(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-10-20
(45)【発行日】2025-10-28
(54)【発明の名称】梁部材
(51)【国際特許分類】
E04B 1/24 20060101AFI20251021BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20251021BHJP
E04C 3/06 20060101ALI20251021BHJP
【FI】
E04B1/24 B
E04B1/24 Q
E04B1/58 506F
E04C3/06
(21)【出願番号】P 2022028103
(22)【出願日】2022-02-25
【審査請求日】2025-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【氏名又は名称】神保 泰三
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 浩徳
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼倉 恵
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】実開平4-11809(JP,U)
【文献】実開昭57-187302(JP,U)
【文献】特開2002-327495(JP,A)
【文献】特開2012-057419(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0094422(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/24
E04B 1/58
E04C 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上フランジと下フランジとウェブとを有する鋼梁部と、この鋼梁部の側面側で上記上フランジおよび上記下フランジの各々の縁に溶接され、別の梁のエンドプレートが梁固定ボルトで締結される接合プレートと、この接合プレートの裏面に溶接されたリブと、を備えており、
上記リブは、上記鋼梁部の延設方向に離間して対向し且つ上記ウェブに溶接された一方縦リブ部および他方縦リブ部と、上記一方縦リブ部および上記他方縦リブ部の上端側に接続された上横リブ部と、上記一方縦リブ部および上記他方縦リブ部の下端側に接続された下横リブ部と、を備えており、
上記上フランジおよび上記下フランジには柱固定ボルトが挿通される挿通孔が鉛直方向に形成されており、上記上横リブ部および上記下横リブ部は、それぞれ上記上フランジおよび上記下フランジから、上記柱固定ボルトを上記挿通孔に挿通することを可能にする距離離れて位置していることを特徴とする梁部材。
【請求項2】
請求項1に記載の梁部材において、上記リブは、上記一方縦リブ部と上記他方縦リブ部と上記上横リブ部と上記下横リブ部とが多角形を形成するように接続されて閉断面形状を有することを特徴とする梁部材。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の梁部材において、上記上横リブ部の上記鋼梁部の延設方向の中央側と上記上フランジとの間隔よりも、上記上横リブ部の上記延設方向の端側と上記上フランジとの間隔の方が広くされ、上記下横リブ部の上記延設方向の中央側と上記下フランジとの間隔よりも、上記下横リブ部の上記延設方向の端側と上記下フランジとの間隔の方が広くされていることを特徴とする梁部材。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の梁部材において、上記上横リブ部は上記接合プレートの最上位置のボルト挿通孔の下端側に近接しており、上記下横リブ部は上記接合プレートの最下位置のボルト挿通孔の上端側に近接していることを特徴とする梁部材。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の梁部材において、上記上横リブ部の上記鋼梁部の延設方向の中央側に溶接され、上方側に延びて上記接合プレートに溶接された上側縦板部、および上記下横リブ部の上記延設方向の中央側に溶接され、下方側に延びて上記接合プレートに溶接された下側縦板部を有することを特徴とする梁部材。
