054】
本明細書等において、封止とは、ある密閉領域を外気から遮断することを指し、二次電池においては積層体及びその周辺を密閉領域として、密閉領域の外側を外装体で囲み、外気から遮断することを封止とする。また、封止後は、外装体の端部を折り曲げて封止強度を上げ、外部からの不純物侵入または内部からのガスなどの放出を防止する。
【0055】
封止は、大気圧下(大気圧雰囲気下、常圧下ともいう)でも行うことができ、その場合にはアルゴン雰囲気下または窒素雰囲気下などの不活性雰囲気下で行う。減圧下(減圧雰囲気下ともいう)で封止を行うと、外装体で囲まれた密閉領域に不純物及び空気が入りにくいため好ましい。
【0056】
例えば、減圧下で、光硬化樹脂を用いて封止を行ってもよい。まず、第1の外装体上に枠状の樹脂層を配置する。樹脂層には、光硬化樹脂を用いることが好ましい。そして、第1の外装体上に、積層体を覆うように、第2の外装体を配置し、減圧下で樹脂層に光を照射することで、樹脂層の少なくとも一部を硬化する。第1の外装体及び第2の外装体には、それぞれ、外装フィルムを用いることが好ましい。
【0057】
大気圧よりも減圧された雰囲気下で樹脂層の少なくとも一部を硬化した後、作製中の二次電池を大気圧下に曝すことで、第1の外装体と第2の外装体が大気圧によって加圧される。これにより、第1の外装体、第2の外装体、及び枠状の樹脂層に囲まれた空間の減圧状態が保持される。したがって、不純物が二次電池内に混入することを抑制できる。
【0058】
また、滴下した電解質は、減圧雰囲気から大気圧雰囲気に曝されることで、短時間で広く部材に浸透させることができる。したがって、電解質が、正極及び負極の表面、さらには、内部にまで含浸する時間を短縮することができる。そして、正極及び負極の内部に、電解質を十分に含浸させることができる。
【0059】
なお、外部取り出しのための端子として機能するリード電極(引き出し配線、または、リード端子ともいう)は外装体の外側に突出させるものとする。リード電極は、二次電池の正極または負極を外装体の外側へ引き出すために設けられる。
【0060】
また、熱圧着または溶着(融着、熱接着などともいう)により、積層体を封止してもよい。また、光照射による封止と、熱による封止の双方を行ってもよい。また、減圧下で光を照射し、樹脂層の一部を硬化した後、大気圧下で光を照射することで、樹脂層の未硬化の部分を硬化させてもよい。
【0061】
減圧下、または、大気圧下で、光を照射して樹脂層を硬化する工程は、二次電池を高温に曝す必要がないため、二次電池の劣化を抑制し、二次電池の信頼性を高めることができる。
【0062】
本発明の一態様の二次電池の作製方法は、少なくとも、第1の外装体上に積層体を形成する工程から、減圧下で樹脂層を硬化する工程までを、1つの装置で連続して行うことができるため、不純物が二次電池内に混入することを抑制できる。
【0063】
なお、第1の電極と第2の電極とは、一方が正極であり、他方が負極である。積層体は、正極、セパレータ、及び負極の順に積層されたものであってもよいし、負極、セパレータ、及び正極の順に積層されたものであってもよい。また、セパレータは、正極と負極の短絡防止のために用いる。二次電池の容量を大きくするために、正極及び負極を複数積層する構成とする場合には、部品点数を低減するため、1枚の共通のセパレータを折り曲げて用いる構成としてもよい。
【0064】
また、本発明の一態様の二次電池の作製方法では、第1の外装体上に複数の積層体を配置してもよい。このとき、樹脂層としては、複数の積層体全てを囲う1つの枠状の樹脂層を形成してもよく、1つまたは複数の積層体を囲う枠状の樹脂層を複数形成してもよい。例えば、1つの積層体につき、1つの枠状の樹脂層を形成してもよい。また、第1の外装体上に、複数の積層体を覆うように、第2の外装体を配置する。そして、減圧下で樹脂層に対して光の照射を行い、大気圧下で、第1の外装体と第2の外装体とによって、複数の積層体を封止する。封止の後、第1の外装体及び第2の外装体を分断して、積層体を有する二次電池を個々に分離する。
【0065】
樹脂層の材料には、紫外光硬化樹脂等の光硬化樹脂(光硬化型接着剤などともいう)、熱硬化樹脂(熱硬化型接着剤ともいう)、反応硬化型接着剤、嫌気型接着剤などの各種硬化型接着剤を用いることができる。これら接着剤としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、イミド樹脂、PVC(ポリビニルクロライド)樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)樹脂、EVA(エチレンビニルアセテート)樹脂等が挙げられる。特に、エポキシ樹脂等のガスバリア性の高い材料が好ましい。また、二液混合型の樹脂を用いてもよい。
【0066】
各種光硬化樹脂を用いる場合は、減圧下で樹脂層に光を照射することで、樹脂層の少なくとも一部を硬化することができる。これにより、作製中の二次電池を大気圧下に曝しても、第1の外装体、第2の外装体、及び枠状の樹脂層に囲まれた空間の減圧状態が保持される。したがって、不純物が二次電池内に混入することを抑制できる。光硬化樹脂を用いることで、樹脂層を硬化する際に二次電池を高温に曝す必要がないため、二次電池の劣化を抑制し、信頼性の高い二次電池を作製することができる。
【0067】
また、熱硬化樹脂を用いる場合は、減圧下で熱圧着または溶着を行うことが好ましい。これにより、作製中の二次電池を大気圧下に曝しても、第1の外装体、第2の外装体、及び枠状の樹脂層に囲まれた空間の減圧状態が保持される。したがって、不純物が二次電池内に混入することを抑制できる。熱硬化樹脂を用いることで、光照射装置を導入する必要がないため、装置導入のためのコストを削減できる場合がある。
【0068】
また、減圧下で、熱圧着または溶着を行う場合、樹脂層を形成する工程を行わなくてもよいことがある。例えば、外装フィルムの内面の樹脂(熱可塑性フィルム材料など)を用いて熱圧着または溶着することで、第1の外装体、第2の外装体、及び枠状の樹脂層に囲まれた空間の減圧状態を、大気圧下で保持できることがある。これにより、二次電池の製造工程を削減できる。
【0069】
なお、減圧下で、複数の二次電池を個別に封止する場合などには、大気圧下での封止工程を削減することができる。
【0070】
本発明の一態様の二次電池の作製方法では、二次電池の大型化、大容量化、及び、大面積化の少なくとも一つが可能である。したがって、電気自動車(EV)などの車両に実装することが好適な二次電池を作製することができる。
【0071】
図1Aに、第1のバッテリ1301aを有する自動車2001を示す。第1のバッテリ1301aは、二次電池500を有する。二次電池500は、積層型(スタック型)の二次電池であり、大面積化が可能であるため、車体の床面積の多くを占める広い領域(例えば、床面積の25%以上100%未満の領域、好ましくは、30%以上80%以下の領域)に配置することができる。第1のバッテリ1301aは、複数の二次電池500を積層して有していてもよい。また、第1のバッテリ1301aは、複数の二次電池500が同一面上に並べて配置されていてもよい。
【0072】
なお、本発明の一態様の二次電池を電気自動車に適用する例は、実施の形態4にて詳述する。
【0073】
以下では、本発明の一態様の二次電池の例について、図1Aを用いて説明する。
【0074】
図1Aに示す二次電池500は、外装体509aと、外装体509bと、外装体509a、509bの間に配置される積層体512と、を有する。積層体512は、正極503、負極506、及び、セパレータ507を有する。積層体512において、正極503と負極506は重畳し、正極503と負極506の間にセパレータ507が配置される。
【0075】
正極503は、正極集電体501と、正極活物質層502と、を有する。本実施の形態では、正極集電体501の両面に正極活物質層502が設けられる例を示す。なお、正極活物質層502は、正極集電体501の片面のみに設けられてもよい。
【0076】
負極506は、負極集電体504と、負極活物質層505と、を有する。本実施の形態では、負極集電体504の両面に負極活物質層505が設けられる例を示す。なお、負極活物質層505は、負極集電体504の片面のみに設けられてもよい。
【0077】
正極活物質層502と負極活物質層505は、セパレータ507を挟んで互いに向かい合うように配置されることが好ましい。図1Aには、二次電池500が、セパレータ507を挟んで向かい合う正極活物質層502と負極活物質層505とを4組、有する例を示す。正極活物質層502と負極活物質層505の組数は特に限定されず、例えば、1組以上50組以下とすることができる。
【0078】
本発明の一態様の二次電池は、正極503、負極506、及び、セパレータ507のいずれか一または複数に対して、電解質を複数滴、滴下することで、電解質を含浸させることができる。
【0079】
図1Bは、正極503に対して、電解質515aを複数滴、滴下した例を示す。二次電池の電極は、集電体上に活物質層を有しており、活物質層は、活物質、導電材料、及び、バインダなどを有しており、その間には隙間を有している。滴下した電解質は、滴下位置から活物質層の隙間に移動し、均一に電解質が含浸された状態として、理想的には空隙のない状態とすることが好ましい。
【0080】
図1Bでは、正極503上に等間隔で140箇所(20行×7列)の電解質515aの液滴を図示しているが、液滴の数、及び、位置などは特に限定されず、実施者が適宜決定すればよい。一つのノズルを用いる場合には、滴下位置を撮像機構(CCD素子などの撮像素子)で確認しながら順次走査することが好ましい。また、複数のノズルから同時に液滴を滴下する場合には、滴下の処理時間を短縮でき、好ましい。
【0081】
なお、毎回の滴下量が同量となるよう、滴下の際には、電解質を量り取ることが好ましい。例えば、ピペット(マイクロピペットなど)を用いて、滴下を行ってもよい。
【0082】
また、電解質の粘度は温度により変化する。電解質の粘度が変化することで、滴下量が不均一になってしまう恐れがある。そのため、電解質の温度及び粘度が大きく変化しないよう、シリンジの温度が一定となるように制御することが好ましい。これにより、電解質の毎回の滴下量を同量とすることができる。
【0083】
例えば、外装体509a及び外装体509bとして、広い面積の外装フィルムを用いることでサイズの大きな二次電池を作製することができる。このような二次電池は、電気自動車(EV)、建築物などに好適に実装できる。例えば、サイズが、320mm×400mm、370mm×470mm、550mm×650mm、600mm×720mm、680mm×880mm、1000mm×1200mm、1100mm×1250mm、1150mm×1300mmのような大面積の外装フィルムを用いることが好ましい。さらには、サイズが、1500mm×1800mm、1800mm×2000mm、2000mm×2100mm、2200mm×2600mm、2600mm×3100mmのような大面積の外装フィルムを用いることもできる。または、対角40インチ以上100インチ以下のような大面積の外装フィルムを用いることもできる。また、外装体は、包材と呼ぶこともできる。
【0084】
なお、大面積の外装フィルムを用いる場合には、複数のノズルを用いて電解質を滴下することで、滴下に要する時間を短縮することが好ましい。複数のノズルは、X行Y列に配置することができる。Xは、例えば、1以上10以下の整数が好ましく、1以上5以下の整数がより好ましい。Yは、例えば、1以上10以下の整数が好ましく、1以上5以下の整数がより好ましい。なお、XとYの少なくとも一方は2以上の整数である。
【0085】
複数のノズルの間隔は、例えば、10cm以上1m以下とすることができ、10cm以上50cm以下が好ましい。例えば、2つのノズルを用いて電解質を滴下する場合、図1Bに示す上半分(10行7列分)の電解質515aを一方のノズルで滴下し、下半分(10行7列分)の電解質515aを他方のノズルで滴下することができる。
【0086】
電解質を滴下する間隔に特に限定はなく、電極の材料、電極の厚さ、セパレータの材料、セパレータの厚さ、電解質の一回の滴下量、及び、電解質の粘度等の少なくとも一つを考慮して適宜決定することができる。電解質を滴下する間隔は、例えば、1mm以上50mm以下とすることができ、5mm以上25mm以下が好ましい。
【0087】
図1Bにおいて、正極503は、シール領域514に囲まれている。積層体512を形成した後、シール領域514にて封止することができる。
【0088】
[二次電池の製造装置例]
図2に、本発明の一態様の二次電池の作製に用いることができる、製造装置の一例を示す。
【0089】
図2に示す製造装置300は、部材投入室301、搬送室302、処理室303、処理室304、処理室305、及び、部材取り出し室306を有する。各室は、使用用途に応じて、各種排気機構と接続される構成を適用できる。
【0090】
また、各室は、使用用途に応じて、各種ガス供給機構と接続される構成を適用できる。製造装置300内に不純物が侵入することを抑制するため、製造装置300内には、不活性ガスが供給されることが好ましい。なお、製造装置300の内部に供給されるガスは、製造装置300内に導入される前にガス精製機により高純度化されたものを用いることが好ましい。
【0091】
部材投入室301は、正極503、セパレータ507、負極506、外装体509a、及び、外装体509b等を製造装置300内に投入するための部屋である。
【0092】
搬送室302は、部材投入室301、処理室303、処理室304、処理室305、及び、部材取り出し室306のうち、いずれか一室から他の一室に部材等を搬送する、受け渡し室として機能する。例えば、処理室303から処理室304に、作製中の二次電池を搬送することができる。搬送室302は、搬送機構320を有する。
【0093】
処理室303は、外装体509b上に、正極503、セパレータ507、及び、負極506を積層して配置する機能と、外装体509b上に、樹脂層を形成する機能と、を有する。
【0094】
処理室303は、ステージ、吸着機構、電解質滴下機構、及び、シール材料供給機構を有する。
【0095】
ステージは、作製中の二次電池を支持する機能を有する。
【0096】
吸着機構は、積層体を構成する部材(正極503、セパレータ507、または、負極506)を吸着し、外装体509b上に配置する機能を有する。吸着機構は、さらに、外装体509b(または、外装体509bが配置された仮支持基板)を吸着し、ステージ上に配置する機能を有していてもよい。
【0097】
電解質滴下機構は、積層体を構成する部材上に、電解質を滴下する機能を有する。電解質滴下機構は、部材までの最短距離が、0mmより大きく1mm以下である位置から電解質を滴下することができる。これにより、正確な位置に、均一な量の電解質を滴下することができる。
【0098】
シール材料供給機構は、外装体509b上に、樹脂層を形成する機能を有する。シール材料供給機構は、例えば、紫外光硬化樹脂を供給する機能を有する。
【0099】
処理室303は、さらに、複数の正極503、複数のセパレータ507、及び、複数の負極506のそれぞれを収納するホルダを有する。これら部材は、必要な時に、ロボットアーム、または、ロボットハンド等の搬送機構により、ステージまたはその近傍に運ばれる。または、吸着機構が直接、ホルダにある部材を吸着してもよい。
【0100】
処理室303は、不活性ガス供給機構を有することが好ましい。不活性ガス供給機構は、処理室303の内部に不活性ガスを供給する機能を有することが好ましい。不活性ガスとしては、窒素または希ガスを用いることができ、アルゴンガスであることが好ましい。
【0101】
処理室304は、減圧下で樹脂層を硬化する機能を有する。本実施の形態では、樹脂層に紫外光硬化樹脂を用いる場合を例に挙げて説明する。つまり、処理室304は、減圧下で樹脂層に紫外光を照射する機能を有する。
【0102】
処理室304は、ステージ、排気機構、外装体支持機構、及び、紫外光照射機構を有する。
【0103】
ステージは、処理室303から搬送された作製中の二次電池を支持する機能を有する。
【0104】
排気機構は、処理室304の内部を減圧する機能を有する。排気機構としては、例えば、ドライポンプ、ロータリーポンプ、及び、ダイアフラムポンプ等が挙げられる。また、排気機構としては、例えば、クライオポンプ、スパッタイオンポンプ、及び、チタンサブリメーションポンプ等の、吸着手段を有するポンプを備えた排気機構、並びに、ターボ分子ポンプにコールドトラップを備えた排気機構等が挙げられる。
【0105】
処理室304は、真空排気して真空にすることもでき、真空排気した後、不活性ガスを導入して大気圧にする機能を有することが好ましい。なお、処理室303も当該機能を有することが好ましい。また、製造装置300が有する他の室においても、それぞれ、当該機能を有することが好ましい。
【0106】
例えば、処理室304は、到達真空度を0.1Pa程度にすることができ、さらにポンプ側及び排気系からの不純物の逆拡散を制御することができる。
【0107】
外装体支持機構は、外装体509a(または、外装体509aが配置された仮支持基板)を、処理室303から搬送された作製中の二次電池と対向する位置で支持する機能を有する。外装体支持機構として、例えば、吸着機構、静電機構、微粘着機構等を用いることができる。
【0108】
処理室304は、紫外光照射機構を有する。紫外光照射機構は、外装体509aまたは外装体509bを介して、樹脂層の少なくとも一部に紫外光を照射する機能を有する。
【0109】
製造装置300は、処理室303で電解質の滴下を行った後、大気に曝すことなく、処理室304で、減圧下で樹脂層を硬化できる。これにより、作製中の二次電池に不純物が入ることを抑制できる。また、製造装置300は、さらに、大気に曝すことなく、処理室305で、二次電池を封止することができる。このように、1台の装置で連続して処理をすることで、二次電池の信頼性を高めることができる。
【0110】
処理室305は、封止を行う機能を有する。
【0111】
例えば、紫外光を照射することで封止を行う場合、処理室305は、紫外光照射機構を有する。このとき、処理室305の紫外光照射機構は、処理室304と同様であってもよく、異なっていてもよい。処理室305は、大気圧雰囲気とすることができる。
【0112】
例えば、熱圧着により封止を行う場合、処理室305は、熱圧着機構を有する。処理室305は、大気圧雰囲気、または、減圧雰囲気とすることができる。
【0113】
なお、本発明の一態様の二次電池の作製方法では、処理室304にて、減圧下で樹脂層を硬化させた後、大気圧下に曝しても、外装体509a、外装体509b、及び枠状の樹脂層に囲まれた空間の減圧状態が保持される。大気圧下で熱圧着を行っても、信頼性の高い二次電池を作製することができる。
【0114】
また、処理室305を設けず、処理室304での処理が終了した後、部材取り出し室306に搬送し、製造装置300の外部に取り出してもよい。そして、製造装置300の外部にて封止を行ってもよい。
【0115】
部材取り出し室306は、作製された二次電池を製造装置300の外部に取り出すための部屋である。
【0116】
[二次電池の作製方法例]
次に、図3図8を用いて、本発明の一態様の二次電池の作製方法について説明する。図3及び図4は、本発明の一態様の二次電池の作製方法を示すフロー図である。図5及び図6は、本発明の一態様の二次電池の作製方法を示す断面図であり、図1Bに示す二点鎖線A-B間の断面図に相当する。また、図7A及び図7Bは、多面取りを行う場合の一例である。図7Cは、本発明の一態様の二次電池の作製方法を示す断面図であり、図7Bに示す二点鎖線A-B間の断面図に相当する。図8は、本発明の一態様の二次電池の作製方法を示す斜視図である。なお、一部ステップにおいては、上述した製造装置300を用いた作製方法例を説明する。
【0117】
<ステップS00>
ステップS00において、処理を開始する。
【0118】
<ステップS01>
ステップS01において、処理室303のステージ331上に、外装体509bを配置する。外装体509bの搬送と配置を容易とするため、外装体509bを仮支持基板等に仮固定して(言い換えると、着脱可能な方法で固定して)、ステージ331上に配置してもよい。外装体509bとしては、外装フィルムを用いることが好ましい。
