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7766422ポリオレフィン系樹脂発泡体およびそれを成形してなる成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-10-30
(45)【発行日】2025-11-10
(54)【発明の名称】ポリオレフィン系樹脂発泡体およびそれを成形してなる成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20251031BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CES
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021113001
(22)【出願日】2021-07-07
(65)【公開番号】P2023009591
(43)【公開日】2023-01-20
【審査請求日】2024-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000221797
【氏名又は名称】東邦化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 昌隆
(72)【発明者】
【氏名】内海 哲洋
(72)【発明者】
【氏名】大森 直人
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/014882(WO,A1)
【文献】特開2013-018922(JP,A)
【文献】特開2013-018923(JP,A)
【文献】特許第4858865(JP,B2)
【文献】特開2018-178278(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J9/00-9/42
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)又は一般式(2)で表されるブロック共重合体(A)を含有するポリオレフィン系樹脂発泡体であって、
該発泡体の切断面中央部の走査型電子顕微鏡画像における100個以上の気泡の気泡径において、視認可能な最小の気泡径が18μmであり、最大の気泡径が50μmである、ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【化1】
(式中、Rはポリオレフィン残基、Aはポリオキシアルキレン基を有する2価の基、Xは-O-又は-N(R)-(式中、Rは水素原子又は炭素原子数1~22のアルキル基、アルケニル基若しくはアシル基を表す。)、Bは水素原子、炭素原子数1~30のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基、アシル基又は下記式(3)若しくは下記式(4)で表される構造を表し、Mは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、アンモニウム基又は有機アンモニウム基を表す。)
【化2】
(式中、Rはポリオレフィン残基、Aはポリオキシアルキレン基を有する2価の基を表し、Bは水素原子、炭素原子数1~30のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基、アシル基又は下記式(3)若しくは下記式(4)で表される構造を表す。)
【化3】
(式中、Rはポリオレフィン残基、Xは-O-又は-N(R)-(式中、Rは水素原子又は炭素原子数1~22のアルキル基、アルケニル基若しくはアシル基を表す。)、Mは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、アンモニウム基又は有機アンモニウム基を表す。)
【化4】
(式中、Rはポリオレフィン残基を表す。)
【請求項2】
下記一般式(1)又は一般式(2)で表されるブロック共重合体(A)を含有し、10~100μmの平均気泡径を有する、ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【化5】
(式中、R はポリオレフィン残基、A はポリオキシアルキレン基を有する2価の基、X は-O-又は-N(R )-(式中、R は水素原子又は炭素原子数1~22のアルキル基、アルケニル基若しくはアシル基を表す。)、B は水素原子、炭素原子数1~30のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基、アシル基又は下記式(3)若しくは下記式(4)で表される構造を表し、M は水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、アンモニウム基又は有機アンモニウム基を表す。)
【化6】
(式中、R はポリオレフィン残基、A はポリオキシアルキレン基を有する2価の基を表し、B は水素原子、炭素原子数1~30のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基、アシル基又は下記式(3)若しくは下記式(4)で表される構造を表す。)
【化7】
(式中、R はポリオレフィン残基、X は-O-又は-N(R )-(式中、R は水素原子又は炭素原子数1~22のアルキル基、アルケニル基若しくはアシル基を表す。)、M は水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、アンモニウム基又は有機アンモニウム基を表す。)
【化8】
(式中、R はポリオレフィン残基を表す。)
【請求項3】
下記一般式(1)又は一般式(2)で表されるブロック共重合体(A)を含有し、70%以上の独立気泡率を有する、ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【化9】
(式中、R はポリオレフィン残基、A はポリオキシアルキレン基を有する2価の基、X は-O-又は-N(R )-(式中、R は水素原子又は炭素原子数1~22のアル
キル基、アルケニル基若しくはアシル基を表す。)、B は水素原子、炭素原子数1~30のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基、アシル基又は下記式(3)若しくは下記式(4)で表される構造を表し、M は水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、アンモニウム基又は有機アンモニウム基を表す。)
【化10】
(式中、R はポリオレフィン残基、A はポリオキシアルキレン基を有する2価の基を表し、B は水素原子、炭素原子数1~30のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基、アシル基又は下記式(3)若しくは下記式(4)で表される構造を表す。)
【化11】
(式中、R はポリオレフィン残基、X は-O-又は-N(R )-(式中、R は水素原子又は炭素原子数1~22のアルキル基、アルケニル基若しくはアシル基を表す。)、M は水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、アンモニウム基又は有機アンモニウム基を表す。)
