(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-10-16
(45)【発行日】2025-10-24
(54)【発明の名称】グアニジノ酢酸の発酵産生方法
(51)【国際特許分類】
C12N 1/21 20060101AFI20251017BHJP
C12P 13/00 20060101ALI20251017BHJP
C12N 9/10 20060101ALN20251017BHJP
C12N 15/54 20060101ALN20251017BHJP
【FI】
C12N1/21 ZNA
C12P13/00
C12N9/10
C12N15/54
(21)【出願番号】P 2023501155
(86)(22)【出願日】2021-06-28
(86)【国際出願番号】 EP2021067647
(87)【国際公開番号】W WO2022008276
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2024-06-14
(32)【優先日】2020-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フランク シュナイダー
(72)【発明者】
【氏名】フランク ヤンコヴィッチュ
【審査官】松村 真里
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106065411(CN,A)
【文献】特表2019-531759(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110904018(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0081230(KR,A)
【文献】特表2017-518760(JP,A)
【文献】特表2023-532784(JP,A)
【文献】Plant Physiology,2003年,Vol.131, No.1,p.215-227
【文献】Journal of Bacteriology,2004年,Vol.186, No.16,p.5513-5518
【文献】Genbank [online],Accession No. AB033996,2008年02月19日,Version: AB033996.1,[検索日 2025.05.23],<https://www.ncbi.nim.nih.gov/nuccore/AB033996.1/>
【文献】UniProtKB/TrEMBL [online],Accession No. A0A1D8TKD3,2019年12月11日,entry version 8,[検索日 2025.05.23],<https://rest.uniprot.org/unisave/A0A1D8TKD3?format=txt&versions=8>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C12P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
L-アルギニン:グリシンアミジノトランスフェラーゼの機能を有するタンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子を含む微生物であって、リンゴ酸シンターゼの機能を有するタンパク質の活性が、野生型微生物におけるそれぞれの活性と比較して低下して
おり、前記微生物がコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)であり、前記微生物が、野生型微生物の能力と比較して向上した、L-アルギニン産生能力を有しており、前記L-アルギニン:グリシンアミジノトランスフェラーゼの機能を有するタンパク質が、SEQ ID NO:11によるアミノ酸配列と少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含む、微生物。
【請求項2】
前記リンゴ酸シンターゼの機能を有するタンパク質をコードする遺伝子の発現が、野生型微生物におけるそれぞれの遺伝子の発現と比較して減弱しているか、または前記リンゴ酸シンターゼの機能を有するタンパク質をコードする遺伝子が欠失している、請求項1記載の微生物。
【請求項3】
前記微生物が、カルバモイルリン酸シンターゼの機能を有する酵素の活性を有し、野生型微生物におけるそれぞれの酵素活性と比較して活性が増加している、請求項
1または2記載の微生物。
【請求項4】
前記微生物がさらに、オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼの機能を有する酵素を含み、その活性が野生型微生物におけるそれぞれの酵素活性と比較して増加している、請求項
1から
3記載の微生物。
【請求項5】
前記微生物がさらに、アルギニノコハク酸シンテターゼの機能を有する酵素をさらに含み、その活性が野生型微生物におけるそれぞれの酵素活性と比較して増加している、請求項
1から
4までのいずれか1項記載の微生物。
【請求項6】
前記酵素の活性の増加が、それぞれの酵素をコードする遺伝子を過剰発現することにより達成されている、請求項
1から
5までのいずれか1項記載の微生物。
【請求項7】
アルギニンオペロン(argCJBDFR)が過剰発現している、請求項
1から
6までいずれか1項記載の微生物。
【請求項8】
アルギニン応答性リプレッサータンパク質ArgRをコードするargR遺伝子の発現が、野生型微生物におけるargR遺伝子の発現と比較して減弱しているか、または前記argR遺伝子が欠失している、請求項
1から
6までのいずれか1項記載の微生物。
【請求項9】
L-アルギニンの生合成経路の酵素をコードする遺伝子であって、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、オルニチンアセチルトランスフェラーゼ、アセチルグルタミン酸キナーゼ、アセチルグルタミルリン酸レダクターゼおよびアセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼをそれぞれコードするgdh、argJ、argB、argCおよび/またはargDを含む遺伝子のうちの少なくとも1つまたは複数の遺伝子が過剰発現させられている、請求項
1から
6または
8のいずれか1項記載の微生物。
【請求項10】
前記L-アルギニン:グリシンアミジノトランスフェラーゼの機能を有するタンパク質をコードする遺伝子が異種性である、請求項1から
9までのいずれか1項記載の微生物。
【請求項11】
前記L-アルギニン:グリシンアミジノトランスフェラーゼの機能を有するタンパク質をコードする遺伝子が過剰発現している、請求項1から
10までのいずれか1項記載の微生物。
【請求項12】
グアニジノ酢酸(GAA)の発酵産生方法であって、a)請求項1から
11までのいずれか1項記載の微生物を適切な培地で適切な条件下に培養するステップと、b)前記培地中にGAAを蓄積してGAA含有発酵ブロスを生成するステップとを含む、方法。
【請求項13】
前記GAA含有発酵ブロスからGAAを単離するステップをさらに含む、請求項
12記載の方法。
【請求項14】
前記GAA含有発酵ブロスを乾燥および/または造粒するステップをさらに含む、請求項
12または
13記載の方法。
【請求項15】
グアニジノ酢酸-N-メチルトランスフェラーゼの活性を有する酵素をコードする遺伝子をさらに含む、請求項1から
11までのいずれか1項記載の微生物。
【請求項16】
前記グアニジノ酢酸-N-メチルトランスフェラーゼの活性を有する酵素をコードする遺伝子が過剰発現させられている、請求項
15記載の微生物。
【請求項17】
クレアチンの発酵産生方法であって、a)請求項
15または
16記載の微生物を適切な培地で適切な条件下に培養するステップと、b)前記培地中にクレアチンを蓄積させてクレアチン含有発酵ブロスを生成するステップとを含む、方法。
【請求項18】
前記クレアチン含有発酵ブロスからクレアチンを単離するステップをさらに含む、請求項
17記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グアニジノ酢酸(GAA)を産生することができるように形質転換された微生物、およびそのような微生物を用いたGAAの発酵産生方法に関するものである。本発明はまた、クレアチンの発酵産生方法に関するものである。
【0002】
GAAは、動物用飼料添加物として使用されている有機化合物である(米国特許出願公開第2011257075号明細書)。GAAはクレアチンの天然前駆体である(例えば、Humm et al., Biochem. J. (1997) 322, 771-776)。したがって、GAAを添加することにより生体内にクレアチンの最適な供給が可能となる。
【0003】
本発明は、工業用原料(例えば、アンモニア、アンモニウム塩およびグルコースまたは糖含有基質)を出発物質として用いた発酵プロセスによりGAAを産生する方法に関するものである。生体系では、アルギニンおよびグリシンを出発物質として、L-アルギニン:グリシン-アミジノトランスフェラーゼ(AGAT;EC2.1.4.1)の触媒作用によりGAAおよびL-オルニチンが生成され、これがクレアチン生合成の第1段階となる:
【化1】
【0004】
Guthmillerら(J Biol Chem. 1994 Jul 1;269(26):17556-60)は、大腸菌(E.coli)で酵素をクローニングし異種発現させることにより、ラット腎臓AGATの特性を明らかにした。Muenchhoffら(FEBS Journal 277 (2010) 3844-3860)は、同じく大腸菌で酵素をクローニングし異種発現させることにより、初めて原核生物由来のAGATの特性を明らかにしたと報告している。Sosioら(Cell Chemical Biology 25, 540-549, May 17, 2018)は、ストレプトマイセス属(Streptomyces sp.)におけるシュードウリジマイシン(pseudouridimycin)の生合成経路を解明した。彼らは中間反応として、L-アルギニン:グリシン-アミジノトランスフェラーゼ(AGAT)であるPumNが触媒するL-アルギニンとグリシンとの反応によるGAAおよびL-オルニチンの生成を記載している。
【0005】
