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7771982固体電解質、固体電解質の製造方法、電池、及び物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-11-10
(45)【発行日】2025-11-18
(54)【発明の名称】固体電解質、固体電解質の製造方法、電池、及び物品
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/06 20060101AFI20251111BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20251111BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20251111BHJP
   C08G 65/333 20060101ALI20251111BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20251111BHJP
【FI】
H01B1/06 A
H01M10/0565
H01M10/052
C08G65/333
C08F290/06
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022572957
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(86)【国際出願番号】 JP2021044962
(87)【国際公開番号】W WO2022145180
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2024-08-20
(31)【優先権主張番号】P 2020218865
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 牧人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 千登志
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-210373(JP,A)
【文献】特開2002-033015(JP,A)
【文献】特開2008-274058(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/06
H01M 10/0565
H01M 10/052
C08G 65/333
C08F 290/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1官能ウレタン(メタ)アクリレート及び電解質塩を含む組成物を硬化してなる固体電解質であって、前記1官能ウレタン(メタ)アクリレートは、下記(i)、(ii)及び(iii)の反応生成物から選ばれる1種以上の単量体であ前記1官能ウレタン(メタ)アクリレートの分子量が2,500~30,000である、固体電解質。
(i)ポリエーテル骨格を有するモノオール及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の等モル反応生成物であって、前記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、1分子中に1個のイソシアネート基を有し、かつ、1分子中に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である、反応生成物。
(ii)ポリエーテル骨格を有するモノオール、ジイソシアネート及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の等モル反応生成物であって、前記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、1分子中に1個のイソシアネート基と反応する基を有し、かつ、1分子中に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である、反応生成物。
(iii)ポリエーテル骨格を有するポリオール及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の等モル反応生成物であって、前記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、1分子中に1個のイソシアネート基を有し、かつ、1分子中に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である、反応生成物。
【請求項2】
前記ポリエーテル骨格を有するモノオールは、ポリエーテルモノオール及びポリエーテルカーボネートモノオールから選ばれる1種以上である、請求項1に記載の固体電解質。
【請求項3】
前記1官能ウレタン(メタ)アクリレートは、前記(i)の反応生成物である、請求項1又は2に記載の固体電解質。
【請求項4】
前記ポリエーテル骨格を有するポリオールは、ポリエーテルポリオール及びポリエーテルカーボネートポリオールから選ばれる1種以上である、請求項1に記載の固体電解質。
【請求項5】
前記ポリエーテル骨格を有するモノオール及び前記ポリエーテル骨格を有するポリオールは、オキシアルキレン基を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の固体電解質。
【請求項6】
前記ポリエーテル骨格を有するモノオール又は前記ポリエーテル骨格を有するポリオールにおけるオキシアルキレン基の総量に対する、オキシエチレン基の割合は、5~95質量%である、請求項5に記載の固体電解質。
【請求項7】
前記ポリエーテル骨格を有するモノオール又は前記ポリエーテル骨格を有するポリオールにおけるオキシアルキレン基の総量に対する、オキシプロピレン基の割合は、5~95質量%である、請求項5又は6に記載の固体電解質。
【請求項8】
前記1官能ウレタン(メタ)アクリレートのホモポリマーにおけるガラス転移温度が-55℃以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載の固体電解質。
【請求項9】
前記電解質塩の含有量が、固体電解質に対して0.01~50質量%である、請求項1~のいずれか1項に記載の固体電解質。
【請求項10】
前記電解質塩が、LiBF、LiPF、LiClO、LiN(CFSO、MgN(CFSO、NaPF6、NaN(CFSO及びNaN(FSOからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1~のいずれか1項に記載の固体電解質。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の固体電解質を備える電池。
【請求項12】
請求項11に記載の電池を備える物品。
【請求項13】
1官能ウレタン(メタ)アクリレート及び電解質塩を含む組成物であって、前記1官能ウレタン(メタ)アクリレートは、下記(i)、(ii)及び(iii)の反応生成物から選ばれる1種以上の単量体であ前記1官能ウレタン(メタ)アクリレートの分子量が2,500~30,000である、組成物。
(i)ポリエーテル骨格を有するモノオール及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の等モル反応生成物であって、前記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、1分子中に1個のイソシアネート基を有し、かつ、1分子中に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である、反応生成物。
(ii)ポリエーテル骨格を有するモノオール、ジイソシアネート及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の等モル反応生成物であって、前記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、1分子中に1個のイソシアネート基と反応する基を有し、かつ、1分子中に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である、反応生成物。
(iii)ポリエーテル骨格を有するポリオール及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の等モル反応生成物であって、前記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、1分子中に1個のイソシアネート基を有し、かつ、1分子中に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である、反応生成物。
【請求項14】
請求項13に記載の組成物に300~410nmの波長を有する光を照射して硬化する、固体電解質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体電解質、固体電解質の製造方法、固体電解質を備える電池、及び電池を備える物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のニッケル水素蓄電池及びリチウムイオン2次電池は液体電解質を使用しているため、液漏れを防ぐために金属缶などに密閉して充填する必要があることから、電池の軽量化及び薄型化が困難であった。近年、液漏れ及び電解液の燃焼などの懸念がなく安全性の高い電池として、ポリマー電解質電池が注目されている。ポリマー電解質電池は、電池の軽量化、薄型化、形状設計性が高いことで知られている。例えば、特許文献1には、イオン電導性化合物、結晶化抑制化合物、及び配向性イオン電導化合物を共重合して得たポリマーに、電解質塩を分散させてなるイオン伝導体を含んでなるポリマー電解質電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-175838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、ウェアラブルデバイスなどのフレキシブルデバイスの開発が進んでいる。フレキシブルデバイスに備えられる電池等の部材には、従来よりも高い曲げ特性、回復性などが求められており、繰り返しの折り曲げに対する耐久性(以下、「繰り返し曲げ耐久性」とも言う。)も要求される。また、フレキシブルデバイスは、持ち運んで様々な環境で使用され得ることから、フレキシブルデバイスに備えられる電池には、低温(0℃)でも繰り返し曲げ耐久性を発揮できる柔軟性が求められる。
【0005】
しかしながら、従来のポリマー電解質電池は、繰り返し曲げ耐久性、低温でのイオン伝導度及び柔軟性が十分であるとは言えなかった。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するものであり、低温でのイオン伝導度及び柔軟性に優れ、かつ繰り返し曲げ耐久性に優れる固体電解質、固体電解質の製造方法、固体電解質を備える電池、及び電池を備える物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ポリエーテル鎖及びウレタン結合を有する所定のウレタン(メタ)アクリレート、及び電解質塩を含む組成物を硬化してなる固体電解質が、低温でのイオン伝導度及び柔軟性に優れ、かつ繰り返し曲げ耐久性に優れることを見出したことに基づく。
【0008】
本発明は、以下の手段を提供する。
[1]1官能ウレタン(メタ)アクリレート及び電解質塩を含む組成物を硬化してなる固体電解質であって、前記1官能ウレタン(メタ)アクリレートは、下記(i)、(ii)及び(iii)の反応生成物から選ばれる1種以上の単量体である、固体電解質。
(i)ポリエーテル骨格を有するモノオール及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の等モル反応生成物であって、前記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、1分子中に1個のイソシアネート基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である、反応生成物。
(ii)ポリエーテル骨格を有するモノオール、ジイソシアネート及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の等モル反応生成物であって、前記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、1分子中に1個のイソシアネート基と反応する基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である、反応生成物。
(iii)ポリエーテル骨格を有するポリオール及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の等モル反応生成物であって、前記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、1分子中に1個のイソシアネート基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である、反応生成物。
[2]前記ポリエーテル骨格を有するモノオールは、ポリエーテルモノオール及びポリエーテルカーボネートモノオールから選ばれる1種以上である、上記[1]に記載の固体電解質。
