(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-10-17
(45)【発行日】2025-10-27
(54)【発明の名称】複合負極活物質、その製造方法、それを含む負極、および二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/48 20100101AFI20251020BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20251020BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20251020BHJP
【FI】
H01M4/48
H01M4/36 A
H01M4/36 C
H01M4/36 E
H01M4/38 Z
(21)【出願番号】P 2023544393
(86)(22)【出願日】2022-07-04
(86)【国際出願番号】 KR2022009595
(87)【国際公開番号】W WO2023282558
(87)【国際公開日】2023-01-12
【審査請求日】2023-07-21
(31)【優先権主張番号】10-2021-0088020
(32)【優先日】2021-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】イルグン・オ
(72)【発明者】
【氏名】セミ・パク
(72)【発明者】
【氏名】スン・ヨン・シン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ジュ・イ
(72)【発明者】
【氏名】クァンヒョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ビョン・ジュン・チェ
【審査官】森 透
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/057929(WO,A1)
【文献】特表2020-529709(JP,A)
【文献】国際公開第2020/149724(WO,A1)
【文献】特表2005-536054(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0140744(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式2で表される化合物を含むシリコン系酸化物を第1熱処理して第1蒸気を発生させるステップ;
Li、Mg、およびAlからなる群より選択された少なくとも1種を含む金属を第2熱処理して第2蒸気を発生させるステップ;
前記第1蒸気および前記第2蒸気を混合して気相反応させるステップ;および
前記気相反応後に冷却してシリコン系酸化物-金属複合体を得るステップ;を含み、
前記第1熱処理時の温度と前記冷却時の温度との差は400℃~550℃であり、
前記第1熱処理は
、-50torr~-200torrの減圧雰囲気で行われ、
前記第2熱処理は
、-50torr~-200torrの減圧雰囲気で行われ、
前記第1熱処理時の温度は1,300℃~1,500℃である、
複合負極活物質の製造方法:
[化学式2]
SiO
a(0<a<2)
ここで、前記複合負極活物質は、
シリコン系酸化物粒子;および前記シリコン系酸化物粒子の表面、内部、または表面および内部に分布した金属;を含み、
前記複合負極活物質は、内部にケイ素、酸素、および金属の中から選択された一つ以上を含む一つ以上の集合体を含み、
前記金属は、Li、Mg、およびAlからなる群より選択された少なくとも1種を含み、
下記ステップ(a)~(e)を含む方法により得られる集合体の直径の平均値は5nm~65nmであり、
前記ステップ(e)により得られた集合体の直径の標準偏差は10nm以下である:
(a)前記複合負極活物質を走査型電子顕微鏡で撮影して四角形の走査型電子顕微鏡撮影写真を得るステップ;
(b)前記走査型電子顕微鏡撮影写真において、互いに異なる二つの辺を選択し、前記選択された二つの辺それぞれから一つの点を選択し、前記二つの辺から選択された二つの点を連結する直線を得るステップ;
(c)デジタル画像分析プログラムを用いて、縦軸が濃淡値であり、横軸が前記直線の距離である前記直線の濃淡プロファイルグラフを得た後、平均濃淡値を計算するステップ;
(d)前記直線の濃淡プロファイルグラフにおいて、前記平均濃淡値を有するとともに横軸と平行な基準線と前記濃淡プロファイルの交点の個数を得た後、下記数学式1により計算された値を集合体の直径と定義するステップ;および
(e)前記ステップ(a)~ステップ(d)を2回以上行って前記集合体の直径の平均値を求めるステップ;
[数学式1]
集合体の直径=直線の長さ/(基準線と濃淡プロファイルの交点の個数+1)。
【請求項2】
前記冷却時の温度は750℃~1,100℃である、請求項
1に記載の複合負極活物質の製造方法。
【請求項3】
前記シリコン系酸化物-金属複合体を粉砕するステップをさらに含む、請求項
1に記載の複合負極活物質の製造方法。
【請求項4】
前記金属は、前記シリコン系酸化物粒子および前記金属の重量の和に対して1重量%~20重量%で含まれる、請求項1に記載の複合負極活物質
の製造方法。
【請求項5】
前記金属は、Mgを含み、
前記金属は、前記シリコン系酸化物粒子および前記金属の重量の和に対して5重量%~15重量%で含まれる、請求項1に記載の複合負極活物質
の製造方法。
【請求項6】
前記金属は、Liを含み、
前記金属は、前記シリコン系酸化物粒子および前記金属の重量の和に対して3重量%~12重量%で含まれる、請求項1に記載の複合負極活物質
の製造方法。
【請求項7】
前記複合負極活物質は、前記複合負極活物質の表面に位置する炭素コーティング層をさらに含む、請求項1に記載の複合負極活物質
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年7月5日付にて韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2021-0088020号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本明細書に含まれる。
【0002】
本発明は、複合負極活物質、その製造方法、それを含む負極、および二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、携帯電話、ノート型パソコン、電気自動車など、電池を用いる電子器具の急速な普及に伴い、小型軽量でありながらも相対的に高容量である二次電池の需要が急速に増大している。特に、リチウム二次電池は、軽量、かつ、高エネルギー密度を有しており、携帯機器の駆動電源として脚光を浴びている。このため、リチウム二次電池の性能を向上させるための研究開発努力が活発に行われている。
【0004】
一般に、リチウム二次電池は、正極、負極、前記正極と負極との間に介在するセパレータ、電解質、有機溶媒などを含む。また、正極および負極は、集電体上に、正極活物質または負極活物質を含む活物質層が形成されることができる。前記正極には、一般にLiCoO2、LiMn2O4などのリチウム含有金属酸化物が正極活物質として用いられる。これにより、負極には、リチウムを含有しない炭素系活物質、シリコン系活物質が負極活物質として用いられている。
【0005】
特に、負極活物質のうちシリコン系活物質は、炭素系活物質に比べて約10倍程度の高い容量を有するという点で注目されており、高い容量により薄い電極でも高いエネルギー密度を実現できるという長所がある。しかし、シリコン系活物質は、充放電に応じた体積の膨張、それによる活物質粒子の亀裂/損傷、それによる寿命特性の低下問題により汎用的に用いられていない。
【0006】
そこで、シリコン系活物質の高い容量、エネルギー密度を実現しながらも、寿命特性を向上させることができる二次電池の開発が求められている状況である。
【0007】
韓国公開特許第10-2017-0074030号公報は、リチウム二次電池用負極活物質、その製造方法、およびそれを含むリチウム二次電池に関し、多孔性シリコン-炭素複合体を含む負極活物質について開示しているが、前述した問題を解決するには限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0074030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一課題は、シリコン系活物質を用いる際に、充放電時の体積の膨張および収縮に対する影響を最小化し、活物質の損傷を防止して寿命性能に優れた複合負極活物質を提供することにある。
【0010】
また、本発明の他の課題は、前述した複合負極活物質の製造方法を提供することにある。
【0011】
なお、本発明のまた他の課題は、前述した複合負極活物質を含む負極および二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、シリコン系酸化物粒子;および前記シリコン系酸化物粒子の表面、内部、または表面および内部に分布した金属;を含む複合負極活物質であって、前記複合負極活物質は、内部にケイ素、酸素、および金属の中から選択された一つ以上を含む一つ以上の集合体を含み、前記金属は、Li、Mg、およびAlからなる群より選択された少なくとも1種を含み、下記ステップ(a)~(e)を含む方法により得られる集合体の直径の平均値は65nm以下である、複合負極活物質を提供する。
(a)前記複合負極活物質を走査型電子顕微鏡で撮影して四角形の走査型電子顕微鏡撮影写真を得るステップ;
(b)前記走査型電子顕微鏡撮影写真において、互いに異なる二つの辺を選択し、前記選択された二つの辺それぞれから一つの点を選択し、前記二つの辺から選択された二つの点を連結する直線を得るステップ;
(c)デジタル画像分析プログラムを用いて、縦軸が濃淡値(gray value)であり、横軸が前記直線の距離である前記直線の濃淡プロファイルグラフを得た後、平均濃淡値(average gray value)を計算するステップ;
(d)前記直線の濃淡プロファイルグラフにおいて、前記平均濃淡値を有するとともに横軸と平行な基準線と前記濃淡プロファイルの交点の個数を得た後、下記数学式1により計算された値を集合体の直径と定義するステップ;および
(e)前記ステップ(a)~ステップ(d)を2回以上行って前記集合体の直径の平均値を求めるステップ;
[数学式1]
集合体の直径=直線の長さ/(基準線と濃淡プロファイルの交点の個数+1)。
【0013】