GAA合成の出発物質の1つであるL-アルギニンの産生を微生物、特に細菌で増やすためのアプローチも文献からいくつか知られている。L-アルギニン産生のためのコリネバクテリウム・グルタミカム(C.glutamicum)の代謝工学に関する概要は、Parkら(NATURE COMMUNICATIONS | DOI: 10.1038/ncomms5618)により提供されている。彼らは、例えばATCC21831(Nakayama and Yoshida 1974、米国特許第3849250号明細書)の既にL-アルギニンを産生するC.glutamicum菌株のランダム変異誘発およびL-アルギニン産生体のスクリーニング、ならびにシステム全体の代謝分析に基づく段階的で合理的な代謝工学を提案しており、菌株エンジニアリングステップを通してL-アルギニン産生量を徐々に増やしている。Yimら(J Ind Microbiol Biotechnol (2011) 38:1911-1920)は、C.glutamicumの染色体上のargR遺伝子を破壊することにより、L-アルギニン生合成経路を制御する中央リプレッサータンパク質ArgRをコードする遺伝子を不活性化すると、アルギニン産生株が向上することを示すことができていた。Ginesyら(Microbial Cell Factories (2015) 14:29)は、アルギニン産生を強化するための大腸菌のエンジニアリングに成功したことを報告している。中でも、彼らはargRリプレッサー遺伝子の欠失を提案していた。
【0006】
アルギニン生合成オペロンargRの発現を抑制する遺伝子を不活性化した遺伝子組換え株を用いる方法が、Sugaらにより報告されている(米国特許出願公開第20070031946号明細書)。特に、アルギニンオペロンを制御するargRの欠失は、アルギニン産生に重要な因子と考えられてきた。
【0007】
Fan Wenchaoは、非病原性微生物、例えばC.glutamicumの発酵によるクレアチンの産生方法を開示している(中国特許出願公開第106065411号明細書)。この微生物は、以下の生体内変換機能を有している:グルコースのL-グルタミン酸への変換;L-グルタミン酸のN-アセチル-L-グルタミン酸への変換;N-アセチル-L-グルタミン酸のN-アセチル-L-グルタミン酸セミアルデヒドへの変換;N-アセチル-L-グルタミン酸セミアルデヒドのN-アセチル-L-オルニチンへの変換;N-アセチル-L-オルニチンのL-オルニチンへの変換;L-オルニチンのL-シトルリンへの変換;L-シトルリンのアルギニノコハク酸への変換;アルギニノコハク酸のL-アルギニンへの変換;L-アルギニンのグアニジノ酢酸への変換;そして最終的にグアニジノ酢酸のクレアチンへの変換。Fan Wenchaoは、この微生物が、N-アセチルグルタミン酸シンターゼ、N-アセチルオルニチン-δ-アミノトランスフェラーゼ、N-アセチルオルニチナーゼ、オルニチン-カルバモイルトランスフェラーゼ、アルギニノコハク酸シンテターゼ、グリシンアミジノトランスフェラーゼ(EC:2.1.4.1)、グアニジノ酢酸-N-メチルトランスフェラーゼ(EC:2.1.1.2)からなる群より選択される1つまたは複数の酵素を過剰発現させることを提案している。この微生物は、好ましくは、グリシンアミジノトランスフェラーゼ(L-アルギニン:グリシンアミジノトランスフェラーゼ)およびグアニジノ酢酸-N-メチルトランスフェラーゼを過剰発現させる。
【0008】
GAA生合成の第2の出発物質としては、L-アルギニン:グリシンアミジノトランスフェラーゼ(AGAT)の機能を有するタンパク質をコードする相同遺伝子を天然に備える微生物、またはL-アルギニン:グリシンアミジノトランスフェラーゼ(AGAT)の機能を有するタンパク質をコードする異種遺伝子を備えた微生物におけるGAA生合成を向上させるためにグリシンの供給を増やすことが望ましいであろう。
【0009】
大腸菌またはC.glutamicumなどの微生物に天然に存在する、いわゆるグリオキシル酸シャント経路は、三炭酸(TCA)サイクル(クレプスサイクル)の副反応であり、イソクエン酸リアーゼによるイソクエン酸からのグリオキシル酸およびコハクの生成、リンゴ酸シンターゼによるグリオキシル酸およびアセチルCoAからのリンゴ酸の生成を含む(Salusjarvi et al., Applied Microbiology and Biotechnology (2019) 103:2525-2535)。
【0010】
グリオキシル酸は、アミノ酸などのアミノ供与体およびグリオキシル酸トランスアミナーゼの存在下でグリシンを生成するための出発物質として使用されてもよい。
【0011】
C.glutamicumのグリコール酸産生を向上させる試みにおいて、Zahoorら(Journal of Biotechnology 192 (2014) 366-375)は、リンゴ酸シンターゼ遺伝子aceBの欠失により、とりわけグリオキシル酸前駆体の供給を増やすことを達成した。
【0012】
グリオキシル酸トランスアミナーゼは、アミノ酸からグリオキシル酸へのアミノ基の転移を触媒する。この転移の産物は、グリシンと対応するα-ケト酸とである。
【0013】
グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼはいくつか知られており、アミノ供与体に対するそれらの基質特異性が異なる(例えば、Kameya et al. FEBS Journal 277 (2010) 1876-1885; Liepman and Olsen, Plant Physiol. Vol. 131, 2003, 215-227; Sakuraba et al., JOURNAL OF BACTERIOLOGY, Aug. 2004, p. 5513-5518; Takada and Noguchi, Biochem. J. (1985) 231, 157-163)。これらのグリオキシル酸アミノトランスフェラーゼの多くは、異なるアミノ酸をアミノ供与体として用いることができるため、しばしば異なるEC番号で注釈が付けられている。しかしながら、これらのすべてのアミノトランスフェラーゼは、グリオキシル酸を受容体分子として用い、または逆反応の場合はグリシンを供与体分子として用いるという点で共通している。
【0014】
グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼの機能を有するタンパク質の例は、以下のものである:
グリシントランスアミナーゼ(EC2.6.1.4)は、次の反応を触媒する:
L-グルタミン酸+グリオキシル酸<=>α-ケトグルタル酸+グリシン。
【0015】
グリシン:オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(EC2.6.1.35)は、次の反応を触媒する:
L-アスパラギン酸+グリオキシル酸<=>オキサロ酢酸+グリシン。
【0016】
アラニン:グリオキシル酸トランスアミナーゼ(EC2.6.1.44)は、次の反応を触媒する:
L-アラニン+グリオキシル酸<=>ピルビン酸+グリシン。
【0017】
セリン:グリオキシル酸トランスアミナーゼ(EC2.6.1.45)は、次の反応を触媒する:
L-セリン+グリオキシル酸<=>3-ヒドロキシ-ピルビン酸+グリシン。
【0018】
メチオニン:グリオキシル酸トランスアミナーゼ(EC2.6.1.73)は、次の反応を触媒する:
L-メチオニン+グリオキシル酸<=>4-(メチルスルファニル)-2-ケト-ブタン酸+グリシン。
【0019】
芳香族アミノ酸:グリオキシル酸トランスアミナーゼ(EC2.6.1.60)は、次の反応を触媒する:
芳香族アミノ酸+グリオキシル酸<=>芳香族ケト酸+グリシン。
【0020】
キヌレニン:グリオキシル酸トランスアミナーゼ(EC2.6.1.63)は、次の反応を触媒する:
キヌレニン+グリオキシル酸<=>4-(2-アミノフェニル)-2,4-ジケト-ブタン酸+グリシン。
【0021】
(S)-ウレイド-グリシン:グリオキシル酸トランスアミナーゼ(EC2.6.1.112)は、次の反応を触媒する:
(S)-ウレイド-グリシン+グリオキシル酸<=>N-カルバモイル-2-ケト-グリシン+グリシン。
【0022】
本発明の根底にある課題は、グアニジノ酢酸(GAA)を産生できるように形質転換された微生物、特にGAA生合成の出発物質としてのグリシンの供給能力が向上した微生物、およびそのような微生物を用いたGAAの発酵産生方法を提供することである。
【0023】
本課題は、L-アルギニン:グリシンアミジノトランスフェラーゼの機能を有するタンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子を含む微生物であって、リンゴ酸シンターゼの機能を有するタンパク質の活性が、野生型微生物におけるそれぞれの活性と比較して低下している、微生物により解決される。
【0024】
リンゴ酸シンターゼの機能を有するタンパク質の活性は、該タンパク質を野生型タンパク質よりも低い酵素活性を有するタンパク質に変異させることにより、リンゴ酸シンターゼの機能を有する酵素をコードする遺伝子の発現を野生型微生物におけるそれぞれの遺伝子の発現と比較して減弱させることにより、翻訳の効率を、例えば、ATG開始コドンをGTGに変更することにより、mRNAの5’非翻訳領域に二次構造を導入することにより、もしくはコドン使用を減弱させることにより低下させることにより、またはリンゴ酸シンターゼの機能を有する酵素をコードする遺伝子を欠失させることにより減少させることができる。
【0025】
好ましくは、本発明による微生物において、リンゴ酸シンターゼの機能を有するタンパク質をコードする遺伝子の発現は、野生型微生物におけるそれぞれの遺伝子の発現と比較して減弱させられているか、またはリンゴ酸シンターゼの機能を有するタンパク質をコードする遺伝子が欠失させられている。
【0026】
本発明の更なる実施形態では、本発明の微生物は、グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼの機能を有する酵素の活性が、野生型微生物におけるそれぞれの酵素活性と比較して増加していることをさらに含む。
【0027】
本発明による微生物は、好ましくは、グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼの酵素活性を有するタンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子を含む。
【0028】
本発明の微生物において、グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼの酵素活性を有するタンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子は、相同性または異種性である。