[3]前記1官能ウレタン(メタ)アクリレートは、前記(i)の反応生成物である、上記[1]又は[2]に記載の固体電解質。
[4]前記ポリエーテル骨格を有するポリオールは、ポリエーテルポリオール及びポリエーテルカーボネートポリオールから選ばれる1種以上である、上記[1]に記載の固体電解質。
[5]前記ポリエーテル骨格を有するモノオール及び前記ポリエーテル骨格を有するポリオールは、オキシアルキレン基を有する、上記[1]~[4]のいずれかに記載の固体電解質。
[6]前記ポリエーテル骨格を有するモノオール又は前記ポリエーテル骨格を有するポリオールにおけるオキシアルキレン基の総量に対する、オキシエチレン基の割合は、5~95質量%である、上記[5]に記載の固体電解質。
[7]前記ポリエーテル骨格を有するモノオール又は前記ポリエーテル骨格を有するポリオールにおけるオキシアルキレン基の総量に対する、オキシプロピレン基の割合は、5~95質量%である、上記[5]又は[6]に記載の固体電解質。
[8]前記1官能ウレタン(メタ)アクリレートのホモポリマーにおけるガラス転移温度が-55℃以下である、上記[1]~[7]のいずれかに記載の固体電解質。
[9]前記1官能ウレタン(メタ)アクリレートの分子量が2,500~30,000である、上記[1]~[8]のいずれかに記載の固体電解質。
[10]前記電解質塩の含有量が、固体電解質に対して0.01~50質量%である、上記[1]~[9]のいずれかに記載の固体電解質。
[11]前記電解質塩が、LiBF、LiPF、LiClO、LiN(CFSO、MgN(CFSO、NaPF6、NaN(CFSO及びNaN(FSOからなる群より選択される少なくとも1種である、上記[1]~[10]のいずれかに記載の固体電解質。
[12]上記[1]~[11]のいずれかに記載の固体電解質を備える電池。
[13]上記[12]に記載の電池を備える物品。
[14]1官能ウレタン(メタ)アクリレート及び電解質塩を含む組成物であって、前記1官能ウレタン(メタ)アクリレートは、下記(i)、(ii)及び(iii)の反応生成物から選ばれる1種以上の単量体である、組成物。
(i)ポリエーテル骨格を有するモノオール及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の等モル反応生成物であって、前記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、1分子中に1個のイソシアネート基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である、反応生成物。
(ii)ポリエーテル骨格を有するモノオール、ジイソシアネート及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の等モル反応生成物であって、前記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、1分子中に1個のイソシアネート基と反応する基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である、反応生成物。
(iii)ポリエーテル骨格を有するポリオール及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の等モル反応生成物であって、前記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、1分子中に1個のイソシアネート基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である、反応生成物。
[15]上記[14]に記載の組成物に300~410nmの波長を有する光を照射して硬化する、固体電解質の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低温でのイオン伝導度及び柔軟性に優れ、かつ繰り返し曲げ耐久性に優れる固体電解質、固体電解質の製造方法、固体電解質を備える電池、及び電池を備える物品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本明細書において、好ましいとされているものは任意に採用でき、好ましいもの同士の組み合わせはより好ましいといえる。
また、本明細書において、「XX~YY」との記載は、「XX以上YY以下」を意味する。
また、本明細書において、好ましい数値範囲(例えば、含有量等の範囲)について、段階的に記載された下限値及び上限値は、それぞれ独立して組み合わせ得る。例えば、「好ましくは10~90、より好ましくは30~60」という記載から、「好ましい下限値(10)」と「より好ましい上限値(60)」とを組み合わせて、「10~60」とすることもできる。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
また、本明細書において、「(メタ)アクリロイルオキシ基」とは、アクリロイルオキシ基及びメタクリロイルオキシ基の総称である。
また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの総称である。
また、本明細書において、「官能基数」とは、特に断りのない限り、1分子中の(メタ)アクリロイルオキシ基の数を意味する。「平均官能基数」とは、特に断りのない限り、化学式に基づく式量又は数平均分子量を1単位とする1分子中の平均の(メタ)アクリロイルオキシ基の数を意味する。
また、本明細書において、「1官能ウレタン(メタ)アクリレート」とは、1分子中の平均官能基数が実質的に1であるウレタン(メタ)アクリレートを意味し、1分子中の平均官能基数が0.7~1.4、好ましくは0.8~1.3であるウレタン(メタ)アクリレートを、1分子中に実質的に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するウレタン(メタ)アクリレート、すなわち、1官能ウレタン(メタ)アクリレートとみなす。
また、本明細書において、「等モル反応生成物」とは、反応する化合物のモル比が、実質的に1であることを意味し、該モル比が0.7~1.4、好ましくは0.8~1.3である反応生成物を、等モル反応生成物とみなす。
同様に、反応する基(又は化合物)の「モル数が等しい」とは、反応する基(又は化合物)のモル比が、実質的に1であることを意味し、該モル比が0.7~1.4、好ましくは0.8~1.3であるとき、反応する基(又は化合物)のモル数が等しいものとみなす。
また、本明細書において、「水酸基価」は、JIS K 1557:2007に準拠した測定により求められる。「水酸基価換算分子量」は、56100/(水酸基価)×(開始剤の活性水素の数)の式から算出した値である。
また、本明細書において、イソシアネート基含有化合物と水酸基含有化合物との反応における「NCOインデックス」とは、水酸基含有化合物の水酸基に対するイソシアネート基含有化合物のイソシアネート基の当量比を百倍した値である。
また、本明細書において、「分子量」とは、特に断りのない限り、化学式に基づく式量、又は、分子量分布が存在する化合物の場合は、数平均分子量を意味する。「数平均分子量」は、標準ポリスチレン試料を用いて作成した検量線に基づいて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定して求められたポリスチレン換算分子量である。
また、本明細書において、「ポリエーテルカーボネートモノオール」とは、ポリエーテル骨格とポリカーボネート骨格の両方を有するモノオールである。また、「ポリエーテルカーボネートポリオール」とは、ポリエーテル骨格とポリカーボネート骨格の両方を有するポリオールである。
【0011】
[固体電解質]
本発明の固体電解質は、1官能ウレタン(メタ)アクリレート及び電解質塩を含む組成物を硬化してなる固体電解質であって、前記1官能ウレタン(メタ)アクリレートは、下記(i)、(ii)及び(iii)の反応生成物から選ばれる1種以上の単量体である。
(i)ポリエーテル骨格を有するモノオール及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の等モル反応生成物であって、前記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、1分子中に1個のイソシアネート基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である、反応生成物。
(ii)ポリエーテル骨格を有するモノオール、ジイソシアネート及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の等モル反応生成物であって、前記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、1分子中に1個のイソシアネート基と反応する基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である、反応生成物。
(iii)ポリエーテル骨格を有するポリオール及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の等モル反応生成物であって、前記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、1分子中に1個のイソシアネート基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である、反応生成物。
【0012】
〔1官能ウレタン(メタ)アクリレート〕
1官能ウレタン(メタ)アクリレートを含む固体電解質は、1官能ウレタン(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイルオキシ基により、光重合又は熱重合させることができる。また、1官能ウレタン(メタ)アクリレートが、架橋に寄与しない柔軟なグラフト鎖としてポリエーテル鎖を有していることにより、柔軟性に優れた硬化物を得ることができる。さらに、該硬化物は、-20~80℃の広範な温度域での貯蔵弾性率の温度依存性が小さく、0℃以下の低温域でも優れた柔軟性が保持され得る。
1官能ウレタン(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイルオキシ基は、硬化速度の観点からは、アクリロイルオキシ基であることが好ましい。
【0013】
前記1官能ウレタン(メタ)アクリレートは、上記(i)~(iii)の反応生成物(以下、「単量体1-1」、「単量体1-2」及び「単量体1-3」とも言う。)から選ばれる1種以上の単量体(以下、「第1の単量体」とも言う。)である。中でも、1官能ウレタン(メタ)アクリレートは、本発明の効果をより発揮する観点から、上記(i)の反応生成物であることが好ましい。
第1の単量体は、1種単独でも、2種以上併用されてもよい。
【0014】
第1の単量体の分子量は、2,500以上が好ましく、4,000以上がより好ましく、5,000以上がさらに好ましい。第1の単量体の分子量は、30,000以下が好ましく、20,000以下がより好ましく、17,000以下がさらに好ましい。第1の単量体の分子量は、2,500~30,000が好ましく、4,000~20,000がより好ましく、5,000~17,000がさらに好ましい。分子量が、2,500以上であると、固体電解質が柔軟になりやすく、より良好なイオン伝導度を得やすく、30,000以下であると、硬化膜の強靭性が優れる。第1の単量体として2種以上が併用される場合は、それぞれの分子量が上記範囲内であることが好ましい。
【0015】
<単量体1-1>
単量体1-1は、(i)の反応生成物であり、ポリエーテル骨格を有するモノオール(i-1)及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(i-2)の等モル反応生成物であって、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(i-2)は、1分子中に1個のイソシアネート基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。
【0016】
単量体1-1としては、式(1-1)で表される化合物、及び式(1-2)で表される化合物から選ばれる1種以上であることが好ましい。イオン輸率がより高くなり、イオン伝導度がより良好となる観点からは、式(1-2)で表される化合物がより好ましい。
【0017】
【化1】
【0018】
【化2】
【0019】
式(1-1)及び式(1-2)中、Rは、1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する一価の有機基である。
12は、炭素数2~8のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2~4のアルキレン基であることがより好ましい。1分子中に存在する複数のR12は互いに同じであっても異なってもよい。1分子中に2種以上のR12が存在する場合、-OR12-の連鎖はブロックでもよく、ランダムでもよい。R12は、エチレン基、プロピレン基、1,2-ジメチルエチレン基及び1-エチルエチレン基から選ばれる1種以上が好ましく、エチレン基及びプロピレン基から選ばれる1種以上がより好ましい。
【0020】