また、本発明は、下記化学式2で表される化合物を含むシリコン系酸化物を第1熱処理して第1蒸気を発生させるステップ;Li、Mg、およびAlからなる群より選択された少なくとも1種を含む金属を第2熱処理して第2蒸気を発生させるステップ;前記第1蒸気および前記第2蒸気を混合して気相反応させるステップ;および前記気相反応後に冷却してシリコン系酸化物-金属複合体を得るステップ;を含み、前記シリコン系酸化物は、下記化学式2で表される化合物を含み、前記第1熱処理時の温度と前記冷却時の温度との差は400℃~550℃である、前述した複合負極活物質の製造方法を提供する。
[化学式2]
SiOa(0<a<2)。
【0014】
また、本発明は、負極集電体;および前記負極集電体の少なくとも一面に位置する負極活物質層;を含み、前記負極活物質層は、前述した複合負極活物質を含む、負極を提供する。
【0015】
また、本発明は、前述した負極;正極;前記負極と前記正極との間に介在するセパレータ;および電解質;を含む、二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の複合負極活物質は、シリコン系酸化物粒子;および前記シリコン系酸化物粒子の表面、内部、または表面および内部に分布した金属;を含む複合負極活物質であって、特定の方法により測定された集合体の直径の平均値が65nm以下であることを特徴とする。前記集合体は、前記複合負極活物質の内部に存在するものであり、ケイ素、酸素、および金属の中から選択された一つ以上を含む。本発明の複合負極活物質は、前記集合体の直径の平均値が上述した範囲の小さく均一なレベルに調節されることで、複合負極活物質の充放電時の体積の膨張および収縮による影響を最小化しながらも、充放電時の損傷可能性を画期的に下げることができ、初期効率が優れたレベルに向上することができる。したがって、前述した複合負極活物質を含む負極および二次電池の寿命性能が向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施例1の複合負極活物質の走査型電子顕微鏡(SEM)撮影写真である。
【
図2】本発明の集合体の直径の平均値を計算する過程を説明するための図である。
【
図3】本発明の集合体の直径の平均値を計算する過程を説明するための図である。
【
図4】本発明の集合体の直径の平均値を計算する過程を説明するための図である。
【
図5】実施例2の複合負極活物質の走査型電子顕微鏡(SEM)撮影写真である。
【
図6】実施例3の複合負極活物質の走査型電子顕微鏡(SEM)撮影写真である。
【
図7】実施例4の複合負極活物質の走査型電子顕微鏡(SEM)撮影写真である。
【
図8】実施例5の複合負極活物質の走査型電子顕微鏡(SEM)撮影写真である。
【
図9】実施例6の複合負極活物質の走査型電子顕微鏡(SEM)撮影写真である。
【
図10】実施例7の複合負極活物質の走査型電子顕微鏡(SEM)撮影写真である。
【
図11】実施例8の複合負極活物質の走査型電子顕微鏡(SEM)撮影写真である。
【
図12】比較例1の複合負極活物質の走査型電子顕微鏡(SEM)撮影写真である。
【
図13】比較例2の複合負極活物質の走査型電子顕微鏡(SEM)撮影写真である。
【
図14】比較例3の複合負極活物質の走査型電子顕微鏡(SEM)撮影写真である。
【
図15】比較例4の複合負極活物質の走査型電子顕微鏡(SEM)撮影写真である。
【
図16】比較例5の複合負極活物質の走査型電子顕微鏡(SEM)撮影写真である。
【
図17】比較例6の複合負極活物質の走査型電子顕微鏡(SEM)撮影写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書および請求の範囲で用いられている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈すべきである。
【0019】
本明細書で用いられている用語は、単に例示的な実施形態を説明するために用いられたものであって、本発明を限定しようとするものではない。単数の表現は、文脈上、明らかに他を意味しない限り、複数の表現を含む。
【0020】
本明細書において、「含む」、「備える」、または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、ステップ、構成要素、またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴、数字、ステップ、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除するものではないことを理解しなければならない。
【0021】
本明細書において、平均粒径(D50)は、粒子の粒径分布曲線において、体積累積量の50%に該当する粒径と定義することができる。前記平均粒径(D50)は、例えば、レーザ回折法(laser diffraction method)を用いて測定することができる。前記レーザ回折法は、一般にサブミクロン(submicron)領域から数mm程度の粒径の測定が可能であり、高再現性および高分解性の結果を得ることができる。
【0022】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0023】
<複合負極活物質>
本発明は、複合負極活物質に関する。前記複合負極活物質は、リチウム二次電池用負極に好ましく用いられることができる。
【0024】
本発明の複合負極活物質は、シリコン系酸化物粒子;および前記シリコン系酸化物粒子の表面、内部、または表面および内部に分布した金属;を含む複合負極活物質であって、前記複合負極活物質は、内部にケイ素、酸素、および金属の中から選択された一つ以上を含む一つ以上の集合体を含み、前記金属は、Li、Mg、およびAlからなる群より選択された少なくとも1種を含み、下記ステップ(a)~(e)を含む方法により得られる集合体の直径の平均値は65nm以下であることを特徴とする。
(a)前記複合負極活物質を走査型電子顕微鏡で撮影して四角形の走査型電子顕微鏡撮影写真を得るステップ;
(b)前記走査型電子顕微鏡撮影写真において、互いに異なる二つの辺を選択し、前記選択された二つの辺それぞれから一つの点を選択し、前記二つの辺から選択された二つの点を連結する直線を得るステップ;
(c)デジタル画像分析プログラムを用いて、縦軸が濃淡値(gray value)であり、横軸が前記直線の距離である前記直線の濃淡プロファイルグラフを得た後、平均濃淡値(average gray value)を計算するステップ;
(d)前記直線の濃淡プロファイルグラフにおいて、前記平均濃淡値を有するとともに横軸と平行な基準線と前記濃淡プロファイルの交点の個数を得た後、下記数学式1により計算された値を集合体の直径と定義するステップ;および
(e)前記ステップ(a)~ステップ(d)を2回以上行って前記集合体の直径の平均値を求めるステップ。
[数学式1]
集合体の直径=直線の長さ/(基準線と濃淡プロファイルの交点の個数+1)
【0025】
一般に、シリコン系活物質は、炭素系活物質に比べて約10倍程度の高い容量を有することが知られている。これにより、シリコン系活物質を負極に適用する場合、薄い厚さでも高いレベルのエネルギー密度を有する薄膜電極の実現が可能であると期待されている。
【0026】
しかし、シリコン系活物質は、充放電に応じたリチウムの挿入/脱離に応じて体積の膨張/収縮による寿命劣化が問題になる。また、シリコン系活物質の場合、シリコン系活物質中の不可逆サイトの存在により、初期充電時に負極に移動したリチウムの一部が放電時に正極に戻らない不可逆反応を発生させるという問題がある。
【0027】
従来、シリコン系活物質に金属をドープ、反応させてシリコン系活物質の不可逆相を減らし、初期効率を高めようとする研究が行われたが、依然としてシリコン系活物質の体積の膨張/収縮による寿命劣化問題を解決するには限界があった。
【0028】
このような問題を解決するために、本発明の複合負極活物質は、シリコン系酸化物粒子;および前記シリコン系酸化物粒子の表面、内部、または表面および内部に分布した金属;を含む複合負極活物質であって、特定の方法により測定された集合体の直径の平均値が65nm以下であることを特徴とする。前記集合体は、前記複合負極活物質の内部に存在するものであり、ケイ素、酸素、および金属の中から選択された一つ以上を含む。本発明の複合負極活物質は、前記集合体の直径の平均値が上述した範囲の小さく均一なレベルに調節されることで、複合負極活物質の充放電時の体積の膨張および収縮による影響を最小化しながらも、充放電時の損傷可能性を画期的に下げることができ、初期効率が優れたレベルに向上することができる。したがって、前述した複合負極活物質を含む負極および二次電池の寿命性能が向上することができる。
【0029】
本発明の複合負極活物質は、シリコン系酸化物粒子;および前記シリコン系酸化物粒子の表面、内部、または表面および内部に分布した金属;を含む。
【0030】
前記シリコン系酸化物粒子は、リチウムの挿入/脱離が可能なものであり、複合負極活物質のコア粒子として機能することができる。
【0031】
前記シリコン系酸化物粒子は、下記化学式1で表される化合物を含んでもよい。
[化学式1]
SiOx
前記化学式1中、0<x<2であってもよい。
【0032】
前記化学式1において、SiO2(前記化学式1中、x=2の場合)の場合は、リチウムイオンと反応せず、リチウムを貯蔵することができないため、xは前記範囲内であることが好ましい。具体的に、前記化学式1において、複合負極活物質の構造的安定の面で、xは0.5≦x≦1.5であってもよい。
【0033】
前記xは、前記SiOx(0<x<2)中に含まれたSiに対するOの個数比に該当する。前記複合負極活物質が前記SiOx(0<x<2)を含む場合、二次電池の放電容量が改善されることができる。
【0034】
前記シリコン系酸化物粒子の平均粒径(D50)は、充放電時の複合負極活物質の構造的安定を図り、粒径が過度に大きくなることで体積の膨張/収縮レベルも大きくなる問題を防止し、粒径が過度に低いため初期効率が減少する問題を防止するという面で、好ましくは1μm~15μm、より好ましくは2μm~8μmであってもよい。
【0035】
前記シリコン系酸化物粒子は、前記複合負極活物質に75重量%~99重量%、好ましくは80重量%~97重量%で含まれてもよい。上記範囲にある場合、金属の含量を適正レベルに向上させることができるため、負極の容量向上の面で好ましい。
【0036】
前記シリコン系酸化物粒子は、3nm~20nm、具体的には6nm~15nm、より具体的には8nm~11nmの結晶粒の大きさを有するSi結晶粒を含んでもよい。本発明において、「結晶粒」は、規則的な原子配列を有する単結晶粒子単位を意味する。前記範囲の結晶粒の大きさを有するSi結晶粒を含む場合、充放電時の活物質の内部構造の変化が最小化され、寿命性能がさらに向上することができる。