【0029】
本発明の更なる実施形態では、本発明の微生物において、グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼの酵素活性を有するタンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子が過剰発現させられている。
【0030】
好ましくは、本発明の微生物は、野生型微生物の能力と比較して、L-アルギニン産生能力が向上している。
【0031】
本発明の文脈において、L-アルギニン産生能力が向上している微生物とは、自身の必要量を超えてL-アルギニンを産生している微生物を意味する。そのようなL-アルギニン産生微生物についての例は、例えば、C.glutamicum ATCC 21831であるか、またはParkら(NATURE COMMUNICATIONS | DOI: 10.1038/ncomms5618)もしくはGinesyら(Microbial Cell Factories (2015) 14:29)により開示されるものである。
【0032】
本発明の特定の実施形態において、本微生物は、カルバモイルリン酸シンターゼ(EC6.3.4.16)の機能を有する酵素の活性が、野生型微生物におけるそれぞれの酵素活性と比較して増加している。
【0033】
本発明による微生物において、アルギニノコハク酸リアーゼ(EC.4.3.2.1)の機能を有する酵素の活性が、野生型微生物におけるそれぞれの酵素活性と比較して増加していてもよい。
【0034】
さらに、本発明による微生物において、オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ(EC2.1.3.3)の機能を有する酵素の活性が、野生型微生物におけるそれぞれの酵素活性と比較して増加している。
【0035】
本発明による微生物において、アルギニノコハク酸シンテターゼ(E.C.6.3.4.5)の機能を有する酵素の活性も、野生型微生物におけるそれぞれの酵素活性と比較して増加していてもよい。
【0036】
微生物における酵素活性の増加は、例えば、対応する内在性遺伝子を変異させることにより達成することができる。酵素活性を増加させるための更なる方策は、酵素をコードするmRNAを安定化させることであってもよい。また、上記酵素の活性の増加は、それぞれの酵素をコードする遺伝子を過剰発現させることによっても達成され得る。
【0037】
また、本発明による微生物は、好ましくは、オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ(EC2.1.3.3)の機能を有するタンパク質をコードする遺伝子(例えば、argF/argF2/argI)、アルギニノコハク酸シンテターゼ(E.C.6.3.4.5)の機能を有するタンパク質をコードする遺伝子(例えば、argG)、およびアルギニノコハク酸リアーゼ(E.C.4.3.2.1)の機能を有するタンパク質をコードする遺伝子(例えば、argH)からなる群より選択される少なくとも1つまたは複数の過剰発現させられた遺伝子を含む。
【0038】
さらに、本発明による微生物において、アルギニンオペロン(argCJBDFR)が過剰に発現していてもよい。
【0039】
あるいは本発明による微生物において、アルギニン応答性リプレッサータンパク質ArgRをコードするargR遺伝子は、減弱または欠失させられていてもよい。
【0040】
本発明の更なる実施形態において、また必要に応じて、上記の改変に加えて、L-アルギニンの生合成経路の酵素をコードする遺伝子であって、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、オルニチンアセチルトランスフェラーゼ、アセチルグルタミン酸キナーゼ、アセチルグルタミルリン酸レダクターゼおよびアセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼをそれぞれコードするgdh、argJ、argB、argCおよび/またはargDを含む遺伝子のうちの少なくとも1つまたは複数の遺伝子が、本発明による微生物において過剰発現させられている。
【0041】
第1表は、異なる種、すなわち大腸菌、C.glutamicumおよびシュードモナス・プチダ(P.putida)におけるアルギニン生合成に関与するかまたは寄与する酵素の異なる名称を示したものである。
【0042】
【0043】
遺伝子の過剰発現は、一般に、遺伝子のコピー数を増やすこと、および/または遺伝子を強力なプロモーターと機能的に結び付けること、および/またはリボソーム結合部位を強化すること、および/または開始コドンもしくは遺伝子全体のコドン使用の最適化、または上述の方法の選択もしくはすべてを含む組合せにより達成される。
【0044】
本発明の微生物の更なる実施形態において、L-アルギニン:グリシンアミジノトランスフェラーゼの機能を有するタンパク質をコードする遺伝子は、異種性である。
【0045】
異種遺伝子とは、本来この遺伝子を有していない宿主生物にその遺伝子が挿入されていることを意味する。宿主への異種遺伝子の挿入は、組換えDNA技術によって行われる。組換えDNA技術を受けた微生物は、トランスジェニック、遺伝子改変またはリコンビナントと呼ばれる。
【0046】
異種タンパク質とは、微生物中に天然に存在しないタンパク質を意味する。
【0047】
相同遺伝子または内在性遺伝子とは、その機能自体を含む遺伝子または遺伝子のヌクレオチド配列が微生物において天然に存在するか、または微生物において「ネイティブ」であることを意味する。
【0048】
相同タンパク質またはネイティブタンパク質とは、微生物において天然に存在するタンパク質を意味する。
【0049】
L-アルギニン:グリシンアミジノトランスフェラーゼ(AGAT)の機能を有するタンパク質は、アミジノトランスフェラーゼファミリーに属している。アミジノトランスフェラーゼファミリーは、グリシン(EC:2.1.4.1)およびイノサミン(EC:2.1.4.2)アミジノトランスフェラーゼを含み、それぞれクレアチンおよびストレプトマイシンの生合成に関与する酵素である。このファミリーには、アルギニンデイミナーゼ、EC:3.5.3.6も含まれる。これらの酵素は、反応:アルギニン+H2O<=>シトルリン+NH3を触媒する。また、このファミリーには、ストレプトコッカス抗腫瘍糖タンパク質(Streptococcus anti tumour glycoprotein)も含まれる。また、L-アルギニン:グリシン-アミジノトランスフェラーゼ(AGAT)活性を有する酵素またはタンパク質も、以下の刊行物:Pissowotzki K et al., Mol Gen Genet 1991;231:113-123 (PUBMED:1661369 EPMC:1661369); D’Hooghe I et al., J Bacteriol 1997;179:7403-7409 (PUBMED:9393705 EPMC:9393705); Kanaoka M et al., Jpn J Cancer Res 1987;78:1409-1414 (PUBMED:3123442 EPMC:3123442)に記載されているように、PFAMファミリーに属する保存ドメイン:Amidinotransf(PF02274)を持つと記載されている(: Marchler-Bauer A et al. (2017), “CDD/SPARCLE: functional classification of proteins via subfamily domain architectures.”, Nucleic Acids Res. 45(D1):D 200-D203.)。
【0050】
本発明の微生物において、L-アルギニン:グリシンアミジノトランスフェラーゼの機能を有するタンパク質をコードする遺伝子がさらに過剰発現させられていてもよい。遺伝子の過剰発現は、一般に、遺伝子のコピー数を増やすこと、および/または遺伝子を強力なプロモーターと機能的に結び付けること、および/またはリボソーム結合部位を強化すること、および/または開始コドンもしくは遺伝子全体のコドン使用の最適化、または上述の方法の選択もしくはすべてを含む組合せにより達成される。
【0051】
本発明の微生物におけるL-アルギニン:グリシンアミジノトランスフェラーゼの機能を有するタンパク質は、SEQ ID NO:11によるアミノ酸配列と少なくとも80%相同、好ましくは少なくとも90%相同なアミノ酸配列を含んでいてもよい。本発明の更なる実施形態において、L-アルギニン:グリシンアミジノトランスフェラーゼのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:11によるアミノ酸配列と同じである。
【0052】
本発明の特定の実施形態において、本発明による微生物においてグリオキシル酸アミノトランスフェラーゼの酵素活性を有するタンパク質は、SEQ ID NO:2によるアミノ酸配列、SEQ ID NO:5によるアミノ酸配列またはSEQ ID NO:8によるアミノ酸配列と少なくとも80%相同なアミノ酸配列を含む。
【0053】
本発明の微生物は、コリネバクテリウム属、好ましくはコリネバクテリウム・グルタミカム(C.glutamicum)、または腸内細菌科属、好ましくは大腸菌(E.coli)、またはシュードモナス属、好ましくはシュードモナス・プチダ(P.putida)に属するものであってもよい。
【0054】
微生物、特に本発明の微生物において、野生型微生物におけるそれぞれの活性と比較して増加したタンパク質の酵素活性は、例えば、タンパク質の変異、特に、タンパク質に例えば酵素触媒反応の産物に対するフィードバック耐性を付与する変異によって、または酵素活性を有するタンパク質をコードする遺伝子の発現が野生型微生物におけるそれぞれの遺伝子の発現と比較して増加していることによって達成することができる。
【0055】