【化12】
(式中、R はポリオレフィン残基を表す。)
【請求項4】
前記一般式(1)中のRがポリイソブチレン残基である、請求項1~3のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項5】
前記一般式(1)中のR及び前記一般式(3)中のRがポリイソブチレン残基である、請求項1~3のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項6】
前記一般式(2)中のR及び前記一般式(4)中のRがポリイソブチレン残基である、請求項1~3のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項7】
前記一般式(1)中のA、及び一般式(2)中のA2が、-(RO)-R-(OR-(式中、Rは炭素原子数1~30の2価の有機基、R、Rはそれぞれ独立して炭素原子数2~4のアルキレン基、m及びnは、それぞれ独立して1乃至100の整数を表す。)で示される2価の基である、請求項1~3のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項8】
前記一般式(1)中のAがポリオキシアルキレン基であり、Xが-N(R)-(式中、Rは炭素原子数1~22のアシル基を表す。)である、請求項1~3のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項9】
ポリオレフィン系樹脂100質量部に対し、前記ブロック共重合体(A)を0.1~20質量部含有する、請求項1~3のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項10】
請求項1~のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂発泡体を成形してなる成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリオレフィン系樹脂発泡体およびそれを成形してなる成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン系樹脂を用いた発泡体は、樹脂本来の特徴である耐薬品性に加え、軽量で、断熱性や外部応力に対する緩衝性、耐衝撃性が良好であり、また真空成形などの加熱二次成形によって容易に成形体を得ることができるので、緩衝材、断熱材、食品容器、自動車用部材などの用途で幅広く利用されている。
【0003】
より軽量で耐衝撃性や剛性のバランスに優れた発泡体とするべく、高発泡倍率で均質な発泡セル構造を目指した種々のポリオレフィン系樹脂発泡体が提案されている。
例えば、ポリプロピレンを主成分とし、所定のせん断応力値における第一法線応力差が所定値以上である発泡用ポリオレフィン系樹脂とアゾジカルボンアミド等の化学発泡剤からなる組成物を発泡させた発泡体(特許文献1)が提案されている。
また、溶融状態の所定のせん断応力値における第一法線応力差及びメルトフローレートが所定範囲にあるポリプロピレン系樹脂を主成分とする発泡用ポリオレフィン系樹脂と、アゾジカルボンアミド等の化学発泡剤からなる組成物を発泡させた発泡体(特許文献2)や、不飽和カルボン酸またはその酸無水物で変性したポリプロピレン樹脂を主成分とする発泡用ポリオレフィン樹脂と化学発泡剤からなる組成物を発泡させた発泡体(特許文献3)が提案されている。これら提案において、ポリプロピレン樹脂として、酸変性したポリプロピレンとポリアミン化合物を反応させた発泡用ポリオレフィン系樹脂が開示されている。
またポリオレフィン系樹脂とこれと完全相溶しない熱可塑性エラストマーとからなる樹脂成分を含むポリオレフィン系成形材料に、超臨界状ガスを浸透させ、超臨界状態を保持したまま金型内に射出充填した後、脱ガスして発泡させる発泡射出成形体が提案されている(特許文献4)。
さらに、アビエチン酸等の樹脂酸などを有機発泡助剤として使用したポリオレフィン発泡体が提案されている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-240976号公報
【文献】特開2005-8770号公報
【文献】特開2005-2228号公報
【文献】特開2003-206369号公報
【文献】特開平5-247252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまでに提案された従来のポリオレフィン系樹脂発泡体においても、発泡の均質性は十分とは言えず、さらなる改良が求められている。
また、アゾジカルボンアミド等の化学発泡剤やアビエチン酸等の有機発泡助剤などを用いた場合、成形後にこれら発泡剤などがブリードアウトし、腐食性のガスが発生したり、成形体を汚染するという問題点があった。
【0006】
本発明は上記現状に鑑みてなされたものであり、高発泡倍率で均質な発泡セル構造を有し、かつ、低汚染性のポリオレフィン系樹脂発泡体の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の[1]~[8]を対象とする。
[1]下記一般式(1)又は一般式(2)で表されるブロック共重合体(A)を含有する、ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【化1】
(式中、Rはポリオレフィン残基、Aはポリオキシアルキレン基を有する2価の基、Xは-O-又は-N(R)-(Rは水素原子又は炭素原子数1~22のアルキル基、アルケニル基若しくはアシル基を表す。)、Bは水素原子、炭素原子数1~30のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基、アシル基又は下記式(3)若しくは下記式(4)で表される構造を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表す。)
【化2】
(式中、Rはポリオレフィン残基、Aはポリオキシアルキレン基を有する2価の基を表し、Bは水素原子、炭素原子数1~30のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基、アシル基又は下記式(3)若しくは下記式(4)で表される構造を表す。)
【化3】
(式中、Rはポリオレフィン残基、Xは-O-又は-N(R)-(Rは水素原子又は炭素原子数1~22のアルキル基、アルケニル基若しくはアシル基を表す。)、M
は水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表す。)
【化4】
(式中、Rはポリオレフィン残基を表す。)
[2]
前記一般式(1)中のRがポリイソブチレン残基である、[1]に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体。
[3]
前記一般式(1)中のR及び前記一般式(3)中のRがポリイソブチレン残基である、[1]に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体。
[4]