【0119】
<ステップS02>
ステップS02において、外装体509b上に、正極503を配置する(図5A及び図8)。正極503、外装体509b、及び、ステージ331等は、処理室303のチャンバー内に配置されているが、簡略化のため、ここではチャンバー内壁などを図示しない。
【0120】
ステージ331は、前後、左右、または、上下にそれぞれ移動可能であってもよい。ステージ331上に配置された部材等を固定するための固定機構としては、メカニカルチャック、吸引チャック、静電チャック等のチャックが挙げられる。例えば、ポーラスチャックを用いてもよい。また、粘着シート、吸着テーブル、ヒーターテーブル、スピンナーテーブル等に部材を固定してもよい。
【0121】
ステージ331は、加熱機構を有していてもよい。処理室303での工程中に、ステージ331を加熱することで、部材に電解質をより迅速に含浸させることができる。
【0122】
図5Aでは、正極503が、吸着治具333によって吸着された状態で、所定の位置に運ばれる例を示す。図5Aでは、吸着治具333を1つのみ示すが、複数の吸着治具を用いてもよい。位置合わせを容易とするため、処理室303は、アライメントカメラ332を有することが好ましい。
【0123】
<ステップS03>
次に、ステップS03において、正極503上に、電解質515aを滴下する。図5B図5C、及び、図8では、電解質515aを、ノズル334から正極503に滴下する様子を示す。
【0124】
ノズル334を動かすことにより、正極503の全面にわたって電解質515aを滴下することができる。または、ステージ331を動かすことにより、正極503の全面にわたって電解質515aを滴下してもよい。
【0125】
電解質を複数滴下する際には、被滴下面の平面に対して均一のピッチで一回または複数回に分けて滴下する。滴下の方法は、例えば、ディスペンス法、スプレー法、インクジェット法などのうちいずれか一を用いることができる。ディスペンス法とは、液体定量吐出装置を用いた方法であり、ノズルから一定量の滴下を行うことができる。複数の液体定量吐出装置を用いれば、製造時間短縮を図ることもできる。ノズルまたは滴下する対象物(正極、セパレータ、及び負極のいずれか一または複数)を相対的に移動させることによって一定の距離間隔で滴下を行うこともできる。あるノズル径での一箇所への滴下量を0.01ccとすると、n(n>1)箇所滴下することで0.01cc×nの電解質を含浸させることができるため、滴下する落下点または滴下総量を精密制御することができる。平面に対してn(n>1)箇所滴下することは、例えば正極の場合、正極の一点のみへの滴下に比べて、正極の複数箇所に滴下するほうが正極全体に含浸させる時間を短縮することができ、製造時間の短縮を図ることができる。また、電解質の滴下には、ODF(One Drop Fill)方式を用いることができる。
【0126】
電解質は、被滴下面からの最短距離が、0mmより大きく1mm以下である位置から滴下されることが好ましい。具体的には、図5Bに示すノズル334と正極503との間の距離Xが、0mmより大きく1mm以下であることが好ましい。
【0127】
例えば、滴下対象である電極またはセパレータについて、表面の凹凸が大きい場合、または、反りが大きい場合などには、ノズルと電極またはセパレータとが接触してしまう恐れがある。一方で、距離Xが大きすぎると、滴下に時間を要する、または、所定の時間内に所定の量の電解質を滴下できない恐れがある。そのため、上記距離Xは、0.1mm以上0.5mm以下であることがより好ましい。これにより、正確な位置に、均一な量の電解質を滴下することが容易となり、均一な特性を有する二次電池を作製することができる。
【0128】
また、ノズルなどから滴下する電解質の粘度は適宜調節することが好ましい。電解質全体の粘度が室温(25℃)において、0.3mPa・s以上1000mPa・s以下の範囲内であればノズルから滴下することができる。電解質の粘度を低くすることで、滴下時間を短縮できるため好ましい。例えば、滴下する電解質の粘度は、0.3mPa・s以上100mPa・s以下とすることが好ましく、1mPa・s以上30mPa・s以下とすることがより好ましい。なお、粘度測定には回転式の粘度計(例えば、東機産業のTVE-35L)を用いる。
【0129】
また、電解質の粘度は、電解質の温度により変化するため、滴下する電解質の温度も、適宜調節することが好ましい。電解質の温度は、当該電解質の融点以上沸点以下、かつ、引火点以下が好ましい。例えば、滴下する電解質の温度は、20℃以上80℃以下が好ましく、25℃以上60℃以下が好ましい。
【0130】
滴下する電解質としては、有機溶媒(有機電解液ともいう)またはイオン液体を用いることができる。
【0131】
本実施の形態の二次電池の作製方法では、減圧下で行う工程を有する。イオン液体は、高真空であってもほとんど揮発しないため、好ましい。また、電解質として、イオン液体に有機溶媒を混合させたものを用いてもよい。電解質として有機溶媒を含む場合、処理室の真空度は5×10-1Pa程度よりも低真空とすることが望ましい。
【0132】
<ステップS04>
次に、ステップS04において、正極503上に、セパレータ507を配置する(図8)。セパレータ507は、正極503の一面全体と重なるように配置する。これにより、正極503と、後に配置する負極506とが接触しショートすることを防止できる。
【0133】
<ステップS05>
次に、ステップS05において、セパレータ507上に、電解質515bを滴下する。図5D及び図8では、電解質515bをセパレータ507に滴下した様子を示す。電解質515bは、上述のノズル334を用いて滴下することができる。
【0134】
上述の通り、電解質は、被滴下面からの最短距離が、0mmより大きく1mm以下である位置から滴下されることが好ましい。具体的には、ノズルとセパレータ507との間の距離が、0mmより大きく1mm以下であることが好ましく、0.1mm以上0.5mm以下であることがより好ましい。
【0135】
毛細管現象により、セパレータ507に電解質515bが含浸することが好ましい。これにより、セパレータ507に十分に電解質を含浸させることができる。
【0136】
<ステップS06>
次に、ステップS06において、セパレータ507上に、負極506を配置する(図8)。負極506は、上面視においてセパレータ507からはみ出さないように、重ねて配置する。これにより、正極503と、配置する負極506とが接触しショートすることを防止できる。
【0137】
<ステップS07>
次に、ステップS07において、負極506上に、電解質515cを滴下する。図6Aでは、電解質515cを、負極506に滴下した様子を示す。電解質515cは、上述のノズル334を用いて滴下することができる。
【0138】
上述の通り、電解質は、被滴下面からの最短距離が、0mmより大きく1mm以下である位置から滴下されることが好ましい。具体的には、ノズルと負極506との間の距離が、0mmより大きく1mm以下であることが好ましく、0.1mm以上0.5mm以下であることがより好ましい。
【0139】
ステップS07の後に、正極503、セパレータ507、及び、負極506の積層体をさらに積層することもできる。例えばステップS07の後に、セパレータ507、正極503、セパレータ507、負極506、セパレータ507、正極503、を順に積層することにより、図1Aに示す積層体512を作製することができる。正極503、負極506、及び、セパレータ507のいずれかを配置した後には、毎回、電解質を滴下することが好ましい。
【0140】
なお、本実施の形態では、正極503、セパレータ507、及び、負極506の順に積層する例を示すが、これに限定されない。例えば、負極506、セパレータ507、及び正極503の順に積層してもよい。または、セパレータ507から積層を始めてもよく、例えば、セパレータ507、正極503、セパレータ507、及び、負極506の順、または、セパレータ507、負極506、セパレータ507、及び正極503の順に積層してもよい。
【0141】
なお、本発明の一態様の二次電池の作製方法では、ステップS03、ステップS05、及びステップS07のうち、少なくとも1つのステップを行えばよい。つまり、正極503上、負極506上、及び、セパレータ507上の少なくとも1つに、電解質を滴下すればよい。例えば、正極503上、及び、負極506上にのみ、電解質を滴下してもよい。または、セパレータ507にのみ、電解質を滴下してもよい。また、正極503上、負極506上、及び、セパレータ507上にそれぞれ滴下する電解質は、いずれも同一の材料であってもよく、一部または全てが異なる材料であってもよい。
【0142】
なお、ステップS07の後、かつ、ステップS08の前の間に、正極503及び負極506のそれぞれに、リード電極を接続させてもよい。
【0143】
<ステップS08>
次に、ステップS08において、外装体509a及び外装体509bによって、正極503、セパレータ507、及び、負極506を封止する(図6B)。
【0144】
封止の方法としては、樹脂層に光を照射する方法、外装体を熱圧着する方法等を用いることができる。封止は、減圧下、及び、大気圧下、の一方または双方で行うことができる。
【0145】
封止の方法の一例を図4図7、及び図8を用いて説明する。
【0146】
ここで、図7Aに示すように、外装体509b上に複数の積層体512を配置することで、多面取りを行うことができる。多面取りとは、1枚の大きな外装体上に複数の積層体を配置し、二次電池を作製した後、積層体ごとに平面的に分割することにより、複数の二次電池を作製する方式のことを指している。多面取りを行うことによって1つの二次電池あたりの作製時間を短縮することができる。また、本発明の一態様の二次電池の作製方法を用いて多面取りを行うことで、複数の二次電池の特性を均一にしやすく、歩留まりよく二次電池を作製することができる。
【0147】
上述の通り、本発明の一態様の二次電池の作製方法では、外装体509a及び外装体509bとして、広い面積の外装フィルムを用いることができる。これにより、1枚の大面積の外装フィルムから一度に多くの二次電池を作製できるため、効率よく複数の二次電池を作製することができる。
【0148】
図7Aにおいて、積層体512は、シール領域514に囲まれている。積層体512を1つずつ、シール領域514にて封止した後、シール領域514の外側で分断することで、複数の二次電池を個々に分離することができる。
【0149】
≪ステップS21≫
まず、ステップS21において、外装体509b上に枠状の樹脂層を形成する。図7Bでは、外装体509bの4隅に樹脂層518を設け、また、1つの積層体512を囲う、枠状の樹脂層513を複数設ける例を示す。図7Cでは、樹脂517を、ノズル335から外装体509b上に吐出する様子を示す。
【0150】
なお、外装体509b上に樹脂層を形成するタイミングは、ステップS09の前であればいつでもよく、例えば、ステップS01の後に行ってもよい。
【0151】
例えば、図8に示すように、ステップS01において、外装体509b上に、樹脂層513を形成し、かつ、ステップS21において、さらに、外装体509b、正極503、及び、負極506上に、樹脂層513を形成してもよい。これにより、樹脂層は、正極503の表面と裏面の双方、及び、負極506の表面と裏面の双方、と接することができる。したがって、隙間なく積層体を封止することができ、二次電池の信頼性を高めることができる。
【0152】
なお、図8では、ステップS01とステップS21において、同じ位置に樹脂層を形成する例を示す。ステップS01において形成する樹脂層と、ステップS21において形成する樹脂層は、一部または全てが重なる構成としてもよく、全く重ならない構成としてもよい。
【0153】
樹脂層の形成には、例えば、ディスペンス法、スプレー法、インクジェット法などのうちいずれか一を用いることができる。
【0154】
樹脂層の材料としては、上述の各種接着剤を用いることができる。または、外装体を構成する樹脂層を用いる場合は、本工程を行わなくてもよい場合がある。
【0155】
樹脂層の材料としては、光硬化樹脂を用いることが好ましく、紫外光硬化樹脂を用いることが特に好ましい。以下では、紫外光硬化樹脂を用いて樹脂層を作製する場合を例に挙げて説明する。
【0156】
なお、電解質に樹脂層の材料が混入することで、二次電池の信頼性を低下させてしまう恐れがある。そのため、電解質と樹脂層は接しないように形成することが好ましい。これにより、二次電池の信頼性を高めることができる。
【0157】
≪ステップS22≫
次に、ステップS22において、減圧下で、樹脂層の少なくとも一部に光を照射する。
【0158】
具体的には、外装体509b上に、正極503、セパレータ507、及び負極506を覆うように、外装体509aを配置し、減圧下で樹脂層に紫外光を照射することで、樹脂層の少なくとも一部を硬化する(図8)。
【0159】
ここでは、外装体509bの4隅に設けた樹脂層518を硬化する例を示す。減圧下で樹脂層518を硬化させれば、枠状の樹脂層513が未硬化であっても、外装体509a、外装体509b、及び、枠状の樹脂層513に囲まれた空間の減圧状態は、大気圧下で保持される。具体的には、作製中の二次電池を大気圧下に曝した際に、外装体509a及び外装体509bが大気圧によって加圧される。そして、外装体509a、外装体509b、及び、枠状の樹脂層513に囲まれた空間の減圧状態が保持される。したがって、外部から不純物が作製中の二次電池に侵入することを抑制できる。
【0160】
減圧下では、作製中の二次電池に対して、光を照射できる領域が限られてしまう場合がある。そのため、本発明の一態様の二次電池の作製方法において、減圧下では、大気圧下においても作製中の二次電池内部の減圧状態が保持できるように、樹脂層の一部を硬化させればよい。これにより、封止工程を、大気圧下で行うことができる。
【0161】
光は、外装体509a、または、外装体509bを介して、樹脂層518に照射される。当該光が照射される側の外装体は、少なくとも樹脂層518と重なる領域において、当該光を透過する。
【0162】
例えば、ステップS21にて、紫外光硬化樹脂を用いて樹脂層を形成し、ステップS22にて、当該樹脂層に紫外光を照射することが好ましい。なお、樹脂層の材料及び硬化の方法はこれに限定されない。例えば、紫外光以外の光を照射して樹脂層を硬化させてもよい。または、例えば、熱圧着または溶着により、樹脂層を硬化させてもよい。溶着としては、高周波溶着、熱溶着、超音波溶着等が挙げられる。
【0163】
≪ステップS23≫
次に、ステップS23において、大気圧下で封止を行う。
【0164】
ステップS22にて、減圧下で処理を行っているため、ステップS23の封止工程は、大気圧下で行うことができる。封止工程は、アルゴン雰囲気または窒素雰囲気などの不活性雰囲気下で行うことが好ましい。
【0165】
例えば、枠状の樹脂層513に紫外光を照射し硬化させることで封止を行うことができる。このように、樹脂層は、減圧下で紫外光が照射された面積よりも、封止の際に紫外光が照射された面積の方が広いことが好ましい。光照射により封止を行うことで、二次電池を高温に曝す必要がないため、二次電池の劣化を抑制し、信頼性の高い二次電池を作製することができる。
【0166】
また、熱圧着または溶着により、封止を行ってもよい。例えば、ステップS21にて、複数の積層体全てを囲う1つの枠状の樹脂層(後述する、図12Aに示す枠状の樹脂層521参照)を設けた場合などは、熱圧着または溶着により、封止を行うことが好ましい。
【0167】
ステップS21からステップS23までを行うことで、図6Bに示すように、外装体509a及び外装体509bにより、正極503、セパレータ507、及び、負極506を封止することができる。
【0168】
<ステップS09>
以上の工程を経て、ステップS09において、処理を終了する。
【0169】
なお、図7Aまたは図7Bに示すように、外装体509b上に複数の二次電池を作製した場合には、外装体509a及び外装体509bを分断することで、これらの二次電池を個々に分離することができる。外装体は、レーザ光などを用いて分断することができる。
【0170】
<外装体509bの変形例>
外装体509bは、凹部を有することが好ましい。このとき、正極503、セパレータ507、及び、負極506は、凹部に配置されることが好ましい。凹部に配置することで、正極503、セパレータ507、及び、負極506を所望の位置に配置することが容易となり、かつ、これらの部材の位置がずれることを抑制することができる。これにより、信頼性の高い二次電池を作製することができる。
【0171】
図9Aに、ステップS01において、複数の凹部509cを有する外装体509bを配置する例を示す。
【0172】
1つの凹部509cにつき、1つの二次電池が作製できることが好ましい。そのため、凹部の形状(幅、長さ、及び、深さ等)は、作製する二次電池の形状に合わせて決定することが好ましい。
【0173】
凹部は、プレス加工等により、予め形成しておくことが好ましい。凹部の深さは、積層体の厚さと同じか、それよりも大きいことが好ましい。上面視において、凹部の底部の面積は、正極の面積よりも大きいことが好ましい。また、上面視において、凹部の底部の面積は、負極の面積より大きいことが好ましい。また、上面視において、凹部の底部の面積は、積層体の面積より大きいことが好ましい。凹部は、正極及び負極の、少なくともタブ領域を除く領域を内部に配置できるスペースを有することが好ましい。
【0174】
図9Bに、ステップS02において、1つの凹部につき、1つの正極503を配置する例を示す。
【0175】
同様に、ステップS04では、1つの凹部につき、1つのセパレータ507を配置し、ステップS06では、1つの凹部につき、1つの負極506を配置する。これにより、1つの凹部に1つの積層体512を配置することができる(図10A)。なお、図10Aでは、積層体512として、正極503、セパレータ507、及び、負極506を、1つずつ図示しているが、積層体512の構成はこれに限定されない。積層体512は、正極503、セパレータ507、及び、負極506を、それぞれ、複数有していてもよい。
【0176】
図11Aに、外装体509bの凹部509cに積層体512を配置した後の上面図を示す。図11Aにおける一点鎖線A-B間の断面図を図11Bに示す。
【0177】
図11A及び図11Bに示すように、凹部509cには、正極503、セパレータ507、及び、負極506が積層して配置されている。図11Bでは、積層体512が、3つの正極503と、4つのセパレータと、2つの負極506と、を有する例を示す。積層体512の厚さは、凹部509cの深さと同じか、それ以下であることが好ましい。これにより、積層体512、及び、積層体512を構成する各部材が、所望の位置からずれてしまうことを特に抑制できる。
【0178】
正極503は、正極集電体501が一部露出する領域(以下、タブ領域という)を有する。負極506は、負極集電体504が一部露出する領域、すなわちタブ領域を有する。
【0179】
複数の正極集電体501においては、例えば、各々のタブ領域は重ねて配置される。重なり合ったタブ領域と、正極リード電極と、を重ね合わせ、超音波溶接等を用いて接合してもよい。また、複数の負極集電体504においては、例えば、各々のタブ領域は重ねて配置される。重なり合ったタブ領域と、負極リード電極と、を重ね合わせ、超音波溶接等を用いて接合してもよい。超音波溶接等を用いて接合するタイミングは実施者が適宜選択すればよく、封止前でも封止後でもよい。
【0180】
また、図11Aでは、正極503及び負極506のタブ領域が凹部509cの内部に全て収まっている例を示すが、図11Cに示すように、当該タブ領域は、凹部509cの外側に延在する部分を有していてもよい。
【0181】
<外装体509aの変形例>