微生物、特に本発明の微生物における遺伝子の、野生型微生物におけるそれぞれの活性と比較した発現の増加または過剰発現は、遺伝子のコピー数を増やすこと、および/または制御因子を増強すること、例えば遺伝子を強力なプロモーターと機能的に結び付けること、および/またはリボソーム結合部位を強化すること、および/または開始コドンもしくは遺伝子全体のコドン使用の最適化により達成することができる。遺伝子発現にプラスの影響を与えるそのような制御因子の増強は、例えば、プロモーターの有効性を高めるために構造遺伝子の上流のプロモーター配列を改変すること、または前述のプロモーターをより有効なもしくはいわゆる強力なプロモーターに完全に置き換えることにより達成することができる。プロモーターは、遺伝子の上流に位置する。プロモーターとは、約40~50塩基対からなるDNA配列で、RNAポリメラーゼホロ酵素の結合部位および転写開始点を構成し、それによって、制御されるポリヌクレオチドまたは遺伝子の発現の強さに影響を与えることができるものである。一般に、強力なプロモーターを選択することにより、例えば、元のプロモーターを、強力な、ネイティブな(元々他の遺伝子に割り当てられた)プロモーターと置き換えることにより、または例えばC.glutamicumについてM.Patekら(Microbial Biotechnology 6 (2013), 103-117)が教示しているように、所与のネイティブプロモーターの特定の領域(例えば、そのいわゆる-10および-35領域)をコンセンサス配列に向かって改変することにより、細菌中の遺伝子の過剰発現または発現の増加を達成することが可能である。「強力な」プロモーターの例は、スーパーオキシドジムスターゼ(sod)プロモーター(“Psod”; Z. Wang et al., Eng. Life Sci. 2015, 15, 73-82)である。「機能的に結び付ける」とは、プロモーターが遺伝子と順次配置され、これにより遺伝子の転写をもたらすことを意味すると理解される。
【0056】
遺伝暗号が縮退しているとは、あるアミノ酸が多くの異なるトリプレットでコードされている可能性があることを意味する。コドン使用という用語は、ある生物は、通常、あるアミノ酸に対応するすべての可能なコドンを同じ頻度で使用するわけではないという観察結果を意味する。その代わり、ある生物は、通常、特定のコドンに対してある種の優先傾向を示し、これらのコドンはある生物の転写遺伝子のコード配列の中でより頻繁に見出されることを意味する。将来の宿主にとって外来の、すなわち、異なる種からのある遺伝子が将来の宿主生物において発現させられるべきならば、前述の遺伝子のコード配列は、前述の将来の宿主生物のコドン使用に調整されるべきである(すなわち、コドン使用の最適化)。
【0057】
上述の課題はさらに、グアニジノ酢酸(GAA)の発酵産生方法であって、a)上記で定義した本発明による微生物を適切な培地で適切な条件下で培養するステップと、b)培地中にGAAを蓄積してGAA含有発酵ブロスを生成するステップとを含む、方法により解決される。
【0058】
本発明による方法は、発酵ブロスからGAAを単離するステップをさらに含んでもよい。
【0059】
本発明による方法は、GAAを含む発酵ブロスを乾燥および/または造粒するステップをさらに含んでもよい。
【0060】
本発明はさらに、グアニジノ酢酸-N-メチルトランスフェラーゼ(EC:2.1.1.2)の活性を有する酵素をコードする遺伝子をさらに含む、上記に定義した微生物に関するものである。好ましくは、グアニジノ酢酸-N-メチルトランスフェラーゼの活性を有する酵素をコードする遺伝子は過剰発現させられる。
【0061】
本発明はまた、クレアチンの発酵産生方法であって、a)グアニジノ酢酸-N-メチルトランスフェラーゼの活性を有する酵素をコードする遺伝子を含む本発明による微生物を適切な培地で適切な条件下で培養するステップと、b)培地中にクレアチンを蓄積させてクレアチン含有発酵ブロスを生成するステップとを含む、方法に関るものである。
【0062】
好ましくは、本方法はさらに、クレアチン含有発酵ブロスからクレアチンを単離するステップを含む。クレアチンは、等電点法および/またはイオン交換法によって発酵ブロスから抽出することができる。あるいはクレアチンは、水中で再結晶させる方法によってさらに精製することができる。
【0063】
実施例
A)材料および方法
化学物質
ストレプトマイセス・カナマイセティカス(Streptomyces kanamyceticus)由来のカナマイシン溶液は、Sigma Aldrich (St. Louis, USA, Cat. no. K0254)から購入した。IPTG(イソプロピル-β-チオガラクトピラノシド)は、Carl-Roth (Karlsruhe, Germany, Cat. no. 2316.4.)から購入した。特に断りのない限り、他のすべての化学物質は、分析的に純粋なものをMerck (Darmstadt, Germany)、Sigma Aldrich (St. Louis, USA)またはCarl-Roth (Karlsruhe, Germany)から購入した。
【0064】
細胞増殖のための培養
特に断りのない限り、培養/インキュベーションの手順は以下のとおりである:
a.Merck (Darmstadt, Germany; Cat. no. 110285)のLBブロス(MILLER)を用いて、大腸菌株を液体培地中で培養した。液体培養液(3つのバッフル付き100mlのエルレンマイヤーフラスコ当たり10mlの液体培地)を、Infors GmbH(Bottmingen, Switzerland)のInfors HT Multitron標準インキュベーターシェーカーで30℃および200rpmにてインキュベートした。
【0065】
b.Merck (Darmstadt, Germany, Cat. no. 110283)のLB寒天(MILLER)を用いて、寒天プレート上で大腸菌株を培養した。寒天プレートは、VWR (Radnor, USA)のINCU-Line(登録商標)ミニインキュベーターで30℃にてインキュベートした。
【0066】
c.Merck (Darmstadt, Germany, Cat. no. 110493)のブレインハートインフュージョン培地(BHI)を用いて、C.glutamicum株を液体培地中で培養した。液体培養液(3つのバッフル付き100mlのエルレンマイヤーフラスコ当たり10mlの液体培地)を、Infors GmbH (Bottmingen, Switzerland)のInfors HT Multitron標準インキュベーターシェーカーで30℃および200rpmにてインキュベートした。
【0067】
d.Merck (Darmstadt, Germany, Cat. no. 113825)のブレインハート寒天(BHI寒天)を用いて、寒天プレート上でC.glutamicum株を培養した。寒天プレートは、Heraeus InstrumentsのKelvitron(登録商標)温度コントローラー付きインキュベーター(Hanau, Germany)で30℃にてインキュベートした。
【0068】
e.エレクトロポレーション後にC.glutamicumを培養するために、BHI寒天(Merck, Darmstadt, Germany, Cat. no. 113825)に、134g/lのソルビトール(Carl Roth GmbH + Co. KG, Karlsruhe, Germany)、2.5g/lの酵母エキス(Oxoid/ThermoFisher Scientific, Waltham, USA, Cat. no. LP0021)および25mg/lのカナマイシンを添加した。寒天プレートは、Heraeus InstrumentsのKelvitron(登録商標)温度コントローラー付きインキュベーター(Hanau, Germany)で30℃にてインキュベートした。
【0069】
細菌懸濁液の光学密度の測定
a.Eppendorf AG (Hamburg, Germany)のBioPhotometerを用いて、振とうフラスコ培養における細菌懸濁液の光学密度を600nm(OD600)で測定した。
【0070】
b.Tecan Group AG (Maennedorf, Switzerland)のGENios(商標)プレートリーダーを用いて、Wouter Duetz(WDS)マイクロ発酵システム(24ウェルプレート)で産生した細菌懸濁液の光学密度を660nm(OD660)で測定した。
【0071】
遠心分離
a.最大容量2mlの細菌懸濁液を1.5mlまたは2mlの反応管(例えば、Eppendorf Tubes(登録商標)3810X)に入れて、Eppendorf 5417Rベンチトップ遠心機を用いて遠心分離した(5分、13.000rpm)。
【0072】
b.最大容量50mlの細菌懸濁液を15mlまたは50mlの遠心管(例えば、Falcon(商標)50mlのコニカル遠心管)に入れて、Eppendorf 5810Rベンチトップ遠心機を用いて4.000rpmで10分間遠心分離した。
【0073】
DNAの単離
Qiagen (Hilden, Germany, Cat. No. 27106)のQIAprep Spin Miniprep Kitを用いて、大腸菌細胞からプラスミドDNAを製造元の指示に従い単離した。
【0074】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)
プルーフリーディング(高忠実度)ポリメラーゼによるPCRを用いて、サンガーシーケンシングまたはDNAアセンブリのためにDNAの所望のセグメントを増幅した。非プルーフリーディングポリメラーゼキットを用いて、大腸菌またはC.glutamicumのコロニーから直接、所望のDNAフラグメントの有無を決定した。
【0075】
a.New England BioLabs Inc. (Ipswich, USA, Cat. No. M0530)のPhusion(登録商標)High-Fidelity DNA Polymerase Kit(Phusionキット)を用いて、選択したDNA領域を製造元の指示に従いテンプレート補正増幅した(第2表を参照されたい)。
【0076】
【0077】
b.Qiagen (Hilden, Germany, Cat. No.201203)のTaq PCR Core Kit(Taqキット)を用いて、所望のDNAセグメントを増幅し、その存在を確認した。キットは製造元の指示に従い用いた(第3表を参照されたい)。
【0078】
【0079】
c.Takara Bio Inc (Takara Bio Europe S.A.S., Saint-Germain-en-Laye, France, Cat. No. RR350A/B)のSapphireAmp(登録商標)Fast PCR Master Mix(Sapphire Mix)を代わりとして用いて、大腸菌またはC.glutamicumコロニーから採取した細胞中の所望のDNAセグメントの存在を製造元の指示に従い確認した(第4表を参照されたい)。
【0080】
【0081】
d.すべてのオリゴヌクレオチドプライマーを、McBride and Caruthers (1983)により記載されたホスホロアミダイト法を用いてEurofins Genomics GmbH (Ebersberg, Germany)により合成した。