【0037】
前記Si結晶粒の大きさは、前記シリコン系酸化物粒子をXRD(X-ray diffraction)分析機器を用いてXRD分析を行い、それにより、Siの(220)面ピークの半値全幅および角度(θ)を求めた後、それをシェラーの式(Scherrer equation)に代入して得ることができる。
【0038】
[シェラーの式]
Si結晶粒の大きさ(nm)=(K×λ)/(FWHM×Cosθ)
【0039】
前記式中、Kは、シェラー定数(Scherrer constant)であり、λは、光源の波長であり、FWHMは、XRD分析時のSiの(220)面ピークの半値全幅であり、Cosθは、Siの(220)面ピークに該当する角度θのコサイン(cosine)値である。
【0040】
前記金属は、前記シリコン系酸化物粒子の表面、内部、または表面および内部に分布する。前記金属は、前記シリコン系酸化物粒子にドープされた形態で、前記シリコン系酸化物粒子の表面および/または内部に分布してもよい。
【0041】
前記金属は、シリコン系酸化物粒子の表面および/または内部に分布し、シリコン系酸化物粒子の体積の膨張/収縮を適したレベルに制御することができ、複合負極活物質の損傷を防止する役割を行うことができる。また、前記金属は、シリコン系酸化物粒子の不可逆相(例えば、SiO2)の割合を低くして複合負極活物質の効率を増加させるという面で含まれてもよい。
【0042】
前記金属は、Li、Mg、およびAlからなる群より選択された少なくとも1種を含んでもよい。具体的に、シリコン系酸化物粒子の体積膨張の制御、損傷の防止、初期効率の向上効果などが優れたレベルで実現できるという面で、LiおよびMgからなる群より選択された少なくとも1種を含んでもよい。
【0043】
前記金属原子は、金属シリケートの形態で存在してもよい。前記金属シリケートは、結晶性金属シリケートと非晶質金属シリケートに区分することができる。
【0044】
前記金属原子がLiである場合、Liは、前記コア内でLi2SiO3、Li4SiO4、およびLi2Si2O5からなる群より選択された少なくとも1種のリチウムシリケートの形態で存在してもよい。
【0045】
前記金属原子がMgである場合、Mgは、前記コア内でMg2SiO4およびMgSiO3のうち少なくとも1種のマグネシウムシリケートの形態で存在してもよい。
【0046】
前記金属は、前記シリコン系酸化物粒子および前記金属の重量の和に対して1重量%~20重量%で前記複合負極活物質に含まれてもよい。上記範囲にあるとき、上述したシリコン系酸化物粒子の損傷防止効果、寿命特性がより好ましく実現されるとともに、シリコン系酸化物粒子が有する優れた容量特性を阻害しないという面で好ましい。
【0047】
具体的に、前記金属がMgを含む場合、前記金属は、前記シリコン系酸化物粒子および前記金属の重量の和に対して5重量%~15重量%、より具体的には8重量%~13重量%で前記複合負極活物質に含まれてもよい。上記範囲にあるとき、複合負極活物質の容量特性の向上および初期効率の改善効果が優れたレベルで実現されることができる。また、本発明に係る複合負極活物質は、複合負極活物質の初期効率の向上のために金属の含量が増加しても、後述する集合体の平均直径を小さく均一に調節することで、複合負極活物質の構造的安定性を向上させ、寿命性能の低下が発生しない。
【0048】
一方、前記金属がLiを含む場合、前記金属は、前記シリコン系酸化物粒子および前記金属の重量の和に対して3重量%~12重量%、より具体的には4重量%~8重量%で前記複合負極活物質に含まれてもよい。上記範囲にあるとき、複合負極活物質の容量特性の向上および初期効率の改善効果が優れたレベルで実現されることができる。
【0049】
本発明の複合負極活物質は、内部にケイ素、酸素、および金属の中から選択された一つ以上を含む一つ以上の集合体を含む。
【0050】
前記集合体は、上述したシリコン系酸化物粒子のケイ素および酸素、前記金属が凝集および結合したものであり、前記複合負極活物質の内部に一つ以上、具体的には2以上存在してもよい。
【0051】
前記集合体は、例えば、ケイ素からなるかまたはケイ素が主要成分として存在する集合体(第1集合体)、またはケイ素、酸素、および金属を含む集合体(第2集合体)の形態で存在してもよい。具体的に、例示的な複合負極活物質の走査型電子顕微鏡撮影写真である
図1を参照すれば、複合負極活物質中に集合体が区画されていることを肉眼で確認することができ、大きく2タイプの集合体が存在していることを確認することができる。より具体的に、
図1において、第1集合体は、ケイ素からなるかまたはケイ素が主要成分として含まれているため、相対的に暗く、第2集合体は、酸素の存在により、第1集合体よりも相対的に明るい。
【0052】
本明細書において、前記集合体は、前記Si結晶粒とは異なる意味に定義される。具体的に、ケイ素からなるかまたはケイ素が主要成分として含まれた第1集合体の場合、結晶質Si、および非晶質Siをすべて含んでもよい。また、前記第2集合体は、金属、ケイ素、および酸素からなり、結晶性金属シリケート、非晶質金属シリケート、結晶性SiO2、および非晶質SiO2を含む集合体であってもよい。
【0053】
本発明は、このような集合体の大きさを小さく均一に調節することで、シリコンの体積膨張による影響を最小化し、複合負極活物質の容量特性の向上および初期効率の改善効果を顕著に向上させることができる。
【0054】
本発明の複合負極活物質において、下記ステップ(a)~(e)を含む方法により得られる集合体の直径の平均値は65nm以下である。
(a)前記複合負極活物質を走査型電子顕微鏡で撮影して四角形の走査型電子顕微鏡撮影写真を得るステップ;
(b)前記走査型電子顕微鏡撮影写真において、互いに異なる二つの辺を選択し、前記選択された二つの辺それぞれから一つの点を選択し、前記二つの辺から選択された二つの点を連結する直線を得るステップ;
(c)デジタル画像分析プログラムを用いて、縦軸が濃淡値(gray value)であり、横軸が前記直線の距離である前記直線の濃淡プロファイルグラフを得た後、平均濃淡値(average gray value)を計算するステップ;
(d)前記直線の濃淡プロファイルグラフにおいて、前記平均濃淡値を有するとともに横軸と平行な基準線と前記濃淡プロファイルの交点の個数を得た後、下記数学式1により計算された値を集合体の直径と定義するステップ;および
(e)前記ステップ(a)~ステップ(d)を2回以上行って前記集合体の直径の平均値を求めるステップ;
[数学式1]
集合体の直径=直線の長さ/(基準線と濃淡プロファイルの交点の個数+1)。
【0055】
以下、
図1~
図4を参照し、本発明の集合体の直径の測定方法(ステップ(a)~ステップ(e))について詳しく説明する。具体的に、
図1は、例示的な複合負極活物質(実施例1)の走査型電子顕微鏡撮影写真であり、
図2は、
図1の走査型電子顕微鏡撮影写真に任意の直線を図示したものであり、
図3は、デジタル画像分析プログラム(Image J)を用いて前記直線の濃淡プロファイルグラフを図示したものであり、
図4は、前記濃淡プロファイルグラフの平均濃淡値基準線と、濃淡プロファイルグラフの交点を求めるための過程を説明するための図である。
【0056】
<(a)前記複合負極活物質の走査型電子顕微鏡撮影写真を得るステップ>
前記集合体の直径の平均値の計算方法は、(a)前記複合負極活物質を走査型電子顕微鏡で撮影して四角形の走査型電子顕微鏡撮影写真を得るステップを含む。
【0057】
走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope)は、サンプルの表面を電子ビームを介してスキャンしてイメージ化させる電子顕微鏡の一種である。
図1に示すように、走査型電子顕微鏡を介して複合負極活物質を撮影することで、複合負極活物質の二次元的イメージ情報を得ることができる。
【0058】
前記集合体の直径または集合体の直径の平均値の測定方法に使用可能な走査型電子顕微鏡は、特に制限されず、例えば、HITACHI社製のS-4800であってもよい。
【0059】
また、前記集合体の平均直径の測定方法に適用可能な走査型電子顕微鏡の倍率は、集合体などの区画の設定に支障がない限り特に制限されず、例えば、50,000倍~120,000倍、具体的には100,000倍であってもよい。
【0060】
<(b)走査型電子顕微鏡撮影写真に直線を引くステップ>
図2に示すように、前記集合体の直径の平均値の計算方法は、(b)前記走査型電子顕微鏡撮影写真において、互いに異なる二つの辺を選択し、前記選択された二つの辺それぞれから一つの点を選択し、前記二つの辺から選択された二つの点を連結する直線を得るステップを含む。
【0061】
前記直線は、濃淡プロファイルグラフを得るために図示されるものであり、前記直線により集合体の濃淡変化をデジタル画像分析プログラムを介して確認することができる。
【0062】
図2に示すように、四角形の走査型電子顕微鏡撮影写真において、互いに異なる二つの辺を選択し、前記二つの辺からそれぞれ一つの点を選択し、前記選択された点間を繋いで直線を得ることができる。例えば、前記四角形の走査型電子顕微鏡撮影写真において選択される二つの辺は、互いに対向する対辺の関係にあってもよい。
【0063】
<(c)濃淡プロファイルグラフおよび平均濃淡値を得るステップ>
前記集合体の直径の平均値の計算方法は、(c)デジタル画像分析プログラムを用いて、縦軸が濃淡値(gray value)であり、横軸が前記直線の距離である前記直線の濃淡プロファイルグラフを得た後、平均濃淡値(average gray value)を計算するステップを含んでもよい。
【0064】
前記デジタル画像分析プログラムを介して、前記直線の濃淡程度を図示した濃淡プロファイルグラフを得ることができる。
図3に示すように、前記濃淡プロファイルグラフにおいて、縦軸は濃淡値(gray value)であり、横軸は直線の距離である。前記濃淡値は、前記直線の濃淡程度を表示した相対的な値であって、その単位がなくてもよい。
【0065】
前記デジタル画像分析プログラムは、前記直線の濃淡プロファイルを得ることができるものであれば特に制限されず、例えば、Image Jプログラムであってもよい。具体的に、
図3の濃淡プロファイルグラフは、Image Jプログラムで図示されたものである。
【0066】
一例において、前記デジタル画像分析プログラム(Image J)を用いて、先に撮影した走査型電子顕微鏡写真上のスケールバーを用いてピクセルのスケールを設定した後、プロットプロファイル(Plot Profile)を実行させ、縦軸が濃淡値(gray value)であり、横軸が前記直線の距離である前記直線の濃淡プロファイルグラフを得ることができる。
