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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-10-21
(45)【発行日】2025-10-29
(54)【発明の名称】エアロゾル発生装置を制御する方法
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/57 20200101AFI20251022BHJP
   A24F 40/465 20200101ALI20251022BHJP
【FI】
A24F40/57
A24F40/465
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022575852
(86)(22)【出願日】2021-07-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-04
(86)【国際出願番号】 EP2021069069
(87)【国際公開番号】W WO2022013073
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2024-07-02
(31)【優先権主張番号】20185794.3
(32)【優先日】2020-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516004949
【氏名又は名称】ジェイティー インターナショナル エスエイ
【住所又は居所原語表記】8,rue Kazem Radjavi,1202 Geneva,SWITZERLAND
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピラトヴィチ, グジェゴシュ アレクサンドル
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/130752(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/008008(WO,A1)
【文献】特表2017-501805(JP,A)
【文献】特表2019-535242(JP,A)
【文献】特開2020-038842(JP,A)
【文献】特表2020-516014(JP,A)
【文献】特表2021-510500(JP,A)
【文献】特表2021-514177(JP,A)
【文献】特表2017-516256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/57
A24F 40/465
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル発生装置を制御する方法であって、
前記エアロゾル発生装置の動作パラメータを受信することと、ここで、前記動作パラメータは、
周囲温度、及び
前記エアロゾル発生装置のインダクタに供給される電力の態様
を含み、
前記エアロゾル発生装置の消耗品内に配置されたサセプタの推定温度を前記動作パラメータに基づいて及び前記消耗品の熱特性に基づいて決定することと、ここで、前記消耗品の前記熱特性は、熱容量および熱抵抗を含み、前記推定温度は、前記インダクタによる前記サセプタの誘導加熱中に決定され、
前記インダクタに供給される前記電力を前記サセプタの前記推定温度に基づいて制御することと
を含む方法。
【請求項2】
前記インダクタに供給される前記電力の前記態様は、
前記インダクタに供給される電流、
前記インダクタに供給される電圧、及び
前記インダクタに供給されるワット数
の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記インダクタに供給される前記電力は、比例積分微分、PID、コントローラを使用して制御される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記インダクタに供給される前記電力は、前記サセプタの前記推定温度と前記サセプタの目標温度との間の差に基づいて制御される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記サセプタの前記推定温度が閾値に到達すると、前記インダクタへの電力供給を停止することを更に含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記サセプタの前記誘導加熱中に前記消耗品の前記熱特性を更新することを更に含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