また、(OR12)は、1分子中に1個のエポキシ基及び該エポキシ基のエーテル結合以外のエーテル結合を有する単量体aに基づく単位であることも好ましい。単量体aに基づく単位は、式(11)で表される単位であることが好ましい。単量体aは1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
【化3】
【0022】
式(11)中、R101は、-R103-O-R104で表される一価の基であり、R102は、水素原子又は-R105-O-R106で表される一価の基である。R103、R105は、それぞれ独立に、炭素数1~3の直鎖又は分岐のアルキレン基であり、R104、R106は、それぞれ独立に、炭素数1~18の直鎖又は分岐のアルキル基である。
103、R105のアルキレン基としては、それぞれ独立に、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基がより好ましく、メチレン基がさらに好ましい。
104、R106の炭素数は、それぞれ独立に、1~14が好ましく、1~12がより好ましく、2~10がさらに好ましい。
104、R106の直鎖のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-オクチル基、n-デシル基、ラウリル基、セチル基、ステアリル基が例示でき、メチル基、エチル基、n-ブチル基が好ましい。分岐のアルキル基は、前記直鎖のアルキル基中の水素原子(ただし、末端の炭素に結合する水素原子は除く。)がアルキル基で置換された構造を有する。置換するアルキル基としては、メチル基、エチル基が例示できる。分岐のアルキル基としては、2-エチルヘキシル基が好ましい。
【0023】
単量体aとしては、式(12)で表される単量体が好ましい。
【0024】
【化4】
【0025】
式(12)中のR101及びR102は、式(11)中のR101及びR102と同じである。
【0026】
式(12)で表される単量体としては、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、へキシルグリシジルエーテルが例示され、得られる固体電解質の柔軟性がより良好である点から、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテルが好ましい。
【0027】
式(1-1)及び式(1-2)中、R13は、炭素数1~20のアルキル基である。R13は、炭素数1~8のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、ブチル基がより好ましく、ブチル基がさらに好ましい。
aは、20~600の整数である。aは、35~500の整数が好ましく、65~250の整数がより好ましい。
【0028】
式(1-2)中、R14は、炭素数2~20の鎖式炭化水素基、又は炭素数6~20の環構造を有する環式炭化水素基である。1分子中に存在する複数のR14は互いに同じであっても異なってもよい。これらの基は1個以上の置換基を有していてもよい。
【0029】
14の鎖式炭化水素基の炭素数としては、2~20である限り、特に制限はないが、好ましく2~18、より好ましくは2~16、さらに好ましくは2~8である。また、R14の鎖式炭化水素基は、直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であることが好ましく、また、非置換であることが好ましい。
【0030】
14が置換基を有する鎖式炭化水素基である場合、当該置換基としては、特に制限はなく、例えば、炭素数1~8のアルキル基;塩素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;などが挙げられる。
炭素数1~8のアルキル基としては、特に制限はなく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、などが挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基が好ましく、メチル基、エチル基、t-ブチル基がより好ましい。
14が置換基を有する鎖式炭化水素基である場合、当該置換基の数としては、特に制限はないが、好ましくは1~4、より好ましくは1~2である。
【0031】
式(1-2)中におけるR14が、炭素数6~20の環構造を有する環式炭化水素基である場合、環を構成する原子としては酸素原子を含んでいてもよく、酸素原子を含む場合、隣り合う原子は同時に酸素原子とはならない。
【0032】
14が置換基を有する環式炭化水素基である場合、当該置換基としては、特に制限はなく、例えば、炭素数1~8のアルキル基;塩素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;などが挙げられる。
炭素数1~8のアルキル基としては、特に制限はなく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、などが挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基が好ましく、メチル基、エチル基、t-ブチル基がより好ましい。
14が置換基を有する環式炭化水素基である場合、当該置換基の数としては、特に制限はないが、好ましくは1~4、より好ましくは1~2である。
【0033】
式(1-2)における(R14-O-C(=O)-O)は、R14が異なる2種以上の(R14-O-C(=O)-O)で表される単位を含み、3種以上の(R14-O-C(=O)-O)で表される単位を含んでいてもよい。
式(1-2)で表される化合物を構成する2種以上の(R14-O-C(=O)-O)で表される単位の配列は、ランダムであってもよく、ブロックであってもよく、ランダム及びブロックの両者の組み合わせでもよい。
【0034】
bは、2~50の整数が好ましく、3~30の整数がより好ましい。
【0035】
(ポリエーテル骨格を有するモノオール(i-1))
単量体1-1が式(1-1)で表される化合物である場合、ポリエーテル骨格を有するモノオール(i-1)は、活性水素含有基を有し、かつ、活性水素の数が1個以上である開始剤に、アルキレンオキシド及び/又は前記単量体aを開環重合させて得られる、開始剤残基とポリエーテル鎖と開始剤の活性水素の数に対応する水酸基とを有する化合物である。また、単量体1-1が式(1-2)で表される化合物である場合、ポリエーテル骨格を有するモノオール(i-1)は、活性水素含有基を有し、かつ、活性水素の数が1個以上である開始剤に、二酸化炭素、並びに過剰のアルキレンオキシド及び/又は前記単量体aを開環重合させて得られる、開始剤残基とポリエーテル鎖とポリカーボネート鎖と開始剤の活性水素の数に対応する水酸基とを有する化合物である。
【0036】
アルキレンオキシド及び単量体aの合計質量に対する単量体aの質量の割合は、柔軟性と強度の調整の観点から、0~90質量%が好ましく、0~85質量%がより好ましく、10~80質量%がさらに好ましい。
【0037】
前記アルキレンオキシドとしては、炭素数2~8のアルキレンオキシドが好ましく、炭素数2~4のアルキレンオキシドがより好ましい。前記アルキレンオキシドの具体例としては、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、2,3-ブチレンオキシドが挙げられる。
【0038】
開始剤が有する活性水素含有基としては、例えば、水酸基、カルボキシ基、窒素原子に結合した水素原子を1個有するアミノ基が挙げられる。前記開始剤が有する活性水素含有基としては、水酸基、カルボキシ基が好ましく、水酸基がより好ましく、アルコール性水酸基がさらに好ましい。
【0039】
活性水素の数が1個である開始剤としては、例えば、一価アルコール、一価フェノール、一価カルボン酸、窒素原子に結合した水素原子を1個有するアミン化合物が挙げられる。前記開始剤としては、一価脂肪族アルコール、一価脂肪族カルボン酸が好ましく、一価脂肪族アルコールがより好ましい。また、目的のポリエーテル骨格を有するモノオールよりも低分子量のポリオキシアルキレンモノオールを開始剤として使用してもよい。
【0040】
開始剤としての一価脂肪族アルコールの炭素数は、1~20が好ましく、2~8がより好ましい。開始剤としての一価脂肪族アルコールの具体例としては、エタノール、プロパノール、2-プロパノール、ブタノールが挙げられる。
開始剤としての一価脂肪族カルボン酸の炭素数は、カルボキシ基の炭素原子を含め、2~20が好ましく、2~8がより好ましい。
【0041】
ポリエーテル骨格を有するモノオール(i-1)中のオキシアルキレン基としては、固体電解質が柔軟になりやすく、より良好なイオン伝導度を得やすい観点から、オキシプロピレン基とそれ以外の基との組合せからなることが好ましく、オキシプロピレン基以外のオキシアルキレン基としてはオキシエチレン基が好ましく、オキシプロピレン基及びオキシエチレン基を有することがより好ましい。
【0042】
ポリエーテル骨格を有するモノオール(i-1)中のオキシアルキレン基の総量に対するオキシプロピレン基の割合は、固体電解質が柔軟になりやすく、より良好なイオン伝導度を得やすい観点から、5~95質量%が好ましく、10~90質量%がより好ましい。なお、開始剤が目的のポリエーテル骨格を有するモノオールよりも低分子量のポリオキシアルキレンモノオールである場合、開始剤中のオキシアルキレン基は得られたポリエーテル骨格を有するモノオールの中のオキシアルキレン基とみなす。
上記オキシプロピレン基の割合は、H-NMRを用いてオキシアルキレン単位のモノマー組成を求めることにより、算出したものである。具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
【0043】
ポリエーテル骨格を有するモノオール(i-1)中のオキシアルキレン基の総量に対するオキシエチレン基の割合は、固体電解質が柔軟になりやすく、より良好なイオン伝導度を得やすい観点から、5~95質量%が好ましく、10~90質量%がより好ましい。なお、開始剤が目的のポリエーテル骨格を有するモノオールよりも低分子量のポリオキシアルキレンモノオールである場合、開始剤中のオキシアルキレン基は得られたポリエーテル骨格を有するモノオールの中のオキシアルキレン基とみなす。
上記オキシエチレン基の割合は、H-NMRを用いてオキシアルキレン単位のモノマー組成を求めることにより、算出したものである。具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
【0044】
ポリエーテル骨格を有するモノオール(i-1)において、低水酸基価、すなわち、高分子量のポリオキシアルキレンモノオールは、複合金属シアン化物錯体触媒の存在下に、開始剤に炭素数3以上のアルキレンオキシド、特に、プロピレンオキシドを開環重合させて製造できる。
低水酸基価のポリオキシアルキレンモノオールとしては、水酸基価40mgKOH/g以下のポリオキシアルキレンモノオールが挙げられる。
オキシエチレン基を有する低水酸基価のポリオキシアルキレンモノオールは、オキシエチレン基を有する高水酸基価、例えば、水酸基価が50mgKOH/g以上のポリオキシアルキレンモノオールを開始剤とし、複合金属シアン化物錯体触媒の存在下に、炭素数3以上のアルキレンオキシド、特に、プロピレンオキシドを開環重合させて製造できる。
前記ポリエーテルモノオールにおいて、高水酸基価のポリオキシアルキレンモノオール及び開始剤である高水酸基価のポリオキシアルキレンモノオールは、水酸化カリウム等のアルカリ触媒を使用しても製造できる。
【0045】
ポリオキシアルキレンモノオールの製造において、反応系内に投入される開始剤及びアルキレンオキシドには、通常、減圧脱気等により水分を除去した水分の少ないものが使用される。通常、ポリオキシアルキレンモノオールの製造における開始剤の水分量は、少ないほど好ましく、500質量ppm以下が好ましく、300質量ppm以下がより好ましい。水分量が上記範囲内であると、水から生成するポリオキシアルキレンジオールの生成量が抑制される、結果的に、ポリオキシアルキレンジオールに起因する副生成物の生成量が抑制され、得られるポリオキシアルキレンモノオールの平均水酸基数の上限を1.2以下に調整しやすい。
【0046】
単量体1-1の原料として用いるポリエーテル骨格を有するモノオール(i-1)の水分量は、少ないほど好ましく、ポリエーテル骨格を有するモノオール(i-1)に対して、300質量ppm以下が好ましく、250質量ppm以下がより好ましく、50~200質量ppmがさらに好ましい。水分量が上記範囲内であると、水分とイソシアネート基含有化合物との副生物の生成が少なく、反応生成物である単量体1-1の安定性が向上する。さらに、良好な柔軟性を有する固体電解質が得られやすい。
【0047】
ポリエーテル骨格を有するモノオール(i-1)の1分子中の平均の水酸基数は、0.80~1.20が好ましく、0.90~1.10がより好ましい。
ポリエーテル骨格を有するモノオール(i-1)の水酸基価は、1.6~20.0mgKOH/gが好ましく、2.8~19.8mgKOH/gがより好ましく、3.1~19.5mgKOH/gがさらに好ましい。
【0048】
単量体1-1におけるポリエーテル骨格を有するモノオール(i-1)は、2種以上のポリエーテルモノオールの混合物であってもよい。この場合、各々のポリエーテル骨格を有するモノオールは上記範疇に含まれるポリオキシアルキレンモノオールが好ましい。
【0049】