【請求項6】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の梁部材において、上記上横リブ部は上記鋼梁部の延設方向の中央側で上第1部位と上第2部位とに分割されており、上記上第1部位と上第2部位のいずれかが上記中央側で上方向に延びて上記接合プレートに溶接された上側縦板部を有し、上記下横リブ部は上記鋼梁部の延設方向の中央側で下第1部位と下第2部位とに分割されており、上記下第1部位と下第2部位のいずれかが上記中央側で下方向に延びて上記接合プレートに溶接された下側縦板部を有することを特徴とする梁部材。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の梁部材において、上記梁固定ボルトが螺合されるナット部または雌螺子が上記接合プレートに設けられていることを特徴とする梁部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、梁に他の梁を接合するための梁取り合い構造を有する梁部材に関する。
【背景技術】
【0002】
図9に示すように、上フランジ101aと下フランジ101bとウェブ101cとを有するH形鋼梁部101と、このH形鋼梁部101の側面側で上記上フランジ101aと下フランジ101bの各々の縁に溶接され、別の梁のエンドプレートが梁固定ボルトで締結される接合プレート102と、この接合プレート102の裏面に溶接された縦板リブ103と、を備える梁部材100が知られている。この梁部材100の作製においては、上記縦板リブ103が予め溶接された接合プレート102の上縁を上フランジ101aに、下縁を下フランジ101bにそれぞれ溶接する。そして、上記縦板リブ103における上記ウェブ101cに接する奥側縁を、当該ウェブ101cに溶接する。これらの溶接作業は、溶接ロボットによって行うことができる。
【0003】
なお、特許文献1には、ウェブおよびこのウェブの両端に設けられた一対のフランジを有する大梁と、小梁と、上記大梁と上記小梁とを接合するガセットプレートと、を具備し、溶接の施工のための時間やコストの削減を図ることが可能な梁接合構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記梁部材100の製作では、接合プレート102の真裏側となる位置で縦板リブ103の奥側縁をウェブ101cに溶接する必要があり、この溶接作業において接合プレート102が邪魔になるため、溶接用ロボットを用い難いという問題があった。
【0006】
なお、
図10に示すように、両側に縦リブ部201aを有する断面コ字状の接合プレート201を用い、上記縦リブ部201aをウェブ101cに溶接した梁部材200であれば、上記縦リブ部201aを、溶接用ロボットを用いて容易にウェブ101cに溶接することができる。しかしながら、フランジ101a、101bに柱固定用のボルトを挿通させるために接合プレート201の縦リブ部201aの上下端に切欠きを設ける必要があり、このような切欠きが有ると、図中の凹角部分Aに応力集中が生じる問題がある。
【0007】
この発明は、溶接用ロボットを用いた作製が容易であり、応力集中も生じ難い梁部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の梁部材は、上フランジと下フランジとウェブとを有する鋼梁部と、この鋼梁部の側面側で上記上フランジおよび上記下フランジの各々の縁に溶接され、別の梁のエンドプレートが梁固定ボルトで締結される接合プレートと、この接合プレートの裏面に溶接されたリブと、を備えており、
上記リブは、上記鋼梁部の延設方向に離間して対向し且つ上記ウェブに溶接された一方縦リブ部および他方縦リブ部と、上記一方縦リブ部および上記他方縦リブ部の上端側に接続された上横リブ部と、上記一方縦リブ部および上記他方縦リブ部の下端側に接続された下横リブ部と、を備えており、
上記上フランジおよび上記下フランジには柱固定ボルトが挿通される挿通孔が鉛直方向に形成されており、上記上横リブ部および上記下横リブ部は、それぞれ上記上フランジおよび上記下フランジから、上記柱固定ボルトを上記挿通孔に挿通することを可能にする距離離れて位置していることを特徴とする。
【0009】
上記の構成であれば、上記一方縦リブ部および上記他方縦リブ部は、上記鋼梁部の延設方向に離間して対向しており、上記接合プレートの縁側に近づけて位置できるので、上記接合プレートに邪魔されずに、溶接用ロボットを用いて、上記一方縦リブ部および上記他方縦リブ部を、上記鋼梁部のウェブに容易に溶接することができる。さらに、上記上横リブ部および上記下横リブ部は、それぞれ上記上フランジおよび上記下フランジから、上記柱固定ボルトを上記挿通孔に挿通することを可能にする距離離れて位置しており、接合プレートに柱固定ボルトのための切欠きは形成されない構造であるので、このような切欠きを設ける構造において生じる応力集中といった問題を回避することができる。