前記一般式(2)中のR及び前記一般式(4)中のRがポリイソブチレン残基である、[1]に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体。
[5]
前記一般式(1)中のA、及び一般式(2)中のAが、-(RO)-R-(OR-(式中、Rは炭素原子数1~30の2価の有機基、R、Rはそれぞれ独立して炭素原子数2~4のアルキレン基、m及びnは、それぞれ独立して1乃至100の整数を表す。)で示される2価の基である、[1]に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体。
[6]
前記一般式(1)中のAがポリオキシアルキレン基であり、Xが-N(R)-(式中、Rは炭素原子数1~22のアシル基を表す。)である、[1]に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体。
[7]
ポリオレフィン系樹脂100質量部に対し、前記ブロック共重合体(A)を0.1~20質量部含有する、[1]に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体。
[8]
[1]~[7]のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂発泡体を成形してなる成形体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、均質なセル構造、特に平均気泡径が小さく微細な気泡を有し、独立気泡率及び気泡数密度が高く、気泡径分布幅も狭いなど、均質な発泡表面および微細なセル直径分布を有し、低汚染性のポリオレフィン系樹脂発泡体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は実施例4の樹脂発泡体のSEM写真を示す図である。
図2図2は実施例10の樹脂発泡体のSEM写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、前記一般式(1)又は一般式(2)で表されるブロック共重合体(A)を含
有する、ポリオレフィン系樹脂発泡体に関する。また本発明は前記ポリオレフィン系樹脂発泡体を成形してなる成形体も対象とする。
【0011】
本発明に係るブロック共重合体(A)は、(a)片末端が酸変性されたポリオレフィンと、(b)ポリエーテル又はその変性物とを反応させることにより得ることができる。
【0012】
前記一般式(1)及び(2)におけるポリオレフィン残基であるR、R、R、Rは、前記(a)片末端が酸変性されたポリオレフィンのポリオレフィンに由来する部分である。
前記ポリオレフィンとしては、炭素原子数2乃至30の、好ましくは炭素原子数2乃至12の、さらに好ましくは炭素原子数2乃至10のオレフィンの1種もしくは2種以上の混合物を重合することによって得られるポリオレフィン(重合法)、高分子量ポリオレフィンの熱減成法によって得られる低分子量ポリオレフィン(熱減成法)が使用できる。
かかるポリオレフィンは、少なくとも片末端が変性可能なポリオレフィンを主成分(50%以上、好ましくは65%以上)とするものであり、変性のしやすさの点で、例えば一分子当たりの平均末端二重結合量を0.5~1.5個のものを好ましく用いることができる。
ポリオレフィンの数平均分子量Mnは800~20,000が好ましく、1,000~10,000がより好ましく、1,500~9,000が最も好ましい。
【0013】
前記炭素原子数2乃至30のオレフィンとしては、例えばエチレン、プロピレン、1-ブテン、2-ブテン、イソブテン;炭素原子数5乃至30の、好ましくは炭素原子数5乃至12の、さらに好ましくは炭素原子数5乃至10のα-オレフィン、例えば、4-メチル-1-ペンテン、1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン及び1-ドデセン;炭素原子数4乃至30の、好ましくは炭素原子数4乃至18の、さらに好ましくは炭素原子数4乃至8のジエン、例えば、ブタジエン、イソプレン、シクロペンタジエン、11-ドデカジエン等が挙げられる。
これらの中でも、前記オレフィンとしてはイソブテン、プロピレンが好適であり、例えば前記ポリオレフィンとして、イソブテンの単独重合体、もしくはイソブテンとn-ブテンとの共重合体であるポリ(イソ)ブテン、ポリプロピレンが好適である。
中でも、ポリオレフィン残基である一般式(1)中のRとしてポリイソブチレン残基が好適である。例えば、一般式(1)中のRと一般式(3)中のRがポリイソブチレン残基である態様、また、一般式(2)中のRと一般式(4)中のRがポリイソブチレン残基である態様を挙げることができる。
【0014】
前記(a)片末端が酸変性されたポリオレフィンとしては、一分子当たりの平均末端二重結合数が0.5~1.5個、好ましくは0.7~1.0個の前記ポリオレフィン、好ましくはポリ(イソ)ブテン又はポリプロピレンを、(無水)マレイン酸やフマル酸等のジカルボン酸により変性したものを好ましく用いることができる。
【0015】
片末端が酸変性されたポリオレフィン一分子当たりの酸変性度はGPCによる数平均分子量Mnと酸価もしくは鹸化価によって求めることができる。後述の(a)片末端が酸変性されたポリオレフィンに由来するブロックと、(b)ポリエーテル又はその変性物に由来するブロックが結合した一般式(1)又は一般式(2)で表される構造を有するブロック共重合体を合成するために酸変性度は0.5~1.5個が好ましく、より好ましいのは0.7~1.0個である。
【0016】
前記一般式(1)及び(2)において、A、Aはそれぞれポリオキシアルキレン基を有する2価の基であり、ポリオキシアルキレン単位をその構成中に好ましくは20~100質量%、さらに好ましくは50~100質量%、特に好ましくは70~100質量%
含有するものである。
これらA、Aとして、具体的には、ポリオキシアルキレン基や、(b)ポリエーテルや、その変性物を構成する-(RO)-R-(OR-(Rは炭素数1~30の2価の有機基、R、Rはそれぞれ独立して炭素数2~4のアルキレン基、m及びnは、それぞれ独立して1乃至100の整数)で表される基が含まれる。
またAとしては、(b)ポリエーテルを構成する※-(R12O)p-R11-NHCO-R10-で表される基((式中、R10は炭素原子数1乃至21の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基又はアルケニレン基を表し、R11は炭素原子数1乃至4の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基を表す。R12は炭素原子数2乃至4のアルキレン基を表し、pは1乃至100の整数を表す。※はXとの結合部分を表す。)も含まれる。
【0017】
前記一般式(1)及び(2)におけるポリオキシアルキレン基を有する2価の基であるA、Aは、前記(b)ポリエーテル又はその変性物に由来する部分である。
前記(b)ポリエーテルとしては、例えば(b1)ポリエーテルジオールや、そのヒドロキシ基がアミノ基に変換された(b2)ポリエーテルジアミン、(b3)ポリエーテルモノオール、(b4)アミドアルコールのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0018】