ポリエーテル骨格を有するモノオール(i-1)は、低温での柔軟性がより良好であり、イオン伝導度がより良好である観点から、ポリエーテルモノオール及びポリエーテルカーボネートモノオールから選ばれる1種以上であることが好ましく、導電性の観点から、ポリエーテルカーボネートモノオールがより好ましい。
【0050】
ポリエーテルモノオールとしては、例えば、式(1a-1)で表される化合物が挙げられる。
【0051】
【化5】
【0052】
式(1a-1)中、R12、R13及びaは、式(1-1)中の同一の記号と同じである。
【0053】
ポリエーテルカーボネートモノオールとしては、例えば、式(1a-2)で表される化合物が挙げられる。
【0054】
【化6】
【0055】
式(1a-2)中、R12、R13、R14、a及びbは、式(1-2)中の同一の記号と同じである。
【0056】
ポリエーテルカーボネートモノオールにおいて、-OC(=O)O-で表されるカーボネート基のモル数と(OR12)で表されるオキシアルキレン単位のモル数の比[カーボネート基/オキシアルキレン単位]としては、特に制限はないが、導電性がより良好である観点から、好ましくは0.01~3、より好ましくは0.01~2である。
ポリエーテルカーボネートモノオールにおける[カーボネート基/オキシアルキレン単位]は、H-NMRにより求められる。
具体的には、ポリエーテルカーボネートモノオールを10質量%となるように重クロロホルムに溶解し、分解能400MHz(製品名:JNM-ECZ400SJNM、日本電子社製)でH-NMRを測定し、カーボネート基に隣接した炭素に結合した水素に基づくピークと、カーボネート基に隣接していない炭素に結合した水素(オキシアルキレン単位における水素)に基づいて算出する。
【0057】
式(1a-2)で表されるポリエーテルカーボネートモノオール中の全オキシアルキレン基に対するオキシプロピレン基の割合は、固体電解質が柔軟になりやすく、より良好なイオン伝導度を得やすい観点から、5~95質量%が好ましく、10~90質量%がより好ましく、10~50質量%がさらに好ましい。なお、開始剤としてポリオキシアルキレンモノオールを用いる場合は、開始剤中のオキシアルキレン基は得られたポリエーテルカーボネートモノオールの中のオキシアルキレン基とみなす。
式(1a-2)で表されるポリエーテルカーボネートモノオール中の全オキシアルキレン基に対するオキシエチレン基の割合は、固体電解質が柔軟になりやすく、より良好なイオン伝導度を得やすい観点から、5~95質量%が好ましく、10~90質量%がより好ましく、50~90質量%がさらに好ましい。なお、開始剤としてポリオキシアルキレンモノオールを用いる場合は、開始剤中のオキシアルキレン基は得られたポリエーテルカーボネートモノオールの中のオキシアルキレン基とみなす。
【0058】
((メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(i-2))
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(i-2)は、1分子中に1個のイソシアネート基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(i-2)としては、脂肪族炭化水素基又は脂環族炭化水素基に結合したイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートが好ましく、イソシアネートアルキル(メタ)アクリレートがより好ましい。
イソシアネートアルキル基のイソシアネート基を除くアルキレン基の炭素数は、8以下が好ましく、4以下がより好ましい。
【0059】
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(i-2)としては、例えば、式(1b)で表される化合物が挙げられる。
【0060】
【化7】
【0061】
式(1b)中、R11は、水素原子又はメチル基である。R11は、水素原子が好ましい。
sは、1~4の整数であり、1~2の整数が好ましい。
【0062】
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(i-2)の具体例としては、2-イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、イソシアネートメチルメタクリレート等が挙げられる。市販品としては、例えば、「カレンズ(登録商標;以下、表記省略。)AOI」、「カレンズMOI」(以上、昭和電工株式会社製)が挙げられる。
【0063】
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(i-2)としては、例えば、式(1c)で表される化合物が挙げられる。
【0064】
【化8】
【0065】
式(1c)中、R11は、水素原子又はメチル基である。R11は、水素原子が好ましい。
14は、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基である。R14は、メチル基が好ましい。
tは、1~8の整数である。tは、1~4の整数が好ましく、1~2の整数がより好ましい。
uは、0~4の整数である。uは、0~2の整数が好ましい。
【0066】
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(i-2)の具体例としては、2,2-(ビスアクリロイルオキシメチル)プロピルイソシアネート及び1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート(商品名「カレンズBEI」、昭和電工株式会社製)が挙げられ、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートが好ましい。
【0067】
単量体1-1としては、式(1-1-1)で表される化合物、式(1-1-2)で表される化合物、式(1-1-3)で表される化合物、式(1-1-4)で表される化合物、式(1-1-5)で表される化合物、及び式(1-1-6)で表される化合物から選ばれる1種以上が好ましい。
【0068】
【化9】
【0069】
【化10】
【0070】
式(1-1-1)、式(1-1-2)、及び式(1-1-3)中、R12aは、それぞれ独立に、エチレン基及びプロピレン基から選ばれる1種であり、各式中の複数のR12bは、それぞれ独立に、エチレン基及びプロピレン基から選ばれる1種である。1分子中に存在する複数のR12bは互いに同じであっても異なってもよい。また、1分子中に存在する複数のR12bが互いに異なる場合、-OR12a-及び-OR12b-の連鎖は、-OCHCH-及び-OCH(CH)CH-のランダムでもよい。
Buは、ブチル基である。
【0071】
式(1-1-1)、式(1-1-2)、及び式(1-1-3)中、m、n1及びn2は、それぞれ独立に、20~600の整数が好ましく、35~500の整数がより好ましく、65~250の整数がさらに好ましい。
【0072】
(-OR12b-)[X=m、n1、n2]中に含まれる、-OCH(CH)CH-の単位数は、1~600の整数が好ましく、7~500の整数がより好ましく、13~250の整数がさらに好ましい。また、(-OR12b-)[X=m、n1、n2]中に含まれる、-OCHCH-の単位数は、0~599の整数が好ましく、0~493の整数がより好ましく、0~237の整数がさらに好ましい。
【0073】
式(1-1-4)、式(1-1-5)、及び式(1-1-6)中、a1、a2及びa3は、それぞれ独立に、20~600の整数が好ましく、35~500の整数がより好ましく、65~250の整数がさらに好ましい。また、b1、b2及びb3は、それぞれ独立に、2~50の整数が好ましく、3~30の整数がより好ましい。
Buは、ブチル基である。
【0074】
<単量体1-2>
単量体1-2は、(ii)の反応生成物であり、ポリエーテル骨格を有するモノオール(ii-1)、ジイソシアネート(ii-2)及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(ii-3)の等モル反応生成物であって、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(ii-3)は、1分子中に1個のイソシアネート基と反応する基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。
【0075】
単量体1-2としては、式(2-1)で表される化合物、及び式(2-2)で表される化合物から選ばれる1種以上であることが好ましい。イオン輸率がより高くなり、イオン伝導度がより良好となる観点からは、式(2-2)で表される化合物がより好ましい。
【0076】
【化11】
【0077】
【化12】
【0078】
式(2-1)及び式(2-2)中、Rは、1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する1価の有機基である。
22は、炭素数2~8のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2~4のアルキレン基であることがより好ましい。1分子中に存在する複数のR22は互いに同じであっても異なってもよい。1分子中に2種以上のR22が存在する場合、-OR22-の連鎖はブロックでもよく、ランダムでもよい。R22は、エチレン基、プロピレン基、1,2-ジメチルエチレン基及び1-エチルエチレン基から選ばれる1種以上が好ましく、エチレン基及びプロピレン基から選ばれる1種又は2種がより好ましい。
また、(OR22)は、式(1-1)及び式(1-2)における(OR12)と同様に、前記単量体aに基づく単位であることも好ましい。単量体aの好ましい態様は、単量体1-1の場合と同じである。
23は、炭素数1~20のアルキル基である。R23は、炭素数2~8のアルキル基が好ましく、ブチル基がより好ましい。
24は、ジイソシアネートから2個のイソシアネート基を除いた2価の基である。ジイソシアネートの例は、後述する。
25は、炭素数2~20の鎖式炭化水素基、又は炭素数6~20の環構造を有する環式炭化水素基である。1分子中に存在する複数のR25は互いに同じであっても異なってもよい。1分子中に2種以上のR25が存在する場合、式(2-2)で表される化合物を構成する2種以上の(R25-O-C(=O)-O)で表される単位の配列は、ランダムであってもよく、ブロックであってもよく、ランダム及びブロックの両者の組み合わせでもよい。R25は、炭素数2~8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、エチレン基、1,2-プロピレン基、1,3-プロピレン基、1,4-ブチレン基がより好ましい。
cは、20~600の整数である。cは、35~500の整数が好ましく、65~250の整数がより好ましい。
dは、2~50の整数が好ましく、3~30の整数がより好ましい。
【0079】
(ポリエーテル骨格を有するモノオール(ii-1))
ポリエーテル骨格を有するモノオール(ii-1)は、単量体1-1におけるポリエーテル骨格を有するモノオール(i-1)と同様であり、好ましい態様も同じである。
【0080】
ポリエーテル骨格を有するモノオール(ii-1)としては、例えば、式(2a-1)で表される化合物、及び式(2a-2)で表される化合物が挙げられる。
【0081】
【化13】
【0082】
式(2a-1)中、R22、R23及びcは、式(2-1)中の同一の記号と同じ意味である。
【0083】
【化14】
【0084】
式(2a-2)中、R22、R23、R25、c及びdは、式(2-2)中の同一の記号と同じ意味である。
【0085】
(ジイソシアネート(ii-2))
ジイソシアネート(ii-2)は、1分子中に2個のイソシアネート基を有する化合物である。
ジイソシアネート(ii-2)としては、無黄変性芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、及びこれらのジイソシアネートの各種変性体(イソシアネート基を2個有する変性体)が挙げられる。ジイソシアネートは、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
ジイソシアネート(ii-2)としては、固体電解質の繰り返し曲げ耐久性の観点から、脂肪族ジイソシアネート及び脂環式ジイソシアネートからなる選ばれる1種以上が好ましい。
【0086】
無黄変性芳香族ジイソシアネートの具体例としては、キシリレンジイソシアネート及びテトラメチルキシリレンジイソシアネートが挙げられる。
上記脂肪族ジイソシアネートの具体例としては、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート及びリジンジイソシアネートが挙げられる。
脂環式ジイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,5-ノルボルナンジイソシアネート及び2,6-ノルボルナンジイソシアネートが挙げられる。
【0087】
ジイソシアネート(ii-2)としては、例えば、式(2b)で表される化合物が挙げられる。
【0088】
【化15】
【0089】
式(2b)中、R24は、式(2-1)及び式(2-2)中の同一の記号と同じ意味である。
上記ジイソシアネートとしては、固体電解質の柔軟性及び繰り返し曲げ耐久性の観点から、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが好ましい。
【0090】
((メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(ii-3))
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(ii-3)は、1分子中に1個のイソシアネート基と反応する基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。
イソシアネート基と反応する基としては、水酸基及び水素原子が結合した窒素原子を有するアミノ基等が挙げられる。イソシアネート基と反応する基における水酸基の数及び窒素原子に結合した水素原子の数は、各1個が好ましい。また、イソシアネート基と反応する基としては、脂肪族炭化水素基又は脂環族炭化水素基に結合した水酸基が好ましい。
【0091】
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(ii-3)としては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート及びヒドロキシシクロアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、ヒドロキシアルキル基の炭素数が8以下のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0092】
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(ii-3)としては、例えば、式(2c)で表される化合物が挙げられる。
【0093】
【化16】
【0094】
式(2c)中、R21は、水素原子又はメチル基である。R21は、水素原子が好ましい。
pは1~4の整数である。pは、1~2の整数が好ましい。
【0095】
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(ii-3)の具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。市販品としては、ライトエステルHO-250(N)、ライトエステルHOP(N)、ライトエステルHOA(N)、ライトエステルHOP-A(N)、ライトエステルHOB(N)(以上、共栄社化学株式会社製)、4-HBA(大阪有機化学工業株式会社製)が挙げられる。
【0096】
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(ii-3)としては、例えば、式(2d)で表される化合物が挙げられる。
【0097】
【化17】
【0098】
式(2d)中、R21は、水素原子又はメチル基である。R21は、水素原子が好ましい。
26は、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基である。R26は、メチル基が好ましい。
qは、1~8の整数である。qは、1~4の整数が好ましく、1~2の整数がより好ましい。
rは、0~4の整数である。rは、0~2の整数が好ましい。
【0099】
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(ii-3)の具体例としては、2,2-(ビスアクリロイルオキシメチル)プロパン-1-オール及び1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エタン-1-オールが挙げられ、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エタン-1-オールが好ましい。
【0100】
<単量体1-3>
単量体1-3は、(iii)の反応生成物であり、ポリエーテル骨格を有するポリオール(iii-1)及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(iii-2)の等モル反応生成物であって、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(iii-2)は、1分子中に1個のイソシアネート基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。
【0101】
単量体1-3としては、式(III)で表される化合物が好ましい。
-NH-C(=O)-Z ・・・(III)
式(III)中、Rは、1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する1価の有機基である。
Zは、ポリエーテル骨格を有するポリオールにおける水酸基の1個から、水素原子の1個を除いたポリエーテル骨格を有するポリオールの残基である。
ポリエーテル骨格を有するポリオールは、低温での柔軟性がより良好であり、イオン伝導度がより良好である観点から、ポリエーテルポリオール及びポリエーテルカーボネートポリオールから選ばれる1種以上であることが好ましく、導電性の観点から、ポリエーテルカーボネートポリオールがより好ましい。
【0102】
単量体1-3としては、式(3-1)で表される化合物、及び式(3-2)で表される化合物から選ばれる1種以上であることが好ましい。イオン輸率がより高くなり、イオン伝導度がより良好となる観点からは、式(3-2)で表される化合物がより好ましい。
【0103】
【化18】
【0104】
【化19】
【0105】
式(3-1)及び式(3-2)中、Rは、式(III)中のRと同じである。
32は、炭素数2~8のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2~4のアルキレン基であることがより好ましい。1分子中に存在する複数のR32は、互いに同じであっても、異なってもよい。1分子中に2種以上のR32が存在する場合、-OR32-の連鎖は、ブロックでもよく、ランダムでもよい。R32は、エチレン基、プロピレン基、1,2-ジメチルエチレン基及び1-エチルエチレン基から選ばれる1種以上が好ましく、エチレン基及びプロピレン基から選ばれる1種又は2種がより好ましい。
また、(OR32)は、式(1-1)及び式(1-2)における(OR12)と同様に、前記単量体aに基づく単位であることも好ましい。単量体aの好ましい態様は、単量体1-1の場合と同じである。
33は、炭素数2~20の鎖式炭化水素基、又は炭素数6~20の環構造を有する環式炭化水素基である。1分子中に存在する複数のR33は互いに同じであっても異なってもよい。1分子中に2種以上のR33が存在する場合、式(3-2)で表される化合物を構成する2種以上の(R33-O-C(=O)-O)で表される単位の配列は、ランダムであってもよく、ブロックであってもよく、ランダム及びブロックの両者の組み合わせでもよい。R33は、炭素数2~8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、エチレン基、1,2-プロピレン基、1,3-プロピレン基、1,4-ブチレン基がより好ましい。
eは、20~600の整数である。eは、35~500の整数が好ましく、65~250の整数がより好ましい。
fは、2~50の整数が好ましく、3~30の整数がより好ましい。
【0106】
(ポリエーテル骨格を有するポリオール(iii-1))
単量体1-3が式(3-1)で表される化合物である場合、ポリエーテル骨格を有するポリオール(iii-1)は、活性水素含有基を有し、かつ、活性水素の数が2個以上である開始剤に、アルキレンオキシド及び/又は前記単量体aを開環重合させて得られる、開始剤残基とポリエーテル鎖と開始剤の活性水素の数に対応する水酸基とを有する化合物である。また、単量体1-3が式(3-2)で表される化合物である場合、ポリエーテル骨格を有するポリオール(iii-1)は、活性水素含有基を有し、かつ、活性水素の数が2個以上である開始剤に、二酸化炭素、並びに過剰のアルキレンオキシド及び/又は前記単量体aを開環重合させて得られる、開始剤残基とポリエーテル鎖とポリカーボネート鎖と開始剤の活性水素の数に対応する水酸基とを有する化合物である。
【0107】
前記アルキレンオキシドとしては、炭素数2~4のアルキレンオキシドが好ましい。炭素数2~4のアルキレンオキシドの具体例として、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド及び2,3-ブチレンオキシドが挙げられる。
また、単量体aとしては、上記式(12)で表される単量体が好ましく、式(12)で表される単量体としては、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、へキシルグリシジルエーテルが例示され、得られる固体電解質の柔軟性がより良好である点から、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテルが好ましい。
【0108】
アルキレンオキシド及び単量体aの合計質量に対する単量体aの質量の割合は、得られる固体電解質の柔軟性と強度の調整の観点から、0~90質量%が好ましく、0~85質量%がより好ましく、10~80質量%がさらに好ましい。
【0109】
開始剤が有する活性水素含有基としては、水酸基、カルボキシ基及び窒素原子に結合した水素原子を有するアミノ基等が挙げられる。開始剤が有する活性水素含有基としては、水酸基が好ましく、アルコール性水酸基がより好ましい。
【0110】
活性水素の数が2個以上である開始剤としては、水、多価アルコール、多価フェノール、多価カルボン酸及び窒素原子に結合した水素原子を2個以上有するアミン化合物が挙げられる。前記開始剤としては、水又は2価脂肪族アルコールが好ましく、2価脂肪族アルコールがより好ましい。また、目的のポリエーテル骨格を有するポリオールよりも低分子量のポリオキシアルキレンポリオールを開始剤として使用してもよい。
【0111】
開始剤としての2価脂肪族アルコールの炭素数は、2~8が好ましい。開始剤としての2価脂肪族アルコールの具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングルコール等のポリプロピレングリコール及び1,4-ブタンジオールが挙げられる。
【0112】
ポリエーテル骨格を有するポリオール(iii-1)中のオキシアルキレン基としては、固体電解質が柔軟になりやすく、より良好なイオン伝導度を得やすい観点から、オキシプロピレン基とそれ以外の基との組合せからなることが好ましく、オキシプロピレン基以外のオキシアルキレン基としてはオキシエチレン基、オキシテトラメチレン基が好ましく、オキシエチレン基がより好ましい。ポリエーテル骨格を有するポリオール(iii-1)中のオキシアルキレン基の総量に対するオキシプロピレン基の割合は5~95質量%が好ましく、10~90質量%がより好ましい。
なお、開始剤が目的のポリエーテル骨格を有するポリオールよりも低分子量のポリオキシアルキレンポリオールである場合、開始剤中のオキシアルキレン基は得られたポリエーテル骨格を有するポリオールの中のオキシアルキレン基とみなす。
上記オキシプロピレン基の割合は、H-NMRを用いてオキシアルキレン単位のモノマー組成を求めることにより、算出したものである。具体的には、実施例に記載の方法に準じた方法により測定できる。
【0113】
ポリエーテル骨格を有するポリオール(iii-1)中のオキシアルキレン基の総量に対するオキシエチレン基の割合は、固体電解質が柔軟になりやすく、より良好なイオン伝導度を得やすい観点から、5~95質量%が好ましく、10~90質量%がより好ましい。なお、開始剤が目的のポリエーテル骨格を有するポリオールよりも低分子量のポリオキシアルキレンポリオールである場合、開始剤中のオキシアルキレン基は得られたポリエーテル骨格を有するポリオールの中のオキシアルキレン基とみなす。
上記オキシエチレン基の割合は、H-NMRを用いてオキシアルキレン単位のモノマー組成を求めることにより、算出したものである。具体的には、実施例に記載の方法に準じた方法により測定できる。
【0114】
ポリエーテル骨格を有するポリオール(iii-1)のうち、低水酸基価の、すなわち高分子量の、ポリオキシアルキレンポリオールは、複合金属シアン化物錯体触媒の存在下に、開始剤に炭素数3以上のアルキレンオキシド、特に、プロピレンオキシドを開環重合させて製造できる。
低水酸基価のポリオキシアルキレンポリオールとしては、水酸基価40mgKOH/g以下のポリオキシアルキレンポリオールが挙げられる。
ポリエーテル骨格を有するポリオール(iii-1)のうち、オキシエチレン基を有する低水酸基価のポリオキシアルキレンポリオールは、オキシエチレン基を有する高水酸基価の、例えば水酸基価が50mgKOH/g以上の、ポリオキシアルキレンポリオールを開始剤とし、複合金属シアン化物錯体触媒の存在下に、炭素数3以上のアルキレンオキシド、特に、プロピレンオキシドを開環重合させて製造できる。
ポリエーテル骨格を有するポリオール(iii-1)のうち、高水酸基価のポリオキシアルキレンポリオール及び開始剤である高水酸基価のポリオキシアルキレンポリオールは、KOH等のアルカリ触媒を使用しても製造できる。
【0115】
ポリエーテル骨格を有するポリオール(iii-1)の1分子中の平均の水酸基数は、1.60~2.00が好ましく、1.70~2.00がより好ましく、1.80~1.96がさらに好ましい。1分子中の平均の水酸基数が1.60~2.00であるポリエーテルポリオールを、ポリエーテルジオールという場合がある。
ポリエーテル骨格を有するポリオール(iii-1)の水酸基価は、1.6~18.1mgKOH/gが好ましく、2.8~14mgKOH/gがより好ましい。
【0116】