温度センサを使用して、前記消耗品の外部表面の温度を測定することと、
前記測定温度に基づいて前記消耗品の前記熱特性を更新することと
を更に含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記消耗品の前記外部表面の推定温度を計算することと、
前記消耗品の前記外部表面の前記測定温度と、前記消耗品の前記外部表面の前記推定温度との間の差に基づいて、前記消耗品の前記熱特性を更新することと
を更に含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記消耗品の前記更新される熱特性は、
拡張カルマンフィルタ、
再帰最小二乗フィルタ、
定数変化法、又は
特性マッピング法
の少なくとも1つを使用して決定される、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1からのいずれか一項に記載の方法を実施するように構成された処理回路を含むエアロゾル発生装置。
【請求項11】
処理回路による実行時、請求項1からのいずれか一項に記載の方法を前記処理回路に実施させる実行可能命令を含むコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゾル発生装置を制御するための方法及び機器に関する。特に、本方法は、エアロゾル発生装置の消耗品内の温度を推定することを伴う。本開示は、特に、消耗品内に配置されたサセプタの誘導加熱を通して、タバコ又は他の適切なエアロゾル基材材料を燃やすのではなく加熱することができる携帯型エアロゾル発生装置に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
(気化器としても知られる)リスク低減デバイス又はリスク修正デバイスの人気及び使用は、紙巻きタバコ、葉巻、シガリロ及び巻きタバコなど、従来のタバコ製品の使用を止めることを望む常習的喫煙者を支援するための補助として、ここ数年で急速に成長している。従来のタバコ製品においてタバコを燃焼させるのとは対照的に、エアロゾル化可能物質を加熱又は加温する様々な装置及びシステムが利用可能である。
【0003】
一般に利用可能なリスク低減装置又はリスク修正装置は、基材加熱式エアロゾル発生装置又は加熱非燃焼式(HNB)装置である。このタイプの装置は、湿った葉タバコ又は他の好適なエアロゾル化可能材料を典型的に含むエアロゾル基材(すなわち消耗品)を典型的には150℃~300℃の範囲の温度に加熱することにより、エアロゾル又は蒸気を発生させる。エアロゾル基材を燃焼させるか又は燃やすのではなく加熱することにより、ユーザが求める成分を含むが、燃焼及び燃やすことによる副生成物を含まないエアロゾルが放出される。更に、タバコ又は他のエアロゾル化可能材料を加熱することにより生成されるエアロゾルは、使用者にとって不快となり得る、燃焼に起因し得る焦げた味又は苦味を典型的には含まない。
【0004】
特定の加熱非燃焼式装置では、エアロゾル基材内に配置されたサセプタを誘導的に加熱するために誘導コイルが使用される場合があり、サセプタから周囲の基材に熱エネルギーが伝達される。しかしながら、そのような装置では、サセプタは、エアロゾル基材内で絶縁されているため、加熱プロセスを監視し、装置のエアロゾル発生特性を正確に制御することが困難となり得る。
【0005】
例えば、エアロゾル基材内の状態に関する不適切な情報により、蒸気温度が高すぎるか又は低すぎることになり得、使用者の不快な経験又は使用者の安全上の危険を招く可能性がある。更に、一貫した吸入経験を確実にすることができない可能性がある。すなわち、パフごと、消耗品ごと及び/又は味ごとに同じ吸入品質を提供することができない可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、これらの問題の1つ以上に対処することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、エアロゾル発生装置を制御する方法であって、エアロゾル発生装置の動作パラメータを受信することと、ここで、動作パラメータは、周囲温度及びエアロゾル発生装置のインダクタに供給される電力の態様を含み、エアロゾル発生装置の消耗品内に配置されたサセプタの推定温度を動作パラメータに基づいて決定することと、ここで、推定温度は、インダクタによるサセプタの誘導加熱中に決定され、インダクタに供給される電力をサセプタの推定温度に基づいて制御することと、を含む方法が提供される。
【0008】