上記(b1)ポリエーテルジオールは、ジオール化合物にアルキレンオキサイドを付加することにより得られ、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールの他、例えば一般式:HO-(RO)-R-(OR-OHで表される化合物が挙げられる。式中、Rはジオール化合物からヒドロキシ基を除いた残基、R、Rは炭素原子数2乃至4のアルキレン基、m及びnはジオールのヒドロキシ基1個当たりのアルキレンオキサイド付加数を表す。m個の(RO)とn個の(OR)は、同一のオキシアルキレン基でも異なるオキシアルキレン基であってもよく、また、これらが2種以上のオキシアルキレン基で構成される場合の結合形式はブロック若しくはランダム又はこれらの組合せのいずれでもよい。m及びnは、通常1乃至100、好ましくは2乃至30、特に好ましくは3乃至10の整数である。また、mとnとは、同一でも異なっていてもよい。
【0019】
ジオール化合物としては、二価アルコール(例えば炭素原子数2乃至12の脂肪族、脂環式若しくは芳香族二価アルコール)、炭素原子数6乃至18の二価フェノール及び三級アミノ基含有ジオールが挙げられる。
脂肪族二価アルコールとしては、例えば、アルキレングリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール)、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,12-ドデカンジオールが挙げられる。脂環式二価アルコールとしては、例えば、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールが挙げられ、芳香族二価アルコールとしては、例えば、キシリレンジオール等が挙げられる。
二価フェノールとしては、例えば、単環二価フェノール(ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、ウルシオール等)、ビスフェノール(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4’-ジヒドロキシジフェニル-2,2-ブタン、ジヒドロキシビフェニル等)及び縮合多環二価フェノール(ジヒドロキシナフタレン、ビナフトール等)が挙げられる。
三級アミノ基含有ジオールとしては、例えば、炭素原子数1乃至30の脂肪族又は脂環式一級モノアミン(メチルアミン、エチルアミン、シクロプロピルアミン、1-プロピルアミン、2-プロピルアミン、アミルアミン、イソアミルアミン、ヘキシルアミン、1,3-ジメチルブチルアミン、3,3-ジメチルブチルアミン、2-アミノヘプタン、3-アミノヘプタン、シクロペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ヘプチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン等)のビスヒドロキシアルキル化物及び炭素原子数6乃至12の芳香族一級モノアミン(アニリン、ベンジルアミン等)のビスヒドロキシアルキル化物が挙げられる。
これらジオール化合物の中でも、好ましくは脂肪族二価アルコール類及びビスフェノー
ル類であり、特に好ましくはエチレングリコール及びビスフェノールAである。
【0020】
上記ジオール化合物に付加させるアルキレンオキサイドとしては、炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイド、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドが挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。アルキレンオキサイドの付加は、例えばアルカリ触媒の存在下、100~200℃の温度で行なう。
【0021】
中でも(b1)ポリエーテルジオールとして好適に用いられるものとしては、分子量100乃至2,000の、より好ましくは200乃至1,000のポリエチレングリコール又はビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物を挙げることができる。
【0022】
前記(b2)ポリエーテルジアミンは、前記ポリエーテルジオールのヒドロキシ基を公知の方法によりアミノ基に変換することにより得られ、例えば一般式:HN-(RO)-R-(OR-NHで表される化合物が挙げられる。式中、R、R、R、m及びnは前記ポリエーテルジオールで挙げたものと同様である。
【0023】
前記(b3)ポリエーテルモノオールは、一価アルコールやフェノール類等のモノオールにアルキレンオキサイドを付加することにより得られ、例えば一般式:R-O-(AO)-Hで表される化合物が挙げられる。式中、Rは任意のモノオールからヒドロキシ基を除いた残基、Aは炭素原子数2乃至4のアルキレン基、kはアルキレンオキサイド付加数を表す。k個の(AO)は、同一のオキシアルキレン基でも異なるオキシアルキレン基であってもよく、また、これらが2種以上のオキシアルキレン基で構成される場合の結合形式はブロック若しくはランダム又はこれらの組合せのいずれでもよい。kは、通常1乃至200、好ましくは3乃至60、特に好ましくは5乃至30の整数である。
【0024】
一価アルコールとしては例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、第三級ブチルアルコール、イソアミルアルコール、オクチルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、合成アルコール類(例えばチーグラーアルコール、オキソアルコール)などの直鎖または側鎖を有する脂肪族飽和アルコール、アリルアルコール、クロチルアルコール、プロパギルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコールなどの脂肪族不飽和アルコール、抹香アルコール、牛脂還元アルコール、ヤシ油還元アルコールなどの脂肪族飽和および不飽和アルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノールなどの脂環式アルコール、ベンジルアルコール、シンナミルアルコールなどの芳香族アルコールを挙げることができる。またフェノール類としては、フェノールの他にクレゾール、イソプロピルフェノール、第三級ブチルフェノール、第三級アミルフェノールなどのフェノール類が挙げられる。これらのうち好ましい物は一価アルコール類、さらに好ましいものは脂肪族一価アルコールである。
【0025】
前記(b4)アミドアルコールのアルキレンオキサイド付加物(アミド結合を含むポリエーテルモノオール)は、例えば一般式:H-R10-CONH-R11-O-(R12O)p-Hで表され、アミドアルコールに公知の方法でアルキレンオキサイドを付加することにより得られる。
