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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-10-17
(45)【発行日】2025-10-27
(54)【発明の名称】白金族金属を蓄積する微生物
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/21 20060101AFI20251020BHJP
   C12N 11/00 20060101ALI20251020BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20251020BHJP
   C12N 15/31 20060101ALI20251020BHJP
   C12P 3/00 20060101ALI20251020BHJP
【FI】
C12N1/21 ZNA
C12N11/00
C12N15/09 100
C12N15/31
C12P3/00 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022565316
(86)(22)【出願日】2021-11-22
(86)【国際出願番号】 JP2021042757
(87)【国際公開番号】W WO2022113928
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2024-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2020194565
(32)【優先日】2020-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502340996
【氏名又は名称】学校法人法政大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人クオリオ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100141771
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 宏和
(72)【発明者】
【氏名】山本 兼由
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 宏樹
【審査官】山▲崎▼ 慈恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-239678(JP,A)
【文献】IWIG J. S. et al., Nickel homeostasis in Escherichia coli - the rcnR-rcnA efflux pathway and its linkage to NikR function,Molecular microbiology,2006年08月31日,vol. 62, no. 1,pp. 252-262
【文献】BLERIOT C. et al., RcnB is a periplasmic protein essential for maintaining intracellular Ni and Co concentrations in Escherichia coli,Journal of bacteriology,2011年06月10日,vol. 193, no. 15,pp. 3785-3793
【文献】SAUGE-MERLE S. et al., Heavy metal accumulation by recombinant mammalian metallothionein within Escherichia coli protects against elevated metal exposure,Chemosphere,2012年05月04日,vol. 88, no. 8,pp. 918-924
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-7/08
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
nikA遺伝子、並びに
rcnR遺伝子及びzntA遺伝子からなる群より選ばれる1種の遺伝子、
がそれぞれ欠失又は不活化されている、大腸菌
【請求項2】
前記nikA遺伝子が下記DNA(a)又は(b)からなる遺伝子である、請求項1に記載の大腸菌
(a)配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(b)前記(a)のDNAの塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつNikAをコードするDNA(ただし、前記ストリンジェントな条件が、6×SSC(1×SSCの組成:0.15M塩化ナトリウム、0.015Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.5%ドデシル硫酸ナトリウム、5×デンハート及び100mg/mLニシン精子DNAを含む溶液にプローブとともに65℃で8~16時間恒温し、ハイブリダイズさせる条件である。)
【請求項3】
前記rcnR遺伝子が下記DNA(g)又は(h)からなる遺伝子である、請求項1に記載の大腸菌
(g)配列番号4のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(h)前記(g)のDNAの塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつRcnRをコードするDNA(ただし、前記ストリンジェントな条件が、6×SSC(1×SSCの組成:0.15M塩化ナトリウム、0.015Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.5%ドデシル硫酸ナトリウム、5×デンハート及び100mg/mLニシン精子DNAを含む溶液にプローブとともに65℃で8~16時間恒温し、ハイブリダイズさせる条件である。)
【請求項4】
前記zntA遺伝子が下記DNA(i)又は(j)からなる遺伝子である、請求項1に記載の大腸菌
(i)配列番号5のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(j)前記(i)のDNAの塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつZntAをコードするDNA(ただし、前記ストリンジェントな条件が、6×SSC(1×SSCの組成:0.15M塩化ナトリウム、0.015Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.5%ドデシル硫酸ナトリウム、5×デンハート及び100mg/mLニシン精子DNAを含む溶液にプローブとともに65℃で8~16時間恒温し、ハイブリダイズさせる条件である。)
【請求項5】
nikA遺伝子、nikR遺伝子、及びrcnR遺伝子からなる群より選ばれる少なくとも1種の遺伝子が欠失又は不活化されている大腸菌、又は
nikA遺伝子、並びに、nikR遺伝子、rcnR遺伝子、及びzntA遺伝子からなる群より選ばれる1種の遺伝子、がそれぞれ欠失又は不活化されている大腸菌、
が固定化されている、パラジウムを回収又は除去するための大腸菌バイオリアクター。
【請求項6】
nikA遺伝子、nikR遺伝子、及びrcnR遺伝子からなる群より選ばれる少なくとも1種の遺伝子が欠失又は不活化されている大腸菌、又は
nikA遺伝子、並びに、nikR遺伝子、rcnR遺伝子、及びzntA遺伝子からなる群より選ばれる1種の遺伝子、がそれぞれ欠失又は不活化されている大腸菌と、
パラジウム含有媒体とを接触させ、前記媒体に含まれるパラジウムを前記大腸菌の菌体内に取込み、菌体内に取込まれたパラジウムを回収する、パラジウムの回収方法。
【請求項7】
nikA遺伝子、nikR遺伝子、及びrcnR遺伝子からなる群より選ばれる少なくとも1種の遺伝子が欠失又は不活化されている大腸菌、又は
nikA遺伝子、並びに、nikR遺伝子、rcnR遺伝子、及びzntA遺伝子からなる群より選ばれる1種の遺伝子、がそれぞれ欠失又は不活化されている大腸菌と、
パラジウム含有媒体とを接触させ、前記媒体からパラジウムを除去する、パラジウムの除去方法。
【請求項8】
nikA遺伝子、nikR遺伝子、及びrcnR遺伝子からなる群より選ばれる少なくとも1種の遺伝子が欠失又は不活化されている大腸菌、又は
nikA遺伝子、並びに、nikR遺伝子、rcnR遺伝子、及びzntA遺伝子からなる群より選ばれる1種の遺伝子、がそれぞれ欠失又は不活化されている大腸菌と、
パラジウムを含有する溶液とを接触させ、前記溶液からパラジウムを除去又は回収する、パラジウム含有溶液の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白金族金属を蓄積する微生物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車排ガス浄化用触媒に使用されるパラジウムと白金の使用量は、両者で年間約400トンであり、白金族金属の90%を占めている。電気自動車(Electric Vehicle、EV)の普及が進んでいるが、ハイブリッド自動車(Hybrid Vehicle、HV)とガソリン車の比率は今後も一定程度維持されることが予想され、排ガス浄化の必要性はなくならない。
経済産業上重要な金属材料パラジウムは日本国内の供給量が約90トンであるが、そのうち70%超がロシアや南アフリカなどからの輸入されている。日本国内需要の約80トンの40%弱が燃料自動車用の排ガス触媒に利用され、その排ガス触媒からのリサイクルが進んでいる。各国は2030年までにEV普及率が30%を超える政策を打ち出しており、現在13億台に上る世界の自動車保有数を考えると、EV車に燃料自動車が置換した将来には大量な排ガス触媒廃棄物が生じる。
他方、多様な触媒活性を示す白金族金属は、将来も有望な産業活用が期待される。白金族金属は産業上有用であるが、その供給源は埋蔵地の偏りがある鉱石のみに依存し、鉱石以外を対象とする高い選択性をもつ回収・濃縮技術の必要性が明らかとなった。したがって、循環型社会サーキュラーエコノミーを実現する新しい白金族金属資源化は喫緊の課題である。
【0003】
排ガス浄化触媒等で利用される白金族金属の現行リサイクル技術には、白金族金属の難溶解性に起因する濃縮工程が非効率であり、白金族金属間の特異的分離が困難である。そのため、リサイクル率の向上が求められている。
【0004】
包括的に理解された生物機能であるバイオプロセスは、産業上の低環境負荷・省エネルギー・低コストのメリットから様々な分野で活用されている。微量分析やゲノム生物学の高度化により勃興したメタルバイオロジーは金属の生体内機能の理解を深化し、金属精錬・回収で利用されてきたバイオテクノロジー技術を、包括的生物機能を用いるバイオプロセス技術に転換する機会を得ている。基礎学術研究としてモデル細菌である大腸菌の金属恒常性の理解から、応用探索研究として、2種の遺伝子を利用した金属蓄積大腸菌をデザインし、その金属蓄積能の向上をモリブデンにより実証した(特許文献1参照)。
【0005】
近年、原子吸光光度計、ICP-MSやICP-AESの高感度な元素分析法が生体内元素の測定に用いられ、微生物を構成する金属元素の理解が進んだ。水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄の非金属元素に加え、26種の金属元素が微生物を構成することが判明した。しかし、パラジウムが生体で利用される報告はない。
一方、パラジウムを吸着する微生物が単離され(非特許文献1~4参照)、資源化への活用が試みられて来たが、吸着の低い選択性から実用化には至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-239678号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】Steven, MY. et al. : Current opinion in biotechnology: analytical biotech. Curr Opin Biotechnol., 23, 89-95, (2007)
【文献】Lin, Z. et al. : Adsorption and reduction of palladium (Pd2+) by Bacillus licheniformis R08. Chinese Science Bulletin, 4, 357-360, (2002)
【文献】Beata, GZ. et al. : Removal of platinum and palladium from wastewater by means of biosorption on fungi Aspergillus sp. and yeast Saccharomyces sp. Water, 11, 1522, (2019)
【文献】Kim, S. et al. : Selective biosorption behavior of Escherichia coli biomass toward Pd(II) in Pt(IV)-Pd(II) binary solution. Journal of Hazardous Materials, 283, 657-662, (2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、パラジウム等の白金族金属を菌体内に蓄積できる微生物の提供を課題とする。
また、本発明は、効率的な金属の回収又は除去が可能な、金属を回収又は除去するための微生物バイオリアクターの提供を課題とする。
また、本発明は、環境に対する負荷が低く、効率的な金属の回収又は除去が可能な、金属の回収又は除去方法の提供を課題とする。
また、本発明は、環境に対する負荷が低く、効率的な金属の回収又は除去が可能な、金属含有溶液の処理方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、遺伝子組換えやゲノム編集が容易な大腸菌を用い、パラジウムを細胞内に蓄積させるバイオアキュムレーション技術により、高い選択性と回収率を目標に開発研究を行った。その結果、微生物の特定の遺伝子が欠失又は不活化された微生物が、パラジウム等の白金族金属を菌体内に蓄積できることを見出した。
本発明はこれらの知見に基づき完成するに至った。
【0010】
本発明の課題は、以下の手段によって達成された。
(1)nikA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、nikR遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、rcnA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、rcnR遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、並びにzntA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、からなる群より選ばれる少なくとも1種の遺伝子が欠失又は不活化されている微生物。
【0011】
(2)前記nikA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、並びに前記nikR遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、前記rcnR遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、及び前記zntA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、からなる群より選ばれる1種の遺伝子、がそれぞれ欠失又は不活化されている、前記(1)項に記載の微生物。
(3)前記nikA遺伝子が下記DNA(a)又は(b)からなる遺伝子である、前記(1)又は(2)項に記載の微生物。
(a)配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(b)前記(a)のDNAの塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつNikAをコードするDNA
(4)前記nikR遺伝子が下記DNA(c)又は(d)からなる遺伝子である、前記(1)又は(2)項に記載の微生物。
(c)配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(d)前記(c)のDNAの塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつNikRをコードするDNA
(5)前記rcnA遺伝子が下記DNA(e)又は(f)からなる遺伝子である、前記(1)又は(2)項に記載の微生物。
(e)配列番号3のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(f)前記(e)のDNAの塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつRcnAをコードするDNA
(6)前記rcnR遺伝子が下記DNA(g)又は(h)からなる遺伝子である、前記(1)又は(2)項に記載の微生物。
(g)配列番号4のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(h)前記(g)のDNAの塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつRcnRをコードするDNA
(7)前記zntA遺伝子が下記DNA(i)又は(j)からなる遺伝子である、前記(1)又は(2)項に記載の微生物。
(i)配列番号5のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(j)前記(i)のDNAの塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつZntAをコードするDNA
(8)前記微生物が大腸菌である、前記(1)~(7)のいずれか1項に記載の微生物。
【0012】
(9)前記(1)~(8)のいずれか1項に記載の微生物が固定化されている、金属を回収又は除去するための微生物バイオリアクター。
(10)前記金属がニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、及び白金からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属である、前記(9)項に記載の微生物バイオリアクター。
(11)前記金属がニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、及び白金からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属単体、又はニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、及び白金からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む金属化合物である、前記(9)又は(10)項に記載の微生物バイオリアクター。
(12)前記(1)~(8)のいずれか1項に記載の微生物と金属含有媒体とを接触させ、前記媒体に含まれる金属を前記微生物の菌体内に取込み、菌体内に取込まれた金属を回収する、金属の回収方法。
(13)前記金属がニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、及び白金からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属である、前記(12)項に記載の金属の回収方法。
(14)前記金属がニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、及び白金からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属単体、又はニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、及び白金からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む金属化合物である、前記(12)又は(13)項に記載の金属の回収方法。
(15)前記(1)~(8)のいずれか1項に記載の微生物と金属含有媒体とを接触させ、前記媒体から金属を除去する、金属の除去方法。
(16)前記金属がニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、及び白金からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属である、前記(15)項に記載の金属の除去方法。
(17)前記金属がニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、及び白金からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属単体、又はニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、及び白金からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む金属化合物である、前記(15)又は(16)項に記載の金属の除去方法。
(18)前記(1)~(8)のいずれか1項に記載の微生物と金属を含有する溶液とを接触させ、前記溶液から金属を除去又は回収する、金属含有溶液の処理方法。
(19)前記金属がニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、及び白金からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属である、前記(18)項に記載の金属含有溶液の処理方法。
(20)前記金属がニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、及び白金からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属単体、又はニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、及び白金からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む金属化合物である、前記(18)又は(19)項に記載の金属含有溶液の処理方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の微生物は、パラジウム等の白金族金属を菌体内に蓄積できる。
また、本発明の微生物バイオリアクターは、効率的に金属の回収又は除去が可能である。
また、本発明の金属の回収又は除去方法は、環境に対する負荷が低く、効率的に金属の回収又は除去が可能である。
また、本発明の金属含有溶液の処理方法は、環境に対する負荷が低く、効率的に金属の回収又は除去が可能である。
本発明の上記及び他の特徴及び利点は、適宜添付の図面を参照して、下記の記載からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1(a)は、ニッケルを含むM9培地における大腸菌BW25113株の増殖を示すグラフである。図1(b)は、ニッケルを含むM9培地におけるnikA遺伝子欠失株の増殖を示すグラフである。図1(c)は、ニッケルを含むM9培地におけるnikB遺伝子欠失株の増殖を示すグラフである。図1(d)は、ニッケルを含むM9培地におけるnikC遺伝子欠失株の増殖を示すグラフである。図1(e)は、ニッケルを含むM9培地におけるnikD遺伝子欠失株の増殖を示すグラフである。図1(f)は、ニッケルを含むM9培地におけるnikE遺伝子欠失株の増殖を示すグラフである。
図2図2(a)は、パラジウムを含むM9培地における大腸菌BW25113株の増殖を示すグラフである。図2(b)は、パラジウムを含むM9培地におけるnikA遺伝子欠失株の増殖を示すグラフである。
図3図3(a)は、パラジウムを含むLB培地における大腸菌BW25113株の増殖を示すグラフである。図3(b)は、パラジウムを含むLB培地におけるnikA遺伝子欠失株の増殖を示すグラフである。
図4図4(A)は、精製NikRとニッケルとのITCサームグラムと結合等温線を示すグラフである。図4(B)は、精製NikRとパラジウムとのITCサームグラムと結合等温線を示すグラフである。図4(C)は、精製NikRとコバルトとのITCサームグラムと結合等温線を示すグラフである。
図5図5(A)は、大腸菌nikA遺伝子プロモーター活性におけるパラジウムの影響を示すグラフである。図5(B)は、大腸菌輸送タンパク質遺伝子プロモーター活性におけるパラジウムの影響を示すグラフである。図5(C)は、大腸菌輸送タンパク質遺伝子プロモーター活性におけるルテニウムの影響を示すグラフである。
図6】大腸菌BW25113を親株とした各種変異体の細胞内パラジウム量を示すグラフである。
図7図7(A)は、各種大腸菌基準株における細胞内パラジウム量を示すグラフである。図7(B)は、HoSeI法により創出した大腸菌ゲノム編集株における細胞内パラジウム量を示すグラフである。
図8nikA遺伝子欠失株の作製方法を示す模式図である。
図9nikR遺伝子欠失株の作製方法を示す模式図である。
図10rcnA遺伝子欠失株の作製方法を示す模式図である。
図11rcnR遺伝子欠失株の作製方法を示す模式図である。
図12zntA遺伝子欠失株の作製方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る微生物は、後述する特定の遺伝子が欠失又は不活化された微生物である。後述する特定の遺伝子を欠失又は不活化することで、本発明に係る微生物はパラジウム等の白金族金属を菌体内に蓄積できる。
また、本明細書において「金属」とは、単体金属及び金属化合物を包含する。前記単体金属としては、ニッケル(Ni)、並びに、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)等の白金族元素が挙げられる。また、「金属化合物」とは、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む金属化合物であり、前記単体金属の酸化物、塩化物、硫化物、オキソアニオン又はその塩などが挙げられる。
【0016】
本発明において削除又は不活性化の対象となる遺伝子は、nikA遺伝子、nikR遺伝子、rcnA遺伝子、rcnR遺伝子、及びzntA遺伝子、並びに当該遺伝子に相当する遺伝子群の中から選択される。本明細書において、遺伝子の名称は、米国国立生物工学情報センター(The National Center for Biotechnology Information)により公開されている大腸菌ゲノムのデータベースに基づき記載しており(URL:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nucleotide/参照)、各遺伝子の名称、番号及び機能等を参照することができる。
以下、本発明で削除又は不活性化の対象とする遺伝子について説明する。
【0017】
本明細書における「nikA遺伝子」、タンパク質NikAをコードする遺伝子である(C Navarro, L F Wu, M A Mandrand-Berthelot, The nik operon of Escherichia coli encodes a periplasmic binding-protein-dependent transport system for nickel, Mol Microbiol. 1993;9(6):1181-91. doi: 10.1111/j.1365-2958.1993.tb01247.x.参照)。NikAは、他のタンパク質(サブユニット)と協働して、ニッケル輸送機能(ニッケル取り込み機能)を有する多量体タンパク質を構成することが知られている(Jonathan Heddle , David J Scott, Satoru Unzai, Sam-Yong Park, Jeremy R H Tame, Crystal structures of the liganded and unliganded nickel-binding protein NikA from Escherichia coli, J Biol Chem. 2003;278(50):50322-9. doi: 10.1074/jbc.M307941200参照)。また、「nikR遺伝子」は、nikA遺伝子上流に結合し、nikA遺伝子発現を抑制する転写因子である(Jeffrey S Iwig, Jessica L Rowe, Peter T Chivers, Nickel homeostasis in Escherichia coli - the rcnR-rcnA efflux pathway and its linkage to NikR function, Mol Microbiol. 2006 62(1):252-62. doi: 10.1111/j.1365-2958.2006.05369.x.参照)。
本明細書における「zntA遺伝子」は、亜鉛を体外に輸送(排出)する機能を有するタンパク質ZntAをコードする遺伝子である(C Rensing, B Mitra, B P Rosen, The zntA gene of Escherichia coli encodes a Zn(II)-translocating P-type ATPase, Proc Natl Acad Sci U S A. 1997;94(26):14326-31. doi: 10.1073/pnas.94.26.14326参照)。
また、本明細書における「rcnA遺伝子」は、ニッケルを体内から排出する機能を有するタンパク質RcnAをコードする遺伝子であり(Agnes Rodrigue, Geraldine Effantin, Marie-Andree Mandrand-Berthelot, Identification of rcnA (yohM), a nickel and cobalt resistance gene in Escherichia coli, J Bacteriol. 2005;187(8):2912-6. doi: 10.1128/JB.187.8.2912-2916.2005参照)、「rcnR遺伝子」は、rcnA遺伝子の発現を制御する機能を有するタンパク質RcnRをコードする遺伝子である(Jeffrey S Iwig, Jessica L Rowe, Peter T Chivers, Nickel homeostasis in Escherichia coli - the rcnR-rcnA efflux pathway and its linkage to NikR function, Mol Microbiol. 2006 62(1):252-62. doi: 10.1111/j.1365-2958.2006.05369.x.参照)。
これら遺伝子の全塩基配列、並びにこれらの遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸等は、米国国立生物工学情報センター(The National Center for Biotechnology Information)により公開されている大腸菌ゲノムのデータベース(URL:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nucleotide)などに記載されており、本発明はこれらを参考にすることができる。
【0018】
本発明で削除又は不活性化の対象とする遺伝子としては、例えば、前述のデータベースなどで公開されている各遺伝子の塩基配列において1若しくは数個の塩基配列が欠失、置換、若しくは付加された塩基配列からなり、かつ当該遺伝子と同じ機能を有する遺伝子が含まれる。さらに、前述のデータベースなどで公開されている各遺伝子の塩基配列において70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上の同一性を有し、かつ当該遺伝子と同じ機能を有する遺伝子も含まれる。
【0019】
前記nikA遺伝子としては、下記DNA(a)又は(b)からなる遺伝子が好ましい。配列番号1のアミノ酸配列は、大腸菌MG1655株のNikAのアミノ酸配列である。