このようにして、温度センサを消耗品内に配置することを必要としない、誘導加熱プロセスを監視する方法が提供される。その結果、消耗品の温度を調整し、装置のエアロゾル発生特性を制御するために、インダクタに供給される電力をサセプタの推定温度に従って変化させることができる。サセプタの温度は、消耗品内の内部温度の値を出力する熱モデルを用いて推定され得る。有利には、周囲温度及びインダクタに供給される電力は、消耗品の内部温度の信頼性の高い推定値、したがって消耗品内に配置されたサセプタの温度の信頼性の高い推定値を提供することができる容易に測定可能なパラメータである。
【0009】
消耗品の温度は、閉ループ制御システムを用いて制御され得る。したがって、消耗品の温度及び加熱は、人との相互作用を必要とせずに調整され得る。サセプタにより発生し、周囲の消耗品に伝達される熱は、サセプタの推定温度に従って制御され得る。有利には、これにより、サセプタ及び消耗品を過熱から保護することができるか、又は最適な温度の蒸気が生成されることを確実にすることができる。一例では、サセプタの加熱は、サセプタの温度が、事前に特徴付けられた温度プロファイルに従うように制御され得る。
【0010】
好ましくは、本方法は、周囲温度及びエアロゾル発生装置のインダクタに供給される電力の態様を測定することを更に含む。
【0011】
好ましくは、インダクタに供給される電力の態様は、インダクタに供給される電流、インダクタに供給される電圧及びインダクタに供給されるワット数の少なくとも1つを含む。
【0012】
好ましくは、インダクタに供給される電力は、比例積分微分、PID、コントローラを使用して制御される。このようにして、サセプタの推定温度に基づいてサセプタの温度の正確且つ応答性の高い補正を行うために制御ループフィードバック機構が使用される。
【0013】
好ましくは、インダクタに供給される電力は、サセプタの推定温度とサセプタの目標温度との間の差に基づいて制御される。例えば、PIDコントローラは、目標温度と推定温度との間の差として誤差値を継続的に計算し、比例項、積分項及び微分項に基づいて補正を適用し得る。
【0014】
好ましくは、本方法は、サセプタの推定温度が閾値に到達すると、インダクタへの電力供給を停止することを更に含む。このようにして、消耗品の過熱を防止することができる。
【0015】
好ましくは、サセプタの推定温度は、エアロゾル発生装置の動作パラメータに基づいて及び消耗品の熱特性に基づいて決定される。好ましくは、消耗品の熱特性は、熱容量及び熱抵抗を含む。特に、消耗品の熱特性は、消耗品内のエアロゾル基材又はエアロゾル発生材料の特性、例えばタバコの熱容量及び熱抵抗であり得る。このようにして、熱モデルは、測定量として周囲温度及びインダクタに供給される電力を使用し、固定パラメータとして消耗品の熱容量及び熱抵抗を使用し、消耗品の中心点の温度を推定するために使用され得る。
【0016】
好ましくは、本方法は、サセプタの誘導加熱中に消耗品の熱特性を更新することを更に含む。消耗品の特性(例えば、熱特性)は、加熱操作を通して変化し得ることが知られている。例えば、タバコの熱容量は、タバコの含水率が増加するにつれて又はタバコの温度が増加するにつれて増加することが知られている。更に、タバコの熱抵抗は、タバコの温度が増加するにつれて減少することが知られている。したがって、加熱操作中に消耗品の熱特性を補正及び更新すると有利である。このようにして、サセプタの温度のより正確な推定値が提供され得る。
【0017】
好ましくは、本方法は、温度センサを使用して、消耗品の外部表面の温度を測定することと、測定温度に基づいて消耗品の熱特性を更新することとを更に含む。消耗品の外部表面で測定される温度は、消耗品の内部温度、サセプタ内で誘起される電力、消耗品の熱容量及び消耗品の熱抵抗に依存する。したがって、熱容量及び熱抵抗は、加熱プロセス中、消耗品の外部表面で測定された温度と、そのエアロゾル発生装置の動作パラメータとの関係に基づいて更新され得る。
【0018】
好ましくは、本方法は、消耗品の外部表面の推定温度を計算することと、消耗品の外部表面の測定温度と、消耗品の外部表面の推定温度との間の差に基づいて消耗品の熱特性を更新することとを更に含む。
【0019】
好ましくは、消耗品の更新される特性は、拡張カルマンフィルタ、再帰最小二乗フィルタ、定数変化法又は特性マッピング法の少なくとも1つを使用して決定される。
【0020】
本発明の別の態様によれば、上記の方法を実施するように構成された処理回路と、周囲温度を測定するように構成された温度センサとを含むエアロゾル発生装置が提供される。
【0021】
本発明の別の態様によれば、処理回路による実行時、上記の方法を処理回路に実施させる実行可能命令を含むコンピュータ可読媒体が提供される。
【0022】