ポリエーテル骨格を有するポリオール(iii-1)は、2種以上のポリエーテルポリオールの混合物であってもよい。この場合、各々のポリエーテルポリオールは上記範疇に含まれるポリエーテルポリオールが好ましく、各々のポリエーテルポリオールはいずれも上記範疇に含まれるポリエーテルジオールであることが好ましい。
【0117】
ポリエーテル骨格を有するポリオール(iii-1)としては、例えば、式(3a-1)で表される化合物、及び式(3a-2)で表される化合物が挙げられる。
【0118】
【化20】
【0119】
【化21】
【0120】
式(3a-1)中、R32及びeは、式(3-1)中の同一の記号と同じ意味である。また、式(3a-2)中、R32、R33、e及びfは、式(3-2)中の同一の記号と同じ意味である。
【0121】
((メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(iii-2))
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(iii-2)は、1分子中に1個のイソシアネート基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(iii-2)は、単量体1-1における(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(i-2)と同様であり、好ましい態様も同じである。
【0122】
前記1官能ウレタン(メタ)アクリレートの含有量は、固体電解質の柔軟性及び繰り返し曲げ耐久性の観点から、固体電解質全量に対して50質量%以上であることが好ましく、70~98質量%であることがより好ましく、80~95質量%であることがさらに好ましい。
【0123】
前記1官能ウレタン(メタ)アクリレートのホモポリマーのガラス転移温度(Tg)は、好ましくは-55℃以下であり、より好ましくは-58℃以下であり、さらに好ましくは-60℃以下である。Tgが-55℃以下であると、固体電解質の柔軟性及び繰り返し曲げ耐久性がより優れる。
なお、1官能ウレタン(メタ)アクリレートのホモポリマーのTgは、示差走査熱量測定装置や粘弾性測定装置により測定することができる。
【0124】
〔第2の単量体〕
本発明の固体電解質は、第1の単量体以外に、下記(iv)及び(v)の反応生成物(以下、「単量体2-1」及び「単量体2-2」とも言う。)から選ばれる1種以上である第2の単量体を含んでいてもよい。前記固体電解質中の第2の単量体は、1種単独でも、2種以上併用されてもよい。
(iv)ポリエーテル骨格を有するポリオール及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の反応生成物であって、前記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、1分子中に1個のイソシアネート基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物であり、前記ポリエーテルポリオールの水酸基のモル数と、前記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物のモル数とが等しい、反応生成物。
(v)ポリオール(A)、ポリイソシアネート及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物の反応生成物であって、前記ポリオール(A)は、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリ(メタ)アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ヒマシ油系ポリオール及びポリオレフィンポリオールから選ばれる1種以上であり、前記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、1分子中に1個のイソシアネート基と反応する基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物であり、前記ポリオール(A)の水酸基、及び、前記(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物のイソシアネート基と反応する基の合計モル数と、前記ポリイソシアネートのイソシアネート基のモル数とが等しい、反応生成物。
【0125】
第2の単量体は、2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレートであり、第1の単量体を架橋させる架橋性単量体として作用し得る。第1の単量体及び第2の単量体を含む固体電解質は、優れた柔軟性を有する。
【0126】
第2の単量体は、分子量が6,000~60,000であることが好ましく、8,000~40,000であることがより好ましく、10,000~34,000であることがさらに好ましい。分子量が6,000以上であると、固体電解質の柔軟性が得られやすく、導電性をより良好にでき、また、60,000以下であると、硬化膜の強靭性が優れる。
【0127】
<単量体2-1>
単量体2-1は、(iv)の反応生成物であり、ポリエーテル骨格を有するポリオール(iv-1)及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(iv-2)の反応生成物であって、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(iv-2)は、1分子中に1個のイソシアネート基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物であり、ポリエーテル骨格を有するポリオール(iv-1)の水酸基のモル数と、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(iv-2)のモル数とが等しい。
【0128】
単量体2-1としては、式(IV)で表される化合物が好ましい。
-NHC(=O)-Z-C(=O)NH-R ・・・(IV)
式(IV)中、Rは、1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する1価の有機基である。
Zは、ポリエーテル骨格を有するポリオール(iv-1)における水酸基の2個から、水素原子の2個を除いたポリエーテル骨格を有するポリオール(iv-1)の残基である。
【0129】
単量体2-1としては、式(4-1)で表される化合物、及び式(4-2)で表される化合物から選ばれる1種以上であることが好ましい。イオン輸率がより高くなり、イオン伝導度がより良好となる観点からは、式(4-2)で表される化合物がより好ましい。
【0130】
【化22】
【0131】
【化23】
【0132】
式(4-1)及び式(4-2)中、Rは、式(IV)中のRと同様である。
42は、炭素数2~8のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2~4のアルキレン基であることがより好ましい。1分子中に存在する複数のR42は、互いに同じであっても異なっていてもよい。1分子中に2種以上のR42が存在する場合、-OR42-の連鎖は、ブロックでもよく、ランダムでもよい。R42は、エチレン基、プロピレン基、1,2-ジメチルエチレン基及び1-エチルエチレン基から選ばれる1種以上が好ましく、エチレン基及びプロピレン基から選ばれる1種又は2種がより好ましい。
また、(OR42)は、式(1-1)及び式(1-2)における(OR12)と同様に、前記単量体aに基づく単位であることも好ましい。単量体aの好ましい態様は、単量体1-1の場合と同じである。
43は、炭素数2~20の鎖式炭化水素基、又は炭素数6~20の環構造を有する環式炭化水素基である。1分子中に存在する複数のR43は互いに同じであっても異なってもよい。1分子中に2種以上のR43が存在する場合、式(4-2)で表される化合物を構成する2種以上の(R43-O-C(=O)-O)で表される単位の配列は、ランダムであってもよく、ブロックであってもよく、ランダム及びブロックの両者の組み合わせでもよい。R43は、炭素数2~8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、エチレン基、1,2-プロピレン基、1,3-プロピレン基、1,4-ブチレン基がより好ましい。
gは、20~600の整数である。gは、35~500の整数が好ましく、65~250の整数がより好ましい。
hは、2~50の整数が好ましく、3~30の整数がより好ましい。
【0133】
ポリエーテル骨格を有するポリオール(iv-1)は、単量体1-3におけるポリエーテル骨格を有するポリオール(iii-1)と同様であり、好ましい態様も同じである。
【0134】
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(iv-2)は、単量体1-1における(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(i-2)と同様であり、好ましい態様も同じである。
【0135】
<単量体2-2>
単量体2-2は、(v)の反応生成物であり、ポリオール(A)、ポリイソシアネート(v-1)及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(v-2)の反応生成物であって、ポリオール(A)は、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリ(メタ)アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ヒマシ油系ポリオール及びポリオレフィンポリオールから選ばれる1種以上であり、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(v-2)は、1分子中に1個のイソシアネート基と反応する基を有し、かつ、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物であり、ポリオール(A)の水酸基、及び、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(v-2)のイソシアネート基と反応する基の合計モル数と、ポリイソシアネート(v-1)のイソシアネート基のモル数とが等しい。
【0136】
単量体2-2としては、式(5-1)で表される化合物、及び式(5-2)で表される化合物から選ばれる1種以上であることが好ましい。イオン輸率がより高くなり、イオン伝導度がより良好となる観点からは、式(5-2)で表される化合物がより好ましい。
【0137】
【化24】
【0138】
【化25】
【0139】
式(5-1)及び式(5-2)中、Rは、1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する1価の有機基である。
52は、炭素数2~8のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2~4のアルキレン基であることがより好ましい。1分子中に存在する複数のR52は、互いに同じであっても異なってもよい。1分子中に2種以上のR52が存在する場合、-OR52-の連鎖はブロックでもよくランダムでもよい。R52は、エチレン基、プロピレン基、1,2-ジメチルエチレン基及び1-エチルエチレン基から選ばれる1種以上が好ましく、エチレン基及びプロピレン基から選ばれる1種又は2種がより好ましい。
また、(OR52)は、式(1-1)及び式(1-2)における(OR12)と同様に、前記単量体aに基づく単位であることも好ましい。単量体aの好ましい態様は、単量体1-1の場合と同じである。
54は、ジイソシアネートから2個のイソシアネート基を除いた2価の基である。ジイソシアネートとしては、単量体1-2におけるジイソシアネートと同様であり、好ましい態様も同じである。
53は、炭素数2~20の鎖式炭化水素基、又は炭素数6~20の環構造を有する環式炭化水素基である。1分子中に存在する複数のR53は互いに同じであっても異なってもよい。1分子中に2種以上のR53が存在する場合、式(5-2)で表される化合物を構成する2種以上の(R53-O-C(=O)-O)で表される単位の配列は、ランダムであってもよく、ブロックであってもよく、ランダム及びブロックの両者の組み合わせでもよい。R53は、炭素数2~8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、エチレン基、1,2-プロピレン基、1,3-プロピレン基、1,4-ブチレン基がより好ましい。
iは、20~600の整数である。iは、35~500の整数が好ましく、65~250の整数がより好ましい。
jは、2~50の整数が好ましく、3~30の整数がより好ましい。
【0140】
ポリオール(A)のうち、ポリエーテルポリオールは、単量体1-3におけるポリエーテルポリオールと同様であり、好ましい態様も同じである。また、ポリエーテルカーボネートポリオールは、単量体1-3におけるポリエーテルカーボネートポリオールと同様であり、好ましい態様も同じである。
ポリオール(A)における、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリ(メタ)アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ヒマシ油系ポリオール、ポリオレフィンポリオールは、特開2020-37689号公報の[0016]~[0028]に記載のものを特に限定なく使用できる。