上記式中、R10は炭素原子数1乃至21の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基又はアルケニレン基を表し、R11は炭素原子数1乃至4の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基を表す。R12は炭素原子数2乃至4のアルキレン基を表し、pは1乃至100の整数を表す。)
【0026】
上記R10の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ラウリル基などのドデシル基、ミリスチル基などのテトラデシル基、パルミチル基などのヘキサデシル基、ステアリル基などのオクタデシル基、オレイル基、エイコシル基、ベヘニル基等が挙げられる。
11の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。
(R12O)の具体例としては、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、ブチレンオキシ基が挙げられる。
【0027】
アミドアルコールは、例えばアルカノールアミンをカルボン酸又はその反応性誘導体(例えばそのエステル化合物)とアミド化反応させることにより製造することができる。
アルカノールアミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、n-プロパノールアミン、イソプロパノールアミン等が挙げられる。
また、カルボン酸又はその反応性誘導体としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、オレイン酸メチル、ベヘン酸メチル等のカルボン酸又はそのアルキルエステルが挙げられる。
【0028】
アミドアルコールに付加させるアルキレンオキサイドとしては、炭素原子数2乃至4のアルキレンオキサイド、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドが挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。アルキレンオキサイドの付加は、例えばアルカリ触媒の存在下、80乃至200℃の温度で行なうことができる。
前記一般式において、pは、通常1乃至100、好ましくは4乃至60、特に好ましくは6乃至40の整数である。pが2以上であって、(R12O)pが2種以上のアルキレンオキシ基で構成される場合の結合形式はブロック若しくはランダム又はこれらの組合せのいずれでもよい。
【0029】
また前記(b)ポリエーテルの変性物(b5)としては、例えば、前記(b1)ポリエーテルジオール又は(b2)ポリエーテルジアミンのアミノカルボン酸変性物、(b2)ポリエーテルジアミンのモノカルボン酸変性物が挙げられる。前記アミノカルボン酸変性物は、前記(b1)又は(b2)とアミノカルボン酸又はラクタムを反応させることにより得ることができる。前記モノカルボン酸変性物は、前記(b2)ポリエーテルジアミン等と炭素原子数1~22のモノカルボン酸を反応させることにより得ることができる。
【0030】
[ブロック共重合体]
前記(a)片末端が酸変性されたポリオレフィンと、(b)ポリエーテル又はその変性物との反応は、必要に応じ触媒の存在下、150~250℃で行うことができる。触媒として具体的には、硫酸、パラトルエンスルホン酸、リン酸等の酸触媒;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物等のアルカリ触媒;酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉛、酸化錫等の金属酸化物等が挙げられる。
また、上記触媒として、三酸化アンチモンなどのアンチモン系触媒;モノブチルスズオキシドなどのスズ系触媒;テトラブチルチタネートなどのチタン系触媒;テトラブチルジルコネートなどのジルコニウム系触媒;酢酸ジルコニル、酢酸亜鉛などの有機酸金属塩系触媒;酢酸パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムなどのパラジウム系触媒;及びこれらの2種以上の組み合わせを用いてもよい。これらのうち好ましいものは、ジルコニウム系触媒及び有機酸金属塩系触媒であり、特に好ましいものは酢酸ジ
ルコニルである。
【0031】
(a)片末端が酸変性されたポリオレフィンと(b)ポリエーテルの仕込み比は特に限定されないが、本発明のブロック共重合体を高収率で得る点でモル比で(a)/(b)=0.8/1~3/1が好ましい。
【0032】
(a)片末端が酸変性されたポリオレフィンと(b)ポリエーテルのブロック共重合体中に酸基(カルボキシル基)を有する場合は、塩基性物質で中和してもよい。
中和に使用するアルカリ性物質としては、リチウム、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物や炭酸塩、リン酸塩、酢酸塩、ケイ酸塩等、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物や炭酸塩等、アンモニア、有機アミン等及びこれらの2種以上の併用が挙げられる。
【0033】
本発明に係る上記ブロック共重合体(A)は、前述の一般式(1)又は一般式(2)で表される構造を有するものであるが、例えば前記一般式(1)において、Aがポリオキシアルキレン基であり、Xが-N(R)-(式中、Rは炭素原子数1~22のアシル基を表す。)であるブロック共重合体(A)を挙げることができ、またこのとき、式(1)中のBが水素原子であるブロック共重合体(A)を挙げることができる。
【0034】
[ポリオレフィン系樹脂発泡体]
樹脂発泡体は、発泡剤を発泡体形成樹脂材料に浸透させる工程(相溶させる工程)と、発泡剤が浸透した発泡体形成樹脂材料を脱ガスさせる工程を経て得ることができる。
本発明に係るポリオレフィン系樹脂発泡体にあっては、例えば、ポリオレフィン系樹脂と前記ブロック共重合体(A)とを含有するポリオレフィン系樹脂組成物に、高温、高圧下で物理発泡剤、例えば不活性ガスを含浸させた後、圧力開放させることにより得られる。
【0035】
<ポリオレフィン系樹脂組成物>
本発明において発泡体を構成するポリオレフィン系樹脂としては特に限定されるものではなく、公知のポリオレフィン系樹脂を選択することができる。所望の物性を容易に得るために、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂及びこれらの組み合わせが好ましい。
【0036】
ポリエチレン系樹脂として、例えば、分枝鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン並びにエチレン単量体を主成分とするエチレン-プロピレン共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体のような重合体を挙げることができる。前記例示中、低密度とは0.91~0.94g/cmであることが好ましく、0.91~0.93g/cmであることがより好ましい。高密度とは0.95~0.97g/cmであることが好ましく、0.95~0.96g/cmであることがより好ましい。中密度とはこれら低密度と高密度の中間の密度である。
【0037】
ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体又はプロピレンと他のオレフィンとの共重合体が好ましく、プロピレン単独重合体がより好ましい。プロピレンと共重合する他のオレフィンとしては、例えば、エチレンの他に、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセンなどの炭素数が4~10であるα-オレフィンが挙げられる。プロピレンと他のオレフィンとの共重合体としてはエチレン成分の少ない共重合体が好ましく、ランダム共重合体又はブロック共重合体のいずれであってもよいが、耐熱性に優れていることから、ブロック共重合体が好ましい。
また、上記ポリプロピレン系樹脂として、発泡性に優れる観点から、高溶融張力ポリプ
ロピレン系樹脂を使用することができる。高溶融張力ポリプロピレン系樹脂としては、分子構造中に自由末端長鎖分岐を有していたり、高分子量成分を含んでいたりすることで溶融張力を上げたものなどがある。この高溶融張力ポリプロピレンは、市販品を使用できる。
【0038】
ポリオレフィン系樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて混合して用いてもよい。
【0039】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物には、発泡体の物性や成形性を損なわない範囲で、上記ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂)以外の他のポリマー成分を含んでいてもよい。該ポリオレフィン系樹脂成分以外の他のポリマー成分として、ポリオレフィン系樹脂との相溶性の高い樹脂、例えば、エチレン-アクリル酸エチル共重合体樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリブテン樹脂、ポリ-4-メチルペンテン-1樹脂などを含有させることもできる。
ポリオレフィン系樹脂組成物における全ポリマー成分(100質量%)のうち、上記他のポリマー成分は0乃至50質量%の割合とすることができる。
【0040】
前記ポリオレフィン系樹脂組成物には本発明の効果を損なわない範囲で各種の添加剤を添加してもよい。各種の添加剤としては、例えば、発泡核剤、着色剤、造核剤、酸化防止剤、熱安定剤、耐候剤、紫外線吸収剤、難燃剤、無機充填剤、抗菌剤、収縮防止剤などが挙げられる。
【0041】
以下、ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法の一例を詳述する。
まず前記ポリオレフィン系樹脂、前記ブロック共重合体(A)、及び場合によって任意に配合する成分からなる樹脂組成物を押出機に供給して溶融混練する。押出機としては、単軸押出機、二軸押出機、あるいはそれらを組合せたタンデム型押出機などが挙げられる。
【0042】
次に押出機の途中から溶融状態の樹脂組成物中に不活性ガスや脂肪族炭化水素等の物理発泡剤を圧入し、均一に混合する。上記不活性ガスや脂肪族炭化水素等としては、前記の樹脂組成物に含浸するものであればよく、常温常圧で気体であるガスとして、窒素、ヘリウム、二酸化炭素、ブタンなど、及びそれらの混合ガスなどが挙げられる。取り扱いが容易で、安全性が高く、作業環境が優れていることから、二酸化炭素及び窒素などの不活性ガスが好ましく、二酸化炭素が特に好ましい。また前記不活性ガスを超臨界状態にすることで、樹脂への溶解量(含浸量)や発泡倍率、微細気泡の形成等の点で有利となり得る。
【0043】
物理発泡剤(不活性ガス等)の量は、樹脂発泡体の発泡倍率に応じて適宜、調整できる。ただし、物理発泡剤(不活性ガス等)量が少なすぎると、樹脂発泡体の発泡倍率が低くなり、軽量性や断熱性が低下することがある。一方、物理発泡剤(不活性ガス等)量が多すぎると、気泡成長時に破泡しやすく、樹脂発泡体中の独立気泡率が低下したり、発泡倍率が高くなりすぎて発泡体の強度が不足することがある。
こうした不具合発生を考慮した場合、一般に、樹脂組成物100質量部に対して物理発泡剤(不活性ガス等)を0.1~10質量部、好ましくは1~5質量部の割合にて含浸させることができる。
【0044】
押出機内において物理発泡剤(例えば超臨界状態の不活性ガス)が混合された樹脂組成物を押出機の先端に取り付けた金型から押出発泡させて、所望の形態を有するポリオレフィン系樹脂発泡体を得ることができる。例えば、金型として円環ダイを用いることによりシート状の樹脂発泡体が得られ、加熱二次成形に適した発泡体を得ることができる。
【0045】
本発明の樹脂発泡体において、その平均気泡径は、発泡体の断熱性や外観等の観点から10~100μmであることが好ましく、20~90μm、20~80μmであることがより好ましい。
【0046】
本発明の樹脂発泡体は、発泡倍率の低下が起こりにくく、また発泡体の断熱性等の観点から、該発泡体の独立気泡率が70%以上であることが好ましく、例えば80%以上、より好ましくは90%以上であることが望ましい。
【0047】
[成形体]
本発明の樹脂発泡体は、多くの成形方法を採用でき、真空成形、圧空成形(押出圧空成形、熱板圧空成形、真空圧空成形など)、自由吹込成形、折り曲げ加工、マッチド・モールド成形、熱板成形などの慣用の熱成形などで、容易に二次成形することができる。凹部形状などの三次元形状の成形体は、例えば加熱したシート状樹脂発泡体を圧空により金型に押し当てて成形する圧空成形や、金型と加熱したシート状樹脂発泡体との間を真空にすることにより加熱シートを金型側に引き込んで成形する真空成形、あるいは真空圧空成形によって得ることができる。
【0048】
また、本発明の樹脂発泡体は、剛性や弾性の異なる他の樹脂フィルム、樹脂シート、ゴムシートなどの各種材料と組み合わせて複合化することもできる。発泡体と上記各種材料との複合体の製造方法は、接着剤などを用いた貼合わせでもよいし、熱ラミネート法でもよいし、共押出法により熱融着させてもよい。
【0049】
本発明の樹脂発泡体を加熱二次成形した成形体(発泡成形体)は、熱成形による物性低下が抑制され、軽量で断熱性や緩衝性に優れた、外観のきれいな成形体となるため、食品容器などに好適に使用することができる。
【0050】
なお、本発明のブロック共重合体(A)が、ポリオレフィン系樹脂の発泡挙動の改良をもたらすメカニズムの詳細は不明であるが、一因として、当該共重合体と物理発泡剤(発泡ガス)間の界面張力が共重合体とポリオレフィン間の界面張力よりも低く、これによって気泡を生成するためのエネルギーを低下させ、これが気泡核生成速度の増加をもたらし、微細な気泡が多く形成された可能性が考えられる。例えば実施例で使用した二酸化炭素(物理発泡剤)に関して、赤外分光測定において、当該共重合体を含む測定試料における二酸化炭素に由来する吸収ピークがきわめて大きいことが確認され、これは当該共重合体が物理発泡剤である二酸化炭素に対する親和性が高いということができる。共重合体と物理発泡剤との親和性の高さは、発泡対象である樹脂への物理発泡剤の含浸量を増加させ得、ひいては気泡径の均一化に影響を与えることが考えられる。
【実施例
【0051】
以下実施例により本発明を説明する。ただし本発明は、下記製造例、実施例及び比較例によって何ら制限されるものではない。なお、実施例中の「部」及び「%」は特に断りのない限り、質量基準とする。