【0067】
前記平均濃淡値は、濃淡プロファイルグラフにおける直線の距離に応じたそれぞれの濃淡値の平均値を意味する。
【0068】
<(d)集合体の直径を計算するステップ>
前記集合体の直径の平均値の計算方法は、(d)前記直線の濃淡プロファイルグラフにおいて、前記平均濃淡値を有するとともに横軸と平行な基準線と前記濃淡プロファイルの交点の個数を得た後、下記数学式1により計算された値を集合体の直径と定義するステップを含む。
[数学式1]
集合体の直径=直線の長さ/(基準線と濃淡プロファイルの交点の個数+1)
【0069】
図4に示すように、上記で得られた平均濃淡値を有するとともに横軸と平行な基準線を濃淡プロファイルグラフに図示し、この際、濃淡プロファイルグラフと基準線の交点の個数を得ることができる。
【0070】
本発明は、ステップ(b)で得られた直線の長さと、前記交点の個数を用いて、数学式1により計算された値を集合体の直径と定義する。前記方法により、複合負極活物質の内部に存在する集合体の大きさを予測することができる。
【0071】
<(e)集合体の直径の平均値を計算するステップ>
前記集合体の直径の平均値の計算方法は、(e)前記ステップ(a)~ステップ(d)を2回以上行って前記集合体の直径の平均値を求めるステップを含んでもよい。本発明は、集合体の直径測定の正確性を高めるという面で、前記ステップ(a)~(d)を2回以上行って集合体の直径の平均値を求めることを特徴とする。
【0072】
具体的に、前記ステップ(a)~(d)は、10回以上、具体的には50回繰り返して行われてもよく、これらのステップの繰り返しにより得られた集合体の直径の平均値を得ることができる。
【0073】
前記ステップ(a)を2回以上行うステップは、前記複合負極活物質の互いに異なる領域を撮影するか、または前記複合負極活物質の同一の領域を撮影してもよい。前記複合負極活物質の同一の領域を撮影する場合、前記ステップ(a)~ステップ(d)を2回以上行うことは、前記ステップ(b)~ステップ(d)を2回以上行うことであってもよい。すなわち、同一の複合負極活物質領域から得た走査型電子顕微鏡撮影写真から2以上の互いに異なる直線を得て前記集合体の直径の平均値を測定することができる。
【0074】
本発明の複合負極活物質は、前記ステップ(a)~(e)を含む方法により得られる集合体の直径の平均値が65nm以下である領域を含んでもよい。
【0075】
前記ステップ(a)~(e)を含む方法は、前記複合負極活物質の任意の領域で行われてもよい。すなわち、前記複合負極活物質を走査型電子顕微鏡で撮影して四角形の走査型電子顕微鏡撮影写真を得るステップ(a)は、前記複合負極活物質の任意の領域で行われてもよく、前記任意の領域を基準にステップ(a)~(e)を行って得た集合体の直径の平均値が65nm以下を満たす場合、本発明の複合負極活物質になる。
【0076】
前記集合体の直径の平均値が65nm以下に調節される場合、本発明の複合負極活物質は、集合体の直径または集合体の大きさが小さく均一なレベルに調節されたと評価することができる。これにより、複合負極活物質の充放電時の体積の膨張および収縮による影響を最小化しながらも、充放電時の損傷可能性を画期的に下げることができ、初期効率が優れたレベルに向上することができる。
【0077】
前記集合体の直径の平均値が65nmを超過する場合、集合体の大きさが大きく一定ではないため、複合負極活物質の体積の膨張および収縮の制御が難しく、寿命性能が顕著に低下し得る。
【0078】
具体的に、前記集合体の直径の平均値は5nm~65nmであってもよく、より具体的には8nm~60nmであってもよい。上記範囲にあるとき、複合負極活物質の充放電時の体積の膨張および収縮による影響が最小化され、二次電池の寿命性能がさらに向上することができる。
【0079】
前記ステップ(e)により得られた集合体の直径の標準偏差は10nm以下、具体的には8nm以下であってもよい。上記範囲にあるとき、集合体の大きさが均一に調節され、複合負極活物質の充放電時の体積の膨張および収縮による影響を最小化することができる。
【0080】
本発明の複合負極活物質は、表面に位置する炭素コーティング層をさらに含んでもよい。前記炭素コーティング層は、シリコン系酸化物粒子の体積の膨張を抑制し、電解液との副反応を防止する保護層として機能することができる。
【0081】
前記炭素コーティング層は、前記複合負極活物質の表面の少なくとも一部を覆ってもよい。すなわち、前記炭素コーティング層は、前記複合負極活物質の表面を部分的に被覆しているか、または複合負極活物質の表面全体を被覆した形態であってもよい。前記炭素コーティング層により前記複合負極活物質に導電性が付与され、二次電池の初期効率、寿命特性、および電池容量特性が向上することができる。
【0082】
前記炭素コーティング層は、前記複合負極活物質中に0.1重量%~10重量%、好ましくは3重量%~7重量%で含まれてもよく、上記範囲にあるとき、前記炭素コーティング層がシリコン系酸化物粒子の体積の膨張を優れたレベルに制御しながらも、電解液との副反応を防止できるという面で好ましい。
【0083】
前記炭素コーティング層は、非晶質炭素および結晶性炭素のうち少なくとも一つを含んでもよい。
【0084】
前記結晶性炭素は、前記複合負極活物質の導電性をさらに向上させることができる。前記結晶性炭素は、フラーレン、カーボンナノチューブ、およびグラフェンからなる群より選択される少なくとも一つを含んでもよい。
【0085】
前記非晶質炭素は、前記炭素コーティング層の強度を適切に維持させ、前記複合負極活物質の膨張を抑制させることができる。前記非晶質炭素は、タール、ピッチ、およびその他の有機物からなる群より選択される少なくとも一つの炭化物、または炭化水素を化学気相蒸着法のソースとして用いて形成された炭素系物質であってもよい。
【0086】
前記炭素コーティング層は、非晶質炭素コーティング層であってもよい。具体的に、前記炭素コーティング層は、メタン、エタン、およびアセチレンからなる群より選択された少なくとも1種の炭化水素ガスを用いる化学気相蒸着法(CVD)により形成されてもよい。
【0087】
前記炭素コーティング層の厚さは1nm~500nmであってもよく、具体的には5nm~300nmであってもよい。前記範囲を満たす場合、複合負極活物質の導電性が改善され、電池の初期効率および寿命が改善されるという効果がある。
【0088】
前記複合負極活物質の平均粒径(D50)は、充放電時の活物質の構造的安定を図り、粒径が過度に大きくなることで体積の膨張/収縮レベルも大きくなる問題を防止し、粒径が過度に低いため初期効率が減少する問題を防止するという面で1μm~15μm、より好ましくは2μm~8μmであってもよい。
【0089】
<複合負極活物質の製造方法>
また、本発明は、複合負極活物質の製造方法を提供する。具体的に、前記複合負極活物質の製造方法は、前述した複合負極活物質の製造方法であってもよい。
【0090】
具体的に、本発明の複合負極活物質の製造方法は、下記化学式2で表される化合物を含むシリコン系酸化物を第1熱処理して第1蒸気を発生させるステップ;Li、Mg、およびAlからなる群より選択された少なくとも1種を含む金属を第2熱処理して第2蒸気を発生させるステップ;前記第1蒸気および前記第2蒸気を混合して気相反応させるステップ;および前記気相反応後に冷却してシリコン系酸化物-金属複合体を得るステップ;を含み、前記第1熱処理時の温度と前記冷却時の温度との差は400℃~550℃であることを特徴とする。
[化学式2]
SiOa(0<a<2)
【0091】
本発明の複合負極活物質の製造方法によれば、シリコン系酸化物および金属の混合物の混合物を加熱して気相で反応させた後に冷却してシリコン系酸化物-金属複合体を得る方法において、前記シリコン系酸化物の熱処理温度と前記冷却温度との差を上述した範囲に調節することを特徴とする。上述した範囲に前記シリコン系酸化物の熱処理温度と前記冷却温度との差を調節する場合、シリコン系酸化物-金属複合体の冷却速度が好ましいレベルに調節され、過度な冷却速度により複合負極活物質中の集合体の大きさが過度に大きくなるかまたは一定でなくなるという問題を防止することができる。したがって、上述した複合負極活物質の製造方法による場合、シリコンの体積の膨張および収縮により複合負極活物質に及ぼす寿命性能の低下問題を最小化することができる。
【0092】
本発明の複合負極活物質の製造方法は、下記化学式2で表される化合物を含むシリコン系酸化物を第1熱処理して第1蒸気を発生させるステップを含む。
[化学式2]
SiOa
前記化学式2中、0<a<2であってもよい。前記化学式2において、SiO2(前記化学式2中、a=2の場合)の場合、リチウムイオンと反応せず、リチウムを貯蔵することができないため、aは前記範囲内であることが好ましい。
【0093】
前記aは0.8以上1.2以下であるか、または1であってもよい。
【0094】
本発明の複合負極活物質の製造方法において、シリコン系酸化物-金属複合体または複合負極活物質の製造のために用いられる第1蒸気の原料物質として前記化学式2で表される化合物を含むシリコン系酸化物を用いることを特徴とする。これは、複合負極活物質中のシリコン系酸化物の蒸気形成のための原料物質としてシリコン(Si)およびシリコンジオキシド(SiO2)の混合物を用いることとは区別される。シリコンジオキシドは、それ自体で約2,000℃超過の温度で気化する物質として知られており、シリコンとの接触および反応により気化温度が減少することになる物質である。したがって、シリコンおよびシリコンジオキシドの混合物をシリコン系酸化物粒子の形成のための原料物質として用いる場合、シリコンジオキシドとシリコンの接触有無に応じて気相反応の有無、速度が異なり得るため、気相反応の均一性を確保し難い。したがって、本発明の複合負極活物質の製造方法によれば、第1蒸気の形成のための原料物質として前記化学式2で表される化合物を含むシリコン系酸化物を用いることで、気相反応の均一性を向上させるようにし、特に加熱温度と冷却温度との差を400℃~550℃に調節しても、円滑、かつ、均一な反応が起こるようにすることができる。
【0095】
前記第1熱処理時の温度は1,300℃~1,500℃、具体的には1,350℃~1,450℃であってもよく、上記範囲にあるとき、シリコン系酸化物含有蒸気を十分に発生させながらも、後述する冷却時の温度との差を好ましいレベルに調節することができるため、目的とする複合負極活物質の製造を可能にすることができる。
【0096】
前記第1熱処理は、真空雰囲気、または-50torr~-200torrの減圧雰囲気(50torr~200torr減圧)で行われてもよい。
【0097】