本発明の別の態様によれば、処理回路によってプログラムが実行されると、上記の方法を処理回路に実施させる命令を含むコンピュータプログラム製品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
以下の図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0024】
図1】本発明の一実施形態におけるエアロゾル発生装置の内部構成要素の概略図である。
図2】本発明の一実施形態におけるエアロゾル発生装置の動作の方法工程を示すフローチャートである。
図3】エアロゾル発生装置の消耗品内のサセプタの温度を推定するために使用される熱モデルを示す概略図である。
図4】本発明の一実施形態における消耗品の熱特性を更新するための方法工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明の一実施形態におけるエアロゾル発生装置100の内部構成要素の概略図である。エアロゾル発生装置100は、誘導加熱システムを用いてエアロゾル(蒸気としても知られる)を発生させる加熱非燃焼式装置である。特に、エアロゾル発生装置100は、1つ以上のインダクタ102と、消耗品106を受け入れるように構成された加熱チャンバ104とを含む。各インダクタ102は、典型的には、磁気コアの周りでコイルに巻かれたワイヤ又は他の導体を含む。消耗品106は、エアロゾル化温度まで加熱されるとエアロゾルを放出するタバコ又は他の好適な材料などのエアロゾル発生材料を含む。サセプタ108は、サセプタ108がエアロゾル発生材料によって囲まれるように消耗品106内に配置される。好ましくは、サセプタ108は、消耗品106の中心又はコアに位置する。例えば、消耗品106は、エアロゾル発生材料のロッドを含み得、サセプタ108は、ロッドの円柱軸に沿った中央位置に位置し得る。サセプタ108は、グラファイト、炭化ケイ素、モリブデン又はステンレス鋼などの導電材料を含む。
【0026】
使用時、高周波交流を発生させるためにバッテリー(不図示)などの電源が使用される。電流は1つ以上のインダクタ102に供給され、時間変化する磁場が発生する。サセプタ108は、発生する磁場内に位置し、交流電磁場はサセプタ108内に渦電流を誘起する。これがサセプタ108を加熱し、サセプタ108は消耗品106の周囲のエアロゾル発生材料に熱エネルギーを伝達し、それにより消耗品106の温度を上昇させる。消耗品106(すなわちエアロゾル発生材料)がエアロゾル化温度を超えると、使用者によって吸入され得るエアロゾルが生成される。
【0027】
エアロゾル発生装置100は、加熱チャンバ104内に配置された(又は加熱チャンバ104に隣接する)温度センサ110を更に含む。温度センサ110は、加熱チャンバ104内に受け入れられた消耗品106と接し、消耗品106の温度を測定するように構成される。このようにして、温度センサ110は、消耗品106の外部表面112で消耗品106の温度を測定するように動作可能である。好ましくは、外部表面112は、温度センサ110が消耗品106内に保持されたエアロゾル発生材料と接するような、露出したエアロゾル発生材料の表面である。
【0028】
一例では、温度センサ110は、白金抵抗温度計(PRT)などの測温抵抗体であり得る。他の例では、温度センサ110は、熱電対、負温度係数(NTC)サーミスタ又は半導体ベースのセンサなどの別のタイプの温度センサであり得る。
【0029】
当業者であれば、いくつかの実施形態において、温度センサ110がなくてもよいことを理解するであろう。
【0030】
エアロゾル発生装置100は、エアロゾル発生装置100の構成要素の動作を制御するための処理回路(不図示)を更に含み得る。
【0031】
図2は、本発明の一実施形態における、エアロゾル発生装置100を動作させる方法200を示す。
【0032】
工程202において、エアロゾル発生装置100でサセプタ102の目標温度が受信される。例えば、目標温度は、処理回路内で定義済みであり得る。追加的に又は代替的に、加熱操作の全体を通して目標温度が変化するように、目標温度プロファイルがエアロゾル発生装置100で受信され得る。例えば、目標温度は、加熱操作の初期段階においてより高温であり得る。
【0033】
工程204において、サセプタ108の目標温度と推定温度との間の誤差(例えば差)が計算される。サセプタ108の推定温度については以下で更に説明する。誤差は、処理回路によって計算され得る。
【0034】