【0082】
e.PCRテンプレートとして、単離されたプラスミドDNA、液体培養から単離された全DNA、または細菌コロニーに含まれる全DNAのいずれかの適切な希釈溶液を使用した(コロニーPCR)。前述のコロニーPCRでは、寒天培地上のコロニーから爪楊枝で細胞物質を採取し、その細胞物質をPCR反応管に直接入れることによりテンプレートを調製した。この細胞物質をSEVERIN Elektrogeraete GmbH (Sundern, Germany)のMikrowave & Grillタイプの電子レンジで800Wで10秒間加熱し、PCR反応管内のテンプレートにPCR試薬を添加した。
【0083】
f.すべてのPCR反応を、Eppendorf AG (Hamburg, Germany)のMastercyclerまたはMastercycler nexus gradientタイプのPCRサイクラーで行った。
【0084】
DNAの制限酵素消化
制限酵素消化のために、「FastDigest制限エンドヌクレアーゼ(FD)」(ThermoFisher Scientific, Waltham, USA)または New England BioLabs Inc. (Ipswich, USA)の制限エンドヌクレアーゼを用いた。反応は、製造元のマニュアルの指示に従い行った。
【0085】
DNAフラグメントのサイズの測定
a.小さなDNAフラグメント(<1000bps)のサイズは、通常、Qiagen (Hilden, Germany)のQIAxcelを用いた自動キャピラリー電気泳動によって測定した。
【0086】
b.DNAフラグメントを単離する必要がある場合、またはDNAフラグメントが1000bpsよりも大きい場合、DNAをTAEアガロースゲル電気泳動で分離し、GelRed(登録商標)核酸ゲル染色(Biotium, Inc., Fremont, Canada)を用いて染色した。染色したDNAを302nmで可視化した。
【0087】
PCR増幅物および制限フラグメントの精製
Qiagen (Hilden, Germany; Cat. No. 28106)のQIAquick PCR Purification Kitを用いて、PCR増幅物および制限フラグメントを製造元の指示に従いクリーンアップした。DNAを30μlの10 mM Tris・HCl(pH8.5)で溶出させた。
【0088】
DNA濃度の測定
DNA濃度を、PEQLAB Biotechnologie GmbH(2015年以降VWRブランド(Erlangen, Germany))のNanoDrop分光光度計ND-1000を用いて測定した。
【0089】
アセンブリクローニング
New England BioLabs Inc. (Ipswich, USA, Cat. No. E5520)から購入した「NEBuilder HiFi DNA Assembly Cloning Kit」を用いてプラスミドベクターをアセンブリした。線形ベクターと少なくとも1つのDNA挿入物とを含む反応混合物を50℃で60分間インキュベートした。0.5μlのアセンブリ混合物を各形質転換実験に用いた。
【0090】
大腸菌の化学形質転換
プラスミドクローニングのために、化学的にコンピテントな「NEB(登録商標)Stable Competent E.coli(High Efficiency)」(New England BioLabs Inc., Ipswich, USA, Cat. No. C3040)を製造元のプロトコルに従い形質転換させた。形質転換に成功した細胞を、25mg/lのカナマイシンを添加したLB寒天培地上で選択した。
【0091】
C.glutamicumの形質転換
プラスミド-DNAによるC.glutamicumの形質転換を、Ruanら(2015)により記載されているように、「Gene Pulser Xcell」(Bio-Rad Laboratories GmbH, Feldkirchen, Germany)を用いたエレクトロポレーションにより実施した。エレクトロポレーションは、1mmエレクトロポレーションキュベット(Bio-Rad Laboratories GmbH, Feldkirchen, Germany)において1.8kVおよび5msに設定した固定時定数で実施した。形質転換した細胞は、134g/lのソルビトール、2.5g/lの酵母エキスおよび25mg/lのカナマイシンを含むBHI寒天上で選択した。
【0092】
ヌクレオチド配列の決定
DNA分子のヌクレオチド配列を、Sangerらのジデオキシ鎖終結法(Proceedings of the National Academy of Sciences USA 74, 5463 - 5467, 1977)を用いたサイクルシーケンシングでEurofins Genomics GmbH (Ebersberg, Germany)により決定した。配列の可視化および評価には、Scientific & Educational Software (Denver, USA)のClonemanager Professional 9ソフトウェアを用いた。
【0093】
大腸菌およびC.glutamicum株のグリセロールストック
大腸菌およびC.glutamicumの長期保存のために、グリセロールストックを調製した。選択した大腸菌を、2g/lのグルコースを添加した10mlのLB培地で培養した。選択したC.glutamicumを、2g/lのグルコースを添加した2倍濃縮BHI培地10mlで培養した。プラスミド含有大腸菌およびC.glutamicum株を培養するための培地に、25mg/lのカナマイシンを添加した。培地は、3つのバッフル付き100mlのエルレンマイヤーフラスコに入れた。これに、コロニーから採取した細胞のループを接種した。次いで、この培養液を30℃および200rpmで18時間インキュベートした。前述のインキュベーション期間後、1.2mlの85%(v/v)滅菌グリセロールを培養液に添加した。次いで、得られたグリセロール含有細胞懸濁液を2mlずつ分注し、-80℃で保存した。
【0094】
ミリリットルスケールの培養におけるGAA産生
Duetz(2007)によるミリリットルスケール培養系を用い、菌株のGAA産生を評価した。このために、EnzyScreen BV (Heemstede, Netherlands, Cat. no. CR1424)の24ディープウェルマイクロプレート(24ウェルWDSプレート)に1ウェル当たり2.5mlの培地を充填したものを用いた。
【0095】
菌株の前培養を10mlのシード培地(SM)で行った。培地は3つのバッフル付き100mlのエルレンマイヤーフラスコに入れた。これに100μlのグリセロールストック培養液を接種し、30℃および200rpmで24時間インキュベートした。シード培地(SM)の組成を第5表に示す。
【0096】
【0097】
前述のインキュベーション期間後、前培養液の光学密度OD600を測定した。OD600が0.1になるように2.5mlの産生培地(PM)を接種するのに必要な量を前培養からサンプリングし、遠心分離(8000gで1分間)して上清を廃棄した。次いで、細胞を100μlの産生培地に再懸濁した。
【0098】
24ウェルWDSプレートの2.4ml産生培地(PM)入りウェルに、前培養から再懸濁した細胞100μlずつを接種し、本培養を開始した。産生培地(PM)の組成を第6表に示す。
【0099】
【0100】
主培養液を、Infors GmbH (Bottmingen, Switzerland)のInfors HT Multitron標準インキュベーターシェーカーで30℃および300rpmにて72時間、グルコースが完全に消費されるまでインキュベートした。懸濁液中のグルコース濃度を、LifeScan (Johnson & Johnson Medical GmbH, Neuss, Germany)の血糖値測定器OneTouch Vita(登録商標)で分析した。
【0101】
培養後、培養懸濁液をディープウェルマイクロプレートに移した。培養懸濁液の一部は、OD660を測定するために適切に希釈した。培養液の別の一部を遠心分離し、上清中のGAA濃度を以下に記載するように分析した。
【0102】
酵母ペプトンFM902中のL-アルギニンおよびグリシン含量の測定
酵母エキスFM902(Angel Yeast Co.,LTD, Hubei, P.R.China)には様々なペプチドおよびアミノ酸が含まれているため、そのL-アルギニンおよびグリシンの含量を以下のとおり測定した。
【0103】
遊離アミノ酸の測定のために、酵母エキス1gを水20mlに溶解して試料を調製した。この溶液に水を加えて全量を25mlとし、十分に混合した後、0.2μMのナイロンシリンジフィルターを用いてろ過を行った。
【0104】
総アミノ酸(遊離アミノ酸+ペプチドに結合したアミノ酸)の測定のために、酵母エキス1gを6M HCl10mlに溶解し、110℃で24時間インキュベートして試料を調製した。次いで、水を加えて全量を25mlとした。この溶液を十分に混合し、0.2μMのナイロンシリンジフィルターを用いてろ過した。
【0105】
試料中のL-アルギニンおよびグリシンの濃度は、SYKAM Vertriebs GmbH (Fuerstenfeldbruck, Germany)のSYKAM S433アミノ酸分析装置を用いたイオン交換クロマトグラフィーによって測定した。固相として、SYKAMの球状ポリスチレンベース陽イオン交換体(Peek LCA N04/Na、寸法150×4.6mm)を備えたカラムを用いた。L-アミノ酸の種類に応じて、溶出には緩衝液AとBとの混合物を用いたアイソクラティック溶出、または前述の緩衝液を用いたグラジエント溶出で分離を行う。緩衝液Aとして、20l中にクエン酸三ナトリウム263g、クエン酸120g、メタノール1100ml、37%HCl100mlおよびオクタン酸2mlを含む水溶液(最終pH3.5)を用いた。緩衝液Bとして、20l中にクエン酸三ナトリウム392g、ホウ酸100gおよびオクタン酸2mlを含む水溶液(最終pH10.2)を用いた。遊離アミノ酸は、カラム後の誘導体化によりニンヒドリンで着色し、570nmで光度計により検出した。
【0106】
第7表は、酵母エキスFM902((Angel Yeast Co.,LTD, Hubei, P.R.China))で測定した遊離および総L-アルギニンおよびグリシンの含有量と、産生培地(PM)中のその結果としての量を示す。
【0107】
【0108】
GAAの定量