【0010】
上記リブは、上記一方縦リブ部と上記他方縦リブ部と上記上横リブ部と上記下横リブ部とが多角形を形成するように接続されて閉断面形状を有してもよい。これによれば、当該リブによる上記接合プレートの補強力を高めることができる。
【0011】
上記上横リブ部の上記鋼梁部の延設方向の中央側と上記上フランジとの間隔よりも、上記上横リブ部の上記延設方向の端側と上記上フランジとの間隔の方が広くされ、上記下横リブ部の上記延設方向の中央側と上記下フランジとの間隔よりも、上記下横リブ部の上記延設方向の端側と上記下フランジとの間隔の方が広くされてもよい。これによれば、上記柱固定ボルトを上記フランジの上記挿通孔に挿通する作業が容易になる。
【0012】
上記上横リブ部は上記接合プレートの最上位置のボルト挿通孔の下端側に近接しており、上記下横リブ部は上記接合プレートの最下位置のボルト挿通孔の上端側に近接してもよい。これによれば、上記ボルト挿通孔に挿通されて上記接合プレートに締結された梁固定ボルトによる引張力を、当該梁固定ボルトの極力近くで上記下横リブ部に伝達できる。また、上記一方縦リブ部および上記他方縦リブ部の縦長さおよびウェブとの溶接長さを極力長くして上記接合プレートに対する補強力をより高めることができる。
【0013】
上記上横リブ部の上記鋼梁部の延設方向の中央側に溶接され、上方側に延びて上記接合プレートに溶接された上側縦板部、および上記下横リブ部の上記延設方向の中央側に溶接され、下方側に延びて上記接合プレートに溶接された下側縦板部を有してもよい。これによれば、上記リブ部および上記接合プレートに溶接された上記上側縦板部および上記下側縦板部によって、上記接合プレートに対する補強力をより高めることができる。
【0014】
或いは、上記上横リブ部は上記鋼梁部の延設方向の中央側で上第1部位と上第2部位とに分割されており、上記上第1部位と上第2部位のいずれかが上記中央側で上方向に延びて上記接合プレートに溶接された上側縦板部を有し、上記下横リブ部は上記鋼梁部の延設方向の中央側で下第1部位と下第2部位とに分割されており、上記下第1部位と下第2部位のいずれかが上記中央側で下方向に延びて上記接合プレートに溶接された下側縦板部を有してもよい。これによれば、上記上側縦板部および上記下側縦板部によって、上記接合プレートに対する補強力をより高めることができる。
【0015】
上記梁固定ボルトが螺合されるナット部または雌螺子が上記接合プレートに設けられていてもよい。これによれば、上記リブの内側箇所についても、上記梁固定ボルトを螺合させることが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明であれば、溶接用ロボットを用いて作製することが容易であり、応力集中も生じ難いという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態の梁部材(大梁)の側面に別の梁(小梁)が接合された梁接合構造が示された概略の斜視図である。
【
図2】同図(A)は
図1の接合プレートにリブが溶接された中間製造品を示した説明図であり、同図(B)はリブに対する上側縦板部および下側縦板部の溶接箇所を示した説明図である。
【
図3】同図(A)は
図1の接合プレートにリブが溶接された中間製造品を示した概略の斜視図であり、同図(B)は他方向から見た同概略の斜視図である。
【
図4】実施形態の梁部材を示した概略の斜視図である。
【
図5】同図(A)はリブに対する上側縦板部および下側縦板部の形成の変形例を示した説明図であり、同図(B)は分割されたリブの溶接前の状態を示した説明図である。
【
図6】分割されたリブの溶接前の状態の変形例を示した説明図である。
【
図8】接合プレートにリブおよびナットが溶接された中間製造品例を示した説明図である。
【
図9】従来例を示す図であって、接合プレートに板リブが溶接された中間製造品を示した説明図である。
【
図10】両側に縦リブ部を有する断面コ字状の接合プレートを用いた中間製造品で応力集中が生じる箇所を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の一態様に係る実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1には、実施形態の梁部材(大梁)1の側面側に別の梁(小梁)8が接合された梁接合構造9が示されている。上記梁部材1は、H形鋼梁部2と、接合プレート3と、この接合プレート3の裏面に溶接されたリブ4とを備える。