工程206において、1つ以上のインダクタ102に供給される電力は、サセプタ108の推定温度に基づいて制御される。特に、1つ以上のインダクタ102に供給される電力は、サセプタ108の目標温度と推定温度との間の誤差に基づいて制御される。例えば、サセプタ108の推定温度がサセプタ108の目標温度を下回る場合、1つ以上のインダクタ102に供給される電力が増加することがある。同様に、サセプタ108の推定温度がサセプタ108の目標温度を上回る場合、1つ以上のインダクタ102に供給される電力が減少することがある。このようにして、サセプタ108の温度は、温度プローブを消耗品106内に配置する必要なく決定することができ、その後、消耗品106の温度は、サセプタ108及び消耗品106を過熱から保護するように並びに/又は蒸気が最適な温度で生成されることを確実にするように調整され得る。
【0035】
1つ以上のインダクタ102に供給される電力は、比例積分微分(PID)コントローラを使用して制御され得る。PIDコントローラは、サセプタ109の目標温度と推定温度との間の差として誤差値を計算し、1つ以上のインダクタ102に供給される電力を比例項、積分項及び微分項に基づいて調整する。
【0036】
いくつかの例では、1つ以上のインダクタ102に供給される電力の量も1つ以上のインダクタ102からサセプタ108へのエネルギー伝達効率に基づいて制御され得る。エネルギー伝達効率は、1つ以上のインダクタ102に供給される全エネルギーと比較した、サセプタ108において有用な熱エネルギーに変換されるエネルギーの比率である。例えば、エネルギー伝達効率が0.4であれば、1つ以上のインダクタに供給される40Wの電力は、サセプタにおいて電力の16Wを生成する。エアロゾル発生装置100のエネルギー伝達効率は、製品開発中に事前に特徴付けられ得る。
【0037】
工程208において、エアロゾル発生装置100でエアロゾル発生装置100の動作パラメータが受信される。動作パラメータは、1つ以上のインダクタ102に供給される電力とエアロゾル発生装置100の周囲温度とを含む(及び任意選択的に1つ以上のインダクタ102に供給される電力とエアロゾル発生装置100の周囲温度とからなる)。特に、周囲温度は、加熱チャンバ104から離れたところ(すなわちサセプタ108の加熱効果によって影響されない場所)のエアロゾル発生装置100の温度に相当する。例えば、周囲温度は、エアロゾル発生装置100の処理回路(例えば、回路基板又はコントローラ)で測定された温度に相当し得る。したがって、周囲温度は、好ましくは、加熱プロセスが始まる前の消耗品106の初期温度に相当する。
【0038】
任意選択的に、方法200は、1つ以上のインダクタ102に供給される電力を測定することと、エアロゾル発生装置100の周囲温度を測定することとを更に含み得る。例えば、1つ以上のインダクタ102に供給される電力は、1つ以上のインダクタ102で電力計(例えば、電流及び電圧センサ)を使用して測定され得る。周囲温度は、サセプタ108の加熱の影響から離れた位置、例えば処理回路に配置された温度センサを使用して測定され得る。
【0039】
工程210において、サセプタ108の推定温度が決定される。これは、消耗品106の内部温度を推定することによって達成される。特に、サセプタ108の位置に対応する消耗品106内の単一点の温度を推定し得る。一例では、消耗品106の中心の温度を推定し得る。
【0040】
サセプタ108の推定温度は、1つ以上のインダクタ102に供給される電力とエアロゾル発生装置100の周囲温度、すなわち動作パラメータに基づいて計算される。計算は、消耗品106の熱特性にも基づく。特に、熱特性は、消耗品106の熱抵抗及び熱容量(すなわち消耗品106、例えばタバコ内のエアロゾル発生材料の熱抵抗及び熱容量)を含む(及び任意選択的に消耗品106の熱抵抗及び熱容量(すなわち消耗品106、例えばタバコ内のエアロゾル発生材料の熱抵抗及び熱容量)からなる)。
【0041】
熱抵抗及び熱容量の初期(例えばデフォルト)値は、エアロゾル発生装置100を最初に動作させる前に、すなわち消耗品106が加熱される前に測定及び/又は計算され得る。例えば、初期値は、エアロゾル発生装置100の製品開発中に事前に特徴付けられ得る。
【0042】
しかしながら、消耗品106の熱特性は加熱プロセス中に変化する傾向があることが知られている。例えば、タバコの熱容量は、タバコの含水率が増加するにつれて又はタバコの温度が増加するにつれて増加することが知られている。更に、タバコの熱抵抗は、タバコの温度が増加するにつれて減少することが知られている。したがって、いくつかの実施形態では、消耗品106の熱特性は、加熱操作中に更新又は調整され得る。すなわち、方法200は、工程212及び工程214を更に含み得る。
【0043】
工程212において、消耗品106の外部表面212の温度が測温体110によって測定される。好ましくは、外部表面212は、エアロゾル発生材料の温度が測温体110によって測定されるようなエアロゾル発生材料の露出表面である。