本発明の複合負極活物質の製造方法は、Li、Mg、およびAlからなる群より選択された少なくとも1種を含む金属を第2熱処理して第2蒸気を発生させるステップを含む。
【0098】
前記金属は、Li、Mg、およびAlからなる群より選択された少なくとも1種を含んでもよく、具体的に、シリコン系酸化物粒子の体積膨張の制御、損傷の防止、初期効率の向上などが優れたレベルで実現できるという面で、LiおよびMgからなる群より選択された少なくとも1種を含んでもよい。
【0099】
本発明の複合負極活物質の製造方法において、第2蒸気に含まれた金属の含量は、第1蒸気に含まれたシリコン系酸化物および第2蒸気に含まれた金属の重量の総和に対して1重量%~20重量%で前記混合物に含まれてもよい。上記範囲にあるとき、上述したシリコン系酸化物粒子の損傷防止効果、寿命特性がより好ましく実現されるとともに、シリコン系酸化物粒子が有する優れた容量特性を阻害しないという面で好ましい。前記複合負極活物質の金属の含量は、ICP-AES(誘導結合プラズマ発光分析装置)を用いて測定されてもよい。
【0100】
具体的に、前記金属がMgを含む場合、前記金属の含量は、第1蒸気に含まれたシリコン系酸化物および第2蒸気に含まれた金属の重量の総和に対して5重量%~15重量%、より具体的には8重量%~13重量%で前記混合物に含まれてもよい。上記範囲にあるとき、製造された複合負極活物質の容量特性の向上および初期効率の改善効果が優れたレベルで実現されることができる。一方、前記金属がLiを含む場合、前記金属は、第1蒸気に含まれたシリコン系酸化物および第2蒸気に含まれた金属の重量の総和に対して3重量%~12重量%、より具体的には4重量%~8重量%で前記混合物に含まれてもよく、複合負極活物質の容量特性の向上および初期効率の改善効果が優れたレベルで実現されることができる。
【0101】
前記第2熱処理時の温度は、用いられる金属の昇華温度を考慮して適宜選択されてもよく、例えば500℃~1,000℃であってもよい。具体的に、前記金属がMgを含む場合、第2熱処理時の温度は750℃~1,000℃であってもよく、前記金属がLiを含む場合、第2熱処理時の温度は500℃~750℃であってもよい。
【0102】
前記第2熱処理は、真空雰囲気、または-50torr~-200torrの減圧雰囲気で行われてもよい。
【0103】
一方、本明細書において、用語「第1熱処理」、「第2熱処理」は、熱処理工程が独立に行われることを特定するためのものであって、熱処理工程の順を制限するためのものではない。
【0104】
本発明の複合負極活物質の製造方法は、前記第1蒸気および前記第2蒸気を混合して気相反応させるステップを含む。具体的に、前記第1蒸気および前記第2蒸気を一つの反応器にて混合して気相反応させることができる。
【0105】
前記気相反応は、第1蒸気および第2蒸気を十分に反応させるという面で3時間~12時間、具体的には5時間~10時間行われてもよい。
【0106】
本発明の複合負極活物質の製造方法は、前記気相反応後に冷却してシリコン系酸化物-金属複合体を得るステップを含む。前記第1蒸気および前記第2蒸気を反応させた後、それを冷却してシリコン系酸化物-金属複合体を析出させることができる。
【0107】
前記冷却温度は、750℃~1,100℃、具体的には800℃~950℃であってもよく、上記範囲にあるとき、冷却または析出が過度に速い速度でなされないようにすることで、複合負極活物質中の集合体が小さく均一に形成されることができる。
【0108】
前記冷却は、十分な反応を行うために3時間~12時間、具体的には5時間~10時間行われてもよい。
【0109】
本発明の複合負極活物質の製造方法によれば、前記第1熱処理時の温度と前記冷却時の温度との差は400℃~550℃である。
【0110】
上述した範囲に前記加熱温度と前記冷却温度との差を調節する場合、シリコン系酸化物-金属複合体の冷却速度が好ましいレベルに調節され、過度な冷却速度により複合負極活物質中の集合体の大きさが過度に大きくなるかまたは一定でなくなるという問題を防止することができる。したがって、上述した複合負極活物質の製造方法による場合、シリコンの体積の膨張および収縮が複合負極活物質に及ぼす寿命性能の低下問題を最小化することができる。
【0111】
前記加熱温度と前記冷却温度との差が550℃を超過する場合、シリコン系酸化物-金属複合体が急激に冷却されることで、集合体の直径の均一性を確保し難く、集合体の大きさが過度に大きくなる恐れがあるため、シリコンの体積膨張の制御が難しい。また、前記加熱温度と前記冷却温度との差が400℃未満である場合、過度に遅い冷却により集合体が過度に成長する恐れがある。したがって、集合体の直径または大きさを減らし、かつ、均一性を確保するためには、上述した温度範囲に前記加熱温度と前記冷却温度との差を調節する必要がある。
【0112】
前記加熱温度と前記冷却温度との差は、具体的には420℃~520℃であってもよく、この場合、集合体の直径または大きさが均一かつ小さく調節されることができるため、シリコンの体積の膨張および収縮が複合負極活物質に及ぼす寿命性能の低下問題を最小化することができる。
【0113】
本発明の複合負極活物質の製造方法は、前記シリコン系酸化物-金属複合体を粉砕するステップをさらに含んでもよい。
【0114】
前記粉砕されたシリコン系酸化物-金属複合体の平均粒径(D50)は、充放電時の複合負極活物質の構造的安定を図り、粒径が過度に大きくなることで体積の膨張/収縮レベルも大きくなる問題を防止し、粒径が過度に低いため初期効率が減少する問題を防止するという面で、好ましくは1μm~15μm、より好ましくは2μm~8μmであってもよい。
【0115】
本発明の複合負極活物質の製造方法は、前記粉砕されたシリコン系酸化物-金属複合体の表面に炭素コーティング層を形成するステップをさらに含んでもよい。前記炭素コーティング層は、複合負極活物質の充放電に応じた体積の膨張を適切に制御し、電解液との副反応を防止できるようにする保護層として機能することができる。本発明の複合負極活物質は、前述したシリコン系酸化物-金属複合体、または炭素コーティング層が形成されたシリコン系酸化物-金属複合体を含んでもよい。
【0116】
前記炭素コーティング層を形成するステップは、化学気相蒸着法(CVD)により行われてもよく、具体的に、メタン、エタン、およびアセチレンからなる群より選択された少なくとも1種の炭化水素ガスを用いる化学気相蒸着法(CVD)により行われてもよい。前記方法により、前記粉砕されたシリコン系酸化物-金属複合体の表面に炭素コーティング層を均一なレベルに形成することができるため、複合負極活物質の体積の膨張が円滑に制御されることができ、電解液による副反応が防止されることができる。
【0117】
前記炭素コーティング層を形成するステップは800℃~1,300℃、好ましくは900℃~1,000℃で行われてもよい。
【0118】
その他の炭素コーティング層に関する説明は前述した。
【0119】
<負極>
また、本発明は、前述した負極活物質を含む負極を提供する。
【0120】
具体的に、本発明の負極は、負極集電体;および前記負極集電体の少なくとも一面に位置する負極活物質層;を含み、前記負極活物質層は、前述した複合負極活物質を含む。
【0121】
前記負極集電体は、電池に化学的変化を誘発せず、かつ、高い導電性を有するものであれば特に制限されない。具体的に、前記負極集電体は、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、およびアルミニウム-カドミウム合金からなる群より選択された少なくとも1種を含んでもよく、具体的には銅を含んでもよい。
【0122】
前記負極集電体は、通常、3μm~500μmの厚さを有してもよい。
【0123】
前記負極集電体は、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させてもよい。例えば、前記負極集電体は、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態で用いられてもよい。
【0124】
前記負極活物質層は、前記負極集電体の少なくとも一面に位置する。具体的に、前記負極活物質層は、前記負極集電体の一面または両面に位置してもよい。
【0125】
前記負極活物質層は、前述した複合負極活物質を含む。前記複合負極活物質は、負極活物質層に含まれることで、優れた容量特性および寿命特性を発揮することができる。前記複合負極活物質の説明は前述した。
【0126】
前記負極活物質層は、前述した複合負極活物質とともに、炭素系活物質をさらに含んでもよい。これにより、充放電に応じた体積の膨張程度が低い炭素系活物質により、負極活物質層の全体的な体積の膨張程度を低くすることができる。
【0127】
前記炭素系活物質は、黒鉛、人造黒鉛、天然黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン、カーボンブラック、グラフェン、および繊維状炭素からなる群より選択される少なくとも1種を含んでもよく、好ましくは、人造黒鉛および天然黒鉛からなる群より選択された少なくとも1種を含んでもよい。
【0128】
前記炭素系活物質の平均粒径(D50)は、充放電時に構造的安定性を図り、電解液との副反応を減らすという面で5μm~35μm、好ましくは10μm~20μmであってもよい。
【0129】
具体的に、前記負極活物質層は、容量特性およびサイクル特性を同時に改善させるという面で、前記複合負極活物質および前記炭素系活物質をいずれも用いることが好ましく、具体的に、前記負極活物質層は、前記複合負極活物質および前記炭素系活物質を1:99~50:50の重量比、好ましくは3:97~40:60の重量比で含んでもよい。
【0130】
前記負極活物質層は、前記複合負極活物質および前記炭素系活物質を80重量%~99重量%、好ましくは90重量%~98.5重量%で含んでもよい。
【0131】
前記負極活物質層は、バインダーを含んでもよい。
【0132】
前記バインダーは、電極接着力をさらに向上させ、活物質の体積の膨張/収縮に十分な抵抗力を付与できるという面で、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)、スチレンブタジエンゴム(SBR:styrene butadiene rubber)、アクリロニトリルブタジエンゴム(acrylonitrile butadiene rubber)、アクリルゴム(acrylic rubber)、ブチルゴム(butyl rubber)、フッ素ゴム(fluoro rubber)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルアルコール(PVA:polyvinyl alcohol)、ポリアクリル酸(PAA:polyacrylic acid)、ポリエチレングリコール(PEG:polyethylene glycol)、ポリアクリロニトリル(PAN:polyacrylonitrile)、およびポリアクリルアミド(PAM:polyacryl amide)からなる群より選択された少なくとも1種を含んでもよい。