上述の通り、外装体509aは、少なくとも樹脂層と重なる領域において、紫外光を透過する。外装体509aは、少なくとも、正極503、セパレータ507、及び、負極506の少なくとも一つと重なる領域において、紫外光を遮ることが好ましい。外装体509aは、特に、積層体512と重なる領域において、紫外光を遮ることが好ましい。これにより、積層体512に紫外光が照射され、二次電池が劣化することを抑制することができる。
【0182】
図10Bに、ステップS08において、紫外光透過領域529aと紫外光遮光領域529bとを有する外装体509aを用いる例を示す。紫外光遮光領域529bは、外装体509bの凹部と重なるように配置されている。上面視において、紫外光遮光領域529bは、外装体509bの凹部と比較して、幅及び長さが、それぞれ、同じかそれ以上であることが好ましい。このような構成とすることで、積層体512に紫外光が照射されることを特に防ぐことができ、二次電池の信頼性を高めることができる。なお、紫外光透過領域529aは、可視光を透過してもよい。
【0183】
図10Bにおいて、樹脂層518は、外装体509aの紫外光透過領域529aと重なる。外装体509aの紫外光透過領域529aを介して、樹脂層518に紫外光が照射されることで、樹脂層518を硬化させることができる。
【0184】
<樹脂層の上面レイアウト>
次に、外装体509b上に設ける樹脂層の上面レイアウトの例について説明する。
【0185】
図12A図12Bでは、外装体509bの凹部509cに、正極(正極活物質層502及び正極集電体501)、セパレータ507、及び、負極(負極活物質層505及び負極集電体504)が配置されている。また、正極集電体501には、正極リード電極510が接合され、負極集電体504には、負極リード電極511が接合されている。
【0186】
図12Aは、外装体509bの四辺に沿って枠状の樹脂層521を設ける例を示す。この場合、ステップS22で、減圧下にて、枠状の樹脂層521に紫外光を照射し、枠状の樹脂層521の少なくとも一部を硬化させることが好ましい。そして、ステップS23では、熱圧着を行い、封止することが好ましい。このように、枠状の樹脂層521は、外装体509bにおける、端部近傍、または、二次電池が形成される領域から十分に離れた外側の部分に設けることが好ましい。これにより、樹脂層の材料が電解質に混入することを抑制することができる。なお、リード電極と重ねて樹脂層を設ける場合、リード電極同士が導通しないよう、絶縁性の高い樹脂材料を用いることが好ましい。または、リード電極と樹脂層との間に保護層を形成し、樹脂層を、リード電極と接しないように形成することが好ましい。
【0187】
図13に、熱圧着により形成されたシール領域525の上面レイアウトの一例を示す。シール領域525は、1つの二次電池に対し、1つ設けられている。
【0188】
外装体509aは、外装体509b(図示せず)と、枠状の樹脂層521、及び、シール領域525によって、貼り合わされている。外装体509aには、上述した、紫外光透過領域529aと紫外光遮光領域529bとを有する構成を適用する例を示す。
【0189】
シール領域525は、正極、セパレータ、及び、負極を囲うように設けられている。正極リード電極510及び負極リード電極511は、それぞれ、シール領域525と重なる位置に、封止層519を有する。これにより、外装体同士だけでなく、リード電極と外装体とも、互いに固定することができ、二次電池の信頼性を高めることができる。
【0190】
図12Bは、1つの凹部509cに対し、1つの枠状の樹脂層513を設ける例を示す。具体的には、枠状の樹脂層513は、凹部509cを囲うように、外装体509b上に設けられている。この場合、ステップS09で、減圧下にて、枠状の樹脂層513に紫外光を照射し、枠状の樹脂層513の少なくとも一部を硬化させることが好ましい。特に、複数の枠状の樹脂層513それぞれについて、少なくとも一部を硬化させることが好ましい。
【0191】
そして、ステップS23では、大気圧下で、枠状の樹脂層513の全体に紫外光を照射し、枠状の樹脂層513の全体を硬化させることが好ましい。
【0192】
または、ステップS23では、熱圧着を行い、封止してもよい。このとき、枠状の樹脂層513は、一部が未硬化であってもよい。
【0193】
また、ステップS22において、減圧下で、複数の枠状の樹脂層513それぞれについて硬化を行い、二次電池を個別に封止した場合などには、ステップS23を行わなくてもよい。
【0194】
図14に、熱圧着により形成されたシール領域525の上面レイアウトの一例を示す。シール領域525は、1つの二次電池に対し、1つ設けられている。シール領域525は、枠状の樹脂層513の内側に設けることが好ましい。なお、図14では、外装体509aの図示を省略する。
【0195】
シール領域525は、正極、セパレータ、及び、負極を囲うように設けられている。正極リード電極510及び負極リード電極511は、それぞれ、シール領域525と重なる位置に、封止層519を有する。これにより、外装体同士だけでなく、リード電極と外装体とも、互いに固定することができ、二次電池の信頼性を高めることができる。
【0196】
外装体509a及び外装体509bとして、金属箔(アルミニウム、ステンレスなど)と樹脂(熱融着性樹脂)の積層を含むフィルム(ラミネートフィルムとも呼ぶ)を用いると、金属缶を用いた二次電池よりも軽量であり、薄型の二次電池を作製することができる。金属箔の一方の面または両方の面に接着層(ヒートシール層とも呼ぶ)を有するものを用いる。第1のラミネートフィルムの第1の接着層と、第2のラミネートフィルムの第2の接着層とを、第1の接着層及び第2の接着層が内側になるよう密着させた状態で熱圧着を行うことで、シール領域525が形成される。また、熱圧着に限定されず、熱硬化樹脂などを用いてシール領域525を形成してもよい。
【0197】
接着層は、熱可塑性フィルム材料、熱硬化型接着剤、嫌気型接着剤、紫外光硬化型接着剤など光硬化型の接着剤、反応硬化型接着剤を用いることができる。これらの接着剤の材質としてはエポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、またはフェノール樹脂などを用いることができる。
【0198】
シール領域525は、枠状、または、閉ループ状とする。シール領域525に囲まれた領域内に、正極503、セパレータ507、及び、負極506を有する積層体を配置して密閉する。従って、シール領域525に囲まれた領域の面積は、少なくとも二次電池の正極503の面積よりも広くする。
【0199】
二次電池の外装体に用いるフィルムとしては、金属フィルム(アルミニウム、ステンレス、ニッケル鋼、金、銀、銅、チタン、ニクロム、鉄、錫、タンタル、ニオブ、モリブデン、ジルコニウム、亜鉛など金属箔となる金属または合金など)、有機材料からなるプラスチックフィルム、有機材料(有機樹脂または繊維など)と無機材料(セラミックなど)とを含むハイブリッド材料フィルム、炭素含有無機フィルム(カーボンフィルム、グラファイトフィルムなど)から選ばれる単層フィルムまたはこれら複数からなる積層フィルムなどを用いることができる。
【0200】
また、二次電池の封止構造は、2枚の外装体を重ね、外装体の4辺を接着層で固定して閉塞させる構造とする。または、1枚の長方形の外装体を中央で折り曲げて、四隅のうち、曲げる箇所を挟む2つの端部を重ね、4辺を接着層で固定して閉塞させる構造とする。このような構成とすると、正極、セパレータ、及び負極の積層体は、外装体に包まれるように収納される。
【0201】
なお、本実施の形態では、薄型電池(ラミネート型)の例を主に説明したが、本発明の一態様の二次電池の作製方法で作製する電池の形状は特に限定されず、捲回型に応用することも可能である。捲回型の場合は、捲回体に電解質を滴下する、または、捲回体を作製する前、即ち捲回する前に滴下すればよい。捲回体とは、帯状の正極、帯状のセパレータ、帯状の負極の順で重ね、重ねたまま捲回させたものを指す。
【0202】
以上のように、本発明の一態様の二次電池の作製方法では、正極、セパレータ、及び、負極を積層して、積層体を作製する段階で、正極、セパレータ、及び、負極の少なくとも一つに、電解質を複数滴、滴下する。これにより、正極、セパレータ、または、負極に電解質を十分に含浸させることができる。
【0203】
また、本発明の一態様の二次電池の作製方法では、減圧下で樹脂層の硬化を行うなどにより、外装体と枠状の樹脂層とで囲まれた空間を減圧状態とすることができる。したがって、不純物が二次電池内に混入することを抑制できる。また、減圧雰囲気から大気圧雰囲気に曝した際に、滴下した電解質が、短時間で広く浸透する。これにより、電解質が、正極及び負極の表面、さらには、内部にまで含浸する時間を短縮することができる。そして、正極及び負極の内部に、電解質を十分に含浸させることができる。また、その後、大気圧下で封止を行うこともできるため、封止方法の選択肢を広げることができる。
【0204】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。また、本明細書において、1つの実施の形態の中に、複数の構成例が示される場合は、構成例を適宜組み合わせることが可能である。
【0205】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様の二次電池構成要素及び材料などについて説明する。
【0206】
〔正極〕
正極は、正極活物質層及び正極集電体を有する。正極活物質層は正極活物質を有する。正極活物質層は、さらに、導電材料及びバインダの一方または双方を有していてもよい。
【0207】
〔負極〕
負極は、負極活物質層及び負極集電体を有する。負極活物質層は負極活物質を有する。負極活物質層は、さらに、導電材料及びバインダの一方または双方を有していてもよい。
【0208】
[集電体]
正極集電体及び負極集電体として、それぞれ、ステンレス、金、白金、亜鉛、鉄、ニッケル、銅、アルミニウム、チタン、タンタル等の金属、及びこれらの合金など、導電性が高く、リチウムイオン等のキャリアイオンと合金化しない材料を用いることができる。
【0209】
また、シリコン、チタン、ネオジム、スカンジウム、モリブデンなどの耐熱性を向上させる元素が添加されたアルミニウム合金を用いることができる。また、シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素で正極集電体及び負極集電体の一方または双方を形成してもよい。シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、及び、ニッケル等がある。
【0210】
集電体は、箔状、板状(シート状)、網状、円柱状、コイル状、パンチングメタル状、エキスパンドメタル状等の形状を適宜用いることができる。集電体は、厚みが10μm以上30μm以下のものを用いるとよい。
【0211】
集電体として上記に示す金属の上に、チタン化合物を積層してもよい。チタン化合物としては、例えば、窒化チタン、酸化チタン、窒素の一部が酸素に置換された窒化チタン、酸素の一部が窒素に置換された酸化チタン、及び酸化窒化チタン(TiO、0<x<2、0<y<1)から選ばれる一を、あるいは二以上を、混合または積層して、用いることができる。中でも窒化チタンは導電性が高く、かつ、酸化を抑制する機能が高いため、特に好ましい。チタン化合物を集電体の表面に設けることにより、例えば、集電体上に形成される活物質層が有する材料と金属との反応が抑制される。活物質層が酸素を有する化合物を含む場合には、金属元素と酸素との酸化反応を抑制することができる。例えば集電体としてアルミニウムを用い、活物質層が後述する酸化グラフェンを用いて形成される場合には、酸化グラフェンが有する酸素とアルミニウムとの酸化反応が懸念される場合がある。このような場合において、アルミニウムの上にチタン化合物を設けることにより、集電体と酸化グラフェンとの酸化反応を抑制することができる。
【0212】
サイズの大きな二次電池を作製する場合、集電体のサイズも大きくなるため、集電体の抵抗に起因する電圧降下が生じる恐れがある。そのため、集電体の厚さを厚くする、タブ領域の面積を増やす、タブ領域の数を増やす、集電体と電気的に接続する補助電極を設けるといった対策の少なくとも一つを施すことが好ましい。
【0213】
例えば、第1の金属膜の上に、網目状またはストライプ状などの金属パターン層を形成し、当該金属パターン層を挟むように、第1の金属膜上に第2の金属膜を設けた、3層構造の集電体を用いてもよい。
【0214】
図15Aに、タブ領域501aを3つ有する正極集電体501の例を示す。集電体の長辺にタブ領域を設けることで、集電体の面積が大きくても、電圧降下の影響を抑制することができ、好ましい。図15Bに、各辺にタブ領域を有する正極集電体501を示し、図15Cに、各辺にタブ領域を有する負極集電体504を示す。各辺にタブ領域を設けることで、集電体の面積が大きくても、電圧降下の影響を抑制することができ、好ましい。図15Bに示す正極集電体501は、セパレータなどを介して、図15Cに示す負極集電体504と重ねることができる。図15Bには、負極集電体504を点線で示す。正極と負極の短絡を防ぐため、図15Bに示すように、正極のタブ領域と負極のタブ領域は十分に離れていることが好ましい。図15Dに、網目状に補助電極522を設けた正極集電体501の例を示す。補助電極522の上面レイアウトに特に限定はない。例えば、集電体における、活物質層を形成しない面一面全体に補助電極522を設けてもよい。また、ストライプ状に補助電極を設けてもよい。
【0215】
[導電材料]
正極活物質層、負極活物質層、等の活物質層は、導電材料(導電剤、導電助剤ともいう)を有することが好ましい。導電材料として、グラフェン化合物、カーボンブラック、黒鉛、炭素繊維、フラーレン、等の炭素系材料を有することが好ましく、特にグラフェン化合物を有することが好ましい。カーボンブラックとして、例えば、アセチレンブラック(AB)等を用いることができる。黒鉛として、例えば、天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ等の人造黒鉛等を用いることができる。なお、これらの炭素系材料は、活物質として機能してもよい。
【0216】
炭素繊維としては、例えば、メソフェーズピッチ系炭素繊維、等方性ピッチ系炭素繊維等を用いることができる。また炭素繊維として、カーボンナノファイバーまたはカーボンナノチューブなどを用いることができる。カーボンナノチューブは、例えば気相成長法などで作製することができる。
【0217】
また、活物質層は、導電材料として、銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金などの金属粉末、または、金属繊維、導電性セラミックス材料等を有してもよい。
【0218】
活物質層の総量に対する導電材料の含有量は、1wt%以上10wt%以下が好ましく、1wt%以上5wt%以下がより好ましい。
【0219】
活物質と点接触するカーボンブラック等の粒状の導電材料と異なり、グラフェン化合物は接触抵抗の低い面接触を可能とするものである。したがって、通常の導電材料よりも少量で、粒状の活物質とグラフェン化合物との電気伝導性を向上させることができる。よって、活物質の活物質層における比率を増加させることができる。これにより、二次電池の放電容量を増加させることができる。
【0220】
カーボンブラック、黒鉛、等の粒子状の炭素含有化合物、または、カーボンナノチューブ等の繊維状の炭素含有化合物は、微小な空間に入りやすい。微小な空間とは、例えば、複数の活物質の間の領域等を指す。微小な空間に入りやすい炭素含有化合物と、複数の粒子にわたって導電性を付与できるグラフェンなどのシート状の炭素含有化合物と、を組み合わせて使用することにより、電極の密度を高め、優れた導電パスを形成することができる。本発明の一態様の作製方法で得られる二次電池は、安定性を備えることができ、車載用の二次電池として有効である。二次電池の数を増やすと制御が複雑となる。大型の二次電池を用いることで、二次電池の数を低減し、充電制御回路の負担を軽減することができる。
【0221】
[バインダ]
活物質層は、バインダを有することが好ましい。バインダは、例えば、電解質と活物質とを束縛または固定する。また、バインダは、電解質と炭素系材料、活物質と炭素系材料、複数の活物質同士、複数の炭素系材料、等を束縛または固定することができる。
【0222】
バインダとして、ポリスチレン、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル(ポリメチルメタクリレート、PMMA)、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、エチレンプロピレンジエンポリマー、ポリ酢酸ビニル、ニトロセルロース等の材料を用いることが好ましい。
【0223】
ポリイミドは熱的、機械的、化学的に非常に優れた安定な性質を有する。
【0224】
フッ素を有する高分子材料であるフッ素ポリマー、具体的にはポリフッ化ビニリデン(PVDF)などを用いることができる。PVDFは融点を134℃以上169℃以下の範囲に有する樹脂であり、熱安定性に優れた材料である。
【0225】
また、バインダとして、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、スチレン-イソプレン-スチレンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体などのゴム材料を用いることが好ましい。またバインダとして、フッ素ゴムを用いることができる。
【0226】
また、バインダとしては、例えば水溶性の高分子を用いることが好ましい。水溶性の高分子としては、例えば多糖類などを用いることができる。多糖類としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、再生セルロースなどのセルロース誘導体または、澱粉などを用いることができる。また、これらの水溶性の高分子を、前述のゴム材料と併用して用いると、さらに好ましい。
【0227】
バインダは上記のうち複数を組み合わせて使用してもよい。
【0228】
<グラフェン化合物>
本明細書等において、グラフェン化合物とは、グラフェン、多層グラフェン、マルチグラフェン、酸化グラフェン、多層酸化グラフェン、マルチ酸化グラフェン、還元された酸化グラフェン、還元された多層酸化グラフェン、還元されたマルチ酸化グラフェン、及び、グラフェン量子ドット等を含む。グラフェン化合物とは、炭素を有し、平板状、シート状等の形状を有し、炭素6員環で形成された二次元的構造を有するものをいう。該炭素6員環で形成された二次元的構造は炭素シートといってもよい。グラフェン化合物は官能基を有してもよい。またグラフェン化合物は屈曲した形状を有することが好ましい。またグラフェン化合物は丸まってカーボンナノファイバーのようになっていてもよい。
【0229】
本明細書等において、酸化グラフェンとは、例えば、炭素と、酸素を有し、シート状の形状を有し、官能基、特にエポキシ基、カルボキシ基、または、ヒドロキシ基を有するものをいう。
【0230】
本明細書等において、還元された酸化グラフェンとは、例えば、炭素と、酸素を有し、シート状の形状を有し、炭素6員環で形成された二次元的構造を有するものをいう。炭素シートといってもよい。還元された酸化グラフェンは1枚でも機能するが、複数枚が積層されていてもよい。還元された酸化グラフェンは、炭素の濃度が80atomic%より大きく、酸素の濃度が2atomic%以上15atomic%以下である部分を有することが好ましい。このような炭素濃度及び酸素濃度とすることで、少量でも導電性の高い導電材料として機能することができる。また還元された酸化グラフェンは、ラマンスペクトルにおけるGバンドとDバンドの強度比G/Dが1以上であるであることが好ましい。このような強度比である還元された酸化グラフェンは、少量でも導電性の高い導電材料として機能することができる。
【0231】
酸化グラフェンを還元することにより、グラフェン化合物に孔を設けることができる場合がある。
【0232】
また、グラフェンの端部をフッ素で終端させた材料を用いてもよい。
【0233】