【0019】
H形鋼梁部2は、上フランジ21と、下フランジ22と、これら上フランジ21と下フランジ22とを繋ぐウェブ23とを有する。上記H形鋼梁部2の上フランジ21および下フランジ22には、柱固定ボルト(図示せず)が挿通される挿通孔2aが鉛直方向に複数形成されている。
【0020】
接合プレート3は、H形鋼梁部2の上記挿通孔2aが形成された箇所の側面側に配置されており、上記上フランジ21および上記下フランジ22の各々の縁に溶接固定されている。この接合プレート3に上記別の梁8のエンドプレート81が向き合って固定される。このエンドプレート81にはボルト挿通孔81aが水平方向に形成されており、このボルト挿通孔81aに通された梁固定ボルト(普通ボルト等)82が上記接合プレート3側のナット部に締結される。これにより、H形鋼梁部2に梁8が梁固定ボルト82の引張接合によって固定される。
【0021】
図2(A)は、接合プレート3にリブ4が溶接された中間製造品を示しており、
図2(B)は、リブ4に対する上側縦板部51および下側縦板部52の溶接箇所を示している。上記リブ4は、上記H形鋼梁部2の延設方向に離間して対向する一方縦リブ部41および他方縦リブ部42と、上記一方縦リブ部41および上記他方縦リブ部42の上端側に接続された上横リブ部43と、上記一方縦リブ部41および上記他方縦リブ部42の下端側に接続された下横リブ部44とからなる四角形の閉断面形状を有する。上記リブ4は、上記接合プレート3と上記ウェブ23との離間距離に相当する板幅を有しており、上記一方縦リブ部41および他方縦リブ部42は、後述するように、上記H形鋼梁部2側の端面が上記ウェブ23に溶接されている。
【0022】
上記接合プレート3の上横リブ部43の上方側の位置および下横リブ部44の下方側の位置に、それぞれ2個のボルト挿通孔3aが水平並びで形成されている。上記上横リブ部43は、上位置のボルト挿通孔3aの下端側に近接しており、上記下横リブ部44は、下位置のボルト挿通孔3aの上端側に近接している。ボルト挿通孔3aに挿通される梁固定ボルト82にはナットが装着されるので、上記近接は、上記ナットの装着が可能である範囲とされる。
【0023】
この実施形態では、上横リブ部43のH形鋼梁部2の延設方向の中央側には、上方側に延びる上側縦板部51が溶接により固定されている。また、下横リブ部44のH形鋼梁部2の延設方向の中央側には、下方側に延びる下側縦板部52が溶接により固定されている。上記上側縦板部51および下側縦板部52は、上記接合プレート3と上記ウェブ23との離間距離に相当する板幅を有している。上側縦板部51および下側縦板部52は必須ではない。
【0024】
図3(A)および
図3(B)に示すように、上記リブ4における上記接合プレート3に接する端面の外側全周は、上記接合プレート3に片面隅肉溶接されている。また、上側縦板部51および下側縦板部52も、上記接合プレート3に接する端面の両側縁が当該接合プレート3に溶接されている。なお、
図3(A)等においては、溶接された箇所を黒塗りで示しているが、隠れ線が示される
図3(B)等では、隠れ溶接箇所を点模様で示している。
【0025】
図4に示すように、上記梁部材1の製作では、上記のように接合プレート3にリブ4が溶接された中間製造品が、H形鋼梁部2に溶接される。この梁部材1の製作において、接合プレート3の上側縁は、H形鋼梁部2の上フランジ21に溶接され、接合プレート3の下側縁は、H形鋼梁部2の下フランジ22に溶接される。
【0026】
そして、上記リブ4の上記一方縦リブ部41は、H形鋼梁部2のウェブ23に接する端面の外側において当該ウェブ23に片面隅肉溶接され、上記他方縦リブ部42は、上記ウェブ23に接する端面の外側において当該ウェブ23に片面隅肉溶接される。上横リブ部43および下横リブ部44の全部または一部は、上記ウェブ23に溶接されてもよいが、この実施形態では、溶接ロボットの使用に適したものとするため、上記ウェブ23に溶接しないこととしている。上記上側縦板部51および下側縦板部52は、溶接ロボットを用いる上記ウェブ23への溶接はされない。なお、上記中間製造品の作製の溶接作業は、
図4に示す姿勢ではなく、この姿勢から90度寝かせて中間製造品を上に位置させた姿勢で行う。
【0027】