(a)配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(b)前記(a)のDNAの塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつNikAをコードするDNA

前記DNA(b)として、配列番号1で表されるアミノ酸配列と同一性が60%以上(好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上)のアミノ酸配列からなり、かつNikA活性を有するタンパク質をコードするDNAが好ましい。
また、前記DNA(b)として、配列番号1で表されるアミノ酸配列に、1又は複数個(例えば1個以上209個以下、好ましくは1個以上183個以下、より好ましくは1個以上157個以下、より好ましくは1個以上131個以下、より好ましくは1個以上104個以下、より好ましくは1個以上78個以下、より好ましくは1個以上52個以下、より好ましくは1個以上36個以下、より好ましくは1個以上26個以下、より好ましくは1個以上15個以下、より好ましくは1個以上10個以下、より好ましくは1個以上5個以下)のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されており、かつNikA活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
【0020】
前記nikA遺伝子の具体例として、下記DNA(A)又は(B)からなる遺伝子が挙げられる。配列番号26で表される塩基配列は、大腸菌MG1655株のゲノム上のnikA遺伝子の塩基配列である。

(A)配列番号26で表される塩基配列からなるDNA。
(B)前記DNA(A)の塩基配列と同一性が60%以上(好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上)の塩基配列からなり、かつNikAをコードするDNA。

また前記DNA(B)として、前記DNA(A)の塩基配列において1又は複数個(例えば1個以上630個以下、好ましくは1個以上551個以下、より好ましくは1個以上472個以下、より好ましくは1個以上393個以下、より好ましくは1個以上315個以下、より好ましくは1個以上236個以下、より好ましくは1個以上157個以下、より好ましくは1個以上110個以下、より好ましくは1個以上78個以下、より好ましくは1個以上47個以下、より好ましくは1個以上31個以下、より好ましくは1個以上15個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつNikAをコードするDNAも好ましい。
さらに前記DNA(B)として、前記DNA(A)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつNikAをコードするDNAも好ましい。
【0021】
前記nikR遺伝子としては、下記DNA(c)又は(d)からなる遺伝子が好ましい。配列番号2のアミノ酸配列は、大腸菌MG1655株のNikRのアミノ酸配列である。

(c)配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(d)前記(c)のDNAの塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつNikRをコードするDNA

前記DNA(d)として、配列番号2で表されるアミノ酸配列と同一性が60%以上(好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上。より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上)のアミノ酸配列からなり、かつNikR活性を有するタンパク質をコードするDNAが好ましい。
また、前記DNA(d)として、配列番号2で表されるアミノ酸配列に、1又は複数個(例えば1個以上53個以下、好ましくは1個以上46個以下、より好ましくは1個以上39個以下、より好ましくは1個以上33個以下、より好ましくは1個以上26個以下、より好ましくは1個以上19個以下、より好ましくは1個以上13個以下、より好ましくは1個以上9個以下、より好ましくは1個以上6個以下、より好ましくは1個以上3個以下、より好ましくは1個以上2個以下、より好ましくは1個以下)のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されており、かつNikR活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
【0022】
前記nikR遺伝子の具体例として、下記DNA(C)又は(D)からなる遺伝子が挙げられる。配列番号27で表される塩基配列は、大腸菌MG1655株のゲノム上のnikR遺伝子の塩基配列である。

(C)配列番号27で表される塩基配列からなるDNA。
(D)前記DNA(C)の塩基配列と同一性が60%以上(好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上)の塩基配列からなり、かつNikRをコードするDNA。

また前記DNA(D)として、前記DNA(C)の塩基配列において1又は複数個(例えば1個以上160個以下、好ましくは1個以上140個以下、より好ましくは1個以上120個以下、より好ましくは1個以上100個以下、より好ましくは1個以上80個以下、より好ましくは1個以上60個以下、より好ましくは1個以上40個以下、より好ましくは1個以上28個以下、より好ましくは1個以上20個以下、より好ましくは1個以上12個以下、より好ましくは1個以上8個以下、より好ましくは1個以上4個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつNikRをコードするDNAも好ましい。
さらに前記DNA(D)として、前記DNA(C)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつNikRをコードするDNAも好ましい。
【0023】
前記rcnA遺伝子としては、下記DNA(e)又は(f)からなる遺伝子が好ましい。配列番号3のアミノ酸配列は、大腸菌MG1655株のRcnAのアミノ酸配列である。

(e)配列番号3のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(f)前記(e)のDNAの塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつRcnAをコードするDNA

前記DNA(f)として、配列番号3で表されるアミノ酸配列と同一性が60%以上(好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上)のアミノ酸配列からなり、かつRcnA活性を有するタンパク質をコードするDNAが好ましい。
また、前記DNA(f)として、配列番号3で表されるアミノ酸配列に、1又は複数個(例えば1個以上109個以下、好ましくは1個以上95個以下、より好ましくは1個以上82個以下、より好ましくは1個以上68個以下、より好ましくは1個以上54個以下、より好ましくは1個以上41個以下、より好ましくは1個以上27個以下、より好ましくは1個以上19個以下、より好ましくは1個以上13個以下、より好ましくは1個以上8個以下、より好ましくは1個以上5個以下、より好ましくは1個以上2個以下)のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されており、かつRcnA活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
【0024】
前記rcnA遺伝子の具体例として、下記DNA(E)又は(F)からなる遺伝子が挙げられる。配列番号28で表される塩基配列は、大腸菌MG1655株のゲノム上のrcnA遺伝子の塩基配列である。

(E)配列番号28で表される塩基配列からなるDNA。
(F)前記DNA(E)の塩基配列と同一性が60%以上(好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上。より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上)の塩基配列からなり、かつRcnAをコードするDNA。

また前記DNA(F)として、前記DNA(E)の塩基配列において1又は複数個(例えば1個以上330個以下、好ましくは1個以上288個以下、より好ましくは1個以上247個以下、より好ましくは1個以上206個以下、より好ましくは1個以上165個以下、より好ましくは1個以上123個以下、より好ましくは1個以上82個以下、より好ましくは1個以上57個以下、より好ましくは1個以上41個以下、より好ましくは1個以上24個以下、より好ましくは1個以上16個以下、より好ましくは1個以上8個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつRcnAをコードするDNAも好ましい。
さらに前記DNA(F)として、前記DNA(E)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつRcnAをコードするDNAも好ましい。
【0025】
前記rcnR遺伝子としては、下記DNA(g)又は(h)からなる遺伝子が好ましい。配列番号4のアミノ酸配列は、大腸菌MG1655株のRcnRのアミノ酸配列である。

(g)配列番号4のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(h)前記(g)のDNAの塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつRcnRをコードするDNA

前記DNA(h)として、配列番号4で表されるアミノ酸配列と同一性が60%以上(好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上)のアミノ酸配列からなり、かつRcnR活性を有するタンパク質をコードするDNAが好ましい。
また、前記DNA(h)として、配列番号4で表されるアミノ酸配列に、1又は複数個(例えば1個以上36個以下、好ましくは1個以上31個以下、より好ましくは1個以上27個以下、より好ましくは1個以上22個以下、より好ましくは1個以上18個以下、より好ましくは1個以上13個以下、より好ましくは1個以上9個以下、より好ましくは1個以上6個以下、より好ましくは1個以上4個以下、より好ましくは1個以上2個以下、より好ましくは1個)のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されており、かつRcnR活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
【0026】
前記rcnR遺伝子の具体例として、下記DNA(G)又は(H)からなる遺伝子が挙げられる。配列番号29で表される塩基配列は、大腸菌MG1655株のゲノム上のrcnR遺伝子の塩基配列である。

(G)配列番号29で表される塩基配列からなるDNA。
(H)前記DNA(G)の塩基配列と同一性が60%以上(好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上)の塩基配列からなり、かつRcnRをコードするDNA。

また前記DNA(H)として、前記DNA(G)の塩基配列において1又は複数個(例えば1個以上109個以下、好ましくは1個以上95個以下、より好ましくは1個以上81個以下、より好ましくは1個以上68個以下、より好ましくは1個以上54個以下、より好ましくは1個以上40個以下、より好ましくは1個以上27個以下、より好ましくは1個以上19個以下、より好ましくは1個以上13個以下、より好ましくは1個以上8個以下、より好ましくは1個以上5個以下、より好ましくは1個以上2個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつRcnRをコードするDNAも好ましい。
さらに前記DNA(H)として、前記DNA(G)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつRcnRをコードするDNAも好ましい。
【0027】
前記zntA遺伝子としては、下記DNA(i)又は(j)からなる遺伝子が好ましい。配列番号5のアミノ酸配列は、大腸菌MG1655株のZntAのアミノ酸配列である。

(i)配列番号5のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(j)前記(i)のDNAの塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつZntAをコードするDNA

前記DNA(j)として、配列番号5で表されるアミノ酸配列と同一性が60%以上(好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上)のアミノ酸配列からなり、かつZntA活性を有するタンパク質をコードするDNAが好ましい。
また、前記DNA(j)として、配列番号5で表されるアミノ酸配列に、1又は複数個(例えば1個以上292個以下、好ましくは1個以上256個以下、より好ましくは1個以上219個以下、より好ましくは1個以上183個以下、より好ましくは1個以上146個以下、より好ましくは1個以上109個以下、より好ましくは1個以上73個以下、より好ましくは1個以上51個以下、より好ましくは1個以上36個以下、より好ましくは1個以上21個以下、より好ましくは1個以上14個以下、より好ましくは1個以上7個以下)のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されており、かつZntA活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
【0028】
前記zntA遺伝子の具体例として、下記DNA(I)又は(J)からなる遺伝子が挙げられる。配列番号30で表される塩基配列は、大腸菌MG1655株のゲノム上のzntA遺伝子の塩基配列である。

(I)配列番号30で表される塩基配列からなるDNA。
(J)前記DNA(I)の塩基配列と同一性が60%以上(好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上)の塩基配列からなり、かつZntAをコードするDNA。