【0044】
工程214において、消耗品106の熱特性(例えば、エアロゾル発生材料の熱特性)が更新される。特に、消耗品106の熱抵抗及び熱容量は、消耗品108の外部表面212で測定された温度に基づいて更新される。これは、消耗品108の外部表面112の測定温度と消耗品108の外部表面112の推定温度とを比較し、誤差に基づいて熱抵抗及び熱容量の補正値を計算する、例えば、誤差を最小化する熱抵抗及び熱容量の調整値を計算することによって達成され得る。熱特性を更新するプロセスを、以下、図4を参照して更に詳述する。
【0045】
次いで、更新された熱特性は、サセプタ108の推定温度がエアロゾル発生装置100の動作パラメータ及び消耗品106の熱特性に基づいて計算される工程210で使用される。
【0046】
当然ながら、当業者であれば、工程212及び工程214は、任意選択的であり、いくつかの実施形態では、消耗品106の熱特性は、加熱プロセス中に更新されない場合があることを理解するであろう。この場合、方法200の第1のサイクル時だけでなく、工程210においてサセプタ108の推定温度を計算するときに、熱抵抗及び熱容量の初期(例えばデフォルト)値が常に使用される。
【0047】
温度推定は、図3を参照して説明するような熱モデルを利用し得る処理回路で実施され得る。例えば、熱モデルは、1つ以上のインダクタ102に供給される電力及びエアロゾル発生装置100の周囲温度(すなわち動作パラメータ)を入力として受け取ることができる。熱モデルは、消耗品106の熱抵抗及び熱容量を受け取り、且つ/又は消耗品106の熱抵抗及び熱容量にアクセスすることもできる。最初に、熱モデルは、消耗品106の熱抵抗及び熱容量の初期(例えばデフォルト)値を受け取ることができる。しかしながら、加熱操作が始まると、熱モデルは、消耗品106の熱抵抗及び熱容量の更新値を受け取ることができる。熱モデルは、これらの値を使用して、サセプタ108の推定温度を出力することができる。
【0048】
一例では、1つ以上のインダクタ102への電力供給はサセプタ108の推定温度が閾値に到達すると停止され得る。例えば、これにより、消耗品106の過熱を防止し得るか、又は消耗品106の内部温度が閾値に到達するまで消耗品106が予熱される消耗品の適応可能な予熱期を考慮し得る。
【0049】
工程210の後、方法200は工程204に戻り、工程210で決定されたサセプタ108の推定温度がサセプタ108の目標温度と比較され、新たな誤差が計算される。1つ以上のインダクタ102に供給される電力は、工程206において新たに計算された誤差を用いて調整され、1つ以上のインダクタ102に供給される電力の調整値が工程208で受け取られるなどである。
【0050】
図3は、サセプタ108の温度を推定するために使用され得る熱モデル300を示す概略図である。熱モデル300は、エアロゾル発生装置100の処理回路を使用して実施され得る。例えば、熱モデル300は、ソフトウェアを使用して実施され得るか、又は例えば外部コントローラを必要とすることなく、物理的な回路によって実施され得る。
【0051】
熱モデル300は、熱の流れを電気回路に例えてモデル化した熱回路モデルである。熱の流れは、電流によって表され、温度は、電圧によって表され、熱源は、定電流源によって表され、熱抵抗は、抵抗器によって表され、熱キャパシタンスは、コンデンサによって表される。
【0052】
図3に見られるように、

は、サセプタ108で散逸する電力(すなわちサセプタ108からの熱の流れの比率)であり、
- Cは、消耗品106の熱容量であり、
- Rcondは、伝導による熱伝達に対する消耗品106の熱抵抗であり、
- Rconvは、対流による熱伝達に対する消耗品106の熱抵抗であり、
- Rradは、放射による熱伝達に対する消耗品106の熱抵抗であり、
- Tintは、消耗品106の内部温度(サセプタ108の温度に対応する)であり、
- Tsensorは、温度センサ110により消耗品108の外部表面112で測定された温度であり、
- Tambは、サセプタ108の加熱の影響から離れたところで測定された周囲温度である。
【0053】
サセプタ108で散逸する電力は、2つの並列経路内の熱の流れの比率に等しい。
【0054】
消耗品106の熱容量は、以下のように定義される。
式中、ΔQは、(質量Mの)消耗品106物体の温度をΔT上昇させるために(質量Mの)消耗品106物体に加えなければならない熱の量である。したがって、
は、以下のように表され得る。
【数5】
式中、tは、時間である。全熱抵抗Rtotalは、以下によって与えられる。
所与の熱の流れ