試料を、HPLC「Infinity 1260」と質量分析計「Triple Quad 6420」(Agilent Technologies Inc., Santa Clara, USA)とをセットにしたものからなるAgilentの分析システムで分析した。クロマトグラフィー分離は、Atlantis HILICシリカカラム、4.6×250mm、5μm(Waters Corporation, Milford, USA)で35℃の温度で行った。移動相Aは、10mMギ酸アンモニウムと0.2%ギ酸とを含む水であった。移動相Bは90%アセトニトリルと10%水との混合物であり、10mMギ酸アンモニウムをこの混合物に加えた。HPLCシステムは100%Bでスタートし、その後22分間、0.6mL/minの一定流速で66%Bまでリニアグラジェントした。質量分析計はESIポジティブイオン化モードで操作した。GAAを検出するために、m/z値はMRMフラグメント[M+H]+118-76を用いてモニターした。GAAの定量下限(LOQ)は7ppmに固定した。
【0109】
B)実験結果
実施例1:シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)由来のグリオキシル酸アミノトランスフェラーゼをコードする遺伝子GGT1のクローニング
シロイヌナズナの遺伝子GGT1(Genbankアクセッション番号NM_102180、SEQ ID NO:1)は、グルタミン酸:グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ(Genbankアクセッション番号NP_564192、SEQ ID NO:2)をコードする。このタンパク質は、グリオキシル酸+L-アラニン=グリシン+ピルビン酸(EC2.6.1.44)、2-オキソグルタル酸+L-アラニン=L-グルタミン酸+ピルビン酸(EC2.6.1.2)、および2-オキソグルタル酸+グリシン=グリオキシル酸+L-グルタミン酸の反応を触媒することが分かった(EC2.6.1.4;Liepman AH, Olsen LJ., Plant Physiol. 2003 Jan;131(1):215-27. doi: 10.1104/pp.011460)。
【0110】
ソフトウェアツール「コドン最適化ツール」(Integrated DNA Technologies Inc., Coralville, Iowa, USA)を用いて、GGT1タンパク質のアミノ酸配列を、C.glutamicumのコドン使用に最適化したDNA配列に翻訳し直した。オープンリーディングフレームの直接上流にシャイン・ダルガノ配列を追加し(AGGAAAGGAGAGGATTG;Shi, 2018)、得られた配列の末端をその後のサブクローニングのためのモチーフで拡張した。得られたDNA配列AtGGT1_opt_RBS(SEQ ID NO:3)は、Eurofins Genomics GmbH (Ebersberg, Germany)から遺伝子合成用に注文し、それはアンピシリンに対する耐性を付与したクローニングプラスミド(pEX-A258-AtGGT1_opt_RBSと表記)の一部として提供した。
【0111】
実施例2:シロイヌナズナ由来のグリオキシル酸アミノトランスフェラーゼをコードする遺伝子GGT2のクローニング
シロイヌナズナの遺伝子AOAT2(シノニム:GGT2)(Genbankアクセッション番号NM_001036185、SEQ ID NO:4)は、アラニン-2-オキソグルタル酸アミノトランスフェラーゼ2(Genbankアクセッション番号NP_001031262、SEQ ID NO:5)をコードする。このタンパク質は、グリオキシル酸+L-アラニン=グリシン+ピルビン酸(EC2.6.1.44)、2-オキソグルタル酸+L-アラニン=L-グルタミン酸+ピルビン酸(EC2.6.1.2)、および2-オキソグルタル酸+グリシン=グリオキシル酸+L-グルタミン酸の反応を触媒することが分かった(EC2.6.1.4;Liepman AH, Olsen LJ., Plant Physiol. 2003 Jan;131(1):215-27. doi: 10.1104/pp.011460)。
【0112】
ソフトウェアツール「コドン最適化ツール」(Integrated DNA Technologies Inc., Coralville, Iowa, USA)を用いて、GGT2タンパク質のアミノ酸配列を、C.glutamicumのコドン使用に最適化したDNA配列に翻訳し直した。オープンリーディングフレームの直接上流にシャイン・ダルガノ配列を追加し(AGGAAAGGAGAGGATTG;Shi, 2018)、得られた配列の末端をその後のサブクローニングのためのモチーフで拡張した。得られたDNA配列AtGGT2_opt_RBS(SEQ ID NO:6)は、Eurofins Genomics GmbH (Ebersberg, Germany)から遺伝子合成用に注文し、それはアンピシリンに対する耐性を付与するクローニングプラスミド(pEX-A258-AtGGT2_opt_RBSと表記)の一部として提供した。
【0113】
実施例3:超好熱性古細菌(Thermococcus litoralis)由来のグリオキシル酸アミノトランスフェラーゼをコードする遺伝子agtのクローニング
超好熱性古細菌の遺伝子agt(Genbankアクセッション番号AB033996、SEQ ID NO:7)は、アラニン:グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ(Genbankアクセッション番号BAB40321、SEQ ID NO:8)をコードする。このタンパク質は、グリオキシル酸+L-アラニン=グリシン+ピルビン酸(EC2.6.1.44)およびグリオキシル酸+L-セリン=グリシン+3-ヒドロキシピルビン酸の反応を触媒することが分かった(EC2.6.1.45;Sakuraba, 2004)。
【0114】
ソフトウェアツール「コドン最適化ツール」(Integrated DNA Technologies Inc., Coralville, Iowa, USA)を用いて、Agtタンパク質のアミノ酸配列を、C.glutamicumのコドン使用に最適化したDNA配列に翻訳し直した。オープンリーディングフレームの直接上流にシャイン・ダルガノ配列を追加し(AGGAAAGGAGAGGATTG;Shi, 2018)、得られた配列の末端をその後のサブクローニングのためのモチーフで拡張した。得られたDNA配列(SEQ ID NO:9)は、Eurofins Genomics GmbH (Ebersberg, Germany)から遺伝子合成用に注文し、それはアンピシリンに対する耐性を付与したクローニングプラスミド(pEX-A258-AGT_Tl_opt_RBSと表記)の一部として提供した。
【0115】
実施例4:モオレア・プロドゥケンス(Moorea producens)由来のL-アルギニン:グリシンアミジノトランスフェラーゼ(AGAT、EC2.1.4.1)をコードする遺伝子AGAT_Mpのクローニング
モオレア・プロドゥケンスは糸状シアノバクテリアである。モオレア・プロドゥケンス株PAL-8-15-08-1のゲノムは、Leaoらによって公開された(Leao T, Castelao G, Korobeynikov A, Monroe EA, Podell S, Glukhov E, Allen EE, Gerwick WH, Gerwick L, Proc Natl Acad Sci U S A. 2017 Mar 21;114(12):3198-3203. doi: 10.1073/pnas.1618556114;Genbankアクセッション番号CP017599.1)。それはL-アルギニン:グリシンアミジノトランスフェラーゼ(AGAT、EC2.1.4.1;SEQ ID NO:10に示されるlocus_tag BJP34_00300)を推定上コードするオープンリーディングフレームを含む。SEQ ID NO:11は、由来するアミノ酸配列を示す(Genbankアクセッション番号WP_070390602)。
【0116】
ソフトウェアツール「コドン最適化ツール」(Geneart/ThermoFisher Scientific, Waltham, USA)を用いて、このアミノ酸配列を、C.glutamicumのコドン使用に最適化したDNA配列に翻訳し直した。その末端はアセンブリクローニング用の配列で拡張し、オープンリーディングフレームの5塩基対上流にシャイン・ダルガノ配列(AGGA)を付加した。得られたDNA配列(SEQ ID NO:12)は、Invitrogen/Geneart (Thermo Fisher Scientific, Waltham, USA)から遺伝子合成用に注文し、それはクローニングプラスミド(pMA-T_AGAT_Mpと表記)の一部として提供した。
【0117】
実施例5:AGAT_Mpの発現プラスミドpEC-XK99Eへのクローニング
大腸菌-C.glutamicumシャトルプラスミドpEC-XK99E(Genbankアクセッション番号AY219682)を、制限エンドヌクレアーゼSmaIを用いて消化した。「FastAP温度感受性アルカリホスファターゼ(FastAP Thermosensitive Alkaline Phosphatase)」(Thermo Fisher Scientific, Waltham, USA)を用いて末端リン酸塩を除去した。次いで、DNAを「QIAquick PCR Purification Kit」(Qiagen GmbH, Hilden, Germany)を用いて精製した。
【0118】
クローニングプラスミドpMA-T_AGAT_MpをMluI+AatIIで消化し、得られたフラグメントを「Fast DNA末端修復キット(Fast DNA End Repair Kit)」(Thermo Fisher Scientific, Waltham, USA)を用いて鈍化させた。それらをアガロースゲル電気泳動(TAE緩衝液中0.8%アガロース)で分離し、「AGAT_Mp」に相当するバンド(1174bp)を切断した。そのDNAは、「QIAquick Gel Extraction Kit」(Qiagen GmbH, Hilden, Germany)を用いて精製した。
【0119】
AGAT_Mpフラグメントと線状化したpEC-XK99Eとを「Ready-To-Go T4 DNA ligase」(GE Healthcare Europe GmbH, Freiburg, Germany)を用いてライゲーションさせた。ライゲーション産物を「NEB Stable Competent E. coli(High Efficiency)」(New England Biolabs, Ipswich, USA)に形質転換し、カナマイシン25mg/lを含むLB寒天培地で細胞を増殖させた。制限酵素消化およびDNAシーケンシングにより、適切なクローンを同定した。得られたプラスミドをpEC-XK99E_AGAT_Mpと命名した。