また前記DNA(J)として、前記DNA(I)の塩基配列において1又は複数個(例えば1個以上879個以下、好ましくは1個以上769個以下、より好ましくは1個以上659個以下、より好ましくは1個以上549個以下、より好ましくは1個以上439個以下、より好ましくは1個以上329個以下、より好ましくは1個以上219個以下、より好ましくは1個以上153個以下、より好ましくは1個以上109個以下、より好ましくは1個以上65個以下、より好ましくは1個以上43個以下、より好ましくは1個以上21個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつZntAをコードするDNAも好ましい。
さらに前記DNA(J)として、前記DNA(I)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつZntAをコードするDNAも好ましい。
【0029】
本明細書において、「ストリンジェントな条件」としては、例えばMolecular Cloning-A LABORATORY MANUAL THIRD EDITION[Joseph Sambrook,David W.Russell.,Cold Spring Harbor Laboratory Press]記載の方法が挙げられる。例えば、6×SSC(1×SSCの組成:0.15M塩化ナトリウム、0.015Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.5%ドデシル硫酸ナトリウム(以下、「SDS」ともいう)、5×デンハート及び100mg/mLニシン精子DNAを含む溶液にプローブとともに65℃で8~16時間恒温し、ハイブリダイズさせる条件が挙げられる。
また、本明細書において、アミノ酸配列及び塩基配列の同一性は、Lipman-Pearson法(Science,1985,227,p.1435)等によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx-Win(ソフトウェア開発製)のホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、パラメーターであるUnit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出することができる。
【0030】
本発明の微生物の菌種に特に制限はなく、大腸菌などのエスケリキア(Escherichia)属細菌、メタノコックス(Methanococcus)属細菌、ロドコッカス(Rhodococcus)属細菌、シネココッカス(Synechococcus)属細菌、バシラス(Bacillus)属細菌等が挙げられる。この中でも、エスケリキア属細菌が好ましく、大腸菌がより好ましい。さらに、野生型の菌種の他、野生型の菌種に対して特定の変異を導入した変異株を使用することができる。
【0031】
本発明の微生物は、常法に従い、標的遺伝子中に他のDNA断片(例えば、終始コドンやマーカー遺伝子)を挿入する、標的遺伝子を物理的に削除する、標的遺伝子の転写・翻訳開始領域に変異を与える、などにより作成することができる。標的遺伝子の欠失又は不活化方法としては、遺伝子組み換えを利用した標的遺伝子の欠失又は不活化方法や、ゲノム編集による標的遺伝子の欠失又は不活化方法が挙げられる。遺伝子組み換えを利用した標的遺伝子の欠失又は不活化方法としては、薬剤耐性遺伝子や栄養要求遺伝子などのマーカー遺伝子を情報により標的遺伝子中に挿入する方法が挙げられる。ゲノム編集による標的遺伝子の欠失又は不活化方法としては、CRISPR-Casシステムを利用した方法(例えば、Miyake, Y. and Yamamoto, K. : Epistatistics effect of regulators to the adaptive growth of Escherichia coli. Sci. Rep. 10:3661, (2020)等参照)が挙げられる。
【0032】
本発明の微生物において、欠失又は不活化されている遺伝子は、前述の遺伝子のうち1種の遺伝子でもよいし、2種以上の遺伝子が欠失又は不活化されていてもよい。本発明において、前記nikA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子と、前記nikR遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、前記rcnA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、前記rcnR遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、及び前記zntA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子からなる群より選ばれる1種の遺伝子とが、それぞれ欠失又は不活化されていることが好ましく、前記nikA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子と、前記nikR遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、前記rcnR遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、及び前記zntA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子からなる群より選ばれる1種の遺伝子とが、それぞれ欠失又は不活化されていることがより好ましく、前記nikA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子と、前記nikR遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子、及び前記zntA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子からなる群より選ばれる1種の遺伝子とが、それぞれ欠失又は不活化されていることがさらに好ましく、前記nikA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子と、前記zntA遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子とが、それぞれ欠失又は不活化されていることがより好ましい。
さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、前述の遺伝子の他に、他の遺伝子が改変されていてもよい。
【0033】
微生物の菌体内に金属を蓄積する機能の評価は、後述の実施例でも示すように、微生物の菌体を乾燥、焼成して粉末を調製し、粉末を液体に溶解させたのち、原子吸光光度計により金属濃度を測定することができる。
【0034】
本発明に係る微生物を適当な担体に固定化することで、本発明に係る微生物バイオリアクター(例えば、金属を回収又は除去するためのカラム、金属の回収又は除去剤)を提供することができる。本発明で用いる担体の材質に特に制限はないが、水又は特定の溶媒に対して不溶性の物質が挙げられる。例えば、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、シリコーン、セルロース、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸アルミニウム、ポリ硫酸第二鉄等が挙げられる。また、本発明で用いる担体の形状に特に制限はなく、スポンジ構造、ウォール構造、ペレット構造、泡状、多孔質体、発泡体、樹脂成形体、凝集体構造等、微生物を固定化する担体として通常の形状を採用することができる。なお、本明細書において「固定化」とは、微生物が遊離の状態ではなく、担体に結合若しくは付着した状態、又は担体内部に取り込まれた状態をいう。
【0035】
本発明に係る微生物と、白金族金属が溶解している金属含有媒体とを接触させ、前記媒体に含まれる金属を前記微生物の菌体内に取込み、菌体内に取込まれた金属を回収することで、金属を回収することが可能となる。また、本発明に係る微生物と、白金族金属が溶解している金属含有媒体とを接触させ、前記媒体から金属を除去することで、金属を除去することが可能となる。
さらには、本発明に係る微生物と、溶媒中に溶解している金属を含有する溶液とを接触させ、前記溶液から金属を除去又は回収することが可能となる。
菌体内に白金族金属を蓄積させた本発明に係る微生物は、微生物の培養液に遠心分離処理を行い、沈殿物を回収する方法など、常法により得ることができる。
【0036】
包括的に理解された生物機能であるバイオプロセスは、産業上の低環境負荷・省エネルギー・低コストのメリットから様々な分野で活用されている。微量分析やゲノム生物学の高度化により勃興したメタルバイオロジーは金属の生体内機能の理解を深化し、金属精錬・回収で利用されてきたバイオテクノロジー技術を、包括的生物機能を用いるバイオプロセス技術に転換する機会を得ている。