活物質層の縦断面においては、活物質層の内部領域において概略均一にシート状のグラフェン化合物が分散する。複数のグラフェン化合物は、複数の粒状の活物質を一部覆うように、あるいは複数の粒状の活物質の表面上に張り付くように形成されているため、互いに面接触している。
【0234】
ここで、複数のグラフェン化合物同士が結合することにより、網目状のグラフェン化合物シート(以下、グラフェン化合物ネットまたはグラフェンネットと呼ぶ)を形成することができる。活物質をグラフェンネットが被覆する場合に、グラフェンネットは活物質同士を結合するバインダとしても機能することができる。よって、バインダの量を少なくすることができる、または、使用しないことができるため、電極体積または電極重量に占める活物質の比率を向上させることができる。すなわち、二次電池の充放電容量を増加させることができる。
【0235】
ここで、グラフェン化合物として酸化グラフェンを用い、活物質と混合して活物質層となる層を形成後、還元することが好ましい。つまり完成後の活物質層は還元された酸化グラフェンを有することが好ましい。グラフェン化合物の形成に、極性溶媒中での分散性が極めて高い酸化グラフェンを用いることにより、グラフェン化合物を活物質層の内部領域において概略均一に分散させることができる。均一に分散した酸化グラフェンを含有する分散媒から溶媒を揮発除去し、酸化グラフェンを還元するため、活物質層に残留するグラフェン化合物は部分的に重なり合い、互いに面接触する程度に分散していることで三次元的な導電パスを形成することができる。なお、酸化グラフェンの還元は、例えば熱処理により行ってもよいし、還元剤を用いて行ってもよい。
【0236】
また、予め、スプレードライ装置を用いることで、活物質の表面全体を覆って導電材料であるグラフェン化合物を被膜として形成し、さらに活物質同士間をグラフェン化合物で電気的に接続し、導電パスを形成することもできる。
【0237】
またグラフェン化合物と共に、グラフェン化合物を形成する際に用いる材料を混合して活物質層に用いてもよい。例えばグラフェン化合物を形成する際の触媒として用いる粒子を、グラフェン化合物と共に混合してもよい。グラフェン化合物を形成する際の触媒としては、例えば、酸化ケイ素(SiO、SiO(x<2))、酸化アルミニウム、鉄、ニッケル、ルテニウム、イリジウム、プラチナ、銅、及び、ゲルマニウム等のうち一つまたは複数を有する粒子が挙げられる。該粒子は平均粒子径(D50:メディアン径ともいう。)が1μm以下であると好ましく、100nm以下であることがより好ましい。
【0238】
[負極活物質]
負極活物質として、二次電池のキャリアイオンとの反応が可能な材料、キャリアイオンの挿入及び脱離が可能な材料、キャリアイオンとなる金属との合金化反応が可能な材料、キャリアイオンとなる金属の溶解及び析出が可能な材料、等を用いることが好ましい。
【0239】
以下に、負極活物質の一例について説明する。
【0240】
負極活物質として、シリコン、スズ、ガリウム、アルミニウム、ゲルマニウム、鉛、アンチモン、ビスマス、銀、亜鉛、カドミウム、インジウムから選ばれる一以上の元素を有する金属、または化合物を用いることができる。このような元素を用いた合金系化合物としては、例えば、MgSi、MgGe、MgSn、SnS、VSn、FeSn、CoSn、NiSn、CuSn、AgSn、AgSb、NiMnSb、CeSb、LaSn、LaCoSn、CoSb、InSb、及び、SbSn等が挙げられる。
【0241】
また、シリコンに、不純物元素として、リン、ヒ素、ホウ素、アルミニウム、及び、ガリウム等のうち一つまたは複数を添加し、低抵抗化した材料を用いてもよい。また、リチウムをプリドープしたシリコン材料を用いてもよい。プリドープの方法としては、フッ化リチウム、炭酸リチウム等とシリコンを混合してアニールする、リチウム金属とシリコンとのメカニカルアロイ、等の方法がある。また、電極として形成した後にリチウム金属等の電極と組み合わせて充放電反応によりリチウムをドープし、その後、ドープされた電極を用いて対極となる電極(例えば、プリドープされた負極に対して、正極)を組み合わせて二次電池を作製してもよい。
【0242】
負極活物質として、例えば、シリコンナノ粒子を用いることができる。シリコンナノ粒子の平均径は、例えば、好ましくは5nm以上1μm未満、より好ましくは10nm以上300nm以下、さらに好ましくは10nm以上100nm以下である。
【0243】
シリコンナノ粒子は結晶性を有してもよい。また、シリコンナノ粒子が、結晶性を有する領域と、非晶質の領域と、を有してもよい。
【0244】
シリコンを有する材料として、例えば、SiO(xは好ましくは2より小さく、より好ましくは0.5以上1.6以下)で表される材料を用いることができる。
【0245】
また、負極活物質として、黒鉛、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、及び、グラフェン化合物などの炭素系材料を用いることができる。
【0246】
また、負極活物質として、チタン、ニオブ、タングステン、及び、モリブデンから選ばれる一以上の元素を有する酸化物を用いることができる。
【0247】
また、負極活物質として、SnO、SnO、二酸化チタン(TiO)、リチウムチタン酸化物(LiTi12)、リチウム-黒鉛層間化合物(Li)、五酸化ニオブ(Nb)、酸化タングステン(WO)、酸化モリブデン(MoO)等の酸化物を用いることができる。
【0248】
また、負極活物質として、リチウムと遷移金属の複窒化物である、LiN型構造をもつLi3-xN(M=Co、Ni、Cu)を用いることができる。例えば、Li2.6Co0.4は大きな充放電容量(900mAh/g)を示し好ましい。
【0249】
リチウムと遷移金属の複窒化物を負極材料として用いると、正極材料としてリチウムイオンを含まないV、Cr等の材料と組み合わせることができ好ましい。なお、正極材料にリチウムイオンを含む材料を用いる場合でも、あらかじめ正極材料に含まれるリチウムイオンを脱離させることで、負極材料としてリチウムと遷移金属の複窒化物を用いることができる。
【0250】
また、コンバージョン反応が生じる材料を負極活物質として用いることもできる。例えば、酸化コバルト(CoO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化鉄(FeO)等の、リチウムと合金化反応を行わない遷移金属酸化物を負極活物質に用いてもよい。コンバージョン反応が生じる材料としては、さらに、Fe、CuO、CuO、RuO、Cr等の酸化物、CoS0.89、NiS、CuS等の硫化物、Zn、CuN、Ge等の窒化物、NiP、FeP、CoP等のリン化物、FeF、BiF等のフッ化物でも起こる。なお、上記フッ化物の電位は高いため、正極材料として用いてもよい。
【0251】
負極活物質として、上記に示す金属、材料、化合物、等を複数組み合わせて用いることができる。
【0252】
[正極活物質]
正極活物質として、例えば、オリビン型の結晶構造、層状岩塩型の結晶構造、または、スピネル型の結晶構造を有するリチウム含有材料等が挙げられる。
【0253】
本発明の一態様の二次電池には、層状の結晶構造を有する正極活物質を用いることが好ましい。
【0254】
層状の結晶構造としては、例えば、層状岩塩型の結晶構造が挙げられる。層状岩塩型の結晶構造を有するリチウム含有材料として、例えば、LiM(x>0かつy>0、より具体的には、例えば、y=2、かつ、0.8<x<1.2)で表されるリチウム含有材料を用いることができる。ここで、Mは金属元素であり、好ましくはコバルト、マンガン、ニッケル、及び、鉄から選ばれる一以上である。あるいは、Mは、例えば、コバルト、マンガン、ニッケル、鉄、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ランタン、銅、亜鉛から選ばれる二以上である。
【0255】
LiMで表されるリチウム含有材料として、例えば、LiCoO、LiNiO、及び、LiMnO等が挙げられる。また、LiNiCo1-x(0<x<1)で表されるNiCo系、LiMで表されるリチウム含有材料として、例えば、LiNiMn1-x(0<x<1)で表されるNiMn系、等が挙げられる。
【0256】
また、LiMOで表されるリチウム含有材料として、例えば、LiNiCoMn(x>0、y>0、0.8<x+y+z<1.2)で表されるNiCoMn系(NCMともいう)が挙げられる。具体的には、例えば、0.1x<y<8xかつ0.1x<z<8xを満たすことが好ましい。一例として、x、y及びzは、x:y:z=1:1:1またはその近傍の値を満たすことが好ましい。または一例として、x、y及びzは、x:y:z=5:2:3またはその近傍の値を満たすことが好ましい。または一例として、x、y及びzは、x:y:z=8:1:1またはその近傍の値を満たすことが好ましい。または一例として、x、y及びzは、x:y:z=6:2:2またはその近傍の値を満たすことが好ましい。または一例として、x、y及びzは、x:y:z=1:4:1またはその近傍の値を満たすことが好ましい。
【0257】
また、層状岩塩型の結晶構造を有するリチウム含有材料として、例えば、LiMnO、及び、LiMnO-LiMeO(MeはCo、Ni、Mn)等が挙げられる。
【0258】
上記のリチウム含有材料に代表されるような層状の結晶構造を有する正極活物質では、体積あたりのリチウム含有量が多く、体積あたりの容量が高い二次電池を実現することができる場合がある。このような正極活物質では、充電に伴う体積あたりのリチウムの脱離量も多く、安定した充放電を行うためには、脱離した後の結晶構造の安定化が求められる。また充放電において結晶構造が崩れることにより高速充電または高速放電が阻害される場合がある。
【0259】
正極活物質としてLiMn等のマンガンを含むスピネル型の結晶構造を有するリチウム含有材料に、ニッケル酸リチウム(LiNiOまたはLiNi1-x(0<x<1)(M=Co、Al等))を混合すると好ましい。該構成とすることによって、二次電池の特性を向上させることができる。
【0260】
また、正極活物質として、組成式LiMnで表すことができるリチウムマンガン複合酸化物を用いることができる。ここで、元素Mは、リチウム、マンガン以外から選ばれた金属元素、またはシリコン、リンを用いることが好ましく、ニッケルであることがさらに好ましい。また、リチウムマンガン複合酸化物の粒子全体を測定する場合、放電時に0<a/(b+c)<2、c>0、かつ、0.26≦(b+c)/d<0.5を満たすことが好ましい。なお、リチウムマンガン複合酸化物の粒子全体の金属、シリコン、リン等の組成は、例えばICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析計)を用いて測定することができる。またリチウムマンガン複合酸化物の粒子全体の酸素の組成は、例えばEDX(エネルギー分散型X線分析法)を用いて測定することが可能である。また、ICP-MS分析と併用して、融解ガス分析、XAFS(X線吸収微細構造)分析の価数評価を用いることで求めることができる。なお、リチウムマンガン複合酸化物とは、少なくともリチウムとマンガンとを含む酸化物をいい、クロム、コバルト、アルミニウム、ニッケル、鉄、マグネシウム、モリブデン、亜鉛、インジウム、ガリウム、銅、チタン、ニオブ、シリコン、及びリンなどからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を含んでいてもよい。
【0261】
<正極活物質の構造>
コバルト酸リチウム(LiCoO)などの層状岩塩型の結晶構造を有する材料は、放電容量が高く、二次電池の正極活物質として優れることが知られている。層状岩塩型の結晶構造を有する材料として、例えば、LiMOで表される複合酸化物が挙げられる。金属Mは金属Me1を含む。金属Me1は、コバルトを含む1種以上の金属である。また、金属Mは、金属Me1に加えて、さらに金属を含むことができる。金属は、マグネシウム、カルシウム、ジルコニウム、ランタン、バリウム、銅、カリウム、ナトリウム、亜鉛から選ばれる一以上の金属である。
【0262】
正極活物質中に挿入脱離可能なリチウムがどの程度残っているかを、組成式中のx、例えばLiCoO中のx、またはLiMO中のxで示す。本明細書中のLiCoOは適宜LiMOに読み替えることができる。二次電池中の正極活物質の場合、x=充電容量/理論容量とすることができる。例えばLiCoOを正極活物質に用いた二次電池を219.2mAh/g充電した場合、Li0.8CoOまたはx=0.8ということができる。LiCoO中のxが小さいとは、例えば0.1<x≦0.24をいう。
【0263】
遷移金属化合物におけるヤーン・テラー効果は、遷移金属のd軌道の電子の数により、その効果の強さが異なることが知られている。
【0264】
ニッケルを有する化合物においては、ヤーン・テラー効果により歪みが生じやすい場合がある。よって、LiNiOにおいてxが小さくなるような充放電を行った場合、歪みに起因する結晶構造の崩れが生じる懸念がある。LiCoOにおいてはヤーン・テラー効果の影響が小さいことが示唆され、LiCoO中のxが小さいときの耐性がより優れる場合があり好ましい。
【0265】
図16及び図17を用いて、正極活物質について説明する。
【0266】
<結晶構造>
≪LiCoO中のxが1のとき≫
本発明の一態様の正極活物質は放電状態、つまりLiCoO中のx=1の場合に、空間群R-3mに帰属する層状岩塩型の結晶構造を有することが好ましい。層状岩塩型の複合酸化物は、放電容量が高く、二次元的なリチウムイオンの拡散経路を有しリチウムイオンの挿入/脱離反応に適しており、二次電池の正極活物質として優れる。そのため特に、正極活物質の体積の大半を占める内部が層状岩塩型の結晶構造を有することが好ましい。図16に層状岩塩型の結晶構造をR-3m O3を付して示す。
【0267】
表層部は充電時にリチウムイオンが最初に離脱する領域であり、内部よりもリチウム濃度が低くなりやすい領域である。また表層部が有する正極活物質の表面の原子は、一部の結合が切断された状態ともいえる。そのため表層部は不安定になりやすく、結晶構造の劣化が始まりやすい領域といえる。一方で表層部を十分に安定にできれば、LiCoO中のxが小さいときでも、例えばxが0.24以下でも内部の遷移金属Mと酸素の8面体からなる層状構造を壊れにくくすることができる。さらには、内部の遷移金属Mと酸素の8面体からなる層のずれを抑制することができる。
【0268】
表層部を安定な組成及び結晶構造とするために、表層部は添加元素Aを有することが好ましく、添加元素Aを複数有することがより好ましい。また表層部は内部よりも添加元素Aから選ばれた一または二以上の濃度が高いことが好ましい。また正極活物質が有する添加元素Aから選ばれた一または二以上は濃度勾配を有していることが好ましい。また正極活物質は添加元素Aによって分布が異なっていることがより好ましい。例えば添加元素Aによって濃度ピークの表面からの深さが異なっていることがより好ましい。ここでいう濃度ピークとは、表層部または表面から50nm以下における濃度の極大値をいうこととする。
【0269】
例えば添加元素Aの一部、マグネシウム、フッ素、チタン、ケイ素、リン、ホウ素、カルシウム等は、内部から表面に向かって高くなる濃度勾配を有することが好ましい。このような濃度勾配を有する元素を添加元素Xと呼ぶこととする。
【0270】
例えば添加元素Xの一つであるマグネシウムは2価で、マグネシウムイオンは層状岩塩型の結晶構造における遷移金属Mサイトよりもリチウムサイトに存在する方が安定であるため、リチウムサイトに入りやすい。マグネシウムが表層部のリチウムサイトに適切な濃度で存在することで、層状岩塩型の結晶構造を保持しやすくできる。これはリチウムサイトに存在するマグネシウムが、CoO層同士を支える柱として機能するためと推測される。またマグネシウムが存在することで、LiCoO中のxが例えば0.24以下の状態においてマグネシウムの周囲の酸素の離脱を抑制することができる。またマグネシウムが存在することで正極活物質の密度が高くなることが期待できる。また表層部のマグネシウム濃度が高いと、電解液が分解して生じたフッ酸に対する耐食性が向上することも期待できる。
【0271】
マグネシウムは、適切な濃度であれば充放電に伴うリチウムの挿入及び離脱に悪影響を及ぼさず上記のメリットを享受できる。しかしマグネシウムが過剰であるとリチウムの挿入及び離脱に悪影響が出る恐れがある。さらに結晶構造の安定化への効果が小さくなってしまう場合がある。これはマグネシウムが、リチウムサイトに加えて遷移金属Mサイトにも入るようになるためと考えられる。加えて、リチウムサイトにも遷移金属Mサイトにも置換しない、不要なマグネシウム化合物(酸化物及びフッ化物等)が正極活物質の表面等に偏析し、二次電池の抵抗成分となる恐れがある。また正極活物質のマグネシウム濃度が高くなるのに伴って正極活物質の放電容量が減少することがある。これはリチウムサイトにマグネシウムが入りすぎ、充放電に寄与するリチウム量が減少するためと考えられる。
【0272】
そのため、正極活物質全体が有するマグネシウムが適切な量であることが好ましい。例えばマグネシウムの原子数はコバルトの原子数の0.001倍以上0.1倍以下が好ましく、0.01倍より大きく0.04倍未満がより好ましく、0.02倍程度がさらに好ましい。ここでいう正極活物質全体が有するマグネシウムの量とは、例えばGD-MS、ICP-MS等を用いて正極活物質の全体の元素分析を行った値であってもよいし、正極活物質の作製の過程における原料の配合の値に基づいたものであってもよい。
【0273】
また添加元素Aの一つであるアルミニウムは層状岩塩型の結晶構造における遷移金属Mサイトに存在しうる。アルミニウムは3価の典型元素であり価数が変化しないため、充放電の際もアルミニウム周辺のリチウムは移動しにくい。そのためアルミニウムとその周辺のリチウムが柱として機能し、結晶構造の変化を抑制しうる。またアルミニウムは周囲の遷移金属Mの溶出を抑制し、連続充電耐性を向上する効果がある。またAl-Oの結合はCo-O結合よりも強いため、アルミニウムの周囲の酸素の離脱を抑制することができる。これらの効果により、熱安定性が向上する。そのため添加元素Aとしてアルミニウムを有すると、二次電池に用いたときの安全性を向上できる。また充放電を繰り返しても結晶構造が崩れにくい正極活物質とすることができる。
【0274】
一方でアルミニウムが過剰であるとリチウムの挿入及び脱離に悪影響が出る恐れがある。
【0275】
そのため正極活物質全体が有するアルミニウムが適切な量であることが好ましい。例えば正極活物質の全体が有するアルミニウムの原子数は、コバルトの原子数の0.05%以上4%以下が好ましく、0.1%以上2%以下が好ましく、0.3%以上1.5%以下がより好ましい。または0.05%以上2%以下が好ましい。または0.1%以上4%以下が好ましい。ここでいう正極活物質全体が有する量とは例えば、GD-MS、ICP-MS等を用いて正極活物質の全体の元素分析を行った値であってもよいし、正極活物質の作製の過程における原料の配合の値に基づいてもよい。
【0276】
例えば層状岩塩型の内部から、岩塩型、または岩塩型と層状岩塩型の両方の特徴を有する表面及び表層部に向かって結晶構造が連続的に変化することが好ましい。または岩塩型、または岩塩型と層状岩塩型の両方の特徴を有する表層部と、層状岩塩型の内部の配向が概略一致していることが好ましい。
【0277】
なお本明細書等において、リチウムとコバルトをはじめとする遷移金属Mを含む複合酸化物が有する、空間群R-3mに帰属する層状岩塩型の結晶構造とは、陽イオンと陰イオンが交互に配列する岩塩型のイオン配列を有し、遷移金属Mとリチウムが規則配列して二次元平面を形成するため、リチウムの二次元的拡散が可能である結晶構造をいう。なお陽イオンまたは陰イオンの欠損等の欠陥があってもよい。また、層状岩塩型結晶構造は、厳密に言えば、岩塩型結晶の格子が歪んだ構造となっている場合がある。
【0278】
また岩塩型の結晶構造とは、空間群Fm-3mをはじめとする立方晶系の結晶構造を有し、陽イオンと陰イオンが交互に配列している構造をいう。なお陽イオンまたは陰イオンの欠損があってもよい。
【0279】