【0120】
実施例6:グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ遺伝子の発現プラスミドpEC-XK99E_AGAT_Mpへのクローニング
プラスミドpEC-XK99E_AGAT_Mpを制限エンドヌクレアーゼBamHIを用いて消化し、「FastAP温度感受性アルカリホスファターゼ(FastAP Thermosensitive Alkaline Phosphatase)」(Thermo Fisher Scientific, Waltham, USA)を用いて末端リン酸を除去した。次いで、消化したDNAを「QIAquick Gel Extraction Kit」(Qiagen GmbH, Hilden, Germany)を用いて精製した。
【0121】
クローニングプラスミドpEX-A258-AtGGT1_opt_RBS、pEX-A258-AtGGT2_opt_RBSおよびpEX-A258-AGT_Tl_opt_RBSは、各々BamHIおよびBsaIで消化された。切断したプラスミドは、「QIAquick Gel Extraction Kit」(Qiagen GmbH, Hilden, Germany)を用いて精製した。
【0122】
消化したpEC-XK99E_AGAT_Mpを、消化した各クローニングプラスミドと共に「Ready-To-Go T4 DNA ligase」(GE Healthcare Europe GmbH, Freiburg, Germany)を用いてライゲーションさせた。ライゲーション産物を「NEB Stable Competent E. coli(High Efficiency)」(New England Biolabs, Ipswich, USA)に形質転換し、カナマイシン25mg/lを含むLB寒天培地で細胞を増殖させた。制限酵素消化およびDNAシーケンシングにより、適切なクローンを同定した。
【0123】
得られたプラスミドを第8表に示す。これらは、強力なIPTG誘導性trc-プロモーターの制御下にオペロン様構造でAGAT_Mp遺伝子とそれぞれのグリオキシル酸アミノトランスフェラーゼとを提供する。
【0124】
【0125】
実施例7:ATCC13032におけるcarABオペロン上流へのsodプロモーターの染色体挿入
L-アルギニンの産生を向上させるために、ATCC13032のゲノムに、carABオペロンの上流で強力なsodプロモーターを挿入した。したがって、プラスミドpK18mobsacB_Psod-carABを、以下のとおり構築した。pK18mobsacB(Schaefer, 1994)をEcoRI+HindIIIで切断し、アガロースゲルから線状化したベクターDNA(5670bps)を切断した。「QIAquick PCR Purification Kit」(Qiagen GmbH, Hilden, Germany)を用いてDNAを抽出した。
【0126】
挿入物の構築のために、以下のプライマー対を用いたPCRにより3つのDNAフラグメントを作製した(ATCC13032のゲノムDNAをテンプレートとする):
PsodcarAB-LA-F(SEQ ID NO:13)+PsodcarAB-LA-R(SEQ ID NO:14)
=左ホモロジーアーム(1025bps)
PsodcarAB-F(SEQ ID NO:15)+PsodcarAB-R(SEQ ID NO:16)
=sod-プロモーター(250bps)
PsodcarAB-RA-F(SEQ ID NO:17)+PsodcarAB-RA-R(SEQ ID NO:18)
=右ホモロジーアーム(944bps)
「QIAquick PCR Purification Kit」(Qiagen GmbH, Hilden, Germany)を用いて産物DNAを精製した。次いで、線状化したプラスミドとPCR産物とを、「NEBuilder HiFi DNA Assembly Cloning Kit」(New England BioLabs Inc., Ipswich, USA, Cat. No. E5520)を用いてアセンブリした。制限消化およびDNAシーケンシングにより、適切なプラスミドクローンを同定した。
【0127】
次いで、得られたプラスミドpK18mobsacB_Psod-carABを、エレクトロポレーションによりATCC13032に形質転換した。134g/lのソルビトール、2.5g/lの酵母エキスおよび25mg/lのカナマイシンを添加したBHI寒天上にプレーティングすることにより、(1回目の組換えイベントから生じた)染色体統合を選択した。寒天プレートは33℃で48時間インキュベートした。
【0128】
個々のコロニーを新鮮な寒天プレート(25mg/lのカナマイシン入り)に移し、33℃で24時間インキュベートした。これらのクローンの液体培養液を、3つのバッフル付き100mlのエルレンマイヤーフラスコに入れた10mlのBHI培地で33℃にて24時間培養した。2回目の組換えイベントに遭遇したクローンを単離するために、各液体培養液からアリコートを取り、適切に希釈し、10%サッカロースを添加したBHI寒天上にプレーティングした(通常100~200μl)。これらの寒天プレートを33℃で48時間インキュベートした。次いで、サッカロースを含む寒天培地プレート上で成長するコロニーを、カナマイシン感受性について調べた。そのために、爪楊枝を用いてコロニーから細胞物質を取り除き、25mg/lのカナマイシンを含むBHI寒天培地上と10%サッカロースを含むBHI寒天培地上とに移した。寒天プレートを33℃で60時間インキュベートした。カナマイシンに感受性でサッカロースに耐性を示すクローンは、PCRおよびDNAシーケンシングによって、sodプロモーターが適切に組み込まれているかどうか調べた。得られた菌株をATCC13032_Psod-carABと命名した。
【0129】
実施例8:C.glutamicum ATCC13032における遺伝子aceB(NCgl2247)の染色体欠失
グリオキシル酸からL-リンゴ酸への代謝フラックスを減少させるために、リンゴ酸シンターゼ(EC2.3.3.9)をコードする遺伝子aceB(NCgl2247)をATCC13032株で欠失させた。
【0130】
したがって、プラスミドpK18mobsacB_DaceBを、以下のとおり構築した。プラスミドpK18mobsacB(Schaefer, 1994)をXbaIで切断し、線状化したベクターDNA(5721bps)を「QIAquick Gel Extraction Kit」(Qiagen GmbH, Hilden, Germany)を用いて精製した。
【0131】
挿入物の構築のために、以下のプライマー対を用いたPCRにより2つのDNAフラグメントを作製した(ATCC13032のゲノムDNAをテンプレートとする):
1f-aceB-D2_vec(SEQ ID NO:19)+1r-aceB-D2_aceB(SEQ ID NO:20)
=左ホモロジーアーム(1065bps)
2f-aceB-D2_aceB(SEQ ID NO:21)+2r-aceB_D2_Vec(SEQ ID NO:22)
=左ホモロジーアーム(1080bps)
「QIAquick PCR Purification Kit」(Qiagen GmbH, Hilden, Germany)を用いて産物DNAを精製した。
【0132】
次いで、線状化したプラスミドとPCR産物とを、「NEBuilder HiFi DNA Assembly Cloning Kit」(New England BioLabs Inc., Ipswich, USA, Cat. No. E5520)を用いてアセンブリした。得られた欠失ベクターをpK18mobsacB_DaceBと命名した。制限酵素消化およびDNAシーケンシングにより確認した。
【0133】
aceB遺伝子を欠失させるために、pK18mobsacB_DaceBをATCC13032にエレクトロポレーションにより形質転換した。134g/lのソルビトール、2.5g/lの酵母エキスおよび25mg/lのカナマイシンを添加したBHI寒天培地にプレーティングすることにより、(1回目の組換えイベントから生じた)染色体統合を選択した。寒天プレートは33℃で48時間インキュベートした。
【0134】
個々のコロニーを新鮮な寒天プレート(25mg/lのカナマイシン入り)に移し、33℃で24時間インキュベートした。これらのクローンの液体培養液を、3つのバッフル付き100mlのエルレンマイヤーフラスコに入れた10mlのBHI培地で33℃にて24時間培養した。2回目の組換えイベントに遭遇したクローンを単離するために、各液体培養液からアリコートを取り、適切に希釈し、10%サッカロースを添加したBHI寒天上にプレーティングした(通常100~200μl)。これらの寒天プレートを33℃で48時間インキュベートした。次いで、サッカロースを含む寒天培地プレート上で成長したコロニーを、カナマイシン感受性について調べた。そのために、爪楊枝を用いてコロニーから細胞物質を取り除き、25mg/lのカナマイシンを含むBHI寒天培地上と10%サッカロースを含むBHI寒天培地上とに移した。寒天プレートを33℃で60時間インキュベートした。カナマイシンに感受性でサッカロースに耐性を示すクローンは、PCRおよびDNAシーケンシングによって、sodプロモーターが適切に組み込まれているかどうかを調べた。得られた菌株をATCC13032_DaceBと命名した。
【0135】
実施例9:C.glutamicum ATCC13032_Psod-carABにおける遺伝子aceB(NCgl2247)の染色体欠失
グリオキシル酸からL-リンゴ酸への代謝フラックスを減少させるために、リンゴ酸シンターゼ(EC2.3.3.9)をコードする遺伝子aceB(NCgl2247)を、ATCC13032_Psod-carAB株で欠失させることにした。
【0136】
aceB遺伝子を欠失させるために、pK18mobsacB_DaceBをATCC13032_Psod-carABにエレクトロポレーションにより形質転換した。134g/lのソルビトール、2.5g/lの酵母エキスおよび25mg/lのカナマイシンを添加したBHI寒天培地にプレーティングすることにより、(1回目の組換えイベントから生じた)染色体統合を選択した。寒天プレートは33℃で48時間インキュベートした。
【0137】