【0052】
[製造例1:アミドアルコールの合成(化合物1)]
窒素導入管、撹拌機、温度計付きガラス製フラスコに80℃で溶解したパルミチン酸メチル3205gを仕込んだ。ここに、あらかじめ調製したモノエタノールアミン731gと28%-ソディウムメチラート64gの混合液を5時間かけて滴下し、80℃、窒素雰囲気下で5時間維持した後、脱溶剤により未反応のモノエタノールアミン、及び反応副生物であるメタノールを除き、3560gの粘ちょう液体を得た。得られた粘ちょう液体のアミン価は、ソディウムメチラート分を差し引いた値で、0.01mgKOH/gであった。IRスペクトルでは、O-H伸縮3300cm-1、N-H伸縮3100cm-1
C=O伸縮1650cm-1、NH変角1565cm-1に特徴的な吸収があった。得られた生成物を化合物1とする。
【0053】
[製造例2:アミドアルコールエチレンオキサイド付加物(1)の合成]
窒素導入管、撹拌機、温度計付きステンレス製オートクレーブ(以下同様)に製造例1で得たアミドアルコール(化合物1)1500gを80℃溶融状態で仕込み、充分に窒素置換を行った。90℃に昇温した後、エチレンオキサイド2750gを5時間かけて導入し、2時間同温度で熟成して反応を完結させた。さらにアルカリ吸着剤であるキョーワード(登録商標)700SL(協和化学工業(株)製)適量を加えて吸着、ろ過して淡黄色液体を得た。得られた生成物(淡黄色液体)の水酸基価は65.7mgKOH/g、水分は0.02%であった。
【0054】
[製造例3:アミドアルコールエチレンオキサイド付加物(2)の合成(化合物2)]
ステンレス製オートクレーブに製造例1で得たアミドアルコール(化合物1)3000gを80℃溶融状態で仕込み、充分に窒素置換を行った。90℃に昇温した後、エチレンオキサイド1700gを5時間かけて導入し、2時間同温度で熟成して反応を完結させた。さらにキョーワード(登録商標)700SL(協和化学工業(株)製)適量を加えて吸着、ろ過して淡黄色液体を得た。得られた生成物(淡黄色液体)の水酸基価は119.8mgKOH/g、水分は0.02%であった。得られた生成物を化合物2とした。
【0055】
[製造例4:ブロック共重合体1の合成]
ステンレス製オートクレーブにポリ(イソ)ブテニルコハク酸無水物(鹸化価18mgKOH/g)を7115g、製造例2で得たアミドアルコールエチレンオキサイド付加物(1)を853g、製造例3で得たアミドアルコールエチレンオキサイド付加物(2)を52g仕込んだ。充分に窒素置換を行い、80℃まで昇温させた後、48%KOH261g、酢酸カリウム219gを添加し、更に充分な窒素置換を行い、220℃まで昇温させた後、220℃、0.2kPa以下、微量窒素バブリングの減圧下条件で5時間維持し、生成物を得た。得られた生成物は粘ちょう体のポリマーであった。生成物のエステル価は6.1mgKOH/gであった。また、IRスペクトルでは、C=O伸縮1735cm-1、C(=O)O-逆対称伸縮1561cm-1、さらにC(=O)-N-C(=O)伸縮1709及び1772cm-1に特徴的な吸収を確認した。得られた生成物をブロック共重合体1とする。
【0056】
[製造例5:ブロック共重合体2の合成]
ステンレス製オートクレーブにポリ(イソ)ブテニルコハク酸無水物(鹸化価18mgKOH/g)を10450g、ポリエチレングリコール(東邦化学工業(株)製「トーホーポリエチレングリコール600」水酸基価187)を850g仕込んだ。充分に窒素置換を行い、90℃まで昇温させた後、48%KOH125g、を添加し、更に充分な窒素置換を行い、205℃まで昇温させた後、205℃、0.2kPa以下、微量窒素バブリングの減圧下条件で5時間維持し、生成物を得た。得られた生成物は粘ちょう体のポリマーであった。生成物のエステル価は5.1mgKOH/gであった。また、IRスペクトルでは、C=O伸縮1735cm-1、C(=O)O-逆対称伸縮1561cm-1に特徴的な吸収を確認した。得られた生成物をブロック共重合体2とする。
【0057】
[製造例6:ブロック共重合体3の合成]
ステンレス製オートクレーブにポリ(イソ)ブテニルコハク酸無水物(鹸化価36mgKOH/g)を3540g、製造例2で得たアミドアルコールエチレンオキサイド付加物(1)を307g、製造例3で得たアミドアルコールエチレンオキサイド付加物(2)を48g仕込んだ。充分に窒素置換を行い、80℃まで昇温させた後、48%KOH241g、酢酸カリウム81gを添加し、更に充分な窒素置換を行い、160℃まで昇温させた
後、160℃、0.2kPa以下、微量窒素バブリングの減圧下条件で5時間維持し、生成物を得た。得られた生成物は粘ちょう体のポリマーであった。生成物のエステル価は12.1mgKOH/gであった。また、IRスペクトルでは、C=O伸縮1735cm-1、C(=O)O-逆対称伸縮1561cm-1、さらにC(=O)-N-C(=O)伸縮1709及び1772cm-1に特徴的な吸収を確認した。得られた生成物をブロック共重合体3とする。
【0058】
[製造例7:ブロック共重合体4の合成]
ステンレス製オートクレーブにポリ(イソ)ブテニルコハク酸無水物(鹸化価36mgKOH/g)を1690g、製造例2で得たアミドアルコールエチレンオキサイド付加物(1)を208g、製造例3で得たアミドアルコールエチレンオキサイド付加物(2)を13g仕込んだ。充分に窒素置換を行い、80℃まで昇温させた後、48%KOH64g、酢酸カリウム21gを添加し、更に充分な窒素置換を行い、160℃まで昇温させた後、160℃、0.2kPa以下、微量窒素バブリングの減圧下条件で5時間維持し、生成物を得た。得られた生成物は粘ちょう体のポリマーであった。生成物のエステル価は8.4mgKOH/gであった。また、IRスペクトルでは、C=O伸縮1735cm-1、C(=O)O-逆対称伸縮1561cm-1、さらにC(=O)-N-C(=O)伸縮1709及び1772cm-1に特徴的な吸収を確認した。得られた生成物をブロック共重合体4とする。
【0059】
[製造例8:酸変性ポリプロピレンの調製]
Mnが3,300であり平均末端二重結合数が0.9の低分子量ポリプロピレン9,700部と無水マレイン酸300部とを、窒素ガス雰囲気下、220℃で溶融し10時間反応を行った。その後、過剰のマレイン酸を200℃で4時間減圧留去して、ポリプロピレンの無水マレイン酸変性物(片末端酸変性物)を得た。Mnは3,400、鹸化価は30mgKOH/g、1分子あたりの酸変性度は0.9であった。
【0060】
[製造例9:ブロック共重合体5の調製]
ステンレス製オートクレーブに製造例8で作製したポリプロピレンの無水マレイン酸変性物を4,000g、製造例2で得たアミドアルコールエチレンオキサイド付加物(1)を750g、製造例3で得たアミドアルコールエチレンオキサイド付加物(2)を46g、酸化防止剤(イルガノックス1010)13g、48%NaOH 90g、イオン水100gを仕込んだ。充分に窒素置換を行い、220℃まで昇温した後、撹拌を1時間行なった。更に2kPa以下、微量窒素バブリングの減圧下条件で6時間維持し、生成物を得た。得られた生成物のハンドリングは良好であり、固体状のポリマーであった。生成物のエステル価は7.5mgKOH/gであった。また、IRスペクトルでは、C=O伸縮1737cm-1、C(=O)O-逆対称伸縮1579cm-1に特徴的な吸収があった。得られた生成物をブロック共重合体5とする。