【0133】
前記バインダーは、負極活物質層中に0.5重量%~10重量%で含まれてもよく、上記範囲にあるとき、活物質の体積の膨張をさらに効果的に制御できるという面で好ましい。
【0134】
前記負極活物質層は、導電材をさらに含んでもよい。前記導電材は、負極に導電性を向上させるために用いられてもよく、化学的変化を誘発せず、かつ、導電性を有することが好ましい。具体的に、前記導電材は、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、導電性繊維、カーボンナノチューブ(CNT)、フルオロカーボン、アルミニウム粉末、ニッケル粉末、酸化亜鉛、チタン酸カリウム、酸化チタン、およびポリフェニレン誘導体からなる群より選択された少なくとも1種であってもよく、好ましくは、高い導電性を実現するという面でカーボンブラックを含んでもよい。
【0135】
前記導電材は、前記負極活物質層中に0.5重量%~10重量%で含まれてもよい。
【0136】
前記負極活物質層は、負極活物質層の成分に対する電気的接触性を高めるという面で30μm~100μm、好ましくは40μm~80μmであってもよい。
【0137】
前記負極は、前記負極集電体上に負極活物質、バインダー、導電材などを負極スラリー形成用溶媒に分散させて負極スラリーを製造し、前記負極スラリーを前記負極集電体上にコーティングした後、乾燥および圧延して製造することができる。
【0138】
前記負極スラリー形成用溶媒は、成分の分散を容易にするという面で、蒸留水、エタノール、メタノール、およびイソプロピルアルコールからなる群より選択された少なくとも1種、好ましくは蒸留水を含んでもよい。
【0139】
<二次電池>
本発明は、前述した負極を含む二次電池、具体的には、リチウム二次電池を提供する。
【0140】
具体的に、本発明に係る二次電池は、前述した負極;正極;前記負極と前記正極との間に介在するセパレータ;および電解質;を含む。
【0141】
前記正極は、前記負極に対向することができる。
【0142】
前記正極は、正極集電体;および前記正極集電体の少なくとも一面に位置する正極活物質層を含んでもよい。
【0143】
前記正極集電体は、電池に化学的変化を誘発せず、かつ、高い導電性を有するものであれば特に制限されない。具体的に、前記正極集電体は、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、およびアルミニウム-カドミウム合金からなる群より選択された少なくとも1種を含んでもよく、具体的にはアルミニウムを含んでもよい。
【0144】
前記正極集電体は、通常、3~500μmの厚さを有してもよい。
【0145】
前記正極集電体は、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させてもよい。例えば、前記正極集電体は、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態で用いられてもよい。
【0146】
前記正極活物質層は、正極活物質を含んでもよい。
【0147】
前記正極活物質は、リチウムの可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な化合物であり、具体的には、ニッケル、コバルト、マンガン、およびアルミニウムからなる少なくとも1種の遷移金属とリチウムを含むリチウム遷移金属複合酸化物、好ましくは、ニッケル、コバルト、およびマンガンを含む遷移金属とリチウムを含むリチウム遷移金属複合酸化物を含んでもよい。
【0148】
より具体的に、前記リチウム遷移金属複合酸化物としては、リチウム-マンガン系酸化物(例えば、LiMnO2、LiMn2O4など)、リチウム-コバルト系酸化物(例えば、LiCoO2など)、リチウム-ニッケル系酸化物(例えば、LiNiO2など)、リチウム-ニッケル-マンガン系酸化物(例えば、LiNi1-YMnYO2(ここで、0<Y<1)、LiMn2-zNizO4(ここで、0<Z<2)など)、リチウム-ニッケル-コバルト系酸化物(例えば、LiNi1-Y1CoY1O2(ここで、0<Y1<1)など)、リチウム-マンガン-コバルト系酸化物(例えば、LiCo1-Y2MnY2O2(ここで、0<Y2<1)、LiMn2-z1Coz1O4(ここで、0<Z1<2)など)、リチウム-ニッケル-マンガン-コバルト系酸化物(例えば、Li(NipCoqMnr1)O2(ここで、0<p<1、0<q<1、0<r1<1、p+q+r1=1)、またはLi(Nip1Coq1Mnr2)O4(ここで、0<p1<2、0<q1<2、0<r2<2、p1+q1+r2=2)など)、またはリチウム-ニッケル-コバルト-遷移金属(M)酸化物(例えば、Li(Nip2Coq2Mnr3MS2)O2(ここで、Mは、Al、Fe、V、Cr、Ti、Ta、Mg、およびMoからなる群より選択され、p2、q2、r3、およびs2は、それぞれ独立した元素の原子分率であって、0<p2<1、0<q2<1、0<r3<1、0<s2<1、p2+q2+r3+s2=1である。)など)などが挙げられ、これらのいずれか一つまたは二つ以上の化合物が含まれてもよい。中でも、電池の容量特性および安全性を向上させるという点で、前記リチウム遷移金属複合酸化物は、LiCoO2、LiMnO2、LiNiO2、リチウムニッケル-マンガン-コバルト酸化物(例えば、Li(Ni0.6Mn0.2Co0.2)O2、Li(Ni0.5Mn0.3Co0.2)O2、Li(Ni0.7Mn0.15Co0.15)O2、またはLi(Ni0.8Mn0.1Co0.1)O2など)、またはリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(例えば、Li(Ni0.8Co0.15Al0.05)O2など)などであってもよく、リチウム遷移金属複合酸化物を形成する構成元素の種類および含量比の制御に応じた改善効果の顕著性を考慮すると、前記リチウム遷移金属複合酸化物は、Li(Ni0.6Mn0.2Co0.2)O2、Li(Ni0.5Mn0.3Co0.2)O2、Li(Ni0.7Mn0.15Co0.15)O2、またはLi(Ni0.8Mn0.1Co0.1)O2などであってもよく、これらのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が用いられてもよい。
【0149】
前記正極活物質は、正極活物質の十分な容量発揮などを考慮し、正極活物質層中に80重量%~99重量%、好ましくは92重量%~98.5重量%で含まれてもよい。
【0150】
前記正極活物質層は、前述した正極活物質とともに、バインダーおよび/または導電材をさらに含んでもよい。
【0151】
前記バインダーは、活物質と導電材などの結着および集電体に対する結着に助力をする成分であり、具体的に、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレン-ブタジエンゴム、およびフッ素ゴムからなる群より選択された少なくとも1種、好ましくはポリビニリデンフルオライドを含んでもよい。
【0152】
前記バインダーは、正極活物質などの成分間の結着力を十分に確保するという面で、正極活物質層中に1重量%~20重量%、好ましくは1.2重量%~10重量%で含まれてもよい。
【0153】
前記導電材は、二次電池に導電性を補助および向上させるために用いられてもよく、化学的変化を誘発せず、かつ、導電性を有するものであれば特に制限されない。具体的に、前記導電材は、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;カーボンナノチューブなどの導電性チューブ;フルオロカーボン;アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;およびポリフェニレン誘導体からなる群より選択された少なくとも1種を含んでもよく、好ましくは、導電性を向上させるという面でカーボンブラックを含んでもよい。
【0154】
前記導電材は、電気伝導性を十分に確保するという面で、正極活物質層中に1重量%~20重量%、好ましくは1.2重量%~10重量%で含まれてもよい。
【0155】
前記正極活物質層の厚さは30μm~400μm、好ましくは50μm~110μmであってもよい。
【0156】
前記正極は、前記正極集電体上に正極活物質および選択的にバインダー、導電材、および正極スラリー形成用溶媒を含む正極スラリーをコーティングした後、乾燥および圧延して製造することができる。
【0157】
前記正極スラリー形成用溶媒は、NMP(N-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone))などの有機溶媒を含んでもよく、前記正極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材などを含む際に好ましい粘度になる量で用いられてもよい。例えば、前記正極スラリー形成用溶媒は、正極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材を含む固形分の濃度が50重量%~95重量%、好ましくは70重量%~90重量%になるように前記正極スラリーに含まれてもよい。
【0158】
前記セパレータは、負極と正極を分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものであり、通常、リチウム二次電池においてセパレータとして用いられるものであれば特に制限なく使用可能であり、特に電解質のイオン移動に対して低抵抗であり、かつ、電解液含湿能力に優れることが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体、およびエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子から製造した多孔性高分子フィルム、またはこれらの2層以上の積層構造体が用いられてもよい。また、通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布が用いられてもよい。また、耐熱性または機械的強度を確保するためにセラミック成分または高分子物質含みのコーティングされたセパレータが用いられてもよく、選択的に単層または多層構造として用いられてもよい。
【0159】