個々のコロニーを新鮮な寒天プレート(25mg/lのカナマイシン入り)に移し、33℃で24時間インキュベートした。これらのクローンの液体培養液を、3つのバッフル付き100mlのエルレンマイヤーフラスコに入れた10mlのBHI培地で33℃にて24時間培養した。2回目の組換えイベントに遭遇したクローンを単離するために、各液体培養液からアリコートを取り、適切に希釈し、10%サッカロースを添加したBHI寒天上にプレーティングした(通常100~200μl)。これらの寒天プレートを33℃で48時間インキュベートした。次いで、サッカロースを含む寒天培地プレート上で成長したコロニーを、カナマイシン感受性について調べた。そのために、爪楊枝を用いてコロニーから細胞物質を取り除き、25mg/lのカナマイシンを含むBHI寒天培地上と10%サッカロースを含むBHI寒天培地上とに移した。寒天培地を33℃で60時間インキュベートした。カナマイシンに感受性でサッカロースに耐性を示すクローンは、PCRおよびDNAシーケンシングによって、sodプロモーターが適切に組み込まれているかどうかを調べた。得られた菌株をATCC13032_Psod-carAB_DaceBと命名した。
【0138】
【0139】
実施例10:各種発現プラスミドを用いたC.glutamicum株の形質転換
以下のC.glutamicumの菌株をエレクトロポレーションによりプラスミドで形質転換した(第10表)。プラスミドを含む細胞は25mg/lのカナマイシン入りで選択した。
【0140】
・ C.glutamicum ATCC13032:一般に用いられる野生型株(Kinoshita et al., J. Gen. Appl. Microbiol. 1957; 3(3): 193-205)
・ C.glutamicum ATCC13032_DaceB:ATCC13032のaceB遺伝子の染色体欠失によるリンゴ酸シンターゼの活性の低下
・ C.glutamicum ATCC13032_Psod-carAB_DaceB:ATCC13032におけるaceB遺伝子の染色体欠失によるリンゴ酸シンターゼの活性低下とcarABの上流での強力なsodプロモーターの染色体統合によるL-アルギニン産生能力の向上。
【0141】
【0142】
実施例11:リンゴ酸シンターゼの活性低下がGAA産生に及ぼす影響
リンゴ酸シンターゼの酵素活性の低下がGAA産生に及ぼす影響を評価するために、ATCC13032/pEC-XK99E株、ATCC13032/pEC-XK99E_AGAT_Mp株、およびATCC13032_DaceB/pEC-XK99E_AGAT_Mp株をWouter Duetzシステムで培養し、得られるGAA力価を測定した。産生培地(PM)には40g/lのD-グルコースおよび1.90g/LのL-アルギニンが含まれていたが、グリシンは追加していない。
【0143】
【0144】
第11表に示すように、ATCC13032/pEC-XK99E株は、検出可能な量のGAAを産生しなかった。
【0145】
モオレア・プロドゥケンス由来のAGATをコードするポリヌクレオチドを有するATCC13032/pEC-XK99E_AGAT_Mp株は、122mg/LのGAAを産生した。
【0146】
モオレア・プロドゥケンス由来のAGATをコードするポリヌクレオチドと、欠失したaceB遺伝子とを有するATCC13032_DaceB/pEC-XK99E_AGAT_Mp株は、155mg/LのGAAを産生した。
【0147】
AGAT酵素活性が存在する場合、リンゴ酸シンターゼの酵素活性を低下させることによりGAA産生が向上すると結論付けた。
【0148】
実施例12:リンゴ酸シンターゼの活性低下とグリオキシル酸アミノトランスフェラーゼの活性増加との組み合わせがGAA産生に及ぼす影響
リンゴ酸シンターゼの酵素活性低下とグリオキシル酸アミノトランスフェラーゼの活性増加との組み合わせがGAA産生に及ぼす影響を評価するために、ATCC13032_DaceB/pEC-XK99E_AGAT_Mp_AtGGT1株、ATCC13032_DaceB/pEC-XK99E_AGAT_Mp_AtGGT2株、およびATCC13032_DaceB/pEC-XK99E_AGAT_Mp_AGT_Tl株をWouter Duetzシステムで培養し、得られるGAA力価を測定した。産生培地(PM)には、40g/lのD-グルコースおよび1.90g/LのL-アルギニンが含まれていたが、グリシンは追加していない。
【0149】
【0150】
第12表に示すように、モオレア・プロドゥケンス由来のAGATをコードするポリヌクレオチドと欠失したaceB遺伝子とを有するATCC13032_DaceB/pEC-XK99E_AGAT_Mpは、155mg/LのGAAを産生した。
【0151】
ATCC13032_DaceB/pEC-XK99E_AGAT_Mp_AtGGT1株、ATCC13032_DaceB/pEC-XK99E_AGAT_Mp_AtGGT2株、およびATCC13032_DaceB/pEC-XK99E_AGAT_Mp_AGT_Tl株も、モオレア・プロドゥケンス由来のAGATをコードするポリヌクレオチドと欠失したaceB遺伝子とを有している。さらに、各株は、グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼをコードするポリヌクレオチドを有している。これらの株は、それぞれ236mg/l、242mg/l、および180mg/lのGAAを産生した。
【0152】
AGAT酵素活性が存在する場合、リンゴ酸シンターゼ活性の低下とグリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ活性の増加との組み合わせによりGAA産生が向上すると結論付けた。
【0153】
実施例13:リンゴ酸シンターゼの活性低下とL-アルギニン産生能力の向上との組み合わせがGAA産生に及ぼす影響
リンゴ酸シンターゼの活性低下とL-アルギニン産生能力の向上とがGAA産生に及ぼす影響を評価するために、ATCC13032_DaceB/pEC-XK99E_AGAT_Mp株およびATCC13032_Psod-carAB_DaceB/pEC-XK99E_AGAT_Mp株をWouter Duetzシステムで培養し、得られるGAA力価を測定した。染色体遺伝子carAおよびcarBの上流に強力なsod-プロモーターを挿入したことにより、後者の株は、向上したL-アルギニン産生能力を有している。産生培地(PM)には、40g/lのD-グルコースおよび1.90g/LのL-アルギニンが含まれていたが、グリシンは追加していない。
【0154】
【0155】
第13表に示すように、モオレア・プロドゥケンス由来のAGATをコードするポリヌクレオチドと欠失したaceB遺伝子とを有するATCC13032_DaceB/pEC-XK99E_AGAT_Mpは、155mg/LのGAAを産生した。
【0156】
ATCC13032_Psod-carAB_DaceB/pEC-XK99E_AGAT_Mp株も、モオレア・プロドゥケンス由来のAGATをコードするポリヌクレオチドと欠失したaceB遺伝子とを有している。さらに、それはL-アルギニン産生能力も向上している。この株は243mg/lのGAAを産生した。
【0157】
AGAT酵素活性が存在する場合、リンゴ酸シンターゼ活性の低下とL-アルギニン産生能力の向上との組み合わせによりGAA産生が向上すると結論付けた。
【0158】
実施例14:リンゴ酸シンターゼ活性の低下、グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ活性の増加およびL-アルギニン産生能力の向上がGAA産生に及ぼす複合的な影響
リンゴ酸シンターゼ活性の低下、グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ活性の増加およびL-アルギニン産生能力の向上がGAA産生に及ぼす複合的な影響を評価するために、ATCC13032_DaceB/pEC-XK99E_AGAT_Mp_AtGGT1株、ATCC13032_DaceB/pEC-XK99E_AGAT_Mp_AtGGT2株、ATCC13032_DaceB/pEC-XK99E_AGAT_Mp_AGT_Tl株、ATCC13032_Psod-carAB_DaceB/pEC-XK99E_AGAT_Mp_AtGGT1株、ATCC13032_Psod-carAB_DaceB/pEC-XK99E_AGAT_Mp_AtGGT2株、およびATCC13032_Psod-carAB_DaceB/pEC-XK99E_AGAT_Mp_AGT_TlをWouter Duetzシステムで培養し、得られるGAA力価を測定した。染色体遺伝子carAおよびcarBの上流に強力なsodプロモーターを挿入したことにより、後者の3株は、向上したL-アルギニン産生能力を有している。産生培地(PM)には、40g/lのD-グルコースおよび1.90g/LのL-アルギニンが含まれているが、グリシンは追加していない。
【0159】
【0160】
表14に示すように、モオレア・プロドゥケンス由来のAGATをコードするポリヌクレオチド、欠失したaceB遺伝子、およびグリオキシル酸アミノトランスフェラーゼをコードするポリヌクレオチドを有するATCC13032_DaceB/pEC-XK99E_AGAT_Mp_AtGT1株、ATCC13032_DaceB/pEC-XK99E_AGAT_Mp_AtGT2株、ATCC13032_DaceB/pEC-XK99E_AGAT_Mp_Agt_Tl株は、それぞれ236mg/l、242mg/lおよび180mg/lのGAAを産生した。
【0161】
ATCC13032_Psod-carAB_DaceB/pEC-XK99E_AGAT_Mp_AtGGT1株、ATCC13032_Psod-carAB_DaceB/pEC-XK99E_AGAT_Mp_AtGGT2株、およびATCC13032_Psod-carAB_DaceB/pEC-XK99E_AGAT_Mp_AGT_Tl株も、モオレア・プロドゥケンス由来のAGATをコードするポリヌクレオチド、欠失したaceB遺伝子、およびグリオキシル酸アミノトランスフェラーゼをコードするポリヌクレオチドを有している。さらに、それらは向上したL-アルギニン産生能力を有している。これらの株は、それぞれ362mg/l、354mg/l、および331mg/lのGAAを産生した。
【0162】
AGAT酵素活性、リンゴ酸シンターゼ活性の低下、グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ活性の増加、およびL-アルギニン産生能力の向上の組み合わせによりGAA産生が向上すると結論付けた。
【配列表】