上記リブ4の上横リブ部43および下横リブ部44は、それぞれ上フランジ21および下フランジ22から、上記柱固定ボルトを上記挿通孔2aに挿通することを可能にする距離離れて位置している。
【0028】
上記梁部材1を備える梁接合構造9においては、梁固定ボルト82に引っ張り力が作用して接合プレート3にかかった力は、この接合プレート3に溶接されている上横リブ部43および下横リブ部44から一方縦リブ部41および他方縦リブ部42を経てH形鋼梁部2のウェブ23に伝達されることになる。
【0029】
そして、上記梁部材1であれば、上記一方縦リブ部41および上記他方縦リブ部42は、H形鋼梁部2の延設方向に離間して対向しており、上記接合プレート3の縁側に近づけて位置できるので、上記接合プレート3に邪魔されずに、溶接用ロボットを用いて、上記一方縦リブ部41および上記他方縦リブ部42を上記H形鋼梁部2のウェブ23に容易に溶接することができる。すなわち、溶接用ロボットを用いた場合の溶接欠陥を減らすことができ、また、カメラを用いた溶接品質の検査も良好に行えるようになる。なお、上記一方縦リブ部41および上記他方縦リブ部42は、接合プレート3の縁に極力近づけて配置される方が、上記一方縦リブ部41および上記他方縦リブ部42のウェブ23への溶接や上記検査において、接合プレート3は邪魔になりにくくなるので望ましい。
【0030】
さらに、上記上横リブ部43および上記下横リブ部44は、それぞれ上記上フランジ21および上記下フランジ22から、上記柱固定ボルトを上記挿通孔2aに挿通することを可能にする距離離れて位置しており、接合プレート3に柱固定ボルト挿入のための切欠きは形成されない構造であるので、このような切欠きを設ける構造において生じる応力集中といった問題を回避することができる。
【0031】
上記リブ4が、一方縦リブ部41と他方縦リブ部42と上横リブ部43と下横リブ部44とが多角形を形成するように接続されて閉断面形状を有すると、当該リブ4による上記接合プレート3の補強力を高めることができる。
【0032】
上記上横リブ部43が上記接合プレート3の最上位置のボルト挿通孔3aの下端側に近接しており、上記下横リブ部44が上記接合プレート3の最下位置のボルト挿通孔3aの上端側に近接していると、上記梁部材1を備える梁接合構造9において、梁固定ボルト82に生じた上記引っ張り力を、当該梁固定ボルト82の極力近くで横リブ部43,44に伝達できる。また、上記一方縦リブ部41および上記他方縦リブ部42の縦長さおよびウェブ23との溶接長さを極力長くして上記接合プレート3に対する補強力をより高めることができる。
【0033】
上記上横リブ部43のH形鋼梁部2の延設方向の中央側に溶接されて上方側に延びる上側縦板部51、および上記下横リブ部44のH形鋼梁部2の延設方向の中央側に溶接されて下方側に延びる下側縦板部52を有すると、上記接合プレート3に対する補強力をより高めることができる。もちろん、上側縦板部51および下側縦板部52を有しない構造とすることもできる。
【0034】
上側縦板部51および下側縦板部52を、上記のように、リブ4と別個の部材で製作することに限られるものではない。例えば、
図5(A)および
図5(B)に示すように、上記上横リブ部43がH形鋼梁部2の延設方向の中央側で上第1部位43aと上第2部位43bに分割され、上記上第1部位43aと上第2部位43bのいずれかである上第2部位43bから上記中央側で上方向に延びて接合プレート3に溶接された上側縦板部51が形成されてもよい。同様に、上記下横リブ部44がH形鋼梁部2の延設方向の中央側で下第1部位44aと下第2部位44bに分割され、上記下第1部位44aと下第2部位44bのいずれかである下第1部位44aから上記中央側で下方向に延びて接合プレート3に溶接された下側縦板部52が形成されてもよい。すなわち、上記一方縦リブ部41と上第1部位43aと下第1部位44aと下側縦板部52とを1枚板の曲げ加工によって形成してもよく、また、上側縦板部51と上第2部位43bと下第2部位44bとを1枚板の曲げ加工によって形成してもよい。
【0035】
これらの曲げ加工された部材は、上記分割された上第1部位43aと上第2部位43bが互いに接続されるように溶接され、また、上記分割された下第1部位44aと下第2部位44bが互いに接続されるように溶接される。ただし、上記接合プレート3に対する補強力は弱まるが、このような溶接が行われずに、分割されたままの構造としてもよい。不足する補強力は、接合プレート3の板厚やリブ4の板厚を増すことで補うことが可能である。
【0036】
或いは、