また層状岩塩型と岩塩型の結晶構造の特徴の両方を有することは、電子線回折、TEM(Transmission Electron Microscope、透過電子顕微鏡)像、断面STEM(Scanning Transmission Electron Microscope、走査透過電子顕微鏡)像等によって判断することができる。
【0280】
層状岩塩型結晶、及び岩塩型結晶の陰イオンは立方最密充填構造(面心立方格子構造)をとる。後述するO3’型結晶(擬スピネル型結晶とも呼ぶ)も、陰イオンは立方最密充填構造をとると推定される。そのため層状岩塩型結晶と岩塩型結晶が接するとき、陰イオンにより構成される立方最密充填構造の向きが揃う結晶面が存在する。
【0281】
または、以下のように説明することもできる。立方晶の結晶構造の{111}面における陰イオンは三角格子を有する。層状岩塩型は空間群R-3mであって、菱面体構造であるが、構造の理解を容易にするため一般に複合六方格子で表現され、層状岩塩型の(000l)面は六角格子を有する。立方晶{111}面の三角格子は、層状岩塩型の(000l)面の六角格子と同様の原子配列を有する。両者の格子が整合性を持つことを、立方最密充填構造の向きが揃うということができる。
【0282】
ただし、層状岩塩型結晶及びO3’型結晶の空間群はR-3mであり、岩塩型結晶の空間群Fm-3m(一般的な岩塩型結晶の空間群)とは異なるため、上記の条件を満たす結晶面のミラー指数は層状岩塩型結晶及びO3’型結晶と、岩塩型結晶では異なる。本明細書では、層状岩塩型結晶、O3’型及び岩塩型結晶において、陰イオンにより構成される立方最密充填構造の向きが揃うとき、結晶の配向が概略一致する、と言う場合がある。
【0283】
二つの領域の結晶の配向が概略一致することは、TEM像、STEM像、HAADF-STEM(High-angle Annular Dark Field Scanning TEM、高角散乱環状暗視野走査透過電子顕微鏡)像、ABF-STEM(Annular Bright-Field Scanning Transmission Electron Microscopy、環状明視野走査透過電子顕微鏡)像、電子線回折、TEM像及びSTEM像等のFFT等から判断することができる。XRD(X-ray Diffraction、X線回折)、電子線回折、中性子線回折等も判断の材料にすることができる。
【0284】
図17にR-3m O3を付してLiCoO中のx=1のコバルト酸リチウムが有する結晶構造を示す。この結晶構造はリチウムが8面体(Octahedral)サイトを占有し、ユニットセル中にCoO層が3層存在する。そのためこの結晶構造をO3型結晶構造と呼ぶ場合がある。なお、CoO層とはコバルトに酸素が6配位した8面体構造が、稜共有の状態で平面に連続した構造をいうこととする。これをコバルトと酸素の8面体からなる層、という場合もある。
【0285】
また従来のコバルト酸リチウムは、x=0.5程度のときリチウムの対称性が高まり、単斜晶系の空間群P2/mに帰属する結晶構造を有することが知られている。この構造はユニットセル中にCoO層が1層存在する。そのためO1型、または単斜晶O1型と呼ぶ場合がある。
【0286】
またx=0のときの正極活物質は、三方晶系の空間群P-3m1の結晶構造を有し、やはりユニットセル中にCoO層が1層存在する。そのためこの結晶構造を、O1型、または三方晶O1型と呼ぶ場合がある。また三方晶を複合六方格子に変換し、六方晶O1型と呼ぶ場合もある。
【0287】
またx=0.12程度のときの従来のコバルト酸リチウムは、空間群R-3mの結晶構造を有する。この構造は、三方晶O1型のようなCoOの構造と、R-3m O3のようなLiCoOの構造と、が交互に積層された構造ともいえる。そのためこの結晶構造を、H1-3型結晶構造と呼ぶ場合がある。なお、実際のリチウムの挿入離脱にはムラが生じうるため、実験的にはx=0.25程度からH1-3型結晶構造が観測される。また、実際にはH1-3型結晶構造は、ユニットセルあたりのコバルト原子の数が他の構造の2倍となっている。しかし図17をはじめ本明細書では、他の結晶構造と比較しやすくするためH1-3型結晶構造のc軸をユニットセルの1/2にした図で示すこととする。
【0288】
H1-3型結晶構造は、一例として、ユニットセルにおけるコバルトと酸素の座標を、Co(0、0、0.42150±0.00016)、O(0、0、0.27671±0.00045)、O(0、0、0.11535±0.00045)と表すことができる。O及びOはそれぞれ酸素原子である。正極活物質が有する結晶構造をいずれのユニットセルを用いて表すべきかは、例えばXRDのリートベルト解析により判断することができる。この場合はGOF(goodness of fit)の値が小さくなるユニットセルを採用すればよい。
【0289】
LiCoO中のxが0.24以下になるような充電と、放電とを繰り返すと、従来のコバルト酸リチウムはH1-3型結晶構造と、放電状態のR-3m O3の構造と、の間で結晶構造の変化(つまり、非平衡な相変化)を繰り返すことになる。
【0290】
しかしながら、これらの2つの結晶構造は、CoO層のずれが大きい。図17に点線及び矢印で示すように、H1-3型結晶構造では、CoO層が放電状態のR-3m O3から大きくずれている。このようなダイナミックな構造変化は、結晶構造の安定性に悪影響を与えうる。
【0291】
さらにこれらの2つの結晶構造は体積の差も大きい。同数のコバルト原子あたりで比較した場合、H1-3型結晶構造と放電状態のR-3m O3型結晶構造の体積の差は3.5%を超え、代表的には3.9%以上である。
【0292】
加えて、H1-3型結晶構造が有する、三方晶O1型のようにCoO層が連続した構造は不安定である可能性が高い。
【0293】
そのため、xが0.24以下になるような充放電を繰り返すと従来のコバルト酸リチウムの結晶構造は崩れていく。結晶構造の崩れが、サイクル特性の悪化を引き起こす。これは、結晶構造が崩れることで、リチウムが安定して存在できるサイトが減少し、またリチウムの挿入脱離が難しくなるためである。
【0294】
図16中に点線で示すように、放電状態のR-3m(O3)と、O3’型結晶構造とではCoO層のずれがほとんどない。
【0295】
また放電状態のR-3m(O3)と、O3’型結晶構造の同数のコバルト原子あたりの体積の差は2.5%以下、より詳細には2.2%以下、代表的には1.8%である。
【0296】
このように本発明の一態様の正極活物質では、LiCoO中のxが小さいとき、つまり多くのリチウムが離脱したときの結晶構造の変化が、従来の正極活物質よりも抑制されている。また同数のコバルト原子あたりで比較した場合の体積の変化も抑制されている。そのため本発明の一態様の正極活物質は、xが0.24以下になるような充放電を繰り返しても結晶構造が崩れにくい。そのため、本発明の一態様の正極活物質は充放電サイクルにおける充放電容量の低下が抑制される。また従来の正極活物質よりも多くのリチウムを安定して利用できるため、本発明の一態様の正極活物質は重量あたり及び体積あたりの放電容量が大きい。そのため本発明の一態様の正極活物質を用いることで、重量あたり及び体積あたりの放電容量の高い二次電池を作製できる。
【0297】
なお正極活物質は、LiCoO中のxが0.15以上0.24以下のときO3’型の結晶構造を有する場合があることが確認され、xが0.24を超えて0.27以下でもO3’型の結晶構造を有すると推定されている。しかし結晶構造はLiCoO中のxだけでなく充放電サイクル数、充放電電流、温度、電解質等の影響を受けるため、必ずしも上記のxの範囲に限定されない。
【0298】
そのため正極活物質はLiCoO中のxが0.1を超えて0.24以下のとき、正極活物質の内部のすべてがO3’型の結晶構造でなくてもよい。他の結晶構造を含んでいてもよいし、一部が非晶質であってもよい。
【0299】
またLiCoO中のxが小さい状態にするには、一般的には高い充電電圧で充電する必要がある。そのためLiCoO中のxが小さい状態を、高い充電電圧で充電した状態と言い換えることができる。例えばリチウム金属の電位を基準として4.6V以上の電圧で、25℃の環境でCC/CV充電すると、従来の正極活物質ではH1-3型結晶構造が現れる。そのためリチウム金属の電位を基準として4.6V以上の充電電圧は高い充電電圧ということができる。また本明細書等において、特に言及しない場合、充電電圧はリチウム金属の電位を基準として表すとする。
【0300】
そのため本発明の一態様の正極活物質は、高い充電電圧、例えば25℃において4.6V以上の電圧で充電しても、R-3m O3の対称性を有する結晶構造を保持できるため好ましい、と言い換えることができる。またより高い充電電圧、例えば25℃において4.65V以上4.7V以下の電圧で充電したときO3’型の結晶構造を取り得るため好ましい、と言い換えることができる。
【0301】
正極活物質でもさらに充電電圧を高めるとようやく、H1-3型結晶が観測される場合がある。また上述したように結晶構造は充放電サイクル数、充放電電流、電解質等の影響を受けるため、充電電圧がより低い場合、例えば充電電圧が25℃において4.5V以上4.6V未満でも、本発明の一態様の正極活物質はO3’型結晶構造を取り得る場合が有る。
【0302】
なお、二次電池において例えば負極活物質として黒鉛を用いる場合、上記よりも黒鉛の電位の分だけ二次電池の電圧が低下する。黒鉛の電位はリチウム金属の電位を基準として0.05V乃至0.2V程度である。そのため負極活物質として黒鉛を用いた二次電池の場合は、上記の電圧から黒鉛の電位を差し引いた電圧のとき同様の結晶構造を有する。
【0303】
また、図16に示すように、O3’型の結晶構造のa軸の格子定数は2.817×10-10m、c軸の格子定数は13.781×10-10mである。
【0304】
なお、O3’型の結晶構造は、ユニットセルにおけるコバルトと酸素の座標を、Co(0,0,0.5)、O(0,0,x)、0.20≦x≦0.25の範囲内で示すことができる。
【0305】
<正極活物質の粒径>
正極活物質の粒径は、大きすぎるとリチウムの拡散が難しくなる、集電体に塗工したときに活物質層の表面が粗くなりすぎる、等の問題がある。一方、小さすぎると、集電体への塗工時に活物質層を担持しにくくなる、電解液との反応が過剰に進む等の問題点も生じる。そのため、D50は、1μm以上100μm以下が好ましく、2μm以上40μm以下であることがより好ましく、5μm以上30μm以下がさらに好ましい。または1μm以上40μm以下が好ましい。または1μm以上30μm以下が好ましい。または2μm以上100μm以下が好ましい。または2μm以上30μm以下が好ましい。または5μm以上100μm以下が好ましい。または5μm以上40μm以下が好ましい。
【0306】
<分析方法>
ある正極活物質が、LiCoO中のxが小さいときO3’型の結晶構造を有する本発明の一態様の正極活物質であるか否かは、LiCoO中のxが小さい正極活物質を有する正極を、XRD、電子線回折、中性子線回折、電子スピン共鳴(ESR)、核磁気共鳴(NMR)等を用いて解析することで判断できる。特にXRDは、正極活物質が有するコバルト等の遷移金属の対称性を高分解能で解析できる、結晶性の高さ及び結晶の配向性を比較できる、格子の周期性歪み及び結晶子サイズの解析ができる、二次電池を解体して得た正極をそのまま測定しても十分な精度を得られる、等の点で好ましい。
【0307】
正極活物質は、これまで述べたようにLiCoO中のxが1のときと、0.24以下のときと、で結晶構造の変化が少ないことが特徴である。高電圧で充電したとき、結晶構造の変化が大きな結晶構造が50%以上を占める材料は、高電圧の充放電に耐えられないため好ましくない。
【0308】
また、添加元素Aを添加するだけではO3’型の結晶構造をとらない場合があることに注意が必要である。例えばマグネシウム及びフッ素を有するコバルト酸リチウム、またはマグネシウム及びアルミニウムを有するコバルト酸リチウム、という点で共通していても、添加元素Aの濃度及び分布次第で、LiCoO中のxが0.24以下でO3’型の結晶構造が60%以上になる場合と、H1-3型結晶構造が50%以上を占める場合と、がある。
【0309】
また本発明の一態様の正極活物質でも、xが0.1以下など小さすぎる場合、または充電電圧が4.9Vを超えるような条件ではH1-3型または三方晶O1型の結晶構造が生じる場合もある。そのため、本発明の一態様の正極活物質であるか否かを判断するには、XRDをはじめとする結晶構造についての解析と、充電容量または充電電圧等の情報が必要である。
【0310】
ただし、xが小さい状態の正極活物質は、大気に触れると結晶構造の変化を起こす場合がある。例えばO3’型の結晶構造からH1-3型結晶構造に変化する場合がある。そのため、結晶構造の分析に供するサンプルはすべてアルゴン雰囲気等の不活性雰囲気でハンドリングすることが好ましい。
【0311】
またある正極活物質が有する添加元素Aの分布が、上記で説明したような状態であるか否かは、例えばXPS、EDX、EPMA(電子プローブ微小分析)等を用いて解析することで判断できる。
【0312】
また表層部、結晶粒界等の結晶構造は、正極活物質の断面の電子線回折等で分析することができる。
【0313】
〔電解質〕
二次電池に液状の電解質(電解液ともいう)を用いる場合、例えば、電解質として、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン(DME)、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、メチルジグライム、アセトニトリル、ベンゾニトリル、テトラヒドロフラン、スルホラン、スルトン等の1種、またはこれらのうちの2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
【0314】
また、電解質はフッ素を含むことが好ましい。フッ素を含む電解質として、例えば、フッ素化環状カーボネートの一種または二種以上と、リチウムイオンと、を有する電解質を用いることができる。フッ素化環状カーボネートは不燃性を向上させ、リチウムイオン二次電池の安全性を高めることができる。
【0315】
フッ素化環状カーボネートとして、フッ化エチレンカーボネート、例えば、モノフルオロエチレンカーボネート(炭酸フルオロエチレン、FEC、F1EC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC、F2EC)、トリフルオロエチレンカーボネート(F3EC)、テトラフルオロエチレンカーボネート(F4EC)などを用いることができる。なお、DFECには、シスー4,5、トランス-4,5などの異性体がある。電解質として、フッ素化環状カーボネートを一種または二種以上を用いてリチウムイオンを溶媒和させて、充放電時に電極が含む電解質内において輸送させることが低温で動作させる上で重要である。フッ素化環状カーボネートを少量の添加剤としてではなく、充放電時のリチウムイオンの輸送に寄与させると低温での動作が可能となる。二次電池内においてリチウムイオンは数個以上数十個程度の塊で移動する。
【0316】
フッ素化環状カーボネートを電解質に用いることで、電極が含む電解質内において溶媒和しているリチウムイオンが活物質粒子へ入る際に必要となる脱溶媒和のエネルギーを小さくする。この脱溶媒和のエネルギーを小さくできれば、低温範囲においてもリチウムイオンが活物質粒子へ挿入あるいは脱離しやすくなる。なお、リチウムイオンは溶媒和した状態のまま移動することもあるが、配位する溶媒分子が入れ替わるホッピング現象が生じる場合もある。リチウムイオンが脱溶媒和しやすくなると、ホッピング現象による移動がしやすくなり、リチウムイオンの移動がしやすくなる場合がある。二次電池の充放電における電解質の分解生成物が、活物質の表面にまとわりつくことにより、二次電池の劣化が起こる懸念がある。しかしながら電解質がフッ素を有する場合には電解質の粘度が低く、電解質の分解生成物は活物質の表面に付着しづらくなる。このため、二次電池の劣化を抑制することができる。
【0317】
溶媒和したリチウムイオンは、電解質において、複数がクラスタを形成し、負極内、正極と負極の間、正極内、等を移動する場合がある。
【0318】
以下に、フッ素化環状カーボネートの構造式の一例を示す。
【0319】
モノフルオロエチレンカーボネート(FEC)は、下記式(1)で表される。
【0320】
【化1】
【0321】
テトラフルオロエチレンカーボネート(F4EC)は、下記式(2)で表される。
【0322】
【化2】
【0323】
ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)は、下記式(3)で表される。
【0324】
【化3】
【0325】
また、電解質の溶媒として、難燃性及び難揮発性であるイオン液体(常温溶融塩)を一つまたは複数用いることで、二次電池の内部領域短絡、または、過充電等による内部領域の温度上昇が生じても、二次電池の破裂及び発火の一方または双方を防ぐことができる。イオン液体は、カチオンとアニオンからなり、有機カチオンとアニオンとを含む。有機カチオンとして、四級アンモニウムカチオン、三級スルホニウムカチオン、及び四級ホスホニウムカチオン等の脂肪族オニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン及びピリジニウムカチオン等の芳香族カチオンが挙げられる。また、アニオンとして、1価のアミド系アニオン、1価のメチド系アニオン、フルオロスルホン酸アニオン、パーフルオロアルキルスルホン酸アニオン、テトラフルオロボレートアニオン、パーフルオロアルキルボレートアニオン、ヘキサフルオロホスフェートアニオン、及び、パーフルオロアルキルホスフェートアニオン等が挙げられる。
【0326】
イミダゾリウムカチオンを有するイオン液体として、例えば、下記一般式(G1)で表されるイオン液体を用いることができる。一般式(G1)中において、Rは、炭素数が1以上4以下のアルキル基を表し、R乃至Rは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数が1以上4以下のアルキル基を表し、Rは、炭素数が1以上6以下のアルキル基、または、C、O、Si、N、S、Pの原子から選択された2つ以上で構成される主鎖を表す。また、Rの主鎖に置換基が導入されていてもよい。導入される置換基としては、例えば、アルキル基、及び、アルコキシ基などが挙げられる。
【0327】
【化4】
【0328】
一般式(G1)で表されるカチオンの一例として、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-メチル-3-(プロポキシエチル)イミダゾリウムカチオン、及び、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン等が挙げられる。
【0329】
ピリジニウムカチオンを有するイオン液体として、例えば、下記一般式(G2)で表されるイオン液体を用いてもよい。一般式(G2)中において、Rは、炭素数が1以上6以下のアルキル基、または、C、O、Si、N、S、Pの原子から選択された2つ以上で構成される主鎖を表し、R乃至R11は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数が1以上4以下のアルキル基を表す。また、Rの主鎖に置換基が導入されていてもよい。導入される置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基などが挙げられる。
【0330】
【化5】
【0331】
四級アンモニウムカチオンを有するイオン液体として、例えば、下記一般式(G3)~一般式(G6)で表されるイオン液体を用いることができる。
【0332】
【化6】
【0333】
一般式(G3)中、R28乃至R31は、それぞれ独立に、炭素数が1以上20以下のアルキル基、メトキシ基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、または水素原子のいずれかを表す。
【0334】
【化7】
【0335】