前記ポリエーテルポリオールとしては、ポリエーテルポリオール中に(メタ)アクリレート単量体に基づく単位を有する重合体が分散したポリマーポリオールを使用することもできる。ポリマーポリオールは、市販品であってもよく、例えば、「アルティフロー(登録商標)」シリーズ、「シャープフロー(登録商標)」シリーズ(以上、三洋化成工業株式会社製)、「エクセノール(登録商標)」シリーズ(AGC株式会社製)等が挙げられる。
前記ポリエーテルカーボネートポリオールの市販品としては、例えば、「Converge」シリーズ(Saudi Aramco社製)等が挙げられる。
【0141】
ポリイソシアネート(v-1)は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物である。ポリイソシアネートとしては、1分子中に2個又は3個のイソシアネート基を有する化合物が好ましく、ジイソシアネートがより好ましい。ジイソシアネートとしては、単量体1-2におけるジイソシアネート(ii-2)と同様であり、好ましい態様も同じである。
ポリイソシアネート(v-1)の具体例としては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ポリイソシアネートが挙げられる。固体電解質の伸びと強度の調整のしやすさの観点から、ヘキサメチレンジイソシアネート又はイソホロンジイソシアネートが好ましい。
【0142】
〔第1の単量体及び第2の単量体の含有量〕
前記固体電解質100質量部に対する第1の単量体の含有量は、固体電解質の柔軟性及び繰り返し曲げ耐久性の観点から、50質量部以上であることが好ましく、70~98質量部であることがより好ましく、80~95質量部であることがさらに好ましい。
単量体1-1、単量体1-2及び単量体1-3は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。第1の単量体としては、単量体1-1及び単量体1-2から選ばれる1種以上を含むことがより好ましい。第1の単量体100質量部中、単量体1-1及び単量体1-2の合計含有量は、固体電解質の柔軟性の観点から、50質量部以上であることが好ましく、70質量部以上であることがより好ましく、100質量部であることが特に好ましい。この場合、単量体1-1及び単量体1-2の合計含有量100質量部に対して、単量体1-1の含有量が50~100質量部であることが好ましい。
【0143】
固体電解質中に第2の単量体を含む場合、固体電解質の柔軟性及び繰り返し曲げ耐久性の観点から、固体電解質100質量部に対する第2の単量体の含有量は、50質量部以下であることが好ましく、より好ましくは30質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下である。
【0144】
〔電解質塩〕
電解質塩は金属塩を用いることができ、電気的に正を帯びた化合物と、電気的に負を帯びた化合物とからなる各種金属塩を用いることができる。金属塩の具体例としては、LiBF、LiPF、LiNbF、LiAsF、LiNH、LiF、LiCl、LiSCN、LiCFSO、LiCSO、LiBr、LiI、LiCN、LiClO、LiNO、LiN(CFSO2、COOLi、MgN(CFSO、NaCl、NaBr、NaF、NaI、NaClO、NaCN、NaN(CFSO、NaPF、NaN(FSOなどが挙げられる。中でも、高分子電解質中により均一に分散されやすく、イオン伝導度が良好となりやすい点から、LiBF、LiPF、LiClO、LiN(CFSO、MgN(CFSO、NaPF、NaN(CFSO及びNaN(FSOからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、LiBF、LiPF、LiN(CFSO、MgN(CFSO、NaPFがより好ましい。
【0145】
前記電解質塩は、1官能ウレタン(メタ)アクリレートを含む電解質中に均一に分散されていることが好ましく、分散する方法としては、前記電解質中に固形状のまま直接混合しても溶剤に溶解などの手法で分散させた後に混合してもよい。
【0146】
前記電解質塩の含有量は、イオン伝導度がより良好となる点から、固体電解質に対して0.01~50質量%であることが好ましく、0.1~30質量%であることがより好ましく、0.5~20質量%であることがさらに好ましい。
【0147】
[固体電解質の製造方法]
本発明の固体電解質の製造方法は、所定の(メタ)アクリロイルオキシ基を含む化合物の反応生成物から選ばれる1種以上の単量体である1官能ウレタン(メタ)アクリレート及び電解質塩を含む組成物に300~410nmの波長を有する光を照射して硬化する。
前記1官能ウレタン(メタ)アクリレート及び電解質塩は、それぞれ前記[固体電解質]の項で説明したものを用いることができる。
前記組成物は、さらに、光重合開始剤を含んでいてもよい。
【0148】
光重合開始剤としては、重合反応の制御の観点から、波長410nm以下の紫外照射により使用できるものが好ましい。光重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
光重合開始剤としては、例えば、国際公開第2018/173896号の段落[0147]~[0151]に記載されているものが挙げられる。
光重合開始剤としては、光励起した開始剤と系中の水素供与体とが励起錯体を形成し、水素供与体の水素を転移させる水素引抜型光重合開始剤が好ましい。水素引抜型光重合開始剤の具体例としては、ベンゾフェノン、4-メチル-ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、4-(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、4-[2-((メタ)アクリロイルオキシ)エトキシ]ベンゾフェノン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-4’-メトキシベンゾフェノン、2-ベンゾイル安息香酸メチル、ベンゾイルギ酸メチルが挙げられる。
また、光重合開始剤としては、光に対する高い感応性の観点からは、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系光開始剤が好ましい。
光重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0149】
組成物中の光重合開始剤の含有量は、組成物の重合に伴う硬化の適度な進行の観点から、第1の単量体及び第2の単量体の合計100質量部に対して、0.01~20質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましく、0.2~6質量部がさらに好ましい。
【0150】
前記組成物は、以上の各成分の他に、本発明の効果を阻害しない範囲で、この種の材料に一般に配合される他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、第1の単量体及び第2の単量体以外の単量体(以下、「他の単量体」とも言う。)、酸化防止剤、光安定化剤、光増感剤、難燃防止剤等が挙げられる。
前記組成物中のこれらの他の成分は、本発明の効果を損なわない範囲内の含有量で配合される。
【0151】
<他の単量体>
他の単量体は、第1の単量体(固体電解質が第2の単量体を含む場合は、第1の単量体及び第2の単量体)と共重合する化合物であり、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
他の単量体としては、第1の単量体及び第2の単量体との共重合のしやすさの観点から、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有(メタ)アクリレート、アミノ基含有(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートが挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが挙げられ、前記アルキル基の炭素数は、例えば、1~18が好ましく、1~14がより好ましく、1~10がさらに好ましい。
アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、n-ウンデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、n-テトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アミノ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0152】
他の単量体としては、第1の単量体を架橋させる官能基を2個以上有する、架橋性を有する単量体を用いることもできる。架橋性を有する単量体は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
架橋性を有する単量体の前記官能基は、(メタ)アクリロイルオキシ基、エポキシ基、イソシアネー卜基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、アジリジン基、ビニル基、アミノ基、イミノ基及びアミド基から選ばれる1種以上が好ましい。前記官能基は、脱保護可能な保護基で保護されていてもよい。
架橋性を有する単量体の1分子中の前記官能基の数は2~4が好ましく、2又は3がより好ましい。
【0153】
架橋性を有する単量体を配合する場合、組成物中の含有量は、得られる固体電解質の柔軟性の観点から、第1の単量体(組成物が第2の単量体を含む場合は、第1の単量体及び第2の単量体)100質量部に対して、架橋性を有する単量体の含有量は1~50質量部が好ましく、2~45質量部がより好ましく、3~40質量部がさらに好ましい。
【0154】
組成物中、1官能ウレタン(メタ)アクリレート及び電解質塩の合計含有量は、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、さらに好ましくは95質量%以上である。
【0155】
前記組成物は、1官能ウレタン(メタ)アクリレート、電解質塩、必要に応じて配合される光重合開始剤及びその他の成分の混合物を硬化させて固体電解質を得る。
前記組成物を調製する際の各成分の混合順序は特に限定されない。各成分を混合した後に紫外線を照射してもよい。
前記組成物が含む各成分は、予め混合してもよく、硬化させる直前に混合してもよい。例えば、光重合開始剤以外の成分を予め混合した予備混合物に、硬化させる直前に光重合開始剤を添加してもよい。
【0156】
前記組成物は、所望の形状に成形した後、紫外線を照射して硬化させてもよい。
前記組成物を所望の形状に成形する方法としては、例えば、基材上に塗布する方法、押出成形する方法及び型に注入する方法が挙げられる。
前記組成物を光硬化させる際の紫外線の照射量は、0.1~5J/cmが好ましく、0.3~4J/cmがより好ましく、0.5~3J/cmがさらに好ましい。上記照射量が0.1J/cm以上であると、十分な硬化性を得ることができ、5J/cm以下であると、より短時間で所望の硬化性を得ることができる。
【0157】
このようにして得られる固体電解質は、低温でのイオン伝導度及び柔軟性に優れ、かつ繰り返し曲げ耐久性に優れる。また、固体電解質のガラス転移温度(Tg)は、0℃未満であることが好ましく、-60℃未満がより好ましく、-65℃未満がさらに好ましい。Tgが0℃未満であると、固体電解質の低温での柔軟性及び繰り返し曲げ耐久性がより優れる。固体電解質のTgの下限値は、導電性が安定して得られやすい点から、-85℃以上であることが好ましい。
なお、固体電解質のTgは、JIS K7121:2012に準拠して測定することができ、具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
【0158】
[電池]
本発明の電池は、上述の固体電解質を備える。したがって、低温でのイオン伝導度及び柔軟性に優れ、かつ繰り返し曲げ耐久性に優れることから、フレキシブル電池とすることができる。
本発明の電池は、前記固体電解質に各種公知の正極材料及び負極材料を接合することにより得ることができる。
正極材料としては、LiMnO、LiMn、LiCoO、LiCr、LiNiO、LiCrOなどが挙げられる。負極材料としては、ハードカーボン、ソフトカーボン、リチウム金属などが挙げられる。負極材料は積層状、球状、繊維状、螺旋状、フィブリル状などのミクロ構造のものを適宜使用でき、材料形状は平板状、波板状、棒状、粉末状などが挙げられる。
【0159】
前記電池を包装する外装材としてはアルミ箔、アルミ蒸着した有機フィルムなどを使用することができる。有機フィルムの材質は各種公知のものが使用でき、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン、ポリエチレンテトラフルオレートなどが挙げられる。
【0160】
[物品]
本発明の物品は、上述の電池を備える。このような物品としては、ウェアラブルデバイスなどのフレキシブルデバイス、エレクトロクロミックディスプレイ等が挙げられる。
【実施例
【0161】
以下、実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明は、下記実施例により限定されるものではない。
【0162】