また、本発明で用いられる電解質としては、二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル型高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などが挙げられ、これらに限定されるものではない。
【0160】
具体的に、前記電解質は、有機溶媒およびリチウム塩を含んでもよい。
【0161】
前記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動可能な媒質の役割を行うことができるものであれば特に制限なく用いられてもよい。具体的に、前記有機溶媒としては、メチルアセテート、エチルアセテート、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトンなどのエステル系溶媒;ジブチルエーテルまたはテトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;ベンゼン、フルオロベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)などのカーボネート系溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;R-CN(Rは、C2~C20の直鎖状、分岐状、または環状構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含んでもよい。)などのニトリル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類;またはスルホラン(sulfolane)類などが用いられてもよい。中でも、カーボネート系溶媒が好ましく、電池の充放電性能の向上が可能な高いイオン伝導度および高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートなど)と、低粘度の直鎖状カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、またはジエチルカーボネートなど)の混合物がより好ましい。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートは、約1:1~約1:9の体積比で混合して用いることが、優れた電解液性能を示すことができる。
【0162】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池で用いられるリチウムイオンを提供できる化合物であれば特に制限なく用いられてもよい。具体的に、前記リチウム塩としては、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiSbF6、LiAlO4、LiAlCl4、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiN(C2F5SO3)2、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiCl、LiI、またはLiB(C2O4)2などが用いられてもよい。前記リチウム塩の濃度は、0.1M~2.0Mの範囲内で用いることが好ましい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれると、電解質が適した伝導度および粘度を有するため、優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0163】
前記二次電池は、通常の二次電池の製造方法により、上述した負極と正極との間にセパレータを介在させた後、電解液(電解質)を注入して製造することができる。
【0164】
本発明に係る二次電池は、携帯電話、ノート型パソコン、デジタルカメラなどの携帯用機器、およびハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)などの電気自動車分野などに有用であり、特に中大型電池モジュールの構成電池として好ましく用いることができる。したがって、本発明は、上記のような二次電池を単位電池として含む中大型電池モジュールを提供する。
【0165】
このような中大型電池モジュールは、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、電力貯蔵装置などのように高出力、大容量が求められる動力源に好ましく適用することができる。
【実施例】
【0166】
以下、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように本発明の実施例について詳しく説明する。ただし、本発明は、種々の異なる形態で実現されてもよく、ここで説明する実施例に限定されるものではない。
【0167】
実施例
実施例1:複合負極活物質の製造
(1)複合負極活物質の製造
シリコン系酸化物としてSiOを第1トレイに入れ、-100torrの減圧雰囲気で、1,400℃で第1熱処理して第1蒸気を発生させた。また、金属としてMgを第2トレイに入れ、-100torrの減圧雰囲気で、900℃で第2熱処理して第2蒸気を発生させた。それぞれのトレイにおける第1熱処理および第2熱処理は独立に行われた。前記第1トレイに入ったSiOおよび前記第2トレイに入った金属の重量比は88:12であった。
【0168】
前記第1蒸気および前記第2蒸気を一つの反応器に混合して8時間気相反応させた。
【0169】
前記気相反応の完了後、900℃に冷却させ、シリコン系酸化物粒子-金属複合体を形成した。前記冷却は8時間行われた。
【0170】
前記シリコン系酸化物粒子-金属複合体をジェットミルで粉砕し、平均粒径(D50)が6μmのシリコン系酸化物粒子-金属複合体を製造した。
【0171】
前記粉砕されたシリコン系酸化物粒子-金属複合体に、950℃、4時間の条件で、アルゴン(Ar)とメタン(CH4)の混合ガス下でCVD処理をして、炭素コーティング層をシリコン系酸化物粒子-金属複合体の表面に形成し、それを実施例1の複合負極活物質とした。前記複合負極活物質は、平均粒径(D50)が6μmであり、炭素コーティング層を4重量%で含んでいる。
【0172】
(2)集合体の直径の平均値の測定および計算
ステップ(a):上記で製造された複合負極活物質を走査型電子顕微鏡(機器名:S-4800、製造会社:HITACHI)を用いて100,000倍の倍率で撮影した。
図1は、実施例1の複合負極活物質の走査型電子顕微鏡撮影写真である。
【0173】
ステップ(b):
図2に示すように、
図1において互いに対向する二つの辺を選択し、前記二つの辺から任意の点を選択し、前記選択された二点を繋いで直線を図示した。
【0174】
ステップ(c):デジタル画像分析プログラム(Image J)を用いて、走査型電子顕微鏡撮影写真上のスケールバーを用いてピクセルのスケールを設定し、プロットプロファイル(Plot Profile)を実行させ、縦軸が濃淡値(gray value)であり、横軸が前記直線の距離である前記直線の濃淡プロファイルグラフを得た。また、濃淡プロファイルグラフの直線の距離に応じた濃淡値の平均値を計算して平均濃淡値を得た。
図3に示すように、直線の距離に応じた平均濃淡値は106であった。
【0175】
ステップ(d):
図4に示すように、前記直線の濃淡プロファイルグラフにおいて前記平均濃淡値を有するとともに横軸と平行な基準線を図示し、濃淡プロファイルグラフと基準線の交点の個数を得た。次に、下記数学式1により計算された値を集合体の直径と定義した。
[数学式1]
集合体の直径=直線の長さ/(基準線と濃淡プロファイルの交点の個数+1)
【0176】
ステップ(e):前記(a)~(d)のステップを50回行って得た50個の集合体の直径の平均値を計算した。この際、集合体の直径の平均値は39.6nmであり、標準偏差は4.2nmであった。
【0177】
実施例2:複合負極活物質の製造
冷却温度を950℃にしたことを除いては、実施例1と同様の方法で複合負極活物質を製造した。上記で製造された複合負極活物質を走査型電子顕微鏡(機器名:S-4800、製造会社:HITACHI)を用いて100,000倍の倍率で撮影した。前記複合負極活物質の走査型電子顕微鏡撮影写真を
図5に示す。実施例1と同様の方法で測定した集合体の直径の平均値は34.1nmであり、標準偏差は3.8nmであった。
【0178】
実施例3:複合負極活物質の製造
第1熱処理時の温度を1,450℃にし、第2熱処理時の温度を920℃にしたことを除いては、実施例1と同様の方法で複合負極活物質を製造した。上記で製造された複合負極活物質を走査型電子顕微鏡(機器名:S-4800、製造会社:HITACHI)を用いて100,000倍の倍率で撮影した。前記複合負極活物質の走査型電子顕微鏡撮影写真を
図6に示す。
【0179】
実施例1と同様の方法で測定した集合体の直径の平均値は55.5nmであり、標準偏差は4.8nmであった。
【0180】
実施例4:複合負極活物質の製造
第1トレイに入ったSiOおよび第2トレイに入った金属の重量比を95:5にしたことを除いては、実施例1と同様の方法で複合負極活物質を製造した。上記で製造された複合負極活物質を走査型電子顕微鏡(機器名:S-4800、製造会社:HITACHI)を用いて100,000倍の倍率で撮影した。前記複合負極活物質の走査型電子顕微鏡撮影写真を
図7に示す。
【0181】
実施例1と同様の方法で測定した集合体の直径の平均値は37.6nmであり、標準偏差は5.9nmであった。
【0182】
実施例5:複合負極活物質の製造
第1トレイに入ったSiOおよび第2トレイに入った金属の重量比が85:15であることを除いては、実施例1と同様の方法で複合負極活物質を製造した。上記で製造された複合負極活物質を走査型電子顕微鏡(機器名:S-4800、製造会社:HITACHI)を用いて100,000倍の倍率で撮影した。前記複合負極活物質の走査型電子顕微鏡撮影写真を
図8に示す。
【0183】
実施例1と同様の方法で測定した集合体の直径の平均値は42.7nmであり、標準偏差は4.7nmであった。
【0184】
実施例6:複合負極活物質の製造
金属としてMgの代わりにLiを用い、第1トレイに入ったSiOおよび第2トレイに入った金属の重量比を94:6の重量比にし、第2熱処理時の温度を600℃にしたことを除いては、実施例1と同様の方法で複合負極活物質を製造した。上記で製造された複合負極活物質を走査型電子顕微鏡(機器名:S-4800、製造会社:HITACHI)を用いて100,000倍の倍率で撮影した。前記複合負極活物質の走査型電子顕微鏡撮影写真を
図9に示す。
【0185】
実施例1と同様の方法で測定した集合体の直径の平均値は27.7nmであり、標準偏差は5.9nmであった。