一般式(G4)中、R12及びR17は、それぞれ独立に、炭素数が1以上3以下のアルキル基を表し、R13乃至R16は、それぞれ独立に、水素原子、または、炭素数が1以上3以下のアルキル基のいずれかを表す。一般式(G4)で表されるカチオンの一例として、1-メチル-1-プロピルピロリジニウムカチオンなどがある。
【0336】
【化8】
【0337】
一般式(G5)中、R18及びR24は、それぞれ独立に、炭素数が1以上3以下のアルキル基を表し、R19乃至R23は、それぞれ独立に、水素原子、または、炭素数が1以上3以下のアルキル基のいずれかを表す。一般式(G5)で表されるカチオンの一例として、N-メチル-N-プロピルピペリジニウムカチオン、及び、1,3-ジメチル-1-プロピルピペリジニウムカチオンなどがある。
【0338】
【化9】
【0339】
一般式(G6)中、n及びmは1以上3以下である。αは0以上6以下とし、nが1の場合、αは0以上4以下であり、nが2の場合、αは0以上5以下であり、nが3の場合、αは0以上6以下である。βは0以上6以下とし、mが1の場合、βは0以上4以下であり、mが2の場合、βは0以上5以下であり、mが3の場合、βは0以上6以下である。なお、αまたはβが0であるとは、無置換であることを表す。また、αとβが共に0である場合は除くものとする。XまたはYは、置換基であり、炭素数が1以上4以下の直鎖状もしくは側鎖状のアルキル基、炭素数が1以上4以下の直鎖状もしくは側鎖状のアルコキシ基、または、炭素数が1以上4以下の直鎖状もしくは側鎖状のアルコキシアルキル基を表す。
【0340】
三級スルホニウムカチオンを有するイオン液体として、例えば、下記一般式(G7)で表されるイオン液体を用いることができる。一般式(G7)中において、R25乃至R27は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数が1以上4以下のアルキル基、またはフェニル基を表す。または、R25乃至R27の少なくとも一つに、C、O、Si、N、S、Pの原子から選択された2つ以上で構成される主鎖を用いてもよい。
【0341】
【化10】
【0342】
四級ホスホニウムカチオンを有するイオン液体として、例えば、下記一般式(G8)で表されるイオン液体を用いることができる。一般式(G8)中において、R32乃至R35は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数が1以上4以下のアルキル基、またはフェニル基を表す。または、R32乃至R35の少なくとも一つに、C、O、Si、N、S、Pの原子から選択された2つ以上で構成される主鎖を用いてもよい。
【0343】
【化11】
【0344】
一般式(G1)乃至一般式(G8)に示すAとして、1価のアミド系アニオン、1価のメチド系アニオン、フルオロスルホン酸アニオン、パーフルオロアルキルスルホン酸アニオン、テトラフルオロボレートアニオン、パーフルオロアルキルボレートアニオン、ヘキサフルオロホスフェートアニオン、及びパーフルオロアルキルホスフェートアニオン等の一以上を用いることができる。
【0345】
1価のアミド系アニオンとしては、(C2n+1SO(nは0以上3以下)、1価の環状のアミド系アニオンとしては、(CFSOなどを用いることができる。1価のメチド系アニオンとしては、(C2n+1SO(nは0以上3以下)、1価の環状のメチド系アニオンとしては、(CFSO(CFSO)などを用いることができる。フルオロアルキルスルホン酸アニオンとしては、(C2m+1SO(mは0以上4以下)などが挙げられる。フルオロアルキルボレートアニオンとしては、{BF(C2m+1-k4-n(nは0以上3以下、mは1以上4以下、kは0以上2m以下)などが挙げられる。フルオロアルキルホスフェートアニオンとしては、{PF(C2m+1-k6-n(nは0以上5以下、mは1以上4以下、kは0以上2m以下)などが挙げられる。
【0346】
また、一価のアミド系アニオンとして、例えば、ビス(フルオロスルホニル)アミドアニオン及びビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミドアニオンの一以上を用いることができる。
【0347】
また、イオン液体は、ヘキフルオロホスフェートアニオン及びテトラフルオロボレートアニオンの一以上を有してもよい。
【0348】
以降、(FSOで表されるアニオンをFSAアニオン、(CFSOで表されるアニオンをTFSAアニオンと表す場合がある。
【0349】
本発明の一態様の二次電池は、例えば、リチウムイオンをキャリアイオンとして有する。また、本発明の一態様の二次電池は、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどのアルカリ金属イオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン、ベリリウムイオン、マグネシウムイオンなどのアルカリ土類金属イオンをキャリアイオンとして有していてもよい。
【0350】
キャリアイオンとしてリチウムイオンを用いる場合には、例えば、電解質はリチウム塩を含む。リチウム塩として例えば、LiPF、LiClO、LiAsF、LiBF、LiAlCl、LiSCN、LiBr、LiI、LiSO、Li10Cl10、Li12Cl12、LiCFSO、LiCSO、LiC(CFSO、LiC(CSO、LiN(CFSO、LiN(CSO)(CFSO)、LiN(CSO等を用いることができる。
【0351】
本明細書において、電解質は、固体、液体、または半固体の材料などを含む総称である。
【0352】
二次電池内に存在する界面、例えば活物質と電解質との界面で劣化が生じやすい。本発明の一態様の二次電池においては、フッ素を有する電解質を有することで、活物質と電解質との界面で生じうる、劣化、代表的には電解質の変質または電解質の高粘度化を防ぐことができる。また、フッ素を有する電解質に対して、バインダ及びグラフェン化合物などをまとわりつかせる、または保持させる構成としてもよい。当該構成とすることで、電解質の粘度を低下させた状態、別言すると電解質のさらさらな状態を維持することが可能となり、二次電池の信頼性を向上させることができる。フッ素が2つ結合しているDFEC及び4つ結合しているF4ECは、それぞれ、フッ素が1つ結合しているFECに比べて、粘度が低く、さらさらであり、リチウムとの配位結合が弱くなる。従って、活物質粒子に粘度の高い分解物が付着することを低減することができる。活物質粒子に粘度の高い分解物が付着する、あるいはまとわりつくと活物質粒子の界面でリチウムイオンが移動しにくくなる。フッ素を有する電解質は、溶媒和することで活物質(正極活物質または負極活物質)表面につく分解物の生成を緩和する。また、フッ素を有する電解質を用いることにより、分解物が付着することを防ぐことでデンドライトの発生及び成長を防止することができる。
【0353】
本発明の一態様の二次電池は、フッ素を有する電解質を主成分として用いることも特徴の一つであり、フッ素を有する電解質は、5体積%以上、10体積%以上、好ましくは30体積%以上100体積%以下とする。
【0354】
本明細書において、電解質の主成分とは、二次電池の電解質全体の5体積%以上であることを指している。また、ここでいう二次電池の電解質全体の5体積%以上とは二次電池の製造時に計量された電解質全体の占める割合を指している。また、二次電池を作製後に分解する場合には、複数種類の電解質がそれぞれどれくらいの割合であったかを定量することは困難であるが、ある一種類の有機化合物が電解質全体の5体積%以上であるかは判定することができる。
【0355】
フッ素を有する電解質を用いることで、幅広い温度範囲、具体的には、-40℃以上150℃以下、好ましくは-40℃以上85℃以下で動作可能な二次電池を実現することができる。
【0356】
また、電解質にビニレンカーボネート、プロパンスルトン(PS)、tert-ブチルベンゼン(TBB)、リチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)、または、スクシノニトリル、アジポニトリル等のジニトリル化合物などの添加剤を添加してもよい。添加剤の濃度は、例えば電解質全体に対して0.1体積%以上5体積%未満とすればよい。
【0357】
また、電解質は上記の他に、γーブチロラクトン、アセトニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等の非プロトン性有機溶媒の一つまたは複数を有してもよい。
【0358】
また、電解質がゲル化される高分子材料を有することで、漏液性等に対する安全性が高まる。ゲル化される高分子材料の代表例としては、シリコーンゲル、アクリルゲル、アクリロニトリルゲル、ポリエチレンオキサイド系ゲル、ポリプロピレンオキサイド系ゲル、及び、フッ素系ポリマーのゲル等がある。
【0359】
高分子材料としては、例えばポリエチレンオキシド(PEO)などのポリアルキレンオキシド構造を有するポリマー、PVDF、ポリアクリロニトリル等、及びそれらを含む共重合体等を用いることができる。例えばPVDFとヘキサフルオロプロピレン(HFP)の共重合体であるPVDF-HFPを用いることができる。また、形成される高分子は、多孔質形状を有してもよい。
【0360】
〔セパレータ〕
正極と負極の間にセパレータを配置する。セパレータとしては、例えば、紙をはじめとするセルロースを有する繊維、不織布、ガラス繊維、セラミックス、あるいはナイロン樹脂(ポリアミド)、ビニロン樹脂(ポリビニルアルコール系繊維)、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂を用いた合成繊維等で形成されたものを用いることができる。セパレータは袋状に加工し、正極または負極のいずれか一方を包むように配置することが好ましい。
【0361】
セパレータは、20nm程度の大きさの孔、好ましくは6.5nm以上の大きさの孔、さらに好ましくは少なくとも直径2nmの孔を有する多孔質材料である。
【0362】
セパレータは多層構造であってもよい。例えばポリプロピレン、ポリエチレン等の有機材料フィルムに、セラミック系材料、フッ素系材料、ポリアミド系材料、またはこれらを混合した材料等をコートすることができる。セラミック系材料としては、例えば酸化アルミニウム粒子、酸化シリコン粒子等を用いることができる。フッ素系材料としては、例えばPVDF、ポリテトラフルオロエチレン等を用いることができる。ポリアミド系材料としては、例えばナイロン、アラミド(メタ系アラミド、パラ系アラミド)等を用いることができる。
【0363】
セラミック系材料をコートすると耐酸化性が向上するため、高電圧充放電の際のセパレータの劣化を抑制し、二次電池の信頼性を向上させることができる。またフッ素系材料をコートするとセパレータと電極が密着しやすくなり、出力特性を向上させることができる。ポリアミド系材料、特にアラミドをコートすると、耐熱性が向上するため、二次電池の安全性を向上させることができる。
【0364】
例えばポリプロピレンのフィルムの両面に酸化アルミニウムとアラミドの混合材料をコートしてもよい。また、ポリプロピレンのフィルムの、正極と接する面に酸化アルミニウムとアラミドの混合材料をコートし、負極と接する面にフッ素系材料をコートしてもよい。
【0365】
多層構造のセパレータを用いると、セパレータ全体の厚さが薄くても二次電池の安全性を保つことができるため、二次電池の体積あたりの容量を大きくすることができる。
【0366】
〔外装体〕
二次電池が有する外装体としては、例えばアルミニウムなどの金属材料を用いる缶タイプ、または、樹脂材料を用いるケースタイプとすることができる。または、フィルム状の外装体(外装フィルムとも呼ぶ)を用いることもできる。外装フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、アイオノマー、またはポリアミド等の材料からなる膜上に、アルミニウム、ステンレス、銅、またはニッケル等の可撓性に優れた金属薄膜を設け、さらに該金属薄膜上に外装体の外面としてポリアミド系樹脂、または、ポリエステル系樹脂等の絶縁性合成樹脂膜を設けた三層構造のフィルムを用いることができる。このような三層構造とすることで、電解質及び気体の透過を遮断するとともに、絶縁性を確保し、併せて耐電解質性を有することができる。外装フィルムの2つの内面を向かい合わせて重ねて熱を加えることにより、内面の材料が融け2つの外装フィルムを融着することができ、封止構造を作製することができる。
【0367】
また、外装フィルムとしてフッ素樹脂フィルムを用いることが好ましい。フッ素樹脂フィルムは、酸、アルカリ、有機溶剤等に対する安定性が高く、二次電池の反応などに伴う副反応、腐食等を抑制し、優れた二次電池を実現することができる。フッ素樹脂フィルムとしてPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン:テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体)、FEP(パーフルオロエチレンプロペンコポリマー:テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体)、及び、ETFE(エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー:テトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体)等が挙げられる。
【0368】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0369】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様の二次電池の具体的な構成例について図18図26を用いて説明する。
【0370】
[構成例1]
本発明の一態様の二次電池の外観図の一例を図18及び図19に示す。図18及び図19に示す二次電池は、薄型電池、ラミネート型電池、スタック型の二次電池などと呼ぶことができる。
【0371】
図18Aに示す二次電池は、正極503、負極506、セパレータ507、及び外装体509を有する。外装体509は、シール領域514により封止される。正極503、負極506及びセパレータ507は積層され、外装体509の内部に配置される。
【0372】
図18Aにおいて、正極503には正極リード電極510が接合される。正極リード電極510は外装体509の外側に露出される。また負極506には負極リード電極511が接合され、負極リード電極511が外装体509の外側に露出される。
【0373】
リード電極の接合について、図20を用いて説明する。
【0374】
図20Aは正極503の外観図を示す。正極503は正極集電体501を有し、正極活物質層502は正極集電体501の表面に形成されている。また、正極503はタブ領域を有する。
【0375】
図20Bは負極506の外観図を示す。負極506は負極集電体504を有し、負極活物質層505は負極集電体504の表面に形成されている。また、負極506は負極集電体504が一部露出する領域、すなわちタブ領域を有する。正極及び負極が有するタブ領域の面積または形状は、図20A及び図20Bに示す例に限られない。
【0376】
図20Cは、リード電極の接合について説明する図である。まず、負極506、セパレータ507、及び、正極503を積層する。図20Cに積層された負極506、セパレータ507、及び、正極503を示す。ここでは、負極とセパレータと正極からなる積層体は、負極を5組、正極を4組有する。正極503のタブ領域同士の接合と、最表面の正極のタブ領域への正極リード電極510の接合を行う。接合には、例えば超音波溶接等を用いることができる。同様に、負極506のタブ領域同士の接合と、最表面の負極のタブ領域への負極リード電極511の接合を行う。正極リード電極510及び負極リード電極511は、それぞれ、封止層519(樹脂層などとも呼べる)を有する。封止層519を設けることで、外装体509と封止層519とを熱圧着することができ、封止の際に隙間が生じることを抑制できる。また、リード電極と外装体509とを互いに固定することができる。封止層519には熱可塑性樹脂を用いることができ、例えばポリプロピレン等を用いることができる。
【0377】
本発明の一態様の二次電池の作製方法では、負極506、セパレータ507、及び、正極503を積層する際に、負極506、セパレータ507、及び、正極503の少なくとも一つに、電解質を滴下する。電解質を複数滴、滴下することで、負極506、セパレータ507、または、正極503に電解質を含浸させることができる。
【0378】
図18Bに示す外観図は、外装体509の側面の2辺において、端部を折り畳む例を示す。外装体509の端部を折り畳むことにより、外装体509の強度を高めることができる。例えば二次電池500に外力が加わった場合、あるいは外装体509の内部においてガス等が発生して二次電池500が膨張した場合、等において、封止が緩む等の不具合を抑制することができる。また、図18Cには3辺を折り畳む例を示す。
【0379】
図18A図18Cでは、正極リード電極510と負極リード電極511を同じ辺に配置する例を示すが、正極リード電極510と負極リード電極511を異なる辺、例えば図19Aに示すように上下の辺にそれぞれ配置してもよい。図19Bは、図19Aにおいて、外装体509の左辺及び右辺を折り畳む例を示す。
【0380】
[構成例2]
本発明の一態様の積層体の断面図の一例を図21に示す。図21に示す積層体550は、1枚のセパレータを折り曲げながら正極と負極との間に配置することで作製される。
【0381】
積層体550では、1枚のセパレータ507が正極活物質層502と負極活物質層505の間に挟まれるように複数回折り返されている。図21では、正極503及び負極506を6層ずつ積層しているため、セパレータ507を少なくとも5回折り返す。セパレータ507は、正極活物質層502と負極活物質層505の間に挟まれるように設けるだけでなく、延在部をさらに折り曲げることで、複数の正極503と負極506をひとまとめにテープなどで結束するようにしてもよい。
【0382】
本発明の一態様の二次電池の作製方法では、正極503を配置した後に、正極503に対して電解質を滴下することができる。同様に、負極506を配置した後に、負極506に対して電解質を滴下することができる。また、本発明の一態様の二次電池の作製方法では、セパレータを折り曲げる前、または、セパレータ507を折り曲げて負極506もしくは正極503と重ねた後に、セパレータ507に対して電解質を滴下することができる。負極506、セパレータ507、及び、正極503の少なくとも一つに、電解質を滴下することで、負極506、セパレータ507、または、正極503に電解質を含浸させることができる。
【0383】
図22Aに示す二次電池970は、筐体971の内部に積層体972を有する。積層体972には端子973b及び端子974bが電気的に接続される。端子973bの少なくとも一部と、端子974bの少なくとも一部と、は筐体971の外部に露出する。
【0384】
積層体972として、正極、負極、及び、セパレータが積層された構造を適用することができる。また、積層体972として、正極、負極、及び、セパレータが捲回された構造、等を適用することができる。
【0385】
例えば、積層体972として、図21に示す、セパレータを折り返した構造を有する積層体を用いることができる。
【0386】
図22B及び図22Cを用いて、積層体972の作製方法の一例を説明する。
【0387】
まず、図22Bに示すように、正極975a上に帯状のセパレータ976を重ね、セパレータ976を間に挟んで正極975aに負極977aを重ねる。その後、セパレータ976を折り返して負極977a上に重ねる。次に、図22Cに示すように、セパレータ976を間に挟んで負極977a上に正極975bを重ねる。このように、セパレータを折り返して順に正極、負極を配置していくことにより、積層体972を作製することができる。このように作製された積層体を含む構造を「つづら折り構造」と呼ぶ場合がある。
【0388】
次に、図23A図23Cを用いて、二次電池970の作製方法の一例を説明する。
【0389】