これまで、有価希少金属の資源は、地球上に偏在する高い含有量をもつ鉱石を原料として来た。循環型社会構築への国際的な政策シフトもあり、有価希少金属が含まれる廃棄物を新たな資源とみなし、原料精製することが行われている。しかし、いずれの工程も大規模な設備が必要で、莫大なコストがかかり、既存設備や技術を代替に参入することは難しい。一方、廃棄物の都市鉱山以外にも、未利用な金属環境が存在する。それは低い含有量の鉱石や希薄に溶存する海水や河川湖水域である。これらの未利用環境には、能動的な「濃縮」ステップが欠かせない。これに対して、本発明者らが提案する金属恒常性バイオプロセスを活用した金属高蓄積細菌は、これらの未利用金属資源から能動的に金属濃縮できる可能性がある。
【実施例
【0037】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0038】
(1)大腸菌によるパラジウムのバイオアキュムレーション
大腸菌によるパラジウムのバイオアキュムレーションを評価するためには、細胞内の微量なパラジウムなどの白金族金属量を正確に測定する必要がある。そのため、原子吸光光度計により分光定量法の10~100倍の感度でパラジウムを定量する方法を確立した。その測定を用い、大腸菌細胞にパラジウムが含まれるか、もし含まれるならその濃度はいくらかを調べた。
【0039】
まず大腸菌K株として、ゲノム研究資材となる包括的遺伝子欠失株セットの親株であるBW25113を用いた(Baba, T., et al. : Construction of Escherichia coli K-12 in-frame, single-gene knockout mutants: the Keio collection. Mol. Syst. Biol. 2:2006.0008, (2006)参照)。ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、及び白金がそれぞれLB液体培地に溶解することを確認した。そこで、これら白金族金属のうちパラジウムを含有するLB液体培地を用いて、BW25113をパラジウム濃度が25μMのLB液体培地で一昼夜培養した。培養液中の細胞数を計測するため、一部を100倍希釈し、セルカウンタープレートにセットして光学顕微鏡で細胞数を計測し、濃度を算出した。パラジウム非添加培養液では1mLあたり平均1.77×109細胞、パラジウム添加培養液では1mLあたり平均2.10×109細胞であり、増殖に大差がないことを確認した。複数回の実験の結果、この条件で調製した培養液には1mLあたり1.94×109細胞の大腸菌細胞が含まれていることがわかった。
【0040】
この培養液1Lを遠心分離によって大腸菌細胞を回収し、細胞はEDTA溶液で洗浄した後、滅菌水で再度洗浄し、120℃に4時間晒し乾燥評品とした。乾燥した大腸菌細胞評品を、1,000℃で2時間焼成し、パラジウムを含む金属粉末を調製した。金属混合物は塩酸溶液に溶解させたのち、原子吸光光度計により既知のパラジウム濃度溶液とともにその濃度を測定した。
【0041】
計測したパラジウム量を、供与した大腸菌細胞評品に含まれる細胞数を用いて計算した結果、パラジウム非添加培養液では1細胞あたり0.12×10-18g(1.10μM)のパラジウムが存在していた(表1参照)。さらに、25μMパラジウム添加培養液では1細胞あたり0.29×10-18g(2.76μM)のパラジウムを確認し、パラジウム非添加時と比較して約3倍の蓄積量の増加を認めた(表1参照)。
また、このパラジウムの大腸菌バイオアキュムレーションは、25μMパラジウム添加培地1Lからの回収率が0.02%であった。
【0042】
(2)大腸菌ニッケル恒常性システムのパラジウムアキュムレーションへの影響
大腸菌によるパラジウム蓄積するバイオアキュムレーションを確認したため、大腸菌NikABCDEシステムによる細胞内蓄積能への影響を調べた。NikABCDEシステムはニッケルの輸送システムタンパク質であり、同族のパラジウムへの影響を期待した。
まず、ニッケル感受性へのNikABCDEシステムの影響を調べた。
【0043】
文献(Monica Riley, Takashi Abe, Martha B Arnaud, Mary K B Berlyn, Frederick R Blattner, Roy R Chaudhuri, Jeremy D Glasner, Takashi Horiuchi, Ingrid M Keseler, Takehide Kosuge, Hirotada Mori, Nicole T Perna, Guy Plunkett 3rd, Kenneth E Rudd, Margrethe H Serres, Gavin H Thomas, Nicholas R Thomson, David Wishart, Barry L Wanner, Escherichia coli K-12: a cooperatively developed annotation snapshot--2005, Nucleic Acids Res. 2006 Jan 5;34(1):1-9. doi: 10.1093/nar/gkj405)を参照し、BW25113の各遺伝子の途中の任意のコドンを終始コドンに置換し、nikA遺伝子欠失株、nikB遺伝子欠失株、nikC遺伝子欠失株、nikD遺伝子欠失株、nikE遺伝子欠失株をそれぞれ作製した。
【0044】
M9グルコース最少培地に様々な濃度のニッケルを添加し、その培地でBW25113をで培養したところ、ニッケル濃度にしたがって、増殖開始の遅延を確認した(図2(a)参照)。同様に、nikA遺伝子欠失株、nikB遺伝子欠失株、nikC遺伝子欠失株、nikD遺伝子欠失株、nikE遺伝子欠失株を様々な濃度のニッケルを含む培地で増殖させたところ、いずれの株も親株と同じようなニッケル依存的増殖遅延を確認した(図1(b)~(f)参照)。
これらの結果は予想外に、最少培地での増殖では、NikABCDEシステムによる大腸菌ニッケル感受性への影響を確認できなかった。
【0045】
つぎに、パラジウム感受性へのNikABCDEシステムの影響を調べた。
前記M9グルコース最少培地に様々な濃度のパラジウムを添加して調製した培地でBW25113を培養したところ、BW25113は2.5μM以上のパラジウム存在下では増殖が抑制され、2.5μM以下のパラジウム存在下で増殖を確認した(図2(a)参照)。一方、nikA遺伝子欠失株は増殖開始が遅延するものの、2.5μMのパラジウム存在下で増殖を確認した(図2(b))。
さらに、様々な濃度のニッケルを添加したLB培地でBW25113及びnikA遺伝子欠失株を培養したところ、25μM以上のパラジウム存在下では増殖が抑制され、25μM以下のパラジウム存在下で増殖を確認した(図3(a)及び(b)参照)。
これらの結果より、NikABCDEシステムは大腸菌のパラジウム耐性に関与することが示唆された。
【0046】
そこで、nikA遺伝子欠失株におけるパラジウム蓄積量を測定した。
nikA遺伝子欠失株を25μMパラジウムを含むLB液体培地で培養し、それぞれの大腸菌細胞を回収、洗浄後、大腸菌細胞の乾燥評品を調製した。その後焼成し、得られた金属粉末を塩酸溶液に溶解させ原子吸光光度計によりパラジウム量を測定した。
その結果、パラジウム非添加培養液では1細胞あたり0.31×10-18g(2.96μM)のパラジウムが存在していた(表1参照)。さらに、25μMパラジウム添加培養液では1細胞あたり1.04×10-18g(9.74μM)のパラジウムを確認し、親株と同様にパラジウム非添加時と比較して約3倍の蓄積量の増加を認めた(表1参照)。また、このパラジウムの大腸菌バイオアキュムレーションは、25μMパラジウム添加培地1Lからの回収率が0.07%となり、親株の3倍増加することが確認できた。
【0047】
【表1】
【0048】
(3)パラジウム結合タンパク質NikR
NikRはニッケルと結合してnikA遺伝子上流に結合し、nikA遺伝子発現を抑制する転写因子である。そこで、NikRタンパク質とパラジウムの結合を調べた。
まず、組換えNikRタンパク質を大腸菌細胞内で高発現するシステムを構築し、大腸菌細胞内で組換えNikRタンパク質を高発現させることに成功した(渡邊宏樹, 山本兼由 ゲノム編集HoSeI法をもちいた大腸菌バイオプロセスを活用するレアメタル資源化, 化学工業、2020 71 (12), in press.参照)。この大腸菌細胞を破砕し、その粗抽出液をアフィニティークロマトグラフィーに分画することで、組換えNikRタンパク質を純化した。つぎに、等温滴定型カロリメトリー(ITC)を用い、NikRとニッケルおよびパラジウムの結合を測定した。10μMの組換えNikRタンパク質に対して、濃度を徐々に高めるようにニッケルもしくはパラジウムを添加し、それぞれの添加時における発熱量を測定することで、NikRとニッケルおよびパラジウムの特異的結合を評価した。
【0049】
まずコントロールとしてNikRと結合しないコバルトで測定した結果、予想通り、コバルトの濃度を高めても発熱量に増加が見られなかった(図4(C)参照)。
同様な実験を、ニッケルで行った。その結果、ニッケル濃度を増加させるにつれて発熱量も増加した(図4(A)参照)。また、パラジウムでも同様な実験を行った。その結果、パラジウム濃度を増加させるにつれて発熱量も増加した(図4(B)参照)。
これらの結果より、NikRはニッケルだけではなく、パラジウムとも特異的な結合をすることが明らかとなった。
【0050】
(4)パラジウムで発現誘導する大腸菌遺伝子の探索