の所与の絶対熱抵抗Rにおける温度低下ΔTは、
によって与えられるという一般原理を用いると、
ということになる。したがって、
は、以下のように書き換えることができる。
【0055】
したがって、消耗品の内部温度Tを、
、Rtotal、Tamb及びCの知識を用いて推定することができる。当業者であれば、
を、1つ以上のインダクタ102に供給される電力とサセプタ108へのエネルギー伝達効率の事前に特徴付けた値とに基づいて計算することができることを理解するであろう。
【0056】
熱モデル300は、熱抵抗及び熱キャパシタンスの値を、消耗品108の外部表面112で測定された温度に基づいて更新するためにも用いられ得る。再度、所与の熱の流れ
の所与の絶対熱抵抗Rにおける温度低下ΔTは、
によって与えられるという一般原理を用いると、
ということになる。
を置換すると、
が与えられる。
【0057】
したがって、この関係を用いて、C及びRcondの値が、Tsensorの測定値、すなわち消耗品106の外部表面112で測定された温度に基づいて更新され得る。例えば、Tsensorの測定値は、上記式を用いて推定されたTsensorの推定値と比較され得る。C及びRcondの値は、測定値と推定値との間の誤差を最小化するように調整され得る。
【0058】
当然ながら、熱モデル300は、本発明による単なる1つの可能な熱モデルであり、サセプタ108の推定温度を決定し、熱特性の更新値を得るために別の熱モデルも使用できることが理解されるであろう。
【0059】
図4は、本発明の一実施形態における消耗品106の熱特性を更新する方法400を示す。方法400は、方法200の一部を成すことがある。
【0060】
消耗品106の熱抵抗及び熱容量の初期(例えば、デフォルト又は事前に特徴付けられた)値を使用してサセプタ108の温度を推定し得るが、消耗品106の熱特性は、経時的に変化することが知られているため、エアロゾル発生装置100の動作中に熱特性を継続的に更新すると有利である。例えば、加熱チャンバ104内の汚れ、部品の老朽化、含水率、製造公差又は消耗品106の様々な組成物などの因子は、エアロゾル発生装置100の寿命にわたる熱抵抗及び熱キャパシタンスの値の変動につながることがある。したがって、エアロゾル発生装置100の動作中に熱抵抗及び熱キャパシタンスの値を更新することで、サセプタ106のより正確な温度推定、したがってエアロゾル発生装置100の性能の向上につながる。
【0061】
最初に、サセプタ108の推定温度を計算するために使用される熱抵抗及び熱キャパシタンスの値は、製品開発中に事前に特徴付けられた初期(例えばデフォルト)値であり得る。しかしながら、エアロゾル発生装置100の加熱操作が始まると、方法400を使用して熱抵抗及び熱キャパシタンスの更新値を得ることができる。その後、熱抵抗及び熱キャパシタンスの更新値は、サセプタ108の推定温度を計算するために使用され得る。
【0062】
方法400は工程402にて開始し、消耗品106の外部表面112の推定温度が計算される。例えば、消耗品106の外部表面112の温度は、上記の熱モデル300などの熱モデルを用いて計算され得る。
【0063】
工程404において、消耗品106の外部表面112の実際の温度が温度センサ110を使用して測定される。
【0064】
工程406において、消耗品106の外部表面112の測定温度は、消耗品106の外部表面112の推定温度と比較され、消耗品106の熱特性はこれらの値の間の差に基づいて更新される。特に、消耗品106の熱容量及び熱抵抗の値は、消耗品106の外部表面112の測定温度と推定温度との間の誤差を最小化するように調整され得る。
【0065】
一例では、誤差は、拡張拡張カルマンフィルタを使用して最小化され得る(熱特性は更新され得る)。別の例では、再帰最小二乗フィルタが使用され得る。別の例では、定数変化法が使用され得る。別の例では、特性マッピング法が使用され得る。
【0066】
その後、方法200の工程210において、サセプタ108の推定温度を計算するために、熱抵抗及び熱キャパシタンスの更新値が使用され得る。例えば、熱抵抗及び熱キャパシタンスの更新値は、熱モデル300又は別の適切な熱モデルに戻され得る。更新値は、熱抵抗及び熱キャパシタンスの初期値と入れ替えられるか、又は熱抵抗及び熱キャパシタンスの現在値(すなわち以前の更新値)と入れ替えられる。
【0067】
当然ながら、当業者であれば、熱抵抗及び熱キャパシタンスの初期(又は現在)値が最適である、すなわち値が消耗品106の外部表面112の測定温度と推定温度との間の誤差を既に最小化するものである場合、熱抵抗及び熱キャパシタンスの値は、更新されなくてもよいことを理解するであろう。
図1
図2
図3
図4