まず、図23Aに示すように、積層体972が有する正極に正極リード電極973aを電気的に接続する。具体的には、例えば、積層体972が有する正極のそれぞれにタブ領域を設け、それぞれのタブ領域と、正極リード電極973aと、を溶接等により電気的に接続することができる。また、積層体972が有する負極に負極リード電極974aを電気的に接続する。
【0390】
筐体971の内部に一の積層体972が配置されてもよいし、複数の積層体972が配置されてもよい。図23Bには積層体972を2組準備する例を示す。
【0391】
次に、図23Cに示すように、準備した積層体972を筐体971内に収納し、端子973b及び端子974bを装着し、筐体971を封止する。複数の積層体972が有するそれぞれの正極リード電極973aには、導電体973cを電気的に接続することが好ましい。また、複数の積層体972が有するそれぞれの負極リード電極974aには、導電体974cを電気的に接続することが好ましい。端子973bは導電体973cに、端子974bは導電体974cに、それぞれ電気的に接続される。なお、導電体973cは、導電性を有する領域と、絶縁性を有する領域と、を有してもよい。また、導電体974cは、導電性を有する領域と、絶縁性を有する領域と、を有してもよい。
【0392】
筐体971として、金属材料(例えばアルミニウムなど)を用いることができる。また、筐体971として金属材料を用いる場合には、表面を樹脂等で被覆することが好ましい。また、筐体971として樹脂材料を用いることができる。
【0393】
筐体971には安全弁または過電流保護素子等を設けることが好ましい。安全弁は、電池破裂を防止するため、筐体971の内部が所定の圧力となった場合にガスを開放する弁である。
【0394】
[構成例3]
本発明の一態様の二次電池の断面図の一例を図24Cに示す。図24Cに示す二次電池560は、図24Aに示す電極組立体130と、図24Bに示す電極組立体131と、を用いて作製される。なお、図24Cでは図を明瞭にするため、電極組立体130、電極組立体131、及び、セパレータ507を抜粋して示す。
【0395】
図24Aに示すように、電極組立体130は、正極集電体の両面に正極活物質層を有する正極503、セパレータ507、負極集電体の両面に負極活物質層を有する負極506、セパレータ507、正極集電体の両面に正極活物質層を有する正極503がこの順に積層されている。
【0396】
図24Bに示すように、電極組立体131は、負極集電体の両面に負極活物質層を有する負極506、セパレータ507、正極集電体の両面に正極活物質層を有する正極503、セパレータ507、負極集電体の両面に負極活物質層を有する負極506がこの順に積層されている。
【0397】
本発明の一態様の二次電池の作製方法は、電極組立体の作製時に応用することができる。具体的には、電極組立体を作製するために、負極506、セパレータ507、及び、正極503を積層する際に、負極506、セパレータ507、及び、正極503の少なくとも一つに、電解質を滴下する。電解質を複数滴、滴下することで、負極506、セパレータ507、または、正極503に電解質を含浸させることができる。
【0398】
図24Cに示すように、複数の電極組立体130と、複数の電極組立体131と、は、捲回したセパレータ507によって覆われている。
【0399】
また、本発明の一態様の二次電池の作製方法では、電極組立体130を配置した後に、電極組立体130に対して電解質を滴下することができる。同様に、電極組立体131を配置した後に、電極組立体131に対して電解質を滴下することができる。本発明の一態様の二次電池の作製方法では、セパレータ507を折り曲げる前、または、セパレータ507を折り曲げて電極組立体と重ねた後に、セパレータ507に対して電解質を滴下することができる。電解質を複数滴、滴下することで、電極組立体130、電極組立体131、または、セパレータ507に電解質を含浸させることができる。
【0400】
[構成例4]
本発明の一態様の二次電池について、図25及び図26を用いて説明する。構成例4として示す二次電池は、捲回型の二次電池などと呼ぶことができる。
【0401】
図25Aに示す二次電池913は、筐体930の内部に端子951と端子952が設けられた捲回体950を有する。捲回体950は、筐体930の内部で電解質中に浸される。端子952は、筐体930に接し、端子951は、絶縁材などを用いることにより筐体930に接していない。なお、図25Aでは、便宜のため、筐体930を分離して図示しているが、実際は、捲回体950が筐体930に覆われ、端子951及び端子952が筐体930の外に延在している。筐体930としては、金属材料(例えばアルミニウムなど)又は樹脂材料を用いることができる。
【0402】
なお、図25Bに示すように、図25Aに示す筐体930を複数の材料によって形成してもよい。例えば、図25Bに示す二次電池913は、筐体930aと筐体930bが貼り合わされており、筐体930a及び筐体930bで囲まれた領域に捲回体950が設けられている。
【0403】
筐体930aとしては、有機樹脂など、絶縁材料を用いることができる。特に、アンテナが形成される面に有機樹脂などの材料を用いることにより、二次電池913による電界の遮蔽を抑制できる。なお、筐体930aによる電界の遮蔽が小さければ、筐体930aの内部にアンテナを設けてもよい。筐体930bとしては、例えば金属材料を用いることができる。
【0404】
さらに、捲回体950の構造について図25Cに示す。捲回体950は、負極931と、正極932と、セパレータ933と、を有する。捲回体950は、セパレータ933を挟んで負極931と、正極932が重なり合って積層され、該積層シートを捲回させた捲回体である。なお、負極931と、正極932と、セパレータ933と、の積層を、さらに複数重ねてもよい。
【0405】
本発明の一態様の二次電池の作製方法では、負極931、セパレータ933、及び、正極932を積層する際に、負極931、セパレータ933、及び、正極932の少なくとも一つに、電解質を滴下する。つまり、上記積層シートを捲回させる前に、電解質を滴下することが好ましい。電解質を複数滴、滴下することで、負極931、セパレータ933、または、正極932に電解質を含浸させることができる。
【0406】
また、図26に示すような捲回体950aを有する二次電池913としてもよい。図26Aに示す捲回体950aは、負極931と、正極932と、セパレータ933と、を有する。負極931は負極活物質層931aを有する。正極932は正極活物質層932aを有する。
【0407】
セパレータ933は、負極活物質層931a及び正極活物質層932aよりも広い幅を有し、負極活物質層931a及び正極活物質層932aと重畳するように捲回されている。また、正極活物質層932aよりも負極活物質層931aの幅が広いことが安全性の点で好ましい。また、このような形状の捲回体950aは安全性及び生産性がよく好ましい。
【0408】
図26Bに示すように、負極931は端子951と電気的に接続される。端子951は端子911aと電気的に接続される。正極932は端子952と電気的に接続される。端子952は端子911bと電気的に接続される。
【0409】
図26Cに示すように、筐体930により捲回体950a及び電解質が覆われ、二次電池913となる。筐体930には安全弁、過電流保護素子等を設けることが好ましい。安全弁は、電池破裂を防止するため、筐体930の内部が所定の内圧で開放する弁である。
【0410】
図26Bに示すように二次電池913は複数の捲回体950aを有していてもよい。複数の捲回体950aを用いることで、より充放電容量の大きい二次電池913とすることができる。
【0411】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0412】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様の二次電池の適用例について図27図30を用いて説明する。
【0413】
[電気自動車]
まず、本発明の一態様の二次電池を電気自動車(EV)に適用する例を示す。
【0414】
図27Cに、モータを有する車両のブロック図を示す。電気自動車には、メインの駆動用の二次電池として第1のバッテリ1301a、1301bと、モータ1304を始動させるインバータ1312に電力を供給する第2のバッテリ1311が設置されている。第2のバッテリ1311はクランキングバッテリ(スターターバッテリとも呼ばれる)とも呼ばれる。第2のバッテリ1311は高出力できればよく、大容量はそれほど必要とされず、第2のバッテリ1311の容量は第1のバッテリ1301a、1301bと比較して小さい。
【0415】
例えば、第1のバッテリ1301a、1301bの一方または双方に、実施の形態1に示す二次電池の作製方法を用いて作製された二次電池を用いることができる。
【0416】
本実施の形態では、第1のバッテリ1301a、1301bを2つ並列に接続させている例を示しているが3つ以上並列に接続させてもよい。また、第1のバッテリ1301aで十分な電力を貯蔵できるのであれば、第1のバッテリ1301bはなくてもよい。複数の二次電池を有する電池パックを構成することで、大きな電力を取り出すことができる。複数の二次電池は、並列接続されていてもよいし、直列接続されていてもよいし、並列に接続された後、さらに直列に接続されていてもよい。複数の二次電池を組電池とも呼ぶ。
【0417】
また、車載用の二次電池において、複数の二次電池からの電力を遮断するため、工具を使わずに高電圧を遮断できるサービスプラグまたはサーキットブレーカを有しており、第1のバッテリ1301aに設けられる。
【0418】
また、第1のバッテリ1301a、1301bの電力は、主にモータ1304を回転させることに使用されるが、DCDC回路1306を介して42V系(高電圧系)の車載部品(電動パワステ1307、ヒーター1308、及び、デフォッガ1309など)に電力を供給する。後輪にリアモータ1317を有している場合にも、第1のバッテリ1301aがリアモータ1317を回転させることに使用される。
【0419】
また、第2のバッテリ1311は、DCDC回路1310を介して14V系(低電圧系)の車載部品(オーディオ1313、パワーウィンドウ1314、及び、ランプ類1315など)に電力を供給する。
【0420】
また、第1のバッテリ1301aについて、図27Aを用いて説明する。
【0421】
図27Aに大型の電池パック1415の一例を示す。電池パック1415の一方の電極は配線1421によって制御回路部1320に電気的に接続されている。またもう一方の電極は配線1422によって制御回路部1320に電気的に接続されている。なお、電池パックは、複数の二次電池を直列接続した構成であってもよい。
【0422】
また、制御回路部1320は、酸化物半導体を用いたトランジスタを含むメモリ回路を用いてもよい。酸化物半導体を用いたトランジスタを含むメモリ回路を有する充電制御回路、または電池制御システムを、BTOS(Battery operating system、またはBattery oxide semiconductor)と呼称する場合がある。
【0423】
制御回路部1320は、二次電池の端子電圧を検知し、二次電池の充放電状態を管理する。例えば、過充電を防ぐために充電回路の出力トランジスタと遮断用スイッチの両方をほぼ同時にオフ状態とすることができる。
【0424】
また、図27Aに示す電池パック1415のブロック図の一例を図27Bに示す。
【0425】
制御回路部1320は、少なくとも過充電を防止するスイッチと、過放電を防止するスイッチと、を含むスイッチ部1324と、スイッチ部1324を制御する制御回路1322と、第1のバッテリ1301aの電圧測定部と、を有する。制御回路部1320は、使用する二次電池の上限電圧と下限電圧とが設定されており、外部からの電流上限、または、外部への出力電流の上限などを制限している。二次電池の下限電圧以上上限電圧以下の範囲は、使用が推奨されている電圧範囲であり、その範囲外となるとスイッチ部1324が作動し、保護回路として機能する。また、制御回路部1320は、スイッチ部1324を制御して過放電または過充電を防止するため、保護回路とも呼べる。例えば、過充電となりそうな電圧を制御回路1322で検知した場合にスイッチ部1324のスイッチをオフ状態とすることで電流を遮断する。さらに充放電経路中にPTC素子を設けて温度の上昇に応じて電流を遮断する機能を設けてもよい。また、制御回路部1320は、外部端子1325(+IN)と、外部端子1326(-IN)とを有している。
【0426】
スイッチ部1324は、nチャネル型のトランジスタ及びpチャネル型のトランジスタの一方または双方を組み合わせて構成することができる。スイッチ部1324は、単結晶シリコンを用いるSiトランジスタを有するスイッチに限定されず、例えば、Ge(ゲルマニウム)、SiGe(シリコンゲルマニウム)、GaAs(ガリウムヒ素)、GaAlAs(ガリウムアルミニウムヒ素)、InP(リン化インジウム)、SiC(シリコンカーバイド)、ZnSe(セレン化亜鉛)、GaN(窒化ガリウム)、GaOx(酸化ガリウム;xは0より大きい実数)などを有するパワートランジスタでスイッチ部1324を形成してもよい。また、OSトランジスタを用いた記憶素子は、Siトランジスタを用いた回路上などに積層することで自由に配置可能であるため、集積化を容易に行うことができる。またOSトランジスタは、Siトランジスタと同様の製造装置を用いて作製することが可能であるため、低コストで作製可能である。即ち、スイッチ部1324上にOSトランジスタを用いた制御回路部1320を積層し、集積化することで1チップとすることもできる。制御回路部1320の占有体積を小さくすることができるため、小型化が可能となる。
【0427】
第1のバッテリ1301a、1301bは、主に高電圧系の車載機器に電力を供給し、第2のバッテリ1311は低電圧系の車載機器に電力を供給する。第2のバッテリ1311には、鉛蓄電池がコスト上有利のため採用されることが多い。
【0428】
本実施の形態では、第1のバッテリ1301aと第2のバッテリ1311の両方にリチウムイオン二次電池を用いる一例を示す。第2のバッテリ1311は鉛蓄電池、全固体電池、または電気二重層キャパシタを用いてもよい。
【0429】
また、タイヤ1316の回転による回生エネルギーは、ギア1305を介してモータ1304に送られ、モータコントローラ1303またはバッテリーコントローラ1302から制御回路部1321を介して第2のバッテリ1311に充電される。またはバッテリーコントローラ1302から制御回路部1320を介して第1のバッテリ1301aに充電される。またはバッテリーコントローラ1302から制御回路部1320を介して第1のバッテリ1301bに充電される。回生エネルギーを効率よく充電するためには、第1のバッテリ1301a、1301bが急速充電可能であることが望ましい。
【0430】
バッテリーコントローラ1302は第1のバッテリ1301a、1301bの充電電圧及び充電電流などを設定することができる。バッテリーコントローラ1302は、用いる二次電池の充電特性に合わせて充電条件を設定し、急速充電することができる。
【0431】
また、図示していないが、外部の充電器と接続させる場合、充電器のコンセントまたは充電器の接続ケーブルは、バッテリーコントローラ1302に電気的に接続される。外部の充電器から供給された電力はバッテリーコントローラ1302を介して第1のバッテリ1301a、1301bに充電する。また、充電器によっては、制御回路が設けられており、バッテリーコントローラ1302の機能を用いない場合もあるが、過充電を防ぐため制御回路部1320を介して第1のバッテリ1301a、1301bを充電することが好ましい。また、接続ケーブルまたは充電器の接続ケーブルに制御回路を備えている場合もある。制御回路部1320は、ECU(Electronic Control Unit)と呼ばれることもある。ECUは、電動車両に設けられたCAN(Controller Area Network)に接続される。CANは、車内LANとして用いられるシリアル通信規格の一つである。また、ECUは、マイクロコンピュータを含む。また、ECUは、CPUまたはGPUを用いる。
【0432】
次に、本発明の一態様の二次電池を、車両、代表的には輸送用車両に実装する例について説明する。
【0433】
本発明の一態様の二次電池を車両に搭載すると、ハイブリッド車(HV)、電気自動車(EV)、またはプラグインハイブリッド車(PHV)等の次世代クリーンエネルギー自動車を実現できる。また、農業機械、電動アシスト自転車を含む原動機付自転車、自動二輪車、電動車椅子、電動カート、小型または大型船舶、潜水艦、固定翼機または回転翼機等の航空機、ロケット、人工衛星、宇宙探査機または惑星探査機、宇宙船などの輸送用車両に二次電池を搭載することもできる。実施の形態1に示す二次電池の作製方法を用いることで、大型の二次電池とすることができる。そのため、本発明の一態様の二次電池は、輸送用車両に好適に用いることができる。
【0434】
図28A図28Dに、本発明の一態様の二次電池を用いた輸送用車両を示す。図28Aに示す自動車2001は、走行のための動力源として電気モータを用いる電気自動車である。または、走行のための動力源として電気モータとエンジンを適宜選択して用いることが可能なハイブリッド自動車である。二次電池を車両に搭載する場合、二次電池は一箇所または複数箇所に設置する。図28Aに示す自動車2001は、図27Aに示した電池パック1415を有する。電池パック1415は、二次電池モジュールを有する。電池パック1415は、さらに二次電池モジュールに電気的に接続する充電制御装置を有すると好ましい。二次電池モジュールは単数または複数の二次電池を有する。
【0435】
また、自動車2001は、自動車2001が有する二次電池にプラグイン方式または非接触給電方式等により外部の充電設備から電力供給を受けて、充電することができる。充電に際しては、充電方法またはコネクタの規格等はCHAdeMO(登録商標)またはコンボ等の所定の方式で適宜行えばよい。二次電池は、商用施設に設けられた充電ステーションでもよく、また家庭の電源であってもよい。例えば、プラグイン技術によって、外部からの電力供給により自動車2001に搭載された蓄電装置を充電することができる。充電は、ACDCコンバータ等の変換装置を介して、交流電力を直流電力に変換して行うことができる。
【0436】
また、図示しないが、受電装置を車両に搭載し、地上の送電装置から電力を非接触で供給して充電することもできる。この非接触給電方式の場合には、道路または外壁に送電装置を組み込むことで、停車中に限らず走行中に充電を行うこともできる。また、この非接触給電の方式を利用して、2台の車両同士で電力の送受信を行ってもよい。さらに、車両の外装部に太陽電池を設け、停車時または走行時に二次電池の充電を行ってもよい。このような非接触での電力の供給には、電磁誘導方式または磁界共鳴方式を用いることができる。
【0437】
図28Bは、輸送用車両の一例として電気により制御するモータを有した大型の輸送車2002を示している。輸送車2002の二次電池モジュールは、例えば3.5V以上4.7V以下の二次電池を4個セルユニットとし、48セルを直列に接続した170Vの最大電圧とする。電池パック2201の二次電池モジュールを構成する二次電池の数などが異なる以外は、図28Aと同様な機能を備えているため説明は省略する。
【0438】
図28Cは、一例として電気により制御するモータを有した大型の輸送車両2003を示している。輸送車両2003の二次電池モジュールは、例えば3.5V以上4.7V以下の二次電池を百個以上直列に接続した600Vの最大電圧とする。従って、特性バラツキの小さい二次電池が求められる。実施の形態1に示す二次電池の作製方法を用いることで、安定した電池特性を有する二次電池を製造することができ、歩留まりの観点から低コストで大量生産が可能である。また、電池パック2202の二次電池モジュールを構成する二次電池の数などが異なる以外は、図28Aと同様な機能を備えているため説明は省略する。
【0439】