【0186】
実施例7:複合負極活物質の製造
第1トレイに入ったSiOおよび第2トレイに入った金属の重量比が97:3であり、第2熱処理時の温度を550℃にしたことを除いては、実施例6と同様の方法で複合負極活物質を製造した。上記で製造された複合負極活物質を走査型電子顕微鏡(機器名:S-4800、製造会社:HITACHI)を用いて100,000倍の倍率で撮影した。前記複合負極活物質の走査型電子顕微鏡撮影写真を
図10に示す。
【0187】
実施例1と同様の方法で測定した集合体の直径の平均値は25.3nmであり、標準偏差は2.4nmであった。
【0188】
実施例8:複合負極活物質の製造
第1トレイに入ったSiOおよび第2トレイに入った金属の重量比が90:10であり、第2熱処理時の温度を700℃にしたことを除いては、実施例6と同様の方法で複合負極活物質を製造した。上記で製造された複合負極活物質を走査型電子顕微鏡(機器名:S-4800、製造会社:HITACHI)を用いて100,000倍の倍率で撮影した。前記複合負極活物質の走査型電子顕微鏡撮影写真を
図11に示す。
【0189】
実施例1と同様の方法で測定した集合体の直径の平均値は32.5nmであり、標準偏差は5.5nmであった。
【0190】
比較例1:複合負極活物質の製造
冷却時の温度を500℃にしたことを除いては、実施例1と同様の方法で複合負極活物質を製造した。上記で製造された複合負極活物質を走査型電子顕微鏡(機器名:S-4800、製造会社:HITACHI)を用いて100,000倍の倍率で撮影した。前記複合負極活物質の走査型電子顕微鏡撮影写真を
図12に示す。
【0191】
実施例1と同様の方法で測定した集合体の直径の平均値は74.2nmであり、標準偏差は14.5nmであった。
【0192】
比較例2:複合負極活物質の製造
冷却時の温度を1,050℃にしたことを除いては、実施例1と同様の方法で複合負極活物質を製造した。上記で製造された複合負極活物質を走査型電子顕微鏡(機器名:S-4800、製造会社:HITACHI)を用いて100,000倍の倍率で撮影した。前記複合負極活物質の走査型電子顕微鏡撮影写真を
図13に示す。
【0193】
実施例1と同様の方法で測定した集合体の直径の平均値は78.4nmであり、標準偏差は15.5nmであった。
【0194】
比較例3:複合負極活物質の製造
第1トレイにシリコン系酸化物SiOの代わりにSiとSiO
2を1:1のモル比で混合したものを投入し、第1トレイに入ったSiおよびSiO
2の重量の総和と、第2トレイに入った金属の重量比が88:12であることを除いては、実施例1と同様の方法で複合負極活物質を製造した。上記で製造された複合負極活物質を走査型電子顕微鏡(機器名:S-4800、製造会社:HITACHI)を用いて100,000倍の倍率で撮影した。前記複合負極活物質の走査型電子顕微鏡撮影写真を
図14に示す。
【0195】
実施例1と同様の方法で測定した集合体の直径の平均値は83.2nmであり、標準偏差は26.1nmであった。
【0196】
比較例4:複合負極活物質の製造
冷却時の温度を800℃にしたことを除いては、実施例1と同様の方法で複合負極活物質を製造した。上記で製造された複合負極活物質を走査型電子顕微鏡(機器名:S-4800、製造会社:HITACHI)を用いて100,000倍の倍率で撮影した。前記複合負極活物質の走査型電子顕微鏡撮影写真を
図15に示す。
【0197】
実施例1と同様の方法で測定した集合体の直径の平均値は72.2nmであり、標準偏差は16.7nmであった。
【0198】
比較例5:複合負極活物質の製造
冷却時の温度を1,200℃にしたことを除いては、実施例1と同様の方法で複合負極活物質を製造した。上記で製造された複合負極活物質を走査型電子顕微鏡(機器名:S-4800、製造会社:HITACHI)を用いて100,000倍の倍率で撮影した。前記複合負極活物質の走査型電子顕微鏡撮影写真を
図16に示す。
【0199】
実施例1と同様の方法で測定した集合体の直径の平均値は143.4nmであり、標準偏差は74.1nmであった。
【0200】
比較例6:複合負極活物質の製造
シリコン系酸化物としてSi(D50=20μm)20kgとSiO2(D50=50nm)50kgを水に入れ、12時間撹拌して混合したものを1,200℃で乾燥して混合体を形成した。前記混合体を第1トレイに入れ、0.1torrの減圧雰囲気で、1、600℃で熱処理して第1蒸気を発生させた。また、金属として11kgのMgを第2トレイに入れ、0.1torrの減圧雰囲気で、900℃で第2熱処理して第2蒸気を発生させた。それぞれのトレイにおける第1熱処理および第2熱処理は独立に行われた。
【0201】
前記第1蒸気および前記第2蒸気を一つの反応器に混合して3時間気相反応させた。
【0202】
前記気相反応の完了後、前記反応器内部の基板に蒸着されたシリコン系複合酸化物を室温まで速く冷却させ、シリコン系酸化物粒子-金属複合体を形成した。
【0203】
前記シリコン系酸化物粒子-金属複合体をジェットミルで粉砕し、平均粒径(D50)が6μmのシリコン系酸化物粒子-金属複合体を製造した。
【0204】
前記シリコン系酸化物粒子-金属複合体50gをチューブ型電気炉の内部に入れ、Arとメタンガスをそれぞれ1L/minずつ流しつつ、1000℃で1時間維持して、炭素コーティング層をシリコン系酸化物粒子-金属複合体の表面に形成し、それを比較例6の複合負極活物質とした。
【0205】
上記で製造された複合負極活物質を走査型電子顕微鏡(機器名:S-4800、製造会社:HITACHI)を用いて100,000倍の倍率で撮影した。前記複合負極活物質の走査型電子顕微鏡撮影写真を
図17に示す。
【0206】
実施例1と同様の方法で測定した集合体の直径の平均値は75nmであり、標準偏差は23.5nmであった。
【0207】
前記実施例1~8および比較例1~6で製造された複合負極活物質に関する内容を下記表1に示す。
【0208】
【0209】
※シリコン系酸化物粒子のSi結晶粒の大きさの測定
シリコン系酸化物粒子のSi結晶粒の大きさは、XRD(X-ray diffraction)分析機器(製品名:D4-endavor、製造会社:bruker)を用いてXRD分析を行い、Siの(220)面ピークを測定した後、シェラーの式(scherrer equation)により測定された。具体的に、XRD分析は以下の条件で行われた。
【0210】
<XRD分析条件>
1)光源の種類および波長:Cu Kαで発生したX線波長を用い、光源の波長(λ)は0.15406nmであった。
2)試料の準備方法:シリコン系酸化物粒子0.3gを直径2.5cm、高さ2.5mmの円筒形ホルダーに入れ、ホルダー内の試料の高さが一定であるようにスライドグラスで平坦化作業を行い、XRD分析のための試料を準備した。
3)XRD分析装置の設定条件:SCAN TIMEは、1時間15分に設定し、測定領域は、2θが10゜~90゜である領域に設定し、1秒に0.02゜ずつ2θをスキャンするようにSTEP TIMEとSTEP SIZEを設定した。この際、Siの(220)面ピークを測定するために、2θが45゜~50゜である領域のピークを測定した。
【0211】
その後、以下のシェラーの式(Scherrer equation)を用いて、シリコン系酸化物粒子のシリコンの結晶粒の大きさを計算した。
【0212】
[シェラーの式]
Si結晶粒の大きさ(nm)=(K×λ)/(FWHM×Cosθ)
【0213】
前記式中、Kは、シェラーの定数(Scherrer constant)として0.89であり、λは、光源の波長として0.15406nmであり、FWHMは、XRD分析時のSiの(220)面ピークの半値全幅としてLorentz関数を用いて計算され、Cosθは、Siの(220)面ピークに該当する角度θのコサイン(cosine)値である。
【0214】
実験例
実験例1:寿命特性の評価
<負極の製造>
負極活物質として実施例1で製造された複合負極活物質と炭素系活物質として黒鉛(平均粒径(D50):20μm)を15:85の重量比で混合したものを用いた。
【0215】
前記負極活物質、バインダーとしてスチレン-ブタジエンゴム(SBR)、導電材としてSuper C65、および増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)を96:2:1:1の重量比で混合し、それを負極スラリー形成用溶媒として蒸留水に添加し、負極スラリーを製造した。
【0216】
負極集電体として銅集電体(厚さ:15μm)の一面に前記負極スラリーを3.6mAh/cm2のローディング量でコーティングし、圧延(roll press)し、130℃の真空オーブンで10時間乾燥して負極活物質層(厚さ:50μm)を形成し、それを実施例1による負極とした(負極の厚さ:65μm)。
【0217】
また、実施例1の複合負極活物質の代わりに実施例2~8および比較例1~6の複合負極活物質をそれぞれ用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で実施例2~8および比較例1~6の負極を製造した。
【0218】
<二次電池の製造>
正極としてリチウム金属箔を準備した。
【0219】
上記で製造された実施例1~8および比較例1~6の負極と正極との間に多孔性ポリエチレンセパレータを介在し、電解液を注入し、実施例1~8および比較例1~6のコイン型ハーフセルを製造した。
【0220】
前記電解質としては、エチルメチルカーボネート(EMC)とエチレンカーボネート(EC)を7:3の体積比で混合した溶液に、0.5重量%でビニレンカーボネート(VC)を溶解させ、LiPF6を1Mの濃度で溶解させたものを用いた。
【0221】
<容量維持率の評価>
実施例1~8および比較例1~6で製造された二次電池に対し、電気化学充放電器を用いてサイクル容量維持率を評価した。
【0222】
サイクル容量維持率は25℃の温度で行われ、1番目のサイクルおよび2番目のサイクルは0.1Cで充放電し、3番目のサイクルからは0.5Cで充放電を行った(充電条件:CC/CV、5mV/0.005C cut-off、放電条件:CC、1.5V cut off)。
【0223】
容量維持率は下記のように計算した。
容量維持率(%)={(N番目のサイクルにおける放電容量)/(1番目のサイクルにおける放電容量)}×100
(前記式中、Nは1以上の整数である。)
【0224】
50番目のサイクル容量維持率(%)を下記表2に示す。
【0225】
【0226】
表2を参照すれば、集合体の直径の平均値が好ましいレベルに調節された実施例1~8の複合負極活物質は、比較例1~6の複合負極活物質に比べて、電池の寿命特性が優れたレベルに向上したことを確認することができる。