図6に示すように、上記上横リブ部43がH形鋼梁部2の延設方向の中央側で上第1部位43aと上第2部位43bに分割され、上記上第1部位43aと上第2部位43bのいずれかである上第1部位43aから上記中央側で上方向に延びて接合プレート3に溶接された上側縦板部51を有してもよい。また、上記下横リブ部44がH形鋼梁部2の延設方向の中央側で下第1部位44aと下第2部位44bに分割され、上記下第1部位44aと下第2部位44bのいずれかである下第1部位44aから上記中央側で下方向に延びて接合プレート3に溶接された下側縦板部52を有してもよい。すなわち、上側縦板部51と上第1部位43aと一方縦リブ部41と下第1部位44aと下側縦板部52とを1枚板の曲げ加工によって形成してもよく、また、上第2部位43bと上記他方縦リブ部42と下第2部位44bとを1枚板の曲げ加工によって形成してもよい。
【0037】
これらの曲げ加工された部材は、上記分割された上第1部位43aと上第2部位43bが互いに接続されるように溶接され、また、上記分割された下第1部位44aと下第2部位44bが互いに接続されるように溶接される。ただし、上記接合プレート3に対する補強力は弱まるが、このような溶接が行われずに、分割されたままの構造としてもよい。また、このように分割されたままの構造とし、且つ上側縦板部51および下側縦板部52を有しない構造とすることもできる。すなわち、かかる構造も、一方縦リブ部41および他方縦リブ部42の上端側に接続された上横リブ部43(分割状態(隙間形成状態)の上第1部位43aと上第2部位43b)と、一方縦リブ部41および他方縦リブ部42の下端側に接続された下横リブ部44(分割状態(隙間形成状態)の下第1部位44aと下第2部位44b)とを有する構造である。さらに、以上述べたリブ4および以下に述べるリブ4の構造において、一方縦リブ部41および他方縦リブ部42について、上下方向の中央側で分割された構造とすることもできる。これらの構造でも、不足する補強力は、接合プレート3の板厚やリブ4の板厚を増すことで補うことが可能である。
【0038】
また、
図7に示すように、上記上横リブ部43の上記H形鋼梁部2の延設方向の中央側と上記上フランジ21との間隔よりも、上記上横リブ部43の上記延設方向の端側と上記上フランジ21との間隔の方が広くされ、上記下横リブ部44の上記延設方向の中央側と上記下フランジ22との間隔よりも、上記下横リブ部44の上記延設方向の端側と上記下フランジ22との間隔の方が広くされてもよい。これにより、柱固定用ボルトをフランジ21,22の挿通孔22aに挿通する作業が容易に行える構造としつつ、上記上横リブ部43および下横リブ部44をボルト挿通孔3aに近接させた構造とすることができる。
図7に示したリブ4においては、上横リブ部43の中央部が上側に突出した山形状を有しており、下横リブ部44の中央部が下側に突出した谷形状を有している。このリブ4は全体として六角形状の閉断面を有する。
【0039】
また、上記の例では、一方縦リブ部41と他方縦リブ部42と上横リブ部43と下横リブ部44とに囲まれた囲み領域の外側において、ボルト挿通孔3aに通される梁固定ボルト82に個別にナットを現場で締結することとしているが、
図8に示すように、上記囲み領域の内側において、ボルト挿通孔3aを例えば2行2列で4個有するとともに、ボルト挿通孔3aに通される梁固定ボルト82が螺合されるナット35が接合プレート3に溶接またはカシメ固定されることで、接合プレート3側にナット部が一体的に設けられる構造としてもよい。これによれば、当該梁部材1に別の梁8を多くの梁固定ボルト82を用いて接合することができる。なお、ボルト挿通孔3aの配置に合わせて複数の雌螺子(タップ加工による螺子孔)を有する板部材を接合プレート3に溶接した構造としてもよい。また、
図8では、上側縦板部51および下側縦板部52を有しない構造例を示している。
【0040】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 :梁部材
2 :H形鋼梁部
2a :挿通孔
3 :接合プレート
3a :ボルト挿通孔
4 :リブ
8 :別の梁
9 :梁接合構造
21 :上フランジ
22 :下フランジ
22a :挿通孔
23 :ウェブ
35 :ナット
41 :一方縦リブ部
42 :他方縦リブ部
43 :上横リブ部
43a :上第1部位
43b :上第2部位
44 :下横リブ部
44a :下第1部位
44b :下第2部位
51 :上側縦板部
52 :下側縦板部
81 :エンドプレート
81a :ボルト挿通孔
82 :ボルト