[組成物の製造]
下記合成例及び製造例により、固体電解質を作製するための組成物を製造した。
【0163】
〔数平均分子量の測定〕
合成例で得られた生成物の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、下記の測定条件で測定した。
<測定条件>
・使用機器:「HLC-8120GPC」、東ソー株式会社製
・使用カラム:下記の2種のカラムを順に直列で連結
「TSKgel(登録商標) G7000HXL」、東ソー株式会社製、1本
「TSKgel(登録商標) GMHXL」、東ソー株式会社製、2本
・カラム温度:40℃
・検出器:示差屈折率(RI)
・溶離液:テトラヒドロフラン
・流速:0.8mL/分
・試料濃度:0.5質量%
・試料注入量:100μL
・標準試料:ポリスチレン
【0164】
〔オキシエチレン基の含有割合(EO含有量)及びオキシプロピレン基の含有割合(PO含有量)〕
製造例で得られたモノオール1~3についてのオキシアルキレン基の総量に対するオキシエチレン基の含有割合(エチレンオキシド単位含有量)及びオキシプロピレン基の含有割合(プロピレンオキシド単位含有量)は、H-NMRを用いてオキシアルキレン単位のモノマー組成を求め、プロピレンオキシド単位中のメチル基のシグナルとプロピレンオキシド単位中及びエチレンオキシド単位中のメチレン基のシグナルの面積比から、EO含有量及びPO含有量を求めた。
【0165】
〔原料化合物〕
製造例及び合成例で使用した原料化合物の詳細は、以下のとおりである。
・開始剤A:n-ブタノールにKOH触媒でプロピレンオキシド(以下「PO」とも言う。)を分子量400になるまで付加反応させたポリオキシプロピレンモノオール
・開始剤B:n-ブタノールにKOH触媒でPOを分子量3,300になるまで付加反応させたポリオキシプロピレンモノオール
・DMC-TBA触媒:亜鉛へキサシアノコバルテート-tert-ブチルアルコール錯体
・AOI:2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート;「カレンズAOI」、昭和電工株式会社製
【0166】
[1官能ウレタン(メタ)アクリレートを含む生成物]
・(A-1):合成例1で得られた1官能ウレタンアクリレートを含む生成物
・(A-2):合成例2で得られた1官能ウレタンアクリレートを含む生成物
・(A-3):合成例3で得られた1官能ウレタンアクリレートを含む生成物
【0167】
[(メタ)アクリレート]
・(B-1):ポリエチレングリコールモノアクリレート;「ブレンマー(登録商標)AE-200」、日油株式会社製;数平均分子量約200(カタログ値)
・(B-2):メトキシポリエチレングリコールメタクリレート;「ブレンマー(登録商標)PME-1000」、日油株式会社製;数平均分子量約1,000(カタログ値)
・(B-3):メトキシポリエチレングリコールメタクリレート;「ブレンマー(登録商標)PME-4000」、日油株式会社製;数平均分子量約4,000(カタログ値)
【0168】
[電解質塩]
・(C-1):リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド;「LiTFSI(LiN(CFSO)」、森田化学工業株式会社製
・(C-2):マグネシウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド;「MgTFSI(MgN(CFSO)」、東京化成工業株式会社製
・(C-3):ヘキサフルオロリン酸ナトリウム;「NaPF6(NaPF)」、東京化成工業株式会社製
【0169】
[光重合開始剤]
・(D-1):フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド;「イルガキュア(登録商標)819」、BASF社製
【0170】
[製造例1]
撹拌機及び窒素導入管を備えた耐圧反応器内に、DMC-TBA触媒 0.4g、及び開始剤A 538gを加え、窒素雰囲気下、130℃で、PO 1,120g及びエチレンオキシド(以下「EO」とも言う。) 6,347gを一定の速度で7時間かけて投入した。耐圧反応器の内圧低下が止まったことを確認し、水酸基価9.6mgKOH/g(水酸基価換算分子量5,840)、EO含有量80質量%及びPO含有量20質量%のポリオキシアルキレンモノオール(モノオール1)8,000gを得た。
【0171】
[製造例2]
撹拌機及び窒素導入管を備えた耐圧反応器内に、DMC-TBA触媒 0.4g、及び開始剤B 1,220gを加え、窒素雰囲気下、130℃で、PO 2,109g及びEO 735gを一定の速度で7時間かけて投入した。耐圧反応器の内圧低下が止まったことを確認し、水酸基価5.2mgKOH/g(水酸基価換算分子量10,730)、EO含有量18質量%及びPO含有量82質量%のポリオキシアルキレンモノオール(モノオール2)4,064gを得た。
【0172】
[製造例3]
開始剤A 48gを反応器に入れ、二酸化炭素ボンベと反応器内を接続した状態で、反応器内の気相を二酸化炭素で置換した。次いで、常に二酸化炭素で反応器内が1.5MPaとなるように加圧したまま、DMC-TBA触媒 0.8gを加え、EO 291gを一定の速度で5時間かけて投入し、EO及び二酸化炭素を反応させて水酸基価19.32mgKOH/g(水酸基価換算分子量:2,900)、EO含有量88質量%及びPO含有量12質量%のポリエーテルカーボネートモノオール(モノオール3)400gを得た。
得られたモノオール3を10質量%となるように重クロロホルムに溶解し、分解能400MHz(JNM-ECZ400SJNM、日本電子社製)でH-NMRを測定した。得られた結果から、ポリエーテルカーボネートモノオール中のカーボネート基〔-OC(=O)O-〕に基づくピーク及びEO単位に基づくピークを特定し、その面積から重合体中の共重合組成比を算出した。モノオール3中のカーボネート基の割合は2.3質量%であった。
【0173】
[合成例1]
撹拌機及び窒素導入管を備えた反応容器内に、製造例1で得られたモノオール1(平均水酸基数1.08)292.9g、AOI 7.08g(NCOインデックス100)、及び2-エチルヘキサン酸ビスマスの25質量%トルエン溶液0.024gを加え、70℃で3時間撹拌して、1官能ウレタンアクリレートを含む生成物を得た(数平均分子量8,400)。また、得られた1官能ウレタンアクリレートを含む組成物に対して光開始剤としてIRGACURE819を0.3質量%添加し、ホモポリマーを得た。得られたホモポリマーについて、後述のガラス転移温度測定方法と同様の方法でホモポリマーのガラス転移温度を測定した。得られたガラス転移温度は-73℃であった。
【0174】
[合成例2]
撹拌機及び窒素導入管を備えた反応容器内に、製造例2で得られたモノオール2(平均水酸基数1.01)293.7g、AOI 6.27g(NCOインデックス100)、及び2-エチルヘキサン酸ビスマスの25質量%トルエン溶液0.024gを加え、70℃で3時間撹拌して、1官能ウレタンアクリレートを含む生成物を得た(数平均分子量17,750)。合成例1と同様の方法でホモポリマーを得て、ガラス転移温度を測定した。得られたホモポリマーのガラス転移温度は-74℃であった。
【0175】
[合成例3]
撹拌機及び窒素導入管を備えた反応容器内に、製造例3で得られたモノオール3(平均水酸基数1.01)143.0g、AOI 6.95g(NCOインデックス100)、及び2-エチルヘキサン酸ビスマスの25質量%トルエン溶液0.012gを加え、70℃で3時間撹拌して、1官能ウレタンアクリレートを含む生成物を得た(数平均分子量2,780)。
【0176】
〔例1〕
(A-1)合成例1で得られた1官能ウレタンアクリレートを含む生成物 90質量部、(C-1)LiTFSI 10質量部、及び(D-1)光重合開始剤 0.3質量部を加え混合し、例1の組成物を作製する。
【0177】
〔例2〕
(A)成分として、(A-1)成分の代わりに(A-2)合成例2で得られた1官能ウレタンアクリレートを含む生成物を用いること以外は、例1と同様にして例2の組成物を作製する。
【0178】
〔例3〕
(A)成分として、(A-1)成分の代わりに(A-3)合成例3で得られた1官能ウレタンアクリレートを含む生成物を用いること以外は、例1と同様にして例3の組成物を作製する。
【0179】
〔例4〕
(B-1)ブレンマー(登録商標)AE-200 90質量部、(C-1)LiTFSI 10質量部、及び(D-1)光重合開始剤 0.3質量部を加え混合し、例4の組成物を作製する。
【0180】
〔例5〕
(B-1)成分の代わりに(B-2)ブレンマー(登録商標)PME-1000を用いること以外は、例4と同様にして例5の組成物を作製する。
【0181】
〔例6〕
(B-1)成分の代わりに(B-3)ブレンマー(登録商標)PME-4000を用いること以外は、例4と同様にして例6の組成物を作製する。
【0182】
〔例7〕
(A-1)合成例1で得られた1官能ウレタンアクリレートを含む生成物 85質量部、(C-1)LiTFSI 15質量部、及び(D-1)光重合開始剤 0.3質量部を加え混合し、例7の組成物を作製する。
【0183】
〔例8〕
(A-1)合成例1で得られた1官能ウレタンアクリレートを含む生成物 85質量部、(C-2)MgTFSI 15質量部、及び(D-1)光重合開始剤 0.3質量部を加え混合し、例8の組成物を作製する。
【0184】
〔例9〕
(A-1)合成例1で得られた1官能ウレタンアクリレートを含む生成物 85質量部、(C-3)NaPF6 15質量部、及び(D-1)光重合開始剤 0.3質量部を加え混合し、例9の組成物を作製する。
【0185】
〔評価〕
例1~9で製造した各組成物を用いて試験体を作製し、下記の各試験による評価を行う。表1に評価結果を示す。例1~3、及び例7~9は実施例であり、例4~6は比較例である。
(1)イオン伝導度
例1~9の組成物を各々直径5mm、厚さ2mmの円柱状のシリコーン型に流し込む。続いて、窒素環境下でコンベヤ型UV照射機(ORC社製)を用い、HgXeランプ、照度100mW/cm、積算光量1J/cmの条件下で硬化させ、試験体とする。
得られた試験体のイオン伝導度(σ)は、試験体を1対の電極(SUS製:厚さ4mm×直径20mm)で挟んだ測定セルを作製し、これを用いて複素インピーダンスを測定し、次式に基づきイオン伝導度の対数(log(σ))を算出することで評価する。
log(σ)=log(d/(R×A))
(式中、Rはバルク抵抗値、dは試験体の厚さ、Aは電極の面積である。)
複素インピーダンスの測定を行うと、電位勾配に沿ったイオンの泳動と同時に、電気二重層の充放電、電極反応などが起こるために周波数依存性を示す。この周波数依存性を、実数部を横軸、虚数部を縦軸とした平面にプロット(Cole-Coleプロット)し、その軌跡を説明する等価回路の値(抵抗値)を求める。測定温度は、0℃及び23℃で行う。イオン伝導度の対数(log(σ))は下記基準で評価する。
<評価基準>
A:log(σ)が-4.5以上
B:log(σ)が-5.5以上-4.5未満
C:log(σ)が-5.5未満
【0186】
(2)ガラス転移温度
例1~9の組成物を各々直径5mm、厚さ2mmの円柱状のシリコーン型に流し込む。続いて、窒素環境下でコンベヤ型UV照射機(ORC社製)を用い、HgXeランプ、照度100mW/cm、積算光量1J/cmの条件下で硬化させる。得られた硬化物を10mgサンプリングし、試験体とする。
得られた試験体について、示差走査熱量測定装置(EXSTAR 6000 DSC6100、セイコーインスツル株式会社製)を用いて、ガラス転移温度を測定する。試料容器はアルミニウムパンを用いる。測定条件は、温度範囲-100℃~+80℃、昇温速度3℃/minとする。ガラス転移温度は下記基準で評価する。
<評価基準>
A:-60℃未満
B:-60℃以上0℃未満
【0187】
(3)繰り返し曲げ試験
例1~9の組成物を各々ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(ルミラーS10、東レ社製、厚さ50μm)に、硬化後の組成物の厚さが25μmになるようにドクターブレードを用いて塗布したのち、ポリエチレンフィルムを重ね合わせる。次いで、窒素環境下でコンベヤ型UV照射機(ORC社製)を用い、HgXeランプ、照度100mW/cm、積算光量1J/cmの条件下で硬化させて固体電解質を形成する。ポリエチレンフィルムを剥がし、試験体とする。各試験体から切り出して、幅50mm、長さ150mm、厚さ75μmの試験片を作製する。
U字型面状曲げ試験機(DLDM111LH、ユアサシステム機器株式会社製;試験条件:室温(25℃)、屈曲半径2mm、折り曲げ180℃開放の操作を1回とし、60回/minの速度で100,000回繰り返し)にて、試験片のPETフィルム側の面を外側にして、長さ方向の半分の位置でU字型に折り曲げる操作を繰り返す試験を行う。
試験後の試験片の外観を目視観察し、下記評価基準にて評価する。評価A又は評価Bであれば実用上の問題はなく、繰り返し曲げ耐久性に優れていると言え、評価Cは繰り返し曲げ耐久性が十分ではなく、実用には適さないと判定される。
<評価基準>
A:剥がれ、浮き及びクラックのいずれも生じず、外観上の変化が全くない。
B:剥がれ、浮き及びクラックの1つ以上がわずかに生じた。
C:剥がれ、浮き及びクラックの1つ以上が著しく生じた。
【0188】
【表1】
【0189】
例1~3及び例7~9の組成物を硬化した硬化物は、低温でのイオン伝導度に優れ、柔軟性及び繰り返し曲げ耐久性も備えている。