図28Dは、一例として燃料を燃焼するエンジンを有した航空機2004を示している。図28Dに示す航空機2004は、離着陸用の車輪を有しているため、輸送車両の一部とも言え、複数の二次電池を接続させて二次電池モジュールを構成し、二次電池モジュールと充電制御装置とを含む電池パック2203を有している。
【0440】
航空機2004の二次電池モジュールは、例えば4Vの二次電池を8個直列に接続した32Vの最大電圧とする。電池パック2203の二次電池モジュールを構成する二次電池の数などが異なる以外は、図28Aと同様な機能を備えているため説明は省略する。
【0441】
[建築物]
次に、本発明の一態様の二次電池を建築物に実装する例について図29を用いて説明する。
【0442】
図29Aに示す住宅は、実施の形態1に示す二次電池の作製方法を用いることで、安定した電池特性を有する二次電池を有する蓄電装置2612と、ソーラーパネル2610を有する。蓄電装置2612は、ソーラーパネル2610と配線2611等を介して電気的に接続されている。また蓄電装置2612と地上設置型の充電装置2604が電気的に接続されていてもよい。ソーラーパネル2610で得た電力は、蓄電装置2612に充電することができる。また蓄電装置2612に蓄えられた電力は、充電装置2604を介して車両2603が有する二次電池に充電することができる。蓄電装置2612は、床下空間部に設置されることが好ましい。床下空間部に設置することにより、床上の空間を有効的に利用することができる。あるいは、蓄電装置2612は床上に設置されてもよい。
【0443】
蓄電装置2612に蓄えられた電力は、住宅内の他の電子機器にも供給することができる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、蓄電装置2612を無停電電源として用いることで、電子機器の利用が可能となる。
【0444】
図29Bに、本発明の一態様に係る蓄電装置700の一例を示す。図29Bに示すように、建物799の床下空間部796には、実施の形態1に示す二次電池の作製方法で得られる大型の蓄電装置791が設置されている。
【0445】
蓄電装置791には、制御装置790が設置されており、制御装置790は、配線によって、分電盤703と、蓄電コントローラ705(制御装置ともいう)と、表示器706と、ルータ709と、に電気的に接続されている。
【0446】
商業用電源701から、引込線取付部710を介して、電力が分電盤703に送られる。また、分電盤703には、蓄電装置791と、商業用電源701と、から電力が送られ、分電盤703は、送られた電力を、コンセント(図示せず)を介して、一般負荷707及び蓄電系負荷708に供給する。
【0447】
一般負荷707は、例えば、テレビまたはパーソナルコンピュータなどの電気機器であり、蓄電系負荷708は、例えば、電子レンジ、冷蔵庫、空調機などの電気機器である。
【0448】
蓄電コントローラ705は、計測部711と、予測部712と、計画部713と、を有する。計測部711は、一日(例えば、0時から24時)の間に、一般負荷707、蓄電系負荷708で消費された電力量を計測する機能を有する。また、計測部711は、蓄電装置791の電力量と、商業用電源701から供給された電力量と、を計測する機能を有していてもよい。また、予測部712は、一日の間に一般負荷707及び蓄電系負荷708で消費された電力量に基づいて、次の一日の間に一般負荷707及び蓄電系負荷708で消費される需要電力量を予測する機能を有する。また、計画部713は、予測部712が予測した需要電力量に基づいて、蓄電装置791の充放電の計画を立てる機能を有する。
【0449】
計測部711によって計測された一般負荷707及び蓄電系負荷708で消費された電力量は、表示器706によって確認することができる。また、ルータ709を介して、テレビまたはパーソナルコンピュータなどの電気機器において、確認することもできる。さらに、ルータ709を介して、スマートフォンまたはタブレットなどの携帯電子端末によっても確認することができる。また、表示器706、電気機器、携帯電子端末によって、予測部712が予測した時間帯ごと(または一時間ごと)の需要電力量なども確認することができる。
【0450】
[電子機器]
本発明の一態様の二次電池は、例えば、電子機器及び照明装置の一方または双方に用いることができる。電子機器としては、例えば、携帯電話、スマートフォン、及び、ノート型コンピュータ等の携帯情報端末、携帯型ゲーム機、携帯音楽プレーヤ、デジタルカメラ、並びに、デジタルビデオカメラなどが挙げられる。
【0451】
図30Aに示すパーソナルコンピュータ2800は、筐体2801、筐体2802、表示部2803、キーボード2804、及びポインティングデバイス2805等を有する。筐体2801の内側に二次電池2807を備え、筐体2802の内側に二次電池2806を備える。また表示部2803には、タッチパネルが適用されている。パーソナルコンピュータ2800は、図30Bに示すように筐体2801と筐体2802を取り外し、筐体2802のみでタブレット端末として使用することができる。
【0452】
実施の形態1に示す二次電池の作製方法で得られる大型の二次電池を、二次電池2806及び二次電池2807の一方または双方に適用することができる。実施の形態1に示す二次電池の作製方法で得られる二次電池は、外装体の形状を変えることにより形状を自由に変更することができる。二次電池2806、2807を例えば、筐体2801、2802の形状に合わせた形状とすることにより、二次電池の容量を高め、パーソナルコンピュータ2800の使用時間を長くすることができる。また、パーソナルコンピュータ2800を軽量化することができる。
【0453】
また筐体2802の表示部2803にはフレキシブルディスプレイが適用されている。二次電池2806には、実施の形態1に示す二次電池の作製方法で得られる大型の二次電池が適用されている。実施の形態1に示す二次電池の作製方法で得られる大型の二次電池において、外装体に可撓性を有するフィルムを用いることにより、曲げることが可能な二次電池とすることができる。これにより、図30Cに示すように、筐体2802を折り曲げて使用することができる。このとき、図30Cに示すように、表示部2803の一部をキーボードとして使用することもできる。
【0454】
また、図30Dに示すように表示部2803が内側になるように筐体2802を折り畳むこと、または、図30Eに示すように表示部2803が外側になるように筐体2802を折り畳むこともできる。
【0455】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
【0456】
(本明細書等の記載に関する付記)
本明細書等において、結晶面及び方向はミラー指数で示す。結晶面及び方向の表記は、結晶学上、数字に上付きのバーを付すが、本明細書等では出願表記の制約上、数字の上にバーを付す代わりに、数字の前に-(マイナス符号)を付して表現する場合がある。また、結晶内の方向を示す個別方位は[ ]で、等価な方向すべてを示す集合方位は< >で、結晶面を示す個別面は( )で、等価な対称性を有する集合面は{ }でそれぞれ表現する。
【0457】
本明細書等において、活物質等の粒子の表層部とは例えば、表面から50nm以内、より好ましくは35nm以内、さらに好ましくは20nm以内の領域であることが好ましい。ひび、またはクラックにより生じた面も表面といってよい。また表層部より深い領域を、内部という。
【0458】
本明細書等において、リチウムと遷移金属を含む複合酸化物が有する層状岩塩型の結晶構造とは、陽イオンと陰イオンが交互に配列する岩塩型のイオン配列を有し、遷移金属とリチウムが規則配列して二次元平面を形成するため、リチウムの二次元的拡散が可能である結晶構造をいう。なお陽イオンまたは陰イオンの欠損等の欠陥があってもよい。また、層状岩塩型結晶構造は、厳密に言えば、岩塩型結晶の格子が歪んだ構造となっている場合がある。
【0459】
また、本明細書等において、岩塩型の結晶構造とは、陽イオンと陰イオンが交互に配列している構造をいう。なお陽イオンまたは陰イオンの欠損があってもよい。
【0460】
また、本明細書等において、リチウムと遷移金属を含む複合酸化物が有する擬スピネル型の結晶構造とは、空間群R-3mであり、スピネル型結晶構造ではないものの、コバルト、マグネシウム等のイオンが酸素6配位位置を占め、陽イオンの配列がスピネル型と似た対称性を有する結晶構造をいう。
【0461】
二つの領域の結晶の配向が概略一致することは、TEM(透過電子顕微鏡)像、STEM(走査透過電子顕微鏡)像、HAADF-STEM(高角散乱環状暗視野走査透過電子顕微鏡)像、ABF-STEM(環状明視野走査透過電子顕微鏡)像等から判断することができる。XRD、電子線回折、中性子線回折等も判断の材料にすることができる。TEM像等では、陽イオンと陰イオンの配列が、明線と暗線の繰り返しとして観察できる。層状岩塩型結晶と岩塩型結晶において立方最密充填構造の向きが揃うと、結晶間で、明線と暗線の繰り返しのなす角度が5度以下、より好ましくは2.5度以下である様子が観察できる。なお、TEM像等では酸素、フッ素をはじめとする軽元素は明確に観察できない場合があるが、その場合は金属元素の配列で配向の一致を判断することができる。
【0462】
本明細書等において、正極活物質の理論容量とは、正極活物質が有する挿入脱離可能なリチウムが全て脱離した場合の電気量をいう。例えばLiCoOの理論容量は274mAh/g、LiNiOの理論容量は274mAh/g、LiMnの理論容量は148mAh/gである。
【0463】
本明細書等において、挿入脱離可能なリチウムが全て挿入されているときの充電深度を0、正極活物質が有する挿入脱離可能なリチウムが全て脱離したときの充電深度を1ということとする。
【0464】
本明細書等において、充電とは、電池内において正極から負極にリチウムイオンを移動させ、外部回路において正極から負極に電子を移動させることをいう。正極活物質については、リチウムイオンを離脱させることを充電という。また充電深度が0.7以上0.9以下の正極活物質を、高電圧で充電された正極活物質と呼ぶ場合がある。
【0465】
同様に、放電とは、電池内において負極から正極にリチウムイオンを移動させ、外部回路において負極から正極に電子を移動させることをいう。正極活物質については、リチウムイオンを挿入することを放電という。また充電深度が0.06以下の正極活物質、または高電圧で充電された状態から充電容量の90%以上の容量を放電した正極活物質を、十分に放電された正極活物質ということとする。
【0466】
本明細書等において、非平衡な相変化とは、物理量の非線形変化を起こす現象をいうこととする。例えば容量(Q)を電圧(V)で微分(dQ/dV)することで得られるdQ/dV曲線におけるピークの前後では、非平衡な相変化が起き、結晶構造が大きく変わっていると考えられる。
【0467】
二次電池は例えば正極及び負極を有する。正極を構成する材料として、正極活物質がある。正極活物質は例えば、充放電の容量に寄与する反応を行う物質である。なお、正極活物質は、その一部に、充放電の容量に寄与しない物質を含んでもよい。
【実施例
【0468】
本実施例では、ODF方式を用いて、対象物に液体を滴下した結果について説明する。
【0469】
本実施例では、ODF方式により液体を滴下することが可能な装置を用いた。
【0470】
滴下条件は、ギャップ(対象物とノズルの間の距離)が0.1mm、ノズルの内径が0.14mm、ノズル圧(吐出圧)が200kPa、シリンジの温度が30℃、滴下時間が0.5秒となるように設定した。
【0471】
滴下する液体は、Sample Aと、Sample Bの、2種類とした。
【0472】
Sample Aでは、液体として、電解質の溶媒である、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)アミド(略称:EMI-FSA)を用いた。EMI-FSAの粘度は19.2mPa・sである。
【0473】
Sample Bでは、EMI-FSAと、モノフルオロエチレンカーボネート(FEC)と、を、体積比がEMI-FSA:FEC=7:3となるように混合した液体を用いた。FECの粘度は4.4mPa・sであるため、Sample Bは、Sample Aよりも低粘度の液体であるといえる。
【0474】
本実施例で使用する材料の構造式を以下に示す。
【0475】
【化12】
【0476】
図31Aに示すように、対象物の上に、液体を、3行2列の6点、滴下した。各行の間隔は26mmであり、各列の間隔は28mmとした。
【0477】
まず、対象物としてガラス基板を用い、滴下した液体の重量(6点の滴下量の合計)を求めた。実験は、5回行った。
【0478】
Sample Aでは、滴下した液体の重量の平均値が25.3mg、最大値が25.6mg、最小値が25.1mgであった。
【0479】
Sample Bでは、滴下した液体の重量の平均値が50.3mg、最大値が50.6mg、最小値が50.0mgであった。
【0480】
Sample A、Sample Bともに、均一な量の液体が滴下されていることがわかった。また、粘度がより低いSample Bのほうが、滴下された液体の重量が大きいことがわかった。
【0481】
次に、対象物として、セパレータを用い、液体を滴下した。セパレータには、厚さ50μmの溶剤紡糸再生セルロース繊維(TF40、日本高度紙工業株式会社製)を用いた。
【0482】
図31B図31Dは、Sample Aの結果、図31C図31Eは、Sample Bの結果である。
【0483】
Sample A、Sample Bともに、液体が浸み込んだ領域は、直径が約15mmの円状の領域として観察された。
【0484】
以上のように、本実施例では、ODF方式を用いて、電解質の溶媒をセパレータに対して、安定した量で滴下できることが確認できた。このような方法を用いることで、二次電池の電極及びセパレータに電解質を含浸させることができる。
【0485】
さらに、ノズルの内径、ノズル圧、シリンジの温度、滴下時間、及び、滴下回数などの一つまたは複数を制御することで、二次電池に必要な量の電解質を正確に滴下することができる。したがって、均一な特性を有する二次電池の大量生産につながるといえる。また、大面積の二次電池であっても、電解質をムラなく滴下できるため、信頼性の高い二次電池を作製できる。
【0486】
また、本実施例では、1つのノズルを有する装置を用いたが、複数のノズルを一列に並べた装置を用いてもよい。この場合、一度に複数摘の電解質を滴下できるため、大面積の二次電池を短時間で作製することができる。
【符号の説明】
【0487】
130:電極組立体、131:電極組立体、300:製造装置、301:部材投入室、302:搬送室、303:処理室、304:処理室、305:処理室、306:部材取り出し室、320:搬送機構、331:ステージ、332:アライメントカメラ、333:吸着治具、334:ノズル、335:ノズル、500:二次電池、501:正極集電体、502:正極活物質層、503:正極、504:負極集電体、505:負極活物質層、506:負極、507:セパレータ、509a:外装体、509b:外装体、509c:凹部、509:外装体、510:正極リード電極、511:負極リード電極、512:積層体、513:樹脂層、514:シール領域、515a:電解質、515b:電解質、515c:電解質、517:樹脂、518:樹脂層、519:封止層、521:樹脂層、525:シール領域、529a:紫外光透過領域、529b:紫外光遮光領域、550:積層体、560:二次電池、700:蓄電装置、701:商業用電源、703:分電盤、705:蓄電コントローラ、706:表示器、707:一般負荷、708:蓄電系負荷、709:ルータ、710:引込線取付部、711:計測部、712:予測部、713:計画部、790:制御装置、791:蓄電装置、796:床下空間部、799:建物、911a:端子、911b:端子、913:二次電池、930a:筐体、930b:筐体、930:筐体、931a:負極活物質層、931:負極、932a:正極活物質層、932:正極、933:セパレータ、950a:捲回体、950:捲回体、951:端子、952:端子、970:二次電池、971:筐体、972:積層体、973a:正極リード電極、973b:端子、973c:導電体、974a:負極リード電極、974b:端子、974c:導電体、975a:正極、975b:正極、976:セパレータ、977a:負極、1301a:第1のバッテリ、1301b:第1のバッテリ、1302:バッテリーコントローラ、1303:モータコントローラ、1304:モータ、1305:ギア、1306:DCDC回路、1307:電動パワステ、1308:ヒーター、1309:デフォッガ、1310:DCDC回路、1311:第2のバッテリ、1312:インバータ、1313:オーディオ、1314:パワーウィンドウ、1315:ランプ類、1316:タイヤ、1317:リアモータ、1320:制御回路部、1321:制御回路部、1322:制御回路、1324:スイッチ部、1325:外部端子、1326:外部端子、1415:電池パック、1421:配線、1422:配線、2001:自動車、2002:輸送車、2003:輸送車両、2004:航空機、2201:電池パック、2202:電池パック、2203:電池パック、2603:車両、2604:充電装置、2610:ソーラーパネル、2611:配線、2612:蓄電装置、2800:パーソナルコンピュータ、2801:筐体、2802:筐体、2803:表示部、2804:キーボード、2805:ポインティングデバイス、2806:二次電池、2807:二次電池
図1A
図1B
図2
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図5A
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図6A
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図7A
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図8
図9A
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図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
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図15A
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図15D
図16
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図18A
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図18C
図19A
図19B
図20A
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図22A
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図23A
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図23C
図24A
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図24C
図25A
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図25C
図26A
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図26C
図27A
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図27C
図28A
図28B
図28C
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図29A
図29B
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