【0061】
[製造例10:ブロック共重合体6の調製]
ステンレス製オートクレーブにポリ(イソ)ブテニルコハク酸無水物(鹸化価60mgKOH/g)を3100g、製造例2で得たアミドアルコールエチレンオキサイド付加物(1)を1420g、製造例3で得たアミドアルコールエチレンオキサイド付加物(2)を70g仕込んだ。充分に窒素置換を行い、80℃まで昇温させた後、48%KOH385gを添加し、更に充分な窒素置換を行い、160℃まで昇温させた後、160℃、0.2kPa以下、微量窒素バブリングの減圧下条件で5時間維持し、生成物を得た。得られた生成物は粘ちょう体のポリマーであった。生成物のエステル価は7.9mgKOH/gであった。また、IRスペクトルでは、C=O伸縮1735cm-1、C(=O)O-逆対称伸縮1561cm-1、さらにC(=O)-N-C(=O)伸縮1709及び1772cm-1に特徴的な吸収を確認した。得られた生成物をブロック共重合体6とする。
【0062】
<樹脂発泡体の作製>
後述する実施例1~6、7~9、及び比較例1~4の樹脂組成物のサンプル(マスターバッチ)を、直径25mm、厚さ1mmの金型にて、160~200℃の範囲で、5分間10MPaにて熱プレス成型し、円盤状のプレートを作製した。該円盤状のプレートを、さらに耐圧密閉容器に入れ、所定の温度(発泡温度)に加熱後、発泡剤として圧力15MPaの二酸化炭素を圧入し、2時間維持して含浸させた。2時間後に常圧まで解圧し、樹脂発泡体を作製した。
【0063】
[実施例1~7]
ベースとなるポリオレフィン樹脂(ポリエチレン(PE)樹脂:東ソー(株)製 商品名「ペトロセン221」、又は前記PE樹脂とポリプロピレン(PP)樹脂:日本ポリプロ(株)製 商品名「WAYMAX MFX8」、配合割合を表1に示す)85部と、前記ブロック共重合体1~6 各々15部とを、二軸押出機にて押出温度180℃でマスターバッチ化した。
前記<樹脂発泡体の作製>に従い、発泡温度110℃条件下で、樹脂発泡体を得た。製造した樹脂発泡体について、後述する評価方法にて気泡の評価を行った。得られた結果を表1に示す。なお図1に、実施例4の樹脂発泡体のSEM写真を示す。
【0064】
[実施例8~10]
前記ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン(PE)樹脂:東ソー(株)製 商品名「ペトロセン221」)と前記ブロック共重合体1を表2に示す配合量に変えた以外は、前記[実施例1~7]と同様にポリオレフィン樹脂の樹脂発泡体を作製し、気泡の評価を行った。得られた結果を表2に併せて示す。なお図2に、実施例10の樹脂発泡体のSEM写真を示す。
【0065】
[比較例1~4]
ベースとなるポリオレフィン樹脂(ポリエチレン(PE)樹脂:東ソー(株)製 商品名「ペトロセン221」)99.9部と、化合物1若しくは化合物2、又は発泡核剤としてタルク若しくはガラス繊維を各々0.1部とを、二軸押出機にて押出温度180℃でマスターバッチ化した。
前記<樹脂発泡体の作製>に従い、発泡温度110℃条件下で、樹脂発泡体を得た。製造した樹脂発泡体について、後述する評価方法にて気泡の評価を行った。得られた結果を表3に示す。
【0066】
[気泡の評価]
<樹脂発泡体の発泡倍率>
樹脂発泡体の発泡倍率は、未発泡体の組成物(マスターバッチ)の比重と、JIS K
7112に準拠した電子比重計MDS-300(アルファーミラージュ社製)によって測定した発泡体の見かけ比重から算出した。
【0067】
<樹脂発泡体の平均気泡径>
発泡体を切断し、切断面の中央部を走査型電子顕微鏡JSM-5310(日本電子(株)製)を用いて観察した。得られた画像における100個以上の気泡の気泡径を、画像解析式粒度分布ソフトウェアMac-View((株)マウンテック製)によって測定し、平均値を算出して、樹脂発泡体の平均気泡径とした。
【0068】
<樹脂発泡体の独立気泡率>
樹脂発泡体の独立気泡率は、ASTMD-2856-87に準拠して測定した。発泡体の幅方向に3等分した各位置から10mm×10mmの大きさにサンプルを6点切り出し
、空気比較式比重計1000型(東京サイエンス(株)製)を使用して連続気泡部を除いた独立気泡部分の体積を測定し、次式により各サンプルにおける独立気泡率を求め、それら独立気泡率より平均値(N=6)を求め、樹脂発泡体の独立気泡率とした。
独立気泡率(%)=独立気泡部体積(cm)/発泡体見かけの体積(cm)×100
【0069】
<発泡体の気泡数密度>
発泡体を切断し、切断面の中央部を走査型電子顕微鏡JSM-5310(日本電子(株)製)にて観察した。得られた画像(測定面、N=100以上)の気泡数を、画像解析式粒度分布ソフトウェアMac-View(マウンテック社製)によってカウントし、下記式より気泡数密度を算出し、平均値を求め、樹脂発泡体の気泡数密度とした。
=(n/A)3/2
は気泡数密度、nは気泡数、Aは測定面の全面積である。
【0070】
<発泡体の気泡径分布>
発泡体を切断し、切断面の中央部を走査型電子顕微鏡JSM-5310(日本電子(株)製)にて観察した。得られた画像における100個以上の気泡の気泡径を、画像解析式粒度分布ソフトウェアMac-View((株)マウンテック製)によって測定し、視認可能な最小の気泡径(αとする)と最大の気泡径(βとする)をα~βと表示して、樹脂発泡体の気泡径分布とした。
【0071】
<溶出確認試験>
作製した樹脂発泡体10gを蒸留水200mlに浸漬させ、40℃の温浴中で6時間静置し、樹脂発泡体表面にブリードアウトしている薬剤(ブロック共重合体や化合物)を溶出、あるいは発泡核剤を脱落させた。樹脂発泡体を取出し蒸留水をエバポレーターで蒸発させ、残留分より溶出又は脱落の有無を確認した。
〇:残留分(溶出又は脱落)なし
×:残留分(溶出又は脱落)あり
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
実施例1から10に示すように、ブロック共重合体1から7を配合した発泡体は、平均気泡径が小さく微細な気泡を形成しており、独立気泡率も高く、気泡数密度も高く、均質なセル構造を有した樹脂発泡体となった(図1及び図2参照)。
またこれら実施例に示すように、溶出試験においても残留物はなく、汚染のない樹脂発泡体が得られたことが確認できた。
【0076】
一方、比較例1から4に示すように、化合物1、2(比較例1、2)では発泡体が得られず、発泡核剤A、B(比較例3、4)では発泡倍率は高いものの平均気泡径が100μm超と大きく、独立気泡率は最大でも85%にとどまり、また実施例と比べて気泡数密度が1桁以上低い、不均一なセル構造を有した発泡体となった。
【0077】
以上の結果から、本発明によれば、均質なセル構造を有し、低汚染性のポリオレフィン樹脂発泡体を得られることが確認された。
【0078】
本発明のポリオレフィン樹脂発泡体は、多様な形状に熱成形することで、食品容器、自動車部材、電子部品包装部材など各種用途として好適に使用できる。
図1
図2