上記の結果より、NikABCDEシステムがパラジウム排出に関与することが示唆された。そこで、nikABCDE遺伝子発現がパラジウムによって抑制されるかを調べることとした。
そのため、ルシフェラーゼレポーターシステムを用い、nikA-lux融合遺伝子を作製した。これらの融合遺伝子を大腸菌細胞に導入し、大腸菌細胞のルシフェラーゼ活性を発光として測定することで遺伝子発現を評価した。融合遺伝子を導入した大腸菌をLB培地で対数増殖期まで培養し、その後培養液を2つに分け、片方にはニッケル濃度が1mMのLB培地を用いてさらに8時間培養しながら、培養液中のルシフェラーゼ活性を測定し、nikA遺伝子発現を評価した。その結果、ニッケルの存在によってnikA遺伝子発現が顕著に抑制されることを確認した(図5(A)参照)。
同様な実験をパラジウム濃度が25μMのLB培地を用いて行った結果、ニッケルと同じようにパラジウムの存在によってもnikA遺伝子発現が抑制された(図5(A)参照)。
【0051】
そこで、NikABCDEと類似した大腸菌輸送システム遺伝子群のうちパラジウムによって発現制御されるものを網羅的に探索することとした。
大腸菌の金属輸送システムを構造の特性から、1つのポリペプチドから構成するグループA、3つのポリペプチドから構成するグループB、複数ポリペプチドから構成するABCトランスポーターのグループCに分けた。
グループAには、カリウムなどの輸送を行うKch、Kup、TrkA、TrkG、TrkH、マグネシウムなどの輸送を行うCorA、MgtAを確認できた。さらに、これらのタンパク質と類似ドメインをもつKefB、KefC、CvrA、YbjL、YfbS、YidE、CopA、ZntAも調査対象とした。
グループBには、カリウムの輸送に関わるKdpABC、鉄の輸送に関わるTonB/ExbBDを確認できた。さらに、これらのタンパク質と類似ドメインをもつMgtA、CopA、ZntA、MotA、TolQ、TolRも調査対象とした。
グループCには、NikABCDEに加え、鉄の輸送に関わるFecBCDEE、FepBDGC、FhuDBC、亜鉛の輸送に関わるZnuABC、モリブデンの輸送に関わるModABCを確認した。さらに、これらのタンパク質と類似ドメインをもつDdpA、DppA、GslB、MppA、OppA、SapA、YejA、YgiS、SgrR、YbaE、BtuF、CysP、Sbpも調査対象とした。
さらに、最近発見され、これらのグループと異なる構造をもつ新規ニッケル排出ポンプRcnAも対象に加えた。
【0052】
調査対象の全41遺伝子プロモーターのうち、21種類のルシフェラーゼレポーターシステムの構築に成功した(kch-luxkup-luxtrkA-luxtrkG-luxtrkH-luxcorA-luxmgtA-luxkefB-luxkefC-luxcvrA-luxybjL-luxyfbS-luxyidE-luxcopA-luxzntA-luxkdpA-luxtonB-luxexbB-luxexbD-luxtolQR-luxrcnA-lux)。これらの融合遺伝子を導入した大腸菌をLB培地で対数増殖期まで培養し、その後培養液を2つに分け、片方にはパラジウム濃度が25μMのLB培地を用いてさらに8時間培養しながら、培養液中のルシフェラーゼ活性を測定した。
その結果、zntA遺伝子発現がパラジウム存在によって誘導することを確認した(図5(B)参照)。それ以外の20種の遺伝子の発現はパラジウム存在によって変化しなかった。
なお、パラジウムに代えてルテニウムを用いて同様に試験を行った。その結果、exbD遺伝子発現がルテニウム存在によって誘導し、trkG、trkH、copA遺伝子発現がルテニウムによって抑制することを確認した(図5(C)参照)。それ以外の20種の遺伝子の発現はパラジウム存在によって変化しなかった。
【0053】
(5)大腸菌パラジウムアキュムレーションに関与する遺伝子の探索
「大腸菌細胞はパラジウムやルテニウムなどが蓄積する」ことを世界で初めて発見し、さらに培地中の高濃度パラジウムないしルテニウムの存在で、「大腸菌細胞のパラジウムやルテニウムなどの蓄積量が増加する」ことも確認した。また、これらの能力を向上させるバイオプロセス改変として、nikA遺伝子機能の欠失が有効であることを確認した。また、zntA遺伝子もその候補になる可能性を見出した。さらに、最近発見された新規ニッケル排出システムrcnA遺伝子もパラジウムやルテニウムなどのバイオアキュムレーションに影響することが予想された。
そこで、zntA遺伝子とその制御遺伝子であるzntR遺伝子、rcnA遺伝子とその制御遺伝子であるrcnR遺伝子の4種類の遺伝子欠失株を準備し(Tomoya Baba, Takeshi Ara, Miki Hasegawa, Yuki Takai, Yoshiko Okumura, Miki Baba, Kirill A Datsenko, Masaru Tomita, Barry L Wanner, Hirotada Mori, Construction of Escherichia coli K-12 in-frame, single-gene knockout mutants: the Keio collection, Mol Syst Biol. 2006;2:2006.0008. doi: 10.1038/msb4100050.参照)、そのパラジウム蓄積能を測定した。
【0054】
rcnA欠失株、rcnR欠失株、zntA欠失株、zntR欠失株を25μMパラジウムを含むLB液体培地で培養し、それぞれの大腸菌細胞を回収、洗浄後、大腸菌細胞の乾燥評品を調製した。その後焼成し、得られた金属粉末を塩酸溶液に溶解させ原子吸光光度計によりパラジウム量を測定した。
その結果、パラジウム非添加培養液では、rcnA欠失株の1細胞あたりのパラジウム量は0.07×10-18g(0.61μM)、rcnR欠失株は0.28×10-18g(2.66μM)、zntA欠失株は0.02×10-18g(0.16μM)、zntR欠失株は0.17×10-18g(1.64μM)であった。さらに、25μMパラジウム添加培養液では、rcnA欠失株の1細胞あたりのパラジウム量は0.18×10-18g(1.68μM)、rcnR欠失株は0.99×10-18g(9.33μM)、zntA欠失株は0.32×10-18g(2.98μM)、zntR欠失株は0.35×10-18g(3.33μM)であり、rcnA欠失株、rcnR欠失株、zntR欠失株は親株と同様にパラジウム非添加時と比較して約3倍の蓄積量の増加を認めた(図6参照)。一方、zntA欠失株ではパラジウム非添加時と比較して約10倍の蓄積量の増加を認めた(図6参照)。最も回収量が多いrcnR欠失株では25μMパラジウム添加培養液の1Lからのパラジウム回収率は0.07%となり、親株の3倍増加することが確認できた(図6参照)。
【0055】
(6)外来遺伝子を用いないゲノム編集HoSeI法の開発
大腸菌におけるパラジウム恒常性に関与する遺伝子群を改変した組換え大腸菌は,多くのエネルギーが必要な乾式湿式によるレアメタル精製を代替する低環境負荷型技術として応用が期待されている。しかし、既存遺伝子組換え技術やゲノム編集技術は、技術的に外来遺伝子の導入が不可欠なため、創出する組換え生物が及ぼす生態系への影響を払拭できないことが実用化を妨げる大きな要因であった。
そこで、外来遺伝子を用いないゲノム編集技術HoSeI(Homologous Sequence Integration)法を開発した(Miyake, Y. and Yamamoto, K. : Epistatistics effect of regulators to the adaptive growth of Escherichia coli. Sci. Rep. 10:3661, (2020))。HoSeI法では、CRISPR-Casシステムを用い、外来遺伝子となるマーカーは利用せず、ゲノム上の多数の遺伝子改変を容易に実現できる方法で、対象の大腸菌にとっては自然に生じる突然変異を人工的に行うことになり、産業応用上でリスクとなっていた遺伝子組み換え体の問題を解決することを可能とする。
この方法を用い、大腸菌によるパラジウムのバイオアキュムレーションに寄与する遺伝子機能改変を行い、それらのゲノム編集株を作製した。
【0056】
(7)HoSeI法による大腸菌パラジウムバイオアキュムレーションへの応用
HoSeI法は宿主に対してある程度の汎用性が認められた。そこで、パラジウムアキュムレーションに貢献するゲノム編集させるのに適した親株の選定から始めた。
前述の実験で用いたBW25113株に加えて、広く実験的に利用される3株MG1655株(Blattner, F.R. et al. : The complete genome sequence of Escherichia coli K-12. Science 277(5331), 1453-1462, (1997))、W3110株(Hayashi, K. et al. : Highly accurate genome sequences of Escherichia coli K-12 strains MG1655 and W3110. Mol. Syst. Biol. 2:2006.0007, (2006))、W3110 type-A株(Jishage, M. and Ishihama, A. : Variation in RNA polymerase sigma subunit composition within different stocks of Escherichia coli W3110. J. Bacteriol. 179, 959-963, (1997))について、25μMパラジウムを含むLB液体培地で培養し、それぞれの大腸菌細胞を回収、洗浄後、大腸菌細胞の乾燥評品を調製した。その後焼成し、得られた金属粉末を塩酸溶液に溶解させ原子吸光光度計によりパラジウム量を測定した。
その結果、パラジウム非添加培養液でのBW25113株1細胞あたりのパラジウム量0.12×10-18g(1.10μM)に対し、MG1655株は0.26×10-18g(2.47μM)、W3110株とW3110 type-A株についてはパラジウムの存在を確認できなかった(図7(A)参照)。一方、25μMパラジウム添加培養液においては、BW25113株1細胞あたりのパラジウム量0.29×10-18g(2.76μM)に対し、MG1655株は5.16×10-18g(48.50μM)、W3110株は5.89×10-18g(55.36μM)、W3110 type-A株は3.89×10-18g(36.57μM)だった(図7(A)参照)。
これらの結果より、MG1655株、W3110株、W3110 type-A株はBW25113株より高効率にパラジウムを蓄積することが示唆された。そこで、BW25113株同様パラジウム非存在下時にもパラジウムを蓄積し、かつパラジウム存在下における約20倍の蓄積増だったMG1655株を、HoSeI法にてゲノム編集する親株に選定した。
【0057】
MG1655株のゲノム上のnikA遺伝子、nikR遺伝子、rcnA遺伝子、rcnR遺伝子、zntA遺伝子それぞれのタンパク質コード領域上流に終始コドンをHoSeI法により導入させた株を創出した(図8~12参照)。これらのゲノム編集株について、25μMパラジウムを含むLB液体培地で培養し、得られた大腸菌細胞のパラジウム量を測定した。
各種遺伝子欠失株の作製には、表2に記載のオリゴヌクレオチドを用いた。また、各種遺伝子欠失株の詳細については、表3に示す。さらに、各種遺伝子の欠失に用いたプラスミドを表4に示す。
MG1655株のゲノム上のnikA遺伝子の塩基配列を配列番号26に示す。MG1655株のゲノム上のnikR遺伝子の塩基配列を配列番号27に示す。MG1655株のゲノム上のrcnA遺伝子の塩基配列を配列番号28に示す。MG1655株のゲノム上のrcnR遺伝子の塩基配列を配列番号29に示す。MG1655株のゲノム上のzntA遺伝子の塩基配列を配列番号30に示す。
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】
ここで、nikA遺伝子欠失株を例に、配列番号6~9のいずれかで表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド、pCasプラスミド、psgRNAプラスミド、及びpsgRNA_nikA02_08プラスミドに言及して説明する。
pCasプラスミドはAddgene社から入手し(https://www.addgene.org/62225/)、psgRNAプラスミドは、Miyake, Y. and Yamamoto, K., “Epistatistics effect of regulators to the adaptive growth of Escherichia coli”, Sci. Rep., 10:3661, (2020)に従い作製した。ゲノム編集技術HoSeI(Homologous Sequence Integration)法(Miyake, Y. and Yamamoto, K., “Epistatistics effect of regulators to the adaptive growth of Escherichia coli”, Sci. Rep., 10:3661, (2020))に従って、nikA遺伝子欠失株を作製した。nikA遺伝子の上流を標的にしたガイドRNA発現プラスミドpsgRNA_nikA02_08を、配列番号6と7のオリゴヌクレオチドをアニーリングさせたDNA断片をpsgRNAプラスミドに挿入して構築した。pCas9をもつMG1655に、psgRNA_nikA02_08と配列番号8と9のオリゴヌクレオチドをアニーリングさせたDNA断片と同時に導入し、アンピシリンを含む寒天培地における増殖でnikA遺伝子欠失株をスクリーニングした。単離したnikA遺伝子欠失株は、そのゲノム上のnikA遺伝子配列を確認し、目的のゲノム編集を確認した。
nikA遺伝子を含む2種の遺伝子を欠失させた二重変異株において、nikA遺伝子の欠失は同様の方法で行った。
【0062】
nikR遺伝子をpsgRNAプラスミドにクローニングするためのオリゴヌクレオチドとしてnikR_sgRNA_N20-1(配列番号10)及びnikR_sgRNA_com-1(配列番号11)を用い、nikR遺伝子に終止コドンを導入するためのオリゴヌクレオチドとしてnikR_PAMstop-1(配列番号12)及びnikR_PAMstop_com-1(配列番号13)を用いたこと以外は、nikA遺伝子欠失株と同様の方法で、nikR遺伝子欠失株を作製した。nikR遺伝子を含む2種の遺伝子を欠失させた二重変異株において、nikR遺伝子の欠失は同様の方法で行った。
rcnA遺伝子をpsgRNAプラスミドにクローニングするためのオリゴヌクレオチドとしてrcnA_sgRNA_N20-2(配列番号14)及びrcnA_sgRNA_com-2(配列番号15)を用い、rcnA遺伝子に終止コドンを導入するためのオリゴヌクレオチドとしてrcnA_PAMstop_F(配列番号16)及びrcnA_PAMstop_R(配列番号17)を用いたこと以外は、nikA遺伝子欠失株と同様の方法で、rcnA遺伝子欠失株を作製した。rcnA遺伝子を含む2種の遺伝子を欠失させた二重変異株において、rcnA遺伝子の欠失は同様の方法で行った。
rcnR遺伝子をpsgRNAプラスミドにクローニングするためのオリゴヌクレオチドとしてrcnR_sgRNA_N20-4(配列番号18)及びrcnR_sgRNA_com-4(配列番号19)を用い、rcnR遺伝子に終止コドンを導入するためのオリゴヌクレオチドとしてrcnR_PAMstop_F(配列番号20)及びrcnR_PAMstop_R(配列番号21)を用いたこと以外は、nikA遺伝子欠失株と同様の方法で、rcnR遺伝子欠失株を作製した。rcnR遺伝子を含む2種の遺伝子を欠失させた二重変異株において、rcnR遺伝子の欠失は同様の方法で行った。
zntA遺伝子をpsgRNAプラスミドにクローニングするためのオリゴヌクレオチドとしてzntA_sgRNA_N20-4(配列番号22)及びzntA_sgRNA_com-4(配列番号23)を用い、zntA遺伝子に終止コドンを導入するためのオリゴヌクレオチドとしてzntA_PAMstop_F(配列番号24)及びzntA_PAMstop_R(配列番号25)を用いたこと以外は、nikA遺伝子欠失株と同様の方法で、zntA遺伝子欠失株を作製した。zntA遺伝子を含む2種の遺伝子を欠失させた二重変異株において、zntA遺伝子の欠失は同様の方法で行った。
【0063】
パラジウム量を測定した結果、パラジウム非添加培養液ではいずれのゲノム編集株も親株と同程度の細胞内パラジウム量だった(図7(B)参照)。しかし、25μMパラジウム添加培養液においては、nikA遺伝子欠失株では1細胞あたり31.52×10-18g(296.16μM)のパラジウムを、nikR遺伝子欠失株は6.21×10-18g(58.37μM)、rcnA遺伝子欠失株は18.15×10-18g(170.54μM)、zntA遺伝子欠失株は11.62×10-18g(109.22μM)を確認し、BW25113由来の変異株より高いパラジウム蓄積量だった(図7(B)参照)。また、もっともパラジウム蓄積量が高かったゲノム編集によるnikA遺伝子欠失株では、25μMパラジウム添加培養液の1Lからのパラジウム回収率はnikA遺伝子欠失株では2.29%であった。
nikA遺伝子、nikR遺伝子、rcnA遺伝子、rcnR遺伝子、及びzntA遺伝子のすべての組み合わせによる二重変異株については、nikA遺伝子とrcnR遺伝子を欠失させた二重変異株(nikA・rcnR欠失株)、nikA遺伝子とzntA遺伝子を欠失させた二重変異株(nikA・zntA欠失株)、及びnikA遺伝子とnikR遺伝子を欠失させた二重変異株(nikA・nikR欠失株)のパラジウム回収量が特に多かった(図7(B)参照)。
【0064】
以上のように、特定の遺伝子を欠失又は不活化させた本発明の微生物は、菌体内にパラジウムなどの白金族金属を効率的に蓄積させることができる。
【0065】
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
【0066】
本願は、2020年11月24日に日本国で特許出願された特願2020-194565に基づく優先権を主張するものであり、これはここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
【配列表】
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